一番 | 小林 健二君 |
二番 | 加藤 雅之君 |
三番 | 吉住 健一君 |
四番 | 桜井 浩之君 |
五番 | 山崎 一輝君 |
六番 | 野田かずさ君 |
七番 | 福士 敬子君 |
八番 | 土屋たかゆき君 |
九番 | 山内れい子君 |
十番 | くりした善行君 |
十一番 | 小山くにひこ君 |
十二番 | 西沢けいた君 |
十三番 | 田中 健君 |
十四番 | 関口 太一君 |
十五番 | 畔上三和子君 |
十六番 | 斉藤やすひろ君 |
十七番 | 栗林のり子君 |
十八番 | 遠藤 守君 |
十九番 | 大松あきら君 |
二十番 | 鈴木 章浩君 |
二十一番 | 菅 東一君 |
二十二番 | きたしろ勝彦君 |
二十三番 | 田中たけし君 |
二十四番 | 鈴木 隆道君 |
二十五番 | 星 ひろ子君 |
二十六番 | 柳ヶ瀬裕文君 |
二十七番 | 淺野 克彦君 |
二十八番 | 新井ともはる君 |
二十九番 | 佐藤 由美君 |
三十番 | 中村ひろし君 |
三十一番 | たきぐち学君 |
三十二番 | 田の上いくこ君 |
三十三番 | 島田 幸成君 |
三十四番 | しのづか元君 |
三十五番 | 大島よしえ君 |
三十六番 | 中山 信行君 |
三十七番 | 高倉 良生君 |
三十八番 | 橘 正剛君 |
三十九番 | 松葉多美子君 |
四十番 | 神林 茂君 |
四十一番 | 早坂 義弘君 |
四十二番 | 高木 けい君 |
四十三番 | 宇田川聡史君 |
四十四番 | 鈴木あきまさ君 |
四十五番 | 矢島 千秋君 |
四十六番 | 山加 朱美君 |
四十七番 | 西崎 光子君 |
四十八番 | 滝沢 景一君 |
四十九番 | 中谷 祐二君 |
五十番 | 笹本ひさし君 |
五十一番 | 山下ようこ君 |
五十二番 | 神野 吉弘君 |
五十三番 | 鈴木 勝博君 |
五十四番 | 興津 秀憲君 |
五十五番 | 岡田眞理子君 |
五十六番 | 伊藤 ゆう君 |
五十七番 | 古館 和憲君 |
五十八番 | かち佳代子君 |
五十九番 | 伊藤 興一君 |
六十番 | 吉倉 正美君 |
六十一番 | 上野 和彦君 |
六十二番 | 谷村 孝彦君 |
六十三番 | 野上 純子君 |
六十四番 | 吉原 修君 |
六十五番 | 山田 忠昭君 |
六十六番 | 三宅 正彦君 |
六十七番 | 石森たかゆき君 |
六十八番 | 高橋 信博君 |
六十九番 | 服部ゆくお君 |
七十番 | こいそ 明君 |
七十一番 | 原田 大君 |
七十二番 | 佐藤 広典君 |
七十三番 | 尾崎 大介君 |
七十四番 | 伊藤まさき君 |
七十五番 | 山口 拓君 |
七十六番 | 松下 玲子君 |
七十七番 | 野上ゆきえ君 |
七十八番 | 西岡真一郎君 |
七十九番 | 今村 るか君 |
八十番 | 吉田康一郎君 |
八十一番 | たぞえ民夫君 |
八十二番 | 清水ひで子君 |
八十三番 | 小磯 善彦君 |
八十四番 | 長橋 桂一君 |
八十五番 | 藤井 一君 |
八十六番 | ともとし春久君 |
八十七番 | 遠藤 衛君 |
八十八番 | 三原まさつぐ君 |
八十九番 | 中屋 文孝君 |
九十一番 | 林田 武君 |
九十二番 | 田島 和明君 |
九十三番 | 樺山たかし君 |
九十四番 | 古賀 俊昭君 |
九十五番 | くまき美奈子君 |
九十六番 | 大西さとる君 |
九十七番 | いのつめまさみ君 |
九十八番 | 門脇ふみよし君 |
九十九番 | 小沢 昌也君 |
百番 | 石毛しげる君 |
百一番 | 花輪ともふみ君 |
百二番 | 大津 浩子君 |
百三番 | 大塚たかあき君 |
百四番 | 相川 博君 |
百五番 | 大山とも子君 |
百六番 | 鈴木貫太郎君 |
百七番 | 東村 邦浩君 |
百八番 | 中嶋 義雄君 |
百九番 | 木内 良明君 |
百十番 | 川井しげお君 |
百十一番 | 高橋かずみ君 |
百十二番 | 野島 善司君 |
百十三番 | 三宅 茂樹君 |
百十四番 | 吉野 利明君 |
百十五番 | 宮崎 章君 |
百十六番 | 比留間敏夫君 |
百十八番 | 斉藤あつし君 |
百十九番 | 増子 博樹君 |
百二十番 | 泉谷つよし君 |
百二十一番 | 山下 太郎君 |
百二十二番 | 酒井 大史君 |
百二十三番 | 大沢 昇君 |
百二十四番 | 中村 明彦君 |
百二十五番 | 馬場 裕子君 |
百二十六番 | 和田 宗春君 |
百二十七番 | 吉田 信夫君 |
欠席議員 一名
九十番 村上 英子君
欠員
百十七番
知事 | 石原慎太郎君 |
副知事 | 佐藤 広君 |
副知事 | 猪瀬 直樹君 |
副知事 | 吉川 和夫君 |
副知事 | 村山 寛司君 |
教育長 | 大原 正行君 |
東京都技監都市整備局長兼務 | 河島 均君 |
知事本局長 | 秋山 俊行君 |
総務局長 | 比留間英人君 |
財務局長 | 安藤 立美君 |
警視総監 | 池田 克彦君 |
主税局長 | 荒川 満君 |
生活文化局長 | 並木 一夫君 |
スポーツ振興局長 | 笠井 謙一君 |
環境局長 | 大野 輝之君 |
福祉保健局長 | 杉村 栄一君 |
産業労働局長 | 前田 信弘君 |
建設局長 | 村尾 公一君 |
港湾局長 | 中井 敬三君 |
会計管理局長 | 新田 洋平君 |
消防総監 | 新井 雄治君 |
交通局長 | 金子正一郎君 |
水道局長 | 尾崎 勝君 |
下水道局長 | 松田 二郎君 |
青少年・治安対策本部長 | 倉田 潤君 |
病院経営本部長 | 川澄 俊文君 |
中央卸売市場長 | 岡田 至君 |
選挙管理委員会事務局長 | 宮川 雄司君 |
人事委員会事務局長 | 多羅尾光睦君 |
労働委員会事務局長 | 山本 洋一君 |
監査事務局長 | 三橋 昇君 |
収用委員会事務局長 | 藤井 芳弘君 |
十二月八日議事日程第三号
第一 第百五十六号議案
東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例
第二 第百五十九号議案
外国の地方公共団体の機関等に派遣される職員の処遇等に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百六十四号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百六十七号議案
保健所の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百六十八号議案
東京都大気汚染障害者認定審査会条例の一部を改正する条例
第六 第百六十九号議案
プール等取締条例の一部を改正する条例
第七 第百七十号議案
東京都小規模貯水槽水道等における安全で衛生的な飲料水の確保に関する条例の一部を改正する条例
第八 第百七十一号議案
東京都感染症の診査に関する協議会条例の一部を改正する条例
第九 第百七十二号議案
東京都営空港条例の一部を改正する条例
第十 第百七十四号議案
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の一部を改正する条例
第十一 第百七十五号議案
東京都デートクラブ営業等の規制に関する条例の一部を改正する条例
第十二 第百七十六号議案
警視庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第百七十七号議案
警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第十四 第百七十八号議案
東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第百七十九号議案
警視庁鮫洲運転免許試験場庁舎棟(二十二)改築工事請負契約
第十六 第百八十号議案
都立三鷹中等教育学校(二十二)改築及び改修工事請負契約
第十七 第百八十一号議案
都立北地区総合学科高等学校(仮称)(二十二)改築及び改修工事請負契約
第十八 第百八十二号議案
東京国際展示場(二十二)東展示棟改修工事請負契約
第十九 第百八十三号議案
東京国際展示場(二十二)西展示棟改修工事請負契約
第二十 第百八十四号議案
東京国際フォーラム(二十二)ガラス棟改修工事請負契約
第二十一 第百八十五号議案
東京国際フォーラム(二十二)電気設備改修工事請負契約
第二十二 第百八十六号議案
東京都島しょ農林水産総合センター漁業調査指導船「みやこ」製造請負契約
第二十三 第百八十七号議案
妙正寺川鷺の宮調節池工事請負契約
第二十四 第百八十八号議案
環二地下トンネル(仮称)築造工事(二十二 一―環二愛宕工区)請負契約
第二十五 第百八十九号議案
街路築造工事(二十二 二―環五の一千駄ケ谷)請負契約
第二十六 第百九十号議案
高瀬橋(仮称)PCけた製作・架設工事請負契約
第二十七 第百九十一号議案
東京都人権プラザの指定管理者の指定について
第二十八 第百九十二号議案
当せん金付証票の発売について
第二十九 第百九十三号議案
東京体育館の指定管理者の指定について
第三十 第百九十四号議案
東京武道館の指定管理者の指定について
第三十一 第百九十五号議案
東京辰巳国際水泳場の指定管理者の指定について
第三十二 第百九十六号議案
東京都立埋蔵文化財調査センターの指定管理者の指定について
第三十三 第百九十七号議案
東京都リハビリテーション病院の指定管理者の指定について
第三十四 第百九十八号議案
東京都立心身障害者口腔保健センターの指定管理者の指定について
第三十五 第百九十九号議案
東京都障害者総合スポーツセンター外一施設の指定管理者の指定について
第三十六 第二百号議案
東京都練馬就労支援ホーム外一施設の指定管理者の指定について
第三十七 第二百一号議案
東京都江東通勤寮の指定管理者の指定について
第三十八 第二百二号議案
東京都大田通勤寮の指定管理者の指定について
第三十九 第二百三号議案
東京都葛飾通勤寮の指定管理者の指定について
第四十 第二百四号議案
東京都豊島通勤寮の指定管理者の指定について
第四十一 第二百五号議案
東京都立川通勤寮の指定管理者の指定について
第四十二 第二百六号議案
東京都町田通勤寮の指定管理者の指定について
第四十三 第二百七号議案
東京都立東大和療育センターの指定管理者の指定について
第四十四 第二百八号議案
東京都立産業貿易センターの指定管理者の指定について
第四十五 第二百九号議案
東京都立食品技術センターの指定管理者の指定について
第四十六 第二百十号議案
東京都しごとセンターの指定管理者の指定について
第四十七 第二百十一号議案
晴海客船ターミナル外二施設の指定管理者の指定について
第四十八 第二百十二号議案
竹芝客船ターミナルの指定管理者の指定について
第四十九 第二百十三号議案
竹芝ふ頭船舶給水施設外六施設の指定管理者の指定について
第五十 第二百十四号議案
東京都立東京港野鳥公園の指定管理者の指定について
第五十一 第二百十五号議案
東京都立有明テニスの森公園の指定管理者の指定について
第五十二 第二百十六号議案
東京都立大井ふ頭中央海浜公園外十七公園の指定管理者の指定について
第五十三 第二百十七号議案
東京都立辰巳の森海浜公園外六公園の指定管理者の指定について
第五十四 第二百十八号議案
東京都立お台場海浜公園外十公園の指定管理者の指定について
第五十五 第二百十九号議案
東京都立葛西海浜公園の指定管理者の指定について
第五十六 第二百二十号議案
二見漁港岸壁外九施設の指定管理者の指定について
第五十七 第二百二十一号議案
東京都小笠原ビジターセンターの指定管理者の指定について
第五十八 第二百二十二号議案
東京都立東白鬚公園外八公園の指定管理者の指定について
第五十九 第二百二十三号議案
東京都立日比谷公園外七公園の指定管理者の指定について
第六十 第二百二十四号議案
東京都立戸山公園外五公園の指定管理者の指定について
第六十一 第二百二十五号議案
東京都立狭山公園外三公園の指定管理者の指定について
第六十二 第二百二十六号議案
東京都立長沼公園外四公園の指定管理者の指定について
第六十三 第二百二十七号議案
東京都立武蔵野中央公園外十公園の指定管理者の指定について
第六十四 第二百二十八号議案
東京都立陵南公園外四公園の指定管理者の指定について
第六十五 第二百二十九号議案
東京都立夢の島公園外一施設の指定管理者の指定について
第六十六 第二百三十号議案
日比谷公会堂外一施設の指定管理者の指定について
第六十七 第二百三十一号議案
東京都立大神山公園の指定管理者の指定について
第六十八 第二百三十二号議案
東京都立木場公園外十一公園の指定管理者の指定について
第六十九 第二百三十三号議案
東京都立浜離宮恩賜庭園外八公園の指定管理者の指定について
第七十 第二百三十四号議案
東京都立神代植物公園の指定管理者の指定について
第七十一 第二百三十五号議案
東京都立潮風公園外一公園の指定管理者の指定について
第七十二 第二百三十六号議案
東京都立横網町公園の指定管理者の指定について
第七十三 第二百三十七号議案
東京都多磨霊園外七霊園の指定管理者の指定について
第七十四 第二百三十八号議案
東京都青山葬儀所の指定管理者の指定について
第七十五 第二百三十九号議案
東京都瑞江葬儀所の指定管理者の指定について
第七十六 第二百四十号議案
東京都八重洲駐車場外四駐車場の指定管理者の指定について
第七十七 第二百四十一号議案
東京都板橋四ツ又駐車場の指定管理者の指定について
第七十八 第二百四十二号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び三鷹市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第七十九 第二百四十三号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び稲城市公共下水道使用料徴収事務の受託について
午後一時一分開議
○議長(和田宗春君) これより本日の会議を開きます。
○議長(和田宗春君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。
○議長(和田宗春君) 昨日に引き続き質問を行います。
七十三番尾崎大介君。
〔七十三番尾崎大介君登壇〕
○七十三番(尾崎大介君) まず最初に、多摩の森林について何点かお伺いいたします。
最近マスコミ等でも取り上げられた、外資による森林の購入問題ですが、民間シンクタンク東京財団の、グローバル化する国土資源と土地制度の盲点という報告書によると、埼玉や山梨、長野、岡山県など全国各地の水源に近い山林について、中国などの外国資本が買収の打診をしてきているという結果が報告をされております。これは九月にNHKの「クローズアップ現代」でも取り上げられ、既成事実として全国に周知をされました。
こうしたことを受け、国が調査に乗り出し、また北海道では道で独自の調査を行い、外国企業、個人による道内の林地所有は三十三カ所、計八百二十ヘクタールという結果を公表しております。
都においても、多摩地域に私有林四万ヘクタール、都有林一万ヘクタール、合わせて五・二万ヘクタールという豊かな森林を抱えており、この外資による森林購入問題は人ごとではありません。
外資が日本の森林を購入する動機は明らかではありませんが、直接的には森林が不当に安いのと、木材とは関連のない山林原野を購入しているケースは、水源あるいは吸収源を求めているのではないかと考えるのが自然であります。
現行の法律では、山林の売買実態を把握すること自体が極めて難しく、現在、都市計画区域外の一ヘクタール以上の土地売買については、国土利用計画法により、都道府県知事へ契約締結後二週間以内の事後届け出が義務づけられております。農地の売買については農地法により一定の転売規制がありますが、森林にはそうした規制はなく、売り方、買い方の二者間の合意だけで売買は成立してしまいます。私有林の二割程度である保安林以外であれば、開発規制も実質的にはほとんどないのが現状であります。
そもそも森林は保安林や水源林としての役割があり、国土の保全、住民の命を守る大きな財産であります。それが、このような法整備の不備もあり、結果として外資に乱購買されているとすれば、水源すなわち生命存在の基本となる水にかかわることだけにゆゆしき問題であります。
また、二〇一三年の京都議定書約束履行期限以降の主要な二酸化炭素吸収源としての森林ビジネスも世界的に拡大をしております。東京都の試算によれば、年間三十万トンの吸収源としており、生命、産業という側面からも、森林の持つ重要なポテンシャルを守る必要があるわけであります。
東京都としては、この外資による森林購入問題の実態を調査され、その結果、一ヘクタール以上の山林売買の事例はないとのことでありますけれども、一ヘクタール未満の山林に関しては調査方法がないことや、林野庁もどの程度の調査報告を都道府県に対して求めているのか明確でない中で、この作業を行っていくことが大変であるということは理解できます。
しかし、仮に外資が先ほど述べた水源、吸収源を求めて山林を購入しているなら、法の抜け道である一ヘクタール未満の土地に目をつけるであろうことは想像にかたくありません。そもそも、東京において一ヘクタール未満の山林所有者は全体の約六〇%でありますので、一ヘクタール以上の売買事例がないのは、こうした理由も含まれていると思います。
北海道では、先ほど述べた森林売買にかかわる現在の法整備の不備を、二〇一一年中に森林土地取引に事前届け出を求めるとして、みずからの条例制定を検討し、外資による森林購入の対策を行うとしております。さらに、一ヘクタール未満の土地についても売買契約前の届け出を求め、問題があれば審査、そして知事が勧告をすることも検討していると聞いております。
また、埼玉県でも知事みずからが、国の調査依頼だけでは不十分だとし、県独自の調査を進めていくというように聞いております。
こうしたことからも、例えば、土地台帳による調査を市町村とも連携しながら進めていくなど、我が国の模範的立場でもある首都東京として今後どのような対策を考えるのか、お伺いいたします。
次に、この問題に関連し、本年六月に導入された民有林購入モデル事業についてお伺いいたします。
本事業は、多摩川上流の水源林について、荒廃した民有林を購入し適正に管理することで水道水源林の機能を最大限発揮できるようと導入された事業と聞いております。
現在の小規模林を持つ所有者の多くは、高齢化や林地面積の小ささから森林整備が放置されており、このような小規模林は整備もままならず、木材需要を生み出す具体的な展望も見えない。こうしたことから荒廃した森林を招く結果ともなっていることを考えれば、的を射た事業と評価をできるものであり、本事業導入による私有林の公有林化は大変望ましいものであります。
現在の景気状況や経済情勢から見て、山林の所有者の中には、山を売りたい、高く買ってくれるなら外資でもよいという考えもあり、そこを外資につけ込まれ、一ヘクタール当たり十万でも売買されているということも聞いております。
森林総合研究所、平成十八年の調査では、森林売買価格は、北海道、東北、関東、そして九州では一ヘクタール当たり五十万円以下、北陸、中部、中国、近畿、四国では一ヘクタール当たり百万円以下という結果が出ています。森林ということでは、東京都の水源地域でも同程度の価格であると考えられます。
仮に、このような価格で公的機関が購入となれば、山主も、先祖代々の山を縁もゆかりもない外資に売買することは心情的にもあり得ないと思われ、本事業は、水源確保という大きな目的の推進であり、今後どのように展開をしていくのか、また、購入という同じ行為ながら、外資購入との違いを山主に積極的に説明すべきと思いますが、所見をお伺いいたします。
水源付近の山林が外資に乱購買され、主体が外資に移っていけば、本来果たすべき機能を失うとも限りません。これは単に環境破壊とかの観点から申しているわけではなく、国土保全の根本的な対策は、本来国が行っていかなくてはならないことは十分認識をしておりますが、現状の法制度の不備を理由に手をこまねくことがあってはならないと考えます。
森林を含めた国土の売買の制限については最重要課題だということを国に対して求めていくとともに、本問題については、森林行政の縦割りの弊害が出ているといわざるを得ませんが、長期的な視点に立ち、東京都が率先して森林の持つ多機能、多面的なポテンシャルを生かすことが重要課題ととらえ、対策を立てていくべきと考えますが、知事の見解をお伺いし、次の質問に移ります。
最近の農業に対する都民の関心は、単に趣味的な領域を超え、みずから安心・安全な農作物を生産し、また農作物への知識も相当深まっております。また、近年は若い人の農業体験は急増しており、将来的な農業として、農業を志向する人も増加しております。
一方、東京には多摩地域に六千ヘクタールの農地があり、文字どおり地産地消を実現できる環境にあります。そこで、東京の若い人を活用した農業振興策に新しい考えの導入が必要であると考えます。東京都の農業振興策の基本計画としては、平成十三年の東京農業振興プラン以降策定されておりませんが、今後の策定方針はあるのか、お伺いいたします。
また、農業の若年就業者数を上げる方策として、やる気のある若者に対して休耕地等の貸与制度などを考えられないのか、お伺いいたします。
最近アメリカにおいては、地域のコミュニティに支持された農業という意味のCSAという新しい農業のシステムが各州に広がりを見せております。最近の都市部消費者の農産物に対する要望、すなわち有機栽培、減・無農薬栽培、珍しい野菜等は根強い需要があります。
一方、東京都は、東京都環境保全型農業推進基本方針、また東京都有機農業推進計画を進めておりますが、これらの都市需要と東京の意欲的、先進的な農業推進計画を結びつけて運営管理できるような仕組みができれば理想的だと思われます。いいかえれば、地産地消地の実現策として、多摩地域でのCSAの導入は考えられないのか、お伺いいたします。
次に、経済的弱者を相手にしたいわゆる貧困ビジネスについてお伺いいたします。
貧困ビジネスという言葉が出てきたのは、昨年のちょうど今ごろであります。最近ではマスコミの報道もいっときほどは騒がれなくなりましたが、では貧困ビジネスが減少したかというとそうではなく、ますます手が込み入り、巧妙になってきたといえます。
特に最近は、医療扶助などの公的扶助を利用した貧困ビジネスの増加も著しく、この背景はかなり複雑で、大きくは昨今の経済情勢がその主因ともいえますが、ある意味では、直接の被害者だけではなく、行政当局も間接的な被害者という側面は否めません。
とはいえ、社会的弱者に対する支援は行政当局の任務であり、使命でもあります。いわゆる富裕層と貧困層という二極化した階層社会となった今日、市場も、富裕層対象ビジネスと貧困層対象ビジネスの二つに二極化しているといえるわけであります。
昨年、私は、各会計決算特別委の全局質疑の中で、敷金礼金をゼロとうたい、部屋のかぎのみを貸与することによって、借地借家法にとらわれない、まさしく法の抜け道をついたゼロゼロ物件、家賃を滞納したら貸し主にかわって取り立てる家賃保証会社、また、強引な手法でこの退去を迫る追い出し屋等について質問をいたしました。まず最初に東京都の行政機関の中で貧困ビジネスという認識を持っているのか、またその取り組みはどうなっているのかお伺いし、都市整備局、生活文化スポーツ局の答弁では、両局とも、今後適切な対応を図っていくとのことでしたが、その後の対策経過についてあわせてお伺いいたします。
他の自治体の例として、大阪ではプロジェクトチームをつくり、悪質業者の摘発も積極的に行っております。また大阪府では、大阪府被保護者等に対する住居・生活サービス等提供事業の規制に関する条例が先日成立しております。大阪府や大阪市には、関係部局が横断的に連携し、この貧困ビジネスに対して逮捕を含む強い指導を行う対策を強化しております。
一方、東京都は、消費生活条例等での対応を図るとしておりますが、あくまでも生活センターへの相談が発生してからの対応であり、東京都みずからが積極的、能動的に対応する姿勢ではありません。
したがって、再度、消費生活条例の規制強化、貧困ビジネスに特化した規制条例を設置すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
