慢性疲労症候群患者の支援等に関する意見書

 慢性疲労症候群は、日常生活を送れなくなるほど強い疲労が持続し、又は再発を繰り返し、労作後の神経免疫系の極度の消耗、記憶力・集中力の低下、微熱、咽頭痛、筋肉痛、関節痛、筋力の低下、頭痛や睡眠障害等の症状を伴う病気であり、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)において、神経系疾患に分類されている。
 これまでの我が国における慢性疲労症候群に関する研究は、一般的な疲労の解明に重点が置かれてきたが、疲労はこの病気の多様な症状の一つにすぎない。平成24年度、厚生労働省に16年ぶりに慢性疲労症候群に関する専門の研究班が発足し、疫学調査が行われているが、この病気の原因・病態の解明や治療法の開発に向けた研究が必要である。
 慢性疲労症候群においては、患者の多くが職を失うほどの深刻な状態にありながら、病気の原因が解明されていないことから心因性と思われたり、詐病の扱いを受け、偏見と無理解に苦しんでいる。また、診療を行っている医師が非常に少なく、地域的な偏りもあり、十分な医療を受けられない状況にある。
 平成24年6月に成立した障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律において、障害者の定義に新たに難病等が追加され、障害福祉サービス等の対象とされたが、対象となる者の範囲等についてはいまだ明確に示されていない。
 慢性疲労症候群患者の多くは、働くこともできず、介護が必要であるにもかかわらず、障害者施策の対象にもなりにくいなど、「制度の谷間」で苦しんでおり、医療・福祉の両面からの支援が急務である。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、慢性疲労症候群患者の支援等に関して、次の事項を実現するよう強く要請する。
1厚生労働省の慢性疲労症候群に関する研究班において、重症患者の実態等を調査し、この病気の原因・病態の解明、治療法開発のための研究を積極的に推進すること。
2医療関係者や国民に対して慢性疲労症候群の正しい知識を広めるとともに、全国のどこにおいても、患者たちが診察を受けられる環境を整えること。
3「制度の谷間」に置かれた難病・慢性疾患患者が、必要な福祉サービスを受けられる制度が確立されるよう、当事者の意見を十分に酌み取ること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成24年10月4日
東京都議会議長 中村明彦
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 厚生労働大臣 宛て
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