民主党 馬場裕子
韓国のキム・デジュン大統領は、北朝鮮のキム・ジョンイル総書記とともに南北共同宣言に署名した。台湾の陳水扁総統は、この南北首脳会談を受け、中国の江沢民国家主席に対し、中国と台湾との首脳会談の実現を呼び掛けた。知事は、このような昨今の東アジア情勢についてどのように受け止めているのか、見解を伺う。
知事 非常に好ましい動きだと思うが、国際政治というものは決して善意とかヒューマニズムだけで動くものではなく、あくまでも冷厳なパワーポリティックス、パワーゲームであるということも承知してアジアの動きを見詰めるべきである。東アジアが平和のうちに共存していくことが望ましいと思うが、楽観した新しい事態がアジアに到来するということは、にわかには言えなのではないか。
都市外交には国家間の外交とは異なる独自のスタンスが求められるが、世界における日本、アジアにおける日本の位置を見定め、戦略的視点からこのアジア大都市ネットワークを構想すべきである。
1.知事は、アジア大都市ネットワークについてどのような理念に基づいて取り組むのか伺う。
2.このネットワークへの参加を呼び掛ける都市については、共同提唱都市会議の場で検討されると聞いている。アジア全域を視野に入れ、戦略的な視点から参加を呼び掛ける都市について検討すべき。
知事 1.東アジアは非常に可能性に満ちた発展途上地域であり、経済地域でもある。そういう国々とのかかわりを、その中核をなしている大都市が具体的なアイテムを構えて協力するということは、新しいアジアのアイデンティティーを確立するためにも好ましい。
2.八月末にまず、デリー、クアラルンプール、ソウル、東京の四都市による共同提唱都市首長会議を開催し、さらにそれを広げて、アジアに存在する大都市に声を掛けていこうと思っている。
1.痴呆にかかわる要介護認定については、実際に必要な介護サービスの程度と、判定された要介護度との間にかい離があると指摘されている。痴呆の方の介護をめぐる状況には大変厳しいものがあり、きちんと要介護度を判定することは不可欠である。そのためには、要介護度の適切な認定に向けて国に対して積極的に働きかけていくべきと考えるが。
2.福祉の分野においても、措置から契約という基礎構造改革が進んでおり、これからは医療をはじめ、介護や福祉の分野でも契約制度に基づいたサービスの提供がなされるようになる。将来の社会保障のあり方なども見据えつつ、保健、医療、福祉が連携して都民へのサービスを進めていくことが必要であると考えるが。
知事 2.行政が決定する福祉から、利用者が自ら選択する福祉への転換を実現していく上で、保健、医療、福祉の連携は極めて重要な課題と心得ている。東京都は、社会保障制度改革の動向などを踏まえて、福祉改革ビジョン及び高齢者保健福祉計画を発表した。今後、年内を目途に策定する福祉改革推進プランなどにより、サービスの内容や提供システムを改革するとともに、保健、医療、福祉の連携も図りつつ、都民に満足していただける便利な福祉体制を確立していきたい。
高齢者施策推進室長 1.都内の区市町村については、要介護認定は認定基準に基づき、適切に行われているものと考えている。しかし、痴呆の方の要介護認定が難しいという各方面からの意見があることは聞いており、国に対し痴呆の状態により要介護度を変更する場合の事例集を示すよう提案している。今後とも、認定の実施状況を踏まえ、区市町村と連携し、国に対し必要な働きかけを行っていく。
1.東京都保健医療情報センター「ひまわり」では、電話、ファクスによって保健、医療、福祉の相談、医療機関の案内等を行っている外、夜間・休日診療機関情報等も、音声応答システムによって提供している。この四月からは、インターネットによる医療機関案内も開始されているが、残念ながら都民の認知度は低く、もっとPRをすべきである。しかし、その次に都民が望んでいるのは、どこに医療機関があり、どこなら安心して診てもらえるかという医療機関に関する評価ではないか。このような医療機関に関する評価と情報提供についての見解を伺う。
2.医療機関には安心できる、信頼できることが不可欠である。知事は所信表明で患者中心の医療を掲げたが、患者中心とは大きくかけ離れているのが現状ではないか。このような医療全体の改善に向け、東京都として今後具体的にどのような取組を行うのか。
