平成二十三年東京都議会会議録第八号

平成二十三年六月二十三日(木曜日)
 出席議員 百二十六名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番小宮あんり君
四番吉住 健一君
五番桜井 浩之君
六番山崎 一輝君
七番福士 敬子君
八番土屋たかゆき君
九番山内れい子君
十一番小山くにひこ君
十二番くりした善行君
十三番西沢けいた君
十四番田中  健君
十五番畔上三和子君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番遠藤  守君
十九番大松あきら君
二十番野田かずさ君
二十一番鈴木 章浩君
二十二番菅  東一君
二十三番きたしろ勝彦君
二十四番田中たけし君
二十五番星 ひろ子君
二十六番関口 太一君
二十七番柳ヶ瀬裕文君
二十八番淺野 克彦君
二十九番新井ともはる君
三十番佐藤 由美君
三十一番中村ひろし君
三十二番たきぐち学君
三十三番田の上いくこ君
三十四番島田 幸成君
三十五番大島よしえ君
三十六番中山 信行君
三十七番高倉 良生君
三十八番橘  正剛君
三十九番松葉多美子君
四十番鈴木 隆道君
四十一番神林  茂君
四十二番早坂 義弘君
四十三番高木 けい君
四十四番宇田川聡史君
四十五番鈴木あきまさ君
四十六番矢島 千秋君
四十七番西崎 光子君
四十八番しのづか元君
四十九番滝沢 景一君
五十番中谷 祐二君
五十一番笹本ひさし君
五十二番山下ようこ君
五十三番神野 吉弘君
五十四番鈴木 勝博君
五十五番興津 秀憲君
五十六番岡田眞理子君
五十七番古館 和憲君
五十八番かち佳代子君
五十九番伊藤 興一君
六十番吉倉 正美君
六十一番上野 和彦君
六十二番谷村 孝彦君
六十三番野上 純子君
六十四番山加 朱美君
六十五番吉原  修君
六十六番三宅 正彦君
六十七番石森たかゆき君
六十八番高橋 信博君
六十九番山田 忠昭君
七十番服部ゆくお君
七十一番伊藤 ゆう君
七十二番原田  大君
七十三番佐藤 広典君
七十四番伊藤まさき君
七十五番尾崎 大介君
七十六番山口  拓君
七十七番松下 玲子君
七十八番野上ゆきえ君
七十九番西岡真一郎君
八十番今村 るか君
八十一番たぞえ民夫君
八十二番清水ひで子君
八十三番小磯 善彦君
八十四番長橋 桂一君
八十五番藤井  一君
八十六番ともとし春久君
八十七番こいそ 明君
八十八番遠藤  衛君
八十九番中屋 文孝君
九十番村上 英子君
九十一番林田  武君
九十二番三原まさつぐ君
九十三番田島 和明君
九十四番樺山たかし君
九十五番吉田康一郎君
九十六番くまき美奈子君
九十七番大西さとる君
九十八番いのつめまさみ君
九十九番門脇ふみよし君
百番小沢 昌也君
百一番石毛しげる君
百二番大津 浩子君
百三番大塚たかあき君
百四番相川  博君
百五番大山とも子君
百六番鈴木貫太郎君
百七番東村 邦浩君
百八番中嶋 義雄君
百九番木内 良明君
百十番古賀 俊昭君
百十一番高橋かずみ君
百十二番野島 善司君
百十三番三宅 茂樹君
百十四番川井しげお君
百十五番吉野 利明君
百十六番宮崎  章君
百十七番比留間敏夫君
百十八番斉藤あつし君
百十九番増子 博樹君
百二十番泉谷つよし君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番酒井 大史君
百二十三番大沢  昇君
百二十四番中村 明彦君
百二十五番馬場 裕子君
百二十六番和田 宗春君
百二十七番吉田 信夫君

 欠席議員 なし
 欠員
    十番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事佐藤  広君
副知事猪瀬 直樹君
副知事吉川 和夫君
副知事村山 寛司君
教育長大原 正行君
東京都技監都市整備局長兼務河島  均君
知事本局長秋山 俊行君
総務局長比留間英人君
財務局長安藤 立美君
警視総監池田 克彦君
主税局長荒川  満君
生活文化局長並木 一夫君
スポーツ振興局長笠井 謙一君
環境局長大野 輝之君
福祉保健局長杉村 栄一君
産業労働局長前田 信弘君
建設局長村尾 公一君
港湾局長中井 敬三君
会計管理局長新田 洋平君
消防総監新井 雄治君
交通局長金子正一郎君
水道局長尾崎  勝君
下水道局長松田 二郎君
青少年・治安対策本部長倉田  潤君
病院経営本部長川澄 俊文君
中央卸売市場長岡田  至君
選挙管理委員会事務局長宮川 雄司君
人事委員会事務局長多羅尾光睦君
労働委員会事務局長山本 洋一君
監査事務局長三橋  昇君
収用委員会事務局長藤井 芳弘君

六月二十三日議事日程第二号
第一 第百七号議案
平成二十三年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第二 第百八号議案
平成二十三年度東京都都営住宅等事業会計補正予算(第一号)
第三 第百九号議案
平成二十三年度東京都病院会計補正予算(第一号)
第四 第百十号議案
平成二十三年度東京都中央卸売市場会計補正予算(第一号)
第五 第百十一号議案
平成二十三年度東京都臨海地域開発事業会計補正予算(第一号)
第六 第百十二号議案
平成二十三年度東京都港湾事業会計補正予算(第一号)
第七 第百十三号議案
平成二十三年度東京都水道事業会計補正予算(第一号)
第八 第百十四号議案
平成二十三年度東京都下水道事業会計補正予算(第一号)
第九 第百十五号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
第十 第百十六号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第十一 第百十七号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第十二 第百十八号議案
東京都高等学校等生徒修学支援基金条例の一部を改正する条例
第十三 第百十九号議案
警視庁の警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する条例の一部を改正する条例
第十四 第百二十号議案
警視庁航空隊江東飛行センター(二十三)改築工事請負契約
第十五 第百二十一号議案
東京国際展示場(二十三)電気設備改修工事請負契約
第十六 第百二十二号議案
都庁舎(二十三)昇降機設備改修工事その一請負契約
第十七 第百二十三号議案
都庁舎(二十三)昇降機設備改修工事その二請負契約
第十八 第百二十四号議案
消防艇「みやこどり」の製造請負契約
第十九 第百二十五号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター定款の変更について
第二十 第百二十六号議案
エックス線検査装置の買入れについて
第二十一 第百二十七号議案
複合多重化装置外五種の買入れについて
第二十二 第百二十八号議案
旅券法関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十三 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例の報告及び承認について
第二十四 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例の報告及び承認について

   午後一時開議

〇議長(和田宗春君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(和田宗春君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(和田宗春君) これより質問に入ります。
 百二十一番山下太郎君。
   〔百二十一番山下太郎君登壇〕

〇百二十一番(山下太郎君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 東日本大震災より三カ月余りが過ぎました。ここで改めて、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様、ご家族の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 同時に、放射線の被曝と闘いながら、福島第一原子力発電所事故の収束に向けた作業に懸命に取り組まれている皆様、警察官、消防士、自衛隊員、海上保安官、都職員そして市民ボランティアの皆様など、被災地支援活動を行うすべての皆様に敬意を表するものであります。
 私たちも、被災地の皆様と心を一つにし、東日本の復興に向けて、東京都がその役割を十全に果たせるよう、全力を尽くす決意を表明させていただきます。
 さて、東京都知事選挙を経て、四期目となる石原都政が始まりました。今回の東京都知事選挙は、日々刻々伝えられる東日本大震災の甚大なる被害に驚愕と悲しみが深まり、これからの生活に多くの都民が不安を募らせる中で実施されました。
 こうした中で都民は、強い関心を持って東京都知事選挙を注視し、結果、多くの都民が石原知事に信任票を投じました。選挙期間中、公務を盾に政策討論を行わず、一部不適切な発言があったことは遺憾であるといわなければなりません。
 しかし、私たちは、この結果を尊重するとともに、もう一方の公選によって私たちに付託された都民の期待を踏まえ、今後も都民の生活を第一とする都政の実現に取り組むことを表明させていただきます。
 まず、東日本大震災における被災地支援と東京の防災対策について伺います。
 三月十一日、マグニチュード九・〇、最高震度七の強く長い揺れが東日本一帯を襲うとともに、大津波、海砂を巻き込んだ黒く重い海水の塊が太平洋沿岸の防波堤を軒並み破壊し、海水や瓦れきが市街地に流れ込み、甚大な被害を引き起こしました。福島第一原子力発電所にも大津波が押し寄せ、冷却電源を失った原子炉建屋は爆発、格納容器が損傷して、放射性物質が広範に拡散しました。
 原発周辺の住民の皆さんは、自宅があるのに帰れない深刻な状況が続いています。私たちは、この未曾有の複合災害に対していち早く被災地支援と都内の震災対策を充実させること、そして補正予算の編成を知事に申し入れいたしました。また、各議員は、党の被災地支援活動やNPOと連携した取り組みを行うなど、被災地支援に取り組んでまいりました。
 そこで伺います。
 都は、児童生徒への心のケアや、災害時要援護者の救護など、医療人材の継続的な派遣や、地元雇用を推進する自治体事業、キャッシュ・フォー・ワークといった取り組みへの支援をするなど、被災者の皆さんが希望を見出し、一歩踏み出すことのできるよう、生活再建をともにサポートしていくことが重要です。
 また、各県が創造的復興、もしくは再生を目指し、独自復興計画を策定、実現させていくことを都が後押しし、安全な地域社会の再建に寄与していく必要があります。
 このように被災地が取り組むべき課題は山積し、日々刻々地域ごとに状況が変化しております。被災地のニーズを的確に把握し、被災地、被災者が真に必要とする支援に今後とも継続して取り組むべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 現在、都内には福島県などから自主避難してきた約五千名の避難者の皆さんが都営住宅などに仮住まいをしていらっしゃいます。故郷から遠く離れ、いつ帰れるのかという思いを持って生活している皆さんに、都は寄り添う形でその生活を支えていくべきと考えます。
 避難者は、見知らぬ東京での生活が不安であり、特に高齢者の方々については、引きこもりがちになるなど、孤立化も懸念されます。
 先日、特別区の都営住宅で、自治会の皆さんが避難者と懇談会を開き、福島での共通の話題で盛り上がりました。こうしたかかわり合いをふやす場でもあるミニ懇談会を開催し、避難者同士や地域との交流機会を創造することを求められております。
 また、福祉も含めた総合的な相談を区市町村や災害復興まちづくり支援機構、NPOなどと連携して開催するなど、広い協働の形で避難者の暮らしを支えることも重要と考えます。
 都は、コミュニティにも配慮した避難者に対する支援の取り組みを行っていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 東日本大震災を教訓に、東京においても発災時における社会対応力の強化や防災リーダーなど、地域人材の育成などに一層取り組み、東京を災害に強い持続可能な都市としていかなければなりません。
 現在、各道府県や市町村で地域防災計画などを見直す動きが出ています。今回の震災による大津波は、近年研究が進みつつあった平安期の貞観地震に類似したものといわれています。
 高知県や茨城県では、既に江戸期の地震の実例を盛り込み、地域防災計画の策定や浸水想定を行っています。
 東京においても、江戸期に三連動地震による大津波、これに続く暴風雨や富士山噴火による複合災害が起きており、過去の災害分析からも改めて被害想定を研究すべきと考えます。
 実践的訓練やライフラインの耐震化、減災化のさらなる推進も必要です。福島原発事故を踏まえるのであれば、近い将来必ず起きるといわれている東海地震による静岡県浜岡原発事故リスクをも想定した放射能対策も行わなければなりません。
 地震、津波の被害想定の検討や防災対策の総点検、そして東京の総合防災力をさらに高める取り組みが必要だと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、原子力発電所の安全性について伺います。
 平成十九年に発生した新潟県中越沖地震でも柏崎刈羽原発が被災し、放射性物質を含む水が漏れ、一部が海に放出されていたことが確認されました。
 私たちは、当時の第三回定例会の代表質問において、福島第一、第二原発など、すべての原発の海域を含めた立地調査や周辺施設を含めた耐震安全性の確保、防災対応の強化、情報の迅速な提供など、危機管理体制の強化を国や電力会社などに求めていくべきと主張してきました。
 これに対して石原知事は、都は直ちに東京電力に対し、原因究明や安全対策の実施、電力の安定供給を要求してきた、今後とも国及び東京電力に対して今回の地震を踏まえた原発の危機管理体制の強化を求めていくと答えていらっしゃいますが、その後の具体的な行動は不明なまま、今回の福島第一原発事故が起きてしまいました。
 石原知事は過去、東京湾にも原発をと発言されておりましたが、東日本大震災後、福島第一原発の事故が深刻化した三月二十五日にも、私は原発推進論者です、今でもと発言されております。ところが、せんだっての所信表明では、原発事故によって日本の安全神話は消えたと言及されました。
 私たちは、福島原発事故以降の現下の状況では、原発はもはや、東京湾はおろか、他の自治体においても新たに建設することは不可能であると考えております。
 そこで改めて、原発の安全性に対する石原知事の基本認識について伺います。
 次に、首都圏の防災対策について伺います。
 関西広域連合は、関西が経験した災害の教訓を生かして、新たに関西全体の対応方針である関西広域防災計画の策定に取り組んでいます。
 九都県市においても、首都圏全体の大震災への具体的な行動指針である九都県市防災プランを作成していますが、今回の大震災を踏まえ、防災プランについても必要な見直しを協議していくべきと考えます。都の見解を伺います。
 次に、出火防止対策について伺います。
 東日本大震災発生後、東北電力は停電復旧時に通電火災を防ぐため、職員が各戸を訪問して安全確認をしてから通電を行いました。
 首都直下地震における都の地震火災想定は、最高三十四万棟が焼失し、三千五百人の死者が出ることとなっています。建物が密集する首都東京においては、火災による被害が最も大きく、出火防止対策は最重要課題の一つです。
 特に、環状七号線周辺に木造住宅密集地域が広範囲に分布していることから、同時多発的に火災が発生した場合、消防による消火が極めて困難となることが予想されています。
 また、東京消防庁が出火危険性を調査した結果、電気関係からの出火が約七割を占めることから、その対策が急がれます。
 一方、地震時においては、電気ブレーカーの切り忘れや家屋の倒壊によりブレーカーに近づけないこともあるため、地震時に都民がブレーカーを切る指導を強化することに加えて、東京電力がきめ細やかな電力復旧活動に努めること、感震出火防止システムや感震コンセントなど、出火防止器具のさらなる普及の手だてを講じることが必要であります。
 木造住宅密集地域における出火防止対策をより強化して、東京の減災に努めるべきと考えますが、東京消防庁の見解を伺います。
 次に、都内建築物の震災対策について伺います。
 私たちは、東日本大震災を目の当たりにして、改めて都内建築物の耐震化の必要性を痛感いたしました。特に、木造住宅の耐震化については、一刻も早く促進すべきと考えています。
 都は、都内の木造住宅密集地域のうち、防災都市づくり推進計画で指定した整備地域内における木造住宅の耐震化に対して助成を行っていますが、私たちはこれまで、都内全域で制度を適用するよう、あるいは対象の拡大に向けた第一段階として、建物倒壊危険度五の地域すべて、もしくは建物倒壊危険度と火災危険度がともに五である地域をすべて制度の適用対象地域として取り扱うよう再三求めてまいりました。
 昨年の防災都市づくり推進計画の見直しによって、建物倒壊度と火災危険度がいずれも五である二十五地域のうち、整備地域に指定されなかった地域は一地域だけとなりました。この点については一定の評価をしておりますが、一方で、建物倒壊危険度五に該当する地域が八十四地域ある中で、二十三地域が整備地域になっておりません。
 私たちは、本来は都内全域を対象にすべきと考えていますが、せめてこれらの地域も木造住宅の耐震診断、耐震改修助成制度の適用対象地域として取り扱うよう、対象地域を拡大すべきと考えますが、見解を伺います。
 東日本大震災では、地震の揺れによって、都内でも外装材の脱落のほか、天井パネルの落下による死傷者も発生しました。外壁や天井パネルなど、都内建築物の非構造部材の崩落対策が改めて必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、液状化対策について伺います。
 今回の大震災による長い揺れは、広範囲にわたって地盤の液状化を引き起こし、千葉県浦安市では上下水道が寸断され、多くの住宅で不同沈下被害を生じました。液状化により家が〇・八六度傾くと体調を崩すといった健康被害も報告されています。
 東京においても、実際に調査したところ、新木場駅前でマンホールの浮き上がりや道路のひび割れ、噴砂を確認し、潮風公園でも崩れた階段や噴砂を見かけました。これらは、都の液状化予測図で液状化の発生が少ないとされていた地域であります。
 港湾施設の背後においても、新木場地区や十号地その二など、そして江東区、江戸川区など湾岸地域の七区で液状化被害が報告されています。
 都はこれまで、臨海副都心地区や公共施設への液状化対策を行ってきましたが、大震災による液状化被害に対する都民の関心は強く、被害の実態や調査を検証して、改めて液状化予測図を見直し、都民に示していくべきと考えます。都の見解を伺います。
 震度五強を記録した東京都心部は、交通機関の運休によりターミナル駅に多くの人が滞留、九万四千人が公共機関に一時避難しました。すべての幹線道路は、首都高の通行どめや自家用車両の都心への流入、車道を歩く徒歩帰宅者などのため大渋滞を起こしました。
 この日の混乱に関して、徒歩帰宅者がコンビニエンスストアでトイレ使用を断られた例があり、避難所での備蓄物資を地元住民と帰宅困難者でどう分け合うのかといったさまざまな苦情や問い合わせもありました。
 このため、事業者に、従業員の一斉帰宅を控えるための食料などの備蓄や、正確な交通情報の入手方法、家族の安否確認方法を示す啓発事業がさらに重要と考えます。事業者防災計画の策定推進や駅前滞留者対策訓練の浸透も課題です。
 また、より大規模な地震が発生した場合、公共機関は救助、救急対策や交通規制などに追われるため、都は、被災時に安全確認された大型商業施設、事業所での来訪者、従業員の一時待機や公共交通機関による避難誘導や輸送協力ネットワークの構築、来訪者などの避難も含めた避難所の運営など、被災者の安全確保に向けたエリアマネジメントを考えていくべきです。
 そのため、東京災害ボランティアネットワークや連合東京などが実施してきた帰宅困難者対応訓練と連携し、多様な主体による協働の取り組みを支援していくべきであります。今回浮かび上がった諸課題への対策を事業者や関係団体、都民とともに共有し、帰宅困難者対策を実効性あるものとしていかなければなりません。都の見解を伺います。
 三年前、都は、石油連盟や東京都石油商業組合との間で、大規模災害時において重要施設や緊急通行車両、給油取扱所などに石油燃料の安定供給を要請する包括的協定を締結しました。
 しかし、東日本大震災により六カ所の国内製油所が被災、東北地方や首都圏は燃料の供給不足に陥りました。被災地への救援物資輸送車や医療機関などでも燃料確保が困難となり、混乱が起きました。
 そこで国は、民間の法定備蓄分を二回にわたり、計二十五日分取り崩すことで対応しました。燃料の生産拠点が被災したこともありましたが、包括的な協定だけでは、優先度の高い事業者などへの供給が難しいと思われることから、災害発生時の対応について、より具体的な対応策が求められております。
 そこで、大規模災害時において、優先車両、施設に燃料の安定供給を行うための実践的な仕組みを検討すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、伊豆・小笠原諸島の離島での災害対策について伺います。
 先般、東日本大震災を踏まえ、地震、津波、台風、噴火などさまざまな災害が想定される地域でもある島しょ地域の災害対策について、現地の町村長や住民の皆様からご要望やご意見を伺ってきました。
 災害発生時には、港は島民の生命を守る緊急避難及び応急物資や復旧用資材の輸送等に重要な役割を担っています。東日本大震災においても、離島ではほとんどの船舶が被害を受け、しばらくの間孤立を余儀なくされ、厳しい状況も続いたとの報道もあります。
 東京の島しょにあっては、港湾施設として利用頻度の高い漁港を災害時に避難や輸送の拠点としての役割が果たせるようなものに整備するということが必要なのではないでしょうか。
 今回の現地での視察からも、大きな予算を必要とせずとも、島によっては小規模な改修などで災害に強い港の整備が可能ではないのかと考えられます。
 さて、今回の補正予算でも、離島の港湾、漁港、海岸における災害対策が計上されておりますが、島しょ地域の災害時に重要な役割を果たす港の整備をどのように進めていくのかお伺いいたします。
 次に、省エネルギー対策及び大都市エネルギーの活用対策について伺います。
 東日本大震災の影響による電力不足を考えれば、早急な節電対策が必要です。特に震災直後に実施されてさまざまな問題点が明らかになった計画停電と、電力消費量が供給量を上回ってしまった場合の突発的な大規模停電は、あらゆる手だてを講じて回避する必要があります。
 そこで、私たちは、四月十一日にエネルギー抑制対策プロジェクトチームを設置し、対策を検討した結果を省エネルギー型都市づくり・アクションプランとして取りまとめ、五月二十四日、東京都に対して緊急提言いたしました。
 都は五月二十七日、東京都電力対策緊急プログラムを公表しました。この中には私たちの提言の内容が幅広く取り入れられており、一定の評価をしております。
 私たちは、東日本大震災の経験を踏まえつつ、今後東京は、平常時は環境に配慮しながらも、非常時の自立型エネルギー源の確保を進めることにより、自立型の高度な環境防災都市づくりを進めていく必要があると考えます。
 今後の環境に配慮した都市づくりに向け、知事の基本認識を伺います。
 都は、東京都環境確保条例に基づき、熱、燃料、電気の使用量が原油換算で年間合計一千五百キロリットル以上となった約千三百の大規模事業所に対して、二〇一〇年から二〇一四年の五カ年の温室効果ガスの削減目標を定め、これを義務化しています。
 一方で、スーパーやコンビニなど複数の事業所の原油換算使用量の合計が三千キロリットルを超える事業者を含む約三万の中小模事業所に対しては、削減目標などを掲げず、省エネへの取り組みに関する地球温暖化対策報告書の提出を求めています。
 そこで今後、これら約三万の中小規模事業所に対しては、報告書の提出を求めることに加えて、事業規模などに応じた都としての削減目標の目安を提示し、事業所としての削減目標の数値を報告書に明記すること、また事業所に対し、省エネに向けた効果的な先進事例を提示し、一層の普及啓発に努めるなど、環境確保条例を超える取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。
 都では、平成二十二年度から中小規模事業所が省エネ診断等に基づき高効率な省エネ設備を導入する場合に、これによるCO2削減量をクレジット化する権利を東京都へ無償譲渡することを条件に、その費用について助成を行っています。
 また、省エネ診断に基づき設備投資を行う場合などに、最優遇金利で資金を提供する産業力強化融資や、地球温暖化防止に有効な設備を低廉な価格でリースする中小企業設備リース事業、特定の省エネ設備等を取得した場合に、事業税の減免を行う中小企業者向け省エネ促進税制を実施しています。
 ところが、現状では、それぞれの施策が各所管部署ごとで情報提供されているため、中小企業の方々は東京都には省エネ設備の導入のために、全体としてどのような制度があって、どのような条件で、どのような組み合わせで利用できるのかなど、よくわからないという声を伺います。
 中小事業所の省エネ設備導入促進制度の情報提供及び相談の窓口の一本化と、制度の周知徹底に向けた取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。
 都は未曾有の事態を受け、民間事業者に先駆けて一層の省エネに努めることが求められております。都は、既に二〇〇七年より都関連施設の改修の際に用いる建築仕様を省エネ仕様に改めており、今後大規模改修を予定されている施設などについては、この省エネ仕様が適用されます。
 私たちは、既に省エネ仕様で改修された施設と今後改修が予定されている施設以外の都関連施設の省エネ化も必要と考えています。当面改修予定のない都関連施設の省エネ化について見解を伺います。
 都立高校は、高校百九十校、特別支援学校五十六校などの校舎、さらに各校の校舎以外の実験棟や体育館なども含めると、一校一校が節電に取り組むことで大きな効果をもたらします。
 都議会民主党が、省エネルギー型都市づくり・アクションプランでも幾つか提案させていただきましたように、近年では省エネ効果の高い設備や機具が開発されており、このような設備や機具を学校施設に導入することで、節電に大きく貢献していけるものと考えます。
 そこで、都立高校の施設の省エネ化に向けた今後の取り組みについて見解を伺います。
 家庭での節電は、都民がまとまって取り組めば高い効果が期待できます。そのためにも、参加意識を高める仕組みづくりと、なるべく早く取り組むことが必要と考えます。
 中でも、子どもの節電意識が高まれば、それにつられて親も取り組むといわれています。都は、電力対策緊急プログラムにおいて、都内の公立小中高、特別支援学校で節電アクション月間を実施するということで、既に省エネ教育を通じた家庭での省エネ意識の啓発に取り組むことを打ち出しています。
 私たちはこのほかに、例えば学校予算や生徒会予算を増額するなど、学校エコポイント制度の導入を提案しましたが、都立学校施設での児童生徒の省エネ意識を高め、実践につなげるために、都が省エネ優秀校に対して、部活動などを初めとした学校活動に生かせる具体的な省エネのインセンティブが働くような取り組みも有効と考えますが、見解を伺います。
 石原知事は、再生可能エネルギーの導入について、例えば五月二十七日の定例会見では、そんなものだめだ、コストがかかって、出力がなくて、コストパフォーマンスがだめだと述べられているように、原子力にかわる産業用の代替エネルギーとしては否定的な見解を繰り返し述べておられます。
 また、石原知事は所信表明の中で、首都圏の電力自給率を高めるために、天然ガス発電所の新規建設に向け行動を開始すると述べていらっしゃいますが、天然ガスも石油と同じ化石燃料であるため、資源に限りがあり、燃料費もかさむという難点もあります。環境への負荷も、石油や石炭に比べれば総体的に低いというだけで、全く影響がないということではありません。
 しかし、再生可能エネルギーの導入促進は世界的な潮流であり、東京都も、二〇〇六年三月に策定した再生可能エネルギー戦略において、二〇二〇年までに東京のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を二〇%程度に高めるとしています。
 こうしたことから、私たちは、中長期的にはできるだけ再生可能エネルギーにシフトすべきであり、採算ベースに乗りにくい再生可能エネルギーの導入こそ、都が行政として支援すべきと考えます。
 そこで、今後の再生可能エネルギーの導入促進に対する都の基本認識について見解を伺います。
 なお、売電を目的とする大規模な天然ガス発電所の新規建設に当たっては、東京都や都の関連団体が電気事業者として発電所を建設するのではなく、民間事業者に事業をゆだね、都は土地の提供程度にとどめておくべきであると、この場で申し上げておきます。
 ところで、電力を安定的に供給し、むだなく消費する仕組みづくりのための手法として、地域冷暖房施設に発電機能をつけ加えることが考えられます。現在、都内に地域冷暖房施設は七十七カ所ありますが、発電と冷暖房機能を備えた施設は一カ所しかありません。
 発電機能を備えた地域冷暖房施設整備が進まない背景には、初期投資額の大きさがあります。
 そこで、地域冷暖房施設整備で認められている対象建築物の容積の緩和をさらに拡大することを検討してみる価値はあると思いますが、見解を伺います。
 民間企業においては、この夏の電力不足に対応するため、サマータイムの導入や休日の平日へのシフトなど、新たな勤務体系を導入するなどさまざまな工夫を行っていますが、その結果生じる生活上の空白に、子どもを持つ保護者の懸念もふえています。
 特に懸念されるのは、早朝、土日に対応した保育サービスの確保であり、東京都においては、休日、延長保育特別事業の活用等を含め、各区市町村の保育ニーズを適切に把握しながら迅速な対応を要望するものであります。
 また、早番、輪番休業に際しては、保育サービスだけでなく、小学校低学年の子どもの早朝、土日での対応を初め、多摩地域など郊外では、駅への早朝バスなど、生活時間帯がずれることによるさまざまな課題が生じています。
 そこで私は、早朝、土日出勤という今後変化する新しい勤務体系によって、働く人たちから寄せられる要望を踏まえ、都として、働きやすい職場環境の整備に向けて取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、教育施策について伺います。
 初めに、学校防災機能強化と教職員の役割について伺います。
 文科省は、ことし五月、公立小中高校の防災機能を強化する方針を決めました。これにより、耐震化のみならず、貯水槽、備蓄倉庫、トイレ、自家発電装置等の整備強化が図られることが期待されています。
 都立学校は災害時の帰宅支援ステーションに指定されていますが、三月十一日の震災当日、多くの学校では食料、毛布等の備蓄が生徒の分しか用意されておらず、十分な対応が困難な状況にありました。
 首都直下地震が起きた際には、都内の帰宅困難者は三百九十万人に上ると予想される中、都立学校における防災機能強化が早急に求められますが、都の見解を伺います。
 また、今回の東日本大震災の際は、多くの教職員が不眠不休で帰宅困難者の世話に当たり、疲弊していた状況がありました。緊急時に教職員がどこまで責任を持って行うのか、校内の役割分担や地元自治体との分担の明確化が必要と考えています。
 帰宅支援ステーションになった際の計画や対応マニュアルを作成し、各都立学校での周知徹底を図り、運営における適切な体制づくりを整えていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、防災教育について質問いたします。
 このたびの震災によって、千三百人以上の死者、行方不明者を出した岩手県釜石市では、津波襲来時に学校管理下にあった小中学校の児童生徒から一人の犠牲者も出さなかったという奇跡が起きました。
 今回の奇跡は、平成二十年度に文科省のモデル事業に釜石市が採択されて以来、市内の全小中学校で津波防災教育の推進を図り、地域住民や保護者参加型の合同避難訓練など、綿密な指導内容の防災教育を実施してきたことが結果にあらわれたといわれております。
 そこで、都内においても、首都直下地震に備え、防災教育の質を一層向上させ、徹底を図る必要があると考え、以下四点質問いたします。
 初めに、実践型防災教育の取り組みについて伺います。
 小中学生の新学習指導要領において、体験活動の重要性がうたわれています。また、昨年は、規範意識や共生感などの資質、能力が体験を通じて得られることが調査によってわかり、不登校やひきこもりなどの原因の一つに直接体験の不足があると指摘されています。
 こうした中で、防災教育においても、ライフラインの断絶状態を想定した防災サバイバルキャンプなど実践型の防災教育を実施することで、生き残るための知恵を身につけ、実際に震災に遭った際、真に対応できる冷静さと柔軟な判断力を身につけることが必要と考えます。
 都内の公立小中高校において、今後さまざまな場面を想定した実践型教育を普及徹底していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、都内小中高校における防災チェック表の実施について伺います。
 震災前のことし一月に実施された岩手県の県民意識調査では、災害の備えについて特に準備していない割合が七二・九%という過去二番目に高い結果でありました。一方、準備している割合が最も高かったのは、平成十五年の三陸南地震発生後であり、このように時間とともに防災意識が低下することに対しては対策が必要であります。
 そこで、児童生徒にチェック表の活用を通じて、現状の家庭において実際に何が対策として整っていて、何が不十分かを家庭とともに明確にしてもらい、日ごろから家庭における防災、備えに向けた行動を促すことが必要と考えています。それにより、児童生徒から保護者に防災の備えに関する情報が伝わることで、家庭全体の防災意識向上につながり、また家庭から地域への波及効果も期待できます。
 以上のことから、家庭での防災に備えるチェック表等を活用し、児童生徒への防災意識や家庭での備えに関する取り組みを学校教育の中で実施すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、都立高校における防災教育の展開について伺います。
 全国で唯一、環境防災科を置いている兵庫県舞子高校では、大学や関係機関等と連携しながら、体験型や課題発見、解決型学習を通じて、自然環境や社会環境とのかかわりを視点に据えた先進的な防災教育に取り組んでいます。
 今後、首都直下地震が予測され、エネルギー問題も重要な課題となっている中、防災について総合的かつ専門的に学べる学科があることで、その学校が中心となって防災の先進的取り組みが行われ、またその情報が都内の各学校に波及することで、都内全体の防災教育強化につながっていくと考えます。
 そこで今後、先進的に防災教育に取り組んでいる都立高校に、防災の専門学科開設を検討することなどを通じて、都立学校における防災教育を充実すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、地域との連携を通じた防災教育について伺います。
 中学生や高校生が地域との連携を通じた防災訓練に参加することを通じて、被災時に彼らが積極的に救助に入り、要援護者の命を守ることが期待されています。
 しかしながら、地域の防災訓練では、災害時要援護者である高齢者を中心に行われており、児童生徒や保護者等の参加はほとんどない状況にあります。地域住民に最も身近な小学校でさえ、地域住民の参加は四割を切る状況にあります。
 中には、目黒区立五本木小学校など、地域行事を学校の教育課程に位置づけ、地域住民と連携した防災教育を実施している学校や、生徒会が防災を考慮したまちづくりに関する提案をして、十分に連携をとっている学校もあります。
 こうした取り組みを普及させることで、災害時に児童生徒が行動し、要援護者が助かる、児童生徒の地域との触れ合いが深まり、脱無縁社会につながる、児童生徒のコミュニケーション力、生きる力の育成にもつながるといった多くの効果が考えられると思います。
 実際にこのたびの震災で、宮城県では学校支援地域本部等を設置していて、日ごろから地域住民と交流している学校では、交流が少ない学校に比べ、避難所開設などが混乱なくスムーズにいったということがアンケート調査で明らかになっています。
 このたび、都教育委員会において、地域連携による防災教育のモデル事業が検討されておりますが、ぜひこのモデル事業を機に、地域と連携した参加型防災教育を普及すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、地域で支え合うシステムの構築について伺います。
 都内でも、東日本大震災の被害を目の当たりにして、たくさんの都民が現地にボランティアに行きたい、物資を送りたい、募金したい、支援イベントをやりたい、避難所支援をしたいといった気持ちを持ち、多くの方が行動に移していらっしゃいました。
 この熱い思いが今後も継続し、被災地への息の長い支援につながるとともに、東京の日ごろからの地域支え合い、ひいては地域防災力の向上につなげていくことが必要であります。
 しかし、サラリーマン化の進んだ東京では、多くの人が長い時間を住所地と離れたまちで過ごしており、住宅地には日中、災害時に要援護者となる方が多く、逆に支援者が少なくなっています。
 こうした中で、防災力向上を進めなければなりませんが、地域でまずぶつかる課題は、要援護者の把握であります。要援護者情報の把握と共有については、区市町村によって取り組みにばらつきがあります。
 例えば、申し出方式で要援護者名簿登録を行い、あわせて災害発生時の支援について説明したり、さらに踏み込んで避難支援を希望しない方についても未登録要援護者台帳を作成し、災害発生時に自主防災組織等の責任者へ情報を提供するなど、地域の実情に応じたさまざまな方法があると思います。
 都としても、都内全区市町村で取り組みが行われるよう、こうした先進的事例を積極的に紹介するとともに、区市町村の取り組みを支援する必要があると考えますが、見解を伺います。
 一方、支援する人の確保については、各種調査結果によると、地域防災活動や災害援助活動への参加意欲が高い一方で、実際にボランティア活動を経験した人は三人に一人です。また、ボランティアは他人から強制されないことが大切と考える人が八二%にも上っており、参加意欲と実際の行動とのギャップを埋めるための新たな方策の必要性がわかります。東日本大震災の街頭募金活動では、若者、子どもたちが積極的に寄附に応じ、まちを歩けばみずから募金活動に立つ中学生、高校生を見かけます。
 また、被災したまちでも、いわゆる今どきの若者たちがともに泥をかき、瓦れきの片づけなどしています。ネガティブな評価をされがちな世代でありますが、テント生活で頑張っていながら、特に力むでもなく、淡々と作業にいそしむ姿に、高い社会貢献意欲があることを改めて認識させられました。
 また、発災当日、いち早く情報を発信したのもインターネットや携帯の情報通信であり、インターネットなどでつながった多くの若者たちが物資を持ち寄って現地に入っていたことは報道されているとおりであります。
 これからの地域活動は、このようにみずから発見し、情報を発信し連携できる、声高には主張しないけれども、人のために積極的に動ける若い世代の価値感、行動様式を取り入れていくことが不可欠であると認識しています。
 こうした私たちの認識からいわせていただくのであれば、石原知事のいういわゆる隣組は、全く的外れに思えてなりません。
 私は、既存の組織、すなわち町会や自治会、あるいは消防団などをもとに、地域活動の若返りを図っていくことの方が重要かつ効果的であると考えます。
 日ごろの地域防災力向上のためにも、既存組織に参加していない若者たちの参加が進むような取り組みを検討していく必要があると考えますが、あえて今、新しい共助の仕組みをつくり出す必要があるのでしょうか。隣組復活の真意を含めた石原知事の見解を伺います。
 地域で支え合うシステムの構築に向けて、私は、商店街の活用を提案したいと思います。
 人気漫画の「サザエさん」では、三河屋さんがそれぞれの家庭をご用聞きして回り、世間話に花を咲かす一方で、それが純然たる商行為として成り立っていました。
 しかし、昨今、ご用聞きを見かけることは少なくなりました。その結果、買い物に出かけることが困難な高齢者や身体の不自由な障害者の方々が日常の買い物に不便を感じるようになりました。これがいわゆる買い物弱者の問題となっているのではないかと考えています。
 そこで私は、昔ながらのご用聞きのような個店単位の取り組みではなく、商店街を単位として買い物弱者への対応を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、医療の震災対策について伺います。
 医療機関については、従来、救命救急センターや二次救急などのごく限られた部分のみ耐震化助成がありましたが、今定例会では補助対象の拡大を図る補正予算が計上されており、一歩前進と評価いたします。
 東日本大震災による拠点的、中核的病院、また地域の診療所建物や医療機能の維持回復等については、いまだその途についたばかりで、被災前から医療過疎の問題と相まって困難が予想されます。
 少なくとも、災害拠点病院や救急病院がその役割を果たし、同時に地域の医師がプライマリーケアを提供し続け、避難所等での保健や予防活動も迅速に行わなければならないことははっきりしています。
 そこで、今回の補正予算における対象拡大による効果と、今後都が目指す災害時の医療提供体制について伺います。
 また、医療機能を維持するためには、もちろんライフラインの確保が必要なことはだれもが認めており、都においても従来から三日分の備蓄を前提とした災害対策が推奨されてきました。
 医療機関には非常用電源も確保されており、いざというときにも当面は大丈夫といわれてきました。
 しかし、ふたをあけてみると、施設、設備の上でやむを得ない制約から、数十分から数時間のバックアップしかできないところも多数あり、長時間、長期にわたる電力供給の途絶に対する発電機の燃料供給、あるいは数時間の計画停電時においても、非常用電源にスムーズに切りかえるには、医療機器への無停電電源装置接続が必要であることなど、さまざまな課題が明らかになりました。
 今回の補正予算において、発電機、非常用電源装置等のハード確保への支援が盛り込まれ、一層の配備が進むことを期待するものですが、実際の医療提供に支障を来さないためには、あらかじめ非常時にも電力を供給継続し続けるべきもの、一たん停止しても構わないもの等を把握するなど、今回計画停電を経験した多摩と二十三区の一部の経験も生かし、夏場の電力不足時も含めた非常時に、各医療機関においていっときも医療が滞ることのないよう、ハードの確保にあわせて細部にわたり総点検していくことも必要と考えますが、都の取り組みを伺います。
 皆様ご承知のとおり、三月十一日、東京では震度三から五強を観測、建物や道路に大きな被害はなかったわけでありますが、公共交通機関や道路網が麻痺しました。直下地震であったなら、当日や翌日の復旧は困難であり、建物や建物内においても被害が発生することが予想されます。
 非常時の参集、連絡方法、また当面の間、各医療機関が機能を維持するための職員や物資をどう確保するのか、通勤圏が広域にまたがる東京の医療機関BCPの策定と実効性を担保するための取り組みが大変大きな課題です。この点についてどのように取り組むのか、見解を伺います。
 次に、東京の産業再生について伺います。
 今回の補正予算では、総額一千三百七十四億円のうち三百九十一億円が東日本大震災により被害を受けた中小企業への金融支援が占めています。その内訳は、融資目標額を過去最高レベルの二兆二千億円にまで引き上げ、最優遇金利の適用や都内すべての事業者に対する信用保証料の二分の一補助を実施すること、また、直接被害を受けた都内中小事業者に対する災害復旧資金融資では、利子の一部を補助することも打ち出しています。
 この間、私たちは、融資目標額の拡大や利子軽減制度の創設などを求めてまいりましたが、今回わずかではあるとはいえ、利子の一部補助に踏み込んだことなどは評価したいと思います。
 また、私たちは、震災発生後の三月十四日に、新たな融資制度の創設を含めた、万全の中小企業対策を講じることなどを求める要望書を石原知事に提出してきたところであり、石原知事も東京都知事選挙における選挙公約において、その第一に安心・安全な制度融資、東京セーフを創設しますと掲げていらっしゃいました。
 そこで、今回の補正予算の内容が石原知事の考えていた東京セーフと考えていいのか、融資目標額の設定なども含め、今回の補正予算による中小企業の金融支援について、石原知事の見解を伺います。
 次に、中小企業に対する自家発電設備などの導入について伺います。
 今回の補正予算で百二億円が計上されている中小企業等向け電力自給型経営促進支援事業は、今後想定される電力不足によって企業活動が停滞することのないよう、都内中小企業が自家発電設備などを導入する際の費用を助成することが主な内容となっています。
 しかし、非常時とはいえ、ディーゼルなどの自家発電設備が都内に次々と導入されることは、環境上好ましいことではなく、また敷地的な制約などから、工場単位では導入が難しい事態も想定されます。
 このようなことから、私はむしろ工業団地に見られるようにまとまったグループや地域などに対して、その導入を優先することで、効率的かつ環境にも配慮した産業力の強化につなげていくべきだと考えるものであります。
 中小企業等向け電力自給型経営促進支援事業における制度創設の基本的な考え方について、東京都の見解を伺います。
 次に、中小企業に対するBCP策定支援事業について伺います。
 BCPとは、地震やパンデミックなど、さまざまなリスクから企業を守るため、企業の事業継続や早期復旧に必要な対応策をあらかじめ定めたもので、ビジネスコミュニティプラン、事業継続計画と訳されています。
 国の中央防災会議が平成十八年に決定した地震防災戦略では、今後十年間でBCPを策定している企業の割合を、中堅企業において過半を目指す旨の目標を掲げています。しかし、平成二十二年三月の内閣府の調査では、BCP策定済みが一三%である一方、策定予定なしが一〇%、BCPを知らないが四五%に及んでいるなど、BCPそのものが認知さえされていない状況にあります。
 今回の震災を受けて、中小企業の団体からは、BCP策定にかかわる費用助成の措置やデータのバックアップ体制構築のための費用助成を含めた支援などの要望が寄せられています。
 また、新聞などによると、今回の震災で被災地で工場が被災したものの、BCPを策定していたおかげで短期間で復旧できたとの事例も報じられています。
 今後、首都直下型地震の危機を考えれば、私はBCPについてはまだまだ施策展開の余地は大きいのではないかと感じています。都は、中小企業のBCP策定に向け、今後より積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、風評被害に苦しむ中小企業への支援について伺います。
 外国における日本製品の風評被害に対応するため、中小企業からの申し出に速やかに応じて、放射能の測定試験や証明書の発行を行うことが望まれています。実際に中小企業団体などからは、民間検査機関の公募や検査費用の助成など、支援対策の強化を求める要望も出ており、東京都としてもこうした要望に積極的にこたえていく必要があります。
 今回の補正予算案では、中小企業団体などがみずから放射線測定器を購入し、自主検査を行う取り組みなどに対して、その費用を助成することや、都立産業技術研究センターが出張試験を実施し、検査証明書を迅速に発行することなどが盛り込まれていますが、さらに都としてしっかりと支援していくべきと考えています。
 風評被害に苦しむ中小企業に対して、東京都としてどのように支援していくのか、見解を伺います。
 次に、行事やイベント活動の促進についてであります。
 大震災の影響による自粛ムードによって、経済活動に対する停滞感はいまだ続いております。このような中、私は東京都が率先して自粛ムードを解消し、復興に向けた機運を高める取り組みを進めていくべきだと考えます。
 例えば、東京都は、ことし九月ごろに、全国都市緑化フェアのプレイベントを開催する予定ですが、被災地支援というテーマを前面に出して、こうしたイベントを大々的かつ積極的に展開すべきです。
 また、花火大会や各種の復興イベントの開催では、警視庁などによる警備体制の確保が欠かせませんが、関係者の協力を強く要望するものであります。
 そして、活力向上に向けたイベントを地域でも開催していくために、私は被災地を支援する商店街でのイベントなどについても積極的に展開していくべきと考えますが、商店街での積極的なイベント開催について見解を伺います。
 次に、小笠原諸島の世界自然遺産登録後の対策について伺います。
 小笠原諸島の世界自然遺産リストへの登録は、世界遺産委員会の諮問機関、IUCNより記載が適当との勧告を受けており、その可能性は非常に高いものとなっています。最終的な決定は、今月十九日から二十九日にかけ、フランスで開催されている第三十五回世界遺産委員会パリ会議で行われますので、この定例会の開会中に朗報を待つことになります。
 今回は、大震災の被災地である岩手県の平泉が文化遺産としての登録の可否が決定されることもあり、両地域が登録されることで、被災地で懸命に復興に取り組んでおられる皆様を初め、日本の多くの方々に明るい話題が提供できるものと期待しているところです。
 さて、IUCNの勧告では、世界遺産としての価値を構成するために必要な要素のすべてが推薦区域内に入っており、それらがなるべく人為的な影響を受けないことを求める完全性に関して、侵略的外来種の影響等が既に諸島の多くに見られることや、新たな外来種の侵入に対して継続的な注意や管理をすることが述べられています。
 また、世界遺産としての価値を長期に維持するための法的な措置や包括的な仕組みを求める保全管理については、外来種対策への努力が要請されています。ほかにも、気候変動の影響の評価と適応のための研究モニタリング計画の策定を促されております。
 世界遺産委員会での正式な決定でも、IUCNの勧告と同様に、外来種対策の努力などは勧告として出される可能性は高いと思います。ついては、登録後の外来種対策など、勧告事項に対し都としてどのような対策を講じていくのか、見解を伺います。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 三月十一日に発生した東日本大震災によって、新市場予定地である豊洲地区でも液状化現象が見られました。そもそも液状化を予想していた地域ですので、起こって当たり前といえば当たり前なのですが、懸念されるのは、既に明らかになっていた汚染が移動したり、拡散したりしたことはないのかということであります。
 石原知事は、私たちの代表質問に対して、日本人が日本の技術を信じないでどうするんだと発言されておりますが、技術に対する過信、盲信こそが今、戒められるべきではないでしょうか。
 また、石原知事は、三月二十二日の自由報道協会での記者会見で、液状化に対する対処法をどうするのかというためにも、オープンな形で調査する旨発言されていますが、現在、東京都が行っているとされる液状化の調査がオープンな形で行われているとは思えません。
 今回の調査はどのような方法で、何を観察するのか、いつからいつまで実施し、いつごろ調査結果を発表するのかさえ、あらかじめオープンとなっておらず、ましてや、技術会議も開かれず、リスクコミュニケーションという観点からも極めて疑問であります。
 私は、液状化の状況について、内部での流動化による汚染拡散の有無なども含めて、詳細かつオープンな形で調査し、その結果を速やかに公表するとともに、第三者も含めて、そのメカニズムや対策などについて検証するといった姿勢こそが必要であると思いますが、見解を伺います。
 平成二十三年度一般会計予算には、築地地区を中心とした将来のまちづくりの検討として三千万円が計上されていました。私たちは、予算特別委員会の締めくくり総括質疑において、地元自治体である中央区の意見をただ単に聞きおくだけでなく、中央区の要望も踏まえ、築地も豊洲も並び立つ、築地の将来像が早期に示されるべきだと述べてきました。
 私たちの質問に対して東京都は、地元中央区など関係者とも協議を行いながら、速やかに検討を進めていくとした上で、検討に当たっては築地の歴史、文化を尊重し、これまで築地市場と場外市場が一体となってはぐくんできた食文化の拠点としての活気とにぎわいをどのように引き継いでいくかという観点からも行っていくと答弁しています。
 そこで、中央区との検討状況はどうなっているのか、見解を伺います。
 最後に、オリンピックについて伺います。
 石原知事は、都議会の所信表明において、日本全体とスクラムを組んで、東京に二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致を考えていただきたいと述べられました。二〇一六年招致は、知事が提案して始まりましたが、他の招致都市との競争で国内の盛り上がりに欠け、四都市で最も低い支持率となり、IOC委員の多くの賛同に結びつかずに、残念な結果に終わりました。
 復興を旗頭に、日本全体での二〇二〇年の招致を考えていくのであれば、前回の失敗を踏まえて、推進するスポーツ界がまず積極的に取り組むとともに、都民や国民の広範な賛同を得られる、当然のことながら復興に取り組む被災地も理解する、国とともに推進する招致としていかなければならないと考えています。
 知事は、日本全体で招致する、東京への再招致とはどうあるべきだと考えているのでしょうか、見解を伺います。
 以上で都議会民主党を代表しての質問を終えます。
 なお、答弁によっては再質問を留保いたします。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 山下太郎議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、被災地支援についてでありますが、震災発生から三カ月たちましたが、依然として被災地には大地震がもたらした惨状が広がっており、被災者の生活再建も遅々として進んでおりません。
 電力、農林水産物等の供給の多くを被災地に依存してきた首都東京が、全国の先頭に立って刻苦する被災地を支援していくことは当然であります。眼前に立ちはだかる瓦れきの撤去や仮設住宅の建設、被災地域の経済再生など、山積する現地の課題を解決へと導くには、日々変化する現地の実情に即した手だてを具体的に、果断に講じることこそが何よりも重要だと思います。
 都は、震災後早期に被災地に現地事務所を開設して、被災地が真に必要とするニーズを的確にとらえ、現場を持つ都の強みを最大限に生かして、必要な物資の搬送や医療、福祉のスタッフの派遣など、機を逸することなく支援をしてまいりました。
 国の対応は、厳しい被災地の現状に対して後手後手に回っておりますが、東京は、今後とも復興に向けみずから踏み出す被災地、被災者を強力に後押ししていきたいと思っております。
 次いで、東京の総合防災力の向上についてでありますが、東日本大震災は、東北地方に甚大な被害をもたらしただけではなく、東京にも帰宅困難者の発生といった直接的な被害を生じさせました。さらには、遠隔地の災害にもかかわらず、計画停電による都民生活の混乱などの連鎖的な被害をもたらしました。
 こうした被害の発生によりまして、交通ネットワーク、電力の供給網など、ふだんは当たり前と思っている都市機能の脆弱性が明らかになったことから、防災対策を抜本的に見直す必要があります。
 地震の専門家によりますと、世界で発生するマグニチュード六以上の地震のうち、約二割はこの日本で発生しております。いずれにしろ、この日本はご承知のように世界最大のファイアリング、火山脈の上に存在する国土でありまして、また、東京では、体に感じないものも含めて、十分に一度は地震が起きているということであります。地震大国日本の中で、高度に集中、集積が進んだ東京において、防災力の向上は待ったなしの課題であります。
 このため、今回の震災以上の被害が懸念される首都直下型地震に備えた防災対策の一層の強化と、東海、東南海、南海連動地震も視野に入れた新たな視点からの対応を加えた、東京都防災対応指針を本年十一月に策定いたします。指針の内容は、地域防災計画の修正に反映させて、東京の防災力向上への道筋を早期に示していきたいと思っております。
 次いで、原子力発電の安全性についてでありますが、今回の福島原発の事故は、ただいまの質問にあった四年前、柏崎原発が被災した際、東京都が国に安全性確保を要求した云々の話とは全く次元の違う問題であります。
 先日、海江田経済産業大臣は、原発の短期的な安全については確認されたと表明しております。みずからの民主党政権が原発を管轄し、検査もしているのですから、安全性については国家に聞いたらいかがですか。
 改めて申し上げることもなく、原子力の利用に当たっても、安全の確保は当然であります。なぜフランスでできている安全管理が日本にできないのか。インシデントすら隠して信頼性を失ってきたこれまでの姿勢を反省し、再考すべきであると思います。
 同時に、エネルギー確保は、国家、社会の存立に直結するがゆえに、エネルギー戦略も速やかに構え直す必要があります。豊富な電力が安定的に供給されるからこそ、我が国を支えるものづくりがここまで発展できたわけでありまして、新しいITの技術が急速に進歩してまいりました。
 かつて、完全な管理技術を前提とすれば、東京湾に立派な原子力発電をつくってもいいと発言したことがございますが、当然のことであります。日本の頭脳、心臓部の将来を、一段の発展を考えたとき、その裏づけとなる電力をほかに依存し続けることは不合理だと考えます。
 ゆえにも、今回の電力不足に当たって、日本のダイナモが麻痺してとまらぬように、東京の電力自給能力を向上させるためにも、原発の事故によって電気料金の高騰が予期もされるわけでありますが、こういう際、あわせてコスト的に見合う天然ガスの発電所の建設に向けて取り組み、節電も徹底するなど、東京発の環境エネルギー戦略を展開していきたいものだと思っております。
 他方で、菅総理は、実現の方策も示せずに、国内での議論もなく、あまつさえ担当大臣も知らないままに、太陽光充電パネルを一千万世帯に普及するなどということをサミットで打ち上げました。
 今後のエネルギーの源として、太陽光も選択肢の一つではありましょうが、原子力発電にかわる膨大な電力を一足飛びに賄うことはとてもできる話ではありません。
 また、菅総理は、再生可能エネルギー法案について、自分の顔を見たくないなら法案を早く通せと発言したように仄聞しておりますが、これまた一体どういう独善でありましょうか。思いつきや保身ではなく、現実的なエネルギーに関する議論をしないと、国を結果として滅ぼすことになります。
 きのう、私が取材を受けましたあるテレビ局の原発に関する質問も、要するに是か非か、黒白という、そういう問い詰め方でありまして、人をばかにした物のいい方をするなと追い返しましたが、いずれにしろ、都議会民主党の諸君は、みずからの代表といただいておる菅総理にまずは諫言をしていただきたいものだと思います。
 環境に配慮した都市づくりについてでありますが、今般の大震災によってもたらされた電力不足により、遠隔地の大規模発電所からの送電に頼ってきた都市の脆弱さが明らかになりました。
 これからの都市づくりは、電力対策緊急プログラムで既に明らかにしたとおり、気候変動対策など環境配慮の視点に加え、自立分散型エネルギー源の確保など、低炭素で高度な防災都市の実現を目指していく必要があります。
 そのための効率的な天然ガス発電は、首都圏の直面する電力不足への対応として最も有力なものの一つであると思います。日本のダイナモであります東京の産業活動が停電によって停滞し、空洞化することのないよう、首都圏の電力自給能力を向上させていきたいものだと思っております。
 次いで、防災隣組についてでありますが、今回の震災で被害者の方々は、大切な家族や生活基盤を失った直後のつらくて困難な状況にもかかわらず、互いに気遣い、支え合って行動するなど、日本人の誇るべき人と人とのきずなのすばらしさを我々に示してくれました。住民の紐帯に根差した助け合いが、発災直後の混乱の中で大きな力を発揮することを改めて認識いたしました。
 しかしながら、東京における人々のきずなは、核家族化や価値観の多様化も相まって、家族の間においてすら希薄となっております。
 昔、こんな句がありましたな。ちょっと詳しく覚えていませんが、秋の気配を感じながら、隣は何をする人ぞという俳句があったのを覚えていますけれども、秋深しですか、隣は何をする──いずれにしろ、私たち東京に住んでいますと、マンションならずとも、一戸住宅の連なっている私の住んでいるまちでも、隣の人が何をしているかさっぱりわからない、こういう状況は震災にとっては非常に脆弱な状況でありまして、それをとにかく超克するためにも、この大震災を機に人間のきずなの価値を再認識し、大都市にふさわしい連携の形をつくり上げていかなきゃならないと思っております。
 このため、区市町村とも連携しまして、防災隣組ともいうべき、せいぜい二、三軒両隣の人たちの、要するに安否を気遣うような、そういう習慣というものを培っていきたいと思っているわけであります。
 災害時に機能する新たな共助の仕組みを構築するというと大げさでありますが、日ごろそういう声をかけ合うことで、いざというときにそのきずなが大きく生きてくるんではないかという気がいたします。いってみますと、向こう三軒両隣が肩を組んで、若者や企業なども巻き込んで、発災時における共助の力を再生していきたいものだと思っております。
 次いで、都内中小企業への金融融資についてでありますが、今回の大震災は、サプライチェーンの寸断や風評被害など、被災地のみならず、都内の中小企業にも広範な影響を及ぼしております。
 私も公約で申し上げましたが、こうした事態に速やかに対応するため、都は新たな制度融資を創設するなど、東京の活力の源泉である中小企業の資金繰りに最大限の手だてを講じてきました。
 こうした取り組みによりまして、直接間接の災害被害を受けた都内中小企業への金融支援に万全を期していきたいと思っております。
 次いで、オリンピック招致についてでありますが、大震災から復興した姿を世界に披瀝するならば、世界じゅうから寄せられた友情や励ましへの何よりの返礼になるんではないかと思います。次代を担う若者に夢と希望を贈るために、招致に再挑戦をすることは大きな意義があると思っております。
 いずれにしても、九年先のことですから、私も生きているかどうかわかりませんし、議会の皆さんも果たして議員でいるかどうかわかりませんが、要するにこの国難を踏まえて、私たちがやっぱり次代に希望という星を光らせるためにも、オリンピックに、九月一日がタイムリミットでありますから、とにかく一度掲げたたいまつの火は消さずに、要するにともし続けていきたいものだと思っております。
 オリンピック招致は、もはや都市同士ではなく、国家間の熾烈な戦いであります。各界が総力を結集し、国としての一体感を持って取り組むことが必要であり、そのためにも都民、国民の支援が不可欠であります。
 国やスポーツ界、経済界が主体的に活動し、幅広く招致機運を醸成し、日本全体が一つになってオリンピック招致に取り組むことを望んでおります。
 この本会議が始まります直前に、実はJOCの会長以下、日本の代表的なアスリート、メダリストたちがたくさんやってきまして、ぜひオリンピックを招致してもらいたいという要望がありました。
 だが、私は、それは約束しましたけれども、逆に彼らに頼んだんです。国民の総意をもって、政党を超えた、要するに、議会でもみんながとにかくオリンピックをやろうという気になるためには、まず君らが次のロンドンで、あるいはその次のリオでたくさんメダルをとってこいと。今のような結果では、国民の気持ちは盛り上がらんぞという注文を出しました。彼も大きくこたえてくれました。まあ結果を見ようじゃありませんか。
 他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 八点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、都立学校施設における今後の省エネ化の取り組みについてでございます。
 改築や大規模改修を行う都立学校については、都の施設を最高水準の省エネ仕様に転換するため策定した省エネ東京仕様二〇〇七を適用し、整備しております。
 具体的には、エネルギー効率の高い照明器具やエアコン、むだな電力使用をなくす人感センサーや照度調整システム、さらに節水効果の高い給水設備などを導入し、省エネ化を図っております。
 また、その他の学校についても、改修や設備更新の機会に、施設の状況に応じて省エネ東京仕様の機器を設置しております。
 今後、省エネ東京仕様での整備のほかに、LEDなど新たな技術による設備機器についてもモデル校に導入してまいります。
 次に、都立学校における節電の取り組みについてでございます。
 今般の大規模な電力供給不足に当たり、都立学校においても、教育活動を維持しつつ、節電に取り組まなければなりません。その際、児童生徒に対し節電の必要性をしっかりと伝え、理解させ、自発的な実践に結びつけることが重要でございます。
 既に、都教育委員会は、CO2削減の取り組みにおいて、児童生徒の地球温暖化防止への意識と環境に配慮した行動を実践する意欲を高めることで、実績を上げてまいりました。この経験を生かしながら、教職員、児童生徒が一丸となった取り組みにより、節電への意識と意欲を高め、具体的な行動につなげて節電目標の達成に努めてまいります。
 また、効果的で創意工夫に満ちた節電の取り組みに対する顕彰を通しまして、児童生徒の意識を高めてまいります。
 次に、都立学校における防災機能強化についてでございます。
 震災時、都立学校は、在籍する児童生徒の安全確保に加えまして、帰宅支援ステーションの役割を担っており、東日本大震災では多くの帰宅困難者が都内で発生し、都立学校全体では五千九百五十三人を受け入れました。
 帰宅支援ステーションの機能は、トイレの提供など短時間の滞在を想定したものでございましたが、実際には、翌日まで学校にとどまらざるを得ない人々が多数生じましたことから、急遽、児童生徒用の飲料水、食料、毛布等を提供いたしましたが、不足が生じた学校もございました。
 このため、今後、各都立学校に、児童生徒用に加えまして帰宅困難者のための備蓄品の拡充を図りますとともに、首都直下型地震などにも対応できるよう、電源確保のための自家用発電機等を設置してまいります。
 次に、帰宅支援ステーションにおける教職員の役割分担についてでございます。
 都教育委員会は、平成十九年に策定いたしました学校危機管理マニュアルの学校危機管理計画の中で、避難所支援班など教職員の帰宅支援ステーションにおける役割分担を定めております。
 今般の東日本大震災における帰宅支援ステーションの経験を踏まえまして、教職員の当日の対応や行動を調査分析する等、都立学校が取り組むべき課題を検証するとともに、運営のあり方について取りまとめ、さらに実効性の高いマニュアルとするため、現在、改定作業を行っております。
 今後、地元自治体等と連携し、都立学校の帰宅支援ステーションとしての役割強化や、教職員の対応など運営体制の整備を図ってまいります。
 次に、実践型防災教育の取り組みについてでございます。
 これまでも各学校では、地震や火災などを想定して、授業時間内における避難訓練を定期的に実施するとともに、小中学校においては保護者への引き渡し訓練等を実施してまいりました。
 しかしながら、東日本大震災当日、校外学習で他県に行っておりまして、その日のうちに帰宅できなかった例や、保護者が帰宅困難となったために児童生徒を保護者に引き渡すことができず、深夜まで学校で保護した例などがございました。
 今後は、こうしたことを踏まえまして、災害時における児童生徒の保護体制を見直し、授業時間はもとより、登下校中や放課後、校外学習中等、さまざまな場面や状況を想定した体験的、実践的な防災訓練を実施するよう、各学校を指導してまいります。
 次に、児童生徒の防災意識に関する取り組みについてでございます。
 児童生徒が家族とともに必要な防災用品を確認するなど、家庭における地震発生時の初期対応や避難する際の注意事項等について、日ごろから把握しておくよう指導することは極めて重要でございます。
 このため、都教育委員会は、副読本「地震と安全」に、避難袋に入れておくべき非常用品のリストや、家具の転倒防止等の対策を含む安全チェック表、地震発生直後の対応や避難時の注意等に関するワークシートなどを掲載いたしまして、これらに児童生徒が実際に記入することで危険を予測し、回避する能力と態度を育成してまいりました。
 今後とも、こうした取り組みを充実し、児童生徒が家族と話し合いながら、家庭における防災意識を高めていく教育を推進してまいります。
 次に、都立高校における防災教育の充実についてでございます。
 すべての都立高校生に災害発生の仕組みや災害への対応策を理解させ、防災意識を醸成することが重要でございます。
 そのため、各教科のうち防災の視点が欠かせない内容、例えば、地球の科学や災害の歴史、建築物の耐震構造などについて、各高校や学科の特色に応じて学習が一層深められるよう、各高校を指導してまいります。
 さらに、現在、一部の都立高校で教科「奉仕」や特別活動の時間などに行っております救命救助体験など、体験的な防災教育を他の高校にも拡大してまいります。
 こうした取り組みにより、生徒一人一人が社会の一員としてのみずからの役割を自覚し、災害時に適切に行動する能力と態度に身につけ、地域社会の安全確保に積極的に貢献できる人間となるよう育成してまいります。
 最後に、地域連携による防災教育についてでございます。
 発災時において、学校が児童生徒の安全を十分確保するためには、地域と連携した防災体制の構築が不可欠でございます。また、特に中高校生については、日ごろから地域の一員としての自覚を高めさせ、地域の防災に貢献できる資質、能力を育てることが重要でございます。
 このため、都教育委員会は、防災教育や救援活動の実績がある専門団体と連携し、発災時の対応等について、児童生徒が地域住民とともに学ぶ参加型防災教育や、救援活動の模擬体験等の実践的な防災教育を推進しますモデル事業を検討しております。本モデル事業の成果を教員研修や教育支援コーディネーターの研修に取り入れまして、地域と連携した防災教育を普及させてまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、木造住宅の耐震化助成についてでございます。
 都は、防災都市づくり推進計画に定める、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象といたしまして、重点的に施策を展開しております。
 このような地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難、応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、区と連携し、耐震診断や改修に対する公的助成を行っております。
 東日本大震災を受け、都民の生命と首都機能を守るためには、木造住宅密集地域を早急かつ確実に整備することがますます重要となっていることから、都としては、引き続き、整備地域に的を絞り重点的に木造住宅の耐震化助成を行うとともに、まちづくり施策やさまざまな支援策を総動員した新たな実効性のある整備促進策を検討してまいります。
 次に、建築物の非構造部材の落下対策についてでございます。
 都はこれまでも、特定行政庁である区市と連携し、外壁や天井などの落下防止対策を講じてまいりました。
 具体的には、建築基準法の定期報告制度に基づき、建築物の所有者に対して、外壁や床面積が五百平方メートル以上の大規模空間の天井などにつきまして、建築士等による調査の報告を求め、必要に応じて是正を指導しております。
 また、年二回の建築物防災週間におきましても、通行者の多い道路沿いの外壁、大規模空間の天井等につきまして、劣化や損傷などの状況を所有者からの報告や現地調査により把握し、落下のおそれのあるものについて改善を求めております。
 しかし、今回の地震では、都内において、五百平方メートルの基準に満たない天井が落下して、死傷者の出る事故が発生しました。このため、建築物の所有者等に対し、ホテルや店舗などの業界団体を通じて、対象規模を広げて天井を点検するよう促すとともに、区市や指定確認検査機関に対しましても、建築確認における指導徹底を要請いたしました。
 国においては、東日本大震災による被害を踏まえて、天井に関する基準のあり方を検討中でございまして、都としては、こうした国の動向を注視しながら、今後とも建築物の安全性の確保に取り組んでまいります。
 最後に、地域冷暖房施設を備えた建築物の容積緩和についてでございます。
 都はこれまでも、建築基準法や都市開発諸制度の適用に当たり、地域冷暖房やコージェネレーション施設などの導入を公共貢献として評価し、整備に必要な床面積を容積率緩和の対象としております。
 今後、こうした施設のさらなる普及拡大を図っていくためには、初期の設備投資に加え、その後の維持管理に要する多大なコストの負担軽減や、関係法令の規制緩和などについて総合的に検討していく必要がございます。
 また、地区や街区単位でエネルギーの有効利用を進めていくためには、行政による支援措置とあわせて、地域の民間事業者相互の協力が不可欠でございます。
 都は、こうした課題を踏まえ、引き続き関係機関と連携しながら、都市開発にかかわる民間事業者の取り組みを促進することなどによりまして、環境負荷の少ない省エネルギー型都市の実現を目指してまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、コミュニティにも配慮した避難者支援でございます。
 いまだ原発事故収束の見通しが不透明であり、避難の長期化等による避難者の孤立も懸念されることから、避難者支援においてコミュニティへの配慮は重要でございます。
 都はこれまで、随時、被災地の行政情報を提供するとともに、同じ県や市町村からの避難者をできるだけ同じ都営住宅などに受け入れ、地元区市や自治会へ紹介するなど、地域とのつながりや避難者間の交流を図ってまいりました。
 今後とも、避難者のニーズを踏まえ、都内避難者に被災地に関する必要な情報を周知できるよう、被災自治体との連携をより一層強化するとともに、避難者の孤立化を防止する事業を実施するなど、関係機関や各種団体とも協力しながら、コミュニティにも配慮した支援を行ってまいります。
 次に、九都県市広域防災プランの見直しについてでございます。
 九都県市では、被害が広範囲に及ぶ大規模地震に備え、自治体間で物資の支援や職員の派遣を行う手順を定めた広域防災プラン震災編を平成十六年に策定し、これまでも必要に応じプランの改定を行ってまいりました。
 本年五月に開催された九都県市首脳会議では、都県境を越えて移動する帰宅困難者対策や、災害時における効果的な情報収集、提供のあり方など、広域的な課題について検討することが合意をされました。
 今後は、首脳会議のもとに設置されている防災・危機管理対策委員会において、今回合意された広域的な課題と具体的な対策について実務レベルで検討を進め、その内容を広域防災プランの改定に反映してまいります。
 次に、震災時の帰宅困難者対策についてでございます。
 今回の震災では、首都圏の鉄道がすべて停止した中、多くの人が一斉に帰宅をしようとしたため、駅前に多くの人が滞留するとともに、道路が大渋滞となるなど、都内は大きく混乱をいたしました。
 首都直下地震発災時には、建物倒壊や火災などにより道路も危険な状態となり、さらなる混乱の発生が想定されるため、安全な帰宅手段が確保されるまでの帰宅の抑制や一時待機施設の確保、都民に対する迅速で正確な情報提供など、対策を強化する必要があります。
 また、道路等の状況が落ちついた段階では、徒歩帰宅に加え、陸上、海上輸送の実施により、帰宅困難者の早期の帰宅に向けて取り組む必要があります。
 これらを踏まえ、都は、国を含めた官民で構成する協議の場を設置し、駅周辺における地域ぐるみの取り組みなどを含め、社会全体で取り組む帰宅困難者対策を策定いたします。
 今後、この協議会での検討を踏まえた帰宅困難者訓練を実施し、その際には、都民やボランティアなど多様な主体に参加を呼びかけてまいります。
 最後に、災害時における燃料の安定供給についてでございます。
 今回の震災では、東日本地域の製油所の稼働停止や物流ネットワークの断絶に伴い、被災地のみならず、都内においても燃料の供給不足による混乱や事業活動の停滞などが発生をいたしました。
 こうした状況を踏まえ、今回以上の燃料不足の発生が懸念される首都直下地震や東海、東南海、南海連動地震に備えて、救命救急など迅速な応急対応の生命線である燃料の安定確保に向けた取り組みを強化する必要がございます。
 このため、発災時における燃料の調達のあり方について、災害拠点病院等の機能維持や物資の緊急輸送の円滑な実施などの観点に立って、国、自治体、事業者の役割分担も含め幅広く検討し、本年十一月に策定する東京都防災対応指針において今後の方向性を示してまいります。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

