平成二十三年東京都議会会議録第三号

平成二十三年二月十六日(水曜日)
 出席議員 百二十五名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番吉住 健一君
四番桜井 浩之君
五番山崎 一輝君
六番野田かずさ君
七番福士 敬子君
九番山内れい子君
十番くりした善行君
十一番小山くにひこ君
十二番西沢けいた君
十三番田中  健君
十四番関口 太一君
十五番畔上三和子君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番遠藤  守君
十九番大松あきら君
二十番鈴木 章浩君
二十一番菅  東一君
二十二番きたしろ勝彦君
二十三番田中たけし君
二十四番鈴木 隆道君
二十五番星 ひろ子君
二十六番柳ヶ瀬裕文君
二十七番淺野 克彦君
二十八番新井ともはる君
二十九番佐藤 由美君
三十番中村ひろし君
三十一番たきぐち学君
三十二番田の上いくこ君
三十三番島田 幸成君
三十四番しのづか元君
三十五番大島よしえ君
三十六番中山 信行君
三十七番高倉 良生君
三十八番橘  正剛君
三十九番松葉多美子君
四十番神林  茂君
四十一番早坂 義弘君
四十二番高木 けい君
四十三番宇田川聡史君
四十四番鈴木あきまさ君
四十五番矢島 千秋君
四十六番山加 朱美君
四十七番西崎 光子君
四十八番滝沢 景一君
四十九番中谷 祐二君
五十番笹本ひさし君
五十一番山下ようこ君
五十二番神野 吉弘君
五十三番鈴木 勝博君
五十四番興津 秀憲君
五十五番岡田眞理子君
五十六番伊藤 ゆう君
五十七番古館 和憲君
五十八番かち佳代子君
五十九番伊藤 興一君
六十番吉倉 正美君
六十一番上野 和彦君
六十二番谷村 孝彦君
六十三番野上 純子君
六十四番吉原  修君
六十五番山田 忠昭君
六十六番三宅 正彦君
六十七番石森たかゆき君
六十八番高橋 信博君
六十九番服部ゆくお君
七十番こいそ 明君
七十一番原田  大君
七十二番佐藤 広典君
七十三番尾崎 大介君
七十四番伊藤まさき君
七十五番山口  拓君
七十六番松下 玲子君
七十七番野上ゆきえ君
七十八番西岡真一郎君
七十九番今村 るか君
八十番吉田康一郎君
八十一番たぞえ民夫君
八十二番清水ひで子君
八十三番小磯 善彦君
八十四番長橋 桂一君
八十五番藤井  一君
八十六番ともとし春久君
八十七番遠藤  衛君
八十八番三原まさつぐ君
八十九番中屋 文孝君
九十番村上 英子君
九十一番林田  武君
九十二番田島 和明君
九十三番樺山たかし君
九十四番古賀 俊昭君
九十五番くまき美奈子君
九十六番大西さとる君
九十七番いのつめまさみ君
九十八番門脇ふみよし君
九十九番小沢 昌也君
百番石毛しげる君
百一番花輪ともふみ君
百二番大津 浩子君
百三番大塚たかあき君
百四番相川  博君
百五番大山とも子君
百六番鈴木貫太郎君
百七番東村 邦浩君
百八番中嶋 義雄君
百九番木内 良明君
百十番川井しげお君
百十一番高橋かずみ君
百十二番野島 善司君
百十三番三宅 茂樹君
百十四番吉野 利明君
百十五番宮崎  章君
百十六番比留間敏夫君
百十八番斉藤あつし君
百十九番増子 博樹君
百二十番泉谷つよし君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番酒井 大史君
百二十三番大沢  昇君
百二十四番中村 明彦君
百二十五番馬場 裕子君
百二十六番和田 宗春君
百二十七番吉田 信夫君

 欠席議員 一名
  八番 土屋たかゆき君
 欠員
百十七番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事佐藤  広君
副知事猪瀬 直樹君
副知事吉川 和夫君
副知事村山 寛司君
教育長大原 正行君
東京都技監都市整備局長兼務河島  均君
知事本局長秋山 俊行君
総務局長比留間英人君
財務局長安藤 立美君
警視総監池田 克彦君
主税局長荒川  満君
生活文化局長並木 一夫君
スポーツ振興局長笠井 謙一君
環境局長大野 輝之君
福祉保健局長杉村 栄一君
産業労働局長前田 信弘君
建設局長村尾 公一君
港湾局長中井 敬三君
会計管理局長新田 洋平君
消防総監新井 雄治君
交通局長金子正一郎君
水道局長尾崎  勝君
下水道局長松田 二郎君
青少年・治安対策本部長倉田  潤君
病院経営本部長川澄 俊文君
中央卸売市場長岡田  至君
選挙管理委員会事務局長宮川 雄司君
人事委員会事務局長多羅尾光睦君
労働委員会事務局長山本 洋一君
監査事務局長三橋  昇君
収用委員会事務局長藤井 芳弘君

二月十六日議事日程第三号
第一 第一号議案
平成二十三年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
平成二十三年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
平成二十三年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
平成二十三年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
平成二十三年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
平成二十三年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
平成二十三年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
平成二十三年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第九 第九号議案
平成二十三年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
平成二十三年度東京都と場会計予算
第十一 第十一号議案
平成二十三年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十二 第十二号議案
平成二十三年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十三 第十三号議案
平成二十三年度東京都都市開発資金会計予算
第十四 第十四号議案
平成二十三年度東京都用地会計予算
第十五 第十五号議案
平成二十三年度東京都公債費会計予算
第十六 第十六号議案
平成二十三年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十七 第十七号議案
平成二十三年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第十八 第十八号議案
平成二十三年度東京都病院会計予算
第十九 第十九号議案
平成二十三年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十 第二十号議案
平成二十三年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十一 第二十一号議案
平成二十三年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十二 第二十二号議案
平成二十三年度東京都港湾事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
平成二十三年度東京都交通事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
平成二十三年度東京都高速電車事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
平成二十三年度東京都電気事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
平成二十三年度東京都水道事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
平成二十三年度東京都工業用水道事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
平成二十三年度東京都下水道事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
東京都知事等の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第三十 第三十号議案
東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 第三十一号議案
東京都附属機関の構成員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第三十二号議案
非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第三十六号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第三十七 第三十七号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
東京都人事委員会委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
東京都選挙管理委員の報酬及び費用弁償条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
東京都監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
東京都固定資産評価審査委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
東京都固定資産評価員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十五号議案
東京都収用委員会委員等の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十六号議案
東京都新しい公共支援基金条例
第四十七 第四十七号議案
保険業法に基づく特定保険業の認可審査に係る手数料に関する条例
第四十八 第四十八号議案
東京都消費者行政活性化基金条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十九号議案
東京文化会館及び東京芸術劇場条例の一部を改正する条例
第五十 第五十号議案
東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十三号議案
東京都教育委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十六号議案
東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十七号議案
東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例
第五十八 第五十八号議案
東京都医療施設耐震化臨時特例基金条例の一部を改正する条例
第五十九 第五十九号議案
東京都地域自殺対策緊急強化基金条例の一部を改正する条例
第六十 第六十号議案
東京都介護基盤緊急整備等臨時特例基金条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
東京都妊婦健康診査支援基金条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
東京都子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例基金条例
第六十三 第六十三号議案
医学系総合研究所の助成等に関する条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十五号議案
東京都国民健康保険広域化等支援基金条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
東京都認定こども園の認定基準に関する条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十七号議案
東京都児童福祉施設条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
東京都婦人保護施設条例を廃止する条例
第六十九 第六十九号議案
東京都障害者支援施設等に関する条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
東京都身体障害者更生援護施設条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
東京都立総合精神保健福祉センター及び東京都立精神保健福祉センター条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十二号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
東京都中山間地域等農業活性化支援基金条例を廃止する条例
第七十四 第七十四号議案
東京都緊急雇用創出事業臨時特例基金条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十五号議案
東京都立職業能力開発センター条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十六号議案
東京海区漁業調整委員会委員及び東京都内水面漁場管理委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第七十八 第七十八号議案
東京都労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例
第八十 第八十号議案
東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第八十一 第八十一号議案
東京都立公園条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
東京都暴力団排除条例
第八十三 第八十三号議案
警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
東京都公安委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
都立板橋学園特別支援学校(仮称)(二十二)改築工事請負契約
第八十六 第八十六号議案
東京芸術劇場(二十二)改修工事請負契約
第八十七 第八十七号議案
東京消防庁金町消防署庁舎(二十二)新築工事請負契約
第八十八 第八十八号議案
中央環状品川線南品川換気所建築工事請負契約
第八十九 第八十九号議案
東京芸術劇場(二十二)改修電気設備工事請負契約
第九十 第九十号議案
東京芸術劇場(二十二)改修空調設備工事請負契約
第九十一 第九十一号議案
警視庁鮫洲運転免許試験場庁舎棟(二十二)改築空調設備工事請負契約
第九十二 第九十二号議案
白子川地下調節池工事(その五)請負契約
第九十三 第九十三号議案
環二地下トンネル(仮称)築造工事(二十二 一─環二汐留工区)請負契約
第九十四 第九十四号議案
古川地下調節池取水施設工事請負契約
第九十五 第九十五号議案
包括外部監査契約の締結について
第九十六 第九十六号議案
公立大学法人首都大学東京が徴収する料金の上限の認可について
第九十七 第九十七号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター定款の変更について
第九十八 第九十八号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが徴収する料金の上限の認可について
第九十九 第九十九号議案
平成二十三年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百 第百号議案
平成二十二年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百一 第百一号議案
平成二十二年度東京都一般会計補正予算(第二号)
第百二 第百二号議案
平成二十二年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百三 第百三号議案
平成二十二年度東京都地方消費税清算会計補正予算(第一号)
第百四 第百四号議案
平成二十二年度東京都母子福祉貸付資金会計補正予算(第一号)
第百五 第百五号議案
平成二十二年度東京都農業改良資金助成会計補正予算(第一号)
第百六 第百六号議案
東京都廃棄物条例の一部を改正する条例

   午後一時開議

〇議長(和田宗春君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(和田宗春君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(和田宗春君) 昨日に引き続き質問を行います。
 百番石毛しげる君。
   〔百番石毛しげる君登壇〕

〇百番(石毛しげる君) 本日は、国際貢献という観点から、パネルを通じて、皆様あこがれのアフリカにいざないたいと思います。担当は、私、民主党の石毛しげるです。
 私は、今月、片道三十数時間かけて、コンゴ民主共和国に行ってまいりました。私とコンゴとの出会いは、難民の人たちの手伝いを通じて関心を持ったことが始まりです。
 このパネルを見てください。これは、コンゴのキンシャサという首都の中心から一時間ぐらい走ったところの学校です。ACADEX、アカデックスという学校です。アカデミーエクセロンス、すばらしい学校というふうに訳したらよろしいでしょうか。
 この学校は、慶應大学のサイモン先生、また松原先生、そして長谷部先生を中心にできた学校です。私はこちらで授業を持ったわけですが、ここに、はしを持って、私が日本文化ということで教えたものであります。
 次に行きます。
 それで、これは朝日新聞、相撲がこう、日本の文化としてありますよと。で、文字が普通は横なんですけれども、漢字は縦ということで、ある意味では、一つずつの字が意味を持っているということで、こうしたことを説明をしながら、また子どもたちは、折り紙として白鳥などをつくって教えたところです。質問では、この相撲を見て、日本人は裸でいるのかと、こんな質問もあったわけですが、これはスポーツだと説明をいたしました。
 こちらですが、この慶應の先生がつくった学校でありますが、こうした学校を今三つつくっております。ことしも四つ目をつくるところなんですけれども、こちらがトイレになっていて、このタンクが二十四リットル雨水がたまるようになっております。こちらの方は学校の先生です。
 次に行きます。
 それで、こちらは現地、これも首都キンシャサにあります井戸ですね。きれいな水に見えますけれども、実際には危険な場面も、細菌もあるということで、こちらも見えるところでありますけれども、さて、ここにわだちが見えますでしょうか。ちょっと道路で溝ができているんですが、五十センチぐらい、わだちがこういうふうになっています。つまり、普通のカローラとか、普通の乗用車では入れない、もう本当にランドクルーザーのような車じゃないと、このところには来られないんですね。
 こちらが、私が泊まったホテルです。知事本局長の答弁をいただくようなホテルではございません。水がしょっちゅうとまるもんで、このポリバケツが二つございますが、若干色が見えづらいかもしれませんが、黄色い色をしております。もう既に管が五十年たっているということで、あかが出てくるというか。用を足しても、何遍こう水を捨てても色が変わらないんで、なかなかすっきりしないなと。
 また、ここにシャワーのホースがありますが、夜中になるとゴボゴボッ、ゴボゴボッと音がするんですね。水が全然出ないもんで、時たま、出たい、出たいといっているんですが水が出てこない、こんな状況であります。
 下の絵は、こちらは水売りの少年です。ここに水を持っている男の人がいますが、これが一つ三円とか二円とか、こんな感じで水を売っているんですが、この水もしっかり安全であるかというところは、ちょっと保証の限りではございません。
 こちらですが、このようにバケツを、朝、大体もう朝の仕事はこれで終わっちゃうという人がいっぱいいるんですね、水をくんで。
 こちらの方が水道局長、コンゴの水道局長のジョルジュ・コシさんという方なんですが、この方、私が行ったときに、インドからは三十三基の井戸を掘る機械を寄附をしてもらったと。それが二十四億だったか二百四十億だったかちょっと忘れちゃったんですが、一基を掘り起こすと五百人分の水が供給できると。だから、ぜひとも、六千ドルをいただくと五百人分の水が出るんだと、こんなような話でした。
 余り時間がないんで──こちらに、本当に見えづらいんですが、電気の線が通っております。これが裸のような形になっていますが、ビニールでかぶせる。ここの線が、石だとか何かで切れてしまうと、ここに、水道管が破裂したり、雨が降ったりすると、見てください、はだし。この子どもたちが感電して死んでしまうんです。実際問題、たくさんこういう形で死んでおります。
 こちらも──まあいいです、これは。
 以上、パネルでございましたけれども、私たちの体の六五%は水からできているといわれています。体重の二%の水分が失われると口やのどが渇き、六%で頭痛、脱力感、一〇%で筋肉のけいれん、二〇%で死に至るといわれております。つまり、水は命といえましょう。
 しかし、コンゴでは、水は死という言葉まであり、飲んだ水により死に至るケースが後を絶たない状態が続いております。先ほど見ていただいたパネルのように、日本では考えられないほど劣悪な状態にあるといえましょう。
 知事は、東京の水道は世界一の技術を持っていると述べています。私も、世界の水問題解決のために、東京の力を積極的に活用すべきと考えます。そこで、これまで水道局の国際貢献の実績と、その効果についてお伺いいたします。
 さて、水道局では今年度から、東京都の高い水道技術への期待にこたえていくために、ビジネスベースで監理団体の東京水道サービス株式会社を活用して、アジアに調査団を派遣しています。しかし、きょうパネルを見ていただいたとおり、水問題はアジアに限らず、アフリカも深刻な状態です。東京都がアフリカの人々にも国際貢献することで、世界における東京のプレゼンスを高めることになるでしょう。
 コンゴの人口は六千六百万人、水道に携わる技術者は百人。これでは水道施設をつくっても、オペレーションや維持管理が困難な状況です。特に、人材育成は急務だと思います。私は、コンゴのようなアフリカ諸国の未開発の地域にも、都が積極的に手を差し伸べるべきだと考えます。
 知事におかれましては、日ごろ、水に対して高いご見識をお持ちであり、深く敬意を表します。ここはぜひとも、石原知事のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 さて、国際貢献の一つに、海外における日本人学校の存在があります。平成二十二年には、海外で日本人の子どもは約六万七千人、日本人学校等で義務教育を受けています。日本国民にふさわしい教育をと、政府は主に公立の小中学校の教員を世界各地の日本人学校へ派遣しております。昨年度、政府が予定していた派遣教員の定数千三百三十四人に対しまして百二十五人、約一割に当たる教員を都教育委員会が派遣しており、大きな役割を果たしているといえましょう。
 ここでお伺いしますが、海外の日本人学校から帰国した教員の貴重な体験を生かすことが大切だと思います。帰国した先生が、他の教員に報告会や、教員研修の場などを通じて情報を与えることは有益と考えますが、都教育委員会の見解をお伺いいたします。
 そこで、日本人学校など、在外教育施設に教員が赴任する場合、諸費用として支度料などが国から赴任前にすべて支払われるとは限りません。例えば、家賃などは後で支払われます。アラブ首長国連邦など、物価の高い国では、一年分の家賃だけで八百万前後を前払いしなければなりません。一時的に多額の経費を負担しなければならない実態があります。
 また、その他の必要な経費については所定の額が支給されますが、金融機関に振り込まれるのは、平均、赴任後二、三カ月後が多いようです。いずれ国から支給されるとしても、一時的に多額の費用を負担しなければならないことは、高い意欲や情熱を持って海外の日本人学校で働きたいと考える教員にとって障害となり、優秀な教員の確保の妨げとなります。
 以前は一部の銀行が低利で融資をする制度があったようですが、今はなくなり、一般の貸し付け、借りるしかない状況です。この問題は都だけの問題ではなく、派遣を希望する全国の教員に共通する問題です。
 全国の公立学校の教員は共通の共済組合に加入しており、一般的な資金の貸し付けも行っていると聞いております。このような共済組合の事業を有効に活用できないかと考えます。
 そこでお伺いしますが、教員が海外の日本人学校等に赴任するときに生じる一時的な費用について、例えば貸し付けを受けられる仕組みを構築するなど、新たな支援が期待されます。都教育委員会の見解をお伺いします。
 さて、目を国内に向けてみましょう。国際化が一層進む中で、都の公立学校に在籍する外国人児童生徒は年々増加傾向にあります。習慣や言語の違いにより、互いの理解が難しいこともあり、そうした違いがいじめにつながることもあると聞いています。児童生徒、それぞれの文化や習慣の違いを受けとめ、互いのよさに気づき、認め合う気持ちを育てることが必要と考えます。
 そこで、都の公立学校では、今後、国際理解教育をどのように推進していくのかお伺いします。
 続いて、外国人児童生徒に対する日本語指導についてお伺いします。
 外国人児童生徒の中には、日常会話はできても、学習言語が十分でなく、授業に支障が生じる場合があると聞いています。都教育委員会は、日本語指導が必要な外国人児童生徒の学習活動を支援するためにどのような取り組みを行っているのかお伺いします。
 さて、国際貢献の構築は一夜にしてできません。長い時間をかけて築き上げるものと私は考えます。今回見ていただいたコンゴの小学校は、コンゴ政府との交渉から始まり、何もないところから校舎をつくるという作業から始まりました。コンゴの子どもたちは、日本にあこがれ、一度は行ってみたいといっていました。華々しさはないかもしれませんが、私は子どもたちの輝く目を見て、国際貢献につながっていると確信しています。
 さて、私は若いころ、EU議会がある、知事は、数を勘定できない言葉といわれたところのフランス、そのフランスのストラスブールというまちに留学していました。フランスは漢字で仏の国と書きます。仏教の国日本と縁がありそうであります。
 そのころの思い出の一つに、私が大学食堂で食事をしていたら、一人の黒人学生が私の隣に座り、それから彼を中心に多くの学生が集まってきました。しばらくして彼が私にあいさつをして席を立ち、学生にはふつり合いな高級なスポーツカーに乗ってその場を去りました。不思議に思い、彼は何者かと聞いたところ、彼を知らないのかと一斉に笑いが返ってきました。記憶では、中央アフリカの国王の息子、つまり王子だったのです。
 フランス政府は、外国でこれから重要と思われる人たちに国費留学を勧めています。それは、国連や国際会議において、どんな小さな国でも一票という場面があります。外国で学んだ者は、その国の印象がよかったり、仲のよい友達がいれば、学んだ国に有利にしてあげたいと思うのではないでしょうか。
 先ほどのコンゴの水道局長、ジョルジュ・コシさんは、日本の印象をこのように話していました。日本では電車を待っているとき、電車の中で多くの人が読み物を読んでいる。そして、何よりもびっくりしたことは、図書館に膨大な本があったことですと。私は、改めて日本の学べる環境に気づかされました。
 石原知事は、一橋大学で学び、今日、知事の職についております。ちなみに、一橋大学の前身、商法講習所の設立にかかわった一人に福沢諭吉がいます。その福沢諭吉の「学問のすゝめ」では、貧富の差はどこから来るのか、それは学問をしているのかしていないかだと述べています。
 私は、今、コンゴで閉鎖になってしまった看護学校の再建に力を入れております。きょう見ていただいた小学校、アカデックスもそうですが、人材を育てることが最も重要と考えます。コンゴにおいて水問題も、学校や研修所をつくり、そこで技術者を育てることによって、今ある危険な水さえも飲めるようになると考えます。他国に頼らずに、自分たちの手で国を切り開くために、誘い水としての援助を切に望むものです。
 本日は、国際貢献、それも教育というところに光を当てて質問させていただきました。
 このたび、石原知事の施政方針では、若者の留学や海外勤務が減っている、若者が未知を恐れ、情熱やエネルギーまでも失っては、日本は二度と立ち上がれなくなる。東京から海図なき二十一世紀の航路を示すことで、日本を衰亡から救うと述べています。
 国際都市東京を支える都庁の職員は十六万五千二百五十一人、しかし、その中で外国籍を持つ職員は何人いるでしょうか。たった二十五人です。国際貢献に向けて、石原知事の世界を変える大きな一石を投じる強い決意をお聞かせください。
 本日は、傍聴席で最後まで聞いていただいたコンゴ民主共和国大使館の方、またコンゴの方に改めてこの場を通して御礼を申し上げたいと思います。
 質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 石毛しげる議員の一般質問にお答えいたします。
 水道に関するアフリカ諸国への貢献についてでありますが、私はかつて、テレビで見たんですけれども、どの国か覚えておりませんが、アフリカの僻地のある村に、かなり高齢の日本の婦人が行かれまして、余りに幼児の死亡率が高いので、ある方法を考えます。それは、村人ができる、大きなかめを、要するに自分たちでつくらせて、そこに煮沸した水をためて、かつそれを、水道屋で売っている蛇口ですね、その蛇口を各家にただで配って、それを使うことで幼児の死亡率が非常に減ったと。それまでは流れている川に、動物のし尿なども一緒に流れていたんですけど、それを飲んでいたわけですが、それだけでも健康というものの向上が非常に著しかったという、非常に印象的なドキュメントであります。
 水は生命の源でありまして、安全な水は、健康で文化的な暮らしに欠かすことができません。しかし、それを得ることができずに、寿命を縮め、命を落とす人々が地球上には数多くいるわけであります。
 水が豊かな日本では想像がつかないようなアフリカの国々の条件では、不安定な社会経済と劣悪な衛生状態の中で多くの人々が日々の生活を送っているわけでありますが、コップ一杯の水といえども、安全な水を確保することに困難をきわめているようであります。
 さらに、人を育て活用するシステムなどもなく、リーダーとなるべき人材が不足しているのも実情であります。
 アフリカの国々は、極めて日本から遠いところでありますが、しかし、一方では豊かな資源も持っておりまして、さまざまな可能性を秘めていると思います。東京も持てる力で協力いたしまして、彼らの命を救い、その発展に貢献することは、世界都市東京の使命でもありまして、日本の真の友好国をふやすことにつながると思います。
 東京では、水分野のリーダー養成として、アフリカ諸国から多くの研修生を受け入れておりますが、今後とも、アフリカ諸国の人材育成などを強く支援していきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び水道局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、日本人学校に勤務した教員の経験の活用についてでございます。
 日本人学校は、海外に在留する日本人の子どものための在外教育施設の一つであり、近年の国際化の進展に伴い、海外における教育という特性を生かし、国際性豊かな日本人を育成する上で重要な教育活動を展開しております。
 お話のように、東京都の教員も世界各地の日本人学校等で勤務しており、これらの教員は、派遣先で日本人児童生徒の教育に携わるとともに、現地の人々との交流を通して、海外の文化や歴史等に肌身で触れることで国際感覚を身につけ、国際理解教育に関する知見を高めております。
 このため、こうした日本人学校等に勤務した教員の諸外国における経験を、都内公立小中学校の国際理解教育の推進に生かすことは大変有効であり、今後は、帰国した日本人学校等の経験者に東京都教職員研修センターでの研修や各学校の校内研修での講師を務めさせるなどいたしまして、教員の国際理解教育に関する資質や能力の向上に役立ててまいります。
 次に、教員が海外の日本人学校等へ赴任する際の支援についてでございます。
 在外教育施設派遣教員は、都の身分を保有しながら研修という扱いで派遣をされておりまして、文部科学省が、派遣教員に対し、旅費など赴任に必要な経費を事前に支給しますほか、毎月、在勤手当や住居手当等を支給しております。
 しかし、住居手当につきましては、現地事情によっては数カ月分の家賃の前払いが必要な場合があり、派遣教員がやむを得ず一時的に費用を立てかえることがございます。
 都教育委員会としては、一時的な資金が必要となる派遣教員を支援するために、今後、教職員の福利厚生事業を実施しております団体の資金貸付事業を赴任前に案内するとともに、文部科学省に対しては、住居手当の支給手続に関する改善要望を行ってまいります。
 次に、都内公立学校における今後の国際理解教育についてでございます。
 学校における国際理解教育を推進するに当たっては、学習指導要領の趣旨を踏まえ、広い視野を持って異文化を理解し、ともに生きていこうとする姿勢を育てることが大切であります。
 都教育委員会では、毎年、国際理解教育に関する指導資料を作成し、各学校の国際理解教育の推進を支援してまいりました。
 また、現在、都内公立小中高等学校及び特別支援学校では、総合的な学習の時間での学習活動ですとか、あるいは学校行事等で、例えば、外国人児童生徒と日本人児童生徒とが自国の伝統や文化を紹介し合う交流活動等を通して、こうして学び合うことで、外国人児童生徒の日本への適応を支援するだけでなく、日本人児童生徒の国際性を涵養しているところでございます。
 今後とも、都教育委員会は、国際理解教育に関する指導資料でこうした実践事例を紹介することを通して、各学校の国際理解教育を支援し、世界の人々から信頼され、尊敬される日本人を育成する教育を強力に推進してまいります。
 次に、日本語指導が必要な外国人児童生徒の学習活動への支援についてでございます。
 お話のように、外国人児童生徒の中には、日常的な日本語の会話はできても、学習に必要な日本語の能力が十分ではなく、学習活動への参加に支障が生じる場合がございます。そこで、教科の指導においては、外国人児童生徒一人一人に応じたきめ細かな指導が必要となっております。
 このため、都教育委員会は、平成二十二年度から、都立学校における日本語指導外部人材活用事業を開始いたしまして、授業の補助を中心として、外国人児童生徒の日本語の習得状況に応じたきめ細かな指導を支援しております。
 また、小中学校については、平成二十一年度から、都内二区市を日本語指導研究開発モデル地域に指定して、日本語指導の指導内容や方法、教材の開発を行っております。今年度末には、その成果をまとめた教材集を都内の全小中学校に配布して、日本語指導が必要な外国人児童生徒の教育指導に役立ててまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

〇水道局長(尾崎勝君) これまでの水道に関する国際貢献の実績と成果についてでございますが、水道の管理運営を円滑かつ適切に行っていくためには、海外の水道事業体においても、多くのすぐれた人材が不可欠でございます。
 このことから、当局では、JICA等を通じて、世界各国からの研修生受け入れや職員の海外派遣などを行い、当局の持つ技術やノウハウを積極的に海外に発信して人材育成に貢献してまいりました。
 具体的には、アジアやアフリカ諸国を含めた海外からの研修生等を、直近五カ年で約百カ国から延べ千八百人受け入れております。また、JICA等の技術協力専門家として、九カ国に対して職員を派遣してまいりました。
 今後とも、このような活動を通じて、相手国の水道技術や経営のレベルアップを図り、世界の水事情の改善に貢献してまいります。

