平成二十三年東京都議会会議録第十七号

平成二十三年十二月七日(水曜日)
 出席議員 百二十四名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番三宅 正彦君
四番桜井 浩之君
五番山崎 一輝君
六番野田かずさ君
七番福士 敬子君
八番土屋たかゆき君
九番相川  博君
十番山内れい子君
十一番関口 太一君
十二番くりした善行君
十三番西沢けいた君
十四番田中  健君
十五番畔上三和子君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番松葉多美子君
十九番伊藤 興一君
二十番鈴木 章浩君
二十一番菅  東一君
二十二番きたしろ勝彦君
二十三番早坂 義弘君
二十四番高木 けい君
二十五番星 ひろ子君
二十六番小山くにひこ君
二十七番柳ヶ瀬裕文君
二十八番淺野 克彦君
二十九番新井ともはる君
三十番佐藤 由美君
三十一番中村ひろし君
三十二番たきぐち学君
三十三番田の上いくこ君
三十四番島田 幸成君
三十五番大島よしえ君
三十六番高倉 良生君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番遠藤  守君
四十番石森たかゆき君
四十一番高橋 信博君
四十二番中屋 文孝君
四十三番村上 英子君
四十四番矢島 千秋君
四十五番高橋かずみ君
四十六番山加 朱美君
四十七番西崎 光子君
四十八番しのづか元君
四十九番滝沢 景一君
五十番中谷 祐二君
五十一番笹本ひさし君
五十二番山下ようこ君
五十三番神野 吉弘君
五十四番鈴木 勝博君
五十五番興津 秀憲君
五十六番岡田眞理子君
五十七番古館 和憲君
五十八番かち佳代子君
五十九番大松あきら君
六十番中山 信行君
六十一番橘  正剛君
六十二番野上 純子君
六十三番谷村 孝彦君
六十四番山田 忠昭君
六十五番林田  武君
六十六番小宮あんり君
六十七番吉住 健一君
六十八番神林  茂君
六十九番野島 善司君
七十番服部ゆくお君
七十一番伊藤 ゆう君
七十二番原田  大君
七十三番佐藤 広典君
七十四番西岡真一郎君
七十五番尾崎 大介君
七十六番山口  拓君
七十七番伊藤まさき君
七十八番松下 玲子君
七十九番野上ゆきえ君
八十番今村 るか君
八十一番たぞえ民夫君
八十二番吉田 信夫君
八十三番小磯 善彦君
八十四番長橋 桂一君
八十五番藤井  一君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番こいそ 明君
八十八番遠藤  衛君
八十九番田中たけし君
九十番宇田川聡史君
九十一番鈴木 隆道君
九十二番三原まさつぐ君
九十三番田島 和明君
九十五番吉田康一郎君
九十六番斉藤あつし君
九十七番泉谷つよし君
九十八番くまき美奈子君
九十九番大西さとる君
百番いのつめまさみ君
百一番小沢 昌也君
百二番石毛しげる君
百三番大津 浩子君
百五番清水ひで子君
百六番ともとし春久君
百七番東村 邦浩君
百八番中嶋 義雄君
百九番木内 良明君
百十番古賀 俊昭君
百十一番吉原  修君
百十二番鈴木あきまさ君
百十三番宮崎  章君
百十四番川井しげお君
百十六番吉野 利明君
百十七番比留間敏夫君
百十八番門脇ふみよし君
百十九番増子 博樹君
百二十番大塚たかあき君
百二十一番酒井 大史君
百二十二番山下 太郎君
百二十三番大沢  昇君
百二十四番中村 明彦君
百二十五番馬場 裕子君
百二十六番和田 宗春君
百二十七番大山とも子君

 欠席議員 一名
  百十五番 三宅 茂樹君
 欠員
    九十四番 百四番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事佐藤  広君
副知事猪瀬 直樹君
副知事吉川 和夫君
副知事村山 寛司君
教育長大原 正行君
東京都技監建設局長兼務村尾 公一君
知事本局長秋山 俊行君
総務局長笠井 謙一君
財務局長安藤 立美君
警視総監樋口 建史君
主税局長新田 洋平君
生活文化局長井澤 勇治君
スポーツ振興局長細井  優君
都市整備局長飯尾  豊君
環境局長大野 輝之君
福祉保健局長杉村 栄一君
産業労働局長前田 信弘君
港湾局長中井 敬三君
会計管理局長松田 芳和君
消防総監北村 吉男君
交通局長野澤 美博君
水道局長増子  敦君
下水道局長松田 二郎君
青少年・治安対策本部長樋口 眞人君
病院経営本部長川澄 俊文君
中央卸売市場長中西  充君
選挙管理委員会事務局長影山 竹夫君
人事委員会事務局長多羅尾光睦君
労働委員会事務局長加藤 英夫君
監査事務局長塚本 直之君
収用委員会事務局長細野 友希君

十二月七日議事日程第二号
第一 第百七十号議案
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例及び都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
第二 第百七十三号議案
東京都下水道条例の一部を改正する条例
第三 第百五十四号議案
東京都非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百五十六号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第五 第百五十七号議案
東京都屋外広告物条例の一部を改正する条例
第六 第百五十八号議案
東京都再開発等促進区を定める地区計画等の案の作成手続に関する条例の一部を改正する条例
第七 第百五十九号議案
東京都景観条例の一部を改正する条例
第八 第百六十号議案
東京のしゃれた街並みづくり推進条例の一部を改正する条例
第九 第百六十一号議案
東京都日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例の一部を改正する条例
第十 第百六十二号議案
東京都児童会館条例を廃止する条例
第十一 第百六十三号議案
東京都障害者施策推進協議会条例の一部を改正する条例
第十二 第百六十四号議案
東京都障害者支援施設等に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第百六十五号議案
東京都立療育医療センター条例の一部を改正する条例
第十四 第百六十六号議案
東京都立重症重度心身障害児者施設条例の一部を改正する条例
第十五 第百六十七号議案
食品衛生法施行条例の一部を改正する条例
第十六 第百六十八号議案
食品製造業等取締条例の一部を改正する条例
第十七 第百六十九号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第十八 第百七十一号議案
東京都風致地区条例の一部を改正する条例
第十九 第百七十二号議案
東京都水防条例の一部を改正する条例
第二十 第百七十四号議案
特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第二十一 第百七十五号議案
都立港地区第二特別支援学校(仮称)(二十三)改築工事請負契約
第二十二 第百七十六号議案
東京都議会議事堂(二十三)改修工事請負契約
第二十三 第百七十七号議案
東京体育館(二十三)改修工事請負契約
第二十四 第百七十八号議案
東京都議会議事堂(二十三)電気設備改修工事請負契約
第二十五 第百七十九号議案
東京都議会議事堂(二十三)空調設備改修工事請負契約
第二十六 第百八十号議案
東京体育館(二十三)改修空調設備工事請負契約
第二十七 第百八十一号議案
環状第二号線隅田川橋りょう(仮称)鋼けた製作・架設工事(二十三 五─環二)請負契約
第二十八 第百八十二号議案
環二朝潮運河橋りょう(仮称)PCけた製作・架設工事(二十三 一─環二築地)請負契約
第二十九 第百八十三号議案
当せん金付証票の発売について
第三十 第百八十四号議案
東京都営住宅、東京都福祉住宅、東京都特定公共賃貸住宅、東京都地域特別賃貸住宅、東京都引揚者住宅等の指定管理者の指定について
第三十一 第百八十五号議案
東京都石神井学園の指定管理者の指定について
第三十二 第百八十六号議案
東京都小山児童学園の指定管理者の指定について
第三十三 第百八十七号議案
東京都船形学園の指定管理者の指定について
第三十四 第百八十八号議案
東京都八街学園の指定管理者の指定について
第三十五 第百八十九号議案
東京都勝山学園の指定管理者の指定について
第三十六 第百九十号議案
東京都片瀬学園の指定管理者の指定について
第三十七 第百九十一号議案
東京都八王子自立ホームの指定管理者の指定について
第三十八 第百九十二号議案
東京都視覚障害者生活支援センターの指定管理者の指定について
第三十九 第百九十三号議案
東京都日野療護園の指定管理者の指定について
第四十 第百九十四号議案
東京都清瀬喜望園の指定管理者の指定について
第四十一 第百九十五号議案
東京都八王子福祉園の指定管理者の指定について
第四十二 第百九十六号議案
東京都七生福祉園の指定管理者の指定について
第四十三 第百九十七号議案
東京都千葉福祉園の指定管理者の指定について
第四十四 第百九十八号議案
東京都東村山福祉園の指定管理者の指定について
第四十五 第百九十九号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに対する出資について
第四十六 第二百号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターによる土地及び建物の譲渡の認可について
第四十七 第二百一号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター定款の変更について
第四十八 第二百二号議案
東京都立大島公園海のふるさと村の指定管理者の指定について
第四十九 第二百三号議案
東京都立奥多摩湖畔公園山のふるさと村の指定管理者の指定について
第五十 第二百四号議案
東京都立多幸湾公園の指定管理者の指定について
第五十一 第二百五号議案
東京都檜原都民の森の指定管理者の指定について
第五十二 第二百六号議案
東京都奥多摩都民の森の指定管理者の指定について
第五十三 第二百七号議案
特種用途自動車(誘導標識車)の買入れについて
第五十四 第二百八号議案
特種用途自動車(災害部隊支援車)の買入れについて
第五十五 第二百九号議案
特種用途自動車(災害用大量排水システム車)の買入れについて
第五十六 第二百十号議案
特種用途自動車(交通情報提供車)の買入れについて
第五十七 第二百十一号議案
ヘリコプターの買入れについて
第五十八 諮問第一号
地方自治法第二百六条の規定に基づく審査請求に関する諮問について

   午後一時開議

〇議長(和田宗春君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(和田宗春君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(和田宗春君) これより質問に入ります。
 百二十一番酒井大史君。
   〔百二十一番酒井大史君登壇〕

〇百二十一番(酒井大史君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 まず、平成二十四年度東京都予算編成について伺います。
 東日本大震災の影響によって分断されていた部品などのサプライチェーンは各業界の尽力によって復旧し、生産活動は持ち直しつつあります。
 一方、円高の進行による企業収益の悪化やタイにおける洪水被害による部品不足、そして南欧諸国の財政、債務危機による欧州問題などで、国内外の経済は先行きが懸念されています。
 都内においては、今年度の経済成長率は〇・四%のマイナス、都民所得も対前年度に比べ一・四%のマイナスと見込まれています。日本政策金融公庫の調査によっても、都内小企業の売り上げ回復は長期化を覚悟しなければならない状況とのことです。平成二十年度からの法人事業税国税化による税収減の影響も大変大きいものとなっています。
 このような中、都の施策の主要財源である平成二十三年度都税収入の見込みについて、また、平成二十四年度都税収入の見通しについて伺います。
 法人事業税の一部国税化については、都議会民主党は導入時から今日まで、あらゆる機会を通じて国に対し暫定措置の撤廃を求めてきました。引き続き、法人事業税一部国税化の撤廃に向けて取り組みを強めてまいります。
 今年度、都は、東日本大震災後の被災地支援や都内インフラ被害の復旧、東京のエネルギー戦略の見直しなどに、税収と約三千億円の基金を取り崩して対応してきました。平成二十四年度の予算編成においては、都債償還分の減や退職による人件費の減少など、財政健全化や行政改革の効果などによって財源を確保し、都が果たすべき課題に取り組むこととなります。
 厳しい都民生活や都内企業を支える施策や都内の経済成長を促す取り組み、自立分散型エネルギー供給の仕組みづくり、そして首都直下地震へのスピード感ある対応など、中長期を含む東京の課題解決に向けて、来年度予算をどのように編成するお考えなのか、所見を伺います。
 次に、東京の防災対策について伺います。
 国の首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの東京大学地震研究所や防災科学技術研究所などのチームは、首都圏に四百個の地震計を設置し、地震の震源となる地下の三つのプレートの位置関係を明らかにする研究を進めています。
 そして、陸側の北米プレートの下に南から沈み込むフィリピン海プレートが現在の想定よりも約十キロメートル近く浅いことを解明しました。地震の震源が地表に近づくことで、首都直下地震が起きた際に、想定震度が大きくなる可能性があります。
 国に、地震の想定規模などの再検証を求める都は、この新たな科学的知見を受けて、首都直下地震発災時のより詳細な被害想定の検証を行い、震災対策の推進に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、立川断層帯地震への対応について伺います。
 多摩地域では、プレート境界多摩地震に比べ発生頻度が低いとされる立川断層帯地震が想定地震に追加されました。都においては、十月、西東京市、小平市、武蔵野市や小金井市とともに、ブラインド型の実践的な総合防災訓練を行うなど、大震災を教訓とした取り組みを始めています。
 こうした多摩地域における防災対策を推進していく一方で、断層調査を進めるとともに、まだわかっていないことも多いものの、震源が比較的浅いため揺れが大きく、断層のずれによる大きな被害のおそれがあるといったきめ細かな情報を都民や市町村に提供していくことが大切です。
 立川断層帯地震に対する都民の過度な不安を解消しながらも、防災対策をいかに進めていくかが重要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、三連動地震対策について伺います。
 平成十五年、三連動地震の発生に関して、国の東南海、南海地震に関する専門調査会は、東京東部地域では震度五弱の揺れが発生すると予想していました。平成十八年には、国の大都市大震災軽減化特別プロジェクトにおける京都大学防災研究所による新たな強振動予測手法により、東京東部地域では震度六弱の揺れと東京湾岸地域の液状化の可能性が示されました。
 現在、国において南海トラフの巨大地震モデル検討会が開催され、東海、東南海、南海地震の規模について検証を行っており、新たな被害想定が出される予定です。
 都においては、三連動地震への対策として、長周期地震動対策、液状化対策や島しょ地域の津波対策など、都内の災害対応及び被災地支援の双方に円滑かつ迅速に対応できる体制を構築するとしていますが、国の新たな被害想定を踏まえて、具体的な対策をとっていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、自助、共助の取り組みの推進について伺います。
 いつどこで首都直下地震が起こるのか、予測はできません。また、発災から三日間、公共機関は、消火や負傷者の救助、救急、交通規制などに追われ、個別の要請に対応できないと考えられます。
 そこで、まずはみずからの命を守る自助、そして共助の取り組みが重要となります。中林一樹明治大学特任教授によると、都民が自助能力を発揮するためには、平素から自宅の耐震化や家具の転倒防止、備蓄の推進などのハード面での備えを行うとともに、防災イメージトレーニングを行うこと、自治会、町会やマンションでの災害時助け合いシステムづくりなどのソフト面の備えを行うことが重要だということです。
 こうした都民による自助、共助能力を高める事前の取り組みが進めば、けがをせずに、災害時要援護者の避難支援や負傷者の救助といった共助を推進でき、被害を軽減することができます。
 一方、震災後に行った都の震災対策アンケートの結果では、防災用品や備蓄の用意は進みましたが、家具類の固定は半数、自宅の耐震化や防災訓練への参加も低いなど、課題が多くあります。
 首都直下地震時の被害軽減のために、都民の自助、共助能力を高める取り組みを市区町村とともに一層取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、震災後における応急仮設住宅の供給について伺います。
 国は、東日本大震災後に応急仮設住宅の用地確保が難航したことから、都道府県に対し、応急仮設住宅の建設候補地の把握を要請するとともに、来年三月に応急仮設住宅建設のガイドラインをまとめることとなりました。
 東京都においては、首都直下地震により全壊する建物の被害想定は最高四十七万一千五百八十六棟にも上ります。しかし、都市部では制約があることから、確保される用地は都や市区の公共空き地など五百七十ヘクタールのみです。しかも、震災後には、それら用地の被害状況を調査して、使用できるかどうかも見きわめていかなければなりません。
 そのため、震災などの発生時には、公的住宅や民間賃貸住宅の空き家活用による都民への供給も重要です。大震災の教訓も踏まえた首都直下地震後の応急仮設住宅供給に向けた考え方について見解を伺います。
 次に、大規模水害対策について伺います。
 複合災害や荒川及び利根川の洪水などにより、東京東部の低地帯に大規模水害が起こった場合に備え、江東区などは水害時における一時避難施設の指定を推進するなど、防災対策を進めています。
 都においては、万が一浸水が起きた場合に、迅速で的確な情報提供や避難先の確保、広域避難も含めた避難誘導体制の整備などの検討を行うこととしています。
 また、広域避難場所である都立公園をかさ上げして、緊急避難場所として整備を検討していくことや地下鉄本体並びに入り口の浸水防止や水道、下水道施設の耐震、耐水化を進めるなど、減災に向けた対策を行う必要があります。
 東京東部地域における大規模水害対策の推進について見解を伺います。
 次に、建築物の耐震化について伺います。
 平成二十一年度から二十二年度までの間に耐震診断を実施した建築物のうち、木造住宅で倒壊または崩壊する危険性があるとされるIw値が一・〇未満のものが約九九%、鉄筋コンクリートなどの非木造建築物で、倒壊または崩壊する危険性があるとされるIs値が〇・六未満のものが分譲マンションで約八〇%、緊急輸送道路沿道建築物で約九一%だといわれています。この数値からも、昭和五十六年五月以前の旧耐震基準で建てられた建築物は、倒壊または崩壊する危険性の高いことがわかります。
 東日本大震災以降、建築物の安全性に対する建物所有者の意識も変化しており、建築物の耐震化を推進するためにも、耐震改修助成制度の拡充は非常に重要だと考えます。
 緊急輸送道路沿道建築物については、来年四月から耐震診断の実施が建物所有者に義務づけられます。より多くの建物所有者がより早く耐震診断を実施することを促すため、今後どのように取り組んでいくのか見解を伺います。
 東日本大震災におけるマンション被害を見ると、旧耐震基準マンションの損傷割合が大きくなっており、これらのマンションを耐震化する緊急性が改めて確認されています。
 都では、六月に策定した東京緊急対策二〇一一の中で、マンション耐震化促進に向けた取り組みを緊急対策の一つとして取り上げ、学識経験者などから成る専門家会議を設置し、耐震化推進のための新たな実効性ある方策を検討しています。
 この専門家会議の議論を踏まえ、都は十一月二十二日、耐震改修や円滑な建てかえを促進するための法制度の改正について、国に対する緊急提案を行っています。国の法改正に関しては、私たちも東京都と問題意識を一にしていますので、政府や党本部に対して強く働きかけを行っていきますが、マンションの耐震化に向けた今後の都としての取り組みについて所見を伺います。
 木造住宅密集地域では、防災都市づくり推進計画で整備地域に指定されている地域の中でさえ、その整備がはかどっていないのが現状です。これまでの整備手法を改めて見直すとともに、各地域の実情やニーズをより詳細に把握して整備を進めていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、放射能対策について伺います。
 私たちは、食品の放射性物質の検査について、生産地検査だけではなく、流通消費地としての都内での検査を求めてきましたが、都はその声にこたえ、十一月から流通食品のモニタリング検査をようやく開始をいたしました。
 また、子どもたちを内部被曝から守るために、八月二十九日に子どもの内部被曝ゼロを目指すための緊急要望で、学校給食などの安全性を確保するよう求めてきました。
 その学校給食の品目の牛乳に関しては、学校給食用牛乳供給事業者が、給食用牛乳の検査を実施しながら、その結果を公表していなかったことが波紋を広げていましたが、教育庁は十二月二日に、供給事業者の団体である東京学乳協議会に対して、各事業者の検査結果の公表を促す要請を行いました。不安を持つ保護者の立場に立った対応が徐々に進み始めたといえます。
 さて、私たちは、第三回定例会の代表質問で、災害廃棄物の受け入れに関しても、被災地支援で東京ができることはやるべきとした上で、都民の健康への影響を考慮し、慎重な検討と都民に理解を求めるために、丁寧な説明が必要であると述べてきました。
 十一月三日からは、岩手県宮古市から都内への災害廃棄物の搬入が始まりました。その手法を視察し、確認したところ、東京都が飛散防止策など丁寧な対応をしていることがわかりました。また、宮古市の瓦れきは、岩手県の調査によれば平均六十九ベクレル・パー・キログラムであり、濃度が低いこともわかっています。
 このような中、都は宮城県女川町からの瓦れき受け入れを公表しています。災害廃棄物の受け入れについては、環境局に対して多くの都民から中止を求める電話が寄せられ、また署名活動がなされるなど、都民の安心、理解を十分に得られているとはいえない状況にあります。
 国が示す安全基準が焼却灰八千ベクレル・パー・キログラム以下という出口の基準しかないため、高い濃度の放射性物質が都内に持ち込まれるのではないかとの都民の不安を惹起してしまっています。実際には、災害廃棄物の放射能濃度が低いことが都民に伝わっていないのです。
 受け入れに当たって、都の対応をきちんと説明していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 しかしながら、災害廃棄物の空間線量の測定に関しては、きめ細かい測定はしていますが、濃度測定は一回だけで、不確かさが残り、不十分な対応状況にあります。
 そこで、放射能濃度を定期的に測定し公開するなど、より多くの情報を提供することが必要であると考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、都立施設における放射線の測定強化と除染について伺います。
 私たちは、六月十日の緊急要望で、空間放射線量の測定強化を求めてきました。現状、東京都は、モニタリングポストの増設などを実施し、測定を強化してきています。また、各市区町村も独自に測定を実施し、高い線量の場所は除染するなどの対処をしています。
 このような中で、東京都が文部科学省のガイドラインに従い、十一月に都有施設である足立区の中川公園、葛飾区の水元公園、江戸川区の篠崎公園の放射線量の調査を実施しました。
 その結果として、調査の目的である高さ一メートルで周辺より放射線量が一マイクロシーベルト毎時以上高いポイントは見つからなかったものの、調査の中で、中川公園では管理小屋雨どい付近の高さ一センチで七・〇六マイクロシーベルト毎時、水元公園でも高さ一センチで四マイクロシーベルト毎時を超える数値を検出しています。
 東京都は、この結果を受けた報道発表の資料の中で、都有施設全般にわたる調査や経常的な調査は基本的に不要としています。そのため、各市区町村が放射線量の測定を強化していく中で、都有施設だけが測定されず、測定の空白地をつくる結果となってしまっています。
 ある区では、区立公園のほとんどで測定を済ませていますが、大規模な都立公園だけが測定をされず、都立公園の利用控えが起こっているなどと聞いています。
 そこで、都に子どもが利用する都立公園を中心に、都有施設全般について放射線量の測定を実施し、結果を広く公表するべきであると考えますが、所見を伺います。
 また、国の除染基準に該当する箇所も出てくる可能性があると思われますが、その場合、どのように対応するのか、見解を伺います。
 次に、環境エネルギー政策について伺います。
 まず、エネルギー政策についてです。
 電力の供給力不足が懸念されていたことしの夏は、都内の事業者や都民の皆様のご協力のもと、また電力会社の電力供給力の積み上げ努力や機動的な電力融通等の対応もあり、計画停電や需給逼迫による停電を回避することができました。
 去る十一月一日、国はこの冬の電力需給対策についての方針を示しました。この中では、この冬の電力需給バランスについて、一般的に冬の電力需要は夏に比べ低いことから、ことしの夏ほどには深刻にならない見通しであるとされています。
 その一方で、電源脱落などのリスクに備える必要があることなどから、節電対策は引き続き必要であるとされています。
 そこで、この冬における節電に向けた都の取り組みについて所見を伺います。
 東日本大震災直後の計画停電では、医療機関等の人の命にかかわる施設やライフライン施設の機能に大きな影響が生じ、事業継続に支障を来すケースが発生しました。
 一方、高効率に発電を行い、街区内に電力を供給する特定電気事業者の取り組みが注目されましたが、このような自立分散型エネルギーを保有する施設等はいまだ限られています。
 私たちは、震災の発災時に、都民生活を守り、都市機能を維持するために、できる限り低炭素型の自立分散型エネルギーの確保を進めていく必要があると考えます。
 都はことし七月、分散型発電ワーキンググループを立ち上げ、具体的な検討を行ってきていますが、その検討状況も含め、自立分散型エネルギー確保に向けた今後の取り組みについて見解を伺います。
 都は、建築物環境計画書制度やキャップ・アンド・トレード制度、マンション環境性能表示制度等を通じて、建築物の省エネ化を推進するとともに、地域におけるエネルギーの有効利用に関する計画制度を通じて、地域冷暖房のエネルギー効率の向上などを進めています。その結果、東京には先端的な省エネ技術を取り入れた低炭素ビルなどが多く建設されるようになってきています。
 しかし、廃熱を最大限に利用するコージェネレーションシステムによる地域への効率的なエネルギー供給は十分に進んでいません。また、エネルギーの需要と供給の両面から、最適制御を図る仕組みの構築も課題となっています。さらには、清掃工場の廃熱等の未利用エネルギーも散在している状況にあります。
 私たちは、今後の大規模な都市開発や住宅開発などにおいては、低炭素型でかつ分散型のエネルギーを最適活用する都市づくりを進めていく必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、建設廃棄物のリサイクルについて伺います。
 建設廃棄物であるコンクリートの塊のリサイクル品の多くは再生砕石ですが、建築物等の長寿命化や土木工事の減少等により、その使用量は減少傾向にあり、再資源化施設では再生砕石の在庫を大量に抱えている状況にあります。
 そこで提案ですが、現在、東北地方では復興、復旧作業でのインフラ整備における再生砕石の需要が高まっていると聞いており、都内の建設廃棄物のリサイクルによる再生砕石を東北地方へ提供してはいかがでしょうか。
 東日本大震災により発生した災害廃棄物の受け入れ処理が十一月三日から始まっています。放射性物質の濃度を確認し、アスベスト等の有害物質や危険物を除去し、安全性の確認された災害廃棄物が鉄道コンテナによって搬送されてきています。この鉄道コンテナが被災地へ戻る際に、再生砕石を搬送する方法が有効と考えます。
 このような東北地方の復興支援のための建設廃棄物のリサイクルによる再生砕石の提供について所見を伺います。
 次に、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京招致について伺います。
 私たち都議会民主党は、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京招致に関し、国を挙げての招致取り組みを進めるため、これまでも国に対し積極的に働きかけを行ってまいりましたが、昨日の衆議院本会議と本日の参議院本会議にて、見事招致決議が可決されました。
 オリンピックは、競技開催都市こそ一都市に限られていますが、知事もいわれているように、一都市のイベントというより、国のイベントともいえます。
 今回の招致意義は、日本の復興をテーマとしたオリンピック開催です。早速二〇二〇年、夏季五輪の東京招致委員会は、十一月二十八日に開いた理事会で競技会場計画を検討し、復興五輪として東日本大震災で被災した地域で一部競技を実施することを検討していると聞いています。来年二月に国際オリンピック委員会、IOCに提出する申請ファイルに盛り込む予定とのことです。
 そのような中、国内の招致活動においては、被災地復興の後押しとなることを前面に出していかなければなりません。国内世論を盛り上げるよう、招致のかけ声、スローガンを工夫し、東日本招致といったかけ声を検討していくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、国際的な招致活動について伺います。
 二〇二〇年五輪招致をかち取るためには、オールジャパンで取り組まなければならないことはいうまでもありません。その招致活動の一つとして、まず在外日本公館の大使にも積極的な協力をお願いしていく必要があります。
 外務省やJOCは、各国の日本大使館向けに招致活動の基本ルールを説明する機会を設け、説明会等を行うようですが、基本ルールの説明を聞いて理解しただけでは、具体的にどう動けばいいのかを理解することは難しいといえます。これまでの経験やノウハウを熟知しているJOC等の関係者から、積極的に各大使が実践していけるよう促す具体的で丁寧な説明をする機会を設けることが重要です。
 また、外務省だけではなく、経済界などあらゆるルートを使って臨むことが必要と考えますが、所見を伺います。
 次に、新しい公共について伺います。
 新しい公共という考え方は、私たちが国家戦略の柱として、地域主権改革とともに、これからのあるべき社会像として掲げたものです。
 日本では、古くから連、結、講、座、あるいは若者組などの住民組織や市井の寺子屋、隠居という名のボランティア的な活動などが活力ある市民社会を担っていました。新しい公共の考え方は、以前あったこのような社会を現在にふさわしい形で再構築することを目指すものです。
 東日本大震災の被災地では、数々のボランティア活動が行われています。強制ではなくみずからの意思で支援活動をされていた多くの方々の姿は感動的であり、改めて人々のつながりと助け合いの大切さを感じさせられました。
 石原都知事は、都の防災対応指針において、自助、共助の徹底について述べられています。行政依存ではなく、一人一人自立した個が、地域、社会を主体的に働きかけていく協働は、災害時には不可欠なものです。
 そこで伺います。東京都においては、このような新しい公共型社会の実現を目指し、支え合いと活気のある社会を構築していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、新しい公共に対する支援事業について伺います。
 都においては、国の交付金を受け、新しい公共の担い手となるNPO等の自立的活動を後押しし、新しい公共の拡大と定着を図ることを目的とした支援事業を二年度にわたり実施することとしています。新しい公共の場づくりのためのモデル事業の第一次募集では、既に支援対象事業が決定し、選ばれた各団体は交付金をもとに活動を開始しています。
 行政と市民の間に立って、行政や企業ではできない現場に即した細やかなサービスで地域に貢献するNPO等は、決して行政の下請ではなく、住民に公益的サービスを提供する官と同等のサービスの担い手です。
 したがって、今後、公益的サービスにおける住民の選択肢を広げ、住みやすい豊かな地域社会にしていくためにも、NPO等を継続して育てていく必要があります。この二年の事業が終わった後も、新しい公共に向けた取り組みを積極的に行っている団体に対し、東京都は独自の自立支援策を講じていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、新しい公共に関連し、NPO法改正について伺います。
 NPO法の改正により、NPO法人認定事務が移管され、都道府県と政令市が所管庁となりました。これは、NPO法人の身近な地域でその実態に通じており、事後のチェックで監督ができる自治体が認定機関となることで、NPO団体が認定をとりやすくなるということを目的としており、都は来年度予算に認定等にかかわる事務費を要求しています。
 認定の実態調査を行う手間をなるべく省き、情報公開や毎年提出される書類の事後チェックを重視することで、認定がとりやすい環境をつくることが求められます。NPO活動が盛んなアメリカでは、NPOの税制優遇認定等は書類チェックだけで、事後チェックに重きを置いているようです。
 その認定処理期間においては、現在、国税庁は六カ月と定めています。これは、認定NPO法人制度がスタートして数年、認定にかかる期間が平均八カ月、長いもので二年にも及び、市民から批判が高まったことで定められたものです。しかし、実際には三カ月から四カ月で審査が終わっています。なお、国の公益法人認定の標準処理期間は四カ月です。
 今回の改正NPO法では、認定にかかわる期間については、自治事務としての定めを置いていません。しかし、施行条例、施行規則で決められなくても、認定にかかわる標準処理期間は、現行の国の定めより短縮した期間を実施要領やマニュアルで定めていくべきと考えますが、所見を伺います。
 改正条例案は、来年の第一回定例会に提出すると聞いています。しかし、二十四年度四月からの施行となるため、条例改正の三月議決から四月一日の施行までの期間が余りにも短いといわざるを得ません。果たしてその期間に徹底した周知、説明会等が行えるのでしょうか。
 多くのNPO等の関係団体は、東京都の対応を見守っている状況ですが、万が一、四月一日からスムーズに手続ができなかった場合、彼らの活動に不利益を及ぼしかねません。迅速的確な対応が求められますが、所見を伺います。
 次に、医療について伺います。
 私たちは、本年だけでも第一回定例会、第三回定例会とがん医療の充実を取り上げ、求めてきました。今後、正念場を迎える少子高齢社会において、介護サービスの提供体制と同時に喫緊の課題となるのは、日本人の三人に一人の死亡原因であるがん医療、そして医療の発展に伴い必要性が高まってきた医療的ケアを受けながらの地域での生活を支える体制の整備です。
 私たちはまた、救急医療や周産期医療の危機的状況への対応についても、改選以来集中的に取り上げてきました。この点については、救急患者受け入れコーディネーターや救急医の処遇改善、こども救命センターの設置、NICUの増床など、多くのことが実現しています。NICUについては、新生児医療を担う医師の不足が深刻であり、新生児医療担当医確保支援事業等により、引き続き安定的な確保に努めなければなりません。
 こうした救急医療の問題、がん医療体制の整備に取り組む中で、常に課題とされてきたのが、急性期医療を受けた後の地域医療、療養環境整備の必要性です。今回は、こうした高度医療、急性期医療と密接な関連性を持つ地域医療の各分野における取り組みの推進を求め、何点かお伺いをいたします。
 まず、NICU病床は、東京都周産期医療体制整備計画において、平成二十六年度までに三百二十床整備することとしており、現在二百七十九床まで整備が進んでいます。ハイリスク出生児の実態に合わせた数を目標に整備が行われていますが、家庭での療育環境がなかなか整わないことなどから、スムーズな在宅移行に向けた早い段階からの支援体制を一層進めていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 在宅における療養を希望するがん患者に対し適切な支援を行うことは、患者やその家族のQOL向上とともに、積極的な治療を断念した後のいわゆるホスピスケアにおいても、悔いの少ない終末期を過ごし、あるいはみとるために非常に重要な課題です。
 がん患者に対する在宅での緩和ケアは、医療、訪問看護、薬局、介護等多数の職種による連携の上に成り立つものであり、各従事者の緩和ケアに対する専門性も必要なサービスです。
 患者や家族の療養上、日常生活上での悩みや不安等の解消を図り、さまざまなニーズに対応したきめ細かな相談を受け、支援を行う機能も求められるところです。在宅での緩和ケアを希望するがん患者の支援について、都の取り組みをお伺いいたします。
 高齢者の地域での療養生活を支える上で重要な役割を果たすのが訪問看護ステーションですが、地域偏在や人材の不足、緊急時の対応等さまざまな課題があります。こうした課題がある中で、大都市東京においては、まず訪問看護ステーションの量を確保していくことが必要だと考えます。
 高齢者の地域での在宅医療を支えるためには、市区町村の取り組みも不可欠ですが、都として必要なときに訪問看護サービスが利用できるよう、サービスの量確保に向けてどのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。
 次に、教育施策について伺います。
 知事は、破壊的教育改革に向け、第一回教育再生・東京円卓会議を十一月十六日に開催いたしました。そこでの議論は、実践的な英語教育や国語教育の徹底、テーラーメード教育の提案など多岐にわたり、それらの具体的な話のほとんどが学校教育という公教育におけるものでした。
 子どもの学力と人格の形成において、公教育である学校教育の役割は大きく、さまざまな施策を講じていくことが重要である一方、私の教育、私教育としての家庭と地域の役割は、より人格形成に大きく影響するものとして欠かすことができません。
 会議の終盤に、原島首都大学学長や中嶋国際教養大学理事長が、東北の子どもたちにおける精神の安定性が幼児教育、家庭教育やコミュニティのつながりによるものであることを述べ、中嶋理事長は都知事に対し、ぜひそこをやってほしいと述べています。
 現在、この私教育の低下が著しい状況です。家庭教育の低下については、父親の権威が戦後低下したことや核家族化が進んだことなどが主な原因とされています。
 日台中韓の東アジア四カ国の大学、研究機関の共同調査、EASSによれば、日台中韓の中で、どのような状況においても父親の権威は尊重されるべきだに賛成の割合が、日本が六割弱なのに対し、韓国や台湾、中国は八割前後で、日本が一番低い結果となっています。よって、都は、父親の権威回復のための社会的バックアップに関する具体的施策を真剣に検討していかなければならないと考えます。
 また、地域の教育力低下については、新しい公共型社会の実現に取り組むなど、コミュニティの再生を図っていかなければなりません。私教育が低下した結果、学校に学力と基本的な生活習慣の部分までが求められており、そのためもあって、現場の教師は疲弊し、多忙化やストレスによるうつ病、休職、退職、最悪は自殺につながっています。
 こうしたことを踏まえ、この円卓会議においては、家庭の教育力を高める施策や地域の教育力を発揮できる社会づくりについての議論をさらに深め、都民に発信していくべきと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
 このたび、新たな都立高校改革推進計画案の骨子が発表され、来年二月に第一次実施計画が策定される予定です。これまでの都立高校改革推進計画では、学区制廃止、進学重点校やチャレンジスクールなどの特色ある高校をつくることが重視されていましたが、今回は自立した人間の育成に焦点が当てられています。
 この具体的な取り組みの一つとして、地域や家庭と連携した実践型の防災教育が挙げられています。東日本大震災が起き、都民の防災への意識が高まっているという点で、家庭や地域、関係機関等の協力も得られやすく、連携強化を図っていくよい機会になるはずです。そして、この取り組みを通して、生徒たちの自立心やリーダーシップの育成だけではなく、家庭や地域における子どもたちへの教育的関心が高まっていくことも期待できます。
 今後、都立高校生が防災訓練などを通して、家庭や地域、関係機関等との連携のもと、生徒一人一人の社会貢献意識をはぐくみ、自立につなげる積極的な取り組みを求めますが、都教育委員会の所見を伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 総務省が十一月二十九日発表した労働力調査では、十月の完全失業率は全国で四・五%と、前月に比べ〇・四ポイントと大幅に悪化しました。円高や景気の先行き不透明感から、企業が採用に慎重になっていることも背景にあると指摘されていますが、同様に、十一月十八日発表による来春卒業予定の大学生の就職内定率でも、十月一日時点で五九・九%と過去最悪だった前年同期の五七・六%を辛うじて上回ったものの、統計をとって以来二番目の低さとなっています。
 経済危機に苦しむヨーロッパ諸国において、若者の失業率が軒並み高いことを踏まえれば、この状況を打開することが東京にとっても極めて重要であると認識しています。
 東京都は、今年度より、就職先が決まらない未就職卒業者を対象として、紹介予定派遣制度を活用して都内中小企業での就労体験を行い、正規雇用化を支援する未就職卒業者緊急就職サポート事業を始めているところですが、私は現下の厳しい雇用情勢を踏まえれば、こうした事業も含め若年者の就業対策に積極的に取り組むべきと考えます。
 若年者の就業対策に向けた東京都の見解を伺います。
 次に、障害者雇用について伺います。
 東京都は、本年九月に障害者雇用・就労推進連携プログラム二〇一一を策定し、東京都、経済団体等八団体が一丸となって取り組む全六十一事業を示しました。厳しい雇用情勢と平成二十二年の法改正の影響もある中、東京の民間企業における障害者の雇用率は一・六一%と、前年を〇・〇二ポイント下回りました。
 昨年まで連続して改善してきた民間企業における雇用率改善の流れを定着させ、また東京において一・八%の法定雇用率を達成していくためには、もう一段の取り組みが求められているところです。
 そこで、都の民間企業の雇用率改善に向けた取り組みについてお伺いをいたします。
 東京都知事部局は、地方公共団体の障害者法定雇用率二・一%を達成し、既に二・五九%となっています。しかし、東京都教育委員会は一・五八%と、都道府県教育委員会の法定雇用率二・〇%のみならず、全国平均の一・七五%をも下回っています。障害者の雇用数が前年より減少したのは都教育委員会のみで、不足数は百八十人、四年連続して雇用率、雇用数ともに低下をしています。
 例えば大阪府では、一年六カ月まで更新可能なチャレンジ雇用等により二・〇%、千葉県でも教員以外の指導員、実習助手、一般事務職員の正職員、上限三年のチャレンジ雇用など、さまざまな方策を用いています。
 都教育委員会は、法定雇用率未達成事業者として、平成十五年に策定した採用計画に対しても、三回にわたり適正実施勧告を受けています。
 都教育委員会は、永福学園等で知的障害が軽い生徒の就労を積極的に推進するなど、知的障害特別支援学校高等部卒業生の就職率は全国平均二七・六%を大きく上回り、三八・九%と大変な実績を上げています。こうした実績があるのですから、知的、精神も含めた障害者雇用をもっと進めていただきたいと思っております。
 今後、さまざまな方策を通じ、早急に法定雇用率を達成していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、現在、東京都のチャレンジ雇用は臨時的任用、いわゆるアルバイトの扱いであり、六カ月が上限となっています。しかし、法定雇用率を達成している大規模委員会の一つである大阪府では、チャレンジ雇用について知的、精神障害者を対象に、知事部局で非常勤職員として一括採用し、教育委員会を配属先の一つとしているとのことです。
 また、先ほども申し上げました千葉県では、教育委員会において一年契約で更新もある嘱託職員として図書館等に採用、知事部局では独自の制度として、チャレンジドオフィスで三年を上限とする非常勤職員として採用しているとのことです。
 東京都においても、一般就労に向けた経験をしっかり積めるよう、非常勤職員として位置づけるなど、一年以上のチャレンジ雇用を行うべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 私たちは、豊洲の安全性の確認と関係者の合意なくして、この問題の解決はないと前回の代表質問でも申し上げてまいりました。
 都は、水産仲卸業者など市場業者に対して個別面談を実施していますが、いまだすべての水産仲卸業者の意向を把握できておらず、築地に残りたい、豊洲へ行くのは不安だなどとする声もあり、関係者の合意が図られているとは思えません。
 一方で、去る十一月一日、地元中央区は、石原知事あてに市場移転後の築地地区のまちづくりに関する要望を提出しています。その基本認識として、市場の跡地の一部に食文化継承の核となる施設イコールイメージとして、食のプロに評価、利用され、一般客、観光客にも親しまれる施設を整備し、場外市場地区とともに築地の食文化の拠点としての機能や活気とにぎわいを確実に将来に引き継いでいくとしています。
 この地元自治体の要望に関する、十一月二十二日の中央区議会における矢田区長の答弁によれば、都も今年度内に当該要望に対して一定の回答をするとしており、中央区としても早期に都と合意を交わしたいとしているところです。
 そこで、中央区からの要望及びその回答、区との合意について、都はどのように認識をしているのかお伺いいたします。
 築地市場の移転問題に関連し、今定例会には、環状第二号線、隅田川橋梁等の契約案件が提案をされています。
 当該契約案件は、平成二十二年の第一回定例会以来となりますが、当時の代表質問でも、現在地再整備の再検討をする上で選択肢を狭めるのではないかと述べてきました。私たちがこの案件に強い関心があることは、都も承知していたはずです。
 また、隅田川橋梁の工事に先立ち、十一月十六日に築地市場内の桟橋を撤去する工事が始まりましたが、一部の人たちによる座り込みなど抗議行動も見られたように、関係者の理解と合意がいまだ十分とはいえないのではないでしょうか。
 加えて、本工事は築地市場内の事業者の営業に影響を与えるほか、仮設取りつけ道路の整備費用などは、市場事業者の負担にはね返ることにもなるのではないでしょうか。いまだ豊洲の安全性の確認と関係者の合意のない中、なぜ今議会において環状二号線の契約案件を提案しなければならなかったのか、お伺いいたします。
 次に、産業振興について伺います。
 まず、ものづくり産業の振興についてお伺いをいたします。
 関税の引き下げや非関税障壁の撤廃など、貿易の自由化が今後ますます進展していく中にあって、日本が国際社会の中で生き残っていくためには、日本の基幹産業であるものづくり産業の振興を図っていくことが極めて重要です。
 しかし、一方で、アジア新興国の成長や急激な円高などによって、日本のものづくり産業は工場の海外移転など空洞化の危機に直面しており、都としても、早急に空洞化対策を講じていく必要があります。
 現在、都は創造的都市型産業の集積の創出に向けて、地域ごとの産業の特性に応じたきめの細かい支援策を講じているところですが、空洞化対策という視点からも、地域の産業基盤のより一層の強化に向け、工場の集積を高めるような新たな施策の創設に積極的に取り組んでいく必要があると考えます。
 ものづくり産業を振興するため、空洞化対策にどのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。
 都内では、製造業を初めとするさまざまな業種の中小企業で、事業承継の問題を抱えており、これを放置すると、会社の運営を円滑に次世代に引き継いだり、事業を再構築していく努力が滞るような事態が懸念されます。
 都はこのような認識から、事業承継・再生支援事業を実施し、産業振興指針二〇一一の中でも、専門家による税務対策、後継者の育成、発掘、M&Aなど多様な手法を活用した支援を充実するとの方向性を示しています。
 しかし、ある経済団体のM&Aサポートシステムでは、M&Aの検討対象は相談に来た会社の一〇%にしかすぎず、M&Aの成約に至るのはさらにその半分でしかないそうです。多くの企業が対象にならないのは、そもそもの企業価値といったものがマイナスなので、M&Aの前に再生が必要であり、中小企業の事業承継対策は事実上、中小企業の事業再生であるということでした。
 事業継続のために融資制度等の充実が図られておりますが、融資を受けても、その返済のめどが立たなければただの延命でしかありません。事業の再生、時には不採算部門の整理縮小など、事業を継続させるための手法、ノウハウをあわせて提供していくことが真に必要な支援策ではないでしょうか。
 そこで、都として今後、都内中小企業の事業承継・再生支援事業についてどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いいたします。
 日本のものづくり産業がより高付加価値の製品をつくり、それを展示、販売していく上で、展示会産業の振興は欠かすことができません。
 私たちは、前回の代表質問においても、東京ビッグサイトの機能拡張について質問してきました。繰り返すまでもなく、見本市の会場は、国際的に見ても大規模化が進んでおり、ビッグサイトの八万平米という面積は世界で六十番台という水準で、経済大国日本としては極めて不十分な状況にあります。
 経済面での成長が著しいアジアでも見本市会場の整備は進んでおり、中国の上海に大規模な展示場がオープンして、高い集客力を示しています。こうした中で、日本の首都東京においても、将来に向けた産業振興の拠点として、より規模の大きな見本市会場が必要であると考えます。
 また、二〇一六年のオリンピック招致の計画の中で、ビッグサイトはメディアセンターとして使うために拡張するとされていました。今回の招致に当たっても、同様の拡張の計画が持ち上がることが見込まれます。
 私は、ビッグサイトの拡張に向けて積極的に調査検討をしていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、農業の振興について伺います。
 日本の農業は、自民党政権下による減反政策や補助金漬けの依存体質が抜け切らず、農業者の高齢化や後継者不足などの課題にも有効な政策を打ち出すことができないまま、極めて深刻な状況に陥っています。TPPなど、関税の撤廃の有無にかかわらず、農業政策の抜本的な改革が求められていると思います。
 このような中、民主党政権は、昨年三月に食料・農業・農村基本計画を策定し、戸別所得補償制度の導入や消費者ニーズにかなった生産体制への転換、六次産業化といった新政策を国家の戦略として位置づけ、農業の再生を図ろうとしています。
 東京の農業についても、平成十二年からの十年間で、農業者の年齢が六十三・八歳と四・六歳上昇し、高齢化が進むとともに、農地についても十年間で一四・七%、千三百三十ヘクタールが失われ、減少傾向がとまらない状況となっています。
 一方で、近年、援農ボランティアや農家の出身でない人が農地を借りて農業を始める事例も見受けられ、また、新技術の導入など、さまざまな形で意欲的に取り組む農業者がふえているのも現状です。
 このような中、首都圏三千三百万人の消費地と直結した東京の農業を振興していくためには、消費者ニーズを素早く生かした経営展開や多様な人材の活用など、東京ならではの農業政策を展開していくことが求められますが、知事の農業に関する基本的認識をお伺いいたします。
 十一月七日、東京都農林・漁業振興対策審議会は、知事の諮問に応じて、都民生活に密着した産業・東京農業の新たな展開についてを答申しました。
 先日、都議会民主党の産業部会でも、これら答申についてのヒアリングを行ってきましたが、その中で、特に耕作放棄地の解消に向けた取り組みを求める声が上がりました。
 答申では、耕作放棄地などについて、規模拡大を目指す農業者や新規参入者とのマッチングの促進や耕作放棄地の再生支援、農作業受委託制度の充実などが提言されていましたが、都として今後、耕作放棄地に対してどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いいたします。
 また、都内農産物の地産地消を推進していくためには、学校給食での利用拡大はもとより、直売所や量販店、生協など、販売チャンネルの多様化を進めていく必要があります。加えて、多摩地域から都心部、あるいは島しょ地域から区部、多摩地域といった流通の活発化を図っていくことも重要です。
 そのためには、流通のネットワークづくりを進めるなど、地産地消の推進に向けて積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、森林再生について伺います。
 木材価格の長期低迷と高コスト構造によって、林業もまた、農業と同様、高齢化と後継者不足が進んでいましたが、花粉症への対応や地球温暖化問題を背景に、森林再生に向けた取り組みが、わずかずつではありますが、進展しつつあります。
 現在、東京都は森林循環再生プロジェクトとして、林道など生産基盤の整備や地域に適合した高性能林業機械の導入、集約的施業のモデル地区の設定、森林境界の明確化などに取り組んでおり、あわせて、基盤整備の基幹となる林道の重点的な整備や森林所有者等が行う作業路の整備の支援などによって、全国平均よりも密度が低い多摩地域の林道等の路網の整備などに取り組んでいるところです。
 私は、こうした取り組みをさらに加速し、林業の自立と東京の森林づくりを積極的に推進していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、多摩産材の利用拡大に向けては、今年度までの提案公募型の多摩産材利用拡大事業を踏まえ、来年度以降、公共施設の木材、木質化の支援など、公共利用のさらなる促進を初め、流通加工施設の整備に対する支援やJAS、日本農林規格の認定を取得しようとする製材業者等への支援など、供給体制の整備など、施策のさらなる充実が求められています。
 そこで、多摩産材の利用拡大に向けて、今後、東京都としてどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、離島の港湾、漁港の整備について伺います。
 離島にとって、港湾、漁港は欠くことのできない生活基盤であり、その整備にはこれまでも多くの時間と費用が費やされています。
 しかし、離島の港湾、漁港の整備は緊急性が高いといわれる一方で、厳しい自然条件の中、事業期間が長くなり、事業効果が発揮されるまで長時間を要する事態も生じてしまいます。
 現在、大島支庁管内ではジェットフォイル船が就航し、船舶が小型化することなどにより、これまで漁港として利用されていた港に旅客船が接岸することになり、乗客への対策が十分に確保されないまま使用されている状況が続いています。こうした漁港については、地元の皆さんからのご意見を伺いながら、集中的かつ効率的な整備を行う必要があります。
 季節風の時期など、港内の静穏度の確保や岸壁への越波を防止し、ジェットフォイル船の安定的な就航の確保や乗降客の利便性を高める港湾や漁港の整備を進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、自転車対策について伺います。
 自転車は、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の方々が利用する身近で手軽な乗り物であり、環境に対する影響も少なく、健康増進にも寄与することに加え、三月に発生いたしました東日本大震災を契機に、通勤手段としても関心が高まっており、利用者が増加していると聞いています。
 その反面、交通ルールやマナーを守らない自転車の利用者が社会問題となっているのも事実です。
 また、都内の交通事故に占める自転車関与率が、全国平均が約二割であるのに対して約四割に上るなど、都内の自転車利用者等に対する交通事故防止対策が喫緊の課題であると認識しています。
 警視庁には、小さな子どもからお年寄りに対して、さまざまな機会を通じて交通安全教育を実施していただいておりますが、都民からは正しい自転車の交通ルールはわかりにくい、人通りが多い場所でスピードを出して走る自転車を何とかしてほしいとの声が上がるなど、まだまだ自転車を利用する方々にルールやマナーが徹底されていない状況が見受けられます。
 自転車の利用者に対して、最も基本的でわかりやすい自転車の交通ルールが、平成十九年に交通対策本部で決定されたいわゆる自転車安全利用五則だと思います。この自転車安全利用五則が自転車を利用する方々に徹底されれば、都内における自転車が関与する交通事故は大きく減少するばかりでなく、自転車を利用する方と歩行者とのトラブルも減少し、安全かつ快適な交通社会を実現できると考えています。
 そこで、警視庁では、都民に対してこの自転車安全利用五則をどのように周知徹底を図っているのかお伺いいたします。
 また近くでの買い物への利用や児童、高齢者の自転車利用がある一方で、ブレーキがない自転車で公道を走ったり、信号を無視するなど、悪質で危険な自転車利用者も後を絶ちません。
 このような悪質で危険な自転車利用者に対してどのような対策を講じているのか、お伺いいたします。
 さて、自転車には、自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律に基づき、都道府県ごとに指定された団体が、主に自転車の盗難防止を目的として、自転車の利用者に対して行う防犯登録というシステムがあります。この登録を行うと、登録者にはシールが交付され、それをフレーム本体の目立つ場所に張ることになっています。
 このシステムにおいて、シールの表示を明確にし、歩行者にも見えやすくするなどの改善をすることによって、悪質な自転車利用者の通報に役立て、危険走行の抑止につながるものと考えますが、将来的にぜひご検討いただきたいと思います。
 以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。
 なお、答弁によっては再質問を留保いたします。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 酒井大史議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、支え合いと活気のある社会の構築についてでありますが、かつて福沢諭吉は、独立の心なき者は国を思うこと深切ならず──深切は深く切るという言葉です。そして、続いて、立国は私なり、公にあらずと述べておりますが、まさに至言であると思います。
 私という個人の強い意思があってこそ、国家を動かす原動力たると説いたわけでありまして、都はこれまでも、公共的な課題を都民一人一人が大事な私ごととして解決にかかわる仕組みを構築してきたつもりであります。
 例えば、緑の東京募金には八億円もの拠金が集まりましたし、地域で犯罪から子どもを守るため、四千ものボランティア団体が形成されましたし、事業者などの広範囲な協力によって、例のディーゼル車の規制も実現できました。
 今回の東日本大震災では、災害への対応策一つをとっても、ひとり行政だけで対応することの限界と、自助、共助の取り組みの重要性を浮き彫りにしたと思います。
 今後も、都政の展開に当たっては、行政がその責任を果たすことは当然として、都民、企業、NPO法人など、東京に集積する多様な主体と肩を組んで、帰宅困難者対策など、防災、防犯、省エネ、環境問題などに取り組んでいかなければならないと思っております。
 日本が直面する課題が最も先鋭的にあらわれております現場を持つ東京から、日本を、人々が協力し合い、ともに支えんとする心意気を備えた国として再生させ、次代に継承していきたいものだと思っております。
 次いで、家庭や地域の教育力の向上についてでありますが、かつて申しましたけれども、社会運動家として有名な賀川豊彦が、子どもには大人からしかられる権利があるという、非常にパラドキシカルなことをいっておりますけれども、そのとおりだと思います。大人は子どもをしかる、たとえそれが他人の子どもでも、気がついたときにはそれをしかったり、鍛える責任があると思います。
 本来、現実に対する厳しい身構えを子どもに教えるのは、学校の教師ではなく家庭の親であり、地域の大人たちであるべきだと思います。昔は、私たち子どものころ遊んでいると、まちにうるさいおじいさんがいまして、そこで遊んじゃいかぬとか、落書きするなとか、木に登ったら危ないとかしかられたものですけれども、そういう傾向が非常に少なくなってきたような気がいたします。
 これまで都は、次代を担う子どもをはぐくむために、心の東京革命として、乳幼児期から親にしつけを促す取り組みや地域でのあいさつ運動を展開するなど、家庭、学校、地域の社会全体で子どもを守り育てる運動に取り組んできました。
 しかし、現実を直視しますと、当節、子どもの親となった大人自身が実は戦後の教育のゆがみの中で育てられた世代でありまして、親にもこらえ性がなく、学校に理不尽な要求を繰り返す。例えば、子どもが風邪で寝ておりましたら、親が学校に電話をかけて、給食費を払っているんだから、給食を持ってこいというばかなことをいう親がざらにいるというのは、まさに本当にこっけいを通り越して恐ろしい状況でありますが、こういったモンスターペアレントの存在や、子どもの非行を見て見ぬふりする大人たちを見るにつけても、家庭や地域における教育力の低下は甚だしいものだと思います。
 このまま手をこまぬいておりますと、日本の将来を担う若者を育成するという我々大人の責任を果たすことができないのではないか。今後の教育再生・東京円卓会議では、こうした危機感を共有しながら、親としての教育力を回復し、時代を超えた共有すべき基本的価値を、家庭や地域でいかに継承すべきかを議論として深めていきたいと思っております。
 次いで、東京の農業に対する基本認識についてでありますが、東京では、それぞれの農地は規模は小さいものでありますけれども、コマツナの発祥地であったり、あるいはブドウの「高尾」であるとか、稲城のナシ、立川のウドを初め、全国に誇り得る農産物を生産するなど、農業者は日々努力を重ねております。
 また、消費地に近いという強みもありまして、多くの都民は新鮮な農産物の供給だけではなくて、市民農園などの身近な場所で農作物の体験を希望するなど、農業への関心も高まってきていると思います。
 国は、新たな農業政策を模索しているようでありますが、都市の農業に関してはまだ確たる指針も示されておりません。
 都は、意欲のある農業者や都民の期待にこたえながら、大消費地に立地した有利性を生かして、東京の農業振興に努めていきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監、教育長、東京都技監からお答えいたします。
   〔警視総監樋口建史君登壇〕