最後に、福祉の観点から何点かお伺いいたします。
都内には、東京都美術館を初め数多くの美術館、博物館があります。公益財団法人東京都歴史文化財団の資料によりますと、東京都庭園美術館など五つの施設の平成二十一年度の年間観覧者数は約三百三十六万人であり、芸術に関心のある方を中心に多くの来場者が会場を訪れております。
この中には、健常者以外の例えば耳の不自由な方も含まれており、先ほどの三百三十六万人のうち、いわゆる障害者減免で入場された方は、付き添いの方を含めて約十四万人とのことでありますので、いかに多くの障害をお持ちの方が文化に触れる機会を求めて美術館を訪れていることがわかります。体の自由、不自由にかかわらず、美術や芸術に対しての関心は何ら違いはなく、同様の情報が得られるようにしなければならないと考えます。
例えば、江戸東京博物館では、イヤホンやレシーバーによる音声サービスがありますが、これは主に健常者に対してより詳細な情報を提供するサービスであります。また、車いすや盲導犬の受け入れ体制はあっても、耳の不自由な人に対してのサポートは不足をしているといわざるを得ません。実際に手話通訳を伴って美術館に行った際、通訳を受けていると、ジェスチャーが邪魔でゆっくり作品を見られないので、やめていただけませんかといわれた方もいらっしゃったそうであります。
そこで、耳の不自由な方々に対しての美術館などでの情報提供について、東京都はどのように認識をされているのか、見解をお伺いいたします。
近年のIT技術の発展は目覚ましいものがあります。アイフォンやアイパッド、またいわゆるスマートフォン携帯が急速に普及し、耳の不自由な人たちにとっても貴重な情報ツールとして広がりつつあります。
そこで、これらのツールを利用した手話通訳案内の可能性が考えられます。例えば、美術作品などの情報を手話通訳した動画として保存し、耳の不自由な人たちが館内で端末を利用して自由に取り出せるというものであります。これであれば、第三者の助けをかりることなく、いつでも情報を得られることができます。端末はそれぞれが所持をしているため、東京都として購入する費用もかかりません。さらに、展示会場の地図などの館内情報を配信すれば、多くの方々が情報を得られるようになると考えますが、こうした聴覚障害者への情報提供が可能であるかお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 尾崎大介議員の一般質問にお答えいたします。
森林の保全についてでありますが、多摩の森林は、木材の供給のみならず、水源の涵養や地球温暖化の原因になる二酸化炭素の吸収、貯蔵など、多面的な機能を持ったかけがえのない都民、国民共通の財産であります。多摩に限らず、古代には、森そのものや、そこにある滝が神様として信仰の対象にもなっておりました。
いずれにしろ、多くの恵みをもたらす森林づくりは、五十年、百年という長い月日をかけてかなうものでありまして、この貴重な財産である森林とそこから生み出される水源が将来にわたって損なわれることがあっては絶対にならないと思います。
最近、北海道において外資による森林買収の事実が明らかになって、今後はこうした動向に十分注意を払う必要があると思います。
本来、森林や水といった国土資源の保全については、国が速やかに対応すべきことであると思います。現場を預かる都としては、森林に関する情報を十分に把握するとともに、関係各局に横ぐしを通して、しっかりとした連携を保って森林の保全に取り組み、次世代にこれを継承していきたいと思っております。
他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
〔東京都技監河島均君登壇〕
○東京都技監(河島均君) 家賃保証会社等への対応についてのご質問にお答えいたします。
これまで都は、賃貸住宅の相談窓口におきまして苦情等を受け付けるとともに、宅地建物取引業法に基づく業者指導等を行っております。
また、国は、社会資本整備審議会で家賃債務保証業務等の適正化について検討し、本年一月に最終取りまとめを行いました。これをもとに、本年三月の通常国会にいわゆる賃貸住宅居住安定法案が提出されましたが、現在、国会で継続審査となっております。
都としては、こうした国の動向も踏まえ、引き続き適切に対応してまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、森林の売買についてでありますが、平成二十年六月に林野庁から、外資による林地取得について関係機関からの聞き取りなどを行うよう調査依頼がありましたことから、都は地元の情報に詳しい森林組合等の関係団体や市町村の協力を得て、森林の売買について情報収集に努めてまいりました。
今年度に入り、林野庁からより詳細な森林売買に関する調査があったため、森林売買にかかわる関係各局とも連携して対応してまいりましたが、現在のところ、都においては外資による森林売買の事実は確認されておりません。
しかし、最近、北海道において外資による森林売買の事実が明らかになりましたことから、今後は、関係各団体等の協力のもと、小規模な森林の売買についても一層の情報収集に努めるとともに、国や他の自治体の動向、調査手法を踏まえながら、より効果的な調査手法を検討してまいります。
次に、東京農業振興プランの今後の策定方針についてであります。
都は、平成十三年に東京農業振興プランを策定し、農業経営対策や農産物の生産流通対策などを実施してまいりました。その後、東京の農業を取り巻く環境の変化に対応するため、平成十八年に中間評価を行い、農地保全対策や食の安全・安心への取り組みなどについて、新たに都独自の農業振興施策を展開してまいりました。
現在、国においては、市街化区域内農地の位置づけの見直しや農地保全の方策、TPP等への対応策が検討されていると聞いております。プランの改定に当たりましては、こうした国の動向や社会経済情勢の変化を見きわめつつ対応してまいります。
次に、農業に意欲のある若者に対する休耕地等の貸与制度についてでありますが、農業従事者の高齢化が進んでいる現在、農業後継者の育成とともに、農地の貸与などによる新たな担い手の農業参入は重大な課題であります。
農地の貸し借りは、市街化区域内では、貸し付けた農地に対して相続税納税猶予制度が適用されないことなどにより難しい状況にありますが、市街化調整区域などでは、農業経営基盤強化促進法に基づき、意欲ある農業者が農地を借りられるよう進めております。
また、都独自の取り組みとして、意欲ある都民の農業参画を促進するため、労働力不足などの課題を抱える農業者と新たな担い手を結びつける取り組みや、規模拡大を目指す農業者や新規参入者のために、遊休農地再生のための整備を支援する取り組みを実施しております。
最後に、多摩地域でのCSAについてでありますが、CSAは、地域に支えられた農業などと訳されまして、地域住民が農産物料金の前払いや農作業への労働力の提供など、応分の負担をしながら地元の農業を支援する仕組みでありまして、日本でも、有機農業などでこうした事例が見受けられます。
都ではこれまでも、地域住民と農業者との理解を深めながら農業振興を図るため、農業体験農園や農産物共同直売所の整備などについて助成を行ってまいりました。
今後も、都市住民と農業者の相互理解に根差した地産地消の推進に努めてまいります。
〔水道局長尾崎勝君登壇〕
○水道局長(尾崎勝君) 民有林購入モデル事業の今後の展開及び山林所有者への事業目的の説明についてお答えします。
小河内貯水池上流域の人工民有林は、長期にわたる林業不振の影響などを受け、間伐が行われないことによる樹木の過密化や、伐採後の植林の放棄などにより荒廃が進んでいます。
こうした状況を踏まえ、本年一月に策定した東京水道経営プラン二〇一〇において、事業期間をおおむね五年間とする民有林購入モデル事業を計画化し、平成二十二年度から着手しております。
本事業は、管理が不十分で山林所有者が手放す意向を持つ人工民有林を水道局が取得し、水道水源林として適切に管理を行うことで、森林が本来持つ水源涵養機能などを最大限発揮させ、都民の貴重な水がめである小河内貯水池の保全を図ることを目的としております。
山林の公募に当たっては、この当局の民有林購入の目的などを広く周知したところでありますが、今後とも機会をとらえて積極的に説明してまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 貧困ビジネスのご質問についてお答えいたします。
この言葉に明確な定義はございませんが、生活困窮者や住居喪失者、低賃金労働者、多重債務者など、社会的弱者である貧困層の弱みや知識不足を利用して利益を得る事業の総称として一般的に使われております。
例えば、住居、生活に困窮している低所得者が利用する無料低額宿泊所のうち、利用者が不当な処遇を強要されるなど劣悪な状況にあるものは貧困ビジネスの一つとされております。
無料低額宿泊所につきましては、都はこれまでガイドラインや運営指導指針を策定し事業者を指導するなど、その適正な運営に努めてきております。
また、現在、国におきまして、無料低額宿泊所等の適正化を図るため、利用契約の締結や解除に係る規制、金銭管理の制限などを盛り込んだ新法の制定が検討されておりまして、都は、国の検討状況を踏まえながら適切に対応してまいります。
〔生活文化局長並木一夫君登壇〕
○生活文化局長(並木一夫君) 三点のご質問にお答えいたします。
初めに、いわゆる貧困ビジネスに対する消費生活条例の規制強化についてでございますが、消費者の弱みにつけ込む悪質事業者に対しましては、これまでも特定商取引法や消費生活条例などの法令に基づき、厳正な処分、指導を行ってまいりました。
経済的弱者において特に深刻な問題となる滞納家賃の不法な取り立て等につきましては、個別に事業者を指導するとともに、家賃保証会社の関係団体に対しては、法令遵守の徹底を要請し、その結果、家賃請求権の適正な行使などについて自主ルールが策定されるなど、現在の法令でも十分な効果を上げております。
今後とも、悪質な事業者から都民を守るため、関係各局と連携し、さまざまな法令や取り締まり権限を駆使し、積極的に対処してまいります。
次に、美術館などを訪れる聴覚障害者への情報提供でございますが、障害の有無にかかわらず、大人から子どもまで訪れる方々に対しまして、展示内容をよりよく理解し、楽しんでいただくため作品の解説などの情報を提供することは、美術館、博物館の重要な機能の一つでございます。聴覚障害者に対しましてもこれらの情報を適切に伝えることは重要であると認識しております。
最後に、美術館などにおける携帯端末を利用した聴覚障害者への情報提供についてでございますが、IT技術の進展に伴い、携帯電話による文字や写真の閲覧が可能になり、さらにスマートフォンなど最新機器の登場で大容量の動画の閲覧も容易になってきております。こうした携帯端末などを利用し、聴覚障害者向けに多様な展覧会情報を提供する可能性が広がってきております。
今後、端末などの普及状況、利用者の意向、費用等を総合的に勘案し、都立文化施設における聴覚障害者への効果的な情報提供のあり方につきまして、引き続き検討を行ってまいります。
○議長(和田宗春君) 四十三番宇田川聡史君。
〔四十三番宇田川聡史君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○四十三番(宇田川聡史君) 江戸川区役所の前には、現在の荒川の水位という電光掲示板が設置されておりますが、その水位は通常時でも人の背丈を超えており、これがまさにゼロメートル地帯の実情であり、そこに住む人たちの脅威なのです。
十月に一都五県の知事が八ッ場ダム建設現場に訪れ、視察と地元住民との意見交換を行いました。私も議員連盟の一人として出席をいたしましたが、現場の声、地元住民の切実な願いは、八ッ場ダムの早期完成なんです。幾度にもわたり議論を重ねてまいりましたが、こうした現場を見れば、ダムは要らない、堤防はむだ遣いなどと軽々に口にできるはずがない。ゼロメートル地帯の住民の命は軽いということなのでしょうか。我々下流に住む者たちの命を守るために苦渋の決断をしていただいた地元住民の皆さんの思いを、なぜ受けとめられないのでしょうか。
八ッ場ダムの重要性、とりわけ我々の生命と財産を守るための治水の効果を改めて知事にお伺いいたします。
次に、水道事業について伺います。
重要なライフラインである都の水道は、三百六十五日二十四時間、安定給水の確保が大前提です。世界的な異常気象は各地で社会に影響を及ぼしており、ことし三月の百年に一度といわれた中国の大干ばつ、オーストラリアでは干ばつが近年頻発しております。
こうした状況下において、大規模水道施設の一斉更新を目前に控え、首都東京を支えていくためには、需要動向のみならず、安定給水を脅かすさまざまな不安要素を考慮した上で、水源や施設整備に対する新たな考え方を構築することが極めて重要だと考えますが、都の見解を伺います。
水の安定供給にダムは重要な意義を持っております。都は過去の渇水の経験を踏まえ、長い年月をかけて、地元の理解を得ながら水源確保に努めてまいりました。しかし、主要水源である利根川水系では、平成に入った近年に六回もの渇水がありました。地球温暖化などをかんがみれば、水資源への影響はますます懸念増大、決して万全とはいえません。
八ッ場ダムは利水においても大きな効果をもたらすものであり、首都東京の安定給水に欠かすことのできない施設です。一日の大臣、知事会談により負担金留保を解除したところですが、国土交通大臣には勇気ある決断、中止の撤回を明確に表明されることをぜひにお願いしたい。利水における八ッ場ダムの意義、必要性について、決意を込めた都の見解をお尋ねいたします。
次に、指定管理者制度について伺います。
我が党はこれまで、公の施設の管理運営に係る指定管理者制度や、その中で重要な役割を担う監理団体のあり方について、さまざまな団体との意見交換を重ね、多面的な議論を多くの時間を割いて行ってきました。
昨年六月に取りまとめた報告書で提言したとおり、監理団体の本来あるべき姿は、公益性の行政と効率性の民間企業の間に立つ一・五セクターともいうべき位置づけがふさわしいと考えます。双方の優位性を発揮し、都政運営の重要なパートナーとして機能させることこそが次世代の都政なのではないでしょうか。
また、指定管理者制度においても、施設の目的や性格により、最も適した担い手や手法を見きわめ、過去の実績検証を踏まえての見直しも行うべきだと主張してまいりました。
一方、都においては、我が党の提言を受け、この九月に東京都監理団体方針を策定し、改めて検証するとともに、指定管理者制度についても、その運用のあり方の検証を行ったところであり、この点は評価しております。
今定例会には、その成果として、指定管理者の選定を新たに特命に変更した防災公園や文化財庭園などにかかわる議案が提案されておりますが、今回の制度の見直しの意義についてお伺いをいたします。
指定管理者制度は、ともすれば、常々知事が提唱している現場、これを単に切り離すことになりかねません。この現場は、技術やノウハウの継承にはなくてはならないものであり、特に人材育成には欠かせないものです。監理団体と都の人材交流は、都職員のスキルアップに確実につながることだと考えます。
こうした人材育成には一定の経済的、時間的コストが必要であり、期間の長期化や安定経営に資する制度論も重要であります。今回の見直しは、人材育成の観点からどのような意義があるのかお尋ねをいたします。
次に、東京港の国際競争力強化について伺います。
先週、東京港のコンテナターミナルの現状視察に行ってまいりました。現場の船会社から、コンテナ取扱貨物量は一時的な停滞から抜け出したとはいえ、国際基幹航路の維持拡大のためには、さらなる貨物集荷とコスト削減の取り組みが必要であるとの話がありました。
釜山や上海などのアジア諸港と比較して割高であるターミナルリース料などの港湾利用コストの低減は、貨物集荷の増加に直接つながる重要な施策です。アジア主要港は、国家戦略的に採算を度外視して大胆に港湾コストの削減を図っており、これに対抗していくためには、東京港埠頭株式会社単独の努力には限界があると思います。こうした港湾利用コストの低減に向けた公的な支援が必要だと考えますが、ご所見を伺います。
また、貨物集荷等により増加する貨物を適切に処理するためには、既に処理能力が限界に達している東京港全体の抜本的な機能強化が必要不可欠である、私は繰り返し主張してまいりました。
特に、中央防波堤外側コンテナターミナルの供用開始を契機として、既存ふ頭の再編を進めていくべきである、本年六月の第二回定例会においても、こう申し上げたところです。再編の起点となる中央防波堤外側地区は、既存のふ頭に比べ広い用地を備え、来年度には東京港臨海道路Ⅱ期工事の完成によりアクセスが充実するなど、ポテンシャルの高い地域でのふ頭になる、このことに大いに期待を寄せているところです。
これを最大限に活用し、中央防波堤外側コンテナターミナルをアジア諸港に対峙できるような高規格ターミナルとして整備していくべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
国は、東京港を含めた京浜港を国際コンテナ戦略港湾に選定いたしました。選定をしたからには、ガントリークレーン整備などに対し積極的な支援を行い、アジア主要港に肩を並べられる東京港を目指し、国際競争力を強化する取り組みを責任を持って進められるよう強く要望しておきます。
次に、市場についてお尋ねをいたします。
豊洲新市場への移転については、過日、知事によって大きくかじが切られました。老朽化した築地市場は待ったなしの状況であることは、だれの目にも明らかであり、食の安全・安心確保のためにも、新市場整備に異論を挟む余地はありません。
知事は、移転を進めるに当たっては、個々の市場業者が抱える課題、不安、心配、こうしたさまざまな声に丁寧に耳を傾け、知恵を絞ることが必要だと述べられ、私も市場業者の要望に対し、十分に配慮した支援策を都の責任としてきちんと果たしていくべきだとの提言を繰り返してまいりました。
今重要なのは、市場施設計画や支援の具体的内容を丁寧に説明し、意見を伺い、理解を得る努力です。
都は先日、市場内に豊洲移転サポート相談室を開設いたしましたが、こうした窓口が果たす役割は極めて重要だと考えます。
しかし、相談をただ待つ、こうした姿勢ではなく、まさに夜討ち朝駆け、ひざ詰めで積極的に市場業者の中に飛び込んでいく気概がなければ、理解や、まして信頼を得ることはできません。この相談室の活用にぜひ気概を持って取り組んでいただきたい。新市場移転を円滑に進めていくためには、市場業者に対するさまざまな支援策が必要不可欠だと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
また、市場業者が現在置かれている厳しい経営環境を見ると、都の支援策を一日も早く明確にすべきであり、市場業者の経営の現状をしっかりと把握した上で、その要望を踏まえての支援が必要となります。現在の経営状況をどう認識されているのでしょうか。どのようなスケジュール感をもって支援の検討をなされているのか、その内容も含め、具体的にご答弁をいただきたいと思います。
最後に、電気自動車の普及策についてお尋ねいたします。
電気自動車は、大気汚染対策はもとより、地球温暖化対策としてもその普及が期待されております。ガソリン車に比べ、その走行距離が短いことなどから、すべての代替を図ることは困難ですが、用途に応じた活用は可能だと考えます。
例えばタクシー。低炭素社会において、マイカーから公共交通機関へのシフトが求められている今日、タクシーは補助的公共交通機関として、高齢者などの交通弱者の移動手段に大いに役立つものです。
したがって、駅待ちのタクシーを集中的に電気自動車へ転換することは有効な環境交通政策であり、加えて、タクシー利用者は、その静音性能を実感できるなど、電気自動車の一般普及に向けた啓発活動としての効果も期待できるのではないでしょうか。そこで、タクシーへの電気自動車の普及の意義について、都の見解をお伺いいたします。
都は、電気自動車普及に向けた補助制度を実施してまいりましたが、タクシーへの普及にはこうした費用面の後押しだけでは不十分だと考えます。バッテリー切れの不安解消など、実用面での課題解決とあわせての普及策が必要なのではないでしょうか。都の課題認識と、その課題にどのように対処していかれるのか見解をお伺いし、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 宇田川聡史議員の一般質問にお答えいたします。
まず、八ッ場ダムの治水効果についてでありますが、東京の人たちは、かつて数年前の渇水期の取水制限に懲りていまして、八ッ場ダムの東京都にとっての利益というのは、利水というものに絞って考えていますけれども、これは全然違いまして、あなたのお持ちのこれ(資料を示す)江戸川区役所の前に立てられている川の水面の現況の高さが示されていますが、これ、立っている人よりもずうっと高いところにいつも水面がある。これは何も江戸川区だけじゃなしに、これからずうっと川上にさかのぼって埼玉県の周辺の川沿いというのは、非常にこういう状況が続いていて、堤防の決壊こそありませんけれども、高いところの水面からしみてくる水が増水しますと、わきに出てきて、その対処に民間の消防団が奔走しているのが実情であります。
利根川流域には、群馬県から東京にかけて、あるいは千葉にかけて、洪水時の水位より低くなる市街地が大きく広がっておりまして、本年四月、国の中央防災会議が発表した資料によれば、カスリーン台風時とほぼ同じ箇所で決壊した場合に、江戸川区など区部東部の浸水の深さは二メートルから五メートルに達して、首都圏全体の死者の数は最大で二千六百人、浸水世帯数は約八十六万世帯に及ぶと想定しております。
国は、甚大な被害想定を国民に公表する一方で、八ッ場ダムの建設を中止しておりますが、これではやっていることがまさにもうちぐはぐであります。
人口と資産が集中する首都圏において、河川整備だけで想定被害を防ごうとすれば、莫大な時間とコストを要するのは明らかであります。現政権はダムによらない治水を掲げてございますけれども、具体的に何だかさっぱりわからない。こういったセンチメントな美辞麗句だけで政治ができるわけはありません。
馬淵国交大臣は、今後は中止の方向には言及せずと、一切の予断を持たずに検証を進めると明言しました。繰り返して申しますけれども、前任者に対する心配りもあるんでしょうが、これはまさしく中止の言明を撤回したと私たちは判断しておりますし、このことは、ニュアンスに込められた彼の前任者に対する心配りに私たちそんたくしなくちゃいけませんが、いずれにしろ、八ッ場ダムは、これまで洪水調節機能を持つダムのなかった吾妻川流域に初めて建設される施設であります。これが完成すれば、区部東部を初め首都圏全体の洪水被害の危険性を大きく低減することが可能となります。
引き続き、他の県知事とも団結して、予定どおり二十七年度までに八ッ場ダムを完成させるよう国に強く求めてまいります。
もう一つ、市場業者への支援についてでありますが、市場の機能を担っているのは市場業者でありまして、いかに立派な施設をつくっても、その担い手がいなければ市場の機能は成り立ちません。
移転に当たって大事なことは、市場業者の不安や課題を解消し、安心して移転や事業継続ができるようにすることでありまして、先日、私は、市場業界の方々と直接会ってお話をして、改めてこのことを認識いたしました。
かつて、大田区の市場が新設されたときも同じことの配慮を都はいたしましたが、個々の市場業者が抱える問題や実態をつぶさに把握して、複合的に発想し、現実に立脚した支援を関係部局が連携して総力を挙げて取り組むことを強く指示いたしました。
今後、都としては、土壌汚染対策や市場施設の建設に加え、市場業者への効果的な支援を講じることで、首都圏三千三百万人の食の安全・安心を支える豊洲新市場の二十六年度開場を目指して全力を尽くしてまいります。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔水道局長尾崎勝君登壇〕
○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えします。