議長(和田宗春君) 六十五番山田忠昭君。
   〔六十五番山田忠昭君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十五番(山田忠昭君) 昨今の国政を見ると、その迷走ぶりは甚だしいものがあります。民主党政権は、ようやく税と社会保障の一体改革の議論を始めようとしておりますが、国民は不安に包まれ、日本はこのままどうなってしまうのだろうかと心配し、苦しんでおります。
 石原知事は、これまで十二年間、財政再建、都市整備、環境、安全、文化、産業、スポーツ振興など、まさに、東京から日本を変えるをスローガンに大胆な取り組みを行い、大きな成果を上げてまいりました。外交や経済の先行きが不安の中で、今、対外的にはっきり物がいえる石原知事が必要であります。
 都政においても、築地市場の豊洲地区への移転問題や三環状道路の整備など、重要、緊急課題もあり、各方面から、石原知事に引き続き都政のかじ取りをお願いしたいと、知事の四選の出馬を求める声が上がっております。石原知事への評価は絶大であり、都民の期待の強さを私は肌で感じております。
 国政が迷走する中、都政はとどまることなく確かな歩みを続け、これまで以上に都民の期待にこたえていかなければならないときだと思います。石原知事、引き続き、都政をぜひお願いいたしたいと思います。
 一方、東京では、「十年後の東京」というしっかりとした設計図を踏まえて、知事と我々都議会自民党が、緑あふれる環境都市東京を目指して着実に政策を進めてきており、幅広い分野で国をリードする施策が展開されてきております。
 そうした「十年後の東京」の実現をさらに加速させるために、今回、実行プログラムが改定されました。その中で、若者の雇用対策に力を入れられていることは極めて時宣を得たものであり、また、先般の知事の施政方針演説でも、チャレンジする若者に希望を与えることの重要性を説かれたことは、大いに賛同するものであります。知事が述べられたように、若者が次の日本をつくります。我々政治家は、そうした若者に勇気を与えていかなければなりません。私も、一政治家として、全力を尽くしてまいりますが、改めて知事に、チャレンジする若者へのエールをお願いいたしたいと思います。
 次に、東京都のディーゼル車対策の意義について伺います。
 石原知事が強力に推進し、我々都議会自民党も全力で後押しをしてきたディーゼル車対策の結果、多くの都民が東京の空気がきれいになったことを実感しており、今やあの汚かった空気は過去の歴史的事実になろうとしております。
 しかし、ディーゼル車対策の意義は、歴史的事実として残っているだけではありません。第一に、最近明らかになった地球温暖化防止効果の大きさ、第二に、環境規制が経済発展の起爆剤となった実例としての意義、そして第三に、世界共通の難題に対する解決策としての意義、これらの三点について、順次質問をいたしたいと思います。
 初めに、地球温暖化防止効果の大きさに関してであります。
 先月、東京都主催で気候変動対策としてのディーゼル車対策というシンポジウムが開催されました。基調講演では、ディーゼル車が排出するブラックカーボン、黒煙のことでありますけれども、これが太陽の熱を吸収し、周囲の大気を温める温暖化物質であることが明らかにされました。
 そこでまず、ディーゼル車対策によるブラックカーボンの削減が、地球温暖化防止にどのような効果があったのかを伺います。
 同じく、基調講演では、東京都の取り組みがさまざまな点で画期的であったと言及されておりました。中でも、私は、日本の環境技術を大きく発展させた点に注目をしております。燃料品質の面でも、新車の排ガス性能の面でも、今では世界の常識となっているサルファーフリー燃料と黒煙除去フィルターが普及したのは、日本が世界初でありました。今や日本のディーゼル車は世界で最も高性能になっております。
 そこで、東京都の環境規制が起爆剤となって、日本のディーゼル車及びその燃料がどれくらい改良されたのか、また、改良された日本の技術が世界的に見てどの程度進んだものになったのか伺いたいと思います。
 地球温暖化対策について、国際的な枠組みは合意を見ず、国も迷走を続けております。このようなときだからこそ、大都市東京の先駆的な取り組みは、他の自治体を動かし、国を動かし、さらには世界を動かすことが可能であると私は確信をしております。
 温暖化物質であるブラックカーボンの排出削減は、日本全国で実施すべきであると同時に、世界じゅう、とりわけ今でも古いディーゼル車が多い途上国で進めるべき重要な政策であると考えます。車両と燃料に関する先進的な環境技術や政策展開のプロセスなど、政策を進めるさまざまなノウハウが東京には蓄積されております。
 東京都は、ディーゼル車対策が世界規模で進展するための牽引役を果たすとともに、環境技術で強い国際競争力を持った国内産業の活性化にも寄与するために、東京に蓄積されたノウハウを世界に発信することが必要であると考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、言語能力の向上について伺います。
 これからの時代を展望したとき、言語の課題を果たす役割は重要性を増す一方であります。例えば、価値観の多様化が大きく進展する社会においては、多様な考え方を持った人々が互いに伝え合い、相互理解を深めながら人間関係を形成していくことが必要であると考えます。
 また、国際化が急速に進み、異文化との接触が増大する中、みずからの考えを論理的かつ説得力を持って表現することや、さらに、情報化の進展に伴い情報を収集する力、収集した中から必要な情報を選ぶ力、選んだ情報を活用して自分の考えをまとめて発信する力などがこれまで以上に求められております。こうした力の根源となるのは言語能力であります。
 一方、学校教育において、言語能力はあらゆる教科の基盤でもあります。また、いじめや不登校、暴力行為などの諸問題も、子ども同士、子どもと教員、子どもと親などの間でコミュニケーションが十分にとれなくなっていることが要因の一つになっていると考えられます。
 さらに、感性や情緒は主に他者との人間関係の中ではぐくまれるものであり、さまざまな人々とのかかわりの中で、美しい言葉や心のこもった言葉の交流が、確かな、豊かな感性や情緒をはぐくむものであります。
 このように言語能力は、知的活動、コミュニケーション、感性や情緒の基盤であり、今後の学校教育で重点的に育成すべきものであると考えます。これまで学校においては、子どもたちの言語能力向上を図るため、どのような取り組みを行ってきたのか伺います。
 そして、言語能力を向上させるためには、何よりも子どもたちを指導する教員の力量を向上させることが極めて重要であります。
 そこで、子どもたちの言語能力の向上を図るため、今後、都教育委員会は、どのように教員の指導向上を図っていくのか伺いたいと思います。
 次に、鉄道の立体化についてお伺いをいたします。
 都内には、千百三十カ所もの踏切が残されており、交通渋滞や地域分断などの問題を引き起こしております。踏切の問題には、数多くの踏切を同時に除去する連続立体交差事業が効果的であります。東京都では、現在、西武池袋線など七路線八カ所で事業を進めており、これまでの着実な取り組みを大いに評価いたすところであります。現在、連続立体交差化による踏切問題のさらなる解決に向け、都市計画等の手続を進めているとのことでありますけれども、その取り組み状況について伺います。
 私の地元の西東京市でも踏切による交通渋滞などが発生し、市民生活に大きな影響を及ぼしております。踏切対策基本方針では、西東京市内において、西武池袋線の大泉学園駅から保谷駅付近、ひばりヶ丘駅から東久留米駅付近、西武新宿線の井荻駅から東伏見駅付近、田無駅から花小金井駅付近の四区間を鉄道立体化の検討対象区間に位置づけられており、これらの区間の鉄道立体化は、西東京市だけの問題ではなく、沿線市民共通の問題であることから、西東京市など五市で構成する多摩北部都市広域行政圏協議会が都に連続立体交差化を要望したと聞いております。
 また、特に、昨年六月、ひばりヶ丘駅周辺の商店街から、西東京市議会に西武池袋線連続立体化を推進すべきとの陳情が出されるなど、踏切問題の解決は西東京市民にとっての重要な課題となっております。
 そこで、西武池袋線のひばりヶ丘駅から東久留米駅付近の鉄道の立体化に向けた都の見解について伺います。
 西東京市内における鉄道の立体化に関しては、現在、事業が進められております西武池袋線の石神井公園駅付近に引き続き、大泉学園駅から保谷駅付近の立体化に取り組んでいくことが重要であると考えております。この区間では、保谷駅の南口で再開発事業が行われるなど、駅周辺のまちづくりが進められております。こうした沿線市のまちづくりや市民の熱意を踏まえ、鉄道の連続立体交差化に向け、東京都として積極的に取り組んでいくことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 山田忠昭議員の一般質問にお答えいたします。
 若者へのエールをというお尋ねでありますが、かつて北海道で教鞭をとったクラーク博士は、有名なボーイズビーアンビシャスという言葉を残しました。
 私たちも若いころ、寮にいたとき、まあ蛮カラな寮にいまして、蛮カラな寮歌を歌ったんですが、その中の文句に、尾張名古屋は城でもつ、天下の商大おれでもつというふうな――私は商大、一橋というのは――若者らしい気負った文句があちこちにありましたが、私はやっぱり若者の寮歌に見られたあの気負いというものがこの国を興して、大きなエネルギーの象徴だったというような気がいたします。
 いずれにしろ、若者が強い情熱やエネルギーを抱いて未知の事柄に挑んでいくことは、日本の再生といいましょうか、社会の発展のために必要不可欠でありまして、若い諸君には、みずからの可能性を試し、能力を発揮する場があることにぜひ目を開いてもらいたいと思います。
 このごろの若者は非常に情報の供給が過剰なものですから、その情報の整理といいましょうか、分析といいましょうか、評価を情報にまた頼るという、非常におかしな状況の中に埋没しておりますが、やはり自分で本当に物を思い詰めて考えて、勘違いする、思い違いするということもとても大事だと思うんですが、その傾向がなくなりまして、例えば、青春につきものの恋愛にしても、何か自分のランキングを情報で決めてしまって、心に抱いている相手の女性もとても自分にはそぐわないとか、そういう意味で、ある意味で失恋をする若者が減ってきたというのも非常に不思議な現象だと思います。
 話は別ですが、毎年のベンチャー技術大賞を見ましても、東京の小零細企業のコロンブスの卵のような発想にいつも驚嘆させられます。非常に若い人たちが少人数でやっている企業がとんでもない発想をする。この変化の激しい時代に求められるのは、何よりもみずみずしい発想、創造意欲でありまして、東京には若者の力を存分に生かせる中小企業が人生の場所として数多く存在しております。
 単に大きな企業、見ばえのいい企業を選んで、そこで安定を求めるのではなくて、こうした少数でも、何ていうんでしょう、自分たちの発想力で大きなものを切り開いていこうという、そういう経営者というかリーダーの下で働くことが、実は自分にとっての思いがけない大きな人生をもたらすことになると思います。現在は一流企業でも、未来永劫安定、安寧であるわけはありませんし、そうした中で、東京のすぐれた技術をさらに発展させることに挑戦してもらいたいものだと思います。
 次の時代を切り開いていくのは、これはあくまでも若者でありまして、そのだいご味といいましょうか、先頭を切って大きなトンネルのための一番のみの切り先になって、最初にとにかく小さな穴をあけるということこそが実は大きなトンネルにつながるわけであって、そういう使命を若者こそが負っているという、そういう自覚を何とかこう、今の若者たちに持ち直していただきたいものだと思います。
 他の質問については、教育長、技監及び環境局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、学校における子どもたちの言語能力向上の取り組みについてでございます。
 子どもたちの思考力、判断力、表現力等をはぐくむためには、学習活動の基盤となる言語能力を向上させることが重要であり、都教育委員会はこうした認識に立って、平成十六年度から、国語科のみならず、すべての教科等で読解力を育成するための方法に関する研究を開始し、その成果を各学校に還元してまいりました。
 また、平成十九年一月には、読解力向上のための学校図書館活用ガイドブックを作成配布するなどして、各学校を支援してまいりました。
 一方、国においては、平成二十年三月に学習指導要領が改訂され、国語科を含めたすべての教科等において、言語活動の充実が求められることとなりました。
 こうした状況を踏まえ、現在、各学校では、すべての教科等において、児童生徒の言語能力を高める取り組みを強力に推進しております。
 次に、子どもたちの言語能力を高めるための教員の指導力向上についてでございます。
 これまで都教育委員会は、読解力向上のための指導資料を作成配布するとともに、児童生徒の言語能力の向上に関する研究や研修を行ってまいりました。また、今年度は、研究の推進役を担う教員を対象に、言語技術にかかわる研修を、専門家を講師として三回にわたり実施いたしました。
 こうした取り組みに加えまして、平成二十三年度から、都内公立小中学校五十校、都立学校十五校を推進校として指定いたしまして、新たに言語能力向上推進事業を実施いたします。推進校では、教員の指導力を高めるため、読み聞かせの達人や言語技術に係る大学教授等の専門家を招聘した授業及び教員研修を行ってまいります。
 今後、都教育委員会は、こうした取り組みの成果を全都に普及いたしますとともに、教員の指導力を高め、猪瀬副知事をリーダーとした活字離れ対策検討チームによる言葉の力再生プロジェクトの取り組みとも連携を図りまして、児童生徒の言語能力の向上を強力に推進してまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 鉄道の立体化に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、連続立体交差化の取り組み状況についてでございますが、都では、平成十六年度に踏切対策基本方針を策定し、鉄道立体化の可能性を検討する鉄道立体化の検討対象区間二十区間を選定いたしました。連続立体交差化に当たりましては、鉄道と交差する都市計画道路をあわせて整備することや、沿線地域のまちづくりを一体的に進めていくことが、その効果を高めていく上で大変重要でございます。
 こうしたことから、二十区間のうち、道路整備計画が具体化するとともに、まちづくりの取り組み熟度が高い五区間について、現在、都市計画等の手続を進めております。
 具体的には、西武新宿線では、中井駅から野方駅間で昨年十月に都市計画案及び環境影響評価書案の説明会を、東村山駅付近では十一月に都市計画素案の説明会をそれぞれ開催いたしました。京王線では、笹塚駅から八幡山駅間及び八幡山駅から仙川駅間の二区間につきまして、本年三月に都市計画案及び環境影響評価準備書の説明会を開催いたします。東武伊勢崎線では、竹ノ塚駅付近につきまして都内初の区施行による連続立体交差化を三月に都市計画決定いたします。
 今後とも、関係機関と連携を図りながら、都市計画等の手続を進めるなど、早期事業化に向け積極的に取り組んでまいります。
 次に、西武池袋線のひばりヶ丘駅から東久留米駅付近の鉄道の立体化についてでございますが、お話のとおり、この区間は、踏切対策基本方針の中で、鉄道立体化の検討対象区間二十区間の一つに位置づけられております。
 鉄道の立体化に当たっては、本区間の西武池袋線と交差する西東京三・四・二〇号など、三路線の都市計画道路がいずれも第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけられていないことから、これらの道路整備計画との調整などが課題となっております。
 また、鉄道の立体化の効果を高めていく上で、地域のまちづくりと連動させていくことも必要でございます。
 都としては、本区間の鉄道立体化につきましては、今後の道路整備計画の具体化や、地元市によるまちづくりの取り組みの状況などを十分に踏まえまして、適切に対応してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) ディーゼル車対策に関します三点のご質問でございます。
 まず、ディーゼル車対策による黒煙の削減が地球温暖化防止に及ぼした効果についてでございますが、ディーゼル車から黒煙として排出される粒子状物質は、人の健康に影響を及ぼすだけでなく、太陽熱を吸収し、周囲の大気を温める地球温暖化物質でもあることが最近の研究によりまして明らかになってまいりました。
 この黒煙のもたらす温暖化効果の定量的な評価は、現在、世界じゅうで専門家が検討を行っている段階でございますけれども、最も少なく見積もる評価によりましても、一都三県のディーゼル規制によりまして、家庭の年間CO2排出量の五十万世帯分に相当する百五十万トン程度の排出削減効果があったものと推計されます。
 次に、東京都のディーゼル車規制を契機とした我が国の環境技術の進展についてでございますが、国内の石油メーカーは軽油中の硫黄分を率先して五十分の一に削減しまして、ほとんど硫黄分が含まれない、いわゆるサルファーフリーの軽油を世界で初めて全国規模で販売いたしました。
 また、ディーゼル車から排出される粒子状物質も、最新規制適合車では四十分の一程度にまで削減されております。
 東京都の取り組みの前には、我が国の排ガス規制は欧米の水準に大きく立ちおくれておりましたが、現在では世界で最も厳しい水準を競い合っておりまして、日本の自動車メーカー、石油メーカーの環境技術は世界でも最先端のものとなっております。
 こうしたディーゼル車対策の経験は、環境規制が経済発展を阻害するのではなく、むしろ技術革新をもたらしまして、新しい成長の原動力となることを示したものと認識をしております。
 最後に、ディーゼル車対策の世界への発信についてでございますが、今回のシンポジウムにおきましては、ディーゼル車対策は、大気汚染対策としてだけでなく、地球温暖化対策としても重要であることが明らかになりました。都の経験の世界への発信は一層重要性が高まったものと認識をしております。
 シンポジウムでは、都のディーゼル車対策が黒煙の大気中濃度を七年間で三分の一に削減する効果を上げまして、今日では、東京の大気がアジアの諸都市の中で、際立ってきれいな状況にあることが報告されました。また、参加した国内外の専門家からは、東京の経験は、中国、インド、ブラジルといった新興国の大都市に生かされるべきものであるとの指摘もございました。
 今回のシンポジウムの内容は、既に環境局のホームページにおきまして、日英二カ国語で情報提供しております。
 都の施策とその実現を可能とした日本の環境技術につきましては、昨年来、強化を進めてきております海外の諸都市、国際機関等とのネットワークを活用するとともに、先駆的な民間企業とも連携し、今後さらに積極的に発信してまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 五十一番山下ようこさん。
   〔五十一番山下ようこ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇五十一番(山下ようこ君) それでは、私、山下ようこからは、東京の緑という観点で、まず森林について伺います。
 ことしは国際森林年です。世界じゅうの森林の持続的な経営、保全に対する認識を深めようと、国連総会で決議されました。世界では、目先の利益を求める違法伐採が続き、森林が減少、生物多様性や気候への大きな影響も見られます。
 一方、ここ東京に目を向けますと、森林は島しょ部を含めた東京の全面積のおよそ四割を占めています。市街地に住む人々も、東京の森林を身近なものとして、また、さまざまな課題を自分たちのこととして考える。国際森林年がそのきっかけになることを望みます。
 東京都は、木材価格の低迷などから、管理が行き届かなくなった森林を対象に、二〇〇二年、平成十四年、森林再生事業に乗り出しました。林業という産業面だけでなく、森林の持つ二酸化炭素吸収、酸素放出という光合成能力や、保水、治水機能など、環境という公共性、公益性に注目した全国に先駆けた取り組みと理解しております。
 国際森林年の日本国内のテーマは、「森を歩く―未来に向かって日本の森を活かそう」とのこと。私も先日、西多摩の森林を歩いてまいりました。杉やヒノキの山だけでなく、広葉樹との混交林や花粉の少ない杉の苗を植えた斜面、所有者にかわって企業や自治体が管理する山など、新たな試みも見られました。
 そこで、改めて、森林再生事業を開始した理念とその仕組み、現在の進捗状況を伺います。
 国際森林年の国内のテーマ、「森を活かそう」という言葉には、暮らしの中に木材を取り入れようという意味も込められていると聞きます。戦後植えられた東京多摩地区の森林は、今ちょうど伐採の時期を迎えています。森林は、木を伐採し、木材として利用し、また苗を植えるというサイクルが重要です。木材の利用拡大が林業の振興につながり、それが森林を守ることになります。
 東京多摩の木材、原木市場は、このところ価格が上昇傾向にあり、森林所有者にとって明るい材料となっています。森林に再び目を向ける人がふえれば山が守られるという理論ですが、多摩地区の森林の最大の問題は、小規模の所有者が多く、その上、地形が急峻で、木材の搬出に多くの費用がかかるため、伐採した木材を搬出するのが難しいという点です。
 そこで、東京都は、二〇〇九年、平成二十一年度から、小規模所有者の多い多摩の森林を集約し、低コスト化などを図る森林の循環再生プロジェクト事業を実施していると認識しております。この事業による森林整備と木材の利用について、これまでの実績と今後の取り組みを伺います。
 林業という産業の視点と環境の視点の双方からの取り組みが東京の森林を保全することになると私は考えます。これと同じように、産業面だけでなく、環境の面からも保全に取り組んでいただきたいものに水田があります。
 かつては東京の各地にも水田がありましたが、開発などによって大幅に減少しました。イネ科の植物は、全般に光合成の能力が高く、環境改善に効果があるとされています。稲は、同じイネ科のサトウキビやトウモロコシに比べれば光合成能力が低いものの、その他の植物よりはすぐれているといえます。
 加えて、夏の暑い時期に水を張った水田はヒートアイランド現象の緩和に効果があり、また、水田での稲作が連作障害とは無縁なのも、環境の世紀の農業にふさわしいと考えます。
 東京都は、こうした観点からも、残り少なくなった水田をできる限り守っていく必要があると思います。そこで、水田面積の推移と水田の保全のための取り組みを伺います。
 水田に限らず、東京の農業、農地を守ることが緑の保全につながるのはいうまでもありません。そして、農地を守るだけでなく、さらに農業を育てるには、新たな需要の掘り起こしが必要といえるでしょう。
 東京が進める都市緑化は、苗木生産など園芸農家の育成につながります。街路樹、公園、そして屋上緑化に壁面緑化、さらには、私がおととし十二月の一般質問のこの場で提案いたしました東京のオフィスビルの室内緑化の推進など、あらゆる都市空間の緑化を進めることが新たな需要の掘り起こし、農業育成につながるものと考えます。
 こうした中、来年、東京で開催される全国都市緑化フェアは、人間と植物との共存共栄のすばらしさを多くの人々に知らせるとともに、東京の植物の生産を拡大するための大きな可能性を秘めた催しであると考えます。そのときだけのいわゆる一過性のイベントではなく、二十一世紀を生きる人々に緑あふれるライフスタイルを提案できるものとなることを望みます。この全国都市緑化フェアの基本的な考え方を伺います。
 近年、生物多様性という概念が以前にも増して注目されるようになりました。さまざまな動植物がともに生きる地球のとうとさを再認識する言葉だと思います。東京も、面積は狭くても、西多摩の山々から、世界自然遺産への登録を目指す小笠原まで、生物多様性を誇ることのできるすばらしいふるさとであると思います。
 二十三区と多摩地区の接点である調布市の神代植物公園では、東京の植物の多様性をテーマにした新たな事業も進められていると聞きます。その取り組みについて伺います。
 環境の世紀と呼ばれる二十一世紀に入ってちょうど十年、東京都は二十一世紀最初の年、二〇〇一年に屋上緑化の義務化を開始したのを初め、翌年には森林再生事業、さらに街路樹倍増計画や海の森事業など、この十年、先進的な取り組みを進めています。ここで、東京の緑の行政について、環境の世紀のこの十年の総括と今後の展望を石原都知事に伺います。
 さて、私がきょうここで質問を始めてから八分が経過しました。こうしている間にも、東京消防庁の救急指令室には、救急車を要請する一一九番通報が次々に届いているものと思われます。東京消防庁の速報値によりますと、去年一年間の管内の救急車出動は合計七十万件余り、平均して四十五秒に一回出動している計算です。救急車出動の要請を受けてから現地到着までの時間、いわゆるレスポンスタイムはおよそ八分。これはあくまで平均値であり、交通渋滞の起こりやすい箇所や山間地など、地域の実情によって、これよりも時間のかかるケースがあるのはいうまでもありません。
 一方、人間が心肺停止、つまり心臓停止、呼吸停止などの緊急事態に陥ったときの時間の経過と死亡率の関係を示すカーラーの救命曲線によりますと、心臓停止から三分間で死亡率は五〇%、その後、時間の経過とともに死亡率が高まり、この数字はやがて一〇〇%に達します。
 つまり、心臓停止から一刻も早く蘇生措置を施すことが命を救い、そして命を取りとめたときの社会復帰の確率を高めることになるわけです。いいかえれば、救急車到着までの蘇生措置が極めて重要で、心臓停止から最初の数分間は、命の勝負のときといえるでしょう。
 心臓が停止するような緊急事態の際、直ちに救命活動ができるのは、そこに居合わせた人、すなわちバイスタンダーと呼ばれる人です。バイスタンダーが心肺蘇生の方法を心得ていて、手を差し伸べる意識と行動力があれば、命を救える可能性が大きくなります。
 世界の医学の専門家で組織する国際蘇生連絡協議会が去年発表した心肺蘇生に関するコンセンサスによりますと、心肺蘇生のための最初の措置として最も有効な方法の一つは、心臓マッサージであるとしています。器具などを使わず、人の手でのみ行える心臓マッサージなら、場所や時間帯などを問わずに実行できます。この心臓マッサージの方法を一人でも多くの人に知らせることが社会全体の救命率を高めることになるはずです。
 東京消防庁は、この心臓マッサージを含む応急手当ての講習会実施を推進しており、個人でも団体でも希望すれば受講できると聞いております。私は、中でも消防庁が東京の事業所での実施に力を入れていることを評価しております。地域の自治会への加入率低下が問題視される中、地域の防災訓練や各種の講習会には出席をちゅうちょする人がふえていると思われます。また、こうした訓練などは日曜日の午前中に開催されることが多いため、休日ぐらいゆっくり過ごしたいと考える働く世代にはかえって参加しにくいものとなっています。
 本来、働く世代は、一般に体力や行動力があり、救命措置の実行に適しています。その人たちが事業所の業務の一環としてまとまって受講すれば、即戦力の人材を一度に大勢、世に送り出すことになります。こうした人たちが社会にふえるのは心強いことです。消防庁の事業所への応急手当ての普及推進の取り組みを伺います。
 また、応急手当ての講習会は、大人対象だけでなくて、教育現場にもより広く、より深く組み入れるべきと考えます。東京消防庁では、家庭や地域での防災行動の向上と将来の防災活動の担い手育成のために、幼児期から社会人までの体系的な総合防災教育を推進していると聞いております。年代に応じた内容を教えるというもので、例えば、小学校の三年生から六年生では止血法などの応急手当て、中学生以上になると心肺蘇生やAED、自動体外式除細動器の操作方法などを教える普通救命講習のカリキュラムが組まれています。
 家族が自宅で心臓停止に陥ったとき、バイスタンダーは当然その家族です。核家族化が進む中、大人も子どもも皆が家族の命を救うという自覚を持つことが大事です。
 自宅で心肺停止に陥った家族を小学校高学年の児童が心臓マッサージによって助けるという事例が東京消防庁管内やほかの県で報告されています。父親が夜中に心肺停止、母親が一一九番通報、指令室の指示を電話で受けながら、子どもが父親に必死で心臓マッサージを行う、到着した救急隊員はその光景に驚いたということです。その父親は、その後、社会復帰することができたと聞きます。子どもは、テレビドラマの心臓マッサージのシーンを思い浮かべて実行したということです。小学生も高学年になれば、家族を支え、命を救うこともできると、この事例が実証しています。
 私は、東京消防庁の総合防災教育で、現在は中学生以上からとなっている心臓マッサージなど心肺蘇生の方法を教えるプログラムを小学校高学年にも取り入れることが救命率向上のために有効であると考えます。見解を伺います。
 人の命や地球環境を守る、これからも世界をリードする東京であることを強く願い、私の質問の結びとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 山下ようこ議員の一般質問にお答えいたします。
 この十年の東京の緑施策についてでありますが、いかなる小さな木、小さな緑でも、これはなぜか人の心を和ませるものであります。その緑があふれる都市東京を実現するためには、従来の行政の枠組みを超えて、緑を積極的に植え、育て、守るというムーブメントが、民間からも自発的に展開されるなど、幅広い取り組みが重要であります。
 緑の東京募金では、海の森づくりのために、五億円を目標に拠金を募ってまいりましたが、わずか三年余りで達成の見込みとなるなど、緑のまちづくりへの都民の参画意識とともに、なじみの薄かった寄附の文化も醸成されてきていると思います。
 また、企業の森事業では、多くの社員が都民とともに、植林活動を実施するなど、森林づくりにボランティアとして積極的に取り組む企業も次々とあらわれておりまして、民間の力を生かした協働の輪が大きく広がってきております。
 今後とも、こうした十年間の成果を礎に、志を持った多くの都民や民間企業と協働して、緑のまちづくりを進めていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 森林再生事業についてのご質問でございます。
 森林再生事業は、環境の視点から、地下水の涵養など、森林の持つ公益的機能の回復を目指しまして、構築をしたものでございます。
 この事業は、多摩の荒廃した人工林を対象に、五十年かけまして複数回の間伐を繰り返し、良好な森林に再生させる長期的な視点を持った事業でございます。事業開始から平成二十一年度末までに約五千ヘクタールの間伐を実施してまいりました。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、森林の循環再生プロジェクトについてでありますが、森林整備と木材の利用拡大を図るには、伐採、搬出のコストを可能な限り抑え、林業の経営力を強化することが重要であります。
 本事業は、森林所有者の合意を得て、森林施業を集約化することで、スケールメリットを生かしたコスト削減を実証するモデル事業であります。具体的には、モデル団地二カ所を選定し、作業路整備や、高性能林業機械導入などの支援により、間伐と間伐材の利用を推進してまいります。
 事業を開始した平成二十一年度から今年度末までに、十五ヘクタールの間伐と八百立方メートルの間伐材利用を見込んでおります。来年度は間伐を二十ヘクタール、間伐材の利用を千二百立方メートル計画しております。引き続き、本プロジェクトを実施し、森林の整備と木材の利用拡大に努めてまいります。
 次に、都内の水田の面積の推移と、水田の保全に向けた取り組みについてであります。東京の水田面積は、国の平成二十二年耕地面積調査によると、三百ヘクタールでありまして、十年前の四百ヘクタールから二五%減少しております。
 水田は、米などの農産物を生産するばかりでなく、地域の環境保全や、子どもたちの食育の場の提供など、多面的な機能を持っておりまして、その保全は重要と考えます。
 都は、農業用水施設などの生産基盤の整備を実施しておりまして、今後も市町村や農業団体とも連携し、水田の保全に努めてまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、全国都市緑化フェアについてでございますが、全国都市緑化フェアは、国、地方自治体、住民などの協力により、都市の緑化を全国的に推進し、緑豊かな潤いのある都市づくりに寄与することを目的としております。
 都はこれまで、緑あふれる都市東京の実現に向け、緑の拠点となる都立公園の整備や街路樹の充実等を進めてまいりました。こうしたこれまでの成果を全国に発信するため、平成二十四年秋、東京で全国都市緑化フェアを開催いたします。
 開催に当たっては、開催期間のみのイベントではなく、国、地元自治体とも協働し、緑の施策の先進都市東京ならではの印象深いムーブメントとすべく、地域や都民、民間事業者等と多様な連携を図ってまいります。
 次に、神代植物公園における東京の植物の多様性についての取り組みでございますが、神代植物公園は、小笠原諸島でしか見られないムニンノボタンのように、東京都の保護上、重要な野生生物種、いわゆる東京都版レッドデータブックに掲載されている約二百三十種の植物を含め、全体で約四千八百種の植物を保有、栽培、展示し、多様な植物について楽しみながら学べる公園として、都民に親しまれております。
 また、園内にエリアを定め、武蔵野の雑木林など、東京における代表的な植生景観を再現し、その中に、都内における希少な植物も含めて、展示することを計画しております。
 今後とも、他の植物園等との連携と、これまで培ってきた栽培技術を生かし、情報の収集、発信や、希少な植物育成に取り組むとともに、多様な植物と人とのかかわり方について、教育、普及する場として、さらにその取り組みを充実してまいります。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

〇消防総監(新井雄治君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、事業所への応急手当ての普及についてでありますが、傷病者を救命するためには、お話にありましたように、その場に居合わせた方、いわゆるバイスタンダーによる応急手当ての実施が重要であります。
 当庁では、一人でも多くの都民が応急手当ての知識、技術を習得できるよう、救命講習を積極的に推進し、毎年二十万人以上の方に受講をいただいております。
 特に、駅舎、百貨店など、多数の人々が出入りする事業所につきましては、事業所みずからが、実効性のある応急救護体制を確立することが望まれます。このため当庁では、平成十二年四月から、応急手当て奨励制度を設け、全従業員の三〇%以上が、救命講習修了者であるなど、一定の要件を満たした事業所に対して、救命講習受講優良証を交付し、取り組みを促しております。
 また、各業種団体、行政機関で構成いたします東京都応急手当普及促進協議会を設置し、情報提供や意見交換を通じて、応急手当ての実施促進を図っております。今後とも、事業所を初め、広く都民に対して、応急手当ての普及啓発を推進してまいります。
 次に、総合防災教育において、小学校高学年の実施項目に心肺蘇生を取り入れることについてでありますが、東京消防庁では、平成二十年度より、幼児期から各年代の発達段階に応じた総合防災教育を体系的に実施しており、その中で、中学生については心臓マッサージなどの心肺蘇生を、小学校高学年については止血法等を、応急手当ての実施項目としております。
 しかしながら、お話のとおり、救命率の向上には、多くの都民が心肺蘇生を身につけることが重要でありますことから、今後、有識者の意見等も踏まえ、総合防災教育における小学校高学年の実施項目への心肺蘇生の導入について検討してまいります。

