平成16年10月7日(木曜日)
○議長(内田茂君) 追加日程第三、東京の将来像を展望し、社会・経済情勢の変化に柔軟に対応する都政を実現するための行財政改革の基本的事項についての調査・検討を議題といたします。
本件に関する委員会の報告書は、お手元に配布いたしてあります。
朗読は省略いたします。
○議長(内田茂君) 本件に関し、行財政改革基本問題特別委員長より報告を求めます。
行財政改革基本問題特別委員長山本賢太郎君。
〔九十三番山本賢太郎君登壇〕
○九十三番(山本賢太郎君) 先ほど来、話題に上がりました行財政改革基本問題特別委員会における調査の結果について、委員会を代表いたしまして、その概要をご報告申し上げます。
本委員会は、第十五期都議会議員による行財政改革基本問題特別委員会の調査検討結果の中間報告を踏まえて、東京の将来像を展望し、社会経済情勢の変化に柔軟に対応する都政を実現するため、行財政改革の基本的事項について調査・検討することを目的として、平成十三年十月五日、第三回定例会において設置されたものであります。
東京は、地方分権の推進、青少年問題の深刻化、本格的な少子高齢社会の到来などさまざまな課題を抱えております。都政はこうした課題を解決し、活力のある東京づくり、新たな都民のニーズに柔軟に対応する必要に迫られております。このため、都政の簡素効率化を目指すことはもとより、首都圏全体を視野に入れ、自治制度の根本にさかのぼり、中長期的な視点から行財政改革を行っていかなければなりません。
本委員会が当初から念頭に置きましたことは、本来、行政改革とは、まず都政百年の計とでもいうべき二十一世紀のグランドデザインを描くことを出発点として取り組まれるべきものであるということであります。限られた期間でありましたが、さまざまな角度から、都政のあるべき姿、都政の果たすべき役割等について精力的に調査検討をしてまいりました。
初めに、第十五期における中間報告と都が進めてきた行財政改革の実績について検証を行うため、東京都及び首都圏における地方自治の課題、問題等について理事者から報告を受け、各会派の基本的な考え方を確認いたしました。
続いて、第二十七次地方制度調査会、地方分権改革推進会議について、また、政令指定都市、中核市、特例市の比較、大都市制度や特別区制度の沿革、海外都市における自治制度等の事例について報告を受け、これらの時代に即応した新しい自治制度のあり方について質疑を交わしてまいりました。
次に、これまでの議論を踏まえ、自治制度改革の必要性、行政の役割分担、首都圏における広域自治体のあり方、大都市行政など自治制度改革の論点整理を行い、これに基づき、今後の大都市自治体のあり方、今後の首都圏における広域自治体と基礎自治体のあり方、及び新しい時代にふさわしい税財源のあり方について、それぞれ議論をしてまいりました。
こうした質疑とともに、六名の参考人から専門的な見地から意見を聴取いたしました。
その後、今までの質疑を踏まえて、新しい自治制度の方向性について質疑を交わしました。
この間、委員会は二十七回、理事会二十三回を開き、毎回熱心な議論によって導かれた到達点として、今後の行財政改革の方向性について都議会としての考え方を示すことにより、去る九月二十二日をもって調査を終了したわけであります。
これらの内容につきましては調査報告書として取りまとめ、お手元に配布してございますので、私からは、今後の行財政改革の方向性について簡略にご報告いたします。
まず第一に、地方自治制度改革の必要性についてであります。
地方自治法施行後六十年近くが経過し、社会実態は大きく変化をしております。特に大都市は、急速にその規模を拡大してきました。一方、地方自治制度そのものは、依然として国主導の中央集権的な性格を残したまま今日に及んでおります。都市の時代において東京は世界の都市間競争に打ち勝つ必要があり、また、自治体がみずからの課題に十分対応できるよう地方分権を推進し、速やかに自治制度改革を行うべきであります。
第二に、国と自治体の新しいあり方についてであります。
国と地方をめぐる問題として、平成十二年の地方分権一括法施行により地方の自主性は拡大してきましたが、現実には法定受託事務の存在や不十分な税源配分など国の強い関与があり、地方の自主性が発揮しにくい状況にあります。自治体がみずからの財源と責任により自主、自立的な行財政運営を行い、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現することが地方自治体のあるべき姿であります。国の事務は本来行うべき役割に限定し、地方の事務は自治体が担い、税源移譲により自主財源で賄うことや、国庫補助負担金は原則廃止し、地方交付税は本来の機能に純化すべきであることなどご指摘がありました。