まず、水源や施設整備に関する新たな考え方の構築についてでございますが、将来にわたって安定給水を確保していくためには、渇水に対する安全度や気候変動などのリスク、経済動向や人口動態などを十分考慮することが必要であります。
一方、浄水場などの主要な水道施設は、間もなく一斉に更新時期を迎えます。このため、これを契機に、水道事業に大きな影響を及ぼすと想定されるリスク等について、より広範に調査分析を行い、これらに十分対応できるよう、水道システム全体の安全度を考慮し、東京の発展を支え続ける水道に再構築していく必要があります。
こうしたことから、将来の水道需要及び水源確保、施設整備のあり方を踏まえた、水道施設の再構築に向けた基本構想などを平成二十三年度中に策定し、都民にわかりやすく提示してまいります。
次に、利水における八ッ場ダムの必要性についてでございますが、現在、都は日量六百三十万立方メートルの水源を確保しておりますが、この中には、取水の安定性を欠く課題を抱える水源が日量八十二万立方メートル含まれております。
また、都の水源の約八割を占める利根川・荒川水系の水資源開発は、五年に一回程度の割合で発生する渇水に対応することを目標としており、十年に一回としている淀川水系などの全国の主要水系や、五十年に一回としているロンドン、既往最大の渇水を目標としているニューヨークなど、諸外国の主要都市と比べて渇水に対する安全度が低い計画となっております。
加えて、近年の少雨化傾向により、ダムなどの供給能力が当初計画よりも既に約二割低下しているなど、都の水源は極めて脆弱な状況にあります。
さらに、国等の予測によれば、気候変動の影響により、自然のダムといわれている利根川上流域の積雪量は、百年後、現在の三分の一まで減少するとされています。
こうしたことから、首都東京の安定給水のためには、水源の確保が極めて重要であり、八ッ場ダムは必要不可欠であります。
今後も関係自治体等と連携を密にし、八ッ場ダムの早期完成に向けて全力で取り組み、水道事業者としての責務を果たしてまいります。
〔総務局長比留間英人君登壇〕
○総務局長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えをいたします。
まず、指定管理者制度見直しの意義についてでございます。
都は、今回指定更新の時期を迎える百六十八施設について、制度導入から五年間の実績を踏まえ、施設の位置づけや性格を改めて検証をいたしました。
その結果、本来の利用目的に加えて、防災対策や文化財の継承、一体性のあるまちづくりなど、都の重要な政策と密接な関連のある特定の施設では、都の意向を反映できる公的性格を持つ団体による管理が政策実現の観点から必要であることが明らかになりました。
一方、監理団体は、長年にわたりこれらの特定の施設を都と一体となって管理してきており、都が保有してきた技術、ノウハウを着実に継承するなど、高い管理能力を有していることから、監理団体を特命で選定するなどの制度運用の見直しを行ったところです。
今回の見直しは、公の施設の位置づけを都の政策との関連性から整理し、重要な政策目的を実現するために、都政を支えるパートナーである監理団体を活用することで、行政の責任を確保しつつ、都民サービスの向上を図ることとしたものでございます。
次に、人材育成の観点からの指定管理者選定の見直しの意義についてでございます。
今回の見直しにより、監理団体においては、長期的視野に立った管理運営のもと、防災公園や文化財庭園、一体性のあるまちづくりなど、さまざまな分野で都が培ってきた技術やノウハウの継承が可能となる。また、団体の職員を都の関連部署へ派遣し、行政実務を経験させることにより、幅広い視野を養うとともに、企画管理能力を習得するなど、今後の団体運営を担う人材を計画的に育成できます。
一方、都においても、職員を団体に派遣し、事業実施の最前線における業務経験を積ませることにより、実務に不可欠な現場感覚が涵養され、利用者の具体的な声や実際の施設管理のノウハウを施策立案等の業務に役立てることができます。
こうした取り組みを通して、都と監理団体の双方が、長期的な視点から都政の現場に根差した人材を育成できると考えております。
〔港湾局長中井敬三君登壇〕
○港湾局長(中井敬三君) 東京港の国際競争力強化に関する二点のご質問にお答えいたします。
まず、港湾利用コストの低減に向けた公的な支援についてでありますが、都はこれまで、東京港の国際競争力強化に向け、東京港埠頭株式会社と連携して、取扱貨物量に応じてリース料を割り引くインセンティブ制度を導入するなど、ターミナルリース料の低減に取り組んでまいりました。
しかし、釜山港などのアジア諸港と比較した場合、東京港のターミナルリース料はいまだに高い水準にあり、これに対抗するためには、東京港埠頭株式会社の経営努力はもとよりですが、議員ご指摘のとおり、これに加えた公的な支援が必要であります。
このため、国に対して、東京港埠頭株式会社に対する税制優遇措置の拡充や、直轄工事における国費負担の拡大などを要求するとともに、都としてもガントリークレーン整備に対する支援制度など、ターミナルリース料原価の圧縮に向けた対策を早期に具体化してまいります。
次に、コンテナターミナル整備についてでありますが、近年、釜山港等のアジア諸港では、戦略的な貨物集荷を進めており、これに応じた港湾整備が急速に進められております。
こうした中、都でも東京港の機能強化を図るため、港湾計画において中央防波堤外側地区に最大水深十六・五メートル連続三バースのターミナルを計画し、現在、二バースの整備を実施しております。
ターミナルの規模は、奥行き五百メートル、一バース当たりの面積が既存の約一・四倍確保するなど、国際コンテナ港湾にふさわしい高規格なターミナルになる予定でございます。
さらに、最新鋭のガントリークレーンの導入や、情報通信技術を活用したゲート処理の円滑化など、ターミナル処理能力の向上に向けた取り組みも進めてまいります。
このような施策を総合的に推進し、東京港の国際競争力を高めていくことで、釜山港などアジア諸港に対峙する日本のハブポートを目指してまいります。
〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕
○中央卸売市場長(岡田至君) 市場業者の経営状況の認識と支援の検討についてお答えいたします。
本年一月から実施した個別面談におきましては、取引先の倒産による顧客の減少や売り上げの低下など、経営悪化の状況を訴える声が多くを占めております。さらに、財務検査、経営改善指導などで把握した状況も加味いたしますと、これまで築地市場の発展に寄与してきた市場業者の経営は、総じて厳しい状況にあると認識しております。
こうした状況を踏まえ、現在、支援の基本的な考え方を検討中であり、遅くとも来年一月末までに提示してまいります。提示に当たりましては、支援の内容につきましても可能な限り明らかにしたいと考えております。
さらに、この基本的な考え方を説明会などを開催して多くの市場業者に周知し、丁寧に説明した上で、再度、意見交換や個別面談を実施し、これらを通じて把握した意見、要望等をできる限り反映した効果的な支援策につなげてまいります。
〔環境局長大野輝之君登壇〕
○環境局長(大野輝之君) 電気自動車の普及に関します二点のご質問にお答え申し上げます。
まず、タクシーへの電気自動車普及の意義についてでございますが、都内のタクシーの年間走行距離は、一般的な自家用乗用車と比べますと十倍程度と長くなっております。このため、電気自動車への代替が進めば、CO2の削減など環境への負荷低減に大きな効果がございまして、タクシーへの電気自動車の普及は望ましいことと認識しております。
また、今後、電気自動車をマイカーなどへも幅広く普及させるためには、都民が実際に電気自動車に乗車し、そのメリットを実感する機会をふやすことが重要でございます。
この観点から、都は今年度、立川合同庁舎で電気自動車のカーシェアリング事業を実施し、都民の乗車機会の拡充に努めておりますが、タクシーでの電気自動車普及にも、同様の都民への啓発効果という意義があるものと考えております。
次に、普及に当たっての課題についてでございますが、タクシーの車両は、乗務員の交代制によりまして終日運用されております。都内の場合には、一日の走行距離が一般に二百キロメートルを超えております。これに対しまして、現在の電気自動車の走行距離は、長いもので、カタログ値でも二百キロメートル程度でございまして、エアコンを使用する実際の走行時にはさらに短くなります。
したがいまして、都内のタクシーへ電気自動車を導入するためには、走行可能距離の制約への対応や、長時間の車両の運用と充電時間の確保の両立などの課題がございます。
しかしながら、駅待ちタクシーなど、短距離中心の車両への導入や、乗務員の休憩に合わせて急速充電を行うなど、運用上の工夫によりまして、現在の電気自動車でも十分にタクシーとしての実用性を発揮することは可能と考えられます。
このため、タクシーへの電気自動車の普及に向けましては、都内タクシーの営業実態を把握しながら、実用可能な車両の用途や運用形態を早急に検証することが必要であると認識しております。
○副議長(鈴木貫太郎君) 二十八番新井ともはる君。
〔二十八番新井ともはる君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕
○二十八番(新井ともはる君) 一つ目の項目として、自殺対策についてお伺いします。
平成十年以降、十二年連続して国内自殺者は三万人を超える状態が続いています。欧米の先進諸国と比較しても、日本の自殺死亡率は高い水準にあり、G8諸国の中ではロシアに次いで二番目に高い状況です。
自殺総合対策大綱では、自殺の背景には、健康問題、経済、生活問題、家庭の問題などさまざまな要因が複雑に絡み合っているとしています。また、自殺は追い込まれた末の死であり、相談支援体制の整備などの社会的取り組みによって防ぐことができるとされています。
また、自殺を考えている人の多くは、死の瞬間まで死のうかどうかためらいを繰り返し、心理的に追い込まれていく中で、何らかのサインを発しているとされています。
自殺を予防するためには、自殺の危険性が高い人のサインに早期に気づき、適切な相談機関へとつなぐゲートキーパーの役割が重要です。
そこで、自殺を予防するために、都としてゲートキーパーの養成や活動の支援について積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
さて、私の住む日野市では、来年三月、自殺対策条例制定を目指し、先日、自殺対策シンポジウムを開催しました。当日は、遺族の方の講演や、条例案の策定にかかわった方々によるパネルディスカッションなどが行われ、行政機関にとどまらず民間団体や市民を巻き込んだ取り組みの実践などの紹介がありました。
自殺対策を進めるためには、悩みを抱えて死にたいと考えている人が地域で相談したり、支援を受けられる体制を構築することが重要です。
そこで、都では、自殺対策緊急強化基金を設置していますが、この基金を活用して、自殺対策に取り組む市区町村や民間団体を支援するとともに、都の取り組みを強化すべきと考えますが、見解をお伺いします。
最後に、シンポジウムでは、自死遺族でもある弁護士から、遺族が抱えている問題についての提案もありました。例えば、借金の相続放棄の制度を知らずに返済を続けていた例や、賃貸マンションの貸し主から多額の修繕費を請求される問題もあるとのことでした。
遺族の皆さんは、大切な人を失ったショックから、心や体にさまざまな変化が起こり、自殺を防ぐことができなかったという自責の念にかられ、一人で問題を抱えてしまっていることも多いと聞いております。
そこで、都には遺族に対する支援へ積極的に取り組むことが求められると考えていますが、見解をお伺いします。
二つ目の項目として、情報通信政策についてお伺いします。
「十年後の東京」実行プログラムでは、最先端の科学技術の活用を重視しています。ブロードバンドの情報通信基盤はインターネットだけでなく、電話やテレビなどのサービスを融合することも可能となり、都民生活にとっては、なくてはならないライフラインともいうべき重要なものであると考えますが、時間や場所を問わず通信できる環境や、条件整備と利活用について、都の基本的な見解をお伺いします。
次に、テレビ放送についてお伺いします。
来年七月の地上デジタル放送への完全移行は、国や放送事業者の責任のもと、国策として進められていますが、残り八カ月余りと、間近に迫っています。特に東京では、広く普及していますVHFアンテナをUHFアンテナに取りかえなければならないことや、ビル陰による電波障害が多いことなど、特有の課題も抱えています。
そこで、地上デジタル放送が何らかの理由で見ることができない都民が発生することのないよう、地デジ完全移行に向けた都の取り組みについてお伺いします。
次に、情報通信技術の活用についてお伺いします。
現在でも、都民の利便性を向上させるため、窓口体制の見直しや、システム上で申請内容の審査や結果通知ができるなど、業務の効率化も図られていますが、さらに電子申請の利用を一層促進していくための都の具体的な取り組みについてお伺いします。
最後に、ペーパーレス化についてお伺いします。
都では、既存の紙ベースでの業務について、IT化を進めてきました。しかし、情報システムの導入は進んでいるものの、業務の処理上、紙媒体の添付書類が必要な場合など、情報の共有化といったIT化の効果が十分に発揮されていないものも見受けられます。
ITによる情報の共有化を進めることにより、情報の検索性の向上や、情報セキュリティーの強化が図られるとともに、印刷物も減り、省スペース化、ペーパーレス化にもつながります。
そこで、情報通信技術の一層の活用を図ることにより、ペーパーレス化がさらに進むと考えますが、都の見解をお伺いします。
三つ目の項目として、教育の情報化についてお伺いします。
私たちの社会生活において、コンピューターは欠かせない存在です。学校教育の場でも、これからの情報社会に主体的に対応できる子どもたちの情報活用能力の育成は不可欠です。そのため、都教育委員会はICT計画に積極的に取り組み、教育の情報化を推進していくべきです。
そこで、都立学校におけるICT計画の取り組みの状況についてお伺いします。
次に、都内小中学校における教育の情報化についてお伺いします。
国は、教育用コンピューターの整備など、学校のICT機器の整備のために、補助事業の財政措置を行っていますが、教育用コンピューターの設置状況や、インターネット接続の整備状況には、市区町村ごとに差異が見られています。
その理由としては、市区町村の財政力のほか、ICT環境整備に対する取り組み姿勢の違いなどが影響していると推察いたします。
ICT教育を推進していくためには、このような市区町村ごとの整備状況の差を解消することが急務だと考えますが、小中学校のICT環境整備の状況について、都教育委員会の認識をお伺いします。
教育の情報化が重要ですが、それ以上に子どもたちが、設置された情報機器や、普及している携帯電話等を適切に活用し、さまざまな情報を見きわめる力の育成が必要だと考えています。
そこで、情報モラル教育や、情報機器を適切に活用する能力の育成を、小学校段階の早い時期から行うべきと考えますが、都教育委員会の取り組みについてお伺いします。
四つ目の項目として、交通政策をお伺いします。
まず、自転車の関係する事故のうち、自転車が加害者となる事故についてお伺いします。
自転車が加害者となる事故は数多く発生していますが、一番の問題は、多くの自転車が保険に未加入であり、事故に遭遇した被害者が補償を受けられず、泣き寝入りせざるを得ない点であります。自転車を対象とした保険には、民間の損害保険会社が傷害保険、火災保険、自動車保険の特約として、個人賠償責任保険を発売しており、また、財団法人日本交通管理技術協会において、自転車安全整備店で点検、整備を受けると附帯されるTSマーク制度がありますが、加入者が少ないのが現状です。
自分が加害者となり、発生する自転車事故のリスクについて、地域や学校などが開催している安全教室で、必ず周知すべきと考えますが、都の見解をお伺いします。
次に、観光振興にかかわる交通対策についてお伺いします。
東京駅八重洲口、駅広場の整備は、JRによって進められていますが、路線バスや高速バスの乗り場はあるものの、観光バスや貸切バスなどのバスの乗り場は計画されていないと聞いています。東京駅八重洲口周辺を初めとする主要ターミナルにおける観光バスや貸切バスの乗り場の整備を進めるべきと考えますが、都の基本的な見解と方向性についてお伺いします。
現在、東京駅八重洲口の南付近にある道路整備保全公社が管理運営する丸ノ内鍛冶橋駐車場は、一日百台以上の大型観光バスが利用する貴重な場所となっており、重要な観光バスの発着場として活用されています。
先日、現地を視察したところ、清掃などの日常的な管理はなされていましたが、例えば、自動販売機に置いてあるような簡易ベンチは屋根もなく、吹きさらしで、雨が降ったときには、お土産など荷物を持った観光客が、雨に濡れて傘を差している状態です。また、工事現場に置いてあるような簡易的なトイレは、古く、扉もがたついており、開け閉めにも不自由なものでした。
東京の玄関口として、イメージを払拭するため、改善すべき点が多々あると考えますが、見解をお伺いします。
次に、駐車禁止規制緩和についてお伺いします。
都議会民主党は、昨年の第四回定例会から、一貫して駐車禁止の現状課題の是正を求めてまいりました。その結果、さきの定例会において、現在、行われている一律の規制を緩和する方向が示されています。
これについては、第一歩を踏み出すことができたと、大きく評価いたします。しかし、この広い東京で十カ所は、まだまだ十分とはいえません。都は四十カ所を対象地域としていましたが、残り三十カ所の進捗状況をお伺いすると同時に、今後さらなる規制緩和対象地域を拡大する必要性があると考えますが、見解をお伺いします。
最後に、五つ目の項目として、自治体病院への支援策についてお伺いします。
まず救急医療についてお伺いします。
昨年、都は救急医療体制のさらなる充実強化に向けて、東京ルールを導入しました。日野市は、八王子、町田、多摩、稲城の五市で構成される南多摩保健医療圏で、西多摩に次いで面積も広く、人口も約百四十万人と、東京都の一割を超えています。しかし、地域救急医療センターは、日本医科大学多摩永山病院一カ所のため、地域の二次救急医療機関が協力して対応しています。都内には十二医療圏ありますが、医療圏内に地域救急医療センターが一系列しかない圏域は五カ所あります。
今後、日野市立病院が含まれる南多摩保健医療圏を初め、各地域の情勢に応じ、地域救急医療センターを整備し、東京ルールの安定的な運用に努めるべきと考えますが、見解をお伺いします。
次に、小児医療についてお伺いします。
多摩地域は二十三区と比べ、小児医療資源が少ないのが現状です。南多摩保健医療圏には、小児科で二十四時間入院対応できる施設が五病院です。都はこれまでも、小児病院の充実を図るため、支援策を実施するとともに、小児救急研修を実施し、医師及び看護師を育成するなど、質の向上に取り組んでまいりました。
しかし、小児医療資源の少ない多摩地域において、迅速適切な医療を提供するには、地域の診療所と日野市立病院などの中核病院、高度な三次医療を提供する都立病院などが、より一層連携していくことが不可欠だと考えております。
そこで、多摩地域の小児医療の拡充に向けた都としての具体的な取り組みをお伺いします。
次に、医師確保についてお伺いします。
救急医療が十分に機能するためには、その前提として、医師、看護師等の医療スタッフの確保が必要です。しかし、現場では過酷な労働環境にあり、やめてしまう医師も多いのが現実です。日野市立病院においても、特に救急部門のスタッフ確保が困難であり、苦慮していると伺っております。救急医療は都民生活の基盤であり、地域医療の根幹です。救急医療に従事する医療等の確保に向けた積極的な取り組みが必要です。また、勤務医の厳しい労働環境の要因の理由には、医師でなくても対応可能な業務を行っている現状があります。
そこで、救急医療に従事する医師の確保のため、都は勤務医師の負担軽減に対し、どのような支援を行っているのかお伺いします。
以上で私の質問は終わりにします。ご答弁よろしくお願いします。(拍手)
〔警視総監池田克彦君登壇〕
○警視総監(池田克彦君) 新井ともはる議員の一般質問にお答えします。
荷さばき車両に配意した駐車規制の見直しにつきましては、ご指摘の十月までに実施できなかった約三十区間のうち、安全な駐車スペースの確保が困難であるなど、実施が難しい区間を除き、現在、地域住民等との意見調整を行っているところであり、荷さばき駐車のルールについて、合意が整った区間から順次、駐車規制の緩和を実施していくこととしております。
また、今後、これ以外の地域につきましても、地域住民の皆さんや、物流事業者の方々などからのご意見、ご要望を十分に踏まえまして、交通の安全と円滑を確保しつつ、荷さばき車両に配意したよりきめ細かな駐車規制となるよう、見直しを推進してまいります。
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答えします。
まず、都立学校におけるICT計画の取り組みの現状についてでございます。
児童生徒が情報を適切に活用する能力を育成するため、ICT環境を整備し、積極的に活用していくことは重要であると考えております。このため、都教育委員会は、都立学校ICT計画を平成十九年度に策定し、平成二十年度からの二カ年間で校内LANを整備し、ネットワーク化を図りますとともに、電子情報ボード等の教育用ICT機器や、障害種別に応じた障害支援機器の配備を行い、ICT環境を整備いたしました。
今後は、整備されたICT環境を活用した授業を一層充実させることにより、児童生徒の学習に対する意欲や達成感を高めていきますとともに、情報活用能力の向上に努めてまいります。
次に、公立小中学校におけるICT教育についてでございます。
公立小中学校のICT環境の整備は、設置者である各区市町村がそれぞれの方針に基づいて進めているところでございます。そのため、区市町村によって整備状況に差が生じてはおりますが、現在、コンピューター教室は、ほぼすべての公立小中学校に整備されており、各小中学校は、さまざまな工夫をしながら、ICTを活用した教育活動に取り組んでおります。
都教育委員会は、ICT活用ガイドブックを都内公立小中学校に配布いたしますとともに、ICT校内研修用資料集等をホームページに掲載いたしまして、区市町村の教育活動への支援を行っております。区市町村が学校ICT環境の整備を進めるためには、国の補助事業も活用しながら計画的に取り組むことが効果的であり、都教育委員会は、国に対し、ICT環境整備の補助金を、今後とも予算措置するよう提案要求しているところでございます。
次に、情報モラル教育や情報機器を適切に活用する能力の育成についてでございます。
子どもたちに、インターネットなどを使う際のマナーや、相手への配慮などの望ましい態度や、情報機器を使いこなして情報を主体的に選択、活用するなどの能力を早い段階から育成することは極めて重要でございます。
都教育委員会はこれまで、情報モラルや情報機器の活用に係るさまざまな指導資料を、都内すべての公立学校の教員に配布いたしますとともに、警視庁や青少年治安対策本部と連携を図り、児童生徒の健全育成に資するためのハイテク犯罪対策シンポジウムを、保護者、地域の方々や外部人材の協力を得て開催するなどして、児童生徒が情報社会における被害者にも加害者にもならないよう、啓発活動に努めてまいりました。
しかしながら、児童生徒が不用意に自分や他人の個人情報をインターネット上に公開するなどの事例が後を絶たないことから、昨年十一月に、学校における指導をさらに徹底するよう通知いたしますとともに、本年三月には、児童生徒用のリーフレットを作成、配布したところでございます。
今後とも、こうした取り組みを通して、学校における情報モラル教育や情報機器を、適切に活用する能力の育成を児童生徒の実態に即して推進してまいります。
〔東京都技監河島均君登壇〕
○東京都技監(河島均君) 主要ターミナル駅における観光バスなどの乗り場の整備についてのご質問にお答えいたします。
駅前広場は、交通管理者など関係者との調整を図りながら計画しておりまして、限られた空間を最大限に活用するため、路線バスやタクシーなどの乗降施設を優先的に配置しております。
