平成二十三年東京都議会会議録第十八号

平成二十三年十二月八日(木曜日)
 出席議員 百二十四名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番三宅 正彦君
四番桜井 浩之君
五番山崎 一輝君
六番野田かずさ君
七番福士 敬子君
八番土屋たかゆき君
九番相川  博君
十番山内れい子君
十一番関口 太一君
十二番くりした善行君
十三番西沢けいた君
十四番田中  健君
十五番畔上三和子君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番松葉多美子君
十九番伊藤 興一君
二十番鈴木 章浩君
二十一番菅  東一君
二十二番きたしろ勝彦君
二十三番早坂 義弘君
二十四番高木 けい君
二十五番星 ひろ子君
二十六番小山くにひこ君
二十七番柳ヶ瀬裕文君
二十八番淺野 克彦君
二十九番新井ともはる君
三十番佐藤 由美君
三十一番中村ひろし君
三十二番たきぐち学君
三十三番田の上いくこ君
三十四番島田 幸成君
三十五番大島よしえ君
三十六番高倉 良生君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番遠藤  守君
四十番石森たかゆき君
四十一番高橋 信博君
四十二番中屋 文孝君
四十三番村上 英子君
四十四番矢島 千秋君
四十五番高橋かずみ君
四十六番山加 朱美君
四十七番西崎 光子君
四十八番しのづか元君
四十九番滝沢 景一君
五十番中谷 祐二君
五十一番笹本ひさし君
五十二番山下ようこ君
五十三番神野 吉弘君
五十四番鈴木 勝博君
五十五番興津 秀憲君
五十六番岡田眞理子君
五十七番古館 和憲君
五十八番かち佳代子君
五十九番大松あきら君
六十番中山 信行君
六十一番橘  正剛君
六十二番野上 純子君
六十三番谷村 孝彦君
六十四番山田 忠昭君
六十五番林田  武君
六十六番小宮あんり君
六十七番吉住 健一君
六十八番神林  茂君
六十九番野島 善司君
七十番服部ゆくお君
七十一番伊藤 ゆう君
七十二番原田  大君
七十三番佐藤 広典君
七十四番西岡真一郎君
七十五番尾崎 大介君
七十六番山口  拓君
七十七番伊藤まさき君
七十八番松下 玲子君
七十九番野上ゆきえ君
八十番今村 るか君
八十一番たぞえ民夫君
八十二番吉田 信夫君
八十三番小磯 善彦君
八十四番長橋 桂一君
八十五番藤井  一君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番こいそ 明君
八十八番遠藤  衛君
八十九番田中たけし君
九十番宇田川聡史君
九十一番鈴木 隆道君
九十二番三原まさつぐ君
九十三番田島 和明君
九十五番吉田康一郎君
九十六番斉藤あつし君
九十七番泉谷つよし君
九十八番くまき美奈子君
九十九番大西さとる君
百番いのつめまさみ君
百一番小沢 昌也君
百二番石毛しげる君
百三番大津 浩子君
百五番清水ひで子君
百六番ともとし春久君
百七番東村 邦浩君
百八番中嶋 義雄君
百九番木内 良明君
百十番古賀 俊昭君
百十一番吉原  修君
百十二番鈴木あきまさ君
百十三番宮崎  章君
百十四番川井しげお君
百十六番吉野 利明君
百十七番比留間敏夫君
百十八番門脇ふみよし君
百十九番増子 博樹君
百二十番大塚たかあき君
百二十一番酒井 大史君
百二十二番山下 太郎君
百二十三番大沢  昇君
百二十四番中村 明彦君
百二十五番馬場 裕子君
百二十六番和田 宗春君
百二十七番大山とも子君

 欠席議員 一名
  百十五番 三宅 茂樹君
 欠員
    九十四番 百四番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事佐藤  広君
副知事猪瀬 直樹君
副知事吉川 和夫君
副知事村山 寛司君
教育長大原 正行君
東京都技監建設局長兼務村尾 公一君
知事本局長秋山 俊行君
総務局長笠井 謙一君
財務局長安藤 立美君
警視総監樋口 建史君
主税局長新田 洋平君
生活文化局長井澤 勇治君
スポーツ振興局長細井  優君
都市整備局長飯尾  豊君
環境局長大野 輝之君
福祉保健局長杉村 栄一君
産業労働局長前田 信弘君
港湾局長中井 敬三君
会計管理局長松田 芳和君
消防総監北村 吉男君
交通局長野澤 美博君
水道局長増子  敦君
下水道局長松田 二郎君
青少年・治安対策本部長樋口 眞人君
病院経営本部長川澄 俊文君
中央卸売市場長中西  充君
選挙管理委員会事務局長影山 竹夫君
人事委員会事務局長多羅尾光睦君
労働委員会事務局長加藤 英夫君
監査事務局長塚本 直之君
収用委員会事務局長細野 友希君

十二月八日議事日程第三号
第一 第百七十号議案
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例及び都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
第二 第百七十三号議案
東京都下水道条例の一部を改正する条例
第三 第百五十四号議案
東京都非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百五十六号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第五 第百五十七号議案
東京都屋外広告物条例の一部を改正する条例
第六 第百五十八号議案
東京都再開発等促進区を定める地区計画等の案の作成手続に関する条例の一部を改正する条例
第七 第百五十九号議案
東京都景観条例の一部を改正する条例
第八 第百六十号議案
東京のしゃれた街並みづくり推進条例の一部を改正する条例
第九 第百六十一号議案
東京都日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例の一部を改正する条例
第十 第百六十二号議案
東京都児童会館条例を廃止する条例
第十一 第百六十三号議案
東京都障害者施策推進協議会条例の一部を改正する条例
第十二 第百六十四号議案
東京都障害者支援施設等に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第百六十五号議案
東京都立療育医療センター条例の一部を改正する条例
第十四 第百六十六号議案
東京都立重症重度心身障害児者施設条例の一部を改正する条例
第十五 第百六十七号議案
食品衛生法施行条例の一部を改正する条例
第十六 第百六十八号議案
食品製造業等取締条例の一部を改正する条例
第十七 第百六十九号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第十八 第百七十一号議案
東京都風致地区条例の一部を改正する条例
第十九 第百七十二号議案
東京都水防条例の一部を改正する条例
第二十 第百七十四号議案
特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第二十一 第百七十五号議案
都立港地区第二特別支援学校(仮称)(二十三)改築工事請負契約
第二十二 第百七十六号議案
東京都議会議事堂(二十三)改修工事請負契約
第二十三 第百七十七号議案
東京体育館(二十三)改修工事請負契約
第二十四 第百七十八号議案
東京都議会議事堂(二十三)電気設備改修工事請負契約
第二十五 第百七十九号議案
東京都議会議事堂(二十三)空調設備改修工事請負契約
第二十六 第百八十号議案
東京体育館(二十三)改修空調設備工事請負契約
第二十七 第百八十一号議案
環状第二号線隅田川橋りょう(仮称)鋼けた製作・架設工事(二十三 五─環二)請負契約
第二十八 第百八十二号議案
環二朝潮運河橋りょう(仮称)PCけた製作・架設工事(二十三 一─環二築地)請負契約
第二十九 第百八十三号議案
当せん金付証票の発売について
第三十 第百八十四号議案
東京都営住宅、東京都福祉住宅、東京都特定公共賃貸住宅、東京都地域特別賃貸住宅、東京都引揚者住宅等の指定管理者の指定について
第三十一 第百八十五号議案
東京都石神井学園の指定管理者の指定について
第三十二 第百八十六号議案
東京都小山児童学園の指定管理者の指定について
第三十三 第百八十七号議案
東京都船形学園の指定管理者の指定について
第三十四 第百八十八号議案
東京都八街学園の指定管理者の指定について
第三十五 第百八十九号議案
東京都勝山学園の指定管理者の指定について
第三十六 第百九十号議案
東京都片瀬学園の指定管理者の指定について
第三十七 第百九十一号議案
東京都八王子自立ホームの指定管理者の指定について
第三十八 第百九十二号議案
東京都視覚障害者生活支援センターの指定管理者の指定について
第三十九 第百九十三号議案
東京都日野療護園の指定管理者の指定について
第四十 第百九十四号議案
東京都清瀬喜望園の指定管理者の指定について
第四十一 第百九十五号議案
東京都八王子福祉園の指定管理者の指定について
第四十二 第百九十六号議案
東京都七生福祉園の指定管理者の指定について
第四十三 第百九十七号議案
東京都千葉福祉園の指定管理者の指定について
第四十四 第百九十八号議案
東京都東村山福祉園の指定管理者の指定について
第四十五 第百九十九号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに対する出資について
第四十六 第二百号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターによる土地及び建物の譲渡の認可について
第四十七 第二百一号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター定款の変更について
第四十八 第二百二号議案
東京都立大島公園海のふるさと村の指定管理者の指定について
第四十九 第二百三号議案
東京都立奥多摩湖畔公園山のふるさと村の指定管理者の指定について
第五十 第二百四号議案
東京都立多幸湾公園の指定管理者の指定について
第五十一 第二百五号議案
東京都檜原都民の森の指定管理者の指定について
第五十二 第二百六号議案
東京都奥多摩都民の森の指定管理者の指定について
第五十三 第二百七号議案
特種用途自動車(誘導標識車)の買入れについて
第五十四 第二百八号議案
特種用途自動車(災害部隊支援車)の買入れについて
第五十五 第二百九号議案
特種用途自動車(災害用大量排水システム車)の買入れについて
第五十六 第二百十号議案
特種用途自動車(交通情報提供車)の買入れについて
第五十七 第二百十一号議案
ヘリコプターの買入れについて
第五十八 諮問第一号
地方自治法第二百六条の規定に基づく審査請求に関する諮問について
議事日程第三号追加の一
第一 東京都教育委員会委員の任命の同意について(二三財主議第三九九号)
第二 東京都監査委員の選任の同意について(二三財主議第四〇〇号)

   午後一時開議

〇議長(和田宗春君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(和田宗春君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(和田宗春君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都教育委員会委員の任命の同意について外人事案件一件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

〇議長(和田宗春君) 昨日に引き続き質問を行います。
 五十五番興津秀憲君。
   〔五十五番興津秀憲君登壇〕

〇五十五番(興津秀憲君) それでは、一般質問をさせていただきます。
 現在の世界経済状況は日々進化し、人、物、金の交流は激烈な都市間競争時代になっていると考えます。社団法人日本経済調査協議会から二〇一一年三月に発表のあった、強靱な国際競争力をもった東京の実現という調査報告書では、バブル経済崩壊後の九〇年代後半には都心回帰の現象があらわれた。集積が富を生み、それがまた集積を生むということによって、国家の経営がスムーズに行われるという日本の特質が顕在化したのである。東京の国際競争力を高めなければならない理由は、歴史的に見ても、一国が競争力を持つためには、その中心都市が競争力を持つことが不可欠であり、日本におけるその都市は東京だからである。東京の国際競争力を高めることは、日本のエンジンとして富を生み出すことになる。日本から海外、海外から日本、その両方のゲートウエーとなるための前提条件は、世界都市の階層における最上位都市、ワールドリーディング都市のポジションを獲得することであるとされています。
 この現状を踏まえたとき、都は日本の首都として、知事のいう日本のダイナモとして、いえ、日本のエンジンそのものとして、日本を牽引すべき都市であると考えます。
 都では、平成十八年十二月に長期ビジョンである「十年後の東京」を策定していますが、さきの調査報告書によると、現在のトレンドで都市の地域総生産が推移すると、東京は、十年以内に北京と上海に抜かれ、二十年以内にシンガポール、香港に抜かれるとあります。この激烈な世界的な都市間競争に勝ち抜くことこそは、この東京に課せられた責務であると考えます。
 そのために、都として、この危機から活路を見出す重点施策として、富の拡大を図り、コンパクトシティーの創造並びに都の地域性を生かした大胆な発想とともに、人の生活の多様性を認め、東京だからこそできる多用途の複合的な機能を持った魅力的な都市空間をつくり出す必要が求められていると思います。
 また、姉妹友好都市として提携している世界の大都市との交流を進化させ、経済、環境、情報、通信など各種分野の連携をさらに深め、東京ブランドの確立、場合によっては都独自の駐在員の復活も視野に入れ、都市セールスの観点からも、しなやかな、ある意味したたかな取り組みをこの東京から進めるべきと考えます。
 都から発信する国際競争力を高めるため、アジア地域ばかりでなく、全世界的な視点から、都市間競争を勝ち抜くための施策が今求められていると考えます。知事のご所見を伺います。
 次に、多摩地区への施策についてお伺いします。
 多摩地区は、平成二十一年一月の住民基本台帳における人口は四百三万七千七百二十四人となり、都全体の三二・二六%、約三分の一になります。近郊のベッドタウンから自然環境豊富な地域まで包括している地域でもあります。
 昨今の地方自治の流れからかんがみますと、地域のことは地域で行う地方自治が進められているところでありますが、都の緊急課題等に対応する事業や、特に多摩地区でも、福祉、医療、教育、廃棄物処理、再開発等重要な課題が山積している今、財政的に脆弱な市町村が自立した自治体として、住民の負託に十分にこたえていくのは、大変厳しい状況があります。
 市町村は、限られた財源の中で創意工夫を凝らし、懸命な努力を続けていますが、小さな規模の団体だけでは限界もあります。多摩の市町村が広域的に連携し、課題を解決していくことは意義あることと思いますが、都における多摩の市町村への取り組みについて、基本的な考え方をまず伺います。
 一方、地方自治の根幹には、公平公正な運営が求められていることは基本であると認識しています。その認識に立ち、東京都全体を俯瞰したとき、果たして公平な状況にあるのかどうか、いささか疑問に思うところでもあります。
 現実には、多摩地区には財政環境が悪い地域が多数あると思います。事実、過日の新聞報道では、経常収支比率が全国ワーストフォーに入ってしまった自治体が、この多摩地区から出てしまっています。確かに財政構造は区部と多摩地区とは異なり、一概に比較はできないとは思いますが、例示的に申し上げれば、財政の調整機能を有するいわゆる貯金として財政調整基金がありますが、その残高を見ると、現在確定している数値である平成二十一年決算ベースで比較すると、区部は、残高合計四千四百二十七億二千三百八十万円余、区民一人当たり約五万円、一方、多摩の市町村では、残高合計七百三十億九千八百八十五万円余となり、多摩都民一人当たり約一万八千円、その差三万二千円、約三分の一であります。
 また、借入金である地方債の残高は、区部は七千六百四十九億五千二十七万円余、一人当たり約九万円に対し、多摩の市町村では八千五百十七億九千二百九十二万円余、一人当たり約二十一万円となり、二・三三倍の開きになります。
 現在、多摩地区においては、区部と比較すると医療費助成について、その適用年齢差は歴然として存在しますし、公立小中学校の耐震化率は、区部において九二・三%、市町村部八二・〇%と、教育環境の差もあり、都民間格差は歴然としてあるといっても過言ではないと思っています。
 また、再開発など、まちづくりの視点でも、その財政需要は大きなものがあり、多摩地区が主体的に事業を実施していく上においても、広域団体である都の施策的、財政的な支援は待ったなしと考えます。
 また、地方税のうち、基幹的な税である市町村民税個人分や固定資産税、都市計画税等は、その地に由来する税金であろうと考えますが、市町村民税法人分について、私自身の考え方があります。
 平成二十一年度決算によると、都区部における市町村民税法人分の合計は四千七百四十七億二千九百十五万円余となり、区民人口一人当たり五万六千円、多摩・島しょの合計は三百八十三億九千九百九十七万円余となり、多摩・島しょ人口一人当たり九千四百五十八円、その差は五・九二倍の開きとなります。
 例えば、この市町村民税法人分を区部市町村分と合計すると五千百三十一億二千九百十二万円余となりますが、その五五%を都内全域の調整金として考えると、その金額は二千八百二十二億二千百一万円余となり、都民一人当たりとして約二万二千円となります。この市町村民税法人分の相当額は、考え方として、ひとしく東京都民全体の税収であるべきではないかと思っています。
 この試算は一つの事例であり、このように、抜本的な財政構造と配分の見直しを図り、東京全体の発展、福祉の向上につなげていくべきではないかと考えるものであります。
 これは、私個人の多摩地区を愛するがゆえに考えた財政論でありますが、これほど区部に比べて多摩の市町村は、施策の根幹となる財政が困窮している地域が多いということを申し上げたいのであります。
 そこで、多摩の振興についてお伺いします。
 都が平成二十一年二月に策定した「多摩振興プロジェクト─多摩の総合的な振興策─」には、多摩地域の固有資源を最大限活用するとともに、首都圏の各都市との広域連携を強めることを視点に、多摩リーディングプロジェクトを拡充し、多摩の総合的な振興策として再編成するもの、首都圏の中核をなす多摩の実現を目指し、都がどのように多摩振興に取り組むかを新たな視点で明らかにするものとあります。
 今後、多摩の一層の振興を図るためには、多摩振興プロジェクトをこれまで以上に着実に推進する必要があると思います。そのためには、現在の進捗状況の検証を行うことや、市町村との連携を図ることが必要不可欠と考えます。
 都として、今後、どのように多摩の一層の振興を図っていくのかお伺いします。
 次に、私学振興についてお伺いします。
 国の施策である子ども手当、高校授業料無償化等の施策により、経済的理由による退学者は、全日制都立高校において、平成二十一年度の二%から二十二年度には〇・二%へ、定時制においては、四・三%から一・七%へと大きく減少しているところであります。また、私立高校等に通学する生徒には、就学支援金、特別奨学金など、一定の授業料軽減策が行われ、生徒の学習機会の保全には大変役立っていることと存じます。
 しかしながら、昨今の経済状況において、授業料の一部を補てんするなどのさらなる支援拡充を求める声もあります。
 また、東京都育英資金制度ですが、これは生徒個人が学校を通じて申請する仕組みです。生徒個人への心理的影響にかんがみ、これを個人から財団に直接申請できるよう、方法の変更も必要ではないかと思います。
 そこで質問ですが、保護者の急遽な失業や大幅な所得減などにより、授業料の納付ができず、私立高校生の就学の継続が困難となることがないよう、ある意味つなぎ融資のような速やかに生徒に助成金が渡る仕組み、授業料を軽減するなどの緊急的支援策を実施すべきと考えます。ご所見を伺います。
 次に、情報公開についてお伺いします。
 地方自治における情報の公開性は、非常に重要なファクターであると確信しています。東京都の情報公開制度の運用状況については、開示等決定件数は平成二十年度の五千八百三十三件から、平成二十二年度には一万六百三十八件に進捗しており、情報公開は徐々に進んでいるところであると考えられます。
 しかし、全国市民オンブズマン連絡会議がことし八月に発表した二〇一〇年度の情報公開度調査によれば、都道府県の比較で都の情報公開度はブービー賞、つまり、最下位から一つ上という状況であります。この結果となっている原因の一つとして、東京都情報公開条例で公文書開示の請求権者を制限しているということがあります。都条例では、公文書の開示請求権を都民、都内法人、都内の在学者等とし、都外の人、または団体が請求する場合には、公文書の開示を必要とする理由を明示するとされています。
 地方自治は現在、生活圏の拡大と行政の広域化で自治体の影響を受ける範囲は広がっており、情報公開の必要性はますます高まっていると思います。この条例は一九九九年の改正以来、既に十二年経過しています。したがいまして、時代の要請にこたえるべく、請求者は何人もとするべきであると考えます。ご所見を伺います。
 最後に、発電所建設について伺います。
 東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故があり、計画停電などが都民生活に大きな影響を与えたところであります。電力の供給は、日本の、そして東京の発展及び都民生活の安定に向けて、非常に重要な施策案件であると思います。
 都が現在予定している発電所は、百万キロワット級の発電所計画であり、都の施設すべてに電力を供給しても、なお余りある発電所であると伺っています。ということであれば、都の各施設に電力の送電についても、あるいは余剰電力を売電するにも、現在の電力網を借り受けることになるでしょう。現在予定されている案件は、都の土地へ民間事業者を誘致し、発電所の建設をもくろんでいるところであります。そのときに、その発電、配電の初期並びに運営コストが余りに高くなったとすれば、都民の料金負担等は大きくなってしまいます。
 一方、電力自由化の波の中ではありますが、過日の新聞報道にもありましたとおり、特定規模電気事業者、PPSから撤退している企業もあり、市場自由化がなかなか進んでいないという事実もあると思います。
 都においては、先月に調査委託に入ったところと伺っていますが、この事業に関しては、その事業の主体者、事業スキーム、事業採算性、経済効果を慎重な上にも慎重に検討をすべきであると思いますし、その事業採算性を検討した結果、都民生活への高負担が生じる等、都民にとって優位性が確認されない場合が発生し得るときには、勇気ある撤退も視野に入れ検討すべきであろうとも思います。ご見解を伺います。
 以上、一般質問といたします。
 なお、ご答弁によりましては再質問を留保いたします。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 興津秀憲議員の一般質問にお答えいたします。
 東京の今後の都市戦略についてでありますが、ご質問の内容が、いささか抽象的というか総花的で、いま一つよく理解できませんが、今後、ますます激しさを増す都市間競争を勝ち抜くことが、東京に課せられた使命でありまして、そのためには、現実性のある戦略、戦術を持って政策を展開することが不可欠であります。
 それゆえに、日本の頭脳部、心臓部であります東京の都市戦略として「十年後の東京」計画を策定し、年々手を加えながら、重層的、複合的に、具体的な施策を展開してきました。
 例えば、新しいサッカー場千五百面に相当する千ヘクタールの緑や百万本の街路樹整備など、水と緑に囲まれた都市空間の創出、東京の最大の弱点であります渋滞を解消し、東京と日本の潜在力を発揮する三環状道路の整備、大都市の多様な保育ニーズにこたえる都独自の認証保育所の拡充など、そしてまた、我々の存在の舞台であります地球を守る世界初の都市型キャップ・アンド・トレード制度もまたしかりであります。
 こうした取り組みをさらに加速させるとともに、東日本大震災によって明らかになりました防災力の向上やエネルギー政策の強化など、新たな課題にも対処するべく「十年後の東京」計画を充実強化した新しい計画を年内に発表して、二十一世紀の都市モデルを発信していきたいと思っております。
 都市外交についても言及がありましたが、私が主唱して始めたアジア大都市ネットワーク21では、従来の儀礼的な友好親善とは一線を画しまして、大都市が直面する課題を共同で解決する取り組みを展開しておりまして、引き続き、国際社会における東京のプレゼンスを戦略的に高めていきます。
 他の質問については、副知事及び関係局長から答弁します。
   〔副知事猪瀬直樹君登壇〕

〇副知事(猪瀬直樹君) 百万キロワット級の天然ガス発電所の設置についてのご質問ですが、その前に一言申し添えておきますと、きょうは十二月八日でありますけれども、七十年前の十二月八日、真珠湾奇襲で日米戦争が始まったわけですが、日本は対米、英、蘭、つまり蘭というのはオランダですけれども、宣戦布告したんですが、それはインドネシアの石油資源を確保するためでありました。
 戦後、日本は資源小国として原子力発電に活路を見出していくということになったわけですけれども、三月十一日の大地震、東日本大震災で原子炉が壊れ、そして、福島から九百万キロワットの電力が来なくなりました。そして、さらに新潟の柏崎刈羽で八百万キロワットのキャパシティーがあるんですけれども、中越沖地震などで、今現在来ているのは二百五十万キロワットでありますが、その二百五十万キロワットも、この一月、三月の点検でゼロになります。
 そういう中で、我々はどうしたらいいかということですが、国が有効な手だてを打てない中で、東京は都市機能を支える電力の確保という喫緊の課題に直面しておりまして、都庁一丸となってこの難局を乗り越えなければいけません。
 このため、去る八月、知事本局、財務局、都市整備局、環境局、建設局、港湾局、交通局、水道局、下水道局の関係九局の職員から成る横断型の東京天然ガス発電所プロジェクトチームを立ち上げ、百万キロワット級の発電所設置について検討を行うことにしました。
 発電所設置の目的を改めて述べますが、一つは、電力の大量消費地である首都東京がみずから行動を起こし、地産地消の東京産エネルギー確保に向けた姿勢を示すこと。二つ目は、東京湾岸には、運転開始から三十五年を超える老朽火力発電所一千万キロワットが存在しますが、このプロジェクトを、その設備更新に向けた先導的取り組みとして位置づけていくこと。三つ目ですが、東京がみずから発電所設置に取り組むことにより、これまで見過ごされてきた課題を発掘し、電気事業への参入を阻む規制の緩和について政府に対して提案要求をするなど、我が国の電力供給の自由化を推進するためのモデルとしていくこと。以上の三つが肝です。
 次に、プロジェクトチームの取り組みでありますが、これまで関係局において課題の整理を行うとともに、専門家からの情報を得ながら、都有地を一定の条件でスクリーニングし、九月に発電所設置の適地として五カ所を発表しました。そして現在、この五カ所について、事業可能性調査として、採算性の検討はもとより、さまざまな事業スキームの策定や発電所設置の技術的検証に着手したところであります。
 その際、採算性の検討に大きな影響を与える国のエネルギー政策の方向性や、東京電力の総合特別事業計画の動向を見きわめつつ、将来の電力価格や燃料である天然ガスの価格など、本プロジェクトに密接に関連する諸条件に十分留意しながら、幅広く詰めていくという形でやるのが当然であります。
 こうした取り組みに加えて、電力の安定確保に向け、電力会社からの電力だけに頼らない地域分散型発電の推進や再生可能エネルギーの導入など、総合的、戦略的に思想を持ったエネルギー政策を展開していかなければならないと、こう考えております。
 以上であります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、多摩の市町村の広域的な連携についてでありますが、市町村の役割は、基礎的自治体として福祉や教育、まちづくりなど、地域の実情に応じて住民に身近な行政サービスを提供していくことにあります。また、行財政運営におきましては、自主性、自立性を発揮し、むだのないバランスのとれた運営を行う必要がございます。
 しかしながら、現下の厳しい財政状況の中で、行政サービスをより一層効果的かつ効率的に提供するためには、市町村単独ではなく広域的に連携していくことも重要でございます。
 市町村は、これまでも廃棄物処理や病院の経営などの事業について、一部事務組合を設立し、連携して対応してきたところでありまして、今後も、都は、こうした広域的な取り組みに対し、引き続き支援を行ってまいります。
 次いで、多摩の振興についてでありますが、多摩の振興に当たりましては、地域の抱えるさまざまな課題を踏まえつつ、多摩の発展の可能性や特性などを生かすという視点から取り組むことが重要であります。このため、都は、平成二十一年二月にハード事業中心であった多摩リーディングプロジェクトを拡充し、ソフト事業も含めた総合的な振興策を推進するために多摩振興プロジェクトを策定いたしました。
 本プロジェクトは、都市基盤の整備や産業振興、福祉、医療の充実などの六分野、六十事業で構成され、各局は市町村と連携してこれらの事業を着実に推進してまいりました。
 今後とも、事業の進捗状況を検証しつつ、市町村と連携しながら、多摩振興プロジェクトを確実に推進し、多摩の一層の振興を図ってまいります。
   〔生活文化局長井澤勇治君登壇〕

〇生活文化局長(井澤勇治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、私立高校生に対する緊急的支援策についてでございますが、都は、特別奨学金により、平均的な所得以下の保護者を対象に、所得に応じて授業料の一部を助成いたしますほか、経済的理由により修学が困難な高校生等に対しまして、育英資金を貸し付けております。
 さらに、家計状況が急変した場合には、育英資金特別募集によりまして速やかに随時貸し付けを行いますとともに、学校が授業料を減免した場合には、授業料減免補助により、減免額の五分の四を補助いたしております。
 都といたしましては、こうした施策を総合的に活用し、経済的に困難な状況にある生徒の修学機会の確保に努めてまいります。
 次に、情報公開条例における公文書の開示請求権者についてでございますが、平成九年に設置された情報公開制度のあり方懇談会におきまして、開示請求権者の範囲について議論がなされております。
 懇談会では、請求権者を都民等に限定せず、何人もとすべきとの意見も出されましたが、開示の理由を明示して請求する都外の個人、法人等を対象に加えれば十分であるという意見が大勢を占めております。現行条例は、この懇談会の提言を踏まえて改正されたものでございまして、実質的に請求権者を制限するものではございません。
 今後とも、都政に関する正確でわかりやすい情報を都民、法人等が迅速かつ容易に得られる情報公開の実施に努めてまいります。
   〔五十五番興津秀憲君登壇〕

〇五十五番(興津秀憲君) それでは、発電所建設に関しまして再質問させていただきます。
 先ほど、猪瀬副知事より懇切丁寧なご答弁をいただいたところでありますが、昨日の新聞報道によると、東京電力の改革推進行動計画において、自前での発送電の転換を打ち出しています。これにより電力卸売事業者の新規参入が進むかもしれない。しかし、電気料金額も流動化するなど、今後には不透明な部分も出てきたと思います。
 先ほどのご答弁において、みずから行動を起こすという形で、建設に向けて非常に前向きなご答弁でありました。であるからこそ再質問に立ちましたが、私は、発電所建設に反対という立場ではありません。しかし、建設に当たり、そのイニシアルコスト、ランニングコストに、民間参入により、都の財政を投入すべきではないと考えています。都の財政の投入も視野に入れている建設計画なのかどうか、ご答弁を願います。(拍手)
   〔副知事猪瀬直樹君登壇〕

〇副知事(猪瀬直樹君) 採算性について十分に考慮するということは、さっき答弁しました。
 今、事業スキームを検討しているところですので、かなり緻密にやるはずですから、やるというか、これからやって、そしていずれ発表します。
 以上であります。

