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第4回定例会・知事所信表明(要旨)

知事  石原 慎太郎


    1 新しい首都像の構築
    2 新しい時代に適合した制度の構築
    3 来年度の都政の骨格の形成
    4 政策の苗の着実な育成
    5 21世紀最初の1年を振り返って

 平成13年第4回都議会定例会の開会に当たり、都政運営に対する所信を申し述べ、都議会並びに都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。

 12月1日、めでたく内親王殿下がご誕生されました。首都東京の知事として、都民とともに心からお慶び申し上げます。

 一方、名誉都民であるマイケル・ジョセフ・マンスフィールドさんが10月5日に、金子   
亭さんが11月5日に逝去されました。心よりご冥福をお祈りします。

 先般の職員の不祥事にて都政全体の信頼を低下させたことは、誠に遺憾であり、陳謝申し上げ、信頼の回復に全力を尽くします。


1 新しい首都像の構築

(連携の重要性の高まり)
 七都県市により構成される首都圏は、わが国の発展に大きな役割を果たしてきましたが、現在は、活力や魅力が大きく薄らいでいます。
 このままでは、首都圏は、世界の中で競争力を失うため、首都圏の再生は一刻の猶予もならない課題となっています。
 その際の国の役割は、環状道路のような巨大事業を遂行することなどが求められます。

(環境を守るための実りある連携)
 ディーゼル車は、環境に高い負荷をかけており、低公害車の普及促進など、七都県市の連携した取組が不可欠です。
 また、七都県市は、産業廃棄物に関し、不法投棄の増大などの問題に対し、処理施設の整備などを実現し、発生の抑制に取り組む必要があり、共同して事業を実施したいと考えています。

(総合的な危機管理体制の強化)
 大地震や、テロのような人為災害に対しては、十全の備えを講じる必要があります。
 アメリカには、州政府の手に負えない緊急事態に対処する組織として、連邦危機管理庁FEMAが設置されており、首都圏も首都圏版のFEMAを立ち上げ、有機的な連携体制を確立する必要があります。
 危機に対する備えとして実施した図上訓練は、指揮官の判断力を養い、相互のネットワークを強化する上で、非常に有意義なものでした。
 先月開催された七都県市首脳会議では、こうした分野で、事業の共同実施などを提案し、理解が深まったと思います。

(首都移転への徹底した反対)
 首都移転の断固反対へ向け東京都は、移転費用などについて検証しました。その結果、行政機関がすべて移転し、人口56万人の都市が形成された場合に、国が12兆3,000億円と試算している移転費用は、20兆円超に膨らむことなどが明らかになりました。しかし、国会は相変わらず抽象的な議論に終始しており、具体的な首都のイメージは伝わってきません。
 今、我々が首都移転の不当性を訴え、移転計画を白紙撤回させることが、国民に対する政治家の責務です。都議会のご支援をお願いします。

(首都圏の再生に向けた都市基盤の整備)
 アジアの大都市で巨大な空港が次々と開港する中、国際競争力の向上に直結する羽田空港の国際化は、再拡張を待つことなく実施すべき課題であり、早急に本格的な国際ターミナルを整備し、国際化を実現することを国に要求します。
 横田飛行場では、滑走路の大規模な改修工事が同時多発テロ以降も継続されたままであり、戦略上の比重は極めて低いことが明らかになりました。東京都は、現地の最高責任者である司令官と直接対話をし、意見交換を重ねます。
 慢性的な交通渋滞解消も、首都圏の課題であり、連続立体交差事業などで早く解消出来るよう、今後とも、着実に事業を推進します。


2 新しい時代に適合した制度の構築

(観光振興の新たな財源)
 観光での日本の国際旅行収支は、年間で3兆5,000億円もの赤字となっています。
 はじめての法定外目的税として提案している宿泊税は、東京の観光振興に必要な財源を確保するため、ホテル等の宿泊客を対象に課税するものであり、大衆課税となることのないよう配慮したつもりです。この財源を活用して、内外からの訪問客の増加につなげていきたいと考えています。

(公金管理の刷新)
 ペイオフが解禁となる来年の4月が、間近に迫ってきました。これからは、公金管理の失敗が、財政破綻を招きかねない時代となります。
 東京都は、自らの責任の下、安全な公金管理を実施するため、金融機関の選択基準などペイオフ解禁後の公金管理のあり方について、専門家の意見を聞きながら、公金を適切に管理したいと思います。
(計画段階からのアセスメントの導入)
 環境影響評価、すなわちアセスメントも東京が先行している分野です。
 現在、東京都は、条例に基づきアセスメントを実施していますが、計画の抜本的な見直しが難しく、改善を求める声が寄せられています。
 今後、現制度との整合を図り、課題を整理し、来年、条例改正を提案したいと考えています。


