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第3回定例会・知事所信表明(要旨)

知事  石原 慎太郎


    1 テロへの強い憤り
    2 文明の転換期を迎えて
    3 都政運営の基本姿勢
    4 首都東京の安全の確保
    5 首都圏再生の強力な推進
    6 道半ばの財政再建
    7 都政の重要課題への対応
    8 千客万来の世界都市を目指して
    9 名誉都民の選考

 平成13年第3回都議会定例会の開会に当たり、都政運営に対する所信を申し述べ、都議会並びに都民の皆様のご理解を得たいと思います。


1 テロへの強い憤り

 今月11日、アメリカのニューヨークとワシントンを襲った同時多発テロは、最悪の惨事であり、全世界が悲しみに沈み、犯人への怒りは国境を超えた共通の思いとなりました。
 私は、ワシントンで事件に遭遇し、多くの人命が奪われた惨状を体験し、教訓を得ました。
 我々は、テロを許さず、その根絶に力を合わせる必要があります。姉妹都市ニューヨークには、出来る限りの支援を行いたいと思います。
 亡くなった方々にご冥福をお祈りいたします。
 一方、東京では、今月1日、新宿歌舞伎町のビルで火災が発生し、44名の方が命を失いました。亡くなった方々にご冥福をお祈りします。
 7月20日には、原優介君が、多摩川で溺れている友人を救おうとして命を落としました。
 勇気ある行為が、無念の結果をもたらしたことは、痛ましい限りで、ご冥福をお祈りします。


2 文明の転換期を迎えて

(危機の根底に流れる国家と国民の変質)
 時代の変遷とともに、社会の規律を形成していた、わが国固有の価値の基軸が消えようとしています。かつての日本人は責任感や克己心などを当然の気風として備えていましたが、いつしか、非常に刹那的な行動ばかりが目立つようになりました。こうした状況が重層的に重なり、わが国は、戦後最悪の危機に直面しています。

(存在をかけた取組)
 我々は、このような事態を率直に受け止め、その上で進むべき道を選択する必要があります。
 誰もがこの状況を正しく理解すれば、我慢することの必要性が共通の認識として浸透し、節度をわきまえた社会が実現出来ると思います。
 私は、失われた価値の基軸を回復し、社会の安定を取り戻すため、率先して行動します。


3 都政運営の基本姿勢

(日本再生につながる東京再生の実現)
 以上のような時代認識の下、更に次の2点を加えて都政運営を進めていきます。
 第1は、日本の再生につながる東京の再生を実現することです。
 今、国の成長を支えた都市が病んでいます。東京も深刻な問題を抱えています。そこで東京は、国に先んじて行動することで都市再生の範を示したいと思います。

(都庁の本質の改革)
 第2は、都庁の本質を変えることです。
 これまでの官公庁は一般社会とは別の価値観を持っていたため、時代から1歩も2歩も取り残された存在となっており、私はこの2年間、職員の意識改革を主眼に、改革を進めました。
 今後職員には、政策の成果を目に見える形で都民に還元することを厳しく求めてまいります。


4 首都東京の安全の確保

(危機管理の強化)
 アメリカでさえテロを防げなかった中、わが国の危機管理は、寒心に堪えないと言わざるを得ず、平和や安全は我々が命がけで守る対象であることを認識する必要があり、そのため東京の危機管理能力の向上へ向け、首都機能のバックアップ体制の確立など取組を進めていきます。

(都民の安心と安全の確保)
 最近の東京では特に治安の悪化が深刻であり、ハイテク犯罪など目に余る事態となっており、留置場を増設するよう検討を進めています。

(防災対策の充実)
 昨年発生した三宅島噴火では、一昨日、一時帰宅を開始しました。1日も早く島民が帰島出来るよう、復旧作業を本格的に進めます。
 また、大地震への日頃の備えのため、防災訓練の充実に取り組んでいます。
 今月1日、実施した総合防災訓練「ビッグレスキュー東京2001」では、米軍の横田飛行場と赤坂プレスセンターを全国ではじめて防災訓練に使用出来ました。今後も国に米軍基地を防災拠点に組み込むことを建言します。


5 首都圏再生の強力な推進

(都市再生プロジェクトの始動)
 東京は、首都圏再生を最優先で取り組む国家プロジェクトとするよう、国に訴えてきました。
 先月決定された国の第2次プロジェクトの羽田空港の再拡張と首都圏3環状道路の整備については、大きな国益をもたらすと考えています。

(新しい制度と財源の導入)
 財源を確保する新しい手法として、国へ都市基盤整備への無利子貸付制度の導入を求めています。道路特定財源もまた有用な財源となり、国に財源の充当出来る事業拡大を要求します。
 都市再生プロジェクトを成功させるには、従来の発想を超える取組が必要です。国に対しては、法律の改正など、新しい制度を導入し、国費を集中的に投入することを強く要求します。

(首都圏の情報戦略) 
 超高速インターネット網の普及は、韓国などより大きく遅れており、都は、独自に首都圏の電子都市化を促進するため、秋葉原のIT拠点化などを具体化していきたいと考えています。

(新たな広域的自治体のあり方)
 首都圏の自治体には多くの共通基盤があり、連携を深めることで、高い利益が生まれます。
 近く、首都圏の新しい広域的自治体のあり方について、提案を行いたいと思っています。