議長(和田宗春君) 六十一番上野和彦君。
   〔六十一番上野和彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十一番(上野和彦君) 初めに、地球温暖化の影響と都市インフラの強化について質問いたします。
 世界気象機関の発表によれば、昨年二〇一〇年の世界の年間平均気温は、観測以来、過去最高を記録し、地球温暖化の進行が疑い得ないものであることをデータで物語っております。海面の上昇は、南太平洋のツバルなど、海抜の低い国家の存続を脅かし、世界各所で頻発する大規模な異常気象は、とうとい多くの命を奪うなど、ますます被害が甚大化しております。
 こうした地球温暖化の影響は、決して対岸の火事ではなく、世界に類を見ない大都市として繁栄を誇る東京にも、ひたひたと、そして確実に忍び寄っているのであります。政の基本は、治水など民の貴重な生命と財産を守ることにあると心得るものでありますが、地球温暖化によりもたらされる影響について、まず、知事の基本的な認識をお伺いします。
 昨年末から年頭にかけて、オーストラリア、スリランカ、ブラジル、フィリピンなどで、大規模な風水害が発生し、多くのとうとい命が失われました。
 また、一昨年の台湾南部を襲った台風八号は、わずか二日間で、東京の二年分の年間雨量に相当する二八〇〇ミリもの雨をもたらしました。世界的な異常気象の波は、東京にも押し寄せ、昨年夏の猛暑や、かつて経験したことのないほどの猛烈なゲリラ豪雨が頻発し、都民のだれもが気象の異変を肌で感じ、不安を抱いております。
 こうした中、既に環境局は、昨年度から気候変動における適応状況調査を開始しており、温暖化の進行が大都市東京に与えるさまざまな影響を明らかにし、評価するべく事業を行っています。
 そこで、調査に当たっては、研究機関の知見を活用した専門的な評価を行い、気候変動が東京に与える影響、中でも、高潮や河川のはんらんによる甚大な被害が危惧される区部東部のゼロメートル地帯一帯への影響を把握すべきであります。都の見解を求めます。
 また、影響把握の調査結果に基づき、ハード対策を備えるのは当然でありますが、気候変動による台風の巨大化などが予測される中、住民避難などのソフト対策を強化することが極めて重要であります。
 そこで、都は、避難対策など大規模水害対策について、専門的に検討する組織を立ち上げ、具体的な対策を検討すべきであります。都の見解を求めます。
 昨年、政府の行政刷新会議は事業仕分けで、スーパー堤防事業を一たん廃止と判定しました。スーパー堤防にかわる新たな治水対策を提案することもなく、廃止するということは、国民の命を軽視しているといわざるを得ません。本来、治水対策とは危機管理であり、国の責任において、国民の命を守る安全保障であるべきであります。単にコストのみに左右されて判断されるべきものではありません。
 東部低地帯には、約三百万の都民が生活し、このうち約百五十万人は、東京湾の満潮面より低い土地に暮らしており、一たび堤防が壊れると、多くの都民の命と財産を奪う甚大な被害が発生します。そこで、都は、スーパー堤防事業の着実な推進を国に強く要請すべきであります。
 また、江戸川区を流れる荒川は、中川と並行して流れており、国が直轄事業として、スーパー堤防を計画している荒川の左岸堤は、都が管理する中川の左岸堤も兼ねております。
 そこで、都は、国に先行して都型のスーパー堤防を導入し、水害に対する地域の安全性を向上させるべきであります。あわせて見解を求めます。
 次に、依存症対策について質問いたします。アルコールや薬物への依存についてはよく知られておりますが、ギャンブルへの依存が病気であることは余り認識されておりません。世界保健機関、WHOが定めている国際疾病分類には、病的賭博として掲載されており、世界共通の病気であります。アメリカでは、一九六〇年代から、社会問題として対策を講じており、最近は、シンガポールや韓国でも患者がふえ、国家的課題として対策に乗り出したと聞いております。
 健全な範疇では、庶民の娯楽としてのギャンブルも、依存症になると、病気であることを自覚しないまま借金までして行い続けることが問題視されております。
 日本でも患者数は増加しており、推測で二百万人を超えているといわれております。家庭内の不和により離婚に至ったり、多重債務や犯罪、自殺など、重大な社会的問題に結びつくことも少なくありません。ギャンブルで身を持ち崩すのは、単に本人の意識の問題ととらえがちでありますが、その基礎には依存症という病気があることをしっかり認識して対応することが必要です。
 先日、ギャンブル依存症の克服支援に取り組まれているNPO法人JAGO代表の大崎大地氏に話を伺ってきました。ギャンブルなどの依存症については、まず本人や周囲の人が依存であることに気づき、状況が悪化し、自殺などに至る前に、回復に向けた適切な支援につなげることが大事であるとのお話でありました。
 ギャンブル依存症に苦しむ人々を救うには、少しでも早く専門的な支援を受けるようにすることが重要であります。
 そこで、都は、本人、家族や周囲の人が、依存症であることに気づき、速やかに専門的な支援につながるよう、広く都民への普及啓発を図るべきであります。見解を求めます。
 次に、都立墨東病院の医療機能強化について質問します。
 地域におけるがん医療の充実を推進するためには、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院が中心となって、地域連携クリティカルパス、東京都医療連携手帳を活用することにより、地域のがん医療のネットワークを構築していく必要があります。
 一方、墨田区、江東区及び江戸川区の三区から成る区東部二次保健医療圏には、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院がありません。地域医師会や多くの住民から、墨東病院におけるさらなるがん医療の充実を求める声が上がっております。
 そこで墨東病院は、区東部地域におけるがん医療の中心的役割を担えるよう、一刻も早く東京都認定がん診療病院の認定を取得し、がん医療の充実に取り組むべきであります。都の見解を求めます。
 感染症医療や、難治性がん医療といった行政的医療は、多くの人員や経費を要するなど、現在の診療報酬制度においては、不採算性の高い医療分野であります。しかし、そういった医療への対応を充実させ、都民が安心して生活できる医療体制を構築することこそ、都立病院の果たすべき使命であると考えます。
 そこで、地域の医療機関では対応困難な合併症などを患った重症患者の命を守るために、墨東病院は、医療機能を拡充するなど、診療基盤の整備を図るべきであります。見解を求めます。
 次に、江戸川都県境の橋梁整備について質問いたします。
 都においては、千葉県境との橋梁整備に関し、放射第一六号線と補助第一四三号線を、第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけております。このうち補助第一四三号線については、東京都側の取りつけ道路整備が、住民の協力によって推進されており、今後は、千葉県側とを結ぶ橋梁の整備に地元は大きな期待を寄せております。
 そこで、都は、交通アクセスの向上と、災害時の避難路確保のために、補助第一四三号線の橋梁部の事業化に取り組むべきであります。見解を求めます。
 また、地域の防災拠点に位置づけられている篠崎公園と、対岸の市川市の大洲防災公園を連絡する補助第二八六号線の橋梁については、地元江戸川区において、災害時の避難路や緊急輸送物資の輸送路を早期に確保するよう、暫定的に整備する案の検討が進められております。
 そこで、区民の命を守る補助第二八六号線の暫定橋梁が一刻も早く実現できるよう、都は積極的に支援すべきであります。見解を求めます。
 次に、既設橋梁のバリアフリー化について質問いたします。
 荒川にかかる船堀橋は、江戸川区側は急勾配の斜路つき階段となっており、高齢者や障害者などの利用に支障を来しているだけでなく、災害時に、対岸の大島小松川公園への避難も困難となっております。
 これまで私は、本会議の場で何度もバリアフリー化の推進を訴えてきました。これを受け、都は、このたびスロープとエレベーターの設置を実施するとしたことは高く評価するものであります。
 そこで、都はスロープの設置工事を既に発注しておりますが、エレベーター設置工事についても、一刻も早く着手すべきであります。見解を求めます。
 また、船堀橋と同様に、ほかの既設橋梁についても、高齢者や障害者などすべての人が安心・安全に利用できるバリアフリー化に取り組むべきであります。都の見解を求めます。
 最後に、水環境の改善について質問いたします。
 東京は、下水道の整備により浸水被害は軽減され、河川の水質も大幅に改善されるなど、水の都、東京の再生に下水道が果たした役割は非常に大きく、評価するところであります。
 そうした中、合流式下水道からの雨天時の放流や東京湾の赤潮の発生など、さらなる水質改善が求められております。
 そこで、都は、河川や東京湾などの水質向上に向け、高度処理などの改善対策にさらに積極的に取り組むべきであります。見解を求めます。
 合流式下水道からの雨天時の放流の影響は、閉鎖的な水域において特に大きく、そこに重点的な対策を進めていく必要があります。例えば、私の地元である江戸川区平井・小松川地区を流れる旧中川では、建設局による河川整備が進み、水辺で多くの人々が憩うことができるようになりました。しかし、残念ながら降雨の後、一時的に水の汚れが見受けられます。旧中川の水質改善は、区民からも要望があり、喫緊の課題となっております。
 そこで、都は、貯留池を併設したポンプ所の構築など、具体的な対策に取り組むべきであります。見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 上野和彦議員の一般質問にお答えいたします。
 地球温暖化の影響についてでありますが、三年前、NASAの主任教授ハンセンが、このままでいくと十七年たったら北極海の氷は全部消滅するといいました。その傾向はどんどん進んでおりまして、このままでいくと、あと十四年たつと北極海の氷がなくなるわけですが、人によっては、大西洋から太平洋を結ぶ航路が開けて結構じゃないかという人もいますけど、これは到底そんな便利の許容だけで済むものじゃないと思います。
 それに並行して、ロシアの大干ばつやパキスタンの大洪水など、あるいはオーストラリアの内部における干ばつなど、世界各地で頻発する地球規模の環境異変は、深刻の度を増しております。
 人間は、死が不可避であるというのを知っていながら、自分の死を信じないように、地球環境問題を随分遠いものと考えがちですが、自然からの警鐘を正面からこれを受けとめ、子どもや孫たちへの責任を、今から果たさなければならないと思います。
 国際的な気候変動対策の新たな枠組みを決める交渉は、もう全然進んでおりません。地球温暖化による壊滅的な危機を回避するために残された時間は、ごくごくわずかであると思います。
 現在と未来の都民の生命と財産を守るため、都政に課せられた責務を考えれば、国家の交渉を座して待つわけにも、とてもいかない気がいたします。世界最大の経済都市である東京は、国内外を問わず同じ志を持つ地方政府とともに、できる限りの気候変動対策を、全力で講じていかなきゃならぬと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 補助第二八六号線の橋梁整備についてでございますが、本路線は千葉県との都県境を超えた道路ネットワークを形成するとともに、対岸の市川市との連携を図ることにより、防災機能の強化にも資する路線でございます。
 このうち、江戸川を渡る橋梁部につきましては、整備手法や整備主体などの課題があることから、都は、対岸の千葉県と調整を行ってまいりました。
 その中で、昨年度、地元の江戸川区から、災害時の避難路や救援物資の輸送路を早期に確保するため、みずからが整備主体となって、計画幅員の半分を先行的に整備するという新たな提案がなされました。
 都としては、この提案が、懸案となっている地域の防災性の向上等に寄与することから、江戸川区、千葉県、市川市とともに検討会を設置いたしまして、事業化に向けた検討を進めてまいりました。都は今後とも、関係機関との協議、調整を進めるとともに、計画の具体化にかかわる技術的な助言を行うなど、橋梁整備に向けた取り組みを支援してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 気候変動がもたらす東京への影響の調査についてでございますが、都は、気候変動が東京に与える影響を評価するため、都内の降水量の変化などを予測するとともに、それらが東京にもたらす影響を、水資源や防災などの分野ごとに予測できるよう、現在、シミュレーションモデルの構築を進めております。
 防災分野につきましては、降水量の予測データを活用しまして、東京全体の主要河川の洪水予測を行い、この中で、区部東部のゼロメートル地帯についても把握をしてまいります。
 あわせて、既存の研究成果も活用し、海面上昇を踏まえた高潮の都湾岸エリアに与える影響についても把握をしてまいります。調査結果は、関係局に情報提供を行い、長期的な適応策の検討に役立ててまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 大規模水害対策についてでございます。気候変動により大型化した台風で大河川がはんらんした場合、広大な地域で浸水することが懸念をされます。こうした大規模な水害により生じる膨大な数の住民の避難に備え、あらかじめ必要な対策を講じておくことは大変重要でございます。
 このため、東京都防災会議のもとに、国や防災機関、学識経験者などから成る検討組織を新たに設置し、国が策定する首都圏における大規模水害対策大綱や、現在、都が行っている気候変動予測とその影響に関する調査を踏まえ、都県境を超えた広域的な住民避難の方策などについて、具体的な検討を行ってまいります。
 これらの内容、成果については、大規模水害対策として、東京都地域防災計画に反映をさせてまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、国へのスーパー堤防事業の推進要請についてでございますが、国のスーパー堤防事業は、直轄河川において、計画を超える洪水に対しても、堤防本体が壊れることがないよう、河川の背後に奥行き最大三百メートル程度の堤防を整備するものでございます。
 一方、都型のスーパー堤防事業は、耐震対策や景観形成を目的として、民間開発などまちづくりと一体的に、奥行き最大六十メートル程度の幅で盛り土し、堤防を整備するものでございます。
 このうち、先般の事業仕分けにおいて、一たん廃止との判定を受けたのは、国のスーパー堤防事業でございます。都としては、極めて重要な事業であると認識しており、事業仕分けの後、直ちに国土交通省に対し、事業の継続を申し入れたところでございます。
 今後とも、水害から都民を守り、東京の都市づくりを進めていくため、スーパー堤防事業の推進を国に強く求めてまいります。
 次に、中川における都型のスーパー堤防の整備についてでございますが、お話の中川は、荒川に接し並行して流れており、荒川で計画を超える洪水が発生した場合、中川の堤防を超えてはんらんすることも予想されるため、国はスーパー堤防を計画しております。
 一方、中川は、都の管理河川であることから、堤防に隣接して、民間開発などまちづくりが行われる際は、都型のスーパー堤防を先行的に整備することも可能であると考えております。今後とも、水害に対する安全性を向上させるため、地域のまちづくりに合わせ、地元区や関係者等と調整を図りながら、都型のスーパー堤防整備に取り組んでまいります。
 次に、補助第一四三号線の整備についてでございますが、本路線は、葛飾区金町二丁目から、千葉県境の江戸川区東篠崎二丁目に至る都市計画道路であり、都市間連携の強化や防災性の向上に資する重要な地域幹線道路でございます。本路線のうち、篠崎街道から旧江戸川までの五百三十メートルの区間が事業中であり、現在、九割を超える用地を取得し、今年度から工事に着手しております。
 また、第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけた旧江戸川の橋梁部については、整備時期や事業手法など、千葉県との調整課題があり、県と設置した道路橋梁整備調整会議において協議を行っております。
 今後とも、事業中区間の早期完成を目指すとともに、橋梁部の事業化に向けて、千葉県との協議を積極的に進めながら、課題解決に取り組んでまいります。
 次に、船堀橋のバリアフリー化についてでございますが、新大橋通りの船堀橋は、荒川や中川などをまたいで、江戸川区と江東区を結ぶ延長約一・五キロメートルの道路橋でございます。
 本橋は、周辺に代替ルートがなく、自転車通行量が多いという特徴を有しており、橋の西側にはスロープが設置されておりますが、東側は勾配の急な斜路つき階段となっているため、バリアフリーの観点から、対策を講じることといたしました。
 今年度はまず、自転車の通行に対応したスロープを設置してまいります。さらに、限られた空間において、高齢者や障害者などのためのエレベーターを設置することといたしました。現在、交通管理者や地元区との調整を踏まえ、詳細設計を進めており、平成二十三年度には、エレベーター設置工事に着手する予定でございます。
 最後に、橋梁のバリアフリー化についてでございますが、高齢者や障害者なども含めたすべての人々が、快適に住み、働き、楽しむことのできる、移動しやすいユニバーサルデザインの都市東京とすることは重要でございます。
 とりわけ橋梁は、川や鉄道などで分断された地域と地域を結ぶ動線を確保する上で必要不可欠な都市施設であります。
 都は、東京都福祉のまちづくり条例に基づく基準に適合していない既設橋梁について、これまで、かけかえや改修にあわせて、スロープの設置などのバリアフリー化に取り組んでまいりました。
 今後は、自転車、歩行者交通量や、周辺の病院、福祉施設などの立地、代替ルートの有無など利用状況や地域特性を踏まえ、優先度を勘案した上で、これら既設橋梁のバリアフリー化に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) ギャンブル依存症につきましてお答え申し上げます。
 いわゆるギャンブル依存症といわれておりますのは、お話のとおり、病的賭博という精神疾患の一種でございます。その回復には、相談機関等の助言に基づきまして、精神科医療など適切な支援を受けることが重要でございます。
 都は、保健所や精神保健福祉センターなどにおいて、精神疾患に関する専門相談を実施しており、ギャンブル依存の問題を抱える方やその家族を、こうした相談機関につなげていくため、今後、都のホームページに解説コーナーを新設し、疾患の特性や依存が疑われる場合の対応などについて、広く都民に周知してまいります。
 さらに、来年度から新たに実施いたします一般診療科医師を対象とした精神疾患等に関する研修の中で、依存症の問題についても取り上げ、かかりつけ医から精神科など、専門的支援につなげるよう取り組んでまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、墨東病院におけるがん医療の充実についてでございますが、墨東病院が、区東部二次保健医療圏におけるがん医療の中心的な役割を担う必要があるとの認識に立ち、医療人材の育成や、外来化学療法、院内がん登録、セカンドオピニオンなどの取り組みを積極的に実施しているところでございます。
 平成二十二年九月からは、がん相談支援センターを開設し、院内外の患者からの相談に対応するなど、がん医療の充実を図り、現在、東京都認定がん診療病院の認定を目指しているところでございます。
 こうした取り組みや、地域連携クリティカルパス、東京都医療連携手帳を活用した地域医療機関とのネットワークを強化することにより、墨東病院は、区東部二次保健医療圏のがん医療水準の向上を推進してまいります。
 次に、墨東病院における診療基盤の整備についてでございますが、都が昨年度策定した東京都地域医療再生計画において、独立した感染症外来、感染症指定病床及び感染症緊急対応病床を整備するほか、重症化した感染患者に対応するため、腎センターや救命救急センターにも陰圧室を整備してまいります。
 新たに整備する腎センターでは、がん、心臓血管疾患などの合併症を有し、地域の医療機関では対応困難な患者の人工透析を行ってまいります。さらに、外来化学療法室や手術室の機能拡充など、診療基盤の整備を予定しており、地域医療機関との連携のもと、墨東病院の医療機能を最大限に発揮してまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 河川や東京湾などの水質改善に向けた下水道局の取り組みについてでございますが、水再生センターから放流する処理水の水質をさらに改善するために、窒素と燐をより多く除去する高度処理施設の整備と雨天時に公共用水域へ放流される汚濁負荷量を削減する合流式下水道の改善対策に取り組んでおります。
 まず、高度処理は、区部では五カ所の水再生センターにおいて、一日当たり約三十五万立方メートルの高度処理施設が稼働しております。現在、浮間、砂町の両水再生センターで、施設の増設を進めておりまして、平成二十四年度末までに、新たに一日当たり十二万立方メートルを処理できる施設が完成する予定でございます。
 また、既存施設の改造と運転管理の工夫を組み合わせて、窒素または燐のどちらかを削減する準高度処理を六カ所の水再生センターに、今年度から順次導入しております。
 次に、合流式下水道の改善対策でございますが、雨水はけ口におけるごみなどの流出抑制対策として、当局が民間企業と開発した水面制御装置は、今年度中に設置を完了いたします。
 また、降雨初期の特に汚れた雨水を一時的にためる貯留池は、現在、約八十三万立方メートルが稼働しており、これに加えて、さらに平成二十四年度末までに、十九万立方メートルを整備する予定でございます。
 今後も、河川や東京湾などの水質改善のため、高度処理や合流式下水道の改善対策に鋭意取り組んでまいります。
 次に、旧中川における水質改善の取り組みについてでございますが、旧中川は、経営計画二〇一〇におきまして、重点的に合流式下水道の改善を進めていく水域として選定しております。
 旧中川に雨水を放流するポンプ所は四カ所ございます。このうち、吾嬬第二ポンプ所と小松川ポンプ所については、あわせて二万八千立方メートルの貯留池が整備済みであり、降雨初期の特に汚れた雨水を貯留し、旧中川に放流することなく水再生センターで処理をしております。
 吾嬬ポンプ所につきましては、現在、貯留池を併設したポンプ所として再構築工事を進めております。また、大島ポンプ所については、放流先を旧中川から荒川へ切りかえるため、小松川地区に貯留池を併設した新たな代替ポンプ所の建設を行っておりまして、将来このポンプ所が稼働することで、旧中川へ放流している雨水量が四割程度削減できます。
 今後も、旧中川など、流れの少ない閉鎖的な水域において重点的に対策を進めまして、良好な水環境の創出に積極的に貢献をしてまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 四十六番山加朱美さん。
   〔四十六番山加朱美君登壇〕

〇四十六番(山加朱美君) まず、生活の基盤である住宅に関して、少子高齢化の進行に対応した都営住宅の供給整備について伺います。
 我が国の高齢化は、世界に類を見ないスピードで進行しており、東京では、二〇三五年には、高齢化率三〇・七%に達すると推計され、都民の三人に一人が六十五歳以上の高齢者、また、単身高齢者の急増により、その孤独死、無縁死が社会的な問題となっています。
 さらに、生涯未婚の急増。このままいけば、恐らく二〇五〇年ごろには、男性の三人に一人、女性の四人に一人が生涯未婚と予想されています。未婚化の進展によっても、単身世帯の急増にさらに拍車がかかると危惧されます。
 高齢化、単身化が進行する一方で、少子化に歯どめがかからず、都における合計特殊出生率は、現在、全国最低の一・一二という数値を示しています。
 さて、都内に二十六万戸のストックがある都営住宅においても、居住者の高齢化が進行し、世帯主の五割以上が六十五歳以上となり、単身高齢者も数多く、都営住宅における孤独死は、年間約四百人に上っていると聞きます。
 都営住宅は、都民の住宅面における最後のセーフティーネットとして大切な役割を担うとともに、都民共有の貴重な財産であります。世界に例を見ない急速な高齢化に直面する我が国は、その解決に向け、積極的に範を示す責務を負っており、そのプロセスこそが、追従する世界の高齢化に向けて、日本の果たすべき国際貢献でもあります。
 日本の首都であり、全国自治体の中でも最大の公営住宅ストックを有する東京都が、高齢者や子育て世帯が安心して住み続けられる居住環境の整備に向け、率先した取り組みを進める上で、都営住宅の果たす役割は極めて重要であります。
 今後、老朽化した都営住宅の建てかえを進め、ユニバーサルデザインに基づくエレベーター等が設置され、高齢者や障害者にとって、バリアフリー化された使いやすい住宅に更新するとともに、積極的に用地の創出を図り、子育て支援施設や高齢者施設、人々の触れ合いの場となる集会所などの整備を推進し、都営住宅団地が、地域の中で孤立することなく、地域の核としての機能を発揮するよう取り組むべきであります。
 このたび、中央区の勝どき一丁目団地の建てかえでは、創出用地を活用した民間プロジェクトにより、子育て支援施設が整備され、地域全体として子育て環境が整えられたと聞きます。
 今後、少子高齢化の進行に対応し、都営住宅の建てかえに際して、地域の活力あるまちづくりに積極的に貢献していくべきと考えますが、所見を伺います。
 また、都は、我が党の要望にこたえ、都営住宅において全国に先駆け、若年ファミリー世帯向けの期限つき入居制度を導入し、募集戸数の大幅な拡大に取り組んでいますが、今後、子育て世帯の居住支援をさらに推進するため、一層積極的な展開が求められます。所見を伺います。
 次に、高齢者の見守りについて伺います。
 人が幾つになっても、自立した一個人として自分らしい生活を送るためには、お互いに支え合う共助、そして互助の地域コミュニティの活性化が不可欠です。
 東京都社会福祉審議会の意見具申でも、都における高齢世帯に占める単独世帯の比率は全国平均に比べても顕著であり、これらの高齢者が社会的孤立に陥ることなく、安全・安心に生活を送ることができる体制を、より多くの地域で整備していく必要があるとしています。
 都内では、これまでも町会、自治会等による高齢者地域見守り事業や安否確認などの取り組みが、都の区市町村包括補助制度を活用し行われていますが、これまでの取り組みに加え、住民が主体となって地域の支え合い体制を構築する、より積極的な取り組みを、区市町村を中心としながら一層推進していくことが求められます。
 地域の支え合いの体制づくりをさらに推進するため、都としてどのように取り組んでいくのか所見を伺います。
 次に、障害者施策について伺います。
 見守りや支援を受けつつ、地域で生活できる障害者グループホームは、今や貴重な社会資源です。しかし、長年、知的障害者のグループホームを運営している現場からは、世話人の高齢化やノウハウの継承など、将来への不安の声が上がっています。
 従事者の人材育成は、まずは事業者がみずから対応すべき問題ですが、グループホームの整備拡充や安定的な運営のためには、グループホームを支える世話人の質の確保は重要な課題です。所見を伺います。
 次に、児童虐待について伺います。
 私はかねてより、児童福祉についての提言を行ってきましたが、平成二十年の第一定例会において、米国における児童虐待の状況と対比させながら、我が国、とりわけ東京の児童虐待事件が急増していることに、いち早く警鐘を鳴らしました。
 都は、この指摘を真摯に受けとめ、児童虐待防止に向けて、さまざまな取り組みを実施していることは評価します。しかし、残念ながら、虐待相談はその後も増加の一途をたどっています。
 特に、乳幼児に対する虐待は、生命の危険に直結する重大なケースも少なくありません。都内では、虐待を受けた乳幼児を養育する乳児院の入所率が、昨年の十二月時点で前年比八七%から九三%まで増加したと聞いています。これはもちろん全国的な傾向であり、管内の施設が満杯となり、他府県の施設に入所させる割愛といわれるケースが生じています。
 都は、管内の十カ所の乳児院で近隣自治体からの入所を受け入れていますが、子どもにとっても施設にとっても負担が大きいということは想像にかたくありません。
 入所している児童の状況は、過去の厚生労働省の調査でも、入所者の三人に一人がネグレクト、つまり育児放棄を含む虐待を受けていたと見られています。増加する虐待、それに伴う厳しい入所状況の中、乳幼児の乳児院における養育に都がどのように取り組んでいるのか、所見を伺います。
 次に、私の地元、練馬区に関連して何点か伺います。
 まず、昨日、我が党、三宅幹事長から、緊急豪雨対策の進捗状況等を確認させていただきましたが、私からは、特に、浸水にたびたび見舞われている流域の対策について伺います。
 かつて石神井川の支流であった練馬区内の田柄川流域では、ゲリラ豪雨のたびに浸水被害が発生し、地元では、この平成の時代に、昭和三十年代でもあるまいしとの声が上がっています。
 その後、地元から約六千人という多くの署名による浸水被害軽減の要望が出され、下水道施設による浸水対策が強く望まれています。既に練馬区では、来年度予算で独自に緊急に対策を必要とする五カ所の区道内で、他区に先駆け、道路冠水対策として、浸透施設などを設置し、被害の軽減に努めるとしました。
 しかし、都の下水道による抜本対策が実施されなければ、浸水対策として完結しません。都の緊急豪雨対策において、練馬区内の石神井川流域では、下水道事業として雨水を貯留する施設などを重点的に整備することとなっていますが、地元住民の思いを受け、一日も早い着手を求めるとともに、今後のこの地域での下水道事業の取り組みを伺います。
 あわせて、同様に浸水被害に悩まされてきた中村地区、豊玉地区において、平成十九年度より下水道管の整備を進めていますが、工事の実施状況と今後の予定について伺います。
 次に、都の道路整備は、交通渋滞の解消はもとより、地域の防災性向上や生活環境の改善などに不可欠であることはいうまでもありません。しかし、都内の都市計画道路の整備率は約六割、私の地元である練馬区では四八%、まだ五割にも満たない状況であります。国は、来年度予算から地方自治体の道路整備の重要な財源となっている社会資本整備総合交付金の一部を、いわゆる一括交付金化するとしており、その配分方法によっては、今後、東京への配分額が減少するおそれがあり、特に補助線など、地方の道路整備への影響を非常に危惧しております。
 私は、かねてより、豊島区と練馬区を結び、地域の交通機能や防災機能の向上などに寄与する補助第一七二号線の早期整備を求めてまいりました。また、本路線と練馬駅とを結ぶ区画街路第一号線の整備も、都と区がしっかり連携をとって進めることが必要です。今後も、都は、このような真に必要な道路整備に積極的に取り組むべきであります。
 そこで、補助第一七二号線について、豊島区内で事業中区間の開通の見込みと、練馬区内で第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけられている区間の今後の取り組みを伺います。
 最後に、都財政に関連して伺います。
 先日、米国の格付会社であるスタンダード・アンド・プアーズが日本国債の格付をダブルAからダブルAマイナスに引き下げたことが大きなニュースになりました。そのレポートを見ますと、これまでも指摘されてきた債務の増加とともに、民主党政権の実行力に疑問符がつけられ、海外からは政治が国を危うくしていると認識されていることがわかります。
 さらに、国債の格下げに連動して、東京都債の格付までも引き下げられてしまいました。都債は、貴重な財源であり、私も平成十六年の第四定例会では、調達コストを低くすべきという観点から、都債の入札制度などを提案させていただきました。都債の信用には全く変化がないにもかかわらず、国の信用低下がもとで都債の格付が下がってしまうのは納得できません。
 ほかにも電力会社やガス会社の格付も連動して下がっており、国の財政運営の悪影響が地方や民間にまで害を及ぼしてきたというゆゆしき事態であります。
 国が債務削減に対して無策である一方、石原知事は、平成十一年の普通会計決算で七兆六千億円あった都債残高を、二十一年度までの十年間で一兆八千億円も減らし、都の債務削減にも卓越した手腕を発揮しています。知事、少なくともあと四年頑張ってほしい、そう願わずにはいられません。
 都の財政再建に全力を注いできた知事に、債務削減への取り組みと国の債務問題に関する所見を伺い、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 山加朱美議員の一般質問にお答えいたします。
 債務の削減についてでありますが、就任以来、財政再建団体転落のふちに立った中で、人員や給料の削減、事業の見直しなど、徹底した改革をやってまいりました。こうした努力を積み重ねながら、借金への安易な依存を戒め、都債の発行を就任前の四割に抑えるなど、一貫して財政の健全性を堅持してきた成果が債務の削減に結実したものであると思います。
 一方、国は、財政悪化も顧みずに国民におもねるばかりで、ばらまきを繰り返したあげく、税収を超える借金に依存する異常な財政状況になりまして、国債残高の増加はとどまることを知りません。目先のつじつま合わせにきゅうきゅうとしている国からは、国家財政の立て直しに対する気概も危機意識も余り感じられない現況であります。
 財政の再建は、原理というのは極めて簡単でありまして、とにかく人を減らし、給料を減らすことでありますが、国に関していいますと、これは自民党のころからそうですけれども、人事院という非常にバリアがある。この人事院勧告というのは実にいいかげんでありまして、役人が役人のために作文をつくっていて、結局、東京を含めてほかの自治体がやっているような人間の削減、給与の削減は一向にしませんで、やっと一、二年前に東京並みのことをやるようになりましたが、結局、国政のこうしたていたらくによりまして国債が格下げされ、それに引きずられて都債も格下げされたのは、非常に迷惑な話であります。
 数年前に既にムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズが、そのころまでは東京の評価というのは国より二つランクが上だったんですが、突然、国の中にある自治体の評価が、国より高いというような、これはぐあいが悪かろうということで、なぜか知らぬけれども、東京のランキングを国に並べましたが、今度、そのランクが二つ下がったことで、東京も巻き添えで二つ下がったわけでありますけど、そのときのムーディーズですかの説明も、東京の財政は非常に健全で、我々は非常に高く評価するが、しかし、いきがかりからいって、何か、東京を国並みに下げざるを得ないという、わけのわからぬ注釈がついておりました。彼らにしてみれば、国は余り評価しないけど、東京は評価するということなんでしょうが、しかし、体裁は余りよくない結果になりました。
 いずれにしろ、国は、今回の格下げを重大な警告として、債務の圧縮を図るため、直ちに身を削る努力に取り組み、財政再建の道筋をはっきりと示すべきであると思います。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 都営住宅に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、少子高齢化の進行などに対応する都営住宅の建てかえについてでございますが、都内に二十六万戸ある都営住宅につきましては、老朽化した住宅の建てかえ等により、都民の住宅セーフティーネットとしての機能を保持するとともに、敷地の有効利用を図って用地を創出し、地域のまちづくりに寄与する施設の整備などを進めていくことが重要と考えておりまして、これまでも地元区市と連携しながら、子育て支援施設や高齢者福祉施設、集会施設などの整備に取り組んでまいりました。
 お話の勝どき一丁目地区では、本年一月、創出用地における民間プロジェクトが竣工いたしましたが、本プロジェクトは、子育て世帯向けの良質で低廉な家賃の民間賃貸住宅百戸のほか、幼稚園と保育所一体型の認定こども園、病後の子どもを預かる保育室、難病の子どもの入院治療に付き添う家族のための低廉な料金の宿泊施設等を一体として整備するなど、民間の住宅建設事業としては、これまでにない複合的な開発を実現し、地域の子育て環境の一層の向上に大きく貢献しております。
 また、東村山市の本町地区のプロジェクトでも、創出用地に保育所、高齢者デイサービス施設等の整備を行い、本年四月、供用開始する予定となっております。
 今後、都営住宅の建てかえに当たっては、少子高齢化の進行などに対応して、このような地域に開かれた福祉施設等の整備を推進し、活力あるまちづくりに積極的に寄与してまいります。
 次に、都営住宅における若年ファミリー世帯向けの期限つき入居制度についてでございますが、少子化が進行する中、次の時代を担う子どもを安心して産み育てることができる環境を整備することは、大変重要であると考えております。
 このため、平成十三年度から都営住宅において、若年ファミリー世帯等を対象とした期限つき入居の募集を実施しております。募集戸数につきましては、二十一年度から大幅に拡大し、二十年度の二倍となる一千戸といたしました。今年度は、一千三百戸を募集し、来年度はさらに二百戸ふやして一千五百戸の募集を行う計画でございます。
 今後も、若年ファミリー世帯向け期限つき入居を積極的に推進し、子育て世帯の居住支援に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、地域の支え合い体制づくりに対する都の取り組みについてでございますが、都はこれまで、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らし続けられるよう、町会等が中心となって行う高齢者地域見守り事業や、配食サービスを活用した安否確認などの取り組みを、区市町村包括補助事業を通じて支援をしております。
 さらに、都は、地域住民が主体的に高齢者の生活支援を行う先進的な事業の立ち上げや、活動拠点の整備などへの支援を充実するとともに、こうした取り組みが大規模集合住宅においても円滑に実施できるよう、住宅管理者などと調整を図ってまいります。
 今後とも、地域の実情に応じたさまざまな取り組みを支援していくことによりまして、支え合いの体制づくりを一層推進してまいります。
 次に、障害者グループホームの世話人の質の向上についてでございますが、お話のように、障害者グループホームの安定的な運営のためには、日々の支援を担う世話人の質の確保が重要でございます。
 現在、都内の知的障害者グループホームの事業者は、相互に連携して支援技術の向上等に取り組むため、運営協議会を設置いたしまして、新任の世話人を対象として、利用者支援の基礎などを学ぶ研修を実施しており、都は、研修の企画や運営に協力をいたしております。
 協議会では、世話人の支援技術の一層の向上を図るため、研修対象を実務経験者にも拡大し、対応が困難な事例のケーススタディーを行うことなども検討しておりまして、都としても、研修の充実に向けまして積極的に支援してまいります。
 最後に、乳児院への都の支援についてでございますが、虐待を受けた乳幼児は、心身に深い傷を受けていることが多く、手厚い支援を要しますことから、都は、専任の職員と必要な設備を備えた家庭的な環境で、四人を生活単位とする小規模グループケアを推進いたしますとともに、独自に心理療法やカウンセリングなどの心理ケアの実施について支援をいたしております。
 また、保護者に対する育児相談や養育指導、子ども家庭支援センターなどの地域の関係機関との連携に取り組む施設への支援を都独自に実施し、家庭復帰を促進いたしております。
 今後とも、乳幼児の健やかな育ちを確保するため、乳児院における被虐待児童に対する適切な養育の支援に努めてまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、緊急豪雨対策における練馬区内の石神井川流域での、下水道事業の今後の取り組みについてでございます。
 浸水被害がたびたび発生している神田川流域、石神井川流域、白子川流域において、貯留管などを前倒しで整備することとしております。
 このうち、石神井川流域では、川にふたをして下水道として利用している田柄川幹線の流域において浸水がたびたび発生しているため、新たな下水道幹線を整備することといたしました。現在、幹線のルート、口径及び延長などの具体的な整備内容について、現地での調査を行い、検討を進めております。
 今後、検討結果を踏まえ、早期に下水道幹線の整備に着手する予定であります。整備に当たりましては、事業に必要な用地確保について、地元区である練馬区と連携するなど、効率的に進め、早期の完成を目指してまいります。
 次に、練馬区中村地区、豊玉地区における工事の実施状況と今後の予定についてでございますが、これらの地区では、平成十七年の集中豪雨により、床上浸水を含む大きな被害が発生したことを踏まえまして、口径四メートルの管を延長約千六百メートル、口径三メートルの管を延長約八百メートル、合わせて貯留量二万五千立方メートルの大規模な雨水の貯留管などを整備することとしております。
 現在、口径四メートルの管につきましては整備を終えたところであり、来年度から、この完成した約二万立方メートルの部分で先行的に貯留を開始し、効果を早期に発現をさせてまいります。
 今後も、地元住民の皆様からのご理解とご協力を得ながら、平成二十六年度末までに残りの口径三メートルの管や枝線など、すべての施設を完成させることを目指しまして、鋭意工事を進めてまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 補助第一七二号線についてでございますが、本路線は、豊島区南池袋一丁目の明治通りから、練馬区谷原一丁目の笹目通りまでを東西方向に結び、交通の円滑化や防災性の向上に寄与する重要な地域幹線道路でございます。
 本路線のうち、事業中区間である豊島区の池袋警察署前交差点から山手通りまでの八百八十メートルについては、来月の二十日に交通開放いたします。これにより、池袋駅周辺の新たな道路ネットワークが形成され、交通の円滑化が図られます。
 練馬区内では、笹目通りから早宮中央通りまでの延長約二・八キロメートルが完成しており、これに続く東側五百六十メートルの区間については、第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけております。
 このうち、早宮中央通りから早三東通りまでの四百メートルについて、本年一月に事業説明会を開催し、測量作業に着手いたしました。
 今後とも、必要な財源確保に努めるとともに、区とともに連携し、地元の理解と協力を得ながら、本区間の早期事業化に向け、積極的に取り組んでまいります。

〇副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十七分休憩

   午後三時三十五分開議

〇議長(和田宗春君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十番笹本ひさし君。
   〔五十番笹本ひさし君登壇〕

