平成10年度各会計決算特別委員会 委員長報告(要旨)

委員長 山本賢太郎(自民党)


 平成一〇年度東京都各会計歳入歳出決算の認定について、委員会を代表して、審査の経過及び結果の概要をご報告申し上げます。
 本委員会に付託されました案件は、平成一〇年度東京都一般会計及び一九の特別会計の認定であります。本委員会は、昨年十二月の設置以来、二〇回の委員会を開催し、集中的かつ精力的に決算の審査を行ってまいりました。
 平成一〇年度のわが国経済は、前年度の消費税引き上げや金融機関の破たんなどが尾を引いて消費や鉱工業生産は前年実績を下回り、失業率は四・八%に達しました。その結果、実質経済成長率はマイナス一・九%と前年度に引き続いてのマイナス成長となりました。
 このような中、一般会計の歳入面では、都税収入が前年度に比べ、四七一億余円、率にして一・一%の増となりました。これは、景気の落ち込みにより法人二税や不動産取得税等が減収となった一方で、繰入地方消費税が平年度化されたため増収となったものですが、歳入総額に占める都税収入は、六五・四%と、前年度に比べ〇・一ポイント減少しています。
 歳出面では、「東京都財政健全化計画」に盛り込まれた諸方策に基づき、重要・緊急課題には財源を重点的、効率的に配分し、都民福祉の向上に向け、確実な取組を行っております。
 これらの結果、平成一〇年度の一般会計歳入歳出決算は、歳入総額が、六兆五〇六九億余円、歳出総額が、六兆四九三五億余円、形式収支は、差し引き、一三三億余円の黒字でありました。
 この形式収支から、翌年度に繰り越すべき財源を差し引いた実質収支は、一七億余円の黒字となっております。
 この決算額を予算現額と比較しますと収入率は九五・七%、執行率は九五・五%であります。
 次に特別会計について申し上げます。
 平成一〇年度における一九の特別会計の歳入歳出決算を合計いたしますと、歳入三兆二六〇七億余円、歳出三兆二三五二億余円でありまして、形式収支では差し引き二五五億余円の黒字でありました。
 この形式収支から、翌年度に繰り越すべき財源を差し引いた実質収支は、二三八億余円の黒字となっております。
 この決算額を予算現額と比較しますと、収入率は八四・六%、執行率は八四・七%であります。
 それでは次に、決算審査の過程で論議、指摘された事項の概要をご報告申し上げます。


都民の健康と福祉

 子供の権利擁護に関しては、児童虐待の現状、児童相談所の専門機能の強化について質疑が行われるとともに、子どもの権利擁護委員会の活動、児童相談所と子ども家庭支援センターとの連携などについて論議が行われました。
 高齢者福祉については、ケアマネージャーの養成の実状、在宅介護支援センターやケアハウス、老人保健施設の整備状況、都立の特別養護老人ホームや養護老人ホームの居室改善等について、多角的な論議が展開されました。
 障害者福祉に関しては、都外の知的障害者更生施設の入所者処遇のあり方について質疑が行われ、福祉のまちづくりの観点からは、駅におけるエレベーターの設置促進や、都庁舎における障害者配慮の一層の推進が問われました。
 生活保護施策では、保護申請の改善、ケースワーカーの育成等について質疑が行われました。
 高齢者の保健医療については、老人保健施設や療養型病床群の整備促進、小児医療では、少子化に伴う小児科医療機関の減少に対する対策、多摩地域のNICU(新生児集中治療管理室)の整備等、その充実が求められました。
 更に、保健所機能の充実、難病医療費助成問題、骨髄バンクへの登録促進、急性期や回復期の患者、高齢者のリハビリテーションの充実、東部療育センター(仮称)の早期建設などが論議されました。


東京のまちづくり

 圏央道、新滝山街道等の道路整備、都道二二六号線や所沢街道での歩道整備、新宿地下歩道二号線の凍結問題などについて論議が行われるとともに、空堀川の河川整備、狭山丘陵における公園整備についても質疑が行われました。
 区画整理事業では、豊洲地区の区画整理事業、土地区画整理事業について論議が行われ、秋留台地域総合整備計画、多摩ニュータウン事業再構築、多摩地域における都市基盤整備の問題について論議が行われました。
 更にまた、江東東部地域における都市交通としてのLRT導入の可能性、調布離着陸場事業の防音工事進捗状況、「赤坂プレスセンター」内ヘリポート基地の公園返還問題、東京スタジアムの採算性なども論議されました。


都市の環境

 環境負荷の総合的低減の視点から、ゼロエミッションに向けての資源リサイクルや産業廃棄物排出抑制について幅広く論議されるとともに、家電リサイクル法制定に伴う都の取組、産業廃棄物への東京ルール適用の効果、ダイオキシン対策、環境ホルモン問題への取組などについて活発な論議が展開され、特に大気汚染については、交通量抑制対策、窒素酸化物排出抑制、ディーゼル車対策など多面的な論議が行われました。
 水と緑の保全に関しては、保全地域の指定、公有化、樹林保護、地下水涵養などについて更なる推進が求められ、河川の魚浮上事故の原因なども問われました。
 更に、二ツ塚廃棄物広域処分場の土地収用問題に関連して、土地収用の公共性、公平性などについて論議が行われました。