〇警視総監(樋口建史君) 二点、ご質問にお答えをしたいと思います。
 まず、自転車安全利用五則の普及浸透につきましては、これまでも警視庁ではホームページにも掲載をいたしておりますし、チラシ、リーフレットのたぐいも相当数作成をいたしまして、事あるごとに、講習会、イベント、あらゆる機会に配布をいたしております。小学校、中学校でも安全教育の中で教えておるところであります。
 また、交通安全運動が年に何回も実施されますけれども、こういった機会をとらえて、報道を通じても広報に努めておるところでございます。
 にもかかわらず、必ずしもルールやマナーが守られていない、そういった現状がございます。そういった現状にかんがみますと、この安全利用五則が多くの自転車利用者に浸透しているとはいいがたいわけで、そういう状況であります。
 この利用五則は、中身は、ご存じかと思いますけれども、単純明快で、極めて常識的な内容でありまして、必ずしも教わらなくても、常識に照らして考えれば、どう行動すべきかわかる内容を改めて整理したものであります。
 これが、にもかかわらず社会に浸透していない、通行の現場で守られていないということは、自転車にも守るべきルールとマナーがあるんだと、自転車を利用する限りはだれであろうときちんと守らなきゃいけないんだという基本的な認識が、社会全体に高いとはいいがたかった、そういうことであろう、そこに根本的な問題があると思います。
 警視庁も、この点においてこそ大いに反省をしなければならないと考えておるところであります。
 そこで、対策なんですけれども、こういう議論が随分巻き起こりましたのも、十月二十五日に警察庁がいわゆる自転車総合対策を発表いたしまして、それ以降、随分メディアの関心も、世間の関心も高まりました。いろんな議論がございます。広がっております。
 ずっと見ていますと、自転車の安全な乗り方について、警察は、大人に対するものも含めて実践を交えてもっと教えるべきだし、指導すべきだという世論が醸成されてきているように思います。
 これが大事だと思うんでありますが、こういった機運をより確かなものにするためには、警察でしかできないことでありますけれども、自転車にまつわる悲惨な事故の実態でありますとか、いっぱいあるわけでありますが、細々したトラブルの実情、実態を広く知っていただくべく、情報の発信も積極的に行ってまいりたいと考えております。
 また、通行の現場で実際にルールやマナーを遵守していただくためには、現場における制服警察官による指導警告、あるいは取り締まりが重要でありまして、この点もこれまで以上に強化していきたいと考えております。
 要するに、安全教育と指導取り締まりが両輪であるということでありますが、安全教育の対象につきましては、ここはこれまで不足がございまして、これまで必ずしも対象としてとらえてきていなかった高校生、大学生でありますとか、働き盛りの世代、そして主婦の方々にもこれからアプローチをしていきたいと考えておるところであります。
 次に、悪質で危険な自転車利用者への対策ということでありますけれども、一般的にルール、マナー違反に対しましては、現場で指導警告を実施しているところでありまして、必要に応じまして指導カード、警告カードを交付しておるところでもあります。
 中でも、ご質問にありましたような悪質、危険な違反者に対しましては厳しく取り締まり、交通切符というんですけれども、交通切符を切ることといたしております。
 交通切符を切った、それも複数回に及ぶ、そういった反省のない悪質な違反者につきましては、実質的な処罰にもつながるように関係機関とも協議をしておりまして、努めていきたいと考えております。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、高校生の社会貢献意識をはぐくむ取り組みについてでございます。
 高校生が災害発生時に、みずからの安全確保はもとより、友人や家族、地域の人々の安全にも貢献し、社会に役立とうとする態度を身につけることは重要でございます。
 都教育委員会はこれまで、すべての都立高校に「奉仕」の授業を導入し、例えば水道局と連携した災害時における給水訓練の実施、消防署での防災に関する知識、技能の学習や地域のイベントにおける初期消火訓練への参加等を行ってまいりました。
 今後は、東日本大震災の経験を踏まえまして、生徒が社会の中での自己の役割を認識し、災害時の支援活動に主体的にかかわれるよう、学校だけでなく、家庭、地域の防災関係機関、企業等の幅広い教育力を活用した防災教育を推進し、高校生の社会貢献意識をはぐくみ、自立につなげてまいります。
 次に、障害者の法定雇用率達成についてでございます。
 都教育委員会は、教員以外では四・六%と法定雇用率を上回る配置を行っております。
 一方、教員採用選考においても、受験時間の延長や手話通訳の配置など、障害者が受験しやすい環境を整備してまいりましたが、平成二十一年度に全国で教員免許状を取得した約十万三千人のうち、障害者は八十八人と大変少ないことから、免許職種である教員での法定雇用率達成には限界があるのも事実でございます。
 しかしながら、障害者の自立と社会参加を進めるための雇用の充実は重要な課題でありまして、今後は、引き続きチャレンジ雇用や特別支援学校生徒の現場実習受け入れ等を実施いたしますとともに、関係局、関係機関と連携し、さらなる制度面での検討や他県の先進事例を研究するなどいたしまして、法定雇用率達成に向けて努力してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 環状二号線の契約案件についてでございますが、環状二号線は、江東区有明を起点とし、中央区、港区などを経て千代田区神田佐久間町を終点とする全長約十四キロメートルの骨格幹線道路でございます。
 本路線のうち、豊洲から汐留までの区間の整備は、臨海部と都心部の連絡を強化し、交通の円滑化や防災性の向上を図る上で極めて重要であります。とりわけ、水域に囲まれている臨海副都心の有明北地区や晴海、勝どき地区などから都心方向へ抜ける主要な道路は、現在、晴海通りのみであり、早急な避難経路の多重化が求められております。
 また、これらの地区では、環状二号線の平成二十七年度開通を見込んだ住宅とオフィスなどの複合大規模開発など、新たなまちづくりが急速に進んでおり、この十年で地区人口が倍増しております。
 さらに、唯一、都心方向へ向かう晴海通りの自動車交通量は、双方向で一日約四万台を超えており、今後、臨海部全体の開発に伴い発生、集中する交通需要に対応するためにも、六万台の交通量を受け持つ環状第二号線の整備が急務であります。
 このため、道路ネットワークの形成に資する環状第二号線の整備を一日たりともおくらせることはできず、計画どおりの整備を進めるには、本契約案件の年内工事着手が必要不可欠でございます。
 また、地元中央区においても、本年十一月の議会で、本路線の平成二十七年度中の供用開始に向け、早期整備が必要であると区長が述べており、このことについては、共通認識を持っております。
 以上のことを踏まえ、今後とも地元の理解と協力を得ながら、環状第二号線の平成二十七年度開通を目指し、全力で整備を進めてまいります。
   〔主税局長新田洋平君登壇〕

〇主税局長(新田洋平君) 平成二十三年度及び平成二十四年度の都税収入の見通しについてでございますが、我が国の景気は、東日本大震災により、生産と輸出を中心に大きく落ち込んだことで厳しい情勢となっており、企業収益は減少しております。その後、サプライチェーンの復旧等に伴い生産は持ち直してはいるものの、海外経済の減速や歴史的な円高の影響等によっては、景気が下振れするリスクがございます。
 本年度の都税収入につきましては、十一月末に申告された法人二税の中間申告等の状況を見きわめる必要があり、現時点で確たることを申し上げることはできませんが、当初予算の確保については厳しい状況にあると認識しております。
 また、来年度の都税収入につきましては、復興需要の本格化による景気回復の予測もございますが、企業収益の伸びに多くは期待できず、引き続き厳しい状況になるものと考えております。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 二十四年度予算の編成についてでありますが、まずは、直面する難局に対し、都民の安全・安心を取り戻し、活力を高める確かな手だてを講ずること、また、将来を見据え、成熟した都市の実現に向け、これまで進めてきた施策を着実に推進すること、そして、防災力の強化など、大震災によって明らかになった課題にも果敢に取り組むことを柱といたしまして、予算編成を進めております。
 ただいま答弁がありましたように、都税収入は大幅な好転が期待できず、引き続き厳しい財政環境が続くと見込まれる中での編成でありますけれども、こうした施策をこの先しっかりと進めていくためにも、財政の対応力に、より一層配慮することが重要となっております。
 このため、一つ一つの施策の効率性や実効性を高める取り組みをさらに徹底することはもとよりでございますが、基金や都債を計画的に活用することで財政の健全性を堅持しながら、山積する都政の諸課題に着実に対処する予算とするべく、引き続き編成作業を進めてまいりたいと思います。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、被害想定についてでありますが、東日本大震災の経験を踏まえ、平成十八年に策定いたしました被害想定を再検証する必要があることから、都は、本年九月に、東京都防災会議に専門的知見を有する委員から成る地震部会を設置し、見直しに着手いたしました。
 見直しに当たりましては、今回の震災の被害実態等を踏まえるほか、お話のフィリピン海プレートの深さに関する見解など、最新の科学的知見に基づき検討を行うこととしております。
 今後、国の研究成果なども取り入れながら、東京を襲う地震像や被害を明らかにし、防災対策を推進してまいります。
 次いで、立川断層帯地震についてでございますが、立川断層帯地震は、国の評価では三十年以内の発生確率は〇・五から二%、平均活動間隔は一万年から一万五千年とされており、首都直下地震と比較いたしますと、その発生頻度はまれであると考えられます。
 しかしながら、同地震については、国において、今回の東日本大震災による地殻変動により発生確率が高くなっている可能性があると発表され、また、発生すると局所的ではあるが東京に大きな被害を与えるおそれがあるとされております。
 このため、都は国に対し、立川断層帯に関する詳細な調査を要望するとともに、現在、東京都防災会議の地震部会において、同地震を想定地震に加え、平成十八年に策定した被害想定の見直しを検討しております。
 今後、この検討結果を都民に客観的に示し、自助の取り組みを促進するなど防災対策の充実に生かしてまいります。
 次いで、国の被害想定を踏まえた対策についてでありますが、今回の震災は、震源から遠く離れた都内においても、液状化などの直接的な被害はもとより、計画停電の実施による都民生活の混乱など大きな影響を及ぼしました。こうした教訓を踏まえ、防災対策を再構築する必要がございます。
 現在、国において、南海トラフの巨大地震である東海、東南海、南海連動地震に関する分析が行われておりますが、都は、首都直下地震だけでなく、遠隔地の地震への対策も早期に講じるため、東京都防災対応指針を策定し、液状化や長周期地震動対策、島しょの津波対策、物流、備蓄対策など、遠隔地の地震への対応を示したところであります。
 今後、国の検討結果とも整合を図りつつ、地域防災計画の修正に反映してまいります。
 次いで、自助、共助を高める取り組みについてでありますが、今回の震災では、住民等による自助、共助の取り組みが発災時に有効に機能することが改めて明らかになりました。
 一方、都政モニターアンケート結果を見ると、都民の自助の取り組みについては、いまだ課題が残されております。
 こうしたことから、都は、防災教育の推進や家具類の転倒防止など自助を促進する対策、さらに町会、自治会、事業者など多様な主体の連帯による防災隣組の構築や、社会全体で取り組む帰宅困難者対策など、共助を再構築する対策を東京都防災対応指針において示したところでございます。
 今後、都民の自助、共助の取り組みの一層の強化に向け、区市町村と連携し、これらの対策を着実に推進してまいります。
 次いで、大規模水害対策についてでありますが、区部東部地域の低地帯における大規模な水害を防止するために、都はこれまでも水門や防潮堤の整備など対策を着実に講じてまいりました。
 しかし、従来の想定を超える被害をもたらした東日本大震災を踏まえ、地震、津波、高潮対策を検証する必要が生じております。
 このため、都は、被害想定の再検証を行うとともに、学識経験者等による地震・津波に伴う水害対策技術検証委員会において、堤防の耐震性や機械設備等の耐水性の検証と必要な対策について検討を進めているところでございます。
 加えて、今後、浸水被害を最小限に抑止するための的確な情報提供や迅速な避難誘導体制の整備など、大規模水害対策に取り組んでまいります。
 最後に、チャレンジ雇用についてでありますが、障害者が地域で自立した生活を実現する上で、就労の問題は非常に重要であると認識しております。
 都では、平成二十年度から、知的障害者、精神障害者に対して就労経験を積む機会を提供するためチャレンジ雇用を実施してきましたが、臨時職員としての雇用であることから、任期が六カ月という制約がございます。
 今後は、より長期の雇用を確保し、知的障害者、精神障害者がさらなる有意な経験を積むことができるよう、任期一年かつ更新が可能な非常勤職員制度の創設を検討してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 防災対策に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、応急仮設住宅の供給の考え方についてでございますが、震災等の災害により家屋を失うなど、居住が困難となった被災者の方の住まいを早期に確保することは、生活の安定化、プライバシーの確保等の観点から重要でございます。
 東京都地域防災計画では、被災者の方に対して都営住宅など公的住宅や借り上げによる民間賃貸住宅を提供するとともに、区市町村と連携して確保する用地に応急仮設住宅を直接建設して供給することとしております。
 この応急仮設住宅の建設については、今般、東日本大震災の教訓を踏まえて策定した東京都防災対応指針に基づき、用地や建築資材の確保について再検討してまいります。
 次に、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化についてでございますが、条例に基づき耐震診断を着実に進めるためには、建物所有者に対する十分な周知と必要な支援を的確に行い、所有者の主体的な取り組みを早期に促すことが重要でございます。
 そこで、来年四月からの耐震診断の義務化に先立ちまして、所有者に条例の内容や新たな助成制度を十分理解してもらうため、約五千棟を対象といたしまして、市区町村と連携し、八月末から個別訪問と説明会を行っております。
 また、沿道建築物の耐震診断に関する具体的な相談などに対応する専用窓口を設置するとともに、アドバイザー派遣による技術的支援も開始しております。
 今後とも引き続き、所有者に対してきめ細かく丁寧に対応し、理解と協力を得ながら緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を進めてまいります。
 次に、マンションの耐震化についてでございますが、マンションは、震災時の倒壊などにより、居住者のみならず地域に及ぼす影響が大きいことから、東京緊急対策二〇一一に基づき専門家会議を設置し、法制度の課題について検討を行ってまいりました。その結果を踏まえて、去る十一月二十二日、国に対して、耐震改修をする場合の合意要件緩和などの法制度の改正に関する緊急提案を行ったところでございます。
 また、現在、都内マンションの実態調査を進めており、今後、この調査から得られた情報などをもとに、区市町村とも連携しながら管理組合に働きかけを行うなど、マンション耐震化の促進に取り組んでまいります。
 最後に、木密地域の整備についてでございますが、東京で大地震が発生した際、木密地域の延焼により被害が拡大し、都市機能が阻害されることがないよう、不燃化の取り組みを一層加速させる必要があり、木密地域不燃化十年プロジェクトを立ち上げたところでございます。
 このプロジェクトでは、木密地域の実態を調査するとともに、今後、地元で開催する不燃化のための集会を通じ、住民の生の声を聞くことなどにより、地域の解決すべき課題を的確に把握してまいります。その上で、都有地等を活用した効果的な生活再建支援など新たな誘導策の検討も進め、地元区と連携し、木密地域の改善に取り組んでまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、災害廃棄物の放射能対策についてでございますが、都は、災害廃棄物の受け入れに当たりまして、測定の項目や頻度等を定めた独自の管理マニュアルを作成し、ホームページで公表するとともに、そのマニュアルに基づきまして測定した放射能濃度等もすべて逐次公表しております。
 また、岩手県宮古市からの受け入れ開始時には、被災地と都内処理施設の両方で放射能測定や廃棄物の分別の状況を報道機関に広く公開し、多数のメディアにおいて放射能測定等が適正になされていることが報道されました。
 こうした取り組みによりまして、受け入れの安全性については多くの都民のご理解が得られてきているものと認識しております。
 今後、宮城県女川町の災害廃棄物を都内自治体の清掃工場で受け入れるに当たりましても、区や市とともに都も住民説明会に出席し、処理の安全性を丁寧に説明してまいります。
 次に、災害廃棄物の放射能濃度測定についてでございますが、岩手県宮古市からの受け入れに当たりましては、あらかじめ被災地で焼却試験を行い、災害廃棄物自体と焼却灰、排ガスの濃度の測定を行っております。また、現地で、実際に東京に搬出される廃棄物の放射能濃度測定を行っております。
 さらに、都内では、選別破砕施設四カ所で可燃物と不燃物の濃度測定を行い、可燃物の焼却施設では焼却灰と排ガス等の測定を行いました。
 このように合わせて計四回、放射能濃度を測定いたしましたが、廃棄物自体では不検出のケースが多く、検出された場合でも最大で百十一ベクレルにとどまっており、焼却して濃縮されても問題のない値でございました。実際にこれらを都内で焼却した灰の濃度は九百二十ベクレルでございまして、基準とされる八千ベクレルを大幅に下回っております。
 今回の受け入れに当たりましても、こうした濃度測定を定期的に行うことを都のマニュアルで定めておりまして、これらの測定結果はすべて逐次公表してまいります。
 次に、都有施設の放射線量の測定についてでございますが、都では、文部科学省の放射線測定に関するガイドラインの公表を受けまして、都有施設全般における放射線量測定の必要性の有無を確認するため、サンプリング調査を行いました。
 国や都のこれまでの調査によりまして、都内では比較的空間線量が高いことが示された区部東部の三区を対象地域としまして、人、特に子どもが集まる公共施設で、このガイドラインで放射性物質がたまりやすいとしている雨水が集まるところや植物の根元などの地点を都立公園内で選定いたしました。
 測定の結果、ガイドラインの目安であります地上高さ一メートルの位置で、周辺より放射線量が毎時一マイクロシーベルト以上高い地点はございませんでした。
 測定地点の中で、高さ一センチメートルの位置では比較的線量の高い地点が数カ所ありましたので、それらの地点では、距離による減衰度合いを詳細に調査いたしました。
 その結果、高さ一センチメートルでの放射線量が最も高い毎時七・〇六マイクロシーベルトの地点におきましても、水平方向に六十センチ離れまして、高さ一メートルの位置では二十分の一以下になるなど、わずかに離れただけで大幅に減衰していることが確認できました。
 また、こうした限定された地点での汚染の場合、その近傍に人がとどまる時間は極めて少ないと考えられます。
 以上のことから、今後、都有施設全般にわたる調査や経常的な調査は基本的に不要と考えております。
 なお、今回の調査で、高さ一センチメートルの位置で比較的空間線量が高かった地点につきましては、人が立ち入らないように囲いを設置した上で、時間的な減衰を把握するための継続的な調査を行っております。
 次に、国の除染基準に該当する箇所が出てきた場合の対応についてでございますが、まず、面的な除染が必要となる可能性がある汚染状況重点調査地域の指定は、毎時〇・二三マイクロシーベルト以上の地域で原則区市町村単位でするとされておりますので、文部科学省の航空機モニタリング調査結果等を踏まえれば、都内で該当する地域はないものと考えております。
 また、局所的な汚染につきましても、文部科学省のガイドラインの目安より高い地点が見つかる可能性は低いものと考えております。仮に局所的な汚染について対応が必要なケースが生じた場合には、文部科学省のガイドラインに従って適切な対応を行うとともに、迅速な情報提供に努めてまいります。
 次に、この冬の節電に向けた都の取り組みについてでございますが、国が示しましたこの冬の東京電力管内の電力需給見込みでは、昨年冬の最大需要を上回る供給力を確保できるとしております。
 しかし、この供給力には老朽化した非効率な火力発電所の稼働なども含んでおりまして、トラブルの発生やCO2排出量の増加が懸念されることから、節電対策を継続していくことが必要でございます。
 都が先日公表いたしましたこの夏の節電対策の総括では、合理的な照度の見直しなど、無理なく実施できる節電対策が広く行われるようになってきておりまして、空調を余り使用しなくなった秋になってからも、東京電力管内では、昨年に比べ約四百万キロワットのピーク電力の削減が続いているという大きな効果を上げていることが明らかになっております。
 この冬を迎えるに当たりましても、こうした無理なく実施できる節電対策を都民、事業者に広めてまいります。
 次に、自立分散型エネルギーの確保についてでございますが、東京都技術会議におきまして各局が横断的に検討し、本年十一月に中間の取りまとめを行っております。
 この中では、都民生活を守る施設への自立分散型電源の設置と、低炭素なまちづくりに向けた自立分散型電源の設置の二本の柱を基本に、今後取り組んでいくこととしておりまして、具体的には、都庁舎の電源の多元化や応急復旧活動の拠点となる防災公園への非常用発電機の設置などを進めてまいります。
 次に、低炭素で分散型のエネルギーを活用した都市づくりについてでございますが、分散型のエネルギーの推進におきましては、電気とともに発電の際に発生します廃熱の両方を上手に活用する、高効率で環境性能の高い設備を導入することが重要でございます。
 今後、民間と連携しましてエネルギー効率の高いコージェネレーションガス発電を設置するなど、低炭素型であるとともに、災害時にもとまることのない都市を目指してまいります。
 最後に、被災地への再生砕石の提供についてでございますが、都は、岩手県、宮城県の災害廃棄物の受け入れを進めておりますけれども、これら被災自治体では、具体的な復興計画の策定が進んでいないために、復興に必要な資材の種類や必要量の把握などはほとんど進んでおりません。また、国土交通省の建設資材需給動向調査によりますと、現時点では、東北地方で再生砕石が不足しているという状況ではございません。
 都は今後とも、被災自治体のニーズを踏まえ、適切な支援を行ってまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、オリンピック・パラリンピック招致についてでございますが、オリンピック・パラリンピック競技大会は世界最大のスポーツイベントであり、その開催の効果は、開催都市である東京のみならず、広く日本全体に波及いたします。
 特に二〇二〇年大会の日本への招致は、東日本大震災からの復興を大きく後押しし、被災地を中心に、震災で傷ついた人々の心をいやし、日本を元気にする意義を持つものと確信しております。
 そのため、オリンピック・パラリンピック開催に合わせた復興支援策についても、今後、復興委員会などの場で被災地の意見をも聞きながら策定していくこととしており、お話のかけ声、スローガンについても、そうした議論を踏まえて検討してまいります。
 次に、招致戦略についてでございますが、招致活動は国と国との熾烈な争いであり、国際的な活動が非常に重要となります。こうした活動を効果的に行うために、都は外務省を含むオールジャパンの体制構築を進めてきたところでございます。
 これに加えまして、今般、経済界の代表も参画する評議会を招致委員会に設置いたしまして、招致活動に対して支援する体制を整えたところでございます。
 今後、在外公館はもちろんのこと、海外に展開する日本企業の海外支社などにも招致活動の担い手として共通の意識を持って取り組んでいただけるよう、都としても積極的に働きかけてまいります。
   〔生活文化局長井澤勇治君登壇〕

