平成14年第4回定例会一般質問
伊沢けい子(無(市民の党))
去る十月二十九日、東京大気汚染公害訴訟の判決が出され、この結果について東京都は、控訴はしないものの、内容には承服できないとしております。その理由として、第一に、国の自動車排出ガスの規制責任がないとしていること、そして第二に、道路が公害の発生源としているが、道路整備は大気汚染の解決のためにむしろ必要であるということを理由として挙げております。
第一の、国が排ガスの規制責任を怠ってきたという点については、私も同意をいたしますが、第二の、三環状線の道路整備が、今後も大気汚染の解決のために必要であるという点については同意できませんので、この点を中心に質問をさせていただきます。
〔1〕 都内では、自動車の走行量は年々ふえ続け、例えば、一九八八年から一九九九年の十数年の間に、年間約五百万台キロも走行量がふえております。その中で問題となっているディーゼル車を含む普通貨物車の走行量は、百四十五万台キロと増加しております。これだけの車が都心に集まってくること自体を解決していくことが必要ではないでしょうか。渋滞を解消するためという理由で、国も都も、どんどん道路建設を進めてきた結果、このような過度の東京への一極集中をもたらしたという認識はありますでしょうか。
むしろ、こうした東京への一極集中をなくしていくための政策こそ必要ではないでしょうか。外郭環状道路を初め三環状線の建設は、さらに車を都内に呼び込み、さらに車の通行量が増加して、ひいては大気汚染をさらに悪化させるということにつながると思いますが、見解をお伺いいたします。
〔2〕 本当に今必要なことは、ことし一月、環境局が出した東京都環境基本計画の中でも、東京に青空を取り戻すために、大気汚染の改善を第一に掲げており、その中で、ディーゼル車などの排ガスの単体規制や、自動車の性能をよくすることと並んで、自動車への依存を減らす都市づくりを挙げていますが、まさにこの点にあると思います。ここで述べられていることは、自動車交通量の増加を放置していては、さまざまな施策を実施しても、十分な都市環境の改善を図れないということです。
その中でも、トラックの走行量を減らすためにも、物流対策が必要です。都は、この中で、トラックから海運や鉄道への輸送へ転換をしていくことが必要としていますが、これは現在どのように取り組んでいますでしょうか。また、この方向で政策を進めていくということは、今後どのようにお考えでしょうか。
〔3〕 都内のぜんそく患者の数は年々ふえ続けており、大体この十年の間にも、都内で四万五千人増加をしています。都では、このことは何が原因で起こっていると考えていますでしょうか。
〔4〕 現在も排ガスに含まれる二酸化窒素や浮遊粒子状物質については、ずっと減少しておりません。昨年のデータでも、道路の沿道で都内各地で行った調査で、環境基準に達していたのは、二酸化窒素で三二%、浮遊粒子状物質ではゼロ%、つまり、一カ所も達成していなかったということになっています。このこととぜんそく患者が都内でふえ続けていることとの因果関係については、いかがお考えでしょうか。
都市計画局長 〔1〕 自動車排出ガスによる大気汚染の根本的な責任は、国の自動車排出ガス規制の怠慢にあるわけでございます。
一方、三環状道路についてでございますが、首都圏の渋滞解消と環境改善のためには、道路ネットワークの構築が必要であると考えております。特に、外環を初めとする三環状道路を整備することによる自動車走行速度の向上によって、時間短縮効果といった直接効果や、経済活動への波及効果だけでなく、二酸化炭素、浮遊粒子状物質等の減少による環境改善などの外部不経済解消効果が期待できます。
いずれにいたしましても、三環状道路は必要不可欠でありまして、今後とも整備促進に努めてまいります。
環境局長 〔2〕 今日の深刻な大気汚染をもたらした最大の要因は、国の自動車排ガス規制の怠慢にあると改めて明確にしておきたいと思います。
そこで、東京都は、一刻も早く大気汚染の改善を図るため、現在も使用されている車を含めて、排ガス規制を徹底することとの認識で、来年十月からのディーゼル車走行規制に向けて、今、全力を挙げて取り組んでいるところであります。
同時に、これらの単体規制とあわせて物流対策を推進するなど、自動車の走行量を抑制することも重要であると考えております。このため、現在、関係局で物流関係庁内連絡協議会を設置し、この中でトラック輸送の船舶や鉄道輸送へ転換する、いわゆるモーダルシフトについても検討しております。