議長(和田宗春君) 九十番宇田川聡史君
   〔九十番宇田川聡史君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇九十番(宇田川聡史君) ゼロメートル地帯に住む私たちは、常に水の脅威が頭から離れません。大震災による津波や台風による水害が頻発した本年、今までダムや堤防不要論を唱えてきた政党でさえ、水害から命を守るためのハード整備に力を入れるべきと、ようやくご理解をいただいたようであります。
 東京湾で発生する津波は最大二メートル程度、現在の防潮堤や堤防は十分に機能するといわれておりますが、台風などによる高潮が発生し、同時に津波が襲ってきた場合には、果たして耐えられるのでしょうか。こうした異なる災害が重なる確率は非常に低いことだと思います。
 しかし、台風十五号が各地に被害をもたらした九月二十一日、午後十時三十一分、茨城県北部を震源とするマグニチュード五・三、震度五弱の地震が発生したことは紛れもない事実です。都はこうした複合的な災害の発生も見据えて、ハード、ソフトの両面から多面的な対策を講じるべきだと考えます。
 複合災害など、あらゆる事態を想定した対策の必要性が防災対応指針の中で述べられておりましたが、複合災害への備えをどうお考えなのか、知事の見解を伺います。
 江戸川区は三方を水で囲まれている上に、脆弱な低地に存在しております。したがって、津波や高潮、河川の上流部決壊等が発生した場合には、大災害となる可能性が常に存在しているのです。こうした中、避難場所や避難経路の確保が極めて重要だと考えます。
 しかし、江戸川区において一たび浸水被害に見舞われた際には、二カ所の都立公園のみが避難場所たり得るのが現状です。このたび、数年来の私どもの要請にこたえ、都立篠崎公園を高台化する整備計画が発表されましたが、どのような計画なのでしょうか。
 また、その高台が孤立するようでは、避難場所として適切とはいえません。江戸川の堤防等への避難経路はしっかりと確保されるのか、あわせてお伺いいたします。
 一方、今申し上げた避難経路の確保だけではなく、救援活動や緊急物資輸送を支えるための旧江戸川を渡る新たな橋の整備が必要不可欠です。こうした都県境の整備に向けた取り組み状況についてお尋ねをいたします。
 住民避難は基礎的自治体の役割とされておりますが、広域にわたる浸水被害が起きた場合などにおいては、とても区市町村だけでは対応でき得ません。隣県も含めた広域的な避難のシステムをつくり、具体的な手順を盛り込んだ検討や調整を重ね、実態に即した訓練を行うなど、災害を想定した対応が急務だと考えます。こうした広域避難の取り組みについて、都のお考えをお聞かせください。
 また、避難経路の確保や救援物資の搬送に資するためにも、都は今まで防災船着き場を整備してまいりました。国や区、民間なども含めると、都内に整備された船着き場は六十一カ所に及ぶと聞いております。緊急輸送道路を整備する一方で、水上輸送についてもしっかりと取り組みを進めるべきであり、首都直下型地震など、東京に大きな被害が想定される災害発生時には、船の利活用は大きな役割を果たしていくと考えます。この防災船着き場の緊急時の利用を円滑に行うためにどう取り組んでいかれるのか、お尋ねをいたします。
 また、都では、水辺のにぎわいの促進にも取り組んでいるところですが、防災船着き場の平常時の有効利用を図り、舟運を振興させることにより、水辺のにぎわいが創出できると考えますが、見解を伺います。
 次に、中小企業の防災対応力の強化についてお尋ねいたします。
 民間企業が震災などでダメージを受けたときに速やかに体制を立て直し、事業や経営活動を再開できる体制づくりが必要です。しかし、中小零細企業においては、そうした事業継続を図る取り組みに限界があるのだと思います。第三回定例会の中で、災害時などの事業継続計画、いわゆるBCPの策定支援に言及されておりましたが、せっかくつくった計画が実行されなければ何の意味もありません。きちんと実行なされるよう、中小企業のフォローを行っていくべきだと考えますが、都の所見をお伺いいたします。
 次に、水道事業について何点かお尋ねいたします。
 初めに、国際貢献ビジネスについてです。
 昨日の我が党の代表質問において、知事は、アジア諸国への本格進出の主体となる会社を設立し、積極的に事業を展開していく旨、答弁をなされました。また、都が運用を開始した民間企業支援プログラムは、民間企業を数多く募り、企業の海外展開をより一層後押ししていくというものです。海外のさまざまなニーズにこたえていくためには、まさに的を射た取り組みであり、今後とも多くの企業に対し、積極的に支援を行っていただきたいと思います。
 そこで、この支援プログラムの基本的な考えと今後の運用についてのお考えをお伺いいたします。
 次に、水道施設の再構築に向けた基本構想についてお尋ねをいたします。
 都はこのたび防災対応指針を取りまとめ、この指針に従って基盤施設の防災機能向上の施策に全力で取り組んでいくことになります。
 昨年の第四回定例会の私の一般質問で、水道施設については、今後の施設整備に対する新たな考え方の構築が重要と指摘をさせていただきましたが、水道局はこれにこたえる形で、将来の首都東京にふさわしい水道施設の再構築を考える会を設置するなど、基本構想の検討を進めております。特に東日本大震災以降は、想定を超える自然災害や、長期的、複合的災害といった新たな視点を加え、さらなる検討を重ねているとも聞いております。
 間もなく迎える大規模浄水場の更新を契機に、渇水や気候変動などの自然の脅威に対しても安定した水の供給を行えるよう、より確かな水道の再構築が望まれるところですが、安全度についてどう認識されているのでしょうか。どのような方針で基本構想を作成していくのか、あわせてお答えをください。
 水道局では、都民に安全でおいしい水を届けるために、高度浄水などの取り組みとともに、直結給水方式への切りかえを進めています。新築マンションなどにおいては普及が進む一方、既存建物では、貯水槽水道から直結給水への切りかえは進んでいないのが現状です。
 そのため、局では、小中学校における直結給水化の取り組みの推進や、直結切りかえ見積もりサービスを無料で実施するなどの努力を行ってきておりますが、貯水槽水道は都内で十六万件存在し、普及拡大のためには、さらなる新たな取り組みが必要だと考えます。
 直結給水方式は、安全でおいしい水を蛇口から直接飲めるというだけではなく、貯水槽の維持管理が不要になる、ポンプ電力の削減につながるなど、大きなメリットが生じます。
 今後、直結給水方式への切りかえ推進にどのように取り組まれるのか、お尋ねをいたします。
 最後に、京浜港の国際競争力強化について伺います。
 釜山港などのアジア諸港が躍進を続ける中、港湾の国際競争はますます激化しており、このままでは我が国の港湾は世界から取り残されてしまいます。
 京浜港の基幹航路を見ると、平成十年からの十年間で、北米航路では三十三航路から二十九航路へ、欧州航路においては、十七航路から何と七航路へと激減をしており、猶予はありません。京浜港は首都圏の住民生活を支えているにとどまらず、我が国の経済や産業全体を支えており、その重要な役割を果たすためには、基幹航路の維持が必要不可欠だと考えますが、その重要性について都はどう認識されているのでしょうか。今後どのように取り組んでいかれるのか、所見を伺います。
 また、こうした国際的地位の低下に危機感を抱き、京浜港の国際競争力強化に向けた取り組みを実施しております。我々は、自治体の枠を超えた京浜港広域連携推進議員連盟を立ち上げ、取り組みの支援を行ってきたところであり、私も議連事務局長として力を尽くしてまいりました。
 京浜三港の連携は、昨年八月の国際コンテナ戦略港湾の指定獲得や、本年九月の総合的計画の策定などを経て強化を図っており、特に、この計画は我が国の港湾において初の取り組みであり、今後の三港連携にとって非常に大きな意義を持つものと考えます。
 しかし、歴史的経緯や互いの地域特性などにより、三港それぞれにおける異なる事情も存在していることは事実だと思います。こうしたさまざまな課題を乗り越えるためには、三港を利用している船会社や荷主、民間事業者にとって、より使いやすい港として、ハード、ソフトの両面から機能強化をしていくことが重要であります。今後の展開をいかにしていくのかお尋ねいたします。
 東京港の外貿コンテナ貨物取扱量は、アジア諸港に比べればほど遠いとはいえ、増加し続けております。しかし、東京港の最大の弱点ともいえる施設の狭隘により、ターミナル周辺の交通混雑はますます問題視されているのが現実です。
 私は、かねてから、中央防波堤外側コンテナターミナルの整備を契機に、大井や青海などの既存ふ頭の根本的な再編により、機能強化していくべきと繰り返し主張してまいりましたが、こうした施策に加え、東京港周辺の混雑緩和に向けた即効性ある先進的な新たな取り組みを講じていくべきだと考えます。所見をお伺いいたします。
 東京港がアジアの主要港におくれをとった一番の原因は、バックヤードの狭さにあります。しかし、国際基幹航路の維持はもとより、港内の交通円滑化など、効率的な物流拠点として整備することによって、日本の国際物流を支えていくという責務を全うしなければなりません。今を失えば、東京港に未来はありません。さらなる発展のために対策をよどみなく進めていただくようお願いを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 宇田川聡史議員の一般質問にお答えいたします。
 複合災害への備えについてでありますが、今回の震災は、千年に一度の巨大地震や大津波に加えて、原子力発電所の事故も重なりまして、まさに複合災害でありました。
 また、本年九月に発生した台風十五号は、震災の被災地を襲い、仙台市では、仮復旧していた堤防が再び決壊し、浸水被害に見舞われました。
 防災対策とは、起こり得る災害をも複合的に想定して、それに対する適切な対策を講じることにありますが、時として自然はそれをも超える未曾有の被害を引き起こすわけでありまして、こうした事態にも対応していくためには、一つの対策だけではなくて、あくまでさまざまな施策を複合的、重層的に講じていくことが必要であります。
 海抜ゼロメートル地帯の対策についても、水門、防潮堤などの耐震強化や水門の遠隔操作の司令塔となる高潮対策センターの二拠点などの対策を着実に進めてまいりますし、あわせて関係区と連携して、水門、陸閘の閉鎖を伴う退避訓練を実施するなど、ハード、ソフト両面にわたり有効な手だてを講じていくつもりであります。
 考え得る施策を総合し、複合災害などあらゆる事態を想定した災害への備えを固め直しまして、東京の総力を結集して災害に立ち向かっていく所存であります。
 それにしても、かつて事業仕分けなる政治手法の中、首都東京のゼロメートル地帯のためのスーパー堤防が中途半端にできているのをスーパーむだと称した大臣が、しかもこの人は東京出身のようでありますけれども、一体何を考えておるのかと思わざるを得ませんですな。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、都立篠崎公園の整備計画と堤防への避難経路確保についてでございますが、同公園は、東京都の東部地域を代表する都市計画公園で、計画面積八十六・八ヘクタールの広域公園であります。
 都は、都立篠崎公園の整備計画を平成二十三年一月に公園審議会に諮問し、同年十一月十七日の審議を経て、現在、中間のまとめとして都民意見の募集を行っているところであります。
 整備計画においては、平時の利用と災害時に果たす役割を勘案して、公園内の広場を高台化し、避難動線の確保を図ることとしております。この避難動線の確保については、公園の外からも、だれもが無理なく高台へたどり着くことができるように、緩やかな勾配とし、高台の広場を通り江戸川の堤防へ導くものであります。
 次に、旧江戸川を渡る新たな橋梁の整備についてでございますが、江戸川区と千葉県との境に位置する放射一六号線と補助第一四三号線の橋梁の整備は、都県境付近における道路ネットワークの形成を図るとともに、都市間の連携強化や防災性を向上させる上で重要であり、都では、第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけております。
 両路線の橋梁部については、整備時期や事業手法など千葉県との合意形成が課題であり、県と道路橋梁整備調整会議を設置し協議を行っております。
 今後、道路構造や周辺道路への影響など、千葉県とともに検討を進め、都県境を渡る橋梁整備の事業化に向け、積極的に取り組んでまいります。
 次に、緊急時に防災船着き場を円滑に利用するための取り組みについてでございますが、防災船着き場は、災害時に船により被害者を避難させ、物資を緊急輸送するための施設であり、現在設置されている六十一カ所のうち、都は十五カ所を、その他は国や区などが管理しております。
 都はこれまでも、国や関係機関と連携し、災害発生時に円滑な対応ができるように、さまざまなケースを想定した訓練を実施しております。
 ことしの東京都総合防災訓練におきましては、四十分後に津波が押し寄せる想定のもと、運航中の水上バスから乗客を最寄りの船着き場へ緊急避難させる訓練を行いました。また、本年十一月には、東京消防庁と合同で、震災時に主要道路が寸断された場合でも、大規模災害現場で消防活動が行われるよう、河川清掃船や屋形船を活用した消防器材や消防隊員の輸送訓練を実施いたしました。
 あわせて、都が管理する主要な八カ所の船着き場では、緊急時の迅速な乗客の避難や物資の輸送を可能とするため、河川からアプローチを容易にする扉の改良を行うとともに、屋形船の組合などと船着き場の利用ルールについて協議を進めております。
 今後とも、災害時に河川舟運が有効に機能を果たすよう、関係機関と相互に連携し、防災船着き場の円滑な活用に取り組んでまいります。
 最後に、防災船着き場を平時に有効利用して、水辺のにぎわいを創出することについてでございますが、東京の河川を人々が集う水辺空間にしていくためには、船着き場を川と陸とのネットワークの拠点として活用していくことが重要でございます。
 都ではこれまで、地域の催しや小中学生の環境学習などで船着き場を活用してまいりました。さらに今年度は、隅田川の川辺における桟敷を設置した納涼イベントや、仮設芝居小屋での歌舞伎公演に合わせて、近隣の船着き場に水上バスを発着させるなど、観光イベントと舟運を積極的に組み合わせることで、人々を川に呼び込む試みを行いました。
 また、東京都公園協会が、東京スカイツリーをラッピングした水上バスを運行しているほか、水深の浅い北十間川や旧中川でも運行できる小型水上バス、「カワセミ」を導入して、区管理の船着き場にも発着させ、江東内部河川の観光舟運の機運を高めております。
 さらに、各種クルーズの新たな発着拠点となるよう、都内においては、国や区に先駆ける独自の施策として、防災船着き場の一般開放を、隅田川の越中島と明石町で実施しております。
 今後は、都みずからは無論のこと、国や区が管理する防災船着き場の一般開放を促すなど、観光舟運のネットワーク拠点の拡大を図り、水辺のにぎわいを一層推進してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 広域避難の取り組みについてでございますが、複合災害などにより大規模な浸水が生じた場合には、区市町村の区域を大きく超えた避難も想定されることから、住民の避難において主たる役割を担う区市町村にとどまらず、都としても広域行政の立場から、避難のあり方や具体の方策を講じていく必要がございます。
 このため、東京都防災会議のもとに、区市町村や防災機関、学識経験者などから成る検討組織を設置し、海抜ゼロメートル地帯における避難誘導や避難者の受け入れ調整など、広域的な避難対策について具体的な検討を行うプロジェクトを推進してまいります。
 そして、この検討結果を踏まえ、九都県市など近隣自治体とも連携を図りながら、広域避難にかかわる仕組みづくりを進め、大規模な浸水被害などへの備えを固め直してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 中小企業の防災対策についてのご質問にお答えいたします。
 都内の中小企業が災害の影響を受けても事業を安定して継続するためには、事業継続計画、BCPの策定が重要であり、都は、昨年度から中小企業のBCP策定を支援する取り組みを開始しております。
 今年度は、東日本大震災の発生を踏まえ、支援企業の数をふやし、この二年間で百を超える会社が計画を策定する見込みとなっております。こうした企業のうち、震災時のBCPを策定した企業が、その計画どおり事業継続を実現するためには、現場で事業に携わる社員の安全性や生産設備の正常な稼働を確保できるよう、施設の耐震性を高める取り組みが必要になります。
 このため、都のサポートにより震災時のBCPを策定した企業が、地震発生による施設へのダメージを抑える耐震性の強化に取り組む場合に、モデル的に支援することを検討しております。
 こうした対応により、BCP策定の必要性に対する理解を広げて、中小企業の防災力の向上を実現してまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 三点のご質問にお答えします。
 まず、水道の海外展開における民間企業支援プログラムの基本的な考えと今後の運用についてでございますが、海外の数多くのニーズに的確にこたえ、水事情の改善に貢献するためには、民間企業との連携の強化が不可欠であります。
 そこで、日本の民間企業の海外展開を支援し、コンソーシアム形成を促すための仕組みとして、本支援プログラムを創設し、当局の国際貢献への取り組みに賛同する企業を広く公募しましたところ、五十五社の登録を得ました。
 このプログラムでは、これらの企業や相手国からの依頼に基づくマッチング機会の提供のほか、水道局施設への視察の受け入れ、相手国政府等への協力表明など、企業からのヒアリングで要望の多かった項目を体系化して提供することとしております。
 今後は、さらに多くの企業の参加を得るため、随時の募集を行うとともに、適宜、支援項目の拡充、見直しを実施していくことで、このプログラムを充実させ、日本企業の海外展開を積極的に支援してまいります。
 次に、水道施設の再構築に係る安全度の認識と基本構想の策定についてでありますが、水道は、都市を形成する基幹的なライフラインであり、大規模な断水は、人々の生活を直撃するだけでなく、都市機能を麻痺させるおそれがあるなど、その影響ははかり知れません。
 我が国では、未曾有の大震災後も、頻発する余震や大雨による土砂災害などに見舞われ、また、世界では、大洪水や干ばつなどが猛威を振るっております。
 このように、地球的規模で顕在化している自然の脅威に対して、首都東京の大動脈である水道を将来にわたり守り続けていくためには、さまざまなリスクに対して高い安全度を備えることが不可欠であります。
 続いて、基本構想の策定方針につきましては、都の水道は、間もなく一斉に大規模浄水場の更新時期が到来し、これらを再構築していく転換期を迎えることとなります。このため、これを契機に、水道システム全体の安全度を高める観点から、施設の再構築のあり方について、有識者による外部委員会に検討を依頼してきたところでございますが、このたび、同委員会から、再構築の目指すべき方向性などについて幅広い提言をいただきました。
 具体的には、水源や施設は、需要への対応はもとより、渇水や事故、災害などのさまざまなリスクを考慮し、高い安全度を確保していくこと、また、将来の水道需要を見通すに当たっては、既往実績への対応はもとより、人口動態や社会経済状況などのさまざまな要素の不確実性を踏まえ、十分な安全性を考慮することなどの提言を受けました。
 この提言の趣旨や、これまでの都議会でのご指摘を十分に踏まえ、渇水や地震、事故を初め、さまざまなリスクに対する新たな安全度の考え方を取り入れ、今年度末までに、首都東京にふさわしい水道施設の再構築に向けた基本構想を策定いたします。
 最後に、貯水槽水道方式から直結給水方式への切りかえについてでありますが、当局では、平成七年度に、貯水槽なしにポンプで直接各階に送る増圧直結給水方式を採用して以来、さまざまな切りかえ促進策を行ってきており、平成十九年度からは、さらなる拡大策を講じるとともに、直結切りかえ見積もりサービスを実施しております。これらの取り組みにより、直結給水への切りかえは徐々に増加しており、平成二十二年度の年間切りかえ件数は約三千件となっております。
 しかし、都内の貯水槽水道は、いまだ約十六万件残っており、さらなる取り組みが必要であると考えております。今後、さらに安全でおいしい水の供給やエネルギー削減を図っていくためには、既存の建物における貯水槽水道からの切りかえが極めて重要であります。このため、今後、これを促進する新たな対策を検討してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 東京港、京浜港に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、京浜港における基幹航路の重要性と今後の取り組みについてでありますが、ご指摘のとおり、基幹航路の維持は、東京のみならず首都圏そして我が国の産業や市民生活にとって極めて重要であると認識しております。仮に、基幹航路がなくなった場合には、積みかえ作業の発生によるコストや輸送日数の増加などが生じることにより、消費者物価の上昇や企業の海外流出が加速するなど、多方面にわたって深刻な影響があらわれることになります。
 こうした事態を回避すべく、東京港としては、ターミナルコストの低減を図るとともに、新たな集荷補助制度の創設や東京港埠頭株式会社の営業体制の強化など、多様な貨物集荷策を実施しております。
 また、京浜三港の新たな取り組みとして、九月には、京浜港の総合的な計画を策定し、コンテナ船の大型化やアジア地域における貨物量の増加に対応できる施設整備を効果的、効率的に進めていくこととしております。
 今後とも、三港連携のもと、これらの施策を確実に進め、基幹航路を全力を挙げて堅持してまいります。
 次に、京浜三港の取り組みについてでありますが、京浜三港は、平成二十年の基本合意以降、コンテナ船の入港料一元化や、東京湾内を運行するコンテナバージの入港料全額免除など、利用者本位の使いやすい港づくりに取り組んでまいりました。
 今後は、利用者へのメリットをさらに拡大していけるよう、三港間における横持ち輸送の一層の円滑化や、低コスト化に努めてまいります。
 具体的には、三港間の横持ち輸送に係る支援策の実施や、コンテナバージの効率的な運航確保に向けた係留施設の確保などの施策を進めていくとともに、国道三五七号線の整備促進を国に引き続き強く要望してまいります。
 今後とも、港湾関係者の実情や意見も十分に踏まえつつ、三港の特徴を生かした総合港湾としての機能を最大限発揮し、ユーザーにとってより使いやすい港となるよう取り組んでまいります。
 最後に、東京港周辺の混雑緩和に向けた対策についてでありますが、都はこれまでも、コンテナ車専用レーンの設置など、さまざまな対策を講じてまいりましたが、コンテナ貨物取扱量が右肩上がりに増加する中で、抜本的な解決には至っていない状況にございます。
 このため、中央防波堤外側埋立地に、新たなコンテナターミナルを整備するなど、東京港の処理能力を飛躍的に向上させる取り組みを進めておりますが、こうした取り組みには一定の時間を要することから、短期的に効果が得られる対策も、あわせて講じていくことが重要であります。
 このため、今月五日から、翌朝の配送に備え、コンテナトレーラーが集中する夕方の交通混雑を緩和する対策として、本格的な早朝ゲートオープンの取り組みを全国で初めて開始いたしました。さらに、今年度中に、中央防波堤埋立地において大規模な車両待機場の整備に着手し、一般通行車両への悪影響を軽減することとしております。
 今後とも、東京港周辺の交通混雑の緩和に向け、ハード、ソフト両面から創意工夫を凝らし、複合的、重層的な対策を全力で実施してまいります。

副議長(ともとし春久君) 四十八番しのづか元君。
   〔四十八番しのづか元君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇四十八番(しのづか元君) 初めに、生物多様性の重要性と緑の確保策について伺います。
 昨年十月に、名古屋市で開催された生物多様性条約第十回締約国会議、COP10では、生物多様性を保全するための愛知ターゲットと遺伝資源を利用する際の利益配分の国際ルールを定めた名古屋議定書が採択されました。その結果、生物多様性の価値を経済の仕組みに入れていく新しい社会づくりの流れが出てきたのです。これからは自然資源を持続可能に活用しなければ、企業も生き残れない時代となります。
 愛知ターゲットは、二〇一一年以降の生物多様性保全に関する国際目標であり、二〇五〇年までの長期目標、二〇二〇年までの短期目標と五つの戦略目標、二十の個別目標から成ります。
 その中の地方自治体と生物多様性に関する愛知・名古屋宣言では、地方自治体は、生物多様性条約の目的を果たし、生物多様性減少の進行を食いとめる上で重要な役割があり、この役割を果たしていくと誓っています。生物多様性の確保において、自治体の役割とその重要性が明確化したのです。
 都内では、郊外部の民間開発により、多くの緑が失われつつあります。民有地の緑の保全策については、あらゆる手段をもって対応していますが、実際に保全の手だてが講じられた事例は多くありません。この分野に有効な保全方策が講じられる必要があると考えます。
 そこで、都がこれまで取り組んできた緑の保全策について伺います。
 私の地元多摩市、稲城市は、都心から電車で一時間以内ですが、里山の風景とともに、そこには、蛍やオオサンショウウオ、タマノカンアオイなど、貴重な動植物が生息している場所があります。世界の先進国の首都の中でも、このような環境があるのは東京だけといっても過言ではなく、東京の大きな強みでもあると思います。だからこそ、残された緑を保全し、里山のように、適切に維持管理していくことが求められます。
 民間の開発による生物多様性の喪失を回避するには、国や都や区市町村がその緑地を確保することが考えられますが、特に、基礎的な自治体の場合、土地取得にかかる費用や維持管理の経済的な負担が大きく、なかなか保全につながっていない実態があります。緑を保全、確保することが財政逼迫につながらない仕掛けが必要です。企業など民間の力をもっと引き出すべきです。
 民間の活用として、現在、都が実施している温室効果ガスキャップ・アンド・トレードでは、電気エネルギーなどを削減した実施量だけが有効なクレジットになっていますが、それに加え、新たな開発などで失われる自然を、他の場所や労力、資金などで代償することにより、企業や事業所に対してインセンティブを与える仕組みの創設なども考えられます。比較的近い施策として、グリーンシップ・アクションや企業の森制度がありますが、あくまでも企業の社会貢献の一環であり、より強力な義務として、自然環境の保護、緑の保全力を上げる必要があると考えます。
 世界じゅうの企業が集積し、アジアのヘッドクオーターを標榜する首都東京。常に日本の環境行政をリードしてきた東京こそ、COP10の成果を踏まえ、国に先駆けて生物多様性の価値を経済の仕組みに入れていく新しい仕組みづくりに、いち早く取り組むべきと考えます。この生物多様性の重要性の認識と緑の確保について、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、教育再生における教師の育成について伺います。
 知事は、従来の制度や常識、慣行にとらわれずに、今後の教育のあり方について議論することを目的として、教育再生円卓会議を設置し、先月その第一回目が開催されました。今後、そこでの議論を踏まえて、具体策を教育現場での試行や国への建言をしていくとしていますが、私は、教育再生には教師の育成が最も重要なかぎを握っていると考えます。
 都教委は、二〇〇八年に、東京都教員人材育成基本方針を策定し、毎年四千人ともいわれている大量退職、大量採用時代の到来にあって、教育に求められる教師像を実現するために、職層に応じて身につけるべき力を推進する体制を構築してきました。OJTの活用や研修、大学との連携など、さまざまな取り組みを行ってきたことは評価をいたします。
 現在、都教委が展開している人材育成の取り組みは多様でありますが、もっと早い段階で、大学在学中の四年間、時間をかけて人材を育成できれば、即戦力として、四月から教壇に立つことが可能になるのです。特に最近は、教師の指導力不足、小学校教諭を希望する学生の減少や部活を指導できる教師の減少、主幹教諭や校長、副校長など管理職のなり手が少ないことなどをよく耳にしますし、学校を取り巻く社会状況の変化により、教育における課題は複雑化、多様化しています。それらを解決するのに有効な処方せんが都独自の大学期における人材育成であると考えます。
 東京教師養成塾で似たような取り組みは行われていますが、実施期間も短く、本格的な取り組みとはいえません。
 具体的には、現在の教員養成システムとは異なりますが、消防士を養成する消防学校や、看護師を養成する看護学校のように、目的意識を持った学生を都の責任で都教委の教育方針や人材育成方針に沿って養成するのです。
 例えば、その養成課程を修了すれば、採用試験を免除するなどのインセンティブを与えれば、早い段階で優秀な人材を発掘することが可能になります。さらにいえば、東京都は、公立の小中学校、都立高校、特別支援学校など、その実習現場が豊富にあり、補助教員として実践を経験させることによって、学習指導力や問題解決能力を身につけさせることができますし、本人や都教委にとっても、そして、独自予算で補助教員を採用している区市町村にとってもメリットがあると考えます。
 人は財産であり、組織の根幹です。学校経営の時代にあって、その土台づくりから始めても遅くはないと思います。将来を見据え、人づくりの根幹をなす、教師の育成をもっと早い段階から取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、都営住宅政策の転換について伺います。
 一九五一年、昭和二十六年に、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することを目的に公営住宅法ができてからことしで六十年、現在、都内の住宅ストック数は世帯数を一割以上上回り、七十五万戸ある空き家は、今後も増加が予想されています。しかし、都内に二十六万戸ある都営住宅の入居希望者は、年間延べ二十万人、平均二十五倍もの競争率となっており、依然として狭き門です。
 住宅に困窮する低額所得者とは、東京でいえば、四人家族で年収四百五十万円程度までの世帯が該当し、全世帯の約二五%までとなっています。しかしながら、現在のルール上、実際に入居してしまえば、収入が資格条件を上回っても明け渡し請求の対象とはならないので、結局、本当に住宅に困窮する多くの人たちが入居できていない現状にあります。しかし、だからといって、ニーズを酌んで増築せよという意見には賛成しかねます。つまり、間口は広く出口が詰まっている状態なのです。この詰まりを解消するには、入居資格を現行の収入分位二五%から二〇%以下に下げ、対象を限定することや、収入が資格条件を上回った場合の明け渡しの徹底などが考えられます。
 このように、真の住宅困窮者に住宅を提供できるよう、セーフティーネット機能をさらに強化すべきと考えます。都の所見を伺います。
 都営住宅の区市町村ごとの配置状況は、全くないあきる野市から、多くの都営住宅を抱えている足立区や江東区など、適正配置とはいいがたい状況です。多くの非課税世帯や生活保護世帯が生活する都営住宅を受け入れるということは、区市町村にとっては、福祉や教育など、独自の財政支出を伴います。また、域内においても、大規模団地の存在による課題が生じていると聞きます。
 一方、都営住宅は、住機能のセーフティーネットとして、都民が居住地域を変えることなく、都心においても、郊外においても、ひとしく享受できるサービスであるべきであり、居住における福祉政策でもあります。その意味においても、自治体間の供給数の偏在を是正することが求められるのです。
 このような都営住宅の偏在によって生じる課題について、都はどのような認識を持っているのか見解を伺います。
 現在、老朽化した団地を高層化、集約化して、型別供給方式により建てかえが進められています。しかし、一度建てたら今後七十年もの間、維持管理していかなければならず、そもそも、この先、公設公営で二十六万戸の都営住宅を維持していくかどうかを再検討すべきです。
 維持管理にかかる経費を抑え、大量の民間の空き家を解消するには、民間の空き家ストックの活用による借り上げ方式の導入が最も有効な手段であると考えます。その活用などで、自治体間の不公平な配置バランスを調整し、大規模団地の中小規模化を図り、年齢、職業、所得水準などが異なる人々が同じ地域で交流して暮らせるようにするソーシャルミックスを目指すべきと考えますが、所見を伺います。
 今回の我が会派の海外調査団も調査してまいりましたが、イギリスのロンドンやアメリカのニューヨークなどでは、アフォーダブルハウジング制度という、大都市において民間が高額所得者向けのマンションの建設や住宅地の開発をする場合に、低所得者向けの住宅も一部組み込んで販売または賃貸することを義務づける制度をつくり、民間事業者による低所得者向けの住宅供給を推進しています。
 このアフォーダブルハウジング制度の導入など、新たな開発に対する規制誘導策についても検討すべきと考えます。都の見解を伺います。
 これらを踏まえ、都の住宅政策として、早急に都営住宅政策の転換を図る必要性があると考えます。今後の住宅政策における公営住宅の果たすべき役割と展望について認識を伺います。
 最後に、保育について伺います。
 平成二十三年四月現在の就学前児童人口約六十一万人に対する保育サービスの整備率は約三割です。東京都の緊急三カ年事業や区市町村独自の取り組みにより、待機児童数は七千八百五十五人と、昨年四月より五百八十人減少しましたが、潜在的な待機児童数を視野に入れると、保育所整備は依然として喫緊の課題です。
 緊急三カ年事業の事業期間は終了してしまいましたが、保育所整備拡充並びに待機児童解消には、引き続き特段の取り組みが必要と考えます。都の見解を伺います。
 地域主権改革推進法が成立し、児童福祉施設の基準が条例委任されました。中でも保育施設は、都や区市町村の国制度への上乗せ基準や補助もあり、待機児童が多く、高い保育ニーズへの対応が必要な一方、土地や人件費の高い大都市ならではのコスト負担の間で非常に悩ましい状況です。
 こうした状況に対し、東京都児童福祉審議会の専門部会では、激論の末、年度途中で児童を受け入れる際には、認証保育所と同じく、一人当たり三・三平米の基準に対し二・五平米までの緩和を認めるという取りまとめが行われたと聞いています。しかし、待機児童解消までという時限的な保育士雇用が困難などの課題もあり、緩和は行わない方向性の自治体が多いようです。
 一方、都の調査では、ゼロ歳児の認可保育所面積基準三・三平米に対し、実際は五・七五平米と上回っています。それでも待機児童の受け入れにつながらないのは、一歳児は基準近くで運用されており、ゼロ歳児を多く受け入れると、翌年は学年進行する一歳児が多くなるため、保護者の育児休暇明けなどによるニーズが高い一歳での入所児童の受け入れ数が減少してしまうといった事情もあるようです。待機児童が最も多い一歳児の受け入れ枠がふえなければ、待機児童問題の根本的な解決にはつながりません。
 そこでまず、喫緊の課題である一歳児の受け入れ枠の拡充に都としてどのように取り組むのか伺います。
 保育の質は、単に面積の問題ではなく、少子核家族化の中、子どもや家庭が抱える悩み、障害や疾病への対応、社会性の涵養など、求められる役割が急速に多様化している今、保育力の向上への支援策も必要です。
 また、多摩地域では、三月十一日、都心に勤める保護者が帰宅困難となり、急遽お泊まり保育を行う事態が発生しました。首都直下地震など大規模災害時に、保育所はどのように子どもの命を守るのか、震災対策への一層の対応が必要となっております。
 したがって、待機児童の受け入れを進めるためにも、今後、運営費や職員確保、専門性向上、震災対応などへのさまざまな支援も積極的に検討する必要があると考えます。都の見解を伺って、私からの質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) しのづか元議員の一般質問にお答えいたします。
 生物多様性と緑の確保についてでありますが、多様な生物とその生息環境を守り、これを将来世代に伝えていくことは、人々が安心で健康的に暮らす生活の基盤ともなる重要な取り組みであると思います。
 東京には、レンジャーの配置やエコツーリズムなど、都が全国に先進して取り組みを進めた節もありまして、先般、世界自然遺産にも登録された小笠原諸島や奥多摩の山々のように、動植物が豊かな大自然がある一方で、ビルに囲まれた都心の中にも、さまざまな生物が生息している公園や緑地がありまして、多彩な自然を織りなしていると思います。
 人間は、自然との共生なくしては存在し得ないことでありまして、東京で営まれる経済活動は、自然との調和を図りながら展開していかなければならないと思います。
 近年、都心部では、ビルの低層部分の庭園に野鳥が訪れる森をつくるなど、自然植生をよみがえらせ、生物にとってもすみやすい都市空間を生み出す先駆的な再開発プロジェクトも進んでおります。
 今後とも、さまざまな主体の参画を得ながら、東京の豊かな緑の保全と、さらなる創出を図る施策を重層的、多角的に展開し、人間と自然が共生し続けられる都市へと東京を導いていきたいものだと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 学生段階からの教師の育成についてでございますが、教師を目指す高い志を持った学生を早い段階から実践力に富んだ人材に育成していくことは重要であると認識しております。
 このため、都教育委員会は、平成十六年度から、都の教員を目指す学生が実践的指導力や社会性を身につけ、新人教員の中のリーダーとして活躍できるよう、東京教師養成塾を開校し、毎年百五十人程度の学生に対し、特別教育実習、ゼミナールや体験活動等、一年間にわたり、都独自のプログラムによる実践的訓練を実施してまいりました。既に八百人を超える修了生が現場で活躍しております。
 お話の教員養成につきましては、戦前は、師範学校等の専門の学校で行われておりましたけれども、現在は、幅広い視野と高度の専門的知識、技能を兼ね備えた多様な人材を教育現場に迎え入れるために、いわゆる教員養成系大学に限らず、教職課程を有するすべての大学で教員養成が行われております。
 都教育委員会は、大学での養成と採用選考、採用後の育成を一体のものとしてとらえており、教職課程を有する大学で教員を目指す学生が、より実践的な知識、スキル、能力の修得ができるよう、教員として必要な資質、能力を明確に示した小学校教諭教職課程カリキュラムを策定いたしまして、現場からの提案として、全国の大学に提示するとともに、首都圏の教員養成課程を有する大学に対しては、説明会をも実施しております。
 あわせて、目的意識を持って学ぶ学生の自己啓発のよすがとなるよう、教員の仕事の実際や大学で学ぶべきこと等を具体的に記述した学生向けハンドブックを十二万部作成し、全国の教員養成課程を有する大学に配布しております。その上で、小学校教諭教職課程カリキュラムで示した資質、能力を採用選考で検証することにより、優秀な人材を確保しているところでございます。
 今後とも、大学等と連携しながら、創意工夫を重ねて、すぐれた新人教員の養成、確保に努めてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 都におけます緑の保全の取り組みについてでございますが、都はこれまでも、自然保護条例に基づきまして、東京に残された丘陵地や里山を保全地域として指定する取り組みを進めてまいりました。同じく、条例に基づく開発許可制度におきまして、自然地を含む土地を対象とする一定規模以上の開発行為に対して、一定割合の緑地面積の確保を義務づけておりまして、平成二十一年度には、緑地基準の強化を行いました。
 今後とも、これら緑を守る取り組みを着実に推進することによりまして、東京に残されました貴重な緑を保全してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営住宅のセーフティーネット機能についてでございますが、都営住宅は、市場において、自力では適正な水準の住宅を確保することが困難で、住宅に困窮する都民の居住の安定を確保する役割を担っております。都営住宅の募集においては、公募による選定を原則とした上で、高齢者や障害者、子育て世帯など、特に居住の安定を図る必要がある都民に対し優先入居を実施しております。
 一方、都営住宅の基準を超過する収入のある居住者からの割り増し使用料の徴収、高額所得の居住者に対する明け渡しの請求などにも努めているところでございます。
 今後とも、こうした対応により、真に住宅に困窮する都民に対して、都営住宅を公平かつ的確に供給してまいります。
 次に、都営住宅の配置状況についてでございますが、都営住宅は、戦後の著しい住宅不足や高度経済成長期の急速な人口集中による住宅難の中で、地元市等の要望も踏まえながら、用地の確保を図り、建設を進めるとともに、これに合わせ、地域を支える生活基盤である小中学校、道路、公園などの整備も行ってまいりました。こうした取り組みにより、都民に住宅セーフティーネットの形成を図るとともに、良好な居住環境の創出に寄与してきたと考えております。
 都としては、都営住宅約二十六万戸のストックを有効活用する観点に立って、少子高齢化の進行などの課題も踏まえ、老朽化した住宅の建てかえを進め、バリアフリー化された住宅に更新するとともに、敷地の有効利用を図って用地を生み出し、地域のまちづくりに寄与してまいります。
 次に、地域のソーシャルミックスについてでございますが、都では、住宅に困窮する都民に対しては、都営住宅ストックの活用により対応することを基本としており、都営住宅の建てかえに当たっては、世帯構成に応じた間取りの住戸を提供し、多様な世帯が入居できるようにしております。入居者の募集に当たっても、子育て世帯に対する当せん倍率の優遇制度や若年ファミリー世帯向けの期限つき入居を実施し、若年世代の入居を促進しているところでございます。
 また、大規模団地などでは、建てかえに際して創出した用地を活用し、地域の特性に応じて、民間事業者による住宅、保育所やグループホーム等の施設を整備するなど、多様な人々がともに暮らす地域コミュニティの形成に寄与しております。
 次に、民間事業者による低所得者向けの住宅供給についてでございますが、先月出された東京都住宅政策審議会答申においては、住宅困窮者に対し、公営住宅の公平かつ的確な供給を図るとともに、民間事業者など多様な主体と連携し、重層的かつ柔軟なセーフティーネットの構築を図ることが重要とされております。
 今後、この答申を踏まえ、年度内に新たな住宅マスタープランを策定し、必要な施策を実施してまいります。
 お話の英国や米国での都市開発における、いわゆるアフォーダブルハウジング制度は、必ずしも低所得者層のみを対象とするものではなく、また、土地利用規制や建築規制の考え方が欧米諸国とは異なる我が国には、そのまま導入することは難しいと考えております。
 最後に、公営住宅の果たすべき役割と展望についてでございますが、都は、平成十三年度に策定した住宅マスタープラン以降、従来の住宅政策を抜本的に見直し、市場機能の活用やストックを重視する政策へと転換してまいりました。こうした中で、都営住宅は、市場において、自力では適正な水準の住宅を確保することが困難な世帯に対応し、市場機能を補完する役割を果たしてまいりました。
 今回の答申では、こうした役割に加え、都営住宅ストックを活用し、木密地域の整備改善や、老朽マンション建てかえの促進など、高度防災都市づくりを推進することが提言されております。都営住宅は、引き続き、住宅セーフティーネット機能の中心的役割を担うとともに、ストック活用により、都市づくりの課題にも対応してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、待機児童解消に向けた取り組みについてでございますが、都は、保育ニーズの増大に対応するため、平成二十年度から保育サービス拡充緊急三カ年事業を開始し、平成二十二年度からは、その取り組みをさらに進めた少子化打破緊急対策事業に取り組んでまいりました。この間、施設整備を行う事業者や区市町村の負担を軽減いたします都独自の支援、家庭的保育の共同実施など、多様な取り組みを行い、平成二十年度から三カ年で保育サービスを新たに二万四千六百十三人分整備をいたしております。
 東京都保育計画では、平成二十二年度から平成二十六年度までの五カ年で、保育サービス利用児童数を三万五千人ふやすことにしており、今後とも目標の早期達成に向けまして、さまざまな施策を積極的に展開してまいります。
 次に、一歳児の受け入れ枠の拡充についてでございますが、保育の実施主体である区市町村は、待機児童の年齢などを踏まえて、認可保育所や認証保育所、認定こども園、家庭的保育など、多様なサービスを組み合わせて保育サービスを整備いたしております。
 都は、地域の実情に応じたサービスの基盤整備を促進するため、一歳児を初め、特にニーズの多い三歳未満児の定員拡充に積極的に取り組む区市町村に対しまして、開設準備経費の補助率をかさ上げすることにより、重点的に支援をいたしております。
 また、基準面積の弾力的な運用を可能とすることも、既存施設の柔軟な活用に有効でございまして、都の認可保育所の設備運営基準にこれを取り入れることについて、現在、児童福祉審議会でご審議をいただいております。
 最後に、保育所に対する支援についてでございますが、保育サービスの拡充に当たりましては、サービス基盤の整備に加え、サービスを担う質の高い人材の確保、さらには安全な環境の整備が重要でございます。
 このため、都は、保育士の有資格者を対象といたしました就職支援研修と就職相談会を一体的に実施をいたしますほか、区市町村が行う認可保育所職員等を対象といたしました研修事業を支援いたしております。
 また、保育施設において、延長保育や休日保育の充実など、運営面での努力や防災対応力の強化が図られますよう、子育て推進交付金や子ども家庭支援区市町村包括補助によりまして、保育の実施主体でございます区市町村を支援いたしております。