〇生活文化局長(井澤勇治君) 新しい公共に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、新しい公共支援事業終了後における都独自の支援についてでございますが、都は、国からの交付金により、今年度から平成二十四年度までの時限事業として、いわゆる新しい公共の担い手となるNPO等の自立的活動を後押しすることを目的とした新しい公共支援事業を実施しております。
 今年度におきましては、例えば、産官学が連携した里山の保全や東日本大震災の被災者に対する自立した生活再建の場の提供などのモデル事業及びNPO法人に対する研修や個別相談などの基盤整備事業に、自治体とNPO法人等が協働して取り組んでおります。
 都といたしましては、この新しい公共支援事業を着実に実施し、今後につきましては、事業の効果や国の動向等を踏まえて判断してまいります。
 次に、NPOの認定に係る標準処理期間についてでございます。
 今回のNPO法改正によりまして、NPO法人による認定の取得を容易にするため、認定基準が緩和されますとともに、一定期間、認定要件の一部が免除される仮認定制度が新設されました。
 そのため、国税庁が実施している事務がすべて都に移管されることに加え、新たに発生する事務にも的確に対応していく必要がございます。
 また、現在、都内には約七千のNPO法人がありますことから、相当数の認定申請が都に寄せられるものと推定されております。
 今後、具体的に認定事務を行っていく中で、事務量等を見きわめ、行政手続条例に基づき適切な標準処理期間を定めてまいります。
 最後に、来年四月の改正NPO法施行に向けた迅速的確な対応についてでございますが、都は、NPO法施行条例の改正前におきましても、新制度に対するNPO法人の理解を深めますため、法改正の趣旨や基本的な内容等につきまして、積極的に周知、広報活動を行ってまいります。
 また、具体的な手続や申請上の留意点などをまとめたガイドブックの作成、配布や説明会などを実施し、法施行後、NPO法人が速やかに申請できますよう適切に対応してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、NICUからの在宅移行支援についてでございますが、都は、NICUから在宅療養への円滑な移行を促進するため、在宅移行支援病床の運営について支援いたしますとともに、平成二十二年度から都立墨東病院を中心にモデル事業を実施いたしております。
 この事業では、病院内に配置をいたしましたコーディネーターが、入院中から家族の状況に応じた在宅支援プログラムを作成し、退院後に必要な訪問診療や訪問看護を初め、各種サービスの提供について具体的に調整するなど、在宅療養に向けた支援を行っております。
 また、退院後の育児支援や家族間の情報交換の場として、患者家族の交流会なども実施いたしております。
 今後、本事業の評価、検証を行い、NICUからの円滑な在宅移行が一層進むよう取り組んでまいります。
 次に、在宅での緩和ケアを希望するがん患者への支援についてでございますが、都は、平成十九年度から在宅緩和ケア支援センターを設置いたしまして、がん患者や家族に対し、在宅緩和ケアに関する情報提供、療養上の不安や悩みに関する相談に対応いたしますとともに、緩和ケアに携わる医師、看護師、薬剤師など、医療従事者に対する研修会等を実施してまいりました。
 また、がん診療連携拠点病院等の相談支援センターにおきましても、在宅緩和ケアを含むがん患者へのさまざまな支援を行っております。
 現在、緩和ケアのあり方検討部会におきまして、地域連携や多職種連携などについて検討を行っており、この議論を踏まえ、拠点病院等を中心とする地域の実情に応じた在宅緩和ケア支援体制の充実に取り組んでまいります。
 最後に、訪問看護サービス量の確保についてでございますが、都はこれまで、訪問看護ステーションを増設するため、訪問看護サービスの報酬水準の改善を国に提案要求いたしますとともに、離職看護師の復職支援などの人材確保策を講じてまいりました。
 また、訪問看護ステーション本体と一体的な運営をすることにより、柔軟な人員配置などが可能となりますサテライト型事業所への都独自の補助制度を平成二十二年度から実施いたしまして、設置を促進いたしております。
 さらに、平成二十四年度に看護と介護が連携をいたします定期巡回、随時対応型訪問サービスが開始されますことから、適切な介護報酬とすることなどを国に緊急提言いたしておりまして、今後とも訪問看護サービスの一層の充実に取り組んでまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 九点のご質問にお答えいたします。
 まず、若年者の就業対策についてでありますが、若者を取り巻く雇用環境は、他の年齢層と比べて高い水準にある失業率、新卒者の就職率の悪化など、依然として厳しい状況にございます。
 こうした状況を放置したままでは、若年者自身の職業的自立、キャリア形成に支障が生じることはもとより、社会にとりましても大きな損失となります。この問題の本質的な解決のためには、国が明確な成長戦略のもと実効性のある経済対策を進め、雇用を創出することが不可欠と考えております。
 都といたしましては、これまでも東京しごとセンターにおいて個別担当制によるキャリアカウンセリング、就職に必要な基礎能力を養うグループワークや多様なセミナー、企業採用担当者との交流会など、さまざまなきめ細かい支援を実施してまいりました。
 また、今年度から、研修と中小企業での就労体験を組み合わせました未就職卒業者緊急就職サポート事業を開始し、これまで八百八十四名の若者が参加しております。
 さらに、若者に中小企業とのマッチングの場を提供する合同就職面接会を既に七月と十一月に開催し、来年二月にも開催を予定しております。
 今後とも、こうしたさまざまな対策を実施することにより、若者の就業支援に取り組んでまいります。
 次に、民間企業の障害者雇用率の改善に向けた都の取り組みについてであります。
 大企業に比べまして雇用率が低迷している中小企業を中心に、改正障害者雇用促進法を初めとする制度等を周知し、障害者雇用について働きかけることが重要であります。
 このため、都はこれまでも、障害者雇用のポイントをまとめたハンドブックの作成、配布や企業向けのセミナーの実施などを通じて、企業に対して障害者雇用に関する啓発を進めてまいりました。
 また、東京しごと財団において、障害者の職場体験実習に対する支援や企業合同説明会を開催するなど、企業と障害者のマッチングに向けた支援を行っております。
 加えて、今後、都、国、経済団体等から構成される東京都障害者就労支援協議会におきまして、都が実施する各種イベントへの参加や支援策の利用を傘下の企業に促すよう経済団体に働きかけるなど、引き続き関係機関と連携して、企業での障害者雇用を推進してまいります。
 次に、産業の空洞化への対策についてであります。
 ことしの夏以降の歴史的な円高は、長期化が懸念され、産業の空洞化が大きな課題となっております。空洞化の無秩序な進行は、東京の産業の将来に大きな影響を与えるおそれがあり、適切な対応を行うことが必要であります。
 都は、既に、東京で生産活動を継続できる高付加価値の製品や技術の開発に取り組む中小企業を支援するとともに、今後の成長が見込まれる産業分野での創業の後押しに取り組んでおります。
 加えて、基盤技術の担い手である中小製造業等の集積の維持を課題として、これまでの創造的都市型産業集積創出助成による集積支援のノウハウを活用し、区市町村と連携したサポートのあり方を検討してまいります。
 次に、中小企業の事業の承継、再生の支援についてであります。
 中小企業が事業の承継、再生を通じて経営の継続や発展を図ることは、東京の産業の活力を確保する上で重要であります。
 このため、都は、中小企業振興公社において事業再生などの相談に対応するとともに、内容が複雑な案件は、専門家による事業承継・再生推進委員会が解決の方針をつくり、企業に提案を行っております。
 また、同委員会によりまして販路開拓が効果的と判断された場合は、展示会出展の助成対象とする仕組みを設けたり、さまざまな手法を踏まえた相談対応を行うなど、施策の充実にも取り組んでおります。
 こうした対応により、引き続き中小企業の事業の承継や再生に対する支援を進めてまいります。
 次に、東京ビッグサイトの拡張についてであります。
 東京ビッグサイトは、中小企業の販路の拡大などを通じて経済波及効果を生み出しており、東京の経済を活性化する重要な役割を持っております。
 前回、二〇一六年のオリンピック招致におきまして、ビッグサイトはメディアセンターとして拡張することとされ、オリンピック終了後は展示場としての利用を計画しておりました。
 今後、二〇二〇年のオリンピック招致活動の中でビッグサイトを活用する場合は、その方針に従って検討してまいります。
 次に、耕作放棄地に対する取り組みについてであります。
 農業者の高齢化や後継者不足、また地理的条件などにより発生しました耕作放棄地は、減少傾向にあるものの、九百九十一ヘクタールに及んでおります。
 これまで都は、農道や農業用水施設などの農業基盤整備や農地の再生利用の促進、意欲ある担い手と農地のマッチングの推進など、耕作放棄地の発生防止や解消に努めてまいりました。
 今後も、各地域の特性を踏まえた農業生産基盤の整備や市町村との連携などによりまして、耕作放棄地対策を進めてまいります。
 次に、地産地消の推進についてであります。
 都内では、新鮮ですぐれた品質の農産物が生産されておりますが、生産量や安定供給に課題がございます。
 このため、都は今年度から、八王子市内の都有地にとうきょう元気農場を開設し、農地の少ない区部の小中学校を対象に、コマツナやジャガイモなどの野菜を学校給食の食材として供給しております。
 さらに、都内産農林水産物を積極的に使用していただいている飲食店をとうきょう特産食材使用店として登録し、広く都民にPR活動を行う取り組みも実施しております。
 今後も、こうした生産と流通の両面から都内産農産物の地産地消を進めてまいります。
 次に、東京の森林についてでありますが、森林は木材生産にとどまらず、水源の涵養、都民への憩いの場の提供など、多面的な機能を発揮しており、その機能の維持増進を図っていく必要があります。
 しかし、長期にわたる木材価格の低迷により、多くの森林が放置され、荒廃が進んでおります。
 そこで、都は、平成十八年度からスギ花粉発生源対策事業を開始いたしまして、主伐と植栽により豊かな森林の再生に取り組んでおります。
 さらに、平成二十一年度からは森林循環再生プロジェクトを開始し、森林施業の集約化や林道の整備等を図り、施業の効率化を進めております。
 今後も、これらの事業を着実に推進し、森林の整備に努めてまいります。
 最後に、多摩産材についでであります。
 多摩産材の利用拡大を図るためには、供給体制の整備と需要開拓の両面からの対策が必要であります。
 そのため、都は、供給面では、多摩産材の品質向上等を図るため、製材所に対して木材の乾燥施設や品質検査機等の導入支援を行っております。また、需要面では、民間での利用拡大に向けたモデルハウス建設等への支援を行っております。
 あわせて、公共での利用をさらに拡大するため、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律が施行されたことに伴い、都におきましても先月、多摩産材利用推進方針を改正したところであります。
 今後も、木材の生産から利用に至る支援策を通じ、多摩産材の利用拡大を図ってまいります。
   〔中央卸売市場長中西充君登壇〕

〇中央卸売市場長(中西充君) 築地のまちづくりに関する中央区からの要望についてでございますが、区は、昨年十月には、築地市場の現在地での再整備を再度求めながら、万が一、豊洲へ移転する場合でも、市場機能の一部を築地に残すことを要求しておりました。
 今回の区の要望は、従来の考えを改め、豊洲移転の結論を区として厳粛に受けとめ、その上で、豊洲移転後の築地市場の跡地の一部に食文化継承の核となる施設を整備し、場外市場地区とともに活気とにぎわいを確実に将来に引き継いでいくことを基本認識としております。
 さらに、具体的な要望におきまして、いっときも築地の活気とにぎわいを市場移転後も途絶えさせないために暫定的な施設の整備を目指しており、都に対し、閉場後の市場施設の一部利用を要請しています。
 築地市場を豊洲に移転することについて、中央区と共通認識が得られたことから、都は、今後の築地のまちづくりについて区との連携が必要と考えており、年度内早期に今回の具体的要望について合意を図り、築地のにぎわいと伝統文化の継承に協力してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) ジェットフォイルの安定的な航路確保に資する港湾、漁港整備についてでありますが、大島から神津島までの航路には、平成十四年からジェットフォイルが就航しており、在来の貨客船とあわせて、島民や観光客の移動手段として重要な役割を果たしております。
 ジェットフォイルは、竹芝ふ頭から大島までを二時間弱で結ぶなど、高速性が特徴でありますが、一方で、停泊の際の高波に弱いため、港には高い静穏性が必要となります。
 このため、都では、港湾や漁港にジェットフォイルに対応した静穏な水域を確保すべく、突堤や防波堤の整備を進めており、これによりジェットフォイルの就航率は着実に向上しております。
 今後も、ジェットフォイルの安定就航のため、港湾、漁港の静穏性向上を図るとともに、岸壁上の日よけ雨よけ施設の整備などにも引き続き取り組み、乗降客の利便性向上に努めてまいります。

〇議長(和田宗春君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時五十六分休憩

   午後三時十五分開議

〇副議長(ともとし春久君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百十一番吉原修君。
   〔百十一番吉原修君登壇〕

