構造計算書偽装問題対策に関する意見書

 平成17年11月17日に一級建築士設計事務所による構造計算書偽装問題が国土交通省から発表された。今回の問題は、一級建築士としての職業倫理がみじんも感じられない許されざる行為に端を発したものであるが、それにとどまらず、建築主、元請設計事務所、指定確認検査機関、施工者、そして行政に至るまで多くの関係者等の問題点が浮き彫りになった。
 建築物は、そこに住む人の生活の根幹であり、安心して暮らすための言わば砦である。その安全性が確保されないという事態は、当該マンションの居住者はもとより、社会全体に大きな不安を与えている。
 この問題の一因は、国が指定した民間確認検査機関の審査に自治体が関与できない仕組みになっていることや、国の指定確認検査機関への指導、監督が不十分であったことにある。平成10年の建築基準法改正の際に、「民間機関の指定に当たっては、建築物の安全性が低下することのないよう適切な指導をすること。」という附帯決議がなされており、国の責任は極めて重大である。
 このような状況の中、都においては、何よりも都民の安全を確保する必要性から、緊急措置として都民住宅等の活用を決定したほか、固定資産税及び都市計画税の減免を決定したところである。
 国は12月6日に公的支援策を発表したが、今後、居住者を早急に救済するとともに、強力で効果的な再発防止策を構築する必要がある。また、現在進められている国・自治体による調査の徹底はもとより、関係機関による厳正な捜査及び責任の追及が不可欠である。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、次の事項を速やかに実現し、国民の不安を一日も早く解消するよう強く要請する。
1居住者に対する経済的支援措置など実効性のある支援策を講じるとともに、建築主など関係者に対して、その責任に応じ当然に負うべき費用負担を確実に求めること。
2問題の全容解明を行い、法に抵触することが明らかになれば厳正に処分すること。
3建築確認制度及び建築士制度の徹底的な検証と見直しを行い、実効性のある再発防止策を早急に打ち立て、信頼される建築行政の確立を図ること。
4再発防止の観点から、行政処分の一層の厳格化並びに罰則の強化を図ること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成17年12月15日
東京都議会議長 川島忠一
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 財務大臣 国土交通大臣 内閣官房長官 国家公安委員会委員長 宛て
ページ先頭に戻る