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知事所信表明(要旨)

  
    一 緊急課題への迅速な取組
    二 財政再建と東京再生の舵取り
    三 東京圏全体を視野に入れた都市基盤の整備
    四 行財政改革の促進
    五 活力と魅力ある東京の創造に向けた政策の展開
    六 新世紀を目前に控えて


 今世紀最後の定例会となる平成十二年第四回都議会定例会の開会に当たり、私の都政運営に対する所信を申し述べ、皆様のご理解とご協力を得たいと思います。


一 緊急課題への迅速な取組

(三宅島噴火災害等への対応)

 三宅島は、最初の火山活動から五か月以上が経過しました。爆発的な噴火の可能性は低くなったものの、依然、有毒な火山ガスが多量に発生しており、島民全員が島外での退避生活を余儀なくされています。
 九月中旬からは、保安要員が島へ上陸することさえ危険な状態が続いており、誠に残念ながら、退避生活が長引くことも覚悟しておく必要があると考えます。
 東京都は、安全が確認できた際に、一日も早く帰島がかなうよう、可能な限りの対策を講じています。一〇月には、現地の災害対策本部を神津島に移動するとともに、専門家による「三宅島火山活動検討委員会」を設置しました。現地では、観測態勢と通信機能の確保、ライフラインの維持活動に力を尽くしております。
 一方、新島、神津島などの地震活動は、地殻変動も含め、ほぼ収まったと言われております。本格的な復興に向け、復旧作業を急ピッチで進めております。
 冬の到来を前に、生活支援のための応急措置や、道路・河川の復旧、産業振興などを実施するため、伊豆諸島の災害対策に必要な補正予算案を編成しました。
 政府は、昨日、三宅島からの避難が長期化することも念頭に支援策を講じることを決定しており、東京都は、本日、全世帯を対象に被災者生活再建支援法を適用することにしました。今後、関係機関と連携しながら、同法に基づく支援金の支給手続きを早急に進めるとともに、就労対策や教育面での支援を強化してまいります。
 この間、非常に多くの方々から心温まるご支援をいただいています。東京都などに寄せられた義援金については、昨日までに、三宅村、新島村、神津島村へ合わせて一四億円を配分しました。皆様のご厚情に対し、感謝申し上げます。
 島の方々、とりわけ帰島を願いながら果たすことのできない三宅島の方々に、お見舞いを申し上げるとともに、一刻も早い災害の終息と島の復興を願っております。島が安定を取り戻すまで、関係機関と連携を密にしながら、全力で支援を続けてまいります。皆さんには、直面する困難に決して負けることなく、この危機を乗り越えていただきたいと思います。

(都民の健康と安全の確保)

 東京の大気は、他の大都市と比べ汚染が進んでおり、多くの都民の健康が蝕まれております。
 大気汚染の元凶であるディーゼル車対策として、昨年より、ディーゼル車NO作戦を展開していますが、いよいよ本格的な規制に乗り出すことにしました。
 九月には、大気汚染を増幅し、脱税の温床ともなっている粗悪な軽油を追放するため、「不正軽油撲滅作戦」を開始しました。悪質な小売業者の摘発はもちろんのこと、製造、流通の段階からメスを入れるべく、路上における抜取検査、販売元などへの追跡調査を行い、製造基地の発見に努めています。さらに、都内最大の事業者として、東京都発注の工事現場から不正軽油を排除します。
 私は、作戦を成功させるため、ときに陣頭指揮を執りながら、東京都の総力を傾ける決意です。
 今定例会には、自動車公害対策をはじめとする環境問題全般への取組を強化するため、制定以来三〇年以上が経過した公害防止条例の全面改正を提案しています。名称を「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」に変更するとともに、数多くの新しい対策を講じております。
 条例改正の中心となるディーゼル車規制は、全国で最も厳しいものとなります。東京都独自の排出ガスの基準を設定し、基準を満たさないディーゼル車に対して走行を禁止するとともに、大規模事業者には低公害車の導入を義務付けました。規制が遵守されるよう、自動車Gメンを新設し、検査・摘発にあたるほか、罰金刑など制裁をもって臨むことにしております。
 このほか、温暖化やオゾン層の破壊が進む地球環境を守るため、二酸化炭素の削減やフロン規制の強化を重点的に推進いたします。さらに、トリクロロエチレンの適正管理など、有害化学物質対策に取り組んでまいります。
 一連の対策は、拱手傍観している国に代わり環境を守る、画期的なものであると考えております。
 環境問題は、継続的な取組を必要とする分野です。平成九年に策定した環境基本計画は、時代の変化に立ち後れており、全庁的な推進体制の再構築が必要なことから、早急に全面改正し、都民の健康と安全を守るために必要な、先駆的な施策を展開いたします。


