重症急性呼吸器症候群(SARS)対策に関する意見書

 昨年11月に突如出現し、本年2月以降、世界的な感染拡大をみた重症急性呼吸器症候群(SARS)については、新規症例の発生も減少し、流行は終息に向かいつつあると言われている。しかしながら、SARSコロナウイルスは、低温に強く、気温の低い冬期に再度流行することも懸念されている。SARSに関しては、いまだに検査、診断法が開発されておらず、また、根治的治療法も確立していない。このような状況において、感染が再拡大すれば、人類の生命への危険はもちろん、世界経済にも大きな打撃を与えることとなる。今後、我が国においても、国際的な協調、連携体制の下、医学的知見の集積に貢献していくことを始め、SARSコロナウイルスの国内への侵入阻止のため、また万一、感染者が発生した場合の感染拡大防止に向けて、現行対策を再点検し、その充実強化を図っていく必要がある。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、次の事項を速やかに実現するよう強く要請する。
1国内へのSARSコロナウイルスの侵入を水際で確実に阻止するため、空港や港湾において、入国管理及び検疫体制の抜本的強化に取り組むこと。
2SARSの医療対策上の最優先課題である迅速かつ確実な検査法の開発に全力を挙げて取り組むとともに、その成果を都道府県等に普及させること。
3大規模な患者発生にも即応可能となるよう、感染症指定医療機関の確保や陰圧制御病床の整備など感染症医療対策の拡充を図るとともに、SARS診療に取り組む医療機関に対する的確な技術的、財政的支援を行うこと。
4感染拡大防止に関し、国自らが強いリーダーシップを発揮するとともに、住民への正確な情報提供や迅速な接触者調査、患者救急搬送など、第一線で対策に取り組む都道府県等を全面的に支援すること。
5SARS対策に関する教訓を活かし、新興感染症への対応強化に向けて、現行感染症法の早期改正など法整備を進めること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成15年7月9日
東京都議会議長 三田敏哉
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 法務大臣 外務大臣 財務大臣 厚生労働大臣 あて提出
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