このため、観光バスなどの乗り場を整備する場合には、駅前広場以外の場所における新たな導入空間の確保や、観光バスの集中による周辺交通への影響など、さまざまな課題を検討することが必要となります。
今後、主要ターミナル駅における観光バスなどの乗り場の整備につきましては、周辺まちづくりの機会などをとらえ、地元自治体や関係事業者等とも連携を図りながら、適切に対応してまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 六点のご質問についてお答え申し上げます。
まず、自殺対策に関する三点にお答えいたします。
最初に、自殺予防におけるゲートキーパーについてでありますが、自殺を未然に防ぐためには、地域、職場などで、身近な人の自殺のサインに気づき、適切な相談機関につなぐゲートキーパーが重要な役割を担っております。そのため、都では、区市町村の相談窓口職員や民生児童委員、企業の人事担当者などを対象に、ゲートキーパーの養成研修を実施いたしております。
また、ゲートキーパーの活動を支援するため、さまざまな自殺に関する相談機関が参加しております、こころといのちの相談・支援東京ネットワークの情報提供を行うほか、地域でゲートキーパーの育成指導を行う保健師等を対象に、法律や労働問題などの専門研修を実施いたしております。
次に、自殺対策緊急強化基金を活用した取り組みについてでありますが、都は、この基金を活用して、今年度は、人材育成や普及啓発、自殺対策協議会の設置などの取り組みを行う三十四の区市町村を支援するとともに、電話相談などの事業を実施する十一の民間団体に対しても支援を行っております。
都におきましても、本年四月から、相談者の悩みに応じて適切な相談機関へつなぐことを目的とした自殺相談ダイヤルを設置いたしまして、これまでに二千五百件以上の相談にこたえております。今後とも、基金を有効に活用して、自殺対策に取り組んでまいります。
次に、自死遺族の方々への支援についてでありますが、親族や友人など身近な人の自殺は、残された多くの人たちに深刻な心理的影響を及ぼすだけでなく、心身の健康を害するなど、社会生活への影響も大変大きいと考えております。
このため、都は、遺族の方々が抱える心の悩みや、相続などの法的な問題に対応できるさまざまな相談窓口に関する情報提供を行っております。
また、自死により家族を失った人同士がお互いに支え合う場である分かち合いの会を開催するほか、こうした方々を支える個別訪問や相談などを行う人材を育成するための研修を実施いたしております。今後とも、自死遺族の方々への支援に取り組んでまいります。
次に、救急医療の東京ルールの安定的な運用についてでありますが、都は、二次救急医療機関の理解と協力を得ながら、地域において救急患者の受け入れ調整等の機能を担う地域救急医療センターの指定を、昨年の事業開始当初の七圏域二十六カ所から、現在では全十二圏域五十九カ所に拡大をしております。
引き続き東京ルールを安定的に運用し、迅速適切な救急医療体制の充実を図るため、二次保健医療圏ごとに医療機関や消防機関、関係行政機関などをメンバーとして設置いたします地域救急会議を通じて、地域の医療資源などの状況に応じたセンターの確保に努めてまいります。
次に、多摩地域における小児医療の拡充についてでありますが、都では、重篤な小児救急患者の救命治療を速やかに行うため、本年八月に、子ども救命センターを創設いたしまして、多摩地域では、都立小児総合医療センターを指定いたしております。現在、このセンターが中心となりまして、ブロック会議や研修会などにより、多摩地域における初期から三次までの医療機関の連携の仕組みづくりに取り組んでおります。
また、北多摩北部地域におきましては、地域の中核病院と診療所などが連携を深めるための会議や症例検討会などを実施いたします地域小児医療ネットワークモデル事業も進めております。
こうした取り組みを通じて、医療機関相互の一層の連携体制を確保し、多摩地域の小児医療体制の充実に努めてまいります。
最後に、救急医療に従事する病院勤務医の負担軽減についてでありますが、都は、救急医療を担う医師の確保とその定着を図るため、救命救急センターや、小児二次救急医療機関などを対象に、当直体制の見直しや短時間勤務の推進、医師事務作業補助者の導入など、勤務環境の改善を支援いたしております。また、救急勤務医師に対する手当の補助により、処遇の改善も図っております。
こうした取り組みによりまして、救急医療に従事する勤務医の負担軽減を図り、医師の確保、定着に努めております。
〔総務局長比留間英人君登壇〕
○総務局長(比留間英人君) 四点のご質問にお答えをいたします。
まず、情報通信基盤の整備及び活用についてでございます。
都民生活の質の向上のためには、大容量データを高速で送受信できる高度な情報通信基盤が整備され、その恩恵をだれもが、いつでも、どこでも享受できることが重要でございます。
現在、小笠原村までの海底光ファイバーケーブルの整備を進めており、これにより都内の全区市町村でブロードバンドによる情報通信基盤が整うことになります。こうした情報通信基盤を活用することで、災害時の状況を画像で確認できるシステム、緊急車両の走行を優先する制御システム、離島などの遠隔医療の充実など、都政のさまざまな分野で行政サービスの充実を図ってまいります。
次に、地上デジタル放送の完全移行への都の取り組みでございます。
都は、来年七月の完全移行までの間に、すべての都民が地上デジタル放送を視聴するための準備を完了できるよう、国に対し、必要な対策を講じることを提案要求してまいりました。その結果、地域単位での説明会の実施や、助成制度の拡充などが実現したところでございます。また、「広報東京都」を初め、さまざまな媒体を通じて、地デジ移行に関する情報を広く都民へ周知をしております。
さらに、区市町村、国、放送事業者、家電販売事業者などと、東京地区連絡会議を設置し、UHFアンテナへの取りかえやビル陰による受信障害など、東京に多く見られる課題について、必要な取り組みを推進しております。
次に、電子申請の利用促進の具体的な取り組みについてでございます。
都は、都民の利便性の向上と行政事務の効率化を図る観点から、平成十三年度より、電子申請の受け付けを開始し、平成十六年度からは、区市町村との共同運営による広域的なシステムも稼働させているところでございます。
こうした取り組みにより、都における電子申請の受け付け件数は年々増加し、平成二十一年度実績で、三百二十万件に上っております。また、本年四月には共同運営のシステムに、新たに携帯電話から申請できる機能を加えるなど、利便性のさらなる向上を図っております。
現在、対象手続の拡大や、利用しやすくするための事務処理フローの見直しを全庁的に進めるなど、電子申請の一層の利用促進に取り組んでいるところでございます。
最後に、ITを活用したペーパーレス化についてでございます。
ITの活用により、これまでの業務を大きく変えて、ペーパーレス化につなげていくことは重要でございます。これまで都は、電子都庁推進計画に基づき、都民サービスから内部管理まで、紙で行われていた業務のIT化に取り組んでまいりましたが、いまだ改善の余地が多く、取り組みは道半ばにございます。
そのため、本年九月、業務・情報システム最適化計画を策定し、ITと業務改善が一体となったスリムで効率的な行政を目指し、全庁を挙げて取り組んでおります。この計画に基づき、ファイルサーバーの共同利用、基幹システムの統合や連携による情報共有化を図り、紙情報から電子データへと移行を進めることで、ペーパーレス化に寄与するものと考えております。
〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕
○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 自転車が加害者となる事故についてであります。
昨今、相手に大けがを負わせたり、死亡させたりするなどの大事故により、支払いが困難になるほどの多額の賠償金が必要となり、被害者が十分に救済されないケースがあることは、社会的に憂慮すべき問題であると考えています。都民一人一人がいつ何どき被害者にも加害者にもなるリスクを負っていることを認識していただくことが大切であります。
このため、都としましては、区市町村等の関係機関と連携し、地域や学校における自転車の安全教室等の機会において、この点についても広く都民に認識していただけるよう、普及啓発に努めてまいります。
〔建設局長村尾公一君登壇〕
○建設局長(村尾公一君) 丸ノ内鍛冶橋駐車場についてでありますが、当駐車場は、平成八年当時、東京駅周辺で大型観光バスの駐車場不足などにより交通混雑が悪化する中で、交通管理者等からの要請も踏まえ、東京都道路整備保全公社が公益的な観点から開設したものであります。
公社は、利用者サービスの向上に資する駐車場の効率的な管理運営に日ごろより努めており、当駐車場においても自動二輪車の受け入れなど、先駆的な取り組みを行っております。
当駐車場は、公社が都の普通財産を一年ごとの賃貸借契約により臨時駐車場用地として一時使用しているため、お話のベンチやトイレは簡易なもので対応せざるを得ない状況にあります。
今後とも、都としていたしましては、駐車場の効率的運営と利用者サービスの向上に努めるよう公社を指導してまいります。
○議長(和田宗春君) 八十三番小磯善彦君。
〔八十三番小磯善彦君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○八十三番(小磯善彦君) スポーツ振興について質問します。
我が党は、かねてより、身近な地域で世代を超えて多くの住民がスポーツを楽しめる地域スポーツクラブの拡充を訴えてきました。
都においても、三十二の区市町村に八十の地域スポーツクラブが設立されていますが、活動場所の確保に苦労し、とりわけ運営や指導に当たる人材の確保の問題は切実です。
そこで、地域スポーツクラブの運営に当たる人材の育成、確保に向けた都の取り組みについて伺います。
また、都は、平成二十五年までに全区市町村で地域スポーツクラブを設立することを目標に掲げていますが、未設置の区市町村も多く、一層の取り組みが求められるところです。
私の地元、町田市では、既に二つの地域スポーツクラブが活動しています。その一つは、ことし四月に地元にキャンパスを置く法政大学が設立したもので、都内では大学が設立した初の地域スポーツクラブであります。住民の身近なスポーツの場として地元の大学を活用できることは、地域にとって大変有用です。また、大学側にとっても、地域貢献や学生の社会学習活動の機会提供など、多くのメリットがあります。
そこで、各地の大学等による地域スポーツクラブの設立を検討すべきと考えますが、見解を求めます。
平成二十五年に開催するスポーツ祭東京二〇一三は、国体と全国障害者スポーツ大会を一つのスポーツの祭典として実施する一大イベントであり、両大会を合わせて約三万人の選手、監督が参加し、多くの関係者や観客が会場となる区市町村を訪れます。
運営を担う区市町村では、競技施設の整備を進めていますが、今後は本番の運営に向けた準備を本格化していく段階であります。
競技会の運営に当たっては、競技運営の補助や来場者の案内などの多岐にわたる業務があり、これまでの事例では多くの地域住民がボランティアとして参加していますが、町田市のように複数の競技を実施する自治体では、特に多くのボランティアが必要となります。
都としては、スポーツ祭東京二〇一三におけるボランティアの確保について、地域スポーツクラブ、大学等も巻き込んだ積極的な取り組みをすべきであります。所見を求めます。
次に、児童虐待の未然防止策について質問します。
厚生労働省の子ども虐待による死亡事例等の検証結果報告の中には、虐待の死亡事故に占める一歳未満の乳児の割合が高く、妊娠期から出産後まで継続的な支援を行うことが重要であると報告されています。
母親は、出産に伴う心身への負担や育児の不安などから心身の変調を来し、不安定な時期であるほか、育児に関する知識、経験が乏しく、周囲からの支援を受けることが困難な状況になっています。
産後うつの発症率は約一五%といわれ、これらは児童虐待の要因の一つともなっています。このため、国は平成十九年度から、生後四カ月までの乳児のいるすべての家庭を訪問する、こんにちは赤ちゃん事業を開始しました。
これにより、区市町村においては、地域の実情に応じ、保健師や助産師、民生児童委員、子育て経験者などが生後四カ月間までの乳児のいる全家庭を訪問し、不安や悩みを聞き、子育て支援に関する情報を提供するとともに、支援が必要な家庭に適切なサービスをつなげる取り組みが実施され始めています。
児童虐待を未然に防ぐため、都内の全区市町村がこの事業を行うよう、都が積極的に支援すべきと考えますが、所見を求めます。
さらに、この事業により把握した要支援家庭を適切な支援につなげることが重要です。世田谷区では、区と武蔵野大学が協働で産後ケアセンターを開設し、母親の休養と体力回復に向けて、いやしとケアを提供しています。また、家事援助、育児補助を行う子育て支援ヘルパー派遣事業などの具体的な支援を行っております。
こうした区市町村の先駆的な事業の報告や紹介をするなど、都として区市町村の取り組みをより拡充すべきであります。所見を求めます。
次に、中小企業の画期的な技術の普及の支援について質問します。
先月、東京都産業交流展を視察し、意欲的な中小企業の技術を拝見しました。本年のベンチャー技術大賞は、ミドリムシの屋外大量培養技術でありました。ミドリムシは、五億年以上前に誕生した生物です。ミドリムシは、植物のように光合成を行い栄養分を体内にため、動物のように細胞を変形させて動く、植物と動物の両方の性質を持っている微細藻類です。
ミドリムシには五十九種類の栄養素が含まれ、そこには成人の必須アミノ酸すべてがあり、既に機能性食品として製品化、販売されています。また、熱帯雨林の三倍以上も高いCO2の吸収能力を持ち、温暖化対策として発電所排ガス固定化の手段として実証実験されています。さらに、ミドリムシからオイルをつくる取り組みもあり、第二世代バイオジェット燃料の供給源の一つとして注目されています。
これは人類が直面する食料問題と環境問題に大いに貢献できる画期的な発明であり、技術であります。このような画期的な技術について、大きな産業として育てるという視点から、都としても積極的な支援をしていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
特に地球温暖化問題は世界共通の課題であり、この解決に向け研究開発に取り組むことは、中小企業やベンチャー企業が大きく成長する絶好の機会であります。ミドリムシを培養してオイルをつくり出す技術を初め、世界に通用する環境、省エネルギー技術が東京から数多く生まれるよう、技術開発への支援に取り組むべきと考えますが、所見を求めます。
次に、消防行政について質問します。
私の地元の町田市は、人口が四十二万人に達しようとしております。町田市は、神奈川県との境に位置し、産業、教育などを通して人の交流が盛んであり、その一方で、安全・安心のまちづくりに力を入れなければなりません。それには警察、消防の体制強化が欠かせません。
町田市に消防署は一署でありますが、築年が古く、来庁者にとっても使い勝手が不便だと聞いております。
東京消防庁の建てかえの計画の中に町田消防署が位置づけられており、場所については町田市が土地を提供することになっておりますが、まだ特定されておりません。町田市の安全・安心のために、前倒ししてでも、一刻も早い建てかえが必要と考えます。消防総監の所見を求めます。
また、町田市には、相原・小山土地区画整理事業による新しいまちが誕生しております。ここは人口が急増し、小学校二校が新設、中学校一校が建設中であり、医療、福祉施設等が林立しております。こうした地域に消防署の出張所を新設すべきであります。所見を求めます。
次に、河川の整備と特定都市河川浸水被害対策法について質問します。
平成二十年八月に、多摩地域を中心に一〇〇ミリを超える集中豪雨があり、町田市の境川でも洪水し、床上、床下浸水被害が発生しました。
河川の整備は下流から進めなければなりませんが、境川は下流側の神奈川県管理区間の整備がおくれているために、東京都管理区間の護岸は五〇ミリ対応の整備ができているにもかかわらず、川底を五〇ミリ対応に深く掘ることができない状況です。
このため、町田市内の下水道については放流規制がかかり、下水道管の雨水を、あるところではおよそ三〇%、あるところでは四〇%しか河川に流せないため、これにより内水はんらんを招いてしまいます。都県境ならではの苦労があります。
都では、この二年間、境川の旧河川敷を活用して、小さい調整池を幾つかつくるなど、少しでも治水能力を高めるために努力してきました。
治水対策には、河川、下水道整備及び流域対策の総合的な取り組みが必要であり、都は、事業がおくれている神奈川県側の境川整備について強く働きかけるべきと考えますが、見解を求めます。
また、近年、都内では市街化の進展に伴う雨水流出量の増大や、ゲリラ的な集中豪雨の発生による都市型水害が頻発しています。こうした状況に対処するために、特定都市河川浸水被害対策法に基づき、平成十七年四月、町田市の鶴見川が特定都市河川に指定され、総合的な治水対策が講じられています。
浸水被害を軽減し、地域住民が安全・安心に暮らすために、一刻も早く境川を特定都市河川に指定すべきと考えますが、改めて境川を指定した場合の効果及び今後の取り組みについて、都の見解を求めます。
次に、河川のソフト対策について質問します。
浸水対策では、ハードとともにソフト対策が重要です。ことし七月五日に北区内で発生した石神井川の洪水により、突然、床上浸水に見舞われました。
都内の中小河川では、局地的な集中豪雨が頻発し、都民が安全に避難できるような取り組みとして水位情報を都民に迅速に伝え、都民の自助、共助に役立てることが重要であります。
このことは、本来、区市町村の役割でありますが、石神井川のように水位上昇が速い河川においては都が支援し、新たな仕組みの導入が有効と考えますが、見解を求めます。
次に、大規模地下街等浸水対策計画について質問します。
都内には、大規模な地下街や地下鉄の駅が数多くありますが、一たび浸水した場合には、人命にかかわる重大な被害が発生し、都市機能を損なうおそれがあります。
大規模地下街などでは個別に対策を講じていますが、地下鉄、地下街、個別ビルが一体となった地下空間の浸水対策が必要です。
昨年の四定で、我が党の質問で、八重洲地下街等浸水対策計画を策定することになりましたが、その時期と内容について明らかにすべきです。
あわせて、その他の大規模地下街の浸水対策について、早期に計画策定すべきでありますが、見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 小磯善彦議員の一般質問にお答えいたします。
小零細企業の画期的な技術の育成についてでありますが、人間社会の進歩というものは必ずその新しい技術の開発によってもたらされてきました。東京には、世界に誇る卓越した技術を持つ小零細企業が多数存在しておりまして、我が国の財産ともいうべきこうした企業が大きく飛躍するための機会を提供していくことが必要であると思います。
従来は、東京で成功した企業の表彰をしていたようですけれども、成功したものは今さら表彰してもしようがないので、私、就任以来、ベンチャー技術大賞というものを創設しまして、それなりに画期的な技術を開発した、その技術を専門家に選択してもらいまして表彰を行ってきましたが、本年その大賞となりました、ミドリムシを、非常に瞬間的といいましょうか、短期間で大量培養する技術も、驚くべき発想を実現した、極めて将来性のある技術でありました。
ミドリムシというのは植物と動物の栄養をともに兼ね備えたもので、例えばクッキーなどに入れましても非常に栄養価の高い食べ物になりますし、さらに、これを演繹しますと、何と航空機の燃料にもなるということでありまして、これまでも受賞企業の多くがこの賞をばねにして事業の拡大を実現しておりまして、営業の成績も上がっておりますが、都もその商社のOBを市場開拓のアドバイザーとして起用したりしまして、知的財産の戦略的な活用を助言するなど、幅の広い手だてを講じて支援を行ってまいりました。
さらに、受賞企業の技術を英語の冊子にまとめまして、海外に広く紹介するなど、海外進出を強く後押ししております。今後もこのような取り組みによりまして、ベンチャー企業の画期的な技術が大きな産業として世界に販路を持って実を結んでいくよう、積極的に支援をしてまいりたいと思います。
他の質問については、技監並びに関係局長から答弁します。
〔東京都技監河島均君登壇〕
○東京都技監(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、境川の特定都市河川の指定についてでございますが、特定都市河川浸水被害対策法は、著しい浸水被害が発生するおそれがある河川を特定都市河川に指定し、浸水被害の防止のための対策を推進するものでございます。
特定都市河川に指定した場合、関係自治体は共同して流域水害対策計画の策定を行い、これに基づき、河川の整備や雨水貯留浸透施設の整備を進めていくことになります。
また、流域においては、事業者などが土地を改変する場合に、雨水貯留浸透施設の設置を義務づけることなどにより、総合的な治水対策を推進することができます。
境川では、お話のような浸水被害が発生していることや、下流側の河川整備の進捗状況などから特定都市河川に指定し、総合的な治水対策を講じることが有効であると考えております。
都としては、関係自治体と調整を図りながら、境川の特定都市河川の指定に向けて積極的に取り組んでまいります。
次に、大規模地下街浸水対策計画についてでございますが、都は、近年の局地的な集中豪雨の増加を踏まえ、浸水の危険性が高い地域を中心に、迅速かつ集中的に実施すべき施策を緊急豪雨対策として取りまとめ、その中で、大規模地下街ごとに浸水対策計画の策定を支援することといたしました。
大規模地下街におきましては、地下鉄、個別ビルなどが接続しているため、各施設管理者が連携して、ハードとソフト両面から総合的に浸水対策計画を策定していくことが重要でございます。
このため、都は、昨年十二月に八重洲地下街をモデルケースに選定いたしまして、各施設管理者や地元区とともに、八重洲地下街等浸水対策計画策定協議会を設置いたしました。現在、止水板設置などの浸水防止対策や、危険度の段階に応じた水害対策本部の体制のあり方、避難誘導方法など、具体的な検討を行っておりまして、今年度中に八重洲地下街における浸水対策計画を策定する予定でございます。
また、新宿、渋谷、池袋など、その他の大規模地下街につきましては、施設管理者や関係区とともに情報連絡会を設置し、八重洲地下街での検討状況の説明など、浸水対策計画策定に向けた意見交換を行っております。
今後、これらの地下街におきましても浸水対策計画策定を推進することが必要でございまして、このための支援策について検討してまいります。
引き続き大規模地下街の安全・安心な機能確保に努めてまいります。
〔スポーツ振興局長笠井謙一君登壇〕
○スポーツ振興局長(笠井謙一君) 三点のご質問にお答えをいたします。
まず、地域スポーツクラブの人材の育成、確保についてでございますが、地域スポーツクラブが安定的に運営されるためには、クラブのマネジメントに精通した人材やスポーツ指導者の育成が重要でございます。
このため、都では、東京都スポーツ文化事業団に設置いたしました広域スポーツセンターと連携し、クラブの運営に当たるマネジャーやコーディネーターを養成するための各種講習会を開催するとともに、体育指導委員に対する研修などに取り組んでまいりました。これまで育成してまいりました人材が、これにより、多くのクラブでスタッフや指導者として活躍をしております。
今後も、引き続き人材の養成とスキルアップに努めるとともに、住民に地域スポーツクラブの活動を体験してもらう都民参加事業の実施や、各クラブの活動状況についてインターネットにより、きめ細かく情報提供を行うなど、より多くの都民に地域スポーツクラブの魅力をPRすることにより、人材の育成、確保に寄与してまいります。