二 財政再建と東京再生の舵取り

(危機が続く都財政)

 財政再建は、就任以来、最も腐心している問題です。
 これまで東京都は、巨額の歳入欠陥を、他会計からの借入金や減債基金積立の一部先送りなどにより穴埋めし、財政再建団体への転落を回避してきました。
 今やこのような「隠れ借金」は、総額で八、〇〇〇億円近くに達しています。これは緊急避難的な措置で、一日も早く解消すべき性格のものです。
 今年度の都税収入は、相当程度の増加が見込まれていますが、隠れ借金を解消させるには十分ではありません。七兆円超の都債残高や二年連続の財政赤字に加え、老朽化施設の更新など、負担となる事業が多数存在することを考えると、都財政は危機的状況が続き、前途多難です。
 現在、財政再建二年目となる来年度の予算編成を進めていますが、都債の償還経費や退職手当が増大し、財政の硬直化はさらに進行するばかりです。施策の見直しなど構造改革を進める必要があります。

(首都東京の再生)

 間もなく二十一世紀を迎えようとする今日、世界に目を転ずると、東京は、国際的な大都市と比べ、多くの欠陥を有し、競争力を失っています。東京の将来を考えた場合、都財政が厳しくとも、首都機能の充実など、都市の活性化につながる事業には、財源を重点的に投入することも必要です。
 施策を厳選し、将来の財政負担を見通すことで財政再建を成し遂げながら、東京を再生させる政策を取りまとめ、これを進めていきたいと考えています。


三 東京圏全体を視野に入れた都市基盤の整備

(膨大な損失をもたらす首都移転)

 首都移転に関し、議論や調査、情報公開等の手続きが欠落しています。
 例えば政府はすべての新規公共事業に、費用対効果の分析を義務付けており、今年度の道路整備だけでも、すでに二〇〇か所を超える新規事業を評価しています。しかしながら、史上最大の公共事業とも言うべき首都移転については、調査分析を怠っています。
 そのため、東京都は対応の遅い国に代わり、先月、候補地すべてを対象に、移転に要する費用と移転がもたらす便益とを比較検証しました。その結果、移転を遂行した場合、わが国に四兆円から六兆円を超える巨大な無駄が発生することが明らかになりました。
 首都移転は、社会的、国際的等すべての面から見ても、国民の利益を損なうものでしかありません。
 世界をリードすべき地位にある国の中で、膨大な手間と経費、大きな混乱をもたらす事業を計画している国は日本だけです。
 首都移転は、最後まで残されたバブルの負の遺産であり、移転反対は、七都県市すべての一致した見解であります。
 私は、日本の将来のため、国に対し、首都移転の白紙撤回を強く働きかけてまいります。

(国費による幹線道路の整備促進)

 今、政府が国家戦略として取り組むべきことは、東京圏に国家予算を重点的に配分することなのです。
 圏央道、外かん道などいわゆる三環状道路は、完成に約九兆円の事業費を要するものですが、一方で、経費の九倍を超える整備効果が期待できます。連続立体交差事業は、交通混雑の解消や沿線市街地の一体化はもとより、安全対策や環境改善にも結びつく効果を生み出す事業です。このほか、環状二号線と晴海通りの延伸、湾岸道路の東京港トンネル部分、城南島と若洲を結ぶ臨海道路は、開通すれば、湾岸エリアへのアクセスを大きく改善します。国費を投入し、短期間で整備するよう、国に強く要求してまいります。