3.日本の医療では、救命救急医療を担当する医師の不足が指摘されている。この現状をどう認識し、今後どうする考えか見解を伺う。
4.病床規制の弾力的運用を図ることが、医療機関に対する評価制度と相まって、東京の医療を改善していくことにつながると思うが、東京都として国に対してどのような働きかけを行っていくのか。
5.知事は東京ERについて、二年以内に設置すると述べたが、入院を必要としない救急患者、入院・手術を必要とする救急患者、生命危機を伴う重症・重篤救急患者の救急医療を東京ERが引き受けることになっている。
(ア)現状において、都立病院三病院に三六五日二十四時間、救急医療を担当するフルスタッフを確保する展望があるのか。
(イ)将来、全都立病院に拡大することは可能なのか。
衛生局長 1.都民が適切で質の高い医療を安心して受けられるようにするためには、医療機関自らの努力はもちろん、第三者評価を合わせて行うことが必要。医療機関に対する第三者評価としては、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価が行われており、都は民間病院がこの審査を積極的に受けられるよう、財政支援を行うこととしている。今後、こうした取組を通じて得られた情報を都民に提供していくよう、関係機関等と協議していく。
2.医療従事者と患者の十分なコミュニケーションのもと、患者が主体的に選択する医療サービスを提供していくことが重要であると認識している。これまでも、都立病院においてはカルテなどの診療情報の開示やインフォームド・コンセントの推進を図ってきたが、さらに患者の立場に立った医療を提供する姿勢を明確に宣言する患者の権利章典を策定していく。また、衛生局に患者の声相談窓口を設置し、都内の医療機関に対する患者や家族の様々な要望等を今後の病院運営等に反映させていく。
3.都では、三六五日二十四時間対応可能な救急医療体制の整備を進めている。また、救急医療医師研修会の充実や、都立病院における救急専門医の育成、臨床研修医制度の拡充を図るとともに、国に対して医師の養成、研修の充実を提案するなど、引き続き救急医療体制の充実に努めていく。
4.東京都保健医療計画に定める病床数は、医療法に基づき二次保健医療圏ごとに算定することとされている。この制度に関しては必要病床数の算定方法が全国画一的で地域の特性が反映されにくく、機械的な規制になりがちなことなどの問題点が指摘されている。今後、より地域の実情に応じた効率的医療の実現のため、病床数の算定や医療計画の運用における知事の権限の拡大等をし、国に積極的に改善を働きかけていきたい。
5.(ア)今後、医師をはじめとする救急専門スタッフの育成や臨床研修医制度の拡充など、人材確保のための様々な工夫を行いながら、必要なスタッフについて計画的に配置していく。
(イ)今後、設置する都立病院改革懇談会において、地域特性や都立病院の担うべき役割を踏まえ検討していく。
1.本定例会には情報公開条例の一部を改正する条例案が上程されることになっている。これは昨年の第三回定例会において、わが党が東京都公安委員会、警視庁を実施機関に加えるべきと主張したのを受けて提案されるものだが、あれから既に十か月も経過しており、かつ、施行期日が、公布の日から起算して一年三か月を超えない範囲内となっている。速やかな施行が望まれるところだが見解を伺う。
2.地方自治法施行令の規定により、公安委員会には附属機関を設置できないことを理由に、情報公開審査会などに諮問する実施機関から東京都公安委員会、警視庁を除外している。一方、附属機関を設置できるとされていない都議会の情報公開条例では、東京都議会情報公開推進委員会を設置し、あらかじめ学識経験者を指名し、不服審査の際に意見を聞くことにしている。この例と比べると工夫が足りなさ過ぎると思うが。
3.東京都の情報公開条例の趣旨からいえば、審議会等についても原則として公開されるべきである。東京の問題を考える懇談会と、横田基地の民間利用を考える会はどちらも非公開である。情報公開を重視する知事の姿勢と相反するものと考えるが見解を伺う。
