都市農業の振興及び農地の保全に関する意見書

 東京都の市街化区域内の農業は、安全で安心、新鮮な農産物の生産はもとより、その生産の基盤である農地が、都民生活に安らぎや潤いを与え、災害時の避難場所にもなるなど、様々な機能を有している。
 しかし、東京都の市街化区域内の農地は毎年減少しており、平成20年には10年前の6,000ヘクタールに比べ2割も減少し、4,700ヘクタールとなっている。農地減少の大きな要因は、相続時における高額な税負担にあり、農家は、相続が発生すれば納税のために農地を手放さざるを得ない状況に置かれている。
 このため、都においては、市街化区域内農地の農地制度と税制度の改善を長年にわたり国に要請するとともに、都独自に農業と農地をいかしたまちづくりを進めるための事業を展開している。また、都内の市街化区域内に農地がある38区市町も、都市農地の保全を目指す取組を促進し、住民福祉の向上を図ることを目的として、平成20年10月に都市農地保全推進自治体協議会を発足させ、国に対し都市農地保全の要望等を行っている。
 しかし、農業従事者の高齢化が進む中、国が、これまでの都市農地は宅地の供給源という考え方を改め、都市農地と住宅地が共存共栄できる政策に転換し、制度を改善しない限り、今後も相続を契機として、掛け替えのない都市農地が減少し続けることは明らかである。一度失われた農地を取り戻すことは極めて困難であり、一刻も早い対応が必要である。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、都市農業振興の根拠法となる「都市農業振興法(仮称)」の制定を強く求めるとともに、現行の農地制度や相続税制度等の改善を行うなど、都市農地の保全のために必要な措置を講ずるよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成22年6月16日
東京都議会議長 田中良
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 財務大臣 農林水産大臣 国土交通大臣 あて
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