警視庁警察官の増員に関する意見書

 昨年は、治安の悪化を受け、警視庁が推進した「街頭・侵入犯罪抑止総合対策」の諸施策を始め、東京都、東京都議会、地域住民等が一体となり、安全で安心なまちづくりに取り組んだ結果、都内における刑法犯の認知件数は、平成9年以降初めて減少に転じ、また、平成7年以降下降していた検挙率が上昇に転ずるなど、犯罪の抑止について一定の効果が認められたところである。
 しかしながら、昨年の刑法犯認知件数は約29万9000件と、依然として高い水準にある。特に、都民の身近で発生するひったくりや侵入盗を始め、殺人や強盗など、都民に著しい不安感を与える多くの犯罪が多発しているほか、いわゆる「オレオレ詐欺」や「架空請求詐欺」等の急増など、新たな手口の悪質な犯罪が次々に出現している。
 とりわけ、新宿歌舞伎町に代表される都内の盛り場には、ここから得られる様々な利益を目的に、暴力団や国際犯罪組織が深く根を下ろし、凶悪犯罪発生の温床になるなど、極度に環境が悪化している。これら大規模繁華街に対して施策を総合的に推進し、安全で安心して過ごせる盛り場環境を維持し、平穏な都民生活と治安を確保する体制を確立することが喫緊の課題である。このため、都内における警察事象は複雑多様化を極め、警視庁の業務負担は著しく増大している。
 また、事件・事故その他各種の取扱いの急増等により、交番の勤務員が不在がちになって、都民の不安感が高まっていることから、「空き交番」の解消を含めた交番機能の強化は、都民の安全と安心を確保する上で、不可欠な要素となっている。
 さらに、警視庁は、皇居、国会及び総理官邸等、国の重要施設の警備、皇室及び政府・外国人要人等の警衛・警護等、東京都に特有の首都機能を確保するためにも、恒常的に警察力を投入すべき特殊事情がある。
 一方、警察官の増員については、警察庁の全国警察官増員計画の下で、平成14年度から16年度までの3年間に全国で増員された1万1650人のうち、警視庁には580人の増員が認められたものの、警視庁の業務負担を考えると到底十分とは言えない。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、政治、経済、文化の中心である首都東京の治安を維持し、都民生活の安全と安心を確保していくため、緊急に現場警察官を中心として警視庁警察官の増員を図るとともに、首都警備も含め必要な財源措置を講ずるよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する
 平成16年10月7日
東京都議会議長 内田茂
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 国家公安委員会委員長 警察庁長官 宛て
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