〇五十番(笹本ひさし君) 命の尊厳を踏まえ、医療について、以下、質問いたします。
 初めに、監察医制度について伺います。
 東京都監察医務院は、区部において死因の明らかでない急逝死や事故の犠牲者の検案、行政解剖により死因を分析、明らかにすることで、公衆衛生の向上、予防医学及び臨床医学に貢献し、社会秩序の維持と医療分野での貢献を目的として設置をされています。
 監察医務院長は、人が受ける最後の医療と表現をされています。生前の疾病に対する質の高い医療同様に、死者の尊厳を守り、一人の死を万人の生につなげること、個から社会にわたる医学的寄与のために、監察医制度が施行されていることが理解できます。
 児童や高齢者の虐待死、覚せい剤や違法ドラッグによる若年層の突然死、保険金詐欺に見られる自殺に見せかけた他殺、医療現場での過誤、事故、交通事故など、多様な死因の究明、分析は不可欠です。
 一方、超高齢化社会が加速し、ひとり住まいの高齢者の孤独死など、東京が抱える構造的な病理現象は深刻です。
 日本人でありながら、ロサンゼルス郡検視局長を務め、数々の著名人の検視、解剖を手がけ、銃器犯罪の検視を確立したトーマス野口医師は、事故や事件で一方の当事者が証言できないようなケースで、人生の最後に不利益をこうむることがあっては決してならない、決して死人に口なしを許してはならないとの立場を貫きました。
 医師が立ち会えなかった死の現場に、コロナー、検視官が駆けつけ、医学的見地から徹底的に死因究明を行い、デスリポートが作成され、当事者や保険会社に情報提供がされるとのことです。
 監察医務院における平成二十一年の年間検案数一万二千九百四十三体、解剖数二千七百体で、一日平均の検案数は三十五・五体、解剖数が七・四体と、検案数は二十三区の全死亡者の約二〇%を占め、監察医務院の重責がうかがえます。
 本来、死因究明制度は国の制度、責務で行われるべきであり、取扱事務を所管する官庁が厚生労働省と法務省にまたがっている点も議論の余地があると思います。また、区部と多摩・島しょで制度が異なり、制度設計は議論が必要かと考えます。医師不足がいわれ続ける小児科医や産科医以上に監察医の志願者は少なく、処遇なども課題と考えます。法医学への医学生の関心は高いと、元監察医務院長の上野正彦氏は述べていますが、志願者がふえない原因は把握すべきでしょう。
 また、警察、医療機関との連携を強化したり、IT技術の導入も精度向上に期待がされます。監察医務院は二十三区の異常死が対象ですが、死因究明にさらなる精度の向上と、その社会的使命について見解を伺います。
 次に、脳脊髄液減少症について伺います。
 脳脊髄液減少症は、交通事故によるむち打ち症、スポーツによる外傷、障害、学校などにおける児童同士の衝突、あるいは遊具などからの落下などによる頭部、全身への衝撃が発症の要因と考えられています。脊髄液により支えられ脳が浮いているイメージです。小さな穴から持続的に髄液が漏れ、髄圧が下がり、脳も下がってしまうことで、慢性的な疲労症、全身倦怠、起立性頭痛、睡眠障害、目まい、動悸、自律神経失調症など、原因不明の体調不良を起こす疾患とされています。
 都議会においても、平成十七年十二月に、脳脊髄液減少症の研究・治療の推進に関する意見書を提出しています。会派、党派を超え、速やかな患者救済の道を開くことが望まれます。
 厚生労働省、国の研究班は平成十九年に発足、三年計画で検討を行うとしているが、治験や臨床例などが十分でないということで、ガイドラインの策定にはいまだ至っていません。医療関係者のみならず、職場や学校、家族にも理解が得られず、怠け病や精神的な弱さとか、学校に行きたくないのでうそをついているなどと指摘される例が数多く報告されてきました。患者の苦しみは、病気そのものの苦しみ、精神的な苦痛、さらには保険適用外であるために経済的な負担まで強いられ、患者はもとより、ご家族の苦痛ははかり知れないものがあります。
 ちなみに、医療が進歩した現代でも、原因がわからず治療法が確立していない難病は数多く、厚生労働省により医療費を助成するように指定された難病は五十六種類に上ります。難病の指定の特定疾患の選定基準には、難治度、重症度のほかに、希少なことが条件になっています。いいかえれば、患者の数が少ないことが選定の条件になっているのです。
 一方、慢性難治性頭痛、目まい、慢性疲労症候群、いわゆるむち打ち後遺症など、たくさんの患者さんが苦しんでいる脳脊髄液減少症は難病には指定されていません。保険適用が認められていなくても、患者さんにとっては難病であることは変わりません。患者団体の皆様が熱心に働きかけたこともあり、昨年四月より、脳脊髄液減少症の検査については保険が適用されるようになりました。
 当時の長妻厚生労働大臣は、頭痛の原因を診断する検査については健康保険の対象になるということを、きちっと全国の医療機関にもご理解いただくような周知を徹底させていただきたいと発言をしました。
 都においても、難病相談支援センターのホームページの情報掲載や、患者団体とのホームページの相互リンクなど、一定の認識が広まってきたものと理解をしております。しかしながら、医療の世界、職場や学校現場など、潜在患者三十万人ともいわれながらも、一般社会での認知はまだまだ低いのが現実です。
 そして、有効性が報告されているブラッドパッチ治療、いわゆる自分の血液を硬膜外に注入し、血液の凝固、癒着により、髄液の漏出を防ぐ治療もいまだ保険適用外です。入院治療で一回三十数万円といわれる治療費が、全額自己負担の自由診療になったままであります。
 大変気の毒な例としては、生活保護の対象者がこのブラッドパッチ治療を受けると、保険適用外の高額医療を受けると生活保護の対象から外れてしまいます。病気がきっかけで職を失った方が、治療をすることでセーフティーネットからこぼれてしまうという悪循環さえ報告されております。そこで、以下質問をいたします。
 一、東京都は脳脊髄液減少症について現在どのような認識を持っているのか、今後の対応とあわせて見解を伺います。
 二、患者団体や家族会から、子どもたちの学校生活において脳脊髄液減少症の要因となるケースが数多く報告されています。学校生活で起きた事故に原因が考えられる脳脊髄液減少症について実態を把握すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、学校の事故などで学校が加入する日本スポーツ振興センターの災害給付の保険は、保険診療が認められる治療に限られてしまいます。つまり、後遺症である脳脊髄液減少症治療のブラッドパッチには適用されず、被害者が医療費を自己負担せざるを得なくなります。学校現場において、脳脊髄液減少症に関する訴訟など把握されていますでしょうか。
 三、平成十九年六月八日付、都教委の学校におけるスポーツ外傷等の後遺症への適切な対応についての通知がなされておりますが、その後の教育現場での対応策や本疾患に対する周知徹底などについてお伺いします。
 教育現場の指導者、職員の認識は継続的に実施すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 四、原因がわからず、不登校や理解をされずに苦痛を感じている、必ずしも把握できていない生徒や保護者に対して、相談ができるような体制、検査や治療が可能な医療機関を紹介するような、学校医との連携やコールセンターなどは有効と思われます。
 また、長期欠席を余儀なくされた生徒に対する復学への学習支援も望まれます。都の見解をお伺いします。
 平成十九年に発足した厚生労働省の研究班は、だれが見ても納得できる診療指針、ガイドラインの策定を目指したものの、研究班は期限の昨年、臨床例が少ないことを理由にガイドライン策定は間に合わず、継続となりました。結果として、平成二十二年の診療改定にブラッドパッチ治療の保険適用の審査が先送りをされてしまいました。ガイドラインの策定次第で、平成二十四年の診療報酬の改定に望みをつなぐしかありません。
 東京から国を動かす、この言葉が事実なら、国の動向を待っていては遅過ぎます。苦しみもがく患者の皆さんを、これ以上待たすわけにはいかないと思います。
 次に、自殺未遂者対策についてお伺いをいたします。
 平成十八年五月二十二日、国会の代表質問で自殺対策基本法とがん対策基本法の成立を訴え、故山本孝史参議院議員は、人の命を守ることが政治家の使命、救えるはずの命が多く失われていってしまうのは、政治や行政の対応がおくれているから。政治の責務で自殺者救済をと訴えました。
 本年二月に発表された警察庁のデータによれば、平成二十二年の全国の自殺者数は三万一千六百五十五人となり、平成十年以降、十三年連続して三万人を超える状況が続いています。
 東京都においても、平成十年以降は、毎年二千五百人から二千八百人もの方がみずからの命を絶つなど、大変深刻な状況です。
 一方、交通事故による死亡者数は、飲酒運転等に対する行政処分の強化、信号機、道路標識等の交通安全施設の整備、幼児から高齢者までの交通安全教育などのさまざまな対策により、平成十年の約一万人から、平成二十二年は四千八百六十三人と半減しております。
 東京都では、自殺相談ダイヤルの設置、ゲートキーパーの養成など、さまざまな対策を講じておりますが、その効果がいまだにあらわれていないのが現状です。
 自殺者の陰に隠れ、比較的話題に上らないのは、自殺者の十倍に上るともいわれる自殺未遂者です。実数を把握するのは困難と思われますが、三十万人近くの人がさまざまな理由でみずからの命を絶とうとしているのは驚くべきことです。
 平成二十年の福祉保健局と東京都医師会の報告書、救急医療機関における自殺企図患者等に関する調査報告書によれば、救急外来に受け入れた医療機関六十カ所、二九・一%で受診した自殺企図患者四百二十二名のうち、死亡者が四十九名、未遂者が三百七十三名であり、未遂者は既遂者の七・六倍との報告がなされております。別の報告によれば、未遂者の中には、再び行為に及び十数%が命を亡くしているとのことです。
 自殺未遂者は心理的に不安定であったり、経済的な問題があるなど、不治の病など解決困難なさまざまな悩みを抱えております。こうした状況は未遂後にも継続することになります。
 自殺未遂者はハイリスク者であることから、心理面や生活面での援助など、さまざまな支援が求められます。把握が困難なことは想像がつきますが、救命医療機関、精神医療機関など専門機関との連携が望まれます。
 都は、総合的な自殺対策に取り組んでいますが、今後、自殺未遂者への支援について一層の強化をすべきと考えます。
 最後に、東部地域の医療課題と墨東病院の新型インフルエンザ対策、感染症ネットワーク強化の取り組みについて伺います。
 保健医療を取り巻く状況を見ると、医療は高度化、複雑化し、患者のニーズも増加する中、小児科、産科を中心として医師の不足が顕在化し、さまざまな問題が生じています。
 地元江戸川区が所在する区東部保健医療圏は、人口密度が東京都の約二倍であり、特に出生数や小児人口は、地域の人口増を反映して大幅に増加をしています。この間、都内の小児人口は逆に〇・六%減少している状況を踏まえると、都内でもまれな地域といえます。
 その一方、産科及び産婦人科を標榜する医療機関は、平成二十年十月現在四十九施設であり、平成八年十月と比較して二六・九%減少し、人口当たりの全国平均を下回る状況にあります。
 また、小児科を標榜する医療機関についても、平成二十年十月現在二百七十七施設であり、平成八年十月と比較して一二・九%減少し、特に小児二次医療機関は、平成十八年以降、都立墨東病院のみという極めて厳しい状況にあるといえます。
 周産期医療においては、東部保健医療圏のNICUは二十一床で、平成二十一年で見ると出生数一万に対し十六床となっており、NICUについては、都全域で出生一万人当たり三十床を目標に、三百二十床を整備する方針ですが、都全域で現在二百六十四床のところ、さらに五十六床の整備が望まれます。
 また、人口当たりの一般病院数についても、全国平均を下回る中、三百床以上の一般病院が六病院と、人口当たりでは全国平均の半分程度と極めて厳しい状況にあり、新型インフルエンザを初め、新興感染症の入院治療に対応できる医療機能が不足しております。
 このような状況を踏まえ、東京都は、東部地区の医療課題の解決に向けてどのような取り組みをしているのか、お伺いいたします。
 また、墨東病院は、墨田区、江東区、江戸川区、千代田区、中央区及び港区を主たる管轄とする第一種及び第二種感染症指定医療機関であり、今後、新たなウイルスが発生した場合には、重要な役割を果たさなければなりません。
 墨東病院における感染症医療ネットワーク強化の取り組みについてお伺いいたします。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 笹本ひさし議員の一般質問にお答えいたします。
 脳脊髄液減少症と呼ばれている疾患の実態把握についてでございます。
 いわゆる脳脊髄液減少症は、疾患定義や診断方法、治療法などに関して、現時点では専門家の間でも意見の統一がなされていないことから、厚生労働省の補助事業により、大学の専門家等から成る研究班において、平成二十四年度までの期間で調査研究が行われております。
 都教育委員会は、現段階で取り得る方策として、学校内外における児童生徒の事故状況を把握するとともに、各学校に対して、事故の防止に努め、事故後の児童生徒に適切な対応をするよう指導しているところでございます。
 なお、本疾患に関する訴訟についてでございますけれども、都立学校に関する訴訟案件及び区市町村立学校に関して報告を受けている訴訟案件は、ともにゼロでございます。
 次に、脳脊髄液減少症への対応策と周知徹底についてでございます。
 都教育委員会では、区市町村の学校保健所管課長会や都教育委員会が開催する講習会等で、国などの調査研究の状況を説明するとともに、学校の管理下で事故が発生した後、児童生徒等に頭痛や目まい等の症状が見られる場合には、安静を保ちつつ医療機関で受診させること、保護者に連絡して医療機関の受診を促すことなど、平成十九年六月八日付通知文の趣旨の周知徹底を図っているところでございます。
 次に、学校の相談体制の充実や復学への学習支援についてでございます。
 学校においては、疾病等による長期欠席の児童生徒に対して、校長を初め担任や養護教諭等が組織的に教育相談の充実に努めるとともに、保護者と連携し、学校医や病院の受診を促し、その結果や病状を踏まえ、児童生徒に有効な対策を講じる必要がございます。
 教員は、日々児童生徒の出席状況を把握し、長期欠席の場合の学習面や生活面については、きめ細かく適切に対応しているところでございますが、今後とも、長期欠席の児童生徒については、原因、背景の分析や疾病の状況を踏まえ、保護者と連携をとり、適切に対応するよう学校を指導してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 四点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、監察医務院についてでございますが、監察医務院は、正確な死因究明によりまして、亡くなられた方の尊厳や権利を守ること、得られた情報の分析、提供により公衆衛生や臨床医学にも寄与することなどを使命といたしております。
 こうした使命のもと、検案で死因が判明しない場合には、解剖や薬毒物検査などを行い、精度の高い死因究明に努めております。
 今後、医務院の建てかえに当たり、解剖前に異状が疑われる部分を画像で確認でき、死因究明に有効とされるCTの導入に向けた検討などを行い、さらなる精度向上を図り、社会的使命を果たしてまいります。
 次に、脳脊髄液減少症についてでございますが、国は、厚生労働科学研究の中で、脳脊髄液減少症の研究を進めており、平成二十二年十一月時点で、百十七例の症例データが集約されたところでございます。
 国によれば、中間分析において十分な結果が出れば、今年度中に診断基準の作成が終了する見込みであり、来年度以降、治療法の有効性について研究を行うとのことでございます。
 都としては、脳脊髄液減少症につきましては、これらの研究の成果や国の動向を踏まえて対応すべきものと認識しており、引き続き情報収集に努めてまいります。
 次に、自殺未遂者への支援についてでございますが、昨年度都が行った自殺未遂者の調査の結果、本人や家族に対しまして、救急医療機関入院中に自殺予防のためのカウンセリングを行うことや、退院後の継続的な支援の必要が明らかになりました。
 このため、今年度は、自殺未遂に至った要因を分析することや、適切な支援を受けることの必要性を未遂者本人やその家族に認識してもらうため、カウンセリングの際に使用する教材の作成に取り組んでおります。
 今後は、自殺未遂者が精神科医療機関や保健所など地域の中で継続した支援を受けられるよう、救急医療機関を初めとした関係機関の連携を進めてまいります。
 最後に、区東部保健医療圏の課題への取り組みについてでございますが、当該圏域には、小児、周産期医療や新興感染症に対する医療資源が少ないという課題がありますことから、都は、昨年度地域医療再生計画を作成し、集中的な取り組みを進めております。
 小児医療につきましては、小児二次救急医療に参画予定の医療機関への支援を行い、来年度は、指定医療機関が増加する見込みでございます。
 周産期医療につきましては、NICU病床を確保するため、都立墨東病院を中心とした長期入院児の円滑な退院に向けた取り組みを実施いたしております。
 また、新型インフルエンザなどの医療体制を確保するため、都立墨東病院に感染症対応病棟の整備を進めているところでございます。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 墨東病院における感染症医療ネットワーク強化の取り組みについてでございますが、墨田、江東及び江戸川区の医師会、保健所と連携して、区東部感染症会議を昨年九月に設置、開催し、また、第二回会議を今月に開催する予定でございます。
 区東部感染症会議では、感染症発生時の患者受け入れルールを検討するほか、昨年十一月から委員間のメーリングリストを開設し、インフルエンザの発生状況などについて情報交換を行っているところでございます。
 また、江戸川区医師会主催の江戸川医学会や区東部医療圏地域医療講演会において、墨東病院の医師がインフルエンザに関する発表、講演を行うなど、活発な交流を行っているところでございます。
 新たな感染症の発生を視野に入れ、こうした取り組みを積み重ねることにより、地域医療機関と墨東病院とのネットワークを強化し、限りある医療資源を最大限に活用してまいります。

議長(和田宗春君) 十番くりした善行君。
   〔十番くりした善行君登壇〕

〇十番(くりした善行君) 私からは、二〇一一年の東京国際アニメフェアに関連して質問をさせていただきます。
 東京国際アニメフェアは、日本のアニメーションを世界に発信するとともに、アニメ関連事業の新しい商取引の場として、二〇〇二年に初めて開催されました。以後、九年間にわたって順調に規模を拡大し、昨年度の来場者数は十三万人に達しました。国内のアニメ業界最大のイベントとして、海外からも多くのファンが訪れるようになりました。
 ことしは十年度の記念すべき年として、当初、過去最大の十四万人の来場者を予定しておりましたが、昨年の十二月に東京都青少年健全育成条例の改正をきっかけに、大手出版社が相次いでアニメフェアに対する出展拒否を宣言したことにより、参加企業が大幅に減少し、現在、例年どおり開催することは決定したものの、依然として大変厳しい状況に立たされております。一月二十五日の時点で、出展企業は、昨年より九十一社減り、百五十三社の予定となってしまいました。また、出展のキャンセルされたアニメは、集客力の高い人気作品が多く含まれ、一般来場者の大幅な減少も危惧されております。
 このアニメフェアは、数年前を境に、運営を民間の手にゆだねることによって自律的な発展を目指すという目的で、アニメ、出版印刷に関連する民間企業のメンバーによって構成される東京アニメフェア実行委員会によって運営をされるようになりました。
 実行委員会の発表した収入予測によれば、事態が起こる前に約三億三千万円と予想されていた収入が、約二億二千万円まで落ち込むという見込みになっており、これによって、実行委員会がこれまで積み上げてきた基金約六千万円余りをすべて取り崩して、アニメフェアを通常どおり何とか開催できるように計画を立て直しております。
 しかし、この予想どおりイベントの開催が行われた場合、イベント後に実行委員会に残る残金は約二十八万円となっており、実行委員会事務局は、四月からオフィスの家賃さえ払うことができなくなる可能性もあるとして、嘆息しております。
 東京都は、このアニメフェアに対して、今年度は一億二千五百万円の負担金を捻出しておりますが、運営主体を実行委員会に移して以降、都からの負担金を毎年二千五百万円ずつ引き下げる方針に従って、ことし一億二千五百万円だったのが、来年度は一億円の負担金が捻出される予定となっております。
 もし参加企業のボイコットが続けば、これまでどおりの支援内容では、基金がなくなり、また負担金も二千五百万円減る来年度以降は、イベントの開催自体が立ち行かなくなることは明白であります。
 東京都の手を離れたとはいえ、今や日本の誇るアニメ文化の一大イベントとなっている東京国際アニメフェアについては、来年度以降も開催を行えるよう、都は責任を持って努力をしていくべきだと思いますが、都の見解を伺います。
 また、参加企業の相次ぐ出展中止については、東京都政が大きく関連しており、東京都は、この非常事態に対して、日本の誇るアニメ産業の発展を後退させないためにも、必要に応じて、新たな支援のあり方について改めて検討すべきだと思います。
 事実、一月二十五日に行われたアニメフェア実行委員会において、前田産業労働局長が、財政面から見ても継続して開催できるよう支援していく、そう明言されましたが、現在の状況が続いた場合、負担金の増額も視野に入れた支援を検討しているのでしょうか、お伺いいたします。
 また同時に、アニメフェアの正常開催に向けて、出版、アニメ関連企業との関係改善に向けて、全庁的な対応を行っていくべきだと思います。
 そこで、これまでの都の関係改善に向けての取り組みについて振り返ってみたいと思いますが、そもそも出展拒否の口火を切った大手出版各社が参加拒否を表明したのは、十二月の十日のことでございました。しかし、出版各社に対して、東京都がアニメフェアの参加について最初のアプローチを行ったのは、それから一カ月たった一月十四日のことであったと聞いております。東京国際アニメフェアを重要イベントと位置づける東京都産業労働局としては、条例の審議に対して影響を与えるかどうかはさておいて、少なくとも出版各社に対してヒアリングを行い、経緯と現状の把握を行うこと、これは可及的速やかに対応を行うべきであったと思いますが、なぜここまで対応がおくれてしまったのか、見解をお伺いします。
 また、一月十四日のコミック十社会との協議の中で、青少年・治安対策本部からは条例の改正についての趣旨説明、産業労働局からは東京国際アニメフェアに参加をしてもらえるように、ここで初めてお願いをしたとのことでありました。
 しかし、一月十四日にお願いを行っていたにもかかわらず、石原知事は、一月二十三日のテレビ番組において、出版社を名指しで批判するとともに、出展拒否行動に対して、どうぞ、だったらおやりください、ほえ面かくのは向こうだと思うよと、このような発言をされました。実際に、この発言によって出版社側は都の姿勢に対して強い不信感を抱いたといいます。なぜ、お願いすると同時に、来なくていいという、このような不整合が起きてしまうのでしょうか、お伺いをいたします。
 これらの経緯の中、各出版社と東京都の溝は埋まることのないまま、東京国際アニメフェアの開催へと二カ月を切りました。例年どおりであれば、既にポスターも張って広報を行うべき時期に差しかかっているにもかかわらず、開催の可否さえ決まらない。
 そんな中、二月の二日に東京都から、コミック十社会の各社に対して一通の書簡が配布をされました。石原知事の署名が入ったこの書簡であります。
 その中の一文を読み上げますが、このアニメフェアの意義とこれまでの成果を踏まえ、開催を望む多くのファンのためにも、フェアの成功に向けて手を携えていきたく、本日筆をとりましたと、石原知事から、アニメフェアに復帰をしてほしい、そういった意思が初めてここに示されておるわけでございますが、しかし二週間前に来なくていいといった知事が、どうしてこのように変わったのでしょうか、お伺いをいたします。
 このように、アニメフェアの正常開催に向けて努力を始めたという点に関しては、基本的に評価のできることだと思っています。しかし、この書簡に対する出版関係者の評価はさんざんたるものでありました。同書簡の中には、過日の知事による侮辱的な発言に対する謝罪もなければ、これまで東京都が行ってきた紋切り型の条例改正の趣旨説明と何の変わりもないものであったからであります。
 さらに、知事の署名も、都議会だより等に利用されているもののコピー。配布の仕方も、前日に各社の代表取締役にアポをとったそうですが、一部の出版社にはアポさえも正しくとれていなかったと聞いています。客観的に見ても、各出版社に対する誠意や、本当の意味で手を携えていくという姿勢は感じられず、何とか平穏無事に事を済ませたい、そういった姿勢しか伝わってきません。
 そして、それに続いて、二月の七日、先週の月曜日でございますが、東京都は、自主規制団体である出版倫理協議会のメンバーに対して、青少年健全育成条例の運用に関しての説明会を行いました。当会の行方が、条例改正だけではなく、アニメフェアに対しても深く関係をしていたことから、東京都からは猪瀬副知事、産業労働局、そして出版社側からはコミック十社会のメンバーもオブザーバーとして参加をしておりました。そこで初めて、東京都は出版社に対して、条例の運用について具体的な案を提示し、それに対して議論が行われました。
 具体的には、不健全図書を決定する青少年健全育成審議会のあり方を一部見直すという内容であります。
 これまで、審議会においては、不健全図書の決定を行う上で議論を尽くすための環境が十分整えられていないのではないかという指摘がなされてきました。不健全図書の指定においては、該当図書を審議委員が実際に閲覧をして、指定すべきか否かの意見を述べ、採決をするという形をとっておりますが、意見は、ほとんどの場合、指定に異議なしという簡潔なものに終始をしています。
 過去三年間に審議会にかけられた図書は、九十三冊中九十三冊、つまり一〇〇%の確率で指定をされている上、指定以外の意見が上がったものでさえ、わずかその中の三件でありました。審議会にかかったものは、当たり前のように不健全図書指定をされる現在の状況下において、出版各社、そして作家の方々が危惧を持つことは無理からぬことであります。
 審議の環境についても、限られた時間の中で、長編作品であってもわずか一部しか閲覧することができない。議事録の公開はされているものの、発言者名は伏せられており、責任ある議論はできないのではないか。また、漫画への専門的見識を持った審査委員の割合が少ないのではないか、そういった指摘もされてきました。
 その日に東京都から行われた提案は、この審議会に対して、新しく出版業界が選定をした専門委員を設置するという内容でありました。この専門委員については、位置づけがはっきりしておらず、実効性が担保されていないという理由から、現状においては、出版側の高い評価を得ることはできませんでした。
 また、この会議の中で、審議会の前段階で自主規制団体が行う打合会では、これまで意見を述べるだけだったが、一定数以上の委員が反対をした場合、対象の図書を審議会に挙げないシステムにしたらよいのではという出版社側の案に対して、都からも前向きな意見が出たと聞いておりますが、そのような変更の余地はあるのでしょうか、見解を伺います。
 私は、この間の知事及び各局の出版社への対応が、条例改正は心配に値しない、そういった一方的な説明に終始をしていたのが、現在、具体的な対話に変わってこようとしている、これは評価のできることだと思います。しかし、大変残念なのは、東京国際アニメフェアが危機的状況になるまで、やろうと思えばできたはずの対応を怠ってきたこと、また、その場しのぎの対応に終始して、業界の方の信頼を取り戻すという本当のゴールに必ずしも近づいていないことであります。
 私も初めて知ったのですが、おのおのの作品をアニメフェアに出展するか否かの決定権を持っているのは、これは出版社ではなくて、原作の漫画家の方々であります。もし原作者の方がアニメフェアに参加をしたいといえば、出版社はそれに対してノーとはいえないそうであります。
 つまり、おのおのの漫画家の方が、現在、みずからの意思で出展に反対をしている。ですから、幾ら協力してほしいと出版社の代表取締役に対してこういった書簡を送っても、作家さんお一人お一人が東京都に対する認識を改めない限り、事態は前進しないということであります。
 十二月十日に出されたコミック十社会の声明の中には、都と漫画家、アニメ制作者との話し合いが、ただの一度も行われてこなかった、それさえ行おうとせずに、知事が事実誤認に満ちた不誠実な発言を繰り返しているとあります。
 実際にお話伺ってみてもそうですが、条例改正に対する不満だけではなくて、条例改正に至るまでの対話の場所が用意をされてこなかったこと、そして、たび重なる知事の侮辱的な発言が出展拒否の大きな原因になっている。現に、二月七日の協議の中で、出版社の方から、数々の暴言に対して謝罪があって初めて和解に対してのスタートラインに立てると、そういった意見が出たとのことでありました。
 知事は、出版社に対して、ずっと来なくてもいいよ、あるいは卑しい仕事をしている、漫画家の方々に対してそのようにおっしゃられました。そんなふうにいわれて、一緒に仕事がしたいと思いますか。
 出版社、漫画家の方々からしても、ビジネスチャンスは、これはふえた方がいいに決まっている。また、冒頭申し上げたとおり、東京都としても、このアニメフェアは大切なイベントであります。都知事の不用意な発言や態度によって、都民、国民の利益が損なわれることは、あってはならないことだと思います。
 ここに書かれているように、手を携えて、東京の地場産業であるアニメ、漫画を発展に導いていきたいのであれば、彼らの信頼を再び得るために、このような紙を配らせるんじゃなくて、知事の口から直接理解を求めるとともに、今後のことについて表明をすることが、私は、今、最も必要とされている、そう思います。
 最後に知事の見解をお伺いして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) くりした善行議員の一般質問にお答えいたします。
 アニメフェアの開催についてでありますが、改めて申し上げるまでもなく、漫画、アニメは、我が国が生んだ独自の文化でもあります。新しい才能を見出し、世界に発信しながら、産業としても一段と発展させるために、都としてもアニメフェアに協力してきました。
 そうした漫画、アニメの重要性、その発展を願う気持ちは、出版界、漫画家の皆さんと変わりません。こうした思いを込めて、先般も出版社各社に私のメッセージを送りましたが、今日、アニメフェアの開催をめぐってこうした状況になったことは極めて残念であります。
 多くの漫画やアニメが子どもたちに感動を与えてきた。一方で、漫画やアニメが子どもたちに与える影響も非常に大きいんです。
 先般のブラジルの世界大会では、今回問題にした種類の漫画も含めて、児童ポルノというものがこれだけ野放しになっている国は日本だけだ、何とかしてくれという要請がありました。
 今、卑しい、卑しくないとありましたが、あなた、小学校の先生と子どもが同棲して生活する、近親相姦する、あるいは親子の近親相姦、兄弟の近親相姦、そういうゆがんだ性愛というものを書いて金をもうけている人間というのは、私は卑しいやつだと思いますな。
 しかし、そうした自主的な努力、従来の条例をもってもなお、強姦などの犯罪行為を賛美する一部の漫画を子どもがたやすく手に取ることができる事態が存在しているわけでありまして、今回の条例改正は、こうした事態の改善を望む都民の思いにまさしくこたえるためのものであります。子どもを健やかに育てることは大人の責任でありまして、そのために全力を尽くさなければならないと思います。
 もとより本条例は、出版業界が懸念するような、表現を規制し、創作活動を萎縮させるものでは決してありません。さらに、議会の付帯決議を踏まえて条例を運用してまいります。
 なお、くりした議員に申し上げますが、条例は、くりした議員も賛成して改正されたはずのものですな。しかし、ただいまの質問を聞いておりますと、なぜ質問したかという思いを禁じ得ません。
 あなたは、かつてオリンピック関係の問題について、スタッフが身分を偽って調査した結果をもとに本会議で質問をし、後に非を認め謝罪したこともあったじゃないか。都民から選ばれた都議会議員の責任の重み、都議会の最大の権威のある議決行為そのものの重みをおとしめたとのそしりを後々受けないように、ご忠告申し上げます。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 五点のご質問にお答えいたします。
 アニメフェアについてでありますが、アニメフェアは、アニメ業界や都が参加する実行委員会が開催してまいりました。フェアは、この三月の開催で十回目を迎えますが、この間、多数の出展者に貴重な商談の場を提供し、若手の優秀なクリエーターが世に出る機会を創出するとともに、国内外の多くのファンが楽しむ意義あるイベントと認識しております。今年度につきましても、実行委員会が一丸となってフェアの成功に向けて尽力しております。
 都はこれまでも、アニメ産業振興のためにこのフェアを支援してまいりました。来年度以降のフェアの開催につきましても、都として引き続き支援を継続、実施してまいります。
 次に、アニメフェアの財政支援についてでありますが、都はアニメフェアの開催について、平成二十二年度では、一億二千五百万円を負担金として支出しております。今後も引き続き、必要な財政支援を行っていく考えであります。
 次に、コミック十社会への対応についてでありますが、漫画を出版する十社で構成するコミック十社会は、昨年の第四回都議会定例会で、東京都青少年健全育成条例の改正案が審議されていた十二月十日に、アニメフェアへの協力、参加を拒否する緊急声明を出しております。さらに、都議会における同条例の可決を受けまして、十二月二十二日、再度、改正条例の可決に反対の立場から声明を出しております。
 このような声明が出されたことから、条例を所管する青少年・治安対策本部が、条例改正の趣旨を改めて説明する目的で、十二月二十四日、十社会に対し、その機会を持ちたい旨申し入れを行いましたが、相手方の都合で一月十四日になったものと聞いております。産業労働局は、この訪問に同行し、アニメフェアの意義について理解を求めたものであります。
 次に、アニメフェアへの参加についてでありますが、まず基本的な認識として、青少年の健全育成の重要性、またアニメフェアの開催の意義については、出版業界と共有しているものと考えております。その上で、一月二十三日の知事の発言は、アニメフェアは業界が中心となって開催されるものでありますから、それに対する態度は相手方の判断によるものであるということをあらわしたものであります。
 一方、一月十四日に、都は、コミック十社会に対しまして、都議会で可決されました条例改正の趣旨を説明するとともに、アニメフェア開催の意義の理解を求めておりますが、知事の発言と不整合であるとは考えておりません。
 最後に、アニメフェア開催への対応についてでありますが、アニメフェアは、アニメの重要性を認識し、アニメ産業の振興を図るため、業界と都が協力して実施しているものであります。今回、条例改正に反対して、フェアへの参加協力を拒否する動きが出ている中で、アニメを世界に誇る日本文化として盛り上げ、その振興を願う思いから、出版各社に書簡で、知事からメッセージを送ったところであります。
 一方、一月二十三日の知事の発言は、先ほどご答弁したとおりでありまして、変説したというお話は全く当たらないと考えます。
〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 打合会についてでございますが、都は条例の規定に基づき、不健全図書として指定しようとする個別の図書類につきまして、青少年健全育成審議会に意見を聞くときは、必要に応じ、自主規制団体の意見を聞くこととなっております。
 このため、都は、出版関係の自主規制団体から成る諮問候補図書に関する打合会を設けており、他の道府県にはない都独自の制度として、出版業界からもその意義を評価されていると承知をしております。
 都といたしましては、条例改正を機に、打合会の運用のあり方について、自主規制団体との間で具体的な議論を開始しており、ご指摘の意見の検討も含め、議論を深めてまいります。

