中小企業の事業承継円滑化のための税制措置等に関する意見書

 中小企業は、地域における雇用を多く創出・維持するとともに、技術・ノウハウの創造と伝承、競争力の確保・強化、地域共同体の文化・伝統を保持するなど、多様かつ重要な経済的・社会的役割を担っている。
 しかし、今後、中小企業経営者の高齢化に伴い、事業承継問題が急速に深刻化することが予想される。後継者が事業を承継する際に発生する事業用資産に対する過度な相続税の課税や民法の遺留分制度などによって、やむを得ず事業存続をあきらめることになれば、従業員の生活、取引先や関連企業等の事業・経営にも影響を及ぼすとともに、地域の活力が削がれ、地域経済の衰退を招き、我が国の成長発展をも損ないかねない。
 そこで、中小企業及びその経営者が、事業承継対策に過度に悩まされることなく技術革新や新規分野への挑戦に専念でき、後継者が承継した経営資源をいかして、第二創業などに思う存分取り組むことができるよう、税制面、法制面、金融面など総合的な事業承継支援を大胆かつ迅速に実施する必要がある。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、中小企業の事業承継円滑化のための支援について、次の事項を実現するよう強く要請する。
1非上場株式等の事業用資産に係る相続税は、5年程度の一定期間の事業継続等を前提に非課税とすべきであり、事業を承継する者の相続税負担の減免を図る包括的な税制を確立すること。
2取引相場のない株式は、円滑な事業承継を可能とする評価方法の見直しを行うこと。
3民法の遺留分制度などは、事業承継の際に、相続人当事者の合意を前提とし、経営権や事業用資産を後継者に集中できるよう制度の改善を図ること。
4事業承継時における金融面での支援や、廃業と開業のマッチング支援等を行うための関連予算の大幅な拡充など、事業承継円滑化のための総合的な対策を講ずること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成19年10月5日
東京都議会議長 比留間敏夫
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 法務大臣 財務大臣 経済産業大臣 宛て
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