児童虐待の防止等に関する法律の改正に関する意見書

 児童虐待の相談件数の急激な増加等を背景に、平成12年11月、児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)が施行された。法律では、施行後3年を目途として施行状況等を総合的に勘案して検討を加え、必要な措置を講ずることとされており、現在、国においては見直しに向けた具体的な検討が行われている。
 法律が施行されたことにより、児童虐待に対する社会的関心が高まり、虐待の通告が急増し、その結果、虐待の早期発見・早期対応がよりスムーズになり、児童の保護・育成などの点で画期的な前進がみられた。
 しかし、児童虐待防止法は主として虐待の早期発見・早期対応が中心であるため、子育て支援を通じた虐待の予防、虐待を行った保護者への有効な指導、親子分離した後の家族への支援などについては不十分であり、今後、充実強化していく必要がある。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、児童虐待防止法の見直しに当たっては、児童と家庭への総合的な支援を行う観点から、次の事項を実現するよう強く要請する。
1家庭に身近な区市町村の役割を明確にし、地域で児童と家庭を支えていく仕組みを法律に位置付けること。
2児童相談所の体制を強化し、あわせて、区市町村、警察、保健所等との連携の強化についての規定を設けること。
3乳幼児健診未受診家庭などへの子育て支援を通じて、虐待の予防を図る規定を設けること。
4児童相談所が虐待のあった家庭への介入と支援の両方を行っている現状を改善するため、立入調査、緊急一時保護について、司法が関与する規定を設けること。
5虐待を行った保護者からの執ような引取り要求を遮断するため、居所指定権、身上監護権など親権の一部一時停止や保全処分の制度を創設すること。
6虐待を行った保護者に対し、効果的な指導を行うため、指導について裁判所の命令規定を設けるとともに、やむを得ず親子分離を行った家族に対して、適切な援助を行い、家族の再統合を図る仕組みを法律に位置付けること。
7虐待を受けた児童のケアのため、児童養護施設や一時保護所の体制の充実、養育家庭など家庭的な養護の促進を行うこと。
8児童虐待防止法の見直しに合わせて、児童福祉法・民法等関連する法令の抜本的な規定整備を図ること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成15年7月9日
東京都議会議長 三田敏哉
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 法務大臣 厚生労働大臣 あて提出
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