次いで、大学等による地域スポーツクラブ設立の検討についてでございますが、地域スポーツの振興を図る上で、身近にスポーツに親しめる地域スポーツクラブの設立を進めていくことは重要であり、都はこれまで、行政職員やスポーツ関係者を対象としたさまざまな支援策を講じ、クラブの設立、育成に力を注いでまいりました。
この結果、現在、都内には八十のクラブが設立され、地域スポーツの拠点として活動しておりますが、今後、東京都スポーツ振興基本計画で掲げた目標を達成していくためには、これまでの取り組みに加え、地域スポーツクラブの設立、運営に当たる新たな担い手を開拓し、活用していくことが必要と考えております。
中でも、議員お話しの大学等の教育機関は、教員や学生を初め、クラブの設立、運営に当たる人材を多数有するなど、地域スポーツクラブの新たな担い手として期待できるものでございます。
このため、今後、大学等によるクラブ設立に向けた新たな支援策を検討し、地元区市町村や地域住民とも協力しながら、地域スポーツクラブの設立をさらに進めてまいります。
最後に、スポーツ祭東京二〇一三のボランティアについてでございますが、都におきましては、都民参加の大会を実現する観点から、開閉会式の運営や広報活動、障害者の介助などの業務に多くのボランティアの活用を予定しております。
また、競技会の運営を担う区市町村におきましても、円滑な競技運営のためにはボランティアの活用が不可欠であり、さらに、住民参加で競技会を盛り上げていくことで住民相互の連帯感を醸成し、地域社会の活性化を促すことにもつながります。
都におきましては、都民運動の一環としてボランティアの活用に向けた検討を進めており、区市町村におけるボランティアも含め、ご指摘にあるような各種団体や教育機関等から幅広く協力を得られるよう働きかけてまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 二点のご質問についてお答え申し上げます。
まず、乳児家庭全戸訪問事業についてでありますが、本事業は、生後四カ月までの乳児がいるすべての家庭を訪問いたしまして、子育てについてのさまざまな不安や悩みを聞き、育児に関する情報提供等を行うものでありまして、支援が必要な家庭を早期に発見し、適切なサービスに結びつける方策として重要な事業でございます。
都としては、区市町村に対しまして、子育て事業の説明会や個別の働きかけなどにより事業の実施を促しており、現在、四十八区市町村において実施されております。
今後、すべての区市町村が本事業を実施するよう、引き続き働きかけてまいります。
次に、要支援家庭に対する支援についてでありますが、乳児家庭全戸訪問事業などにより要支援家庭を発見した場合は、それぞれの家庭の状況に応じた適切な支援につなげることが重要であります。
このため、都は、要支援家庭を育児支援ヘルパーなどの子育てサービス事業や各種相談事業などに結びつける仕組みづくりを行う区市町村に対しまして、包括補助制度を活用して支援を行っております。
今後、区市町村職員等への研修において、虐待の未然防止に効果的な事例を紹介するなど、子育て家庭を支援する区市町村の取り組みを促進してまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 環境問題の解決につながる技術開発の支援についてのご質問にお答えいたします。
中小企業が、CO2削減等に役立つ技術や製品を生み出し、新たなビジネスチャンスとしていくことは重要な取り組みと考えます。このため、中小企業のそうした取り組みに対し、都立産業技術研究センターでは、来年五月の新本部の開設を機に、例えば、環境の負荷の小さいLEDや有機EL、太陽電池などを利用した製品の開発など、環境、省エネルギー分野での研究開発を積極的に支援してまいります。
また、現在、都市課題解決のための技術戦略プログラム事業の中で、同センターと首都大学東京が協力して環境、省エネルギー技術の研究開発等を進めておりまして、その成果を今後の実用化に向けて中小企業に確実に提供してまいります。
こうした取り組みにより、地球環境問題の解決や省エネルギーの実現につながるよう、都内中小企業による技術開発を支援してまいります。
〔消防総監新井雄治君登壇〕
○消防総監(新井雄治君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、町田消防署の建てかえについてでありますが、町田消防署の庁舎は昭和三十八年に建築され、四十七年が経過し、老朽化しております。
このことから、東京都の主要施設十カ年維持更新計画の対象として建てかえを予定しており、現在、用地の確保を町田市に依頼しております。
今後、用地が確定次第、町田市を初め関係部局と連携し、庁舎改築に向けた具体的な手続を速やかに進めてまいります。
次に、消防出張所の設置についてでありますが、ご指摘の相原・小山地区は、土地区画整理事業に伴い、近年、人口が増加している地域であり、市街化が進展していると認識しております。
当庁では、地域の消防行政需要の推移を踏まえ、消防力配備のバランスや道路状況等を総合的に勘案し、消防出張所を設置することとしております。
今後とも、消防出張所の設置につきましては、各市町村や関係部局と十分に連携し、適切に対応してまいります。
〔建設局長村尾公一君登壇〕
○建設局長(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、境川整備についての神奈川県への働きかけについてでございますが、境川の東京都管理区間につきましては、護岸整備がほぼ完成しており、この区間の事業効果を十全に発揮するためには、下流の神奈川県管理区間の流下能力を都の整備水準まで高める必要があります。
このため、都はこれまで、東京都・神奈川県河川調整会議などにおいて、護岸整備を補完する遊水地の早期完成や、河川の流下能力を妨げるボトルネック箇所の解消などについて、県に要望してまいりました。このような中で、境川遊水地の一部が横浜市内に完成し、約六十六万立方メートルの施設が供用されております。
さらに、本年十一月に開催しました都市河川の整備促進に関する一都三県連絡協議会の場において、都と神奈川県は、町田市など流域の関係市とともに新たな検討会を設けることとして、下流区間の整備促進などについて協議してまいります。
今後とも、あらゆる機会をとらえて、神奈川県に対し境川の整備促進を一層強く働きかけてまいります。
次に、河川における新たな情報提供の仕組みについてでございますが、洪水による被害を軽減するためには、河川の整備はもとより、都民が安全に避難できるよう、都と地元自治体が連携し、水防情報を迅速かつ的確に都民に提供することが重要でございます。
とりわけ、水位の上昇が極めて速い石神井川では、河川が特別警戒水位に達したときに、はんらん警戒情報をいち早く都が区市に伝える新たな仕組みが有効と考えております。
このため、今回の緊急豪雨対策としまして、都と流域の三区二市が連携して水位計や監視カメラを増設し、河川全体の水位監視体制を強化するとともに、上流の水位情報などを下流に伝え、万が一、洪水のおそれがある場合には、地域住民に直ちに情報を伝え、安全な避難ができるよう支援してまいります。
今後とも、都民の安全・安心を確保するため、河川の防災対策に全力で取り組んでまいります。
○副議長(鈴木貫太郎君) 四十一番早坂義弘君。
〔四十一番早坂義弘君登壇〕
○四十一番(早坂義弘君) ついの住みかである民間の有料老人ホームに入居するためには、一体どれくらいの費用がかかるか、皆さんご存じでしょうか。多くの場合には、契約金に当たる入居一時金が必要であり、それが一千万円を超えるものが全体の三分の一を占め、中には三億円を超えるところすらあります。人生最後の高額な買い物が、この有料老人ホームだといえます。
しかしながら、これに関するトラブルが多発しています。例えば、入居契約したものの、サービスの内容が悪く、短期で退去する事例が数多く見られます。その際、最初に支払った、例えば三千万円の入居一時金の返却を求めると、初期償却率が三五%だと計算されて、わずか一カ月の入居で一千万円も支払わされるなどのケースです。
こうした問題が相次いだため、厚生労働省は九十日ルールを定め、九十日以内に退去した場合には、原状回復の実費を徴収した残金を利用者に返還しなければならないと指導しています。
しかし、その九十日の起算日が、施設側は契約日と主張するのに対し、利用者は入居日と主張するなど、トラブルの種は尽きません。
また、その規定をかいくぐる形で、最初から一切返金しないと定めた入居申込金という制度も一部にあるようです。
東京都内の有料老人ホームには、本年八月現在、二万四千人の高齢者が暮らしています。一方、特別養護老人ホームには三万五千人が暮らしており、伸び率から考えると、近くこれを上回ると思われます。有料老人ホームは、高齢者の住まいの選択肢としてごく一般的な施設になってきています。
施設の数から見ても、ここ十年間で十倍にまでふえていますが、一方で、東京都消費生活総合センターへの苦情相談も同じくらいふえており、最近の週刊誌では、これに関するトラブルが盛んに報じられています。
では、一体、原因はどこにあるのでしょうか。
そもそも、有料老人ホームの利用者である高齢者と、それを経営する事業者との間には、情報、資金、交渉力といったさまざまな面で圧倒的な格差、非対称性があり、高齢者は極めて弱い立場に置かれています。
緻密な法律用語で書かれた分厚い契約書にサインしたとしても、その内容を本当の意味で高齢者が理解しているのか、実態面にこそ着目すべきであります。
もしトラブルに見舞われた場合には、まずは東京都や地域の消費生活センターに相談して、助言や情報提供を求めたり、場合によっては東京都の第三者機関である消費者被害救済委員会に申し出て、公正な立場からの解決を求めることができますが、いずれも強制力はありません。
有料老人ホームがこれだけ大きな社会的問題になっている以上、もはや一般の生活相談だけで済む程度の問題とはいえません。国や東京都が強制力をもって解決できるルールをつくるべきと考えますが、現在のところ、その仕組みは存在していません。
現時点で強制力をもって被害救済を図るためには、みずから裁判を起こすことになります。しかし、有料老人ホームに入居する高齢者にそのための気力、体力、資金を求めることは、現実には無理であります。
そこで、消費者個人での対応には限界がある問題について、適格消費者団体が個人にかわって裁判を起こすことができる消費者団体訴訟制度が平成十九年からスタートしました。有料老人ホームをめぐるさまざまな問題に直面する高齢者を支援するためには、行政とこのような民間団体との連携が不可欠だと考えます。
悪質な業者が排除されることは、利用者が助かるばかりでなく、結果として、真っ当な経営をしている多くの有料老人ホームにも感謝されることになろうかと思います。ご見解を伺います。
ところで、自治体と社会福祉法人のみが設立できる特別養護老人ホームの施設基準については、現在、厚生労働省令で全国一律に定められています。
今般、国はこうした基準を都道府県の条例にゆだねる、いわゆる地域主権推進一括法案を提案しましたが、国会運営の混迷により、再び継続審議となっています。もしこの法案が成立すれば、土地を確保しにくい東京都の実情に合った施設基準を条例で定めることができます。
東京都は、先日、東京都特別養護老人ホーム施設整備等のあり方に関する検討委員会を立ち上げ、東京都の独自基準設定の検討を開始しました。その具体的な検討内容と今後の方向性について伺います。
次に、アジア旅客機ビジョンについて伺います。
石原知事が提唱し、アジアの各都市が連携して、大都市共通の課題解決に取り組んできたアジア大都市ネットワーク21での共同事業に、中小型ジェット旅客機の開発促進があります。
航空機の開発は、これまで欧米諸国が圧倒的なシェアを占めてきました。しかし、例えば太平洋を横断するようなジャンボジェットの需要はほぼ満たされ、今後はリージョナルジェットと呼ばれる、もう少し近距離の中型、小型ジェット機の需要が急速に拡大するだろうと予測されています。
そこで、自動車でいえば、ハイブリッド車や電気自動車の開発で我が国が世界をリードしたように、リージョナルジェットという新しい分野においても、我が国の持つ省エネ、低騒音などの高い技術力で世界の航空産業に貢献できるチャンスが、まさに目の前にあります。
航空機の開発には、自動車の開発と比べると圧倒的多数の部品を必要とするため、都内の中小企業への経済波及効果がとても大きいとされます。
また、自動車の百分の一の故障率を求められ、高い技術力を必要とするため、我が国の産業基盤全体の高度化にもつながります。
しかし、航空機の開発には莫大な初期投資と長期的投資が必要です。アジアが欧米に次ぐ航空機産業の第三の担い手になるためには、我が国はもちろん、アジアの各国がアジア大都市ネットワーク21の共同事業で培った都市間、企業間の連携をより深化させていかなければなりません。
先日、羽田空港で開催された実務者会議において、アジア旅客機ビジョンが発表されました。私も出席をさせていただき、アジア各国や我が国航空機メーカーの発表、そして、石原知事の話を聞き、航空機開発がアジアを、そして我が国を牽引する大きな力になると確信いたしました。
そこで、知事に、アジア旅客機ビジョンの実現に向けたご決意を伺います。
次に、下水道幹線の再構築について伺います。
下水道は都市の活動を地下から支える重要なインフラであり、都民が安全で快適な生活を続けていくためには、下水道の機能をひとときたりともとめることは許されません。明治以来、長い時間をかけてつくり上げてきた区部の下水道管の総延長は一万六千キロに及び、東京からニューヨークまでの直線距離が一万キロだということを考えると、そのボリュームがよくわかります。このうち、規模が大きく、大量の下水を集める幹線は一千キロに及びます。
万一、下水道幹線に破損が起きると、道路陥没などにより大事故につながるおそれがあるなど、社会に与える影響は甚大です。
古くに整備された幹線は年数が経過し、損傷が激しいと思われるため、実態を調査して、的確に対応する必要があります。対応に当たっては、単なる補修や老朽化対策に終わらせることなく、耐震性や処理能力をも向上させる再構築を強力に進めていくべきであります。
再構築の前提となる幹線調査が平成十八年度から本格的に行われています。その調査結果に基づく下水道幹線の状況について伺います。
下水道幹線の再構築に当たっては、現に大量の下水が流れているところを工事するわけで、大変なことだろうと思います。
また、下水道幹線は交通量の多い道路の下に設置されており、多くの人や車が行き交う中での工事ゆえに、地域住民の生活に支障を来さないよう、さまざまな工夫が必要であります。
今後の下水道幹線再構築の取り組みについて伺います。
次に、都営住宅における地球温暖化対策について伺います。
東京都は、環境確保条例を改正し、本年四月から、大規模事業所に対してCO2排出量削減を義務づける取り組みを始めました。こうした取り組みを進めるためには、民間の事業所のみならず、東京都みずからが所有する建物について、地球温暖化対策への取り組みを推進することが必要です。
東京都がみずから所有する建物のうち、都営住宅の建てかえに際しては、再生可能エネルギーである太陽光発電を屋上に設置することが既に標準仕様になっており、工事中を含めて、これまで二百基が設置をされています。
しかし、建てかえ住宅のみならず、七千棟ある既存の都営住宅にも太陽光発電を設置していくことがCO2削減に大きな効果をもたらすと考えます。太陽光発電の設置工事を行うことは、地域経済の活性化にも寄与するものであります。
そこで、既存の都営住宅への太陽光発電の設置についてご見解を伺います。
最後に、河川の整備について伺います。
私は、平成十七年九月、杉並区を中心に発生したゲリラ豪雨による河川はんらんで腰まで水につかる経験をしました。中小河川である善福寺川や妙正寺川の流域で三千二百戸もの浸水被害があったことは、記憶に新しいところです。
国土の四分の一が海抜ゼロメートルのオランダでは、実に四千年に一度の水害に備えた対策をとっているといわれています。
一方、東京の海抜ゼロメートル地帯にも百五十万人が暮らしています。
今般、民主党政府が行った事業仕分けにおいて、国のスーパー堤防が廃止と判定されました。その際、民主党議員から、スーパーむだ遣いとか宇宙人の襲来から身を守るような事業だと、さんざんないわれ方をしました。
代案を示すこともなく、一方的な廃止との判断は、流域に暮らす多くの国民の生命と財産を、水害から何としても守るという為政者の覚悟を決定的に欠いています。
スーパー堤防には、国が直轄河川で整備しているものと東京都が整備しているものの二種類がありますが、今回仕分けを受けたのは国のスーパー堤防です。東京都が独自に隅田川などで進めているスーパー堤防は、治水はもちろん、景観形成などを目的とするものです。
スーパー堤防が整備された場所では、まちと川を隔てていたかみそり堤防が取り払われ、緑が多く眺望の開けた良好な水辺空間が形成されています。このように、東京都のスーパー堤防の整備は、都市に風格をもたらすとともに、まちづくりにも大きな影響を与えていていると考えます。
民主党政府の仕分けでは廃止を決めた。しかし、東京都はこれからも責任を持ってしっかりと整備をしていく。その決意を明らかにするため、これまで行ってきた隅田川のスーパー堤防整備の成果について伺います。
ありがとうございました。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 早坂義弘議員の一般質問にお答えいたします。
アジア旅客機ビジョンについてでありますが、世界を時間的、空間的に狭くしたのは、まさに航空機の開発、発展でありまして、航空機こそ現代文明を象徴する人間の有効な道具だと思います。
欧米中心の航空機産業において、かつて日本ではYS11という、ターボプロップでしたけど、非常に優秀な旅客機を開発しました。また、インドネシアもIAeという会社が同じような旅客機を開発しましたけれども、これはアメリカの妨害、つまり販路を封じられることで、残念ながら挫折しました。YSの場合には完成しましたけれども、売り先が見つからずに、残念ながらああいう終わり方をしたんですが、IAeのバンドンの会社に行きますと、そのときの悔しさを忘れないために、会社の前につくりかけの飛行機が飾ってありますが、このとき暗躍したのが、後にロッキード事件で有名になった、クラッター、コーチャンというロッキードのあの重役です。
いずれにしろ、アメリカは太平洋戦争の挑戦に、日本の航空機の優秀性のためにたじろいで、それに懲りまして、以来、日本の航空機産業の台頭というのを徹底して妨害してきました。現在、アメリカの軍用機のコックピットはほとんど日本製ですね。セラミック、液晶体、ジャンボクラスの大きな旅客機のコックピットもそうですが、これは残念な現象でありまして、アメリカの意向で、日本は依然としてアメリカの航空機産業のパーツメーカーの域を出ない。
中曽根さんの時代に、三菱重工は非常に優秀な次期支援戦闘機を計画しましたが、アメリカはその性能に驚いて、暗躍しまして、これまたこれをつぶしました。そして、F15の特別改良というものを日米でやって、日米だけがそれを使うということで、日本の頭をなでましたが、大分世の中が変わってきまして、最近、日本が自前の軍用機をつくることをアメリカは一部に限って容認しました。かつてアメリカが供給していたC1という輸送機、あるいは対潜哨戒機のP3Cの後続機は日本製ができつつありました。
私も試乗してきましたけれども、いずれにしろ、軍用機は別にしても、世界の歴史の文明が欧米からアジアに移ろうとしている今、非常に有効な、特に中小型の非常に需要の高い、議員ご指摘のように中小型の、いってみれば観光バスが二台そのまま乗りつけて全員が乗れるような規模の、百数十名の規模の旅客機というのは非常に需要が高いものでありまして、実は三菱も、これ、最初からつくろうと思ったんですが、アメリカが妨害して、最初は三十五人がやっと七十五人になりましたけれども、これでも足りないんです。
これは、別にヨーロッパを相手にしなくても、アジア全体での販路というものを考えれば十分できることでして、インドネシアに限らず、インドにはHALという非常に優秀な航空機会社があります。台湾にも、あるいはマレーシアにも航空技術に関する、非常に部分的ではありますが優秀な技術を持った会社があります。
こういった会社が協力して、アジア製の旅客機をつくるということは、アジアの成熟にもつながりますし、やはり世界の歴史の新しいページをアジアが開くということにもつながると思います。
今般、専門家の検討委員会から提言をいただいたアジア旅客機ビジョンはまさにそれを目指すものでありまして、十年後をめどに共同開発することを打ち出しておりますが、今後、ビジョンの考え方に沿って、アジア製の旅客機実現に向けた取り組みを東京も協力して、強力に進めていきたいと思っております。
他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
〔東京都技監河島均君登壇〕
○東京都技監(河島均君) 既設の都営住宅への太陽光発電設備の設置についてのご質問にお答えいたします。
都営住宅の建てかえに当たっては、平成十六年度から、すべての住棟の屋上に太陽光発電設備を設置しておりますが、CO2削減のためには、既設の都営住宅にも設置を拡大していくことが重要であると考えております。
太陽光発電設備を既設の都営住宅に設置するためには、建物の構造耐力、設置方法、施工上の課題などについて検証を行っていく必要がございます。
このため、今年度は、一般のクレーン車で太陽光発電設備の資材の荷揚げが可能な高さでございます九階建て以下の住棟を対象として、区部、多摩地域、それぞれ一住棟を選定し、試行的に設置してまいります。
さらに、今後、十階建て以上の住棟にも設置を拡大するため、メーカー等と連携して、資材の搬入方法などの検討を行ってまいります。
こうした試行や検討の結果を踏まえて、既設の都営住宅にも幅広く太陽光発電設備の設置が可能となるよう、積極的に取り組みを進めてまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 二点のご質問についてお答え申し上げます。
まず、有料老人ホームを利用する高齢者に対する支援についてでありますが、都は、有料老人ホームが適切な施設運営やサービスの提供を行うよう、老人福祉法や介護保険法に基づき、事業者を指導しております。
しかし、有料老人ホームについては、お話のありました入退去時などのトラブルが増加しており、これらに的確に対応するためには、消費者契約の観点からの取り組みが必要でございます。このため、都は、高齢者にかわって、事業者の不当行為に対し改善の申し入れや訴訟を提起できる適格消費者団体と、契約上のさまざまな課題について意見交換を行っております。
今後、こうした団体と連携しながら実効性のある指導に努め、高齢者がより安心して有料老人ホームを利用できるよう支援してまいります。
次に、特別養護老人ホームの基準の検討についてでございますが、国会で継続審議となっております地域主権推進一括法案では、特別養護老人ホームの基準は、都道府県が条例で定めることとなっております。条例に定める基準には、省令に従い定めるものと、省令を参酌して地域の実情に応じた内容を定めることができるものがございます。
都は、こうした国の動きや、都内では広い用地の確保が困難な実情を踏まえ、独自の施設基準を定めるため、現在、廊下幅の見直しや、少人数の生活単位である一ユニットの定員上限の引き上げなどについて、建築や社会福祉等の学識経験者も交えて検討を行っております。
今後は、基準の見直しに加え、プライバシーに配慮した多床室のあり方などについても検討し、大都市東京にふさわしい特別養護老人ホームの整備を促進してまいります。
〔下水道局長松田二郎君登壇〕
○下水道局長(松田二郎君) 下水道幹線の再構築についての二つのご質問にお答えをいたします。
まず、下水道幹線の調査結果についてでございますが、下水道幹線は、大口径で大量の下水が流れている上、交通量の多い道路の下や地中深くに敷設されているものが多く、再構築に当たっては、新たに取りかえることが極めて困難であります。