議長(和田宗春君) 六十七番石森たかゆき君。
   〔六十七番石森たかゆき君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十七番(石森たかゆき君) まず初めに、多摩地域の緑の保全について伺います。
 都では、平成十八年に策定された都市戦略としての「十年後の東京」で、水と緑に囲まれた都市空間の再生を大きな目標に掲げ、緑あふれる都市の実現に向けて、海の森や校庭の芝生化など、新たな緑の創出に取り組むとともに、丘陵地、農地などの都市に残された貴重な緑の保全や、森林機能の再生を積極的に推進しています。
 中でも、私どもが暮らす多摩地域は、面積の約五割を占めている緑豊かな森林や、自然公園、河川、農地などと相まって、潤いのある都市環境には欠かすことのできない貴重な緑が残されています。多摩の緑はいうまでもなく都民にとってはかけがえのない大事な財産であり、こうした緑を守るためには、開発行為をできる限り抑制して、現存する緑地の保全指定や、公有化を積極的に推進する必要があります。
 以前知事は、多摩地域の里山、八王子市戸吹地域を視察した際に、現地のすばらしい自然を目の当たりにして、何とか次世代に残したいと発言され、それがきっかけで、保全地域の指定に結びついたことがありましたが、知事の多摩地域の緑保全に向けての決意を、まずお聞かせいただきたいと思います。
 都市における緑は、人々に安らぎを与えるとともに、災害時には避難場所として活用されるなど、多様な機能を持っています。昨年は、名古屋で生物多様性に関する国際会議COP10が開催され、動植物の生存基盤としても、緑はますます重要となっておりますが、緑を確実に守るための保全地域の指定に向けては、環境局を中心に、関係機関の努力によって着実に前進しており、高く評価しているところであります。
 私の地元である八王子市の堀之内地区には、平成二十一年三月に指定された八王子堀之内里山保全地域があります。ここは過去に、多摩ニュータウン開発の際に、地権者の方々の反対によって残された地域でありますが、以前から、トウキョウサンショウウオなどの貴重な動植物が生息し、複数のボランティア団体によって、稲作や緑地保全活動が継続的に実施されてきた里山であります。
 保全地域に指定されたことによって、将来的に貴重な緑が守られることとなりましたが、現在では、地元八王子市が積極的にかかわり、地域の方々も草刈りや田植えを行うなど、良好な里山として維持管理がなされております。
 また、同じ八王子市の暁町には、当初、都営住宅建設用地として都が買収した広大な土地がありますが、その後、計画が変更され、手つかずのまとまった緑が残る場所があります。この緑地は、国道一六号と中央自動車道に隣接する場所でありますが、周辺部での宅地化が進み、緑が大幅に減少しつつある中にあって、草地が広がり、鳥や昆虫が多く見受けられる豊かな自然が残されたところであります。
 これまでにも、地域住民から八王子市に陳情書が提出されるなど、この緑地の保全は、地域にとって強い願いであり、私も以前から保全を求めて取り組んでまいりました。この緑を、堀之内地区に続いて、自然保護条例に基づく保全地域に指定し、都としてしっかり守っていくべきであると考えますが、見解を伺います。
 東京都では、平成十九年に、今後の財産利活用の指針を策定し、これまで基本としてきた全庁的な財産の有効活用や財政再建のための積極的な売却から、環境変化に対応した利活用といった視点から、民間活力を導入するなど、新たな取り組みを展開しております。
 財政危機に対応するため、不要財産の売却、施設統廃合等による財産の効率的な利活用によって、ある一定の成果を上げたことを踏まえて、平成十九年のこの指針策定に至ったところでありますが、これまでには、自治体や地域住民の意向によってさまざまな形で利用されてきた都有地などが、地元での暫定利用を終え、都に引き継がれた土地も何カ所か存在いたします。
 八王子市でいえば、やはりもともとは住宅建設用地であった大柳地区のグラウンドが、昨年十二月に利用を終了し、都に引き継がれております。ここは、地域の少年サッカー等で利用され、週末になると、子どもたちの元気な声がこだまするなど、子どもの育成、スポーツ振興の面からも有効に活用していたと思います。
 また、この土地周辺には、田畑と水路があることから、地元NPO法人の現地調査では、サギ、カモなどの水鳥、カエル、メダカ、ホトケドジョウなどの日本固有の生物や、ヒバリの営巣を初め、三十三種の野鳥が観察されているようであります。
 そこで、都は、今後この土地を利活用していくに当たっては、単に地域の開発という視点だけでなく、こうしたすばらしい環境があることや、青少年の育成という面も踏まえ、地元の自治体や住民の要望にも十分に耳を傾けながら、検討を行っていくことを要望しておきたいと思います。
 次に、高尾山についてお尋ねいたします。
 高尾山につきましては、都心に近く、豊かな動植物に恵まれ、古くから信仰の山としても知られているところであります。今や日本だけでなく、世界じゅうから多くの人が訪れる人気の高い観光地であり、都民にとっても貴重な自然公園であります。
 過日の節分の日には、八王子ゆかりの北島三郎やファンキーモンキーベイビーズなどの芸能人による豆まきが行われ、多くの方が薬王院に訪れましたが、この高尾山には登山路が何本もありまして、コースによって異なる景観、あるいは動植物が見られ、何度訪れても飽きることがないことから、リピーターの多い山としても知られております。
 その中でも、北側の斜面から山頂に通じる四号路は、ブナの新緑やカエデの紅葉など、四季折々の変化に富んだ景観が魅力の人気コースでありますが、この四号路のシンボルであるつり橋が昨年の降雪により破損し通行できなくなりました。つり橋については、都の早い復旧工事により通行できるようになりましたが、四号路は国有林で治山工事が行われているため、現在一方通行となっております。一刻も早く自由に通行できるようにするとともに、自然に親しめる高尾山の魅力をさらに高めるべきだと思いますが、都の見解を伺います。
 次に、多摩シリコンバレーの形成について伺います。
 多摩地域は、エレクトロニクス、精密機器等のすぐれた技術力を持つ最先端のものづくり企業や大学、研究機関が集積しており、圏央道の整備に伴い、今後ますますポテンシャルが高まるエリアであります。圏央道が全線開通となれば、多摩地域と研究機関が集積する茨城県のつくば市などとも短時間で行き来することが可能となり、ものづくり企業や大学などの交流による新たなビジネスチャンスの拡大が期待されるところであります。
 これまで東京都の産業振興策については、若干、多摩格差が生じていたと感じておりましたが、都ではこの地域の活性化のため、「十年後の東京」計画で、多摩シリコンバレーの形成を掲げ、これに基づく施策として、昨年二月に、中小企業に対する技術支援、経営支援を行う産業支援拠点、産業サポートスクエア・TAMAを整備いたしました。この産業サポートスクエア・TAMAでは、高度で最新鋭の充実した試験機器や設備を備え、さまざまな技術支援を行うとともに、東京都中小企業振興公社等が経営支援を行い、開設以来、着実な利用実績が上がっているものと考えています。
 こうしたすばらしい施設のサポートを受け、都内中小企業が高い技術力にさらに磨きをかけ、新たな技術や製品を生み出し、東京の産業の未来を切り開いていけるものと大いに期待しているところであります。
 多摩シリコンバレーの形成に向けては、このような都による支援体制の充実に加えて、企業同士が日ごろの活動の中で、多摩地域にとどまらず、その周辺地域も含めた広域的なネットワークをつくり上げて、互いの経営力や技術の水準を高め合うことのできる産業交流の場を確保していくことが極めて重要であります。
 こうした観点から、都は現在、八王子市に多摩地域における産業交流拠点を整備する計画を進めておりますが、地元八王子市のみならず、多摩地域の産業界からは、拠点の整備について、一刻も早い実現が熱望されているところであります。この産業交流拠点整備については、都は来年度、調査を実施する予定となっておりますが、これまでの経緯と今後の取り組みについてお示しいただきたいと思います。
 地元自治体においても、この産業交流拠点の整備計画に合わせ、周辺のまちづくり構想をこれまで検討してまいりました。この拠点整備とその周辺のまちづくりを一体的に進めることで、まちとしての魅力をさらに高めていこうというものであります。
 そこで、都は、この産業交流拠点を中心とした周辺一帯の地域の整備をどのように進めていこうとしているのか、お聞かせいただきたいと思います。
 また、多摩シリコンバレー形成に向けては、こうしたビジネスチャンスの拡大につながる産業交流の促進とともに、半導体や、将来的に市場規模の拡大が見込まれるロボット産業や、航空機関連産業など、多摩地域に集積が見られる産業の育成をあわせて行っていくことが重要であると考えます。東京都は、この多摩シリコンバレーの形成に向けて、今後どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 最後に、昨日も質疑がございましたけれども、精神障害者医療について伺います。
 国内の自殺者数が、年間三万人台で高どまりのまま推移している中、自殺者には、うつ病などの精神疾患が多いことから、自殺対策として、精神科医療の充実は極めて重要であります。
 そのような中、国における障害者保健福祉施策が、入院医療中心から地域生活中心へという大きな流れの中にあって、都では平成十八年度から実施している精神障害者退院促進支援事業で、精神障害者の退院に向けてのさまざまな支援を行っております。さらに地域生活基盤においても、都では、共同作業所やグループホームの事業を推進し、精神障害者の社会復帰、あるいは社会参加の環境整備にこれまで取り組んできたところでありますが、精神障害者も増加傾向にあることから、地域生活基盤をより充実する必要がありますが、都としてはどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 精神障害者を支えるためには、地域生活基盤の整備を進めることも重要ですが、あわせて、安定した地域生活が継続できるよう、身近な地域で適切な医療を受けられるような仕組みも必要となります。
 都は、二十三年度、未治療、医療中断などによる、地域での安定した生活が困難な精神障害者に対する訪問支援事業を本格実施いたしますが、精神障害者は、その疾患の特性から症状が悪化するほど、みずから医療や福祉サービスを求めることができなくなることが多く、地域に出向いての支援は効果的であると思います。
 ただ、医師や看護師など医療資源が限られる中、医療機関や訪問看護ステーションなど、さまざまな実施主体によるきめ細かな訪問型支援の実施には、解決すべき課題も多いと思われますが、そのような中にあって、身近な地域で適切な医療を受けるためには、地域における精神科医療の連携が重要であり、都が今年度から実施している地域精神科医療ネットワークモデル事業を着実に普及すべきと考えますが、所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 石森たかゆき議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩地域における緑の保全についてでありますが、都会に近接していながら、あれほど多様な生き物をはぐくむ山々や、人々の暮らしに沿うようにして点在する里山など、多摩には、市街地と融合して独特の魅力を醸し出す豊かな緑が数多く残されております。現に、以前も視察いたしました八王子の戸吹地区では、絶滅のおそれがあるトウキョウサンショウウオも生息している美しい沢が、さながら明治時代に戻ったような風景として残されておりました。その後も私用で雲取山にも登りましたが、都心からわずかの距離にあれほど深い山があるというのも非常に魅力に富んだ日本の、東京の財産だと思いました。
 こうした多摩の自然は、都民生活に安らぎと潤いを与えるばかりでなく、高尾山のようにミシュラン・グリーンガイド・ジャポンですか、それにもノミネートされて、非常に魅力が高く評価され、日本人よりも外国人の観光客が多いというような現状ですが、海外からもこの情報を慕ってやってこられる方もあるようであります。
 いずれにしろ、これは都民の貴重な財産でありまして、これまで都は、人手が入らずに荒廃した山林を再生する取り組みや、残された丘陵地や里山を保全地域として指定する取り組みを進めておりまして、今後とも多様な表情を持つ多摩地域の緑を保全して将来の世代へと確実に引き継いでいきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 産業交流拠点周辺のまちづくりについてでございますが、都は、八王子駅前の旭町・明神町地区におきまして、産業交流拠点の形成とともに、核都市八王子の顔となる市街地整備に向けて取り組んでおります。
 これまで当該地区を対象に、産業交流機能のほか、まちの活性化を図る業務、商業等の機能導入や、地元市の意向を踏まえた広場の確保などにつきまして、事業手法も含めた調査検討を行ってまいりました。
 また、当該地区を含むJR八王子駅と京王八王子駅に挟まれた区域において、先ごろ、地元市が中心となり、都も参画して検討を進めてきた旭町・明神町地区周辺まちづくり構想がまとまり、まちの将来像や土地利用の方針などが明らかにされました。今後、都は、このまちづくり構想を踏まえつつ、地元市と連携して、当該地区の街区割りや導入施設、事業手法などの考え方を明らかにする全体計画を来年度中に取りまとめ、計画の具体化に向けて取り組んでまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 自然環境に関する二問のご質問でございます。
 まず、八王子市暁町に残る緑の保全についてでございますが、都はこれまでも、自然保護条例に基づく保全地域制度を活用しまして、東京に残された緑を守る取り組みを行ってまいりました。
 八王子市暁町の緑地は、周辺の雑木林と一体となって、約二百五十種もの多様な植物が確認されております。都内では少なくなりましたススキやカヤの草地が広がる貴重な地域でございます。このため、保全地域の指定に向けた手続を現在進めてきておりまして、三月末には指定を行う予定でございます。
 都内ではまれな、まとまった草地が残る暁町の特性を生かしまして、広く都民に親しんでもらえるよう、地元の八王子市とも連携し、良好な緑の保全と利用に努めてまいります。
 次に、高尾山の魅力を高める取り組みについてでございますが、ご指摘のように、高尾山は、都民ばかりでなく、諸外国から訪れる観光客にも親しまれている自然公園となっております。
 ご質問の四号路の一方通行につきましては、春の観光シーズンの前には解消できる見込みでありまして、これにあわせて道幅を広げ、路面を平らにするなど、四号路を、より歩きやすいものとなるよう整備をしてまいります。
 今後とも、都民が安全で快適に利用できるよう、登山道や案内板、トイレなどの施設を適切に整備しまして、自然豊かな高尾山の魅力をより高めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、産業交流拠点の整備についてでありますが、多摩地域には、先端的な技術を持つすぐれた中小企業や大学、研究機関が数多く存在するという高いポテンシャルがございます。そうした地域の力を十分に発揮させるため、中小企業同士の交流や、産学公の連携を深めるとともに、多摩の中小企業の製品や技術を広く発信するための拠点を、八王子市の産業技術研究センターの跡地に整備することといたしました。
 拠点の着実な整備のため、都は昨年度には、拠点に必要な機能のあり方について調査や検討を行っております。その結果を踏まえ、今年度は、産業交流拠点の施設の規模や用途などについて検討を行っております。
 また、拠点の整備が周辺地域のまちづくりと密接な関係があるため、関係局との協議にも取り組んでまいりました。来年度は、民間活力を導入する可能性などを踏まえた整備に関する調査を予定しております。
 次に、多摩シリコンバレーについてでありますが、多摩地域において、研究開発の充実を図り、付加価値の高い製品を生み出す力を発揮させるとともに、広域的な産業交流の活発化により新事業の創出につなげていくことが重要と認識しております。
 このため、多摩地域に集積する計測・分析器などの産業分野で、企業、大学、公的機関及び金融機関のネットワークを形成し、共同の研究開発の促進を図るとともに、同地域の航空機関連部品の企業が高付加価値の製品を生産し、受注を確保できるよう支援を行います。
 さらに、産業交流の広域化に向けて、産業交流拠点の整備に加え、今年度、多摩に隣接する神奈川県や埼玉県の一部を含む地域について、関係県市と協力して策定した首都圏西部地域広域基本計画に基づき、ものづくり産業を主な対象に、産学官の連携強化などを進めてまいります。こうした取り組みを総合的に展開することにより、多摩シリコンバレーの形成につなげてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 二点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、精神障害者の地域生活基盤の充実についてでございますが、都は、精神障害者が地域で安定して生活できるよう、独自に整備費や運営費の助成を行うなど、グループホーム等の整備を推進しており、昨年十二月現在、定員は、平成十七年度末の五百六十人から千百八十九人へと着実に増加いたしております。
 また、地域生活を支える相談機能を充実するため、地域活動支援センターに、精神保健福祉士等を配置して、日常生活に関する相談対応や医療中断を防止するための通院同行等の取り組みを行う区市町村に対し、包括補助事業等を通じて支援を行っております。今後とも、こうした取り組みを一層進め、精神障害者の地域生活基盤を充実してまいります。
 次に、精神科医療ネットワークモデル事業の普及についてでございますが、都は今年度から、地域の関係機関が連携し、精神障害者の地域生活を支えるため、モデル事業を区東北部と南多摩の二つの二次保健医療圏で実施いたしております。
 この事業では、症状の変化に応じて、必要なときに適切な医療を提供できる地域連携の仕組みづくりを目指しており、現在、精神科の病院や診療所、保健所等の関係機関による協議会を設置して、地域で対応可能な疾患や往診の実施の有無、診療時間等の情報の共有とその活用方法などについて調査検討を行っております。
 今後、モデル事業を評価、検証するとともに、精神保健福祉センターの専門職チームによる訪問型支援の実施状況も踏まえまして、精神障害者が身近な地域で受診できるよう、関係機関の連携を構築してまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 五十九番伊藤興一君。
   〔五十九番伊藤興一君登壇〕

〇五十九番(伊藤興一君) 初めに、だれもが読み書きに困らない社会の実現に向けた取り組みについて質問します。
 私たちは、情報の八割を、目を通じて得ているといわれております。一方、都内には、視覚障害者が約四万人おり、また、高齢者も急速に増加する中、読み書きに困難を伴う人が支援を必要としている現状があります。
 先日、ひとり暮らしの全盲の視覚障害者をお世話している方から相談がありました。それは、視覚障害に加えて脳梗塞を発症し、手の麻痺のため、今まで読めていた点字さえも読めなくなってしまい、生命保険や銀行の手続を手伝うため、その方が同行しましたが、代筆での手続はできないという事態に直面したということでありました。金融庁は、全国の金融機関に対して、視覚障害者の利便性向上の取り組みを要請しておりますが、代筆の対応方法など整備が進んでいない現状があります。
 一方、成年後見制度がありますが、この制度は、知的障害、精神障害、認知症などにより、判断能力が十分でない方に援助する人をつけてもらう制度であり、この方のように、判断能力に問題がない視覚障害者にとっては、現行の制度では十分な支援が行き届いていないのであります。
 こうしたことは、障害者だけでなく、一部高齢者の中でも課題となっています。例えば、税金や健康保険、公共料金などの重要なお知らせが届いても、細かい文字が読めずにそのまま放置してしまったり、また、書類の狭いスペースに文字を書き込めないために、やりたいことをあきらめざるを得なかったりと、日常生活の中で困難に直面している実態があります。
 時には、信頼できる友人やボランティアの善意に支えられている側面もありますが、個人情報など知られたくない情報もあり、だれでも構わず代読や代筆を頼めるわけではありません。
 福祉行政を推進する都として、だれもが読み書きに困らない社会の構築を目指すべきであります。作家としても活躍されてきた知事の所見を伺います。
 そして今、必要となることは、一定の講習や研修を受け、守秘義務の知識や代読、代筆の技術を習得した専門性を有する読み書き支援員を養成することであります。
 都は、視覚障害者や高齢者などが、読み書きが困難なときや契約、金銭管理等で不利益をこうむったりトラブルに巻き込まれたりすることがないよう、全国に先駆けて、身近な地域で支援していく仕組みを構築すべきであります。見解を求めます。
 また、行政に関する申請手続は、煩雑な上に専門性が必要となることがあります。こうしたことについては、専門職である行政書士によって代行手続が円滑に進められるよう、関係機関に働きかけていくことを提案します。
 次に、特別支援教育の推進について質問します。
 私は、平成二十一年第三回定例会において、障害者が災害や不測の事態に遭遇し助けを求めたいときに、周囲の人が気づき支援しやすい環境を広域的に整えるよう、都に提案しました。それは、障害者の就労、社会参加が促進される中、一人で交通機関を利用する人がふえているほか、特別支援学校に一人通学をしている生徒もたくさんいるからです。
 こうして地元を離れ、社会参加へ向かう障害者の方々は、途中でゲリラ豪雨や地震などの自然災害や交通機関の事故、故障によるダイヤの乱れなど、ふだんとは違う状況に遭遇すると、駅やまち中で立ち往生してしまったり、パニックに陥ったり、時にはとんでもないところで迷子になって発見されるという事例も少なくありません。
 私は、生徒が特別支援学校卒業後も安心して社会生活を送ることができるよう、在学中から通学や移動の際、困ったときに意思表示ができる実効的な安全教育を推進するよう求めてきました。
 そこで、都の取り組みを明らかにするとともに、今後はさらに、社会参加への移行が円滑に進められるよう取り組みを強化すべきであります。見解を求めます。
 また、今後、学校を卒業した後、実際に社会参加する障害者と家族が安心できる環境を整備する必要があることから、障害者自身が支援を求めるヘルプカードや支援する側の対応を示したガイドラインを都が作成し、広域的、実効的な支援対策を講じるべきと要望します。
 都議会公明党は、これまで、特別支援学校における放課後等の居場所づくりについて、都の取り組みを求めてきました。今年度は、複数の特別支援学校において、放課後や土日、休日などで放課後活動が本格実施され、来年度からは、特別支援教育推進計画第三次実施計画に位置づけられる中、着実に事業の推進が図られていきます。
 本年四月には品川特別支援学校が開校され、知的障害がある小中学生が、新たに完成する学校に通うことを楽しみにしております。そこで、こうした新たな特別支援学校においても早期に放課後の居場所づくりが実施できるよう、都の支援を一層推進すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、災害対策について質問します。
 東京消防庁の平成二十二年中の火災概況、速報によれば、都内の火災発生件数は前年比五百十九件減の五千八十二件であり、死者、負傷者とも減少しています。これは、昨年四月に義務化された住宅用火災警報器の設置促進により、早期発見、早期対処の成果が出たものと考えます。
 地域によっては消防署と消防団、町会などが連携してローラー作戦を展開し、設置率が九割近くまで達しているところもあります。しかし、一方では、残る一、二割をどう達成するのかに苦慮しており、また、いまだ極端に設置率が低い地域があるなどの課題が残っております。
 火災による犠牲者のうち、六十五歳以上の高齢者が約六割を占めている現状を踏まえ、都は、未設置家屋の所有者に対しては防火診断を実施したり、設置世帯には機器のメンテナンスの必要性を指導するなど、これまで以上に防火、防災対策を強化すべきであります。見解を求めます。
 地域の防災力を高めていくこととともに、首都直下地震や大災害に備えて、広域的に対策を強化していくことが重要であります。一方、災害で被害を受けられた被災者へのきめ細かな支援体制を構築していくことも重要であります。
 そこで、都民の最も身近な行政窓口である区市町村が、被災者支援を円滑に進められるよう、都は積極的に支援すべきであります。見解を求めます。
 阪神・淡路大震災から十六年が経過しました。私は、友人のご両親を救出するため、地震発生の翌日に被災した神戸市に行きましたが、今でも脳裏に焼きついて離れない光景があります。それは、一瞬にして家や家財、衣服や家族の思い出の物までも失い、今を、そして今後を、何をどうすればいいのかわからず、気を失うほどのショックを受けていた人々の姿であります。
 こうした場合、多岐にわたる心配や不安を抱えたまま、家族の安否はここで、メンタルケアや健康面の問題はここで、住まいや生活についてはここで、といった対応ではますます心配が広がってしまいます。
 災害対策の総合調整を図る都は、災害発生時の初期段階から被災者の心情に寄り添い、円滑に具体的な支援を行い、その後の生活再建につなげていける総合的な知識を持った被災者支援ワーカーを配置する仕組みの構築と、そのための人材育成に取り組むよう提案します。
 次に、東京の魅力を世界に発信する観光施策の推進について質問します。
 ことしの年末に完成予定の東京スカイツリーが脚光を浴びる中、長年、東京の観光の代表的な名所となっている東京タワーは、高度経済成長期からバブル崩壊期など、激動の時代の中で懸命に生きてきた人たちのさまざまな思いを見守り続け、都民のみならず、日本人の大切な心のふるさととなっています。
 また、四季折々のライトアップで都民や観光者を楽しませ、乳がん撲滅の象徴であるピンクリボン運動の照明など、都が進める施策にも積極的に協力しています。
 東京スカイツリーにデジタル電波、本局機能が移行された後も、東京タワーは事故、災害時等の予備電波塔として、また、新たな時代の電波利用に対応するなど、首都圏における安全・安心の放送インフラを維持向上させていくため、欠かせない役割を担う施設であります。
 また同時に、年間有料入館者数が三百万人を超える東京タワーは、これからも大事な観光資源であり、永続的に存続できるよう支援していくべきであります。
 そこで、都は、東京タワーを初めとした従来からの貴重な観光資源を、今後も東京の観光振興の重要な財産として活用していくべきであります。見解を求めます。
 また最近では、日本じゅうでタワーブームの波が高まっており、全国各地の主要二十タワーに訪れる観光者は、年間九百五十万人にも達しています。
 さらに、タワーを活用した観光振興は、世界じゅうで活発に行われています。ことし十月には、フランスのエッフェル塔やカナダのCNタワーなど、世界的に有名な三十以上のタワーの代表者が一堂に会して情報交換し、観光の魅力をレベルアップするため、世界大タワー連盟総会が東京で開催されます。
 観光立国を目指す日本の首都東京は、こうした世界的な観光振興の取り組みを積極的に支援すべきであり、この機会に、東京の魅力を世界に向けてアピールすべきであります。あわせて見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 伊藤興一議員の一般質問にお答えいたします。
 だれもが読み書きに困らない社会の実現についてでありますが、人間は、だれしも他人とのかかわりの中で生きているわけでありまして、この社会の中の連帯という人間のかかわりをつなぐものが、いずれかの手だてによる伝達コミュニケーションであります。
 その手段は、言葉や文字にも限りませんで、例えば、盲ろう者の東大教授の福島智さんにとっては、それはお母さんが開発した指点字でありましたし、また、全盲のピアニスト辻井信行さんにとっては、ピアノの音でもあります。
 さらに、筋ジストロフィーという非常に厄介な病気にかかった方々は、それが進みますと全身が動かなくなって、ただ目だけがまばたきできるわけですが、これも字を指すことで、何というのでしょうね、自分の意思表示をまばたきで伝えて、字の選択によってコミュニケートすると。
 いずれにしろ、高齢や障害などによりまして言葉や文字による意思の疎通が困難になった人に対しても、その障害を解消し、社会の一員として生活できるように手だてを講じることが必要だと思います。
 思いやりの心から世界最先端の情報通信技術に至るまで、日本が誇るさまざまな力を活用しながら、だれもが必要なときに互いに意思を疎通する、コミュニケーションできる、そういう社会の実現を目指していきたいものだと思います。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別支援学校の生徒や卒業生の通学や移動における安全教育についてでございます。
 障害のある生徒が社会的に自立していくためには、電車やバス等の公共交通機関を利用して、一人で安全に通学や移動ができる力を育成するとともに、学校で学んだ災害や不測の事態等への対処方法を、卒業後の社会生活につなげていくことが重要でございます。
 平成二十一年第三回定例会におけるご質問を受け、都教育委員会は、知的障害特別支援学校に対し、安全教育の充実について周知徹底を図りましたところ、すべての学校において、生徒が一人通学を始めるに当たって、困ったときに緊急連絡カードなどを使って自分の意思を適切に伝え、助けを求めることなどの指導が実施されるようになりました。
 こうした取り組みの結果、通学の途中でぐあいが悪くなった生徒が、周囲の人に助けを求めて保護されるなど、具体的な成果が報告されております。
 また、すべての知的障害特別支援学校では、生徒が在学中に身につけた力や、必要とする支援等の情報を就労先や地域の関係機関に引き継ぐ個別移行支援計画を、卒業生一人一人について作成し、生徒の卒業後の生活を支援しておりますが、災害時等への対応には不十分な面がございます。
 今後、都教育委員会は、昨年十一月に策定した特別支援教育推進計画第三次実施計画に基づき、高等部を卒業した生徒が、卒業後も安心して社会生活を送ることができるよう、安全教育の充実や災害等への対処方法のあり方について検討する委員会を設置し、検討の成果を個別移行支援計画に反映させてまいります。
 次に、都立特別支援学校における放課後等の子どもの居場所づくりについてでございます。
 特別支援学校の児童生徒が、放課後等に多くの人々と交流し、さまざまな体験をすることは、自立と社会参加を促す上で大変有意義でございます。
 一方、特別支援学校において、小中学校と同様に放課後子ども教室を実施するためには、保護者、地域住民、ボランティアなどにより、活動を安定的に実施できる体制を確立していくことが課題となります。
 都教育委員会は、こうした体制整備に向けた支援を行い、放課後子ども教室を拡大していくために、今年度は六校において、放課後等活動支援推進事業を実施しております。
 今後、品川特別支援学校など新しく開設する学校を含め、その他の学校についても学校と緊密な連携を図りつつ、放課後等活動支援推進事業による支援や、他校における取り組み事例の情報提供などを行い、特別支援学校における放課後等の居場所づくりを着実に推進してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 視覚障害者や高齢者等に対する支援についてのご質問にお答えを申し上げます。
 障害や高齢などによりまして、読み書きが困難であっても、身近な地域で安心して生活が送れるようにすることは重要でございます。そのため、都は、区市町村が支援の必要な高齢者や身体障害者に対しまして、福祉サービスの利用援助や日常金銭管理等のサービスを行う場合に独自に補助を行っており、現在、三十二区市が実施いたしております。
 今後、未実施の区市町村に対し、事業実施を働きかけますとともに、都民への事業の周知を図ってまいります。
 また、お話の視覚障害者や高齢者等の支援の担い手でございます生活支援員に対しまして、代読、代筆の知識習得を図るなどの研修を充実してまいります。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

〇消防総監(新井雄治君) 住宅用火災警報器の設置に関する取り組みについてでありますが、東京消防庁では、住宅用火災警報器設置推進本部を設け、挙庁体制で取り組むとともに、消防団や町会、自治会などと連携し、積極的な普及活動を行ってまいりました。
 この結果、消防に関する世論調査における直近の設置状況は七九・四%であり、一昨年に実施した同調査と比較し、三一・三ポイント上昇しております。
 一方、いまだ住宅用火災警報器を設置されていない方は、設置しない理由として、必要性を感じない、価格が高い、あるいは義務化を知らないなどを挙げられており、それぞれへの対応が大きな課題となっております。
 このため、住宅用火災警報器の有効性を積極的に広報し、設置の動機づけを図るとともに、消防職員が行う防火防災診断等による戸別訪問指導、共同住宅の所有者等に対する指導文書の交付の徹底、町会、自治会などによる共同購入や取りつけ支援のさらなる促進など、設置しない理由に応じた具体的な対応を強化し、未設置世帯の早期解消を図ってまいります。
 また、設置後の維持管理につきましては、メンテナンスカードを配布するなどいたしまして、定期的な点検の必要性や電池切れの際の対応について、引き続き周知に努めてまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 区市町村の被災者支援への都の取り組みについてでございます。
 阪神・淡路大震災などの教訓を踏まえ、被災後、区市町村が主体的かつ効果的に復興事業を実施できるよう、都は平成二十一年三月、標準的な活動指針となる区市町村震災復興標準マニュアルを策定いたしました。
 その中で、仮設住宅の供給や生活支援対策など、被災者に向けた区市町村のさまざまな取り組みが迅速的確に行えるよう、具体的な手続を時系列で示したところでございます。また、これらの取り組みが総合的、一体的に推進されるよう、震災時における組織体制の整備についても提案をしております。
 現在、十七区が震災復興マニュアルを策定しており、今後、残る区市町村において早期に策定が進むよう、担当者に対する説明会の開催や、区市町村ごとに相談に応じることなどにより、積極的に働きかけてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 観光資源の活用についてでありますが、東京が持つ魅力あふれる観光資源を世界じゅうの方々に知ってもらい、旅行者の誘致につなげていくことは重要であります。
 都はこれまで、旅行者向けにウエブサイトや多言語によるハンディーガイドなどで、東京が有する新旧の多様な観光資源の魅力を発信してまいりました。また、今年度、ロケ地めぐりという新たな視点で東京の魅力を国内外にPRするため、東京ロケ地マップを多言語で作成いたします。
 これは、アジア圏を中心に海外でも人気の高い、日本映画やテレビドラマのロケ撮影が行われた都内施設や風景を題材としたもので、お話の東京タワーを舞台とした人気映画の紹介なども行う予定であります。
 今後も、こうした新旧の貴重な観光資源を積極的に活用し、東京が持つ都市の魅力を世界に発信してまいります。
 次に、国際会議等の開催機会をとらえた東京の魅力発信についてでありますが、お話のタワーに関する国際会議を初め、東京での国際会議の開催は、世界各国から参加者が集まることから、国内外に対し、東京の都市としての国際的な存在感を高めていく絶好の機会であるとともに、訪都外国人旅行者の誘致につながるものであります。こうした機会を活用し、東京が持つ多様な魅力を積極的に発信していくことは、観光振興の視点から重要であります。
 都では、知事の招請状発行や助成制度など、東京観光財団とともに、国際会議の東京誘致に向けた取り組みを展開しております。
 また、東京での国際会議の開催に当たりましては、都が運営する観光ボランティアの派遣、東京観光DVDや滞在中の東京観光に関する情報提供などの各種協力、支援を実施しております。
 東京は、四季を通じていつでも楽しむことができる都市であり、今後も引き続き国際会議等の機会を活用し、東京の魅力あふれるさまざまな顔を世界にPRしてまいります。