最近では、民間において、宅配便や電気製品等の輸送をトラックから鉄道等に転換する動きも生じております。大量輸送が可能な海上輸送等へモーダルシフトしていくことは、自動車走行量の抑制につながり、大気汚染の改善と地球温暖化防止を図る上でも有効であると思いますので、さまざまな課題はありますが、今後とも関係局と連携をして推進してまいります。
健康局長 〔3〕 現在の知見では、原因を特定することは困難であります。しかし、ダニやカビ、花粉などのアレルゲン物質や、食事、大気汚染等のさまざまな要因が重複し合い、発症ないしは増悪することが知られておりまして、生活環境や生活様式、食生活の変化等が複雑に関係しているものと思われます。
〔4〕 大気汚染の健康への影響については、これまで都としてもさまざまな調査研究を行ってきております。それらの結果から、浮遊粒子状物質あるいは窒素酸化物が都民の健康に影響を与えていることが示唆されております。
なお、さきの東京大気汚染公害訴訟一審判決では、一般的因果関係が認められ、都は、これを受けて控訴しないことといたしました。
〔1〕 去る十月に都が発表した統計によりますと、東京都の出生率は一・〇一人と、全国の平均の一・三三人を下回って、全国で最低の率となり、また、昨年の出生率も下回る結果となってしまいました。
行政が子育て支援に全力で取り組まない限り、この少子化に歯どめはかかりません。特に、この長引く不況の中、リストラもふえていることなどから、働きに出る女性も急速に増加しています。保育所、そして、その延長にある学童保育のニーズが年々高まっております。
多摩地域では、毎年入所する児童数が、ここのところ千人ずつふえています。また、都内の昨年の学童保育の待機児数は一千五百三十四人、ことしは一千六百二人となっています。そして、施設の入所定員を大幅に超えて、とにかく受け入れる、定員オーバーの人数も、ことし、二十三区では合計実に二千六百二十二人を数えております。
その上、潜在的には、もっとニーズがあると聞いております。例えば、市町村によっては、夫婦ともにフルタイムで勤務していないと、学童クラブに申請する資格がないところもあり、こういう場合はパートに出ている家庭は、ニーズがあっても、この数にはあらわれておりません。また、余りに定員を超えて多くの子どもを受け入れているところでは、一年生はともかく、上の学年に上がるときに、申請すること自体を控えている親もあるそうです。
このように待機児がふえ、定員オーバーの学童クラブが増加している中で、都としては、学童クラブ事業を充実していくことが必要だと思いますが、学童クラブ事業に対する都の考え方をお伺いいたします。
〔2〕 待機児童がふえ、定員を超えて受け入れていることについて、都はどう認識していますでしょうか。
〔3〕 待機児童をなくし、必要とするすべての都民が利用できるようにすべきと思いますが、学校の空き教室を活用したり、空き教室がない場合には、施設の新設も行うべきと思いますが、都は、現在、待機児童の解消にどう取り組んでいますでしょうか。
福祉局長 〔1〕 子育てと仕事を両立したいという都民ニーズに的確にこたえ、子どもの健全な育成を図る観点から、学童クラブは重要な役割を担っております。都は、こうした考えに基づき、これまで一小学校区に
一カ所を目安として学童クラブの設置促進に努めてまいりました。その結果、本年三月末現在の設置状況は千二百六十二カ所となっており、公立小学校数に対する設置率は九二%で、全国一の設置率でございます。
〔2〕 学童クラブは、厳格な定員などの定めがなく、区市町村によっては、希望しても利用できない子どもがいる一方、定員を超えて受け入れているなど、さまざまな実態がございます。これは事業の実施主体であります区市町村が、それぞれの判断で自主的に運営している結果であると認識をしております。
〔3〕 都は、既に区市町村が余裕教室の利用も含めて学童クラブの設置や改修ができるよう、包括補助制度などを活用して支援を行っております。
また、事業の運営に対しては、国の補助制度に加え、独自の加算を行うとともに、今年度からは、過疎地に限定していた二十人未満の小規模学童クラブのすべてを補助対象に加えるなど、従来から施設整備及び事業運営の両面での事業の充実に努めてきております。