そのため、今ある幹線を長期間にわたって有効に活用しなければならず、幹線の状況を実際に調査し、コンクリートの状態など詳細かつ的確に把握する必要があります。
しかし、下水の水位が高い、流速が速いなどの理由により、人が幹線の中に入り目視で調査するには困難な場所が多く、部分的な対応にとどまっておりました。
そこで、無人で安全かつ効率的に調査できる自走式ロボットを新たに開発するなどして、平成十八年度から二十年度までの三カ年で、完成間もない幹線などを除いた約三百七十幹線、約八百五十キロメートルについて調査を実施いたしました。
調査の結果、表面の劣化や鉄筋の腐食、ひび割れ、破損などの損傷は二百三十幹線、調査延長の二割に当たる約百八十キロメートルの区間で確認することができました。
次に、幹線の再構築の取り組みについてでございますが、これまでも老朽化の著しい幹線につきましては順次整備を実施してきており、現時点では、敷設年代が古い四十七幹線について、平成三十八年度末までに再構築を完了させることを目標としております。
今後、再構築に当たっては、このたびの調査で判明した損傷の程度や耐震化の必要性などを踏まえ、整備の優先度を決めて取り組んでまいります。
工事の手法は、コストの縮減や工事周辺地への影響を抑制するために、道路を掘削せず、下水道管の内面を内側から補強する更生工法により行うことを基本としております。下水の水位が高く施工が困難な幹線は、ポンプ運転の工夫などにより工事時間帯の下水の水位や流速を低下させ、工事を実施しております。また、こうした工夫が不可能な幹線では、下水を切りかえるための新たな幹線を整備した上で再構築を行うこととしております。
今後も、計画的かつ効率的な幹線再構築に取り組み、将来にわたり安定的に下水道機能を発揮し、都民生活の安全性と快適性の向上に努めてまいります。
〔建設局長村尾公一君登壇〕
○建設局長(村尾公一君) 隅田川のスーパー堤防整備の成果についてでございますが、隅田川では、すべての区間で高潮防潮堤が整備されており、現在は、耐震対策や良好な景観の創出、親水性の向上を目的として、川沿いの民間開発などと一体的にスーパー堤防事業を進めております。
これまで、大川端や新川・箱崎地区など、隅田川の堤防延長の約三割に当たる合計約十三キロメートルが完成しております。完成した区間では、都市空間と水辺が一体となった魅力あるまちとして生まれ変わり、テラスでは多くの人々が散策を楽しむとともに、川岸を含めた美しい都市景観を生かし、地域のイベントやテレビ、映画などの撮影にも多く利用されており、活況を呈しております。
また、白鬚西地区ではスーパー堤防と再開発事業をあわせて実施したことにより、水辺と連担した広大な公園が一体的に整備され、人々の憩いの場となるとともに、災害時には約十二万人が避難できる広域避難場所を確保することができました。
今後とも、地元区や民間開発者と連携を図りながら事業を着実に推進し、安全でにぎわいのある水辺の創出に努めてまいります。
○副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
午後三時二十九分休憩
午後三時四十六分開議
○議長(和田宗春君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
七十九番今村るか君。
〔七十九番今村るか君登壇〕
○七十九番(今村るか君) 今回の一般質問では、交通政策、福祉政策、そして観光政策の三項目について質問を行います。
これからの交通政策は、目指すべき将来像があり、持続可能な、だれもが快適に交通結節点で容易に移動できる利便性の高いものでなければならないと考えます。
高度経済成長期は、自家用車、バス、鉄道、海上輸送や航空機などをどう使い分けるべきかなどの視点が追いついていませんでした。さらに、無秩序に広がる都市構造では、集積のメリットが失われてしまいます。結果、利用者の利便性が低下し、それらを向上させるため行政のコストがかかるという悪循環になっていました。
欧米を初めソウル市など、公共交通利用者からの視点において利便性にすぐれた都市と比較すると、東京の交通はまだ多くの課題を抱えているのではないかと考えます。
そこで、まずは、現在協議中の地下鉄一元化の目指すべきものについて、先頭に立って取り組んでいる猪瀬副知事の見解を伺います。
さきに述べたソウル市は、地下鉄網とバス交通網が市内に張りめぐらされ、バスは幹線、支線、循環線、地方線に分かれています。さらに、それぞれが色分けされて、外国人観光客にもわかりやすく、日本にいても地下鉄の案内図が携帯電話で簡単に日本語で見られるようになっています。さらに、料金は統一距離制になっており、バスも地下鉄も乗りかえに基本的に費用がかからず、利用者の利便性が向上しています。
そんなソウル市も、つい十年ほど前まではこのようにはなっておりませんでした。ソウルだけでなく、交通先進市はどこも明確な目指すべき将来像を持って政策実行がされています。日本では、首都東京の鉄道など、交通網の整備について国に権限が集中しており、都が考える、あるべき姿の整備がしにくくなっているのではないでしょうか。
しかし、国は一方で、地域交通活性化法などにより、地域の実情に応じ交通政策を推進する施策を自治体に与えています。この中で都道府県は広域自治体として取り組みを行うよう求められていますが、都の所見を伺います。
さて、これからの交通政策には新しい技術革新なども必要です。その中の一つがITS、高度道路交通システムです。現在、VICS、ETC、バスロケーションシステムなどが実用化されています。
二○一三年にはITS世界会議が東京で開催されますが、開催の意義について伺います。
東京都交通局は、バスロケーションシステムで利用者の利便性向上に努めております。携帯電話で使えるナビタイムなどでも利用ができ、鉄道との乗りかえなども案内されています。今後、PTPS、公共車両優先システムやDRT、デマンド交通、バスや鉄道他社とのさまざまなサービスの相互利用など、利便性の向上に努めるよう求めます。
そこで、東京都交通局は、利用者の利便性向上のために、今後、都営バスの新たな情報提供サービスの導入についてどのように予定されているのか伺います。
これらのさまざまな技術を含め、先ほど述べた目指すべき目標を都庁全体で共有すれば、首都の交通は必ず世界に誇れる交通都市になれると確信しています。
こうした中、国では新しい交通基本法の策定の準備が進められています。国は、交通基本法のポイントを三つあらわしています。
一、移動権の保障と支援措置の充実、成熟社会にふさわしい持続可能な新しい交通体系の構築。二、交通体系、まちづくり及び乗り物、三位一体の低炭素化の推進。三、地域の活力を引き出す交通網の充実、にぎわいのあるまち並みと幹線交通網の連携。以上です。
東京にとって大きな影響を与えることと思いますので、現時点での都のこの法律案に対する所見を伺います。
次に、多摩地域の交通政策についてです。
多摩地域と都内を結ぶ路線は重要な幹線として機能しています。東京都は鉄道事業者とともに、複々線化に合わせ連続立体交差事業を行っています。三多摩地域住民からはさらなる延伸も期待されています。また、立川、多摩センター、町田を結ぶ多摩都市モノレールは、南北交通の利便性向上に期待がされています。
そこで、まず、小田急線の複々線化についての進捗と効果、今後の延伸についての都の所見を伺います。
同時に、多摩都市モノレールも箱根ヶ崎方面や八王子方面などの計画もあり、国の運政審十八号答申に箱根ヶ崎と町田、八王子が位置づけられたままになっています。都はこうした中で、三多摩のTDM、交通需要マネジメントをすべきと考えます。
多摩都市モノレールについては、今後、延伸のために、需要を把握しつつ検討すべきと考えますが、都の見解を伺います。
低炭素社会への交通シフトのために、BRTは車との比較でCO2排出量が十分の三、インフラ整備も新交通やLRTより安価にでき、地域の需要に応じて路線の変更も安価で比較的容易にできるなど、三多摩地域の交通利便性向上に適していると考えます。
そこで、当面、モノレールの延伸の可能性が低いと考えられる中、町田ではBRTの導入を検討していますが、BRTなどで当面の需要を満たすようにすることも考えられます。都の所見を伺います。
さらに、モノレールでつながる予定の町田、立川は、ともに国から都市・地域総合交通戦略都市に認定されています。町田ではモノレール導入路線とは別にBRTの導入、立川では立川都市圏として近隣市も含めた広域的な視点の交通まちづくりを行います。都には広域的視点から支援が期待されています。
こうした各自治体の取り組みを都は積極的に支援すべきと考えますが、都の所見を伺います。
多摩地域の交通アクセスに大きな影響を与えると考えられるものが二つあります。
一つは、横田基地の軍民共用化です。共用化が行われれば、この地域の交通のあり方も大きく変わらなければなりません。こうしたことを念頭にきちんとした検討を行うべきと考えますが、軍民共用化に向けた交通政策の検討について伺います。
二つ目は、リニアです。知事は、品川駅を始発の予定で計画されているリニア新幹線が三多摩地域を通過するのをご存じでしょうか。以前、町田にある施設に来たときに、町田はこんなに遠いのかといわれたそうでありますけれども、覚えていらっしゃるでしょうか。それは、東京都はこんなにも広いのかという意味だったのではないかと想像いたしますが、三多摩にリニアという超高速機関と航空機、空港のような機能ができ、交通結節点が重ならないまでも近づけられれば、東京の交通力、三多摩の交通力は飛躍的に向上します。
こうしたことから、JR東海や国のリニア小委員会の動きなど含め、どのように東京都がとらえているのかを伺います。
ここで改めて石原知事に、東京の総合的な交通政策、三多摩地域の交通政策も含めたグランドデザインへの思いを伺います。
交通政策の最後に、これまで述べてきた中にある交通基本法の新しい考え方の一つ、移動権の保障について、シルバーパスを例にお聞きします。
東京都のシルバーパス事業は多くの高齢者の方に利用していただいています。私たち都議会民主党は、シルバーパスの充実策として、平日昼間十時から十六時に高齢者の鉄道運賃を半額にするよう提案をしております。ところが、シルバーパスはIC化さえされておらず、パス保持者の利用状況などの把握ができません。利用実態を把握することで高齢者のニーズもわかり、利便性の向上にもつなげられます。また、低所得者の移動の権利保障にもなると考えます。
そこで、改めてシルバーパスの意義、利便性向上のために利用者のニーズや要望をどのように把握しているのか伺います。
移動権の保障で気になることに、特別支援学校においての送迎があります。
特に三多摩地域の特別支援学校は駅からもバス停からも離れた立地にあることが多く、就学の保障は通学の保障でもあります。教育庁には、交通基本法が策定される、されないにかかわらず、しっかりと必要な保障をされるよう要望しておきます。
次に、福祉政策について、子ども、女性、若年非正規雇用者について都の所見を伺います。
私はこの間、改めて、児童相談所とその一時保護所、女性相談センターとその一時保護所、さらに、都と区で行っている路上生活者支援施設の自立支援センターの視察を行いました。
命の危機にさらされる児童を虐待から守るためにはさまざまな施策の充実が必要ですが、まず何よりも、緊急に安全な場所に避難するための一時保護所がなければなりません。しかし、ここ数年、児童相談所の一時保護所の入所率は一○○%で満床状態です。私が視察した一時保護所も、三年前と比べると一部施設の更新がされていましたが、十分とはいえない広さの中で子どもたちが生活をしていました。
そこで、幼い命を守るために、児童相談所の一時保護所の拡充を早急に行うべきと考えますが、所見を伺います。
もともと東京都女性相談センターは売春防止法に基づく婦人相談所として設置され、配偶者暴力防止法が二○○二年施行されてからは、配偶者暴力相談支援センターとして、その保護に重要な役割を担ってきました。近年、配偶者暴力被害者がふえたことで同伴の児童の保護もふえ、一時保護所の入所率は一○○%を超えている状況が今も続いています。
配偶者暴力被害などにより保護が必要な女性に対しても確実に保護が行える体制が不可欠と考えますが、都の対応を伺います。
また、二○○七年の配偶者暴力防止法改正に伴い、市区町村における配偶者暴力対策基本計画の策定が努力義務とされました。しかし、都下ではいまだ七市六区しか策定されておりません。身近な市区町村と連携し、配偶者暴力対策を進めることが重要です。
そこで、市区町村における基本計画の策定を積極的に支援していくことが必要と考えますが、都の所見を伺います。
都議会民主党は代表質問でも雇用対策の拡充を求めましたが、先ごろ、大学生の就職内定率が五七・六%、前年同期を四・九ポイント下回り、就職内定率は一九九六年の調査開始以来、過去最低の水準との報道が厚労省、文科省からされました。
こうした厳しい雇用環境と高どまりの失業率が続く中で、視察をした自立支援センターの話では、ここ数年、二十代、三十代の若年層がふえている傾向があるとのことでした。
このように、非正規雇用者の若年層でもホームレスになるおそれがあることが明らかになりました。こうした方に対する支援が必要です。都の所見を伺います。
観光産業支援に移ります。
交通政策でも触れましたが、三多摩地域の交通はもちろん、観光にとっても大きな可能性を持つ横田基地は、周辺自治体や商工業者の皆さんが国の補助で街路樹をヤシの木にしたり、都の支援でドルの使える横田基地前の商店街の取り組みなどが行われています。
一方、羽田の国際化に合わせ、大田区、品川区は、都の広域観光まちづくり事業で、観光マップづくりやPR活動を行っています。
高尾山や緑だけではない三多摩の魅力を発信するためにも、都は、広域的な視点から神奈川や埼玉とも協力し、観光支援を行うべきです。
横田基地周辺の国道一六号線は、横浜から町田、八王子を通り埼玉方面へと向かっています。沿線には自動車産業、中古屋からチューニングショップなど、パリ・ダカールラリーに参戦している日野自動車や、消防自動車製造で有名な日本機械工業などもあります。車やバイク、米軍基地と、まだまだ観光としてのポテンシャルを持っていると考えます。
例えば、これらを活用することにより観光振興が図られると思いますけれども、改めて三多摩における観光振興に対する都の所見を伺います。
最後に、東京都の自動車税について一言申し上げます。
ことしの夏終了した国のエコカー補助金は、十三年超の車にはスクラップインセンティブを与えて新車への乗りかえを促進させました。環境の視点と経済対策の視点それぞれがあったことは承知しておりますが、三つのRは、リデュース、リユース、リサイクルの順といわれています。
リユースは、古いものを長く使うことも大切です。車も製造後三十年もたてば、登録台数も少なく、年間走行距離も少なく、排出されるCO2を考えれば、タクシーなど、年間二十万キロ、三十万キロも走るといわれている新車のエコカータクシーの方がCO2の排出量が多いと考えられます。
都税である自動車税の重課がもとの標準課税に戻るのは一九四五年以前の車両で、東京都にわずか一台から二台のみです。自動車文化が進んだ海外の例などを参考にしながら再考されることを要望し、小零細の自動車産業への支援となることを求めて、一般質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 今村るか議員の一般質問にお答えします。
東京の総合的な交通政策についてでありますが、鉄道や道路等の交通インフラは、都市の機能や利便性を向上させるだけではなく、経済を活性化させ国際競争力を高めるなど、首都東京を一層発展させる重要な社会資本でもあります。
しかし、東京並びに東京周辺の交通政策を論じるときに、ごくごく基本条件についてもやっぱり考えるべきだと思います。それは前も申し上げましたが、日本という国土の中での可住面積、インハビタブルスペースと英語でいうそうですけれども、これはどういうことかというと、傾斜度十二度以下の土地であると。これは日本は非常に少ない。イギリスは日本よりも国土面積が少ないですけれども、イギリスは何と日本の八倍、ドイツに至っては十五倍、フランスは二十三倍という可住面積を持っている。
こういう国土の中で新しい道路、新しい鉄道というものを考えるとき、私たちはそのための工事の工費というものも考えなくちゃいけませんし、とにかく、日本における交通インフラの整備をするにしては、国土の条件が恵まれていないということを熟知した上で事を論ずるべきだと思います。
いずれにしろ、東京の鉄道は、現時点では世界に類を見ない高密度で正確、安全なネットワークを構築しておりまして、ターミナル駅の再整備により一層の機能強化を図っていきたいと思っています。
あわせて、駅のバリアフリー化を推進し、すべての人に使いやすい鉄道を実現していきます。
また、交通渋滞は東京の最大の弱点となっておりまして、これを解消するために三環状道路を初めとした道路整備や、連続立体交差事業を強力に進めていかなきゃなりませんが、何よりも、既存の道路計画のプラン、つまり途中まででき上がっているのに棚上げになっている外環もそうでありますけど、そういった道路を一刻も早く、まず完成させることが必要でありまして、新しいインフラというものを論じる前に、今の政府の資質にも問題があるわけですけれども、コンクリートより人間というのは非常に美しいセンチメントでありますが、しかし、つくるべきものをつくらず棚上げしておいたら、この国の、この都市の渋滞というのは進むばかりで、経済効果も非常に低減して、ろくなことにならない。
それを私たちは考えた上で、何も東京だけのためじゃなしに、国家のために、既存の計画、しかも途中までできているものを一刻も早く完成する、その努力は肝要だと思います。
さらに、多摩地域においては横田基地の軍民共用化を早期に実現して、首都圏全体の航空需要を満たさなくてはならぬと思いますが、これはやはり航空管制の問題一つをとって見ても、羽田に新しいDランができました。これによって非常に管制の業務は複雑化して、ある意味で危険な要素もはらむようになった。
そのためにも、やっぱり与党、野党、とにかく一致して努力して、アメリカ相手に使っていない空港の管制空域だけでも取り戻しませんと、下手をすると羽田にそのうちとんでもない事故が起こりかねない。
こういったものを勘案して、重層的に、東京を快適で利便性の高い都市としていく努力を、交通インフラに関しても努力を遂げていきたいと思っております。
他の質問については副知事、技監及び関係局長から答弁します。
〔副知事猪瀬直樹君登壇〕
○副知事(猪瀬直樹君) 地下鉄一元化の目指すものについてですが、ことし四月以降、八百六十六万人も都営地下鉄と東京メトロを使っているわけですけれども、この四月以降、都民や、まさに利用者の目線で一元化に向けた具体的な取り組みを進展させてきました。
六月二十九日に開催された東京メトロの株主総会において、二元的な運営が利用者に不便を強いている事例として、浅草駅や日本橋駅の東京メトロと都営地下鉄を結ぶ通路にシャッターがあるんですが、それが始発時に閉じている問題を指摘しました。
都営浅草線の浅草駅で朝一番電車があるんですが、銀座線から来るお客さんがメトロのシャッターが閉まっているので乗りかえられない。あるいは、日本橋駅で東西線から都営線に乗りかえようとするんですが、やはりメトロのシャッターが閉まっている。もう十五分、あければ乗りかえられる。こういう問題を株主総会で指摘したわけです。そういうことを指摘されても、経営者はそういう事実があることを知らなかった。それはあと一カ月後、七月にシャッターはあくようになりましたが、こういう形で、東京都は四六・六%の株主ですから、きちっというべきことはいっていかなければいけない。
バリアフリー率という言葉があるんですが、車いすの方がエレベーターとかエスカレーターで移動できるようにしなければいけないわけですが、都営地下鉄の場合は八一%バリアフリー率があるんですが、東京メトロは六六%で、かなり低い。にもかかわらず、高層ビルをつくったりアパートを経営したりしている。そういうお金があったら、きちんとお客さんに還元しなければいけないと。
こういうことを申し上げなければいけないわけであって、したがって、国と東京都と、そして東京メトロにも加わっていただいて、地下鉄一元化を議論する場を設置するように提起しました。
八月から地下鉄一元化についての協議会が、国土交通省、財務省、それから東京都は副知事と技監と交通局長、それから東京メトロは社長に出ていただいて、そこで議論を重ねるということで三回やりました。まだやりますけれどもね。東京の地下鉄のいろんな課題、改善策について考えなければいけないので――ただ、その協議会に出るだけじゃなくて、東京都側にも、会計や経営の専門家や都市交通政策の専門家、そういう方々に集まっていただいて、有識者会議を開いて、これは東京の地下鉄を考える懇談会という名前なんですが、九月以降、そこで話し合ったことを国との協議会に提起していく。こういうことをやっているわけです。
今後とも、こうした取り組みをを通じて、利用者の利便性の向上を図って、世界に誇る地下鉄ネットワークにふさわしい姿、我々利用者の最も利便性を図ったもの、地下鉄として、乗りかえの苦労とか、あるいは料金体系が違っていろいろつまずくとか、そういうことで観光客も困るんですが、シームレスな地下鉄にしたい。そうなっていければいいなということで、国に対してもっと強い形でこれからも提起していきたいと思っております。
都議会民主党の皆さんも、政権が民主党政権なんで、ぜひご協力ください。よろしくどうも。
〔東京都技監河島均君登壇〕
○東京都技監(河島均君) 交通政策に関する八点のご質問にお答えいたします。
まず、地域公共交通活性化法についてでございますが、この法律は、地域の公共交通への多様なニーズにこたえるため、主体的に創意工夫して取り組む地域を総合的に支援し、地域公共交通の活性化や再生を図ることを目的とするものでございます。
地元自治体はこの法律に基づき、地域公共交通活性化協議会を設置し、国は財政面も含めて、その取り組みを総合的に支援することとなっております。
現在、都内におきましては、一区四市一村がそれぞれ協議会を設置し、コミュニティバス等の導入にかかわる計画の策定等に取り組んでおり、都も協議会に参加するなど広域的、専門的な立場から助言を行っております。都としては、今後とも地元自治体の取り組みに対して必要な技術的支援を行ってまいります。
次に、いわゆる交通基本法案についてでございますが、この法案は、移動権の保障による活力のある社会の実現や、地域公共交通の維持、再生、活性化、環境負荷の少ない交通体系の実現等を目的とするものと聞いております。
国におきましては、この法案の立案に当たり、有識者の意見を求めるため、先月より交通政策審議会に設置した交通基本法案検討小委員会で議論を行っております。都としては、こうした国の動向を見きわめながら適切に対応してまいります。
次に、小田急線の複々線化についてでございますが、現在、東北沢駅から梅ヶ丘駅間におきまして、連続立体交差事業にあわせて複々線化事業が進められております。この区間の整備により、代々木上原駅から登戸駅の手前までの複々線化が完成いたします。
登戸駅から新百合ヶ丘駅間は、運輸政策審議会答申第十八号において、平成二十七年までに整備着手することが適当である路線に位置づけられており、このうち登戸駅から向ヶ丘遊園駅間につきましては、上り二線、下り一線の三線化まで現在完成しております。
新百合ヶ丘駅より先の町田駅方面につきましては、運輸政策審議会答申には位置づけられておりません。
今後の小田急線の複々線化は、輸送動向等を踏まえながら鉄道事業者が検討していくものと考えております。
なお、小田急線の複々線化の効果についてでございますが、現在事業中の東北沢駅から梅ヶ丘駅間の複々線化が完成することにより、朝のラッシュ時間帯における向ヶ丘遊園駅から新宿駅間の所要時間が最大で十二分短縮されます。
また、小田急線の最混雑区間における混雑率が現在の一八七%から一六○%台にまで緩和される見込みでございます。このような効果は町田市を含む沿線全体の利用者に広く及ぶものと考えております。
次に、多摩都市モノレールの延伸についてでございますが、現在、多摩都市モノレールは上北台から多摩センター間、十六キロの区間で営業しております。