〇副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時十二分休憩

   午後五時三十一分開議

〇議長(和田宗春君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十三番鈴木勝博君。
   〔五十三番鈴木勝博君登壇〕

〇五十三番(鈴木勝博君) 昨年、私は第一定例会で、東京都の喫緊の最重要課題は雇用政策であり、都独自の雇用対策の必要性を訴えました。
 雇用不安を抱える都民に対して、十万人規模のキャリアカウンセリングを実現できる体制を整えること、三十七万人を超える失業者に対して、あらゆる仕事に対応できる都独自の職業訓練システムが必要であること、その一環として職業能力開発センターの訓練内容を就業しやすい内容に見直し、さらに年間訓練生の定数も四百八十名から八百名にふやすことなどについて所見をお伺いしました。
 また、大学新卒者や高校新卒者の内定率を上げるために、中小企業とのマッチングの機会をふやすための合同企業説明会の継続実施などを要望いたしました。国内の景気低迷が続く中、相変わらず失業率は改善せず、新卒者の内定率は過去最低を記録している状況です。
 都は、昨年の私の質問に対して、二十二年度の緊急雇用関連予算は力不足ではないとしていますが、これまでの緊急雇用対策はどのような実績を上げられたのか、本当に力不足でない雇用対策であったと認識しているのか、都の見解をお伺いします。
 また、ますます悪化する東京の雇用状況に対して、今後どのような対応策をとられようとしているのか、あわせて所見をお伺いします。
 さて、私は、同僚議員らとともに昨年、アジアの主要な大都市を精力的に視察訪問してまいりました。ソウル、上海、シンガポール、台北、どの都市も活力に満ちあふれ、成長を謳歌し、市民のやる気を実感しました。
 東京に戻るたびに、東京が活力を失っている、都民が元気を失っていると実感し、首都東京でさえ閉塞感を打ち破れないことに、まさにこれは政治の責任と、焦燥感に駆られる一年でした。
 果たして、この今の日本の閉塞感を打ち破ることができるのか、どうしたら東京をもっと元気にできるのか、このことに答えを出すことこそ、今の政治の役割だと改めて自戒をした一年でもありました。その思いを込めて質問に入ります。
 東京を元気にするためには、東京の経済成長戦略を描き切らなければなりません。東京は日本の産業が集積している大都市であるため、東京の成長戦略は日本の成長戦略そのものであるといっても過言ではありません。つまり、国と東京が成長戦略でベストパートナーとして機能していく必要があります。
 ソウルは、国家戦略として東京をキャッチアップすることを戦略としていました。その一つであるDMC構想は、明らかに東京を意識したクリエーティブ都市の実現を目指しています。
 五十七万平方メートルの広大な敷地に、世界じゅうからデジタルメディアの先端技術を有する企業や大学などを三百社誘致し、海外からの優秀な人材を呼び込み、既に二万三千名が働く都市に成長しています。
 二〇一五年には、アジアナンバーワンとなる地上百三十三階建てのランドマークの竣工が予定され、三兆五千億円の売り上げを計画しているとのことです。
 また、シンガポールでは、観光都市としての機能を高めるために、昨年五月にカジノを解禁し、ラスベガスからホテル、カジノ、コンベンションを誘致し、戦略的にアジアナンバーワンの観光都市になろうとしています。
 事実、シンガポールは、アジアの中でも、中国とインドという巨大市場をターゲットに、昨年上半期はGDP成長率一八%という驚異的な成長を遂げています。この国の成長戦略が見事にアジアパワーを取り込んでいる証左です。
 上海は、ご存じのように国策として、経済特区としてアジア第一の都市となりました。今や東京をはるかに超える一千九百万人の人口と、二兆円を超える投資マネーが集まる経済都市です。
 台北は、中国との地域経済連携協定を締結したことにより、EMSやファンドリーという独自の受託生産で圧倒的なシェアをとるまでに成長したIT産業都市です。
 訪れたアジアのどの都市も、国家の威信をかけて、国家とともに驚くべき成長を遂げていました。果たして東京は、国に働きかけ、国とともに成長戦略が描けているのでしょうか。
 昨年提出されました「十年後の東京」実行プログラム二○一一では、八つの目標とそれを実現するための二十六の施策を掲げました。一方、政府は、昨年六月に新成長戦略をまとめ、七つの成長戦略を発表しました。都は、国の成長戦略もうまく取り入れながら、閉塞感を打ち破る都独自の成長戦略を描く必要があると思います。
 まず、新たな成長産業として、環境分野をしっかりと育て上げることです。国の新成長戦略はグリーンイノベーションを掲げましたが、「十年後の東京」でも、世界で最も環境負荷の少ない都市を実現するとしています。
 気候変動がもたらす地球の危機を回避するには、先進国が率先して行動を起こす必要があります。都は、二〇二〇年までに二○○○年度比二五%の温室効果ガス削減目標を掲げ、今年度から大規模事業所に対して排出量総量の削減を義務づけ、さらには来年度から排出量取引制度をスタートさせ、国に先駆けてさまざまな施策を実行しています。
 今後も都は、世界一エネルギー効率の高い都市を目指して、スマートグリッドや電気自動車の普及などに積極的に取り組む必要があります。
 また、成長著しいアジアの国々では、日本が経験した環境汚染や環境破壊に直面をしています。アジアの新興国に対して、持続可能な社会を実現するよう、環境インフラ整備のグランドデザインを提供し、協力していくことが重要です。
 昨年、私の一般質問でも知事から答弁をいただきましたが、鉄道事業、水道事業、上下水道事業、廃棄物処理事業など、東京の持つ高度な環境インフラをアジアの大都市に提供することで、ウイン・ウインの関係を築くことこそ、現場を持つ東京の最重要成長戦略とすべきです。
 一方で、高い技術力、開発力を持つ中小企業が数多く集積する東京では、中小企業に対する環境ビジネスへのイニシアチブをとるべきだと思いますが、都の見解をお伺いします。
 東京は、世界でも最速で高齢化していく大都市です。東京こそ成長戦略としてライフイノベーションを掲げ、医療、介護、健康産業を育てることが重要です。
 不足している高齢者住宅への新たな東京モデルの取り組みは、バリアフリーなどのリフォームビジネスや新たな高齢者専用住宅の需要を創出し、大きな経済効果、雇用効果が期待できます。
 ただ、問題なのは、医療、介護分野の人材不足です。ホームヘルパーの月額給与は平均二十一万円で、全産業の三十二万円を大きく下回っており、なおかつ東京と青森の都道府県別賃金を比較すると、東京三十六万円に対し青森二十二万円と、東京は介護人材を採用するには大変厳しい待遇環境にあるということです。
 都は、国に働きかけ、東京の実態に見合った介護報酬に改める必要があると思いますが、見解をお伺いします。
 また、看護師、介護士不足に対しては、インドネシア、フィリピンから、EPAに基づき、それぞれ千五百名、千名を上限として受け入れることとしました。しかし、言葉の壁で、看護師の国家資格はわずか三名しか合格していないのが現状です。これでは、幾ら政府が海外からの専門人材を受け入れようとEPA、FTAを締結しても、成果が上がりません。
 都は、優秀な専門人材が看護師、介護士として働けるよう支援を行うべきと考えますが、見解をお伺いします。
 さらに、東京の成長のためには、アジアの巨大な成長パワーとエネルギーを何としても取り込む特区制度が必要になります。グローバル企業が集中する東京は、民間企業の国際競争力を後押しする政策が必要であり、法人税特区として政府が掲げる五%以上の減税が必要かもしれません。
 また、アジアから多くの企業や優秀な人材が集まるように、投資優遇税制や高度人材優遇措置などの研究開発特区を実現することも重要であり、都は、政府の総合経済特区制度を利用して、東京のビジネス競争力を高める政策を強く国に働きかけるべきです。
 東京がアジアの成長を取り込むには、当然、東京がアジアのハブである必要があります。東京がアジア域内でのゲートウエーであるためには、羽田空港の国際化をさらに進めること、京浜港を国際港湾として強化することです。
 アジア域内の国際線旅客数は、この十年間でも四千三百八十三万人から九千七百四十五万人と二倍になっており、日米航空自由化協定が締結され、オープンスカイ構想がスタートし、これからアジア域内では大都市空港の国際競争が激しく展開されるでしょう。
 人、物、金が自由に出入りできる国際都市として、アジアの中で東京は勝たねばなりません。都は、昨年の国際化後の利用動向も踏まえ、どのように羽田のさらなる国際化を推進するのか、見解をお伺いします。
 昨年、私は一般質問で、中国からの旅行客をふやすことで外需を取り込むことが重要な産業政策であると提言をいたしました。アジアの成長は数千万人の富裕層を生み出しました。特にシンガポール、中国などからの旅行者は急増しています。これらの国の富裕層を取り込むための観光戦略は、外需を取り込む東京の成長戦略の柱とすべきです。
 シンガポールもソウルも、アジアの旅行需要を取り込むために国を挙げて取り組んでいます。カジノの解禁もその一つのあらわれでしょう。アジアの観光客を取り込むために、都は具体的にどのような施策を実現するのか、見解をお伺いします。
 内需主導の経済成長を実現するためには、関連産業が多様で、産業のすそ野が広い経済効果を持つ住宅市場への投資の促進、拡大が重要です。
 特に、少子高齢化の進展や地球温暖化など、社会が大きく変化していく中にあって、住宅をつくっては壊す社会から、よいものをつくって手入れをし、長く大切に使う時代へと住宅に対する考え方が変わり、新築住宅の供給から既存住宅の流通へと重心を移す戦略が必要です。
 いわゆるストック重視の社会へと大きく転換し、一千兆円ともいわれる住宅、土地などの実物資産を、今後有効にむだなく使う戦略が必要であるべきです。
 しかし、日本の住宅の平均寿命は米国の半分にも満たないなど、住宅を短期間で取り壊してしまいます。
 また、既存住宅の流通も、欧米諸国では全住宅取引の七割程度を占めているのに対して、日本では一割強であるなど、極めて低調です。
 これは、新築住宅を好む我が国の国民性のほかにも、既存住宅の質に消費者が不安を抱いていることや、建物価値の評価、査定システムの不備など、さまざまな課題があると考えられます。
 そこで、日本最大の住宅市場を抱える東京から、内需拡大を牽引する成長産業の育成という観点に立って、既存住宅流通の課題解決に取り組み、消費者の安心を確保できる既存住宅流通市場の育成や活性化に都として積極的に取り組むべきと思いますが、都の見解をお伺いします。
 最後に、これらの成長戦略を実現するためには、国際感覚のある専門性の高い優秀な人材が必要です。国家は人なり、まさに都も人なりです。
 日本人留学生は、年間五万四千人とピーク時の半数に激減しており、若者の留学離れに歯どめがかかりません。それに反し、韓国では十万五千人、中国は四十五万五千人と大幅に海外留学する若者がふえております。
 東京は、全国から優秀な大学生が集まり、特色ある多くの大学を有する大都市です。アジアの留学生にとっても魅力ある大学が多数あるはずです。アジアの成長とパワーを取り込むためには、東京をアジアの知の交流拠点とする必要があります。
 知事も今定例会の施政方針表明で、留学に出る者が減り、海外勤務を希望しない新入社員がふえており、安定、安全志向になり、若者が未知を恐れ、その特権である情熱やエネルギーまでも失っている、それでは日本は二度と立ち直れないということを述べられ、今の日本の若者の姿に警鐘を鳴らされております。
 アジアの発展のために、そして東京の成長のために、国際人として通用する多くの優秀な人材を輩出することが今ほど求められている時代はないと思いますが、知事の所見を最後にお伺いしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 鈴木勝博議員の一般質問にお答えいたします。
 国際社会で活躍する人材の育成についてでありますが、これはいうに易しいですけれども、非常に行うに難しい問題だと思うんです。
 これは、日本人の民族的な、非常に閉鎖的な、パッシブなDNAにもかかわりがあると思うんですが、私も世の中に割と早く出られたものですから、今じゃ伝説的になった人たちに実際に会って話をすることができました。白洲次郎というなかなか個性的な人物にも、ゴルフをしたりしながらいろんな話をしましたけれども、まさに日本では珍しい典型的なコスモポリタンだった白洲さんが慨嘆していっていたことは、日本人はとにかく語学が下手だと。下手なら仕方がないが、それをもっとうまくしようとする努力もないし、その上、日本人は体質的に非常に社交ができない、社交のできない人間に、本当に大事な国際的な交渉もできないし、まして外交なんかできるわけがないということで、特に日本の外務省の役人をぼろくそにいっておりましたが、私、いろいろ、今になってみて共感するところがあります。
 いずれにしろ、時間的、空間的に世界が狭くなっているわけでありますから、若い人たちが今こそ海外で生活し、あるいは積極的に海外のものを受け入れて、異文化に触れることは重要だと思います。
 若者には、留学であれ、海外勤務であれ、積極的に国際的な舞台でチャレンジしてもらいたいと思いますが、もう一つ大事なことは、若者に日本人としてのバックボーンをしっかりと持ってもらいたいとも思います。
 かつて司馬遼太郎さんは、外国に行って自分よりも背の高い外国人の中にあっても、自分は一向に卑屈に感じることはないと。それは、やっぱり自分が日本人として日本の歴史や文化に誇りを持っているせいだといっておりましたが、この言葉を裏打ちするためには、自分の国の歴史なり文化というものを本当に知らなければ、外国と違って日本は明らかに違う、こういうところがすぐれている、そういう認識を持つことはできないし、それがまた自信の裏打ちになるわけであります。
 今日の国の弱腰の外交を見ても明らかなように、しっかりとした背骨を自分の中に持ってこそ、自分と他者、日本と他国を相対的に冷静に比較することができますし、それを踏まえて強い、的確な自己主張もできるようになると思います。
 戦後、我が国は、先人の足跡を教えることをおろそかにしてきた。つまり、若い人は近代史、現代史というのを知りませんから、大学生の中にも六十五年前に日本が敗れたあの戦争があったということすら知らない若者もいるわけでありまして、東京は我が国の近代史の歴史を高校で教えることを今度始めましたが、それが、自分のじいさん、ばあさん、ひいじいさん、ひいばあさんがどうやってこの国をつくってきたかということを知ることのよすがになると思います。
 いずれにしろ、世界標準の論理的思考力、言語能力の養成というものは肝要でありますが、そのためには、まずはやっぱり自分自身を知らなきゃいけないと私は思います。
 異なる価値観、文化、風土にあっても、たくましく生きていくような気力のあふれる若者をできれば本当にたくさんこの東京から育てていきたいと思いますが、これはやっぱり施設の問題だけじゃなしに、そのノウハウその他、いかに先輩である私たちが気を配り、彼らをある意味で唆すか、導いていくかという問題だと思います。
 これは大事な問題でありまして、これから日本の命運を左右する問題でありますから、ぜひ東京という舞台でみんなで、議会でも通じて知恵を出し合って、この目的を達成していきたいものだと思います。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、羽田空港のさらなる国際化の推進についてでございますが、羽田空港は、国際定期便の就航が始まってから二カ月で利用者が約百二十万人に上っておりまして、近々、ニューヨークやデトロイト、ロンドンへの就航が開始されるなど、本格的な国際空港として利便性が一層向上してまいります。
 今後、羽田の発着枠は、管制など空港運用の習熟を踏まえて段階的に増加することとなっておりまして、平成二十五年度中には、昼間の国際線発着枠が現在の二倍の年間六万回となる予定でございます。このため、国際線旅客ターミナルの拡張を早期に実施するよう国に求めてまいります。
 また、現時点でいまだ国内、国際の割り振りが決まっていない二万七千回の発着枠につきましても、極力国際線に振り向けるとともに、欧米も含めた長距離路線への就航を昼間の時間帯にも可能とするなど、羽田のさらなる機能強化を国に働きかけてまいります。
 次に、既存住宅流通の活性化についてでございます。
 地球環境問題がますます深刻化する中で、住宅が量的に充足し、人口の減少を目前に控えた東京においては、短期間で住宅をスクラップ・アンド・ビルドするのではなく、社会全体で長期にわたって住み継いでいくことが求められておりまして、良質な既存住宅の流通を促進することはますます重要となっております。
 このため、都は、既存住宅流通の活性化を目的といたしまして、売買に当たり確認すべき品質や事項等を取りまとめた、安心して住宅を売買するためのガイドブックを作成するなど、取引における安心確保に取り組んでまいりました。
 現在、住宅政策審議会において、既存住宅流通のあり方を含めた今後の住宅政策についてご議論をいただいておりまして、今後、この結果を踏まえ、既存住宅流通の活性化に向けた取り組みをさらに進めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、都の雇用就業対策の取り組みについてであります。
 景気は、一部に持ち直しの動きが見られるものの、失業率が高水準にあるなど、雇用情勢は依然として厳しい状況が続いております。
 雇用問題の本質的解決のためには、国が明確な成長戦略のもと、実効性ある経済対策を進め、雇用の創出につなげていくことが不可欠でありますが、都としても可能な限りの対応をする必要があります。
 このことから、都はこれまでも国に先駆けまして、生活費給付つき職業訓練や雇用創出への取り組み、さらには就業支援の強化などを実施してまいりました。
 平成二十二年度は、新卒者が置かれている厳しい就職環境に対応するため、合同就職面接会の参加企業の規模拡大や、東京しごとセンターにおける新卒特別応援窓口の設置など、都独自の取り組みを強化しております。
 緊急雇用創出事業につきましても、規模を平成二十一年度の約一万人から約一万七千人に大きく拡大して雇用の創出に努めております。
 また、離職者に対する職業訓練では、介護、保育など人材需要の高い分野の定員を増加し、全体で約一万五千人規模の職業訓練を実施するなど、都は現下の雇用情勢に対応して最大限の努力をしているところでございます。
 さらに、来年度からは、就職先が決まらないまま大学等を卒業した方などと中小企業とを結びつける未就職卒業者緊急就職サポート事業を新たに開始するとともに、雇用創出事業も本年度を上回る約一万九千人規模で実施してまいります。
 今後も、引き続き雇用就業対策の一層の充実強化を図ってまいります。
 次に、中小企業の環境関連技術の開発等についてでありますが、世界的な規模で環境対応が大きな課題となっている中、都内の中小企業がその高い技術力や開発力を発揮して、CO2削減等に役立つ技術や製品を生み出し、新たなビジネスチャンスにつなげることは東京の産業を活性化する上で重要であります。
 このため、都は今年度から、都市課題解決のための技術戦略プログラム事業を開始いたしまして、環境分野の課題解決に役立つ開発に向けたテーマを示したロードマップを作成いたしました。現在、これに沿った中小企業の新製品開発、技術開発及び事業化を庁内各局とも連携しながら重点的に支援しております。
 こうした取り組みにより、環境問題の解決を図る中小企業の技術開発を新たな事業の創出に結びつけてまいります。
 最後に、アジアからの旅行者誘致についてであります。
 経済成長が続くアジアからの旅行者を誘致することは重要です。都は、従来より、中国、台湾、韓国などの訪日旅行者数の多い東アジア地域を対象に、旅行博覧会や旅行事業者訪問の機会などを活用いたしまして、旅行商品の造成を積極的に働きかけてまいりました。
 今年度は、新たにシンガポールなどの訪日旅行者数の伸びが期待できる東南アジア地域も対象地域として取り組みを拡大しております。
 今後も、羽田空港等への新たな便の就航や各国の成長動向などを勘案しながら、アジア市場でのさらなる旅行者誘致を進めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 二点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、介護報酬についてでございますが、都は昨年九月、平成二十四年四月に予定されております介護保険制度改正に向けて、大都市の実態に即した介護保険制度のあり方について国に緊急提言を行いました。
 提言では、東京の地価や人件費等の地域差を具体的に指摘いたしまして、大都市の実情を反映した介護報酬とするよう、地域区分の見直しや上乗せ割合の引き上げなど、抜本的な見直しを求めております。
 今後とも、次期介護報酬改定に向けまして、あらゆる機会を通じて国に働きかけてまいります。
 次に、外国人の看護師、介護福祉士候補者への支援についてでございますが、都は、国際協力の観点に立ちまして、都内の民間施設が候補者を受け入れた場合に、国家試験対策に要する経費の支援などを行いますとともに、都立の病院や福祉施設への受け入れを行っております。
 また、昨年六月には、候補者の国家試験の合否状況を踏まえまして、国に対して、試験における専門用語のいいかえや在留資格等の見直しを緊急要望いたしまして、国家試験の見直しにつきましては、本年の試験から反映されております。
 今後とも、来日した候補者が在留期間内に合格し、看護師や介護福祉士として引き続き就労できるように支援を行ってまいります。