〇消防総監(新井雄治君) 木造住宅密集地域における出火防止対策についてでありますが、これまで、都民の地震時の行動をまとめた「地震 その時十のポイント」において、避難時には電気、ガスを遮断するなどの出火防止対策について広く普及啓発するとともに、震災時の電力供給に伴う火災の予防を関係業界に指導してまいりました。
 また、防火防災診断などを通じまして、火気器具周辺の整理や家具類の転倒、落下防止措置、住宅用火災警報器の設置促進、感震ブレーカー等の設置を進めますとともに、地震後の出火防止対策として、避難時のブレーカー遮断や電源復旧時における電気器具の安全確認についての周知を図ってまいりました。
 今後は、停電復旧時の出火防止に係る電気保安器具の普及促進の強化を初め、防火水槽や消火栓を防災市民組織等が容易に活用できるようにすることや、消火、生活用水などの確保を可能とする深井戸の整備などにより初期消火体制の充実強化を図るとともに、実践的な防災訓練を行い、東京の減災に向けて総合的に推進してまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 液状化予測図についてでございますが、現在の液状化予測図は、関東大震災規模の地震を想定し、地域ごとの液状化発生の可能性を目安として示したものであります。
 予測に当たっては、地質調査データに基づき、地表から深さ六メートルまでの浅い部分と地表から深さ二十メートルまでの地層全体のそれぞれについて、液状化の可能性について地盤工学的な判定を行い、さらに液状化の履歴や沼地や田んぼなどの土地利用の変遷を加味した上で、液状化が発生しやすい地域、発生が少ない地域、ほとんど発生しない地域の三つに分類したものでございます。
 ご指摘の潮風公園などの地点は、地表から深さ六メートルまでの浅い部分では液状化しやすいが、深さ二十メートルまでの地層全体では液状化しにくいとされている、いわゆる液状化の発生が少ない地域であり、おおむね浅い層で液状化が発生したものと認識しております。
 今回の震災を受け、新たに実施する地質調査などの結果を用い、地盤の専門家などの意見も聞きながら、液状化予測図の見直しを平成二十四年度末を目途に完了させます。
 また、新たな予測図についても、これまでと同様、都のホームページや窓口での閲覧により、広く都民へ情報を提供してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 島しょ地域の災害に強い港の整備についてでありますが、島しょの港湾、漁港は、津波、台風、噴火などの災害の際、避難や復旧、復興のために不可欠な基盤であります。
 このため、都では、漁港漁場整備長期計画等に基づき、噴火時の島民の速やかな避難を可能にする避難岸壁の整備や、台風時における漁船の安全性を向上させた漁港の整備、さらには、津波に対しても港の機能を維持し復旧、復興に役立てるための施設改良など、災害に強い港の整備を着実に進めてまいりました。
 今後は、今回の震災後、局内に設置した地震・津波対策会議においてこれらの取り組みを検証していくとともに、国の中央防災会議での検討結果等を踏まえ、必要な見直しを行いながら、災害時に重要な役割を果たす島しょの港の整備に努めてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 四点のご質問でございます。
 まず、中小規模事業所に対する一層の省エネ促進についてでございますが、都は、昨年度から地球温暖化対策報告書制度を導入し、三万を超える中小規模事業所からCO2排出量や省エネ対策の実施状況に関する報告書を提出いただいております。
 ことしの夏の節電対策では、本制度を活用しまして、昨年比一五%の電力の削減に向け、数値目標や具体的な取り組みについての計画づくりと公表を既に求めております。加えて、地球温暖化対策セミナーや業種別研修会等を開催し、先進事例の紹介を行うなど、中小規模事業所の省エネ対策の促進を図っております。
 次に、中小規模事業所に対する情報提供等についてでございますが、省エネ設備の導入を促進するさまざまな支援制度の情報提供に関しましては、利用者の利便性に配慮する必要があると考えております。
 このため、東京都地球温暖化防止活動推進センターでは、環境局の所管する助成制度のみならず、産業労働局や主税局が所管する制度等も含めた説明資料やパンフレットを作成し、このセンターにおいて、都の支援策について全体的に情報提供ができるよう努めております。
 今後とも、各局と連携いたしまして、東京都地球温暖化防止活動推進センターを都の地球温暖化対策の拠点として、さまざまな支援策を実施してまいります。
 次に、今後の再生可能エネルギーの導入促進についてでございますが、今回の震災に伴う電力危機を受けまして、高効率な天然ガス発電による電力供給の拡大や、住宅用太陽光発電を初めとした再生可能エネルギーの導入促進など、首都圏の電力自給能力を向上するための多様な電源確保の重要性がこれまで以上に高まっております。
 今後、再生可能エネルギーの飛躍的な導入拡大を実現するには、何よりもまず国の全量買い取り制度が速やかに開始されるとともに、その買い取り価格や期間について採算がとれる水準を担保する必要がございます。先月の九都県市首脳会議でもこの認識で合意いたしまして、国に対し要請を実施いたしました。
 都は、今後とも、国に強く働きかけながら、さらなる再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取り組みを進めてまいります。
 最後に、小笠原諸島の世界遺産登録後の保全への取り組みに関してでございますが、諮問機関の勧告は、世界遺産の価値を守る上で、固有の動植物に影響を及ぼす侵略的外来種の排除が最も重要であるとしております。
 都はこれまで、固有の植物に影響を与えるノヤギの排除を進め、多くの島で根絶してまいりました。また、小笠原固有のカタツムリであるカタマイマイなどを食べるプラナリアの侵入防止策や、旺盛な成長力で固有植物の生育を阻害するギンネムの伐採などを進めております。
 世界遺産登録実現後も引き続きこうした外来種対策を進めるとともに、国や村と連携し、勧告を踏まえた総合的な保全策を実施してまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 当面改修予定のない都有施設の省エネ化についてでございますが、都有施設への省エネ設備の導入につきましては、施設の新築や改築、改修等の機会をとらえて行うことを基本としておりまして、平成二十一年に策定いたしました都有施設省エネ・再エネ等導入指針に基づき積極的に推進をしております。
 また、この指針では、空調や照明設備等について、運転方法の改善などの運用対策も定めておりまして、当面改修予定のない施設におきましても、その対策の徹底を図ることとし、都有施設の省エネ化に取り組んでおります。
 さらに、今般の電力危機に対して、東京都電力対策緊急プログラムに基づき、今年度、三百施設に需要電力監視装置を設置するなど、省エネ機器の導入のほか、技術革新の動向等を考慮した照明のLED化の推進を行うことといたしました。
 今後とも、関係各局と連携し、必要な技術的支援を行うなど、都有施設の省エネ化を円滑かつ効果的に進めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、節電対策に伴う企業の職場環境の整備についてでありますが、夏季の電力需要のピークを抑制し、事業を継続するため、企業において勤務時間の早朝、夜間への変更や休日、休暇の見直しが進められております。
 こうした取り組みは、労働関係法令に基づき、就業規則の変更などの必要な手続を経て行われるものと認識しておりますが、労働者にとりましては生活時間帯の変更など大きな影響が生じることから、労使で十分に話し合いながら取り組むことが重要であります。
 このため、都は、節電対策に伴う勤務条件の変更等に必要な法律上の手続や知識等の普及啓発を図るため、労働相談情報センターにおいて、震災対応の雇用管理や家族的責任を有する従業員への配慮の必要性などに関するセミナーを実施いたします。
 また、震災関連特別労働相談窓口の開設期間を九月末まで延長し、節電による労働条件の見直しに関する相談や指導にも対応しております。
 こうした施策を通じて、企業の節電対策が労使の協力により円滑に実施されるよう引き続き支援してまいります。
 次に、商店街を単位としたいわゆる買い物弱者への対応についてでありますが、買い物弱者の問題につきましては、地域の実情に応じた区市町村の取り組みが基本であると考えております。
 ご用聞きのお話がございましたが、都はこれまでも、新・元気を出せ商店街事業において、商店街が実施いたします宅配サービスなどの事業に対して支援を行ってまいりました。
 今後とも、同事業を活用して、商店街の振興と買い物客の利便性の向上を的確に実現してまいります。
 次に、中小企業への自家発電設備の導入についてであります。
 震災により電力不足が懸念される中、都内中小企業の事業活動の継続に向けた都の支援が必要となっております。そこで、都は、まず節電セミナーや専門家の派遣を通じて、電力需要の抑制に取り組む中小企業を支援してまいります。
 しかしながら、生産活動に多くの電力を必要とし、節電の努力に限界がある中小企業では自家発電設備が必要となりますため、設備に関する法令等のアドバイスを行った上で、導入経費の一定割合を助成することといたしました。また、企業がグループを組み共同で自家発電設備を導入する場合には、単独で設置するよりも効果的であるため、助成割合を高めることとしております。こうした取り組みを通じて都内中小企業の事業継続を支援してまいります。
 次に、中小企業のBCP策定への支援についてであります。
 中小企業が震災などの緊急事態の際に事業の継続と早期の復旧を図るために、あらかじめ計画を策定しておくことは重要であります。このため、都は、昨年度から都内の中小企業のBCPの策定を三十五社を対象に支援しております。
 また、今回の震災を踏まえ、首都直下型地震への備えとして、BCP策定の一層の推進が必要であることから、今年度は支援の対象を七十社にふやすとともに、普及啓発を図るセミナーも実施してまいります。
 これらの取り組みにより、中小企業の事業継続力を強化し、災害からの速やかな経済復興を図ってまいります。
 次に、放射能の風評被害に苦しむ中小企業への支援についてでありますが、日本の工業製品に対する海外での風評被害に対応するため、公的機関が製品の安全性について正確な検査や証明を行うことが重要であります。
 このため、都立産業技術研究センターでは、都内中小企業の製品を対象に、放射線量の測定と証明書の発行を無料で既に行っております。今後、同センターでは、都からの支援のもとで、港湾等への出張試験を行うとともに、検査機器をふやすなど測定体制の拡充を図ることを予定しております。
 こうした取り組みにより、工業製品の風評被害を抑え、中小企業の経営環境を向上させてまいります。
 最後に、被災地支援に向けた商店街でのイベント開催についてでありますが、商店街のイベントの中で、被災地を支援する取り組みを行うことは震災からの復興に役立つものと考えております。
 既に商店街の中には、被災地の支援に向けたイベントを独自で実施したり、地元自治体と協力して開催する動きも始まっております。
 都は、商店街の創意工夫により被災地を応援しようとするイベントにつきまして、新・元気を出せ商店街事業を通じて支援してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、災害時要援護者に関する区市町村の取り組みへの支援についてでございます。
 都はこれまで、要援護者の情報の把握や支援体制づくりなどの手法を示した指針を策定いたしますとともに、要援護者名簿の整備や避難支援プランの作成など、区市町村における災害時要援護者の安全対策への支援に取り組んでまいりました。
 また、区市町村の防災担当者や福祉担当者向けの研修会におきまして、先駆的な取り組みを行っている自治体の事例を紹介いたしますほか、個人情報保護法に関する専門家を招き、情報の共有化について講演を行っております。
 今後とも、災害時要援護者対策の促進を区市町村に働きかけてまいります。
 次に、災害時の医療提供体制についてでございますが、都内で震災など大規模災害が発生した場合、区市町村が設置した医療救護所で応急処置やトリアージを行うとともに、被災を免れた病院が後方医療施設として重症者等の治療を行うことといたしております。
 そのため、都は、これまで災害時医療の中核となります災害拠点病院の耐震化を進めるとともに、施設整備や医療資器材の整備など機能の充実に努めてまいりました。
 さらに、今回の補正予算では、災害時に診療機能を継続できる後方医療施設をできるだけ多く確保できるよう、耐震化の補助対象をすべての病院に拡大いたします。
 今後、災害拠点病院と地域の病院の連携を一層強化し、災害時に都民に迅速かつ的確に医療を提供できる体制を整備してまいります。
 次に、医療機関における電力確保についてでございますが、都は、今回の大震災に伴います計画停電に先立ち、すべての病院を対象に、自家発電設備の有無と、その稼働時間について緊急調査を実施いたしました。調査結果では、自家発電設備を整備している病院は約八割であり、また、稼働時間は電力供給範囲や燃料備蓄の状況などによりさまざまでございました。
 こうしたことから、都では、今回の補正予算におきまして、病院の自家発電設備の新規整備や増設について緊急に支援することとしております。
 あわせて、全病院を対象といたしました説明会などの場を活用いたしまして、非常時におきましても継続的な医療提供が行えますよう、電力供給範囲や発電容量などについて再点検するよう働きかけてまいります。
 最後に、医療機関におけるBCPについてでございますが、大規模災害発生時において、医療機関が診療機能を維持し、傷病者の治療を継続するためには、各医療機関がそれぞれの機能や特性を踏まえ、BCPの策定など準備を進めておくことが重要でございます。
 昨年十月に都が実施をした調査では、検討中を含め、災害拠点病院の約七割がBCPの策定に取り組んでおります。
 今後、都では、災害拠点病院に対して具体的事例を紹介するなど、災害時に実効性のあるBCPを早期に策定するよう強く働きかけてまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

