里親制度の充実に関する意見書

 虐待など様々な理由によって親と一緒に暮らせない子どもたちが、家庭的な雰囲気の中で温かい愛情に包まれ、伸び伸びと養育されていくことは、その子どもたちの健やかな成長・発達にとって極めて大切なことである。
 里親制度はこうした家庭的な環境の中での養育の重要性にかんがみ創設された。しかし、我が国においてはこうした子どもたちに対する処遇は、これまでそのほとんどを施設が担ってきたのが実情であり、里親制度は一向に普及せず、むしろ里親の登録数は減少傾向をたどっている状況にある。
 このため、都は、家庭的養護を強力に推進すべく今年度から広報普及活動の強化、年齢基準の緩和、児童相談所の体制強化など抜本的な見直しを図ったところである。
 一方、国も、近年の児童虐待の急激な増加などを背景に、改めて里親制度の重要性を認識し、今般、その大幅な充実強化に向け、抜本的な制度見直しを打ち出した。
 里親には、常に子どもと向き合いながら養育をしていかなければならないという精神的負担や、国で認められたメニュー以外の養育に係る経済的負担が重くのしかかっている。しかし、我が国における社会風土の影響もあって、まだまだ里親への認知度は低く、更なる制度の充実に向け、国の強力な支援が不可欠である。
 また、社会的養護の円滑な推進を図っていくためには、施設による養護と里親制度による家庭的養護とが緊密な連携・役割分担を図りつつ、地域に根差した社会的養護システムを構築していく必要がある。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、里親制度の充実に向けて、次の対策を講じることを強く要請する。
1社会経済状況の変化に即応した社会的養護のこれからの在り方について、地域に根差した仕組みへの転換など今後の全体像を明確にし、そのための具体的道筋を示すこと。
2子どもを里親に委託するに当たっての親権者等の同意を得る際に、里親と施設の区別なく包括的な同意を得ることができるようにするなど、法的制約を緩和すること。
3里親手当の増額を図るとともに、教育費などの一般生活費等について、基準単価の増額とメニューの充実を図ること。
4里親に対するレスパイトケアの充実を図るなど、里親を支える仕組みの充実を図ること。
5里親制度に対する国民の理解促進を図るため、積極的に広報・啓発活動を実施すること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成14年10月15日
東京都議会議長 三田敏哉
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 厚生労働大臣 あて提出
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