議長(和田宗春君) 三十九番遠藤守君
   〔三十九番遠藤守君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十九番(遠藤守君) 初めに、都が策定中の「二〇二〇年の東京」について質問をいたします。
 この新しい計画は、現在の「十年後の東京」を充実強化し、中長期的な都政運営の道筋を明らかにするものと位置づけ、防災、エネルギー、国際競争力の強化を三つの柱に据えていることが既に明らかになっております。
 二〇二〇年の東京のあるべき姿を、都みずからが明らかにすることは、東日本大震災から立ち直ろうとする日本に対して、復興の道筋を示すことにもつながっていきます。こうした意味からも、新しい計画は、現在の「十年後の東京」の成果を十分に踏まえ、将来に向けた明るい、そして、都民に安心感を与える展望を示すべきであります。
 そこでまず、計画期間の半ばを迎えた「十年後の東京」をどう検証、総括し、今回の新しい計画に反映させようとしているのか、答弁を求めます。
 次に、計画の策定プロセスについて申し述べます。
 石原知事の就任以降、都は、東京構想二〇〇〇及び現在の「十年後の東京」の二つの総合計画を策定、推進してきました。このうち「十年後の東京」は、あえて都市ビジョンという名称を用いて、知事及び都が重視する施策を重点的かつビジュアルにまとめ、都民にわかりやすく提示した点が、従来のプランにはなかった点だと思います。こうしたこれまでにない手法のため、「十年後の東京」及び「二〇二〇年の東京」が総合計画といえるのかとの声もありますが、これらのプランが、現在及び今後十年にわたる都の行財政運営の基本指針となることから、広義の総合計画と位置づけ、以下、質問をいたします。
 第一は、多様な意見の聴取についてであります。
 自治体計画は、その内容はもちろんのこと、策定手続にも重要な意味があるとされております。とりわけ肝心なのは、主権者たる都民の意見をいかに丁寧にくみ上げたかにあります。過日公表された都民生活に関する世論調査でも、これからの都政の進め方に対してどんなことを望みますかとの問いに対し、都民の意見や要望をよく知るが三九%で最も多かったという結果が出ております。「二〇二〇年の東京」の策定プロセスにおいて、都民ニーズをどう聴取したのか、答弁を求めます。
 第二は、「二〇二〇年の東京」の着実な推進に必要となる財源の確保についてであります。
 「十年後の東京」では、施策の実効性の観点から、三つの基金を創設し、年々それを取り崩しながら施策推進を担保してきました。国による法人事業税の収奪、東日本大震災や超円高による企業業績の不振など、将来にわたる確かな財政収支の見通しがつかない中ですが、計画の実効性はしっかりと担保されるべきであります。見解を求めます。
 この項の最後に、計画策定における執行機関と議会の相互連携、これについて申し述べます。
 いうまでもなく、我々都議会は、条例や予算など、都の最高意思決定に携わっておりますが、これらと並んで重要とされるのが、「二〇二〇年の東京」のような総合計画へのかかわりであります。
 ことし四月の地方自治法改正により、総合計画の策定及びその議会議決は、それぞれの自治体の判断にゆだねられることになりました。同法の規定はそもそも市町村を対象にしたもので、都道府県は対象外でありますが、同法制定当時の国会審議をひもといてみると、地方団体の意思機関たる議会が、総合計画にかかわる重要性が指摘をされております。この点については、東京大学の金井利之教授の以下の指摘が、問題の本質を的確についております。
 総合計画は、執行機関である首長の計画ではなく、自治体という団体として首長、議会の両者の合意のもとに策定されるべきものである。議会の議決を経ることによって、条例、予算と並ぶ最上位のマスタープランとしての正統性を主張できると。
 都議会公明党は、以上のような総合計画の重要性にかんがみ、八月に「二〇二〇年の東京」調査PTを立ち上げ、知事本局と議論を重ねてきました。それらを踏まえ、先月二十一日、石原知事に対して、「二〇二〇年の東京」に盛り込むべき事項について要望したところであります。
 この要望には、重点施策として、一つ、高齢者対策、特に単身高齢者への支援と住まいの確保、二つ、地域における医療と介護の連携強化、そして三つ、低所得者及び離職者への総合支援など六項目を掲げ、あわせて、施策推進のための基金等の創設及び事業の到達目標や達成時期を数字で明記することなどを求めてきました。これら一連の取り組みは、ひとえに総合計画の策定、推進を通じて、執行機関と議会が互いにより強く連携し、都民の負託にこたえたいとの強い発露によるものであります。
 「二〇二〇年の東京」の着実な推進こそが、安全・安心の首都東京の構築、そして、震災からの早期復興に寄与するものと確信し、その達成に協力を惜しまないことを表明し、次の質問に移ります。
 都内の放射線対策について二点質問をいたします。
 まず、地表等に付着した放射性物質の除染についてであります。
 報道によれば、国は、放射性物質汚染対処特別措置法に基づく汚染状況重点調査地域を、十二月中旬に公表するようであります。都内では該当する区市町村はないものの、隣接する千葉県や埼玉県では、幾つかの市が指定を受けるようであります。
 一方、都内には、ホットスポットと呼ばれる局所的に高い放射線量が測定される地域もあることから、今後、除染に関する関心、とりわけ都や区市町村に対する期待や要請が高まることが考えられます。
 都内においては、量としてはそれほど多くはならないと考えられますが、除染で生じた汚染土壌等を収集、運搬、保管、管理する対応を、都と区市町村一体であらかじめ用意しておくべきと考えますが、答弁を求めます。
 一方、都内の民有地において、放射線の測定や除染を本格的に行おうとすれば、多くの都民が専門事業者に依頼するものと予想されます。しかし、放射線量測定器をめぐっては、誤差の大きな製品が出回っていることや、効果的な除染技術も確立されていないことから、都民の不安や知識不足につけ込んだ悪質な除染ビジネスも横行しかねません。
 そこで、専門業者に対する適切な指導が不可欠と考えます。都の見解を求めます。
 放射線対策に関する第二のテーマは、より安全な水道水の提供についてであります。
 福島第一原発の事故により、三月二十二日、都水道局の金町浄水場で、水道水一キログラム当たり二百十ベクレルの放射性沃素が検出され、乳児に限ってではありますが、水道水の摂取が控えられた事実は、都民及び我々都政関係者に大きな衝撃を与えました。水道水から放射性物質が検出される原因は、雨などと一緒に降り注いだ放射性物質が、浄水場でのろ過過程で完全には除去できず、一部がすり抜けてしまったものと考えられますが、現在は、不検出の状況が続いております。
 一方、放射性セシウムでありますけれども、文部科学省が発表した分布図を見ると、群馬県などで高い濃度であり、降雨時には水源への流出が考えられ、これに対する都民の不安を払拭することが重要であります。各浄水場での実態調査の充実など、浄水プロセスにおける放射性セシウム対策に引き続き万全を期すべきであります。答弁を求めます。
 次に、分譲マンションの耐震化の促進について質問をいたします。
 都は、緊急対策二〇一一において、マンションの耐震化を大きな柱と位置づけ、我が党の質問で明らかになったように、初めて、都内のすべてのマンションを対象とした実態調査を行い、得られた情報をデータベース化することとしております。
 旧耐震基準で建築されたマンションの中には、耐震診断すら行っていないものが多く、相談窓口には、どのように進めればいいかわからない、基本的な知識を得たいがわからないとの声が、合意形成が難しい分譲マンションから多く寄せられております。
 今後、分譲マンションの耐震化対策をより迅速に実施するため、都は、現時点で判明している課題について、速やかに対応策を検討していくべきであります。答弁を求めます。
 最後に、国際的な視野を持った若者の人材育成について質問をいたします。
 経済のみならず、社会のあらゆる分野でグローバル化が急速に進む中、日本が世界の中で生き残っていくためには、全地球的規模で社会をとらえることのできる広い視野を持った人材の育成が不可欠であります。
 経済成長が著しい中国やインドといった諸外国では、海外への留学生が年々増加し、各分野における最新の学問の習得や多種多様な社会での経験の蓄積により、将来国際社会で活躍できる人材が育成されております。
 一方、我が国からの海外留学生の数は、経済情勢の影響もあってか、平成十六年以降減少傾向にあり、国際社会で伍していくためにも、この傾向に歯どめをかける施策の実施が急務となっております。
 そこで、若者が海外に雄飛していくことの意義について、石原知事に改めて所見をお伺いいたします。
 こうした時代状況の中、私立高校は、それぞれの教育方針に基づいて、世界に通用する人材の育成に取り組んでおります。また、長年にわたって行ってきた海外留学を初めとする国際交流は、グローバルな人材を育成していく上で着実な成果を上げてきたと認識をしております。
 そこで、都内の私立高校における国際交流、特に留学支援について、都として取り組むべきと考えます。局長の答弁を求め、質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 遠藤守議員の一般質問にお答えいたします。
 若者が海外に雄飛する意義についてでありますが、世界が時間的、空間的に狭いものになりまして、国際競争がますます激化する中で、この国が自力で立っていくためには、世界を舞台に活躍できる力強い若者の存在がどうしても必要であります。
 しかし、現代の若者は、将来への不安のためか、安全、安定志向に流れて、他者とのかかわりを避けて、ひ弱な内向き志向を強めておりまして、例えば、留学する学生は年々減ったり、海外勤務を希望しない新社員が半数に達するありさまで、特に商社に入りながら外国勤務は嫌だという人がいるというのは、これ驚いた話であります。
 先日、ちょっと例は違いますけれども、ある大手のゼネコンの社長と会って話したときに、後輩ですけれども、いや驚きましたと。我が社というのはゼネコン、つまり建築、土木をやっている会社ですけれども、現場に行きたがらなくて、どこに配属したいか、企画やりたいと。現場も知らない人間が企画できるわけないんじゃないですかといって失笑していましたが、そういう傾向が非常に強くなっているという気がいたします。こうした現況にくさびを打つためにも、若者を海外に送り出し、さまざまな経験を積ませて、鍛え直すことは一つの有効な手だてだと私は思います。
 若者が海外の文化に身を置くことは、新たな他者との摩擦と相克を生みまして、より多くの刺激と耐性を与えると同時に、外から日本を見詰め直すことで、日本人としての自覚と誇りを取り直すことになると思いますし、また、日本人が苦手な自己主張においても、他国の友人と議論を交わす中で、その重要性を身をもって知ることにもなると思います。
 昔からかわいい子には旅をさせよといいますが、日本が世界の中で存在感のある国家として繁栄していくためには、こうした若者の挑戦意欲というものを引き出して、力強く後押しすることが必要でありまして、全国の若者が集まる東京から、新たな具体策の構築に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、「十年後の東京」計画の検証と新しい計画への反映についてでございますが、「十年後の東京」計画が計画期間の半ばに差しかかったことから、これまでの取り組みの進捗状況や成果につきまして、総点検を現在行っておるところでございます。
 現在までのところ、おおむね順調に進捗しているものというふうに認識をしております。
 例えば「十年後の東京」計画で目標の一に掲げました緑化につきましては、千ヘクタールの緑の創出という目標に対しまして、都市公園などの整備によりまして、平成二十二年度末までに四百六十三ヘクタールを生み出し、また少子化対策では、都独自の認証保育所で二万人の定員を拡充いたしました。また、雇用対策では、東京しごとセンターにおけるきめ細かい支援を通じまして、六万五千人の就業を実現しているところでございます。
 しかしながら、都政を取り巻く状況を踏まえますと、ひとり暮らしの高齢者人口が大幅に増加するなど、急速に進展する超高齢社会への対応や円高に苦しむ中小企業の支援など、さらなる充実強化を図るべき課題も存在しているものというふうに認識しております。
 東日本大震災により明らかになった防災対策の強化や、エネルギー政策の強化推進などの新たな課題への対応も含め、現在策定中の計画に反映させていく予定でございます。
 次に、仮称でございますけれども、「二〇二〇年の東京」策定に向けた都民意見の反映についてでございます。
 まず、地域住民の声を最もよく把握し、計画推進に当たりまして連携が不可欠となります都内すべての区市町村に対して、計画策定に向けた意向調査を実施いたしました。
 また、都政に関する要望などを把握いたします都民生活に関する世論調査では、東京の望ましい将来像について意見を伺いまして、さらに、都政の緊急課題等に関する意識を迅速に把握するインターネット都政モニターアンケートにおきまして、エネルギー政策や少子高齢化対策の方向性などについて調査を実施したところでございます。こうした取り組みを通じて、環境先進都市の実現や都市基盤の整備などにつきまして、さまざまなご意見をいただいておりまして、今後、十分に検討した上で、計画に反映をしてまいります。
 最後に、計画の実効性の担保についてでございます。
 現在策定中の計画は、今後十年間の都政運営の基本方針となるものでございまして、この計画で示される東京の将来像を確実に実現するため、「十年後の東京」計画と同様、三カ年の事業展開の道筋を明らかにした実行プログラムを策定することによりまして、実効性ある取り組みを着実に展開してまいります。
 また、この実行プログラムにつきましては、これまでの取り組みや新たな施策展開について検証を加えながら、毎年度改定を行い、社会状況の変化に迅速に対応して、的確な対策を講じていく考えでございます。
 さらに、この実行プログラムに掲げる事業に対しましては、優先的に予算を措置することというふうにしておりまして、財政状況が厳しい中にありましても、各施策を着実に推進してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、除染で生じた汚染土壌の管理等への対応についてでございますが、昨日もご答弁しましたとおり、面的な除染が必要となる可能性がある汚染状況重点調査地域の指定は、都内で該当する地域はないものと考えております。
 また、局所的な汚染につきましても、文部科学省のガイドラインの目安より高い地点が見つかる可能性は低いものと考えております。
 このような状況から、都内の除染につきましては、区市町村が独自に行うものなど、限られたものになると想定されます。
 その場合でも、法や国のマニュアル等を参考とした適切な対応が望ましいため、都としては、区市町村等に対し、適切な対応がなされるよう、今後制定される特別措置法の政省令の内容等を速やかに、また、正確に伝えていくなど、支援を行ってまいります。
 次に、除染に関する正しい情報の提供や除染に携わる事業者に対する指導についてでございますが、放射能問題への対応は、これまで経験したことのない問題でありますために、情報や知識の不足により無用な混乱を招くおそれもあることから、都民や事業者に正確な知識を普及することが大切でございます。
 このため都は、都民や事業者に放射能にかかわる正しい知識を得てもらうため、ホームページ等を通じて放射能に係る情報を提供してまいります。
 また、都は、被災地支援のため福島県への職員の派遣を行ってまいりましたが、この中で、現地でのモニタリングや除染の経験も蓄積してきております。こうした職員のノウハウも生かしながら、区市町村等への技術支援を行うことを通じて、除染を行う事業者の啓発に努めてまいります。
 あわせて、消費者被害を防止する観点から、関係局と連携して除染関連事業者の動向を注視してまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 浄水プロセスにおける放射性セシウム対策についてでありますが、水道局では、水道水の原料となる河川水の段階でも、毎日、放射性物質濃度を検査しており、放射性セシウムはほとんど検出されないレベルまで低下しております。
 放射性セシウムは、河川水に含まれる土の成分に吸着されやすい性質を持っておりまして、沈殿池などの浄水処理過程で土とともに完全に除去されております。
 このため、浄水場において処理した水道水、すなわち浄水につきましては、高精度の測定機により、毎日、検査を行っておりますが、これまで検出されておりません。
 なお、浄水処理過程で発生した沈殿物につきましては、池の中にたまらないように毎日排出し、脱水処理過程を経て浄水場発生土となります。この発生土は、埋立処分場へ搬出しておりますが、放射性物質濃度を測定して、基準に適合していることを確認しております。
 今後も、浄水場の入り口から出口までの一連の処理過程において、放射性物質に対する万全な対策を、引き続き実施してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 分譲マンションの耐震化についてでございますが、昭和五十六年以前の旧耐震基準により建築されたマンションの耐震化を進めていくためには、まず、耐震診断を実施し、所有者みずからが耐震性能を把握することが不可欠でございます。
 現在実施中の実態調査では、耐震診断が進まない理由として、耐震化に対する知識が不足している、合意形成が難しい、相談できる専門家がいないことなどが挙げられております。
 このため都は、新たに来年度から、セミナーや個別相談会を地域ごとに開催するほか、積極的にマンション啓発隊を派遣し、調査の結果も踏まえた啓発や助言を行い、耐震診断の実施を促すなど、耐震化の促進に取り組んでまいります。
   〔生活文化局長井澤勇治君登壇〕

〇生活文化局長(井澤勇治君) 私立高校における留学支援についてでございますが、都内の私立高校では、これまでも海外の提携校を開拓するなどの取り組みによりまして、留学生の派遣及び受け入れや海外への研修、修学旅行の実施など、それぞれの建学の精神や教育理念に基づく国際交流を進めております。
 こうした各学校における独自の取り組み等を踏まえまして、私立高校を対象とした留学支援のあり方について、今後検討してまいります。

