公営企業委員会 管外視察報告

令和8年7月2日(木曜日)から7月3日(金曜日)
委員長 おくもと ゆり(国民民主党)

 公営企業委員会は、交通局、水道局及び下水道局の公営企業3局が実施する各事業を所管しております。

 東京都では、人口減少や施設の老朽化への対応に加え、近年の気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化、脱炭素社会の実現、デジタル技術の進展など、公営企業を取り巻く環境が大きく変化しております。こうした状況下にあっても、将来にわたり安定的かつ持続可能なサービスを提供していくためには、先進的な取組や効率的な施設運営、デジタル技術の活用などについて幅広く調査し、その成果を都政に生かしていくことが重要となっています。

 こうした状況を踏まえ、今回、公営企業委員会では、当委員会が所管する事業の諸課題に関する調査の一環として、福井県における広域水道事業及び下水道事業の取組並びに石川県小松市における公共交通施策の取組について調査を行うため、7月2日から2日間にわたり現地視察を実施いたしました。

 以下、その概要について、ご報告いたします。

日野川地区水道用水供給事業現地(福井県)

浄水施設及び中央監視設備を視察 膜ろ過方式の採用の理由、課題などについて質疑

 1日目は、初めに、福井県越前市にある日野川地区水道用水供給事業現地を訪問し、事業概要及び浄水施設について説明を聴取しました。

 同事業は、桝谷ダムの放流水を日野川から取水し、越前市大塩町の浄水場で、セラミック膜を使用して浄水処理した良質な水道水を、日野川流域3市2町に安定供給することにより、住民の生活を支えています。また、屋内型浄水場を採用することで、浄水処理設備の保護や維持管理の効率化を図っています。

 現地では、同事業の経緯、膜ろ過注釈)方式の採用、水処理の流れ等について説明を受けるとともに、浄水施設及び中央監視設備を視察しました。

注釈:膜ろ過とは、「目に見えない無数の孔の空いたろ材を用いて、水中に含まれる不純物を強制的にこしとる」という、ろ過技術の一つ

 説明聴取の後、委員からは、膜ろ過方式の採用の理由、水質・財政・老朽化等の課題などについて、質疑が行われました。

 膜ろ過方式については、コスト、維持管理性、耐久性などを含め判断して採用されたこと、財政面では、将来の収入を見越して収支計画を立てているものの、今後、老朽化に伴う送水管更新や契約相手である市町からの要請により、料金を見直す可能性があること、また、物価高で更新工事のコストが上がる可能性があることや、技術者不足が懸念されていることなどを確認しました。

 このほか、職員数や委託先の体制、公営企業としての事業運営の仕組み、天日乾燥床における降雨時の対応についても質疑が行われました。

 東京都は、水道水の安全性はもとより、衛生面における信頼性の向上を図るとともに、火山噴火の脅威に備えるため、浄水場の更新等に併せて浄水施設の屋内化を進めておりますが、今回、屋内型浄水場を視察することで、整備の背景や意義を把握し、将来を見据えた施設整備の考え方について理解を深めることができました。

テクノポート福井浄化センター(福井県)

テクノポート福井浄化センターを訪問 下水処理事業ついて説明を聴取

 次に、福井県坂井市にあるテクノポート福井浄化センターを訪問し、下水処理事業の概要及び施設運営について説明を聴取しました。

 同センターは、テクノポート福井内の各工場等から出された汚水を浄化することにより、公共用水域の水質の保全を担う重要な施設であり、生活環境の向上に大きく寄与しています。同センターに集められる下水は、工場排水であることから、難分解性COD(微生物だけでは分解しにくい)や色の問題があること、また、処理場からの放流先が日本海となることから、放流水質に厳しい基準があること等に対処するため、通常の下水処理施設に加え、公共下水道としては日本で初めて高度処理設備(凝集沈殿設備、高速ろ過設備、活性炭吸着設備)を採用しています。

