相続税制の改正に関する意見書

 現在、相続税の課税方式の見直しが行われている。その中で検討されている「遺産取得課税方式」は、それぞれの相続人が取得した財産の額に直接課税されるため、取得額が大きくなるほど累進課税により税負担が増すこととなる。また、相続税額を最も少なくする方法として、相続財産を均等に分割する均分相続が増加することが想定され、農地や林地の所有の分散化を招くことにもなる。
 農林業においては、他の産業と異なり、生産基盤として一定規模の農地と林地が必要であり、これらが分散することによって、経営の零細化、ひいては廃業につながることが強く懸念される。
 東京の都市農地は、都民のニーズにこたえ、新鮮で安全・安心な農産物を供給する農業の生産基盤となるだけでなく、緑地空間として、ヒートアイランド現象の緩和や災害時の避難場所となるなど、快適で安全な都市環境を創造する上でも重要な役割を果たしている。また、林地は、木材の生産の場であるとともに、二酸化炭素の吸収や水源の涵養、憩いの場の提供など都民のみならず、国民全体の生活にとって重要な機能を持っている。
 制度の詳細が明らかにされずに、農業者や林業者を交えた議論もないまま「遺産取得課税方式」を導入することは、東京の農地と林地の維持・保全に多大な支障を来すものである。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、相続税制の見直しにおいては、農業者や林業者の意見を十分に反映させ、農林業の活性化及び農地と林地の維持・保全に支障を生じさせることがないよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成20年12月2日
東京都議会議長 比留間敏夫
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 財務大臣 農林水産大臣 国土交通大臣 宛て
ページ先頭に戻る