都民の生活と経済

 中小企業に対する制度融資や金融安定化特別保証制度による融資実績、代位弁済の状況などがただされるとともに、商店街対策の充実について質疑が行われました。
 また、高まる失業率のなか、技術専門校の訓練内容、労働委員会への労働相談の実状などがただされ、障害者の雇用に関連しては、障害者の訓練校の充実、雇用の促進について論議が行われました。
 東京の農林業に関しては、農業改良普及事業の業績や有機農業の振興、東京の農業の今後の課題、多摩木材の積極的利用などが求められました。
 港湾経営に関しては、東京港のポートセールスの成果について質疑が行われるとともに、大島波浮港の臨港道路整備問題について論議が行われました。
 都民の消費生活に関連しては、消費者被害の実態や消費者保護に対する対策、有機農産物の流通量の拡大、消費者への情報提供の推進などが求められました。
 人権の保護に関しては、子どもの人権擁護施策の現状、青少年の健全育成への対策、東京女性財団の事業のあり方などについて論議が行われました。
 住宅問題では、都営住宅の利用に関連して、今日的な都営住宅のあり方、家賃負担率、使用承継・承認問題、家賃滞納問題について活発な論議が行われました。
 また、居住者の高齢化の進む都営住宅に対する福祉の視点の導入、公営シルバーピアの供給実績や入居者とワーデンとの関係のあり方、超高層住宅における共益費の問題、都営住宅併用店舗の有効利用策などについて論議されるとともに、都営住宅の建設や建て替えについても論議が行われました。
 都民生活の安全確保の観点からは、特別区消防団の老朽化した格納庫の建て替え問題について質疑が行われました。


教育、文化

 公立学校における情報教育、性教育の充実、生徒の就職先の選択肢を増やす工夫、勤労の大切さを涵養する指導のあり方について論議が行われ、スクールカウンセラーの配置や東京都総合教育相談室の相談事業、都立教育研究所の幼児教育研究についても充実を求める観点から質疑が行われました。
 学校運営に関しては、教員に対する主任手当支給、チームティーチング制度、指導力等に問題のある教員への対応策、入学式、卒業式における国歌、国旗問題などについて幅広く論議されました。
 都立大学については、最近の研究業績、産学連携の状況、新産業創出への取組、学校施設提供のありかたについて質疑が行われました。
 私立学校、幼稚園に関しては、私学助成の充実や私立幼稚園児保護者負担軽減補助事業の拡充、社会教育では、多摩地域ユース・プラザの建設進捗状況、利用者の意見の反映などについて質疑が行われました。
 都民の文化生活に関連しては、都における芸術文化の更なる振興が求められ、芸術文化振興に出資した際の優遇税制創設へ向けた国への働きかけや、企業、経済団体等の文化支援体制の構築が求められ、更に、江戸東京博物館の運営や芝公園一帯の埋蔵文化財の保護についても質疑が行われました。


都政全般

 都税収入が伸び悩む中で、自動車税の徴収率向上など、より一層の徴税努力が求められ、また、臨海開発の必要性、首都高や臨海関連第三セクター三社などへの出資の目的、効果などについても論議が行われました。
 特にMXテレビについては、都は株主としての立場から、会社側に、積極的な経営努力を求めていくことが要請されました。
 多摩地域の振興に関しては、区市町村振興基金の金利負担の軽減策、市町村調整交付金の拡充が論議され、都が受けてきた財源調整の実態や統合補助金制度の内容がただされるとともに、地方分権の一層の推進が求められました。
 更に、入札・契約に関わる予定価格の公表の推進、都の国際協力事業の実績等、今後の取組方針についても集中的な質疑が行われました。
 選挙制度については、障害者や高齢者など社会的弱者の投票権に関連して、点字投票、代理投票、郵便投票、不在者投票制度についての広報の必要性が求められるとともに、現行制度では投票が困難な有権者の投票機会の確保の方策について論議が行われました。
 このように、都政全般にわたる多様かつ広範な課題につきまして、都民の信託に十分応え得る予算の執行がなされているか否か、慎重な審査を行った結果、一般会計及び特別区財政調整会計、心身障害者扶養年金会計、と場会計、公債費会計、新住宅市街地開発事業会計、市街地再開発事業会計、臨海都市基盤整備事業会計、港湾事業会計の各決算については起立多数で、その他十一の特別会計については全会一致で、いずれも認定すべきものと決定した次第でございます。
 なお、起立多数により認定されました一般会計外八特別会計につきましては、会議規則第六十七条第一項の規定に基づき、少数意見の留保がありましたのであわせてご報告申し上げます。


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