〇中央卸売市場長(岡田至君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、豊洲新市場予定地における噴砂の状況についてです。
 都は、技術会議の専門家から噴砂に関しての調査方法などの助言を受け、新市場予定地全体を対象に噴砂の位置や発生状況など詳細な調査を進めるとともに、風や雨による飛散防止のため、応急措置を講じました。
 今回の噴砂に関しては、専門家に現地踏査をしていただき、噴砂が予定地の一部のみに発生していること、規模が極めて小さいことなど、状況の確認とあわせて、五、六街区は地表から浅い位置に地下水があること、噴砂が見られない七街区は地下水位が深いこと、噴砂は上部と下部との圧力差によって垂直方向に生じ、水平方向への水や土壌等の移動は通常考えにくいこと、砕けた貝殻が多数混入しており、基本的にしゅんせつ埋め土層から垂直方向への砂の動きであることなどの見解をいただいており、既に市場のホームページ等で公表してございます。
 噴砂への対応につきましては、現在手続中の環境影響評価審議会からの答申や、引き続きこうした技術会議の専門家の意見を聞きながら取りまとめ、それに従って土壌汚染対策工事の中で確実に実施してまいります。
 なお、この間、噴砂の状況等につきましては、所管である農林水産省に説明するとともに、都議会の皆様を初め、業界団体や市場めぐりバスツアーに参加した都民の方々、さらに、テレビや新聞などメディアの取材につきましても、現地の状況を見ていただき、都が技術会議の提言に基づき液状化対策を確実に行い、市場用地の安全性を確保することなどを丁寧に説明してきております。
 次に、築地のまちづくりに関する検討に当たっての中央区との協議についてでございます。
 築地というまちは、都心や銀座に隣接し、都市機能が集積しているなど、極めて高いポテンシャルを有してございます。また、このまちは、築地市場を中心として、場外市場など周辺とのかかわりの中でにぎわいを生み出し、独特の伝統文化を継承してきたという特質を持っております。
 こうしたまちの特質などを十分に考慮しながら、豊洲に市場を移転した後の築地地区のまちづくりを検討していくことが極めて重要であると考えてございます。
 現在、このような観点から、築地のまちづくりに当たっての課題を整理するなど、中央区と実務的な話し合いを進めてございます。

〇議長(和田宗春君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時四十七分休憩

   午後三時五分開議

〇副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 九十番村上英子さん。
   〔九十番村上英子君登壇〕