(効率的な空港の整備)

 現在の羽田空港及び成田空港は、増加を続ける航空需要に十分な対応ができず、新空港の整備は火急の事案となっています。このままでは、早晩、空港問題がわが国発展のブレーキとなるのは明らかで、国もようやく、首都圏新空港の本格的検討に動き出しました。
 私は、この機会をとらえ、桟橋方式により羽田空港を沖合に拡張する、実現可能性の高い整備策を国に提案しました。
 この方式は、新滑走路を一本整備するだけで、羽田空港の発着枠が五割増加し、建設工期と経費を大幅に圧縮することができます。今後、国への働きかけを強めるなど、早期実現に向け取り組みます。
 このほか、航空行政を進める上で、羽田空港の国際化、首都圏の空域の効率的な利用などが重要な課題となっています。今月、東京都が策定予定の「航空政策基本方針」では、こうした内容を盛り込みながら、四半世紀後の空港のあるべき姿や取り組むべき政策の方向性を明らかにします。
 横田飛行場に関しては、一〇月に開催した「第三回横田基地の民間利用を考える会」にて、ワールドカップ期間中の共同利用を働きかけることで意見がまとまりました。また、横田基地周辺の自治体とは、基地の整理・縮小・返還について、今後協議していくことを合意しています。
 しかし、ワールドカップ開催と同じ時期に横田飛行場滑走路の全面大改修が予定されるなど、相手のガードには非常に固いものがあります。返還を最終的な目標に置きながら、あらゆる手だてを講じていきます。
 東京圏は、国際競争力の強化に必要不可欠な都市基盤の多くが未完成となっており、国をあげた整備の促進が焦眉の急となっています。従来の枠組みにとらわれず、新年度予算を手厚く措置するよう、国に強く迫っていきます。
 建設大臣が主催し、私も委員を務めた「都市再生推進懇談会」が昨日、重要な提言を出しました。国際都市東京の魅力を高めていくために、都市の再生を国政の最重点課題とすべきであるとの極めて的確で明快な見解が論じられています。私がかねて提案していた常設の協議組織についても、この提言に盛り込まれています。国と七都県市との連携を深めながら、共通の諸課題を解決していきます。


四 行財政改革の促進

(監理団体の改革)

 都政の改革を進める上で、避けて通れないのが監理団体の見直しです。先日取りまとめた「監理団体改革実施計画」は、半年以上進めてきた総点検の結果を基に、民間企業経営者の提言を受け、一五年度までの具体的な改革内容を示したものです。
 都民サービスの向上が今後も期待できる団体は、事業の再編など必要な見直しを行った上で活用を続ける一方、もはや存続させる意義を失った団体などは統廃合することにしました。経営責任の明確化などの改革プランを作成することもできたと考えています。
 最も大切なことは、この計画を確実に実行していくことです。早速この内容を来年度予算に反映させ、監理団体を改革いたします。

(東京発新しい税の形)

 税はすべての行政サービスの根幹を成すものであり、真の地方自治を確立するには税制度の改革が不可欠です。新しい制度の構築に当っては、地方自治体が自らの問題として議論を重ね、意見を発していくべきです。
 昨日は、二十一世紀の地方主権を支える税財政制度のあり方について、「東京都税制調査会」から、有意義な答申を受けました。
 大きな特徴は、七兆円を超す国から地方への税源移譲を、国庫支出金及び地方交付税の見直しと結びつけて具体的に示している点です。国と地方の税額が同程度になることを基本に、消費税、所得税、たばこ税の一定額を三段階に分けて無理なく移譲するシナリオが描かれています。
 また、環境重視の視点に立った自動車税制の見直しや軽油引取税の課税の適正化など、今後の税制のあり方について大胆な問題提起を受けました。さらに、大型ディーゼル車高速道路利用税をはじめとした法定外税や資産課税の今後のあり方など、幅広い項目にわたって提言がありました。
 この答申に盛り込まれた内容は、地方自治体が自らの財源と自らの責任に基づく行政運営を行う上で大きな役割を果たすものです。国に対し制度改正を強く建言するなど、今後、答申を有力な武器として活用し、東京から新しい税の形を造り上げます。