政策報道室長 1.警察業務については、全国斉一性を考慮し、国の情報公開制度との均衡を図る必要がある。情報公開法の関係法令が本年二月に公布され、国の制度の詳細が明らかになったことから、直近の時期である今定例会で条例改正を提案した。今回の改正で、公安委員会、警視総監ははじめて条例上の実施機関となり、膨大な既存文書の分類整理や適切に対応するための体制整備、あるいは職員研修などに相当の準備期間が必要となると考えている。これらの要素を勘案し、遅くとも来年一〇月までには施行することにした。
2.第三者機関を置き意見を求めることも、現行法令等に接触するおそれがある。現行の法制度においては、第三者的性格を有する公安委員会が、行政不服審査法に基づいて、条例の趣旨を踏まえ、適正な判断をするものと考えている。
3.これらの会は知事自らが都政運営の参考とするために、適宜会議を開き、各界の有識者から様々な情報やアイデア、提案をいただくもので、審議会のような答申をいただく性格のものとは違う。また、出席者の自由な意見交換を行うために、個人や企業の情報保護にも配慮する必要がある。
1.都庁の経営革新にITを戦略的に活用するためには、各担当組織を情報サイドから総合調整するCIO、最高情報統括責任者を副知事級に設けることも検討する必要がある。全庁的な推進体制の確立を早急に図る必要があると考えるが。
2.全庁的な推進体制のもとで、十三年度以降の情報化推進計画、都庁電子化プランを策定すべき。
総務局長 1.電子都庁を推し進めるためには、仕事の進め方の根本的な改革が必要。そのため、電子都庁の目標を明確にするとともに、全庁的な推進体制を確立したい。
2.都庁の情報通信基盤TAIMSを整備し、これを核とした電子都庁の実現に向け、新たな情報化の推進計画の策定に着手している。本年度内には、電子申請などの具体的なメニューを織り込んだ電子都庁の実施計画を策定する予定。
十一年度の一般会計決算で約九百億円もの赤字が見込まれている。財政の弾力性や健全性を表す経常収支比率が一○○%を超えることは必至であり、引き続き極めて厳しい状況にある。
1.財政再建に向けた重要な局面においては、都民に積極的に情報を公開することによって都民の理解と協力を求めるべきと考える。
二年目の都政運営に臨む知事の、財政再建に向けた決意を伺う。
2.「機能するバランスシート」の中間報告が発表された。この中間報告を受けて、東京都は今後どのように対応するのか伺う。
3.自治体の自主財源を確立するためには、国からの税源委譲が不可欠である。東京都は、既に税制調査会を発足させ、国に対する布陣をしいているが、知事の税源委譲をはじめとした税財政制度の改善の展望と実現に向けた決意は。
知事 1.就任以来、財政再建を都政の最重要課題の一つと位置付け、給与の削減など内部努力を行うと同時に、施策についても聖域なく見直しをしてきたが、今日の厳しい現況を考えれば、この道のりはまだまだ遠いと思っている。
3.財政構造改革を進めるに当たり、地方への税源の委譲など税財政制度の改善は必須の問題だが、肝心な問題が棚上げされている。今後とも私自身も先頭に立ち、東京都税制調査会などを通じて地方自治体を代表した形で、東京だけのためでなく、これからの地方主権時代の地方自治体のために、国に向かって働きかけていきたい。
財務局長 2.バランスシートとともに、キャッシュフロー計算書や行政コスト計算書などの財務諸表に関する貴重な提言があった。今後、今回の提言や最終報告を踏まえ、新たな財務諸表を作成し、財務情報の開示に努めるとともに、財政分析などに役立てていきたい。
今回提案されている副知事の選任については、昨年の臨時都議会以来の懸案事項である。知事は、今回改めて濵渦氏を副知事に提案しているが、濵渦氏にどのような仕事を期待しているのか。また副知事三人体制により、今後どのような都政運営を図ろうとしているのか、見解を伺う。
知事 これまでの経験を生かして、国との連絡調整、監理団体等の改革、産業振興を中心に従来の都庁になかった発想で仕事に取り組んでもらいたい。また、三人の副知事が一体となって私を支え、東京の危機を打開するための明確な方針と具体的な政策を打ち出すことにより、日本の改革につながるような都政運営を行っていきたい。今度から特別職になる教育長は教育プロパーの副知事のような非常に重要なポジションである。教育を含めれば実質的に四人の副知事が誕生し、私を支えていくという形で、行政について万全を期していきたい。