副議長(ともとし春久君) 六十八番神林茂君
   〔六十八番神林茂君登壇〕

〇六十八番(神林茂君) あの三月十一日の大震災から、はや九カ月がたとうとしています。多くの方々の懸命な支援や協力があって今日の復旧があったわけでございますが、残念なことに、とかく人々の関心やマスコミの報道も時間の経過とともに次第に薄れ行くものであります。
 しかしながら、被災県での復興計画がほぼ十年を一くくりにされているように、本当の意味での復興自立に向けた本格的な取り組みはこれからであり、厳しい寒さを迎える東北の被災地では、放射能汚染など先の見えない課題が山積する中で、復興への長い道のりを一歩ずつ踏み固めて進んでいかなければなりません。
 今、東京都では、高度防災都市づくりを初めとする来年度予算編成や中長期計画への取り組みが大詰めを迎えております。それと同時に、人として、同じ日本国民の同胞として、また、東京への電力供給を初めとする長年にわたる信頼関係に報いるためにも、東京都という自治体が、被災地の復興自立に向けてどのような支援ができるのか、改めて問い直す時期でもございます。被災地自治体と連携を図り、被災された方々の立場や目線で、一日も早く復興自立に結びつく支援を継続的に行っていくことが肝要でございます。
 そこで改めて、知事の被災地復興への思いと来年度や中長期での復興支援に向けた取り組みへの考え方を伺います。
 復興に向けて避けては通れない最大の課題が、瓦れきの処理であります。知事は、他自治体に先駆けて、いち早く瓦れき処理を三年間で五十万トン受け入れることを表明いたしました。人としての道を踏み外すことなく、この国難を国民全体が助け合い、乗り越えていくことは極めて当然のことではありますが、いたずらに都民に不安をまき散らす風潮が起こる中で、知事の決断に対して、我が党としても絶大なる賛意を表するものであります。
 しかしながら、子を持つ親を初めとする都民の中に、強い関心や不安を抱いている方々も見受けられます。知事が所信表明の中で力説されたように、瓦れきの運搬から処理処分に至るまでの安全管理の徹底、都民への情報公開などをしっかりと行い、他自治体への受け入れが進むよう働きかけていただくことも改めて要望しておきます。
 私は、先日、知り合いの入居する仮設住宅に訪れる機会を得ました。仮設住宅で避難生活を送っている被災者の方々は、自分が暮らしてきた場所と大切にしてきたものを一度になくした失意とともに、動きのない生活状態が長期間続くことで著しく心身の機能が低下しております。まして、高齢者にとっては、今後も要介護者がふえ続けることが報道されたように、家族の介護が期待できない中で、ますます深刻な状況に陥っています。
 被災地では、医療施設や高齢者施設、在宅介護サービス施設なども被災しており、被災者の方々に十分な医療や心のケアを提供し、介護保険の認定作業やサービスの受け皿整備などをバックアップしていくことは、まさに急務であります。
 また、仮設住宅には、現在もなお、仕事に先の見通しがつかないまま、ただ漫然と生活を送らざるを得ない方々が見受けられます。仮に仕事があっても、瓦れき処理やライフライン復旧工事のアルバイトで、長年なれ親しんできた仕事に復帰することはかなわず、一生続けられる仕事について自立していくことには、ほど遠い状況にあります。
 被災地が本格的に復興自立を遂げていくためには、一日も早く地元に事業所が開設され、働ける方々が、できれば、もとの職業に復帰できるような就労の確保を図っていかなければなりません。
 これらの課題を克服していくためには、国の大づかみな対応や被災地自治体の対応能力容量の大きさだけでは到底困難であり、千三百万都民の生活現場を日々担ってきた東京都が、都内の民間企業や各種団体、ボランティアの方々の力をおかりし、率先して貢献することが必要であると考えます。
 そこで、瓦れき処理、心のケアを含めた健康管理、自立に向けた産業支援と雇用の確保など、復興自立に向けた被災地の生活現場で直面している課題について、東京都として、被災地自治体と連携を図ってどのように支援を行っていくのか、見解を伺います。
 先月下旬、私は、地元大田区に本社を持ち、生産拠点の工場を福島県南相馬市に置く、ものづくり中小企業の実態を直接見聞きする機会を持ちました。南相馬市にある工場は津波などによる被害はなかったものの、原発事故で警戒区域に指定され操業ができない状況が続いていました。
 工場再開の目安が立たない中、市役所に警戒区域の解除の要望書を出したり、支援策を依頼したものの、現在も操業再開の見込みはなく、現地の二十六人の社員をやむを得ず一時解雇に踏み切ったとのことでありました。
 こうした事例からも明らかなように、東日本大震災により、さまざまな形で大きな打撃を受けた都内中小企業は数多くあるものと考えられ、ひいては、東京の産業にも大きな影響が起こることが懸念されております。
 このため都は、こうした都内中小企業の状況をしっかりと把握し、これまでの産業振興で培った力を発揮して、被災地でダメージを受けた都内の中小企業の相談に乗るなど、現場の実態に即した積極的な支援を行うべきと考えますが、所見を伺います。
 待機児童の問題は深刻であり、早急な解消が求められております。
 昨年度の保育サービス定員は一万一千四百四十六人分増加し、待機児童数は前年度に比べ若干減少しましたが、それでも八千人近い待機児童がいる状況でございます。
 待機児童を解消するためには、保護者の就労形態を踏まえ、利用定員の増加に加えて、さまざまな利用者ニーズに的確に対応することが重要でございます。
 東京都独自の制度である認証保育所は、保育を必要とする場合にひとしく利用することのできる施設として平成十三年度に創設されましたが、待機児童の九割を占めるゼロ歳から二歳までの低年齢児の定員を五割以上設定することを義務づけているほか、ゼロ歳児保育や十三時間開所など、認可保育所だけではこたえ切れない大都市特有のニーズに柔軟に対応する施設として、待機児童対策としても不可欠なものとなっております。
 そこで、認証保育所の整備状況と利用している都民の声、評価、今後の方向性について伺います。
 現在、東京都では、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律、いわゆる一括法の公布に伴う児童福祉施設最低基準の条例化に向けた検討が行われております。
 その中で、認可保育所におけるゼロ歳児と一歳児の保育に必要な一人当たりの面積について、現在の都の認可基準である三・三平米から、国が認めた地域において年度の途中に定員の弾力化を行う場合は面積についても二・五平米までとするという案が検討されております。
 この面積の弾力的な運用の考え方は、認証保育所の制度発足時からの基準でありますが、施設の新設に比べて地域の保育ニーズに柔軟に対応できるものであり、地価が高く、待機児童の多い大都市東京に非常に適しております。
 各施設では、それぞれに個性を生かし、音楽や絵画など、さまざまな幼児教育に取り組んだり、地域との交流や子育てに悩む保護者の集いの場づくりなどを行うなど、質の高い保育サービスの提供を行っており、面積の弾力的運用が保育の質の低下につながらないことが実証されております。
 そこで、保育施設の面積基準に関する都の考え方を伺います。
 去る三月十一日に発生いたしました東日本大震災では、発生当日、公共交通機関がほぼ完全にストップし、保育施設に子どもを預けている保護者が当日迎えに行けなくなるなど、大きな混乱が生じました。
 また、その後も、停電や交通機関の混乱、ガソリンの不足、流通が不安定な状況が続き、保育施設は苦労を強いられる運営を続けたと聞いております。
 この経験を踏まえ、それぞれの施設が災害対応力を強化する必要があります。例えば、認証保育所については、地域における保育力推進強化事業という、保育の質の向上や地域の子育て支援の取り組みなどに柔軟に活用できる東京都独自の補助制度がございます。今年度は、都は、我が党の提案により、災害発生時における緊急対応に向けたこの補助制度の活用を、各施設に働きかけたところでございます。
 東日本大震災を受け、保育施設における災害発生時の緊急対応のための取り組みに対し、東京都として積極的に支援を行っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 最後に、羽田空港周辺の交通対策について伺います。
 羽田空港の国際化は本年十月で一周年を迎えました。
 現在、欧米など、世界の主要十四都市との間に定期便が運航され、利用者も堅調に推移しており、来月からは、フランクフルトへの就航も予定され、ますます路線網の拡大が期待できます。
 さらに、羽田空港では、平成二十五年度に向けて年間発着枠が三万回増加する予定であり、今後、空港へのアクセス向上による利用客の利便性の向上や周辺環境保全などの観点から、空港周辺の道路交通対策に万全を期す必要があると考えます。
 現在、空港アクセスに重要な首都高速中央環状品川線や国道三五七号の東京港トンネル部など、広域交通ネットワークについては整備が進められております。
 一方、空港周辺市街地における交通渋滞問題については、地元区からの強い要望もあり、以前から機会をとらえて質問や要望をしてきたところでありますが、渋滞ポイントの一つであり、羽田空港へのアクセスの重要な拠点となっている大鳥居交差点についての今後の対応について伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 神林茂議員の一般質問にお答えいたします。
 被災地の復興支援についてでありますが、震災発生からおよそ九カ月、被災者の懸命な努力と多くの善意に支えられて、被災地では、復興の兆しが徐々に広がりつつあります。壊滅的な被害を受けた石巻市では大手製紙工場が復旧し、三陸のカキやホタテの養殖も再開するなど、明るい話題も出始めております。
 一方、市街地に残されている多量の震災瓦れき、津波によって破壊された堤防や護岸、あるいは地盤沈下によって浸水した港湾施設など、あるいは地域の保健医療システムを支える人材の不足など、深刻な課題が残されたままであります。
 このような被災地の厳しい現実を前に、同胞としての連帯の心を確かなものにしなければ、被災地の復興、日本の再生は、とてもあり得ないと思います。
 しかるに、当事者の意識を欠いた国は、具体的な復興への道筋も示さずに、被災者や被災自治体はいら立ちを募らせているわけでありまして、都は、復興に向けた動きを加速するために、国に先駆けて、区市町村や民間とも力を合わせて、岩手県と宮城県の瓦れきを受け入れることにしました。
 また、被災地の新たなまちづくりを支援するために、道路、港湾に専門知識を有する技術職員や、医師、保健師などの保健医療スタッフを相馬港や気仙沼、石巻を初めとする最前線の被災現場に派遣するなど、息の長い復興支援に全力で取り組んでおります。
 先日、被災地に派遣している医師や技術職員から直接話を聞きましたが、津波にたびたび襲われている宮城県では、災害時に全国から支援に駆けつける医療チームをまとめて、全体を調整して事を行わせる災害医療コーディネーターという制度があるそうでありまして、今回の大震災時にも、これは非常によく機能したという報告がありました。こうした仕組みは、東京においても大いに啓示的でありまして、有効と思いますので、これから導入を早急に検討するよう指示もいたしました。
 被災地の現場で苦労している派遣職員からの報告は大変参考になりましたが、こうした彼らの経験を今後の東京の防災対策にも生かしていきたいと思っております。
 都は、今後とも、幾多の苦難に呻吟しながらも復興に向けて懸命に立ち上がらんとしている仲間の日本人、同胞への支援の手を緩めることなく、全国自治体の先頭に立って被災地が本格復興に向けて踏み出す歩みを強力に後押ししていきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 大鳥居交差点の渋滞解消についてでございますが、羽田空港では、国際定期便の就航が始まってから一年で国際線の利用者が六百九十万人を超えるなど、人や情報の交流に大きな効果が出ております。
 空港の発着枠が増加する平成二十五年度以降、羽田空港が国際空港としての機能をさらに発揮していくためにも、東京の最大の弱点である交通渋滞を解消することが重要であると認識しております。
 そのため、現在でも渋滞が発生している放射一七号線と環状八号線が交差する大鳥居交差点については、地元区から渋滞解消に関する要請もあり、その解消に向けた交差点の改良が急務であると認識しております。
 現在、環状八号線の現道内における車線数の増加について、交通管理者などと最終段階の協議を進めており、平成二十四年度の工事着手に向け、積極的に取り組んでまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 被災地支援についてでございますが、都は、発災直後から、岩手、宮城、福島の三県に現地事務所を設置いたしまして、職員の常駐体制をしき、腰を据えた支援活動を展開してきております。
 具体的には、被災自治体に直接出向き、日々刻々と変化する現地の状況や要望を確認し、関係各局や区市町村と調整をしながら、被災地のニーズに的確に対応した職員の派遣、火葬受け入れ協力、避難所の生活向上のための物資の提供など、効果的な支援につなげてまいりました。
 大震災からおよそ九カ月がたちますが、今なお被災地には、瓦れきの処理、被災者の生活再建など、ご指摘のとおり多くの課題が残されております。
 こうした状況の中、今後とも、現地事務所がこれまでに培った被災地とのパイプを生かし、被災地の情報収集に努め、関係各局等と十分連携して、被災自治体の要請にこたえてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 被災地に工場のある都内中小企業の支援についてのご質問にお答えいたします。
 都内の中小企業が被災地に持つ工場の再建を速やかに実現して、震災による経営へのダメージを克服する取り組みをサポートすることは必要でございます。
 このため、都はこれまで、各経済団体を通じて調査報告を聞き取るほか、被災地支援本部と連携し情報収集を行ってまいりました。また、中小企業振興公社と協力し、必要に応じて現地で被災した都内中小企業の工場の状況の確認などに取り組んでおります。
 また、被災した工場の早期復旧など緊急的な課題の解決に向け、中小企業診断士などの専門家を無料で三回まで派遣する震災対応緊急エキスパート派遣などにより、相談事業を実施しております。
 震災による相談は、内容が多岐にわたり、工場の再建などにとどまらない経営全般をも含めた内容もふえていることから、今後はより総合的な相談対応を検討してまいります。
 こうした取り組みにより、被災地の現状を十分に踏まえた都内中小企業のサポートをよりきめ細かく展開してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、認証保育所についてでございますが、大都市特有の保育ニーズにこたえる認証保育所は、平成十三年度の制度創設以降、着実に増加いたしまして、本年十二月一日現在、六百十八カ所、定員は二万人を超えております。
 都民からも高く評価されておりまして、昨年度の福祉サービス第三者評価における利用者調査結果でも、約九割の方が、一人一人の子どもが大切にされている、また、保育所が保護者の考えを聞く姿勢を持っていると回答をいたしております。
 都は、平成二十二年度から二十六年度までの五カ年で、保育サービス利用児童数を三万五千人ふやすこととしておりまして、今後とも、保育施策の重要な柱の一つとして認証保育所の整備を推進してまいります。
 また、国に対しましても、認証保育所を国の制度に位置づけ、財政措置を講じるよう、引き続き強く求めてまいります。
 次に、保育施設の面積基準の考え方についてでございますが、都は認証保育所について、制度創設時から、年度の途中に定員を超えて児童を入所させる場合に一人当たりの基準面積を弾力的に運用することを認めておりまして、多くの施設で利用者のニーズを踏まえ、柔軟な受け入れを行っております。
 認可保育所におきましても、基準面積の弾力的な運用を図ることは、保育ニーズに応じて既存施設のより柔軟な活用を可能にするものでありまして、待機児童解消の選択肢を広げる効果があるものと考えております。
 都は、今後、条例案の提出を予定しております認可保育所の設備、運営基準におきまして基準面積の弾力化を取り入れることを検討しており、現在、児童福祉審議会においてご審議いただいております。
 最後に、保育施設の災害発生時の緊急対応に対する支援についてでございますが、都は、認証保育所を対象といたしました地域における保育力強化推進事業を活用いたしまして、緊急時のメール配信システムの導入や、施設内のガラス類の飛散防止対応などの施設独自の取り組みに対する支援を行っております。
 また、今回の震災を踏まえた緊急対策といたしまして、区市町村への包括補助制度により、災害に備えた水や非常食等の備蓄等に対する支援を実施いたしました。
 今後とも、災害時の児童の安全を確保するため、区市町村と連携をいたしまして、こうした補助制度も十分活用しながら、保育施設における防災体制の充実を働きかけてまいります。

〇副議長(ともとし春久君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十分休憩

   午後三時三十六分開議

〇議長(和田宗春君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十六番小山くにひこ君
   〔二十六番小山くにひこ君登壇〕

〇二十六番(小山くにひこ君) 三月十一日に発生しました東日本大震災は、各地に甚大な被害をもたらし、都内においてもさまざまな混乱を生じさせました。この未曾有の大震災は、私たち日本人の戦後の価値観さえも大きく揺さぶり問いかけました。
 まさしく日本は、戦後六十六年を経て、大きく変わろうとしている時代の転換期を迎えています。この転換期にこそ、政治がこれからのビジョンをしっかりと示し、国民、都民と共有する中で、震災後の日本を復興、再生していかなければなりません。
 六十六年前の日本、そして東京は一面、戦後の焼け野原でした。その焼け野原からの復興の象徴が、一九六四年の東京オリンピック開催でした。国民の夢と希望をオリンピックが体現していたといっても過言ではありません。
 それから半世紀の時を経て、震災後の日本において東京都がオリンピック招致に再び立候補したことは、大変大きな意義を持っています。震災後の復興のオリンピックとして、被災地を聖火ランナーが走り、被災地復興と日本の再生を果たす、このオリンピック招致を何としても実現しなければなりません。
 私たちは、このオリンピック招致にかかわる諸課題を調査するため、十一月六日から十二日にかけて、ロンドン、ベルリン、ミュンヘンの三都市を訪問いたしました。三都市ともオリンピックを開催し、ロンドンについては三度目となる来年、二〇一二年の開催を目前に控えていました。
 この調査の中で、東京招致についての課題は、レガシーとエネルギーの二点であることが示されました。レガシーについては、オリンピックの施設や、それに伴う開発が将来どのように生かされていくのか、持続可能であるのかという課題です。
 ロンドンのオリンピックパークは、開催後、自然環境に配慮しつつ、持続可能な都市公園となり、周辺に建設されている選手村は、二千五百戸のうち半数がアフォーダブル住宅として活用されます。
 ロンドン・オリンピックがロンドンプランに基づき、ソーシャルインクルージョンを背景として開催されることが随所に見てとることができました。また、意見交換では、都議会決議で求めた国立霞ヶ丘競技場の改築や、周辺地域の環境整備がレガシーという点で高く評価をされました。
 もう一方の課題として挙げられたエネルギーについては、三都市の訪問地すべてで、福島第一原子力発電所事故に伴う、東京のエネルギー問題に対する懸念が述べられました。つまり、東京招致に当たって、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により生じた安全面での懸念や、根本的なエネルギーの諸課題に対して、開催都市としてどのような対策を講じていくのかが大変注目されています。
 今回の招致においては、これらの懸念を払拭し、東京で安定的な大会運営を確実に実施するために、都市としてのエネルギー戦略を策定し、国際オリンピック委員会、IOC委員等に働きかけていくことが非常に重要であると考えます。
 そこで、東京都は、この点についてどのように認識し、どのような招致戦略を立てるのか見解を伺います。
 次に、ロンドン・オリンピック開催期間中の招致活動、並びに招致体制について伺います。
 私たちは、来夏のロンドン・オリンピック開催期間中に現地で開設するジャパンハウスを、さきの調査で訪問し、視察と意見交換を行ってまいりました。場所は、IOC委員や国内オリンピック委員会、NOC委員の宿泊ホテルに隣接する好立地で、日本オリンピック委員会、JOCは、IOC委員らを積極的にジャパンハウスへ招き、施設内の展示スペースにおいて日本の文化などを紹介し、レセプションや個別懇談などを通じて東京招致への理解を求めていくとのことでした。
 また、JOCは、旧ロンドン市庁舎においても、日本の食や観光のPRも計画しているようですが、東京都においても、ロンドン・オリンピックにおけるシティーセールスは非常に重要な機会となることを考えれば、都庁全体として取り組み、担当部局のみならず、東京の魅力を発信する観光部を初めとした都庁職員を派遣するなど、あらゆる手段を講じていくべきと考えます。
 二〇二〇年のオリンピック招致においては、国際プロモーション活動が平成二十五年一月の立候補ファイル提出後からとされており、その期間が二〇一六年の招致に比べ大幅に短縮されています。
 そうした中、ロンドン・オリンピックの大会開催期間中は、例外的に国際的なプロモーション活動が認められています。この機会をぜひとも生かして、招致に向けてPRしていくことが大変重要だと考えますが、このジャパンハウスにおける国際プロモーション活動について、具体的にどのように取り組むのか伺います。
 今回の招致の意義は、日本の復興、再生をテーマとしたオリンピック開催です。その意義を国民、都民と共有しなければ招致はなし得ません。前回の招致における支持率の課題を克服し、東京招致を成功させるためにも、国内の招致活動においては、被災地復興と日本再生のオリンピックとして、来年のプレ国体としてのリハーサル大会、再来年の東京多摩国体であるスポーツ祭東京二〇一三の開催準備期間を通じて、招致に向けての世論を盛り上げていくべきと考えますが、都の見解とその取り組みについて伺います。
 二〇二〇年の東京オリンピック招致と軌を一にして、平成二十五年には東京多摩国体、すなわちスポーツ祭東京二〇一三が予定されております、スポーツ祭東京二〇一三の開催は、広く都民にスポーツを普及し、健康増進と体力の向上を図るとともに、活力ある郷土づくりと文化の発展に寄与するものであります。
 各市区町村では、施設整備を着実に進めているところでありますが、多額の費用を要することから、工事監理経費も含め、補助対象の範囲をできる限り広く設置するようにという声が上がっております。
 また、大会運営にかかわる経費の負担軽減を図るため、できる限り幅広い内容を運営費の補助金交付対象とし、かつ、その交付割合についても、これまでに大会を開催した県と同様の補助率三分の二とするなど、さらなる財政措置が必要と考えますので、要望しておきます。
 そして、いよいよ来年度からは、各市区町村において、プレ国体として競技別リハーサル大会が開催されます。国体本大会に向けての準備もさることながら、オリンピック招致の機運醸成という観点からも、間近に迫ったリハーサル大会に精力的に取り組む必要があります。
 国体本大会を成功させるためにも、この平成二十四年のリハーサル大会を円滑に開催することが重要と考えますが、リハーサル大会の準備状況と市区町村に対する財政支援について伺います。
 次に、エネルギー政策について伺います。
 さきの海外調査では、東日本大震災が発生して以来、エネルギー問題が喫緊の課題となっているため、エネルギー政策に関する調査も行ってまいりました。
 ドイツでは、二〇五〇年までに電力の八〇%を再生可能エネルギーにする新エネルギー戦略や三都市のエネルギー政策を調査してまいりました。これらの戦略や政策に共通していえることは、再生エネルギーを大幅に推進すること、省エネ化とエネルギーの高効率化によって、それらの目標を達成するということです。
 特に建築物の省エネ化では、真のゼロエミッションハウスとして、パッシブハウスと再生可能エネルギーを組み合わせたロンドンBREのイノベーションパークを視察することができました。また、ドイツでは、省エネ化の推進を税制優遇と補助金の活用によって図られておりました。
 一方、都はこれまで、建築物環境計画書制度に基づき、大規模建築物の省エネ性能の向上を図ってきておりますが、震災後の状況やオリンピック招致を図る上で、より一層の省エネに取り組むとともに、都市としてのエネルギー戦略ともいうべきエネルギーについてのビジョンを示していくことが必要です。
 そこで、これまでの都の取り組みを含め、東京のエネルギー戦略、エネルギービジョンを幅広く世界に発信し、海外に向けて、都のエネルギー環境対策を訴えていくべきと考えますが、見解を求めます。
 また、今回の調査において、ヨーロッパを初めとして世界の潮流は再生可能エネルギーへと大きくシフトしつつあることが示されました。調査訪問の二週間前に、ドイツでハイブリッド発電所といわれる新しい発電所が、欧州最大の電力会社であるヴァッテンファル社の協力のもと、ブランデンブルク州に建設をされました。
 このハイブリッド発電所は、風力、水素、ガス一体の複合型発電所で、二〇〇九年の定礎式ではメルケル首相も出席し、先進的取り組みとして大いに期待されていました。
 この発電所は、風力及びバイオガスで発電し、風力等の余剰電力を水素に転換して貯留し、風量が少ない場合には貯留した水素とバイオガスとを混合して発電する施設となっています。また、水素は車の燃料としても利用できるようになっております。
 ドイツ環境省では、再生可能エネルギーの不安定性を水素化や電気自動車の蓄電によって補うことが示されました。都はこれまで、再生可能エネルギーについて、我が国の環境政策をリードしてきましたが、固定価格買い取り制度が来年から導入される中、より一層の取り組みが求められています。
 太陽光、太陽熱、風力、波力、地熱、バイオマス、さらには蓄電についての調査研究を含めて、都におけるスマートグリッドやハイブリッド発電の実施など、再生エネルギーのさらなる取り組みを求めます。
 そこで、ドイツなどの再生可能エネルギー先進国の状況も踏まえ、今後のさらなる再生可能エネルギーの普及拡大に向け、どのように取り組みを進めていくのか見解を伺います。
 ドイツでは、エネルギー気候ファンドとエネルギー効率化ファンドが活用され、エネルギー市場にも二百億ユーロもの投資がされております。また、調査で訪問した五兆円規模のグローバル企業であるミュンヘン再保険会社では、世界の投資は通貨危機以降、再生可能エネルギーの投資に大きく動いていると述べられていました。
 そのような世界の動向がある中で、石原知事は、九都県市首脳会議などにおいて、エネルギー問題に対するファンドの活用についてさまざま述べられています。また、本定例会の所信表明でも、官民連携のインフラファンドに言及されております。
 私もファンドを活用して都市のエネルギー政策を推進させることは、大変有効であると考えますが、改めてファンド活用についての知事の見解を伺います。
 次に、公会計改革について伺います。
 都はこれまで、公会計制度改革にいち早く取り組み、民間企業のアニュアルレポートに相当する年次財務報告書を迅速に公表するなど、都政の説明責任の向上、マネジメント強化に活用してきたことは評価をしています。
 これらの財務諸表、特に事業ごとの財務諸表は、減価償却費や引当金といった今まで見えなかったコストを明らかにするものであり、それぞれの事業を改めて検証し、むだを省き、効率的な執行を図る上で不可欠なものとなっています。
 この事業別の財務諸表は、決算の附属資料、予算発表資料等に幾つか掲載をされておりますが、例えば、施設の整備やハード系の事業、人件費の多くかかる事業、中長期にわたる事業などについては、財務諸表を作成することで、より多面的かつ客観的な検証が可能となります。
 こうした事業については、できる限り財務諸表から得られる情報をもとに分析を行い、職員の意識を高めるとともに、あわせて、都民にわかりやすく公表するよう、これまで以上に取り組みを進めていくべきと考えます。
 そこで、効率的、効果的な財政運営を行うためにも、税収が低迷している今こそ、事業ごとの財務諸表の一層の活用を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 過日、知事の定例記者会見において、ごみ処理について、都が一括してやった方がもっと機能的、各区市町村の境をまたいでと発言をされていました。私も、ごみ処理は広域で取り組むべきものであると考えています。
 特に多摩地域の焼却施設は、建設後二十年から三十年を経過するものが多く、今後順次、建てかえの時期を迎えます。そのような状況にあって、施設整備に当たっては、都の広域的支援の重要性が増しており、必要と考えますが、今後の広域処理のあり方と都の支援について伺います。
 最後に、これまで多くの議員から本会議や委員会において質疑されてきました府中けやきの森学園について伺います。
 府中けやきの森学園の併置化と大規模校化については、今日においてもいまだ保護者や関係者のみならず、私の地元、府中市からも、開校に向けて正規の教職員の配置など、さまざまな不安や懸念の声が聞かれます。また、卒業後の受け入れ体制については、地元地域に懸念の声が大きい状況にあります。
 そこで、府中けやきの森学園の開校に伴うさまざまな懸念に対して、地元自治体や地域への十分な対応が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 以上、東京都が抱える喫緊の課題に対し、都としての的確なる対策、対応を強く要望し、私の一般質問とさせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 小山くにひこ議員の一般質問にお答えいたします。
 ファンドの活用についてでありますが、我が国の財政は借金まみれでありまして、GDPの二倍を超える一千兆円もの負債を抱えて、仮にこれが欧州の国だったらEUに加盟できないという状況です。
 このままでは、必要な公共投資すらできなくなるんではないかと恐れておりますが、こうした国の財政のあおりを受けて、金融機関は国債の七割を保有するまでに至っております。国債保有というリスク回避に走って、この国の将来を支える新たな成長産業や必要な投資に資金が回りにくくなっております。
 一方、海外では、広く内外のマーケットから資金を集め、資金循環を活性化する新しい金融システムであるインフラファンドが活用されているわけでありまして、東日本大震災の復興に、このインフラファンドを活用するよう国にも提案してきましたが、政府の動きは鈍く、いまだに具体策は一向に見えておりません。
 我が国のいわゆる金詰まりの状況を打破するためには、官が民の呼び水となって内外の民間資金を取り込み、官民連携インフラファンドを創設するような戦略的な取り組みが必要であります。
 現在、危機的状況にある首都圏の電力供給は、一千万キロワットもの多量の老朽火力発電所に頼っておりまして、その更新が急務であります。都が呼びかけて、九都県市共同で発電所の更新などに民間資金を活用するために、官民連携のインフラファンドを創設すべく活動を開始いたしました。
 既に協議機関を設置して取り組んでおりますが、今後、都が中心となって取り組むインフラファンドを日本再生の一つの試金石として、外国から資金をうまく活用しながら、首都、日本経済の力をよみがえらせていきたいものだと思います。
 特に電力に関しては、これは必ず売れる商品でありますから、既にこの問題についての外国のファンドからの問い合わせがあったりしていますし、驚くことに国の政府よりも、東京のインフラ整備に関心のある外国のファンドの方が、東京にあります非常に由緒の深い白鬚とか、ああいう橋が耐用年数が来ていて、そろそろ補修しなくちゃいかぬのじゃないか、そういうところの資金は幾らでも協力するみたいな、そういうオファーもあるわけですね。
 日本の、地方によって、それは実力が違いますけど、東京の場合には、首都圏の場合には、これだけ集中、集積が進んでいる。そういったもののポテンシャルを、むしろ外国のファンドの方がよく分析、認識してとらえていると、逆に感心をさせられました。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 府中けやきの森学園の開校に伴います地元自治体や地域への対応についてでございます。
 府中けやきの森学園で学ぶ児童生徒の学校生活や地域生活の充実のためには、地元地域の理解と協力を得ながら、連携体制を構築することが大切と考えております。
 そのために学校は、個別の教育支援計画に基づく地元自治体との情報共有や、地域の社会資源を活用した学習指導、進路指導の実施などにより、障害のある子どもの自立と社会参加に向けて、地元地域の理解と協力を得ることに努めてまいります。
 また、都教育委員会といたしましても、学校と地元地域とが相互理解に基づく良好な関係を構築できるよう、学校と緊密な連携を図りながら、さまざまな課題に十分対応し、地元地域の不安や懸念の軽減に努めてまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、オリンピック・パラリンピック競技大会におけるエネルギー対策についてでございます。
 都としては、地産地消の東京産エネルギーの創出とあわせ、災害時の都市機能の維持と低炭素化促進の両面から、電力の安定供給に向けた都独自の取り組みを進めております。
 大会時の電力供給や環境対策につきましては、従来からIOCが大会計画の中に盛り込むように求めている事項でございまして、都の取り組みを踏まえつつ、国等と連携した安定的な電力供給を行うとともに、省エネルギーの施設設計や太陽光発電等の再生可能エネルギーの積極的な導入などにより、省エネルギー型の大会運営を実現してまいります。
 これらの取り組みを招致活動のあらゆる機会を通じ、IOC委員を初め、関係者に積極的にアピールしてまいります。
 次に、国際プロモーションについてでございます。
 前回招致に比較しまして、国際プロモーション活動の期間が大幅に短縮されている中、ロンドン・オリンピック開催時の国際プロモーション活動は、招致戦略上、極めて重要であると認識しております。
 ロンドン・オリンピック期間中は、JOCが現地活動本部施設としてロンドン市内に設置するジャパンハウスを拠点として、二〇二〇年大会招致に向けた国際プロモーション活動を実施いたします。
 ジャパンハウスは、IOC委員が滞在するホテルの至近に立地し、約八百平方メートルのスペースを有しまして、IOC委員や国際競技連盟関係者に対しては、このジャパンハウスを積極的にPRし、実際に足を運んでもらい、東京への支持を訴えていきます。
 都としても、招致委員会やJOCなどの関係機関と連携し、ジャパンハウス内にPRブースを設置し、大会期間中、世界各国からロンドンを訪れるオリンピックやスポーツ関係者、メディア等に対しまして、二〇二〇年東京大会の開催計画を初め、日本の食文化や東京の観光スポットなども含め、日本、東京の魅力を広く発信してまいります。
 次に、招致に向けた世論の盛り上げについてでございます。
 スポーツが本来持つ魅力やすばらしさを広く都民、国民にアピールしていくことが何よりも機運醸成につながるものと考えております。そのため、来年二月の東京ゲートブリッジ開通を記念したスポーツフェスタや、東京マラソン二〇一二、春以降のスポーツ祭東京二〇一三のリハーサル大会や区市町村の大会など、さまざまなスポーツイベントにおいて、効果的な広報活動を積極的に展開してまいります。
 さらに、開催都市が決定する二〇一三年は、知事が本定例会の所信表明でスポーツイヤーと位置づけたとおり、一月の冬季国体を皮切りに、東京マラソン二〇一三、都内各地でのウオーキングやランニングなどのイベントを秋のスポーツ祭東京二〇一三に向けて、連続的に開催いたします。
 これらを世論盛り上げの絶好の機会ととらえまして、被災地での事業実施や競技団体が主催する大会とも連携し、スポーツ祭東京二〇一三の周知とともに、オリンピック・パラリンピック日本招致に向けた支持率の向上を図っていきます。
 最後に、スポーツ祭東京二〇一三についてでございます。
 国体の競技別リハーサル大会は、会場となる区市町村と競技団体が競技会の運営に習熟し、本大会の開催準備を万全にすることを目的に実施いたします。
 本年七月に開催したスポーツ祭東京二〇一三実行委員会総会で、正式及び公開競技四十競技中、二十三競技について、リハーサル大会の第一次の選定を行ったところであります。
 リハーサル大会に要する経費は、区市町村及び競技団体が負担することになっておりますが、リハーサル大会を円滑に進めるため、大会運営に係る補助を行うこととしております。今後、会場となる区市町村の意向も踏まえ、検討を進めてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 三点のご質問でございます。
 まず、東京の先進的な環境対策の発信についてでございますが、都はこれまで、都市型キャップ・アンド・トレード制度や建築物環境計画書制度のほか、LEDなどの高効率省エネ機器の導入促進など、省エネ対策を進め、その経験やノウハウを世界大都市気候先導グループ等において情報発信をしてまいりました。
 震災後には、系統電力の脆弱性が明らかになったことから、供給面の対策も重要となり、発災時の都市機能の維持と低炭素化の促進の両面から、新たな実践的取り組みを開始しております。
 今後とも、エネルギーの需要と供給の両面からの取り組みを総合的に進めまして、こうした都の先進的な環境対策の成果を国際機関等が主催する会議の場などを通しまして、幅広く情報発信してまいります。
 次に、再生可能エネルギーの普及拡大についてでございますが、今後の一層の普及拡大を進めるためには、来年七月に開始されます国の固定価格買い取り制度の実効性を担保することが最も重要でございますが、制度の具体的な仕組みにつきましては、今日の時点でも国から一向に明らかにされておりません。
 このため都は、適正な買い取り価格及び期間の設定とともに、送電系統への優先接続の徹底や、広域的な連系線運用の弾力化などにつきまして、国への要求を強化しております。
 一方、都はこれまでも、住宅用太陽光発電の集中的な補助事業やキャップ・アンド・トレードなど、都独自の制度の活用により、着実に再生可能エネルギー普及拡大の成果を上げてきております。
 また、昨日もご答弁いたしましたが、新技術補助事業を通じた太陽熱利用機器の導入や、太陽光発電の初期導入負担を軽減するスキームを構築するなど、再生可能エネルギーのさらなる普及拡大を図ってまいります。
 最後に、廃棄物の広域処理のあり方についてでございますが、一般廃棄物の処理は、それぞれの市長村が責任を持って実施しているものであり、その処理施設の整備に当たっては、市町村が単独で整備する方法と、一部事務組合をつくり共同で整備する方法がございます。
 また、多摩地域では、焼却施設の建てかえ等により施設が停止する場合は、市町村が相互に支援する仕組みを平成六年から設けており、平成二十二年の改定の際には、都は広域処理が促進されるよう助言を行いました。
 さらに都は、焼却施設の整備に際して、市町村や一部事務組合に技術職員を派遣するなどの支援も行ってきております。
 今後とも、市町村の焼却施設の建てかえ等が円滑に進むよう、各自治体のニーズを十分勘案した上で、広域自治体として必要な技術援助を行ってまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 財務諸表の活用についてでございますが、新たな公会計の視点に基づき、事業ごとの財務諸表を作成、活用することで、事業に要するコストをより正確に把握し、また、その事業によって将来の都の資産や負債にどう影響が及ぶのかといった多面的な分析、検証が可能となります。
 都では、制度導入以降、事業の特性に応じて財務諸表を作成し、これまで予算編成過程におきまして、人件費や減価償却費をも含むフルコストの把握、あるいは将来への影響の分析を行いまして、事業評価に効果的に活用してまいりました。
 また、同時にこれらを公表し、職員のコスト意識を高め、都民への説明責任の向上に努めており、その成果は庁内に定着しつつあると考えております。
 お話のとおり、財政環境が厳しい中、こうした新たな公会計の視点に基づく施策の分析、検証は、これまでにも増して重要と認識をしておりまして、施策の効率性、実効性を高めるため、より工夫を凝らしながら、事業ごとの財務諸表を引き続き作成、活用し、都庁の自己改革力をさらに高めてまいりたいと存じます。

