大気汚染による健康被害者救済制度の創設に関する意見書

 東京における自動車排出ガスによる大気汚染は、全国でも最悪の状況にあり、改善するどころかますます深刻なものとなっている。こうした中で、大気汚染は、多くの健康被害者を発生させている。都条例による大気汚染医療費助成制度の認定患者数をみても、国が公害健康被害補償法(以下「公健法」という。)の指定地域を解除した昭和62年度末の16,941人に対して、平成13年度末では51,058人と3倍を超える急激な増加を示している。
 この間、公健法による健康被害者の新規認定が打ち切られたことにより、新たに気管支ぜん息などを発病した健康被害者は、都の医療費助成を受けられる18歳未満の都民以外には、何らの救済も受けられないまま、病気の苦しみに加えて、重い医療費負担のゆえに満足な治療も受けられていない。また、職を失っても何らの生活補償も無く生活苦にさいなまれるといった、二重三重の被害に苦しめられている。
 こうした中、去る10月29日、東京地方裁判所は、東京大気汚染公害訴訟において、公健法未認定患者に対する損害賠償を命じる判決を下した。このことは、新たな被害者の救済制度の創設が急務となっていることをより一層明らかにしたものと言える。
 また、この判決を踏まえて、石原都知事も、自動車排出ガス規制の強化と健康被害者の救済は、行政の使命であるとした上で、大気汚染による健康被害者救済制度を国の責任で創設することを強く求めている。
 大気汚染がますます深刻化する状況下で、健康被害者の窮状を放置しておくことは、もはや許されるものではない。国民の生命と健康を守る国の責務として、一刻も早く対策が講じられねばならない。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、メーカーによる費用負担のあり方を検討し、大気汚染による新たな健康被害者救済制度を、国の責任で創設するよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成14年12月18日
東京都議会議長 三田敏哉
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 厚生労働大臣 環境大臣 あて提出
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