五 活力と魅力ある東京の創造に向けた政策の展開

(総合的な震災対策の構築)

 私は、多くの人命と財産を奪った数々の地震災害を教訓とし、東京の災害対策に心血を注いでいます。
 今回提案している震災対策条例は、現行条例が行政主導の震災予防で、震災の被害に対応する上で限界があることから、これを全面改正し、東京独自の総合的な震災対策を構築するものです。
 条例では、「自らの生命は自らが守る」という自己責任の原則を基本理念に、都民、事業者の責務を明確化します。さらに、「自分たちのまちは自分たちで守る」こと、すなわち共助の確立を目指し、地域住民や事業者が助け合う仕組みを整備するとともに、ボランティア活動への支援を充実します。
 応急・復興対策としては、自衛隊、警察、消防などの活動拠点や仮設住宅建設用地などを事前に指定する制度を導入しました。また、都民生活の再建を速やかに進めるため、震災復興計画の策定を条例に盛り込み、震災に対する備えを強化しています。
 今後、基礎的自治体として第一義的責任を持つ区市町村、広域的役割を担う東京都、そして国が一体となり、都民、事業者と連携し、震災対策を推進していきます。

(中小企業の活力を高める支援)

 これまで、わが国の経済発展の源泉となってきたのは、未知の分野に挑む中小企業経営者の起業家精神でした。社会経済が激しく変化する中で、中小企業が活力を持続していくには、経営資源の確保が不可欠です。
 過日、中小企業の多様な資金調達を促進するため、第二回のローン担保証券スキームを決定し、参加企業の募集を開始しました。今回は信用保証協会の保証を裏付けとする前回と同様の債券に加え、企業の信用力を裏付けとする債券も発行することで、より直接金融に近いスキームにしています。
 また、ベンチャー企業や経営革新期の中小企業の支援を強化するため、先月、中小企業振興公社に総合相談窓口を開設しました。各企業の必要に応じて関係機関と連携しながら、様々な面できめ細かく支援していきます。

(東京の産業を活性化するまちづくりの推進)

 東京には、わが国の「ものづくり」を支えてきた産業集積地が数多く存在しています。しかし、近年、海外生産の増加などで、地域内の企業数が減少し、技術力低下への懸念が高まっています。
 まちづくりと産業政策の両面から、今ある集積地をさらに支援し、ビジネスや人材の苗床となる新たな集積地の形成を、積極的に推進していくことが必要です。
 電子機器販売の集積地として世界的に有名な秋葉原は、大きく発展する可能性を持っています。秋葉原が持つ集客力と情報発信力を生かし、新しい産業技術が生まれる拠点にしたいと考えています。
 地元、関係機関などと調整しながら、近く「秋葉原地区まちづくりガイドライン」を策定し、来年度中に土地処分を実施します。
 臨海副都心は、これからの企業活動に重要な役割を果たす大容量の情報通信網が整備されており、交通施設の充実などに伴って一層の発展が期待されています。
 先月、進出を希望する事業者の申込みを常時受け付ける、新方式による誘致を開始するとともに、情報通信の機能集積を促進するため、民間企業と共同の研究組織を発足させました。今後、臨海副都心への誘致活動を積極的に展開します。

(福祉改革のさらなる推進)