〇九十番(村上英子君) 平成二十三年第二回東京都議会定例会に当たり、都議会自由民主党を代表して質問をさせていただきます。
初めに、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げ、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
 改めて申し上げるまでもなく、政治の役割は、国民の生命、財産を守り、その生涯を安全に安心して暮らせるようにすることです。未曾有の大震災にあって、我が都議会自由民主党は、一日も早い復旧、復興に全力を尽くしてまいります。
 今回の大震災は、東北地方だけではなく、東日本全体に甚大な被害をもたらしました。
 こうした事態にあって、菅政権の対応は、誤った政治主導により後手後手に回っており、極めて遺憾としかいいようがありません。
 瓦れき撤去がおくれ、義援金も行き渡らない国とは対照的に、東京は、まさに獅子奮迅の働きをしています。ハイパーレスキュー隊の活躍で、日本は救われました。警察官が大切なご遺体を遺族にお返しするために、捜索活動を今なお続けていることに深く敬意をあらわします。都民から多大な義援物資、義援金も集まり、多くのボランティアが活躍しています。避難を余儀なくされた被災者の方々を受け入れ、地域ぐるみで応援しています。まさに国家にも匹敵する物的、人的な支援であり、これぞ首都であると思います。
 知事に、国難のもとにおける東京の役割について、所見をお伺いいたします。
 我々は、科学技術によって自然を従え、暑さ寒さをしのぎ、便利で快適な生活を当然と思ってきました。しかし、電気がとまればすべてがとまって身動きができなくなった今回の事態に、かの物理学者、寺田寅彦が書いた「天災と国防」という論文の一節、文明が進めば進むほど、天然の暴威による災害が激烈の度を増すという一文が思い出されます。大都市ほど、災害対策を、あらゆる角度から徹底してやらなければならないというのが、大きな教訓であると思います。
 東京の弱点を徹底補強しなければ、首都として日本を牽引し続けることはできません。
 先般、公表された都政運営の新たな戦略では、中長期的な都政運営の道筋を明らかにするため、「十年後の東京」計画を改定することが示されました。どのような視点を持って改定に当たるのかお伺いいたします。
 次に、財政運営について伺います。
 今般の大震災は、都政を取り巻く環境に根本的な変化をもたらしました。このような中、今回、都は速やかに緊急対策を取りまとめ、震災からの本格的な復興に向けた一歩を歩み出しました。財源探しに終始し、なかなか本格的な復興に向けた道筋を示すことができない国とは極めて対照的です。
 しかしながら、首都東京を高度の防災機能を備えた都市としていくためには、中長期にわたる継続的な取り組みが必要であり、今後、これらの事業が本格化すれば、相当規模の財政支出が見込まれると考えます。
 一方で、今回の震災による経済活動への影響が、歳入の根幹である都税収入の動向に今後どのように及ぶのか、注視していく必要があります。また、昨今の国における税制の抜本改革の検討の中では、都がこれまで繰り返し主張してきた法人事業税の暫定措置撤廃については、議論すらなされておらず、これに対しても都は強く主張していく必要があります。
 このように、都財政を取り巻く環境が大きく変化する中にあっても、今般取りまとめた緊急対策を着実に実行するとともに、今後も引き続き、都民に対する責任を果たし得る財政運営を図っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、被災地の復興支援と首都東京の防災対策について伺います。
 被災地の一刻も早い復旧、復興は、まさに国を挙げて取り組むべき課題であり、首都である東京は、全国からの支援の先頭に立ってさまざまな取り組みを行うことが求められています。
 一方、都内でも、帰宅困難者の発生といった直接的な被害に加え、計画停電による生産活動の制約、雇用や景気の悪化など連鎖的な被害も生じています。
 一千三百万都民の安全・安心の確保はもとより、日本全体への影響の大きさを考えると、東京の防災力向上は待ったなしです。
 そこで、今回の大震災が突きつけた被災地の復興支援と首都東京の防災力向上という二つの課題に、今後どのように取り組むのか、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、被災地支援の取り組みと今後について伺います。
 都が進めてきた被災地への渾身の支援は、首都で災害が発生したときの応援につながる、都と被災地の貴重なきずなになると確信しております。
 我が党は、東日本大震災復旧・復興対策推進本部を立ち上げ、被災地への応急支援、被害状況の実態調査、都民や各種団体からの要望聴取などを行い、被災地や被災者への支援に党を挙げて取り組んでおります。
 被災地の本格的な復興は長期的な取り組みを要することとなりますが、引き続き東京での人員を確保した上での都職員の効果的な派遣体制を確保するとともに、民間事業者等と連携した総合的な支援がぜひとも必要です。
 そこで、これまでの都の被災地支援の具体的な取り組みを踏まえ、今後の支援のあり方について見解を伺います。
 次に、被災者の受け入れについて伺います。
 都は、我が党の主張も踏まえ、発災後すぐに一万人規模の受け入れ体制を整備するとともに、避難者の精神的、肉体的負担を軽減させるため、都営住宅等で積極的に受け入れを行いました。
 我が党では、本年四月、都の避難者対策の一つとして、都内のホテル、旅館を活用すること、そして、その際には、都内の物価水準を踏まえるべきことを緊急に要望し、都は、都内の旅館等での避難者の受け入れに着手いたしました。今回、六月末に閉鎖される旧グランドプリンスホテル赤坂を退去される方につきましても、積極的にホテル、旅館を避難場所として活用すべきと考えます。
 そこで、避難者の受け入れについて、今後の取り組みを伺います。
 また、避難も長期化していることから、都営住宅等の提供に加え、個別の事情に対応しやすい民間賃貸住宅の活用により、自立した避難生活と、その前提となる就職の支援に一層取り組むことを強く要望いたします。
 なお、旧グランドプリンスホテル赤坂では、現在、被災地の就職活動の会場として、福島県の工業高校に提供されており、我が党としても、こうした取り組みを応援しております。
 さらに、専門学校生等の授業料等減免措置について伺います。
 都内に避難した被災者の中には、幼稚園児や小中高生も含まれており、公立や私立の幼稚園、学校に通っています。
 都は、被災児童生徒等を受け入れた私立の幼稚園や中学校、高等学校が授業料等を減免した場合に補助することとし、今回の補正予算に盛り込んでおります。
 一方、東京には、専門学校等に通学する生徒が多数おり、その中には、東北地方にある実家が東日本大震災で被災し、経済的に困難な状況に陥った生徒も多数いると伺っております。
 都は、幼稚園や中学校、高等学校と同様に──まず、現地における産業の再建が欠かせません。岩手、宮城、福島の三県で、震災後に職を失い、失業手当の受給手続を行った方は十万人を超えるとのことであり、現地における雇用の確保が急務となっています。
 これらの地域では、地震や津波で直接被害を受けた事業所が数多くあります。
 また、これまでの取引先が失われて初めて、改めて販路の開拓をやり直さなければならない事業者もおり、それぞれの状況に応じた支援が必要です。
 都として、被災地の企業が当面の機能を回復するための場や販路の開拓に向けた機会を確保できるような支援を行うべきと考えますが所見を伺います。
 また、ものづくりの担い手である製造業の再建に力を入れていくことがとりわけ重要であります。
 製造業を再開するには、多くの手間と時間がかかります。仕事を海外メーカーに奪われてはならないと、工場再建を急ぐ中小企業の様子がテレビでたびたび放映されます。ものづくり企業の再建は、日本の国際競争力を維持し発展させる上で不可欠なテーマです。
 このため、我が党も、被災地の工場等の復旧に取り組む都内中小企業の支援を強く要望したところであり、補正予算にも盛り込まれました。東北で被災した工場の復興に取り組もうとする東京の中小企業に対して、都としてどのような考えで助成の仕組みをつくり支援を行うのか、所見を伺います。
 次に、被災産地の支援について伺います。
 このたびの大震災は、三陸沿岸を中心に壊滅的な打撃を与え、太平洋に面した地域では、津波により広大な農耕地に甚大な被害を受けました。
 一方、福島第一原発周辺地域では耕作自体が困難になっており、加えて暫定規制値を超える放射能が検出されたとのことで、多くの農産物や水産物が出荷規制を受けています。さらに出荷した安全な農作物等についても売れないという風評被害に見舞われました。
 これまで都民は、これらの地域から生鮮食料品のみならず大量の電力の供給を受けるなど、生活の多くを被災地に依存してきており、復興がおくれれば、被災者だけではなく、都民生活にも重大な影響が出てまいります。
 そこで、都は、都民生活の安定のためにも被災地を支援し、その復興に全力で取り組む必要があります。とりわけ被災産地から多くの生鮮食料品を集荷してきた中央卸売市場の役割が重要であると考えますが、その支援の考え方と取り組みについてお伺いいたします。
 あわせて、消費者に身近な商店街などに協力を求め、被災産地の農作物等の販売を促進していくことも、被災地の復興につながっていくものと考えますが、ご見解を伺います。
 次に、今夏の電力危機への対応について伺います。
 大震災に伴う電力危機を受け、三月に強行された計画停電は、医療機関などのライフライン機能の維持に支障を来し、経済活動にも重大な影響を与えました。
 国は、今夏に向け大口需要家には一五%の削減義務を、小口需要家や家庭には一五%の削減目標を示しましたが、いずれも数値目標を提示し取り組みを促すだけで、対策には何ら具体性がないといわざるを得ません。
 また、一部に節電のための基本理念を示すだけの条例を定めようという動きがありますが、抽象的な行為規範をつくったとしても、全く実効性が上がらないことは明白です。
 我が党が五月二十五日に提出した緊急要望でも示したとおり、都民や事業者による自発的、具体的な行動を促し、実際に節電行動につながる地に足のついた政策をつくり、確実に実行することが重要でございます。
 都はこのたび、電力対策緊急プログラムを策定しましたが、東京の電力不足状況に対し、発電所建設等も含めどのような考え方を持って対応するつもりなのか、まず、知事の基本認識をお伺いいたします。
 この夏は、広く都民、企業が一丸となって節電に取り組んでいく必要がありますが、ここで忘れていけないのは、経済活動を縮小させてはならないということです。節電は確かに大切ですが、電力不足を契機とし、省エネ投資の促進と、日本が誇る技術の活用を積極的に進め、同時に経済の活性化をも図ることが都の役割であると考えます。
 今回の電力対策緊急プログラムでは、どのような実践的な取り組みによって省エネ、節電と経済の活性化の両立を図っていくつもりなのか、お伺いいたします。
 また、都市としての防災、危機管理機能、エネルギーの安定的確保等の視点も加え、東京におけるエネルギー確保、利用の最適化を本格的に考えることも必要です。こうした視点を踏まえてこそ、地球温暖化対策の次なる展開を検討する上での強固な基盤づくりにもつながると考えています。
 首都東京におけるエネルギー施策を本格的に検討する専管組織を設置し、全庁を挙げて都みずからが取り組んでいくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 震災後に計画停電が強行され、都内でも数多くの中小製造業が操業を停止する事態に追い込まれました。電力の供給が一日のうち数時間でも滞ることで、これまでにない規模の混乱が広がることを我々は身をもって体験いたしました。
 知事は、去る四月七日、計画停電が行われた足立区のメッキ工場を訪れ、中小企業の窮状を理解されたものと考えています。まずは節電に取り組むことが不可欠ですが、多くの中小企業にとっては、電力需要の抑制には限界があるため、事業継続に必要な電力の確保に向けた自家発電設備の導入などの対応も、より重要になると考えます。
 こうした中、節電の推進に合わせて、中小企業の発電用設備の導入が円滑に進むような支援策を打ち出していくべきと考えます。特に、設備の早期導入に向けて思い切った措置を講ずるべきと考えますが、所見を伺います。
 また、今回の計画停電では、都内の医療機関も診療機能に大きな制約を受けました。この夏の電力使用制限については、救急病院などの医療施設は適用除外や制限緩和となりましたが、電力不足の長期化や大規模災害発生時に備えた体制整備が引き続き必要です。
 都は我が党の要望を受け、病院の電力確保による支援制度を創設するとしていますが、具体的な内容についてお伺いいたします。
 さらに、在宅で人工呼吸器を使用している患者にとって、停電は生命の維持を脅かすものであり、多くの患者を不安に陥れました。今夏に備え、在宅で療養している患者家族の不安を解消するため、都として電力確保の支援を行うことは、重要かつ緊急の課題であると考えますが、所見を伺います。
 次に、高齢者の熱中症対策について伺います。
 昨年の夏は記録的な猛暑となり、都内で四千人を超える方が熱中症により緊急搬送されましたが、そのうち約半数が六十五歳以上の高齢者の方々でした。一人一人が体調管理に気をつけることが基本ではありますが、都としても、在宅の高齢者の熱中症対策に取り組む必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、地震に強い東京の都市づくりについて伺います。
 必ず来る首都直下型地震などから都民の生命と財産を守るため、首都東京を一日も早く、燃えないまち、壊れないまちとしていくことは喫緊の課題です。さきの第一回定例会においては、東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例を制定いたしました。
 予算特別委員会において、知事は、私の質問に対し、この条例を推進するためには、耐震性を示すマークなどにより、人々の意識を変えていく取り組みもあわせて行わなければならないと答弁されました。国に先んじて一歩踏み出したこの条例と耐震化を徹底して進めるという知事の意気込みを高く評価いたします。
 しかしながら、都内には木造住宅密集地域や耐震上課題のある建物がいまだ多く存在しているなど、解決すべき課題が山積しております。今回の震災を踏まえ、地震に強い首都東京の都市づくりを今後どのように進めていくのか、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化について伺います。
 条例では、特に重要で、早急に沿道建築物の耐震化を図るべき特定緊急輸送道路をまず指定することになっています。これにより、耐震診断が義務づけられる対象建物が明確になることから、都民も大きな関心を寄せています。特定緊急輸送道路は今月末に指定されることになっていますが、どのような考え方で指定するのか、見解を伺います。
 特定緊急輸送道路が指定されると、建物所有者は、耐震診断などの実施に向けた具体的な取り組みを開始できるようになります。建物所有者にとっては、建築士との契約や助成の申し込みなど、経験したことのない手続も多く、円滑に進めるためには丁寧な対応が不可欠です。区市町村や関係団体とも連携して耐震化を進めることが重要と考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、病院の震災対策について伺います。
 都は「十年後の東京」への実行プログラムに基づいて、救急医療機関の耐震化を促進しておりますが、今回の大震災から得た教訓を踏まえ、都として病院の耐震化を一層促進するべきと考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、東日本大震災を踏まえ、水道施設のあり方について伺います。
 我が党はこれまで、八ッ場ダム等の建設による渇水への対応や、施設の耐震化推進など、水道施設整備の重要性を繰り返し主張してまいりました。これを受けて水道局では、水道施設の再構築を考える会を設置し、水道全体の安全度を向上させるための検討を開始いたしました。こうした中、今回の震災が発生し、放射性物質の飛散に伴う水道水への影響や、電力供給不足が発生するなど、東京でも想定し得なかった二次災害に見舞われました。
 都民の生命や生活の源である水道を守っていくため、このような自然の脅威などに備え、多面的な検討を行い、さらに高い安全度を確保するべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、私立学校における防災対策について伺います。
 都内の私立学校に通う多くの子どもたちを震災から守るには、校舎などの耐震化が極めて重要です。我が党は、保護者からの切実な要望を受けて都に強く働きかけてまいりました。都は、耐震化補助率の引き上げや補助対象の拡大など取り組みを進めてまいりました。
 しかし、耐震化の進捗状況は、公立に比べまだ低いのが実態です。当然のことながら、公立学校であれ、私立学校であれ、日本の将来を担う大切な子どもたちの命に公私の格差があってはなりません。
 都は、私立学校の耐震化促進に向けて、これまでの取り組みに加え、よりきめの細かい支援を着実に行うべきと考えますが、所見を伺います。
 また、今回の震災では、適切な避難の仕方や、帰宅困難となった児童生徒への対応など、さまざまな課題が明らかになりました。こうした教訓を今後に生かすため、初期対応を初めとするソフト面での対策も見直していくべきと考えます。
 都は、私立学校における災害発生時の対応力の強化に向けてどのような支援を行っていくのか、所見を伺います。
 次に、都営地下鉄の耐震化対策について伺います。
 都営地下鉄では被害がなかったと聞いておりますが、直下型の地震が起きた際には、本当に大丈夫なのか不安もあります。その点についてお伺いさせていただきます。
 次に、まちづくりについて伺います。
 東京の都心部には、震災復興や戦災復興事業によって整備された街区がそのまま残っている地域があります。こうした市街地は区画街路が狭く、街区も小規模であることから、今日的なニーズに合わせた土地の有効利用ができず、また、建物の更新も進まず一斉に老朽化するなど、防災上も大きな課題を抱えています。
 そこで、これらの地区において、街区を集約して大街区化し、都心にふさわしい都市利用を図るとともに、災害時の一時避難場所など、防災機能を備えたまちづくりを推進することが国際都市東京にとって必要と考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、地震、津波に伴う水害対策についてお伺いいたします。
 このたびの大震災により被災地では、大きな揺れや津波などにより、港湾施設や河川の堤防、水門を初め、下水処理場などのインフラ施設が広範囲において壊滅的な被害を受けました。
 都がこれまでスーパー堤防事業など、耐震性にすぐれた対策を進めていることは高く評価できますが、東京の沿岸部には、ゼロメートル地帯を中心とする低地帯が広がり、満潮面以下の地域に約百五十万人もの人々が生活しています。津波による被害現場を目の当たりにし、より一層対策を行っていく必要性を痛感いたしました。都は万全の備えを早急に講ずるべきであります。水害対策のハード面の取り組みについてお伺いいたします。
 特に、臨海部に都市機能が高度に集積している状況などを踏まえると、東京港における防災機能の点検、見直しが重要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、万一まちに海水などが浸入して下水道が機能しなくなると、その水を排除できないだけではなく、汚水がまちにあふれることになりかねません。
 そこで、いかなるときにおいても下水道施設の機能を確保することが重要であると考えますが、取り組みについてお伺いいたします。
 次に、建築物における液状化対策について伺います。
 このたびの大震災では、首都圏において、埋立地を中心に地盤の液状化が発生し、都内では江東区での道路の陥没や、足立区や江戸川区での木造住宅の傾斜などの被害が生じました。こうした被害を目の当たりにすると、高度防災都市の実現のためには、住宅市街地などの道路や敷地、建物に対する対策を総合的に進めていく必要があります。
 とりわけ、日々の営みの基盤となる住宅の被害は、都民生活に大きな影響を及ぼすことから、木造住宅などの建築物における液状化対策を的確に講じていくことが重要であると考えます。
 そこで、都は、建築物における液状化対策についてどのように取り組むのか、見解をお伺いいたします。
 また、今回の大震災による都内の被害は、被災者生活再建支援法が適用されず、支援金が支給されません。都内の被災世帯を支援するため、国に要件の見直しを要求するとともに、見直しまでの間、地元自治体と連携した支援の手だてを検討するべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、下水道施設の液状化対策について伺います。
 都内においては、千葉県浦安市のように、トイレの使用制限までは至らなかったものの、江東区や江戸川区などで、下水道管やマンホールの液状化による被害が見られました。下水道は都市の活動を地下から支える重要なインフラであります。
 そこで、今回の震災を踏まえ、下水道施設の液状化対策を一層進めていくべきと考えますが、その取り組みについてお伺いいたします。
 次に、中小河川における今後の整備についてお伺いいたします。
 近年、気候変動の影響ともいわれる時間一〇〇ミリを超える局地的な集中豪雨により、水害や土砂災害が発生しています。人口や高度な都市機能が密集している首都東京においては、水害に対する安全性を高めることが極めて重要です。
 我が党はこれまでも、時間五〇ミリの降雨に対応する施設整備の完了を待つことなく、より高い整備水準に移行するよう強く主張してまいりました。このたび都は、昨今の局地的集中豪雨にも対応するため、中小河川における新たな整備のあり方について検討を開始したと伺っております。
 そこで現在、都はどのような検討を進めているのか、お伺いいたします。
 次に、東京都の防災への対応指針の策定等について伺います。
 大震災は、これまでの震災の想定をはるかに超え、多くの人々のとうとい生命を奪うとともに、住居や仕事といった生活の基盤に大きな被害を与えました。被災地の人々に都として最大限の支援を行うことはもちろんですが、この震災の教訓を都の防災対策の充実に生かしていく必要があります。
 都は、本年十一月を目途に防災対応指針を策定し、その内容を地域防災計画の修正に反映していくとのことですが、防災対策見直しの一連の動きの中で、今回の震災をどう総括し実効ある対策を構築していくのか、所見を伺います。
 次に、我が党は社会を成り立たせていく仕組みとして、日本が歴史の中ではぐくんできた家族のきずな、地域のきずなの重要性をこれまで訴えてまいりました。今回の震災では、その重要性を改めて認識させられました。
 かつて東京でも、隣近所でみそやしょうゆを貸し借りし、よその家の子どもでも我が子同様にしかり、いざ火事や台風、地震の際には互いに助け合うなど、支え合いの光景がごく当たり前でした。これは、本来の日本人の心の持ちようでもあります。今日、とかくプライバシーを強調し、心の通った人と人との交流が薄くなっているように思われます。
 しかし、ケネディの、国が何をしてくれるかではなく、国のために何ができるかという言葉を引くまでもなく、自助、共助がしっかりと根づいた社会こそ、真に豊かで強い社会だと思います。これは防災の点からも必要不可欠です。
 そこで知事に、自助、共助、公助のありようについてお伺いいたします。
 地域で住民同士の結びつきを強める仕組みとして、町会、自治会などがありますが、こうした団体の活動に積極的に参加したいという住民の声を聞く機会は、着実にふえてきております。都は、地域活動に社会的な関心が高まっているこの機会をとらえて、町会、自治会活動の活性化に取り組むべきと考えます。
 あわせて地域防災力の向上のため、我が党の提案により創設された地域の底力再生事業助成を積極的に活用し、地域における防災への取り組みを、これまで以上に支援するべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、学校における防災教育について伺います。
 我が党はこれまでも、みずからの命を守る力、いわゆる自助だけではなく、人や社会の安全に積極的に役立とうとする共助の態度をはぐくむ防災教育を重視し、都議会の場で、その充実に向けてさまざまな提言をしてまいりました。
 被災地のある中学校サッカー部員たちは、地震発生後すぐに津波を想定して避難場所に向かいましたが、周囲の状況からとっさに危険と判断し、近くの小学生たちの手を引き、さらに高台へ避難し、九死に一生を得たとのことです。
 ある都立学校では、約二百名の生徒が、みずからも帰宅困難者となりながら、教職員の指導のもと、帰宅支援ステーションの運営に率先して加わったと伺っております。
 今般の大震災を踏まえ、東京の防災力を強化するには、みずからの生命をみずから守るとともに、社会にも貢献できる人づくり、とりわけ将来を担う子どもたちへの防災教育が必要と考えます。
 そこで、都教育委員会は、今後、学校における防災教育をどのように推進するのか、お伺いいたします。
 次に、自助、共助の拠点ともなる商店街は、少子高齢化社会の進展の中で、災害時の対応はもとより、地域における住民の生活を支えるものとして、さまざまな形で役割を果たすことが望まれております。
 そこで、今後の課題として考えられるのは、いわゆる買い物弱者への対応です。経済産業省においても、平成二十二年度に報告書がまとめられました。
 しかし、全国と都内では状況が異なるところがあります。都としても、地域における商店街の役割という観点から、その実態を調査し、対応を検討するべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、ボランティアの支援についてですが、今回の大震災で、都は、新たに都民ボランティアを立ち上げ、自立型ボランティアを被災地に派遣し、高い評価を受けたと聞いています。今後大切なのは、受け入れの仕組みづくりです。東京が大規模災害に見舞われることを前提に、他の道府県から多数の志あるボランティアを円滑に受け入れ、被災者に対する効果的な救援活動に当たっていただく仕組みを、今のうちから検討しておくべきことを強く要望いたします。
 次は、通信の確保についてであります。
 今回の震災では、通信ネットワークの脆弱性も明らかになりました。発災時の通信ネットワークには二つの課題があります。
 一つは、災害対策に必要な通信基盤の確保です。警察、消防、自衛隊を初め、行政機関相互の連携のほか、ライフライン事業者などの指定公共機関、災害拠点病院等の医療機関、災害時の協定を締結している協力機関との間の情報連絡が発災時でも安定的に行えることが、迅速な応急復旧に向けた第一歩となるのです。こうした情報連絡による通信基盤が十分に確保されているとはいいがたい状況でした。
 二つ目の課題は、都民のための情報基盤の強化です。被災地同様、東京においても携帯電話が機能不全となり、家族の安否確認も困難な状況に置かれました。また、帰宅困難者への対応を通して、発災後の混乱の中で正確な情報を迅速に都民に伝えることの難しさも浮き彫りになりました。
 非常時においても都民に冷静な行動を促すためには、十分な情報が都民に行き渡るよう、情報基盤を強化することが必要です。都は、こうした観点から、発災時の情報通信による課題を整理し、対応策を検討するべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、帰宅困難者対策について伺います。
 今回の震災では、都内においても地震発生直後から鉄道の運行が停止し、JRに至っては、早々に当日の運行再開を断念いたしました。駅周辺や歩道は家路を急ぐ人であふれるなど、東京は、これまでに経験したことのない状況となりました。都が帰宅困難者を支援するため、区市町村と連携し、合計千三十カ所の受け入れ施設を開設し、約九万四千人の帰宅困難者を受け入れたことに対しては、一定の評価をいたします。
 しかし、首都直下地震が発生すると、東京では、今回の震災をはるかに上回る混乱が生じることが明らかであり、十全な備えを講じる必要があります。都内で発生する膨大な帰宅困難者に対応するためには、行政だけではなく、都民、事業者などの都市の構成員が協力して帰宅困難者対策を推進する必要があります。
 今後、都は、首都直下型地震はもとより、東海、東南海、南海連動地震なども視野に入れ、帰宅困難者対策を強力に推進していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、都営地下鉄では、今回の震災の際には、大江戸線が都内の鉄道の中でいち早く再開運行したとのことですが、地震が発生した際の乗客の安全確保や、早期に運行を再開するための取り組みとしてどのような検討を行っているのか、お伺いいたします。
 あわせて、今回の経験を踏まえ、鉄道事業者として新たに見えてきた課題と今後の対策についてお伺いいたします。
 次に、備蓄対策について伺います。
 大震災は、東北三県を初め広範な地域に被害を及ぼし、物流ネットワークにも甚大なダメージを与えました。このため、被災地では、水、食料、医薬品などの必要な物資が迅速に供給されず、多くの人々の生活に重大な支障が生じました。また、都内においても、ガソリン、重油の供給不足という事態が発生し、事業活動が大きく制約されました。物流機能が回復するまでの間の手だてを広域的な視点からあらかじめ講じておくことの重要性を改めて認識いたしました。
 これまで都は、食料を初めとして生活に必要な物資の備蓄を推進してきましたが、災害時においても事業活動を継続する観点から、燃料等の備蓄や調達の仕組みについて、そのあり方を検討する必要があります。
 また、物資の備蓄は、行政だけの対応には限界があり、今後は、これまで以上に事業者の協力も得ながら進めていくことも重要です。
 今回の震災の教訓を踏まえて、首都圏全体で取り組むことができるように備蓄対策を再構築するべきと考えますが、所見を伺います。
 さきの震災では、被災地への緊急救援物資の迅速な輸送が大きな課題となりました。陸路のみならず、海上からの輸送ルートを確保する必要があり、改めてふ頭の岸壁や背後道路など港湾インフラの重要性が確認されました。
 東京港は、首都圏四千万人の経済、生活を支えており、大震災で被災した場合には、その被害や背後圏への影響ははかり知れません。都ではこれまでも、岸壁や背後道路の整備を着実に進めておりますが、今回の震災を踏まえ、耐震強化岸壁の一層の整備促進や臨海部の道路ネットワークのさらなる強化を図るべきです。
 東京港が震災時にも十分な物流機能を発揮していくため、都として今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 次に、震災対策における広域的な連携について伺います。
 東日本大震災のような大規模な災害に迅速かつ円滑に対応するためには、自治体相互が連携して広域的な取り組みを行うことが大切です。
 とりわけ、いつ起こってもおかしくない首都直下型や東海などの連動地震といった大規模地震に備えるためには、首都圏を構成する都、県、区市町村が一層連携して広域災害に対処する仕組みが重要です。
 このため、都は、目的に応じて都と県、都と区市町村など、多様な連携の仕組みを平素から構築しておく必要があります。また、首都圏の多くの自治体が被災する可能性もあることから、首都圏を超える連携も考えるべきです。
 そこで、首都圏を襲う大規模災害に備え、都が先頭に立って、こうした広域的な連携強化に取り組んでいくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、消防力と地域防災力の強化について伺います。
 災害への備えは温故知新の姿勢が必要であり、災害への対処は、備えを生かした創意工夫が不可欠であります。震災での東京消防庁消防救助機動部隊、いわゆるハイパーレスキュー隊の活躍は、消防の英知を集めた活動で、まさにその結晶であります。
 今後の東京における災害を考えれば、こうした経験や知恵を、すべての消防部隊を初め、消防団、地域社会に反映させ、災害の備えを向上させるとともに、災害により効果的に対処できる体制を整えることが肝要です。
 このため、ハイパーレスキュー隊の充実、強化を基軸とする東京の消防力を向上するとともに、施設、装備といった活動基盤の整備をさらに促進するなどの消防団の強化や、住民や事業所の災害への行動力や対応力といった地域の防災力をさらに強化し、東京での発災に備えていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、放射性物質問題について伺います。
 先日、都は、従来新宿区内で行っていた放射線量の測定体制を拡充し、都内百カ所で測定を行うとともに、区市町村に対し、測定機器を貸与することといたしました。
 これまで都は、単に放射線の値を測定するだけにとどまらず、水道水ではパニックを防止するため、乳児がいる家庭にペットボトル水を緊急で配布いたしました。農作物の風評被害払拭にも取り組み、さらには、東京港のコンテナや工業製品について、測定結果の証明書を発行しております。都民、国民のために、現場としてできることを工夫しながら懸命に努力してきたのであります。
 にもかかわらず肝心の国は、放射性物質の安全基準についてなかなか示しておりません。現場で幾ら観測をしても、安全基準が定かでなければ観測値の評価ができず、都民、国民の不安は一段と募るばかりです。政権を預かり、政治主導とか国民生活が第一といってきた民主党の皆さんの奮闘を強く求めるものであります。
 しかし、ある民主党の都議会議員は、都民、国民の不安の根源を断つどころか、ちびっ子探偵団のごとく、下水道の南部スラッジプラントに入り込んで放射性数値をはかり、何ら方策もないままに、いたずらに危険とあおり立てております。
 雨によって洗い流された放射性物質が集積するのは、下水道施設の性質上やむを得ないものです。しかし、施設は密閉され、排気もコントロールされています。そうした事実を正確に評価もせず、ただ危険だと騒ぐのは、現場で懸命に働く関係者への努力を踏みにじり、都民、国民の要らぬ不信感を増幅させる行為にほかなりません。
 まずは、政治家として、現下の不安をつくり出しているみずからの政権に対して、物を申していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 今、必要なのは、科学的知見に基づいた放射性物質への明確かつ実効力のある対処方針を国家として速やかに示すことであります。都としても、国に対処方針を出すよう強力に要求すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、災害時には、医療の確保が優先されなければなりません。都立病院、公社病院において、都民の生命を守るため、いち早く初動態勢を確立し、迅速かつ適切に医療を提供することが不可欠です。
 大震災で被災した宮城県の中核病院では、ライフラインが寸断され、診療の維持ができなくなった病院や、辛うじて診療ができたものの、それを支える医療品、診療材料、水、非常用発電の燃料である重油の供給体制など、いずれにおいても不安を抱えながら必死の診療が続きました。
 電力が復旧しない病院では、発電用の重油が途絶え、病院機能が停止し、患者を転院させることが余儀なくされました。
 とりわけ、災害時の通信手段を確保することは重要です。今回の大震災では、被害が広範囲に及んだためか、優先携帯電話などの想定システムが機能しませんでした。
 被災地での実態も踏まえ、首都東京での震災を想定して、都立病院、公社病院はどのような対策をとり、災害時の診療機能を確保するのか伺います。
 次に、障害者への支援等について伺います。
 今回の災害で、障害者団体が、安否確認や支援のため、被災地に赴き、被災者に関する情報提供を自治体に求めたところ、拒否されたとの相談が我が党に寄せられました。
 災害時に障害者の安全を確保するためには、障害者団体との協力を得ることも有効です。都として、震災時に備え、障害者団体等との平時からの協力体制を構築しておくことが必要と考えますが、所見を伺います。
 せんだって、都立府中療育センターの改築について基本計画が発表されました。府中療育センターは、都が初めて設立した重症心身障害児施設ですが、建設後相当の年月が経過しており、利用者サービスの向上に加え、防災面の強化という点からも、早期の改築が課題となっております。
 改築に当たっては、地域で生活する重症心身障害児者への支援の充実はもちろん、今回の震災を踏まえ、防災面での対策の強化も重要と考えますが、所見を伺います。
 次に、産業振興について伺います。
 東日本大震災は、都内経済にも大きな影響を及ぼしております。供給面では、サプライチェーンの寸断や電力不足による生産活動の停滞を訴える声が数多く聞かれています。また、需要面でも、原発事故などの影響により、消費マインドの低迷など、現下の景気の動きは極めて弱いといわざるを得ません。
 さらに、今後の経済の見通しにおいても、復興需要への期待感も高まる一方で、収束への道筋が見えない原発事故への懸念など、問題は山積しております。厳しい経営環境下にある多くの都内中小企業にとって、正念場はまさにこれからであります。
 日本経済の牽引役である東京の疲弊は、被災地の復興のためにも深刻なマイナスとなります。都は、新しいビジネスチャンスを創出するなどして、停滞を打開する端緒を切り開いていくことが重要です。
 そこで、まず、今回の大震災を踏まえた中小企業振興に関する基本的な考え方を知事にお伺いいたします。
 次に、都内中小企業への金融支援について伺います。
 都は、震災直後に特別相談窓口を設置するとともに、直接被害を受けた中小企業の資金繰りを支援するため、災害復旧資金融資を立ち上げるなど、被災した中小企業への支援を速やかに講じてまいりました。
 我が党には、都内各種団体からさまざまな声が寄せられていますが、今回の震災による影響は、直接被害によるものだけではなく、風評被害など間接被害によるものまで広範囲に及んでいます。また、こうした企業の中には、リーマンショック以降の景気悪化に対応するため、借り入れた既往債務の返済に苦しむ企業も多いと聞いております。
 今後、直接間接の被害を受けた都内中小企業の資金繰り支援に、どのように取り組んでいくのか伺います。
 なお、今回の大震災により、災害時の事業継続のための計画、いわゆるBCPの重要性がより明確になりました。これまでも、都は、BCPを作成する中小企業をサポートしてまいりましたが、今後さらに支援を拡充するよう要望しておきます。
 大震災は、東京の観光産業に対しても深刻な被害を及ぼしています。三月、四月の訪日外国人旅行者数は、過去最大の減少幅となり、今なお厳しい状況が続いております。国際会議や見本市などMICEのキャンセルも相次いでおります。
 都は、平成十三年より、世界金融危機を契機とした景気後退や新型インフルエンザの流行等の幾多の危機を乗り越えつつ、国に先駆けて観光産業の振興に取り組んでまいりました。
 民間事業者とも一体となって、かつて経験したことのないこの厳しい状況をはね返して、訪日外国人旅行者の回復を図り、観光産業の振興に取り組んでいく必要があると思いますが、所見を伺います。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致についてお伺いいたします。
 本日、武田会長を初め、オリンピック・パラリンピック選手の皆様が要請活動にお見えになりました。
 新たに改定される「十年後の東京」の目標年次二〇二〇年はオリンピックイヤーであり、知事は、開催を目指すことは意義があるとのお考えを述べられました。力強く復興した日本の姿をアピールするには、世界最大のスポーツの祭典であるオリンピック・パラリンピック以上のものはありません。
 震災から三カ月余り、生活再建に向けて日々頑張っておられる被災者の方々には、本当に頭が下がります。そのような今だからこそ、九年後を見据え、次世代の子どもたちに夢や希望を与える、未来に向けた取り組みを進めることが大切と考えます。
 都は、いま一度二〇二〇年の復興オリンピック・パラリンピックの開催を目指すべきであります。実現に向けて、日本が一つになることが必要と考えますが、二〇一六年の招致を戦われた知事の所見を伺います。
 次に、八ッ場ダム事業について伺います。
 大震災後中断されていた八ッ場ダムの検証の幹事会が、ようやく先月開催されました。しかしながら、この場では利水の代替案が示されただけで、その内容も、電力不足が懸念されているにもかかわらず、他のダムにおける水力発電用の水を買い取る等、荒唐無稽なものばかりです。これでは、治水についても現実的な代案が出てくるとは到底考えられません。
 今回の大震災を振り返れば、社会資本整備の必要性は議論の余地がありません。民主党政権は、公共事業をむだ遣いの象徴のように扱い、国家百年の計を顧みず、国民の生命と財産を守る責務を放棄しています。
 八ッ場ダムは、治水、利水のみならず、水力発電をも担う多目的ダムであり、人口や都市機能が高度に集積する首都圏を守るために、絶対につくらなければなりません。
 知事は、関係知事と一致団結し、担当大臣に本体工事中止の方向性を撤回させ、一刻も早く検証結果を出すことを約束させました。
 我が党は、当然、建設推進の結論が出ると考えております。改めて、八ッ場ダム建設事業の推進に向けた知事の決意をお伺いいたします。
 次に、東京外かく環状道路の整備促進について伺います。
 首都圏の高速道路ネットワークは、交通渋滞の解消や環境改善のみならず、日本経済を活性化させるなど、その便益性が広く国全体に及ぶものです。
 今回の大震災では、物資輸送等における高速道路ネットワークの重要性が再認識され、かなめとなる外環の早期完成がこれまで以上に強く求められています。
 我が党は、都議会外かく環状道路建設促進議員連盟と連携し、外環の早期着工に向けて、国などへ積極的な働きかけを行ってまいりました。これにより、本年度予算において二億円の準備工事費を含む百二十五億円が計上され、工事の本格化の期待は高まっています。これらを踏まえ、今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、リニア中央新幹線について伺います。
 先月、JR東海が建設主体として指名され、いよいよこの計画が実現に向け動き始めました。
 リニア中央新幹線は、交流の機会の拡大や産業の活性化などにより、都市圏、ひいては我が国の成長力を格段に高める重要な社会資本です。
 加えて、始発駅となる品川駅を中心に、東京のポテンシャルが向上することも期待されます。
 また、東海地震等による災害発生が危惧される中で、東海道新幹線のバイパス機能を確保する重要性が一層高まっています。
 東日本大震災により、我が国経済の中長期的な低迷が懸念されていますが、国土の足腰を強化する未来への投資を行っていくことが必要と考えます。首都東京の活力向上に向けたリニア中央新幹線の整備に対する知事の所見を伺います。
 最後に、四期目にかける知事の決意について伺います。
 先般の都知事選挙では、都民の強い期待を受けて当選され、すぐさま東京緊急対策二〇一一をまとめ、補正予算を編成されました。
 これまでの石原都政を振り返っても、常に我が国を牽引してまいりました。
 昨今の電力不足の中で、化石燃料の中ではCO2排出が相対的に少ない天然ガス発電所の建設を打ち出されました。環境と経済との両立のために、都市政策にエネルギー政策を織り込んでいくことは、石原環境政策のさらなる進化であります。
 また、知事は、戦後の権利主張や自己の損得ばかりが強調される社会を変えるために、心の東京革命を提唱されました。
 今回、人間のきずなを再び結び直すと宣言されましたが、従来の取り組みと相乗効果を生んで、社会の立て直しにつながるものと思います。
 そして、今回、国政が混迷する中で、東京から次世代を育てるという明確な方向性が示されました。教育再生・東京円卓会議の設置、若者の海外武者修行支援、多摩でのものづくり教育機関の新設といった教育に関する新たな施策であります。
 大震災や激しくなる国際競争、社会を覆う閉塞感など、課題は山積しております。それを乗り越えられるか否かは、我が国を背負う人材を育てられるかにかかっております。
 折しも、ことしの夏、新しい教育基本法が制定されて初めて、中学校教科書の採択が全国で行われます。
 新教育基本法には、豊かな情操と道徳心を培うことや、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国の郷土を愛することなどが、教育の目標に盛り込まれております。
 日本人の心、家族の愛、歴史認識をしっかりと教えるという、これまでないがしろにされてきた日本人としての確かな土台をつくった上で、国際社会に通用する能力を身につけさせることこそが、今、最も必要なことだと考えます。
 東京から日本を救うために、我が都議会自由民主党も、石原知事に全力で協力してまいります。新しい教育人材育成策を打ち出した知事に、四期目にかける決意をお伺いをして、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 村上英子議員の代表質問にお答えいたします。
 国難のもとでの東京の役割についてでありますが、現下の我が国を見れば、まさに内憂外患で進退きわまったという感があります。
 未曾有の大震災に見舞われておりますが、復興の土台となる経済は長期に低迷しておりまして、国際社会で相対的な地位はどんどん低下している。国家財政も実質的には破綻しておりまして、このままでは、多大な国債が債務不履行、デフォルトになりかねない。
 国民は、非力なばかりか、危機の本質すら理解できているとは思えない現行の政治に、失望し切っているんじゃないんでしょうか。多くの人々が、国の行く先に希望を見出すことができないでいるような気がいたします。
 この閉塞を打破するには、強いメッセージを発信し、現場を踏まえた具体的な手だてを示して、現実を具体的に変えていくしかないと思います。これこそ、国家にも匹敵する力を持った東京の役割でありまして、日本の頭脳、心臓として当然の務めだとも思っております。
 東京の総力を挙げて、被災地、被災者に確かに届く方策で復旧、復興を支援し、また、電力不足という困難をはね返すべく、環境とエネルギーの新たな戦略を示しました。そのための天然ガス発電所の新規の建設等に向けて、民間とも連携しながら行動を開始していきたいと思っております。
 経済のさらなる発展のために、インフラをたゆみなく整備しまして、特区も活用して、アジアの中心都市となっていきたいと思っております。
 義援金配分の差配すら満足にできない今の政府に対して、国難を乗り越えるとは、具体的にこういうことがあるんだということも示していきたいと思っています。
 私は、今の政府が、日赤が預かって歩合取っているんでしょうか。いずれにしろ、ただで預かっているかどうかわかりませんが、とにかくそれを二〇%足らずしか配分できずに、多大な義援金がいまだに配分されずにいるということは、わけがわからない。仮設住宅に避難した人たちは、体育館で集合で生活しているときと違って、住宅に入れば自活しなくちゃいけないわけですから、買い物ができない。財布を持たずに逃げた人たちに、単に仮設住宅を与えるだけで、私は生活が安定するとはとても思えませんし、何でその頭金、せいぜい数十万のお金を、政府が、とにかく果断に配らないか、私は本当にわからない。
 次いで、被災地の復興支援と首都東京の防災力向上についてでありますが、日本全体に深甚な被害をもたらした今回の震災から立ち直るためには、首都東京が強力なリーダーシップを発揮することが求められていると思います。
 都は、発災後直ちに、ハイパーレスキュー隊や機動隊を現地に派遣して、隊員の諸君は、まさに水杯を交わして、身の危険を顧みずに決死的な行動を展開してくださいました。
 その後も、医療救護や避難所の運営支援などに多くの職員を派遣しておりますし、現場を持つ都の強みを生かして、被災者の皆様への力添えを手を惜しむことなく行ってきております。
 東京は、被災地に電力を初め、農林水産物など多くの供給を負っておりまして、首都機能を維持する上でも、被災地を全力で支援することは当然の責務であります。
 今後、被災地が幾多の困難が横たわる中、本格的な復旧、復興に向けて踏み出す歩みを力強く後押しするために、全国の先頭に立って、職員の長期派遣や瓦れきの受け入れ処理、あるいは被災地企業の受注回復など、支援の取り組みを一段と強化していきたいと思っております。
 また、依然として収束の道筋の見えない原子力発電所の事故によりまして、退避を余儀なくされております都内に受け入れた方々に対しては、孤立化を防ぐ個別訪問や就業、就学支援など、生活全般をきめ細かく援助していきたいと思っております。
 同時に、焦眉の急であります東京の防災力の向上に向けた取り組みも着実に進めていきたいと思っております。
 今回の震災は、多くの帰宅困難者の発生など直接的な被害にとどまらず、物流の断絶による経済活動の停滞など、これまでの災害の概念におさまらない連鎖的な被害を発生させました。
 この教訓を踏まえまして、首都直下地震に備えた防災対策の再構築と、東海、東南海、あるいは南海連動地震への対応も含めた東京防災対応指針を本年の十一月までに策定して、地域防災計画の修正に反映させていきたいと思っております。
 一千三百万人が住み、しかも昼間人口が他県から三百万人も超すという、この東京を高度防災都市へと生まれ変わらせるためにも、国が一方的に奪ったあの法人事業税の税収を取り戻さなくてはならぬと思います。
 とにかく、東京が東京のために使うべき金を、親である国が勝手に子どもの財布に手を突っ込んでかっぱらっていって返さないというのは、これは言語道断の話でありまして、これをやったのは自民党でありますけれども、福田内閣、あのときは民主党は強烈に反対してくれたのに、菅君が副総理のときに私がその話をしましたら、あんまり返事はございませんでした。
 いずれにしろ、東京の金を東京が守るために東京が使おうという我々の意思を国が阻む道理は全くないと思います。
 国政は政局に明け暮れて迷走を続けていますが、東京は、現場に根差した具体的な政策を展開し、日本の再生を全力で支えていきたいと思っております。
 次いで、ことしの夏の電力危機への対応についてでありますが、東日本大震災は、これはまさに国難でありまして、享受してきた繁栄と安寧が危機にさらされている今、我々は、こうむった被害の復元に努めるだけではなく、もっと根源的なものへの反省と修復を志すべきだと思います。
 一晩じゅうともっている余計な明かり、遊技場で使われている電力、あってもなくてもさほど生活に支障を来さないはずの世界に例を見ない自動販売機などになれた私たちの生活様式というものは、そろそろ反省の対象にされるべきじゃないんでしょうか。
 つまり、便利というものに甘んじてきた私たちは、我欲をここら辺でやっぱり抑制して、節制ということを考える必要があるんじゃないかと思います。
 首都圏の電力需要が逼迫する今、我々一人一人が我欲をこらえて節制に努めて、これまで当然としてきた電気の使い方や生活様式を見直し、国民全体で協力することがまさに不可欠であります。
 しかし、国は、電力の消費の一五%削減という抽象的な数字を並べるだけで、かつてオイルショックの際に行われたような政令による正当な権限行使に極めて消極的であります。何をもってちゅうちょするか、さっぱりわけがわからない。
 都は、事業者に対して、都民に対して具体性のある対応策を示して、実行を促しておりますが、本当は国が、命令といいますか、依頼すべきでしょうけど、都なり、この首都圏を形成する四県の知事が合意で──今、何しているんですかあの人は。仙谷さんに官邸で会いましたが、はあはあ、わかりましたというだけで、一向に具体案が出てこない。
 この間、あるスポーツクラブで、休日に仙谷君に会いまして、一体どうなるのかねといったら、まあ、なるようになるでしょうということでして、まあこれが政府の中枢にいる人物の発言かと思って、私はいささか寒心にたえませんでしたが。
 また、首都圏の直面する電力不足への対応策として、高効率な天然ガス発電は最も有力なものでありまして、都は、既に浄水場においてガスタービンによる発電を導入しておりますが、燃料であるLNGの価格を見ても、今後見込まれる電力価格の上昇を踏まえると、十分に採算性のある選択肢ではないかと思っております。
 日本のダイナモたる東京の産業活動が停滞し、空洞化することのないよう、高効率な天然ガス発電所の新規建設など、首都圏の電力自給能力の向上に向けた行動を民間とも連携して開始していきたいと思っております。
 これらによりまして、この夏の電力危機への対応に加え、遅々として進まない国にかわって、低炭素型の環境エネルギー政策を推進し、東京から発信していきたいと思っております。
 ともかく、電力というのは必ず売れる商品ですから、需要があるなら、地方自治体は民間とも協力して、あるいは外資とも協力して、こういった手だてを講じることで、その事業は十分に成り立つと私は思います。
 現に、昨日、真夏日ですか、三十度を超したこの東京での電力の消費量を見ますと、かなりそれが高騰して、残り一〇%というぎりぎりのところまで来ておりました。これは、これから続く暑く長い夏というものを意識しますと、私たちに、電力の消費についてもっともっと強い危機感を持つべきということを啓示しているんじゃないかと思います。
 次いで、地震に強い東京の都市づくりについてでありますが、首都東京を地震に強い都市とするには、都内にいまだ多く存在する防災上の脆弱な部分への対策を加速しなければなりません。
 まず、災害時に重要な役割を果たす緊急輸送道路については、制定した条例に基づいて、沿道建築物の耐震化を進め、早期に建物倒壊による道路の閉塞を防止しなければなりません。
 これに加えて、都内すべての耐震性のある建物を対象とするマーク表示制度を創設して、都民の耐震化への意識や機運を高めて、東京全体に耐震化のムーブメントを起こしていきたいものだと思っております。
 木造住宅密集地域に対しては、専門家を派遣して、必ずやってくる地震の怖さを伝え、住民の意識を変えていきます。
 さらに、まちづくり施策や税制などを総動員した新たな手法も編み出しまして、モデル事業を実施して、具体的な成果を目に見える形で示していきたいと思っております。
 一方、都内には、旧耐震基準によるマンションが四十万戸を超えておりまして、これは権利者の合意形成が非常に難しく、なかなかその耐震化が進んでおりません。
 このような状況を打破するために、国に対して、法が定める耐震改修等に必要な合意要件の緩和を求めることを初め、実効性のある方策を講じて、マンションの耐震化を強力に進めていきたいと思っております。
 これらの手だてを複合的に講じることで、日本の頭脳部であり心臓部である東京を高度な防災都市へとつくり変えていきたいと思っております。
 次いで、自助、共助、公助のありようについてでありますが、特に共助の、地域の連帯感の問題でありますけれども、被災地を見るにつけましても、震災の現場における自助、共助の重要性を、被災された方々のあの行動を見て改めて思い知らされました。
 人によっては、身近の人間を助けて、避難させるためにみずからが犠牲になったという、そういう方がたくさんおられます。
 こういったものを私たちは十分にしんしゃくして、都市における非常に粗雑になった人間関係というものをもう一回構築し直すために、一つの町内というとこれは多過ぎまして、本当に周りの四、五軒でいいのですが、そういう連帯感というものをうまく誘導して、再生させていきたいなと思っております。
 戦後、我欲ばかりがはびこりまして、義務や責任といったことがないがしろにされてきましたが、我々が捨ててきたものや忘れてきたものの中にこそ、実は日本の再生のかぎがあるのではないのでしょうか。
 核家族化が進み、価値観が多様化した今日、特に東京のような大都市では、しがらみもなければ、きずなも非常に希薄であります。こうした現状を東京からも変えていくためにも、防災隣組といった、ごく間近な方々の共助のきずなというものを構築していく必要があると思います。自助、共助、公助のバランスを取り戻し、日本人の美質や心意気をよみがえらせたいものだと思っております。
 連帯に裏打ちされた安全・安心な社会を東京からつくり上げることで、日本再生の大きな潮流となるように取り組みを進めていきたいと思っております。
 次いで、大震災を踏まえた中小企業振興についてでありますが、今回の大震災では、部品工場の被災によりまして、自動車産業全体が減産に追い込まれるなど、日本のものづくりが、大企業と中小企業の極めて広範囲による、しかも密接な結びつきによって成り立っていることをさまざま見せつけられました。
 日本のものづくりを支えているのは、いうまでもなく中小企業でありまして、被災地や都内に数多く存在する世界に誇る技術を持った、これらの中小企業を震災の影響から、いかに早期に回復させるか、これが今こそ日本の真価の問われる一つのポイントだと思います。
 都は、発災以降、都内中小企業への影響を最小限に食いとめるために、経営や資金繰りへの支援など、迅速に手だてを講じてきましたが、震災による影響の大きさにかんがみると、さらなる対策に取り組む必要がございます。
 このため、緊急対策として、制度融資の拡充や工業製品の放射能検査体制の充実など、現場に即した対策を講じてまいります。
 また、電力供給への不安による産業の停滞と空洞化は、これは何としても防がなければなりません。そこで、中小企業の自家発電設備の導入を支援するとともに、天然ガス発電所の新規建設に向け、民間とも連携しながら行動を開始したいと思っております。
 こうした重層的な取り組みを通じて、東京の産業活動の維持回復に万全を期していきたいと思っております。
 次いで、オリンピック招致についてでありますが、未曾有の大震災の衝撃によって、我が国は沈滞しています。スポーツは、傷ついた国民の心をいやし、勇気を与えることができます。世界のトップアスリートが集うオリンピックを開催し、日本の再起した姿を世界に見せることは、復興への道を確かに進むための大きなてこになるのではないかと思います。
 先ほども、多くのアスリートがこの都庁を訪れ、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの日本開催を訴えてまいりました。次代を担う若者たちの熱い思いにこたえるためにも、たいまつを消さずにともし続けることは、日本の将来にとっても大きな意義がございます。
 ただ、そのときに、君らは都に開催を依頼するだけでなしに、それを推進するためには必ず勝ってこい、勝たなければ話にならぬぞと。勝たなければ、オリンピックに対する期待は国にわいてこないよといったら、彼らは大いにうなずいておりましたが、結果はどうなりますか。
 オリンピック招致は、都市間の争いにもとどまらない、国家間のまさに熾烈な闘いであります。陰に陽の非常に熾烈な闘いであります。日本の今の政府の国際感覚というものが、果たしてこの招致運動にどう反映されるかわかりませんが、私たち、前回の敗北に懲りずに、あれを一つの糧として、私たちはこの闘いを、やるならば、緻密に戦術的、戦略的に構築していかなければならないと思います。そのためにも、国民全体の機運の盛り上がりが不可欠だと思います。
 被災地とも連携し、日本全体が一つとなって実現する二〇二〇年のオリンピックは、都民、国民の連帯感を呼び覚まし、我が国は、大震災から真の意味で復活を遂げることになると思います。国を挙げての再招致への取り組みと、都議会初め多くの方々のご協力を期待しております。
 次いで、八ッ場ダム建設事業についてでありますが、我が国は、急峻な山々が連なった狭隘な国土に、一億を超える国民が暮らしておりまして、社会資本の整備によって地勢的不利を克服し、国民の生命と財産を守っていかなければなりません。これは今回の震災を見ても明らかであります。
 現政府は、理屈もなく目先のことばかりを追い求め、長期的な視点で取り組むべき治水、利水をないがしろにして、その結果、国民を極めて危険な状態にさらしてしまっております。国家の大計に立って、真に必要な公共事業を進めなければ、政治の責任を果たすことはできないと思います。
 現地では、昨年八月に開通した湖面三号橋に加え、ことしの四月には、二号橋も完成しました。約九割の世帯が既に移転しているなど、まさにダム工事の本体を残すのみの状況となっているのです。
 国は、ダムの代替案を検討しておりますが、残りわずかの事業費と工期で完成する八ッ場ダムにかわる策などほかにはあり得ないと思います。今さらどこにどんな新しいダムをつくるのですか。
 国は、国土交通大臣が約束したとおり、馬淵は大変しっかりした大臣でしたが、残念ながら更迭されましたけれども、一刻も早く検証結果を出して、直ちに、本体工事に着手すべきだと思います。
 都は、引き続き関係五県と連携し、国に対し、八ッ場ダムの予定どおりの完成を強く求めてまいります。
 次いで、リニア中央新幹線の整備についてでありますが、リニア中央新幹線は、三大都市圏を航空機に匹敵する高速移動で結びまして、我が国の国土全体に大きなインパクトを与える重要なインフラであります。
 品川から発して恐らく新大阪駅の付近に終点を求めるならば、これはほとんどドア・ツー・ドアで、一時間足らずで東京と大阪が結ばれる。その間にワンストップ、名古屋でしても、これは画期的な世界の中でも未曾有のインフラでありまして、これは私が運輸大臣のときに、実験線を宮崎県から山梨県に移したのですが、これをそのまま本線に組み込んで、JR東海が実用化の技術を確立し、先月、国から建設指示を受けました。
 始発駅となる品川駅は、世界と日本を結ぶ羽田空港へのアクセスが極めて良好であります。その品川駅から大阪まで、約一時間で二つの都市圏が結ばれる、首都圏と名古屋圏と大阪圏が実質的に一つの都市圏となりまして、我が国の国際競争力が飛躍的に向上する大きなゆえんになると思います。
 また、災害発生時において、経済活動の停滞を防ぐために、三大都市圏を結ぶ大動脈を二重化することも重要でありまして、こうした機能を早期に発揮させるためには、大阪までの早期開業や、国内外の玄関口となる品川駅の改良が不可欠であります。これを国及びJR東海に強く求めて、リニア中央新幹線を新たな時代を切り開く牽引車として十二分に機能させることにより、首都東京の活力を向上させていきたいと思います。
 ちなみに、このインフラが完成しますと、三大都市圏が一つの都市圏になりますと、その総生産額は二兆六千億米ドル、これはイギリスの二兆六千米ドルにほとんど匹敵する。東京も現在、東京の全予算は、カナダや隣の韓国やオーストラリアに匹敵しておりますが、その東京に加えて大阪と名古屋が加わって、これが密接な機能で動くようになれば、これは私は強力な、何ていうのですかね、経済協定を持つことになるんではないかと思います。
 次いで、四期目にかける決意でありますが、我が国は、停滞を続けておりますけれども、本来、日本人は、可能性、潜在力を秘めております。これを引き出して、沈んでいこうとしている日本をかえていけるのは、東京という現場からだとの決意のもとに、「十年後の東京」計画も構え、政策を展開してきましたが、これを一段と加速させ、災害に対する都市機能のもろさを克服しながら、今後も日本再生の先頭に立っていくつもりであります。
 とりわけ次代を担う人材をいかに育てるかがこの国の行く末を左右いたします。日本の力の源泉は、技術力、他の民族にない独特の発想力でありました。これを受け継ぎ、一段と伸ばす人材が枯渇しては日本は二度と立ち上がれません。
 先般、世界的にも有名な、長らくロンドンで教鞭をとっております数学者の藤原正彦さんと長いこと懇談しましたが、彼にいわせると、平和賞とか文学賞もかなり政治的なものですけれども、それを除いて自然科学において日本人が戦後とったノーベル賞の数は、イギリスを除けば、あとのヨーロッパ全体に匹敵する、それをしのぐということでありまして、これは私たちにとって非常に大事な、大きな大きなレコードだと思います。
 とにかく、昨今の若者が、多くといいましょうか、全部とはいいませんが、何かと意欲が減退して、非常にステレオタイプに甘んじて挑戦することを忘れて、内向き志向で小さな世界に安住しているんでは、日本は激変する世界から取り残され、存在感をますます低下していくと思います。
 しかもその中で、先般、日本人全体が注目し成功に拍手喝采した、あの「はやぶさ」という、ごくごく限られたグループがつくったあの宇宙開発の手だては、これはもう画期的なものでありまして、アメリカや中国が開発している宇宙船なんかとても及ぶものじゃない。全行程四十億キロの宇宙を旅して、一回行方不明になって、転覆したものを遠隔操作でよみがえらせて、日本に、とにかく地球に無事着陸させた。
 こういった私たちは才能というのを持っているわけですから、これを、いかにほかとコンバインさせ、組み合わせて、複合的、重層的に、日本の世界に対する戦略に組み込んでいくかということが、今の国の役人や政治家では発想力がないからできないかもしれないが、せいぜいやっぱり、都庁の皆さんから、都議会の皆さんから知恵でもかしてやってくださいよ。とにかく、こういう危機感に立って、ものづくりの新たな教育機関をつくり、若者の海外武者修行や留学を直接支援していきたいものだと思っております。
 さらに、現在、国の中枢を担っている与野党の政治家の迷走ぶりは、戦後の教育がいかに貧しく、歴史認識、国家社会の愛着と責任感といった本質を欠いてきたかを如実に示していると思います。
 大震災では、私も自分の目で、現場におりて、あの惨状や、また復旧の活動を見てまいりましたが、規律、節度、自己犠牲といった、長い歴史の中で培ってきた価値観の基軸がいかに大切かということを改めて思い知らされました。戦後の教育を改めて冷静にとらえ直し、反省もし、今こそ、知力、体力、人間力を備えた若者を何とかとにかく育てていきたいと思っております。
 国家や社会を根底から再生するためには、教育、人材教育にこそ、育成にこそ力を注がなければならないと思います。教育の再生、それも再建といいましょうか、今の教育を破壊的に、とにかく要するに改正するということが必要ですし、今般できます東京の教育に関する円卓会議の知恵もかりながら、これからの日本を真に担い得る人材を東京から育てていきたいものだと思っております。
 他の質問については、教育長、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 今後の学校における防災教育についてお答え申し上げます。
 都教育委員会は、東日本大震災を踏まえ、震災時のあらゆる場面において、的確な判断と行動ができるよう、その指針となる副読本「地震と安全」を、都内の小学校から高校まで、全児童生徒に七月までに配布するとともに、新たに、防災教育教材「三・一一を忘れない」を作成して、学校の授業における活用を促進してまいります。
 また、地域と学校とが連携した参加型防災教育や救援活動の模擬体験など、実践的な防災教育を推進するモデル事業を実施し、その成果を各学校に普及してまいります。
 これらの取り組みを通じて、お話のように、まず自分の命を守り、次いで身近な人を助け、さらに避難所の運営など、地域に貢献できる人材を育てる防災教育を一層推進してまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、耐震化推進条例に基づく特定緊急輸送道路の指定の考え方についてでございます。大地震から都民の生命と財産を守り、首都機能の低下を防ぐためには、震災が発生した際に、広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈となる緊急輸送道路の機能を一刻も早く確実に確保する必要がございます。
 このため、まず、緊急輸送道路のうち主要な防災拠点、空港や港湾、他県等と連絡するすべての第一次緊急輸送道路を指定いたします。これに震災時に災害情報の収集や応急対策の指揮など重要な役割を担う区市町村庁舎との連絡を確保するために必要な第一次以外の緊急輸送道路を加えまして、合わせて延長約一千キロメートルを、特定緊急輸送道路に指定することといたします。
 次に、区市町村や関係団体との連携についてでございます。
 特定緊急輸送道路の指定によって、条例の対象建築物が明らかとなります。そこで、来年度からの耐震診断の義務化を待たず、原則として所有者負担なしで耐震診断を行うことができる新たな助成を直ちに開始してまいります。
 このため、できる限り迅速に耐震診断や耐震改修の取り組みが進められるよう、区市町村と連携して、建物所有者に対する個別訪問や説明会を実施いたしまして、助成制度の内容等について周知徹底を図っていくとともに、相談受け付け体制を充実してまいります。
 さらに、耐震診断の担い手となる建築士等の関係団体との間で、信頼できる診断者の確保や紹介などの新たな体制の構築に向けた協定を近々締結して、所有者が安心して耐震化に取り組める環境を整備いたします。
 今後とも、こうした取り組みにより、条例に基づく施策を着実に実施していくことで、耐震化を強力に推進し、災害に強い首都東京を実現してまいります。
 次に、市街地の大街区化についてでございます。
 お話のように、東京には都心を初めとして、かつての震災や戦災の復興事業によって整備された幅の狭い区画街路で囲まれた小規模な街区から成る市街地が残っております。こうした地区は、街区が狭小であるがゆえに、質の高い都市空間の形成や都心等にふさわしい高度な土地利用を図ることが困難であるとともに、旧耐震基準で建てられた建物も多く、更新が進まないなどの防災上の課題も抱えております。
 また、今回の東日本大震災では、都心等で多くの帰宅困難者が発生し、幹線道路にあふれるといった新たな課題も生じました。こうした課題に的確に対応していくためには、道路や街区を集約再編して大街区化を図り、市街地の機能更新を行うとともに、緑豊かなオープンスペースや、機能的な道路空間を創出していくことが有効でございます。
 また、街区の規模を大きくすることによって、環境に調和し、効率的なエネルギー利用が可能となる建築物を誘導し、その中に、帰宅困難者の一時避難施設や防災備蓄倉庫、自家発電設備等を備えた防災上の拠点としての機能を発揮させることも可能となります。
 このため、都は、地元区や民間事業者等と連携を図りながら、例えば、環状二号線の新橋・虎ノ門周辺などにおきまして大街区化を促進し、東京を国際競争力を備えた高度な防災都市とするための取り組みを積極的に推進してまいります。
 最後に、建築物における液状化対策についてでございます。
 今回の震災では、広範な地域で液状化が発生し、多くの木造住宅が傾くなど、被害の大きさを改めて認識させられました。
 液状化に備えるためには、建築物の所有者や建て主が、敷地の状況を把握し、建物の安全を確保することができるように、液状化の可能性や具体的な対策についての情報を、より一層的確に提供していくことが必要であります。
 このため、七月末を目途に、専門家を含めた検討委員会を設置いたしまして、今回の地震で生じた液状化の被害や地盤の状況についての調査を行い、木造住宅を含む建築物を対象に、地域の地盤特性に応じた対策を早急に検討してまいります。
 この検討結果を踏まえ、建築に際し、地盤調査の必要な区域や具体的な対策事例などについて、都民にとってわかりやすい液状化対策の指針を作成してまいります。
 また、この指針に基づき、液状化のおそれのある地域において、区市と連携し、建築確認審査などの機会をとらえ、建物の設計者などに対しましても、的確な対策を講じるよう促してまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず「十年後の東京」計画の改定についてでございますが、これまで都は、二〇一六年を目標とする「十年後の東京」計画を羅針盤にいたしまして、先進的な施策を推進してきましたが、計画期間が半ばを迎え、また、東日本大震災によりまして、安定的な電力の確保策など、従前の枠組みでは対応し切れない新たな課題も浮き彫りになってまいりました。
 こうしたことから、「十年後の東京」計画を充実強化した上で改定し、二〇二〇年までを計画期間といたしまして、東京を新たな成長の軌道に乗せる道筋を示すこととしたものでございます。
 その中で、まずは、高度な防災機能を備えた都市への取り組みの強化とともに、新しい共助の仕組みの構築などにより、安全・安心社会をつくり上げていく考えでございます。
 さらに、エネルギー政策を柱に据えまして、節電意識の徹底を図ることなどによりまして、生活様式や価値観を転換し、環境と経済が高次元で両立した都市を実現していく考えでございます。
 また、今後、羽田空港の国際線発着枠がさらに増加し、平成二十五年度には、中央環状線が全線開通するなど、ここ数年の間に、都市インフラが一段と整備されますことから、こうした都市機能の拡充を契機にいたしまして、東京をアジアのヘッドクオーターへと進化させていくことも大きな視点に据えて、「十年後の東京」計画を改定していく所存でございます。あわせて、これまでと同様、三カ年のアクションプログラムでございます実行プログラムを策定いたしまして、施策の実効性を確保してまいります。
 次に、放射性物質への対応についてでございますが、都といたしまして、これまで、大気中の放射線量などを測定、公表いたしまして、都民生活における不安解消に努めておりまして、区市町村の要望も踏まえながら、さらに測定体制の拡充を図ってきたところでございます。
 放射性物質への対応は、すべての国民の健康、安全にかかわることであり、これを各自治体がおのおの判断で決めるようなことになりますれば、混乱を助長することにもなりかねないことから、ご指摘ございましたように、本来は、国において安全基準や対処方針を示すべきものでございます。
 しかしながら、校庭、園庭の利用に関して、国は暫定的な考え方や当面の対応を示すにとどまり、放射線量の安全基準については何ら示していないため、保護者を中心に、放射能の影響を懸念する声が広がっておりまして、また、放射性物質を含む浄水場発生土、下水汚泥や焼却灰などにつきまして、多くの自治体が対応に苦慮する中、先日、ようやく国から当面の取り扱いに関する考え方が示されましたが、抜本的な解決からはほど遠いものとなっております。
 これまでも都は、国に対し、九都県市首脳会議等と連携し、放射線の安全基準の設定などを緊急要望するとともに、都単独でも、放射性物質が検出された飲料水等に関する統一指針の策定等を求めてきたところでございます。
 都民及び事業者の安全・安心を確保するため、今月末から実施する国の施策及び予算に対する提案要求の中でも、モニタリング体制の充実強化及び対象方針の明確などにつきまして、最重点事項として盛り込み、改めて国に対して強く要求してまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 今後の財政運営についてでございますが、このたびの大震災は、都政を取り巻くあらゆる環境に根本的な変化をもたらすものであり、その対応は二十三年度にとどまらず、来年度以降も含めて息の長い取り組みとなると思っております。
 したがいまして、今後の財政運営におきましては、財政環境の先行きを見通すことが大変困難な中にありましても、まずは緊急対策を着実に実行し、現下の都民、中小企業が直面している危機に迅速かつ的確に対応すること、そして、高度な防災力を持つ首都東京の実現に向けた継続的な取り組みを、財政面からしっかり支えていくことが重要であるというふうに認識をしております。
 そのためにも、これまで培ってまいりました基金を初めとする財政対応力を計画的に活用するとともに、それを将来にわたり堅持していくことが必要でございます。
 また、こうした観点から、地道ではありますが、事業評価の取り組みを不断に行い、一つ一つの施策の実効性を高めるなど、都庁の自己改革を推進するこれまでの努力をさらに続けていかなければならないと考えております。
 また、このように堅実な財政運営に徹すると同時に、国に対しましては、地方消費税の引き上げを含めた地方税財源の拡充、そして、その議論の前提であります法人事業税の不合理な暫定措置の即時撤廃について、あらゆる機会をとらえて強く働きかけてまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、今後の被災地支援のあり方についてでございます。
 壊滅的な被害を受けた被災地が、本格的な復旧、復興を進めていくには、国はもとより、自治体や民間事業者等による全国レベルでの継続的な支援が必要でございます。
 東京は、電力や食料の供給等の面で被災地と深いつながりがあるため、他の自治体の先頭に立って、中長期にわたる支援体制を構築するとともに、都内民間事業者等とも緊密な連携を図り、技術やノウハウなどを最大限に活用して支援を行ってまいります。
 今後、具体的には、被災地の復興計画策定等に向けて、技術職員などを中長期で派遣するとともに、区市町村や民間事業者と共同で都内に瓦れきを受け入れるほか、被災地企業の受注回復に向けた販売活動などを後押しするなど、東京の持つ総合力を結集して支援に取り組んでまいります。
 次に、防災対応指針の策定についてでございます。
 今回の震災は、被災地における甚大な被害はもとより、都内でも、大量の帰宅困難者の発生といった直接的な被害をもたらしました。また、遠隔地での災害にもかかわらず、計画停電の実施による都民生活の混乱や、経済活動の停滞などの連鎖的な被害も発生をしております。
 こうした被害の状況は、従来の想定を上回るものであり、首都直下地震に向けた防災対策の一層の強化と遠隔地の大震災への対策の必要性が明らかになりました。
 今回の教訓を踏まえて、これまでの災害の概念をとらえ直し、東海、東南海、南海連動地震も視野に入れるなど、新たな視点からの対応を図るとともに、防災対策を再構築するため、本年十一月を目途に、東京都防災対応指針を策定してまいります。
 指針の策定に当たりましては、科学的な知見を有する専門家の助言も得て、帰宅困難者対策や施設の耐震化など、ソフト、ハード両面にわたる対策のレベルアップを図るとともに、都の対策にとどまらず、国、区市町村、事業者、都民などの取り組みも幅広く提言し、東京の防災力向上への道筋を早期に示してまいります。
 次に、発災時の情報通信についてでございます。
 今回の震災では、被災地において、電源の喪失が行政機関相互の情報連絡の途絶を招いたほか、都内においても、事業者の通信規制の実施に伴う携帯電話の不通などにより、家族との安否確認も困難な状況になりました。
 防災関係機関相互の通信の確保と都民が利用する情報通信基盤の強化は、発災時の迅速な応急復旧活動の実施と都民不安の抑制を図る上で不可欠でございます。
 こうした情報通信を取り巻く課題の解決に向け、通信事業者も含めた協議の場を早急に設置し、対策の検討に着手するとともに、今回の震災でとりわけ問題となった携帯電話事業者による安否確認手段の確保を含め、発災時の情報通信基盤の強化について国に強く働きかけてまいります。
 次に、震災時の帰宅困難者対策についてでございます。
 今回の震災におきまして、都は区市と連携して、帰宅困難者が一時的に待機する施設を開設いたしましたが、施設が不足する地域があったことや、帰宅困難者への情報提供や誘導が滞るなど、さまざまな課題が顕在化したところでございます。
 首都直下地震の発災により、交通機関や道路に被害が生じた場合、今回以上の混乱が起きると想定されます。このため、企業や学校などにおける施設内待機や鉄道事業者などの利用者保護など、安全な帰宅手段が確保されるまでの帰宅の抑制、行政と民間事業者の協力による一時待機施設の確保、家族との安否確認や、正確な情報提供に必要な情報通信基盤の確保など、対策を強化する必要がございます。
 あわせて、道路等の危険な状況がおさまってきた段階では、徒歩帰宅やバスなどの陸上輸送に加え、船舶による海上輸送も実施し、帰宅困難者が早期に帰宅できるよう取り組む必要もございます。
 こうしたことを踏まえ、都は、国、経済団体、鉄道事業者などと横断的な課題について検討する協議会を早期に設置し、行政や事業者の役割と責任を明確化するとともに、それぞれが連携して行う取り組みの具体化を図り、社会全体で取り組む総合的な帰宅困難者対策を策定してまいります。
 さらに、来年一月を目途に、協議会の検討を踏まえた帰宅困難者対策訓練を関係機関と連携して実施し、検証を行い、対策に生かしてまいります。
 次に、備蓄対策についてでございます。
 震災により生産拠点が打撃を受け、加えて広域物流網が遮断されたことに伴い、都内においても、食料や生活必需品、燃料など多くの物資が供給不足に陥りました。
 とりわけ燃料の確保につきましては、医療機関による救命救急、緊急通行車両による支援物資の搬入など、応急復旧活動を迅速かつ円滑に進める上で重要な課題でございます。
 今後、都は、燃料の確保を含め、震災時の物資の備蓄と調達のあり方について、国、自治体、事業者、都民の役割分担や首都圏の自治体における広域的な相互補完などの観点から広く検討を行い、対策の内容を本年十一月に策定する防災対応指針に盛り込んでまいります。
 最後に、震災対策における広域的な連携についてでございます。
 首都直下地震が発生した場合、都県域を超えて広範囲に被害が及ぶため、首都圏を構成する自治体同士が連携して対策を講じる必要がございます。このため、九都県市では、自治体間で物資の支援や職員の派遣等を行うことを目的とした相互応援協定を締結するなど、災害時の連携強化に努めてまいりました。
 今回の震災の教訓を踏まえ、今後は、都内区市町村の連携強化はもとより、首都圏内の広域応援として、緊急物資の受け入れに備えた拠点と輸送ルートの整備など、九都県市間のさらなる連携強化を図ってまいります。
 さらに、首都圏内では対応し切れない応急救護やライフラインの復旧支援などについて、首都圏を超えた自治体と連携していくなど、多様な連携に向けた検討を進めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、都内旅館等での避難者の受け入れについてであります。
 都では、四月二十四日から、災害救助法に基づき、被災県からの要請のありました避難者を都内の旅館等へ受け入れております。この受け入れは、応急仮設住宅等により安定的な生活環境が確保できるまでの間、宿泊及び三食を無料で提供するものであります。六月二十一日現在、東京都ホテル旅館生活衛生同業組合の協力によりまして、延べ二百五十三人の避難者を受け入れております。
 また、これに必要な経費の負担につきましては、国の基準では一日当たり五千円が上限となっておりますが、都内の物価水準を踏まえるべきとのご要望をいただき、都は独自に一日当たり千円を加算することといたしております。
 避難が長期化している状況のもとで、避難者の方々に、生活環境の整った施設を利用していただくことが重要となっており、旧グランドプリンスホテル赤坂の閉鎖にも対応する必要があることから、引き続き旅館等での受け入れを行ってまいります。
 次に、被災地の企業に対する支援についてでありますが、ご指摘のとおり、被災地の企業が直面している状況を正確に把握し、的確な支援策を実施することが重要であります。そのため、都は、五月上旬に現地調査を行って、企業へのヒアリングなどを通じて課題やニーズを確認いたしました。
 調査の結果、被災地では営業所やオフィスの使用ができなくなった事例が多いことから、事業再開の場所として、都内のインキュベーション施設や、地方の会社が東京で営業の拠点を確保できるよう支援するブリッジヘッド事業の施設を、被災地の企業に無料で提供いたします。
 また、取引先の被災により受注が減少した企業が多い実態を踏まえ、被災地の会社が、都内の中小企業と取引を行うきっかけをつくるための現地商談会を、都の主催により、岩手、宮城、福島の各県で行うことといたしました。これらの取り組みを通じて被災地企業の状況に即した的確な支援を行ってまいります。
 次に、被災した現地工場の復興支援についてであります。
 被災地域は、国内外の製造業に幅広く部品を供給するなど、我が国のものづくり産業において重要な拠点となっております。都内の中小企業も、こうした被災地に工場を持っており、その再建がおくれることは、被災地の復興が滞るだけでなく、東京や我が国全体の産業の再生に支障が生じるものと考えます。
 このため、都は、被災地で生産を行う都内中小企業が、工場の建物や設備の復旧に取り組む場合に、必要な費用の一部を助成する制度を緊急的な措置として、今年度に限り実施することといたしました。
 具体的には、被災した企業に中小企業診断士等の経営の専門家を派遣し、操業再開のための計画づくりをアドバイスするとともに、計画に基づく仮設工場等の整備経費の半分を、八千万円を上限として助成する仕組みとしております。
 被災地では、現在、地元の自治体が復興に向けて最大限の努力を行っておりますが、こうした都の支援が加わることで、被災県の産業の復興と経済の回復が迅速に実現するものと考えております。
 次に、被災した産地の農産物等の販売についてであります。
 被災産地の農産物などの販売を通じ、震災や風評の被害を受けた地域を支援していくことは重要であります。こうした取り組みをさらに促進するためには、販売活動の企画や実施について高い能力を持つ中小企業やNPO法人に加え、小売店を数多く抱える商店街の活用を図ることが効果的であります。
 このため、都では、これらの農産物等の販売を効果的に行う意欲と力のある中小企業やNPO法人等の取り組みに要する経費の三分の二を対象に、今月十八件の助成を決定いたしました。また、空き店舗を活用して販売を行う商店街に対しまして、必要となる経費の三分の二を助成する新たな制度を立ち上げることを予定しております。
 今後とも、こうした取り組みを適切に実施し、農産物等の販売を一層促進するなどにより、被災地等の復興につなげてまいります。
 次に、中小企業の発電用設備の導入支援についてであります。
 今回の震災によりまして、電力の供給能力が落ち込み、中長期的な電力不足が懸念される中、都内中小企業の事業活動の継続に向けた都の支援が重要となっております。都内中小企業にとりまして、まず電力需要の抑制が必要でありますことから、都は会社の経営向上に資する節電セミナーや、専門家によるアドバイスを通じ、効果的な対応策の導入を支援することとしております。
 しかしながら、生産活動に特に多くの電力を必要とし、節電の努力に限界がある中小企業では、自家発電設備の整備が必要となります。こうした企業に対しましては、電力や経営に詳しい専門家を派遣し、発電設備に適用される法令やランニングコスト等を含め、個々の中小企業の実情に応じた具体的な計画づくりについて、きめ細かくサポートいたします。
 その上で、自家発電設備の導入には、企業に大きな資金負担が生じるため、都が経費の助成を行うことといたしました。
 具体的には、百億円の基金を設けまして、中小企業が発電設備の早期導入に向け、今年度中に申請を行う場合には、二千万円を上限に三分の二を助成いたします。また、中小企業がグループを組み共同で発電設備を導入する場合には、今年度中に申請のあった案件につきまして、五億六千万円を上限に四分の三を助成することといたしました。
 こうした取り組みを通じて、都内中小企業が生産活動等に必要な電源の早期確保を図り、安定した事業運営を進めることができる経営環境をつくり上げてまいります。
 次に、買い物弱者に対する商店街の役割についてであります。
 商店街は、地域の買い物客に日常生活で必要な商品などを提供する商業活動の拠点であるとともに、地域コミュニティの中心として、住民にとって日々の暮らしを安心して送るために役立つ情報やノウハウを持っております。
 一方、近年、買い物をする場合に、制約や支障を生ずる買い物弱者の問題が取り上げられております。ご指摘のように、昨年、経済産業省におきまして報告書がまとめられましたが、過疎地域などを含めた全国調査であるため、都内において、この内容がそのまま当てはまるか検討が必要であります。
 そこで、この問題につきましては、地域の実情に応じた区市町村の取り組みを基本としつつ、都としても買い物弱者の正確な実態の把握に向けて、必要な調査を実施したいと考えております。その上で商店街の活用方法について検討してまいりたいと考えております。
 次に、震災の被害を受けた都内中小企業の資金繰り支援についてであります。
 ご指摘のとおり、今回の震災による影響は、風評被害を含めて広範囲に及んでおります。このため、都は、間接被害を受け経営に支障を来している都内中小企業にも対応した制度融資として災害緊急を創設いたしました。
 この新たな融資メニューでは、国の保証制度への対応に加え、都独自の取り組みとして最優遇金利を適用するとともに、全事業者に対して保証料の二分の一を補助するなど、手厚い措置を講じております。さらに、既往債務の借りかえにも適切に対応してまいります。
 また、直接被害を受けた中小企業の事業再建を目的とする災害復旧資金融資につきましては、震災直後に速やかに取り扱いを開始しておりますが、さらに据置期間を延長するとともに、一年間の利子補給を行い、利用者の負担軽減を図ることといたしました。
 このような制度融資の拡充を図るため、補正予算において、融資目標額を過去最高レベルの二兆二千億円に引き上げるとともに、預託金や信用保証料補助等に要する経費三百九十一億円を計上しております。こうした取り組みにより、震災により直接、間接の被害を受けた都内中小企業の資金繰り支援に万全を期してまいります。
 最後に、訪日外国人旅行者の回復と観光産業の振興についてであります。
 東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故の影響によりまして、訪日外国人旅行者数は大幅に減少しました。いうまでもなく、観光は多くの産業に経済波及効果をもたらしており、旅行者数の減少が、東京はもとより、日本全体にとって大きなマイナスとなっております。この危機的状況からの回復に向け、都は、国、民間と連携し、訪日外国人旅行者の回復に強力に取り組んでいく必要があると認識しております。
 そこで都は、まずは正確な情報発信を、次いで世界各国の旅行事業者等に積極的に働きかける取り組みを行うことといたしました。
 具体的には、震災の直後から、東京の観光ウエブサイト等によりまして、放射線量や東京の日常の風景等の最新情報をわかりやすく発信しております。
 次いで、世界各国の旅行事業者等への働きかけとして、今般、知事から、四十の国と地域約五千名の海外の旅行事業者等に向けてレターを発出し、東京が既に日常を取り戻していること及び旅行者を歓迎する旨を直接訴えております。
 今後さらに、八月から秋にかけまして、国や民間事業者と連携して、アジア及び欧米のメディア、それから旅行事業者を東京に招き、実際の東京を体験してもらい、正確な記事の掲載及び旅行商品の販売を促進してまいります。あわせて、東京で開催が予定されております国際会議の機会をとらえまして、東京の安全性や魅力をPRしてまいります。
 今後とも、訪日外国人旅行者の誘致に全力を挙げて取り組むなど、旅行者の回復に向けまして、都内の観光産業の振興を図ってまいります。
   〔生活文化局長並木一夫君登壇〕