議長(和田宗春君) 六番野田かずさ君
   〔六番野田かずさ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六番(野田かずさ君) 物流にかかわる自動車からのCO2削減対策について伺います。
 都は、トラック等を評価するベンチマークを東京都トラック協会からデータ提供を得て策定していると聞いております。
 ベンチマークができれば、トラック事業者のCO2削減に向けた努力の違いがわかるようになりますが、現在、荷主は運賃に注目し、事業者の努力が正当に評価されているとは思えません。
 データを提供している事業者は、努力が正当に評価されるようになればとの期待を持っております。ベンチマークの作成状況について伺います。
 我々都議会自由民主党は、まじめに取り組む運送事業者の大きな期待にこたえていくことが、東京都の目指す、世界で最も環境負荷の少ない都市の実現に向けて極めて重要と認識し、これまでも都民や事業者の声を集め、都議会の場に伝えてまいりました。
 事業者の期待にこたえるためには、ベンチマークをつくるだけではなく、努力した事業者が報われる制度を整備していくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、多摩地域の雇用就業対策について伺います。
 多摩地域には、すぐれた技術を持つ物づくり企業が集積しておりますが、その多くは人材の確保に悩んでおります。多摩地域の活性のためには、企業の人材の確保を支援することも重要です。
 また、多摩地域には、企業だけではなく多くの大学も存在しております。現在の厳しい雇用状況を改善するためには、こうした多摩地域の特色を生かし、企業と大学、若者とを就業面で結びつける役割を東京都が積極的に果たすべきと考えます。
 都では、しごとセンター多摩を設置し、中小企業団体など多摩地域のさまざまな団体とも連携した就業支援策を実施しています。
 今後は、こうした連携を強化しつつ、多摩地域における就業支援策を拡充していくべきと考えますが、見解を伺います。
 それでは、石原慎太郎知事に朝鮮学校の補助金問題について伺います。
 現在、国会内では、北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさんの写真展が行われておりますが、私たちは一日も早く日本人拉致被害者全員を救出しなければなりません。そのためにも、日本人拉致を手引きした朝鮮総連や、その下部組織である朝鮮学校に対して厳しく対峙しなくてはなりません。
 東京都においては、私立外国人学校運営費補助制度の創設以降、総額約四億七千万円もの公金が支給されてきました。現在は、石原知事の英断により支給が凍結されております。
 一方、国においては、菅総理が退任時に就学支援金制度、高校授業料無償化に向けて、朝鮮学校の審査再開を指示しました。この問題に対し我が党は、谷垣禎一総裁を先頭に、明確に反対を表明しております。
 そもそも朝鮮学校は、教育基本法やさまざまな法令に違反の疑いがあり、高校無償化の対象に加えるべきではありません。
 昨年十一月十一日の参議院文教科学委員会で、文部科学大臣は、教育基本法第二条及び第十六条は朝鮮学校にも適用されると明確に答弁しました。しかしながら、教育基本法に違反をしていないか否かの判断は、国が行うのではなく認可権者である都道府県知事が行うべきであるとの驚くべき答弁をしております。国が地方に責任をなすりつけているといわざるを得ません。
 教育基本法第二条の五には、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことと明確にうたわれております。
 では、朝鮮学校では、一体どのような教育が行われているのか。朝鮮高校の教科書「現代朝鮮歴史」にはまともな歴史の記述はなく、例えば朝鮮戦争は、米韓より仕掛けられたものであり、大韓航空機爆破事件もでっち上げだと書かれております。金日成、金正日をたたえ、日本人に対して敵意を駆り立てる記述に終始しています。
 日本人拉致については、日本当局は拉致問題を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることによって、日本社会には極端な民族排他主義的な雰囲気がつくり出されていったと記述があり、全く反省が見られません。
 先般、神奈川県が県下の朝鮮学校に教科書提出を求めた際に、実際使われている教科書ではなく、偽装したダミー版を提出するなど、その対応は極めて悪質といえましょう。したがって、第二条の五に明らかに違反をしております。
 また第十六条では、教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力のもと、公正かつ適正に行われなければならないと記されております。
 朝鮮学校では北朝鮮、朝鮮総連に貢献し得る人材の育成に取り組んでいると、朝鮮総連がみずから公言しております。
 また、十一月十八日の産経新聞の報道により、朝鮮学校に支給された自治体からの補助金が朝鮮総連へ還流されている実態が明らかにされています。第十六条の不当な支配を受けているのは明白です。国の、朝鮮学校について、設置者である都道府県より違反との見解がない以上、適切に運営されている、適切に運営されている以上、無償化の対象に加えても差しさわりがないとの論法は、全くの暴論です。
 そこで、都内の朝鮮学校の許可権者である知事に伺いますが、朝鮮学校の運営や教育内容が、教育基本法などの法に違反、抵触しているか否か、見解を伺います。
 明日、十二月九日からは、都庁内で「拉致被害者救出運動 写真パネル展」が開催されます。数百人にも及ぶ拉致された被害者の方々、ご家族の方々の心中を察するに、我々は一刻も早く被害者の救出、奪還をしなければなりません。
 今こそ、拉致被害者家族会や関係機関等と連携を一層深め、北朝鮮に毅然とした態度を示すためにも、補助金支給を凍結している現状から一歩踏み込んで、次年度予算から補助金そのものを削除、廃止を決断すべき時期に来ていると考えます。知事の見解を伺います。
 次に、教科書採択について伺います。
 ことしの夏は、平成二十四年度から中学校で使用する教科書の採択が各教育委員会で行われたところです。私の地元の武蔵村山市では、歴史、公民教科書ともに育鵬社が採択されました。私も教科書改善運動にこれまで取り組んできた立場から、このたびの武蔵村山市教育委員並びに武蔵村山市長の決断に敬意を表するとともに、感謝を申し上げます。
 しかし、採択が行われている間、教育委員に対して、さまざまな団体や個人から、育鵬社と自由社の教科書を採択しないようにとする意見や要望等が執拗に行われていたとも聞いております。全国各地において、さまざまな形で不当な圧力が教育委員に向けられたとの報道もあり、教育委員は、みずからの自由な意思で、教育基本法等の趣旨を最も踏まえた教科書を採択することができなかったのではないかと懸念されるところです。
 こうした状況を踏まえ、適正かつ公正な採択の実施を確保するために、いかなる圧力がかかったとしても毅然とした態度で立ち向かわなければなりません。
 私はこれまで、都教育委員会は、市区町村教育委員会における教科書採択について強力に支援すべきと主張してきましたが、どのように支援をしているのか伺います。
 十月二十八日、産経新聞において、東京都教職員組合が教科書採択に当たり、各教科書を比較検討した資料の中で、竹島について、日本領といえる歴史的根拠がないとの政府見解を否定する内容があったことが報じられました。
 教育公務員で構成される職員団体が、こうした検討資料を作成していること自体、許しがたいことであり、厳しく対応しなくてはなりません。
 都教育委員会は、報道当日に、東京都教職員組合に対して迅速に対応していると聞いておりますが、具体的にどのような対応をし、今後どのように対応するのか、所見を伺います。
 次に、繁華街や外国人が多く住む地域などで配布されている外国人向けの無料情報誌、いわゆるフリーペーパーに関して警視総監に伺います。
 警視庁のまとめでは、五十八紙で七百三十六件の偽装結婚の仲介、不法就労のあっせんなどをうかがわせる広告が掲載されていたとのことです。大半が中国人、韓国人向けのものであり、不法就労のあっせんや、資格や身分の偽装仲介、地下営業などであったとされています。
 中には、日本人と結婚したい不法残留者とか、国際結婚、ビザの期限もうすぐの方歓迎等とうたい、公然と偽装結婚を助長する広告が掲載され、実際に私が手にしたフリーペーパーにも、日本人夫の失踪を手伝いますなどと書かれており、首都東京の安全・安心の裏に暗躍する犯罪集団により、半ば公然と行われている、そうしたやみの実態に驚愕し、大変な嫌悪感を覚えました。
 首都東京にとって、そうした実態は決して好ましくなく、フリーペーパーを使った組織犯罪や、それを利用する不良外国人等の摘発、取り締まりなどを一掃すべきと考えますが、それらの実態と今後とるべき対策等について、警視総監の見解を伺います。
 次に、多摩都市モノレールの箱根ヶ崎方面への延伸について伺います。
 都は、平成四年十二月に、箱根ヶ崎方面への延伸区間について事業化すべき路線として決定しており、私の地元、武蔵村山市役所には、当時の鈴木俊一知事が書かれた武蔵村山市モノレール元年との大きな額縁入りの書が飾られており、地元の悲願となっております。
 このモノレール元年から二十年の歳月を経る間、地元においては土地区画整理事業を実施し、駅設置の空間確保や需要の増加に向けた努力が重ねられていますが、一方で、肝心のモノレールの延伸計画はいまだ動いておりません。
 多摩都市モノレールの経営状態は、平成二十年度の都を初めとする自治体の経営支援に加え、会社の営業活動の成果もあり、三年連続で経営収支が黒字になるなど、経営体力が戻りつつあります。
 こうしたやさき、先月、新聞記事の中に、都がこの計画をやめてしまうのではないかという印象を与える内容が掲載され、地元は大変落胆をしております。地元の努力や期待を無にしないためにも、事業化を明確にすべき時期に来ていると考えます。都の認識と決意を伺い、私の質問を終了します。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 野田かずさ議員の一般質問にお答えいたします。
 朝鮮学校に関する二つの質問についてでありますが、文部大臣が、朝鮮学校の教育内容が教育基本法に違反しているかどうかについては、一義的な解釈は許認可権限を持つ都道府県知事にあると。あなたにいわせると、地方に責任を押しつけるような発言をしたということでありますが、これはやっぱり地方自治体がその責任で実態を調べる必要があると思いますね。
 ですから、この問題は私自身の権限、判断でいたしますが、いわれるまでもなくて、巷間いわれているような反日的内容の教科書、朝鮮総連の運営関与、朝鮮総連への資金提供などが事実でありまして、また、法に違反していることが事実であり、また、法に違反している事実があれば極めてゆゆしき問題であります。
 小泉総理の平壌訪問から来年で十年になりますが、北朝鮮に拉致された、状況証拠からいえば二百人に近い日本人同胞の安否は依然として不明のままでありまして、拉致問題の解決はいまだに道筋が見えておりません。
 一方で、北朝鮮は拉致問題は解決済みと主張するばかりか、韓国の領土の島に砲撃するなど、言語道断の振る舞いを続けておりますし、実際、向こうのある大きな組織に属して、その幹部に成りおおせた、拉致された日本人が帰ってきて、ある筋にそれだけ漏らしたそうでありますが、一緒に拉致されたおじさんは年をとり過ぎているから、その場で殴り殺されたと。そういう事実があちこちにありますが、とにかく、日本人を拉致していく向こうの工作員というのは、日本に住んでいる人じゃないわけですから土地勘がない。それを手引きしたのは、こちらに住んでいる、要するに北朝鮮の人間でしょう。そういう活動をぬけぬけとしてきたその朝総連が、そういう政治的、何ていうんでしょうか、思想、信念にのっとって、その種の教育を学校で行っていることは非常に反日的でありまして、私とて極めて迷惑なことであります。
 改めて申し上げるまでもなく、これは非常に、国民の生命と財産を守るためにも適当な処置をとらざるを得ない問題だと思います。
 しかし、国は、地方の首長に責任を預けるような形で、何かいろいろなことをはばかっているようでありますが、その北朝鮮の影響下にある朝鮮総連との密接な関係があり、教育内容や政治的中立性などに疑念が呈されている朝鮮学校を高校授業料無償化の対象に加えるべく審査を開始したなどということは、とても正気のさたとは私には思えません。
 拉致被害者の帰国を望むご家族も高齢化が進み、残された時間が刻一刻少なくなっている。これは、やっぱり国を挙げて強い意思表示をして、この理不尽な国家、あるいはそれに属する民族、しかもそれが日本に住んでいる人たちに、やはり強い意思表示をして、あらゆる手段を行使して北朝鮮に圧力をかけて、一日も早く拉致問題の解決の扉を開いていかなきゃならぬと思います。まあ東京都はなぜか今までやってこなかった、朝総連の、彼は外交関係の機関と称して、その上に非課税であった建物に固定資産税を加えました。ごたごたいうので、もう競売の対象に決めているから、期日までにお金を持ってこなかったら競売に付すぞといったら、慌てて二件、数千万のお金を束ねて持ってきましたけどね。
 これは、私の代で改めてじゃなし、要するにとっくに、日本の東京都がやらなくちゃいけないし、他にそういう例があるならば、ほかの大都市もあるんでしょうけど、そういうことで示すべき日本の国家としての姿勢だと思います。
 いずれしろ、そこで行われている授業の内容というのは、先ほども担当の局長に聞きましたら、行くと全然違う教科書を見せる。それから、そのときに限って適当な授業を見せる。それなら、その真偽をただすために、都の職員がやっぱり張りついて、一週間でも十日間でも一月でも、その実態を調査したらよろしいと思うし、それが嫌なら学校を閉鎖したらよろしいので、そういうことを強要できないような相手に、私たちは国民の税金を使って補助する必要は毛頭ないと私は思います。
 都の外国人学校に対する補助金は、議会の要望を受けて創設された経緯がありまして、朝鮮学校の補助金の執行については最終的な判断を保留してきましたが、来年度予算には計上しないことも含めて、しかるべき時期に国民全員が納得するような判断をしたいと思っております。
   〔警視総監樋口建史君登壇〕

〇警視総監(樋口建史君) 外国人向けのフリーペーパーの広告を使った犯罪等の実態と対策についてのお尋ねであります。
 警視庁で把握をいたしております不正な広告の掲載がうかがわれる外国人向けのフリーペーパーでありますが、中国語のものと韓国語のものとでありますけれども、十五紙把握いたしております。
 内容を見てみますと、まあそれぞれなんですが、生活情報や真っ当な広告宣伝もあるんですね。相当を占めておる。ですけれども、犯罪を明らかに誘発、助長するような広告も少なからず見られるところでありまして、これは警察でありますので、捜査の端緒情報として見ています。犯罪として摘発、検挙をしておるということで、ことしも三件検挙しました。
 一つは、白タクなんですけれども、道路運送法違反。それから、未承認医薬品の販売で利益を上げていた、地下薬局などと呼んでおるのでありますが、薬事法違反。それから、美容整形等の医療行為を、もちろん無資格でというものでございましたが、医師法違反でそれぞれ摘発をしています。
 一つ、フリーペーパーそのものの責任はどうなんだということがあるんですけれども、幇助等の責任を追及するには至っておりません。なかなかこれは、やはりいろいろ難しいところもあるわけでございますけれども、犯罪の誘発が明らかに懸念されるような広告につきましては、適切な対応を求めることとしておるところであります。
 一方、ご質問では、フリーペーパーが問題だということのご指摘ございましたけれども、フリーペーパーを利用して悪さをするだけではもちろんございませんで、実にいろいろな手段、方法でもって金を稼いでいる。それが法に違反しているかどうか意に介さない。いわば不法行為をなりわいとしている不良外国人のグループが一定数、都内に巣くっていると考えています。
 外国人の犯罪が問題になり始めたのは二十数年前でありますけれども、この二十数年を振り返ってみますと、ピーク時には全国で約三十万人不法滞在者がいたわけでありますが、平成十七年からの五カ年計画で五年で半減しましょうという計画がございまして、その成果でもあるわけですが、ことしの一番新しい統計を見ていますと、半減どころか随分減りまして、四分の一が近いんですが、七万八千人ですね。これは全国の統計ですけれども、その約六割が首都圏だと見ています。
 どうも、犯罪への関与の最も濃い部分は余り減少していないような感じがいたしております。というようなことでございまして、こういった外国人の虞犯グループの実態解明と壊滅が重要課題であると考えております。
 ただ、これもご指摘ございましたけれども、近年はこういった外国人の多くが表面上は正規滞在でございまして、実際にはなかなか立証が難しいところもあるんですが、偽装結婚であり、偽装の養子縁組であり、実態のない会社の社員としての在留資格でありといったぐあいなんでありますけれども、それなりに根づいているものですから、実態把握は相当に難儀な作業になっております。
 この実態把握と申しますのは、新宿、渋谷、池袋、六本木、このあたりの繁華街、歓楽街を中心に、エリア内のビルや店舗を一つ一つ点検していく作業であります。この権利関係や名義が錯綜しておりまして、手間のかかる作業ですけれども、こうした取り組みを通じまして、丹念に、打撃力のある事件を掘り起こして事件化いたしまして、虞犯グループの壊滅に持っていきたいと考えておるところでございます。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、区市町村教育委員会の教科書採択についてでございます。
 教科書の採択は、静ひつな環境のもと、教育委員の信念と自由な判断で行われるべきものであり、特定の意見を受け入れさせるための脅迫や執拗な干渉など、不当な圧力により左右されることがあってはならないと考えております。
 都教育委員会は、文部科学省の通知に基づき、区市町村教育委員会に対し、外部からの不当な影響等により採択の公正確保に問題が生じた場合、警察等の関係機関と連携を図るよう、具体的な指導助言を行っております。
 今後、都教育委員会は、区市町村教育委員会とより一層連携を図りながら、外部からの不当な圧力に対して厳正に対処するとともに、区市町村教育委員会が関係法令に基づいて適正に教科書を採択することができるよう、全面的に支援してまいります。
 次に、東京都教職員組合が作成した竹島に関する記述を含む新教科書検討資料についてでございます。
 都教育委員会は、これについての報道がされた当日、直ちに東京都教職員組合に対し、当該資料の記述は政府見解や新学習指導要領に反しており、教育公務員に対する不信感を生じさせかねないことから、今後こうした事態を招かないよう厳重に警告した上で、該当部分の削除と関係者への謝罪を求めました。東京都教職員組合は、これに応じ、削除と謝罪を行っております。
 同時に、東京都教育委員会は、区市町村教育委員会及び都立学校に対し、我が国の領土に関する指導については、学習指導要領に基づき適正に行うよう通知し、周知を図ったところでございます。
 現在、東京都教職員組合の他の資料等についても精査しておりまして、今後とも、教育公務員の信頼を失わしめるような言動に対しては、毅然とした対応を図ってまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、運送事業者のエコドライブの取り組みを評価するベンチマークの作成状況についてでございますが、運送事業者の環境面での取り組みを評価するこれまでの制度は、エコドライブに関する社内教育体制や運行記録の有無等に基づく定性的な評価にとどまっておりました。
 これに対しまして都は、平成十九年度から運送事業者によるエコドライブの取り組みを支援する中で、個々のトラックの走行距離と給油量について、一カ月ごとに集計した合計三十五万台分のデータを、東京都トラック協会の全面的なご協力をいただきまして収集してまいりました。このデータ量は世界最大規模のものでございまして、東京だけに蓄積されている貴重な運行データでございます。
 今回、都は、このデータを分析することによりまして、さまざまな車種、大きさのトラックを三十九の分類に区分し、エコドライブの取り組みの程度を定量的に評価することができるベンチマーク案を作成いたしました。
 このようなベンチマーク案の作成は、世界的にも初めてのものでございまして、年内にパブリックコメントを実施し、いただいた意見を踏まえまして、今年度末には最終的なベンチマークとして取りまとめてまいります。
 次に、ベンチマークを活用する制度の整備についてでございますが、エコドライブや低燃費な自動車の導入など、運送事業者の積極的なCO2削減の取り組みを適正に評価し、荷主や都民の方々からも見えるようにすることが、運送業界全体の取り組みを底上げすることになります。
 このため、都は来年度中を目途に、運送事業者が都にCO2削減の実績を申請し、ベンチマークによる評価を受けられる制度を構築するとともに、高い評価を受けた運送事業者については、都が公表してまいります。
 また、制度の構築に当たりましては、日本全国の重立った企業や自治体が加盟をしておりますグリーン購入ネットワークの協力を得ながら検討を進めるとともに、率先的なグリーン購入活動の一環として、高い評価を受けた運送事業者の活用を積極的に促進してまいります。
 これらの取り組みによりまして、運送事業者による環境貢献の努力が正当に評価されるビジネスルールの確立に努めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 多摩地域における就業支援策の拡充についてのご質問にお答えします。
 しごとセンター多摩では、平成十九年八月の開設以来、個別担当制によるキャリアカウンセリングや各種セミナー、グループワークなど、就職に向けたきめ細かい支援を実施し、平成二十二年度末までに延べ五万八千人を超える方々のサービスの利用がございました。
 また、同センターでは、多摩地域の中小企業団体や地元金融機関、大学等と連携し、合同企業面接会や企業説明会、セミナーを開催するなど、地域の特色を生かした就業支援策を展開することによりまして、企業の人材確保や地域の活性化にも寄与してまいりました。
 今後とも、しごとセンター多摩が地域の求人、求職ニーズに的確に対応できるよう、企業や大学等とより連携を深めながら、同センターの就業支援拠点としての機能を一層強化することを検討してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 多摩都市モノレールの延伸についてでございますが、箱根ヶ崎方面の延伸については、運輸政策審議会答申第十八号において、平成二十七年までに整備着手することが適当である路線として位置づけられております。
 都としては、多摩地域の自立性の向上に向けて、都市間の連携を強化させるとともに、鉄道不便地域を解消する観点から、これまでの考え方に変わりなく、整備の必要性が高い路線と認識しております。
 箱根ヶ崎延伸については、多摩都市モノレール株式会社の経営状況や進捗している土地区画整理事業などの周辺の開発動向等を踏まえ、コスト縮減策や収入確保策、事業採算性を見きわめながら検討するなど、課題解決に向け、知恵を絞ってまいります。

副議長(ともとし春久君) 五十番中谷祐二君
   〔五十番中谷祐二君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇五十番(中谷祐二君) 日本の近代史家である作家、渡辺京二の著書「逝きし世の面影」は、我が国が西洋化し、近代化することによって失った明治末期以前の文明の姿を追い求めたものであります。そこには、今日の日本が失ってしまった伝統、文明が確かにありました。
 西洋化により、日本の伝統的共同体の解体が進み、失われた共同性を求めた姿は、東日本大震災からの懸命な復興が進む中、日本人の規律の正しさ、協調心が呼び覚まされ、公共心の大切さを再認識したことと重なるところです。
 知事は常々、東京は日本のダイナモだ、東京がとまれば日本もとまる、東京が継続して発展し続けることの重要性を訴えておられます。
 今まで、東京で消費される電力エネルギーの多くは、福島原発からの供給でありましたが、東京、いや日本のエネルギー政策が根幹からの見直しが迫られる中で、知事は、東京の電力不足解消のために、百万キロワット級の天然ガス発電所の新設を提唱し、都内に六十カ所整備を進める防災公園に非常用ガス発電施設を設置、さらに、東京電力から独立した送電網を臨海副都心に敷設する計画も打ち上げました。
 そもそも我が国のエネルギー政策の転換期は、原発の導入が契機であります。核の平和利用が叫ばれたのが、五十八年前の一九五三年十二月八日の国連総会で、アイゼンハワー・アメリカ大統領が演説をした、ピースフル・ユースィズ・オブ・アトム、すなわち原子の平和的利用にあります。
 当時の時代背景は、アメリカとソ連の核兵器開発がエスカレートし、核拡散を阻止したい米ソの利害が一致し、核の軍事利用を抑えるために、核の商業利用、原子力発電へと導いたものであります。
 そして、我が国も極めて政治的に、国策として原子力発電の道を選択しました。やがては枯渇するといわれる化石燃料にかわるエネルギー、発電コストも火力発電よりも安い、使用済み燃料を再処理して再びエネルギーとして利用できるなど、核の万能ぶりが昔は随分と吹聴されたものです。
 しかし、実際には原子力発電というのは、消すことができない火をつけてしまった技術にほかなりません。原発は、核分裂反応によって生じた膨大な核エネルギーを直接電力に変えているわけではありません。
 原子力というと非常に先端的な新しい発電形態のように思われがちですが、実は火力発電と同じように、水蒸気をつくり、タービンを回すことで発電機が回転し、電気エネルギーを得るという極めて古典的な発電形態であります。
 原子力発電所をつくり、そこから電力を得ることができても、そこで生まれた放射性物質や廃棄物の放射能は消すことができません。今回の事故も、原子力から生まれた火を完全に消すことができなかったのであります。
 しかし、我々は、放射能汚染の現実を超えて、我が国が再生していくために、エネルギー政策についても新たな選択をしていかねばなりません。
 その選択肢は大きく三つであります。一、徹底的に脱原発を進め、原発のない社会をつくること。一、五十四基ある国内の商業用原子炉を総点検し、原発依存を縮小しながらも、原発とともに生きていく社会を再構築すること。一、自然エネルギーの風力や太陽光発電、バイオマスエネルギー等の比重を上げながらも、天然ガス、火力発電の環境への適合性を高めつつ、蓄電の技術向上を図り、あらゆるエネルギー源の開発を進め、エネルギーベストミックスの改善を図ること。
 そして、今、東京でできることは、みずからが使う電力の自己調達率を高め、平常時からその備えをしていくことであります。
 都が推進しようとする非常用ガス発電も、実用化には時間を要するものでありますし、発電については、環境局、建設局を初め、関係する部局も相当数に及び、都全体で取り組む施策でもあります。
 都として、非常時にも対応できるエネルギー供給システムのグランドデザインをどのように描き、進めていくのか、知事の所見を伺います。
 CO2削減に向けて都は、「十年後の東京」実行プログラムにおいて、二〇二〇年までに二〇〇〇年比二五%のCO2排出削減を掲げています。排出量取引制度は、環境に配慮した建築物の普及に取り組む世界グリーンビルディング協会が創設したガバメントリーダーシップ賞を東京都がこのたび受賞しました。先駆者としての取り組みが評価されたことはまことに喜ばしいことであります。
 世界で初めてオフィスビルを対象に、千三百もの事業所をカバーし、排出削減を義務づけたことが評価されたわけでありますが、大規模事業所に対するCO2排出総量削減義務と排出量取引制度において、今回の震災が対象事業者が果たすべき義務の履行にどのような影響を与えたのか伺います。
 また、都内には、テナントビルが多くありますが、この夏の電力使用制限下においては、建物所有者に義務が課せられていました。一方、電力の使用の大半はビルオーナーではなくテナントであるために、効果を上げるにはテナントの協力が不可欠であるといわれております。
 そうした状況を踏まえ、CO2排出総量削減義務と排出量取引制度においては、どのようにテナントビルにおける節電を進めていくのか伺います。
 練馬城址公園を初め、防災公園として位置づけられている公園整備について伺います。
 都は、都市計画公園、緑地の事業進捗や社会情勢の変化とともに、震災も踏まえ、防災機能を高めるために、練馬城址公園、いわゆる豊島園の整備を加速し、避難場所としての機能を維持していくために、新規に事業化を図る方針を打ち出しました。
 二十二ヘクタールという大規模な公園の整備に当たり、防災公園という機能とともに、人が集まる魅力ある公園、観光資材としての活用を図るべきであります。地上部の活用とは別に、防災公園の多機能化のためには、地下部分についての工夫が図られるべきであると考えます。
 都民生活に密着した産業である東京の農業の新たな展開には、都市農業、農地制度の改善を求めていかねばなりません。
 我が党の代表質問にもありましたが、耕作放棄地の再生を図るのはもちろん、東京農業の現状は、認定農業者は十年間で二・五倍、エコファーマーは六年間で七倍になるなど、意欲ある農業者がふえる一方、農地は十年間で一千三百三十ヘクタールも喪失しています。次世代へ継続可能な産業として引き継ぐために、労働生産性を上げる、つまりは売上単価の増加、大規模経営、面積当たりの収穫数をふやすことが必須であります。
 防災公園の地下部分の有効利用と都市農業の今後のあり方を考えると、地下部分に今日の技術レベルをもってすると、十五毛作も可能な水耕栽培による無農薬野菜工場としての活用もぜひご検討いただきたいと提案を申し上げます。
 そこで、六十カ所を予定する防災公園整備においては、地上部分とあわせて地下部分について何か具体的な検討がなされているのかお伺いをいたします。
 次に、都有財産の利活用について伺います。
 震災を契機に都が所有する財産利活用も今までとは違った視点での管理運用が求められています。防災対策やエネルギー対策を進めるという点において、都政の重要な資源の一つである公有財産がむだなく、戦略的に使われているかが改めて問われています。
 公有財産の活用とは、いかに税外収入を確保していくか、いかに行政目的のために機能的に活用していくかという二点に集約されると私は考えております。
 そこで、税外収入の確保の観点から伺います。
 平成十八年の地方自治法の改正により、行政財産について、貸し付けできる範囲が拡大されました。この間、私は財政委員会の場で、新たな制度の活用を強く求めてまいりましたが、本年十二月より、第二本庁舎一階のコンビニエンスストアについて、これまでの使用許可から賃貸借契約による貸し付けに移行することになりました。
 本件については、人材支援事業団ではなく、民間企業へ直接使用許可をしておりましたが、今までの使用許可の使用料は年間六百二十万、今回の契約形態の変更により貸し付けにすることによって年間六千八百万円の貸付料となりました。驚くべきことに十倍以上もの税外収入となります。
 都有財産の中には、まだまだ眠っている資産があるのではないでしょうか。議会棟地下にある専門レストランや総合売店など、面積にして約四百坪のスペースも都職員の福利厚生事業の一環として人材支援事業団に財産の使用許可を認め、管理運営をさせています。
 公共減免のため、二分の一減額措置が図られ、年間使用料は二千四百万であります。そのうち、専門レストランに限って申し上げると、一千二百万円の負担をし、経営者などからは、売上管理手数料名目で年間三千九百万円と二千七百万円もの差異が生じているわけです。しかし、建物維持管理や、その他経費がかさみ、最終的には、平成二十二年度決算で五百万円の赤字を計上しています。
 実際の利用者はといえば、職員よりも一般都民の利用者の方がはるかに多い現状をかんがみ、専門レストランを初め総合売店など、利用形態についてそもそものあり方の見直しを検討する必要がありませんか。見解を伺います。
 また、事業団と専門レストラン、総合売店などが現在締結している業務委託契約も満了時期をとらえて、本件については、使用許可から貸し付けへと契約形態を変更していくことも可能であると考えますが、見解を伺います。
 最後に、障害者の就労移行支援について伺います。
 障害者自立支援法が二〇〇六年度に施行され、さらに、国が翌年二月に取りまとめた成長力底上げ戦略において、障害者の地域における福祉的就労から一般就労への移行を促進し、可能な限り就労による自立、生活の向上を図ることを目指しております。
 さて、先月末に発表された障害者雇用情勢を見ると、都内の民間企業の雇用障害者数は十三万五千人で、毎年増加傾向にあるものの、実雇用率は一・六一%と、依然として法定雇用率の一・八%を下回っております。特に小規模な企業については、社員が百人から三百人未満の企業で一・〇%、五十六人から百人未満の企業では〇・六五%と、依然として雇用率は低い水準にあります。
 都は「十年後の東京」の中で、平成十九年から十年間で障害者の一般就労三万人以上増加の目標を掲げています。全国の中小企業の一五・五%、大企業の三四%が集積している東京の強みを生かして、国、東京都、企業、経済団体などの連携のもと、障害者の一般就労に一層力を入れていく必要があります。
 昨年七月に、改正障害者雇用促進法が施行され、障害者雇用納付金制度の対象事業主が拡大されたことに伴い、今後は障害者雇用を検討する中小企業がふえていくことが予想されます。
 中小企業は、企業理念として、障害者の方を戦力としてしっかりと雇用していくという姿勢を示していくことが求められ、また、都は、これまで以上に中小企業支援の充実を図り、大都市の優位性を発揮し、障害者の特性に応じた雇用機会の拡大が望まれます。
 都は、今年度からオーダーメード型障害者雇用サポート事業により、企業のニーズを踏まえた支援を行っていますが、中小企業における雇用のさらなる拡大に向けての取り組みについて伺います。
 誠意あるご答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 中谷祐二議員の一般質問にお答えいたします。
 東京におけるエネルギー供給についてでありますが、独占的に供給している電力会社や遠隔地からの電力に過度に頼り切ってきたこれまでのエネルギー供給システムのもろさは、だれの目から見ても明らかとなっております。
 今、必要なことは、地産地消のエネルギーの創出や地域分散型発電の推進など、新しいエネルギー供給モデルへの転換でありますが、国はエネルギー政策の検討会議なるものを乱立させるばかりで、現実の電力改革に一歩も踏み出してはおりません。
 電力の多量消費地である都は、既に猪瀬副知事をリーダーとする天然ガス発電所整備に向けたプロジェクトチームを立ち上げて、東京産のエネルギーの確保に向けた行動を開始しております。
 また、リスクの分散を図るために、六本木ヒルズにおいて示された自立型のエネルギー供給システムをさらに進化させて、臨海都心部においても全面的に展開するなど、電力会社からの電力だけに頼らない地域分散型発電の新たなモデルビルディングに取り組んでおります。
 今後もエネルギーの安定的供給に向けた都独自の取り組みを進めて、既得権益に守られたこの国の電力供給における高コスト構造を解体する突破口としていきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 防災公園の整備についてでございますが、建設局で所管する都立公園八十公園のうち、防災活動拠点や避難場所に位置づけられている六十公園において、防災公園の整備を進めており、既に十九公園の整備を完了したところでございます。
 整備の内容といたしましては、防災トイレやソーラー式公園灯の設置、主要園路の拡幅等でございます。
 防災公園の地下については、現在、応急給水槽や防火水槽などに利用されておりますが、野菜工場など、食料需給への活用は現段階では考えておりません。現行の東京都地域防災計画によれば、都は、都内二十一カ所の倉庫に食料などの物資を備蓄し、被災者に迅速かつ円滑に供給することとしております。
 また、今後は、東京都技術会議の提言も受け、地域分散型、非常用発電装置の設置も進めてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、震災後の電力不足によるキャップ・アンド・トレード制度対象者への影響についてございますが、都のキャップ・アンド・トレード制度は、大規模事業者に対しまして、五年間の計画期間内に六%ないし八%のCO2排出削減を求める制度でございます。
 二〇〇九年度のCO2排出実績を見ますと、既に約六割の事業所が削減義務率以上の削減を行っております。制度対象事業所の多くは、電力の使用制限が課せられましたが、これまでの都の制度で蓄積しました省エネのノウハウを生かしまして、比較的無理なく節電に取り組み、来年の夏も多くの事業所で実施するとしております。
 これらの状況を踏まえますと、多くの事業所で、義務履行に向けてさらに取り組みが進むものと考えております。
 次に、テナントビルにおける節電の推進についてでございますが、テナントビルにおける電力使用の大半は、テナント事業者によるものであり、建物所有者とテナント事業者の協力が不可欠でございます。
 そこで都は、キャップ・アンド・トレード制度において、すべてのテナント事業者に建物所有者の実施する対策に協力する義務を課すとともに、大規模なテナント事業者には、省エネ対策の計画作成と推進を義務づけております。
 都が実施しましたアンケートによりますと、この夏は、建物所有者に対し、省エネ対策の提案をするテナント事業者が昨年に比べて倍増しておりまして、協力して節電を行う取り組みが進みました。
 都としては、テナント省エネセミナーや、現場での省エネアドバイスにより、建物所有者とテナント事業者の協力した節電の取り組みを一層推進してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 議会棟地下一階にあります専門食堂などについてでございますが、現在、都庁舎には約一万人の職員が勤務をしておりまして、公務運営に支障を来さずに限られた時間内で昼食や日用必需品の購入等に対応できるよう、職員向けの施設として庁舎敷地内に食堂や売店などを設置し、一体的に運用しております。
 お話の専門食堂や総合売店につきましては、都民広場や街路に隣接した開放スペースに設置していることから、職員のみならず、多くの都庁来訪者の方々にも気楽にご利用いただけるよう、これまで、テナントの入れかえや施設の改修など、施設の利便性向上に努めてきたところでございます。
 都といたしましては、こうした専門食堂などにつきましては、その設置目的や運営実態に照らし、現行の行政財産の目的外使用許可による設置が妥当であると考えており、今後とも、利用者ニーズや費用対効果などを踏まえながら、そのあり方について不断に検証を行ってまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) ただいまの専門食堂等の財産上の取り扱いについてでございますが、行政財産は私権の設定が制限されておりまして、庁舎の貸し付けは、余剰スペースを有効に活用する場合に限り、例外的に認められるところでございまして、ご質問の中にありました第二庁舎一階のコンビニエンスストアもこの余剰スペースの一つとして活用いたしたものございます。
 したがいまして、お話の専門食堂等については、ただいま答弁ございましたが、職員の食堂施設として、また、来庁者等の利便性を図るための施設として、あらかじめ庁舎内に必要なスペースを確保するものと位置づけられておりますので、行政財産の目的外使用許可により設置いたしたものでございます。
 したがいまして、これら専門食堂等につきましては、現時点におきましては、貸し付けへの切りかえは考えておりません。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 中小企業における障害者雇用の拡大についてのご質問にお答えいたします。
 昨年七月の改正障害者雇用促進法の施行によりまして、障害者雇用納付金制度の対象事業主が拡大されましたことを踏まえれば、中小企業を中心に、障害者雇用の重要性について理解を促していくことが必要でございます。
 都は、これまでも中小企業に対して、ハンドブックの配布やセミナーの開催などを通じて、障害者雇用のポイントについて普及啓発を進めてまいりました。さらに、東京しごと財団において企業合同説明会を開催するなど、障害者とのマッチングに向けた支援を行っております。
 これらに加え、今年度から、中小企業における障害者雇用拡大の機運を醸成するため、意欲のある中小企業を対象に、個々の企業の実情に合わせて、採用前の準備から採用後の定着まで一貫して支援するモデル事業を開始しております。
 今後とも、こうしたさまざまな施策を通じて、中小企業における障害者雇用の拡大に向けた支援を着実に実施してまいります。