3 来年度の都政の骨格の形成

(逆風の中での予算編成)
 地方交付税の不交付団体である東京都は、都税収入の動向が、予算編成を左右する重要な要素となります。しかし、景気は悪化を続け、都税収入は、大幅な減少が避けられません。
 この状況を踏まえ、来年度予算の編成に当たっては、これまで以上に歳出額を抑制することを基本に据えます。財政再建に向けた決意を示すため、特別職と管理職については、給与削減措置を来年度も継続します。

(重要施策の策定)
 予算編成に先立ち、このたび策定した平成14年度の重要施策は、限りある予算や人員を優先的に措置する施策を選定したものです。
 個別事業の選定に当たっては、新規事業や「東京構想2000」で掲げた3か年の推進プランを中心に精査を重ねました。来年度は、重要施策を通して、首都圏の再生に取り組みます。


4 政策の苗の着実な育成

(安心、安全な生活基盤の構築)
 世論調査などを見ると、防犯対策の充実を求める声は、急激に高まっています。実際、刑法犯は、過去最高の認知件数となりながら、検挙率、検挙件数は、最低の水準に留まりました。
 絶対数が不足している留置場の拡充は、治安維持の基礎となるものであり、早急な対応が求められています。日本社会事業大学の跡地に、オフィスビル、警察署などと一体的に、相当の規模の留置場を整備したいと考えています。東京都としての原案がまとまった段階で、関係者には説明したいと思います。都民の安全を守るため、ご理解を是非ともお願いします。
 社会状況が大きく変化し、消費者の価値観や行動が多様化する中で、新しい形態である電子商取引についても、トラブルの急増を招いており、次の定例会を目途に消費生活条例を改正したいと考えています。
 失業率悪化については、いわゆるフリーターの就業支援を含め、緊急雇用対策を充実していきます。

(医療改革の実践)
 昨年から着手した医療改革、東京ERは、誰もが、何時でも、安心して救急診療を利用出来るよう、整備を進めてきたもので、先月28日、墨東病院で最初の業務を開始しました。来年度は、広尾病院と府中病院にERを広げ、救急診療体制を充実します。
 都立病院では、民間企業の経営管理手法を取り入れるなど、医療従事者の意識改革を進めています。都立病院に関わる一連の改革については、年内に策定予定の「都立病院改革マスタープラン」にて、具体的な姿を明らかにします。

(福祉改革の次なる展開)
 東京は、大規模施設への措置から、地域での自立と暮らしを支える福祉へと、施策の中心を転換すべき時期を迎えています。
 急激に増加する高齢者には、住み慣れた地域で、継続して生活出来る場を提供することが重要であり、重点的に増強したいと考えています。
 こうした取組を通じて「福祉改革推進プラン」を発展させ、新しい福祉の実現に向けた道筋を示していきたいと思います。

(大学改革の実行)
 国家を動かす次の時代を担う若者から情熱やエネルギーを感じることが、めっきり少なくなりました。その主たる原因は、個人が持つ才能を押し潰す教育しか出来なかった国にあります。
 先月策定した「大学改革大綱」は、新しい大学の役割や目指すべき大学像を示したものです。
 大学改革は、ようやくスタートラインに立つことが出来ました。引き続き、有識者の意見を聞き、都立の大学を一新したいと思います。

(住宅政策の抜本的転換)
 首都にふさわしい住宅の質の確保のため、現在策定中の「住宅マスタープラン」では、都営住宅の建設、管理を中心とする従来の政策を大幅に転換し、総合的な居住政策を推進することを目指し、計画を策定したいと考えています。

(ディーゼル車規制の大きな前進)
 ディーゼル車に関しては、七都県市への提案以外にも、新しい対策を間断なく進めています。
 ディーゼル車の排気ガスを軽減するには、車両本体の改良とともに、良質の軽油を使用することが不可欠です。このたび、石油連盟の対応により平成15年4月から都内のほとんどのガソリンスタンドで低硫黄軽油が供給されるため、ディーゼル車対策は、大きく前進します。
 軽油抜き取り調査をきっかけに、不正軽油の密造、販売グループが明らかになりました。こうした取組を通じ、流通する軽油の質が向上し、大気汚染が改善に向かうと考えています。


5 21世紀最初の1年を振り返って

 21世紀最初の年も実に多くの事件に接し、実に様々なことを考えさせられた1年でした。
 この夏に起きた歴史を巡るいくつかの事件は、戦後、日本が主権国家としての強固な意志を未だに持ち得ていない実態を露呈しました。
 今年の後半でのアメリカ同時多発テロは、世界の秩序を一変させかねない事件でした。しかし、国会は、従来の枠組みを守ることだけに拘泥し、本質を見失っていました。
 狂牛病の問題では、国の対応が遅れたため、混乱が、今なお続いています。
 東京が果たすべき責務は、日本の首都として、今後進むべき道を切り拓き、国家存亡の危機を乗り越える牽引役となることです。都議会の皆様と力を合わせ、新しい国のかたちを東京から発信していきたいと思います。
 以上をもちまして、所信表明を終わります。

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