〇生活文化局長(並木一夫君) 四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、東日本大震災により経済的困難に陥った生徒の授業料等を減免した専門学校等に対する支援についてでございます。
 文部科学省が五月初旬に実施いたしました調査によれば、東日本大震災によって生徒の家計が急変し、経済的支援が必要と見込まれる専門学校等の生徒数は、全国で約千九百人で、そのうち東京都内には六百人以上の生徒がいると推定されております。都内の専門学校等においては、こうした生徒が経済的理由により学業を断念することがないよう、独自に授業料等の減免を行っているところもございます。
 都は今後、国の動向を踏まえ、これらの専門学校等への支援について、適切に対応してまいります。
 次に、私立学校の耐震化に対する支援についてでございます。
 東京の私立学校は、東京の公教育において非常に大きな役割を担っており、児童生徒等の安全を確保するため、その校舎等の耐震化を促進することは、ご指摘のとおり極めて重要でございます。
 都はこれまでも、耐震化工事への補助を行うなど、積極的な支援を行ってきたところでございますが、東京都内の私立学校における耐震化率は、平成二十二年四月一日現在で約七三%となっており、今回の大震災を教訓に耐震化のさらなる促進が図れるよう、これまでにも増して各学校に耐震化を強く働きかけていく必要がございます。
 このため、今回の緊急対策におきまして、耐震診断や耐震化工事の補助学校数を大幅に拡大することとし、また、新たに建築士を学校現場に派遣し、各学校の実情に応じた耐震化の方法等をアドバイスすることなどにより、私立学校における耐震化計画の策定と実施を支援することといたしました。これらにより、私立学校に通う児童生徒等の安全を確保してまいります。
 次に、私立学校における災害発生時の対応力強化に向けた支援についてでございます。
 今回の大震災では、地震による建物の倒壊や火災よりも、津波により多数の犠牲者が出たことや、都内においても長時間にわたり交通機関がストップし、児童生徒や保護者が帰宅困難となるなど、これまで想定されていなかった課題が明らかになりました。
 都は今回の緊急対策におきまして、こうした課題を収集、調査分析し、効果的な対応策をリスト化し各学校に示すことにより、災害時の対応マニュアルの見直しを支援してまいります。
 同時に、単年度事業でございました緊急地震速報の整備に対する補助を今年度も実施することとし、また新たに被災時の帰宅困難時のための備蓄物資購入等への補助を行うことといたしました。これらにより、私立学校における災害時の対応力強化を促進してまいります。
 最後に、町会、自治会活動の活性化と地域における防災への取り組み支援についてでございます。
 東日本大震災においては、隣近所がお互いに声をかけ合うことにより高齢者を避難させることができた事例や、支援の手が届くまでの間、協力し合いながら、避難生活を支え合った事例などが伝えられており、地域コミュニティを育てていくことの重要性が改めて明らかになりました。
 都はこれまでも、地域の結びつきを強化するために、地域の底力再生事業助成により、町会、自治会の自主的な活動を支援してまいりました。今回、多くの都民が地域のきずなの大切さを再認識したこの時期を逃すことなく、地域の活性化の効果を上げた助成事例をわかりやすく紹介するなどにより、さらなる制度の普及に努めてまいります。
 あわせて、各町会、各自治会が防災事業について積極的に事業助成を活用できるよう、現行制度の運用についても改善を図ってまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

〇中央卸売市場長(岡田至君) 被災産地に対する中央卸売市場による復興支援のあり方についてのご質問にお答えいたします。
 今回被災した地域は、我が国有数の農水産物の産地であり、また、都におきましても、青果物の入荷量が四割以上を占めるなど、安定的な食料供給を維持する上で欠かせない産地であることから、都が復興を支援することは、都民にとって極めて重要であります。
 また同時に、被災産地への支援は、東京の市場が首都圏など広域的な食料供給を担うことから、東京のためだけでなく、まさに首都圏全体の安定的な食料供給に寄与するものでもあります。
 こうしたことから、中央卸売市場は、全庁的な連携のもと、都民の安全・安心の確保とともに、被災産地の支援に取り組んでまいりました。
 具体的には、まず、放射性物質が暫定規制値を超えた農産物等につきまして、国に先駆けて市町村単位という必要最小限度での出荷自粛を求めるなど、被災産地からの入荷物の安全性を確保する体制を整えました。
 その後、国は県単位という大まかな出荷規制を実施いたしましたが、風評被害を助長するおそれがあったため、都は、被災地や首都圏の知事とともに、規制の改善を国に働きかけ、市町村単位とするきめ細かい規制に改めることができました。
 さらに、市場に入荷しても風評被害で返品が生じたため、代金回収が滞り、その結果、産地への支払いが困難となる市場の決済機関に対して緊急融資を行い、被災した産地への支払いを確保いたしました。
 この間、被災産地の出荷を妨げる風評被害の解消を目指しまして、入荷物の安全・安心を都民に積極的にPRする産地支援イベントを、業界の協力のもと各市場で十回開催し、売上金など一千万円を超える義援金を被災地へ寄附いたしました。
 今後は、被災産地の生産活動を長期的に支えるため、生産者への出荷奨励金に都の補助金を上乗せするほか、絶えず変化する被災地側の情報を的確にとらえ、被災産地が必要とする支援を引き続き実施してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、省エネ節電と経済活性化の両立に向けた取り組みについてでございますが、都では、今般の電力危機を単に克服すべき困難な課題としてのみとらえるのではなく、省エネルギー投資とエネルギーをつくり出す創エネルギー投資を加速し、東京における新たな環境ビジネスを活性化する好機ともとらえ、都内企業の取り組みを支援していく考えでございます。
 既に店舗の照明をすべてLEDに切りかえるといった省エネ投資や、工場に自家用ガスタービン発電機を設置するなどの創エネ投資が活発になってきております。また、家庭用の太陽エネルギー機器やコージェネレーション機器の普及の動きも加速してきております。
 今回のプログラムには、こうした取り組みが円滑に進むよう、関係局とも連携して、設備の導入経費を助成する制度の創設や、創エネ機器導入への支援を盛り込んでおります。
 今後とも、民間事業者との共同によりまして、東京における低炭素型都市の実現と経済の活性化を両立する施策を強力に推進してまいります。
 次に、エネルギーの利用と供給のあり方の検討についてでございますが、都はこれまで、世界で最も省エネルギー型の都市の実現を目指しまして、キャップ・アンド・トレード施策や、中小規模事業所を対象とする地球温暖化対策報告書制度などの、独自の先駆的な施策を展開してまいりました。
 しかしながら、東日本大震災に伴う発電所の被災により、電力供給力の不足を補うための緊急避難的な措置といたしまして、石炭や石油を燃料といたします老朽化した火力発電所の再稼働が進められたために、CO2排出量の増加が懸念される状況となっております。加えて、遠隔地に依存した首都圏におけるエネルギー供給体制の脆弱性が明らかになってきております。
 こうした状況を受けまして、これまでの施策の成果を最大限に生かしつつ、災害時のリスクにも強く、同時にCO2排出量が少ないエネルギーの利用と供給を進める施策のあり方について、直ちに検討を進めることが必要と認識しており、そのための体制の強化を図っていく考えでございます。
 加えて、電力需給対策推進本部を通じて全庁横断的に電力不足問題に対応するとともに、環境審議会における専門家の議論を来月いたしまして、低炭素・高度防災都市の実現に向け、エネルギー供給の確保と低炭素化を両立する新たな環境エネルギー政策の構築に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 七点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、病院の電力確保に係る支援についてでございますが、都は、大規模災害発生時に重症患者の受け入れ拠点となります災害拠点病院に対しまして、非常時の電力確保等を義務づけ、自家発電設備の整備について支援を行ってまいりました。
 一方、今回の計画停電では、多くの病院で十分な電力確保が困難となり、救急患者の受け入れを制限するなど、医療提供体制に大きな影響が生じております。
 このため、新たに創設する支援制度では、電力不足の長期化や大規模災害の発生も視野に入れ、緊急対策として、自家発電装置の新規整備や増設に取り組むすべての病院に補助を行うことといたしております。
 今後、病院の電力確保対策を促進するため、本制度の活用を積極的に働きかけてまいります。
 次に、人工呼吸器を使用している在宅療養患者への電力不足に備えた支援についてでございます。
 都はこれまで、保健所等を通じまして、在宅療養患者に対しまして、災害時の備えのポイントを記載した手引を配布するほか、停電時に東京電力から電話連絡を行う仕組みにあらかじめ登録するよう働きかけてまいりました。
 また、今回の計画停電実施時には、保健所から在宅療養患者に対しまして、個別に電源確保の状況を確認し、必要な情報提供を行っております。
 さらに、この夏には突発的な停電も懸念されていることから、電源確保に万全を期すために、患者の実情に応じた支援をより一層強化いたします。
 現在、在宅療養患者の使用機器の種類やバッテリーの保有状況等の実態を詳細に把握する調査を行っておりまして、その結果も踏まえ、今後、医療機関を通じた非常用バッテリー等の無償貸与を新たに実施し、停電時においても、安全・安心な在宅療養生活の確保を図ってまいります。
 次に、高齢者の熱中症対策についてでございますが、高齢者の熱中症を予防するためには、特にひとり暮らしなど孤立しがちな方に対して、熱中症から身を守るための正しい情報を届け、適切な対応がとれるよう、地域で見守り支えることが重要でございます。
 都はこれまでも、民生委員や自治会、町会などによる高齢者の見守りを行う区市町村に対しまして、包括補助を通じて支援いたしているほか、昨年度からは、シルバー交番設置事業により、地域における支援拠点の充実を図っております。
 これらに加えまして、ことしの夏は、さまざまな地域の担い手による高齢者家庭への個別訪問や商店街の空き店舗などを活用した、涼をとれる交流スペースの設置などに対する補助制度を新たに設けまして、熱中症対策に取り組む区市町村を支援してまいります。
 また、重症化した場合のセーフティーネットといたしまして、都立病院及び公社病院において、緊急病床を確保いたします。
 次に、病院の耐震化についてでありますが、都は、大規模災害時においても継続的に医療を提供できますよう、災害拠点病院や救急医療機関を対象として、国制度に加え、都独自の支援策を実施しており、これまでに約八割の施設で耐震化の取り組みが進んでまいりました。
 こうした取り組みを一層促進するため、これまで補助要件としておりました新築建てかえ時の病床削減義務を撤廃するなど、より利用しやすい制度を創設することとしました。
 また、今回の大震災を踏まえまして、災害時にも地域の病院が個々の医療機能をできる限り確保できるよう、補助対象をすべての病院に拡大いたします。これらの取り組みによりまして、病院の耐震化を促進し、災害時の医療提供体制の強化を図ってまいります。
 次に、都内被災世帯への支援策についてでありますが、今回の東日本大震災におきます都内の住宅被害の状況は、六月十三日現在、全壊十一棟、半壊百二十八棟となっておりますが、お話のように、被災者生活再建支援法の支給要件を満たしておりません。
 東日本大震災は、広域にわたり甚大な被害を及ぼしており、都道府県や区市町村ごとに対応するのではなく、国が統一的な対応を行うべきであります。
 そのため、都としては、同一の災害で被災したすべての地域が支援の対象となるよう、法の見直しを国に提案要求してまいります。見直しが行われるまでの間の被災世帯への支援につきましては、地元自治体の意向も踏まえ、連携しながら、今後具体的に検討してまいります。
 次に、災害時における障害者への支援についてでございますが、都はこれまで、要援護者の情報の把握、地域住民による支援体制づくりなどの手法を示した指針を策定し、区市町村における避難支援プランの策定や、要援護者名簿の整備を支援するなど、障害者の安全対策に取り組んでまいりました。
 お話のように、災害時において個々の障害者の状況を的確に把握し、よりきめ細かな支援を行うためには、こうした取り組みに加えまして、都や区市町村がピアカウンセリングなど独自の支援ノウハウや障害者同士のネットワークを持つ団体等の協力を得ることが有効であります。
 今後、障害者団体等が参加する会議体などを活用しながら、災害時の障害者支援について意見交換を行い、協力体制のあり方など、連携の方策について積極的に検討してまいります。
 最後に、都立府中療育センターの改築についてでございますが、今般策定をした基本計画では、入所施設として質の高い療育を提供するとともに、在宅療育の拠点として、地域で暮らす重症心身障害児者への支援をより一層充実することとしております。
 具体的には、従来の床面積の一・五倍を確保いたしまして、入所者の生活の質の向上を図りますほか、ニーズの高い短期入所や通所事業の受け入れ体制を拡充いたします。
 加えて、多摩メディカルキャンパス内にある病院施設と連携をいたしまして、入所者の重度化に適切に対応いたしますとともに、都立多摩療育園と機能を一体化し、一般外来を実施いたします。
 また、現在の五階建ての建物を低層化し、非常口を多方面に設けますとともに、自家発電設備や備蓄スペースを拡充するなど、災害時における重症心身障害児者の療育拠点としての機能を一層強化してまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

〇水道局長(尾崎勝君) 東日本大震災を踏まえた水道施設の整備のあり方についてでございますが、水道局ではこれまで、平常時はもとより、震災時等においても可能な限り安定給水を確保するため、八ッ場ダム等の水源確保を初め、送配水管ネットワークの構築や施設の耐震化などの取り組みを進めてまいりました。
 しかし、今回の震災では、ご指摘のように、震源から遠く離れた東京の水道においても、放射性物質による水道水への影響や計画停電による断水、濁水の発生など、過去に経験したことのない二次的災害により大きな被害を受けました。
 そのため、今後の水道施設の整備に当たりましては、これまでの経験や想定では考慮し得なかった新たな安全度を加味した水源確保や施設整備の考え方の創出が必要であると考えております。
 こうしたことから、現在検討を進めている、水道施設の再構築を考える会におきましては、渇水や気候変動等のリスクに、大規模な自然災害や長期的、複合的な災害といった今回の震災の教訓を踏まえた新たなリスクを加え、議論を幅広く展開しております。
 水道局では、この考える会の提言を受け、首都東京にふさわしい水道施設の再構築に向けた基本構想を平成二十三年度内に策定し、将来にわたり都民の安全・安心を守るべく、より安全度の高い水道システムの構築に向けて邁進してまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

〇交通局長(金子正一郎君) 都営地下鉄に関する三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、直下型地震への対策についてですが、交通局では、平成七年一月に発生した阪神・淡路大震災を受けて、施設の総点検を実施し、同規模の直下型地震にも耐えられるよう、国の基準に基づき、高架部及び橋梁の橋脚やホームの中柱の補強、橋げたの落下防止装置の設置など、耐震補強工事をこれまでに完了しております。
 今回の地震では、こうした取り組みもあって、都営地下鉄の構築物には被害が発生しなかったため、速やかに運行を再開することができました。
 しかしながら、仙台市営地下鉄の高架部などで被害が発生したことから、都営地下鉄においても、独自に、高架部などの施設の耐震性を改めて検証した上で、安全性をより高めるための耐震対策を実施してまいります。
 次に、地震が発生した際の乗客の安全確保と運行再開についてですが、大規模な地震が発生した場合には、緊急地震速報等を受け、一たん列車を停止させ、安全を確認した上で、次の駅まで徐行運転し、乗客を駅構内の安全な場所へ避難誘導します。
 次いで、被害状況を把握し、運行再開に向けた準備を進めることになりますが、都心部を走る都営地下鉄は、特に早期の運行再開が期待されていることから、地震計を地下鉄線内十六カ所に設置し、エリアごとの震度を詳細に把握することで、必要な点検を短時間で効率的に実施できる体制を整えております。
 なお、今回、運行再開に当たりましては、混乱を避けるため、鉄道各社と再開時刻を調整するとともに、警察の協力のもと、駅構内の乗客の安全確保に努めました。
 最後に、今回の経験を踏まえた帰宅困難者対策についてですが、地震発生当日は、運行再開の前から都営地下鉄の各駅に帰宅困難者が集中したため、一部の駅では構内が多くの人であふれ、かなりの混乱が生じました。
 この経験から、交通機関の運行状況や駅周辺の一時待機施設などに関する情報を迅速、的確に提供し、適切な行動をとっていただけるようにすることが課題と考えております。
 今後、こうした点を踏まえ、各駅の改札口に設置してあります列車運行情報表示装置等を更新し、各地の被害状況や交通機関の運行状況を初め、災害に関する情報を今まで以上に幅広く提供するなど、帰宅困難者への適切な情報提供の手法を検討してまいります。
 また、帰宅困難者対策は、社会全体で取り組む必要があることから、区市町村や関係機関とも連携し、帰宅困難者の安全を確保できるよう、鉄道事業者としての役割を適切に果たしてまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、水害対策のハード面の取り組みについてでございますが、都はこれまで、沿岸部や東部低地帯において、スーパー堤防の整備や水門、排水機場の耐震補強を行うなど、耐震性の向上や高潮に対する安全性を高めてまいりました。
 このような中で、国内観測史上最大のマグニチュード九・〇の大地震が発生したことを踏まえ、関係局で連携して緊急に取り組むべき対策について検討を開始いたしました。
 具体的には、今回発生した津波の調査や分析などを行うとともに、地震に対しては、防潮堤や水門、ポンプ所などのインフラ点検を行い、被害を受けやすいと考えられる箇所を洗い出してまいります。
 さらに、施設の耐震性や耐水性の向上策について、学識経験者を含む技術検証委員会から年内に提言を受ける予定でございます。
 今後は、この提言に基づき、関係各局が連携して必要な施策を速やかに実施してまいります。
 次に、中小河川における新たな整備のあり方の検討についてでございますが、首都東京を水害に強い都市とするためには、中小河川の整備を効果的、効率的に進め、早期に安全性を向上させていくことが重要でございます。
 このため、都は、今月初めに専門家による検討委員会を設置し、近年の一時間に一〇〇ミリを超える局地的かつ短時間の集中豪雨も視野に入れ、中小河川における今後の整備のあり方について検討を開始いたしました。
 この検討会では、区部と多摩の地域特性などの違いを分析し、中小河川における新たな整備水準を議論するとともに、昨年の緊急豪雨対策において有効性を確認した、流域を超えて相互に活用できる地下調節池をさらに広域的に配置することや、地下調節池と下水道管の接続など下水道施設と連動した効果的な水害対策について、平成二十四年夏までに報告書として取りまとめます。
 今後とも、安全で安心なまち東京の実現を目指し、中小河川の整備に全力で取り組んでまいります。
 最後に、外環整備に対する今後の都の取り組みについてでございますが、我が国の国際競争力を高め、経済を再び成長軌道に戻すためには、交通物流ネットワークのかなめとなる外環の早期完成が必要不可欠であります。
 東日本大震災では、発災後二十時間で東北道が復旧されるとともに、被災が軽微であった首都圏の高速道路を利用して、西日本からの緊急物資や救援隊が被災地に向けて迅速に移送されました。改めて、高速道路の重要性が明確になりました。
 一方、首都圏が直接被災した場合には、三環状道路を初めとする首都圏の高速道路ネットワークが相互補完的にターミナル機能を維持して、日本の交通物流の東西分断を避けなければなりません。
 このため、国全体の危機管理上からも、三環状道路で最も整備がおくれている外環事業を加速し、首都圏の高速道路ネットワークを一刻も早く完成する必要があります。
 本年四月に、外環は本線工事のための準備工事費が予算計上され、新しい局面を迎えております。地元では、早期整備に対する期待が一層高まっており、当初予算百二十五億円では、これらに十分こたえることはできません。
 都は、国の補正予算及び来年度の概算要求において、必要な事業費の確保がなされるよう国に強く求め、外環の早期完成を全力で目指してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 東京港の防災に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京港の防災機能の点検、見直しについてでありますが、都はこれまでも、国内最大級の伊勢湾台風や想定の津波高が最も大きい関東地震を対象として、高潮や地震、津波に対する水害対策を実施してまいりました。
 今回の震災後、直ちに局内に地震・津波対策会議を設置し、防潮堤、水門及び排水機場などの海岸保全施設の総点検を開始したところであり、この中で、災害時における通信手段の強化や水門等の電気、機械設備の機能確保など、早急に取り組むべき課題を明らかにするとともに、技術検証委員会において専門家の意見も聞きながら、具体的対策を進めてまいります。
 また、東京港で発生した津波について詳細な分析を行うとともに、国の中央防災会議での検討結果なども踏まえ、必要な見直しを行い、東京港の防災機能の一層の強化に取り組んでまいります。
 次に、震災時における物流機能の確保についてでありますが、首都圏が被災した場合には、緊急物資の迅速な輸送を確保するとともに、大都市としての経済活動を停止させないことが不可欠であります。
 そのため、耐震強化岸壁や、ふ頭と背後地とを結ぶ緊急輸送道路の整備を着実に進めることが極めて重要であります。
 現在、耐震強化岸壁については、品川ふ頭など六バースを整備中であり、また、緊急輸送道路については、橋梁の耐震補強を進めるとともに、今年度の完成を目指し、臨海道路Ⅱ期事業の整備を進めております。
 今後、中央防波堤外側地区の新たな国際コンテナふ頭や臨港道路南北線などの早期事業化を図り、震災時においても十分な物流機能を発揮できるよう、全力を挙げて取り組んでまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 地震、津波などに対する下水道施設の機能確保の取り組みについてでございますが、今回の大震災で東北地方沿岸部の下水処理場が機能停止したことなどを踏まえ、東京湾岸部に立地しております水再生センターが地震、津波などで被災した場合においても必要な水処理が行えるよう、構造物の補強や地盤改良などにより、水処理の主要施設であります沈殿池や処理をした水を河川に放流する放流渠、下水道施設周辺の護岸などの耐震化を進めてまいります。
 これらの対策を進めるに当たりましては、計画の前倒しを図りますとともに、下水道施設の再構築に合わせて効率的に実施をしてまいります。
 さらに、緊急時における水再生センター間の相互のバックアップ機能を確保する観点から、ネットワーク化についても検討してまいります。
 また、ポンプ所については、ポンプ運転による排水機能が維持できるように、豪雨時にも電気設備が浸水しないための対策を行ってまいりましたが、今後は、さらに大規模な地震、津波、高潮への対策を検討してまいります。
 これらの取り組みによりまして、下水道の基幹的施設であります水再生センターやポンプ所の安全性や機能をより一層高めてまいります。
 次に、下水道施設の液状化対策についてでございます。
 これまで、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震などの教訓を踏まえまして、水再生センターやポンプ所、下水道管などの耐震化に取り組んでまいりました。
 今回の震災では、液状化などにより水再生センターや下水道管の一部で被害が見られたものの、下水道サービスの提供に支障はございませんでした。
 今後は、関東地方の広い範囲で発生した液状化被害を踏まえまして、下水道管とマンホールの接続部の耐震化のスピードアップと、マンホールの浮上抑制対策の実施地区の拡大を図ってまいります。
 具体的には、マンホールとの接続部の耐震化は、避難所や災害拠点病院などに指定をされております約二千五百カ所を対象に進めておりますが、計画を二年前倒しをして、平成二十五年度の完成を目指してまいります。
 また、マンホールの浮上抑制対策は、緊急輸送道路など約五百キロメートルを完了しておりまして、引き続き今年度から避難所などへのアクセス道路に対象を拡大し、実施をしてまいります。
 さらに、これらの取り組みにつきましては、発災時に多くの帰宅困難者が滞留するターミナル駅周辺などの下水道機能を確保する観点から、対策エリアの拡大に向けた検討に着手をいたします。
 このほか、下水道管内に土砂が流入することを防止する耐震化技術の開発とその実用化を早急に進めるなど、下水道施設の液状化対策を視野に入れた、より一層の耐震化に鋭意取り組んでまいります。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