また、運輸政策審議会答申第十八号におきまして、箱根ヶ崎方面が平成二十七年までに整備着手することが適当である路線として、また、町田及び八王子方面が今後整備について検討すべき路線として位置づけられております。
多摩都市モノレール株式会社は、平成二十年度、沿線自治体や都による財政支援を含む経営健全化対策を講じたばかりでございまして、まだ多くの長期債務を抱えるとともに、開業十年を経過し、更新投資の増加が今後見込まれることなどから、まずは営業区間の経営安定化を図ることが最重要であると考えております。
今後、延伸の検討に当たっては、お話のあった需要動向はもとより、事業採算性、投資効果など、さまざまな角度からそのあり方を十分に検討することが必要であると考えております。
次に、BRTについてでございますが、バス高速輸送システム、いわゆるBRTは、連節バスなどを活用した都市交通システムでございまして、地域交通を担う公共交通機関であることから、基本的には地元自治体が主体的に取り組むべきものと考えております。
BRTの導入に当たっては、導入空間の確保や自動車交通に与える影響、事業採算性などさまざまな課題がございますが、町田市では既存道路の活用やバス優先レーンの導入などにより、BRTの計画を段階的に進めることとしております。
このような地元市の主体的な取り組みに対しましては、都は必要な技術的支援や情報提供などを行ってまいります。
次に、都市・地域総合交通戦略が認定された市への支援についてでございますが、都市・地域総合交通戦略は、地方公共団体を中心として関係機関等が相互に協力し、交通事業とまちづくりが連携した総合的かつ戦略的な交通施策の推進を図るために作成するものでございまして、国の認定を受けると、関連する施策に対し国が支援を行う仕組みとなっております。
多摩地域では、町田市や立川市が設置した協議会に都も参画いたしまして、関係機関等と連携して戦略の作成に取り組んだ結果、本年八月には両市の戦略が国の認定を受けました。この中で、町田市ではBRTなどの導入を、立川市では立川駅の自由通路の整備などの施策を推進することが位置づけられております。
都は、この戦略の実現に向け、引き続き市の取り組みに対し広域的な立場からの助言や技術的支援を行ってまいります。
次に、横田基地の軍民共用化に向けた交通政策についてでございますが、横田基地は都心から約三十八キロメートルと成田空港の半分程度の距離に位置しておりまして、周辺には既に鉄道や幹線道路が整備されております。
軍民共用化に当たっては、既存の交通インフラを生かしながら、空港までの到達時間を可能な限り短縮して、いかに利用者に便利な空港とするかが重要であると考えております。
現在、横田基地周辺におきましては、圏央道が平成十九年に中央道まで接続されるとともに、国道一六号につきましても、ボトルネックとなっておりますJR青梅線との立体部の拡幅が進められております。
今後もこうした横田基地へのアクセス改善にも資する事業を促進するとともに、国とも連携しながら、軍民共用化の日米協議の進捗に合わせて、必要なインフラの整備について検討してまいります。
最後に、いわゆるリニア中央新幹線についてでございますが、リニア中央新幹線は、東京都から名古屋市付近を経由し大阪市まで超高速で結ぶもので、全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画に位置づけられております。
平成十九年にJR東海が自費で整備を行うことを表明しており、現在、交通政策審議会中央新幹線小委員会におきまして、営業、建設主体や整備計画について検討が進められております。
都としては、高速移動手段としての機能を最大限発揮することにより、三大都市圏の連携が一層緊密化し、我が国の国際競争力の強化に寄与するものと認識しておりまして、七月の中央新幹線小委員会において、大阪までの早期開業や始発駅の位置決定に当たっては、都と十分な協議を行うこと、他の大深度地下利用との調整を図ることなど、意見を述べてまいりました。
今後とも、国の動向を見きわめながら適切に対応してまいります。
〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕
○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) ITS世界会議を開催する意義についてであります。
東京への開催地決定に際しましては、選定委員会において、次世代ITSの方向性を示唆する社会実験が実施できること、産業界を初めとする多くの参加者を得られることなどが評価されたところであります。
二〇一三年の世界会議は、インフラ協調による安全運転支援システムや環境に優しいITS、いわゆるグリーンITSの取り組みなど、日本の最先端の情報技術を活用したITSの成果を広く世界に発信する場として意義あるものと考えています。
都といたしましては、会議の運営はもとより、ITS技術を活用した安全で快適な都市の姿を見せるという点においても、開催地の自治体としての責務を果たしてまいります。
〔交通局長金子正一郎君登壇〕
○交通局長(金子正一郎君) 都営バスにおける新たな情報提供サービスの導入についてお答えいたします。
都営バスを便利で身近な交通機関として利用していただくためには、運行に関する情報を利用者の方々に適切に提供していくことが重要であります。
交通局では、これまでも停留所に接近表示装置の設置を進めるとともに、携帯電話及びパソコンからバスの位置情報や時刻表などの情報にアクセスできるサービスを提供してまいりました。
今後は、交通局経営計画ステップアップ二○一○に基づき、利用者の方の携帯電話のGPS機能を使って最寄りの停留所の位置を案内するサービスや、他の都営交通との乗りかえ経路を検索できるシステムなどを導入し、さらなる利便性の向上を図ってまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 四点のご質問についてお答え申し上げます。
まず、シルバーパスについてでありますが、シルバーパスは高齢者の社会参加を助長し、もって高齢者の福祉の向上を図ることを目的としております。現在、多くの高齢者がシルバーパスの発行を受け、社会参加と生きがいの活動に活用されていると認識をいたしております。
また、利用者からのご意見、ご要望につきましては、事業実施主体であります社団法人東京バス協会などを通じて適切に把握いたしております。
次に、児童相談所の一時保護所の拡充についてでありますが、都では、一時保護需要の増加に対応するため、一時保護所の定員を平成十七年度から二十一年度までの四年間で四十名増員し、百六十八名に拡大をしてまいりました。
また、保護すべき児童が一時的に集中した際には、緊急対応用の居室での保護や児童養護施設等への保護委託を行うなど、児童の速やかな安全確保に努めております。
今後も、仮称でございますが、子ども家庭総合センターの開設や、墨田児童相談所の移転改築にあわせ、計画的に一時保護所の定員拡充を進めてまいります。
次に、配偶者暴力被害者等の保護についてでありますが、配偶者の暴力から逃れて保護を求める女性に対しましては、身体や生命の安全を確保するため、迅速に保護を行うことが必要でございます。
このため、都は、女性相談センターにおいて一時保護を行うほか、被害者の状況に応じて五カ所の婦人保護施設、四カ所のシェルターへの保護委託を行うなど、被害者の保護に万全を期しております。
今後とも、配偶者暴力被害者等の適切な受け入れ体制の確保に努めてまいります。
最後に、住居、生活困窮者への支援についてでありますが、都はこれまで、TOKYOチャレンジネットにおいて、非正規雇用など不安定な就労形態にあり、住居、生活に困窮している方が安定した生活を送れるよう、生活、住居、就労支援を一体的に行っております。
さらに、先月八日から、こうした方々が安心して年末を迎えられるよう、都内十七カ所の全ハローワークにNPO法人等による相談体制を整備し、国や区市等とも連携しながら、生活、住宅相談を実施いたしております。
また、ホームレスに対しましては、都区共同事業で実施しております自立支援システムの中で、職業経験の乏しい若年層も含め、個々の状況に応じたきめ細かいカウンセリングやアセスメントを行い、早期に自立できるよう支援をいたしております。
〔生活文化局長並木一夫君登壇〕
○生活文化局長(並木一夫君) 区市町村における配偶者暴力対策基本計画の策定支援についてでございますが、区市町村の基本計画につきましては、平成二十二年十一月末現在には策定済みの区市は十三でございますが、二十二年度中に新たに十二の区市が、二十三年度中には四つの区市が策定予定であるなど、着実に取り組みが進んでございます。
都は区市町村に対し、配偶者暴力対策の担当課長会などのさまざまな機会をとらえ、基本計画の策定について働きかけを行うとともに、計画の策定に当たりましては、検討段階から計画に盛り込むべき事項などについて具体的な助言を行っております。
今後とも、より多くの区市町村で基本計画が策定されるよう支援を行ってまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 多摩における観光振興についてのご質問にお答えいたします。
観光振興のためには、それぞれの地域が特色ある観光資源を生かした取り組みを主体的に展開していくことが重要であります。都では、こうした取り組みを支援するという考え方に基づき、多摩地域の市町村、団体に対して、地域の活性化に向けた方策などについて専門的な立場から助言を行う観光アドバイザーを派遣するとともに、観光案内標識の設置への支援などを行ってまいりました。
今後とも、観光資源の新たな開発や活用などにより、積極的に観光振興に取り組む多摩地域の市町村、団体に対しまして支援を実施してまいります。
○議長(和田宗春君) 四十八番滝沢景一君。
〔四十八番滝沢景一君登壇〕
○四十八番(滝沢景一君) 三多摩格差、いわゆる多摩地区と区部の行政サービスの差について一般質問をさせていただきます。
現在、十九回目の国勢調査が行われております。年末には速報値が発表され、最新の人口、世帯の実態が明らかになり、私たちの暮らしのさまざまな分野に役立てられると期待しているところであります。
前回の調査、平成十七年の国勢調査では、日本の総人口は大正九年に調査を始めて以来、前回を下回りましたが、東京についていえば、人口がふえた十五都道府県の中にあっても最も増加数が多く、そして、多摩地区の人口も初めて四百万人を突破した節目の年でありました。
多摩地区の人口を道府県と比較すると、福岡県の五百万人に次ぎ八番目、静岡県の三百七十万人より多い地域となります。多摩地区の人口推移は、昭和三十年の九十八万人、四十年の百三十万人、五十年二百九十万人、そして昭和六十年には三百三十万人へと、人口が一貫して増加していることがわかります。特に、高度経済成長期である昭和三十年から昭和五十年にかけて二百万人もふえています。
多摩地区は、高度経済成長期の人口急増により急激に都市化が進み、交通基盤の未整備や住宅、小学校、中学校、保育園などの不足といったさまざまな都市の問題を発生させました。
このような背景のもとに、昭和五十年の都市町村協議会において、三多摩格差八課題が設定された歴史があります。そして、平成十二年、東京都は多摩の現状分析報告書の中で、三多摩格差の八課題について、既にかなりの部分で解消したと明らかにし、残る課題については、地域的、個別的なものであるとして、問題の質が変化してきているものだと総括をしております。
しかし、現実を直視すると、NTT東日本市外局番の統一化、中央自動車道の高井戸から八王子間と首都高速四号新宿線の同時利用料金といった、多くの隠れた三多摩格差があるのも事実であります。
また、区部と多摩地区の財政力には大きな差があります。これを平成二十二年度の財政力指数から見てみると、区部は一・五七一ポイント、多摩二十六市の平均は一・〇五六ポイントでありますから、いかに区部が財政的に豊かであるかがわかります。
この財政力の差が、同じ都民でありながら行政サービスの差になってあらわれています。
例えば、医療費助成事業であります。乳幼児の医療費助成については、区部、市町村とも同様の内容で実施していますが、義務教育就学児、いわゆる小学生と中学生に対する医療費助成に当たっては、区部は所得制限を導入しないで実施しています。
しかし、多摩地区の市町村は、所得制限を導入して実施しているのが二十七市町村、所得制限を入れない市町村は十二団体、その上、助成割合でも差が出ております。多くの市町村は通院一回当たり二百円の自己負担があります。しかし、区部では自己負担はなく、全額助成になっております。
ここまでは格差の実態をお示ししてきましたけれども、これからが本題になります。気象庁は、ことしの夏の猛暑を三十年に一度の異常気象と認定いたしました。関東は七月十七日に梅雨明けしましたが、この間、寒気の南下やオホーツク海高気圧の発生は少なく、六月の全国の平均気温は平年比プラス一・二四度と高温で推移しました。
そして、梅雨明け前後の七月半ば以降、太平洋高気圧の勢力が強まり、全国で猛暑に見舞われました。そして九月に入っても、九月として最高気温を観測するなど、厳しい残暑となったことは皆さんもご承知のとおりであります。
この猛暑により病院に搬送された方は六万人を超えています。このような厳しい環境の中、エアコンのない教室で授業を受けているのが多摩地区の小学校、中学校に通う児童であります。
昭和五十年の都市町村協議会において設定された三多摩格差八課題の一つに、小学校の体育館の保有率がありました。当時、多摩地区の保有率は七六・六%、区部は九八・五%というように大きな格差がありました。東京都は保有率一○○%に向けて支援を行い、平成十二年に東京都が格差の総括をしたときには九九・四%に改善されていました。
ここで新たに三多摩格差を設定するとしたならば、医療費助成における区部と多摩地区のサービス差を挙げることもできます。しかし、今回は小学校と中学校の普通教室への冷房設置状況から、三多摩格差を議論させていただきます。
読売新聞からの引用になりますが、新学期が始まった学校で、子どもたちは猛暑にあえいでいる、東京の区部などを除き、公立の小学校、中学校の教室の冷房化率は低く、夏休みで家庭の冷房になれた子どもたちの健康や学習への影響が懸念されると掲載されていました。夏季の教室温度は三十度以下が望ましく、学習に集中できるのは二十八度から二十五度となっています。
文部科学省の調べでは、全国の公立の小学校、中学校普通教室の冷房設置率は、平成十九年度現在でありますが、一○・二%であります。
そこでお聞きしますが、区立小学校、中学校、多摩地区の市立小学校、中学校の冷房設置状況について、それぞれお答えください。
そして、区部と多摩地区の冷房設置状況の差について、教育庁はどのように認識されているのか、お伺いいたします。
読売新聞によれば、区部は一○○%設置してあるかのように読み取れたわけでありますが、一方、九月三日、杉並区は、区立小学校、中学校の普通教室に冷房を設置すると発表しました。
杉並区は、学校のエコスクール化として、自然エネルギーを活用し、快適な学習環境を確保するために取り組みをしてきた経過から、一定の条件、例えば幹線道路沿いで窓をあけられない学校といったケースに限定的にエアコンを設置してきました。しかし、緑化などで涼しくなるのは二度から三度、ことしのような猛暑が続けばほとんど効果がないとし、未設置校は来年に向け、順次エアコンを設置するとしました。
片や、東京都市長会は十一月四日に、公立小中学校空調機器整備に対する支援についてとして、都知事及び教育長に要望書を提出しました。内容は、冷房化を推進するための東京都からの財政支援と国の補助制度の改正でありますが、多摩地区の市町村と杉並区の財政力の差が、このように猛暑対策の差となってあらわれてきているのが実態であります。
私は八王子選出でありますから、八王子にある私立の八つの中学校冷房化状況を調べました。普通教室はすべて導入されていました。一方、公立の小学校、中学校は百八校、冷房化率は三・七%であります。導入している学校は航空機騒音に対して設置されたものでありますから、市として積極的に導入したものではありませんので、実質的には未設置ということになります。
八王子市内にあっても、私立と公立に格差が生じている現実もあります。普通教室の数は千五百であります。一教室二百万とすれば三十億円であります。国の補助制度は三分の一です。しかし、財政力指数が一を超えると、七分の二の補助率に下がります。また、事業費全額が補助対象になりません。八王子市にあっては、単純計算になりますが、二十一億円以上の一般財源が必要となります。
整備は多摩地区の市町村の置かれた財政問題で総括することなく、子どもの健康や学習環境の向上から早急な設置が必要と考えますが、東京都としてどのような支援をお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。
次に、第六十八回国民体育大会について質問をしていきます。
平成二十五年九月から十月にかけ、東京で五十四年ぶりの国民体育大会と第十三回全国障害者スポーツ大会が開催されます。周知のとおり、国民体育大会は戦後の荒廃の混乱の中、スポーツを通じて国民に勇気と希望を与えようと、昭和二十一年から始まった我が国最大のスポーツの祭典であります。
また、全国障害者スポーツ大会は、毎年一回開催されている障害者スポーツの全国的な祭典であります。東京での開催は、昭和三十四年第十四回大会に続き、実に五十四年ぶりとなります。
大会は都内六十二の全区市町村でありますが、そのうち正式競技は四十五の市区町村の会場で開催されます。競技の多くは市町村になっており、また、デモンストレーションとしてのスポーツ行事に至っては、五十二市区町村のうち三十四の市町村が会場になるといった、多摩地区を中心に開催されるのが今回の東京で開催する特徴であるといえます。
平成二十二年七月、財団法人日本体育協会理事会において東京都で開催することが決定され、これを受けて、会場となる各市区町村は実行委員会を組織し、具体的な準備業務に入っています。
本大会は平成二十五年でありますが、前年度にはリハーサル大会も開催し、厳しいスケジュールであります。大会開催に向け、ご尽力されている関係者の皆様には敬意を表するものであります。
そこで、国体開催に当たって、財政支援という視点で、都の考えを確認していきたいと思います。
平成二十二年一月に改定した「十年後の東京」への実行プログラム二○一○の目標八は、スポーツを通じ次代を担う子どもたちに夢を与えるというものです。そこには人と環境に優しい大会運営、そのために会場となる区市町村の施設整備等を支援し、会場やその周辺のユニバーサルデザイン化を推進していくと述べています。
国体を成功裏に終わらせるためには、開催に向けた万全の準備が重要であります。そのため、会場地の区市町村は、競技会の会場地として必要な業務の計画の策定、実施、そして競技会実施の準備や運営といったさまざまな仕事を分担するようになり、当然これらを実行していくためには多くの経費がかかってきます。
また、競技会場、そして練習会場となる施設や設備についても、選手、監督、大会関係者及び観覧者に満足していただける整備が求められていきます。もとより、時代に適応した簡素効率化の視点に立った、最小の経費で最大の効果を上げる大会運営でなければならないことも認識しているところであります。
そこで、踏み込んで具体的な質問をしていきます。
都は、財政支援は、会場地区市町村運営交付金制度によって、予算の範囲内で、会場地区市町村に対して運営費交付金として交付するようになっております。交付率は、交付対象経費の二分の一であります。ことし実施している千葉県は三分の二、過去の各県の国体補助を見ても、補助率は三分の二であります。
また、競技施設についても、中央競技団体の正規視察において、選手や観覧者の安全面や運営上の問題からの指摘を受け、想定外の高度な整備をしているのが実態であります。
施設整備に対する財政支援は二分の一で、一施設の上限額は一億円であります。想定外の施設設備を整備している現場から、厳しい財政状況に対し悲鳴が上がっております。大会運営に支障がないよう、上限額の撤廃あるいは補助率、補助対象経費の改善を図り、目標八にある政策の方向性、すなわちスポーツの振興を通じ競技力の向上と生涯を健康に過ごせる社会を実現するために、施設の整備をする絶好の機会でもあります。
しかし、区部と市町村の財政力の差あるいはスポーツ施設の差から、区部と多摩への支援の違いがあるべきと考えます。実行プログラムに示してある区市町村への支援について、具体的にどのような財政支援を予定しているのか、お答えください。
また、スポーツ施設の三多摩格差を解消する好機ととらえ、さらなる財政支援の必要があると考えますが、お伺いいたします。
以上、個別の事案から三多摩格差の問題を提起し、質問をしてきました。
私の認識として、例えば都区市町村協議会の設置など、東京都民が区部と多摩地区、住む場所に関係なく標準的な行政サービスが受けられているかどうか議論する時期に来ていると考えます。
現実には、今述べてきたように、東京一極集中による社会経済環境の変化が豊かな財政力を都、区部にもたらしました。その結果、質的にも高度な行政サービスを提供できるようになり、区部と多摩において新たな行政サービスの差が生じているのではないでしょうか。
東京都は、平成十二年に三多摩格差は解消したと総括しました。量的には充足されたと理解することもできますが、今申し上げたように、これまでとは異なる課題も生じています。新たな課題の解決に向け、都は地域特性を踏まえつつ、これまで以上に多摩地域の振興に取り組んでいくことが求められています。
そこで、都として今後どのような多摩の振興に取り組んでいくのかお伺いをし、私の質問を終わります。(拍手)
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 滝沢景一議員の一般質問にお答えいたします。
まず、小中学校の冷房設置状況についてでございます。
普通教室に冷房が設置されている学校の割合は、今年度末見込みで、区立小学校が九六・五%、区立中学校が九五・一%でございます。島しょを含む市町村立の学校につきましては、小学校が二二・五%、中学校が二二・四%でございます。
次に、冷房設置状況の差についてでございます。
学校の施設設備の整備は、学校の設置者が行うこととなっており、公立小中学校への冷房設置についても、設置者である各区市町村がさまざまな行政課題を抱える中、地域の実情、特性等を踏まえながら、それぞれの考え方に基づき対応してきているところでございます。
なお、ことしの夏は百十三年間の観測史上で第一位の平均気温となる記録的猛暑であったために、多くの市町村において、教室の暑さ対策が緊急に取り組むべき新たな課題となってきたものでございます。
次に、冷房設置に対する都としての支援についてでございます。
各市町村は、学校の施設設備の整備に関し、耐震化や老朽化対策といった重要な課題を抱える中、ことしの記録的な猛暑に伴って、冷房化という新たな課題も加わり、限られた財源の中で、その対応に苦慮しております。
こうした状況を踏まえ、良好な教育環境の確保を目的として、学校設置者に対する新たな財政支援策を検討してまいります。
〔スポーツ振興局長笠井謙一君登壇〕
○スポーツ振興局長(笠井謙一君) 国体開催にかかわる会場地区市町村への財政支援についてでございますが、競技施設整備費補助制度は、これまで国体を開催してきた各県で実施している制度を参考に、国体の競技実施に必要不可欠な整備事業を対象として、平成二十年度から実施しております。
上限額を他県より高く設定するほか、二十一年度からは、福祉のまちづくりに資する整備事業を補助対象に加えるなど、きめ細かな対応を行っているところでございます。
また、運営費につきましては、現在、区市町村の意見を聞きながら、詳細な検討を進めているところでございます。
スポーツ祭東京二○一三は、多摩・島しょ地域を中心に、東京都全域で開催する大会でありまして、多くの競技会を実施する多摩の市町村において、スポーツ環境の整備が進むよう、引き続き支援してまいります。
〔総務局長比留間英人君登壇〕
○総務局長(比留間英人君) 今後の多摩振興への取り組みについてでございます。
多摩の振興に当たっては、地域の抱えるさまざまな課題を踏まえつつ、多摩の発展の可能性や特性などを生かすという視点から取り組むことが重要でございます。
