小児救急医療体制の充実強化に関する意見書

 近年、小児救急患者に対する受入医療施設の「たらい回し」や患者搬送の遅延によって、患者が重篤な事態に至るなど、小児救急医療体制に係る深刻な問題が全国各地で発生している。
 現在、小児医療の不採算性等から小児科医が減少傾向にある。加えて、開業医の高齢化等に伴う診療施設の閉鎖や、医師の居宅から遠いビル診療所等の増加などで、休日や夜間における地域の小児救急医療体制の不備が大きな社会問題となっている。
 また、専門医が常駐する大病院志向と、共働き世帯の増加に伴う休日・夜間診療のニーズの増大が、大病院に勤務する小児科医等の過重な負担を招く結果となっており、それが更に小児科医志望者の減少傾向に拍車を掛けていることが指摘される。
 こうした事態に対し、厚生労働省は、平成11年度から3箇年計画で、全国360地域の第二次医療圏ごとに、24時間、いつでも子どもを診療することができる小児専門救急医療体制の整備を目指した「小児救急医療支援事業」をスタートさせた。しかし、平成12年度末時点での本事業の実施は、18県51地域(全体計画の14%)にとどまっており、平成13年12月末時点でも25県100地域(全体計画の27.7%)に過ぎない。その最大の要因は、全国各地における小児科医の大幅な不足であり、それが小児救急医療の体制整備を極めて困難にしている。
 よって、東京都議会は、昨年12月の「小児医療体制の充実強化に関する意見書」の提出に引き続き、国会及び政府に対し、これまでの小児救急医療体制の整備の在り方を抜本的に見直し、次の事項を早急に実現するよう強く要請する。
1小児救急医療及び小児医療にかかわる社会保険診療報酬の引上げを図ること。
2二次医療圏(圏域の平均人口35万人)における24時間対応の小児専門救急医療体制の早期整備を進めるため、「小児救急医療支援事業」の抜 本的な見直しを図るとともに、国の助成を拡大すること。
3地域における初期小児医療を担う「かかりつけ医」機能を強化するため研修制度を創設し、平日・夜間の診療体制を支援するなど、小児の初期救 急医療体制の強化策を講じること。
4都道府県における小児医療のセンター的機能を担う中核的小児医療機関の整備を計画的に進めること。
5大学の医学部における小児専門医の養成と臨床研修の充実を図ること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成14年3月28日
東京都議会議長 三田敏哉
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 厚生労働大臣 あて提出
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