〇百十一番(吉原修君) 第四回定例会に当たり、都議会自由民主党を代表いたしまして、質問をいたします。
 さて、今から百年前の一九一一年、我が国は日米通商航海条約を結び、これによって江戸末期に結んだ不平等条約をすべて撤廃することができました。
 不平等条約を解消するために、先人たちは必死の思いで国力の増強を図り、当時の大帝国であったロシアを日露戦争で破ることによって、世界にその力を示しました。白人国家の植民地にされる危機を、みずからの力を頼りにして前途を切り開き、非白人国家として初めて近代化を遂げたのであります。
 それから百年、現在の政権をつかさどる政治家は、先人たちのような国家の行く末を思う激しい気迫が、我々には全く感じられません。グローバル化する世界では、国と国とがしのぎを削り、とりわけ新興国の台頭は著しく、日本の地位はどんどん低下しています。
 こうした中で、我が国の経済、農業、金融、医療、労働などあらゆる分野に影響が及ぶTPP参加の是非が問われています。民主党政権からは、何が真の国益で、日本はどうすべきかというビジョンが全く感じられず、国民に説明責任を果たすことなく、ただ国際政治の激流に翻弄されるばかりであります。既に、閣議決定の、すべての品目を自由化交渉対象とし、高いレベルの経済連携を目指すという文言を逆手にとられ、アメリカから揺さぶりをかけられています。国際常識では考えられない迷走によって普天間基地問題をこじらせ、アメリカにいうべきこともいえなくなった民主党政権のもとでは、新しい不平等条約を結ばされることになりかねません。
 まず、知事に、TPP問題を初めとする国政の現状について所見を伺います。
 ことし、我が国は東日本大震災という未曾有の国難に見舞われました。我々は必ず再起しなければなりません。そのためには、アメリカに引きずられるのではなく、日本独自の戦略を持って円高を乗り越え、我が国経済を立て直し、社会を覆う閉塞感を振り払い、国民の希望を取り戻さねばなりません。
 しかし、八ッ場ダム問題からも明らかなように、何でもかんでも先送りし、政策形成過程が崩壊してしまっています。エネルギー問題でも、ストレステストがもたついており、不慮の事故により火力発電所が停止した場合には、冬場の電力不足の懸念が現実となりかねません。民主党政権は、安全運転ならぬのろのろ運転に終始するばかりであります。
 こうしたときこそ、東京から日本全体を突き動かさなければなりません。東京はもとより、この国の未来をにらんだ幾つもの布石を着実に打っていくことが必要であります。
 市区町村と力を合わせ、被災地の瓦れきを受け入れたのは、復興の最大の障害を取り除き、その再生を強く後押しするためであります。
 電力不足によって経済が土台からおかしくなりかねない中で、日本の政治経済のかなめである東京が自前で電力を確保していくことは、この国に新たな可能性を開きます。崩れかけた日本の足元を固め直し、先人から受けたたすきを次の時代にしっかりと引き継ぐために、今こそ東京から骨太の議論を提起していく必要があります。
 都議会自由民主党は、先般、防災対策を提言するなど、常に都民、国民のための新しい政策をつくる決意であります。そうした立場に立って、以下、質問をしてまいりますが、まず知事に、今後の都政運営について所見を伺います。
 我が国の経済にあっては、欧州の債務危機や歴史的な円高などが、回復の兆しが見えた景気に冷や水を浴びせています。企業収益の動向は不透明さを増しており、今後の都税収入への影響は避けられません。こうした中、都には、少子高齢化や中小企業対策など、山積する課題に対して効果的な手だてを講じ、現下の閉塞感を打ち破り、東京に活力を呼び戻していくことが求められています。
 とりわけ、震災への対応は喫緊の課題です。我が党が立ち上げた東日本大震災復旧・復興対策推進本部で議論を重ね、先月、防災力強化に向けての提言を行いました。提言内容も含め、高度防災都市の実現に向けた取り組みを加速する上では、法人事業税の暫定措置の撤廃は不可欠であり、約束どおり撤廃するよう国に強く求めるものであります。
 この間、国が公共事業を見識ある考えもなく削減し続けたのとは対照的に、都は七年連続で投資的経費を伸ばしてきました。都税収の回復が当面期待できない今だからこそ、中小企業の受注機会をふやすなど、景気を刺激し、防災力強化にも資する投資的経費に財源を振り向けることが重要であります。これまで以上にめり張りをつけ、都民に安心と希望をもたらす予算とするべく、新年度予算編成作業を進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、高度防災都市づくりの実現に向けた防災対策について伺います。
 我が党の東日本大震災復旧・復興対策推進本部に二つのワーキンググループを設置し、ハード、ソフト両面からの多面的な議論を積み重ね、先月八日、こうした議論の成果を取りまとめた防災対策強化に向けての提言を知事に提出いたしました。
 提言では、発災時にも都民が安心できる体制、発災直後の混乱を回避する仕組みづくり、災害に強いまちづくりのさらなる推進、地域住民や企業、団体の協力を得た地域防災力の強化の四つの柱を軸に、防災対策の強化充実を図るよう強く求めたところであります。
 知事は、我が党の提言にこたえて、このたび防災対策全般の再検証、再構築を図るべく、東京都防災対応指針を策定いたしました。東京の防災対策の方向性を二十三項目にわたり示した、非常に意欲的なもので、高く評価したいと思います。
 本日は、我が党の提言の四つの柱を軸にした質疑を通じて、防災対策の全貌を明らかにしたいと思います。
 まず、防災の取り組みへの基本的な考え方です。
 今回の大震災で、被災地では、万全を期していた防波堤が跡形もなくなってしまうという事態が生じました。行政も引き続きしっかり対策を講じていくべきですが、それだけでは都民の命を守ることはできません。何といっても都民一人一人の自助、そしてお互いの助け合い、すなわち共助がなければならないと考えます。今回のような大災害に対して、都民一人一人がどうやって立ち向かっていくべきなのか、まず知事の見解を伺います。
 また、都のみならず、国、市区町村はもとより、インフラ事業者を初めとする民間事業者、そして都民が一体となって取り組む必要があります。さまざまな主体が防災対策を講じていくためにも、その前提として、首都東京にどのような地震が起こり得るのか、どのような被害がどの程度起こり得るのかをしっかりと想定しておくことが必要であります。
 都はこれまでも、首都直下地震の被害想定を明らかにしてきましたが、東日本大震災では、東北地方に想定を超える地震や津波が生じました。こうした状況を踏まえて、改めて首都東京の防災対策に生かす観点から、東京を襲う地震像や想定される被害について客観的に明らかにすべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、提言の最初の柱である、発災時にも都民が安心できる体制について伺います。
 まず、災害医療対策についてです。
 都では、大地震における医療救護活動の経験や我が党の要望を踏まえ、第二回定例会で補正予算を編成し、病院機能を確保するための耐震化や自家発電設備に対する補助、さらには、発災直後に現地で医療救護活動を行う東京DMAT専用車両の整備など、迅速な対応をとっており、このことについては評価するものです。
 今般作成した東京都防災対応指針においても、今後発生が予想される首都直下地震や三連動地震等への備えも視野に、医療機能確保に向けた対策の強化を災害対策の柱の一つに挙げています。
 そこで、今回の大震災における経験や指針も踏まえ、大規模災害発生時の医療体制の充実に向け、今後、都はどのように取り組むのか、所見を伺います。
 次に、物資の備蓄対策について伺います。
 今回の大震災において大きな課題の一つとなったのが、日常生活に必要な物資の確保及び供給であります。被災地においては、震災発生直後は、救護物資や義援物資等の受け入れ、搬送を円滑に行うことが困難で、被災者のニーズに合った物資を避難所に迅速に届けられなかったと聞いています。こうした事態は、都が被災した場合にも同様に起こり得ると考えられます。
 災害時に必要な物資を都民に確実に供給する体制づくりは、震災対策の中でも重要なポイントの一つとなります。このたび策定された指針においても、都の震災に備えた物資の備蓄搬送体制に関する課題と対応が示されていますが、今後の都の備蓄対策について所見を伺います。
 二つ目の柱、発災直後の混乱を回避する仕組みづくりについて伺います。
 帰宅困難者の問題が大きな課題の一つです。大震災以降の質疑の中で明らかになったように、一斉帰宅の抑制が徹底できなかったこと、通信が不通で家族との連絡がとれなかったこと、帰宅困難者向けの待機施設が確保されていなかったこと、徒歩で帰宅する人への支援も十分でなかったことなど、さまざまな課題が明らかになりました。
 首都直下地震の際には、緊急輸送道路の確保や傷病者の救出、救護が最優先とされなければなりません。また、火災、延焼のおそれなども考慮する必要があります。こうした課題に対して、広く社会全体でぜひとも十分な議論を行い、相互の協力により取り組みを進める必要があります。その上で、合意できたものについては、速やかな実行に向けて積極的に検討していくべきです。
 都が進める帰宅困難者対策について、一斉帰宅抑制の徹底、企業における備蓄など、企業の取り組みを促すための条例制定も含めて、実効性ある対策を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 三つ目の柱、災害に強いまちづくりのさらなる推進について伺います。
 我が党は先日、防災対策強化に向けての提言の中で、地震に強いまちづくりの推進として、特にゼロメートル地帯などでの津波、高潮対策のさらなる強化を強く要請したところであります。
 東部低地帯の満潮面以下の地域に百五十万人の人々が生活している東京で、一たび堤防が損壊した場合には、浸水により都市機能が麻痺し、その損失ははかり知れないことになります。三月十一日以降も日本各地で地震が相次ぎ、今後三十年以内に大規模地震が首都圏を襲う確率が七〇%ともいわれている中、地震、津波への対策は待ったなしと考えます。
 そこで、東部低地帯における河川の耐震対策について、現状と今後の見通しを伺います。
 また、ことしは、台風の襲来により、日本全国で水害や土砂災害が頻発し、多くの死者や行方不明者などを出しました。都内でも近年、一時間に一〇〇ミリを超えるような局地的集中豪雨が発生しており、都民にとって脅威となっています。東京を水害から守り、都民の安全と安心、首都機能、経済中枢機能を守っていくためには、現在の整備水準を上回るような豪雨に対する備えを一層強化しなければなりません。
 現在は、都は専門家による検討委員会を設置し、中小河川における今後の整備のあり方について検討を進めていると聞いています。
 そこで、その検討状況と今後の検討予定について伺います。
 さらに、都内でも台風の影響により、奥多摩町、あきる野市などにおいて土砂災害警戒情報が発表されましたが、幸いにも人的被害はありませんでした。しかしながら、首都東京では人口や都市機能が密集するとともに、多摩地域は丘陵の多いことから、こうした豪雨による土砂災害に対する安全性を高めていかなければなりません。
 そこで、東京都における土砂災害に対する取り組みについて伺います。
 次に、木密地域不燃化十年プロジェクトについて伺います。
 先日、都庁では、防災の専門家による木造住宅密集地域の防災に関する講演会が行われ、東京都技術会議でも用地取得の促進や規制、誘導策の強化などについて議論がなされるなど、プロジェクトは動き始めたと聞いております。
 我が党はこれまで、木密地域の改善には、種地の確保、容積や斜線の制限などの建築規制の緩和、消防との連携など、大胆な発想が必要と主張してきました。また、都が先導してさまざまな取り組みを進めていくことは重要ですが、地元に密着した施策を進める必要があり、区の積極的な取り組みも不可欠であります。
 そこで、都は、木密地域の実態を十分把握した上で、区と協力して計画的に不燃化を推し進める仕組みを構築していくことが必要と考えますが、所見を伺います。
 また、木密地域の不燃化を一層推進していくためには、地域内の建物の不燃化とともに、延焼遮断帯としての効果の高い都市計画道路の整備を、都が積極的に進めることが極めて重要であると考えます。
 そこで、木密地域における都市計画道路整備の取り組みについて伺います。
 さらに、大規模な商業施設の耐震化について伺います。
 都内には、百貨店やホテルなどの大規模な商業施設が立地しており、都民ばかりでなく、外国人も含む不特定多数の者が利用することから、一たび大地震が起きれば甚大な被害につながります。また、東日本大震災では、都内でも多くの帰宅困難者が生じ、不安な一夜を過ごされました。百貨店やホテルでは、こうした帰宅困難者に対して、自発的に店内やロビーを開放し、食料を提供したところもあったと聞いています。これらの建築物の耐震化は、多くの利用者の生命を守るとともに、東京の防災対策上も重要かつ喫緊の課題であります。
 都では、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を強力に進めているほか、我が党の主張を受け、マンションについての法改正を国に対して緊急提案を行いましたが、大規模な商業施設の耐震化も早急に進める必要があります。
 そこで、今後どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 加えて、発災時にこうした大規模商業施設が果たす役割は大きいことから、利用者保護のあり方など、それぞれの施設が担う役割や相互の連絡方法等についても、帰宅困難者対策の協議会の中で具体的に議論を進めることが必要と考えますが、見解を伺います。
 四つ目の柱、地域住民や企業、団体の協力を得た地域防災力の強化について伺います。
 地域防災力の強化については、知事が防災隣組の構築に取り組むことを明言し、着実にその歩みを進めていただいていると思いますが、それに加え、さまざまな主体による取り組みを促していくことが重要と考えます。
 まず、地域の底力再生事業について伺います。
 本事業は、我が党の提案により、平成十九年度にモデル事業として開始され、本年度で五年目を迎えます。この間、都内各地域における町会、自治会の活動を活性化し、地域力の向上に大きな成果を上げてきたものと評価しています。今般の大地震を契機に、地域における人と人とのきずな、助け合いの重要性が再認識されており、地域の底力再生事業をこれまで以上に活用し、町会、自治会の活動を支援していく必要があります。
 これまでの五年間で実施してきたさまざまな取り組みの成果を生かし、地域におけるより広範な活動を助成の対象とするなど、本事業の再構築が必要と考えますが、所見をお伺いいたします。
 また、木密地域の防災力を向上させるためには、地域の方々の協力が不可欠です。住民による初期の消火活動は延焼をおくらせるなど、災害時にも大きな効果が発揮できると考えます。これまで以上に積極的、主体的に初期消火の行動ができ、より身近で助け合える具体的な方法を検討し、実践すべきです。木造住宅密集地域の住民による初期消火活動能力の向上をより効果的に推進させるための取り組みについて、お伺いをいたします。
 最後に、自助、共助の心を育てる防災教育の推進について伺います。
 大震災後、都教育委員会は、防災教育の見直しを各学校に指導するとともに、防災教育補助教材の充実を図るなどの取り組みを行いました。これらの迅速な対応を高く評価いたします。引き続き、みずからの命をみずから守る実践的な避難訓練への改善や、副読本を活用した防災教育を充実させていく必要があります。
 それに加えて、いざ災害が発生したとき、みずから進んで避難所等での共同生活を支える一員として役割を果たせるよう、日常の教育活動をとらえ直し、ふだんの清掃活動や仲間同士で協力し合う部活動について、防災教育の観点に立って指導をしていく必要があります。都教育委員会は今後、どのように防災教育を推進していくのか、所見を伺います。
 以上、我が党の提言に沿って防災対策全般について伺いました。多岐にわたる事項への取り組みは、まさに全庁一丸となって進めなければ実現できません。課題をしっかりととらえて、都民の命と首都東京を守るため、ぜひしっかりと取り組むことを求めて次の質問に移ります。
 災害に際しては共助という視点が重要であります。都は観光の側面からも、被災地の経済復興を支援しています。今後もこうした共助の視点に立って施策を拡充するなど、効果的な取り組みが必要であると考えます。
 そして、大地震に伴う災害廃棄物の処理に関しては、まさしく地方自治体が行う共助と考えます。
 今回の大震災では膨大な災害廃棄物が発生し、その量は、岩手、宮城両県で約二千万トンといわれています。生活ごみの十数年分に当たります。被災地の復興のために、災害廃棄物の迅速な撤去、処理が喫緊の課題であります。
 被災地では決定的に処理能力が不足し、全国的な支援による広域処理が欠かせない中、都は、全国の自治体に先んじて、岩手県宮古市の災害廃棄物の受け入れを先月から始めました。また、先月末には二十三区の区長会、多摩地域の市長会が、宮城県女川町の災害廃棄物の受け入れを発表し、都内自治体を挙げて被災地の復興を支援するという体制が整いました。
 懸命に立ち上がらんとする被災地を後押しする今回の知事の英断と、都内市区町村の取り組みに敬意を表するものであります。今後、全国の自治体にも広域的な取り組みが広がるよう、今回の受け入れで得た知見やノウハウを積極的に全国の自治体に提供していくなど、都が先頭に立ち、力強く被災地の復興を支援していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 また、災害廃棄物の広域処理を全国の自治体に拡大していくには、放射能の不安を払拭する必要があります。今回の都の取り組みは、福島県の災害廃棄物は受け入れず、岩手、宮城両県に限ったものであったにもかかわらず、放射能の影響が一部で懸念されています。都の災害廃棄物の受け入れ事業を住民の理解を得ながら円滑に進め、事業の安全性を確保することが、全国の自治体を誘導するために極めて重要であります。
 都は、この事業を進めるに当たり、安全確保はどう確認し、どう評価しているのか、見解を伺います。
 次に、機能的な都市東京を築く取り組みの一環として、エネルギー政策について伺います。
 先月、東京都技術会議の中間のまとめがなされ、低炭素なまちづくりを実現するため、天然ガスコージェネレーションなどによる自立分散型発電を推進するなどとの理念が掲げられています。これは、都市の防災危機管理機能の確保に、系統電源のみに頼らず、省エネルギーや低炭素化にも配慮しつつ一定の電源確保も必要であると申し上げてきた、これまでの我が党の主張と一致するものです。
 中間のまとめにある臨海副都心でのモデル事業や、大規模複合開発でのガスコージェネレーションの導入、防災公園への自立電源設置などのリーディングプロジェクトを推進させ、効果を検証し本格実施につなげていくなど、具体的な施策を着実に推進していくことが必要であります。
 また、自立分散型発電とあわせ、都では、プロジェクトチームを設置し、環境負荷の少ない地産地消の百万キロワット級高効率天然ガス発電所の整備に向けて検討を進めています。
 そこで、自立分散型電源の推進やプロジェクトの進捗状況を含め、今後のエネルギー施策を具体的にどのように取り組んでいくのか伺います。
 都においても、夏の電力不足に対しては一事業者として率先して行動し、都民の協力を得ることができました。都内の電力の一%を消費する下水道局も、電力の抑制に大きく貢献したと聞いています。ことしの冬は、急激な気温の低下による電力需要増の可能性や、寒さの厳しい東北に優先的に電力を融通する必要があります。温室効果ガス削減の観点からも改めて気を引き締め、節電に努めることが重要であります。
 そこで、下水道局におけるこの冬の節電対策について伺います。
 また、エネルギー施策の視点からも、東京外かく環状道路は慢性的な交通渋滞を解消し、CO2やNOxの排出を大幅に削減させ、地球温暖化対策としても効果を発揮するだけでなく、災害時の救援、復旧活動にも極めて大きな役割を果たすなど、その便益が国全体に及ぶ重要な幹線道路であります。
 このため、我が党は、超党派の都議会外かく環状道路建設促進議員連盟と連携し、外環の一日も早い工事着工と地権者の用地買い取りにこたえるよう、要望活動を強めてきました。平成二十一年五月の外環整備計画決定後、二年半が経過し、用地取得も進んでおり、まさに今、工事を着工すべき時期であります。
 そこで、その間の進捗状況と今後の事業促進に向けた都の取り組みについて伺います。
 次に、活力のある都市東京を築く産業対策について伺います。
 長期化している円高は、十月末に戦後最高水準を記録するなど、歴史的な水準となっています。政府が十一月に発表した月例経済報告でも、景気の基調判断において景気の下振れリスクが増加するなど、いまだ大震災の影響を脱し切れない都内中小企業の経営環境は予断を許さない状況となっています。
 こうした中、我が党は先月二十四日、都に対して緊急要望を実施し、資金需要がふえる年末に向けて、中小企業の資金繰り対策や相談窓口の設置などの対応を強く求めました。
 年末対策については、知事も所信表明の中で万全を期していくと決意を述べられており、我々も力強く感じています。
 そこで、都としてどのような考え方で支援を講じていくのか、具体的な強化ポイントについて伺います。
 雇用情勢もまた、いまだ厳しい状況が続いています。国の発表によると、十月の完全失業率は四・五%と依然として高い水準にとどまっており、大学生の就職内定率も過去二番目の低さとなっています。こうした大変厳しい状況の中で、職を失った方や未内定の学生が抱えている不安を払拭していくことが大変重要であります。
 国は先月下旬、ようやく第三次補正予算により緊急雇用創出事業の基金を拡充しましたが、遅きに失したといわざるを得ません。都は、国の緩慢な動きに合わせることなく、速やかに、より一層の雇用創出や学生の就職の実現に向けた取り組みを進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、産業の空洞化への対応について伺います。
 都内の製造業は、これまでにない逆風にさらされています。そもそも、中小のまち工場の周辺に住宅が立て込んで、操業環境が万全ではない状況に加えて、今回の震災の影響により、電力供給が不安定となる懸念が生じています。
 さらに、歴史的な円高が企業収益の悪化に拍車をかけています。こうした状況が進めば、中小のものづくり企業は廃業か海外移転かを迫られ、地域に集積しているすぐれた基盤技術の数々も失われ、製造業そのものが成り立たない産業の空洞化が起こります。
 先進国では、産業の空洞化が共通した課題となっています。こうした危機的な事態に対して、都としても無秩序な空洞化を防ぐ対応策を速やかに打ち出すことが不可欠と考えます。
 特に、製造業の基盤となる技術を持つ工場が集積する地域に対し、市区町村と協力するなど、重点的な支援を含め、都としての効果的な空洞化対策の進め方について所見を伺います。
 次に、商店街振興について伺います。
 我が党は商店街について、地域の商業活動の拠点であり、住民の便利で快適な生活を支えるための役割を担う場として、さまざまな支援を行うべきであると主張してきました。最近では、地域の中で日常の買い物が困難な買い物弱者の問題が取り上げられ、この問題に対し、商店街を活用してどう対応していくべきか、我々も新たな問題提起をしたところです。
 都は、我が党の提案に沿った形でまずは実態調査をしっかりと行い、地元の市区町村と協力してモデル的に商店街の活用方策を立ち上げる考えを示しています。こうした着想は地に足がついた政策判断であると評価したいと思います。
 商店街を活用した買い物弱者への対応について、都としての取り組みについて伺います。
 次に、外国人旅行者の誘致について伺います。
 東日本大震災の影響で、東京を訪れる外国人旅行者の数は大幅に減少しました。その数は回復基調にありますが、震災前の状態には至っておらず、まだ道半ばの状況であります。
 都は、第二回定例会で我が党の代表質問を受け、外国人旅行者の回復に向け、海外の旅行事業者に対する積極的な働きかけや、国際会議、展示会などいわゆるMICEの機会をとらえたPRなどを実施すると伺いました。
 来年は、東京スカイツリーの開業やIMFと世界銀行の総会が東京で開催されるなど、都の観光においても意義深い年になると考えられます。都は観光産業の再生に向けて、外国人旅行者の回復を図ってきたと思いますが、これまでの取り組みの成果と今後の方向性について伺います。
 また、本年九月に、都は国に対して国際戦略総合特区を申請し、外国企業を戦略的に誘致してアジアのヘッドクオーターになるとの目標を明らかにしました。この特区構想においても、MICE機能の充実を挙げています。東京におけるMICE拠点としては、東京ビッグサイトやホテル、商業施設などが集積している臨海副都心があり、さらなる開発によって日本の重要な国際戦略拠点となると考えられます。
 さらに、臨海副都心にMICE機能が集積することによって、都内はもとより、東京ディズニーリゾート、日光、箱根といった近隣県への観光地へのゲートウエーとなることも期待され、首都圏全体への波及効果も大きいと考えられます。今後、都としてMICE拠点化にどのように取り組まれるのか伺います。
 また、臨海副都心は開発から二十年余りが経過し、知名度も上がり、国内外から年間四千五百万人を超える人々が訪れる観光名所となっています。MICE拠点化を進めるため、観光資源の一層の充実と、さらなるにぎわいを創出する仕組みづくりに向け、都はどのように取り組むのか伺います。
 次に、都市農業の振興について伺います。
 我が党はこれまでも、都民に新鮮な農産物を供給する都市農業と、都市環境の保全に大きな役割を果たす都市農地は、極めて貴重で重要であると強く主張してまいりました。
 我が党は、都内各地域の農業者と意見交換を重ねていますが、特に若い農業者の皆さんが、都市の中でさまざまな創意工夫を凝らした経営を行っていることはまことに心強いものがあります。
 その一方で、相続が発生した場合の農業経営については、その高額な納税により農業経営の継続が困難になるなど、我が党としても極めて強い危機感を持っております。農業者の努力にもかかわらず、農業の継続が困難になるような農地制度や税制度については、ぜひとも改善が必要であると考えます。
 そこで、都市農地の保全について知事の所見を伺います。
 農地を取り巻く情勢が厳しさを増す中、先月、東京都農林・漁業振興対策審議会から、東京農業の新たな展開について答申が出たと聞いています。
 そこで、その答申を今後どのように都の農業施策に生かしていくのか、伺います。
 次に、下水道事業における技術開発の取り組みについて伺います。
 東京の中小企業には、だれもが認める世界に誇れるすぐれた技術があり、技術の継承や産業力の強化、人材の育成は重要であります。
 都は、中小企業が開発した革新的で将来性のある製品、技術を、東京都ベンチャー技術大賞として表彰するなど、民間企業の技術開発を後押ししています。
 一方、都民生活と都市活動を支える根幹的社会基盤である下水道は、大地震を踏まえた震災対策、東京湾のさらなる水質改善、下水道の処理過程で発生する温室効果ガスの削減など、新たな課題への対応が求められています。そのためにも、中小企業との連携により革新的な技術を開発し、実用化することも必要であります。
 そこで、下水道局では、中小企業などの持つすぐれた技術をどのように活用していくのか伺います。
 次に、水道事業の国際展開について伺います。
 昨年来、都ではアジア各国にミッション団を派遣し、調査などを実施してきました。そうした取り組みが実を結び、都では、来年度にもベトナムで合弁会社を設立し、浄水場の建設に乗り出すと聞いております。
 このベトナムの事例は、国内の自治体で初めて海外の水道事業に本格参入するものであり、従前の取り組みから大きく踏み込むものとして高く評価します。東京の技術を広く世界へ伝える意味でも、こうした本格的な事業参画をぜひ積極的に行っていただきたいと思います。
 そこで、海外での本格的な事業展開に当たっての知事のお考えを伺います。
 また、ベトナムの事例では、浄水場を建設した後、長期にわたって水道事業を運営していく計画であると聞きました。事業を実施していく間には、さまざまなリスクの発生も懸念されています。
 そこで、今後の海外の事業展開では、どのような形でリスクマネジメントを行っていくのか、所見を伺います。
 安全で安心できる都民生活向上の取り組みについて伺います。
 まず最初に、自転車対策です。
 この十年間、都内における交通事故全体は減少していますが、一方で自転車が関与する事故の割合は増加傾向にあり、昨年は三六%に上っています。また、歩道を猛スピードで走行する自転車やブレーキを外した違法な自転車など、ルールを守らない利用が目に余ります。
 自転車は自賠責のような保険制度が未整備なため、一たび事故が起きれば、被害者はもとより、加害者側も補償の問題も含めて重大な影響を受けることになります。
 先日、警察庁は、自転車を原則車道走行とすることについて、改めて周知徹底する通達を公表しましたが、自動車の交通量が非常に多い東京では、地域の実態を踏まえた自転車対策が求められています。危険で違法な自転車に対しては、警察による厳しい取り締まりが必要であることはいうまでもありませんが、それだけで自転車の問題すべてが解決されるものではありません。
 自転車は、だれもが利用する乗り物だけに、その対策に当たっては、都、市区町村はもとより、民間を含めた幅広い関係者の連携が不可欠であります。
 民間では、自主的に学校等で自転車シミュレーターを活用した安全教育を行っている例もあり、こうした取り組みと協力連携し、社会全体として自転車の安全利用に取り組んでいくことが重要であります。
 そのためには、都民、行政、事業者の役割と責務を明らかにするとともに、関係各機関の連携体制を整備するなど、自転車の安全利用促進のための仕組みづくりを早急に進める必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、サイバーテロへの備えについて伺います。
 都は今般、防災対応指針を策定して、震災対策の大幅な刷新に乗り出しましたが、一方で、人為的な災害であるテロに対する備え、危機管理も重要です。近年、都は、NBCテロ対策訓練などを実施してきましたが、今、新たな大きな脅威としてクローズアップされているのがサイバーテロです。
 八月下旬に放送された石原知事と池田前警視総監とのテレビ対談を興味深く拝見いたしました。その中で、サイバー空間には経済的利益などをねらったサイバー犯罪だけでなく、国家の基幹システムを無力化するサイバーテロ等の脅威が存在し、これらに対する組織的な取り組みが求められると論じられていました。
 最近でも、大手の防衛産業や衆議院のネットワークが攻撃にさらされました。これらは、外部からネットワーク内部に送り込まれたウイルスに感染したパソコンが、国外のサーバーに不正に接続し、情報を流出させてしまうというものであります。一日も早い真相の解明が待たれますが、こうした事態は国家機密の漏えい、国益の喪失に直結しかねません。
 我が国のインターネット利用者は九千万人を超えており、今やインターネットは、我々の社会経済活動にとって極めて重要なインフラとして国民生活を支えています。
 一方、ネット空間におけるサイバー犯罪として、違法情報、有害情報がはんらんするなど、その負の側面も日増しに多くなっているのも現実であります。
 サイバーテロは地方自治体にとっても対岸の火事ではなく、十一月には、自治体向けにクラウドコンピューティングサービスを提供する企業が被害に遭いました。最先端技術を持つ日本の企業でもやすやすと侵入されてしまう現実を直視し、今こそ、官民が総力を挙げて対策をとるべきであります。都みずからもしっかりと守りを固めていかなければなりません。
 そこで、サイバーテロという新たな脅威について知事の見解を伺います。
 サイバー攻撃の危険性には十分な対策が必要であることは論をまたないところであります。そのような昨今のサイバー攻撃に関して、多くの政府中枢機構が集中する首都東京を所管する警視庁として、どのような認識を持っておられるのか伺います。
 また、サイバー攻撃による被害を未然に防止するためには、官民の連携が不可欠なところではありますが、警視庁ではサイバー攻撃対策として具体的にどのような取り組みを行っているのか伺います。
 さらに、情報通信ネットワークは今後も高度化を続け、我々の生活の依存度はますます高まるものと考えられます。反面、サイバー攻撃の手法も巧妙化し、規模も大きくなることが危惧され、サイバー攻撃への対策は官民挙げて、一層強力に推進していく必要があると思われます。
 警視庁として、今後の対策並びに事案発生の際の対応などについて伺います。
 次に、都民の健康を守る福祉、医療制度について伺います。
 命を守る都立病院の改革についてです。
 大震災から九カ月を迎えていますが、各地の公的病院が果たした災害対策としての医療支援は高く評価されています。都立病院も、発災直後からさまざまな支援を行ってきており、今後、さらなる被災地支援はもとより、都内の災害対策への取り組みも強く望まれています。
 一方、少子高齢化や疾病構造の変化、国の社会保障制度改革の動きなど、医療を取り巻く環境も大きく変化しようとしています。このような中で、現行の計画である第二次都立病院改革実行プログラムは平成二十四年度までとなっていますが、引き続き、都立病院改革マスタープランで掲げる理念を踏まえた都立病院改革に取り組んでいく必要があると考えます。
 そこで、都立病院改革の今後の進め方について伺います。
 次に、都のがん対策について伺います。
 がんは日本人の死亡原因の第一位であり、都民の健康にとって重大な脅威となっています。今後、高齢化が一層進行する中、がん患者数はさらに増加することが見込まれます。
 こうした中、国ではがん対策基本法に基づき、がん対策基本計画の見直しが進められていると聞いています。都においては、東京都がん対策推進計画に基づき、がん対策に取り組んできましたが、この計画についても五年ごとに見直すことになっています。
 そこでまず、東京都のがん対策について、これまでの取り組みと成果を伺います。
 また、今後、国の計画見直しを踏まえ、都のがん対策推進計画をどのように改定していくのか、所見を伺います。
 次に、高齢者福祉対策について伺います。
 都はこれまで、社会福祉施設の施設基準を大都市にふさわしいものとするよう、国に対し再三にわたり提案要求してまいりました。このたび、国はこのような都の提案を受け、地方分権推進の観点から、地方自治体の自主性を強化し自由度の拡大を図るため、都道府県が独自に社会福祉施設などの基準の一部を定めるよう改めました。その代表的な施設の一つに、特別養護老人ホームがあります。
 都は、学識経験者も交えて、特別養護老人ホームの独自基準の設定を検討する委員会を設置し、先般そのまとめを公表いたしましたが、それを踏まえ、今後どのような対応をしていくのか、その基本的な考え方を伺います。
 福祉と保健とともに重要なのが教育です。真に社会人として自立した人間を育成するための取り組みについて伺います。
 教育は国家百年の大計であり、国民の未来や国の行く末をも左右する重要な柱であります。
 我が党は、教育における行き過ぎた個人主義、義務や責任の伴わない権利の主張など、戦後教育が生んだゆがみを正すため、教育基本法の改正に取り組み、豊かな情操と道徳心を培うこと、伝統と文化を尊重することなど、真に必要な教育理念を明確にし、一定の成果を得てきました。
 しかし、日本の将来を背負って立つ人材を育成するためには、これにとどまらず、若者に厳しい国際社会の中で、生き抜く確かな能力とチャレンジ精神を身につけさせる取り組みが重要であります。
 知事は、破壊的な教育改革を目指し、制度や仕組みにとらわれない議論を進めるため、教育再生・東京円卓会議を設置されました。先月、その第一回の会議が開かれ、こうした次代を担う人材の育成に向けた具体的な議論が行われたと聞いています。会議で得られた成果を改めて伺うとともに、今後の取り組みについて知事に所見を伺います。
 次に、都立高校改革について伺います。
 我が国はこれまで、都立高校において、公共の精神や伝統と文化の尊重など、改正教育基本法の趣旨を実現するとともに、生徒に規範意識や基本的な体力を身につけさせ、健全に育成する教育の実践を求めてきました。我が国の社会経済が停滞や迷走を続ける今こそ、都立高校が平均主義的な教育を改め、生徒一人一人の能力を最大限に伸ばしていくことが必要であります。
 都教育委員会は先日、新たな都立高校改革推進計画の骨子を公表し、生徒の知、徳、体に係る教育内容の充実を初めとした、さまざまな施策の方向を明らかにいたしました。
 そこで、新たな都立高校改革推進計画により、都立高校を今後どのように改革していくのか、基本的な考え方について伺います。
 また、学校教育の成否は、教育に直接携わる教員に大きく左右されます。都立高校のさらなる改革を進めていくためには、これまで以上に教員が生徒と向き合いながら指導を行う必要があり、教員には、学習指導、生活指導、進路指導など、さまざまな能力の向上が一層求められます。社会の要請に対し、個に応じた指導を充実するためには、個々の教員のさらなる育成を図るべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、次世代リーダー育成についてです。
 我が党はこれまで、言葉の壁を乗り越え、異文化に接し、さまざまな物の見方、考え方に触れるためには、高校生を海外留学させていく必要があると提案してきました。昨今、若い人たちに接すると、豊かさの中で過保護に育ち、ひ弱な内向き志向が見られるなど、将来に不安を抱かざるを得ません。
 そのため、高校生を海外に派遣して学ばせるなどして、将来の我が国を牽引する若者を育てることが重要であると考えますが、まず都教育委員会の見解を伺います。
 あわせて、東京における公教育で重要な役割を担っているのが私立高校です。私立高校の生徒に対する留学支援について、都はどのように考えているのか伺います。
 また、高校生の海外留学に当たっては、高校生が大学入試を意識する余り、せっかくの留学をちゅうちょすることがないような仕組みの構築が重要です。
 文部科学省の統計によると、全国の大学生のうち約七十三万人、四人に一人が都内の大学に在学しているのが現状であり、多数の大学が集積する東京から、まずは仕組みを構築し、実践されるべきと考えます。
 そこで、首都大学東京において、例えば留学した生徒の実績を適切に評価するなどの入学者選抜を取り入れる必要があると思いますが、見解を伺います。
 次に、私立学校の振興について伺います。
 国は一昨年の政権交代後、十分な検討もせずにさまざまな施策を打ち出し、多くの分野でゆがみを生じさせています。私学振興についても、いわゆる高校無償化に伴う就学支援金においては、手続の煩雑さに加え、事務経費の交付額も極めて不十分であり、地方や学校に負担を押しつけるなど、国のやり方は全く無責任といわざるを得ません。
 とりわけ幼稚園については、少子化の進行が続く中、就学前教育の持つ重要性が今まで以上に大きくなっているにもかかわらず、国は、政権交代直後の二十二年度予算において、幼児教育を支える幼稚園就園奨励費補助を安易に変更し、保護者負担を増加させる制度改悪を行いました。我が党はこれに強く反対するとともに、都に対し激変緩和措置を要望した結果、就園奨励特別補助が創設されました。
 しかし、本年度においても国は事の本質を理解せず、小手先だけの中途半端な補助単価の見直しにとどまり、いまだ負担増の問題は解決されておりません。
 そこで、これまでの就園奨励特別補助の実施状況と、今後の都の対応について伺います。
 次に、オリンピック・パラリンピックについてお伺いします。
 近代柔道の創始者である嘉納治五郎先生は、戦争のため幻の大会に終わりましたが、一九四〇年東京五輪招致決定に導いた最大の功労者でありました。嘉納先生は、精力善用、自他共栄との言葉を残されました。これは、目的を果たすために最も効力ある方法を用いつつ、それを実生活に生かすことで人間と社会の進歩発展に貢献せよとの教えです。
 今、東京が改めて取り組んでいる二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致は、スポーツを通じて世界平和を希求するオリンピック精神を具現化するものであり、まさに嘉納先生の教えそのものです。同時に、東日本大震災から日本が再生するための極めて大きな牽引力となるものです。
 今回、この国家同士の熾烈な争いを必ずや勝ち抜き、開催権を手にするには、日本国民全体が一丸となって戦いに取り組まなければなりません。
 知事は、本定例会の所信表明で招致体制が整ったと述べられました。先月末には、桜の花をモチーフにした招致ロゴも発表され、さらに機運醸成に取り組みやすい環境となってきました。
 この招致体制の一翼を担うのは、招致委員会の評議会であります。先日開催されたこの評議会には、総理大臣経験者や超党派のスポーツ議員連盟メンバーを初めとした、国、そしてスポーツ界、経済界、各種団体など、各界から多くの方々が参画されたと聞いております。
 そこで、日本国じゅうの力を結集した戦いのかなめとなる招致委員会評議会の今後の展開について伺います。
 最後に、東京多摩国体、スポーツ祭東京二〇一三についてお伺いします。
 開催まで残すところ二年を切り、開催準備もいよいよ佳境に入ってまいりました。大会を成功させるためには、都内全域でさらに大会開催機運を盛り上げていく必要があります。
 開催年の平成二十五年は、我が三多摩が東京になってちょうど百二十年を迎え、多摩地域にとっては記念の年でもあります。東京で五十四年ぶりに開催するこの大会を、国体と全国障害者スポーツ大会というスポーツ競技会の成功だけにとどまらせることなく、地域の盛り上がりへとつなげていく必要があります。
 大会開催機運の醸成を図るとともに、歴史や文化を振り返り、地域の活性化につなげていくべきと考えますが、所見を伺います。
 さらに、大会開催を契機として、多摩振興につながる幅広い事業の展開を図る必要があると考えますが、所見を伺います。
 冒頭申し上げたとおり、百年前、我が国は気概と活気に満ちあふれていました。萎靡沈滞気味の現代でありますが、東京がさらなる躍進を遂げ、これからの百年を希望と喜びに満ちる時代にすることこそ政治の役割と確信しています。
 我が党の推進する政策が、今後、東京を築いていく礎となることをかたく信じ、私の代表質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 吉原修議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、TPP問題を初めとする国政の現状についてでありますが、日本は資源や食料の多くを海外に依存しておりまして、原材料を海外から輸入し、加工してすぐれた製品をつくり出すことで成り立ってきました。我が国にとっての自由貿易が重要なことは論をまちませんが、今回、アメリカが自国の権益拡大のために推進しようとしている環太平洋パートナーシップ協定、TPPへの対応となると、これはいささか話が別だと私は思います。
 国家の役割の第一義は、国民の生命と生活を守ることであります。しかし、その日本の政治家や官僚は、外交交渉において、国益を構えたゲーム感覚が著しく欠落していると私は思います。
 国は、アメリカの機嫌をとるために、慌ててTPP交渉への参加の方針を決めましたが、これは自民党政権以来、現の民主党政権も含めて、アメリカへの依存、従属という習性がしみついた日本の政治が、食の安全や医療、社会保障など、国民の生活に重大な影響を及ぼす問題に対して、虚々実々の駆け引きを駆使して国益を主張するという、そういうことができるかというと、甚だ肌寒い思いがいたします。
 今回の、私、TPPの内容をすべてつまびらかにいたしませんが、アメリカのいい分の一つとして、アメリカが発案した、現にそれを製品にして売っていますけれども、遺伝子組みかえの食品、これは将来どういう禍根を残すかまだわからない。だからアメリカがそれを日本に輸入を強いてきたときに、これは東京からも提案しまして、遺伝子組みかえ食品に関しては、これはそれを買う買わないということはカスタマー、お客さんの判断に任せるために特殊なラベルを張ることにいたしました。これは全国に恐らく普遍していると思いますけれども、アメリカは今度それを外せというんでしょう。この食に関して、日本人の生命、健康というものを一体だれがどうやって保障できるんですか。私は、この主張一つ見ても、アメリカの主張というのは本当にけしからぬと思います。
 現に、さきの日米首脳会議の場で野田首相が、すべての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせると発言したとしておりますが、アメリカの作戦ともいえる一方的な発言に対して、我が国は、その発言を否定しながら訂正の要求もできていないのが現状であります。
 互いに国益を絡めて行う外交という勝負の中で、唯一絶対の原則は、相手の善意や友好といったこのセンチメントではなくて、信じられるものは自分しかないということだと私は思います。かつてイギリスの首相のチャーチルは、あの大戦の最中でもイギリス以外の国がすべて仮想敵国だと断定しましたが、これはやっぱり私は至言だと思います。こうした国家への執着がもたらす他者への非常に冷静な非情さがなくては、幾ら国内でTPPの問題を議論しても、国民の生活を、生命を含めて守れようはずがないと私は思います。
 交渉に加わる以上、国には、この点を肝に銘じて、アメリカに国民の利益を踏まえていうべきことをはっきりというという姿勢で臨んでもらいたいと思います。そして最後は、アメリカの意向ではなくて、みずからの決断で参加、不参加を決めなきゃならぬと私は思います。
 今後の都政運営についてでありますが、いうまでもなく東京は、単なる一つの都道府県ではなくて、まさに日本の首都であり、頭脳部、心臓部であります。その果たすべき役割は、首都として国の危機を乗り越える牽引役となることでありまして、私はこうした考えに立って、知事就任以来、都議会の皆様の協力を得ながらこの国を、ある部分では先導する改革を戦略的に進めてきたつもりであります。
 肝心の国政は、未曾有の国難に遭っても、肝心の危機意識を欠いたままで、日本をどこに導こうとしているのか判然といたしません。それゆえ、国家発展のかなめであるエネルギーの戦略もしかと構築できていない現況であります。
 これからの少子高齢社会に向けて、国は消費税の税率引き上げに重い腰を上げましたが、破綻寸前のその国家財政の実情を国民に複合的に明らかにして、複合的にむだを吐き出させ、国民の有効な説得材料となるべき複式簿記・発生主義に基づいた公会計制度を、いまだに導入していないわけでありますが、とにかく、この国は正確なバランスシートがない。大福帳の域を出ない。財務諸表がない。この現況でどうして日本の財政がどこまでいってるかとわかりますか。私は、これをほうっておいたら、財政が破綻してこの国は沈むしかないと思います。
 東京都を預かる知事として日本の危機を見過ごすわけにいきませんから、東京から二十一世紀の都市モデルを発信し、世界に誇れる都市へと進化させるべく、「十年後の東京」計画を充実強化した新しい計画を年内に発表いたしますが、これを羅針盤として、東京からこの国を再生するために、ひとり東京のためのみならず、日本全体をも見据えた政策を展開することで、我が国の確かな未来を切り開いていきたいものだと思っております。
 次いで、大災害に対する都民の心構えについてでありますが、今回の震災の教訓として明らかなのは、発災時に一人でも多くの人の命を守るためには、何よりもまず一人一人がみずからの命を守る自助、そして、近くの人たちが助け合う共助がいかに大切かということが証明されました。
 都内には、町会、自治会を母体とした既存の防災組織が約六千七百あるといいますが、高齢化が進んでノウハウも不足しているために活動が停滞し、例えば防災イベントに参加しない人々が六割にも上るというのが実態であります。
 また、震災当日に自社のオフィスで食料や水を提供されたのはわずか二割にとどまりました。七割以上の人が携帯電話の災害用伝言板の使い方も知らないなど、企業や都民の備えは不足しております。
 日本の国土は、アリューシャン列島を経てアラスカに至る世界で一番大きな火山脈の上に存在しているわけで、この間、東大の地震研究所の主任教授にお話を聞きましたが、体感はありません、体は感じませんが、計器ではかりますと、この東京は十分弱に一回地震があるんですね。我々は、いつ発生してもおかしくないその震災に備えて、公助に頼るばかりではなくて、みずからの命はみずから守るという、そのかたい決意を持つとともに、身近な支え合いによって災害に立ち向かっていかなければならないと思います。
 行政としても、ただ手をこまぬいているだけではなくて、自助、共助の取り組みの再構築を図り、東京の総力を結集した防災対策を講じていくことが重要だと思います。こうした考えに立って、今回、東京都防災対応指針を策定いたしました。
 このためにも、実は発災以来、東北に出向いて三つの県でいろんな分野で手助けをしてきた都の職員の報告をこの間聞きましたが、非常に参考になりました。これは津波にたびたび襲われているあの東北の三県では、災害に備えて災害コーディネーター、主に医療と福祉に関係する、そういうコーディネーターを設けているそうでありまして、これは非常に大事な存在になると思います。東京は、向こうの県に比べて広い、しかも人口の多いところでありますから、やはり二十三区のそれぞれの区、そして他の市町村でもそれぞれの責任において、こういった役を人選して備えるべきではないかという気がいたします。これも条例にこれから盛り込んでいきたいものだと思っております。
 首都直下地震などの大災害に備えて、都民の危機意識をより一層喚起していくとともに、多様な主体による共助の仕組みであります帰宅困難者対策のための条例の設定や、防災隣組の再構築など、自助、共助の取り組みを積極的に後押ししていきたいと思っております。
 次いで、災害廃棄物の受け入れについてでありますが、未曾有の大震災から間もなく九カ月が経過いたしますけど、依然として通常のごみ量の十数年分にも当たる多量の瓦れきがかの地の市街地に残っておりました。被災地の生活再建の大きな妨げとなっております。
 被災地の厳しい現実を前に、口先だけの励ましではなくて、連帯の心を確かなものとしなければ、被災地の復興、日本の再生はあり得ないと思います。
 しかるに国は、単に自治体に協力を呼びかけるだけで、広域処理の実現に必要な仕組みの整備に、どうも自分から汗をかこうとしないために、処理は一向に進んでいないという現状でありまして、都は、被災地を後押しするために、区市町村や民間とも力を合わせて、岩手県と宮城県の瓦れきを受け入れることにいたしました。都が安全性を十分確認し、都民にわかりやすい情報を公開しながら災害廃棄物を受け入れているという事実は、必ずや他の自治体を動かし、被災地の復旧、復興が大幅に加速されるものと確信しております。
 先般も首都圏の首脳会議がありましたが、川崎市の市長さんに私はあえて申し上げたんですけど、最初、川崎はこれを受け入れるといっていながら、何千通かの要するに反対の意見が来たら、まあ、たちまち腰が引けてホールディングになっていますけど、お互いにこれはやっぱり覚悟を決めてやろうじゃないか、きちっとした説明をすれば必ず市民も納得してくれるはずだと申しました。
 都は、これまで培った放射能測定、安全管理などのノウハウを惜しみなく提供していくつもりであります。
 次いで、都市農地の保全についてでありますが、都市農地は、農業生産の基盤としてばかりではなくて、災害時の避難場所やヒートアイランドの緩和など、さまざまな機能をあわせて持っている都市の貴重な財産であります。
 しかし、国はこうした都市農地の役割と重要性を理解せずに、いずれは都市化される農地であるとして十分な保全策を講じておりません。このままでは、相続のために農地の売却を余儀なくされ、農地の減少がさらに加速することはもう明らかでありまして、看過できない問題であると思います。
 都市農業が継続され、都市での農地がその役割を果たしていくためには、国の政策転換と、これは税制含めて関係の制度の改善が必要であると思います。これらを強く国に求めていくとともに、農地が継続できるような、都としても農業者をしっかりと支える独自の取り組みを進めていきたいと思っております。
 次いで、水道事業の国際展開についてでありますが、日本のように蛇口から水が飲める国は世界でもわずかしかありません。いまだに多くの人々が安全な水を手にすることができずに苦しんでいるという状況があります。特に、成長の著しいアジア諸国では水不足が深刻な状況になっております。
 東京は世界に誇る高度な水質管理技術や、漏水率二・七%を達成した、高い漏水防止技術を有しておりまして、日本の民間企業もまた、すぐれた製品製造技術を数多く持っております。
 何年前になりますか、ニューヨークで行われましたC40、世界の四十の大都市の環境問題の会議がありましたが、そこで水の問題が出ましたので、あなたのいっていることはちゃんちゃらおかしい、東京の水を見ろといって水の説明をしました。たちまちその質問が集積して、あそこで東京の水道局長は集中で質問を受けて、これに答えて男を上げたと思いますが、これは何も局長の功績じゃなしに、この東京全体が今までやってきた水道事業の大きな成果だと私は思います。
 こうした日本の高い技術を生かすべく、民間企業などとも連携して、水不足に悩むベトナムのハノイで三十万トン規模の浄水場を建設し、水道水の供給事業を行うことといたしました。これは自治体として初めてでありまして、海外での本格的な事業進出となります。そこで、アジア諸国への本格進出の主体となる会社を設立し、その中で現地合弁会社への出資に必要な資金も確保してまいります。
 今回のように、東京と民間企業が連携した海外展開は、日本の存在感を示すとともに、産業界の国際競争力強化にもつながるものでありまして、国ももっと積極的に取り組むべきだと私は思います。世界最高の東京水道の技術を海外で大いに活用し、発展途上国の水事情の改善と日本の経済の活性化につなげていきたいと思っております。
 次いで、サイバーテロについてでありますが、お答えを申し上げる前に、皆さんに聞きたいんですが、皆さん、三沢の飛行場に行ったことはありますか。最近青森空港ができてめったに使われなくなりましたが、あそこにエシュロンという日本全体に対する盗聴機械がある。これは、かつてはソビエトに対する情報収集の機械でありましたけど、今はもうその用途がほとんどなくなったはずなのに、依然として、数もふえまして大きなドームで隠されて、レーダーは全部東京に向かっています。
 今さらサイバーテロの問題を持ち出すまでもなく、日本の官公庁の情報というのは全部そこで要するに盗聴されているんです、ずっと。私はそれを指摘したことがあるんですが、冷戦時代もあったんですね、冷戦──なくなったと思ったら依然としてあそこにあって、日本の官公庁の情報というのはほとんど盗聴されているんですよ。
 そういうことを私たちはやっぱり念頭に置いて、情報の管理というものを考えなければ、今さらサイバーテロで右往左往する前に、今まで、とっくの昔にそういう状況に置かれているということもやっぱり認識して、これから物を考えていかなきゃならぬと思います。
 コンピューターやインターネットなどの文明の利器によりまして、人々の生活は確かに便利になりましたが、同時に、ご指摘のようなウイルスなどを利用したサイバー攻撃によって、大切な情報が瞬時にそして多量に漏れてしまうなど、以前にはあり得なかった取り返しのつかない事態が起こり得るわけであります。
 都では、現在、警視庁が中心になって、民間事業者と連携したサイバーテロ対策協議会を立ち上げ、実践的な訓練を行っております。都としても、警視庁と連携して、都民への危機意識の喚起を図るとともに、みずからの備えも固めなくてはならぬと思います。
 個人や企業が自衛することは当然でありますが、攻撃は執拗さを増し、巧妙化しており、しかし、それは以前から違った形で続いているわけですけれども、この国全体として本当の意味での備えを固めなければならない時期に来ていると思います。
 現在の我が国は、平和という生ぬるい湯の中にどっぷりとつかって、危機感のない社会をつくり上げてしまいましたが、国全体で総力を挙げて、情報に関しての管理体制というのを再構築していかなければならないと私は思います。
 次いで、教育再生・東京円卓会議の成果と今後の取り組みについてでありますが、我が国が激変する世界に伍していくためには、若者のはかり知れない可能性を開花させ、日本を背負って立つ人材を鍛え直していくことが急務であります。そのためには、戦後教育を根本から見直して、確かな教育の再生に取り組まなければならないと思います。
 そのよすがとすべく、教育再生・東京円卓会議を設置し、先日、その第一回の会議を開きました。各委員は、いずれも高い見識と信念を持って、教育の現場に精通された方々で、示唆に富んだ貴重な意見を提案いただきました。会議では、学生寮の共同生活や体験学習など、子どもたちに人間関係での原体験を積ませることで、身体性を備えた真の教養がはぐくまれていく実例が紹介されました。また、その原体験の仕組みを教育に取り込むことは、バーチャルな仮想の世界に閉じこもっている今の子どもたちにとって、とりわけこれは有効な手だと私は思います。
 また、学生の理数系離れが進んでおりまして、研究者や学生の質が甚だ低下しているというような話がありました。国際社会の中で取り残されつつある日本の姿を象徴する危険な兆候だと私は思います。世界に誇るべき我が国の科学技術を守るためには、早急に大胆な対策を講じなければ、これは間に合わない。
 さらに、若者の内向き志向が進む中で、グローバル人材の育成についてもさまざまな意見が出されました。他国の文化や思想を理解するためには、しかし、何よりもまず自国の歴史や文化、言語というものをしっかり理解させること、習得させることが必要だと私も思います。
 その上で、これまでないがしろにされてきた英語による表現力、会話能力を身につける実践的な英語教育こそ力を注がねばならぬと思いますが、しかし、その前にやはりきちっとした日本語を私たちは教えなければならぬと思います。
 今回の会議では、具体的に意見や提案がなされまして、非常に参考になりました。今後、科学技術や芸術、スポーツなど、幅広い視点から東京円卓会議の議論を重ねて、出された意見を集約しながら、具体的な改革案を導き出していきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監、教育長、技監から答弁いたします。
   〔警視総監樋口建史君登壇〕

