水素社会の実現に関する意見書

 水素エネルギーは、利用段階で一切CO2を排出しないため環境負荷を低減するとともに、様々な資源から製造できるため、エネルギー構造の変革につながる次世代エネルギーとして期待されている。
 また、水素関連技術は、我が国の高いものづくり技術の集約であり、産業の裾野も広く、普及による経済波及効果も高い。さらに、非常用電源としても利用可能である。
 国のエネルギー基本計画においても、将来、水素はエネルギーの中心的な役割を担うことが期待されており、資源小国である我が国にとって水素社会を早期に実現していくことは、極めて重要である。
 平成26年12月には燃料電池車の一般販売が開始されるなど、いよいよ水素社会の幕開けを迎えた。今、正に国を挙げて水素エネルギーの普及拡大を図るべきときである。また、我が国が一丸となって取り組む2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本全体の変革と成熟の好機であり、大会を契機に水素エネルギーの普及拡大を図ることで、我が国の高い技術力を世界にアピールする絶好の機会ともなる。
 都は、電力の大消費地として、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会での活用を視野に、水素社会の実現を先導すべく、様々な施策を積極的に展開しているところである。
 しかし、水素エネルギーの普及に当たっては、インフラの整備や水素の安全性に関する国民の理解促進、法規制などの制度面、水素の安定的な供給等、様々な課題がある。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、水素社会の実現に向けて、次の事項を実現するよう強く要請する。
1燃料電池車やバス、燃料電池等の普及促進を図るとともに、水素ステーションを早期に整備するため、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会までの普及を視野に入れ、集中的・継続的な財政支援を行うこと。
2水素の安全性や意義等に関する国民の理解を深めていくための普及啓発を強化すること。
3国は、「規制改革実施計画(平成25年6月14日閣議決定)」等に基づき、規制緩和を実現可能なものから速やかに実施するとともに、安全性の確保を前提として、保安距離の見直しや使用可能な材質の拡大等、水素ステーションの円滑な整備促進に向け、規制緩和を早期に実現すること。
4低炭素社会の構築のため、製造段階でもCO2を排出しない再生エネルギー由来の水素の早期普及に向け、国として実効性ある支援策を講ずるなど先導的な役割を果たすこと。
5製造、貯蔵・輸送等の各段階における更なる技術開発への制度的・技術的な環境整備や、財政支援などを積極的に行うこと。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成27年6月24日
東京都議会議長 高島なおき
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 経済産業大臣 国土交通大臣 環境大臣 規制改革担当大臣 宛て
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