議長(和田宗春君) 六十八番高橋信博君。
   〔六十八番高橋信博君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十八番(高橋信博君) まず初めに、緑の確保と都市農地の保全について伺います。
 知事は、我が国の発展を牽引してきた東京都をより高い次元に導くため、「十年後の東京」計画を策定いたしました。その中で、まず第一に、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させることを掲げております。
 東京都は、「十年後の東京」を実現するため、広がりと厚みのある緑を創出し、都市に暮らし集う人々に快適な空間をもたらすことを目指し、これまで街路樹の倍増、校庭の芝生化、屋上や壁面の緑化などの取り組みを進め、緑のネットワークを東京全体に広げるなど、一定の成果を上げております。
 平成二十四年には、こうした取り組みにより形成された緑あふれる東京のたたずまいを全国に発信する一大イベントである全国都市緑化フェアを開催いたします。
 一方、都は、これまで森林再生や保全地域の指定、都市農地の保全などの取り組みを進めてきましたが、宅地開発による市街化が進み、農地や屋敷林など、貴重な緑が失われているのも事実でございます。
 東京は、緑豊かな自然を抱いてこそ、世界に冠たる魅力ある都市になると考えます。東京の緑をより豊かにしていくための取り組みについて、知事の所見を伺います。
 次に、農の風景育成地区制度について伺います。
 東京において、農地は食料生産の場としてだけではなく、良好な住環境の形成に資するなど、さまざまな役割を担っています。
 私の地元小平市でも、青梅街道沿いに短冊状に広がる農地が武蔵野ならではの風景をつくっております。こうした特色ある風景を後世に引き継いでいくためには、農業者が営農を続け、農地が保全されることが必要です。
 我が党は、これまで都市農業、都市農地の重要性について主張し、農地保全の取り組みについて都に積極的に働きかけてきました。これを受け、都からは、昨年の第四回定例都議会において、農地を中心とした景観の保全を図る農の風景育成地区制度を創設するとの答弁がありましたが、現在、どのように取り組んでいるのかを伺います。
 次に、子どもの体力向上に関連して質問いたします。
 東京都が活力ある社会を実現していくためには、未来を担う有為な人材を育成していくことが極めて重要な課題でございます。人材育成の基本は、何事にもへこたれない精神と、元気に社会生活を送る体力にあることはいうまでもありません。
 しかし、平成二十二年度の全国体力テストの結果、全国的にも子どもの体力低下が問題視されている中にあって、東京都の子どもたちの体力が全国平均を大きく下回り、中学校二年生の男子に至っては、四十七都道府県中四十六番目に位置していることは極めて憂慮すべき事態です。
 都教育委員会は、子供の体力向上推進本部を設置し、昨年、総合的な子供の基礎体力向上方策第一次推進計画を策定しました。社会総がかりで、あらゆる角度から子どもの体力を向上させていくという基本方針には、もろ手を挙げて賛成していきたいと考えます。
 その具体的方策にも示されておりますが、昨年度から区市町村対抗による中学生東京駅伝大会が始まりました。第一回大会は、中央区晴海ふ頭のオリンピックスタジアム予定地で開催されました。前夜から朝方にかけ、東京では爆弾低気圧と呼ばれる春のあらしが吹きすさび、荒川市民マラソンを初め、各地のスポーツイベントが中止になる中、よく開催に踏み切ったものと感心をいたします。
 子どもの体力向上は一朝一夕に実現できるものではありません。保護者や地域の関係者の意識に訴え、小さいころから遊びやスポーツを活発に行うことを積み重ねていくことが大切です。そういう意味で、こうした全都の中学生を巻き込んで行う東京駅伝大会の開催は極めて有益なムーブメントだと考えます。
 昨年度は、この大会が中央区晴海ふ頭で行われましたが、多摩地域のスポーツ振興の立場から、ぜひとも多摩地域で大会を開催することを期待します。そして、多くの中学生が切磋琢磨する中から、将来、オリンピックに出場するアスリートが多数生まれてくることを期待しています。
 そこで、中学生の東京駅伝大会の意義と今年度の開催について、都教育委員会の所見を伺います。
 また、平成二十五年に東京で行われる国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会、すなわちスポーツ祭東京二○一三開催まで、既に一千日を切りました。子どもの体力向上を牽引していくためには、地元東京都の選手たちの活躍が大いに期待されます。
 現在、少年の部では、都内私立学校の生徒の活躍が目立ちますが、都立高校の生徒たちにも国民体育大会で大いに活躍してもらいたいと思います。
 かつては、旧制の府立中学校や都立高校からも傑出したアスリートを輩出してきました。これまで以上に、スポーツの名門校といわれるような都立高校が育ってもらいたいと思います。
 そこで、都立高校における競技力向上について、都教育委員会の所見を伺います。
 次に、ビジネスジェット、ビジネス航空の受け入れ促進について伺います。
 ビジネス航空は、グローバルな企業活動に不可欠なツールとなっており、海外から首都圏への乗り入れの要望が高くなっております。
 また、企業は、トップのビジネス時間を有効活用でき、フェース・ツー・フェースの商談をふやせるビジネス航空の導入による経済効果は明らかであります。ある分析によれば、米国では、ビジネス航空の利用企業の売上成長率はビジネス航空非利用企業の二・二倍に及ぶというデータもあります。
 ビジネス航空の受け入れ促進には産業界も大いに期待しており、また、国際会議の開催やアフターコンベンションの観光も期待できることから、東京、首都圏、ひいては我が国の国際競争力の強化につながるものであると考えます。
 昨年十一月、都は、首都圏におけるビジネス航空の受け入れ体制強化に向けた取り組み方針を公表しましたが、こうした国に先駆けた取り組みは、まさに時宜を得たものであります。ビジネス航空の受け入れの必要性について、改めて都の考えを伺います。
 また、首都圏におけるビジネス航空の受け入れ促進を確実に実施していくには、国と連携していくことが大事であると考えますが、取り組み方針公表後の取り組み状況と今後の対応について伺います。
 最後に、私の地元であります小平三・三・八号府中所沢線の整備について伺います。
 多摩南北道路は、多摩地域における機能的な都市活動と快適な都市生活を支える上で必要不可欠な骨格幹線道路であります。中でも、南北道路の一つである府中所沢線は地域の核をなすものであり、特に重要な路線と考えております。
 しかしながら、本路線は、いまだ半分程度しか完成しておらず、整備がおくれております。府中所沢線の未整備区間は、国分寺、小平、東村山の北多摩三市に集中しております。
 とりわけ、私の地元である小平市の区間では、本路線の計画地周辺における南北方向の既存の道路が府中街道に限られていることから、交通が集中しており、交通渋滞や沿道環境の悪化を招いております。一日でも早く本路線の整備が必要であり、私は、議会を初め、あらゆる機会を通じて要望してまいりました。
 このような状況を改善するために、東京都では、踏切により交通のボトルネックとなっている西武拝島線との交差箇所付近において、小平三・三・八号府中所沢線の整備と、これに合わせた鉄道の立体交差化を進めています。
 この区間のうち、西武拝島線南側の小川駅付近では、最近、道路が拡幅されました。拡幅される前は、歩道と車道ともに狭く、絶え間なくすれ違う車の中で、地元の方々は安全に安心して通行できる状況ではありませんでした。今では、歩道も広くなり、安全性や快適性が飛躍的に向上し、地元の方々は大変喜んでおります。
 また、西武拝島線の立体交差化についても、高架構造物が日に日に建ち上がり、地元の方々は、いつ踏切がなくなるかと心待ちにしております。一日も早く鉄道が立体化されるとともに、鉄道と交差する小平三・三・八号線が完成し、交通渋滞の解消や地域の安全性が向上されることを待ち望んでおります。
 そこで、小平三・三・八号府中所沢線について、西武拝島線と交差する事業中箇所の進捗状況と今後の取り組みについて伺います。
 整備が進むこの区間のほかにも、小平三・三・八号府中所沢線は、五日市街道から青梅街道までの区間が現道もなく、いまだ整備がされておりません。この区間は、平成二十二年二月、都市計画変更素案説明会が開催され、現在、都市計画変更手続と環境影響評価手続が進められていると聞いております。
 引き続き、早期に着手されるよう全力で取り組んでいかれることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 高橋信博議員の一般質問にお答えいたします。
 東京の緑を豊かにしていく取り組みについてでありますが、大都市における緑の存在は、景観など都市のたたずまいを大きく左右しまして、風格のあるまちを醸成するためには豊かな緑が不可欠であります。
 江戸から引き継がれた皇居の森や、名所として庶民に親しまれた上野の山や、あるいは飛鳥山など、歴史と文化に裏打ちされた東京の緑は近代的なまち並みと融合し、都市としての魅力を高めております。
 今では都心の豊穣な緑である明治神宮の森も、先人たちが木を持ち寄って植林し、百年の時を経て今の森となるまでにはぐくまれたものであるように、後世に伝え得る新しい美しい緑を創出するためには、長い時間と多くの志が必要であると思います。
 多くの都民の参画や企業の協力を得て、皇居に匹敵する広さの海の森の整備などを進め、世界に誇れる緑豊かな都市東京を創出し、次代へ引き継いでいきたいと思っております。
 他の質問については、教育長、技監及び建設局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中学生東京駅伝大会の意義と今年度の開催についてでございます。
 中学生東京駅伝大会は、中学生がより高い記録や大きな目標に挑戦することを通して、健康を増進し、基礎体力を向上することを目的としており、東京の子どもの体力向上に都民の関心を向けるムーブメントとして極めて有意義な大会でございます。
 さらに、学校や部活動の垣根を超えて選手が選抜される過程を通して、中学生に夢や希望をはぐくむこと、区市町村単位のチーム編成により地域への郷土愛やふるさと意識が醸成されることなど、こういったことにも十分な効果が期待できるものでございます。
 第二回中学生東京駅伝大会は、スポーツ祭東京二○一三のメーン会場となります味の素スタジアムにおいて、本年三月二十一日に開催されます。競技は、男子は四十二・一九五キロメートルを十七人で、女子は三十キロメートルを十六人でたすきをつなぎ、平成二十一年度同様、合計五十一の区市町村の参加を得て、区市町村対抗形式において実施されます。
 次に、都立高校における競技力向上についてでございます。
 スポーツを志す生徒にとって、全国大会に出場することは夢であり、目標でございます。都立駒場高校サッカー部のように全国大会に出場している都立高校もございますが、さらに多くの都立高校が全国大会に出場できるよう競技力を高めていくことは、都民や中学生の期待するところでございます。
 これまで都教育委員会は、スポーツ祭東京二○一三開催に向けて高校生の強化練習会を開催するとともに、ボートやセーリングなどマイナー種目の育成強化を図るために、都立高校に国体強化部活動候補を指定し、競技力向上に努めてまいりました。
 今後は、平成二十六年のインターハイ開催や、その後も見据えて、都立高校のスポーツを一層隆盛させ、スポーツの名門校づくりを推進していくために、平成二十三年度から都立高校にスポーツの強化拠点を定め、より一層の競技力向上に努めてまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、農の風景育成地区についてでございますが、都市内の農地には、現行制度上、農地の規模が小さいため、生産緑地の指定ができず、保全が困難となっているものがございます。
 都は、都市内に幾つかの小さな農地が近接している場合、それらを一体の都市計画緑地などに指定することにより農地を保全するとともに、地域の景観を維持する農の風景育成地区制度の創設に取り組んでおります。
 先月末には、市民農園としての利用はもとより、災害時の避難や、食への理解を深める場としての活用など、都市農地の保全策について農業団体と意見交換を行っております。
 引き続き、関係局や区市と連携して制度の構築に取り組むとともに、具体的な地区指定に向けた調整を進め、来年度には新たな制度を活用した農のある風景の保全、育成を推進してまいります。
 次に、ビジネス航空の受け入れの必要性についてでございますが、ビジネス航空は、欧米はもとより、近年は中東やアジアにおいても急速に利用が拡大しております。
 我が国においては、世界有数の大企業が集積する首都圏に海外からの乗り入れ要望が強いものの、羽田、成田両空港での受け入れ体制が立ちおくれておりまして、乗り入れは極めて限定的なものとなっております。
 例えば、ある世界的な企業が東京での国際会議を開催しようとしたところ、ビジネス航空の乗り入れができなかったために、他国での開催に変更した事例もあるとのことでございます。
 このままの状態が続けば、貴重なビジネスチャンスを他国に奪われることになり、東京、ひいては我が国の国際的なビジネス活動における地位が大きく低下しかねません。このため、都は、昨年十一月に、首都圏におけるビジネス航空の受け入れ体制強化に向けた取り組み方針を策定いたしました。
 最後に、この取り組み方針を公表した後の取り組み状況等についてでございますが、都は、この方針を公表して国に提案したところ、国土交通大臣から、課題の解決に向けて関係者と検討を行っていく旨の発言がございました。
 国はその後、委員会を設立し、首都圏におけるビジネス航空の受け入れ推進に向けた検討を始めており、成田空港における専用の施設整備の動きも出てきております。
 また、都は、出入国などの所管省庁にこの方針を説明し、協力を求めるとともに、経済団体とも意見交換を行っており、この中で羽田への乗り入れ要望が強いことなど、都の考え方に賛同する意見が出されております。
 こうした経済団体の意向などを踏まえ、首都圏におけるビジネス航空の受け入れ体制の整備を早急に図っていくことが重要であります。
 そこで、成田空港の活用のほか、羽田空港において、都心に至近で二十四時間利用可能な羽田の特徴を生かすため、国際線ターミナルの拡張などに合わせたビジネス航空のための施設整備を国に求めてまいります。
 また、何より横田基地において、平時は余裕のある滑走路などを活用して受け入れを進めることを国に強く働きかけてまいります。
 今後とも、我が国の経済の活性化や国際競争力の強化に向け、羽田、横田におけるビジネス航空の受け入れ体制の強化に取り組んでまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 小平三・三・八号府中所沢線の整備についてでございますが、府中所沢線は、多摩地域の自立性を高め、地域の活性化などに寄与する南北方向の重要な骨格幹線道路でございます。
 このうち、小平市内の西武線小川駅前から東村山市境までの延長九百メートルの区間では、平成十六年度から事業に着手し、踏切を除却するため、西武拝島線を高架化するとともに、道路の拡幅整備を行っており、平成二十一年度には踏切の南側五百メートルが完成しております。
 また、西武拝島線については、今月二十七日に下り線を高架化し、踏切の遮断時間が約五割減少することで交通渋滞の緩和が図られます。
 引き続き、地元の理解と協力を得ながら、早期完成に向け、西武拝島線の上り線高架化を進めるとともに、残る四百メートルの区間の道路整備を積極的に推進してまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 百二十五番馬場裕子さん。
   〔百二十五番馬場裕子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇百二十五番(馬場裕子君) 東京の交通施策、人と物の移動権の保障を伴う成熟した都市の総合交通システム構築について伺ってまいります。
 東京は、大都市として、鉄道、バス、タクシー、船舶、航空機、自動車、自転車など、あらゆる交通手段を持ち、それらの適切な組み合わせ、ベストミックスにより、世界との交流、国際競争の激化に対する経済対策としても積極的に取り組んでこられました。
 今後の課題は、交通社会資本を活用し、人と物の移動権の保障や、環境に配慮した総合的な都民目線の交通体系を再構築することと考えます。人と物の移動は経済社会の基盤をなすものです。
 都議会民主党は、さまざまな交通関係者から多くの要請を受け、交通問題は全庁を挙げて取り組むべき基本政策ととらえ、交通施策窓口一本化を図るべきと求めてまいりました。
 知事就任十二年を経て、東京の今後の総合交通施策の展開について、知事のご所見を伺います。
 東京は今に生きているまちとして、観光客の対象は名所、旧跡だけでなく、秋葉原や築地など多岐にわたります。また、短時間の滞在、仕事の合間などで食べ物の豊富さを味わっていただく、おもてなしのグルメ東京も自慢です。
 しかし、こうした観光客の交通手段に関係者は苦慮しております。東京駅など主要駅でさえ観光バスの乗降場所がなく、地方からのバスが休める場所がありません。
 羽田のトランジットで大田区の銭湯や食事どころを紹介しても、バスがとめられません。羽田から都心への直接乗り入れだけでなく、地域を楽しんでいただける交通インフラ整備が求められております。
 風の道、水と緑の回廊の形成も重要なまちづくりの要素です。東京は海に面し、多摩の森林地帯まで細長く東西に開かれた地形です。多くの河川利用と河口地域の都市化、加えて海岸地域の埋め立てで運河ができ、大都市東京がつくられました。
 しかし、急激な都市化のため、河川は下水道施設化し、かつての川の交通、舟運の利用は限られ、高速道路に太陽を奪われています。余りにも無残な日本橋では、地元から日本橋再生の取り組みが始まっています。
 水の道を取り戻すには、河川や運河に放流される雨水処理水を減らしていかなければなりません。建設局の雨水調節池及び下水道局の雨水貯留池や貯留管などの設置で安全な水の道をつくり、隅田川ルネサンス事業など、河川敷地や桟橋の設置促進を要望しておきます。
 東京周辺においては、国や都などが東京都市圏交通計画協議会を組織し、人や物の動きを広域的に把握するため、パーソントリップ調査や物資流動調査を実施しています。最近十年の鉄道と道路の整備は目覚ましく、両調査とも十年に一度の頻度では、東京の変化に間に合わないのではないかと心配します。
 これらの調査結果や収集データは、東京の交通政策ににどう生かされているのか伺います。
 自治体は地域交通の基盤整備が役割とされ、自転車、二輪車、貨物トラックなど、駐車対策として地域の整備を進めていますが、多額の予算を要し、対策が進みません。地域としても、通過車と駐車したい車とで要望が違います。利用者の利益が相反する中、地域利用特性に合わせたまちづくりが求められています。
 観光や交通過疎地域の買い物難民対策など、目的はさまざまですが、自治体独自のバスの運行がふえています。
 一方で利用者が減少し、利益の見込めない公共交通を維持できるのかなど、道路を中心に生活者の視点でまちづくりを再構築するため、東京都全体から各自治体の課題と連携を検討する場や、公共交通事業者との協議の場を持ち、交通関連情報の提供や共有で実情に合った施策が実行できるようにすべきと考えます。東京の地域交通施策にかかわる都の取り組みについて伺います。
 地下鉄一元化の協議が持たれました。今回の指摘点については、施行当初から、事業者に理由があり、料金が高くても乗りかえが不便でも仕方のないことと、都民、利用者のだれもが思ってきたことです。
 今回の協議会で可能となったことが、なぜ計画段階で検討されてこなかったのかが問題なのです。なぜ運賃が高いのか、なぜそこに駅ができたのか、乗り継ぎの利便性はなぜ尊重されなかったのか。それは事業者側の理由が優先され、許認可行政のもと、利用者の移動権が認識されていなかったからです。
 交通網は地下鉄と民間鉄道への接続が進み、長距離通勤が可能となりましたが、反面、職住接近もふえて、バスや自転車、二輪車への乗りかえでは駐車場の問題が起こり、自治体を悩ませてきました。
 物の移動も在宅で配送されることで、買い物難民だけでなく、消費者、都民の生活に重要な役割となっています。
 人や物が目的のために移動するための道路は、とめると走るの繰り返しです。移動手段はとめるところが目的地でございます。利用者目線に立った交通結節点における公共交通の乗りかえ利便性の向上など、移動の円滑化を図るための具体的な取り組み状況について伺います。
 物流や防災の視点で主要幹線道路の整備は必要です。東京も高齢社会となり、生活者の視点から見れば、脆弱な生活道路である地域細街路の整備も急がれます。
 だれの家の前にも必ず道路があります。私たち人間は集団で生活し、移動手段として道路をつくってきた歴史があります。
 今、国においても、交通基本法制定に向けて検討中ですが、東京こそ、一日も早く、人と物の移動の権利を保障することを基本理念とする交通基本条例を制定することにより、発展した各種交通手段の最適な組み合わせ、環境を中核とする交通革新の実現が可能となります。
 東京の交通施策は東京が考えるべきです。東京都交通基本条例の制定に向けて取り組むことを強く要望し、次の質問に移ります。
 東京食肉市場の環境整備と生体確保について伺います。
 宮崎県で発生した口蹄疫は、殺処分した牛、豚の頭数が二十九万頭といわれ、その影響は全国に及んでいます。まだ全国各地で口蹄疫感染の疑いで牛の検査が行われています。
 また、BSEは、二○一三年一月に安全宣言が出されるといわれています。これにより、解体や検査方法、臓器の取り扱いの変更が取りざたされております。
 昨年の十月、東京食肉市場で発生した豚コレラ擬陽性は、検査の結果、陰性でしたが、世界的な規模で伝染病が発生している状況の中で、十分な認識を持ち、対応に当たっていただかなければなりません。
 東京食肉市場における危機管理の取り組みについて伺います。
 昨年のと畜頭数は、一日当たり平均、牛三百九十三頭、豚七百五頭でした。近年、特に豚のと畜の減少が著しく、生産地での地産地消の加速や長距離搬送に係るコストの増大などの理由が挙げられますが、何より生体の安定した集荷対策について、またあわせて、食肉市場として都民の食の安全・安心にこたえるため、施設整備や環境整備について都の取り組みを伺います。
 次に、教員のメンタルヘルス対策について伺います。
 全国の教育現場で非正規教員の増加と課題が提起されています。教育の多様化に対応するため、二○○一年、国庫負担法の改正があり、非正規教員はふえ続けています。
 都での非正規職員は、時間講師として約四千五百人で、非正規職員は、短期勤務でも学校教育や学校運営を補完するものとして大切な役割を果たされていますが、常勤でなければクラス担任はできず、結果、管理職への負担が増し、教員の多忙化は解消されません。時間講師がふえる原因が教職員の病気などの増加であるなら、その原因である、病気で休む教職員を減らすことが必要です。
 そこで、教職員の病気の中でも、近年、大きな割合を占め続けているメンタル面での病気に対する対応について伺います。
 今、学校では、新学習指導要領で授業時間の捻出など、校長等管理職、教員全体が多忙感を強めています。病気休職者数も、この十年で二倍となり、うち精神疾患は二○○九年度で全国ワーストスリーの六八・五%になっています。なぜこうした状況になるのか。追い詰められる原因は何か。ストレスの原因を探り、解消することが求められています。
 教員が子どもと向き合う時間を確保し、質の高い教育活動の展開を図ることを目的に、組織的な学校運営、専門的な役割を担う教職員の配置、業務の遂行方法の改善、教職員の働き方の見直し、教育委員会の学校サポート体制の整備などの研究課題について、文科省から調査委託がありました。この教員勤務実態調査に、都教委は業務処理調査研究事業を実施し、校務運営の仕組みと方法を提示することとしています。
 また、学校現場は労働安全衛生法の適用外と誤解され、長時間勤務が恒常化する一因となってきましたが、二○○八年の法改正により、すべての学校において超過勤務時間の把握と医師の面接指導が義務づけられております。こうした学校運営面からの対策の早期実現を望むものです。
 都教育委員会は、健康診断にあわせ、二十二年八月から十一月にストレス検査の試行を実施し、今後、都内公立学校の全教職員を対象としたストレス検査の実施を予算化しています。多くの教師は、何かしらの心身の異常を感じても、ぎりぎりまで教壇に立とうとする強い教師としての自覚を持っていると管理職から伺っております。
 二十二年度に実施したストレス検査の試行実施結果はどのようなものか、また、試行を踏まえて、どのように実施していくのか伺います。
 次に、女性の教育管理職任用と女性教員の労働環境の確保について伺います。
 公務労働の中でも、医療、介護分野に続き、働く女性が多いのが学校関係現場です。
 男女共通の調査ですが、国民教育文化総合研究所の教職員労働国際比較研究委員会報告によると、一人当たりの平均在校時間は、フィンランド七時間に比べ、日本は十一時間を超えるという突出した勤務実態です。土曜授業が復活し、特に管理職は、地域の行事への参加や生徒の家庭生活支援など、多忙をきわめています。
 管理職のなり手がいない状況が続いています。特に教員の半数を占める女性教諭が能力を生かして働ける職場こそが、男女平等教育が実践される場として教育現場にふさわしいと考えます。
 女性管理職任用状況と教育現場におけるワークライフバランスへの取り組みについて伺います。
 多様な教育を担う定時制高校の位置づけについて伺います。
 今、受験シーズン真っただ中にあります。まず、推薦入試があり、次に一般一次、二次、三次と続き、昨年は最終定時制高校の三百人追加募集という措置があって、入学決定が四月までかかりました。
 平成二十三年度都立高校入試は、昨年を若干下回る倍率だということですが、都立高校人気は依然として高いといえます。進路希望のとおり入学できない生徒の無念さを思うと、昨年の轍を踏んではなりません。
 多くの生徒は全日制高校への進学を希望していると思いますが、チャレンジスクール、エンカレッジスクールは倍率が非常に高い状況が続いています。
 国の高校無償化は在学する高校生にしか対象になりません。学びの場を求める生徒を一人でも多く受け入れ、社会への自立を支援するため、夜間定時制高校の役割は大きいものがあります。普通高校で受け入れが難しい生徒が通う場として、これから学びの場の生徒の支援をしていかなければならないと考えております。
 都教育委員会として、都立定時制高校の募集枠をきちんと確保し、その教育の充実に努めていただきたいと考えます。ご所見を伺い、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 馬場裕子議員の一般質問にお答えします。
 東京の総合交通施策についてでありますが、首都東京における空港や道路、鉄道などの交通インフラを整備充実することは、都市の機能や利便性を向上させるだけでなく、日本のさらなる発展のために不可欠であります。
 国際競争力の強化に欠かせない空のアクセス、羽田空港の再拡張が昨年十月に実現しました。これは私と、当時、自民党の政調会長だった亀井静香が二人で強引といいますか、ほとんど国交省を脅迫して調査費をつけさせました。それで発足したんですが、業界の工法に関する談合がなければ、もうちょっと早く完成したと思いますけれども、いずれにしろ、国際定期便がようやく就航することになりました。今後は、羽田の国際線の発着枠のさらなる拡充と滑走路の延伸を進めるとともに、横田基地の軍民共用化の早期実現など、首都圏における空港の一層の機能強化を国に求めてまいります。
 問題は、地上のアクセス、環状線でありまして、世界の大都市に比べ、首都圏の環状道路の整備率は五○%に満たず、非常に低い。これも共産党、社会党が強烈に支持した美濃部都知事の残したあしき遺産でありますが、東京の最大の弱点であります交通渋滞を解決するためにも、外環道を初めとした三環状道路の整備に全力を注いでまいります。
 東京の鉄道網は、世界に類を見ない、高密度で正確、安全な公共交通となっておりますが、地下鉄を一層便利なものとするために、都営地下鉄と東京メトロ相互の乗り継ぎや、運賃面での利便性の向上に取り組んでまいります。
 今後とも、こうしたさまざまな施策を重層的、複合的に展開して、東京を快適で利便性の高い都市としていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長、技監及び市場長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、ストレス検査についてでございます。
 うつ病など精神疾患は、本人の自覚がないままに放置しておくと重篤化することが多いことから、早期に心の病の自覚を促すストレス検査は極めて重要なメンタルヘルス対策でございます。
 今年度は、試行としてストレス検査を一区二市の小中学校及び都立学校の一部、計約四千七百人に対して定期健康診断にあわせて行い、参加者一人一人に対して丁寧な説明をすることにより、円滑に実施することができました。
 来年度は、試行結果を踏まえて、全公立学校教職員を対象にした本格実施を計画しており、既に各区市町村教育委員会教育長や校長等に対しまして、ストレス検査の結果は本人のみに通知することなど、その実施内容を説明し、理解と協力を求めているところでございます。
 今後は、個々の教員に対しても、メンタルヘルスやストレス検査の重要性等について周知を図り、積極的な相談や受診に結びつけてまいります。
 次に、女性の管理職任用についてでございます。
 平成二十二年度の文部科学省の調査によれば、都における女性の教育管理職の割合は一七・八%であり、全国平均の一四・七%を上回っておりますが、都の女性教員の管理職選考の受験率は、男性教員と比べると低くなっております。これは、管理職の職務と家事や子育てとの両立が難しいとして、管理職選考を敬遠する傾向があることなどによると考えられます。
 女性教員の受験を促していくためには、仕事と私生活の両立を図ることのできる環境を整備していく必要があり、昨年七月には、これまでの育児時間や部分休業などに加え、新たに短期の介護休暇を設けたほか、子どもの看護休暇の拡充などを図ったところでございます。
 今後とも、女性教員が働きやすく、また、管理職を目指しやすい環境を整備するとともに、管理職候補者の計画的な育成に努めてまいります。
 次に、都立定時制高校の募集枠についてでございます。
 平成二十二年度都立高校入学者選抜においては、夜間定時制第二次募集で一千二百三十人の募集を行ったところ、一千四百八十三人が受検いたしました。この二次募集校の中には、受検者が定員に満たない学校もありましたが、全体では三百十三人の不合格者が出ましたために、定時制の追加募集を行いました。
 平成二十三年度においては、平成二十二年度末の都内公立中学校卒業予定者の動向等を踏まえまして、学ぶ意欲と熱意のある生徒を一人でも多く受け入れることができるよう、全日制において、従来の受け入れ数を上回る募集枠を設定したところでございます。
 また、夜間定時制への進学を第一希望としている生徒につきましては、昨日発表した平成二十三年度第一次募集において、募集人員が二千五百二十人のところ、応募者数は一千五百六十六人で、応募倍率が約○・六倍となっておりまして、受け入れ枠は十分に確保できていると考えているところでございます。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、パーソントリップ調査などの活用についてでございますが、東京都市圏においては、国や都、近隣県、政令市などが協力して東京都市圏交通計画協議会を組織し、パーソントリップ調査や物資流動調査を十年ごとに実施しております。
 パーソントリップ調査は、人の動きに着目し、出発地や到着地、目的、交通手段などを調べることにより圏域における交通の実態を把握するために実施しております。
 また、物資流動調査は、物資の品目や輸送量、輸送手段などを調べることにより、圏域における物の流れを把握するために実施しております。
 これらは、将来の交通量や旅客需要、物流施設需要などの推計に必要不可欠なものでございまして、区部や多摩地域における都市計画道路の整備方針、鉄道新線の収支予測、総合物流ビジョンなどの策定に活用しております。
 次に、地域交通施策に係る都の取り組みについてでございますが、地域の公共交通については、地域ごとのニーズに対してきめ細かくこたえる必要があることから、区市町村が公共交通事業者などの関係者と緊密な連携を図りながら、主体的に取り組むことが重要であります。
 現在、都内では既に十一の区市町村で、地元自治体や交通事業者、道路管理者、交通管理者等で構成される地域公共交通活性化協議会などが設置されておりまして、コミュニティバスの導入などの地域交通の課題に対し、連携して取り組んでおります。
 都は、こうした協議会に参加するなど、地域の取り組みに対して広域的、専門的な立場から必要な助言や情報提供を行っており、引き続き技術的な支援を行ってまいります。
 最後に、交通結節点における乗りかえ利便性の向上についてでございますが、公共交通の利用者が快適に移動できるようにするためには、鉄道の乗りかえを不要とする相互直通運転の拡大を図るとともに、駅における交通機関相互の乗り継ぎを改善することが重要であります。
 相互直通運転につきましては、現在、渋谷駅において副都心線と東急東横線の間でその実現に向けた整備が進められております。乗り継ぎの改善については、都営地下鉄と東京メトロの間でこれまでサインの共通化や乗り継ぎ割引の設定などが行われておりますが、乗りかえ面や運賃面での一層の利便性の向上に取り組んでまいります。
 また、駅における鉄道とバス等との乗り継ぎの円滑化を図るため、例えば新小岩駅や拝島駅などで自由通路や駅前広場の整備を進めております。さらに、こうした整備に合わせて、すべての人に使いやすい施設となるよう駅のバリアフリー化も進めております。
 今後とも、鉄道事業者や地元自治体などと連携を図りながら、利用者の移動の円滑化に向け取り組んでまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

〇中央卸売市場長(岡田至君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、食肉市場における家畜伝染病発生時等の危機管理についてです。
 中央卸売市場では、国の防疫指針等に基づきまして、関係機関と連携して被害を最小限に食いとめることを基本に対策を実施することとしております。産地で伝染病等が発生した場合には、市場業者と連携し、入荷するすべての家畜の健康状態の確認、入荷車両の消毒などを実施しております。
 万が一、食肉市場内で感染が発見された場合は、関係局と対策本部を立ち上げるとともに、当該家畜を隔離し、場内の速やかな消毒等を実施するなど、感染防止のための必要な措置を講ずることとしております。
 さらに、平常時におきましては、毎年、伝染病発生を想定した危機管理訓練を市場業者とともに食肉市場全体で実施しております。都は、今後とも食肉市場の危機管理に万全を期してまいります。
 次に、食肉市場における豚の集荷対策などについてです。
 産地と畜の普及や輸送コストの面から、生産者は東京への出荷を敬遠する傾向にございまして、豚の出荷は年々減少してございます。
 集荷は、一義的には卸売業者の責務ではありますが、都といたしましても、都と卸売業者でございます東京食肉市場株式会社とで構成いたしますプロジェクトチームで対策を検討し、同社に集荷に努めるよう指導してまいりました。
 これを受けて、現在、同社では、出荷奨励金制度の改善など具体的な対策に取り組んでおります。また、都は、食の安全・安心の確保や集荷を促進する観点から、これまでもBSE対策工事や市場棟衛生対策工事など、市場施設の計画的な整備に努めてまいりました。
 今後とも、市場業者とも協議しながら、必要な施設整備に取り組み、食肉市場の機能強化を図り、食肉の安定供給や食の安全・安心の期待にこたえてまいります。

議長(和田宗春君) 三十九番松葉多美子さん。
   〔三十九番松葉多美子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十九番(松葉多美子君) 初めに、認知症対策について伺います。
 知事の施政方針にもありましたとおり、東京でも四年後には高齢者人口が三百万人に達し、七十五歳以上の単独世帯も四十万人を超え、超高齢化の波は社会全体に広く及んでおります。
 要介護高齢者や認知症高齢者が増加する中、在宅介護の家族負担も限界に近づき、高齢者単身世帯などを地域で見守り支援する必要性も高まっております。高齢者が安心して暮らせるための社会構築に向けて、今こそ大きく一歩踏み出す必要があると考えますが、超高齢社会を迎えようとしている首都東京の知事の所見を伺います。
 超高齢社会において特に深刻な課題は、認知症高齢者の急速な増加であります。先日私は、認知症サポーター養成講座に参加いたしました。ご存じのとおり、認知症サポーターとは、認知症を理解し、認知症の人や家族を見守る方たちのことです。厚生労働省は、平成十七年から十年間で百万人のサポーター養成を目標に掲げておりましたが、既に全国で二百万人を突破、東京都では約十万人のサポーターが誕生しています。
 養成講座の中で参加者が質問をされました。その方は、新年のごあいさつに訪問したご近所のご婦人に、年も押し迫り忙しいですねといわれたとのこと。こういったときには、話を合わせた方がよいのか、それとも、いいえ年が明けましたよと訂正してあげた方がよいのかとの質問でした。
 急速な超高齢化が進む中で、身近な地域に認知症の方がいらっしゃる時代に、どう向き合うべきなのかが切実な課題となっています。認知症高齢者は、高齢化に伴う身体機能の低下に加え、記憶障害など認知機能も低下し、日常生活にさまざまな支障が生じます。そのため、医療機関や介護サービスと地域住民などが連携を密にしてサポートしていくことが不可欠となります。
 しかし、実情は、医療機関とケアマネジャー双方のコミュニケーションが円滑に進んでおらず、地域との連携もまだまだ不十分であるとの指摘もあります。地域の医療、介護の関係者や理解者をコーディネートし、認知症の方を支えるネットワークを張りめぐらしていくことは、高齢者の総合的な生活支援の窓口である地域包括支援センターの重要な役割でもあります。
 地域包括支援センターの認知症対応力の向上を図るためには、認知症の専門の担当者を配置するなど人員体制を強化することが必要であると考えますが、所見を求めます。
 また、認知症サポーターを地域包括支援センターに登録し活動していただくなど、積極的な活用策も必要です。認知症サポーターの充実と活躍の場の拡大に努めていくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、認知症の予防法や治療法の確立も急務であります。
 アルツハイマー病が初めて報告されてから百年が経過し、世界じゅうで競って治療薬開発の努力が行われているにもかかわらず、いまだ認知症を根本的に治療する薬は存在せず、辛うじて症状の進行をおくらせる作用のある薬があるのみです。一刻も早い予防法や治療法の開発が求められております。
 本年四月には、神経科学総合研究所、精神医学総合研究所、臨床医学総合研究所の三つの研究所が統合され、新たに東京都医学総合研究所が開設されます。先日、私は視察をさせていただき、現在都が取り組んでいる基礎的な医学研究の成果と状況をお伺いしました。
 認知症対策の特別研究として、アルツハイマー病に対するワクチン療法の実用化に向けた研究や、認知症の原因となる異常たんぱく質を標的とした治療薬の研究開発などがそれぞれ着実に進められており、一刻も早い具体的な成果としての還元が望まれます。
 現在の認知症予防や治療薬の研究開発の状況と、新たな医学総合研究所の整備による効果について所見を求めます。
 次に、女性の健康について伺います。
 女性の健康を脅かす代表的な疾患に、女性特有のがんである子宮頸がんがあります。子宮頸がんについては、これまで幾度となく取り上げてまいりましたが、このがんは、ワクチン接種と定期検診で予防可能ながんであるとされております。
 これまで都議会公明党が、子宮頸がんの予防ワクチンに対する公費助成を主張し、その結果として、都では平成二十二年度から、ワクチン接種の公費助成を行う区市町村に対して、包括補助による支援を開始しました。
 国も今年度途中から支援を開始し、その結果、平成二十三年度からは、都内のほとんどの区市町村で公費助成が実施される見込みとなりました。このワクチンは、既に百カ国以上で認可され接種が進んでいましたが、我が国ではようやく一昨年の十月に認可され、十二月から国内での接種が可能になりました。
 一方で、子宮頸がん予防ワクチンには、効果がない、危険な副反応があると都民の不安をかき立てている例がインターネット上などで散見されています。このことで、ワクチンを受けようとする子どもと保護者が不安を感じるようなことがあってはなりません。都民が安心して接種を受けられるよう、安全性や有効性についての正しい情報を広く啓発していくべきであります。ワクチンの安全性に対する都の見解を求めます。
 また、子宮頸がんについては、普及啓発が重要です。ワクチンの公費助成対象者は、基本的には女子中学生であります。この年代は多感な年ごろでもあり、ワクチン接種や検診の必要性など、子宮頸がんに関する正しい知識を得ることで、成人後の検診受診に結びつくことも期待されます。中学生や保護者に対して、子宮頸がんの予防ワクチンや検診の重要性が理解されるよう、強力に働きかけるべきと考えます。所見を求めます。
 次に、女性の健康週間についてです。
 女性の健康を総合的に支援することを目的に実施されている女性の健康週間も、ことしで四年目を迎えます。これまで都でも、この週間に合わせて子宮頸がんの普及啓発を行い、その効果も着実に出ているものと思いますが、さらに積極的に取り組むべきと考えます。所見を求めます。
 次に、都立総合芸術高校について伺います。
 私は、平成十七年の第四回定例会の一般質問で、新設される都立総合芸術高校に、舞踊を学ぶ舞台表現科を設置すべきと提案させていただきました。その都立総合芸術高校が開校し、間もなく一年を迎えます。
 私は先日、授業の様子を拝見いたしましたが、クラシックバレエの授業では、現役のバレリーナによる厳しい指導が行われ、生徒も真剣にレッスンに励んでいました。
 日本舞踊の授業では、整然とした礼儀作法によるあいさつを生徒がしっかりと身につけており、凜とした舞踊を拝見し、とても感激しました。
 昨年十月に、同校を訪問したドイツの芸術高校の校長や教師の代表から成る芸術教育視察団の前で、生徒代表が創作ダンスを披露したところ、心が揺さぶられるダンスでした、ぜひドイツを訪問し交流してほしいと、視察団の団長より要望があったと伺いました。創作ダンスを踊った生徒は、この経験を通し、ダンスは言葉の壁を持たないという新たな魅力を見つけることができました、今回、貴重な経験の機会を設けてくださったことを心から感謝していますと感想を語っていました。
 今後、こうした世界の芸術高校等との交流を積極的に進めていくべきと思いますが、都教育委員会の所見を求めます。
 加えて、こうした多様で充実した授業による総合芸術高校舞台表現科のこの一年の成果と今後の展開について伺います。
 次に、中学校におけるダンスの必修化について質問します。
 既に、中学校や高校においてはダンスの学習が行われておりますが、選択履修にとどまっております。ダンスでは、身体表現や踊りにより、仲間とのコミュニケーションを豊かにすることができます。また、気持ちを込めて踊ったり、イメージをとらえて自分を表現したりしながら、楽しさや喜びが生まれていくところに、他のスポーツとの大きな違いがあります。
 このダンスの学習が、このたびの中学校学習指導要領の改訂により必修化されたことは、大変に喜ばしいことと受けとめています。中学校でダンスが必修化となった経緯と、都教育委員会の取り組みについて伺います。
 また、より質の高いダンスの授業を展開していくためには、専門家を招くなど、教員と外部指導員とのチームティーチングのあり方等を研究し、その成果を各中学校に普及していくことが大切ではないかと考えますが、あわせて見解を求めます。
 最後に、善福寺川の整備事業について質問します。
 私の地元杉並区では、平成十七年の集中豪雨による水害を受け、都は直ちに河川激甚災害対策特別緊急事業に着手し、予定どおり二十一年度に完了し、治水安全度が格段に向上したことを高く評価するものであります。しかし、その上流域には未整備区間がいまだに存在するなど、水害の危険性が依然高いといわざるを得ません。
 そこで、善福寺川の整備を推進するとともに、善福寺川調節池の工事に一刻も早く着手すべきであります。都の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 松葉多美子議員の一般質問にお答えいたします。
 高齢者が安心して暮らせるための社会の構築についてでありますが、老いるということは、時間のもたらす必然の結果でありまして、これを避けることはできません。ならば、老いを充実して過ごして、ある日、突然に逝くというのが理想的な老年であるともいわれておりますが、しかし、老いは残酷でもありますね。認知症になれば、妄想や徘回の症状が出たりするなど、それを支える家族の負担は決して小さくありません。(「知事は若い」と呼ぶ者あり)ええ、まあ。(笑声)
 少子高齢化がさらに進めば、家族だけで高齢者の介護を支えることは一層困難になります。今、必要なことは、介護サービスの充実に加え、近隣同士の支え合いの仕組みなど、かつてあった地域のきずなを再生することではないかという気がいたします。
 地域、民間、行政が一体となって、社会全体で高齢者を支え、高齢者が地域の中で安心して生活できる超高齢者社会の都市モデルを東京から創造していきたいと思っておりますが、これはなかなかいうに易しく、また、行うに難しい問題だと思います。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 四点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、総合芸術高校と海外の芸術高校などとの交流についてでございます。
 総合芸術高校が海外の芸術高校などと交流を行うことは、ダンスは言葉の壁を持たないという生徒の言葉にあるように、言語の違いにかかわらず、芸術を通した崇高な価値観の共有や、異文化の芸術に触れることによる視野の拡大などの経験によって、生徒の成長が期待できることから、大変有意義なことと考えております。
 総合芸術高校では、昨年十月のドイツ教育視察団の来校を契機に、生徒の要望も高まり、海外の芸術高校などとの交流の実現に向けて検討を始めたところでございます。都教育委員会としても、総合芸術高校の意向を踏まえ、他の都立高校で行われている姉妹校提携による国際交流の事例を紹介するなど、指導助言を行い、支援してまいります。
 次に、総合芸術高校舞台表現科のこれまでの成果についてでございます。
 総合芸術高校の舞台表現科は、演劇、舞踊、二つの専攻により授業を行っており、演劇専攻の授業では、専門家の指導により、生徒に演じることの意味や演劇を見ることの意義について考えさせ、演劇を多角的に見る目を育てております。
 また、舞踊専攻の授業では、基礎、基本を徹底し、反復練習を行うことで、バレエに求められる繊細な表現や、ダンスに必要な体の正しい使い方などを身につけさせております。
 確かな実技指導のもと、今年度、舞踊専攻の生徒を中心とするダンス部が、メンバーは一年生だけであるにもかかわらず、全日本高校・大学ダンスフェスティバル神戸における審査員賞を受賞し、さらに、全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演に特別参加を果たすなどの成果を既に上げております。
 こうしたことから、都教育委員会では、総合芸術高校において舞台表現科の生徒が、高度な技術、知識の習得とともに、豊かな教養と広い視野を持ち、東京の文化振興を支える人材として一歩一歩着実に育っていると考えております。
 平成二十三年度には新校舎も完成する予定であり、今後さらに多様な芸術教育を展開してまいります。
 次に、ダンスの必修化の経緯と都教育委員会の取り組みについてでございます。
 現行の中学校学習指導要領では、ダンスの領域は、第一学年においては、武道及びダンスのうちから男女とも一領域を選択して履修すること、第二学年及び第三学年においては、球技、武道及びダンスのうちから二領域を選択して履修することとされておりますために、必ずしもすべての生徒がダンスを学習することにはなっておりません。
 平成二十年三月の中学校学習指導要領改訂によりまして、平成二十四年度からは、義務教育段階においては、すべての運動領域を学習することが重要であるとの考え方から、男女を問わず、中学生は武道に加えダンスも必修となり、ダンスの授業では、創作ダンス、フォークダンス、現代的なリズムのダンスの中から一つを必ず学習することとなりました。
 このため、都教育委員会は、新学習指導要領への円滑な移行に向けまして、平成二十二年度には、保健体育科教員を対象としたダンスの実技講習会を開催いたしますとともに、本年三月までにダンス授業の実践事例集を配布して、各学校の授業における活用を通して、教員の指導力向上に努めてまいります。
 次に、教員と外部の専門家とのチームティーチングについてでございます。
 中学校の授業においては、担当する教員が生徒の指導を行うことが基本でございますが、地域のダンスの専門家等の力を活用することは、教員の指導力を向上させ、ダンス授業の内容を充実する上で極めて有効であります。
 都教育委員会は、既に都内の体育大学の研究室やダンスの専門家との連携を図り、教員研修を実施するとともに、平成二十二年度には、外部指導員を活用する武道・ダンスモデル事業を都内十校の中学校において実施し、教員と専門的指導者とのチームティーチングにより、高いレベルの実演、指導法や的確な評価等の実践研究を進めてまいりました。
 今後さらに、大学や専門機関との連携による教員研修の充実に努めるとともに、ダンスの専門的指導者を活用した授業モデルを普及することによりまして、質の高いダンス授業が展開されるよう、中学校を支援してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 六点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、認知症に関する三点についてお答えをいたします。
 最初に、地域包括支援センターにおける認知症対応力の向上についてでございますが、都はこれまで、地域包括支援センターの職員を対象として、認知症についての研修を実施いたしまして、職員が認知症の方や家族の相談等に適切に対応できるよう支援をしてまいりました。
 国は来年度から、認知症の方を地域で支援していく体制を構築するため、認知症地域支援推進員をセンターに配置する事業を開始いたします。都といたしましても、センターの認知症対応力の向上を図るため、区市町村に対しまして、この事業の活用を働きかけますとともに、地域支援推進員が関係機関のコーディネーターの役割を担えるよう、情報交換の場を設けるなど、区市町村の取り組みを支援してまいります。
 次に、認知症サポーターの活用についてでございますが、都はこれまで、地域包括支援センターが見守りなどのボランティア活動に認知症サポーターを活用する取り組みや、家族介護者の会の運営をサポーターが支える取り組みなどに対しまして、区市町村包括補助事業により支援を行ってまいりました。
 今後、こうした先進事例を取りまとめ、区市町村に対し積極的に情報提供を行い、地域におけるサポーターの活躍の場の拡大を働きかけるなど、認知症の方と家族が安心して暮らせる地域づくりをさらに進めてまいります。
 次に、認知症に関する研究開発についてでございますが、現在、神経科学総合研究所では、アルツハイマー病に対して有効で安全性の高い非ウイルス性DNAワクチンの開発に取り組んでおり、既にモデルマウスでの実験を終了し、霊長類による安全性、有効性の確認を進めております。
 また、精神医学総合研究所では、認知症発症の原因として、TDP43というたんぱく質の異常蓄積があることを発見し、この機能異常を組み込んだモデルマウスの作成を進めますとともに、この原因たんぱく質を標的とした治療薬候補物質の選定と検証に取り組んでおります。
 本年四月、神経、精神、臨床医学の三つの研究所を統合いたしまして新たに開設をいたします東京都医学総合研究所では、これまで各研究所がそれぞれ独自に培ってきた研究ノウハウの結集や研究基盤の集約を図り、ワクチン療法の実用化に向けまして、平成二十四年度の臨床治験の開始を目指すなど、認知症の予防、治療に関する研究開発を一層推進してまいります。
 次に、子宮頸がん等に関する三点にお答えをいたします。
 まず、子宮頸がん予防ワクチンについてでございますが、国内における新しい医薬品の製造、販売につきましては、研究開発を行った製薬会社が臨床試験のデータ等を添えて国に承認申請し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構において専門家による審査が行われた後、国の薬事・食品衛生審議会の答申を経て、厚生労働大臣が承認するものでございます。
 子宮頸がん予防ワクチンにつきましても、このような手続を経て製造、販売が承認されたものでございまして、国において有効性、安全性が十分審査されていると認識をいたしております。
 今後、都は、ワクチンの有効性などにつきまして、ホームページを活用するなど、都民への正しい知識の普及に努めてまいります。
 次に、子宮頸がんの普及啓発についてでございますが、子宮頸がんは、ワクチン接種とあわせて検診受診率を向上させることにより、死亡率減少の効果が期待されます。そのため、都は、これまで学校の教職員やがん検診を担当する区市町村職員などを対象として研修を行うなど、ワクチンや検診について正確な情報の提供に努めてまいりました。
 来年度は、新たにワクチン接種対象年齢である中学生とその保護者等を対象とした講演会を開催し、子宮頸がんの検診の重要性やワクチンに関する理解を一層促進してまいります。
 最後に、女性の健康週間に合わせた普及啓発についてでございますが、都は、子宮がんに関する都民の理解を深めるため、女性の健康週間を中心に、若い女性を主な読者層とする無料情報誌に特集記事を掲載するほか、リーフレットの配布、ポスターの掲示、街頭キャンペーン等を実施してまいりました。
 本年三月一日から始まる女性の健康週間におきましても、昨年度に引き続き、ポスター掲示や街頭キャンペーンを行いますとともに、情報誌やリーフレットにワクチンの有効性に関する内容を新たに加えるとともに、都内の大学等で配布をいたします。
 また、東京都提供のテレビ番組も活用しながら、子宮がんに関する正しい知識の普及啓発を図ってまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 善福寺川の整備についてでございますが、善福寺川では、一時間に五○ミリの降雨に対応するため、護岸の整備を基本に進めつつ、調節池を設置するなど、効果的な整備に努めております。これまで護岸整備や調節池の増強などを行い、激特事業の完成により、六年間という短期間で治水安全度を一二ポイント向上させました。
 現在は、杉並区内の熊野橋付近などで護岸や橋梁などの整備を進めております。二十三年度末には、平成十七年に大きな浸水被害を受けた環七通りから済美橋までの一連の区間の整備が完了し、治水安全度は六六%となります。
 今後、済美橋より上流の事業促進を図るため、善福寺川緑地を活用して調節池を設置してまいります。今年度は、基本設計や水理実験を行い、善福寺川調節池本体の形状や構造等の検討を進めており、二十三年度は詳細設計を行い、二十四年度の工事着工を目指します。
 引き続き、都民の命と暮らしを守るため、河川整備に全力で取り組んでまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 四番桜井浩之君。
   〔四番桜井浩之君登壇〕