〇警視総監(樋口建史君) サイバー攻撃に関する三点のご質問でございました。
 まず、サイバー攻撃の認識でありますけれども、もうご説明のとおりでありまして、政府機関や民間事業者がサイバー攻撃を受ける事案が続発をしておる状況にあります。こういった攻撃は、国家の安全保障や社会経済活動に大きな支障を生じさせるおそれがあるわけでありまして、治安上も非常に大きな脅威であると認識をしております。
 サイバー攻撃というのは、これまたご承知のところでありますけれども、その態様と目的によりまして、次の二つの類型に分類されます。
 一つはサイバーインテリジェンスでありまして、これは情報通信技術を用いた諜報活動であります。代表例が、標的型メールによるウイルスの送り込みであります。その手口は、多くの場合は、まず攻撃者が政府機関や民間事業者の職員に対しまして、通常の業務の真っ当なメールであるかのように装いまして、不正プログラムが添付されたメールを送信する。これを受信した職員等が開封をいたしますと、当該コンピューターがウイルスに感染する。それで情報が盗み取られるというものであります。
 ことしは防衛産業関連事業者等に対しまして、この標的型メールによると見られるサイバー攻撃が行われていたことが判明しているところであります。警視庁におきましては、現在捜査を続けておるところでございます。
 もう一つの類型がサイバーテロであります。このサイバーテロと申しますのは、政府機関でありますとか金融、電力、通信などの社会の重要インフラともいうべき分野の企業等の主要なコンピューターシステムに対する電子的な攻撃でありまして、これまたこれまでに政府機関のウエブサイトに対して大量のデータを送信しまして、機能を麻痺させる、停止させる、DDoS攻撃、ディストリビューテッド・ディナイアル・オブ・サービスでありますが、相当件数発生をしておるところであります。
 次に、このサイバー攻撃に対する取り組みはどうだということでございますが、まず、サイバーインテリジェンスにつきましては、ことしの八月でありますが、警察庁の主導で、警視庁を含む全国警察と、攻撃にさらされるおそれのある全国約四千の事業者等によりまして、これを束ねまして、サイバーインテリジェンス情報共有ネットワークを設置いたしました。実際の攻撃手法、攻撃手口等の情報を共有するなど、今、進めておるところでございます。
 それから、サイバーテロにつきましては、これは若干古いのでありますが、既に平成十三年に警視庁及び東京都と約五十の民間のインフラ事業者で構成するサイバーテロ対策協議会を設置しておりまして、この協議会を通じて、定期的に開催しておるわけでありますが、情報共有をしておりますほか、知事から先ほど説明がありましたけれども、実際にこの訓練、サイバーテロが発生した場合を想定しまして、攻撃をまず、二十四時間、サイバーパトロールをしているものですから、察知した警察から、攻撃を受けている企業に対して通報する。そして、当該企業による事実確認が速やかに行われて、それから被害拡大を防止するための通信の遮断が行われる。さらにはその後の捜査に資するための記録の保全が行われるといった一連の訓練を、実際の機材を用いて共同訓練を実施するなどいたしておるところであります。
 それから、最後に、サイバー攻撃に対する今後の対策、事案発生の際の対応はどうかということでございましたけれども、要するに、日常の問題としてどれだけ実のある情報共有が制度的にできているか、そしてまた、実際の攻撃にさらされた場合において、どれだけ的確な初動措置がとられるか、これが問題であり、課題であるわけでありますから、今、先ほど申し上げましたこのサイバーインテリジェンス情報共有ネットワークとサイバーテロ対策協議会、こういった官民連携の枠組みを日常的に動かし、活用する、活性化することが大変重要であるということを通じて、防御意識をまず全般的に高めることが大変重要であるとも考えておるわけでありますが、諸課題に対応していきたい。
 特にサイバー攻撃発生後の捜査もこれまた大きな課題なんですけれども、捜査のあり方につきましては、このサイバー空間はまさに日進月歩の世界でございますので、最高水準の最高レベルの情報セキュリティーの専門機関、専門家の知見をいかに取り込むか、活用できるか、それが非常に重要であるということで、今、取り組みをしておるところでございます。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、学校における防災教育についてでございます。
 都教育委員会はこれまで、災害時のあらゆる場面で児童生徒が的確な判断と行動ができるよう、各学校における防災教育の充実に取り組んでまいりました。そこで、東日本大震災から一年となる来年三月を東京都防災教育点検月間といたしまして、区市町村教育委員会とも連携して、全公立学校のこれまでの取り組み成果を点検いたします。
 今後は、小中学校用に新たに作成する防災教育教材「三・一一を忘れない」等をもとに、学校における教育活動全体を防災の視点から見直し、清掃活動や整理整とんの徹底等、日常から、自主自立を重んずる自助の心を育ててまいります。あわせて、地域や関係機関と連携した避難訓練や防災訓練等を実施いたしまして、避難所等で進んで他の人々の助けとなれるよう、共助の心を育てる防災教育を推進してまいります。
 次に、新たな都立高校改革推進計画の基本的な考え方についてでございます。
 都立高校が、厳しい国際社会の中で強く生き抜く力を生徒に身につけさせるには、進路希望が進学、就職のいずれであっても、高校生活を通じて社会人として求められる能力と態度を育成する必要があると認識しております。そのため、教員が生徒の能力、適性を理解した上で、学校の設置目的に応じた指導を行い、生徒一人一人の潜在能力を顕在化し、最大限に伸ばすこと、また、それに必要な教員の資質、能力の向上と組織的な学校経営の強化を、改革の基本的な考え方としたところでございます。
 都教育委員会は、こうした考え方に立ち、生徒が進路希望を実現するとともに、みずからの成長を実感することができる学校となるよう、都立高校の改革を進めてまいります。
 次に、教員の人材育成についてでございます。
 生徒の個に応じた教育を推進するためには、まず何よりも教員がプロ意識を持って、生徒一人一人の可能性を見出し、それを高めようとする強い情熱が必要でございます。そのため、校長の強いリーダーシップのもと、学年や教科といった壁を超えて、学校全体で個々の生徒の課題を共有化させてまいります。また、主幹教諭、主任教諭が若手教員を育成する過程で、例えば互いの授業を見て研究させるなど、教員が相互に競い合って成長していく組織風土を培ってまいります。こうした取り組みを通じて、教員の組織人としての意識を高めますとともに、学習指導、生活指導、進路指導などの力を向上させ、新たな都立高校改革を担い得る人材を育成してまいります。
 次に、次世代リーダー育成についてでございます。
 世界を舞台に、さまざまな分野や場面で活躍できる若者を育成していくことは、我が国の将来の発展にとっても、これからの時代を生きる若者にとっても、極めて重要でございます。そのため、次代を担う若者を徹底的に鍛え、みずからの考えを臆することなく主張できる能力やチャレンジ精神などを身につけさせなければなりません。
 都教育委員会は、こうした視点から、都立高校生に海外で学ぶ意義や留学に向けた手順、事前学習などの情報を伝えるとともに、広く社会に留学の成果を発信するなど、新しい時代のリーダーを育成するため、意欲ある都立高校生を留学させる東京都独自の仕組みを新たに開発してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 五点のご質問にお答えいたします。
 初めに、東部低地帯における河川の耐震対策に関する現状と見通しについてでございますが、東部低地帯に暮らす約三百万人の生命と財産を大地震による水害から守るため、河川施設の耐震対策が極めて重要であります。
 都はこれまで、耐震性を向上させるため、スーパー堤防整備や江東内部河川の整備、水門等河川施設の耐震補強などの事業を推進してまいりました。
 整備に当たっては、河川施設に係る国の基準に基づき、関東大震災時の震度に対する耐震対策を、護岸や水門、排水機場等において、危険度の高い区間から優先的に行っております。平成二十年度末には、東部低地帯を囲む隅田川、中川、旧江戸川の外郭堤防の対策を完了させるなど、二十二年度末で耐震対策を要する総延長約百六十五キロメートルに対して、約九十七キロメートルが完了しております。
 また、水門や排水機場におきましても、対策が必要な二十カ所のうち、民地側の地盤が満潮面より高い二水門を除く十八カ所で完了しております。
 残る六十八キロメートルの区間のうち、六十六キロメートルにつきましては、民地側の地盤が満潮面より高い地域、または関東大震災時の震度に対する対策が完了している水門の内側にある地域であり、一定の安全性を有しております。
 このため、水門がなく、後背地が満潮面以下である約二キロメートルにつきましては、係留船対策など地元区と連携を図りながら、優先して耐震対策を進めてまいります。
 さらに、新たに東京都防災会議が示したマグニチュード八クラスの海溝型地震等を想定して、各施設の耐震性の照査を進めるとともに、専門家を含む技術検証委員会で耐震性の向上策等について検討を行っており、これを踏まえて、残る六十八キロメートルを含む整備計画を策定してまいります。
 今後とも、高度防災都市東京の実現に向け、財源確保に努めて、全力で耐震対策に取り組んでまいります。
 次に、中小河川における今後の整備のあり方についてでございますが、現在の整備水準を超える降雨が近年頻発していることから、雨の強さや範囲、継続時間などの降雨特性の変化や土地利用状況等の地域特性に適切に対応した河川整備を進めていくことが必要であります。このため、都は、本年六月に設置した専門家による委員会におきまして、中小河川における今後の整備のあり方について検討を進め、今般、委員会から中間報告を発表いたしました。
 ここでは二つの提言がなされており、一つ目は、地域の降雨特性を的確に反映させた目標整備水準を設定することであります。具体的には、これまで大手町の観測所のみの降雨データに基づき、都内全域を一律に設定してきた整備水準を、八王子の観測所において三十年間のデータが蓄積され、多摩部においても降雨の確率的な評価が可能になったことから、今後は、区部は大手町、多摩部は八王子のデータに基づき、それぞれ設定することとし、区部は一時間に六五ミリから八〇ミリ、多摩部は六〇ミリから七〇ミリの範囲で目標水準を定めるよう検討することが提言されております。
 二つ目は、一時間に五〇ミリを超える降雨に対しては、道路下や公園等の公共用地の利用が可能で事業効果も速やかに発現できる調節池による整備を基本的に進めることであります。施設配置の検討に際しては、一時間に一〇〇ミリを超えるような局地的集中豪雨が多発していることを踏まえ、現在の、既存の大規模調整池を連結するような施設の有効活用も図るなど、工夫をすべきであるとしております。
 今後は、平成二十四年夏を目途に最終報告を取りまとめた後、社会経済情勢の動向を踏まえて、都としての中小河川における整備方針を策定してまいります。
 次に、土砂災害に対する取り組みでございますが、集中豪雨や台風などによる土砂災害から都民の生命や財産を守るためには、ハード、ソフト両面から対策を推進することが重要であります。このため、都はハード対策として、土石流やがけ崩れの危険性が高い箇所、過去に災害が発生した箇所におきまして、砂防事業や急傾斜地崩壊対策事業などを実施しており、今年度は二十八カ所で事業中であります。また、老人福祉施設など避難に際し援護を必要とする方が滞在する災害時要援護者施設のある区域については、区市町村に対して警戒避難体制の整備を促すとともに、必要に応じ、急傾斜地崩壊対策事業などを実施してまいります。
 一方、ソフト対策としては、土砂災害防止法に基づく基礎調査を実施し、土砂災害警戒区域等の指定を進めております。今年度は約千三百カ所を指定し、年度末には西多摩地域及び八王子市で四千カ所を超える予定でございます。
 土砂災害危険箇所につきましては、当初、航空写真や地形図をもとに、島しょ部を含む都内全域で約八千カ所と想定しておりましたが、区域指定に当たり、丘陵地の開発状況を詳細に把握するとともに、住民の方々の了解を得ながら土地に立ち入るなど、現地調査を行いました。その結果、新たな危険箇所の判明や、一つの想定区域が複数の区域に分割されたことなどにより、現時点で一万五千カ所にふえる見込みとなりました。
 今後とも、土砂災害警戒区域等の指定を早急に進めるなど、関係自治体と連携して土砂災害対策を推進し、都民の安全確保に全力で取り組んでまいります。
 次に、木密地域における都市計画道路整備についてでございますが、木密地域は老朽化した木造住宅や狭隘な道路が多いことから、震災時に火災の延焼による被害の危険性が高い地域であります。このため、延焼遮断のための空間確保や建てかえによる沿道建物の不燃化促進に効果が高く、安全な避難経路や緊急車両の通行路ともなる都市計画道路の整備が極めて重要であります。
 これまで都は、第三次事業化計画の優先整備路線を位置づけるに当たって、防災都市づくり推進計画で指定した約二千四百ヘクタールの重点整備地域も考慮して路線を選定し、都市計画道路の整備に取り組んでまいりました。
 今般の震災を受け、延焼遮断帯形成に資する都市計画道路整備の対象を、重点整備地域から整備地域にまで拡大し、全体として約七千ヘクタールについて、現在、優先整備路線以外も含め、基礎調査を実施しております。
 今後、事業を加速する新たな生活再建の方策などの検討を進め、東京の弱点の一つである木密地域において、燃え広がらないまちの実現を目指し、都市計画道路整備に全力で取り組んでまいります。
 最後に、外環整備のこれまでの進捗状況と今後の都の取り組みについてでございますが、外環は首都圏から全国に延びる高速道路網を環状に連結し、羽田空港や京浜港など交通、物流の要衝をネットワークさせていくためにも欠くことのできない重要な幹線道路でございます。加えて、懸念される首都直下地震や東海地震などにおいても、東京のみならず、日本の交通、物流の東西分断を防ぎ、国全体の防災機能を高めるため、そのかなめとなる外環は一刻も早く完成させなければなりません。
 これまで、事業着手二年余りの間、大泉、中央、東名の各ジャンクション地域において道路区域が決定され、計画的な用地取得が行われております。とりわけ都が受託している大泉ジャンクション地域においては、これまでに約一五%の用地を取得しており、引き続き強力に用地取得を推進してまいります。
 外環は、既に確保されている用地に立て坑をつくることにより、大深度地下トンネルのメリットを生かし、シールドトンネル工事に着手可能な状況にあります。このため、都は、平成二十四年度の本体工事費を含む整備促進に必要な予算を確保するよう、国に強く求めてまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 来年度の予算編成についてでございますが、大震災や海外景気の影響など、現在の社会経済情勢のもとにおきましては、都税収入が大きく改善することは考えにくく、厳しい財政環境が続くものと認識をしております。
 こうした中にありましても、都民の安心・安全を取り戻す施策や、雇用創出効果や経済波及効果のある投資的経費など、東京の活力を高めていく確かな手だてには、財源を重点的に振り向けていかなければならないと考えております。
 同時に、厳しい状況であるからこそ、事業評価の取り組みなどを通じて、一つ一つの施策の効率性、実効性を高める努力を今まで以上に徹底いたしまして、財政の対応力の確保に配慮することも不可欠であります。
 今、予算編成のさなかにありますけれども、これらの二つの取り組みを通じ、財政の健全性を維持しつつ、都政の諸課題にしっかりと対応し、都民の皆様の期待にこたえる予算とするべく、引き続き作業を進めてまいります。
 法人事業税の暫定措置につきましては、都は国に対し、一貫して撤廃を訴えてまいりました。法律では、今年度末までに税制の抜本改革を行うことを義務づけており、暫定措置についても同時に撤廃すべきものと位置づけております。国が行っております税制の抜本改革の中で、約束どおり撤廃するよう強く求めてまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 五点のご質問にお答えをいたします。
 まず、被害想定についてでありますが、東日本大震災の経験を踏まえ、平成十八年に策定した被害想定を再検証する必要があることから、都は、本年九月に東京都防災会議に専門的知見を有する委員から成る地震部会を設置し、見直しに着手をいたしました。見直しに当たりましては、地震部会において、従来の首都直下地震に加え、海溝型の地震として関東地震を、活断層で起こる地震として立川断層帯地震を想定地震として選定し、来年春を目途に被害想定を検討していくこととしております。
 こうしたさまざまなタイプの地震について被害想定を行うことで、東京を襲う地震像や被害を客観的に示し、防災対策に生かしてまいります。
 次いで、帰宅困難者対策についてでありますが、東日本大震災の教訓をもとに、都は、猪瀬副知事と内閣府政策統括官を共同座長とし、近隣自治体を初め、経済団体、鉄道や通信など、各分野の事業者団体から成る帰宅困難者等対策協議会において、多面的な対策について議論を積み重ね、一斉帰宅の抑制の徹底に向け基本方針を取りまとめたところでございます。
 今後、この基本方針や協議会での議論を踏まえ、従業員の施設内待機やそのための三日分の備蓄、駅等での利用者保護や一時待機施設の確保、安否確認手段の確保、帰宅支援等を盛り込んだ帰宅困難者対策のための新たな条例の制定に着手をいたします。
 加えて、協議会での議論を検証するため、東京駅、新宿駅、池袋駅の三つのターミナル駅を主たる会場として、来年二月三日に帰宅困難者対策訓練を実施いたします。こうした取り組みを通じて、実効性ある帰宅困難者対策を進めてまいります。
 次いで、大規模集客施設における発災時の利用者保護でございますが、先般、帰宅困難者等対策協議会で取りまとめた一斉帰宅抑制の基本方針では、大規模な集客施設において、事業者等は、区市町村や関係機関等と連携し、利用者を保護するため、適切な待機や誘導に努めることとしております。大震災発生時に大規模な集客施設において利用者の保護を図ることは、帰宅困難者の発生による混乱と事故を防止する上で極めて重要であることから、今後、この基本方針を具体化するために、それぞれの施設ごとに事業者が取り組むべき事項や相互の連携の仕組みづくり等について引き続き協議会で議論を重ね、実効ある対策を講じてまいります。
 次いで、留学実績を評価する入学者選抜についてでありますが、首都大学東京は、広く国内外で起きているさまざまな事象に関心を持ち、都市社会の課題を発見し、その解決に向けてリーダーシップを発揮する人材の育成を目指しております。このため、これまでも、学力試験を中心とした一般選抜以外に、多様な能力や資質を持つ学生を受け入れるため、推薦入試、AO入試、特別選抜などの入学者選抜を行い、優秀な学生の確保に努めてまいりました。
 今後も、大学を取り巻く環境変化を鋭敏に見きわめながら、大学が求める学生像に合致した意欲ある学生を獲得できるよう、入学者選抜方法について創意工夫を進める中で、留学した生徒の能力や資質を生かせるような仕組みについても検討してまいります。
 最後に、スポーツ祭東京二〇一三を契機とした多摩振興についてでございますが、スポーツ祭東京二〇一三は、国民体育大会と全国障害者スポーツ大会を一つの祭典として開催する初めての大会でありまして、全国からも注目されております。
 この大会は、全国から多数の選手や関係者などが訪れるとともに、地元の自治会や商店会、ボランティアなども参加し、地域が一体となって取り組む大会として、多摩地域の振興発展にとって絶好の機会であると認識しております。
 この機をとらえて、多摩全体の魅力や可能性を再認識し、広く発信していくとともに、大会を通じて生まれた地域の連携や人々のきずなを継承していくことが重要であります。この大会を契機に、活力と魅力にあふれる多摩地域の実現につながる取り組みについて、関係局や市町村と十分に連携を図りながら検討してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 五点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、災害医療体制の充実についてでございますが、都は現在、大規模災害時における医療提供体制を確保するため、都内すべての病院を対象に、耐震化や自家発電設備などに対する支援を行っておりますが、今回の震災では、改めて、発災直後から中長期に至るまで、被害状況の迅速な把握、日々変化する医療ニーズに応じた医療救護体制の確保、その基盤となる地域における仕組みづくりの重要性が明らかになりました。
 そのため、都は、医療関係者や警察、消防などから成る災害医療協議会を今月中に設置をいたしまして、被害情報の一元化、医療資源の効果的な配分、傷病者等の後方搬送などを迅速かつ効果的に実施するために必要な体制などについて、検討を開始いたします。
 また、二次保健医療圏ごとに、地域災害拠点中核病院を中心といたしました、仮称でございますが、地域災害医療連携会議を設置いたしまして、協議会での検討結果を踏まえ、災害医療コーディネーターの設置も含め、災害医療における具体的な連携の方策などを検討いたします。
 こうした取り組みによりまして、大規模災害発生時における医療機能の確保に向け、地域と連携をした災害医療体制の一層の強化に努めてまいります。
 次に、震災に備えた物資の備蓄対策についてでございますが、東日本大震災におきましては、自治体の備蓄品だけでは被災地のニーズに対応できなかったほか、送る側、受ける側とともに、物資の輸送手段や搬入搬出に必要なスペース、機材、要員の確保などについて多くの課題が生じました。
 これらを踏まえまして、現在、都が被災した場合を想定し、必要な物資の品目、量や、その備蓄、調達方法、民間物流業者のノウハウを生かした物資の効率的な搬送、他県等からの物資受け入れの方法などに関し、民間シンクタンクを活用いたしまして、専門的な視点から調査検証を行っております。
 また、検証に当たりましては、実効性ある対策に結びつけられますよう、課題ごとに国、関係団体等の意見も幅広く聴取いたしております。
 検証結果は今年度中に取りまとめ、災害時に迅速かつ的確に備蓄、搬送体制が機能するよう、来年度の東京都地域防災計画の修正に反映させてまいります。
 次に、都のがん対策の取り組みと成果についてでございますが、都は、平成二十年三月に作成をいたしました東京都がん対策推進計画におきまして、予防の重視、二つ目に高度ながん医療の総合的な推進、三つ目、患者、家族の不安の軽減、四つ目にがん登録と研究の推進、この四つの基本方針を定めまして、総合的ながん対策に取り組んでまいりました。
 その結果、一点目の早期発見のかぎとなる地域、職域を含めたがん検診につきましては、胃がん、肺がん、大腸がん、子宮がん、乳がんのいずれにおきましても、計画策定時と比較して七%から一五%、受診率が上昇いたしております。
 また、二点目の、高度ながん医療を提供するがん診療連携拠点病院等の整備につきましても、二十四カ所から本年四月には三十四カ所となり、整備目標を達成いたしました。
 さらに、三点目でございますが、がん患者の生活の質を全体的に高めるため、緩和ケアに精通した医師を育成する目的で実施いたしております研修の修了者は、本年八月現在で二千五百二十四名となっております。
 四点目のがん登録でございますが、院内がん登録につきましては、既に各拠点病院等の登録データの収集及び分析に取り組んでおりまして、この実績を踏まえ、地域がん登録につきましても、来年七月からの開始に向けまして、都立駒込病院内に地域がん登録室の整備を現在進めております。
 こうした取り組みによりまして、現在の計画で全体目標の指標として掲げました七十五歳未満のがんの年齢調整死亡率は、この五年間で約一〇%減少いたしております。
 次に、東京都がん対策推進計画の改定についてでございますが、都は、総合的ながん対策を一層推進するため、現在行われております国の検討結果も踏まえまして、平成二十五年三月を目途に東京都がん対策推進計画を改定いたします。
 次期計画では、これまでの施策の成果を踏まえ、東京都医療連携手帳を用いた地域におけるきめ細かい医療連携体制や、患者、家族が希望する療養場所で質の高い緩和ケアを受けられる体制の一層の整備などを盛り込みたいと考えております。また、平成二十四年度に開始をいたします地域がん登録につきましても、がん対策の評価や新たな対策の企画立案に活用してまいります。
 計画の改定に当たりましては、東京都がん対策推進協議会のもとに専門部会を設置いたしまして、課題ごとに検討を行い、都民の意見も募集する予定でございます。
 最後に、特別養護老人ホームの独自基準についてでございますが、都は、国におきまして権限移譲に係る法案が審議をされております昨年十一月の段階から、学識経験者や現場の施設長等を交えた検討委員会を設置いたしまして、施設整備等のあり方に関して検討を行ってまいりました。
 委員会では、広い用地の確保が困難であること、建設コストが高いことなど、大都市東京の現状を踏まえた議論を行い、本年九月に、入所者の安全・安心に最大限配慮しながら都独自に基準を緩和する項目といたしまして、廊下幅の下限を二・七メートルから一・八メートルにすること、居室の定員や特別避難階段の設置要件を緩和することなどの五項目を取りまとめました。
 現在、十月に改めて示された厚生労働省の基準も踏まえながら、委員会の検討結果を盛り込んだ新たな条例制定の準備を進めております。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 防災対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、木密地域不燃化十年プロジェクトについてでございますが、木密地域の整備改善は、地域のまちづくりや住民の生活に直結した課題でございまして、地元区の果たす役割が大変重要でございます。
 このため、十年プロジェクトでは、まず木密地域の現状をきめ細かく調査するとともに、区と十分な意見交換を行うなど、解決すべき課題を的確に把握し、実効性のある施策を立案してまいります。また、区からの積極的な提案を受けとめ、都と区がこれまで以上に連携して、道路整備や建物の不燃化などを計画的、重点的に進める新たな仕組みを構築してまいります。
 これらの取り組みにより、危険度の高い地域において火災が発生しても燃え広がらないようにすることを目指して、木密地域の不燃化を加速させてまいります。
 次に、大規模な商業施設の耐震化についてでございますが、百貨店、ホテル、劇場等、不特定多数の方が利用する大規模な商業施設の所有者には大きな社会的責務があり、主体的に耐震化を進めることが重要でございます。
 都はこれまで、耐震化推進都民会議等を活用し、関係団体と連携して情報提供や普及啓発を所有者に対して行ってまいりました。
 今後はさらに、耐震性のあることが一目でわかる新たなマークの表示制度を早期に開始し、耐震化に向けた取り組みを強く促してまいります。また、一刻も早く耐震化を進めるために、耐震改修促進法に基づく指導、指示、公表等を徹底することにより、耐震化の実現に向けて万全を期してまいります。
 東日本大震災を受け、都民の耐震化への関心もかつてなく高まっておりますことから、この機をとらえ、大規模な商業施設の耐震化を推進し、災害に強い東京を実現してまいります。
   〔生活文化局長井澤勇治君登壇〕

〇生活文化局長(井澤勇治君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、地域の底力再生事業助成についてでございますが、地域の結びつきを強化して共助を推進いたしますため、広域的な立場から、都内全域における町会、自治会の組織力の底上げを図ることは、都の重要な役割と考えております。
 都はこれまで、地域の底力再生事業助成によりまして、町会、自治会に対し、他の地域のモデルとなる先駆的な取り組みを対象に単年度の助成を行い、地域活動の活性化を促進してまいりました。
 今後は、さらに多くの町会、自治会が本事業を活用し、地域力の向上に向けた息の長い活動ができますよう、防災対策を初め、地域の課題解決のための地道な取り組みを幅広く対象として、継続的な助成を行うなど、地域の底力再生事業助成の一層の充実に努めてまいります。
 次に、私立高校の生徒に対する留学支援についてでございますが、都内の私立高校は、それぞれの学校における教育方針に基づきまして、生徒の留学先として海外の学校と提携するなど、既にさまざまな独自の取り組みを進めております。こうした状況等を踏まえ、私立高校を対象とした留学支援のあり方について、今後検討してまいります。
 最後に、就園奨励特別補助についてでございますが、幼児教育は、生涯にわたる人格形成や学力、能力の基礎を培う上で、極めて大切なものと考えております。国の幼稚園就園奨励費補助は、この幼児教育を推進し、保護者の負担軽減を図るための重要な制度でございますが、制度変更により多くの保護者の負担が増加いたしました。
 都は、国に対して改善を強く要望いたしますとともに、激変緩和措置として、就園奨励特別補助を導入し、二十二年度には五億三百万余円を補助いたしました。しかし、本年度においても負担増が解消されないため、特別補助を実施することとし、六億七千三百万余円を予算に計上いたしましたが、これは本来、国の責任で是正すべきものでございます。
 国の来年度予算の概算要求では、補助単価を五千円引き上げておりますが、これが満額認められたとしても、二十一年度に比べなお一万四百円の負担が残ります。都は今後とも、負担増の解消について引き続き国に強く働きかけてまいります。
   〔消防総監北村吉男君登壇〕

〇消防総監(北村吉男君) 地域住民の初期消火活動能力の向上方策についてでありますが、お話のとおり、木造住宅密集地域において住民が初期消火を行うことは減災の効果が高いものであると認識しており、これまでも消防団や関係機関と連携し、防災訓練を積極的に推進しております。
 今年度は、世田谷区及び杉並区において、自助、共助に着目した初期消火体制等に関するモデル事業を行っております。具体的には、地域住民が迅速かつ効果的に初期消火活動を行うため、防火水槽からの取水が容易となるよう、構造等に改良を加えているほか、消防車両が接近できない狭隘道路における消火栓の整備を促進しております。
 また、消火資器材についても、従来の消火器に加え、軽可搬消防ポンプや消防用ホースを消火栓に簡単に接続するための器具でありますスタンドパイプを有効に活用することについて検証しております。
 今後は、この結果をもとに、住民が主体となったより実践的な訓練を展開し、初期消火活動能力を高め、地域の防災力向上に努めてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、災害廃棄物の安全の確認についてでございますが、災害廃棄物の処理に当たりましては、放射能に関する都民の不安を払拭することが不可欠でございます。十一月から開始しました岩手県宮古市の災害廃棄物の受け入れ処理に当たりましては、放射能につきまして、あらかじめ現地で焼却試験を行うとともに、搬出前に放射線量の測定を三段階で行っております。さらに、都内の受け入れ施設でも、放射線量や排ガス等の測定を行い、すべて基準値以下であり、安全が確保されていることを確認しております。
 これらの測定結果は、逐次、都のホームページで公表するとともに、測定マニュアルも公表しております。
 宮城県女川町からの災害廃棄物につきましても、同様に安全を確認しながら、着実に受け入れを進めてまいります。
 次に、今後のエネルギー施策の取り組みについてでございますが、東京におけるエネルギー供給に関しましては、低炭素な高度防災都市を実現する観点から、地産地消の東京産エネルギーの創出に主体的に取り組むことが重要でございます。
 このため、まず第一に、猪瀬副知事をリーダーとするプロジェクトチームで検討を進めております百万キロワット級の天然ガス発電所につきましては、選定した五カ所の都有地について、外部の専門的な知見も活用しながら、技術面、事業スキーム、採算性などの詳細な検証に着手をしております。
 第二に、地域分散型発電の推進につきましては、東京都技術会議におきまして、各局が横断的に検討し取りまとめました、都民生活を守る施設への自立分散型電源の設置と、低炭素なまちづくりに向けた自立分散型電源の設置という二つの方針を基本に、取り組みを進めてまいります。
 具体的に申し上げますと、都庁舎の電源の多元化や、都立病院や応急復旧活動の拠点となる防災公園への自家用発電機の設置など、災害時に機能維持が必要な施設への電源の設置を推進してまいります。
 これに加えまして、臨海副都心への分散型エネルギーネットワークの導入や、民間都市開発と連動したエネルギー効率の高いコージェネレーションシステムの導入を推進していきます。
 さらに、第三の柱といたしまして、再生可能エネルギーにつきましては、このたび集合住宅等を対象に開始しました新技術補助事業を通じた太陽熱利用機器の導入を図るとともに、太陽光発電設備の初期導入負担を軽減するスキームを構築するなど、東京にふさわしい都市型の再生可能エネルギーのさらなる普及拡大を図ってまいります。
 以上、申し上げましたように、大規模な天然ガス発電所の整備、地域分散型発電の推進、再生可能エネルギーの導入という三つの柱に基づく具体的な取り組みを進めまして、低炭素化を進めながら、東京のエネルギーの安定供給に努めてまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水道局における冬の節電対策についてでございますが、大幅な電力不足が予想されたことしの夏は、夜間に電力を蓄え、昼間のピーク時に利用するナトリウム硫黄蓄電池、NaS蓄電池の活用や、きめ細かな節電などにより、受電電力の抑制に大きく貢献をいたしました。
 冬の電力需要は夏に比べて低いものの、大口需要者である下水道局には、引き続き節電が求められております。当局の年間使用電力量の約四分の一を、水処理過程で微生物に空気を供給するために使用しておりますが、水温の低い冬場は微生物の活動が低下し、処理水質が悪化しやすいので、送風量をふやすため、使用電力量がふえる傾向にございます。
 そこで、水質の状況を確認しながら、送風機の運転をきめ細かく調整するなどの工夫により使用電力を抑制し、節電に努めてまいります。
 また、ポンプの運転に当たりましては、晴天時には、下水をできるだけ下水道の幹線内に貯留し、水位を高くして、ポンプでくみ上げる水位の差を小さくすることで、使用する電力の削減を図ってまいります。
 さらに、気温の急激な低下などにより電力需要が増大する事態を想定しまして、電力会社などから電力使用抑制の要請があった場合には速やかに対応できるよう、水再生センターやポンプ所にある非常用発電設備、これは都内に約百カ所ございますが、これらが稼働できる体制を整えてまいります。
 次に、下水道事業における中小企業などの持つ技術の活用についてでございますが、新たな技術の開発に当たりましては、私ども下水道局や民間企業がそれぞれ単独で研究開発を行う場合と、民間企業の持つすぐれた技術と当局の持つノウハウを組み合わせて行う場合がございます。
 民間企業との共同研究のうち、中小企業と連携して技術開発した事例といたしましては、大きな下水道管の調査を行うテレビカメラを搭載したロボットなどがございます。
 しかしながら、開発した新技術の中には実用化に至らないものもあり、中小企業などの開発意欲を高めることが難しかったこともあって、これまで中小企業がかかわった共同研究は約四分の一程度になっております。
 そこで、技術開発へのインセンティブを向上させ、中小企業の参加を促進するため、共同研究した新技術を開発完了後に導入する工事をあらかじめ指定して、共同研究者を公募する新たな仕組みを導入いたしました。その第一弾として、本年十月に永久磁石を用いた効率のよいモーターの研究を公募し、共同研究者を決定いたしました。
 今後とも、中小企業など民間企業との共同研究の仕組みを充実し、新技術の開発に不断に取り組み、下水道事業が抱える課題を解決し、さらに東京の産業力の強化にも貢献をしてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、年末対策についてでありますが、円高の進行など景気の先行きが懸念される中で、資金需要がふえる年末に向けまして、中小企業のニーズにかなった金融支援を速やかに行うことが必要でございます。
 このため、本年四月から実施している制度融資の円高対応メニューについて利用要件を緩和いたしまして、輸出企業に限らず、輸入品との価格競争にさらされている企業など、円高で影響を受けている企業を幅広く対象といたしました。
 融資の申し込みにつきましても、過去三カ月間の売上実績を待つことなく、売り上げの減少が見込まれる時点で速やかに行えるようにいたしました。さらに、年末の資金繰りを支援するため、短期の運転資金に迅速に対応するつなぎ融資の上限額を引き上げております。あわせて、都が独自に実施している、地域の金融機関と連携した新保証つき融資につきましては、保証料率を引き下げることにより、利用者の負担軽減を図ります。
 これらに加えて、経営や資金繰りの相談を受け付ける年末特別相談窓口を設置いたしまして、事業者の相談にきめ細かく対応するなど、中小企業の支援に万全を期してまいります。
 次に、雇用創出と学生の就職に向けた取り組みについてであります。
 都はこれまでも、厳しい雇用情勢に対応し、失業された方々に対する雇用創出を図るため、区市町村とも連携して、昨年度を大きく上回る約一万八千人の規模で、緊急雇用創出事業に取り組んでまいりました。しかしながら、雇用情勢は依然として厳しく、ご指摘のとおり、失業された方々に対し、速やかに新たな雇用創出を図ることが重要でございます。
 このため、都は区市町村や民間事業者と連携し、年末から年度末に向けた新たな事業を十億円規模で追加実施することによりまして、さらなる雇用創出を図ってまいります。
 また、厳しい状況に置かれた学生の就職を後押しするため、都は都内経済団体に対し採用拡大の要請を、本年七月に続きまして、年内にも再度実施いたします。
 さらに、都内中小企業と新規学卒者等とのマッチングの場である合同就職面接会を、既に七月と十一月に開催し、合わせて三千六百十一人が参加いただいたところでありますが、来年二月にも開催を予定しております。
 今後とも、現下の厳しい雇用情勢に迅速かつ的確に対応してまいります。
 次に、産業の空洞化への対応についてでありますが、ことしの夏以降の歴史的な円高は、欧州の金融危機などにより、長期化が懸念されております。こうした中で、産業の空洞化の無秩序な進行は、東京の産業の将来に大きな影響を与えるおそれがあり、あらゆる手段を用いて速やかに対応していくことが重要と考えております。
 そのためには、中小企業がすぐれた技術力を伸ばし、成長の期待される産業分野で活動する企業をふやしつつ、ものづくりの基盤となる技術を持つ企業の集積を地域に確保することが必要となります。
 これまで都は、国内外の市場で競争力を発揮して、東京での生産活動を継続できる高付加価値の製品や技術を新たに開発する中小企業の取り組みを支援してまいりました。また、市場拡大が見込まれる医療や福祉のビジネス分野等での開業を後押しするため、低廉なコストで活動拠点や経営ノウハウを提供するなど、創業支援を通じ、都内での事業展開を活発にする施策にも取り組んでまいりました。
 さらに今後は、基盤技術の担い手である中小企業の集積の維持を課題として、これまでの創造的都市型産業集積創出助成による地域特性を生かした集積支援のノウハウを活用し、区市町村と連携した重点的なサポートのあり方などを検討してまいります。
 こうした取り組みにより、産業の空洞化に対し総合的な対応を的確に進めてまいります。
 次に、いわゆる買い物弱者に対する取り組みについてであります。
 商店街を活用した買い物弱者への支援を適切に実施するためには、都内で買い物に支障のある住民の実態を正確に把握した上でモデル事業を実施し、最も効果の高い施策を探ることが重要と考えております。このため、都は、買い物弱者の現状について、高齢者三千名を対象に、日常の買い物行動に関する調査を既に実施しております。
 具体的には、買い物で最も多く利用する店舗の種類や移動の手段に加えて、商店街に望むサービスなどの項目に対する回答を集めまして、現在、その内容を分析しております。年内を目途に結果を取りまとめる予定でございます。
 今回の調査と分析の結果を踏まえ、住民が商店街に期待しているサポートの内容を把握して、その実現に向けまして、費用と効果のバランスや商店街と地元の区市町村の意欲などを検証し、都からの支援に最もふさわしい商店街を選んでモデル事業の立ち上げを検討してまいります。
 次に、外国人旅行者の誘致についてであります。
 都は、震災直後の危機的状況を打開し、外国人旅行者を回復するため、まず、諸外国の旅行事業者などに東京の最新情報をわかりやすく発信してまいりました。さらに、夏以降は、民間事業者とも連携して、アジア、欧米豪州八十五社の海外旅行事業者等を東京に招聘し、実際の東京を体験してもらいました結果、東京に安心して旅行できるなどの評価のほか、帰られて、海外のテレビや新聞などで、東京は安全というメッセージや記事が伝えられました。
 また、MICEについては、九月に都内で開催された世界建築会議において、海外からの参加者向けに都内観光ツアーを多数実施するなど、国際会議の機会を効果的に活用し、東京の安全性や魅力を集中的にPRしております。
 都を初め、各道府県や国などの取り組みによりまして、日本政府観光局の調査では、震災以降、対前年同月比で、四月に六三%減となった訪日外国人旅行者が、十月には一五%減まで回復しました。
 都といたしましては、今後とも外国人旅行者の回復に向けて、開催資金の助成などによりMICEを東京に誘致し、国際会議等の機会を通じたPRを積極的に行うとともに、アジアの旅行者のさらなる誘致、さらに回復のおくれている欧米豪州への働きかけにも全力で取り組んでまいります。
 最後に、東京都農林・漁業振興対策審議会答申の農業施策への反映についてでありますが、今回の答申で示された提言を踏まえまして、今年度、東京農業振興プランを改定し、東京農業を着実に振興してまいります。
 具体的には、東京農業の持つ潜在力を発揮した力強い農業の推進を新たな視点といたしまして、次の三つの柱を立てて施策を展開してまいります。
 第一に、大都市東京に立地する特色と優位性を生かした経営展開や加工品開発など、東京農業の産業力を強化することでございます。
 第二に、東京全域をエリアとした地産地消のネットワークを整備するとともに、減農薬栽培技術の開発など、都民の求める食の安全・安心の確保に取り組んでいくことでございます。
 第三に、農業、農地の持つ防災などの多面的機能を発揮したまちづくりを推進して、豊かな都民生活と都市環境の保全に積極的に貢献することでございます。
 加えて、農地制度や税制度の改善は、これは国の役割でありますから、都市農業、農地の位置づけの明確化とともに、生産緑地制度と相続税制度の制度改善を国に対して強く要求してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 臨海副都心に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、臨海副都心におけるMICE拠点化の取り組みについてでありますが、臨海副都心は、羽田、成田空港や都心から好位置にあることに加え、東京ビッグサイトやホテルなどのMICE施設が集積し、また災害に強い都市インフラが整備されているなど、我が国の国際戦略拠点にふさわしい機能を持つポテンシャルの高い地域であります。
 アジア諸都市との厳しい競争を勝ち抜くためには、世界じゅうから人、物、情報が活発に流入するMICE機能をより一層集積させることが必要であります。これにより、企業関係者や研究者らが交流する新しいネットワークが構築され、ビジネス機会が拡大するとともに、地域への経済波及効果も発生するなど、外国企業の誘致促進等に大きな効果が期待できます。
 そのため、今後、既存施設との連携や交通手段の多様化も視野に入れながら、青海地区北側を中心に、MICE施設の立地促進やアフターコンベンション機能のさらなる拡充に取り組んでまいります。
 このような取り組みにより、臨海副都心を一大MICE拠点として発展させ、東京のみならず、首都圏や日本全体の経済の再生につなげてまいります。
 次に、臨海副都心の観光資源の一層の充実とさらなるにぎわい創出の取り組みについてでありますが、この地域を一大MICE拠点としてさらなる発展をさせていくためには、多くの来訪者を引きつける魅力的なにぎわいの創出が重要であります。
 これまで、地域のエリアマネジメントを担う臨海ホールディングスグループを初め、まちづくり協議会など地域の事業者と一体となって、多様な取り組みを進めてきております。
 最近の例としては、今月二日から始まった東京モーターショーの開催に当たって、進出事業者で構成されるまちづくり協議会等と協力し、毎週土曜日の花火の打ち上げや、モーターショー入場券と「ゆりかもめ」一日乗車券のセット販売など、地域が連携してモーターショーの盛り上げに取り組んでおります。
 また、本年五月には、近年のマラソン人気を踏まえ、港湾局と臨海ホールディングスグループが連携し、お台場ランニングコースを設定いたしましたが、これまでにさまざまなランニングイベントが開催されるなど、ランナーの人気スポットとなってきております。
 今後とも、地域一体となってさまざまな創意工夫を凝らし、時代の先端を行く新たな観光資源を創出し、国内外から注目を集める一大観光拠点として、臨海副都心をさらに発展させてまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 水道の海外事業展開におけるリスクマネジメントについてでありますが、水道局では、東京水道サービス株式会社を活用した国際貢献ビジネスに取り組んでおりますが、海外での事業展開においては、カントリーリスクや為替リスクなどが存在いたします。
 そのため、海外事業への本格参入に際しましては、事業内容に応じた保険を活用するとともに、年度内にアジア諸国への本格進出の主体となる会社を東京水道サービスが出資して設立いたします。また、現地合弁会社への出資に当たりましては、新会社が政府系を含む金融機関などから広く融資を募ってまいります。
 こうした取り組みを構築し、適切なリスクマネジメントを行いつつ、世界の水事情改善のため、積極的に国際貢献ビジネスを推進してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 自転車の安全利用促進についてでありますが、東京は自動車の交通量が極めて多く、その中を自転車が走行しており、バスやタクシー、トラックなどの多種多様な道路利用者を初め、自転車対策を進めるに当たっての関係者が多く存在します。このため、自転車をめぐる諸課題の解決のためには、自転車利用者、民間事業者を初め、幅広い都民の理解と協力を得て、社会全体で取り組みを進めていく必要があります。
 都は、現在、自転車総合政策検討委員会を設置し、安全利用のための仕組みづくりについて、年度末を目途に検討を進めております。今後、その検討結果を踏まえ、自転車利用者、民間事業者、区市町村など各関係者の役割と責務を明らかにし、連携体制を整えるなど、東京の特性を踏まえた総合的な自転車政策の構築に取り組んでまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 都立病院改革の今後の進め方についてでございます。
 都立病院は、都立病院改革マスタープランで、担うべき医療を行政的医療と定義し、都における良質な医療サービスの確保に取り組んでまいりました。
 具体的には、大規模再編整備を初めとした医療機能の集約、東京ERとして整備した救急医療や小児周産期医療の充実強化などに加え、東京医師アカデミーによる医療人材の確保、育成にも努めてまいりました。
 一方、急速な超高齢社会の到来など、医療を取り巻く環境は変化し続けており、新たな医療課題への対応と経営改善に不断の努力を行っていく必要があると考えております。
 今後は、これまでの取り組みの成果を検証し、国など関係機関の動向に注視するとともに、専門家会議として設置している都立病院経営委員会の意見を聞きながら、医療ニーズを的確にとらえた次期計画を検討してまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、オリンピック・パラリンピックについてでございますが、お話のとおり、東日本大震災からの日本再生の大きな牽引力となるオリンピック・パラリンピックを実現するには、総力戦で招致に臨まなければなりません。そのため、先月、広く各界から招致活動について助言をいただくため、招致委員会に評議会を設置いたしました。
 評議会には、前回の招致活動では参画いただいていなかった被災県の知事、PTA代表、報道関係団体などに加わっていただき、より幅広いすそ野を形成できる体制としてございます。
 今後、さらに多くの団体の参画を得て、オールジャパンでの招致体制を一層強固にするとともに、広範な意見の集約により支持基盤を確立し、招致機運の醸成を促進し、支持率向上へとつなげていきたいと思っております。
 次に、スポーツ祭東京二〇一三についてでございます。
 この大会は、地域のスポーツ振興を図るとともに、さらなる地域の活性化に結びつけていくことも大変重要であると考えております。このため、多摩移管百二十周年となる記念の年に行われる競技会の開催に当たっては、大会の記憶を長く地域にとどめられるような事業、地域の魅力を再発見し全国に発信する事業、地域の特色を生かしたまちおこしなど、会場地区市町村が行う取り組みを支援していきたいと考えております。
 今後、多摩地域を初めとする地元自治体との連携をより一層深め、開催機運の醸成を図るとともに、各市区町村が創意工夫して取り組む地域の活性化につながる事業に対して、具体的な支援策の検討を進めてまいります。

