わが国は、日本型経営システムが破綻し、集権的なシステムが終えんの時を迎えようとしている。地方自治体では集権から分権への流れが加速しており、首都東京で率先して地方政府ともいうべき存在感を示すことが、石原都政のスタートとなった。
石原都政に期待されたのは、住民による柔軟な施策の選択のもとで、住民の意思を反映したきめ細やかなサービスを実現するために、その責任をきちんと果たせるだけの実力を涵養することだ。しかも、都財政危機と抱き合わせであり、知事が直面した事態の重大さが察せられる。
知事が打ち出した財政構造改革は、こうした背景があってのことだ。知事は、平成12年度予算で、財政構造改革の一環として福祉施策の見直しに着手、施策の再構築、すなわち、スクラップ・アンド・ビルドに言及した。
スクラップ・アンド・ビルドというとき、とかく非難の矢面に立たされるのはスクラップである。しかし、ビルドにも懸命の努力をしている。その努力の一環として、知事が所信表明で触れた、福祉局の駅前保育所や障害者諸施策、衛生局の東京ERの整備や小児救急医療体制の支援策などを評価するが、この際特に紹介したいのは、都内58か所の養護施設を対象にサービス評価基準を策定し、自己評価の試行をはじめた職員の努力である。
決してスクラップしっ放しではない。派手ではないが、職員が地をはう努力で取り組み、所管局の総力を挙げ、英知を結集したたくさんのビルドがあることを、丁寧に拾い上げ、こうした取組を、都民と都議会に繰り返し繰り返しフィードバックする努力を通して、福祉施策見直しの評価を確かなものにすることが知事の責務である。
財政構造改革の一環としての福祉施策見直しについて、知事の2年間の総括を伺う。
知 事 大変本質的なありがたい建言、また、身にしみるご忠告に、心から感謝する。
スクラップ・アンド・ビルドということで、壊すものは壊さなくてはいけないが、つくるべきものは果敢につくっていかなくてはいけないと思う。新しい価値観と新しい方法が求められている時代であるから、司令塔も、現場で働いている職員も、それぞれ皮膚感覚で都政をとらえて、きめの細かい、しかし新しい発想で都政を構築していかなくてはならないと思う。
都政はチームプレーであり、1人や2人のチームリーダーが全体を引っ張り切れるものではない。私は、リーダーとし、指揮者としての責任は果たすが、同時に、部署部署で、体を張った作業にいそしんでいるチームメートというものがいなければ、都政も進んでいかないと思う。
我々が発想し実現しようとしていることを、議会を通じて都民にフィードバックし、議会の皆さんにも、積極的なご協力をいただきたいし、激しい討論をしていただきたいと思う。
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