〇消防総監(新井雄治君) 東日本大震災を踏まえた消防力と地域防災力の充実強化についてでありますが、このたびの震災を教訓として、今後東京に起こり得る事態を考慮した対策を考えていくことが重要であると認識をしております。
 東日本大震災においては、津波被害により建物などに取り残された住民の救出救護や、地元消防本部、消防団と連携した大規模火災の消火、放射線により活動時間や手段が制約された核燃料プールへの放水など、かつてない消防活動を実施展開いたしました。
 こうした中、浸水地域からのヘリコプターによる救助活動や災害事象に応じたハイパーレスキュー隊の活動、さらには、地域に根差した即応性の高い消防団の活動は極めて有効であったことから、これらの活動をさらに強化するための装備資器材について早期に整備するよう、東京緊急対策二〇一一に反映させました。
 今後は、現地調査結果から得られる教訓を踏まえ、ハイパーレスキュー隊など消防部隊や消防団活動の強化、必要な装備資器材の整備などについて幅広く検討し、引き続きその充実に努めてまいります。
 また、都内で発生した帰宅困難者の滞留や建物被害等の実態を踏まえた事業所に対する指導を強化するとともに、都民に対しては、自助、共助の理念に基づき、災害の実態に応じた避難のあり方や災害時要援護者への対応、長周期地震動への備えなどにつきまして、防災指導及び訓練をより一層充実させ、地域防災力の向上を図ってまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 都立病院、公社病院の災害時における診療機能の確保についてでございます。
 東日本大震災で被災した病院の状況から、診療機能を継続するためには電力の確保は極めて重要であるとの認識に立ち、緊急対策として、耐震性が高い中圧ガスを燃料とした自家発電システムを導入強化することで、電力供給の多様化、分散化を図ってまいります。
 このことにより、災害時や停電など不測の事態には、非常用発電機と併用することで、非常時の備えをより一層強固なものとしてまいります。
 また、災害時の通信手段としては、これまでの防災行政無線に加え、災害時でも信頼性の高い衛星通信端末を導入して、インターネット機能を備えるなど、通信機能の多重化を図り、災害時の初動態勢の確保や各関係機関との情報連絡体制を強化してまいります。
 さらに、災害時の即応態勢を強化するため、今回の震災で起こったさまざまな事象を参考に、必要人員、薬品、診療材料の状況を総点検し、災害時においても継続的な医療を提供する都立病院災害時事業継続計画、BCPを検討し、病院ごとの診療特性に合わせた計画を策定いたします。
 今後とも、災害時の病院機能をさらに強固なものとして、都民の生命を守るため全力で取り組んでまいります。

〇副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後五時四十分休憩

   午後五時五十八分開議

〇副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 六十二番谷村孝彦君。
   〔六十二番谷村孝彦君登壇〕

〇六十二番(谷村孝彦君) 石原都政の四期目のスタートに当たり、都議会公明党を代表し、都政の喫緊の諸課題及び東日本大震災後の東京の都市力強化に向けた取り組みについて質問いたします。
 初めに、東日本大震災の犠牲となられました方々に心から哀悼の意を表するものであります。
 震災後、都議会公明党は被災各県に調査団を派遣してまいりましたが、被災者の皆様に対する支援、被災地の復興支援のために今後とも全力で取り組んでまいりますことをかたくお誓い申し上げるものであります。
 特に、都民生活を支えてくださっているのは福島県を初め、地方の発電所であり、地方の食料、地方の水、サプライチェーンなど地方の技術であります。
 京都大学の中西寛教授の言葉をかりれば、今回の災害では、東京が復活して地方を救うのではなく、地方が復活して東京が救われるのであります。
 未曾有の巨大地震、大津波、原子力発電所事故の中で日本人の忍耐強さや礼儀正しさ、必死に他人を助けようとする姿は海外から称賛されました。
 また自衛隊や警察、消防の取り組みに対する被災者からの尊敬と感謝の声も大きく、加えて多くの若者が被災地で復旧事業やボランティア活動に取り組む姿も大いに評価されております。
 しかし本来、国民の先頭に立つべき政府の大失態は目を覆うばかりであります。三カ月が経過した今なお、災害破損物の処理は遅々として進まず、政府、とりわけ菅首相の初動の振る舞いが原発事故の深刻さを招いたことは否めない事実であります。
 フランスのルモンド紙には、くだらない政府のもとで国民はよく頑張っているなどと書かれ、政治の無策が招いた人災との批判は日増しに強まっております。
 一昨年来、誤った政治主導なるものが国に蔓延しておりますが、今こそ真の政治主導の発揮が望まれております。
 震災発生直後から強力なリーダーシップで迅速な被災地支援を進めてきた石原知事の所見を伺います。
 大地震、原発事故という国難に見舞われた今日、多くの学者などが改めて注目しているのが英国の歴史家アーノルド・トインビー博士の挑戦と応戦の理論であります。
 これは挑戦、すなわち自然環境の激変や戦争などの試練や困難に対して、いかに応戦するかで文明は成長もし、滅びもするという歴史の法則を示しております。
 トインビー博士の唱える歴史の法則に従うならば、試練を乗り越えてこそ未来はあります。今回の大地震、大津波による甚大な被害、原発事故によるエネルギー不足に対して我々がいかに応戦するのか、その道筋を明快に指し示してリードしていくことこそが政治に求められております。
 とりわけ東京は、自然を征服することで豊かさを求めてきた現代文明の象徴ともいうべき巨大都市であり、膨大なエネルギーをのみ込むことで成り立っております。
 大震災を機に、逆境に立たされた東京が最初に文明転換の道を開き、まさにリード役となるべきであります。石原都知事の所見を伺います。
 次に、被災地支援について質問いたします。
 今回の大震災によって東北地方、とりわけ福島県は大地震、巨大津波に加えて、原発事故、風評被害という四重の被害となり、地域経済もかつてない大打撃をこうむっております。
 都議会公明党は先月、福島の経済団体の代表と現地で意見交換をしました。
 福島県は、風評被害により中通り、会津方面まで大きな影響を受けており、経済団体からは地域経済への波及効果や即効性のある支援をとの強い要望が寄せられました。特に、地域経済の活性化に即効性が期待できる観光の復興に熱い期待を寄せておられました。
 観光客が大幅に落ち込み、秋以降はさらに減少すると心配されております。被災地の地域経済活性化のために、被災地を訪れる観光客へ助成するなど、インセンティブを与える施策を実施すべきと考えますが、答弁を求めます。
 また、東京から多くの観光客が被災地に来てもらう取り組みとして、プレミアムつきの地域振興券を東京で発行し、被災地の宿泊施設や商業施設で使ってもらうというユニークなアイデアも出されました。地方財政法上も問題はないことを確認いたしております。今後、被災地で使える東京発行のプレミアムつき地域振興券についても検討を進めるよう強く要望いたしておきます。
 次に、被災自治体への都の職員派遣について質問いたします。
 都は震災発生直後より、警視庁、東京消防庁を初め、医療支援、技術支援、教職員派遣などの人員支援に全力で取り組んでまいりました。都からの幅広い分野にわたる職員派遣は、発災後の応急対策に懸命に取り組む被災自治体にとって、今やなくてはならない存在となっております。
 そこでまず、発災から今日までの都の職員派遣の実績と成果を明らかにしていただきたいと思います。
 震災から三カ月が経過し、今後は応急対策から本格的な復興に取り組んでいかなければなりません。それに伴い、職員派遣も短期、応急的な派遣から、被災した自治体の行政機能の回復に向けた長期の復興支援が必要になってきます。
 首都東京の持つ総合力を生かし、被災地の行政ニーズを的確、迅速につかむとともに、被災自治体からの支援要請を待つだけではなく、東京にできることを主体的に発信して被災自治体の行政機能再建を強力にバックアップしていくべきであります。今後の都の職員派遣のあり方について見解を求めます。
 また、教育支援についてですが、都教育委員会は、国が被災県にいまだ有効な支援策を講じていない中、五月連休明けには宮城県の学校に六十八名の教員を年度末まで派遣することを発表しました。この実績を踏まえ、今後は子どもたちの傷ついた心のケアのために、養護教諭の派遣にさらに力を入れるべきであります。
 現職養護教諭を派遣すると、その後の補充が困難であるならば、退職養護教諭で補充することにより、現職養護教諭を現地に派遣すべきと考えます。教育長の見解を求めます。
 次に、被災者に対する文化、スポーツ支援についてであります。
 医療や衣食住の支援だけでなく、被災された方々に対するメンタル面での支援も重要であります。とりわけ、文化、芸術、スポーツを通して次代を担う子どもたちに夢や希望を持たせる支援が重要であります。
 まず文化交流についてでありますが、地元からの要請を受け、東京都交響楽団が郡山市でコンサートを開催し、招待された避難者は大変に喜んでおられました。また、東京に避難している子どもたちを劇団四季が「ユタと不思議な仲間たち」の興行に招待し、子どもたちが大変に感動していた様子が報道されておりました。
 こうした実例を踏まえ、東京都交響楽団のアンサンブルによる連続公演の実施、都が公認しているヘブンアーチストの活用、都の文化事業に参加している劇団等の公演など、現地のニーズに応じ、さまざまな取り組みを積極的に行うべきであります。所見を求めます。
 次に、スポーツによる支援についてであります。
 被災地では、体育館や校庭が避難所などとして利用されているケースも多く、子どもたちが特に野球やサッカーのように広い場所が必要なスポーツをすることが難しい状況にあります。
 一方、避難所になっていた東京武道館や味の素スタジアムでは、Jリーグ観戦やサッカー教室などに招待された子どもたちが、プロ選手の技術やスピードを目の当たりにし、目を輝かせて喜んでいたと伺いました。
 被災地で不自由な生活を強いられている子どもたちをぜひとも東京に招待し、スポーツ観戦や交流試合等、スポーツに接する機会を提供すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、東日本大震災を受けての東京の防災力向上について質問いたします。
 まず、人工衛星を活用した災害情報の把握についてであります。
 今回の大震災では、被災状況の把握に時間がかかったために、初動の人命救助、救援、復旧がおくれてしまったと指摘されております。首都直下地震が発生した場合、東京都が持っているDISと呼ばれる災害情報システムを用いて、地域の詳細かつ正確な情報収集を行うと同時に、高解像度衛星による画像と地理情報システム、GISを併用すれば、都内全域における被災情報を瞬時に取得することが可能となります。
 人工衛星の活用は、広域の観測を初め、夜間や悪天候でも観測できるというメリットがあります。さらに、浸水、冠水域や液状化エリアの特定、道路状況や地殻変動、海上漂流物分布の把握等の利用や、広範囲を繰り返し観測できることから、復旧、復興の進捗状況の把握まで可能となります。
 今後、JAXA、宇宙航空研究開発機構は、数年内に二機の災害観測衛星を打ち上げる予定であり、他国の人工衛星との協力関係の構築により、迅速な被災状況の収集が可能となります。
 災害対策における人工衛星の活用を検討すべきと考えますが、所見を求めます。
 次に、今後の課題として大変に重要な被災時の情報通信体制についてであります。
 さきの大震災発生時には、首都圏においても固定電話や携帯電話、メール等が機能不全に陥り、行政間や交通事業者との情報交換、さらには家族間の安否確認などが不可能となり、対策のおくれや不安の増大で混乱に拍車を招く原因となりました。
 都は、どんな状況下にあっても相互通信手段を失わないために、無線機によるバックアップ体制を多重的に確保し、都庁各局や出先機関、各区市町村や避難所、さらには主要駅などにも配備すべきであります。
 また、都や区市町村と災害時に応援協定を交わしている協力団体等との通信体制も構築しておくべきであります。あわせて見解を求めます。
 次に、家族間の安否確認についてでありますが、通信事業者による災害伝言サービスはほとんど利用することができませんでした。
 都は、国や通信事業者に対し、安否確認サービスの技術開発と機能の拡充を求めるべきであります。見解を求めます。
 次いで、防災行政無線の整備についてであります。
 甚大な被害を受けた宮城県南三陸町では、若い女性職員が高台へ避難するように防災行政無線で命をかけて繰り返し呼びかけたことにより、多くの住民の命が救われました。
 一方、他の地域では、屋外スピーカーからの避難情報が聞こえなかったとの証言もあり、改めて防災行政無線のあり方が問われております。
 都議会公明党が先日、被害状況を調査した茨城県大洗町では、津波から避難する高台がほとんどないにもかかわらず、人的被害は最小限にとどまりました。その要因の一つに、屋外スピーカーに加え、住民、全世帯に配備された防災行政無線の受信機で、同時に情報を得て迅速に避難することができたとのことでありました。
 都内各地では、以前からこの防災行政無線の屋外スピーカーの音声が聞こえない、聞き取りづらいといった声が多く寄せられております。
 都として、災害時に重要な役割を担う防災行政無線の実態を早急に調査した上で、課題を検証するとともに、住民への情報伝達について区市町村が実情に合わせて拡充することができるよう支援すべきであります。見解を求めます。
 次に、帰宅困難者対策について質問いたします。
 国の中央防災会議は、首都直下地震発生時の帰宅困難者を約三百九十万人と試算しており、都内各所で大規模な火災が発生し、避難者と帰宅困難者が交錯することによって、大量の圧死者が出るおそれがあるとしております。
 東日本大震災が発生した三月十一日は、首都圏の交通機関が途絶し、幹線道路は徒歩で帰宅する人々であふれ、都内の帰宅困難者数は約三百万人に達しました。
 企業や事業者が帰宅困難者を積極的に受け入れた事例も見られましたが、ターミナル駅に滞留した人々に駅構内から退去を求めた鉄道事業者が出るなど、関係者の意思が統一されず、日ごろの訓練や話し合いの成果を生かせなかったのが現実であります。
 こうした事態を二度と繰り返さないためには、東京で大震災が発生した場合、まずは帰宅困難な都民に対し、職場や身近な大規模施設などにとどまるよう明確なメッセージを発信することが大切であります。
 さらに、ターミナル駅に滞留する人々に対しては、統一した避難、誘導が実施される体制を構築するべきであります。都と区市との連携も不可欠であります。
 今後、帰宅困難者対策、駅前滞留者対策を進めるためには、責任ある立場の人が強いリーダーシップを発揮することが重要であります。知事の所見を伺います。
 また、今後の帰宅困難者対策においては、訓練の内容を実際の災害発生時に役立つものにしていく必要があります。特に夜間や悪天候下も視野に入れて取り組むべきであります。見解を求めます。
 次に、人々が帰宅しなくても安心できる環境を整えるためには、災害時にあっても、都民に正確な情報が速やかに伝わることが大切であります。災害情報を伝える手段として、テレビ、ラジオのほか、駅や街頭の大型画面、コンビニなどにある液晶モニターの活用やインターネットなど、さまざまな媒体があります。しかし、こうした媒体は、大規模停電時には全く機能しなくなるおそれがあります。
 そこで、帰宅困難者の避難誘導に係る重要な情報を発する拠点施設においては、停電時も含めた対策を検討すべきであります。見解を求めます。
 さらに、帰宅困難者の受け入れについては、これまでの受け入れ施設に加え、映画館、ホテル、劇場、駅ビル、オフィスビルなどを対象に受け入れ先の拡大を図るべきであります。
 また、備蓄品については、食料、寝具、簡易トイレ機能などに加え、炊き出しのためのLPガスなどの燃料を配置すべきであります。
 民間施設での受け入れと備蓄品についての見解を求めます。
 さらには、公立、私立を問わず、幼稚園、保育園、学校等の対策も重要であります。
 交通遮断を招く大震災が発生した場合には、都内の各保育、教育機関の共通の取り組みとして、親が迎えに行けるようになるまでは、子どもたちを一定期間、預かり続ける必要もあります。
 都は、関係機関に強く働きかけ、必要な支援策を検討すべきであります。それぞれ関係各局の見解を求めます。
 次に、長周期地震動対策について伺います。
 ご存じのとおり、長周期地震動とは、揺れの周期が二秒から二十秒程度の地震動のことで、特に高さ六十メートルを超える超高層ビルや免震建築物への影響が大きいと考えられることから、その対策が求められております。
 国は昨年十二月、超高層建築物等における長周期地震動への対策試案を示しましたが、いまだ検討中と聞いており、早急に対策をまとめるべきであります。
 都内の有数の超高層ビルである都庁舎は、災害時には防災拠点となることから、その機能を確保するために、本年五月二十日、都庁第一本庁舎、第二本庁舎における長周期地震動対策への取り組みについて発表しました。
 都内の超高層ビルは約千棟、全国の約二千五百棟の多くが東京に集中していることから、都庁舎の補強対策の情報を民間建築物にも活用できるよう積極的に提供していくべきであります。
 また、都として、対策試案の対象となる民間建築物の所有者に対して、参考となる補強方法の事例などを提供していくべきであります。民間建築物における長周期地震動対策についての見解を求めます。
 長周期地震動は、超高層ビルだけではなく、石油コンビナートのタンクにも被害を及ぼします。実際、十勝沖地震では、浮屋根式タンクで内容物が揺れ動く、スロッシング現象が起き、火災が発生しました。
 早稲田大学理工学術院の研究によると、こうした石油タンクは東京湾内に六百基余りあり、東海、東南海地震が発生した場合は、そのうちの六十四基から貯蔵している原油等が流出するという調査結果を発表しております。
 東京湾内には大小の船舶が多数航行しており、石油やガソリンなどの危険物が大量に海上流出すれば、航行停止を余儀なくされてしまい、災害時救援物資、人員輸送の機能を果たせなくなってしまいます。
 また、海上からの消火活動も不能となるおそれもあり、加えて、東京湾内の十二の火力発電所に燃料の供給ができず、電力供給力も大幅に低下してしまいます。
 都は早急に神奈川、千葉両県と連携し、石油タンクの耐震補強、長周期地震動対策に万全を期す必要があります。見解を求めます。
 次に、東京湾の津波、高潮対策についてであります。
 都は、関東大震災の再来を想定した津波の被害想定を平成三年に行っており、津波の高さは一メートル二十センチ程度、首都直下地震については、中央防災会議が五十センチ未満との想定を行っております。
 しかしながら、今回の大地震では震源から約四百キロメートル離れた東京湾の晴海で一・五メートルの津波が観測されました。およそ三百年前に起きた元禄地震では、品川沖に約二メートルの津波が記録されております。
 東日本大震災を踏まえ、都は現在の被害想定の再検証を行うとともに、これまでの津波、高潮対策を抜本的に見直す必要があると考えます。見解を求めます。
 次に、東京港の水門、防潮堤の耐震対策についてであります。
 東京港の臨海部には都市機能が集積しており、いざというときに浸水被害を食いとめる水門や防潮堤等の海岸保全施設の整備が極めて重要であります。
 しかし、建設後四十五年を経過している水門もあるなど、直下型の地震に備え、万全を期すことが求められております。耐震対策の一層の推進に対する見解を求めます。
 さらに、東日本大震災を教訓に、地震、津波水害対策のあり方を検討するために設置された地震・津波に伴う水害対策技術検証委員会について質問いたします。
 先日、第一回目の会合が開かれ、首都直下地震等に備え、地震、津波、高潮に対し、防潮堤や水門など、都内の防災施設の弱点を洗い出すことなどが確認されたと聞いております。技術検証委員会の目的、今後の具体的な取り組み内容とスケジュールについて見解を求めます。
 次に、液状化対策について質問いたします。
 東日本大震災では、地盤の液状化現象による被害が青森から東京湾沿岸にまで至り、広範囲に深いつめ跡を残すなど、世界でも最大最悪の規模となりました。
 都議会公明党は、都内の被害実態を把握するべく、区部東部地域の被災現場の状況をいち早く調査いたしました。その結果、都の予測図では液状化の発生が少ないとされている地域の一部で液状化が発生していたことや、家のローンと修繕費等の二重負担に苦悩する住民の方々など、事態の重大性を再認識するとともに、東京湾沿岸の埋立地の液状化に対する脆弱性を改めて喚起させられました。
 今後、首都直下地震や東海、東南海・南海地震の連動する巨大地震が懸念される中、液状化に強い都市づくりが急務であり、都の液状化対策の見直しは喫緊の課題であります。
 そこで、三点質問いたします。
 初めに、液状化予測図見直しについてであります。
 都は、東京緊急対策二〇一一において、平成二十四年度までの二年間で液状化予測図の見直しを行うとしております。
 予測図は、地域の液状化ハザードマップとして活用されるとともに、今後の地域防災計画の修正やライフラインを初めとする公共施設等の液状化対策を見直す上での基礎となることから、年度内にその概要を関係部署へ情報提供すべきであります。見解を求めます。
 次に、都民の安心確保と液状化対策の推進についてであります。
 予測図によって液状化のおそれのある地域と判定された住民は、そのまま住み続けるためには、どのような液状化対策を講じればよいのか、日々不安を抱えて生活することになります。
 木造住宅における液状化対策に取り組み、液状化を診断できる技術者の育成や、アドバイザーの派遣、都民を対象とした液状化相談窓口の設置などについて検討すべきであります。見解を求めます。
 第三に、液状化の被害を受けた世帯に対する支援であります。
 東日本大震災で液状化被害に見舞われた都内の住宅は、被災者生活再建支援法の被災規模に関する要件に該当しないため、被災者は支援金の給付を受けられません。また、住宅の半壊被害を受けた世帯については、そもそも法の支援の対象となっておりません。
 今回の液状化被害は広域にわたっており、地域による現在の指定要件は余りにも理不尽であります。都は、国に被災者生活再建支援法の適用要件の緩和、対象世帯の拡大を直ちに要求するべきであります。また、国が制度を改めるまでの間、地元自治体と連携し、被災世帯に対する支援を行うべきであります。見解を求めます。
 次に、木造住宅密集地域対策について質問いたします。
 石原知事は、災害に強いまちづくりに向け、木造住宅密集地域対策に本格的に取り組むことを表明されました。これまで都は、整備地域、重点整備地域を指定し、対策を進めてきましたが、権利関係の複雑さや居住者の高齢化に伴う建てかえ意欲の減退などにより、このままでは課題解決には相当の年数が必要となります。
 木造住宅密集地域の課題解決のためには、建てかえ意欲を向上させていくことが何より重要であります。そのためには、都みずからが住民に対し、迫りくる直下型地震の危険性を明らかに示し、住民みずからの危機意識を喚起することが大変に重要であります。見解を求めます。
 また、緊急対策二〇一一に、木造住宅密集地域の整備促進に向けて、都みずからが地区を指定し、モデル事業を行うとしております。
 都が区市と連携しながら直接取り組むことは、災害に強い東京のまちづくりに向けて大きな成果が上がることが期待されております。地区の指定に当たっては、今まで取り組んできたものの、なかなか進んでこなかった地域や、今後のまちづくりにあって、インセンティブがより高まる地域を指定すべきであります。見解を求めます。
 また、指定地区については、今年度の早い時期に決定することを強く要望いたしておきます。
 次に、放射能対策について質問いたします。
 福島第一原発事故による原子力災害が長期化する中で、政府からの誠実な説明がない中、ドイツ気象庁による放射性物質拡散予測がインターネット上で公表されたり、IAEAへの報告書の中で、実は三月中にメルトスルー、炉心貫通していたことが今ごろになって明らかにされるなど、国は正確な情報を公開していないのではないかとの不安と怒りの声が国の内外から高まっております。そもそも昨年の事業仕分けで、パフォーマンスを優先し、放射線モニタリング調査の予算を削減した政府・民主党に今さら期待すること自体が無理なことであります。
 都議会公明党は、過日、都の健康安全研究センターを視察いたしました。そこで、水素爆発後の三月二十一日から二十二日にかけて、降下物中のセシウム137が、一平方メートル当たり五千三百ベクレルも都内で検出されていた事実を確認してまいりました。
 この数値は、昭和三十二年に文科省が調査を開始して以来、核実験などが頻繁に行われていた時期やチェルノブイリ原発事故発生の時期など、過去最も高かった数値と比較しても五倍以上の高い数値であります。
 降下物測定値は、従来から月単位の積算量が文科省によって公表されておりますが、今後、三月分の月間測定値が文科省によって発表されると、いたずらに都民を不安に陥れかねません。健康影響に対して、客観的なデータに基づいて説明すべきであります。見解を求めます。
 都は、我が党の要望を受けて、去る六月八日に都内における空間放射線量の測定を拡充すると発表し、都内百カ所の放射線量の測定を行いました。しかし、今なおPTA保護者からは、学校のプール清掃や水泳の授業、さらには校庭への影響について不安の声や質問が多く寄せられております。
 都は、こうした不安にこたえるために、引き続き測定を行うとともに、学校や公園などの土壌やプールの水を含めた、より綿密な都独自の放射線量のモニタリングを行うべきであります。
 また、放射線量測定や放射線の人体への影響について高度な知見を有する首都大学東京も活用すべきであります。また、首都大学東京は、放射能対策に今こそ積極的に協力していくべきと考えます。あわせて所見を求めます。
 都内では、新宿区内のモニタリングポストのほか、国の委託を受けた大学が、文京区、目黒区、港区、府中市、八王子市で測定を行っております。都は今後、二カ所増設するとしておりますが、その増設箇所については、これまで測定の行われていない区部東部地域と多摩北部地域にこそ設置すべきであります。見解を求めます。
 さらに、放射線のリスクの程度や対処の仕方など都民向けの放射線セミナーの開催やホームページの活用、さらには学校での普及も積極的に進めるべきであります。
 また、内部被曝から子どもを守るとの観点から、学校給食の安全確保の取り組みが重要であります。あわせて見解を求めます。
 都内の下水道施設でも、下水汚泥や焼却灰から放射性物質が確認されております。焼却灰は施設外へ飛散しないよう管理し、搬出に当たっては飛散防止の措置を講じ、埋立処分をしているとのことですが、過日、誤った報道もあり、必ずしも都民に正確な情報が伝わっているとはいえません。下水道局は、施設周辺の放射線量の測定頻度を高めるべきであり、ホームページなどで都民にわかりやすく公表すべきであります。
 また、汚泥の測定や取り扱いについても、首都大学東京などとも連携し、取り組みを進めるべきであります。都の見解を求めます。
 次に、電力対策について質問いたします。
 東日本大震災による原発事故に伴う電力危機は、電力に過度に依存した社会の脆弱性を明らかにしました。
 これまで都は、電力の需要面に着目した対策に重点を置き、省エネや節電の取り組みを進めてまいりましたが、今後は電力の需給両面からのエネルギー政策へと転換していく必要があります。
 今こそ、これまでの取り組みのノウハウを生かし、企業、家庭などすべての一五%節電をなし遂げ、電源についても原発、化石燃料発電に依存するだけではなく、防災の観点からも分散型電源と再生可能エネルギーへの転換を図るべきであります。
 国では、再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度が議論されており、これが成立すると再生可能エネルギーの普及が大きく前進します。
 都は、太陽光や風力、小水力、バイオマスなど再生可能エネルギーを活用した分散型電源をスマートグリッドで結ぶ都市を目指すべきであります。
 申し上げるまでもなく、スマートグリッドは、それぞれの発電や電力消費の状況を情報技術の駆使によって把握し、それを制御することで効率のよい電気の流れを実現する仕組みであります。これにより、発電量が安定しないという再生可能エネルギーの課題が是正され、大量普及が可能となるわけであります。
 こうした次世代送電網であるスマートグリッドの導入を早急に検討すべきであります。所見を求めます。
 また、風力発電のような、都内だけでは風が弱いために普及が困難なエネルギー源の導入拡大については、より広域で検討するなど、これまでにない取り組みが必要であると考えますが、再生可能エネルギーの普及拡大について見解を求めます。
 また、省エネルギー対策について、効果的に節電を行うことのできる新たな技術の開発も求められております。画期的な省エネルギー技術が東京から生まれるよう、都内の企業、大学、公設の試験機関等による技術開発を積極的に推進していくべきであります。見解を求めます。
 家庭の省エネルギーについても、積極的な工夫が必要であります。できるだけ自然の力を利用するパッシブ利用も効果があるとされ、こうした考え方や行動を速やかに広く啓発していくために、一般家庭向けの省エネフェアなどを活用して普及強化すべきであります。見解を求めます。
 次に、中小企業対策について質問します。
 今回の大震災によって、都内の中小企業も大きな被害を受けました。自社施設の被害とともに、サプライチェーンの寸断、計画停電の影響による生産の減少やイベントの自粛による売り上げの減少、さらには放射能の風評被害による輸出の低迷などで、資金繰りや雇用の維持に大変に苦しんでおります。この前例のない危機に対して、都は早急に支援を講じる必要があります。
 まず、経営基盤の安定のためには、資金繰りの支援が欠かせません。都は、震災後直ちに災害復旧資金融資などを実施し、さらに、国の東日本大震災復興緊急保証制度に対応し、災害緊急融資を新たに五月二十三日より実施しました。しかしながら、各緊急融資については期限があるため、長期にわたる事業再生に向けた支援が必要であります。
 そこで、財務や販売、事業戦略などの専門家によるサポートを行い、事業の抜本的な見直しに向けた取り組みが円滑に進む体制整備を図るべきであります。また、新たな融資制度については、金融機関や区市町村と連携を図り、迅速化を図るなど、円滑な融資に努めるべきであります。あわせて見解を求めます。
 次に、電力不足に対する対応であります。
 首都圏の電力供給を支える原子力発電所の被害により計画停電が実施され、多くの中小企業が影響を受けました。今後も、電力需要の状況によっては、再び計画停電が実施されることが考えられます。
 そこで、安定的に事業を継続していくためには自家発電設備を導入し、電力を確保していくことも効果的であります。中小企業にとっては、そのノウハウや価格など多くの課題を抱えております。
 都としては、自家発電設備の設置に対して支援するとともに、助成を行っていくべきであります。見解を求めます。
 次に、イベントの開催ですが、震災後中止となったイベントが多く、イベント自粛に対する早急な対策が必要であります。東京の地域経済の復興に向けた機運を高めていくには、都内のさまざまな商店街のイベントに対し、支援を行っていくべきであります。見解を求めます。
 次に、災害破損物対策について質問いたします。
 今回の大震災で、岩手、宮城、福島の三県で二千五百万トンという膨大な災害破損物が発生しました。一方で、被災自治体では、廃棄物処理施設の損壊により、その処理が滞っているのが実情であります。国は、全国の自治体に受け入れ処理の協力を求めていますが、いまだ具体的な受け入れは始まっておりません。
 都は、都内自治体や民間と共同で災害破損物を受け入れるという都独自の計画を打ち出しておりますが、災害破損物の撤去を早急に開始できるよう、今回のスキームを被災各県、市に周知するとともに、都内自治体、民間と連携し、受け入れ体制を整えるべきと考えますが、見解を求めます。
 また、今回の災害破損物の中には、木質廃棄物も大量にあります。これらを木質チップ化し、バイオマス燃料に活用するなどしてリサイクルするべきであります。見解を求めます。
 次に、震災時における警察機能の確保について質問いたします。
 今回の大震災では、岩手、宮城、福島の三県の警察関連施設などが大きな被害を受けました。浸水により使用できなくなった警察署や交番、駐在所、警察車両などが数多く損傷し、警察機能が大幅に低下しました。
 一方で、東京においても公共交通機関がストップし、交通渋滞や帰宅困難者の課題が浮き彫りになり、さらには停電による都市機能の混乱も発生しました。首都機能を有する東京にあっては、こうした場合、どこよりも早く都民の安全・安心を回復することが重要であり、その第一要件は、やはり警察機能の確保であります。
 立地的に液状化や津波、高潮を受けるおそれのある警察施設の安全対策、また、警察活動の拠点となる交番や各種警察施設の電源確保策について見解を伺います。
 最後に、二〇二〇年オリンピックの東京への招致について申し上げます。
 昭和三十九年に開催された東京オリンピックは、第二次世界大戦で敗戦した日本が再び国際社会に復帰するシンボル的な意味を有しておりました。競技においては、東洋の魔女とまで呼ばれた日本バレーボール女子チームやマラソンの円谷幸吉選手など多くの選手が日本じゅうに夢と希望を与えてくれました。
 日本経済においても、競技施設やホテルの建設だけでなく、東海道新幹線や首都高速道路、名神高速道路などのインフラが整備され、カラーテレビの購入が飛躍的に増加するなど、オリンピック景気といわれる好景気をもたらしました。
 技術面では、競技に電子時計を採用し、オリンピック史上初めて計測と順位に関してノートラブルを実現、世界的な信頼をかち取ることに成功しました。
 三月十一日に発生した東日本大震災は、東北、関東の被災地に甚大な被害をもたらしただけでなく、日本全体の景気経済をも悪化させております。東京が被災各県の皆さんと手を携え、被災地に、そして子どもたちを初め、多くの人々に夢と希望を与え、日本を再生させていくシンボルとして、オリンピック、パラリンピックを位置づけていくことが重要であります。
 そのためには、まず結論ありきではなく、都民を初めとした幅広い世論の喚起を促し、さらにスポーツ界や経済界、そして被災各県の招致に向けた機運を高める努力をしていくべきであると強く申し述べ、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 谷村孝彦議員の代表質問にお答えいたします。
 試練の中から次なる文明社会への道を開くことについてでありますが、我々は今日、文明社会を発展させることで、かつてない豊かさを手には入れましたが、これが果たして本当の文明的な成熟であるかどうかは幾つか疑わしい点もあると思います。
 確かに、飢餓や病苦から逃れて便利で快適な暮らしは実現しましたが、一方では資源の浪費を当たり前のこととし、我々人間の生命的な存在の舞台であります地球に大きな負担をかけて、このままでは、温暖化も進めば、みずからの首を絞めてしまうことにもなりかねません。
 今求められているのは、はるばるここまで来ましたが、これから先にどういう努力でどういう文明社会をつくり出していくかという新しい人間全体にとっての目標設定であり、それを実現するための方法であると思います。
 今回の大震災によって、エネルギー危機に直面した日本と東京は、現下の国家的試練を乗り越えなければなりません。同時に、正当な文明批判の視点に立って、我々が存在していくための越えなくてはいけない試練も乗り越えるための工夫が必要だと思います。
 東京は過剰な便利さ、便宜さに漬かった現代文明社会のいびつさを正しつつ、これまでのキャップ・アンド・トレード制度や緑の増加などもあわせて環境と調和を軸に据えた新しい文明社会を世界に先駆けしてつくっていきたいと思っております。
 質問にありましたトインビーは有名な「歴史の研究」という本の中で、いかなる大国も必ず衰弱し、場合によっては滅亡もすると。そのための原因はいろいろあるけれども、最も重要な原因、それに陥ると克服しにくい亡国の原因は、自分のことを自分で決定する能力を欠いたことだといっておりますけれども、まさにそのとおりだと思います。
 私たちは、敗戦後六十五年間、アメリカの一種の囲い者をしてきました。実際、私たちは、例えば日米関係に限って見ても、どれだけ我々の主張をはっきりいっていい分を通したかというと、私はそういう政治にうんざりして国会をやめましたけれども、私たちそれを反省する時点に差しかかっているんじゃないかと思います。
 そうした国のあるべき航路を引き戻すためにも、東京から大きな戦略を構えて着実に実行しながら未来につながる社会のありさまを造形していきたいものだと思っております。
 次いで、帰宅困難者対策についてでありますが、東日本大震災は東京から遠く離れた場所で発生しましたけれども、鉄道がとまり、道路は大渋滞になり、多くの帰宅困難者が発生し、都内は非常に混乱いたしました。首都直下地震が起きた場合、鉄道がとまることも想定し、建物の倒壊や火災等で道路も危険な状態となるおそれがありますし、膨大な数の帰宅困難者が発生して、今回以上の混乱となることは必定であります。
 このような帰宅困難者問題に対応するには行政の取り組みだけでは限界がありまして、繰り返して申してきましたけれども、やはり自助、共助というものを最大に活用して社会全体で取り組んでいくことが不可欠だと思います。
 このため、行政、鉄道事業者、企業や学校、都民など各主体の役割と責任を明確にするとともに、安全が確保されるまでの一斉帰宅の抑制、あるいは帰宅困難者が待機できる施設の確保、あるいは家族との安否確認や正確な情報提供手段の確保など、対策を強化する必要があると思います。現に、先般の震災では、ほとんど携帯電話が通じなかったという事例もございます。
 とりわけ、JR東日本は先日、社長が三月十一日の対応について謝罪に来ました。事もあろうに、公共のスペースであります駅をシャッター閉めて、中にいるお客さんを追い出したという言語道断な話でありまして、いいわけでは、駅員は手分けして鉄道の点検に行ったというけれども、日ごろ客を案内している職員がおりたって点検できるわけはないんで、いいわけはいいわけだろうと聞いておりましたが、いずれにしろ、首都圏最大の交通事業者として、その責任を十全に果たしていくべきだと思います。
 道路の状況が落ちついた段階では、徒歩や陸上輸送に加え、海上輸送を実施するなど、帰宅困難者が早期に帰宅できる取り組みを行わなきゃいかぬと思いますが、これ実は今まで、九月一日にあった災害対策でアメリカの艦船に千葉県、あるいは神奈川県の海岸べりにいる方々を運んでもらうために、わざわざ艦船を呼び出していましたが、残念なことに、今回危機管理体制が動転しまして、今までやってきたのを、このオファーをしていなかったんですな。
 ですから、もしあれにアメリカの艦船なり、日本の横須賀から海上自衛隊の艦船がやってきて運べば、それは東京湾というのは閉鎖水域でわずかなものでありますから、千葉県、神奈川県、千葉県とジグザグに走って、何カ所かでお客さんたちをおろせば、彼らははるばる歩いて家へ帰宅することもなしに、比較的距離も短縮された形で帰宅できたと思うんですけれども、大変これは反省しておりますけれども、そういう指導がなかったということも、これは反省の一つの大きなポイントだと思っております。
 いずれにしろ、いつ起こってもおかしくない首都直下地震に備えて、確かな手だてをたゆみなく講じて、震災時の都民の安全確保に万全を期してまいります。
 ちょっと順番を間違えましたが、最初のご質問の政治主導の発揮についてでありますけれども、政治主導というのは政治家が号令して官僚をうまく早く積極的に動かすことだと思います。残念ながら今度の政府は、それを全く緊急時に行わないできた。どういうつもりか知りませんが、私、日本の戦後の官僚というのは非常に問題があると思います、国家の官僚は。
 これが私は日本をだめにしたと思っていますけれども、それに対する批判は結構なんですが、やっぱり官僚は官僚でありまして、できたての政府が、経験があるわけでもありませんし、今までの経験の蓄積というものを利用するためにも、これは官僚を駆使して対処するということも私は政治家の力量だと思いますけれども、そもそも何のつもりか知らぬけれども、マニフェストなる怪しげな声明で事務次官を廃止するって、さすがにこれはできなかったけれども、いった手前、事務次官の会議を一向に開いていない。
 私、仙谷君にもいったんです。やります、やりますよ、部分的にはやったけれども、全部の事務次官集めて、全官僚の代表の事務次官を集めて会議をすることで初めて要するに縦割りの行政というものは横ぐしが通るわけでありまして、これをとにかくしないでいるということは、全くていたらくが右往左往するだけで、政府の機能が不全を来しているということだと思います。
 普天間の問題でも、感情を吐露するだけでは困るんで、稚拙な対応で、日米間の信頼関係と沖縄県民の思いをいたずらに傷つけましたな。
 震災にあっては、被災地の切なる要望も吸い上げられずに、集まっている義援金が、つまり国民のいたわりの心が要するに義援金としていまだに届いていないというのも、これは本当にまあ何というか、ばかばかしいというか、愚かというか、ずさんな話であります。
 また、あわせて尖閣諸島をめぐる事態でも、中国人のぶつけてきた船長を釈放したのは地方の検事ということで責任転嫁をする。政治が政治としての判断をしないというのは、これは噴飯といいましょうか、非常に国家にとっては危険なことだと思います。
 電力不足への対処でも、国は数字目標は示しても具体の策を一向に示さない。私は、首都圏の知事が集まって発言して、とにかく日中からチンジャラチンジャラ、ネオンもつけてパチンコをやるのはどういうものかと。まして、外国に例のない自動販売機が林立している。これは確かにマーケットに、店に物を預ければ歩合取られるようでしょう。自分たちが自身で設置した自動販売機ならフルに稼ぎが手に入るわけでありますから、そういう痛痒もあるのかもしれませんが、しかし、いずれにしても考えてごらんなさい、これ。いかなる先進国、ヨーロッパの国でも、ロンドンでもパリでも自動販売機はありません。なぜないかというと、治安の問題なんですよ。あったら、ほとんど一晩でなくなるでしょう。
 これは、日本の治安のよさの現象でありまして、表象でありまして、皮肉な現象ですけれども、それにしても、この事態の中で私は自動販売機が林立しているということは、私は考慮されるべき問題だと思いまして、私たちが発言しましたら、やっと業界も自粛して、反対したところもあるみたいだけれども、最初にコカ・コーラのアメリカの会社がそうだということでやり出して、パチンコ業界もみずからいい出して、二五%以上の節電をするといってきていますが、本当はこれは政府が政令を出してやることだと思いますけれども、現にかつてのオイルショックのときには自民党の政府はそれやりましたな、徹底して。
 そういうことで、残念ながら、今の実態を見ていますと、ナポレオンの言葉じゃありませんけれども、有事のときに一番怖いのは能力のある敵じゃないと。無力な無能な味方だといいますが、私たちはえらい政府をいただいちゃったなという感は、残念ながら否めません。
 東京は、震災を乗り越えて日本を再生に導くために全力を尽くしますけれども、国にはともかくもう少ししっかりしてもらいたい。時には憎まれることも覚悟してでも、確固たる意思を持って、具体的な手だてを講じることで、官僚を具体的に動かして、国民の我欲も抑えて、全体が団結することでこの復興というものも可能になってくるんじゃないんでしょうか。これができて初めて政治主導といえるんじゃないかと思います。
 あとは担当の幹部がお答えいたします。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