〇副議長(ともとし春久君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時三十八分休憩

   午後五時五十五分開議

〇副議長(ともとし春久君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百七番東村邦浩君。
   〔百七番東村邦浩君登壇〕

〇百七番(東村邦浩君) 都議会公明党を代表して、知事、警視総監、教育長並びに関係局長に質問します。
 一九七〇年に、世界有数のシンクタンク、ローマ・クラブが、マサチューセッツ工科大学に委託し取りまとめたリポート「成長の限界」は、世界人口、工業化、汚染、食料生産及び資源の使用の現在の成長率が不変のまま続くならば、来るべき百年以内に地球上の成長は限界点に到達するであろうと警告し、持続可能な地球環境と経済的な安定性を目指すべきと提言しています。
 また、その二十年後、一九九二年に取りまとめたリポート「成長の限界 限界を超えて」においては、食料生産量、エネルギー消費量、工業生産量を減少させないためには、第一に、物資の消費や人口を増大させるような政策や慣行を広範にわたって改めること、第二に、原料やエネルギーの利用効率を速やかに、かつ大幅に改善することという二つの変化を要求しています。そして、持続可能な社会を実現するには、単なる技術開発ではなく、産業構造システムの構造改革が必要であると結論づけています。
 これらの課題は、まさに今、日本社会が直面している課題そのものであり、このことを克服しない限り日本の経済成長は見えてこないのであります。
 そこで、こういった課題を踏まえながら、都政の喫緊の課題について、以下質問いたします。
 まず、製造業の空洞化対策について質問いたします。
 今や日本の製造業の海外移転という潮流は、とどまるどころか加速をしています。経済誌の論評では、日本でつくった部品を海外で組み立てて納めるというモデルは崩壊したとまでいわれております。製造業が急成長するアジアの諸外国と対等に競争しようとしても、労働規制や法人税、さらには電力価格などの障壁が大きく立ちはだかっています。その上に急激な円高が進み、製造業は何重苦にも陥っています。
 例えば、電気料金一つとっても、日本の月額基本料はアジアの新興国の二倍から四倍の料金を支払わなければならず、このことがコストにはね返り、円高と相まって、価格での競争にどうしても負けてしまうとのことであります。したがって、製造業は海外に生産拠点を移さないと生き残れないというのが現実であります。
 こういった中、ある製造業の会社は、海外に生産拠点を移し、海外で稼いだ資金を日本に還流させ、研究開発やそれに伴う量産試作で国内の雇用を生み出そうと努力をしています。具体的には、研究開発に携わるエンジニアをふやした結果、ほぼ同数の新たな工員が量産試作で必要となるなど、新たな雇用に結びついております。
 また、山形県のある繊維製造会社は、付加価値の高い繊維製品をつくることによって、海外での見本市で評価され、今では欧米など世界各国を相手にビジネスが進み、それまでの新卒者がほとんど来ないという環境が一変し、全国の大学から新卒者がこぞって入社するまでになっています。
 そもそも日本の経済成長は、貿易の波及効果で成り立ってきました。製造業が生み出す経済効果や雇用創出量は、極めて大きいものがあります。今後、日本の製造業は、海外の生産拠点でもうけて、その資金を国内に還流させ、研究開発や量産試作で雇用を生み出すとともに、付加価値の高い製品をつくって世界で勝負するといった選択を行っていくべきであります。
 都は今後、このような選択をして、景気浮揚にも国内雇用の拡大においても貢献しようとする製造業者に対しては、集中的に支援策を講じるべきと考えます。知事の見解を伺います。
 次に、中小企業への支援策について質問いたします。
 都内中小企業の業績状況の動向は、三・一一震災直後に急激に低下し、その後、改善の兆候が見えたものの、再び低下をしてきています。
 都議会公明党は、十一月二十四日に、厳しい経済環境と都民の雇用不安への対応を求める緊急要望を行いました。年末も押し迫る中、長引く不況と円高や震災被害の余波に苦しむ都内の中小企業の経営を支えるため、都は、一層資金繰り支援策を拡充させるほか、その利用促進に向けて、相談体制などの取り組みを強化すべきであります。見解を求めます。
 ある中小企業の経営者は、経営に行き詰まり、新たな事業展開の発想を持って東京都中小企業振興公社を訪ねたところ、専門家派遣事業を通じて中小企業診断士を紹介され、経営課題を克服する方策が見えてきたと喜んでおられました。不況に苦しむ中小企業には、資金繰り支援を拡充するほか、こうした経営課題を根本から改善していく道筋を、専門家が助言してくれることが求められています。
 都の相談事業では、経営課題の解決までに、平均して八回程度の専門家の派遣が必要と聞きます。こうした支援の提供を望む都内の中小企業は、今後、数十ではなく数百にも及ぶものと考えられます。
 そこで、都は、経営相談の専門家派遣事業を大きく拡充すべきであります。見解を求めます。
 次に、雇用対策について質問いたします。
 定例会初日の所信表明で、知事は、年末に向けて、福祉保健分野での官民連携の新たな緊急雇用を表明しました。しかし、雇用対策はこうした取り組みに加え、非正規労働者の正規雇用化と、新卒者の雇用確保という二つの難問に対し、現場を持つ都の強みを生かして、真正面から対策を講じるべきであります。
 まず、非正規労働者の正規雇用化についてであります。
 直近の国の労働力調査によれば、昨年の労働者に占める非正規労働者の割合は三四・三%で、データ比較が可能な平成十四年以降、過去最高となりました。有為な人材を求める都内の中小企業が多くある中で、非正規労働者が増加する理由の一つが、大卒者の大企業志向であるといわれております。多くの学生にとって、中小企業への就職は、生涯を通じた賃金不安から、二の足を踏んでいるというのが現実ではないでしょうか。
 我が党の主張を受け、都はこれまでも、カウンセリングから仕事探し、就職後のフォローまで、早期に正社員としての就職を希望する人を継続して支援する取り組みを進めてきましたが、問題の根本的な解決にはより一層の取り組みが必要です。
 これまで都は、求人求職のミスマッチを解消するため、産業労働局を中心にさまざまな対策に取り組んできました。今後は、中小企業で働くことに対する賃金不安、具体的には、住まいや子どもの教育、仕事と育児の両立などを総合的に支援するパッケージを構築することが不可欠と考えます。そのためには、各局横断の取り組みが必要であります。知事の見解を伺います。
 新卒者の就職支援も重大な課題です。新規就職時に非正規だった人が、不遇なままで人生を終わることを、欧米ではバッドスタート・バッドフィニッシュというそうですが、これを何としてもグッドフィニッシュに転換する施策展開が必要であります。
 この秋、公明党青年局が全国規模で実施した若者雇用実態調査では、極めて困難な就職活動の実態が浮き彫りになりました。三人に一人が非正規職という実態をこれからの取り組みで転換するためには、まずは即効性ある支援策として、新卒特別応援窓口の大幅な拡充を進めるとともに、その窓口において学生の適性を見きわめ、適所に就職ができるようカウンセリング機能を持たせるべきであります。都の見解を求めます。
 次に、精神障害者の雇用対策について質問します。
 都はこれまで、都独自の東京ジョブコーチ支援事業などを通して、精神障害者の特性に対応した支援を講じるなど、さまざまな取り組みを展開してまいりました。ところが、都の職員採用においては、身体障害者の正式採用は行われておりますが、知的や精神障害者の採用は行われていませんでした。
 そのため、我が党は、知的や精神障害者の採用を実施するよう提案し、都は、六カ月間のチャレンジ雇用を開始しました。しかしながら、障害を持った人にとっては期間が余りにも短く、長期間働くことを望む強い声があります。都は、長期就労を視野に入れて知的や精神障害者を採用するべきであります。見解を求めます。
 精神障害者については、過渡的雇用も重要です。我が党は、先日、精神障害者の自立支援施設を視察しました。その施設では、民間企業と契約を結び、約一年にわたって実習する過渡的雇用を実施しています。これは、精神障害者にジョブコーチが付き添って働き始め、一緒に働く中で適性を見きわめるもので、この施設では、過渡的雇用により、昨年度までに四十二人のうち二十七人が一般就労を果たしています。
 そこで、都は、就労支援機関と連携し、過渡的雇用など、本格採用する前の段階にも、東京ジョブコーチを活用すべきと考えます。見解を求めます。
 一方、東京ジョブコーチは、定期的に研修を受けスキルアップを図っていますが、その知識、スキル等には相当格差があり、特に、身体、知的、精神障害の三つに対応できる知識、スキルを持っている人は少ないといわれています。
 そこで、東京ジョブコーチについて、三障害にバランスよく対応できるよう、そのスキル向上を図るべきと考えますが、見解を求めます。
 都はこれまで、就労を求める障害者の立場から取り組みを進めてきました。今後は、それに加え、企業経営と障害者の雇用の融合を促進するため、精神保健福祉士やキャリアカウンセラー等の有資格者、経験者を企業に派遣するなど、障害者の採用を検討している企業に対する支援を強化し、障害者の働きやすい雇用の場の創出を図るべきであります。見解を求めます。
 次に、首都東京のエネルギー政策について質問します。
 東日本大震災は、福島第一原子力発電所など、発電施設に甚大な被害をもたらし、国の対応策も迷走した結果、東京都はかつてない電力危機に直面いたしました。電力消費がふえる真夏や真冬の節電対策とともに、今後、エネルギーを安定的かつ長期的に確保していくために、抑制と供給の両側面から具体的な取り組みをしなければなりません。
 その第一は、経済成長と両立する省エネ施策の推進です。国は、公明党の提案を受け、省エネ家電のエコポイント制度を導入し、経済成長と省エネの両立を可能にしました。
 他方、都は、かねてから地球温暖化対策として、事業所などに新たな省エネ設備の導入を促進してまいりました。
 そこで、これまでの都の取り組みを集約し、無理のない賢い省エネ対策や模範となる事例を各家庭や事業所に周知し、省エネ生活を推進する都民ムーブメントを展開していくべきであります。見解を求めます。
 第二は、エネルギー需給の最適化に向けた取り組みであります。
 都議会公明党は、第二回定例会の代表質問で、発電や電力消費の状況を情報技術によって把握し制御することで、効率のよい電気の流れを実現する次世代送電網であるスマートグリッドの導入を早急に検討すべきと求めました。
 これを受け、このたび都がオフィスビルなど業務系施設の集積地域である大手町、丸の内、有楽町において、スマートグリッド導入に向けた基礎調査に着手したことは、先駆的な取り組みとして評価いたします。
 一方、電力消費の約三割を占める家庭においては、電力会社から電力使用のピーク時間に関するデータが提供されないため、節電インセンティブが働きません。
 公明党は先日、北九州市のスマートコミュニティ創造事業を視察しました。そこでは、集合住宅の家庭におけるスマートメーターを活用した需給コントロールが可能となるなど、快適で利便性の高いまちづくりを目指していました。
 そこで、都内の住宅の約七割を占める集合住宅においても、スマートな節電を継続できるよう、電力使用量の見える化と需給の最適化を図る取り組みを進めるべきと考えますが、都の見解を求めます。
 最近、首都圏では、大規模マンションの入居世帯を対象に、スマートメーターを設置するとともに、時間帯別料金を導入し、昼間の電力使用量を抑制したユーザーがメリットを得られるディマンドレスポンスサービスを開始しております。
 そこで、マンション等の新規開発時におけるエネルギーマネジメントの実施とあわせて、こうした節電インセンティブが働く仕組みについても、都として導入を誘導すべきと考えますが、見解を求めます。
 第三には、火力発電の高効率化についてであります。
 原子力発電の依存度を減少させ、安定的な電力供給を実現するためには、再生可能エネルギーを促進するとともに、当面、環境負荷の少ない、高効率な火力発電に転換していくことも重要であります。
 都議会公明党は先月、東京電力の品川、大井火力発電所を視察しました。このうち、品川火力発電所は、都市ガスを使用し、ガスタービンで発電した後の排熱で蒸気をつくり、蒸気タービンで再度発電するコンバインドサイクル発電機三基で、合計百十四万キロワットもの電力を生み出していました。発電効率は五五%を超え、天然ガスを使用した最新の川崎火力発電所では、約五九%の発電効率でした。他方、大井火力発電所は、老朽化し、発電効率も四〇%と低く、コンバインドサイクル発電へ改良、更新していく必要があります。
 安定した都民生活や経済活動の維持強化のためには、地産地消のエネルギー創出が不可欠であります。そのためにも、老朽化した発電所を低炭素で高効率のコンバインドサイクル発電へリプレースすることを都が積極的に後押しすべきであります。見解を求めます。
 次に、被災地に対する都の支援について質問いたします。
 被災地の復旧、復興はいまだ道半ばであり、大きな課題となっているのが震災瓦れきの広域処理の問題であります。岩手、宮城両県の震災瓦れきは、両県の一般廃棄物の十年から二十年分に相当し、県単独での処理は不可能といわれております。このため、国の責任で、県内処理される福島県を除き、両県の分は県外の自治体に委託する広域処理が急務となっております。
 こうした中で、都は、我が党の緊急要請もあって、本年五月、今後三年間で岩手、宮城両県の震災瓦れき五十万トンの受け入れを表明しました。既に受け入れた岩手県宮古市からの一千トンに加え、さらに宮古市から一万トン、また、都内区市町村の協力のもと、宮城県女川町からの十万トンが決まっております。
 都の広域処理を着実に実行していくには、都民の十分な理解と協力が不可欠であります。そのためには、瓦れきを受け入れる際の自治体の選定基準、焼却や埋め立ての体制、放射線の測定と公表など、処理計画の内容を具体的に示すべきであります。また、放射線への不安を払拭するには、測定体制や埋立状況等を目に見える形で広報すべきであります。あわせて都の見解を求めます。
 一方、全国では、瓦れきの放射性物質の安全確認、自治体への情報提供など、後手に回った国の対応のまずさによって二の足を踏む自治体が続出しています。震災瓦れきの広域処理を東京から全国に広げていくために、都がこれまで培ったノウハウを積極的に提供し、国に対して多くの自治体が協力しやすい環境を整備するよう求めるべきと考えます。知事の所見を伺います。
 次に、被災地応援ツアーについて質問いたします。
 我が党が被災地を調査した際、被災各県が観光立県であることから、多くの都民が観光に来てほしい、そのため、東京都が旅行者にインセンティブを与えてもらいたいと経済団体から強い要請がありました。そして、このことを知事に緊急要望し、知事は前向きに取り組むことを約束、実現に至ったのが被災地応援ツアーであります。
 事業規模についても、当初、一泊二千円の助成で、二万五千人分であったものを、知事の英断により、一泊三千円の助成で、五万人分に大きく拡大いたしました。被災各県の経済団体や観光団体も大変喜んでくださり、八月には福島県の旅館のおかみさんたちが福島県の副知事と一緒に都庁と都議会に御礼のあいさつに見えました。
 この事業の期間は九月から来年二月までの予定でしたが、大変に好評で、大手旅行会社においては十月末で完売したところも出ております。ただ、福島県については、風評被害も相まって、いまだ観光産業にとって厳しい状況が続いており、福島県のこうした状況を勘案して、来年度も被災地応援ツアーを継続すべきであると考えます。都の見解を求めます。
 次に、都内へ避難してきている被災者への支援について質問します。
 現在、都内では約九千人の避難者が生活しています。このうち福島県からの避難者は約七千人を超え、避難生活は長期化する様相を見せています。避難者の孤立化が心配され、それを防ぐ手だてとして、避難者と地域、避難者相互の交流を促進させることが重要であります。
 都は、区市町村や社会福祉協議会などと連携して、避難者への各種支援や交流事業などを展開していますが、必ずしも避難者が主体者となって交流できる状況になっていません。
 そこで、都庁の展望台や都民広場などに、被災者みずからが運営する広域的な交流サロン機能を設け、被災地を支援する特産品の物販機能を持つシンボリックな取り組みを行うべきであります。見解を求めます。
 また、被災者の方々は就労も難しく、都内での避難生活は厳しい状況に置かれています。これから本格的な冬に向かいます。このような状況を踏まえ、被災者へのさらなる生活支援を推進すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、東京の防災対策について質問します。
 公明党は、このたび、地方自治体の防災担当セクションに対する聞き取り調査、女性の視点からの防災行政総点検を実施しました。その中で、半数の地方自治体において、地方防災会議に女性が登用されておらず、防災対策の策定に女性の意見が反映されていない実態が明らかになりました。
 今回の震災で、避難所における女性のニーズの把握やプライバシーへの配慮が不十分だったとの報告もあり、女性の特性に配慮した防災対策を講じていくことが必要であります。
 また、九月二十八日に発表された中央防災会議の専門調査会の報告によると、岩手、宮城、福島の三県では、高齢者の犠牲者が多かったという実態が明らかになっています。避難生活を送る高齢者の中には、介護支援施設やケアマネジャーらも被災し、全く介護サービスを受けられなくなった事例もあります。
 都は、防災対応指針の策定を受け、地域防災計画の修正に取り組んでいくとしています。しかし、災害時に援護の必要な人や女性の意見をしっかりと聞き、反映させていくべきであります。都の見解を求めます。
 次に、帰宅困難者対策について質問します。
 東日本大震災では、都内で三百五十万人以上の方々が帰宅困難者となりました。もし首都直下地震が昼間発生した場合、さらに多くの都民が、途絶する交通の影響により、都内に取り残されると想定されています。こうした人々の安全を確保し、加えてけが人の救出、救護、消火活動の円滑な展開のためにも、膨大な帰宅困難者の発生を抑える必要があります。
 そこで、発災時にさまざまなメディアを通じて、帰宅しないことを求めるメッセージを迅速に発信し、企業などに協力を要請することが必要であります。この責務を担うのは知事であります。
 また、知事は、企業に災害支援物資の備蓄を促す条例の制定を表明されております。一斉帰宅の抑制から一時待機施設の確保、物資の備蓄まで一貫した取り組みを条例に盛り込むべきであります。総合的な帰宅困難者対策に取り組む知事の見解を伺います。
 都はこれまでも、駅前滞留者対策訓練を実施してきましたが、駅前協議会を立ち上げた初年度までは都が関与するものの、その後は各地域の主体的な取り組みに任せてきました。しかしながら、三・一一の大震災当日の混乱を見た場合、都は各地域の取り組みだけに任せず、一斉帰宅の抑制、一時待機施設の開設、鉄道運行状況の把握など、発災時の具体的な対応を検証するために、実践的な訓練を通じて、実効ある帰宅困難者対策を進めるべきであります。見解を求めます。
 災害時における道路の寸断は、救援活動をおくらせる原因の一つであります。そこで、ITS、インテリジェント・トランスポート・システムの活用について質問します。
 ITSとは、最先端の情報通信技術によって、渋滞解消や事故発生の抑制などを目指す新しい交通システムであります。
 今回の東日本大震災では、長年の課題であった、移動中の車両から発信される走行地点の情報の統合が、自動車メーカーの壁を超え、世界で初めて実現されました。これにより、被災地内で通行可能な道路情報の迅速な把握が可能となり、救援隊の移動や救援物資の輸送に大いに役立ったと聞いております。
 一方、土木学会と電気学会による東日本大震災の調査団は、緊急提言の中で、震災当日に東京で発生した大渋滞に言及し、発生のメカニズムの解明を急務の課題と指摘しています。
 二〇一三年には、ITS世界会議が東京で開催されます。日常の渋滞緩和に加え、東日本大震災を経験した日本、とりわけ東京のITS技術の進展がもたらし得る災害対策が、世界の注目を集める機会となります。
 都は今後、都内の産業界に加え、大学などの研究機関とも連携して、ITS技術の災害時の交通対策における活用を検討すべきと考えます。見解を求めます。
 なお、東日本大震災により、被災地の市町村では庁舎にも甚大な被害が及び、戸籍データを消失する事態に陥りました。また、昨今ではサイバー攻撃の危険が急激に高まりつつあり、行政の持つ電子情報のセキュリティー強化が改めて求められております。
 行政が保有する情報資産を守るためには、都や区市町村のシステムを災害やサイバー攻撃に強い外部のデータセンターに集約する必要性が高まっております。都は、ネットワーク経由でソフトの共同利用やデータの保管などができるクラウドコンピューティングの活用を、都内区市町村と連携し、取り組むべきであります。見解を求めます。
 本年七月、障害者と健常者の共生を目指す改正障害者基本法が成立し、八月に施行されました。これは、二〇〇九年に公明党がまとめた同法改正の骨子案をもとに、政府と与野党が修正協議を重ね、全会一致で成立したものです。
 本改正では、国や自治体に障害の程度や生活の事情に応じた防災、防犯施策を講じることも義務づけられました。これは、東日本大震災で、耳が不自由な人が防災無線を聞けず、逃げおくれるなど、障害者への情報の伝達がうまくいかなかったことなどを踏まえて盛り込まれたものであります。
 都議会公明党はこれまで、障害者が災害や不測の事態に遭遇し、助けを求めたいときに、周囲の人が気づき、支援しやすい環境を広域的に整えるよう再三求めてきました。
 障害者の就労、社会参加が進む中、これまでにも移動中の障害者の方々が、災害や事故などによる交通ダイヤの乱れなど、ふだんと異なる事態に遭遇してパニックになったり、迷子になるなどの事例がありました。
 現に三・一一東日本大震災のときには、翌朝まで続いたターミナル駅などの帰宅困難者の列には障害を持った人も少なからずおり、本人だけでなく、家族も大変つらい思いをされたとの話も聞いております。
 改正障害者基本法が施行された今こそ、災害時に障害者が支援や情報を求めたい場合には、社会全体で支援できるよう、ヘルプカードの拡充とともに支援のためのガイドラインを作成し、広く周知すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、災害時の視覚、聴覚障害者対策について質問いたします。
 東日本大震災では、被災地で、聴覚障害者が必要とする手話通訳者が不足しました。都は、手話通訳者派遣の支援を行ってきたと聞いておりますが、都が被災地になったときには逆に支援を受けねばならず、その体制を万全にしておかなければなりません。
 障害者基本法の改正では、言語としての手話が法律の中に初めて盛り込まれ、意思疎通の手段として手話を選択できる機会の確保と拡充が図られることとされました。法改正も踏まえ、聴覚障害者に対する災害時の情報バリアフリーの取り組みをさらに推進すべきと考えますが、見解を求めます。
 一方、視覚障害者に対する対応としては、音声による案内装置の積極的な活用が有効であります。都議会公明党はこれまで、本会議質問で、鉄道、都庁舎、都立公園、スポーツ施設などの公共施設に視覚障害者用の音声案内装置を整備すべきと主張してまいりました。都営地下鉄や都庁舎への音声案内装置の導入は徐々に進んでいます。
 都立公園は、大規模災害時に防災公園として避難場所にも位置づけられていることもあり、音声案内装置は必要であります。視覚障害者のため、都立公園のだれでもトイレへの音声案内装置の整備を早急に推進すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、障害者用駐車場の適正利用について質問いたします。
 近年、障害者用駐車スペースの整備が進んでいますが、せっかく設置された専用スペースに健常者が駐車してしまうことも多く、本来の利用者が使用できない事例が後を絶ちません。
 その対策の一つとして、全国に広がっているのがパーキングパーミットであります。
 この制度は、身体障害者や難病、また高齢で歩行が困難な方、けが人や妊産婦など一時的に歩行が困難な方に対して、共通するパーキングパーミット、すなわち障害者用駐車場利用証を交付することで、専用駐車枠を利用できる人を明らかにし、駐車スペースを確保する制度であります。
 都議会公明党は先日、山口国体の後に行われた全国障害者スポーツ大会を視察しましたが、競技会場の外でも、障害者用駐車スペースの適正な利用が守られていました。都においても、スポーツ祭東京二〇一三に向けて、こうした制度を早期に取り入れることで、障害者支援に関する都民の理解が一層深まるものと考えます。
 そこで、すべての人が障害の有無にかかわらず、共生した社会を築くために、都内のバリアフリーを一層進めるとともに、パーキングパーミット制度を導入すべきであります。見解を求めます。
 次に、障害者スポーツの具体的な振興について質問します。
 スポーツ祭東京二〇一三は、国民体育大会と全国障害者スポーツ大会を初めて一体として開催し、ユニバーサルデザインを意識した今までにない大会運営を目指しています。
 障害者スポーツの振興は、障害者の社会参加や自立促進を図る上でも大きな効果が期待されています。そのためには、障害の有無を超えて、だれもが、いつでも、どこでも取り組める競技の普及が必要です。
 その点、今注目を集めているのが卓球バレーであります。卓球バレーは、視覚、聴覚、肢体不自由等のさまざまな障害の方が参加できるスポーツで、一チーム六名で卓球台を取り囲むように座り、金属球の入った音の出るボールを三打以内で返球するゲームであります。
 全国障害者スポーツ大会山口大会でもオープン競技として採用され、私も大会前日には、障害者の選手の皆さんと競技を楽しみ、都が目指す障害者スポーツのコンセプトに合致する競技であることを実感しました。
 都は現在、我が党の要請にこたえて、障害者スポーツ計画の年度内の作成、公表に向けて取り組んでいます。卓球バレーなどのように、障害の有無や障害の種別を超えて取り組めるスポーツの普及などを通して、都内の障害者スポーツの本格的な振興を図るべきと考えます。スポーツ振興局の見解を求めます。
 障害者スポーツの若年層の拡大を図るためには、都立の特別支援学校での普及啓発が大切です。体育活動を充実させるためにも、卓球バレーのような活動を積極的に取り入れるべきであります。教育庁の見解を求めます。
 次に、特別支援学校における移動支援について質問します。
 都立肢体不自由特別支援学校には、医療的ケアを必要とする障害が重い児童生徒のために在宅訪問教育制度があります。障害が重い児童生徒を育てる保護者の中には、教員が自宅を訪問して学習指導を行ってくれることに感謝しながらも、一方で、我が子の体調に応じて学校に通学させて、より多くの友達や先生とのかかわりの中で教育を受けさせたいとの願いもあります。
 しかし、保護者が運転免許証を持っていない、あるいは福祉タクシーの利用に関する支援において区市町村ごとに隔たりが大きいなどの理由により、そうした願いがかなわない地域差に苦しんでいます。
 そこでまず、都教育委員会は、医療的ケアが必要で訪問教育を受けている児童生徒の心身の状況や保護者の通学に関する意向を改めて把握すべきと考えます。また、医療的ケアを必要とする児童生徒の通学手段の確保については、区市町村や保護者、医療関係者との連携を踏まえた取り組みが必要と考えます。あわせて教育庁の見解を求めます。
 次に、自転車走行の安全対策について質問します。
 東日本大震災後のガソリン不足等により、自転車を利用する人が増加してきています。自転車は、だれでも乗れるという利便性の反面、最近では、歩道上や交差点での歩行者に対して自転車が加害者となるケースが顕在化し、高齢者、障害者などの交通弱者が犠牲となるケースも出てきています。したがって、ブレーキのないピスト自転車や、夜間に無灯火で車道を逆走するケース、飲酒運転など、悪質な法律違反は厳しく取り締まるべきであります。
 そのような中、去る十月二十五日、警察庁より自転車総合対策が公表されました。同対策では、自転車の車道走行が徹底されており、都民からは、歩道から自転車をすべておろす大転換が図られ、自転車の歩道走行が厳しく取り締まられるのではないかとの不安の声や、車道上での自転車走行レーンが十分に整備されていない中、自転車が車道を走行することで自転車と自動車の事故がふえるのではないかとの声が多く寄せられております。
 具体的には、保護者が幼児を乗せて自転車を運転するときや車道に駐車車両がある場合、車道の幅員が狭い場合などの走行方法であります。原則として、自転車は車道を走行すべきとは思いますが、このような場合は走行方法について警視庁の見解を伺います。
 また、自転車が本来の車道を安心して走行できるように車道上の自転車走行レーンを積極的に整備していくべきであります。今後の都道における自転車走行レーン整備への取り組みについて、都の見解を求めます。
 我が党は、自転車の取り締まり強化のみならず、自転車走行空間の整備を初め、事故を起こした場合の保険制度など、一貫した自転車条例の制定を求めてきました。最近のこういった状況をかんがみて、条例制定の取り組みを一層加速すべきであります。都の見解を求めます。
 最後に、東京発公会計制度改革について質問いたします。
 我が党が提唱し、知事が決断をして、都が全国に先駆けて導入した複式簿記・発生主義会計を活用して、平成二十三年度の予算編成において、二百十億もの財源を捻出したことは、国が仕分け人の一方的な主観により事業仕分けを行い、結果的に絵にかいたもちになってしまっていることと比較すると、大いに評価されるべきであります。
 我が党は、こうした成果を広く全国に発信していくことを求めてまいりました。都は、これにこたえて、公会計改革白書を作成、公表するほか、公会計制度改革シンポジウムを開催するなど、全力で普及拡大に取り組んでいます。特に、大阪府は、石原知事が直接、橋下前知事にアドバイスして導入を決めたものであり、知事のリーダーシップに敬意を表します。
 また、今般、大阪府に続き、愛知県、新潟県が複式簿記・発生主義会計による新公会計制度の本格導入を表明するなど、広がりを見せ始めております。基礎的自治体でも町田市が導入を決め、都も積極的に応援する中、今は会計システム等の最終的な詰めを行う段階と聞いております。
 一方、総務省は、全国の自治体に対し、基準モデルと改訂モデルの二つのモデルを示し、財務諸表の作成を要請してきました。現在、全国自治体の約八割が総務省方式改訂モデルに基づく財務諸表を作成していますが、そもそもこの改訂モデルは、東京都が当初実施していた機能するバランスシートにほかなりません。
 機能するバランスシートでは、時間もかかる上、資産や負債の実在性、網羅性に欠け、精度の高い財務諸表が作成できません。さらに、個別事業ごとの財務諸表を作成することが困難なため、事務事業の評価に結びつけることができないのであります。だからこそ、東京都は、複式簿記・発生主義会計に移行したのであります。
 また、総務省の基準モデルは、民間の企業会計からかけ離れたものであり、住民が理解しにくいだけでなく、国際公会計基準に合致しない不十分なものであります。日本の公会計制度は、世界から孤立する結果になりかねません。やはり都が導入したような、複式簿記・発生主義会計による新公会計制度を広げていく必要があります。
 そこで、今後、他の自治体に対する普及を一層進めるため、新公会計制度の本格導入を決めた自治体に協力を求め、全国への普及拡大に取り組む体制を整備し、国に対し、会計基準の統一化をより一層強く迫るべきと考えますが、知事の決意を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 東村邦浩議員の代表質問にお答えいたします。
 製造業の空洞化についてでありますが、海外の生産拠点で利益を上げて、その資金を元手に日本国内で研究開発などを行い、高付加価値の製品を生み出していくべきであるとの主張には基本的には同感であります。
 しかし、企業の規模によって、それが可能なところとそうでない会社もあるわけでありまして、経済のグローバル化が進み、世界全体が時間的、空間的に狭くなった現代において、新興国の追い上げと相まって、技術の伝播は避けられず、空洞化対策は先進国共通の課題となっております。
 とりわけ、歴史的円高のもとにある我が国は、未曾有の空洞化の危機に直面しているわけでありまして、我が国がみずからの地位を守り抜くためには、研究開発を通じて技術の一段の向上を図り、高付加価値の製品を創出することが有効な手だてであると思います。
 もとより現在の円高には、デメリットだけではなくて、海外企業の買収によって世界シェアを大幅に拡大し、資源開発にも参加するという契機となるメリットもあるはずであります。今必要なのは、円高をただ嘆くだけではなくて、研究開発体制を基本的に強化し、画期的な技術の創出に一層の力を注いで、海外市場を席巻する競争力の高い製品を生み出すことを構想すべきであると思います。
 また、円高を奇貨として、国際経済の中で存在感を示す取り組みを国家を挙げて行うことだと思います。問題は、国が多面的、複合的に発想して戦略を構えることができないということであると思います。
 こうした中で、都は、空洞化を乗り越えるべく、他国には決してまねることのできない高付加価値の製品や斬新な技術の開発に向けて、新製品や新技術の開発助成やベンチャー技術大賞によるすぐれた技術の発掘などを一層推進し、懸命に努力する中小製造業を全力で支え、東京の産業の実力をさらに高めていきたいと思います。
 実は、先般のベンチャー技術大賞でグランプリをとりました、決して緩むことのないねじは、たった二人の、要するに会社が考えたものでありまして、これはまことに見事な発想だと思うんですが、あれもよほど都なり国が守ってあげませんと、ゼムピンみたいに簡単にまねられて、安価ではんらんするというおそれもあります。こういったものを本当に私たちはもっと大事にして、国がその気になって保護しないと、他国に出し抜かれるという気がいたしてなりません。
 次いで、雇用のミスマッチ解消に向けた総合的な支援についてでありますが、近年進んだ働き方の多様化によって、労働者が柔軟に働き方を選択できるようになった反面、企業が人件費の抑制や雇用調整の手段として、非正規労働者を積極的に活用した面もあります。これは、アメリカの要求を受けて、小泉内閣時代に、国が労働者派遣事業の規制緩和を進めたことが拍車になったと思います。
 私は、あの法律の改正は間違いだと思いますね。これは健全な雇用関係を損なって、現況の非常に悪い状況というものを生み出したと思いますが、しかし、こうした状況の中で、正規雇用を望みながらも、やむなく非正規で雇用される方々は、結果として十分なスキルを習得できずに、不安定な就労を続けております。この問題は、本人にとっても不幸なばかりではなくて、社会全体にとっても大きな損失だと思います。
 このため、都はこれまで、努力しているにもかかわらず、不安定な就労を余儀なくされている方々に対して、区市町村とも連携して、生活費の支給と一体となった職業訓練や、住居費の貸し付けなど、国に先駆けた総合的な対策を講じてまいりました。
 また、保育、医療はもとより、仕事と家庭の両立に取り組む企業への支援など、各分野に横ぐしを通した少子化打破緊急対策を実施し、働きながら安心して子どもを産み育てられる自立的な成長社会を築くことを通じて、働く者の将来への不安を払拭すべく取り組んでまいりました。
 一方、都内には、意欲のあるすぐれた人材を求める中小企業も数多くあるものでありまして、人材の確保は十分ではない状況であります。
 こうしたことから、保育、住宅、雇用など、分野の異なる相談を東京しごとセンターにおいてワンストップで対応することによって、意欲のある非正規労働者と中小企業とのマッチングを総合的に支援していきたいと思っております。
 次いで、災害廃棄物の広域処理についてでありますが、未曾有の大震災から間もなく九カ月が経過いたしますが、多量の瓦れきが被災地の復旧、復興を阻んでおります。都は、被災地を後押しするために、発災直後から岩手、宮城両県に赴いて、災害廃棄物の受け入れについて、被災市町村とともに精力的に調整を進めて、都内区市町村や民間との力を合わせて、両県の瓦れきを受け入れることにいたしました。
 また、都は、放射能について、測定回数や手法など、現場で実践的に必要となる事項について、国のガイドラインよりも詳細な都独自のマニュアルを制作してきました。都が安全性を十分に確認し、都民にわかりやすく情報を公開しながら、災害廃棄物を受け入れている事実は、必ずや多くの自治体を動かして、被災地の復旧、復興が大幅に加速されるものと確信しております。
 国に対しては、都の経験を学んで、被災地のそれぞれの現場の実態に即した広域処理の仕組みづくりに、政府自身が汗を流すように強く求めていきたいと思っております。
 次いで、帰宅困難者対策についてでありますが、東日本大震災で都内において多量の帰宅困難者が発生して、大きな混乱を招くという経験をしたにもかかわらず、今回、国が実施した調査によれば、首都直下地震が発生した場合に、約五割の人がやはりすぐに帰宅したいと答えております。
 実際に首都直下地震が発生した場合には、時間帯にもよりますけれども、都民がすぐに帰宅を開始しようとすれば、都民自身が危険にさらされるだけではなくて、救助、救護、あるいは消火活動に支障が生じ、首都東京の機能回復がおくれることになりかねません。
 このため、都は、都民のこうした意識を変えていくとともに、発災時には、都がリーダーシップをとって、都民の一斉帰宅の抑制を徹底するつもりであります。もちろん、みずからの安全が確認されれば、地域の救助活動にも協力してもらいます。
 また、企業には、食料等の備蓄と、周辺の帰宅困難者を受け入れる一時待機施設の確保等にも協力してもらうつもりであります。
 こうした自助、共助の視点から、総合的な帰宅困難者対策のための条例を設けて、都民の生命と財産を守るとともに、首都機能の迅速な回復を図っていくつもりであります。
 最後に、新公会計制度の普及拡大の取り組みについてでありますが、気鋭の評論家であります福田和也君の名論文に、日本人はなぜかくも幼稚になったかというものがありまして、その中で幼稚な人間というのは、IQが低いとか、人の知っていることをよく知らぬというものじゃなくて、何が肝心かということがわからない人間、その肝心なことについて取り組もうとしない人間が幼稚な人間だと。私は至言だと思いますが、経済そのものが非常にピンチに瀕している今に、日本にとって一番肝心なものはこの公会計制度だと思いますね。それがわからずに、今の政府のように事業仕分けみたいなスタンドプレーをやったって、財務諸表のない国に、そんなものの本当の仕分けができるわけがない。
 ですから、最初はバランスシートというものをつくり直すことから始めまして、当時の公認会計士協会の会長の中地君と一緒に協力しまして、力もかりました。
 公明党も理解いただいて、とにかく新しい会計制度をつくったわけでありますが、これをやらない国というのは、日本の周りでは考えてみますと、北朝鮮とパプアニューギニアとマニラ、フィリピンだけでありまして、先進国でこれをやっていない国はないのに、日本はなぜか知らぬけれども、とにかく、いまだに大福帳の域を出ない単式簿記でやっているわけでありました。これを私たちは一番肝心なこととしてとらえて、その改正に努めてきたわけでありますが、やはり、これは私たちがやってきた改正、改革の最たるものであったと思っております。
 これは日本にとっても大事なことでありますから、さまざまな機会を通じて、国に公会計制度の改革を働きかけるとともに、その意義を全国の自治体に広く発信してまいりました。
 改革の本質を理解し、こうした取り組みに真っ先にこたえたのが大阪府や町田市でありました。今般、新たに愛知県と新潟県が──新潟県は、なぜか財務省がそそのかして総務省が進めている非常に中途半端な複式と称するいいかげんな会計制度はとらずに、やはり東京と同じ、税金というものをきちっと踏まえた、これはここでくどくど申しませんけれども、私たちと同じ会計制度に取り組むということを意思表示しました。これは大変健全だし、結構な判断だと思っております。
 いずれにしろ、新公会計制度の本格的導入を各自治体がこれから積極的に取り組むことが、国が抱えている、自治体が抱えている問題を、その肝心なものを直すことでの、要するに解消につながると思っております。
 この制度のさらなる普及を進めるに当たって、都と本格導入を表明した四つの自治体がそれぞれの経験をもとに互いに協力して、共同した取り組みを進めることによりまして、従来以上に大きな波及効果が期待できると思っております。このため、年内を目途に、これから自治体との協議機関を設置することにいたしました。
 今後とも、都は国に対し、全国標準たり得る会計基準の策定を強く働きかけるとともに、志を同じくする自治体と緊密に連携して、日本の全体の公会計制度の改革を全力で牽引していきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監、教育長、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監樋口建史君登壇〕