〇四番(桜井浩之君) 最初に、教育施策について伺います。
 まず、学校の教員の配置についてであります。
 子どもたちに日本の未来を託すことのできる次代を担う力をつける教育を行うためには、学校を支える仕組みとして、教育を担う人材を確保し、必要な人の配置を適切に行っていくことも重要であります。教職員の配置に当たっては、合理的な仕組みをつくるだけでなく、政策のバランスや施策方法についても常に細かい配慮がなされる必要があります。
 国は、昨年十二月に発表した来年度政府予算案で、小学校一年生における三十五人学級の実施を盛り込みました。
 そこで、その内容及び現在の国における状況と都の対応について伺います。
 そして、現在、国の動向はなお不透明であり、私の地元でも、来年度小学校に上がる予定のお子さんを持つ保護者から、四月にはどうなるのかと疑問の声が寄せられているところであります。民主党政権は少人数学級の実現を打ち上げておきながら、政府予算案では、人件費増を理由として、小学校一年生のみ三十五人学級にすることにしたと報道されていることに対して、余りにも無計画、無責任ではないかとする意見を聞いております。
 これに対し、都では国に先んじて、小一問題と中一ギャップに対応するため、今年度から独自に教員の加配を行う制度を導入し成果を上げているところですが、国の動向が不透明な中、都の計画についても今後どうなるのかと不安の声も上がっております。
 そこで、次年度以降の都の計画の展開について改めて伺います。
 次に、中小企業の技術の活用について伺います。
 都内には、ベンチャー技術大賞の受賞企業に見られるように、斬新かつ革新的なアイデアに基づく製品や、他に類を見ない高度な製品を開発した中小企業が数多く存在していますが、販売に苦労し、会社の業績拡大につながらないといった事例も多いと聞いております。
 こうした中、都が東京都トライアル発注認定制度を創設し、各局が中小企業の新規性の高いすぐれた製品を、それぞれの事業で積極的に活用して普及を応援することは、販路の開拓につながるものとして高く評価するものであります。本制度を活用し、中小企業の持つすぐれた製品を、次代を担う若者を育てる教育現場においても活用していくべきと考えますが、教育庁における導入状況について伺います。
 また、教員に対する研修などにおいて、東京都トライアル発注認定制度で認定された製品を活用し、業務改善に役立てている実例があると聞いております。
 そこで、この制度により教育現場で導入している製品の活用実態について伺います。
 今後のものづくりを支える若者に、東京都トライアル認定製品を活用し、革新的ですぐれた製品を生み出した中小企業の魅力を伝えるとともに、将来性のある実践的な技術を身につけさせるための教育を充実させていくことが重要であると考えますが、見解を伺います。
 このようにすぐれた制度である東京都トライアル発注認定制度を各局がより積極的に活用することにより、都内のベンチャー企業等が開発した新規のすぐれた製品の認知度や信頼性が高まり、販路の開拓や受注の拡大につながるものと期待しております。この事業の現在までの進行状況と今後の取り組みについて伺います。
 次に、スポーツ振興について伺います。
 先月開催された卓球の全日本選手権において、小学四年生、十歳の選手が大学生を破り、福原愛選手の持つ最年少勝利記録を更新したことが話題になりました。また、フィギュアスケートにおいても、高校生の村上佳菜子選手が世界を舞台に活躍するなど、スポーツにおいて若い選手の成長が今日、注目を集めているところです。
 私の地元墨田区でも、昨年秋、中学生の軟式野球チームが都大会を勝ち上がって優勝し、全国大会出場の切符を手にしたところであります。日に日にたくましく成長していく子どもたちを目の当たりにし、改めてスポーツの偉大さ、すばらしさを実感したところです。
 このように、スポーツに打ち込み頑張る子どもたちをこれからも積極的に応援していく必要があると考えるわけでありますが、東京の若いアスリートが一層活躍できるようにするため、ジュニア選手の強化が重要と考えますが、知事の所見を伺います。
 また、私は、幾つかの地元スポーツ団体の役員を仰せつかっており、地元の子どもたちがさまざまなスポーツに触れ合う姿に日々接しております。自分の好きなスポーツに取り組む子どもたちの目の輝きは、かけがえのないものであります。真剣にスポーツをする子どもたちは、さらに練習を重ねることにより高いレベルに到達し、二年後に東京で開かれるスポーツ祭二○一三の国体代表選手などとして、地元地域の期待を背負って活躍できるようになってもらいたいと願うわけであります。
 そこで、都は、今後どのような方策によりジュニア選手を強化、育成していくのか、所見を伺います。
 次に、交通政策について伺います。
 最初に、自転車のルール、マナーについてであります。
 平成二十一年七月に東京都道路交通規則が改正されました。同年の第三回定例会において、私は、自転車は道路交通法上、軽車両であると認識させること及び規則の改正点を周知する必要があると質問したところです。
 警視庁では、今日まで積極的な広報啓発をしていただいていると認識いたしておりますが、いまだに交通ルールやマナーを守らない自転車利用が横行しております。さらにルール、マナー向上を目指す必要があると考えますが、警視庁としては今後どのような取り組みを実施していこうと考えているのか、所見を伺います。
 また、東京都道路交通規則の改正後の取り締まり状況について伺います。
 平成二十二年中の指導警告カードの交付数と取り締まり件数はどうなのか、また、規則改正前の平成二十一年中と比較するとどうなのか、そして、今後も悪質な自転車利用者に対しては厳しく取り締まりをすべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、歩行者と自転車が安全で安心して通行できる環境整備について伺います。
 都は、「十年後の東京」計画で自転車走行空間整備を位置づけ、具体的な方針により取り組まれておりますが、実際の整備はまだ始まったばかりといえます。
 そこで、都は、自転車走行空間の整備箇所をどのように選定しているのか伺います。
 また、既設道路において歩行者と自転車の安全を確保するには、それぞれを区分した自転車走行空間を整備する必要があります。既設道路における自転車走行空間整備の課題と対応策について伺います。
 次に、都営地下鉄の混雑対策について伺います。
 都営地下鉄は、大江戸線環状部完成によるネットワーク効果や沿線地域の開発の進展により、乗客数は順調に伸びてきましたが、一方で、大江戸線については、朝ラッシュ時間帯の門前仲町から月島、勝どき方面の混雑が激しい、何とかしてほしいという切実な声を聞いております。
 また、新宿線については、乗り入れを行っている京王電鉄の車両は十両編成ですが、都営の車両については昨年、一部の車両が十両編成になったばかりであり、もっと十両編成をふやして混雑を緩和してほしいという声も聞いております。
 少子高齢化が進む中、今後の乗客数を予測することは難しいのは十分承知しておりますが、大江戸線環状部や新宿線が通っている地域を見ますと、今後、開発や人口の増加が見込まれるエリアであり、このままでは混雑がさらに激しくなってくることはだれの目から見ても明らかです。
 そこで、大江戸線と新宿線の混雑緩和に向けた交通局の今後の取り組みについて、それぞれ伺います。
 次に、京成押上線連続立体交差事業について伺います。
 京成線の押上から八広駅間では、交差する明治通りで慢性的な渋滞が発生し、さらに地域の生活道路の分断が日常生活に大きな障害を招いています。このような状況を解消するため、平成十二年度に連続立体交差事業が始まりました。また、この事業を契機に、地元墨田区と住民が一体となり、まちづくりが大きく進展しております。
 連続立体交差事業もいよいよ工事の進捗が目に見えてきましたが、一方で、事業着手以来十年が経過し、地元住民の方々は期待と不安を抱いており、一日も早い高架化を実現していくことが必要です。
 そこで、京成押上線の押上駅から八広駅間の連続立体交差事業の進捗状況と今後の取り組みについて伺います。
 次に、貯水槽水道の適正管理について伺います。
 水道局では、安全でおいしい水を都民に届けるため、さまざまな取り組みを行っている中、多くの都民から水がおいしくなったという声を聞いております。しかしながら、都民の三割以上が利用する貯水槽水道では、管理が適切に行われていないと、その水道水を安心して飲むことができないという問題点もあるわけです。
 我が党は機会あるごとに貯水槽水道対策について質問し、経営プラン二○一○では、特に水の滞留時間が長い貯水槽や、クリーンアップ貯水槽で協力が得られなかった施設など、約八万六千件を対象に調査し、指導助言することが盛り込まれました。
 この調査を実りあるものにするには、きめ細やかに対応することはもちろん、現場に密着した保健所など衛生行政と連携することが重要であると指摘し、水道局からは、前向きな答弁をいただきました。
 そこでまず、地域の保健所など衛生行政との連携について、その後の取り組み状況を伺います。
 また、貯水槽水道を利用する都民が安全でおいしい水を実感するためには、特に残留塩素のコントロールが重要であります。そこで、保健所との連携に加え、技術面や制度面からも何らかの手だてを講じていくべきと考えます。場合によっては、新たな基準の策定について国に提言していくことも必要となってきます。国を動かすには、残留塩素の消費に関する詳細調査を行い、データや分析結果を示すことが重要であります。
 そこで、今後の貯水槽水道対策について局の所見を伺います。
 都内の各地では、長年の歴史と伝統を持つさまざまな伝統工芸品産業があり、私の地元墨田区でも、江戸ガラス、江戸手書きちょうちんなど、工芸品を生み出す地域として知られております。特に江戸ガラスは、江戸時代の鏡や風鈴などが始まりですが、明治時代になり近代的な海外の技術を取り入れ、さまざまなニーズに対応することで発展を遂げてきました。
 伝統を守りながらも、市場に受け入れられるよう真摯に取り組むことは、すべての製造業に共通するものづくりの基本です。伝統工芸品産業が現代人のライフスタイルやニーズを踏まえ、私たちの生活に一層身近な存在としてさらなる発展を遂げるためには、伝統工芸の次代の担い手が技術を受け継ぐだけでなく、マーケティングなどを含めた販売の知識やノウハウを学ぶことができる支援が重要と考えます。
 都として、伝統工芸品産業の一層の振興に向けて、伝統工芸の後継者を育成するためにどのように取り組みを進めていくのか伺います。
 伝統工芸品を含めた都内のものづくり中小企業が新たな仕事を確保するためには、展示会や見本市に出展し、一つでも多くの商談をまとめることが効果的ですが、そのための経費の負担もままならないとする会社も多いのが実態です。
 都では、中小企業に対し経営診断を行い、販路拡大が必要とされた中小企業に展示会出展等の費用を助成する事業を開始しました。今年度は、我が党の強い要望にこたえ、規模を拡大しております。この事業により仕事の確保を実現した企業は数多いものと考えます。
 都内中小企業が仕事の受注が進まずに苦境に置かれている中、都は展示会出展等の助成を拡充するなどの対応を図るべきと考えますが、所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 桜井浩之議員の一般質問にお答えいたします。
 ジュニア選手の強化についてでありますが、近年、若者が草食化しているといわれまして、世の矛盾に対しても何ら行動を起こさず、ただ、携帯、パソコン、テレビという、いわゆる三つのスクリーンに耽溺している傾向が強いような気がします。
 パソコンも場合によっては必要でありますが、そういうものを通じての交流というのは、私はバーチャルな人間関係、バーチャルな交流でしかないと思います。
 情報に頼り切って、実体験も乏しく、挫折も経験しないようでは、結局、ひ弱な人間にしかならない。こうした若者を見ていますと、この国の将来が非常に心配になってきます。
 スポーツは、まさしくその人間同士の競い合い、ぶつかり合いでありまして、それによって肉体と精神を鍛え、協調性や忍耐力を涵養するなど、豊かな人間形成を促進します。特に他者との厳しい競い合いの中で切磋琢磨する経験は、子どもたちの心身の健全な育成に必ずつながります。
 すぐれたアスリートが大きな舞台で活躍すれば、それを眺める者たちも国家や地域への愛着を呼び覚まされるわけであります。また、ジュニアの選手が活躍することにより、次世代の子どもたちが大きな夢やあこがれを抱いて、それが社会の活力ともなると思います。
 スポーツを通じて他者との相克に挑み、無気力を克服できる若者を育成していくことは、私は今の日本にとっての急務であると思います。東京から数多くの若いすぐれたアスリートを輩出し、スポーツの力で日本を何とか再生していきたいものだと思います。
 他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

〇警視総監(池田克彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、自転車通行ルールの周知及びマナーの向上に向けた取り組みについてであります。
 警視庁におきましては、これまでも、自転車安全利用五則を初めといたしました自転車通行ルールの周知やマナーの向上を図るため、各種メディアや広報媒体を活用した広報啓発、自転車教室や各種の講習会、さまざまなイベント等を利用して、ルール、マナーの周知に努めたほか、街頭での指導取り締まりも行ってまいりました。
 今後も引き続き、小学生に対する基本的な交通ルールの浸透を図る自転車安全教育を初め、中学、高校生のほか、大学生にも、ルール違反でどのような危険が生じるかをスタントマンによる交通事故再現などによる疑似体験ができるスケアードストレート方式を用いた自転車安全教育を自治体と連携して実施するなど、自転車利用の交通安全意識の向上を図ってまいります。
 また、事業主や安全運転管理者などに対して、自転車を利用する社員に対する自転車通行ルールの遵守とマナーの向上に向けた具体的な指導を依頼するなど、自転車通行ルールの周知とマナーの向上を図ってまいる所存でございます。
 次に、自転車利用者に対する取り締まり状況等についてであります。
 平成二十二年中の指導警告カードの交付件数は約二十一万五千件、交通切符を適用した悪質な交通違反の取り締まり件数は約一千四百件でございます。平成二十一年中と比較いたしますと、指導警告カードの交付件数は約五万九千件、交通切符を適用した取り締まり件数は約八百六十件の増加となっております。
 警視庁といたしましては、危険あるいは悪質な利用者に対しては、今後も厳正な取り締まりを推進してまいる所存でございます。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、小中学校の教員の加配についてでございます。
 小学校一年生の三十五人以下学級の実施に必要となる教員数は全国で約四千人と見込まれますが、国はこれを賄うために、既存の少人数指導加配のうち、全国で少人数学級に転用されている千七百人をその一部として充当することといたしました。
 都教育委員会は、従前より少人数指導が極めて有効と考えており、この加配が少人数学級に転用され、定数が削減されますと、少人数指導の実施が一部不可能となるために、国に対して加配定数を削減しないよう、あらゆる機会を通じて申し入れてまいりました。
 しかし、今月十四日に、国は全都道府県に対し一律に少人数指導加配定数の削減を行うことといたしまして、都においては九十六の定数の削減が内示されました。
 都教育委員会としては、今後の国の動きを注視するとともに、少人数指導を実施している小中学校に混乱を生じさせないよう、区市町村の状況を踏まえ、的確な対策を検討してまいります。
 次に、小一問題及び中一ギャップに対する教員加配についてでございます。
 都教育委員会では、小一問題及び中一ギャップに確実に対応し、予防、解決するため、教員の加配を行い、学校の実情に応じて学級規模の縮小や少人数指導、チームティーチングなどの最適策を選択できる制度を今年度から実施しております。平成二十三年度に国が小学校第一学年において三十五人学級編制を実施した場合でも、引き続き、小学校第二学年及び中学校第一学年では、東京都単独の加配措置である小一問題、中一ギャップの予防、解決のための教員加配を継続してまいります。
 今年度においては、小一と中一について教員加配の算定基準を一学級三十九人としたところでありますが、平成二十三年度は、中一について教員加配の算定基準を一学級三十八人として積算するとともに、大多数の学校において進級時の学級編制がえを行っていない小学校二年生については、小学校一年から学年進行させて一学級三十九人の算定基準により新たに加配の対象といたします。
 なお、この加配措置については、平成二十四年度もそれぞれ一人ずつ算定基準を逓減させまして、計画的な展開を進めた上で、事業の総括的な効果検証を行うこととしております。
 都教育委員会では、この方針を堅持しつつ、国における三十五人学級の今後の動向を踏まえ、適切に対応してまいります。
 次に、東京都トライアル発注認定制度を活用した製品の導入状況についてでございます。
 教育内容や教育方法の充実、学校における業務改善を図るため、都教育委員会は、東京都トライアル発注認定制度で認定された新製品を教育現場に積極的に導入しております。平成二十一年度は、東京都全体で購入した十八品目のうち六品目、金額では約五割に相当する認定製品を都立学校等において導入しました。また、平成二十二年度は、購入金額の約六割の認定製品を導入する予定であって、同制度の利用拡大を図っているところであります。
 今後とも、認定製品を教育現場で積極的に活用することにより、教育内容の充実を図るとともに、その性能や安全性等を実証して、販路の拡大に協力してまいります。
 次に、東京都トライアル発注認定製品の活用実態についてでございます。
 学校現場の教育活動や業務改善に役立てている認定製品の活用事例の一つとして、昨年度に導入した動画コンテンツ配信システムというものがございます。この動画コンテンツ配信システムにより、教職員がいつでも必要なときにネットワーク上で映像、音声、資料を活用できる研修環境が実現いたしました。
 また、解説が中心の従来の配布資料やマニュアルでは理解が不十分となりがちであった内容についても、本システムによって映像や音声によるわかりやすい説明が提示可能となり、理解習得の向上が図られました。
 今後とも、認定製品を有効活用することにより、業務改善のほかに教員の指導力向上に取り組み、教育の充実を図ってまいります。
 次に、東京都トライアル発注認定製品を活用した人材育成についてでございます。
 高校生や教職員に中小企業の高い技術に触れさせ、その魅力を体験させることは、東京のものづくり産業を支える人材を育成する上で極めて重要でございます。
 このため、都教育委員会では、昨年度の東京都トライアル発注認定製品のうち、ガスを使用せず金属の切断や溶接、そのほか石こうボードやアクリル板の切断も可能な小型のプラズマ加工機を都立工業高校六校に導入して授業で活用しております。
 高校生は、これから企業現場で普及していくと予想される認定製品の操作技術をいち早く学校で習得することができ、また、新規性の高い、すぐれた製品を開発した東京の中小企業の実力を知り、就業への夢や希望を抱くことができます。
 今後とも、認定製品を積極的に活用するなど、高校生に最新技術に触れさせ、技術、技能の習得を促進し、産業界のニーズにこたえる実践的な技術力を持った人材を育成してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都トライアル発注認定制度についてでありますが、都では、昨年度から本制度により中小企業の新規性の高い製品を認定するとともに、都みずからがその一部を購入し、各局で試験的に導入を行っております。製品を利用した結果について、おおむね高い評価となっており、その内容を都のホームページで公表して認知度や信頼度の向上に役立てております。
 また、認定を受けた事業者のうち七割以上は、製品が広く知られて信用力も高まり、営業活動が円滑に行えるようになったとするなど、本制度により新製品の販路開拓が着実な成果を上げていると考えております。
 今年度は二十五の新製品を認定し、各局での導入に向けまして準備を進めております。制度の効果を高めるため、産業交流展等への出展や紹介パンフレットの配布に継続して取り組むとともに、認定の仕組みを積極的に活用して業績を伸ばした好事例を新たに取りまとめPRすることで制度を周知し、その利用の促進につなげてまいります。
 本制度を活用して、すぐれた新製品の販路開拓が着実に進むよう、中小企業の支援に取り組んでまいります。
 次に、伝統工芸品産業の後継者育成についてでありますが、伝統工芸品は、単に伝統的な技術を守るだけではなく、時代時代のニーズにこたえた革新的な商品やデザインを生み出すことで、長きにわたり産業として継承されてまいりました。最近では、黒を基調とする斬新なデザインの江戸切り子が市場で高く評価されており、こうした商品を生み出す力のある人材の育成が産業の振興を図る上で重要であります。
 このため、都では、来年度から後継者育成支援事業を開始して、伝統工芸分野の若い担い手を対象に、マーケティングを反映した商品開発の方法や販売戦略のつくり方を学ぶ講座を設けることといたしました。また、講座の参加者が交流を深め、情報交換などを行うネットワークづくりを支援したり、習得した知識やノウハウを生かした商品を発表する展示会を開催し、後継者が力を発揮する新たな機会の確保にも取り組んでまいります。
 こうした事業を着実に実施することで、伝統工芸品産業を担う人材を育成してまいります。
 最後に、中小企業の販路開拓支援についてでありますが、厳しい経営環境に置かれた中小企業を支援するため、都は、都内中小企業の経営診断を行うとともに、その結果、販路開拓が必要とされた企業に対して、展示会出展等の助成を行っております。
 今年度は、この経営診断により販路の拡大が課題とされ展示会出展等を希望する企業が当初の想定を上回りましたことから、助成の件数をふやして対応したところであり、おおむね四百の企業を本事業の対象といたしました。来年度もこうした企業が数多く見込まれることから予算額を増額しておりまして、中小企業の販路開拓の支援を的確に展開することで、その経営力強化を実現してまいります。
   〔スポーツ振興局長笠井謙一君登壇〕

〇スポーツ振興局長(笠井謙一君) ジュニア選手の強化方策についてでございますが、都は、平成二十年に策定いたしました東京都競技力向上基本方針・実施計画に基づきまして、競技団体と連携して強化選手の認定や合宿、対外試合を初めとした強化事業の実施など、計画的にジュニア選手の育成に取り組んでまいりました。これにより、強化認定選手の中から昨年のシンガポール・ユースオリンピック大会で優勝する選手もあらわれるなど、着実に成果を上げております。
 今後も競技団体との連携をなお一層密にし、ジュニアアスリートの発掘、育成事業の充実に努めるとともに、トップアスリートのわざを間近で体感できる機会の提供や、地域でジュニアスポーツの普及を図るためのスポーツ教室の開催などの取り組みを推進してまいります。
 これらを通じまして、スポーツ祭東京二○一三を初め、さまざまな大会で活躍できるジュニア選手の育成強化を引き続き図ってまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、自転車走行空間の整備箇所の選定についてでございますが、自転車は近距離の移動にすぐれ、環境への負荷が少ないことから、都市交通の一翼を担っており、通勤、通学や買い物、サイクリングなど、手軽な交通手段として、その利用が広がっております。こうした自転車需要に対応し、車道空間を確保しつつ、歩行者、自転車それぞれの安全・安心を実現する自転車走行空間の計画的な整備が重要でございます。
 都は、整備に当たり、自転車の利用が多く歩行者とのふくそうが見られる区間、観光スポットや集客施設などを結ぶ区間、国道や区市町村道と連携する必要がある区間を対象として、道路構造や利用状況を踏まえ、交通安全や地域の特性の観点から優先して整備する箇所を選定しております。
 次に、既設道路の自転車走行空間整備の課題と対応策についてでございますが、既設道路では、歩行者、自転車、自動車、それぞれの交通需要を踏まえ、限られた道路幅員の中で自転車走行空間を確保することが課題となります。
 現在、浅草通りや東八道路では、植樹帯などによる構造的分離により、また、新大橋通りでは、カラー舗装による視覚的分離により、歩道内での自転車走行空間整備を行っております。さらに、平和橋通りでは、車道の一部に自転車レーンを設置するなど、さまざまな手法で整備を進めております。
 今後とも、自転車走行空間の整備を積極的に推進し、歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して利用できる道路空間を創出してまいります。
 最後に、京成押上線連続立体交差事業についてでございますが、本事業は、押上駅から八広駅間を高架化し、骨格幹線道路である明治通りを含む八カ所の踏切を除却することで、交通渋滞の解消を図るものでございます。
 既に全区間で工事を進めているものの、用地取得が難航したことや、京成押上線と交差する東武亀戸線との異なる鉄道事業者間の近接施工の協議に時間を要したことなどから、来年度には現行の工事工程をおおむね五年程度延伸せざるを得ない状況にございます。
 現在、押上駅から京成曳舟駅付近までの区間では仮線工事を進めており、年内には切りかえを完了させます。また、昨年、仮線への切りかえを終えた京成曳舟駅付近から八広駅までの区間では、高架橋工事を進めております。
 今後、鉄道事業者を強く指導し工程管理を強化していくとともに、地元墨田区と連携し、地域住民の方々の理解と協力を得ながら、全力で本事業の推進に努めてまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

〇交通局長(金子正一郎君) 都営地下鉄の混雑緩和に関する二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、大江戸線につきましては、昨年三月にダイヤ改正を行い、朝ラッシュ時間帯及び夜間における輸送力を強化いたしました。この結果、昨年行った乗客調査では、朝ラッシュ時間帯における門前仲町駅と月島駅間の一時間当たりの平均混雑率は一四五%に改善されております。
 しかし、中央区、江東区など沿線の人口増加に伴い、今後さらに乗客数の増加が予想されることから、一層の混雑対策が必要と認識しております。当面、予備車両を活用した緊急対策として、朝ラッシュ時間帯に、お話のありました門前仲町から月島、勝どき方面への列車を一本増便するダイヤ改正を来月末に実施することとし、また、平成二十四年一月には車両を二編成増備し、混雑緩和を図ってまいります。
 次に、新宿線につきましては、昨年六月に、二十八編成の車両のうち四編成について、八両から十両に増備し、輸送力を強化いたしました。この結果、朝ラッシュ時間帯で最も混雑する区間であります西大島駅と住吉駅間の一時間当たりの平均混雑率は一四七%に改善されております。
 新宿線は、今年度も乗客数が伸びていることから、平成二十五年に予定しております三編成の車両更新に当たっては十両編成とし、輸送力を強化する計画にしております。
 今後とも、乗客数の推移等を勘案しながら、利用者の利便性向上に努めてまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

〇水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、貯水槽水道における衛生行政との連携についてでございますが、貯水槽水道の適正管理を促進するためには、現場で調査に携わっている水道局と、法的権限を有する保健所等の衛生行政が連携を深めることは大変重要であります。このため、既に多摩地区で設置されている連絡協議会に加え、区部では、昨年十一月、水道局と二十三区の保健所とで新たに連絡協議会を設置しました。
 第一回の協議会では、水質に問題がある施設に対し協力して迅速に対応すること、それぞれが持つ情報や問題意識を共有すること及び水質事故時の緊急連絡網を再構築することとしました。また、今後の取り組みとして、区が主催する貯水槽設置者への講習会に水道局職員を講師として派遣することなどを取り決めました。
 今後も定期的に会議を開催するなど、衛生行政との連携を強化し、貯水槽水道の適正管理に向けて取り組んでまいります。
 次に、今後の貯水槽水道対策についてでございますが、安全でおいしい水を供給していくには、おいしい水の指標の一つである、残留塩素の濃度を適切に管理することが重要であります。このため、水道局では、浄水場や給水所できめ細やかな濃度管理を行っておりますが、貯水槽水道につきましては残留塩素の消費の実態が十分把握されるとはいえません。
 こうしたことから、大学や国の研究機関の学識経験者に参加を呼びかけ、昨年十二月に検討委員会を設置いたしました。委員会では、貯水槽水道の実態調査やモデル貯水槽での実験結果をもとに消費メカニズムを明らかにし、貯水槽水道の残留塩素対策について検討してまいります。
 また、貯水槽の設置者、国を含む衛生行政、水道事業者、それぞれの役割の明確化や新たな管理基準の策定などについて検討を進めてまいります。
 この委員会の検討結果を受け、国へその対策を強力に働きかけるとともに、関係機関と連携して貯水槽水道対策に積極的に取り組み、より安全でおいしい水の供給に努めてまいります。

〇七十四番(伊藤まさき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

〇副議長(鈴木貫太郎君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇副議長(鈴木貫太郎君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 なお、明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後八時散会

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