アスベスト問題における被害者救済など、抜本的な対策に関する意見書

 本年6月下旬に、アスベストを使用していた事業場の労働災害事例が公表され、その後も多数の企業がアスベストによる労働災害事例を公表している。また、一部では従事者だけでなく、その家族や工場周辺の住民への影響があったことが明らかになり、今やアスベストによる被害は国民全体の問題となっている。
 我が国においては、吹き付けアスベストの使用規制など、暫時使用制限を強化してきたものの、ここまでアスベストによる被害が拡大したのは、対策の早かったヨーロッパ諸国と比較して、対応の遅かった国の怠慢に根本的な原因があることは否定できない。
 アスベストによる疾病は、潜伏期間が数十年と極めて長いことから、今後も被害者が増加することが予想され、国民の不安も長期にわたるものと考えられ、アスベスト製造・使用状況等の追跡調査も含め行政の果たすべき責務は極めて大きい。
 また、アスベストの輸入量は、昭和30年代後半から急増し、ピーク時の昭和49年には35万トンを超える量を輸入している。これらの大半が建材として使用されている実態を見れば、今後増加する建築物解体工事におけるアスベストの飛散問題は重大である。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、被害者の救済、疾病の予防、新たな被害者を生じさせないための飛散防止措置などの対策を総合的、抜本的に講じるため、次の事項を実現するよう強く要請する。
1例外的に使用が認められているアスベスト含有製品については、平成20年までに全面禁止するとしているが、代替化の促進を図り、全面禁止の前倒しを実施すること。
2アスベストに起因する被害者や死亡者の家族などに対して、補償の仕組みを緊急に制定し、万全な救済対策を実施すること。
3建築物解体時のアスベスト飛散防止対策や使用中の建物のアスベスト対策が徹底されるよう、法制度の整備を早急に行うこと。
4子どもをアスベスト暴露から守るため、幼稚園、保育園及び学校などについて、優先的な対策を講じること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成17年10月6日
東京都議会議長 川島忠一
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 財務大臣 文部科学大臣 厚生労働大臣 経済産業大臣 国土交通大臣 環境大臣 あて提出
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