〇警視総監(樋口建史君) 自転車の通行方法についてでございますが、ご指摘のとおり、自転車は道交法上、軽車両でございまして、車道の左端を通行していただくのが原則であります。原則でありますけれども、道交法上も、ご指摘ございましたけれども、駐車車両の有無でありますとか、車道の幅員のいかんでありますとか、あるいは、自動車通行量の多寡などのその時々の現場の状況に照らして、車道を通行することが危険と思われる場合には、歩道を通行することができることとされております。
 なお、東京都内でありますけれども、現状について申し上げますと、歩道全長の六三%を普通自転車歩道通行可にいたしております。これは、全国平均が四十数%でありますから、全国平均を大きく上回る歩道が、都内では自転車通行可になっているという現状でございます。このような通行可の標識のある歩道では、ご指摘のありましたような幼児を自転車に乗せた保護者の方々も、自転車で歩道を通行することができるということであります。
 それから、警察官が現場で指導や警告をする場合についてでございますけれども、必ずしもこの標識の有無にかかわらず、その時々の個々の道路の交通の状況を踏まえまして、安全第一で、ご指摘のような方々の安全にも配意した現実的な指導なり警告なりを実施できるように努めたいと考えております。
 もちろん、歩道を通行していただくような場合には、車道側をゆっくり走っていただく必要がありますから、そういった歩行者の通行を妨害しないといった観点からの指導も徹底をしてまいりたいと考えております。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、都立特別支援学校における障害者スポーツの普及啓発についてでございます。
 障害のある児童生徒に対して、体力の向上や健康の増進を図るとともに、将来の余暇活動を充実させるためには、都立特別支援学校等での体育活動に障害者スポーツを取り入れることが大切でございます。
 これまで都教育委員会は、ハンドサッカーやフロアバレーボールなどの障害者スポーツについて、競技会の開催や運営を支援し、都立特別支援学校等での普及啓発に取り組んでまいりました。
 今後、お話の卓球バレーのような新たな障害者スポーツについても、都立特別支援学校等に紹介し、障害のある児童生徒が楽しく、安心して取り組めるよう、体育活動の一層の充実を図ってまいります。
 次に、医療的ケアが必要で訪問教育を受けている児童生徒についてでございます。
 濃密な医療的ケアを必要とする重症心身障害児は、生命や健康の維持管理が極めて重要であり、通学に係る負担等も考慮して在宅訪問教育の対象として、これまで実施体制の整備と教育内容、方法の充実に努めてまいりました。
 重症心身障害児が通学をして教育を受けることにつきましては、今後、一人一人の医療的ケアの種類や程度、通学による教育に対する保護者の意向を的確に把握し、区市町村との連携のあり方や、医師等の専門家の関与のあり方も含めて総合的に検討してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立公園のだれでもトイレにおける音声案内装置についてでございますが、都立公園は、都民に安らぎや憩いの場を提供する重要な施設であり、高齢者や障害者も含めたすべての人々が安全・安心、快適に利用できることが重要であります。
 このため、都立公園では、東京都福祉のまちづくり条例に基づき、園路の段差解消、手すりの設置、だれでもトイレの整備などを推進するとともに、視覚障害者のために、点字ブロックや点字表示も設置してまいりました。
 音声案内装置は、福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアルでは、今後社会的に目指していくべきより望ましい整備とされております。平成二十一年度に駒沢オリンピック公園のだれでもトイレに設置いたしました。
 こうした施設の利用状況を踏まえ、視覚障害者の方にも使いやすい公園づくりを一層推進するため、都立公園のだれでもトイレにおいて、音声案内装置の順次設置に向け、検討してまいります。
 次に、自転車レーンの整備についてでございますが、自転車は、近距離の移動にすぐれ、環境への負荷が少ない手軽な交通手段として、その利用が広がっております。
 こうした自転車需要に対応し、車道空間を確保しつつ、歩行者、自転車それぞれの安全・安心を実現する自転車走行空間の整備が重要でございます。
 車道上に自転車レーンを整備するに当たっては、二車線道路の場合で、歩道や植樹帯を含め、全体でおおむね十五メートル以上の道路幅員が必要であります。また、沿道店舗の荷さばきやパーキングメーターなどの施設への対応、違法路上駐車の排除など、さまざまな課題がございます。関係者間の合意形成や連携が肝要と考えております。
 現在、都は、「十年後の東京」への実行プログラムに基づき、現状の道路構造や利用状況を踏まえて、広い歩道を活用した植樹帯による構造的な分離や、カラー舗装による視覚的分離、車道の一部を活用した自転車レーンなど、多様な手法を用いて自転車走行空間の整備を進めております。
 引き続き、自転車レーンも含め、だれもが安全で安心して利用できる自転車走行空間の整備を、地域の理解と協力を得ながら着実に推進してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、年末の資金繰り支援についてでありますが、年末における短期の運転資金の需要の増加に対し、都は、制度融資におきまして、原則三営業日以内で保証審査を行うつなぎ融資の上限額の引き上げを行いました。
 また、長期化する円高により売り上げが減少している中小企業を支援するため、円高対応融資メニューの利用要件を緩和し、輸出企業に限らず、幅広い企業を対象とするほか、融資の申し込みを速やかに行えるようにいたしました。
 加えて、都が独自に実施している地域の金融機関と連携した新保証つき融資については、保証料率の引き下げが行われることとなりました。
 こうした取り組みについて、都は中小企業団体を通じまして、各中小企業に周知を図るほか、金融機関の最終営業日であります十二月三十日まで、年末特別相談窓口を開設し、事業者の資金繰りの相談にきめ細かく対応いたします。あわせて、すべての取扱金融機関などに対して協力を要請することにより、中小企業の円滑な利用促進に努めてまいります。
 次に、中小企業の経営相談のあり方についてでありますが、中小企業が厳しい経営環境を克服するためには、直面するさまざまな課題の的確な解決に向け、会社の現場で豊富な知識やノウハウを持つ専門家の相談を受けることが効果的であります。
 このため、都では、中小企業振興公社において、経営の専門家などが継続的に企業を訪問いたしまして、課題解決に向けたアドバイス等を行う事業を実施しております。この事業に対する利用者の評価は高く、相談実績も大幅に伸びておりますことから、中小企業からの要望に適切に対応のできる派遣相談の体制の拡充について検討しております。
 こうした取り組みにより、中小企業の経営上の課題解決を積極的に支援してまいります。
 次に、新卒者の就職支援についてであります。
 新卒者を取り巻く雇用状況は依然として厳しく、意欲ある若者の就職を実現するためには、きめ細かい支援が必要と認識しております。
 このため、都では、平成二十二年三月から、東京しごとセンターに新卒向けの特別応援窓口を緊急に開設し、キャリアカウンセリングやセミナーなどを通じたきめ細かい支援を行うこととしております。翌二十三年には、同窓口の設置時期を一月に前倒しするとともに、新たに既卒三年以内の若者も対象といたしました。これに加えて、国と連携し、新卒向け求人紹介等を専門で行うジョブサポーターを配置いたしました。
 今後は、より一層、適性に応じた就職ができますよう、原則として同窓口の利用者全員に職業適性診断を実施し、カウンセリング機能を強化いたします。
 さらに、新卒者等が求人企業を訪問して企業説明等を受ける少人数制のツアーを新たに実施いたします。
 引き続き、意欲ある新卒者が早期に就職できるよう、こうした取り組みを着実に推進してまいります。
 次に、障害者の本格採用前の段階における東京ジョブコーチの活用についてであります。
 東京ジョブコーチは、企業や地域の就労支援機関等の要請に基づいて事業場に赴きまして、個々の企業の実情に応じて、職場環境の調整や作業能力向上に係る助言等の支援を実施しております。
 就労支援機関は、障害者の方に寄り添った生活面を含めた支援を行っていることから、東京ジョブコーチは必要に応じて、就労支援機関と連絡をとり合いながら、企業現場での定着支援を実施しております。
 また、東京ジョブコーチ支援事業を所管する東京しごと財団においては、就労支援機関との間で情報交換を進めるなど、連携体制を構築しているところであります。
 ご指摘の過渡的雇用のような本格採用前での東京ジョブコーチによる支援につきましては、その後の定着に資するものでありますことから、引き続き地域の支援機関と連携を図りながら、今後、計画的に取り組んでまいります。
 次に、東京ジョブコーチのさらなるスキルアップについてでありますが、東京ジョブコーチ支援事業は、障害者の就労支援に意欲ある方々に研修を受けていただき、東京しごと財団に登録し、支援を行う仕組みであり、支援対象に応じて適切に対応できますよう、企業の人事部門や福祉施設での勤務経験のある方や精神保健福祉士等の専門資格、技能を持つ方など、多様な人材により構成されております。
 これらの方は、職業経験等その背景が異なることから、一定のスキルを維持するため、東京ジョブコーチとなった後も、困難事例に対応するための研修を毎年受講することを義務づけているほか、実際の事例に即してジョブコーチ同士が支援手法を共有するための事例検討会を本年五月に設けております。
 今後は、研修等の内容についても、新たにジョブコーチの経験や技量をきめ細かく見きわめてカリキュラムを作成するなど、一層のスキルアップに努めてまいります。
 次に、障害者の採用を検討している企業に対する支援についてでありますが、障害者の雇用拡大に向けましては、雇用の受け皿となります企業に対する支援も重要であります。
 このため、都は、東京しごと財団を通じ、障害者の雇用促進を図るため、中小企業向けセミナーや企業合同説明会、企業間で障害者雇用に関する情報を交換する企業情報連絡会などを開催しております。
 今後は、企業情報連絡会等において、東京ジョブコーチや専門家による先進事例の紹介や、企業の人事担当者の実務的な疑問に答える場を設定するほか、雇用機会の拡大に向け、採用に意欲のある企業に対する支援の強化を検討してまいります。
 最後に、被災地応援ツアーについてでありますが、本ツアーは、東日本大震災による被災地域復興支援のための緊急対策の一環として、本年九月から実施しております。
 参加された都民からは、このツアーが岩手、宮城、福島の被災三県への旅行のきっかけとなったという意見を多数いただいておりますほか、受け入れ側の観光事業関係者などからも、当ツアーの実施に対し、感謝の声が多く寄せられており、今年度予定した五万泊のうち、既に過半が販売済みであります。
 一方、大震災から九カ月が経過いたしまして、岩手県、宮城県におきましては、復調しつつある地域もあると聞いておりますが、ご指摘の福島県におきましては、いまだ多くの県内主要観光施設の入り込み客数が前年を大幅に下回る状況が続いていると聞いております。
 こうした福島県の観光の状況や今後の動向を踏まえまして、平成二十四年度の被災地応援ツアーの実施につきまして検討してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、知的障害者、精神障害者の採用についてでございますが、障害者の就労機会を拡大する上で、都が率先してこれに取り組んでいくことは重要であると認識しております。
 都ではこれまで、知的障害者、精神障害者に対して、企業等への就職を促進するため、臨時職員として雇用するチャレンジ雇用を実施してまいりましたが、これには任期が六カ月という制約がございます。
 知的障害者、精神障害者の就労におきましては、就職後の職場定着が重要であることから、都においても仕事内容を理解し、職場の人間関係になれ、落ちついた環境で仕事ができるよう、より長期間就労していただくことが必要であります。
 今後は、知的障害者、精神障害者を採用するため、任期一年、かつ更新が可能な新たな非常勤職員制度の創設を検討するとともに、就労する職場の拡大にも努め、都としてさらなる率先的な行動を図ってまいります。
 次いで、都内避難者の交流の場の提供についてでございます。
 避難生活の長期化等により、避難者の孤立化が懸念されることから、交流の場を確保することは重要でございます。現在、避難者のための交流会やサロンの多くは、避難先の区市町村等が直接避難者に呼びかけて実施しており、都はこうした取り組みを支援しております。
 また、地域における交流が進む中で、例えば東雲住宅のように、都の働きかけにより、避難者みずからが運営する交流組織が活動を始めた例や、交流会への参加を契機に、子育て中の親子がみずから交流を始めた例など、避難者の自主的な取り組みも生まれ始めております。
 都は、今後とも、このような地域における交流を支援するとともに、お話の広域的な交流の場等についても、避難者の意向を十分聞きながら、避難者支援策の一環として検討をいたしてまいります。
 次いで、都内避難者への生活支援の推進についてであります。
 都内への避難者に対しては、各局や関係機関と十分に連携し、被災地の行政情報や都の支援情報を定期的に提供しているほか、相談窓口の設置、就労、就学支援など、生活全般にわたる支援をきめ細かく実施しております。
 また、都営住宅等、都が用意する応急仮設住宅に入居を希望する避難者に対しては、生活を始める上で必要不可欠な家電製品や布団をいち早く用意し、速やかに生活を始めることができるようにしてまいりました。
 しかしながら、避難生活が長期化するにつれ、さまざまな課題が生じることも懸念されることから、都は、民間事業者が行うチャリティー活動と連携し、地域の交流の場で生活支援イベントを開催することなども検討しているところでございます。
 今後とも、避難者の意向の把握に努めるとともに、関係機関等と連携し、避難生活上の諸課題に積極的に対応してまいります。
 次いで、災害時要援護者や女性の視点に立った防災対策でございます。
 災害発生時には、避難誘導や生活支援において、高齢者や障害者、女性などに対して、それぞれの特性や実情に即したきめ細かな対応を行うことが必要であります。
 今回の地域防災計画の修正に当たっては、被災地では具体的にどのような課題が生じ、どのように対応してきたのか等について、被災地の自治体や、現地でボランティア活動を行った方の生の声を聞くなど、さまざまな機会をとらえて実情の把握に努めていくとともに、パブリックコメントを実施し、広く都民の意見を聞くことで、災害時要援護者や女性の視点に立った防災対策を推進してまいります。
 次いで、帰宅困難者対策の実践的な訓練についてでございます。
 都は、猪瀬副知事と内閣府政策統括官を共同座長とし、近隣自治体を初め、経済団体、鉄道や通信など各分野の事業者団体から成る帰宅困難者等対策協議会において、一斉帰宅抑制の基本方針を取りまとめるなど、帰宅困難者にかかわる多面的な対策について議論を積み重ねております。
 こうした取り組みを実効あるものとするため、関係自治体、防災機関、民間事業者等の協力を得て、来年二月三日に東京駅、新宿駅、池袋駅の三つのターミナル駅を主たる会場として、実践的な帰宅困難者対策訓練を実施いたします。
 具体的には、駅構内や周辺の大規模集客施設での利用者の保護、一時待機施設への誘導、情報ツールを活用した安否確認や情報の提供、徒歩帰宅への支援等、発災時のさまざまな場面を想定した訓練を行います。
 こうした訓練を通じて得られた課題をさらに検討することにより、帰宅困難者対策を効果的に進めてまいります。
 最後に、災害等に備えたシステムの集約についてでございます。
 耐震構造や非常用電源、入退室管理などを備えたデータセンターに情報システムを集約することは、災害対策等の観点からは有効と考えます。
 都の各種情報システムについては、例えば三百六十五日二十四時間の稼働が求められるシステム等は外部のデータセンターを利用するなど、システムの特性に応じた配置を進めており、今後とも、安全性や技術動向を見据えた上で、適正な配置に努めてまいります。
 また、クラウドコンピューティングについては、現在、区市町村と連携し、その技術を活用した電子申請等のシステムを共同で運営しており、それらの成果も踏まえ、さらなるシステムの集約について、都と区市町村で構成する協議会において検討してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、経済成長と両立する省エネ対策の周知についてでございますが、都は、これまでの地球温暖化対策の展開の中で、経済的にもメリットのある省エネ対策を進めてきておりまして、この夏もその蓄積を生かした対策を促進することによりまして、一部では企業活動への負担が見られたものの、全体としては、おおむね無理なく節電が実施されたものと考えております。
 一例を挙げますと、本年五月の東京都電力対策緊急プログラムで提唱しました照明の照度の見直しは、業務に支障がなく、経費の節減にも寄与する取り組みとして多くの事業所で実施されまして、都内の大規模事業所の約八割が来年の夏も実施する意向でございます。
 こうした経済的にもメリットのある省エネ対策を定着させていくことが大変重要でありまして、先日も、業界団体と連携してデータセンターの省エネシンポジウムを開催し、賢い省エネ対策事例の周知を行いました。
 また、家庭におきましても、節電アドバイザーが九月までの夏場の三カ月間に、約三十三万世帯を訪問いたしました。
 今後とも、都は、この夏の取り組みで得られました知見も含め、業界団体と連携したセミナーや説明会、家庭への省エネアドバイスなどを活用し、幅広く都民、事業者に対しまして、賢い省エネ対策の周知を図ってまいります。
 次に、マンションなど集合住宅におけるエネルギー需給の最適化でございますが、夏季のピーク時間帯など、需給逼迫時に電力の最適制御を行うためには、需給データのリアルタイムでの見える化と逼迫時の制御を行うシステム、いわゆるスマートグリッドの導入が有効でございます。
 都は、オフィスビル等の業務集積地に加えまして、今回、マンションなど大規模な集合住宅におきましても、電気、熱両面でのエネルギーマネジメントのあり方について、新たに調査を開始することといたしました。
 この調査では、エネルギーの最適な管理により需要を抑制するとともに、高効率なコージェネレーションや再生可能エネルギーの導入など、集合住宅におけるエネルギー源の自立化、低炭素化を図る手法を検討し、エネルギーマネジメントの具体的な手順、採算性等を明らかにしてまいります。
 さらに、都営住宅跡地等を活用したプロジェクトにおきまして、コージェネレーション設備や蓄電機能等を備え、災害時にもエレベーターの運転や水の供給等に必要な最小限の電力を確保し、住宅内での生活継続を可能とするとともに、エネルギーマネジメントを行う低炭素で災害にも強い民間の住宅開発のモデルを提示し、普及を目指してまいります。
 次に、マンションなどにおいて節電インセンティブが働く仕組みについてでございますが、ディマンドレスポンスサービスは、スケールメリットを生かした高圧一括受電契約によりまして、電力会社から二割程度安い価格で受電し、各世帯が直接、電力会社と契約するよりも安い料金で電力を提供するとともに、時間帯別料金やポイントの付与などによりまして、ピーク時間帯の電力使用量の抑制を図る仕組みでございます。
 このディマンドレスポンスサービスは、電力需給の最適化を図る観点から極めて有効な手法でございまして、都は、先ほどご答弁申し上げました今回の調査の中で、こうした取り組みを標準的な手法として盛り込むとともに、電気と熱の最適な組み合わせや、再生可能エネルギーの活用の観点も含めた新たなモデルの構築に取り組むことといたしました。
 これによりまして、系統電力のピークカットや消費電力の削減を図りながら、家庭における低炭素化にも大きく寄与するモデルを提示しまして、民間事業者の取り組みを誘導してまいります。
 次に、老朽化した発電所のリプレースについてでございますが、東京電力の火力発電設備の約四割が運転期間三十五年を超えておりまして、このまま老朽化した非効率な火力発電に依存することは、安定供給に支障が出かねず、また、CO2排出量を増加させ、地球温暖化対策に逆行することとなります。
 このため、都は、発電効率が高く、環境負荷が少ない百万キロワット級の天然ガス発電所整備に向けた検討を開始しております。あわせて、先月、九都県市として、国に対し、低酸素かつ高効率な火力発電設備の増設、リプレースの推進などに向けまして、民間事業者の活用を図ることを要求いたしました。
 今後も、天然ガスコンバインドサイクル発電などへのリプレースの推進に向け、九都県市で立ち上げました首都圏のエネルギー問題に関する検討会におきまして、具体的な方策を検討し、国に実現を強く求めてまいります。
 最後に、災害廃棄物の受け入れ処理の内容とその広報についてでございますが、都は、発災直後から、被災地の岩手、宮城両県に二十回以上も足を運びまして、どこからどのような性状の廃棄物を受け入れできるか、地元自治体との調整を行ってまいりました。
 今後の新たな受け入れ先や災害廃棄物の数量などにつきましては、引き続き、岩手県、宮城県と仮置き場の限度量や現地の処理施設の整備状況など、被災地の状況を考慮しながら調整いたしまして、都内の受け入れ体制につきましても、これらを踏まえて構築してまいります。
 また、災害廃棄物の放射能対策につきましては、都民に災害廃棄物の状況を正確に理解していただき、安心していただくことが受け入れ事業を進める上で何よりも重要でございます。
 このため、繰り返し測定した放射能濃度の測定結果は、すべて逐次、都のホームページで公表するとともに、都の埋立処分場の放射能濃度につきましても、五月から毎週測定して、その結果を公表しております。
 現在、被災地での放射能測定状況や分別の方法等をわかりやすく説明するDVDを作成しておりまして、今後、都の広報媒体などを通じて示すなど、広く都民に事業の安全性を周知してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ITS技術の活用についてでありますが、ITS技術は、救急車を優先通行させるよう信号制御するなどの平時の活用に加え、震災、台風等の災害時の道路情報の把握などにも活用できる可能性がございます。土木学会、電気学会による調査団の提言等にもありますが、災害時のITS技術の活用は重要と考えております。
 二〇一三年には、世界の産学官のITS関係者が技術開発と今後の活用について議論するITS世界会議が東京で開催されます。
 都は、今後、世界会議を、ITS技術が都市機能の向上と安全確保に貢献することを示す一つの機会ととらえ、産業界、研究機関等と連携強化を図り、災害時の対応を含めた大都市の交通問題の解決にITS技術を活用することを検討してまいります。
 次に、自転車条例制定の取り組みについてでありますが、現在、都では、警視庁など関係各局、区市町村、交通安全協会等の関係団体や業界団体の参加を得て、条例制定についての課題も含め、自転車安全利用のための仕組みづくりについて、年度末を目途に検討を進めております。
 一方、警察庁が自転車交通秩序の実現に関する通達を出し、国土交通省等が自転車の利用環境に関する検討委員会を設置するなど、国でもさまざまな動きがありますが、自転車対策を進めるに当たっては、関係者が多く存在するため、自転車利用者、民間事業者はもとより、幅広い都民の理解と協力を得ながら取り組みを進めていく必要があります。
 今後、国の動向も見きわめつつ、都民や関係機関、団体の意見も十分に聞きながら、自転車をめぐる諸問題を解決するため、総合的な自転車政策の構築に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、災害時における障害者支援についてでございますが、緊急連絡先や必要な支援内容などが記載されたヘルプカードは、コミュニケーションが困難な障害者が、災害時等に周囲の人に支援を求める際に有効でございます。
 都内でも、複数の区市や障害者施設が独自に作成しており、都としても、これらの事例集を作成して区市町村に情報提供を行いますほか、カードの目的などについて、広報誌やホームページ等を通じて都民や交通事業者等関係団体に対して周知をしてまいりました。
 今後、こうした取り組みを推進し、区市町村の取り組みや都民、事業者への普及啓発が一層図られるよう、カードの標準様式や記載内容、障害者に配慮すべき事項などに関するガイドラインの作成を検討してまいります。
 次に、災害時の聴覚障害者に対する支援についてでございますが、お話のように、聴覚障害者が災害時に必要な情報を得るには、さまざまな手段を確保することが重要でございます。
 そのため、都はこれまで、災害時要援護者対策を行う区市町村のための指針の中で、聴覚障害者への手話通訳者の派遣や文字情報の掲示等を定め、区市町村に対し適切な体制を確保するよう働きかけてまいりました。
 今回の震災でも、被災自治体の要請により、全国の自治体が手話通訳者を派遣したほか、避難所におきましては、プラカードやホワイトボードが有効に活用されたと聞いております。
 現在、都は、災害時要援護者の支援策につきまして、聴覚障害者団体からも意見を聞いており、聴覚障害者の情報、コミュニケーション支援についても関係団体と十分に意見交換を行いながら取りまとめ、避難所等において障害者の支援に当たる区市町村が必要な体制を整備できるよう、地域防災計画の修正にも反映させるなど、災害時の情報支援の取り組みを推進してまいります。
 最後に、パーキングパーミット制度についてでございますが、この制度は、障害者用駐車施設の適正利用のための有効な方策の一つでございますが、大都市東京で導入するには、対象者の多さや駐車区画の不足など、さまざまな課題がありますことから、都は本年、飲食店、大規模商業施設等における駐車施設等の調査を実施いたしました。
 その結果、中小規模の店舗では、障害者用駐車施設の設置自体が三割以下であること、係員の誘導がない施設では、障害者用駐車区画を健常者が利用している例が五割を占めていることなどが改めて明らかになりました。
 そのため、来年度は、障害者等の駐車施設の利用実態や具体的なニーズを詳細に把握するとともに、施設管理者が導入可能な適正利用策を検討いたしますため、利用者と施設管理者それぞれに利用頻度や駐車台数、管理方法などについてアンケート調査を実施する予定でございます。
 その結果を踏まえまして、大都市東京の実情に合った障害者用駐車施設の適正利用の仕組みづくりに向け、パーキングパーミット制度を含め、施設規模や管理方法に応じて施設管理者と区市町村が連携して実施できる取り組み、対象とする利用者の範囲、効果的な普及啓発の方策等について検討をしてまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 障害者スポーツの振興についてでございます。
 都はこれまでも、スポーツ博覧会などの参加型スポーツイベントにおいて、ボールを投げて的への近さを競うボッチャやブラインドサッカーなどの障害者スポーツを都民に体験してもらう機会を提供してまいりました。
 お話の卓球バレーのような、障害のある人もない人も、ともに楽しめるスポーツは重要でございまして、現在策定中の障害者スポーツ振興に係る計画において、推奨するスポーツの一つとし、普及に向けた検討を進めてまいります。
 また、あわせて、本計画では、障害者スポーツにかかわる情報発信や普及啓発のあり方を初め、指導者養成や場の確保などについての具体化を図りまして、障害者スポーツの一層の振興に取り組んでまいります。

