JAS法における地方自治体の権限強化に関する意見書

 我々日本人は、古来より清らかな水と多様な農林水産物に恵まれ、他国に類を見ない食文化をはぐくんできた。改めて言うまでもなく、食の基本は、国民が日々摂取する飲食料品が安全であること、及び飲食料品の購入に際し、正しい情報が国民に提供され、真の選択権が保障されることである。また、これらのことは国民の当然の権利でもある。
 食品衛生法及びJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)は、食品を扱う事業者が守るべき最低限の規範であるが、この最低限の規範さえ守られず、国民の食に対する信頼が大きく揺らいでいる。
 現行のJAS法では、知事に与えられた権限は、当該地域内のみに施設の存する事業者に対して「表示事項を表示し、又は遵守事項を遵守すべき旨の指示をすることができる」にとどまっており、事業者が指示に従わない場合の措置を命ずる権限は付与されていない。
 これに対して食品衛生法では、食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な措置をとることを命じたり、許可を取り消すなど、厚生労働大臣と同等の権限が知事に付与されている。
 国は、平成14年6月、JAS法を改正して罰則強化などを盛り込むとともに、引き続き「食品の表示制度に関する懇談会」を設置し、JAS法を含む食品表示行政全般についての検討に着手したと聞いている。現在、喫緊に求められているのは、JAS法における権限を大幅に地方自治体に付与し、国と地方自治体とが協力連携しながら、食品表示の適正化を進めることである。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、食品表示に対する国民の信頼を回復し、食品表示の適正化を推進するため、JAS法を次のように改正するよう強く要請する。
1当該都道府県の区域内で発生したJAS法違反行為に対しては、当該事業者の営業範囲にかかわりなく、知事が権限を行使できるようにすること。
2農林水産大臣が行使できる権限と同様の権限を知事にも付与し、事業者が指示に従わない場合には、知事が措置を命ずることができるようにすること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成14年6月26日
東京都議会議長 三田敏哉
衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 農林水産大臣 宛て
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