 現地では、下水処理の工程や施設の運転管理状況について説明を受けた後、水処理施設を視察しました。

 説明聴取の後、委員からは、工業団地に立地する工場の業種、 汚泥の活用、工場排水の処理に限定した経緯などについて、質疑が行われました。

 工場の業種については、化粧品関係の工場や半導体などの原料を扱う工場が多いこと、汚泥については、バイオガス発電を試みたが、現在はセメントの材料として活用していること、また、工場排水の処理に限定した経緯については、工場を誘致するために工場排水を処理するための処理場を設置したことなどを確認しました。

 このほか、処理費用の負担、更なる工場誘致の可能性、工場からの排水基準への対応、公害の問題の有無などについても質疑が行われました。

 同センターでは、工業団地から排出される排水を適切に処理し、公共用水域の水質保全を図っており、また、施設内では沈殿や生物処理などの工程を経て水質基準を満たした上で放流しており、運転管理や水質監視が継続的に実施されていました。特に、工業団地内の多様な業種に対応するため、排水性状の変化を踏まえた管理体制が構築されている点が印象的でした。

小松市自動運転バス事業(石川県小松市)

小松市自動運転バス

 2日目は、石川県小松市を訪問し、自動運転バス事業の取組について説明を聴取するとともに、自動運転バスの走行ルートの現地視察を行いました。

 小松市では、地域公共交通の維持・確保や運転手不足への対応を目的として、自動運転技術を活用した自動運転バスの取組を進めています。自動運転バスは、令和6年3月9日から、小松駅と小松空港を結ぶルートにおいて、自動運転レベル2(運転手が乗車し、状況に応じて手動運転)での通年運行がされており、令和9年度を目途に、レベル4(特定条件下で完全自動運転)での運行を目指しています。

 現地では、地域を取り巻く変化と課題、実現させたい地域像、自動運転バスの走行環境等について説明を受けました。

 説明聴取の後、実際に自動運転バスを見学しながら、車両や搭載されている機器について、活発な意見交換が行われました。今回、令和8年5月13日に発生した縁石との接触事故に伴い、自動運転による運行は一時的に休止し、事故の原因究明、安全性の確認等に取り組まれている中での視察となりましたが、自動運転バスの見学だけでなく、小松市職員の方々に説明いただきながら、走行ルートを巡ることもできました。

小松駅と小松空港を結ぶ自動運転バスの走行ルート
自動運転バスの走行ルート(小松市ウェブサイトより引用)

 走行ルートの現地視察の後、委員からは、自動運転バスの有償運行に至るプロセス、自動運転バスの機器で使う電力の供給方法、ダイヤ設定の考え方、現在の路線以外への展開予定などについて、質疑が行われました。

 有償運行については、既存の営業路線の代替で走る路線であるため、初めから有償運行を前提に取組を始めたこと、電力については、車両のバッテリーから供給しているのでEVバスと親和性があること、ダイヤについては、新幹線と飛行機の発着時刻等を考慮して設定していること、また、他の路線への展開については、費用、関係者との協議、現場での調整等、様々な課題があることなどを確認しました。

 そのほか、レベル4での実施に向けたプロセス、利用者の年齢層、高齢者が利用する際の課題などについても質疑が行われました。

 自動運転バスは、小松駅と小松空港を結ぶルートで運行されており、地域住民のみならず来訪者の利便性向上にも資する取組となっています。今回の視察では、車両に搭載されたセンサーやカメラ等について説明を受けるとともに、実際の走行ルートを確認しながら、交差点や歩行者、自転車への対応など、自動運転技術について理解を深めることができ、大変有意義なものとなりました。

自動運転バスを見学 自動運転バス事業について説明聴取

 以上、2日間という限られた日程ではありましたが、水道事業及び下水道事業における持続可能な施設運営の取組や、自動運転技術を活用した先進的な公共交通施策について現地で直接説明を受け、多くの示唆を得ることができました。

 今回の視察を通じて得られた知見につきましては、今後の委員会活動を通じて、都営交通、水道事業及び下水道事業の発展に役立ててまいります。

 最後になりますが、福井県日野川地区水道管理事務所、テクノポート福井浄化センター及び石川県小松市の関係者の皆様方には、お忙しい中、懇切丁寧に対応していただきましたことに、心から感謝と御礼を申し上げます。