〇警視総監(池田克彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、警察施設の安全対策についてであります。
 警視庁では、各自治体のハザードマップに示されました洪水による浸水想定区域などを参考に、津波、高潮による被害を想定し、その対策として六十四の警察施設について、今後五年間で防潮板を整備していくことを計画し、当面、今定例会に上程されています補正予算に施設の調査、設計委託費を計上しているところでございます。
 また、液状化につきましては、警視庁の施設もこのたびの震災において術科センター等が被害を受けたところであります。これら施設の修繕費を補正予算に計上しているところでございますが、液状化対策につきましては、今後、想定区域などについて関係機関とともに必要な調査を行ってまいりたいと考えております。
 なお、東日本大震災では津波による浸水想定区域外での被害も甚大であったとの報道もございました。そこで今後、関係機関と連携を図りながら、警察施設の安全対策について、さらに検討を加えてまいる所存でございます。
 次に、交番や各種警察施設の電源確保策についてでございます。
 警視庁では、震災等による停電に備えて、すべての警察署に非常用電源装置を設置しており、先般の計画停電の際も警察業務に支障を来すことはございませんでした。
 しかしながら、交番、駐在所については、その半数以上に非常用電源装置が設置されていないのが現状でございます。
 こうした施設では、停電時には発動発電機等を使用するなどして対応してまいりましたけれども、先般の計画停電の教訓を踏まえ、今後四年間で構造上設置が難しい施設を除き、必要な施設に非常用電源装置を整備することとしており、当面、補正予算に約百施設についての整備費を計上しているところでございます。
 警視庁といたしましては、交番、駐在所を初めとする警察施設に計画的に非常用電源装置の整備を進め、まちの安全を守ってまいりたいと考えております。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、宮城県への養護教諭の派遣についてでございます。
 養護教諭は、児童生徒の心のケアに大きな役割を果たしており、被災県への派遣は重要な意義を持つものでございます。このため、都教育委員会は宮城県に全体で六十八名、うち三名の養護教諭を派遣いたしましたが、養護教諭が依然として不足している宮城県から各都道府県に追加の派遣要請があり、都教育委員会は他県と連携して派遣を実施することといたしました。
 養護教諭は、原則一校一名の配置でございまして、お話のように、後任者の補充がなければ派遣が困難であることから、後任要員として養護教員の退職者を全国から募集し、適任者を確保することができました。
 そこで現在、配置校や住居などについて宮城県と最終的な調整を進めているところでございまして、今後、速やかに養護教諭を派遣してまいります。
 次に、公立学校における大規模震災時の児童生徒の保護についてでございます。
 都教育委員会は、学校危機管理マニュアルに基づき、児童生徒が在校時に発災した場合には、安全が確保されるまでの間、校内の安全な場所に保護することとし、全都立学校に児童生徒の三日分の飲料水、食料、毛布等を備蓄しております。
 なお、安全確認ができた場合、または確実に保護者等への引き渡しができる場合には、児童生徒を帰宅させることとしております。
 今般の東日本大震災を踏まえ、さらに実効性が高くかつ実態を反映した学校危機管理マニュアルに改定すべく取り組んでいるところでございまして、区市町村教育委員会に対しても、このマニュアルを参考に個別の課題を点検、分析し、児童生徒の安心・安全の確保に取り組むよう働きかけてまいります。
 次に、学校給食の安全確保の取り組みについてでございます。
 各都道府県は、本年四月四日付厚生労働省事務連絡、農畜産物等の放射性物質検査について等に基づき検査を実施しております。食品衛生法の暫定規制値を超えた食品に対しては、原子力災害対策特別措置法に基づき、内閣総理大臣が地域、品目を指定して出荷制限の指示を行っており、国として食品の安全確保体制が整えられております。
 これまで各公立学校においては、出荷制限地域、品目に十分留意して食材の調達を行ってまいりましたが、学校給食に携わる職員が放射能の健康影響に関する理解を深め、新しい情報を日々確認することは極めて重要でございます。
 都教育委員会は、今後、校長会や栄養職員の研修等におきまして、放射能に関する知識、情報を適時、的確に伝達し、安全・安心な学校給食の実施に努めてまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、民間建築物における長周期地震動対策についてでございますが、国は昨年十二月に、超高層建築物や免震建築物における長周期地震動の対策試案を示し、取りまとめを行っておりましたが、本年三月の東日本大震災を踏まえ、現在さらに検討が必要であるとしております。
 都内の超高層建築物においても、今回の大地震により、長時間にわたり大きな揺れが観測されたことから、超高層建築物等の構造上の安全性に対する都民の不安を解消するため、一日も早く対策をまとめるよう強く国に求めてまいります。
 今後、国の対策が示された場合には、直ちに関係区市や民間の確認検査機関への普及啓発を図るなど、国と連携し必要な対策を講じてまいります。
 都としては、国の動きと並行して、超高層建築物や免震建築物について専門家の知見を踏まえ、制震構法などを導入した民間建築物の先進的な補強方法や都庁舎の取り組み事例、さらには、家具の転倒や什器の移動を防止する対策などについて、建物所有者等に対して広く情報提供をしてまいります。これらのことを通じて、首都東京の安全確保に向け積極的に取り組んでまいります。
 次に、木造住宅における液状化対策への取り組みについてでございます。
 液状化による建物被害は住民の生活に大きな影響を与えることから、建築物の所有者や建て主が事前に対策を講じ、液状化に備えていくことが重要でございます。
 このため、七月末を目途に、専門家を含めた検討委員会を設置いたしまして、木造住宅を含む建築物を対象として、地域の地盤特性に応じた対策を検討し、都民にとってわかりやすい液状化対策の指針を作成した上で広く情報を提供してまいります。
 また、技術者の育成やアドバイザーの派遣など、都民が安心して対策に取り組めるような環境整備についても検討してまいります。
 こうした取り組みを区市とも連携して進めることにより、液状化対策を推進してまいります。
 次に、木造住宅密集地域の解消に向けた都民の危機意識の醸成についてでございます。
 これまで都は、地震の揺れによる建物倒壊や火災の発生による延焼の危険性を地域危険度として昭和五十年より公表してきたほか、平成十二年からは震災復興シンポジウムを毎年都庁で開催して、災害に強い都市づくりの必要性などについて広く都民への周知に努めてまいりました。
 しかし、今回の大震災を踏まえ、木造住宅密集地域を早期に解消し、燃えない、壊れない都市東京を実現していくためには、そこに住む人々が我が身に迫る危険性をみずからの問題として認識する必要がございますが、こうした現実を必ずしも直視しているとはいいがたい状況でございます。
 このため、これまで行ってきたシンポジウム等だけでなく、木造住宅密集地域の現地に出向いて、防災の専門家や被災体験者とともに建物の倒壊や火災による焼失の恐ろしさをリアルに伝え、当該地域が抱える危険性や将来のまちづくりに向けた情報を直接都民に知らせる場を設けてまいります。このことにより、目前に迫る危機に対する都民の意識を高め、実践的な行動を促してまいります。
 最後に、木造住宅密集地域におけるモデル事業についてでございますが、都は区と連携して防災都市づくり推進計画を策定し、重点整備地域等を定めて、延焼遮断帯となる道路の整備や建物の耐震化、不燃化に取り組んでまいりました。
 その結果、重点整備地域の不燃領域率は、平成八年から十年間で四八%から五六%に向上するなど、着実に改善が図られてきました。
 これを受けて、平成二十一年度の計画改定では、それまでの目標を五ポイント引き上げ、平成二十七年度までに延焼による焼失率がほとんどゼロになる六五%を目指すこととしております。
 しかしながら、木造住宅密集地域は権利関係が複雑で合意形成に時間を要することなどから、更新が進まず従来のまま残されている地区もあり、その解消には至っていないのが実情でございます。
 このため、これまでの事業の進め方について検証しながら、まちづくり施策や税制、居住者の生活支援策などを総動員した新たな手法を開始していくことといたしました。
 こうした新たな手法を生かして、例えば、重点整備地域のうち、地元自治体の取り組み意欲は高いものの、不燃領域率の改善や延焼遮断帯の形成が進まない地区などを選定し、今後、重点的にモデル事業に取り組んでまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず観光による被災地の地域経済活性化支援についてであります。
 観光は、多くの産業に経済波及効果をもたらすことから、大震災や原子力発電所事故、風評被害等により甚大な影響を受けている被災地の地域活性化に大きく寄与することが期待されております。
 そこで、被災地への旅行を促進させるため、都内の旅行事業者と連携いたしまして、岩手、宮城、福島の被災三県などを目的地とする被災地応援ツアーに対して旅行代金の一部を助成することといたしております。具体的には、ツアー参加者一人につき一泊三千円、延べ五万泊の助成を予定しております。
 これにより、被災地における経済活性化を支援し、他の被災地支援事業とあわせて復興を後押ししてまいります。
 次に、省エネルギーに係る技術開発についてであります。
 都内の中小企業、大学、公的な試験研究機関等の持つすぐれた技術力を生かし、効果的に省エネルギーを実現する技術や製品を生み出す多様な取り組みを推進していくことは重要であります。
 このため、都ではエネルギーの効率的な利用技術など、中小企業による新規性の高い技術開発に対し、新製品・新技術開発助成事業により支援を実施しております。
 また、昨年度から実施している都市課題解決のための技術戦略プログラム事業におきまして、首都大学東京と都立産業技術研究センターが共同研究の成果を中小企業と協力して実用化する技術開発プロジェクトに対して支援を行ってまいりました。
 具体的には、各家庭やオフィスにあります小型の電子機器について、送電されている電力の一部が有効に活用されず、周辺の機器類の誤作動の原因となるノイズの発生源ともなる場合があるため、そのような状態を改善する装置の開発などが進んでおります。
 こうした取り組みを通じて、都内中小企業等による省エネルギーに役立つ技術開発を的確に支援してまいります。
 次に、中小企業の根本的な経営の見直しに対する支援についてであります。
 今回の震災の影響によりまして、会社経営のあり方を根本から見直していく必要が生じました中小企業に対して、その課題を十分に検証して効果的な解決策を提供できる相談体制を整備することが重要になっております。
 都は、円高により経営内容を根本的に見直そうとする中小企業に対しまして、今年度から円高対応・企業変革アシストプログラムを実施しておりますが、今後は、震災をきっかけに経営の本格的な改革を目指す企業も対象に加えてまいります。
 具体的には、中小企業診断士等の専門家を一社当たり最大十回まで無料で派遣し、経営支援を行います。そうした中で企業経営の課題を明らかにして、計画的な解決につなげるための企業変革プランと具体的な対応策を盛り込んだ実行プログラムを策定し、会社経営の見直しをサポートしてまいります。
 こうした専門家によるきめ細かな取り組みにより、中小企業が新しい会社経営の展開を実現できるよう支援してまいります。
 次に、震災に対応した新たな融資制度についてであります。
 都は、今回の震災により、直接、間接の被害を受け、経営に支障を来している都内中小企業に対応した制度融資として災害緊急を創設しております。
 制度開始に当たりましては、迅速な取り扱いがなされますよう国と連携して区市町村向けの説明会を開催するとともに、取扱金融機関等に制度の周知を図ってまいりました。これら関係機関の協力によりまして、本制度は、小売業、印刷業、建設業など幅広い業種にわたる中小企業で利用が進んでいるところでございます。
 今後、すべての取扱金融機関に対して重ねて協力を要請していくなど、引き続き本制度の円滑な運用に努めてまいります。
 次に、中小企業に対する自家発電設備の導入支援についてであります。
 今回の震災の影響により電力不足が懸念される中、事業活動を安定して継続できるよう支援を行うことが重要となっております。
 このため、都は、生産活動に多くの電力を必要とし、節電の努力だけでは限界のある都内中小企業に対して、電力や経営に詳しい専門家を派遣いたしまして、発電設備に適用される法令やランニングコスト等に関する具体的な計画づくりについてサポートいたします。
 その上で、発電設備の整備は、企業にとりまして資金面で大きな負担となるため、経費の助成を行うことといたしまして、今年度中の申請につきましては、導入費用の三分の二を助成いたします。
 こうした取り組みを通じて、都内中小企業の電力確保を的確に支援し、経営環境の改善につなげてまいります。
 最後に、都内の経済活性化に向けた商店街イベントについてであります。
 商店街が開催いたしますイベントにより、震災後生じました消費を自粛する雰囲気を払拭して、地域の経済活動を活性化し、その復興につなげることが重要になっております。
 都はこれまでも、新・元気を出せ商店街事業において、区市町村と協力して商店街が開催するイベントを支援してまいりました。同事業を活用して、商店街の創意工夫によるイベントを通じて集客を図り、まちのにぎわいを創出することで、買い物客の消費活動を喚起し、地域経済の一層の回復を促してまいります。
 今後とも、こうした取り組みにより、地域の商店街イベントを支援し、都内の経済の活性化を着実に図ってまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 十二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、被災地への職員派遣の実績と成果についてでございます。
 都はこれまで、延べ一万七千人を超える職員を被災地に派遣し、総力を挙げて被災地支援に取り組んでまいりました。
 具体的には、発災直後に警察、消防が出動し、献身的に救出救助活動に従事するとともに、医療職による救護活動、保健相談、技術職によるライフラインの応急復旧や建築物の危険度判定、事務職等による罹災証明発行など、さまざまな支援活動を行ってまいりました。
 これら都職員の活動に対し、例えば、都が医療救護活動のリーダー役を担っているとの感謝の言葉や、職員の瓦れき処理が早期の学校再開を実現したとのお礼など、多くの感謝の声が寄せられております。
 被災地の状況が日々刻々と変化している中にあって、今後とも、都は、現地事務所による情報収集活動をもとに、被災地の方々に真に役立つ支援に全力で取り組んでまいります。
 次に、今後の職員派遣のあり方についてでございます。
 震災後三カ月が経過し、被災地が今後支援を要する業務は、壊滅的な被害を受けたまちの復興、被災者の生活再建、多くの職員が被災した自治体の立て直しなど、質的に変化してきております。
 これを受け、都の人的支援も、当初の短期派遣から、中長期にわたり専門技術や行政経験を有する職員を派遣する方向へ移行しつつあり、道路や港湾施設の復旧や学校授業の正常化に向け、技術職員や教員の派遣を開始したところでございます。
 また、被災県における復興計画策定や、被災した市町村の行政機能再建などに、現在、都として支援を申し出ておりまして、順次、都職員を中長期で復興所管部門に派遣をしていく予定であります。
 今後も、現地のニーズを十分に踏まえ、職員が都で培った技術やノウハウを生かし、被災自治体の業務の一翼を継続的に担うことで、早期の復興に貢献をしてまいります。
 次に、衛星通信を活用した災害情報の把握でございます。
 都は、発災時に区市町村や防災機関から得た被害情報を集約する災害情報システム等を整備するとともに、ヘリコプター映像や消防職員などが撮影した被災現場の画像なども活用し、多様な手法により災害情報を把握することとしております。
 現行の方法に加え、災害情報の把握に衛星通信を活用することは、災害の影響を受けずに情報収集が可能になるとともに、広域的かつ高解像度のデータが得られることなどから有効と考えます。
 現在活用できる観測衛星の状況では、データの更新に一定の時間を要しますが、今後、日本の独自観測衛星の打ち上げが予定されており、データ入手に要する時間の短縮が期待されます。こうした動向を踏まえ、災害情報の把握に衛星通信の活用を検討してまいります。
 次に、防災機関などの通信手段の確保についてでございます。
 今回の震災では、携帯電話による通話やメールなど、多くの通信媒体が機能せず、発災時において安定的な通信を確保するため、通信手段を多様化することの重要性が明らかになりました。
 都はこれまでも、区市町村や警察、消防などの重要な防災機関には、映像やデータを送れる多重無線と電話、ファックスが使える無線を配備するなど、防災行政無線を二重化して、確実な通信の確保に努めてまいりました。
 今後は、今回の震災を踏まえて、防災関係機関の通信手段のさらなる多様化に向け、避難所や主要駅、協力団体など、関係機関相互の情報連絡の現状を検証した上で、防災行政無線のほか、携帯型無線機や災害時優先電話などの活用を検討してまいります。
 次に、安否確認サービスの技術開発などについてでございます。
 災害時における家族や友人の安否確認は、人々の不安を和らげるとともに、安全が確保されるまで落ちついて行動ができるようになるなど、発災直後の混乱を抑制するためにも極めて重要でございます。
 今回の震災では、事業者による通信規制と基地局の通信容量を大幅に超えるアクセスの集中により、災害時の安否確認の手段として期待されていた災害伝言サービスについても接続が困難になるなどの事態が生じました。
 このため、今回の教訓を踏まえ、安否確認サービスなどについて通信事業者を含めた協議の場を設置して、対策の検討に着手いたします。また、通信事業を所管する国に対しても、発災時における情報通信基盤の強化について強く働きかけてまいります。
 次に、防災行政無線についてでございます。
 震災の発生時において、住民に対する的確な避難誘導や正確な被害情報の伝達を行う上で、防災行政無線は有効な手段でございます。
 このため都は、区市町村が住民に防災行政無線を活用してよりきめ細かな災害情報を伝達できるよう、火災や建物の倒壊場所等の地図情報、高所に設置したカメラからの被災映像等を新たに配信するなど、災害情報システムの機能を拡充してまいります。
 さらに今後、防災行政無線の運用状況の調査を行い、行政区域をまたがる情報の伝達など、広域的な観点から課題を検証した上で、国に対して必要な要望を行うなど、防災行政無線の有効活用に向けて区市町村を支援してまいります。
 次に、帰宅困難者対策訓練についてでございます。
 三月十一日の東日本大震災では、都内の広範囲な地域で大量の帰宅困難者が発生し、日中の発災にも変わらず、その対応は深夜、早朝にまで及んだところでございます。
 首都直下地震が夜間や悪天候時に発災した場合、今回とは異なる厳しい状況の中で一層の混乱が生じるおそれがあることから、発災の時期、時刻、天候など、さまざまな状況を想定した対策を講じておく必要がございます。
 このため、都は国、経済団体、鉄道事業者などと、帰宅困難者対策について総合的に検討する協議会を早期に設置し、行政や事業者の役割と責任を明確化するとともに、それぞれが連携して行う取り組みなどを具体化してまいります。さらに、その検討の成果を踏まえ、悪条件下での発災も視野に入れた訓練を今後実施してまいります。
 次に、停電時も含めた情報提供についてでございます。
 発災直後の混乱の中、帰宅困難者に正確な情報を提供することは極めて重要であり、都はこれまで、区市や民間事業者と連携し、防災行政無線や大型画面を活用して情報を提供する体制を整えてまいりました。
 首都直下地震の発災時に都内の相当な地域で停電が起きると想定をされており、帰宅困難者に対する情報提供に支障を来すおそれがございます。
 このため、公共施設においては、自家用発電設備の整備や燃料の確保などにより電力を確保し、安定的な情報提供に向けた体制を整えてまいります。また、鉄道事業者や業界団体などに対し、駅における情報提供体制の整備や予備電源の確保などの対策を要請し、情報提供機能の確保を促してまいります。
 次に、民間施設における受け入れ拡大と備蓄についてでございます。
 今回の震災では大量の帰宅困難者が発生したため、都は区市町村と連携して一時待機施設を開設し、帰宅困難者に対して食料や飲料水などの提供を行ったところでございます。
 首都直下地震が発生した場合には今回と異なり、被災した多くの住民を避難所に受け入れる必要があることから、帰宅困難者のための一時待機施設の確保は大きな課題でございます。
 このため、公的施設はもとより、民間事業者の協力を得て、駅周辺のビルや施設などにおける一時受け入れ施設の設置と備蓄を推進する必要がございます。
 今後、帰宅困難者対策について検討する協議会において、民間事業者に対し、顧客保護を含めた一時受け入れの拡大や備蓄の促進について協力を要請してまいります。
 次に、石油タンクの長周期地震動対策についてでございます。
 石油タンクの安全確保対策の推進は、本来国が行うべき責務であり、九都県市ではこれまでも、十勝沖地震の長周期地震動により石油タンクで火災が発生したことなどを受け、長周期地震動対策などについて国に要望を行ってまいりました。
 今回の震災では、東北地方等に加え、東京湾沿岸でも市原市や船橋市、川崎市の石油タンク等で、火災や配管が破損するなどの被害が発生したところです。こうしたことを受け、国は被災した施設の実態調査を行い、地震対策等の検討を行うこととしております。
 今後、東京湾内の石油タンクの安全性の確保等について、九都県市で緊密に情報交換を行うとともに、長周期地震動対策等について引き続き国に要望をしてまいります。
 次に、東京湾の津波、高潮対策についてでございます。
 今回の東日本大地震では、巨大な津波によって多数のとうとい人命が失われたことから、多くの都民が津波や高潮に対して不安を感じております。
 都は、平成三年に東京都防災会議において津波の想定を行い、これに基づき、水門や外郭堤防の整備等のハード対策や、避難誘導などのソフト対策に取り組んでまいりましたが、東日本大震災を踏まえ、津波の専門家の参加を得て、従来の想定について最新の分析手法やデータを用い、再検証を行ってまいります。この成果をもとに、現行の津波、高潮対策について必要な見直しを行い、東京都防災対応指針において対応の方向性を示すとともに、来年夏の地域防災計画の修正に反映をさせてまいります。
 最後に、放射能対策への首都大学東京の協力についてでございます。
 首都大学東京の都市教養学部や健康福祉学部では、放射性物質や放射線の人体への影響などについて教育研究を行ってきております。
 福島第一原子力発電所事故の発生以来、大学は水道局や港湾局と協定を締結し、東村山浄水場の水道水や東京湾内の海水の放射性物質の測定を継続して実施してきております。
 今後、さらに福祉保健局などが行う放射線量の測定分析に、大学が有する学術的、専門的な知見を生かした助言を行うなど、積極的に協力するとともに、公開講座により、都民の放射能に関する正しい知識の啓発を進めてまいります。
 こうした放射能対策への取り組みを通し、首都大学東京として、都民生活の安全・安心に寄与してまいります。
   〔生活文化局長並木一夫君登壇〕

〇生活文化局長(並木一夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、被災地における文化交流の取り組みについてでございます。
 被災された方々の心をいやし、夢や希望を与えるには、ご指摘のとおり、芸術文化の持つ力を活用することが有効であり、今回の緊急対策でも、被災者に対して芸術文化活動を提供するなどの事業を展開することとしております。
 具体的には、郡山市などで好評であった東京都交響楽団による演奏活動のさらなる展開を図るとともに、マジックやパントマイムなど、一般の方に親しみやすく、大がかりな舞台を必要としないヘブンアーチストを被災地に派遣してまいります。
 さらに、これまでの都の文化事業におけるネットワークを生かしまして、劇団やNPO等の民間団体に幅広く呼びかけ、被災地の復興状況や地元の方からのニーズ等に応じたアーチストの派遣に積極的に取り組んでまいります。
 次に、私立学校における震災時の児童生徒等の保護に対する都の支援策についてでございます。
 私立学校においては、児童生徒等の安全の確保については、各学校が責任を持って対処しております。
 今回の大震災では、交通機関がストップし、都内の私立学校においても、多数の児童生徒等や保護者が帰宅困難となりました。とりわけ私立学校では、比較的遠くから通学している児童生徒等が多いこともあり、子どもの安全確保のため校内に宿泊させた事例も多くございました。
 こうしたことから、各私立学校においても、帰宅困難となった児童生徒等の安全を確保できる環境を整備することが極めて重要でございます。
 このため、都は、都内私立学校において、児童生徒等を一定期間保護するのに必要な水や食料、毛布などの物資を備蓄できるよう、緊急対策として新たに補助を行うことといたしました。
 今後、各学校に対し、補助制度の周知徹底を図り、利用を促進することにより、都内私立学校に通う児童生徒等の帰宅困難者対策を進めてまいります。
   〔スポーツ振興局長笠井謙一君登壇〕