(首都移転に対する断固反対)
 わが国には、課題が山積しているにもかかわらず、首都移転を進めようとしています。首都移転がいかに愚かな行為であるかを国民に伝え、白紙撤回に向け都議会の協力に期待しています。


6 道半ばの財政再建

(将来に懸念を抱える都財政)
 都は、巨額の赤字財政を立て直すため、全庁を挙げて、財政構造の改革に取り組んでいます。

(かつてなく厳しい財政環境)
 わが国経済が5%を超えた失業率など、かつて経験したことのない極めて厳しい環境の中、都は財政再建推進プランの内容以上にシビアに取り組まなければならず、より一層の財政構造改革に取り組んでいきます。

(構造改革に不可欠な取組)
 構造改革には、歳入歳出両面から見直すことが不可欠です。都もこれからが正念場であり、措置を講じて財政再建を実現したいと思います。
 臨海副都心開発は、職・住・学・遊の機能が複合した魅力あふれる未来型の街として、大きく成長する可能性を持っており、土地の売却と効率的運用を積極的に推進していきます。
 国に対して大きな影響を与えた「東京都税制調査会」は、一昨日から、活動を再開しました。今回は、大都市財源のあり方と東京に必要な政策税制について、具体的な検討を行う予定であり、地方主権の時代にふさわしい税財政制度の実現を国に迫っていきたいと思います。


7 都政の重要課題への対応

(重要施策の立案)
 来年度の都政の重点課題を明らかにするための「重要施策」の立案では、先進的な取組にチャレンジしたいと考えています。

(観光産業の育成に向けた取組)
 今後、都市が魅力を持つ上で、観光産業の発展は欠かせないため、東京は先頭に立ち観光産業を育成していきます。
 そのためには、既成概念に囚われない活性化策の実施が必要であります。
 例えばカジノは、空間を演出する優れて都会的な娯楽であり、法整備を国に働きかけます。
 また、奥多摩と島しょにて自然保護と観光をうまく両立する観光の振興を進めています。

(緊急雇用・経済 東京プロジェクト)
 新しい雇用対策として、来月、産業界、教育機関と共同で、新規卒業予定者等を対象とした、若年者向け合同就職説明会をはじめて開催します。中高年の離職者向けには、IT訓練やホームヘルパーの養成研修などを追加実施します。

(ディーゼル車規制の広がり)
 都はこれまで、「ディーゼル車NO作戦」を展開し、ディーゼル車の使用を規制し、利用のあり方を改めるよう働きかけてきました。
 今後も、規制を加えるだけでなく、不正軽油の摘発、道路整備による渋滞解消などの施策を有機的に結合し、大気汚染を軽減していきます。

(次の世代を育てる教育)
 大学を社会をリードする人材を育てる大学とするため、有識者の方々に、諮問会議の委員として検討をお願いし、東京にふさわしい大学のあり方を具体的に示したいと思います。
 都立高校の学区制は、生徒の選択の幅を狭め、学校間の競争意欲を低下させるなど弊害が目立っており、平成15年度の入学者選抜からは完全に学区制が撤廃されることになりました。
 引き続き教育改革を進め、次の世代を担う子どもの教育に力を注ぎたいと考えています。

(医療、福祉サービス改革の進展)
 都立病院は限られた医療資源のもとで、急速に変化する医療需要に的確に応えていくために、大学や民間病院などと連携することで、都民に対する医療サービスの向上を目指します。
 そこで年内には、「都立病院改革マスタープラン」を策定し、公立病院の新しいかたちを全国に示していきたいと思います。
 医療と同様、福祉の分野でも改革の歩みを着実に進めています。先月開設した認証保育所は、既に6か所で運営がはじまっており、これからの都市型保育の新しい事例が発信出来ました。
 一方、ホームレスは大都市の社会問題であり、区部ではこの5年間で約2倍に増えています。
 都は、特別区と共同して一貫した自立支援を進めており、利用者本位の福祉を展開します。

(公平、公正な住宅の供給)
 都営住宅は、公平な利用が徹底されなければなりませんが、所得基準を大幅に上回る高額所得者が転出を拒むなどの実態があります。
 そのため定期借家権を活用した期限付入居制度に高い効果が期待出来ると考え、本定例会に条例改正を提案しました。

(アジア大都市ネットワーク21の発足)
 アジアが、今世紀世界の3極の1つとして力を発揮するには、域内の大都市が共通項でつながる必要があります。都は、新しい連帯の枠組みとして「アジア大都市ネットワーク21」の構築を主唱し、率先して行動してきました。
 来月、東京で開催される第1回本会議で、ネットワークが発足します。今後、21世紀がアジアの世紀であることを世界に発信します。


8 千客万来の世界都市を目指して

 スイスのIMD国際経営開発研究所が発表した国際競争力ランキングによれば、わが国は、主要49か国の中で26位となりました。
 この危機の中で今必要なことは、成果や成功を積み重ね、自信を取り戻すことです。東京は、実際に行動して混迷の社会に終止符を打ち、新しい歴史の中で、日本が再び輝きを取り戻すために取り組む覚悟です。


9 名誉都民の選考

 このたび、名誉都民の候補者として、金田一春彦さん、小宮康孝さん、島田正吾さんの3名の方々を選考しました。
 3氏は、それぞれの分野で多大な功績をお持ちであり、多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であると考えています。よろしくお願いいたします。
 以上で私の所信表明を終わります。

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