副議長(ともとし春久君) 百五番清水ひで子さん。
   〔百五番清水ひで子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇百五番(清水ひで子君) 日本共産党都議団を代表して質問します。
 東電福島原発事故から九カ月がたちました。放射能汚染問題は、都民に深刻な影響を落としています。
 最近も、米などから基準値を超えるセシウムが検出され、都内各地でも高濃度というべきミニホットスポットの存在が明らかになっています。こうした中で、国と東電の無責任な放射能汚染対策に、都民の怒りと不安の声が広がっています。
 今、都民にとって最大の不安は、影響を受けやすい子どもたちの内部被曝の問題です。飲食や呼吸を通して体内に取り込まれた放射性物質による放射線は、遺伝子を切断するなどにより、さまざまな健康障害を引き起こすことが警告されています。
 チェルノブイリ原発事故でも、放射線量が年間一ミリシーベルト以下の地域で、数年後からがんの発症率の急増、免疫力の低下などの健康被害が報告されています。今日の放射能汚染問題への対応では、低線量だから大丈夫だという立場は厳に慎むべきです。
 都民は、低線量の放射線を長期に受けることによる内部被曝で、健康被害が起きることを心配しているのです。何よりも、都民のこうした不安に寄り添い、最大限の対応をするという立場こそ都に求められていると考えますが、知事、いかがですか。
 既に埼玉県では、県立の学校、公園、児童養護施設のホットスポットを、地上一センチの地点を含めて徹底調査し、必要な除染を行っています。都内でも、港区を初め、多くの区市で地上五センチで毎時〇・二三マイクロシーベルト以上など、独自の基準で除染に取り組んでいます。ところが、東京都の対策はどうでしょうか。
 環境局は、都有施設における局所的な放射線量の調査結果についてを発表しました。
 それによると、区部東部三区の公園で測定した結果、雨どいの下や土だまりでは、地上一センチで、最高毎時七・〇六マイクロシーベルトなどという高濃度の箇所があったにもかかわらず、地上一メートルの空間追加線量が毎時一マイクロシーベルト以下であったことなどを理由に、今後、都有施設全般にわたる調査や経常的な調査は基本的に不要とし、発見されたミニホットスポットも囲いをするだけで、除染はしていないのです。
 子どもたちの健康を守る立場で、全都有施設、とりわけ学校の局所汚染の実態を詳細に把握し、必要な除染対策を行うべきです。
 区市町村が独自の方針に基づき、都有施設での測定と除染対策を都に求めたら、これにこたえることが必要です。見解を求めます。
 給食の安全確保も重要です。都内の二十六区市町で学校給食の食材の放射線測定を行い、調理後の測定は六区市で実施しており、都に対し支援を求めています。この要望にこたえる必要があると思いますが、どう対応するのですか。
 福島原発事故後、都内でも、複数の子どもの尿の中にセシウムが検出されています。今回の放射能汚染が子どもたちの健康にどのような影響を及ぼすのか、疫学的視点に立って、尿中セシウム、ストロンチウムなどの検査を含め、健康調査を継続的に行うべきです。
 これは、子どもたちに対する責務であり、後世にも伝えるべき責務だと考えますが、いかがですか。
 次に、都民の暮らしの困難への対応です。
 地方自治法は、住民の福祉の増進を図ることを地方自治体の責務として位置づけています。しかし、この問題でも、知事の立場が厳しく問われているのです。
 生活保護受給者が東京でも毎年増加し、現在は約二十一万世帯、この十二年間で二倍以上になりました。高齢者や失業者だけでなく、働いていても生活保護水準に届かない世帯がふえています。実態として生活保護基準以下で暮らしている人は、受給者の数倍に及ぶだろうといわれています。
 私は、このような事態になっているのは、雇用の破壊で働きたくても働けない、働いても暮らしていける賃金がもらえないこと、社会保障が不十分で、生活保護以前のセーフティーネットが機能していないことが大きな原因だと思います。
 貧困を打開するには、雇用を確保し、社会保障を立て直すことが求められていると思いますが、知事はどう認識していますか。
 都として、福祉、雇用、住まいなど独自のセーフティーネットの拡充に力を尽くすことが求められていますが、知事はどのように取り組むのですか。
 今後、政府は、復興に名をかりた消費税大増税と一体で、年金支給年齢の引き上げや年金額の引き下げ、医療費のさらなる負担増、介護保険サービスの切り下げ、生活保護抑制などを行おうとしています。
 こんなことを許したら、都民の暮らしの困難は増大し、消費は冷え込んで、東京の経済にも重大な打撃となります。知事、そう思いませんか。政府に対し、社会保障の切り下げや増税、負担増はやめるよう求めるべきですが、いかがですか。
 国民健康保険料は値上げが続き、東京社会保障推進協議会の調査では、収入は減ったのに保険料が上がった世帯が四六%に上りました。お金が心配で通院回数を減らしたなど、受診抑制も起きています。
 その上、来年度は介護保険料、後期高齢者医療の保険料も大幅値上げが見込まれ、二十三区では来年度の国保料値上げも検討されています。これらの保険料値上げを抑えるため、政府に国庫負担の拡大を求めるとともに、都として財政支援することが必要です。答弁を求めます。
 MRI検査などによる脳ドックは、脳卒中や認知症などの早期発見や予防に効果があります。このため、多摩市など十一の市や町が受診料助成をしています。脳ドックの重要性をどう考えていますか。受診促進に取り組む必要があると思いますが、見解を伺います。
 都内四十七カ所の病院などが実施している無料低額診療事業の役割は重要です。実施病院で話を伺いましたが、ぐあいが悪くても病院に通うお金がなく、無料低額診療でやっと医療に結びついた方がたくさんいる、最近は若い人もふえているとのことでした。地域におけるセーフティーネットの役割を果たしています。
 無料低額診療事業の重要性をどう考えていますか。実施医療機関はふえているのではありませんか。さらにふやす必要があると思います。都立病院や公社病院でも実施できると思いますが、いかがですか。
 都の中小企業対策も、抜本的な拡充が求められています。
 まず、資金繰り支援についてです。
 金融円滑化法について、仮に予定どおり来年三月に廃止されれば、企業が資金調達できず、多くの倒産が出ると予想されています。金融円滑化法の延長を国に求めるべきと思いますが、どうですか。
 年末対策としても、都が、区や市の融資制度に保証料補助、利子補給を行うことを求めるものです。資金繰りが困難な企業には、経営状況に応じて上乗せすることを求めますが、いかがですか。
 大田区のまち工場を舞台にした直木賞作品「下町ロケット」は、自動車部品のまち工場が開発したロケットの燃料バルブの技術を使って、人工心臓の技術への転用に乗り出そうというところで話が終わります。医工連携は、全国で取り組みが始まっています。
 滋賀医科大学と地元企業は、マイクロ波を使って止血をせずに腫瘍などを切り取る手術ができるマイクロ波メスを共同開発しました。日本医科大学千葉北総病院は、自動車事故でエアバッグが作動すると、救急センターに自動通報するシステムの開発を進めており、救急車到達時間の短縮が期待されています。東京は完全に出おくれています。
 東京のまち工場の技術と、東京に集積する都立病院、公社病院、大学病院、産技研や大学などが連携すれば、医療技術の発展で命を救い、新しい産業の振興で中小企業が元気になり、雇用もふえます。医療機器を輸入に頼っている現状を変え、有力な輸出産業に育つ可能性もあります。
 東京都が医工連携を直ちに開始し、医療技術革命に本格的に乗り出すことを求めるものです。見解を伺います。
 次に、防災対策についてです。
 東京都が先月発表した都民生活に関する世論調査によると、都政に対する都民の要求で最も多かったのは、防災対策でした。中でも建築物の耐震化など、防災都市づくりへの要求が、災害時の活動体制の充実や防災対策の普及啓発などを抑えてトップを占めています。
 ところが、知事は所信表明で、高度防災都市の実現について触れたものの、中身は専ら震災発生後の対策で、安全、予防対策については言及すらしませんでした。
 それどころか、記者会見では、自分の生命、自分の財産を守るのは自分の責任だ、行政はそんなもの負うんじゃない、財政力があるわけでもないとまでいったのです。ここに石原知事の防災対策の最大の弱点があらわれています。
 一人一人が努力することはもちろん欠かせませんが、住民の命と暮らしを守る責務のある自治体としては、都市施設や建築物を安全化するために最大限の力を注ぐという立場にしっかりと立つべきではありませんか。知事、お答えください。
 災害対策基本法は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護することを国や自治体の責務として位置づけているのです。それは、命を守ることはもとより、都市施設が倒壊、損傷したり、住居や営業手段などの財産を失ったら、生活も地域経済も立て直しが極めて困難になるからにほかなりません。
 知事は、災害対策基本法のこのような立脚点をどう認識しているのですか。
 しかも、知事は、都固有の責任である都有施設とライフラインの耐震化が立ちおくれている事態を自覚すべきです。
 東京の住宅全体の耐震化率が約八〇%であるのに対し、都営住宅は七〇%にも達していません。道府県や政令市の公営住宅と比較しても、静岡県営住宅一〇〇%、静岡市営住宅九八・九%、愛知県営住宅九九・六%、名古屋市営住宅九四・六%などに対して、著しく立ちおくれているのです。
 都は、都民の住宅への危機意識を云々する前に、みずからの危機意識の低さを問うべきではありませんか。いつまでに一〇〇%耐震化するのか、はっきり答えてください。
 都の世論調査で、大震災が起こった場合、不安に感じるものとして都民が第一に挙げたのは、電気、ガス、上下水道が使えなくなるで、六九%に達しています。
 ところが、水道の耐震化は、耐震継ぎ手管は二六%、配水池は五五%、浄水施設はゼロ%です。下水管とマンホールの接続部の耐震化も数%、下水処理場の耐震化も、一〇〇%達成には今後二十年はかかるとされるなど、著しく立ちおくれています。
 このままでは、大地震に見舞われたら、長期間、水道も下水道も使えないという事態になりかねません。都が責任を持つ上下水道について、いつまでに必要な耐震化をするのですか。緊急の前倒し計画をつくるべきですが、どうですか。
 鉄道の耐震化も、都のイニシアチブを発揮すべきです。
 鉄道各社に対して、震度七を想定した構造物の耐震化や液状化対策の総点検を行い、必要な対策を緊急にとること、津波による水害も想定して、必要な対策、訓練を行うことを求めるべきですが、いかがですか。
 都がやるべき課題は山積しています。そのためには、やり遂げるための財源が必要です。
 例えば、老人福祉費を九九年度の水準に戻せば、約九百億円の増額となります。特別養護老人ホーム待機者四万人の解消に向け、三カ年で一万人分増設する所要額は五十四億円です。
 また、後期高齢者医療、介護保険、国民健康保険の保険料を年間一人五千円軽減する軽減三点セットで三百十億円です。市長会の強い要求である乳幼児医療費助成の所得制限を撤廃するには、十億円です。
 都営住宅十万戸を五年間で耐震化するために八百億円、耐震化が必要な木造戸建て住宅の九割の二十一万戸に都の助成を広げると、五年間で四百四十億円です。
 東部低地帯の耐震化未実施の堤防を完成するために千七百億円かかります。地震で一部分でも決壊すれば、大きな被害が出るのですから、緊急計画で完成すべきです。
 福祉や防災を進めるためには、この分野への重点的な財政投入が必要になります。都は、どのようにこうした財源を生み出すのですか。中長期的な財政展望について、知事の所見を伺います。
 人口減少や超高齢社会が到来しつつあります。右肩上がりの経済成長を前提とした巨大開発への投資を抑制する財政運営への見直しが必要だと考えます。
 二〇二〇年オリンピック招致を口実にした外環道の着工や、晴海線や多摩新宿線などの不要不急の高速道路の新規建設、巨大港湾施設などの建設は凍結すべきです。見解を伺います。
 歳入確保も重要です。
 法人事業税の一部国税化により、都の税収は三年間で九千億円も減りました。この暫定措置を撤廃させるために、今後どのような対策をとるのですか。
 政府は復興対策と称して、大企業へのさらなる減税を行おうとしています。これが実施されると、都の税収はさらに落ち込みます。これまでも大企業減税で、都は総額一兆一千億円もの減収を余儀なくされているではありませんか。今度こそ、大企業減税はやめるよう、強く政府に求めるべきです。
 大企業の法人事業税の超過課税の税率を、都としてできる上限である一・二倍まで、緊急に引き上げることも決断すべきです。実行すれば、六百億円以上の増収になります。答弁を求めます。
 次に、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事の談合疑惑問題です。
 この工事の設計委託事業の入札では、二億円から二千万円までの開きがありました。わずか三カ月間という短期間で、しかも二千万円という落札額で、大規模な汚染処理プラントを含む設計などが可能なのかという疑問の声が関係者から出ていたのです。
 土壌汚染対策工事の設計をしたのは、調査事業と計測器事業などを主とする地質調査会社です。公共工事では、設計者は発注者側の立場に立って、施工者をチェックするという原則があります。入札にかかわる積算作業なども発注者とともに行います。
 ところが、この地質調査会社は、今回の工事では、土壌汚染処理プラントの設置を含む最も主要な部分の工事を請け負う清水JVの一次下請になっています。これでは、設計者として元請の土壌汚染対策工事の監理をできるわけがありません。そんなことも考えずに、下請参加することを発注者として認めたのですか。
 入札前に我が党が入手したある工事受注ゼネコンの内部資料には、当事者でないとわからない、三つの街区それぞれのJV参加企業の組み合わせ、出資比率などが記入されており、実際の結果とすべて一致していました。
 談合がなければあり得ないことです。鹿島、大成は、すべてのJVに入り、清水、鹿島、大成は、ほぼ受注額が同一になるような出資比率が組まれています。
 落札率は九四%から九七%です。ちなみに、全国市民オンブズマン連絡会議では、九〇%以上は談合の疑いがあり、九五%以上は談合の疑いが極めて高いとしています。連絡会議によれば、都発注工事の平均落札率は七九%です。
 都は、入札に当たって、施工能力、汚染処理の経験などを資格要件に定め、初めから清水建設、鹿島、大成などが中心にならなければ受注できないようにしていました。
 にもかかわらず、実際の工事は下請がほとんどやることになっており、能力や経験の資格要件などはあってなきがごとしです。本格工事に入る前なのに、既に六街区では一次、二次で延べ三十二社が参加しています。
 談合疑惑は極めて濃厚です。都には談合情報が寄せられたのですか。寄せられたとしたら、どのような談合情報で、どのように調査、対応したのですか。事実を明らかにしてください。通り一遍の調査でシロと断定することは許されません。土壌汚染対策工事については中断し、直ちに公正取引委員会も含めて、徹底した調査をするよう求めるものです。どうですか。
 最後に、TPP問題です。
 野田首相がTPP、環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加を表明したことに対し、国民的怒りの声が広がっています。TPPへの参加を強行すればどういうことになるでしょうか。米価暴落で地域農業はつぶされ、大震災からの復興への最大の妨げになります。
 全品目を関税ゼロにすれば、食料自給率は四〇%から一三%に急落し、食の安全のための規制、公的医療制度、官公需の中小企業への優先発注などが切り崩され、三百五十万人もの失業者が生まれるなど、国民生活と地域経済に大打撃をもたらします。TPP参加は、絶対にやめさせなければなりません。
 知事は、この間の二回の記者会見で、TPPに対して、経済界は物が売れない、売りたいというが、いろいろな弊害が出てくる、医療も、国民皆保険などが基本的にぐらついてくるなどと発言、基本的に反対だと明言しました。所信表明でも、この問題で政府批判をしています。
 TPP問題では、我が党と知事はほぼ同じ見解です。知事、政府に対して、TPP反対を強く申し入れることが重要だと思いますが、いかがですか。
 再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 清水ひで子議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、今の政府に求めることについてでありますが、国は、我が国のGDPの二倍、一千兆円という、欧州の国であればEUに加盟できないほどの借金を積み上げてきましたが、このままでは、もはや日本という国家そのものが立ち行かないことは、だれの目にも明らかであります。
 にもかかわらず、国のかじ取りを担う現政府も、みずからの未来を切り開くという気概に欠け、ただ国民の顔色をうかがうばかりでありまして、これでは、日本の将来の姿は描けようもないと思います。
 社会保障制度にしても、急激な高齢化が進む日本において、医療や介護にかかる費用が増大することは自明の理であります。
 こうした現状を現在まで放置し、給付と負担のバランスを顧みずに、到底成り立ち得ない高福祉低負担の幻想を国民に振りまいてきたのは、歴代政府の責任にほかなりません。
 政府が今なすべきは、あるべき国家の姿を国民に改めて指し示して、社会保障制度のありようも含め、確固たる意志で日本経済を再生させる政策を戦略的に展開し、国民の活力を取り戻すことであります。
 そのための具体的な行動として、国家発展のかなめであるエネルギーを確保し、国家の活力を生み出す科学技術を伸ばして、それを支える発想力を備えた人材を育成していくことを、まずは政府に求めることが必要だと思います。
 日本が置かれたこうした現実から目を背けて、ばらまき福祉を主張し、増税イコール悪、負担減イコール善という単純な図式の主張には、これは無責任としかいいようがないと思います。
 次いで、都市の安全性の向上についてでありますが、ご指摘をまつまでもなく、都はこれまでも、震災に備えて施設の耐震化や水門、防潮堤の整備などを行政の責任として主体的に進めてきました。
 今後も、木造住宅密集地域の整備促進や緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化、物流の動脈として日本の東西をつなぐ三環状道路を初めとした道路ネットワークの構築などにより、都市の安全性を向上させてまいります。
 もとより、災害に強い都市をつくるには、こうした行政によるハード整備に加えて、都民一人一人が災害への心の備えを固めることが必要だと思います。
 今回の大震災で、最大で高さ十五メートルの津波に襲われた岩手県の洋野町では、防潮堤や避難路などの整備に加えて、日ごろ、徹底した訓練などを通じて、住民が津波に対する高い警戒心を持っていたことから、津波による死傷者はゼロでありました。
 いざというときは、まず、みずからの身を守り、身近な同士を助け合うことが、一人でも多くの命を救うことになるのは紛れもない事実でありまして、都は、自助、共助の強化に向けて、防災隣組の再構築に取り組んでいきたいと思っています。
 今後も、自助、共助、公助のすべてにわたり、現実の教訓に立脚した実効性のある防災対策を講じてまいります。
 次いで、中長期的な財政運営についてでありますが、東日本大震災への対応を初め、いかなる状況にあっても、積極果敢に都政の課題に取り組むことができたのは、これまで、人員の整理、歳費の削減などによって財政再建を行って、強固な財政基盤を培ってきた成果にほかならないと思います。
 この十年余の間、共産党が常に主張しているばらまきにくみすることなく、新しい公会計制度も活用しまして、むだを排除し、徹底して行政改革を進めてまいりました。
 また、都債の発行も抑制するとともに、就任当時底をついていた基金の残高も確保するなど、体力の回復に努めてきました。
 今後とも厳しい財政環境が続くことが見込まれる中でありますが、これまで進めてきた堅実な財政運営を継続し、都民の負託にしっかりとこたえていくつもりであります。
 次いで、TPPの問題についてでありますけれども、申し上げておきますが、そもそも、共産主義をいまだに信奉している共産党と私はちょっと違う、いや、かなり考え方が違いまして、考え方はおろか、目指す社会の姿が全く違っております。私の会見の一部だけをとらえて、あなた方と私の主張がほぼ同じだなどと、軽々しくいってもらいたくない。私の名誉にもかかわりますから。
 先ほども申し上げたように……(発言する者あり)国家の役割の第一義は──静かに聞けよ。国家の役割の第一義は、国民の生命と生活を守ることであります。
 しかし、日本の政治家や官僚は、外交交渉において、国益を構えたゲーム感覚が著しく欠落しております。アメリカへの依存、従属という習性がしみついた日本の政治が国益を主張し守ることができるかと思いますと、甚だ肌寒い感じがいたします。
 交渉に加わる以上、国には、アメリカをぎゅっといわせるぐらいの気持ちで臨んでもらいたいと思います。そして、最後は、アメリカではなくて、日本みずからの決断で参加、不参加を決めてもらいたいものだと思います。
 TPPの反対を国に申し入れろということですが、何でも反対という教条主義を絵にかいたようなあなた方とはちょっと違いまして、そもそも、あなた方が本当に日本のことを考えているかどうか疑問でありますが、反対という論を張るだけで、国益が守れると思っている自体がちょっと甘い考えじゃないんでしょうか。
 他の質問については、教育長、技監及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 給食の安全確保に関する対応についてでございます。
 都では、現在、都内農林水産物や五百品目の流通食品に対して放射線検査を実施しており、給食食材の安全が確保されているものと認識しております。
 区市町村立小中学校における給食の食材検査は、設置者である各区市町村がみずからの判断で実施するものであり、都教育委員会として、個々の区市町村が行う食材の検査に対し支援する考えはございません。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 外環などの高速道路や港湾施設の整備についてでございますが、近年、アジアの諸都市が急速な成長を遂げる中にあって、我が国の国際競争力を高め、経済を成長軌道に戻し国民が豊かさを享受していくためには、首都東京の陸海空の交通、物流インフラを強化することが必要不可欠でございます。
 また、首都直下地震や東海地震などの災害時においても、高度防災都市としての首都機能を堅持し、日本の東西交通分断を防ぎ、迅速な救命、復旧活動を支えるためには、陸上及び海上輸送のネットワークを形成することが重要でございます。
 今後とも、首都東京にとって必要不可欠な道路や港湾など、都市基盤施設の整備を積極的に推進してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 七点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、放射能による健康不安への対応についてでございますが、都は、原発事故直後から、都内の空間放射線量や水道水を継続的に測定いたしまして、その結果を速やかに公表いたしますとともに、電話相談やシンポジウムなどを通じ、都民の不安の解消に努めてまいりました。
 また、補正予算により検査体制を強化し、モニタリングポストを増設したほか、都内に流通する食品の検査や芝浦と場での牛肉の検査も開始いたしました。
 国に対しては、省庁の縦割りを超えた統一的な安全基準の設定や国を挙げた検査体制の確立など、対策の抜本的な強化を提案要求いたしております。
 今後とも、都民の安全・安心の確保に努めてまいります。
 次に、放射能に係る健康調査についてでございますが、都は、都内の空間放射線量につきまして、原発事故以前からモニタリングポストで継続して測定を行っておりますが、四月中旬以降、その測定値は事故発生前の範囲内となっております。
 また、食品の安全を確保するため、国の仕組みに基づき、生産地において農産物等の放射性物質の検査が行われておりますが、都はこれに加えまして、都内に流通する食品のモニタリング検査などを実施いたしております。
 こうしたことから、都として、現時点で特段の健康調査を実施する考えはございません。
 次に、生活保護以前のセーフティーネットについてでございますが、生活、雇用に関するセーフティーネットは、社会保障制度を支える基盤でございまして、基本的に、国の責任で対応すべきものでございます。
 国は、最後のセーフティーネットである生活保護と失業給付との間に、第二のセーフティーネットとして住宅手当や求職者支援制度などを整備いたしました。
 都としては、この第二のセーフティーネットが住居、生活に困窮する離職者の真の自立促進につながるよう、国に対しまして、各種支援策の充実強化を提案要求いたしております。
 次に、福祉など、都独自のセーフティーネットについてでございますが、都は、平成二十年度から区市町村等と連携し、生活に困窮する都民に対して生活、就労支援などを重層的に行う緊急総合対策三カ年事業を国に先んじて実施をしてまいりました。
 こうした取り組みが国を動かし、先ほど申し上げました第二のセーフティーネットの整備に結びついたものでございます。
 都は、これまでの成果を踏まえ、現在、区市町村によります低所得者、離職者対策への支援や、住居喪失不安定就労者などへの支援を行っております。
 次に、保険料の負担軽減についてでございますが、国民健康保険、後期高齢者医療及び介護保険の各制度は、保険料や公費などによって運営することとされております。
 都は、法令等に基づきまして、国や区市町村とともに応分の負担を行っております。
 都として、現在、保険料の値上げを抑制するために、新たな財政支援を行うことや、国に対し国庫負担の拡大を求めることは考えておりません。
 次に、脳ドックについてでございますが、特定健診やがん検診などと異なりまして、脳ドックは、法に基づき区市町村などに実施が義務づけられているものではございません。
 また、統一的な検査方法や判定基準、発症を予防するための治療方針が確立されておらず、国からも、検診の方向は示されておりません。
 脳ドックは、個人の判断で受診するものであり、都として受診促進に取り組む考えはございません。
 最後に、無料低額診療事業についてでございますが、この事業は、低所得者等に対する医療を確保する上で、一定の役割を果たしております。
 都内で無料低額診療事業を行っている医療機関は、平成二十年度末で四十三カ所、現在では四十七カ所となっております。
 国は、この事業について、社会情勢等の変化に伴い必要性が薄らいでいるとして、新規開始の抑制方針を示しますとともに、そのあり方を慎重に検討していくとしておりまして、都としては、今後の議論の行方を見きわめてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、都有施設の放射線量の測定と除染についてでございますが、先ほどもご答弁申し上げましたが、都では、文部科学省のガイドラインの公表を受け、都有施設全般における放射線量測定の必要性の有無を確認するため、サンプリング調査を実施いたしました。
 国や都のこれまでの調査によりまして、都内では、比較的空間線量が高いことが示された区部東部の三区を対象地域として、人、特に子どもが集まる公共施設で、このガイドラインで放射性物質がたまりやすいとしている雨水が集まるところや、植物の根元などの地点を都立公園内で選定いたしました。
 測定の結果、ガイドラインの目安である、地上高さ一メートルの位置で周辺より放射線量が毎時一マイクロシーベルト以上高い地点はございませんでした。
 測定地点の中で、高さ一センチメートルの位置では、比較的線量の高い地点が数カ所あったために、それらの地点では、距離による減衰度合いを詳細に調査した結果、わずかに離れるだけで大幅に減衰していることが確認できました。
 また、こうした限定された地点での汚染の場合、その近傍に人がとどまる時間は極めて少ないと考えております。
 以上のことから、今後、都有施設全般にわたる調査や経常的な調査は基本的に不要と考えております。
 次に、都有施設の放射線量の測定と除染に係る区市町村からの要望があった場合の対応についてでございますが、ただいまご答弁したとおり、都では、都有施設全般にわたる調査や経常的な調査は基本的に不要と考えておりまして、仮に区市町村からの要望があった場合でも、この考えで対応してまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 都立病院や公社病院における無料低額診療事業の実施についてでございますが、本事業は、社会福祉法に基づく社会福祉事業として位置づけられており、その実施については、都立病院等の役割や経営に与える影響、地域医療機関との医療連携のあり方や機能分担、加えて国の動向など、さまざまな課題があると認識しております。
 なお、生計困難者などの診療に際し、都立病院等においては、医療ソーシャルワーカーを全病院に配置し、公的制度の活用支援や分割納付等、さまざまな方法で、医療費支払いに関する相談等に対応しているところでございます。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業金融円滑化法についてでありますが、同法は、現在の金融環境のもとで、多くの中小企業の返済負担の軽減に役立っており、その延長につきましては、この間の利用実態やその効果、影響などを踏まえ、国が適切に判断すべきものであります。
 都は、中小企業の資金調達の円滑化について、経済動向や中小企業の業況を的確に踏まえ、万全な措置を講じるよう既に国に求めております。
 次に、区市町村の融資制度に対する支援についてでありますが、区市町村の融資制度は、それぞれの自治体が地域の産業や財政負担等を含めた政策判断に基づき、主体的に実施しているものであり、年末対策についても、それぞれの判断と責任で実施しております。
 一方、都は、都内全域の中小企業者を対象として、年末対策を含め、手厚い内容の制度融資を実施しております。
 最後に、医療技術分野の産業振興についてでありますが、都は、今後の成長が期待できる医療の分野を重点的に育成するとの方針のもと、中小企業の製品開発や事業化を既に支援しております。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 災害対策基本法の立脚点についてでございますが、同法が、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護することを直接の目的として、国、都道府県、市町村等の責務について規定していることは十分に承知をしております。
 大規模な災害の発生時には、命を守る取り組みはもとより、災害からの早期の復興を図るため、住民や事業者の財産の保全や生活の安定化を図る対策も講じる必要があることは当然であります。
 こうした考えに立脚し、都は、東京都防災対応指針において、住居の耐震化対策、地域の経済活動や雇用を支える事業者の事業継続への支援策、罹災証明や義援金配分の迅速化に向けた対策など、具体的な取り組みを示しております。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 防災対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営住宅の耐震化についてでございますが、都は、都営住宅耐震化整備プログラムに基づき、都民の住宅セーフティーネットである都営住宅の耐震化を計画的に進めてきております。
 都営住宅には、耐震改修に時間を要する高層住棟や、優先的な整備が求められる保育所などが併設された住棟が多くあるなど、他の自治体とは状況が異なり、単純に耐震化率を比較することは適当でないと考えております。
 都営住宅の耐震診断については、完了時期を一年前倒しして、今年度末までに完了させる予定であり、耐震改修については、診断の状況を踏まえ、整備プログラムの見直しを行うこととしており、平成二十七年度末の目標である九〇%以上の耐震化率を達成し、その後も、必要な耐震化を進めてまいります。
 次に、鉄道施設の防災対策についてでございますが、鉄道事業者にとって、安全・安心の確保は経営の根本であり、これまで、各鉄道事業者は、阪神・淡路大震災を受けて施設の総点検を実施し、震度七程度の地震にも耐えられるよう、国の基準に基づき高架橋などの耐震補強工事を実施してきており、液状化対策や浸水対策についても、それぞれ対策を講じてきております。
 引き続き、今回の震災を踏まえ、鉄道事業者による対策や訓練などが適切に行われるよう取り組んでまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 水道施設の耐震化についてでありますが、まず、水道管の耐震化に関しましては、強度のすぐれた管への取りかえを現在ほぼ完了しており、平成十年度からは、より一層の耐震性の向上を目指し、耐震継ぎ手管への全面的な取りかえに着手しております。
 加えて、平成二十二年度からは、これまでの取りかえ計画を大幅に前倒しする緊急十カ年事業を立ち上げ、毎年の取りかえ延長をほぼ倍増させております。
 次に、浄水場などの耐震化に関しましては、これまでも積極的に進めてきており、主要な施設であるろ過池や配水池の耐震化率は、現在、それぞれ七六%、五五%であり、平成二十八年度末には、いずれも耐震化をほぼ完了する見込みでございます。
 こうしたことから、水道施設の耐震化については、現在、既に積極的に進めており、今後も、計画に基づき必要な対策を実施してまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 下水道施設の耐震化についてでございますが、阪神・淡路大震災などの状況を踏まえ、震災時における下水道機能などを確保する観点から、既に必要な対策を計画的に実施しております。
 避難所などからの排水を受ける下水道管とマンホールとの接続部の耐震化については、既に約七割を完了しておりますが、残りの箇所の計画を二年前倒しし、平成二十五年度の完成を目指しておりますし、さらに、ターミナル駅周辺など、対策エリアの拡大を検討しております。
 水再生センターなどについては、著しく立ちおくれているということはありませんで、耐震補強工事を実施するなど、施設の優先度を考慮した必要な対策を実施しております。
 東日本大震災では、都内において、下水道機能を損なう被害はありませんでした。今後は、地震・津波に伴う水害対策技術検証委員会の提言を踏まえ、さらに必要な対策を実施してまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 三点についてお答えをいたします。
 まず、財政運営についてでありますけれども、都市インフラの整備などへの投資は、都民の利便性の確保のみならず、国際競争力を高め、東京の活力を維持する上で不可欠な取り組みであり、着実に進めていく必要があるものと考えております。
 これまでも、こうした取り組みに加えまして、福祉や医療、教育、さらには雇用環境や中小企業に関する施策など、都民にとって必要な施策に財源を振り向けてきているところであります。
 引き続き、財政の健全性に十分留意しながら、ハード、ソフト両面にわたり山積する都政の諸課題にしっかりと取り組んでまいります。
 次に、法人事業税の暫定措置についてでありますが、この措置は受益と負担という税の原則に反するものであり、一貫して撤廃を訴えてまいりましたけれども、法律では、今年度末までに税制の抜本改革を行うことを義務づけており、暫定措置についても同時に撤廃すべきものと位置づけております。
 現在、社会保障と税の一体改革の議論がなされておりますが、この中で、約束どおり暫定措置が撤廃されるよう強く求めているところであります。
 最後に、豊洲新市場土壌汚染対策工事の契約についてでありますが、本件の入札に当たりましては、都に豊洲新市場の土壌汚染対策工事に関する談合情報が寄せられたことから、直ちに談合情報検討委員会を設置し、入札参加事業者に対して事情聴取を行いました。
 その結果、談合の事実は確認できず、事業者からは法令等に反する行為を行っていない旨の誓約書の提出を受けたことから、入札を執行し、適法に契約を締結したものであります。
 また、公正取引委員会に対しては、この一連の経過を報告いたしております。
 こうしたことから、ご質問の調査については、改めて実施する考えはございません。
   〔主税局長新田洋平君登壇〕

〇主税局長(新田洋平君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、法人への課税についてでございますが、今年度の税制改正による法人実効税率の五%引き下げを行った上で、復興に向けた財源を確保するため、平成二十四年度から三年間、法人税額の一〇%を復興特別法人税として上乗せ、課税することとなったところでございます。
 なお、法人実効税率の引き下げは、国内企業の国際競争力強化や、外資系企業の立地促進による雇用と国内投資の拡大という観点から改正されたものでございまして、これにあわせて、欠損金の繰越控除の一部制限や減価償却率の見直しなど、課税ベースの拡大を行うことで、地方税収に極力影響を与えないこととされております。
 次に、法人事業税の超過課税についてでございますが、法人事業税の超過税率は、地方の課税自主権に基づき、標準税率の一・二倍までの範囲で、条例により独自に定めることができることとされております。
 都におきましては、大都市特有の財政需要に対応するため、資本金の額が一億円を超える法人に対しまして標準税率の一・〇五倍相当の税率を定め、特別の負担を求めているところでございます。
 超過税率の引き上げにつきましては、法人の国際競争力の観点や現在の我が国の経済情勢等を踏まえますと、適当でないと考えております。
   〔中央卸売市場長中西充君登壇〕

〇中央卸売市場長(中西充君) 土壌汚染対策の設計の受託者が下請として参加することについてでございますが、ご質問では、設計をした会社が元請の工事監督、ご質問の中では監理という言葉を使っておられましたが、これをすることを前提にしておられますが、都の土木工事では、一部で特定の限定された業務に限り監督補助者として民間事業者を活用することはありますものの、都みずからが責任を持って工事監督を行うこととしております。
 豊洲新市場予定地における土壌汚染対策工事では、都がみずから工事全体を監督しており、補助者を活用する予定はございません。したがいまして、設計の受託者が工事の監督に関与することは一切ありません。
 また、設計の受託者が下請となることについては、請負契約の適正化等について規定しております建設業法や関係通達等に照らし、何ら問題はありません。
 都は、土壌汚染対策工事を確実に実施し、市場用地の安全・安心に万全を期してまいります。
   〔百五番清水ひで子君登壇〕

〇百五番(清水ひで子君) 再質問します。
 答弁を聞いて、石原知事は、本当に国民の痛みに目を向けない方だと思いました。
 口を開けば、高福祉低負担の幻想といって、社会保障切り捨てを進める厚生労働省と同じ思考回路です。あげくは、エネルギー確保などの方が優先だとの答弁でした。
 雇用と社会保障を立て直してこそ、都民、国民の活力が生まれ、経済が再生できるという発想が知事にはないのですか、お答えください。
 第二に、談合疑惑で二問聞きます。
 まず、疑惑企業が、通り一遍の事情聴取程度で談合を認めるわけがありません。公正取引委員会は、疑いのある事業者からの事情聴取を極力回避し、調査の事実が知られない手段で行うよう求めています。なぜそうしなかったのですか。
 次に、愛知県などでは、情報と入札結果に一致した部分があれば、落札を保留し、再調査します。都の場合は、JVの組み合わせ、出資比率など、情報と入札結果はどの程度一致したのですか、お答えください。
 都は、子どもたちが毎時七マイクロシーベルトなどという放射線の中で転げ回っても問題ないというのですか、伺います。お答えください。
 都が新たな測定をしない理由にしているのは、地上高さ一メートルで周辺より毎時一マイクロシーベルト以上高い地点という文科省のガイドラインです。
 しかし、文科省でさえ、この基準以下でも自治体の相談に応じるとしているのです。ところが都は、区や市の測定、除染要求にも応じない。情けないと思いませんか。
 以上、五問お答えください。
 終わりです。(拍手)
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 先ほども申し上げましたが、生活、雇用に関するセーフティーネットは社会保障制度を支える基盤でありまして、基本的に国の責任で対応すべきものでございます。
 都は、平成二十年度から区市町村と連携をいたしまして、生活に困窮する都民に対しまして、生活、就労支援策を重層的に行う緊急総合対策三カ年事業を実施いたしましたが、この取り組みが国を動かし、住宅手当や求職者支援制度という第二のセーフティーネットを国が整備したものでございます。
 都としては、この第二のセーフティーネットがさらに機能するよう、強く提案要求をしているところでございます。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 二点についてご質問がございましたが、まとめて答えさせていただきます。
 都に対しましては、土壌汚染対策工事に関する談合情報が寄せられましたことから、直ちに談合情報検討委員会を設置し、事情聴取を行い、その結果、事実は確認できずに、法令等に反する行為を行っていない旨の契約書の提出も受けましたことから、適法に契約したものであり、この経過については公正取引委員会に対して報告をいたしているところでございます。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 東京都は、これまでディーゼル車対策を実施してきましたように、都民の健康と安全を守るために必要な場合には、いかなる困難があっても必要な対策は行う立場に立っております。
 しかしながら、再三答弁しましたように、国や都による都内の面的な放射線量の測定結果や、都有施設における局所的な汚染の調査結果などから見まして、都民の健康と安全を確保する上で、都有施設の全面的な調査や除染は不要と考えております。
 都は、都民の安心を確保する上では、放射線に関する正確な情報を提供していくことがより重要であると認識しておりまして、今後ともこれを進めてまいります。

〇七十四番(西岡真一郎君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

〇議長(和田宗春君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後八時二十二分散会

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