さらに、広域自治体と基礎自治体については、住民に身近な自治体である市町村は地域の総合行政の担い手として、また、広域自治体である都道府県は市町村間の総合調整機能をより一層強化していくことが求められており、国からの権限移譲の受け皿となり、今後、その役割はますます重要性を増していくことなどを指摘したのであります。
第三に、大都市行政の充実強化についてであります。
東京都という制度は、広域自治体である都が基礎自治体である特別区の事務の一部を担うところに、その特徴がございます。区という狭隘な地域に約八百万人の人口が集積し、複数の基礎自治体が大都市を形成するという大都市東京の実態に即して、行政の一体性を確保するためには、都制度は大きな役割を果たしてきたとの認識に立ち、都区制度改革の状況と都の果たすべき役割、特別区の統合再編、都区財政調整制度のあり方などについて、その方向性を指摘してまいりました。
現在の特別区の行政区域は、昭和二十二年以来、変更なく現在に至っておりますが、区域は、住民自治の実現とともに、社会実態に即した大都市地域としての一体的経営の観点から見て適当かどうかが重要であります。特別区の統合再編は、あくまでも住民意思を尊重し、区みずからが自主的、主体的に取り組む問題でありますが、大都市行政の総合性、一体性の確保と住民自治の両立を実現する観点に立ち、都制度を前提とした上で、大都市の実態に即した合理的な行政区域を検討していく必要があります。
第四に、首都圏全体を見据えた広域行政のあり方についてであります。
東京を中心とする首都圏は、交通混雑、環境汚染、治安悪化など大都市特有の課題が山積し、都市の魅力と活力を著しく損なっております。こうした広域的課題の深刻化と自治体間連携の問題、八都県市首脳会議における取り組み状況、広域行政にかかわる制度などについて、その方向性を指摘いたしました。
広域的課題の解決に向けた取り組みのあり方については、これまでそれぞれの行政区域において発展してきたという意味での行政都市の分立状態から、今後は都市間連携を大いに進める必要があります。また、八都県市首脳会議においては事務局の常設化など、さらなる連携強化が必要であります。さらに、都県レベルで広域連合制度を活用して、広域行政を総合的、機動的に展開するためには多くの課題があること、道州制は、首都圏においては、実効性及び住民意識の面から見ていまだ時期尚早であるということなど指摘がございます。
以上の委員会調査結果に対し、今後の行財政改革の方向性について、現在の都の方針に追随するものであり、認められないこと、委員会質疑における各会派の主張を客観的に反映させた内容とすべきとの一会派の反対意見が述べられたことを付言いたします。
続いて、本委員会の成果と今後の取り組みについて申し上げます。
本委員会は、第十五期の前委員会から通算いたしますと七年の長きにわたり、さまざまな角度から全力を傾注し調査検討してまいりました。この結果、執行機関に対し、今後目指すべき東京の将来像とその実現に向けた道筋や、都庁の行財政システム全般にわたり原点に立ち返った見直しによる新しい行政像を示すなど、一定の方向性を示すことができました。
しかしなお、時代の潮流や都政の置かれている現状を見ますと、行財政改革が都の最も重要な政策課題であるということはいうまでもありません。都民本位の行財政運営を確保するため、理事者におかれましては、本委員会の調査検討結果を踏まえ、庁内の推進体制を整えるとともに、行財政全般にわたる新たな改革の大綱を早急に策定されますことを強く希望いたします。
終わりに、これまで本委員会に携わってこられた歴代委員長、副委員長、理事及び委員の皆様の行財政改革に対する熱意とご努力に対し、また、知事を初めとする執行機関及び関係各位のご協力に対し深く感謝申し上げ、行財政改革基本問題特別委員会の調査報告とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○議長(内田茂君) 以上をもって行財政改革基本問題特別委員長の報告は終わりました。
本件は、起立により採決いたします。
行財政改革の基本的事項についての調査・検討については、委員会の報告のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(内田茂君) 起立多数と認めます。よって、本件は、委員会の報告のとおり決定いたしました。
○議長(内田茂君) 次に、行財政改革基本問題特別委員会の調査の終了について、起立により採決いたします。
本件に関する調査は、これをもって終了することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(内田茂君) 起立多数と認めます。よって、本件に関する調査は、これをもって終了することに決定いたしました。
(見出し等は編集部) |