議長(和田宗春君) 一番小林健二君
   〔一番小林健二君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇一番(小林健二君) 初めに、我が国が誇る技術の開発力と科学技術教育について質問します。
 私は先日、社団法人日本能率協会が主催した、ものづくりNEXT二〇一一という展示会に行ってまいりました。
 革新的なものづくりの情報を発信する展示会であるだけに、製品を壊さずに検査を行うハイレベルな技術や3D画像を活用して試作品を高速でつくり上げる装置など、改めて日本の持つ技術力の高さと、ものづくりの力が脈々と受け継がれていることを実感いたしました。
 幕末に黒船で来航したペリーが日本への遠征記録をまとめたペリー提督日本遠征記の中に次のような記述があります。
 技術分野では、日本人の腕前は大したものである。彼らの粗末な道具や機械の知識の不完全さを考えてみれば、彼らの手先の器用さは驚異的に思われる。日本の職人の技術の高さは、世界のどの国の職人にも劣らないものであり、国民の発明力がもっと自由に発揮されるならば、世界の最も進んだ製造業国に肩を並べる日も遠くないことであろう。このように日本人の技術力を評しています。
 今日、このペリーの予言は現実のものとなり、ものづくりは我が国を支える産業の礎となっていることは論をまちません。
 知事は、今定例会の所信表明の中で、技術の開発力こそ国力の源であると述べられましたが、技術の開発力と東京の活性化について知事の所見を伺います。
 そして、この技術の開発力を向上させていくために、とりわけ大切な取り組みが科学技術教育の充実であります。
 本年四月の科学技術週間の標語募集で最優秀となったのは、港区の小学校六年生の「輝いている科学するときのあなたの目」という作品でありました。優秀作品には「身のまわりすべてが科学の宝箱」「すぐそこのまさかの発見見つけよう」などが選ばれておりました。いずれも科学の魅力やおもしろさを実に見事に表現していると思います。
 青少年が科学や理科への関心や興味を高めていくためにも、都有施設の開放やさまざまな機関の連携した取り組みが必要であると考えます。
 昨年、首都大学東京では、児童生徒を対象にして、遊びながら科学を学ぶサイエンスキッズワークショップを開催し、好評を博したと聞いております。
 こうした首都大学東京における科学への興味を高める事業については、新たな取り組みも含め、さらに充実させていくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、東京の文化財建造物の保護について質問いたします。
 中国敦煌の仏教遺跡、莫高窟の保護に生涯をささげた、敦煌の守り人といわれる常書鴻画伯は、敦煌の地へ赴いた心境を、私は決して自分のために行ったのではありません。祖国と人類の文化のためです。どうしても、あのすばらしい芸術を守りたかったと述べています。
 常書鴻画伯を初め、文化財を守り抜いてきた先人の絶え間ない努力によって、今、私たちは、人類の宝である文化遺産から歴史の呼吸を感じることができます。
 しかしながら、これらの貴重な文化遺産も災害によって甚大な被害を受け、喪失してしまう事例は歴史上多数存在します。
 殊に、東日本大震災では、国が指定した文化財だけでも四百件以上の被害があり、文化庁長官は、文化財保護法制定以来の最大の試練と述べています。
 平成十五年六月、内閣府、国土交通省、消防庁、文化庁により、災害から文化遺産と地域をまもる検討委員会が組織されました。
 この検討委員会には、当時の東京都危機管理監も委員として名を連ねており、翌平成十六年七月には、地震災害から文化遺産と地域を守る基本的な観点や計画の考え方を取りまとめました。
 その冒頭において、巨大地震に対する対策が進められている一方、文化遺産に関しては、これを代替性のない特別なものとして扱う視点が欠けていたこと、また、一九九五年の阪神大震災までは、地震後の同時多発火災の神社仏閣への延焼などのような、外からの災厄に対する視点が欠けていたという指摘がなされています。
 東日本大震災における甚大な文化財の損傷、喪失の現実を目の当たりにし、首都直下型地震が懸念される中、後世に先人の遺産を伝えていくためにも、東京における災害時の文化財建造物保護の取り組みを一層強化していくべきです。
 都では、文化財所有者が保存活用計画を策定する際、防災計画などの優先度の高い事項を先行させるよう指導助言を行っていますが、文化財の立地状況や周辺の災害危険度などを念頭に置いた具体性のある防災計画としなければならないと考えます。見解を求めます。
 また、文化財建造物を災害から守るには、文化財所有者と地域住民とが連携して防災対策に取り組み、災害時にはその両者が一体となった防災活動に取り組むことも大切です。
 そのためには、地域の人々が文化財建造物に触れ合い、親しみを持つことによって、地域の大切な資産であるとの認識を高めてもらう取り組みが必要と考えます。見解を求めます。
 さらに、文化財建造物の保護は、担当部署だけで取り組めるものではなく、多角的な視点を持って講じていかなければなりません。今後、庁内の関係各局が一体となって連携し、保護策に取り組んでいく体制の構築を強く要望いたします。
 次に、携帯情報端末利用のあり方について質問します。
 今や多くの人の生活の一部となっている携帯電話が普及して久しい今日、それに取ってかわる勢いで今普及しているのが、本年の流行語大賞のトップテンにも入ったスマホ、いわゆる多機能型携帯電話のスマートフォンであります。
 ある民間会社の調査によれば、昨年九月のスマートフォン所有率が九・〇%だったのに対し、本年九月の調査では二二・九%と増加しており、現在利用していない人でも今後の利用を検討している人は六六・六%に上り、高い関心が持たれています。
 しかしながら、この急速な普及の裏で、スマートフォンの使い方における危険性も指摘され始めています。スマホ普及の年といわれる本年、国民生活センターに寄せられたスマートフォン関連の相談件数は、昨年の五百四十二件に対し、本年は十月末日時点で一千七百八十九件と三倍以上に増加しているとの報告がありました。
 歩きながらスマートフォンを見る人もまち中で多く散見され、注意散漫による通行人との接触事故や、スマートフォンの大きな特徴であるアプリケーションソフトの使用による盗撮事件なども露見しております。
 今後、さらに利用率が高まるであろうスマートフォンを正しく利用していくためにも、その特徴や利用のあり方の普及啓発や注意喚起をしていく必要があると考えます。
 都では、インターネットや携帯電話を利用したトラブルから青少年を守るために、保護者や児童生徒向けにファミリeルール講座や、専門講師を派遣した出前講演会の事業展開を実施していますが、今後のスマートフォンの普及状況や問題点などを的確に把握し、内容も充実していくべきと考えます。見解を求めます。
 また、青少年を中心として広く都民に注意喚起をしていくためにも、さまざまな媒体を利用してトラブル防止のための普及啓発をしていく取り組みが必要であります。見解を求めます。
 一方、利便性に富んだスマートフォンを有効活用している事例もあります。
 このたび、都は、初めてスマートフォンを活用して、まちの情報を多言語で提供する実験を行うと聞いております。普及しつつあるスマートフォンをまちのガイドとして活用することは先駆的な取り組みであり、高く評価するものであります。
 このたび行われるスマートフォンを活用した東京ユビキタス計画・銀座の具体的な実験内容について答弁を求めます。
 なお、今後、すべてのスマートフォンの機種で情報提供がなされることを期待しております。
 また、私は先日、広島市が取り組んでいる救急医療コントロール機能システムの視察をしてまいりました。救急隊の搬送を効率的、迅速に行うため、救急を受け入れる病院と救急車にそれぞれスマートフォンを配備。病院側は受け入れの可否を入力し、救急隊は地域や診療科目を選択し、検索するとリアルタイムの病院の受け入れ体制が表示されるシステムです。
 十月より運用が開始されたシステムですが、持ち歩けることや情報入力の手軽さなど病院、救急隊の双方の負担軽減や利便性が期待されています。
 東京消防庁では、既に救急医療機関の病院端末装置と救急隊の車載端末装置による救急医療情報システムが活用されていますが、今後、救急活動を初め現場で活用するシステムを更新、あるいは改修していく際に、最先端の技術を導入することの意義について所見を伺います。
 最後に、都立練馬特別支援学校の通学の安全確保対策について質問します。
 都立練馬特別支援学校は、来年四月に開校する高等部のみを設置する知的障害特別支援学校でありますが、保護者の皆様から、同校が最寄り駅からの徒歩通学に時間を要することや、学校周辺の道路が狭隘で交通量が多いことなどから、通学の安全を心配する声が私のもとにも多数寄せられています。
 また、知的障害特別支援学校高等部は一人通学を原則としており、高等部のみを設置する学校にはスクールバスの配車がないため、障害が重い生徒の保護者の方は送迎に関する不安があり、ぜひスクールバスの配車を検討してもらいたいとの強いご要望をいただいております。
 保護者の皆様が安心して子どもを通わせることができるよう、地元住民の方々のご理解もいただきながら、スクールバスの配車も視野に入れ、練馬特別支援学校への通学の安全確保策を講じるべきと考えます。見解を求め、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 小林健二議員の一般質問にお答えいたします。
 東京における技術の開発力についてでありますが、先ほどもペリーの日本遠征記の話がありましたけれども、我が国のものづくりの技術というのは、まさに日本人の希有な感性が結実したものだと思います。
 例えば、恐らくペリーも見て驚いたでしょうけれども、江戸時代の浮世絵の版画の刷り板の彫り込みというのは、現代の要するに彫り師が機械をもってしても及ばないぐらい巧緻なものでありました。そういう技術のすばらしさというのは枚挙にいとまがありませんけれども、東京のまち工場の技術も取り入れた小惑星探査機「はやぶさ」の快挙を見るにつけても、日本が持っている技術の開発力は国家の実力そのものでありまして、私たちの先祖が培ってきた努力のあかしであると強く感じております。
 東京には、高度な新技術を縦横に使いこなし、その応用を図る多様な産業の集積に加えて、洗練された大きなマーケットがありまして、他の追随を許さない画期的な技術を生かし切る潜在能力がございます。
 都は、これまでもベンチャー技術大賞を創設して、世界に通用するすぐれた技術を表彰してまいりました。本年大賞となった新しい発想でつくられたねじは、製品の安全性や耐久性を飛躍的に高める機能を持って、どんなことをしても緩まないという、すばらしい、簡単なようで、これもたった二人の要するに工場がつくったものですけれども、これは、本当に東京のものづくりの底力を示すものにほかならないと思います。
 こうしたすぐれた技術開発が数多く実現するよう、この十月に開設した都立産業技術研究センター新本部などを通じた支援の充実を図るとともに、卓越した開発の成果が盗み専門の隣国に盗まれたりしないように、知的財産総合センターによるサポートも力を入れていきたいと思います。
 今後とも、こうした取り組みによって中小企業の技術開発力を高め、東京の産業の活性化に結びつけていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長、関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、文化財の防災計画についてでございます。
 防災計画は、文化庁の定める指針にのっとり、文化財建造物の保存活用計画の一部として、その所有者や管理者が策定するものでございます。
 その策定に当たりましては、文化財建造物個々の防災設備の整備にとどまらず、文化財建造物が火災や震災、風水害等によって周辺からの被害を受けることのないよう、地域の状況に十分配慮した計画とすることが重要でございます。
 都教育委員会としては、今後、所轄消防署等との一層の連携を図り、類焼等、周辺からの被害を最小限にとどめる防災計画となるよう、適切な指導及び助言を行ってまいります。
 次に、文化財建造物の防災活動についてでございます。
 文化財建造物を地域の人々の力で災害等から守るという意識を醸成していくためには、文化財への理解と愛着を深める機会を増加させることが重要でございます。
 このため、都教育委員会では、毎年十一月三日の文化の日を中心とする東京文化財ウイーク事業を実施しておりまして、その一環として、区市町村と連携した地域の文化財の特別公開等を行っております。
 また、文化財建造物の修復工事現場を公開し、地域の住民や小中学校の児童生徒等を対象にした見学会も開催しております。
 今後とも、文化財建造物が地域の資産として愛され、守り続けられるよう、地域住民に着目した普及啓発活動に取り組んでまいります。
 次に、練馬特別支援学校の通学の安全確保についてでございます。
 知的障害特別支援学校高等部では、卒業後の自立と社会参加に向け、保護者の理解と協力のもとで一人通学を進め、社会体験の充実を図っております。
 都立練馬特別支援学校の通学の安全確保につきましては、現在、学校や地元自治体等とも緊密な連携を図りながら対応策を協議しております。
 今後とも、学校周辺の道路の状況や公共交通機関の利用事情、保護者の要望等を十分に踏まえ、通学の安全と安心の確保に向けた具体的方策をさらに検討してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 首都大学東京における科学への興味を高める取り組みについてでございますが、首都大学東京は、次代の東京を担う人材を育成するとともに、教育研究の成果を広く社会に還元していくことも重要な使命としております。
 社会還元の一つとして、お話のサイエンスキッズワークショップのほかに、日本学術振興会などと連携し、中学生などを対象とした磁石の不思議な世界を体験する講座や、女子中高生を対象に理系分野に興味を持ってもらう東京理系女子探検隊プロジェクトなどを実施してまいりました。
 また、都立産業技術高等専門学校では、親子ものづくり教室を開催し、戻る紙飛行機などの製作を通して科学を身近に感じるような取り組みを行っております。
 今後とも、児童生徒が、見たり聞いたり触れることで科学の魅力を体感できるよう、これらの事業の充実を図るとともに、新たな取り組みについても検討してまいります。
〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) スマートフォンについての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ファミリeルール講座等の充実についてでありますが、近年、スマートフォンの所有者が急増していることに伴い、通話記録等の個人情報の流出を初め、さまざまな問題が生じていることは認識しております。
 このため、都では、ファミリeルール講座や出前講演会において、保護者等に対してスマートフォンを利用する上での危険性、例えばアプリケーションをダウンロードする際に個人情報を盗み取られるおそれがあることや、スマートフォン等の操作に集中する余り、転倒するおそれがあることなど、実際に起きた事例に基づいたきめ細かい内容を盛り込んでおります。
 今後も、スマートフォンの普及状況や発生したトラブルの具体的な内容を踏まえ、講座や講演会の一層の充実に努めてまいります。
 次に、スマートフォン利用によるトラブルを防止するための普及啓発についてでありますが、スマートフォンの普及が拡大しており、今後、青少年の所有もさらに増加していくものと考えております。
 このため、都では、スマートフォンを利用する上での注意点や、その危険性等を盛り込んだリーフレットを作成し、小学生や中学生の保護者を中心に配布することとしております。
 また、スマートフォンを利用する上での注意を喚起するためのDVDを制作して関係機関に配布し、さまざまな機会を利用して啓発活動に利用してもらうこととしております。
 今後とも、スマートフォン利用に関し、青少年がトラブルに巻き込まれないよう、関係機関の協力も得ながら広く注意喚起や啓発に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 東京ユビキタス計画の実験の内容についてでございますが、これまで銀座地区において、平成十八年度から、観光や店舗案内等のまちの情報提供のほか、視覚障害者への移動支援などの取り組みを進めてきております。
 今年度は、これまでの取り組みに加え、情報提供エリアを拡大するとともに、より汎用性を高めるため、普及の進んできたスマートフォンを活用して、十二月十三日から実証実験を始める予定でございます。
 具体的には、専用のアプリケーションをスマートフォンにダウンロードし、実験エリア内を歩くと自動的に今いる場所を認識し、銀座の店舗や名所、イベント情報、さらにはトイレなどの情報が、日本語はもとより多言語で入手することが可能となります。
 こうした取り組みを通じて、まちの魅力や活力を高めるとともに、だれもが安心してまち歩きを楽しめるまちづくりを目指してまいります。
   〔消防総監北村吉男君登壇〕

〇消防総監(北村吉男君) 現場活動で活用するシステムへの最新技術導入の考え方についてでありますが、東京消防庁では、総合的な情報通信システムを計画的に整備しており、救急隊を含めた消防部隊の編成を初め、搬送先医療機関の選定など、必要な情報を迅速確実に伝達することにより、円滑な消防活動を展開しております。
 お話のとおり、技術革新に伴う最新技術の導入は、より効率的かつ効果的な消防活動を行うことが期待できるものと認識しております。
 一方、こうしたシステムは都民の安全や安心に直結していることから、機能の信頼性や安定性の確保が必要不可欠でございます。
 このことから、最新技術の導入につきましては、今後とも費用対効果を含め総合的に検討してまいります。

〇副議長(ともとし春久君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時二十四分休憩

   午後五時四十分開議

〇議長(和田宗春君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十番佐藤由美さん
   〔三十番佐藤由美君登壇〕

〇三十番(佐藤由美君) 発言させていただきます。
 平成十九年六月にがん対策推進計画が策定され、この第一期の終了を控え、厚生労働省がん対策推進協議会において、先月二十一日、次期計画の骨子案が示されたところです。この案では、地域連携と在宅医療の拡充とともに、見落とされていた小児がんについて、課題と対策の必要性が盛り込まれています。
 小児がんは、だれしもがなり得る病気です。そして、五歳以降二十歳になるまでの子どもたちの幼い命を奪う病気は小児がんです。毎年二千人から三千人の子どもががんと診断されています。体じゅうのどの箇所でも発がんし、その発生箇所ごとに治療法が異なる中で、高度な治療ができる専門医が極めて少ないという現実があります。こうした中、治療ができる病院を集約することにより、がん治療の高度化、専門性を高めていく必要性が示されているところです。
 東京都内における小児がん治療の充実に向けて、モデルとなる拠点病院を指定して適切な治療を受けられる体制の整備が求められます。
 一方、このことは逆にいえば、ふだん暮らしている地域から離れて治療を受けざるを得ない状況を意味します。そういう意味で、付き添う家族は、泊まり込みや病院近くの宿泊のため、大きな負担を負います。現在、NPOなどにより、家族の宿泊ができるケアハウスを運営するなどの取り組みが進められていますが、都として、良質な治療体制の拡充とともに、こうした患者、家族の生活面など社会的な支援を行っていくことが不可欠と考えます。
 都として、小児がん患者が高度で専門的な治療を受けられる体制整備と家族への支援について、どのように取り組んでいくか伺います。
 現在、もちろん適切な医療が受けられたことが前提になりますけれども、小児がんの治癒率は向上しています。子どもの治療中の生活や教育が課題です。
 小児がんの治療サイクルは、例えば一週間入院、二週間退院して家で過ごし、また入院をしてと繰り返す中で治療を行う状況があります。自宅療養中は前籍校に通学し、入院中は病院内分教室や訪問教育機関を活用するといった、柔軟な対応が求められています。
 しかし、現状では、一たん学籍を病院内教育に移した後の地元校の対応は大きな格差があります。学籍がなくても授業や行事に受け入れる学校もあれば、受け入れに消極的な学校もあり、自宅療養中に前籍校に通える子どもはまだまだ少ないのが現状です。
 分教室に学籍を移しても、一時退院中、希望に応じて地元の前籍校にスムーズに通えるようなシステムの構築が必要と考えますが、所見を伺います。
 また、高校生の場合、入院中の教育の場が保障されなければ、欠席がふえ、留年を余儀なくされるわけですが、高校生、特に小児科以外の混合病院に入院している場合など、受け入れられる病院内教育の場が少ない状況があります。療養中に取り組んだ地元校から出された課題を提出することで単位を取得できるといった教育条件整備も必要です。
 昨年、特別支援教育推進計画第三次実施計画が出されていますが、改めて病院内教育の多様な役割の理解を深め、位置づけを明確にしなければなりません。
 病院内教育では、学習のおくれを防ぐという役割だけにとどまらず、闘病中の子どもの心理、精神面へのサポートが求められています。病院内教育では、学習空白の補完は大切な課題の一つです。しかしながら、専科の教員の授業時数を確保されるだけでは不十分です。病気の子どもたちには、想像を絶するような不安を和らげること、自分のありのままの気持ちを出せる人の存在などが必要だからです。
 また、子ども本人とともに家族の支えとなったり、地元や医療とのつなぎ役も大きな役割です。医療、前籍校、保護者と連携しながらトータルケアの一員として、教科の専門性だけでなく、幅広い病院内教育の専門性が求められている分野です。
 第三次実施計画では、eラーニングを活用した指導内容方法の研究開発についても掲げているところです。しかしながら、単にネットワーク上のプログラムができても、人の支えがなければ、闘病中の、闘病生活の中での学習へのモチベーションにはつながりません。病院内の学習の場が充実していること、授業中や放課後活動の中で、学習、遊び、語らいをともにする時間や、しんどいときにベッドサイドでともに過ごす時間があってこそ、信頼関係が生まれ、信頼関係が支えになってこそ、eラーニングなどのツールが生かされるのだと考えます。
 幅広い視点で子どもをとらえ、つなぎ役としての教員の役割が理解され、しっかりとその役割が発揮できるような教員の配置と研修システムを整えていくことが不可欠と考えます。病院内教育の意義について所見を伺います。
 授業を確保し、幅広い視点で子どもを理解し、寄り添える担任がしっかりとそばに常駐している教育の場を保障していかなければなりません。
 病院内教育では、現在、分教室と訪問教育で構成されているところです。しかしながら、訪問教育では、週に六時間程度しか授業が保障されていません。治療や体調等により計画的に学習が進まないこともあり、次の訪問までに大きく間隔が開いてしまいます。
 訪問教育の時数をふやすことは大変重要ですが、こうした子どもの体調に応じて学習を進めるためには、教員が常駐し臨機応変に対応することが必要です。分教室であれば、放課後の時間を利用することによって、子どものそうした体調に合わせて対応することができます。また、教室に来て友達や教員と過ごす時間は、つらい治療を耐えている子どもたちにとってとても貴重な時間です。教員が常駐できる病院内分教室をふやすことが求められていますが、所見を伺います。
 さて、さきの定例会で知事は、教育再生円卓会議の設置を表明しました。先月十六日に開催された第一回会議録を読み、内容については共感する箇所もあれば、本当に子どもたちと触れているのだろうかと、事実認識や議論の方向性に疑問に思う箇所など、もろもろありますが、ここではただ一点確認をしておきたいと思います。
 当然ながら、教育は権力からは独立のものであって、権力を持つ者は教育に介入することに懐疑的であるべきことを、改めて確認しておきたいと思います。
 また、教育は、教育を受ける個人は経済的な、人的な資源と位置づけられるものではなく、何かの企業や組織が雇用するという関係ではない以上、教育を議論する場で人材と呼ぶことに違和感があることも申し添えておきたいと思います。教育は諸個人のためにあり、国家、自治体はその保障のために全力を尽くすべきと考えます。
 次に、社会的包摂、参画について伺います。
 法教育の目的は、法専門家の教育とは異なり、一人一人が単に決まりを守るという観点にとどまらず、責任や公正、正義など、法が内包する価値や民主主義の基本的な理念をワークショップ形式でやりとりの中で理解し、社会に参画をしていくことにあります。
 司法制度改革審議会報告でも、さまざまな政治改革、行政改革、地方分権推進、規制緩和等のもろもろの改革、これらの改革の基底に流れているのは、一人一人が統治客体意識から脱却をして、統治主体として社会の構築に参画をし、この国に豊かな創造性とエネルギーを取り戻そうとする志であるとうたい、この司法改革はその最後に位置づけ、その中で学習機会の充実を図ることと明記しています。
 平成二十年度に、子どもたちに生きる力を身につけさせることを目的として改訂された学習指導要領において、法や決まり、司法にかかわる指導内容が新たに示される中、都教育委員会は、平成二十年七月に法教育研究推進協議会を設置し、本年三月に法にかかわる教育カリキュラムを発行し、各市区町村教育委員会や学校に配布をしたところです。
 法務省法教育研究会が設置されて既に八年が経過している中で、モデル事業やシンポジウムの開催といった普及啓発の段階を超えて、早急に小中高の学校で実践に移すべきと考えますが、都教育委員会では、各学校における法教育の実践的な取り組みを推進させるために、区市町村教育委員会や学校に対してどのような具体的な取り組みを行うか、伺います。
 各学校における法教育の実践的な取り組みを推進させるには、適切な指導ができる力が不可欠です。そのため、教員の育成過程における履修科目の改定も視野に入れなければならない一方、法専門家や研究者などが出前講座を実施する、あるいは教員に対する研修を担うといったように、法律専門家などと連携を図るなどして、教員の授業力の向上を図っていくべきと考えますが、都教育委員会の所見を伺います。
 次に、一人一人の参画とともに、社会的包摂の観点から伺います。
 今、日本における外国人登録者数は、二〇一〇年では二百十三万となっており、三十年前の二・五倍強と増加をしています。こうした中、都教育委員会は、都立学校に授業補助のために、日本語とほかの言語ができる人を配置する取り組みをしているところですが、どの言語であっても、自分の母語を確立している場合は格別、そうでなく、一つの言語も確立できていない子どもの存在を見逃してはなりません。
 一九七九年に迫害を逃れてきた定住インドシナ難民の二世の子どもたちは小学生になります。ふだんの会話は日本語でやりとりができますが、少し込み入った事柄になると表現が難しくなる状況があります。子どもたちにとって、親のベトナム語は母語にはならず、一方で、ふだん使う日本語については、十分にみずからの母語として確立する環境が整っていない状況があります。
 多くの難民の定住する県では、学校と民間団体が連携をし、日本語教師の協力と地域のボランティアの力で、放課後日本語教室を開催しているところです。
 言語は単なるコミュニケーションの道具にとどまるのではなく、みずからが何を考えるのか、自己の確立に不可欠です。その子がその人生を生きるために、バイリンガルと究極の反対にあるセミリンガルの子どもを放置してはなりません。だからこそ、授業補助とは別に日本語学習支援が不可欠と考えます。
 東京においてもこうした観点から、日本語教室の重要性を位置づけ、子どもたちがひとしく母語を確立して自己を確立できる環境を整備するべきと考えます。
 また、国際化は東京の中に進んでいるものです。観光業の振興に向けて、標識などに多言語表記をする取り組みがあります。しかしながら、短期滞在のみならず、定住して家族で暮らす在住外国人がいます。そういう意味で生活としての言語、権利保障に係る手続などはもちろんのこと、災害情報における多言語による提供や医療通訳などの支援を拡充すべきと考えています。
 都は、こうした地道な在住外国人支援のために活動を行っている市区町村や地域のNPO団体と連携し、支援を行っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 三点目に、経済、産業振興について伺います。
 国内需要の収縮やグローバル競争の激化等の構造的課題が深刻化する中、展望が開けない中小企業も存在することから、必要な施策を講じていく必要があります。
 現在、グローバル化の中、国際分業が進み、日本は、完成品ではなく、部品の輸出入の割合が高くなっている現状があります。日本国内で大小の企業が系列を組んで受注生産という構造は変化をして、中小企業においては活路を、みずからの強みを生かして外の市場へ展開していくことに見ている状況があります。販路開拓支援、政策金融の強化、技術流出対策の強化など、海外展開支援の充実が必要です。
 都内の中小企業の幾つかに伺いました。城東地域のある企業では、情報通信の製品にこれまでの技術を改良して、その情報通信の安定に寄与する部品をつくり出しています。こうした技術が国際分業のネットワークの中の一員として組み入れられていることが必要と考えます。
 しかし、実際に中小企業が海外での営業活動を行うといった場合、自力で開発していく創業者もいますが、商習慣など情報が十分でない上に、取引先とのネットワークづくりに必要な人的なつながりもなく、言葉の壁などが立ちはだかり、販路を見出すことが容易ではない側面があります。
 こうした中小企業の海外市場での販路開拓の努力を支援するため、行政としてサポートが重要となると考えますが、所見を伺います。
 三月の東日本大震災では、サプライチェーンが断絶し、また流通が寸断されたことは周知のとおりです。物流に大きな混乱が生じました。東日本太平洋側の港湾の被災により、ふだんであれば仙台塩釜港から京浜港へ内航フィーダー輸送網を使っている企業も、日本海側の港湾まで陸送して輸出入を行う東北の企業も多かったと報道されています。
 さて、国土交通省の輸出入貨物流動調査によると、東日本地域でのコンテナ貨物の輸出入においては、京浜港取扱シェアが、平成五年と平成二十年の間で大きく落ちていることが明白です。東京港は京浜港として、国際コンテナ戦略港湾の指定を受け、ことし九月には京浜港の総合的な計画を策定し、これらの取り組みが始動したところです。東京都は、基幹航路の維持を目的に、コンテナ貨物量をふやすことを方針として、新たな補助制度を十二月一日に開始したところです。
 補助に係る費用対効果を検証していく必要がある一方、同時に、京浜港運営に改善を行い、魅力的な港湾にすることが本質的な競争力の向上につながると申し上げまして、質疑を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 佐藤由美議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、分教室と前籍校との円滑な連携についてでございます。
 入院中の児童生徒は、学校生活への復帰に際して不安が募りやすいことから、一時退院中、入院前に通っていた前籍校において、入院前と同様に友達とともに学び不安を解消することが、治療への意欲を高める上でも大切なことでございます。
 これまで都教育委員会は、都立特別支援学校の児童生徒が居住地の小中学校に副次的に籍を置いて交流できる、副籍制度の充実を図ってまいりました。
 今後とも、副籍制度の活用について、区市町村教育委員会等に周知いたしまして、入院中の児童生徒が退院後、円滑に前籍校に復帰できるよう、継続して支援してまいります。
 次に、病院内教育の意義についてでございます。
 病院内教育は、入院中の児童生徒の学ぶ意欲にこたえ、学習のおくれを防ぐとともに、治療への不安やストレスの軽減を図りながら、病気に向き合う気持ちを育てるという意義がございます。
 そのため、都教育委員会は、校長の人事構想に基づき、教科指導力や特別支援教育の専門性にすぐれた教員の配置に努めるとともに、児童生徒の心理面にも配慮しながら必要な学習指導を行えるように、教員に対する研修を行ってきたところでございます。
 今後とも、児童生徒が病気の治療に専念するとともに、学習のおくれを防ぐことができるよう、校内研修やケース会議での指導助言等を通して、教員の資質、能力の向上に努め、病院内教育の充実に努めてまいります。
 次に、病院内分教室についてでございます。
 都教育委員会は、これまでも病院内分教室について、入院中の児童生徒の教育ニーズや病院の状況等を踏まえて設置してきたところでございます。
 今後とも、対象となる児童生徒及び病院の施設設備の状況等を総合的に勘案し、適切に対応してまいります。
 次に、法教育の実践的な取り組みについてでございます。
 学校教育における法や決まりに関する学習は、平成十八年の教育基本法の改正に伴い、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画する資質や能力を養う観点から、新しい学習指導要領に位置づけられたものでございます。
 都教育委員会は、平成二十三年三月に、各教科等で活用できる、法に関する教育カリキュラムを全国に先駆けて開発し、区市町村教育委員会を対象にした説明会や本カリキュラムに基づく公開授業を通して、学校における実践的な取り組みについて普及啓発してまいりました。
 今後とも、法に関する教育の充実を図るため、本カリキュラムを踏まえた社会科や家庭科、道徳の時間等における実践事例を取りまとめまして、区市町村教育委員会や学校に提供してまいります。
 次に、法教育における教員の授業力向上についてでございます。
 法に関する教育においては、児童生徒に、法や決まりの背景にある価値や意義などについて、実際の事例に基づいて考えさせることが大切であるため、法律の専門家と連携を図った授業づくりが有効でございます。
 そのため都教育委員会は、弁護士や検察官と教員が共同して行った授業を公開するなどいたしまして、専門家との連携の意義や具体的な指導方法について、区市町村教育委員会や学校に普及啓発してまいりました。
 今後とも、法に関する教育を適切に実施する上で、教員の模範となる授業を公開するとともに、法務省や裁判所、弁護士会等の関係機関の情報を区市町村教育委員会や学校に提供するなどいたしまして、教員の授業力の向上に努めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 小児がん対策のご質問についてお答え申し上げます。
 都内では、がん診療連携拠点病院等で小児がんの診療に対応しておりまして、特に小児がん長期フォローアップの体制を整備しております四つの医療機関では、専門外来を設けまして、小児がん経験者の健康管理や合併症の予防など、きめ細かな支援を実施いたしております。
 現在、国は、がん対策推進協議会におきまして、小児がんの医療機能を集約化し、高度専門的な医療の提供と治療後のフォローアップを行う拠点病院の整備や、患者、家族に対する情報提供や相談支援等の体制づくりについて検討を行っております。
 都は、このような国の動向を注視しながら、患者、家族が適切な医療や支援を受けられるよう、必要な対応を検討してまいります。
   〔生活文化局長井澤勇治君登壇〕