 これまでの福祉システムは、戦後五五年が経過する中で制度疲労を起こしており、今日の生活実態を踏まえた見直しが急務となっています。現在進めている福祉改革は、限りある資源を効果的に活用し、利用者の希求に応じた福祉の実現を目指すものです。事業者間の競争を促しながら、都民が質の高いサービスを選択し利用できるよう、整備する必要があります。
 例えば、都会で子育てと仕事の両立を望む人にとって、通勤経路にあり時間延長可能な保育所は欠かすことのできない施設です。
 大都市の特性に合った設置基準を東京都が独自に定め、企業の参入を容易にすることにより、都市型の駅前保育所の設置を促進したいと考えています。
 また、自宅での生活が困難になった高齢者、障害者は、特別養護老人ホームなど、手厚い介護が用意されている施設に頼らざるを得ないのが現状です。今後は、ケアハウスやグループホームなど、より家庭に近い環境で生活を支援する施設を整備し、都民のニーズに応えていきます。
 今月中に策定する「福祉改革推進プラン」において、こうした具体的取組を明らかにし、福祉改革を着実に推進していきます。

(住宅政策の抜本的見直し)

 東京都の住宅政策は、これまで都営住宅など公共住宅の整備に重点を置いてきました。
 しかし、居住形態が多様化した現況では、住宅政策は、市場の活用を重視すべきであり、抜本的な見直しが必要です。
 都営住宅には、必ずしも公的な住宅を必要としない人が入居していたり、敷地が十分に活用されていないなど、多くの課題があります。このため、期限付入居制度の創設など、公平性を高める改善に取り組んでいきます。また、建て替えなどの際、民間住宅や福祉施設等を積極的に併設します。
 一方、市場原理だけでは良質な住宅の供給が不十分なため、行政には、適切な誘導策が必要となります。老朽化が進む分譲マンションの増加に対応し、相談体制の充実など円滑な建て替えを支援するとともに、中古住宅の流通の活性化に向け、品質の評価や保証などの仕組みを整備します。
 さらに、マンションの建て替えに都営住宅の空家を仮住居として提供するなど、民間住宅対象の施策を都営住宅制度の見直しと連動させながら展開していきます。
 今後、公営住宅法の改正など、住宅政策の改革に必要な法制度の整備を国に対し強く働きかけるとともに、早期に新しい住宅政策の全体像を明らかにします。


六 新世紀を目前に控えて

 現在、新世紀の東京を展望する上で欠かすことのできない二つのプラン、「東京構想二〇〇〇」及び「都政改革ビジョンⅠ」を作成しております。それぞれ九月に中間のまとめを発表して以降、多くの方から意見をいただきました。そうした意見や都議会で審議された内容を十分踏まえながら、今月中に最終的な取りまとめを行い、東京の将来像と行政改革の具体的内容をお示しします。
 今月十二日に全線開通する大江戸線は、今世紀最後の鉄道の開通を飾るにふさわしい、大きな効果を生み出す路線となります。大江戸線の全線開通により、山手線内側のほぼ全域が、鉄道の駅まで徒歩一〇分以内で到達できるようになり、世界の大都市の中で、最も便利で使いやすい公共交通網が形成されます。
 なお同時に、都営バスでは、大江戸線と重複した路線などを再編整備します。ご理解を願います。
 今世紀最後の日には、カウントダウンイベントのほか、歌舞伎やオペラなど、様々な文化を取り入れた世界劇「源氏物語」を東京国際フォーラムで上演します。これをもって、都民や企業、団体などの参加を得ながら一年間にわたり展開した「東京二〇〇〇年祭」は終了となります。この間に開催した事業を通じ、江戸東京の歴史文化を、次の世紀にいささかなりとも伝承することができたのではないかと考えます。
 激動の二〇世紀も、あと一か月でその幕を閉じます。
 今世紀、日本は大きな発展を遂げながらも、戦後長い間、平和と繁栄が続く中で、いつの間にか、依って立つべき価値の基軸を喪失したように感じられます。そして今、環境、教育など様々な危機が露呈し、大きな混迷のうちに世紀の終わりを迎えようとしています。
 来るべき二十一世紀において、坂の上に輝く雲を再びつかむためには、我々自身の手で明確な進路を定め、強固な意志を持ってその実現に取り組む必要があります。
 この先、どのような困難、予期せぬ事態が訪れようとも、私は、揺らぐことのない確かな時代認識を持ち、皆さんとともに新しい東京、新しい日本を築き上げていきたいと思います。
 都議会並びに都民の皆様の一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。

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