〇スポーツ振興局長(笠井謙一君) スポーツを通じた被災地支援についてでございますが、被災地では体育施設が損壊したり、避難施設として利用されるなどにより、子どもたちがスポーツに触れる機会が制約されると認識しております。
 一時避難施設として都が運営いたしました東京武道館や味の素スタジアムでは、お話のサッカー教室などのほか、慰問に訪れた横綱白鵬関を初めとする力士たちと子どもたちとが相撲をとったり、四股を踏むなど、一緒に体を動かせる場を提供し、避難所生活のストレス軽減を図っておりました。
 今後は、被災地域の子どもたちを東京に招待し、東京で開催される国際大会など、注目度の高いスポーツ大会を観戦する機会を提供してまいります。
 また、ホームステイなども含め、東京の子どもたちと交流しながら合同練習を行うなど、スポーツで体を動かせる機会も提供してまいります。
 さらに、アジア十五都市からジュニア選手を招聘し、八月に東京で開催いたしますジュニアスポーツアジア交流大会におきまして、今年度は被災県からも選手を招き、各都市選手とバドミントンや柔道の交流試合などを行う予定でございます。
 こうした取り組みを通じまして、被災地の子どもたちが明るい夢を持ち、元気を取り戻せるように支援してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 六点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、大規模震災に備えた保育施設への支援についてでございますが、保護者が迎えに来るまで児童を安全に預かることは、保育施設の基本であり、今回の発災当日におきましても、数多くの施設が児童の保護に夜を徹して対応いたしております。
 こうした教訓を踏まえまして、長時間の保育を急遽実施することになった場合にも、児童が安心して保育施設で過ごせるよう、都は新たに水や非常食等の備蓄品の購入等に要する経費について、包括補助制度を活用し、区市町村を通じて支援することといたしました。
 今後も、災害時の児童の安全を確保するため、区市町村と連携し、保育施設に対して防災体制の充実を働きかけてまいります。
 次に、都内被災世帯への支援についてでございますが、お話のように、今回の東日本大震災における都内の住宅被害の状況は、六月十三日現在、全壊十一棟、大規模半壊と半壊を合わせて百二十八棟となっておりますが、被災者生活再建支援法の支給要件を満たしておりません。また、住宅の半壊被害は法の支援対象となっておりません。
 東日本大震災は、広域にわたり甚大な被害を及ぼしており、都道府県や区市町村ごとに対応するのではなく、国が統一的な対応を行うべきでございます。
 そのため、都といたしましては、同一の災害で被災したすべての地域が対象となりますよう、被災規模に関する適用要件の緩和や支援対象世帯の拡大を国に提案要求をしてまいります。
 これらが実現するまでの間の被災世帯への支援につきましては、地元自治体の意向も踏まえまして、連携しながら今後具体的に検討してまいります。
 次に、放射線対策に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、降下物による健康影響についてでございますが、都内では、昭和三十二年から、海外の核実験等により飛来した放射線を出す物質、いわゆる放射性物質が、雨やちりとしてどの程度落下してきたかを確認するため、降下物中の放射性物質の測定を行ってまいりました。現在は新宿区の健康安全研究センターで測定を行っておりまして、福島第一原子力発電所の事故発生後の三月十八日からは、毎日測定を実施いたしております。
 降下物のうち、セシウム137のこれまでの測定値を見ますと、三月二十日に初めて一平方メートル当たり五百六十ベクレルが検出された後、翌二十一日には、お話のように、測定開始以来の最高値でございます五千三百ベクレルへ急上昇いたしました。その後、三月二十二日には三百三十ベクレル、二十三日には百六十ベクレル、二十四日には三十七ベクレルと、測定値は急速に低下をいたしまして、五月十四日を最後に検出されておりません。
 こうしたことから、三月二十一日に測定された高い数値は、事故発生後に初めて降った雨とともに、大気中に飛散していた放射性物質が降下してきたためであると推測されます。
 ただ、この降下物の測定単位といたしまして使われておりますベクレルは、放射性物質が持っている放射線を出す能力をあらわすものでございまして、降下物の測定結果からそのまま人体への健康影響を判断することはできません。人が放射線を浴びた健康影響を評価する際は、放射性物質から放出される放射線量を用いる必要がございます。
 この数値はシーベルトの単位であらわされますが、降下物測定と同じ場所にあるモニタリングポストで計測された三月二十一日の大気中の放射線量は、平均で一時間当たり〇・〇九六九マイクロシーベルトでございまして、健康に影響を及ぼすレベルではございませんでした。
 これまでの測定値はすべてホームページで公表しており、今後、お話のように、文部科学省が月間降下物のデータを発表した際にも、客観的なデータに基づきまして、健康影響に関する情報を広く都民に提供してまいります。
 次に、都独自のモニタリング等についてでございますが、土壌からの放射線量の状況につきましては、大気中の放射線量を地表に近い地点で測定することによりまして把握できるとされております。
 そのため、都は六月十五日から、都内百カ所で、地表面から五センチメートル及び地上一メートルの高さで放射線量を測定し、土壌からの放射線の状況をより詳細に把握することとしております。
 測定に当たりましては、地表面からの高さの設定を初め、首都大学東京からのさまざまな助言を得て実施しております。
 測定結果はすべてホームページ等で公開しておりますが、一時間当たり〇・〇二から〇・二〇マイクロシーベルトの結果が出ております。この最大値でございます一時間当たり〇・二〇マイクロシーベルトを用いまして、一年間で受ける放射線量を自然放射線量等を除いて推計をいたしますと、〇・七九ミリシーベルトと試算されます。
 今後の放射線量の測定に当たりましては、区市町村に貸与した七十台の小型の測定器に加えまして、保健所にも三十台測定器を貸与するとともに、都としても求めに応じて計測を支援してまいります。また、モニタリングポストの測定値が上昇した場合など、状況の変化があった場合には、改めて適切に対応してまいります。
 次に、プールの水についてでございますが、昨年からプールにたまっている水には、原子力発電所事故に由来する放射性物質を含む降下物が蓄積していると考えられます。
 この水に蓄積をしている放射性物質につきまして、健康安全研究センターで測定をしております、本年三月十八日から六月一日までの降下物の積算量に、半減期を考慮した上で試算をいたしますと、通常のプールで深さを平均一メートルと仮定した場合、水一リットル当たり放射性沃素が約〇・二ベクレル、放射性セシウムが約十三・四ベクレルとなります。
 この値は、飲料水の摂取制限に関する指標でございます沃素三百ベクレル、セシウム二百ベクレルを大きく下回る数値でございまして、清掃に当たっての問題はございません。また、現時点では、新たに降下物中や水道水から放射性物質が検出されていないことから、水を入れかえたプールを例年どおり使用しても問題はございません。
 次に、モニタリングポストの設置場所についてでございますが、都内では、昭和三十二年に海外の核実験や原子力発電所の事故に由来する大気中の放射線量の変化を継続的に把握するための測定を開始し、現在は健康安全研究センターにモニタリングポストを設置し、測定いたしております。
 今後、都内の状況をより広域的かつ迅速に把握するため、新たに二カ所設置する予定でございます。増設するモニタリングポストの設置場所につきましては、こうした設置目的やご指摘の点も踏まえまして、今後検討してまいります。
 最後に、都民に対する情報提供についてでございますが、都は、都民の不安を解消するために、ホームページにおきまして、大気中の放射線量などの最新データを公表いたしますとともに、外出先でも情報を入手できるよう、都内五カ所の街頭ビジョンにおいて、最新の放射線の測定結果を放映いたしております。
 また、電話相談窓口を設置いたしまして、例えば、放射能測定の方法を教えてほしい、プールの水は安全かなど、四千件を超えるさまざまな問い合わせに対応してまいりました。
 今後は、放射線に対します都民の理解をより深めるために、ホームページを再構築いたしまして、電話相談の実績も踏まえ、都民の関心が高い事項につきまして、適宜データ等を用いて解説するなど、内容の充実を図りますとともに、都民向けシンポジウムや学校関係者等への講習会を開催いたします。
 こうした取り組みによりまして、都民に対し、放射線のリスクの程度や必要な対応に関する情報提供に努めてまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 東京港の水門や防潮堤の耐震対策についてでありますが、都は、阪神・淡路大震災を踏まえた首都直下地震などからの被災リスクを低減し、都民生活の安全・安心を確保するため、平成十八年度に東京港海岸保全施設緊急整備計画を策定し、二十七年度を目標年次として対策を進めております。
 具体的には、首都東京を第一線で守る既設の外郭防潮堤や水門について、液状化に対する耐震対策などを実施してきております。これにより、外郭防潮堤については、計画の全延長について来年度中に完了する見通しとなっております。また、水門についても、計画の十五カ所のうち十一カ所について来年度中に完了する予定であり、残る四水門についても早急に取り組みを行ってまいります。
 今後も、緊急にとるべき対応策や防災のあり方などに関する技術検証委員会からの提言等を踏まえ、東京港の津波、高潮対策のさらなる強化に取り組んでまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、地震、津波に伴う水害対策技術検証委員会の目的、取り組み内容とスケジュールについてでございますが、本委員会は、地震や津波などの専門家で構成され、河川、港湾、下水道施設などに関して、今回の大地震を踏まえた緊急対応等についての提言を行うことを目的としております。
 具体的には、都の緊急点検の結果を踏まえ、堤防や排水機場の耐震性、電気、機械設備の耐水性等を検証するとともに、必要となる技術的な対策の検討を行います。
 既に六月八日に委員会を立ち上げており、秋までに中間報告を取りまとめ、年内には最終提言を行う予定であり、これに基づき、必要な施策を速やかに実施してまいります。
 今後とも、国や関係各局と連携を図りながら、東京の防災性の高度化に取り組んでまいります。
 次に、液状化予測図の見直しについてでございますが、液状化予測図は、地域ごとの液状化発生の可能性を目安として示したもので、公共施設や民間建築などの液状化対策を検討する上で、基本となる情報の一つであると認識しております。
 見直しに当たっては、東京都土木技術支援・人材育成センターを中心に、危険度の分類方法や情報提供のあり方などについて検討を行うとともに、新たに地質調査などを実施し、その結果をさらなる精度向上に活用いたします。
 これらに加え、東日本大震災による新たな知見について、地盤の専門家などから意見を聞くとともに、国土交通省が本年五月に設置した液状化対策技術検討会議での議論の結果も踏まえ、反映させてまいります。
 今後、年度内に地質データに基づいた地盤工学的な判定結果を関係各局に情報提供するとともに、地形や液状化の履歴、田んぼなどの土地利用の変遷をこの判定結果に加味し、平成二十四年度末を目途に液状化予測図の見直しを完了させます。引き続き液状化対策を積極的に実施し、災害に強い都市づくりに全力で取り組んでまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 放射性物質を含む下水汚泥などの取り扱いについてでございます。
 汚泥処理プラントを有する水再生センターでは、下水の処理過程で発生した汚泥を全量焼却し、灰にしてセメントなどへの資源化や埋立処分を行っておりましたが、現在は資源化を見合わせ、区部では灰の全量を、飛散防止措置をした上で埋立処分をしております。多摩地域では施設内に仮置きする措置をとっております。
 下水汚泥の焼却によって生じる排ガスは、煙突から排出される前に、細かいちりなどを除去できる高性能フィルターなどに通し、その後、さらにアルカリ性の水によって洗うことで、固形物を九九・九%以上回収し、灰が施設外へ飛散することのないよう、適切に管理をしております。
 水で洗った後の排ガスの成分につきましては、先般、専門機関に委託して測定をした結果、放射性物質は検出はされませんでした。
 焼却灰の運搬に当たってはタンクローリーを、また、埋立処分先へは、焼却灰に飛散防止措置を施した上で、開閉式のふたがついたトラックを用い、さらに搬出の際にはタイヤや車体を洗浄しており、外部に灰が飛散することはございません。
 作業については、既に安全対策を講じておりますが、今後、万全を期するため、厚生労働省など関係機関と協議しつつ、安全性を一層高める観点から、よりきめ細かな作業方法を徹底するなど、適切に対応してまいります。
 これらのことから、一部報道にあるような放射性物質を含む灰が飛散する事実はなく、施設の敷地境界の空間放射線量は、都内の他の地域と変わらない数値となっております。また、脱水汚泥や焼却灰に含まれる放射性物質は、専門機関に委託して測定し、その結果を定期的にホームページで公表しております。
 今後は、敷地境界の空間放射線量の測定は二週間に一回を毎週行うこととし、さらに、首都大学東京などの学識経験者の意見も踏まえ、測定を継続し、その結果をわかりやすくホームページなどで公表し、正確な情報を皆様にお伝えしてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、スマートグリッドについてでございますが、スマートグリッドは、電力会社が需要家との双方向の通信によって電力消費データを集約し、電力の需給が逼迫した場合には需要を自動制御することもできる仕組みであることから、大幅な電力不足が避けられない今夏、改めて脚光を浴びております。
 都内では、昨年、小平市の約千二百世帯にスマートメーターが試験導入されたほか、大手町・丸の内・有楽町地区、いわゆる大・丸
・有地区におきましては、再生可能エネルギー、蓄電池、電気自動車等を組み合わせたスマートグリッドモデルの検討が始まっております。
 都は今後、こうした民間の取り組みも参考にしながら、スマートグリッドの導入に向けた検討を進め、再生可能エネルギーや高効率発電設備など、自立分散型のエネルギー源の確保に向けた取り組みを推進してまいります。
 次に、再生可能エネルギーの普及拡大に向けた取り組みについてでございますが、都はこれまで、太陽エネルギーを中心に再生可能エネルギーの普及拡大を進めてきており、今回の電力対策緊急プログラムでも、さらなる太陽エネルギーの普及に資する補助事業を実施することとしております。
 一方、ご指摘のとおり、風況に恵まれていない都内におきましては、風力発電の普及拡大が進みにくい状況にございます。しかしながら、千葉や茨城などの近県におきましては、海岸沿いなどで風力発電が導入されている事例が見られ、広域的な視点で見れば普及拡大の可能性があると考えております。
 このため、首都圏全体の電力供給の低炭素化を図る観点から、首都圏の各自治体とも連携し、広域的に風力発電の普及拡大を図る取り組みも検討してまいります。
 さらに、都においては、既に公営企業で小水力発電を稼働させるとともに、都の呼びかけで開始しました波力発電の検討を生かした民間の技術開発の誘導や、青ヶ島での地熱エネルギーの活用調査など多様な再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みも開始しておりまして、高効率な天然ガス発電とともに、再生可能エネルギーの拡大にも力を尽くしてまいります。
 次に、自然エネルギーのパッシブ利用の家庭における普及強化についてでございますが、都はこれまで、建築物環境計画書制度におきまして、天窓や吹き抜けを利用して自然の光をそのまま活用する建築物に高い評価を与えるなど、自然エネルギーのパッシブ利用の促進に取り組んでまいりました。東京を低炭素型都市とし、より少ないエネルギーで快適な生活を送れるようにするためには、建築物だけでなく、これまでの生活様式を見直し、可能な限り自然の力を活用するライフスタイルへの転換を進めていく必要がございます。
 今後、区市町村と連携して、省エネに関するフェアや防災フェアなど都民と接する機会をとらえ、緑のカーテンにより日差しを遮ることで室温上昇を抑えるなど、パッシブ利用に関する普及活動を強化してまいります。
 次に、瓦れきなど災害破損物の受け入れについてでございますが、被災地の早期の復興には、災害破損物の速やかな撤去が不可欠でございます。
 このため、都は、被災した自治体の意向や実情を踏まえ、現地で新たに処理施設を整備するよりも早急な処理が可能で、被災地の事務負担を軽減することができる、都と都内の自治体、廃棄物事業者が共同で取り組む受け入れスキームを構築いたしました。
 都のスキームは既に、国及び岩手、宮城両県に提案しておりますが、現在、県レベルだけでなく被災した市町村とも直接連絡をとり、具体的な処理方法の説明を進めております。
 また、都内自治体や民間事業者と処理契約の締結に向けた準備を進めるほか、現地において、受け入れる廃棄物の性状を確認し、被災地の地元自治体など関係者に分別方法を勧めるなど、早期の受け入れ体制に向けて精力的に調整を進めてまいります。
 最後に、災害破損物のリサイクルについてでございますが、今回受け入れを行います災害破損物につきましては、極力分別してリサイクルすることを原則としております。
 具体的には、プラスチックを含む可燃性廃棄物につきましては、発電設備を有する都内自治体の清掃工場や民間の焼却施設でサーマルリサイクルを行います。また、良質な木くずにつきましては、リサイクル技術を有する事業者と協力して、これをチップ化した上でバイオマス燃料として活用したり、木質ボードとして再利用するなど、積極的にリサイクルを推進してまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 五十八番かち佳代子さん。
   〔五十八番かち佳代子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇五十八番(かち佳代子君) 日本共産党を代表して質問します。
 初めに、東日本大震災で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。また、救援、復旧のために懸命に取り組んでいるすべての皆様に心から敬意を表するものです。
 今定例会で問われているのは、都として震災被災地、被災者への支援、住民本位の救援、復旧、復興に全力を挙げるとともに、原発ゼロを目指し再生可能エネルギーへの転換を図ること、防災福祉都市をつくって都民の命と財産を守り抜く道を切り開くかどうかです。
 私は先日、我が党の災害救援ボランティアの一員として、市民の約八割が被災し、六割の家屋が冠水、八割の漁船が流出した石巻市に行ってきました。
 妻が寝たきりで避難所にも行けない高齢の男性は、半壊の自宅で生活し、支援の手さえ入らないと語っていました。多くの人々に義援金や支援金も行き渡らず、被災者の厳しい生活を身にしみて感じてきました。いまだに復旧は緒についたばかりです。瓦れき撤去や炊き出しなどのボランティアも、土木、建築の技術者など専門家も大きく不足しています。
 知事は、被災地の現状と被災者の要求についてどう受けとめていますか。被災者への手厚い支援とライフラインなどの一日も早い復旧、さらには、住民や地元自治体が望む住民本位の生活再建と地域経済の復興は、まさに国民的課題であり、国を挙げて取り組むべき必要があります。首都東京がこの取り組みに大きく貢献することが求められていますが、知事の所見を伺います。
 次に、福島原発事故をどうとらえ、都として放射能汚染やエネルギー問題にどう取り組むかという問題です。
 放射能汚染が拡大する中で、お母さんたちから、子どもの通う保育園や学校の校庭は大丈夫かしらなど心配の声が上がっています。
 日本共産党都議団は、都民の強い要望を受け、都内百二十八カ所で地上一メートルの放射線量を測定しました。ほとんどの地域で、都が地上十八メートルで測定しているモニタリングポストの値より高く、その中でも、区部東部地域で比較的高い数値が測定されました。
 私たちは都の測定方法を、人の生活する高さ地上一メートルで行うよう改め、抜本的に測定箇所をふやすよう求めてきました。都もようやく一定の改善を図ったことは重要ですが、まだまだ不十分です。
 原発事故は収束のめどが立っていません。放射能汚染は今後どうなるのか、微量といえども長い年月に蓄積される内部被曝が体にどう影響するのかなど、未解明なことがたくさんあります。
 都として何よりも重要なことは、未来を担う子どもたちの安全を必ず確保するという厳しい立場で放射能対策に当たることですが、知事、いかがですか。
 そのためにも、各学校や保育園、幼稚園の校庭、砂場などの放射線量を施設ごとに確認できるよう、測定機器購入などへの支援をすべきです。また、給食食材などを測定できるよう支援すべきです。そして、年間線量基準一ミリシーベルトを超える場合には、土を入れかえる、芝を刈るなど可能な対策をとり、その費用負担は東電と国に求めるべきです。
 ストロンチウム、ウラン、プルトニウムなどが放出されていますが、その全容の公開を東電と国に求めるべきです。同時に都としても、これらの放射性物質が測定できる機器を購入し、施設も整備して継続的に測定を実施することが重要です。見解を伺います。
 都として、東京の海域の海水や海底土の定期的測定を行うとともに、海産物や農産物の測定を抜本的に拡充すべきです。
 福島原発事故という未曾有の大災害を引き起こした歴代政府と東電の責任は本当に重大です。同時に知事が、あれは天災だ、十メートルの津波などだれも想定できなかったなどといって、この責任を擁護していることにも都民の厳しい批判の声が上がっています。
 日本共産党はかねてから、福島第一原発などを例に挙げて、大地震、大津波によって原子炉の冷却機能が失われ、炉心溶融の危険があることを具体的に指摘し、改善を求めてきました。二年前には経済産業省の審議会で、貞観津波の調査研究を踏まえ、福島原発の耐震性に対する懸念が東電側に伝えられました。にもかかわらず、歴代政府と東電は、日本では過酷事故は起こらないと安全神話に固執し、何の措置もとらなかったのです。
 知事、今回の事故はとるべき対策すらとってこなかった人災だということは明白ではありませんか。
 知事は、あの事故は管理の問題だとも発言しています。もちろん管理も最低です。しかし原発が安全か否かは、管理というレベルの問題ではありません。どの原発もエネルギーを取り出す過程で大量の放射性物質を生み出します。この死の灰を安全に原子炉内に閉じ込める手段を人類はまだ手にしていないのです。
 放射性廃棄物の処理方法は全く見通しが立っておらず、原発敷地内や六ヶ所村にため込んでいるだけです。原発は未完成で危険な技術です。この本質的な問題を知事はどう認識しているのですか。
 知事は、浜岡原発についての見解を問われて、防波堤も含めて、できるだけ早い時期に完成された形で原発が始動することが好ましいと発言しました。首都圏により近い浜岡原発が大地震、津波に襲われ、施設が重大な損害を受ければ、福島原発をはるかに超える損害、被災を都民にもたらすことは火を見るよりも明らかです。
 日本世論調査会の調査では、今ある原発はすべて廃炉にすべきが八二%を占めているのです。浜岡原発は休止ではなく真っ先に廃炉にするよう求めるべきです。知事の見解を伺います。
 知事は、風車、太陽光では電気の供給量は知れているなどと発言しています。しかし、自然エネルギーへの転換は今や世界の大きな流れです。太陽光、水力、風力、波力、地熱などに加え、バイオマスなど再生可能エネルギーを大幅にふやすなら、全体としてコストも下がり、安定的な供給ができるのです。そして、このことによって中小企業は力をつけ、新たな経済発展の道が開けます。知事、自然エネルギーを中心とした東京発の新エネルギー戦略をつくろうではありませんか。いかがですか。
 太陽光発電のコストについていえば、日本の企業は、二〇三〇年には一キロワットアワー時の発電で七円を目標としています。環境省の調査によれば、都有地、学校など公的施設の活用で、年間発電量約六十五億キロワット時の発電が生み出せます。また、私たちの試算では、都内の民間住宅の三割に普及すれば、年間約二十八億キロワット時、合わせて九十三億キロワット時となり、これだけで都内供給電力の一割以上にもなるのです。
 知事も一度は廃止した太陽光発電設置への助成を不十分ながらも復活しましたが、これにとどまらない取り組みが必要です。そのためにも、群馬県太田市が実施しているように、一括購入で設置費を大幅に下げる、十年リースで初期設置費用を無料化するなどの思い切った対策をとり、中小企業、保育園、福祉施設などへも普及することが重要だと考えますが、それぞれお答えください。
 安定した出力を得られる中小水力発電にも着目すべきです。オーストリアでは四割が水力発電です。東京でも大きな可能性があります。主な河川だけで六十三カ所、区市管理の用水路のほか、多摩地域には農業用水路も七十五カ所あるのです。堰がなくても水の流れさえあれば発電できる技術も開発され、東京都ベンチャー企業大賞を受賞し注目されています。上下水道、工業用水、火力発電所の冷却水などでも発電が可能です。地域に根差した無数の小水力発電を進める緊急対策に取り組む必要があると思いますが、答弁を求めます。
 東京都には広大な海域があり、海に浮かべる洋上風力と波力発電の可能性は大きなものがあります。早急に実証実験に踏み出すなど、島しょの経済、漁業振興と一体で進めるべきだと思いますが、どうですか。
 大量生産、大量消費、大量廃棄、二十四時間型社会というエネルギー浪費社会を抜本的に改めることも重要です。それは我慢の社会ではなく、地球と人間に優しい社会のあり方を追求するものです。節電の名で障害者などが危険にさらされたり、子どもたちの学校での活動を制限するなど、あってはならないことを申し述べておくものです。
 次に、いつ東京を襲っても不思議ではない巨大地震に備え、防災福祉都市づくりを緊急に進める問題です。
 その第一は、あらゆる危険性を直視し、どんな地震からも都民の命と財産を守るという立場にしっかりと立つべきことです。
 中央防災会議は、かつて、住民の生命、身体、財産を守ることを第一に、首都圏直下の地震として十八タイプを想定し、予想される地震のすべてに漏れなく対応できる対策をとることが望ましいと呼びかけました。ところがその後、首都中枢機能の継続性の確保を最優先にする立場に転換し、東京湾北部地震対策一つに絞ってしまったのです。しかし、同時に残る十七タイプの地震についても対策を講ずるべきとしていました。
 ところが、都の想定対象としては、東京湾北部地震に多摩直下を加えるにとどまりました。この二つの地震の震度想定は、最大でも六強です。外された立川断層地震は、多摩の南部地域を中心に震度七、都心東部直下地震などは、江東区や台東区の一部で震度七の危険がそれぞれ指摘されているのです。知事はなぜ残る十六のタイプの地震を対策の対象から外したのですか。
 東日本大震災を踏まえて、中央防災会議は、可能性があるすべての地震や津波を対象とするとの中間報告を準備しています。都としても、新たに東海、東南海、南海の三連動地震の想定だけでなく、中央防災会議で示された首都圏の十八タイプ全部を想定すべきです。さらに、新潟から関東に抜ける巨大陥没地帯にある帯状の断層による直下型地震の可能性については、最新の知見を踏まえた調査検討を始めるべきではありませんか。
 続いて、防災福祉都市づくりの課題について提案します。
 地震から都民の命を守る上で何よりも重要なことは、災害を未然に防止し被害を最小限に食いとめる予防の原則です。ところが知事は、震災予防条例を廃止し、予防の立場を投げ捨てました。そして都民に、自分の命は自分で守れという自己責任論を押しつけています。その一方、都が重視しているのは、専ら住宅密集地域の再開発などによって幹線道路とビルをつくることです。これでは住民の納得も得られないし、木造住宅の耐震不燃化も進みません。
 この五年間に都の助成で耐震改修を行った木造住宅はわずか三百一件です。静岡県が同じ時期に実施した助成は八千九百四十三件の三%にすぎません。この違いは、静岡では県内すべての地域の木造住宅に助成を行い、高齢者世帯などには上乗せ助成をしているのに、東京都は、耐震化は所有者の自己責任だという考え方で、助成の対象を木造密集地域の中のごく一部に絞り込み、高齢者などへの上乗せ助成もないからです。木造住宅への耐震化助成をすべての地域を対象にし、災害弱者への思い切った上乗せをするなど拡充すべきではありませんか。
 木造住宅密集地域については、住民を主体にした修復型のまちづくりを基本として、一つ一つの住宅を耐震化し、燃えにくい外壁構造にしていくことや、消防車が入れるよう隅切りをすること、そして、小型消防車などの整備を含め、木造住宅密集地域の火災に迅速に対応する体制の拡充を図ることが急務です。
 今回の大震災で津波対策の重要性が浮き彫りになりました。これまでの都の津波想定は最大一・二メートルでしたが、今回の津波はその想定を超えました。地震の震源地によっては、数メートルを超える津波が人を襲う可能性があります。
 重視すべきは、都心部及びゼロメートル地帯が、津波や水害に対して極めて脆弱な構造になっている問題です。東京湾を数メートルから十メートルの高さの津波が襲えば、ゼロメートル地帯が冠水する危険性についてどのように認識していますか。津波対策をどのように進めるのですか。
 今回の地震で注目すべきは液状化問題です。私たちの調査では、都内でも江東区の二十一カ所を初め、八区で液状化が発生しており、被害者への支援が強く求められています。都内は国の支援地域から外されているため、葛飾区や江戸川区は独自の助成を行おうとしていますが、都としても、住宅再建及び地盤強化に対する支援を行うべきではないですか。
 また、専門家の英知を結集し、液状化発生状況の綿密な調査、地盤の科学的、歴史的分析、建築物への影響などを総点検するとともに、側方流動なども含む液状化防止対策を進めることが必要です。お答えください。
 東京湾岸部には、一万キロリットルを超える石油タンクだけでも五百基が存在しており、危険物施設への対策は急務です。
 巨大な地震や津波が東京湾を襲えば、燃料の流出、火災の発生で、湾岸全体に想像を絶する被害をもたらす危険があります。湾岸自治体が共同して、地盤と施設の総点検を実施し、国と企業に安全化を強く求めることが必要です。知事、どうですか。
 帰宅困難者対策も見直しが必要です。東京都が大地震に襲われたときに、膨大な帰宅困難者が発生したら、火災に巻き込まれるなど二次被害を拡大する危険があります。
 既に六年前、中央防災会議の専門調査会報告書は、帰宅困難者対策の基本原則はむやみに移動を開始しないことだとしていました。そして、それを保障するため、企業や学校が従業員や子どもたちを一定期間待機させることや、家族の安否確認の体制を整備すること、それを行政が徹底することを求めていました。
 ところが、都が示している帰宅困難者の行動心得十か条は、帰宅中心の心得です。また、今回発表された東京緊急対策二〇一一でも、この傾向が是正されていません。むやみに行動を開始しないよう都民に周知すること、企業、学校、保育所などにおける安否確認の情報手段を確立すること、食料の備蓄などの体制整備を緊急に行うことを徹底し、支援する必要があると考えますが、いかがですか。
 都民だれもが健康で文化的な最低限度の生活ができる東京をつくることは、都の責務であり、防災都市を進めていく上での前提です。
 例えば、国民健康保険料の問題です。二十三区の国保料は毎年値上げされてきましたが、今回はとりわけ深刻です。夫の介護をしながらの生活をしている年金暮らしの女性は、均等割の減免率七割だったのが五割になり、二人世帯で二万三千九百四十円から四万二百九十円にはね上がりました。今年度の保険料通知が届き、とても払えないという怒りの声が広がっています。
 知事は、都民が自覚を持てば耐震補強が進むかのような発言をしましたが、こんな状況でどうして進むといえるでしょうか。都は市区町村国保への財政支援を行い、国保料軽減を進めるべきです。
 地域医療の充実も重要です。知事は、地域医療を担う都立病院の統廃合を進めてきました。町の民間中小病院も、国の診療報酬削減や医師不足によりどんどんなくなっています。しかし、東日本大震災で浮き彫りになったのは、地域医療の重要性です。
 私たちは、被災地の医療支援を行っている東京都病院協会の皆さんから話を伺いました。大病院には広域から重症患者が集まるので、中度、軽度あるいは慢性疾患の被災者まで手が回りません。災害拠点病院の整備と同時に、地域の中小病院を災害支援病院として位置づけて、守り充実することが重要だというのです。
 都独自に災害支援病院を制度化するなど、地域医療の中核を担う中小病院への支援の思い切った拡充が求められていると思いますが、いかがですか。
 都が発表した基本戦略では、震災被害に足踏みすることなく、東京の都市インフラの取り組みを加速するとしています。これは、国や都の財源を東京の巨大道路づくりなどに優先的に投入してはばからないというものであり、一日も早い復興を望んでいる被災地の人々の願いにも、地震に強い東京の一日も早い実現を望む都民の願いにも背を向けるものです。
 例えば、知事のいう都市インフラの最重点の一つで、外環道だけで三兆五千億円もの事業費が必要です。一方、都内には、緊急に耐震化すべき木造住宅は約六十万棟も残されています。そのために、国や自治体、都民が合わせて一兆数千億円ものお金を出さなければなりません。震災に備えて下水道のすべてのマンホールを改善するためだけでも四千六百億円もかかるのです。
 しかも知事は、二〇二〇年オリンピックの東京招致までいい出しました。オリンピック基金四千億円余りも招致のために温存するなら、都民は納得しません。オリンピック招致についていえば、被災地の復興や地震に強い東京を実現する中で、仮に都民による招致の声が広がれば、その時点で検討すればよいではありませんか。
 知事の答弁を求め、再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) かち佳代子議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、被災地支援に係る基本姿勢についてでありますが、震災発生から三カ月がたちますが、依然として被災地には、大地震がもたらしたつめ跡が残っております。被災者の生活再建もままならない状況であります。
 発災直後から都は、警察や消防の部隊を現地に派遣するとともに、救援物資の提供や医療、福祉スタッフの派遣など、全国の先頭に立って持てる力を尽くして支援に取り組んできました。
 首都東京は、被災地に、電力などの供給を初め、農林水産物など多くの供給を負っておりまして、全力で支援することは当然であります。膨大な瓦れきの撤去や仮設住宅の建設、被災地の経済再生など、山積する現地の課題に、機を逸することなく、被災地の実情に即した具体的な支援を行っていく必要があると思っております。
 今後とも、都は、現場を持つ強みを生かしまして、被災地、被災者が復興に向けてみずから踏み出す歩みを、総力を挙げて後押しをしていくつもりでございます。
 次いで、原発に関する三問の質問をいただきましたが、まとめてお答えをいたします。
 私は、歴代政府や東電を擁護した覚えはございません。しかし、地震測定の技術が構えられてから、マグニチュード九の地震は記録の上では未曾有のものだったと思います。
 今回の大地震、大津波はまさに天災でありました。一方、原発事故については、ご指摘をまつまでもなくこれは人災であります。
 平安時代、貞観年間ですか、正確には八六九年のときに大津波に遭って、これは古文書に残っておりまして、それを歌った清少納言のお父さんの歌もありますが、それを踏まえて、地質学者が現地で地質の測定をしまして、実際にかなり大きな津波がここまで来たという報告を、原発、政府にしていたようでありますけれども、こういったものをしんしゃくせずにあの立地が構えられたということは、これはまさに人災といいましょうか、管理の問題だと思います。
 また、どこぞの大臣が、命がけで出向いている東京のハイパーレスキュー隊に、現場の事情も知らず、実態も構わずに無謀な放水命令を出しまして、あまつさえ、いうことを聞かなければ処分をするとのたもうた混乱もありました。これもまさに人災でありますな。
 続いて、原発技術についてでありますが、共産党の主張は全く的外れ、ためにするものでしかないと思います。さらに、浜岡原発の防波堤をつくって安全性を強化するという私の発言について、どこがおかしいんですか。できたらそういうことをしたらいいじゃないですか、原発を生かすためにも。
 共産党のいっていることは、まあ私にはよく理解できませんが、経済や国民生活への影響も顧みずに、短絡的に、原発廃止ありきの共産党の原理主義的な主張は余りにも無責任でありまして、国家の発展を阻害するものだと思います。ただただ硬直して物をとらえて、物事を複合的に、相対的に考えることのできない政党は、もはや政党の名前に値しないんじゃないかという気がいたします。
 次いで、オリンピック招致についてでありますが、我が国が大震災から復興をなし遂げるためには、その目標ともなる夢や希望が必要であります。そのために、オリンピック開催を目指すたいまつを、九月一日がこれタイムリミットでありますから、一応とにかく名乗りを上げて、消さずにたいまつをともし続けることは大きな意義があると思います。
 大震災からやがて日本が立ち上がり、復興した日本の姿を全世界に披瀝するならば、世界じゅうから今まで寄せられた友情や励ましへの何よりもの返礼になると思います。
 二〇二〇年大会は、九月一日が申しました立候補申請の期限であります。これを過ぎたら、幾ら都民、国民が望んでも立候補はできなくなるんです、事務的な手続のルールからいって。でありますので、何でも反対の共産党も含めて、日本全体が一つになって、ぜひオリンピック・パラリンピック招致に取り組むことを考えていただきたいと思います。
 他の質問については、教育長、東京都技監、関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 公立学校の給食食材の放射能測定への支援についてでございます。
 給食の食材に用いる農畜産物等につきましては、各都道府県で放射性物質の検査を実施しております。食品衛生法の暫定規制値を超えた食品に対しては、原子力災害対策特別措置法に基づき、内閣総理大臣が地域、品目を指定して出荷制限の指示を行っており、国として食品の安全確保体制が整えられていることから、都として、個々の区市町村が行う食材の検査に対し、支援をする考えはございません。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、木造住宅の耐震化助成についてでございますが、都は防災都市づくり推進計画に定める、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象として、重点的に施策を展開しております。
 このような地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難、応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、区と連携し、耐震診断や改修に対する公的助成を行っております。
 都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、引き続き整備地域に的を絞り、重点的に木造住宅の耐震化助成を行ってまいります。また、阪神・淡路大震災等で多数の高齢者等が犠牲になっていることを踏まえ、住宅の倒壊から高齢者や障害者等の生命を守るために、緊急に対応すべき施策として、耐震シェルター及び防災ベッドの設置費用助成を既に実施しておりまして、ご指摘のような助成額の上乗せは考えておりません。
 次に、木造住宅密集地域の整備についてでございますが、木造住宅密集地域は老朽化した木造建築物が多いことに加え、狭隘な道路や行きどまり道路など、基盤が脆弱で、狭小な敷地や接道していない敷地が多いといった課題がございます。このため、住民の自発的な個別建てかえや改修に依存した事業だけでは、早期に防災性の向上を図ることが困難であり、道路や公園などの基盤整備とあわせて、建物の共同化などを行う事業や、新たな防火規制などの規制誘導策も組み合わせていくことが不可欠であります。
 こうした住民の安全を守るという公益性の高いまちづくりを進める上では、地元の理解を得ながら、スピード感を持って確実にやり遂げることが行政の責務であります。
 このような考え方に基づいて、今後とも木造住宅密集地域の早期解消に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、放射線対策の基本的な考え方についてでございますが、現段階における放射線対策の第一は、人体への健康影響を把握することでございまして、そのためには、大気中の放射線量を正確に計測することが必要でございます。こうした考え方に立ちまして、都はこれまで、大気中の放射線量などを測定し、最新のデータを公表いたしますとともに、土壌からの影響を把握するために、都内百カ所で放射線の測定をしております。また、国に対しましては、統一的な放射線量の安全基準の策定を求めております。
 さらに、区市町村に小型の測定器を貸与いたしますとともに、今回の補正予算におきましては、モニタリングポストや放射線を測定するための検査機器を増設するなど、都民の健康を確保するという観点から、必要なさまざまな手だてを講じております。
 次に、放射線測定器購入等に関する支援についてでございますが、ただいま申し上げましたとおり、都は六月十五日から約一週間、区市町村の意向に基づきまして、学校や保育園など、都内百カ所で放射線量の測定を行っております。また、区市町村がそれぞれの地域において独自に行う大気中の放射線量測定を支援するため、既に小型の測定器を貸与いたしました。さらに今後、保健所にも測定器を貸与する予定でございまして、改めて測定器購入などの支援をする考えはございません。
 次に、放射性物質への対応についてでございますが、放射性物質への対応は、すべての国民の健康を守るという観点に立って、国において、安全基準や対応方針を示すべきであります。そのため、都は既に、学校、幼稚園、保育園等における放射線量の安全基準値を早急に策定し、公表すること、安全基準値を超えた場合の対応策を示すとともに、その対策等に要した費用については国が全額負担することを、国に対して緊急要望いたしております。
 次に、原発事故で放出された放射性物質の調査についてでございますが、空気中に放出された放射性物質の状況については、文部科学省が福島県内で環境モニタリングを実施しておりまして、その結果はホームページ等で公表されております。また、この測定結果に対する原子力安全委員会の評価結果も公表されております。
 次に、都独自の測定機器の購入や施設の整備についてでございますが、質問のございましたストロンチウム、プルトニウム、そしてウランを測定するためには、専用のRI室を設ける必要がございます。また、これらの測定に必要な標準物質を保有するためには、体制や設備などの要件を満たし、国に届け出て許可を得る必要がございます。さらに、ウランやプルトニウムに関しましては、廃棄物を永久に保存する必要がございます。
 こうした放射性物質の測定が仮に必要になった場合には、財団法人日本分析センターに委託することとしておりまして、都として新たな機器の購入や施設の整備をすることは考えておりません。
 次に、都内被災世帯への支援についてでございますが、東日本大震災は広域にわたり甚大な被害を及ぼしており、自治体ごとの対応ではなく、国が統一的な対応を行うべきものであることから、都は、同一の災害で被災したすべての地域が支援の対象となるよう、国に提案要求をしていきます。
 なお、先ほども答弁したとおり、提案要求が実現するまでの間の対応につきましては、地元自治体の意向も踏まえ、今後検討してまいります。
 次に、国民健康保険についてでございますが、都は、国民健康保険制度の健全かつ安定的な運営を図るため、法令等に基づきまして、各保険者に対する財政支援を既に行っております。保険料負担軽減のため、都として新たな支援を行うことは考えておりません。
 最後に、中小病院への支援についてでございますが、都は、東京都地域防災計画に基づきまして、大規模災害発生時に被災を逃れた中小病院を含むすべての医療機関を後方医療施設と位置づけまして、災害拠点病院とともに区市町村等と連携をして、被災者に適切な医療を提供する体制を整備いたしております。また、今回の補正予算では、耐震化や自家発電設備の整備につきまして、補助対象をすべての病院に拡大することといたしております。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 海水や海底土の定期的測定と水産物、農産物の測定の拡充についてのご質問でございますが、海水や海底土の放射性物質の測定については、現在、国におきまして、広域的なモニタリングが行われております。
 また、水産物、農産物についてでありますが、水産物につきましては国との役割分担のもとに、また農産物につきましては都内産品を対象といたしまして、いずれも既に検査を実施しており、今後とも適切に対応してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 五点のご質問でございます。
 まず、エネルギー施策の検討についてでございますが、今回の震災に伴う電力危機を受け、高効率な天然ガス発電による電力供給の拡大や、住宅用太陽光発電を初めとした再生可能エネルギーの導入促進など、電源確保の重要性が高まっています。こうした状況を受けまして、先ほどもご答弁しましたように、災害時のリスクにも強く、同時にCO2排出が少ないエネルギー利用と供給を進める施策のあり方について、検討することが必要と認識しております。
 次に、太陽光発電への補助についてでございますが、今回の補正予算では、住宅用太陽光発電を初め、ガス発電機なども含めた家庭における電力確保を目的とする補助事業を計上しております。また、住宅用太陽光発電の導入をさらに拡大するためには、先ほどもお答えしたとおり、再生可能エネルギーの全量買い取り制度が開始される必要があると考えております。
 次に、太陽光発電の住宅以外の分野への普及についてでございますが、これにつきましても、全量買い取り制度が開始される必要があると考えており、国に求めております。
 次に、小水力発電についてでございますが、都では既に平成十二年度から水道局の東村山浄水場で、出力千四百キロワットの小水力発電設備を稼働させております。また、規模がさらに小さい、いわゆるミニ水力発電やマイクロ水力発電につきましても、水道局では南千住給水所など三カ所に、下水道局でも葛西水再生センターなど二カ所に、それぞれ発電設備を設置しております。
 最後に、海洋における再生可能エネルギーについてでございますが、波力発電に関しまして、既に今から二年前の平成二十一年七月に、都が大学や民間事業者に呼びかけて波力発電検討会を設置し、この検討会における検討を踏まえ、既に民間主体で実証実験に着手する段階に入っております。都としては、今後、実験の進捗状況を的確に把握してまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、都の震災対策の対象となる地震についてでございます。
 国は、首都直下地震対策大綱の策定に当たり、発災後の応急対策を具体的に検討するためには、特定の一つの地震を想定することが現実的かつ実効的であるとの考え方に基づき、地震発生の切迫性、被害や影響の大きさなどの観点から、十八種類の地震の想定の中から東京湾北部地震を選択しております。
 都は、国の東京湾北部地震に加え、同程度に切迫性の高いプレート境界多摩地震を選定し、これら二つの地震を想定した地域防災計画を策定しております。
 一方、施設構造物などの耐震化や、出火、延焼等の防止などの予防対策につきましては、国は想定される地震のすべてに対応することが望ましいとしており、都も同様の考えのもとに、地域防災計画の中で災害予防計画として位置づけ、対策を進めております。
 したがいまして、残る十六種類の地震については、被害想定及び応急対策策定の対象とはしておりませんが、震災対策の対象からすべてを外しているわけではございません。
 次に、直下型地震の可能性の調査検討についてでございます。
 今回の東日本大震災を受け、国は、中央防災会議に新たに専門調査会を設置し、従来の地震対策の再検証に入っております。都も、今回の教訓を踏まえ、これまでの災害の概念をとらえ直し、科学的知見を有する専門家の助言を得て、従来の防災対策を再構築をいたします。
 なお、国は平成十九年から、首都圏で発生するマグニチュード七程度の地震像の解明に向けて、断層を含む地下構造の調査研究を進めており、都も当初からこの研究に積極的に協力をしております。
 次に、東京湾岸部の危険物施設の地盤や施設の点検等についてでございます。
 危険物施設を設置する地盤や構造については、国が厳格な技術基準などを定めており、施設を設置する事業者は、この基準等に従い安全対策を講じる責務があります。
 今回の東日本大震災においては、東北地方に加え、東京湾沿岸など広範囲で石油タンクなどに被害が発生したことなどから、国は、地震や津波で被災した危険物施設や、地盤の液状化の実態調査と対策の検討を開始したところでございます。今後、こうした国の検討状況を踏まえ、九都県市で連携し、東京湾内における石油タンクの安全対策について、国へ要望してまいります。
 最後に、震災時の帰宅困難者対策についてでございます。
 今回の震災では、首都圏の鉄道がすべて停止をしたため、多くの帰宅困難者が発生し、都内は大きく混乱をいたしました。帰宅困難者対策は、一斉帰宅の抑制、帰宅困難者の一時待機施設の確保、速やかな安否確認と情報提供などが重要となります。また、状況が落ちついた段階では、陸上海上輸送を活用し、早期帰宅を推進していく必要があります。
 これらを踏まえ、都は、官民で構成する協議の場を設け、それぞれの役割と責任を明確化するとともに、安否確認や備蓄などを含め、課題の検討を行い、社会全体で取り組む帰宅困難者対策を策定してまいります。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

〇消防総監(新井雄治君) 木造住宅密集地域の火災に迅速に対応する体制についてでありますが、木造住宅密集地域を受け持つ消防署所には、道路の狭隘状況を勘案し、小型ポンプ車を配置するとともに、震災時における危険性を考慮し、消防隊用並びに消防団用可搬ポンプを計画的に整備しております。
 また、これらの地域で火災が発生した場合に備え、出場隊数の増強や、消防団、防災市民組織との連携により、効果的な消防活動を行うこととしており、今後とも、市街地化の進展や消防行政需要の推移などを総合的に勘案し、適正な消防活動体制の確保に努めてまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 津波の危険性に対する認識と対策の進め方についてでございますが、今回の大震災では、これまで予測していた規模を超えるマグニチュード九・〇の地震が発生したことから、東京における大津波の発生の可能性について、国の中央防災会議の動向などを注視するとともに、大震災の際に堤防等の防災施設が安全に機能するか、早急に検証することが必要と考えております。
 このため、都は、緊急にとるべき対策について、既に地震や津波の専門家を含む委員会を立ち上げ、施設の耐震性等について検証を開始しております。
 次に、液状化対策についてでありますが、都は、橋梁や護岸など主要構造物の整備に当たり、地域ごとの液状化発生の可能性を目安として示した液状化予測図や地質調査、道路橋示方書などの技術的基準に基づき、必要があると認められた場合には、地盤改良や基礎部分の強化などの対策を実施してまいりました。このため、今回の地震においては、都が管理する都市施設の主要な構造物について、大きな被害は認められませんでした。
 今後、東日本大震災による新たな知見について、地盤の専門家などから意見を聞きながら、液状化対策検討の基本となる液状化予測図の見直しを行い、公共施設管理者などに提供してまいります。
 一方、一部の木造住宅については、液状化による被害が生じたため、建築物を対象とした対策の指針などを作成し、広く都民に情報提供してまいります。
   〔五十八番かち佳代子君登壇〕

〇五十八番(かち佳代子君) 知事に再質問を行います。
 質問の前に、先ほどのご答弁で、共産党は何でもかんでも反対するとおっしゃいましたけれども、事実は違いますので、きちんと事実に基づいて発言していただきたいと思います。
 それでは、まずオリンピック招致についてです。
 その第一は、今、日本が一つになって総力を挙げるべきは、何よりも被災地の復興、被災者支援と、地震や放射能から国民、都民の命と暮らしを守ることではないのですか。イエスかノーかではっきり答えてください。
 二つ目は、東京の巨大道路建設や大型開発に重点を置くなら、復興や安全なまちづくりに人、物、お金を集中できません。四千億円以上ため込んだオリンピック基金をなぜ住宅などの耐震化に使わないのですか。お答えください。
 二つ目は、原発についてです。
 再度お聞きしますが、死の灰を原子炉内に閉じ込める手段を人類が手に入れていない、使った核燃料の後始末ができない、こういう本質的な危険について知事はどう考えるのですか。明確にお答えください。
 二つ目は、浜岡原発については、一般的な原発の問題ではなく、この浜岡原発は、東海大地震の予想震源域の真上にあるんです。他の原発にも増して危険だという認識は知事にはないのですか。はっきりお答えください。
 以上で再質問を終わります。
   〔スポーツ振興局長笠井謙一君登壇〕

〇スポーツ振興局長(笠井謙一君) オリンピック招致についてでございますけれども、先ほど知事がご答弁申し上げたとおり、オリンピック開催を目指すたいまつを消さずにともし続けることは、大震災からの復興をなし遂げるためにも大きな意味があると思っております。
 また、本日、多くの若いアスリートたちが、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの日本招致を直接訴えてまいりました。
 今後も、スポーツ界、国、経済界を初め、都民、国民の機運が盛り上がることを期待しております。
 また、先ほど知事も申し上げましたように、事務的には九月一日が立候補申請の期限でございます。これを過ぎましたら、幾ら都民、国民が望んでも立候補はできなくなります。ぜひご理解をいただきたいと思います。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 基金のお話がございましたので、私の方から。共産党さんの主張のとおり、予算を措置しないから都民に背を向けたむだ遣いというような再質問は、まことに理不尽な感じがいたします。都はそれぞれの施策の分野におきまして、しかるべき事業を実施をしておりまして、福祉、医療、教育はもとより、雇用環境、中小企業などに対する施策も充実してきていると思っておりますし、今般は大震災を受けて、緊急対策として、迅速に被災地、被災者の復興支援や、東京の防災力の強化などに着手をしておりますので、ぜひご理解いただきたいと存じます。
 なお、オリンピック・パラリンピック開催準備基金は、条例によりまして、オリンピック・パラリンピック開催に関連する社会資本等の整備に要する資金に充てるための基金と位置づけられておりまして、これはかねて答弁申し上げているとおりでございます。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 原発に関します二問の再質問にお答えいたします。
 一問目が、放射性廃棄物の処理に関するご質問でございましたが、先ほど知事の方から、今回の原発の問題は人間の管理の問題であるということでございますので、管理をしっかりすべきだということになろうかと思います。
 次に、浜岡原発に関するご質問でございますけれども、先ほど知事の方から、浜岡原発に防波堤をつくって安全性を強化せよ、安全な形で運転しろということでございまして、そのとおりのお答えになろうかと思います。

〇七十四番(伊藤まさき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

〇議長(和田宗春君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後八時三十九分散会

ページ先頭に戻る