〇生活文化局長(井澤勇治君) 在住外国人支援のための市区町村等との連携支援についてでございますが、十分な日本語の力を有していない在住外国人が安心して生活することができる地域社会づくりを目指しまして、多くの市区町村が、地域における国際交流協会やNPO等と連携して、外国語による情報提供や相談事業などを行っております。
 都は、こうした活動を行う市区町村や国際交流協会、NPO等との合同連絡会議を開催いたしまして、団体間のネットワークの強化や情報の共有化を積極的に促進しております。
 また、在住外国人支援事業助成を実施いたしまして、NPO等による日本語教室や相談事業などの活動を支援しております。
 今後とも、市区町村等と連携し、在住外国人の自立と地域社会への参加を支援してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 中小企業の海外販路開拓支援についてのご質問にお答えします。
 都内の中小企業がすぐれた技術力を生かし、今後の成長が見込まれるアジア市場で販路開拓を行う取り組みを支援することは重要であります。
 そのため都は、多くの商談が期待できる分野に海外販路ナビゲーターを配置し、企業に対しまして現地情報の提供や相談対応を行っております。また、商談の機会の確保に向け、海外展示会に出展する中小企業の支援を実施しております。
 こうした取り組みにより、都内中小企業の海外販路開拓をサポートしてまいります。

議長(和田宗春君) 九十一番鈴木隆道君
   〔九十一番鈴木隆道君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇九十一番(鈴木隆道君) 都市外交についてお伺いします。
 今日の国政は、特に外交政策を見ていますと、TPP交渉加盟の問題や尖閣、竹島の領土問題などに端的にあらわれているように、日本政府には、各国の立場を踏まえながらも国益を守る姿勢が全く感じられず、世界からますます孤立していく感を否めません。
 国家の外交に比べて、都市と都市との間では、政治体制や思想などにとらわれない、身軽で自由な交流が可能であります。国家間の交流が停滞をしていても、都市間では、経済、文化、スポーツなど、さまざまな分野においてスピーディーで自由な経済活動が可能であります。また、人材の交流を通して、お互いの友情と信頼も深めることが可能であります。
 昨年十月に、台北松山空港と東京羽田空港との間で国際定期便が就航したのを機に、私たちは都議会の同志二十三名とともに、羽田発の一番機で台北市を訪問いたしました。
 台北が東京に寄せる期待には大きいものがありました。国交のない台湾においても、東京と台北市との都市間交流を積み重ねることにより、両都市間の信頼関係に基づく、人や企業の幅広い交流を進めていく必要があることを痛感したのは、私一人ではないと思います。
 また、ことし八月には、私は同僚議員四名とモンゴルのウランバートル市を訪問いたしました。モンゴルは東日本大震災のすぐ二日後に、三億円もの多額の義援金と物資を、世界で最初に日本へ届けてくれた国であります。それほど日本への友情と希望の念を抱いている国であります。
 ウランバートル市からは、東京のすぐれた技術、都市計画の豊富な経験から学びたい、アジア大都市ネットワークへぜひとも加盟をしたいという熱いラブコールを受けました。
 このようにアジアの国々や都市は、東京に大きな期待を寄せ、東京がアジアの牽引役として、経済成長や課題の解決に向け、積極的な役割を演じることを熱望しております。
 国家が責任を果たせない今日、まさに都市が立ち上がるときなのであります。
 こうした中、石原知事は、アジア大都市ネットワークを十年前にいち早く立ち上げ、従来の儀礼だけではない現実的な課題解決のための取り組みを進め、アジア各都市との厚い信頼と信用を得てまいりました。
 しかし、欧米の債務危機、各地で頻発する自然災害など、世界を取り巻く環境は厳しさを増すばかりであります。世界全体を閉塞感が覆う中で、世界じゅうの子どもたちが自国の未来に明るい希望と夢を持てなくなっている。それが現実であります。
 東京はアジア地域だけにとどまらず、全世界の平和と繁栄を力強く牽引していく責務を負っているといっても過言ではありません。東京は国に成りかわり、都市間交流を強化することにより、東京からアジアへ、アジアから世界へ貢献する道筋をはっきりと示す必要があります。そのことが東京に対して、世界からの賞賛と支持を集めることになり、ひいては、都が目指す二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致を成功させる土台を築くことにもつながっていくと私は確信をいたします。
 そこで、東京が幅広い分野で世界に貢献していくためにも、アジア大都市ネットワークを初め、姉妹都市、友好都市との関係を強化し、東京だからこそできる都市間交流、外交というものをさらに進めていくことが重要だと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、中小企業の海外販路開拓について伺います。
 経済活動のグローバル化にあわせ、東京のビジネスマンも海外での営業活動を活発に行っています。特に、成長の著しいアジア市場での販路開拓の競争は熾烈なだけに、東京から台北、上海と、三都市を日帰りで回り、商談を取りまとめるような事例は日常茶飯事の時代に入りました。昨今の欧州の債務危機の混乱などを見るにつけ、やはり、これからの世界経済の成長の中心はアジアであることは確実でありましょう。
 こうした中、都は、アジア大都市ネットワークでの実績を活用し、アジア諸都市の企業が産業交流展で商談できる機会づくりに取り組んでいることを評価したいと思います。
 アジアでのビジネスは、国や大都市の行政機関などによるサポートが何よりも重要であります。公的な組織による後ろ盾があるだけで、商談がスムーズに進むような実態は数多くあります。知事が都内中小企業の技術力をトップセールスで売り込むとの意欲を示す中、都の職員の方々も海外に積極的に出向き、商取引の実態をしっかり理解することは重要になると考えます。
 都は、中小企業の海外販路の開拓を支援するため、これまでも相談業務や現地での商談会に参加する際のフォローに取り組んでいますが、こうした体制の一層の充実に力を入れていくべきものと考えますが、所見を伺います。
 また、都内の中小企業は、長引く景気の低迷に加え、東日本大震災による影響や歴史的な水準となった円高により、これまでにもない厳しい経営状況に直面しております。
 こうした中で、中小企業はさまざまな経営課題の解決に向け、レベルの高いアドバイスを会社の現場で受けながら、根本的な解決の方法を見出すことを強く望んでいます。
 都においては、二十一年度から経営力向上TOKYOプロジェクトを開始し、経営の専門家を会社の現場に派遣し、経営課題とその解決策を明らかにする取り組みを行い、数多くの経営者が高く評価しているものと聞いています。このような派遣相談の方法は、今回の震災や円高に関する緊急的な対応の中でも生かされ、中小企業を強力にサポートしているものと考えています。
 これまでの経営力向上TOKYOプロジェクトを初めとする専門家派遣などの成果を十分に踏まえながら、相談事業のレベルの向上を図るべきものと考えますが、所見を伺います。
 次に、世界に通用する人材の育成について伺います。
 政治や経済を初め、スポーツ、文化など、さまざまな分野で世界各国の都市や人々との交流を深め、信頼関係を築いていくために、多様な文化や風習に直接触れる経験を積み、国際感覚を備えた人材を多数輩出していくことが不可欠であります。
 若者が海外に積極的に出ていき、経験を積むことの重要性はだれもが認めているところでありますが、海外に出ていく若者が少ない現状に対する危機感が欠如していると、私は指摘をせざるを得ません。これからの時代は、海外という壁を取り払い、東京から大阪に行くような感じで気楽に海外都市へ出かけていけるような感覚を持った人をもっとふやしていく必要があります。
 企業等で働く社会人や研究員など、幅広い人材に海外での経験を持たせることも重要でありますが、中でも高校生、大学生などの若者が、みずみずしい感性を持ったその時期に海外で多様な経験をすることは、その後の人生を考えるきっかけになり、夢や希望の実現に向けて大きなプラスになることは間違いないことだと思います。
 私はさきの第一回定例会においても、都内の高校生全員が在学中に一度は海外を体験できるような、壮大な事業の必要性を指摘いたしました。それに対して教育長から、国際交流の重要性について触れ、海外修学旅行や国際交流の取り組みを支援していくとの答弁がありました。多くの若者が海外に出ていく大きな流れを創出する突破口を、東京都がまずつくることは、大きな意味を持つ第一歩であると考えます。
 そこで伺います。
 都教育委員会が検討している、都立高校生を留学させる施策のねらいも含め、どのように世界で通用する人材を育成していくのか、所見を伺います。
 一方で、育成すべき都立高校生の今の姿を見ていますと、残念ながら、自分の将来を十分見詰めることなく、安易に進路を選択する者や、就職の厳しい状況の中でせっかく就職しても、上司や職場が合わないという理由で簡単にやめてしまう者が多いと聞いております。
 こうしたことは、高校時代に他人から褒められたり、怒られたり、我慢するといった経験に、もしかしたら恵まれなかったことが原因になっているかもしれません。世界で通用するたくましい人材を育成するには、こうした働く上での基本を、実社会での経験を通して身につけることが重要であるとも考えます。
 新たな都立高校改革推進計画の骨子によると、職業的自立意識を醸成するとありますが、都教育委員会では現在、都立高校生の就業体験活動にどのように取り組んでいるのか、今後どのような取り組みを進めていくのか、所見を伺います。
 次に、アジアにおける人材の交流について伺います。
 残念ながら、これまで日本はアジア地域での人的交流に十分なリーダーシップを発揮してきたとはいえません。その結果、アジアの優秀な人材は、教育や技術の向上のために欧米諸国を目指し、アジア地域のほかで開花するという実態があります。
 アジア地域が今後、第三極として欧米地域と伍していくために、アジア地域全体の人的資源の質の向上に貢献することは、まさに日本の首都である東京の使命であると考えます。経済、文化、スポーツなど、幅広い分野での人的交流を促進するとともに、直面する課題をみずからの手で解決し、都市の発展を担うことのできる人材を育成し、成長著しいアジア地域の発展を継続させていくための礎としなければなりません。
 こうした中、都は、平成二十年度にアジア人材育成基金を設置し、首都大学東京へのアジアの留学生の受け入れや、東京とアジアの行政職員の交流による人材の育成に着手し推進してきたことは、大いに評価できるものであります。基金を財源とした事業展開により、長くアジアと東京のかけ橋となる人材を育てていくことが可能となるものと考えます。
 都は、アジア地域における基金を活用した人材交流、人材育成をより一層推進し、東京とアジアのプレゼンスの向上となる発展に貢献すべきと考えますが、所見を伺います。
 さて、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致については、さきの第三回定例会において招致決議を行い、都議会としての推進体制を整えてまいりました。我が党としても、全力を挙げて招致活動に邁進する所存であります。
 来年二〇一二年夏には、ロンドンで三度目となるオリンピックとパラリンピックが開催をされます。ロンドンが招致を成功させた最大の要因は、当時のブレア首相が旗振り役となり、国家一丸となった招致活動を展開したことによります。東京への招致成功のためには、ロンドンと同じように、日本全体が一体となって戦うことが必要でありますが、一方、国際的な招致戦略の構築も急務となっております。
 先ほども述べましたように、我が首都東京は、アジアを初めとする各都市との間で幅広く経済、人材の交流を行い、積極的に都市としての役割を果たし、世界に貢献する必要があります。そのような総合力の結集によって、東京のポテンシャルが国際社会によって認められ、初めて尊敬される存在となります。オリンピック・パラリンピック招致にとって大切なことは、まさにそのことであります。
 東京が志を持ち、招致を実現するためには、諸外国の国際スポーツ界の中枢部を初めとした人々との日ごろからの緊密なコミュニケーションと、国際都市東京の魅力を一つの外交として世界にアピールすることこそが最も重要であります。前回招致の反省点の一つは、日本は人材が豊富であるにもかかわらず、その意味での海外戦略が有効に機能し切れていなかったことではないでしょうか。
 そこで、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック開催をかち取るための海外戦略について、改めて所見を伺います。
 最後に、中央環状品川線について伺います。
 東京がアジアのヘッドクオーターとしての地位を確立し日本を牽引するためには、インフラ整備を加速させ、高度防災都市を実現することが不可欠であります。
 このため、さきの大震災で再確認されたネットワークの重要性を踏まえ、三環状道路を初めとする幹線道路整備が推進されておりますが、三環状道路の一つで、既に工事が進められています中央環状線の整備も、より一層推進すべきと考えます。
 そこで、現在の中央環状品川線の整備状況と今後の取り組みについて改めて所見を伺い、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 鈴木隆道議員の一般質問にお答えいたします。
 都市外交についてでありますが、二十一世紀に入って、人類史上初めて半数を超えた都市の人口は、二〇五〇年には七〇%にまで達するといわれておりまして、今世紀はまさに都市の世紀となるわけであります。大都市のダイナミズムが文明を発展させ、国家そのものを動かし地球の命運をも左右するという事態でありました。
 その一方で、人類共通の危機の様相が最も先鋭的にあらわれるのもまた大都市であります。ゆえにも、アジアの大都市に共通する具体的な課題に共同して取り組むことによりまして、世界の第三の極であるアジアの共存共栄を先導するとの思いで、アジア大都市ネットワーク21を提唱して実現してまいりました。テロや大規模災害などへの対応、アジアの大都市から世界への蔓延が懸念される新興感染症の対応など、危機管理の分野を初め、幅広く取り組んでまいりました。
 また、このネットワークを契機として、国産旅客機MRJの設計、製造へのインド、台湾の企業の参画が実現いたしました。本来ならば、このサイズよりもう少し大きな、世界的に需要のもっと多いはずの百三、四十人から五十人までの旅客機が必要だと思いますが、これはもう日本の実力をもってすると簡単にできるはずでありますけれども、なぜか通産省はそこまで気が向かずに、この程度の飛行機が国産として誕生するわけですが、恐らく近い将来、新しい需要がもっと拡大していくと思います。
 さらに、東京の産業交流展やソウルの見本市に、アジアの企業やすぐれた技術を紹介するアジアゾーンを設置するなど、経済交流を新たに展開しております。
 これらの具体的なその受け皿として羽田に──羽田は、私と盟友であります亀井静香と乱暴に強制しまして四本目の滑走路ができましたが、これを活用するために、やはりあそこに大きな国際会議場と、それを受け入れるホテルが必要だと思いますので、これは国と相談して、とにかく都心まで出てこなくとも大きな国際会議が持てる会議場をつくりたいと思っております。そうすることで、羽田を改めて国際空港にした意義も出てくるんじゃないかと思っております。
 東京には、中小企業が持つ独創的な技術やアイデア、世界最高水準の水道技術など、アジアだけではなくて世界の発展に貢献できる誇るべき技術力と、それを支える高度な人材が集中集積しております。
 今後とも、東京が持つ有形無形の都市の力を積極的に世界に発信して、都市が抱える問題の解決に貢献することで、国際社会における東京のプレゼンスを一層高めていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、世界に通用する人材の育成についてでございます。
 国際社会に生きる日本人が、さまざまな国や地域の人々の信頼を得て、望ましい関係を維持していくためには、海外でその国の文化や生活を直接体験することを通じて、海外事情や多様な価値観を知り、国際的な視野に立って物事を考えられるようにすることが極めて重要でございます。
 そのため、都教育委員会では、海外修学旅行や語学研修、海外留学などに加え、新たに海外の高校や大学、企業など、多様な環境で学習や体験を積む都独自の海外派遣の仕組みを開発してまいります。
 このような取り組みを通して、より多くの高校生に海外に目を向けさせるとともに、さまざまな分野に果敢に挑戦していく意欲を持たせて、将来、世界を舞台に活躍できる人材を育成してまいります。
 次に、都立高校生の就業体験活動についてでございます。
 都教育委員会では、工業高校の生徒に、ものづくり企業において一年次に五日間程度の就業体験をさせた上で、二年次、三年次に、企業の一員として二カ月ずつ実施する長期就業訓練を、教科の単位として認定する取り組みを進めております。
 また、普通高校においても、スーパーマーケットでの販売や銀行における接客や営業など、生徒に就業体験をさせる取り組みを実施してまいりました。
 今後、新たな都立高校改革推進計画の中で、専門高校において就業訓練の充実を図りますとともに、普通高校でも、企業やNPOなどの協力を得て就業体験を含む新たな教育プログラムを開発、実施し、生徒の職業的自立意識を向上させる取り組みをさらに推進してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 中央環状品川線の整備状況と今後の取り組みについてでございますが、中央環状線は首都圏三環状道路の一つとして、高速道路全体のネットワークを効率よく機能させ、人と物の円滑な流れを実現するとともに、災害時の首都機能維持や交通機能確保、一般道路の渋滞緩和や環境改善にも大きく寄与する路線であります。
 このため、都みずからも事業者となり、首都高速道路株式会社と共同で事業を進め、中央環状線の最終区間である品川線の早期完成に全力を傾けております。
 現在の整備状況は、平成二十一年十一月に大井北立て坑を発進した東京都施工のシールドマシンが、来週にも延長約八キロメートルに及ぶ掘進を完了し、中央環状新宿線との接続部に到達する予定であり、三環状道路で初めての全線完成に向け、大きく前進いたします。
 引き続き、首都高速道路株式会社と連携を図りながら、トンネルの床板工事や中目黒外三カ所の換気所等の工事を進め、中央環状品川線の平成二十五年度末開通に向け、全力で取り組んでまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の海外販路開拓支援についてでありますが、都内の中小企業がアジア市場において販路開拓を進める上で、現地のマーケットの状況や商業取引のルールについて正確に把握し、商談の機会を確保するきっかけづくりを単独で行うことは困難な場合が多く、行政として着実なサポートを行うことが重要であります。
 このため、都は、アジア各国で多くの商談が期待できる機械や金属等の八つの分野ごとに、商社OBなどを海外販路ナビゲーターとして配置し、現地の市場動向や商慣習について、中小企業に情報提供や相談対応を行っております。
 また、販路拡大が見込まれる製品を対象として、海外展示会への出展支援を行っており、その際、ナビゲーターが同行し、現地で円滑に商談を進めるためのアドバイスなどを行っております。
 こうした取り組みは着実に成果を上げており、都内中小企業の評価も高くいただいておりますことから、都は販路開拓の支援体制の充実を検討してまいります。これにより、すぐれた技術力と製品を有する都内中小企業のアジアにおける販路開拓の取り組みを的確に支援してまいります。
 次に、中小企業に対する相談事業についてであります。
 中小企業が、震災や円高による影響などを含めた厳しい事業環境を乗り切るため、その会社の現場で専門的な相談を受け、経営課題を明確にした上で的確な解決策を見出すことは重要でございます。
 都では、平成二十一年度から経営力向上TOKYOプロジェクトを実施し、約四千社の都内中小企業に対して専門家を派遣して経営診断を行い、経営力の向上を実現するための具体的な提案に取り組んでまいりました。
 また、中小企業振興公社では、専門性の高い内容に対する相談体制を設けるとともに、中小企業診断士などが、企業の現場を最大で八回まで継続して訪問し、経営上の課題解決を図る事業を実施しております。これらの相談は、中小企業に出向いて実施いたしますことから、効果が高い取り組みであります。
 平成二十四年度は、経営力向上TOKYOプロジェクトによる専門家派遣の成果について、広報や普及啓発活動を行ってまいります。また、公社の専門家派遣や専門性の高い相談体制の拡充についても検討してまいります。
 こうした取り組みにより、中小企業に対する相談を充実し、経営力の向上を的確に支援してまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) アジアにおける人材の交流についてでございますけれども、アジア人材育成基金を設置してから三年が経過いたしました。この間、航空機用新素材の開発、高度医療開発に向けた基盤技術の研究、アジア都市圏の水問題解決のための適応策など、首都大学東京が行う高度先端的な研究に、計三十人のアジアからの留学生を受け入れ、今年度は第一号の博士課程修了者が誕生するなど、着実に成果を上げてきたところでございます。
 また、行政職員の人材交流につきましては、平成十四年度から、都市づくり、感染症対策など大都市に共通する課題をテーマとした共同研究や研修を実施し、これまで、アジアの各都市から延べ三百人を超える職員が参加いたしました。
 直近の例で申しますと、東日本大震災の発生を踏まえ、消防、医療など危機管理に携わる職員を各都市から招き、東京消防庁の被災地での救援活動を中心とした研修を行い、震災の教訓を共有したところでございます。
 今後とも、景気の動向などに大きく左右されることなく、安定的に事業を推進できる基金のメリットを生かしながら、アジアが直面するさまざまな課題の解決に向けた人材交流を深め、将来にわたり東京とアジアの発展を牽引する人材を育成してまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) オリンピック・パラリンピック招致に向けた海外戦略についてでございます。
 オリンピック招致をかち取るためには、国、スポーツ界、経済界を挙げた総力戦で取り組むことが何よりも重要でございます。
 先般設置いたしました招致委員会の評議会には、経済界や外交など各界の要人にも参画いただいておりまして、それぞれの方々に強みの持つ分野で活動していただく予定でございます。
 さらに、前回の招致活動では必ずしも十分でなかった国際スポーツ界や海外経済拠点、在外公館などとのネットワークを構築していきます。今回はこうしたネットワークを有効に活用し、開催都市としての東京の優位性や、すぐれた都市環境やおもてなしの精神など、都市としての魅力をより強力に発信してまいります。

副議長(ともとし春久君) 七十六番山口拓君
   〔七十六番山口拓君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇七十六番(山口拓君) まず、大田市場の青果部屋根つき積み込み場を取り巻く幾つかの問題を取り上げて質問させていただきます。
 この屋根つき積み込み場は、荷の積みかえのみを行われるのが本来の目的の場所であります。屋根が設置されたことにより、卸売り場から買い受け人のトラックまで衛生的に輸送ができ、青果物の品質を落とすことなく輸送することが可能になったと都は紹介をしています。
 まず、この青果部屋根つき積み込み場の駐車場の適正な配分についてお伺いいたします。
 その前提として、この積み込み場は、大田市場協会から、現在十二の売買組合に賃貸されています。しかし、時代の流れとともに、それぞれの組合員となる小売商の数は減少し、それぞれの売買組合に所属する数も激減を繰り返し、この二十年でその体系は大きく変わりました。
 しかし、各組合が利用できるこの屋根つき積み込み場の駐車場数一千三十二台分の配分は、開設から二十年、見直しがされていないことがわかりました。
 簡単にその推移を申し上げますと、まず、売買参加者の総数が開場時二千二百社あったのに対して、平成二十三年十月現在で一千四百九社と、七百九十一社激減してしまっています。個別組合を見ると、大きな組合では三百九十九社から百六十二社と二百三十七社、つまり七〇%も減っているのを初め、他の組合でも百九十四社減、次いで百五十一社減というように、多くの組合で大変な数の売買参加者が減少しています。しかし、二十年前の各組合の比率によって配分された駐車場は、二十年前と同じ数がいまだ割り当てられているのです。
 一方、組合の中には減っているばかりではなく、中にはふえている組合もあり、駐車場数は当時のままでもてあましている組合、足りない組合が存在してしまっているのです。かなりの増減があるにもかかわらず、この積み込み場の配分が見直されないことは、いうまでもなく異常な状態といえます。
 そこで、まずお伺いいたしますが、都は、これらの数を把握されてきているにもかかわらず、本来ならば市場協会によってなされるべきかもしれませんが、この適正数の見直しについて、管理者として、都は適正に運営されているとお考えでしょうか。また、今後はどのように指導し正していかれるのか、見解をお伺いしたいと思います。
 次に、平成二十三年四月開場の市場内北側にある積み込み場についてもお伺いいたします。
 通称北口立体荷さばき場が完成し、その操業のスタートは本年四月一日からだったにもかかわらず、工事のやり直しや募集のやり直しなど、ようやく本格稼働し始めたのはつい最近のことであります。しかも、この施設一階部分に、百六十八台分の売買参加者積み込み場が新たに設置されましたが、この利用は全体の一割にも満たず、積み込み場は現状ほとんど使われておりません。当然、さきに述べたように、全体の駐車スペース、積み込み場をいま一度整理すれば、この百六十八台は要らなかったということにもなりかねません。
 これらの実態を踏まえ、北側駐車場の実態をどのように考えているのか、計画そのものに無理がなかったのか、また、今後は管理者として事業者にどう指導していくのか、所見をお伺いいたします。
 続いて、屋根つき積み込み場にかかわる転貸問題についてお伺いいたします。
 さて、この手元に、東京都大田市場が示した物流改善の考え方その一というものがあります。これは各市場関係者に示されたものであります。この中には、屋根つき積み込み場の使用については、所属団体から駐車こまの割り当てを受けた者が個人的に権利を設定することはできないとしています。さらに、そもそも東京都の土地及び建物は転貸することができませんから、当然でありますが、定められた使用ルールに違反した場合、違反した団体に対して罰則を科するとまで示されています。
 さて、ここまで説明してきた屋根つき積み込み場の駐車場代は、組合員となる売買参加者の方々から組合に、正規の賃貸料金一台分当たり六千六百円が徴収されています。しかし、私が把握している限り、その実態ではとんでもないことが行われています。
 この売買参加者の方から駐車場代を徴収している上に、複数組合において、本来ここを使うことができない仲卸や駐車場不足の組合に対して、勝手にもてあました駐車場や使用していない時間帯などを、それぞれの組合などが金額から利用時間までも設定し転貸をしているという実態です。
 つまり、利用の少ない昼間や夕方にも、別の組合や本来ここを使用できない仲卸、業者等に貸し出し、組合によっては、駐車場一こまで二台分、三台分の転貸を行い、二重、三重に賃料を徴収している実態も、複数の取材と現認で確認をいたしました。
 しかも、正規の賃貸料金六千六百円で貸すのではなく、月八千円、一万円と水増しをして貸すといった行為すら平然と行われているというのです。
 この積み込み場では公然とこの転貸が行われているのは明らかであります。さらには、これらの転貸は条例違反であります。都もこの事実を把握されているのでしょうか。即是正を求め適正管理に努めるべきは当然のことと考えますが、いかがお考えでしょうか。また、事実として把握された場合、これらの会計処理はどのように行われていたのかなど、非常に問題やなぞの多い事件であります。
 都は、転貸の全容を解明し、都民、議会にも明らかにすべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 続いて、この写真をごらんいただきたいと思います。
 これは、今お話ししてまいりました積み込み場での写真です。売買参加者によるピッキングやパッキングがされている模様です。
 この積み込み場では、さきに述べたとおり、単純に荷の積み込みを目的とした場所であります。これらピッキングやパッキングは、本来自社の店または分荷場を設け、衛生的な施設を完備し行われるのが通常であります。
 調査を重ね、確認がとれただけでも六十社から七十社が、手洗い場もない、吹きさらしで不衛生な部分も多いこの積み込み場で、毎日、青果物のピッキングやパッキングを行っています。見ていただくとわかるように、この駐車場五、六台分を占拠して行われているのが通常になってしまっています。
 この写真は、この常習的な実態を裏づける保冷倉庫の設置や、山積みの段ボールや資材の放置、青果の腐敗物、廃棄車両の放置など、積み込み場はもはや、やりたい放題になってしまっている状況の一枚です。
 都の管理棟からも見えるこの屋根つき積み込み場の管理状態は、もはや野方図ともいえます。この実態を毎日目の当たりにしていながら、注意もせず放置をしているというのでしょうか。大田市場においては、定期的な現場指導や講習会を行っているとのことでしたが、この食品に対する都民の関心の高い中、一体何を指導し、どう生かされているというのでしょうか。
 そこでお伺いします。
 このような実態を都は把握をされていたのでしょうか。その上で容認をしているのか。まさか気づかなかったというわけではないでしょうから、この点をまず確認いたします。
 東日本大震災以降、食の安全・安心の関心が高まり、これまで以上に正確さが問われ、そして、生産者の方々のご苦労と心労は幾ばくかというときに、市場だけは安心といい切る中でのこの実態に愕然といたしました。
 まず、こういった一つ一つを正し、言葉だけではなく、真に信頼いただける体制をいま一度構築していかなければならないのではと考えますが、所見をお伺いいたします。
 もう一点、大田市場を訪れると気になるのが水産物部門です。
 大変残念なことに、厳しい経済状況や不況の中で、仲卸や売買参加者の方々が次々と撤退されています。この大田市場でも例外ではなく、設立時には百店舗あった仲卸が、現在は五十七店舗しか入っておりません。暗く電気も消えた水産物部門はまさに活気を失いつつあります。この先、劇的に業者がふえるのか疑問もあります。新規の誘致はもとより、築地を初め他市場で商いを行う方の中にも、大田市場で今後の営業を希望される方がいらっしゃるかもしれません。
 この水産物部門の新たな活用の見通しは立っているのか、また、都として今後どのように活用していこうとお考えになられているのか、所見を伺います。
 そして、ここでも先ほどと同様の問題が生じています。
 この利用の減った水産物部門において、青果物の積みおろしが行われてしまっている実態です。いうまでもなく、管理上を初め衛生面などさまざまな面から、このような行為は許されるわけもありません。
 私が現認した限りでも、この一年は当然のように使われ、そこにはこの写真のような看板まで立てられている状態です。この立て札には、青果の仲卸の名前が堂々と時間入りで掲示されています。時間貸しをされている実態が一目でわかる写真であります。
 一体どこまでルーズなのか、信じられないような実態でありますが、まさか契約をし転貸されているのか、どのような理由、経過で利用しているのか。これらの実態も把握し、すぐにでも是正をするべきと考えますが、これについても見解を伺います。
 知事、これら一連の問題は、東京都中央卸売市場条例第八十九条によって転貸等の禁止が定められております。また、同条二項には、本来用途以外の使用をしてはならないと定められています。さらに、社団法人大田市場協会駐車施設管理規程を著しく逸脱をしているケースが多過ぎるのです。これを有効的、活用的運用とは許される行為ではありません。
 総じて知事にお伺いいたします。
 これまで重ねてお伺いをしてきた事実は、もはや問題では済まされず、事件といえるものであります。これまでに挙げた実態だけではありません。大田市場の中にもまた、他の市場にも同様の問題事案が多く見受けられるのです。今回はその一端を開示いたしましたが、まず正すべき市場内の非常識はいまだ数多く存在していると指摘せざるを得ません。都知事の承認なしに横行しているあしき慣習は、即時改善するのは当然の知事のお務めと考えますが、速やかに是正していく意思はおありでしょうか。知事の感想やご所見をお伺いいたします。
 最後に、都内市場全体構想と適正規模の見直しについてお伺いいたします。
 東京の市場は、都民のみならず国民の食の拠点として大きな役割を果たしています。その市場の規模は、時代とともに見直されるべきであり、特に、近年では大手量販店の攻勢に伴う市場外での取引の拡大、相対取引の拡大など、これまでの形態とは大きく異なってきています。存続が厳しい仲卸、売買参加者もふえ続ける一方です。
 今こそ東京全体で、市場の現状規模を本当に維持できるのかどうかを精査するべきではないでしょうか。実態に応じた取引ができるよう、例えば築地市場を一〇〇%で豊洲に移転するという考え方だけではなく、中央卸売市場として都全体を見渡し、その本来の適正規模を見直すいい機会なのではないでしょうか。
 中でも、大田市場は東洋一といわれる約四十万平米の広大な敷地を有し、南側には羽田空港、東側には東京港、北側にはJR貨物基地、真ん中を貫くように首都高速湾岸線が通っており、物流の拠点として申し分ない環境の中にあります。であるならば、先ほど述べた水産部門を初め、この大田市場のすべての施設はもっと生かされるべきであります。
 大田市場設置時と現状を比べると、必ずしも思いどおりにいかないことはさきにも申し上げたとおりです。しっかりと全体を見渡した検証もなしに、築地の移転を同規模で考えることが果たしてできるのでしょうか。現在、想定をされている市場規模と合わない、もしくは移転後継続をしていくことが困難という状況に陥らないとも限りません。時代背景や先を見越した規模の見直し、さらにいえば、都内市場の全体規模の根本的な見直しを図らなければ、築地の将来像など示せないのではないでしょうか。そして、市場規模は全体を見渡しマネジメントしていくことが、これからの東京卸売市場に求められると考えますが、所見を伺います。
 以上、答弁によっては再質問を留保し、壇上からの質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 山口拓議員の一般質問にお答えいたします。
 大田市場の使用実態についてでありますが、大田市場は開業以来二十数年の間、量販店の隆盛など、時代の大きな変化の中で互いに競い合いながらも、それぞれ創意工夫し、市場機能の充実に努めてきました。今日では、日本一の青果の取扱数量を擁し、多くの市場業者が二十四時間活動する、活力とにぎわいに満ちた市場として発展を続けております。
 市場は流通環境の変化に伴い、施設使用のあり方に大きな変化が生じております。狭隘となった市場においては、有効活用の観点から、市場業者がいろいろ知恵を出し、妥協し合って使用している実情もあります。業界ともよく調整し、改善すべき点があれば、適切な改善が図られるように引き続き指導してまいります。
 他の質問については、市場長から答弁いたします。
   〔中央卸売市場長中西充君登壇〕

