犯罪被害者救済制度の法制化に関する意見書

 近年、オウム真理教による地下鉄サリン事件、和歌山カレー毒物混入事件、宗教やそれに類似した団体による反社会的事件が相次ぎ発生し、これらの事件による被害者をはじめ、殺人、強盗、性犯罪の被害を受け、経済的、精神的に悲惨な状況におかれる人々が多数に上っている。
 特に、殺人事件の遺族や性犯罪の被害者等の精神的被害は深刻であり、また、捜査等活動が被害者の負担になっている実態も明らかになっている。
 我が国の犯罪被害者救済制度は、昭和55年に「犯罪被害者給付金支給法」が成立し、翌年から犯罪被害給付制度が始められている。しかし、その対象は「不慮の死を遂げた者」の遺族と一定以上の重い障害が残った被害者本人に限られている。平成8年には「被害者対策要綱」が定められ、被害者に対する情報提供、捜査による二次的被害の防止・軽減、精神的被害の回復への支援などの取組が開始された。さらに、本年には、法制審議会に刑事手続における犯罪被害者の保護に関する事項が諮問され、警視庁においても「被害者支援都民センター」の設立準備が進められているところである。
 既に英米では、昭和40年代より犯罪被害者対策が先進的かつ総合的に進められており、昭和60年には国連第96回臨時総会において「犯罪と権力濫用による被害者の基本的司法原則に関する国連宣言」が採択されている。
 この間、日本の犯罪被害者対策は、相次ぐ取組にもかかわらず、今なお諸外国に大きく遅れているといわざるを得ない。
 よって、東京都議会は、政府に対し、苦境にある被害者への支援を強化するため、先の国連宣言にのっとり、社会的・衛生的・経済的対策の実施、情報提供の充実など犯罪被害者救済制度の法制化に取り組むよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出する。
 平成11年12月16日
東京都議会議長 渋谷守生
内閣総理大臣 法務大臣 大蔵大臣 自治大臣 国家公安委員長 あて提出
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