〇中央卸売市場長(中西充君) 大田市場について、その他七点のご質問にお答えいたします。
 最初に、屋根つき積み込み場の配分についてでございます。
 都は、平成十九年度から二十一年度にかけて、買い受け人が買い受けた商品を荷積み、荷さばきする駐車場である、屋根つき積み込み場を整備いたしました。その配分数については、買参組合及び仲卸組合の代表者と都で構成いたします屋根つき積み込み場等利用検討委員会において検討を行い、買参組合ごとに決めておりますが、平成元年五月の大田市場青果部開場当時に割り当てた配分数を基本とする一方、平成二十一年の屋根つき積み込み場の整備により増加した百十七台分については、このときの組合員数、取扱高等を踏まえて、全体の配分数を決定しております。
 全体の配分数の見直しについては、買参組合の実態を踏まえ、初回は完成から三年後、それ以降は五年ごとに行うこととしております。来年度は初回の改定時期に当たっており、適切に対応してまいります。
 次に、北口立体荷さばき場に整備された積み込み場についてでございますが、同荷さばき場は、大田市場における仲卸業者の荷さばき場の不足、待機車両や積み込み車両の大型化や増加に伴う場内動線のふくそうといった物流上の問題を改善することを目的といたしまして、市場業者が出資して設立した事業会社が、市場用地貸付制度を活用した事業用定期借地権の設定を受け、整備いたしたものでございます。
 同荷さばき場内には、この土地に従前からあった積み込み場を使用していた場内の買参組合が入居することを前提に、百六十八台の積み込み場が整備されており、その入居条件については、施設を管理運営する事業会社が設定しております。
 同積み込み場の入居状況については、現在のところ、予定台数を大幅に下回っている状況であると聞いておりますが、都としては今後、同積み込み場が整備される際に、都と市場関係者間で合意をしていた内容に基づき、事業会社と各売買参加者との間の入居手続が進捗するよう、市場関係者とともに、問題の解決に向け取り組んでまいります。
 次に、屋根つき積み込み場の転貸についてでございますが、屋根つき積み込み場を含む市場内の駐車施設については、大田市場のすべての市場業者が参加する公的団体である社団法人大田市場協会に対し、都が使用許可をし、同協会の管理のもとで買参組合等が使用しております。
 協会が定めた駐車施設管理規程においては、利用者の遵守事項といたしまして、駐車場利用許可証に記載された車両以外は駐車しないことが定められております。市場内の駐車施設については、都から使用許可を受けた協会が適正に管理すべきものであり、都としては実態把握に努め、来年度実施を予定しております屋根つき積み込み場の配分数の見直しも含めて、今後とも協会を指導し、市場施設の適切な運用に努めてまいります。
 次に、屋根つき積み込み場における作業実態の把握と食の安全・安心の体制づくりについてでございますが、ご指摘の行為が市場内で行われる背景としては、市場業者が、スーパーや飲食店等から、直ちに販売、調理ができるよう、小分けや容器詰めなどのパッキング等が行われていることを納入条件として求められており、専用施設を持たない中小の零細業者の中には、清潔保持に留意しつつも、こうした作業をやむなく積み込み場で行ってしまうという実情がございます。
 大田市場は、積み込み場における作業として、小分けのためのピッキングまでを認め、店頭に並べそのまま食する可能性がある容器詰めなどのパッキング等は、衛生上の問題から自粛を求めており、職員による日々の巡回や業界関係者と毎月現場指導を繰り返しております。
 今後、早朝における特別巡回の実施や相互監視といった、業界の協力を得た新たな体制により、指導を充実してまいります。また、取引委員会や講習会等のあらゆる機会をとらえて、市場業者の意識改革を図るとともに、業界と検討の場を設けて、積み込み場での作業のあり方とその対応策を検討いたします。
 なお、屋根つき積み込み場内にごみや機材等が放置されているとのご指摘がございましたが、場は市場協会衛生部会など業界と協力し、有料のごみ袋をすべての事業者に配布して、ごみの収集を徹底するとともに、月一回の放置パレットの回収に万全を期すなど、場全体の衛生保持と整理整とんに努めております。
 次に、水産物部の施設の活用についてでございますが、大田市場水産物部は、大森市場の移転に加え、一部築地市場の事業者も参加して、平成元年九月の開場以来、主に地元城南地域における小売業者に対し、水産物を供給する卸売市場としてその役割を果たしてまいりました。
 しかし、水産需要の低迷や市場外流通の増加など構造的な要因のほか、地元小売業者の大幅な減少や量販店対応のおくれなど、大田市場固有の原因が加わることで、仲卸業者の廃業が続き、空き店舗が四割を超える状況に至っております。
 今後、都は、新たな仲卸業者の出店を呼びかけていくほか、カンパチなどを扱う活魚水槽の整備による販路拡大など、市場業者とともに活性化に向けた取り組みを行ってまいります。
 次に、水産物部における施設使用についてでございます。
 市場施設は、衛生的かつ効率的に生鮮食料品等を流通させることを目的として整備しており、東京都中央卸売市場条例に基づく使用許可等を受けた者が、当該施設の用途に従って適切に使用することで、円滑な市場取引を確保しております。
 大田市場水産物部における青果物の積み込みについては、現場の実態や現状に至った経緯などを正確に把握し、条例に基づき、使用の適正化に努めてまいります。
 最後に、市場全体構想と適正規模の見直しについてでございますが、豊洲新市場については、高度な衛生品質管理施設など、現代の生鮮食料品流通に求められる機能を備えることにより、現在の築地市場では対応することが難しい顧客ニーズを呼び込むなど、着実に整備を進めてまいります。
 中央卸売市場全体の規模の見直しについては、取扱数量が減少しております大田市場水産物部において空き店舗の公募を進めるなど、既存施設の一層の有効活用を図る一方、その他の市場においても効率的な物流などの機能強化に努めることで、適切に対応してまいります。
 こうした卸売市場のマネジメントを行うことで、生鮮食料品の安定供給や、都民の食の安全・安心への期待にこたえ、卸売市場が担う公共的な役割を十全に果たしてまいります。

議長(和田宗春君) 二十五番星ひろ子さん
   〔二十五番星ひろ子君登壇〕

〇二十五番(星ひろ子君) 長く続く経済不況、未曾有の大災害に見舞われ、この国は厳しい状況が続いています。
 先日、教育再生円卓会議が開催されましたが、厳しい国難に立ち向かっていくために、今こそ次世代の力をたくましく培うことが必要です。子ども、若者にさまざまな体験の機会を与え、真の力をはぐくむ取り組みが重要だと思いますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 東日本大震災からもうすぐ九カ月がたとうとしています。宮城、岩手県では、子どもたちが学校に戻り、日常を取り戻す取り組みが行われ、福島県相馬市では、ふるさと相馬子ども復興会議が設立され、子どもたちの復興への意見を出す取り組みが展開されています。
 セーブ・ザ・チルドレンが七月に行った調査では、八割以上の子どもたちが、自分たちも地域の一員として復興に関与したいと考えていることがわかりました。
 一方、この震災による子どもの被災状況でわかったことは、学校で把握した児童生徒に関する情報と親の存在の有無でひとり親や孤児になったりした子どもの数だけでした。
 また、ようやく進み始めた国の復興計画案でも、子ども支援の内容は学校教育と心のケアのみであり、子どもの生活全体を支援する視点はありません。地域防災計画の修正に当たっては、災害時の対応における子どもへの配慮の視点から、今回の震災で対応に当たった人の話を聞くなどの取り組みにより、防災対策に生かしていくことが必要と考えますが、都のご見解を伺います。
 災害によるトラウマは、持続的、慢性的な状態から引き起こされる方が、急性の体験によるものよりも、子どもにとって心の成長に大きく影響するといわれています。都は被災地に臨床心理士や児童福祉司などの専門家を派遣しましたが、いずれも短期間で、不足する現地スタッフの一時的なサポートにとどまるものであり、継続的に子どもと直接かかわるまでには至っていないのが現実です。
 被災した子どもや保護者への支援を適切に行うため、児童相談所、子ども家庭支援センター等、関係機関による日常的な連携に加え、災害時における連携のあり方、事前協議など、取り組みの強化が重要であると考えますが、都の所見を伺います。
 次に、農薬に頼らない農業についてお伺いいたします。
 食の安全は今、放射能問題に関心が集中していますが、もともと農薬の問題が大きくありました。生産性を高めるために使われる農薬は、適切な時期を選んで毒性の低いものを最小限使用するよう、努力されてきました。有機燐系農薬にかわって毒性を低減すべく開発されたのがネオニコチノイド系農薬で、神経を興奮させ続けることで昆虫を死に至らしめるものですが、一九九〇年代に開発されて以降、農業用だけでなく、松枯れ防止、床下のシロアリ駆除、園芸用殺虫剤などにも多用されるようになり、昆虫のみならず、人、特に胎児や子どもの脳への影響も懸念されています。
 そんな中、ミツバチの大量死や失踪が、一九九四年以降、世界各地で報告され、この農薬が原因の一つではないかと推測されて、フランスでは規制の対象農薬となりました。ミツバチは銀座でも飼育されていることがメディアにも取り上げられましたが、都は養蜂ガイドラインをつくって、飼育の届けを出すよう指導しています。都内のミツバチ飼育の状況をどのように把握しているのか伺います。
 人類の食料の三分の一は植物に依存しており、ミツバチなどの昆虫はこれらの植物の八割の受粉に寄与しているとのことです。ミツバチの大量失踪が教えてくれるのは、生態系の危機であり、私たちの食料自給率に大きくかかわってくるものだということです。
 農薬は、使用が進むと予期せぬ副作用や効き目の減衰で使用中止になることが繰り返されてきました。近年、低毒性で多用されてきたネオニコチノイドも同じような時期を迎えたといえますが、代替農薬はまだ見つかっていません。人に対して低毒性といえども、できる限り使用を減らした農業を推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、廃棄物処理について伺います。
 建築廃棄物のリサイクルの推進に伴い、アスベスト含有建材等が紛れ込んでいるのではないかという不安の声が市民から寄せられました。これを受けて、都は対策を強化したと聞いていますが、阪神大震災でもアスベスト被害が指摘されたことから、東京都に搬入された震災瓦れきについても、アスベストの混入が懸念されます。
 実際に私も震災後の六月に、名取市の閖上地区に視察に行った際、海岸線に何もかも混在した瓦れきの山や粉じんを巻き上げるトラックを見て、処理の困難さを実感しました。市民の不安にこたえる科学的実証データの開示など、市民が納得する説明責任を都は果たすべきです。
 都としてどのような説明などの対策をとっているのか。また、検査機器の整備や、目視でのチェックで確実に見分けられるような検査員の研修や安全対策などが必要であると考えますが、都の見解を伺います。
 震災後、多摩地区の下水処理汚泥の焼却灰が、大田区で処理されることになりました。また、先行して受け入れた震災廃棄物も、大田区と江東区の事業者が請け負うことになっています。放射能汚染については、受け入れの事前事後の入念な計測を行っていると思いますが、通常以上のごみ量を引き受けるので、その分、搬入と処理、処分によって環境負荷が増加することは否定できません。
 スーパーエコタウンについては、環境負荷の高い施設が集中しており、それぞれの事業で環境アセスはクリアしていても、全体としての環境負荷は高まります。アセスの対象要件を少し下回る計画が多いことなども問題です。集中する地域では、アセスの要件を厳しくするなどの対応が必要ではないかと考えますが、ご見解を伺います。
 最後に、本定例会に上程されている東京都児童会館を廃止する条例について伺います。
 渋谷区にある児童会館で行われていた事業は、現在建設中の仮称子ども家庭総合センターに移行されます。この子ども家庭総合センターは、現在の福祉保健局の児童相談センター、教育庁の教育相談センター、警視庁の新宿少年センター及び児童会館が集約されることにより、機能を強化させると説明を受けています。
 そこで、子ども家庭総合センターはどのような目的があり、とりわけ今回廃止する児童会館の事業がどのような形で継承されることになるのか、改めて伺います。
 子どもに関する相談は、児童虐待や子育てに関する相談、教育や進路に関する相談、非行問題や犯罪被害等に関する相談などがありますが、各機関の相談機能を集約し、子どもと家庭に関するあらゆる相談に、より一層適切に対応していくことが求められます。
 一方、児童相談センターの中では、子どもに対して虐待やいじめ等の権利侵害の問題が生じた場合に、外部の専門家が子どもと関係機関との間に立ち、助言や調整を行う、子どもの権利擁護専門相談事業が、二〇〇四年度から実施されています。電話相談と専門家による調整活動が一体となり、継続的にかかわりながら問題解決を図っていく有効な取り組みと評価しています。
 二〇一〇年三月には携帯電話からの電話相談も可能となり、利便性が高まって相談件数が増加するなど、子どもにとってさらに身近なものになってきました。
 子ども家庭総合センターでは、相談に対する対応はどのように行われるのでしょうか。また、子どもの権利擁護専門相談事業については、センター設置後も引き続き実施していく必要があると考えますが、都のご所見をお伺いいたしまして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 星ひろ子議員の一般質問にお答えいたします。
 子どもたちの実体験についてでありますが、携帯電話、パーソナルコンピューター、テレビのいわゆる三つのスクリーンは、若者の資質を大きくひ弱に変えつつあると思います。情報の分析や評価を、結局またその情報に任せてしまうならば、それは情報はただの情報でしかなくて、血肉化しないために、真の教養とはなり得ないと思います。
 これは若者の実体験の乏しさでもありまして、勘違いや思い違いを恐れる余り、情報のつくる虚妄にすがって、挫折を体験しないで過ごそうとする生きざまは、結局ひ弱な人間だけをつくってしまうものだと思います。
 人間は、他人との摩擦、相克の中でこそ鍛えられるものでありまして、たくましく耐性を備えていくことが人生にとって肝要でありますが、強くしたたかな若者なしには、これからの日本は立っていかないと思います。
 さきの教育再生・東京円卓会議では、こうした危機感を共有する有識者と議論いたしました。
 学生寮の共同生活や体験学習など、子どもたちに原体験を積ませることで、身体性を備えた真の教養がはぐくまれる実践例が幾つも紹介されまして、社会的意義のあるボランティア活動や地域の企業における就業体験など、さまざまな機会を通じて社会的な体験を得ることは、子どもがその後のたくましい人生を切り開くための確かな手がかりを与えるに違いないと思います。
 今後、東京円卓会議においても、若者の知識や体験に身体性を付与するために我々は何をしなくてはならぬかということを本気で考えて議論していかなくてはならないと思います。
 ちなみに、隣の韓国では、高校を卒業する年齢で、これはほとんど強制的に二年間、兵役につかせるようでありますが、そこまでいかなくても、例えば一年なり二年なり、警察でも消防でも軍隊でも結構ですし、または海外協力隊でも結構ですが、私はそういう集団生活をするということが、若者たちにとって、私はかえがたい人生の糧になるのではないかという気がいたしております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 子どもの視点に配慮した防災対策についてでございますが、災害発生時には、乳幼児、児童生徒等の子どもを含めた災害時要援護者に対し、その特性や実情に即したきめ細やかな対応が必要となることは当然であり、現行の地域防災計画においても、学校における災害時の対応や災害時要援護者への安全確保対策等を盛り込んでおります。
 今回の東日本大震災の教訓を踏まえ、長期にわたる避難生活等によって子どもに生じた課題や対応策について、被災地の自治体や現地でボランティア活動を行った方の生の声を聞くなど、さまざまな機会をとらえて実情の把握に努め、今後の地域防災計画の修正に反映をしてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、被災した子どもや保護者への支援についてでございますが、災害時に子どもや保護者への支援を迅速かつ適切に行うためには、日ごろから児童相談所や区市町村の子ども家庭支援センター、保健所等の関係機関の連携体制を構築しておくことが重要でございます。
 そのため、都におきましては、これまで児童相談所に地域支援を行う職員を配置するほか、区市町村ごとに関係機関から成ります要保護児童対策地域協議会を設けまして、合同でケースを検討する場を定期的に開催するなど、情報の共有化と連携の強化に努めてまいりました。
 今後とも、子どもや家庭からの相談に適切にこたえ、災害時にも効果的な援助が実施できますよう、こうした取り組みを一層進めてまいります。
 次に、仮称でございますが、子ども家庭総合センターについてでございますが、このセンターは、児童虐待や非行など複雑、深刻な事例が増加している中、子どもと家庭を総合的に支援することを目的として設置するものでございます。
 具体的には、福祉保健、教育、警察の各相談機関が専門性を生かしまして相談に対応しますほか、いじめなどで傷ついた子どもの心のケア、児童虐待等により分離した家族の再統合の支援などを行うことといたしております。
 児童会館につきましては、その機能をセンターに移転いたしまして、これまで蓄積をしてきたノウハウを生かし、遊びに関する情報提供や、科学や木工等に関する出前講座の開催、職員研修やシンポジウムなどによります人材育成等を行い、区市町村における地域児童館の取り組みを支援してまいります。
 最後に、子ども家庭総合センターと子どもの権利擁護専門相談事業についてでございますが、このセンターでは、福祉保健、教育、警察の三分野の相談機関が連携をいたしまして、児童虐待のみならず、不登校、非行など、子どもに関しますさまざまな相談を幅広く受けとめますとともに、相談内容に応じて最も適切な機関が専門的な対応を行い、総合的に支援することとしております。
 また、現在実施しております子どもの権利擁護専門相談事業は、センターが開設した後も引き続き実施いたしまして、子どもや保護者からの悩みや訴えを相談員がフリーダイヤルで直接受け付けるとともに、深刻な相談には弁護士などの専門員が適切に対応してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都内のミツバチの飼育状況についてでありますが、養蜂業者は養ほう振興法で届け出が義務づけられておりまして、都では平成二十三年一月一日現在、五十八戸の届け出でございます。
 また、近年では養蜂業者以外に、趣味などでミツバチを飼育する者も多いことから、都では平成二十二年に東京都養ほうガイドラインを策定し、周辺とのトラブルや、ミツバチがかかる伝染病の蔓延の防止のため、飼育届の提出について指導を行っておりまして、七十二戸が届け出されております。
 次に、減農薬農業の推進についてでありますが、現代の農業におきましては、農産物の安定的な生産供給のためには、農薬の適正な使用が欠かせないところでありますが、同時に農薬をできる限り減らす不断の努力が求められております。特に、東京農業は住宅地に近接しておりますことから、農薬の使用法にも格段の配慮が必要であります。
 そのため、都は平成六年から、東京都環境保全型農業推進基本方針に基づき取り組みを開始いたしまして、都内すべての生産者が環境保全型農業に取り組むよう促しております。
 具体的には、農薬を減らした病害虫防除技術の研究開発や、その成果の農家への技術移転を実施し、環境保全型農業を推進する農家を支援してまいりました。
 今後とも、環境に配慮し、安全・安心な農産物の生産を推進してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、災害廃棄物のアスベスト対策についてでございますが、被災地の仮置き場と選別エリアでは、手選別作業でアスベストを含有するおそれがあるスレートやコンクリート塊等を取り除いております。都が受け入れる廃棄物は、選別された後の木くずやプラスチックが中心となりますので、アスベストの混入の可能性は低いものとなっております。
 これに加えまして、都では専門家によるアスベストの判別研修を受けた東京都環境整備公社の職員を現地に常駐させておりまして、スレート等の除去を確認させております。職員には粉じん対策として防じんマスクを着用させ、アスベスト含有の有無を迅速に判断できるよう、拡大鏡等を常備させております。
 なお、都内自治体の清掃工場等で災害廃棄物を受け入れる際に行う住民説明会では、被災地でのアスベストの除去方法について丁寧に説明を行ってまいります。
 次に、施設の集中する地域における環境影響評価についてでございますが、環境影響評価は、条例等に定められた要件に基づきまして環境への影響を予測、評価するもので、事業者は事業の実施に当たって、その地域において既に稼働している施設等の影響も含め、予測、評価することになっておりますので、施設の集中による環境影響も評価されております。
 なお、お話のスーパーエコタウンの各施設は、東京の企業活動から排出される廃棄物のリサイクルを進め、資源循環型社会づくりに貢献する重要な役割を果たすものでありますが、その設置許可に当たりましては、事業者が設定した法を上回る自主管理値に基づき、施設が周辺地域の生活環境に及ぼす影響を審査しております。
 災害廃棄物の受け入れは、その許可された処理能力の範囲内でございますので、環境への影響は問題ないものと認識をしております。

〇議長(和田宗春君) 以上をもって質問は終わりました。

議長(和田宗春君) これより日程に入ります
 日程第一から第五十八まで、第百七十号議案、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例及び都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例外議案五十六件、諮問一件を一括議題といたします。
 本案に関し、提案理由の説明を求めます。
 副知事佐藤広君。
   〔副知事佐藤広君登壇〕

〇副知事(佐藤広君) ただいま上程になりました五十八議案についてご説明申し上げます。
 初めに、第百七十号議案、第百七十三号議案、第百五十四号議案及び第百五十六号議案から第百七十四号議案までの二十議案は条例案でございまして、一部を改正する条例が十九件、廃止する条例が一件でございます。
 第百七十号議案、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例及び都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例及び第百七十三号議案、東京都下水道条例の一部を改正する条例は、国による汚水の規制基準の見直しや暫定排水基準の適用期限の延長などに伴い、規定を整備するものでございます。
 第百六十二号議案、東京都児童会館条例を廃止する条例は、子ども家庭総合センター(仮称)への機能移転にあわせて条例を廃止するものでございます。
 このほか、第二次一括法の施行によるものなど、法令の改正に伴い規定を整備するものが十七件ございます。
 次に、第百七十五号議案から第百八十二号議案までの八議案は契約案でございます。
 第百七十五号議案、都立港地区第二特別支援学校(仮称)(二十三)改築工事請負契約など、契約金額の総額は約百四十億円でございます。
 次に、第百八十三号議案から第二百十一号議案までの二十九議案は事件案でございます。
 第百八十三号議案は、当せん金付証票、いわゆる宝くじの平成二十四年度における発売限度額を定めるものでございます。
 第百八十四号議案の東京都営住宅等の指定管理者の指定を初めとしまして、二十件が指定管理者の指定に関するものでございます。
 第百九十九号議案から第二百一号議案までは、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターの本部移転に伴い、土地建物などについて、同法人に対する現物出資を行うものなどでございます。
 第二百七号議案から第二百十号議案までは、警察における災害発生時の対応力の強化を図るため、各種の特種用途自動車を買い入れるもの、第二百十一号議案は、消防機動力の円滑化を図るためヘリコプターを買い入れるものでございます。
 次に、諮問でございます。
 退職手当の支給制限処分について審査請求がありましたので、地方自治法の規定に基づき諮問するものでございます。
 上程になりました五十八議案の説明は以上でございますが、このほか人事案を送付いたしております。
 まず、東京都教育委員会委員でございます。
 十二月二十日に任期満了となります瀬古利彦氏につきまして、再任いたしたいと存じます。
 次に、東京都監査委員でございます。
 十二月二十日に任期満了となります三栖賢治氏の後任には、友渕宗治氏を選任いたしたいと存じます。
 以上で説明を終わります。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
(議案の部参照)

〇議長(和田宗春君) 以上をもって提案理由の説明は終わりました。

〇七十四番(西岡真一郎君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 ただいま議題となっております議案のうち、第百七十号議案及び第百七十三号議案については、委員会付託を省略し、原案のとおり決定されることを望みます。

〇議長(和田宗春君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認めます。よって、第百七十号議案及び第百七十三号議案は、原案のとおり可決されました。

〇議長(和田宗春君) お諮りいたします。
 ただいま議題となっております日程第三から第五十八までは、お手元に配布の議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認めます。よって、日程第三から第五十八までは、議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定いたしました。
(別冊参照)

〇議長(和田宗春君) これより追加日程に入ります。
 追加日程第一、東京都教育委員会委員の任命の同意についてを議題といたします。
   〔鈴木議事部長朗読〕
一、東京都教育委員会委員の任命の同意について一件

二三財主議第三九九号
平成二十三年十一月三十日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 和田 宗春殿
東京都教育委員会委員の任命の同意について(依頼)
 このことについて、左記の者は平成二十三年十二月二十日任期満了となるため、再び任命したいので、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四条第一項の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお願いします。
       記
     瀬古 利彦

      略歴
現住所 東京都渋谷区
瀬古 利彦
昭和三十一年七月十五日生(五十五歳)
昭和五十五年三月 早稲田大学教育学部卒業
昭和五十五年四月 ヱスビー食品株式会社入社
平成元年四月   ヱスビー食品株式会社陸上部監督
平成十四年二月  社団法人東京陸上競技協会理事
平成十七年四月  財団法人日本陸上競技連盟理事
平成十八年四月  ヱスビー食品株式会社スポーツ推進局局長
平成十九年四月  財団法人日本オリンピック委員会理事
平成二十三年四月 公益財団法人日本陸上競技連盟理事
現在       ヱスビー食品株式会社スポーツ推進局局長

〇議長(和田宗春君) 本件は、起立により採決いたします。
 本件は、知事の任命に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(和田宗春君) 起立多数と認めます。よって、本件は、知事の任命に同意することに決定いたしました。

〇議長(和田宗春君) 追加日程第二、東京都監査委員の選任の同意についてを議題といたします。
   〔鈴木議事部長朗読〕
一、東京都監査委員の選任の同意について一件

二三財主議第四〇〇号
平成二十三年十一月三十日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 和田 宗春殿
東京都監査委員の選任の同意について(依頼)
 このことについて、東京都監査委員三栖賢治は平成二十三年十二月二十日任期満了となるため、後任として左記の者を選任したいので、地方自治法第百九十六条第一項の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお願いします。
       記
     友渕 宗治

      略歴
現住所 東京都練馬区
友渕 宗治
昭和二十年十一月十五日生(六十六歳)
昭和三十九年三月 警視庁採用
昭和五十二年九月 警察大学校卒業
平成元年八月   警視庁蒲田警察署副署長
平成三年三月   警視庁防犯部防犯総務課理事官
平成四年八月   警視庁防犯部少年第二課長
平成五年九月   警視庁碑文谷警察署長
平成六年八月   警視庁警備部第五機動隊長
平成八年二月   警視庁生活安全部保安課長
平成九年九月   警視庁池袋警察署長
平成十一年二月  警視庁総務部会計課長
平成十二年二月  警視庁総務部企画課長
平成十三年二月  警視庁総務部参事官
平成十四年二月  四国管区警察局広域調整部長
平成十五年二月  警視庁生活安全部長
平成十六年十月  警視庁職員信用組合顧問
平成十七年六月  警視庁職員信用組合理事長
現在       現職なし

〇議長(和田宗春君) 本件は、起立により採決いたします。
 本件は、知事の選任に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(和田宗春君) 起立多数と認めます。よって、本件は、知事の選任に同意することに決定いたしました。

〇議長(和田宗春君) 請願及び陳情の付託について申し上げます。
 受理いたしました請願二十七件及び陳情三十六件は、お手元に配布の請願・陳情付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたします。
(別冊参照)

〇議長(和田宗春君) お諮りいたします。
 明九日から十四日まで六日間、委員会審査のため休会いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認めます。よって、明九日から十四日まで六日間、委員会審査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は十二月十五日午後一時に開きます。
 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後七時二十五分散会

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