このため、都は、社会情勢の変化に対応しながら、多摩振興プロジェクトなどにより、都市基盤の整備や産業振興、福祉、医療の充実など、首都圏の中核拠点としての発展に向けた取り組みを進めてまいりました。
また、市町村が行う地域の課題解決に向けた取り組みに対して、その自主性、自立性を尊重しつつ、必要な財政的、人的支援を行ってまいりました。
今後とも、都は、多摩振興プロジェクトを着実に推進していくとともに、市町村の意向を十分に踏まえ、密接に連携しながら多摩の一層の振興を図ってまいります。
○議長(和田宗春君) 六番野田かずさ君。
〔六番野田かずさ君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○六番(野田かずさ君) 初めに、首都東京の危機管理について質問いたします。
昨今の国政を見ますと、我が国は周辺諸国による極めて重大な脅威にさらされ、政府は、これら圧力、恫喝に屈し、我が国の危機管理体制の脆弱さを露呈し、日本国民のみならずアジアの中でも、平和を希求する人々に大きな不安と失望を与えております。
中国は、我が国の領土である尖閣諸島を脅かし、我が国最南端の東京都沖ノ鳥島の、その島としての存在を否定し、ついには沖縄県すら日本の領土ではないと主張を始め、その領土拡張の野心を露骨にひけらかしております。
また、ロシアは、依然として我が国の北方領土を不法占拠し、先月には、大統領が旧ソ連時代を含めて初めて国家指導者として国後島に上陸しました。これは、北方領土に対しての実効支配を強く誇示し、領土返還拒絶の見せしめでありましょう。
そして北朝鮮は、十一月十二日に核兵器製造をほのめかすウラン濃縮施設を公開し、十一月二十三日には韓国延坪島への砲撃を行い、朝鮮戦争以来となる民間人への攻撃を行いました。いまだに危険な軍事独裁国家であることが世界じゅうに明らかにされたわけであります。
今日、我が国は極めて深刻な危機的状況にさらされております。我々の子どもの代、孫の代には、一体日本はどのようになってしまうのか、このまま手を打たなければ日本は消滅してしまうのではないかとの危機感を強く感じるのであります。
石原知事は、就任以来、東京から日本を変えるをスローガンに、さまざまな先駆的な施策を打ち出し、国をリードしてこられました。知事は、これまで危機管理を重視し、防災訓練では、自衛隊や米軍と協力関係を築くなど、都民、国民の生命と財産を守る姿勢を貫いてこられました。
アジア大都市ネットワーク21では、毎年アジアの専門家が集まって危機管理会議を開催し、災害発生時の相互支援体制を築くなど、危機に対してあらゆる手だてで対処する取り組みを進められております。まさに、政治が持つべき都民、国民の安全を断固守ろうとする力強い意志を感じます。
一千三百万都民が生活し、日本の頭脳と心臓である首都東京の危機管理を預かる知事に、国政の現状についての所見と危機管理への覚悟を伺います。
次に、日本の将来を担う子どもたちへの教育について質問いたします。
ことしは、明治二十三年に教育勅語が発布されてちょうど百二十年の記念すべき節目に当たります。また、あわせて議会開設百二十周年でもありますが、この節目の年に参議院議場において、秋篠宮殿下ご夫妻に対し、早く座れよなどとやじを飛ばした国会議員がいたことは、まことに遺憾であり、我が国の政治家の品格が疑われるものであります。
教育勅語を改めて読み直しますと、そこには、日本人のしんとなる価値が存在しております。しかしながら、戦後教育の中で、そういった価値が失われるとともに、我が国では、いわゆる自虐史観が幅をきかせ、世界情勢を偏った物の見方で見ているとしか思えないような主張、行動が繰り返されてきました。
現政権は、日韓併合百年ということで謝罪の談話を発表し、多くの批判、非難を浴びました。過去にも、時の政権によって謝罪談話や謝罪外交が行われておりますが、それが国際社会の好意を得ているなどと思うのは大間違いであり、現に、尖閣諸島の問題でも中国に足元を見られ、日本の固有の領土である歴史を一方的にゆがめられたばかりか、謝罪と賠償を求められました。
厳しい現実の中で、このままでは、日本人は単なる笑い物でしかありません。政治家自身が正しい歴史を知らない恐ろしい現状であり、次世代にこれを繰り返してはなりません。最近の国政を見るにつけ、日本人としてのしんをしっかり持っていなくては、国際社会でいいようにやられてしまうということを痛切に感じます。
石原知事は、都立高校において、江戸からの日本の近代化の歴史を必修化することに取り組んでおられますが、今後、将来を担う子どもたちに対して、日本の近代化の過程で、先人が厳しい現実の中、他国と渡り合い道を切り開いてきた歴史をしっかりと教えることが重要であると思います。
さらに、日本人としてのしんをつくっていくのは、歴史教育だけではなく、日本人として継承されるべき価値を確実に伝えていかなくてはなりません。ことし七月に東京都で発覚し次々と明らかになった高齢者不在問題などは、家族あるいは親子関係の分裂を意味するものであり、年金不正受給の問題と相まって、日本人の倫理観や正義感といった価値の崩壊を象徴する一つの事件であったと思います。
かつての日本は修身として、父母を大切にし、夫婦、兄弟で助け合い、世のために尽くせと繰り返し教えてきました。こうした教育は、日本の将来を担う子どもたちに日本人としてのしんを形づくり、厳しい現実に向き合う際の確かな価値観を育てる上で極めて重要であると考えますが、知事の見解を伺います。
次に、横田基地の軍民共用化について質問いたします。
軍民共用化については、知事みずからが先頭に立ち、これまで取り組んできている都政の重要課題であります。横田空域については、一里塚ともなる一部返還が既に実現しましたが、いまだ広大な米軍管制空域が残っており、民間航空機の飛行にも影響を与えております。
また、知事は、有事の際の兵たん基地として位置づけられている横田基地は、平時においては十分な余裕があり民間との共用が無理な要求であるはずがない、日本の空は日本人のものにしようではないかとよく発言をされておりますが、私もまさに同感するものであります。
先般、私は、日台友好議員連盟の一員として、羽田空港から台北に向けた一番機に乗る機会を得ました。羽田空港の国際化の実現については、知事の尽力によるところが極めて大きいですが、実際に羽田を利用してみて、アクセス時間の大幅な短縮など、初めてその便利さを痛感したところであります。
もし横田基地の軍民共用化が実現すれば、多摩地域を初めとする首都圏西部地域の住民にとって、航空利便性は向上することになり、航空需要や利用者が増加、周辺地域の経済活性化や雇用促進につながるなど、共用化に伴う経済効果は非常に大きいものであると考えます。共用化の早期実現に向け、今後も着実に一歩一歩進展させていくことが必要であり、その進捗を図っていく意味においても、横田基地の問題を都民や関係者にもっと認識してもらうことが重要であります。
こうした観点から、共用化の意義を理解してもらうような啓発を積極的に行うべきであると考えますが、東京都として、今後、具体的にどのように取り組んでいくのか伺います。
次に、水道水源林について質問いたします。
最近、中国を初めとする外国資本が水資源をねらい、我が国の森林を買収しているとの報道を耳にします。このことは、国家の安全保障にもかかわる重大な問題であり、単なる不動産売買と見逃すわけにはいきません。
幸い、多摩川上流の水源地域については、現在のところそのような報道は聞こえてきませんが、荒廃した民有林が存在しているという現実もあり、真剣に森林を守ることを考えなければなりません。このような状況を的確にとらえ、水源地域を将来にわたり、いかにして良好な状態に維持保全していくかが、今、我々の世代に課せられた課題といえます。
こうした中、水道局は、我が党からの提案を受け、荒廃した民有林対策に乗り出しました。この取り組みは、水資源をねらう中国資本、外国資本対策にも通じるものと考えます。まず、水道局として、将来にわたり東京都の貴重な水源地域を守り続けるための基本的な認識について伺います。
多摩川のみならず、利根川、荒川などの水源についても、流域県と連携をとりながら、外国資本についての情報収集や防止策に取り組まれますよう要望いたします。
新たな取り組みである民有林のモデル購入では、本年度の公募に対して、多くの問い合わせに加え複数の申し込みがあったと聞いており、関心の高さがうかがえます。しかし、申請に当たっては、山林の所有権移転に伴い必要となる書類が多く、所有者の負担が大きいと聞いております。こうした課題を解決し、事業が少しでも早く着実に推進されることを期待しております。
そこで、申請に当たっての水道局の積極的なサポートと、早期本格実施に向けた取り組みについて見解を伺います。
次に、多摩地域の道路整備について質問いたします。
多摩地域は、広域的な都市間のネットワークを強める自立と連携の都市づくりを進め、首都圏の中核となることが期待されており、そのためには、一層の道路整備が必要であります。
しかしながら、多摩地域の都市計画道路の整備率は、いまだ五割を超えた程度であり、まだまだ道路整備が不可欠な状況です。そこでまず、多摩地域、特に私の地元である北多摩地域における道路整備の取り組みについて見解を伺います。
次に、多摩地域の歩道の整備について伺います。
都市間のネットワークを強める道路整備も重要でありますが、あわせて安全で快適な歩道の整備も極めて重要と考えております。
都では、これまでも計画的に歩道を整備してきたところですが、区部に比べておくれている感があり、現に歩道の幅員が狭く、ベビーカーや車いすがすれ違えない箇所や歩道のない箇所が残されています。多摩地域において、子どもや高齢者などが安心して歩ける歩道を整備すべきと考えますが、都の基本的な考え方を伺います。
また、私の地元である東村山市内の都道二二六号東村山清瀬線、通称恩多街道の恩多町五丁目付近では、いまだ歩道のない状況であり、東村山市からも私のところへ歩道整備の要望が出されております。私どもがかねてより早期実現を要望しております、この未整備箇所における今後の歩道整備の取り組みについて、あわせて伺います。
次に、道路整備における用地取得について伺います。
道路事業推進のためには、まず土地取得が必要であります。現在の道路整備における用地取得の課題と、その解決に向けた取り組みについて伺います。
また、公正な補償をもって土地を取得できる仕組みとして、収用制度があります。収用委員会においては、この収用制度の理解に向けどのような取り組みをしているのか伺い、以上で私の質問を終了いたします。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 野田かずさ議員の一般質問にお答えいたします。
まず、危機管理についてでありますが、危機、クライシスという言葉は、多分ラテン語が原点だと思いますけれども、物事が突然に一変するという――ギリシャ語ですか、来ているようでありまして、地震にしろテロにせよ、これは突然あらわれてくるものでありまして、私も例の九・一一のときにたまたまワシントンにおりまして、前日訪れて国防長官と話したペンタゴンが、起きてみたら目の前で炎上していて愕然としました。
いずれにせよ、事前に、想像力を超えて物事が起こる、それに対する対処を可能な限り知恵を尽くし、力を尽くし、被害の軽減を図らなきゃならないと思います。このような考えに立って、これまで東京の危機管理に取り組んできました。治安の確保、維持に全力を挙げるほか、ビッグレスキューやテロ対策訓練の実施、東京DMATの発足など、危機発生時を具体的に想定した取り組みを重ねてきました。
一方、国は、小泉内閣のときでもありましたが、私は九・一一の体験で、FEMAが非常に有効に働いているのを見て、小泉総理にも建言して、国でもつくったらどうかといったんですが、その必要はないということで、それならばと首都圏だけで、首都圏だけのFEMA、つまり災害のときに県同士が連絡して力を出し合う、そういう組織をつくりました。
現内閣になっても、もっと大きな問題が起こっていますが、政府がその危機に対処していないばかりか、つまり、この国そのものをどうやって守るかという戦略も戦術も気概も感じられないということに、国民は非常に危機感を感じていると思います。当たり前のことですけれども、天はみずから助くる者を助くという当然の原理に従って政治も動かなければならぬと思います。
よく引用するんですけど、かつて有名な哲学者の田中美知太郎さんが、ある種の理念、センチメントに沿って物事を決め出したらかなうものではないと。そして、非常に皮肉にも、憲法に日本は平和を守ると書いてうたえば平和がそのまま達成されるなら、毎年日本に大きな被害をもたらす台風も、憲法で日本に来てはならないとうたえば台風は来なくなるのかと、非常に皮肉な名言を述べておられました。
いずれにしろ、私たち、理念といいましょうか、観念といいましょうか、しかしセンチメントとしかいいようのない衝動で物事を安易に見送っては、他国の侮べつ、収奪にさらされるまま、結局この国は沈没していくんじゃないかという気がいたします。国には統治の基本というのが何かということをきちっと考えてもらいたいと思います。ということでしょうかね。
三木武夫という愚かな政治家がいい出した武器の輸出三原則なるものを、今度は、非輸出三原則なるもの、ようやく現政府が変えるんで、少しはまともになったかなと思ったら、わけのわからぬ社会党なるものと、社民党ですか、手を結ぶためにこれをまた引っ込めるという、実にこそくな、政権維持のための場当たりな施策で、実は本質的日本の危機というものを、要するに増幅しているという感じが否めません。
次いで、日本の将来を担う子どもたちの教育についてでありますが、かつての日本には、節度、謙虚、潔さ、あるいは自己犠牲、責任感、真の勇気、あるいは人間同士の連帯といった世界に誇り得る美徳がありました。明治時代にやってきた外国人が、この国は貧しくもあるけど、しかし貧困はない、何と高貴な民族だろうかという、そういう記述をあちこちに残しておりますが、どうもそれが必ずしも継続されずに、大きく狂ってきたという感じが否めません。
太平洋戦争で敗戦の後に、アメリカさんのために、アメリカからあてがいぶちでいただいた平和の中で培われてきた日本人の新しい価値観というんでしょうか、これはいささか他の健全な先進国とは違うものがあるような気がします。
ちなみに、アメリカはあくまでも平和、いや自由。フランスは自由と平等と博愛。これに比べて日本は何があるかというと、我欲でしかないですね。我欲も金銭欲、物欲、性欲。ある人がうまいこといいましたが、それをさらにパラフレーズすると、日本人にとっての今のアイデンティティーは温泉とグルメとお笑いでしかないというけれども、実にその実感が強くいたします。
やはり私たちが立場、物の考え方を変えて継承していかなくちゃいけない、人間としての価値の基軸そのものが要するに失われつつという感じは否めないと思います。
アメリカでは、仄聞しますと、小学校一年生に上がりますと、先生が必ず同じことをいうそうです。それは三つでして、一つは、先生のいうこととお父さん、お母さんのいうことが違っていたら、あくまでもお父さん、お母さんのいうとおりにしなさい。もう一つは、みんなで決めたことは、自分は少し嫌でも、みんなと同じようにやろうと。もう一つは、まちでお巡りさんが困っていたら、子どもなりにも手助けをしようということだそうです。
かつて教育勅語という日本の価値観の規範がありました。今さらそれをあの言葉で復活するのはこっけいでありますが、しかし、やはり小学校とかそういう幼い教育の場から一種の刷り込みとして、少し重たい言葉でも、理解ということじゃなしに暗唱して、人間の規律、規範というものを子どもたちにとにかく刷り込んでいく、プリントしていくことが私は必要だと思います。
いずれにしろ、私たちはここら辺で本気で子どもに対する教育の政策を考え直しませんと、単に子ども手当をばらまくだけでは、私は、子どもはろくに育ってこないし、健全な社会にはなり得ないという気がいたします。
他の質問については、関係局長から答弁します。
〔知事本局長秋山俊行君登壇〕
○知事本局長(秋山俊行君) 横田基地軍民共用化の啓発についてのご質問にお答えをいたします。
多摩の振興はもとより、将来の国力の充実に資する軍民共用化を推進するためには、日米協議の促進に向けた具体的な議論を通じて、都民の皆様を初め、日米の関係者の理解を深めていくことは重要であるというふうに認識をしております。
その取り組みの一つといたしまして、今月十七日に日米の有識者を招き、横田基地軍民共用化推進セミナーを開催いたします。このセミナーでは、軍民共用化に関する検討委員会の杉山委員長を初め、在日米軍司令官を務めた米国の専門家などが軍民共用化の早期実現に向けた課題や今後の展開について具体的に議論し、その内容を国内外に広く発信することで、世論のさらなる喚起を図るとともに、米国に改めてメッセージを伝える機会にしたいというふうに考えております。
今後とも、日米協議を促進させるため、日米両政府に粘り強く働きかけるとともに、地元五市一町を初め、広く都民や関係機関に向けて積極的に啓発を図り、軍民共用化に対する一層の理解を得ていくよう努めてまいります。
〔水道局長尾崎勝君登壇〕
○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えします。
まず、水源地域を保全するための基本的な認識についてでございますが、将来にわたり水源地域を良好な状態に保ち、小河内貯水池を守り続けることは、水道事業の根幹ととらえております。
このため、明治時代からおおむね十年を計画期間とする水道水源林の管理計画等を十次にわたって策定するなど、百年以上もの間、局の保有する水道水源林を適切に管理してきました。
一方、長期にわたる林業不振の影響などにより、水源地域では荒廃の進んだ民有林が増加しております。こうした状況を受け、水道局では、平成十四年度に多摩川水源森林隊を設立し、ボランティアと一体となって一部の民有林の保全活動を行っております。
しかし、長期的な視点に立てば、山林所有者が手放す意向を持つ荒廃した民有林は、水道局みずからが所有し、水道水源林として再生していくことが、安全でおいしい水の安定供給に資するものと考えております。
次に、申請に当たっての局のサポートと早期本格実施に向けた取り組みについてでございますが、小河内貯水池上流域の荒廃が進んだ民有林対策として、本年度から民有林購入モデル事業に着手しました。本年度は、六月末から九月末までの公募に対して、本事業に関心を持つ山林所有者から三十件程度の問い合わせがあり、うち五件について申し込みがありました。
これまでの対応結果から、申し込みに当たり、山林所有者が公的書類の取得や隣接地所有者の把握等に多くの時間と労力を費やしているなどの課題が明らかになりました。
このため、これまでに山林所有者から寄せられた質問とそれに対する回答をホームページ等で公表することに加え、山林ごとの個別の事情に対応するための相談窓口を設置し、例えば隣接地所有者の把握に関する助言を行うなど、さらなるサポート体制の充実を図ってまいります。こうした取り組みにより課題の解決を図り、モデル事業期間をできる限り短縮し、早期の本格実施に向けて検討を進めてまいります。
〔建設局長村尾公一君登壇〕
○建設局長(村尾公一君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、多摩地域における道路整備の取り組みについてでございますが、多摩地域においては、交通の円滑化や都市間連携の強化を図る上で、効率的、効果的な幹線道路ネットワークの形成が重要でございます。
このため、都は、多摩南北主要五路線を初めとする骨格幹線道路や多摩川中流部橋梁の整備、連続立体交差事業などを重点的に実施しております。
このうち北多摩地域においては、南北主要五路線の一つである府中所沢線のうち七・六キロメートルについて、また、東西主要四路線である新青梅街道の立川東大和線から西側区間六・七キロメートルについて、それぞれ事業の推進や新たに事業着手するなど、渋滞緩和に極めて効果の高い骨格幹線道路の整備を着実に進めてまいります。
さらに、まちづくりにも寄与する西武新宿線東村山駅付近の連続立体交差の事業化に向け、積極的に取り組んでまいります。
次に、多摩地域における歩道の整備についてでございますが、歩道は、安全で快適な歩行空間の確保はもとより、ガス、水道などのライフラインの収容空間など多様な機能を有しており、その整備は極めて重要であります。
多摩地域では、都道における歩道の整備率がいまだ約七割であり、その整備に当たっては、重点的、効率的な取り組みが求められております。このため、自動車交通量や歩行者通行量、学校、病院など公共施設の立地条件等を総合的に勘案し、事業箇所を選定し、計画的に歩道整備を進めております。
お尋ねの東村山市内の都道二二六号東村山清瀬線については、全生園前交差点から野火止小入り口交差点付近までの約一・四キロメートルの区間で、順次、歩道整備を進めており、残る恩多町五丁目付近の四百二十メートルにおいても早期の事業着手に向けて測量、設計を行ってまいります。
今後とも地元自治体や関係住民の理解と協力を得て、だれもが安心して歩ける歩道の整備を積極的に推進してまいります。
最後に、道路整備における用地取得の課題とその解決に向けた取り組みについてでございますが、東京では住宅や店舗が密集しているとともに、用途地域により移転先が制限される工場や、関係権利者が多数のマンションが立地しているなど、大都市ならではの特性が存在いたします。
加えて、多摩地域に多く見られる納税猶予農地や生産緑地では、用地取得に協力することにより過去にさかのぼって相続税の納税が必要となるなど、税制上、多大な負担を生じる場合がございます。
このため、事業着手に先立ち事前調査を実施し、工場などの移転候補地や多数の権利者との同時契約の方法など、検討、工夫を行うとともに、農協や農業委員会の協力のもと、代替農地へのつけかえを図るなど、さまざまな課題の早期解決に取り組んでおります。
さらに、関係権利者の方々を対象に個別相談会を実施するとともに、個々の折衝では、生活再建への助言、助力などを行うなど、きめ細かな対応に努めております。
今後とも、事業効果の早期発現を目指し用地取得を着実に進めるとともに、必要な財源の確保に努めながら、多摩地域の道路整備に積極的に取り組んでまいります。
〔収用委員会事務局長藤井芳弘君登壇〕
○収用委員会事務局長(藤井芳弘君) 収用制度の理解促進に向けた取り組みについてお答えいたします。
道路等公共事業の着実な推進のためには、状況に応じて収用制度を適切に活用いたしまして、計画的に事業用地等を確保していくことが必要でございます。また、制度を活用することで権利者の早期生活再建を可能とする効果もございます。
このため、区市職員に対する研修や出張相談など事業者に対します制度の活用促進のための取り組みを進めますとともに、相談支援センターを開設いたしまして、広く一般の都民の方々も対象といたしました収用手続に関する相談にも応じてまいりました。
今後とも、これらの取り組みをさらに充実いたしますとともに、本年度改定いたします収用制度活用プランやホームページなどを活用することによりまして、一層、収用制度の理解促進が図られるよう取り組んでまいります。
○副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、暫時休憩をいたします。
午後五時十八分休憩
午後五時四十分開議
○副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
二番加藤雅之君。
〔二番加藤雅之君登壇〕
○二番(加藤雅之君) 初めに、東京の地域産業振興について質問します。
都内には、機械金属、印刷、繊維、メッキ工業など、さまざまな業種の企業が地域に根差して事業を行っています。
私の地元墨田区には、ニットなどの繊維製品や日用品、金属プレスなどの製造業が集積しており、都内有数のものづくりの拠点になっています。さらに、羽子板や人形、染物など伝統工芸品が多く、有名です。
これらの産業は、地域だけでなく、東京の雇用や経済を支える活力源でありました。新技術の開発も、長年にわたる地場産業のものづくりの伝統があるからこそ生まれ出るものと考えます。
企業の経営環境はますます厳しくなっておりますが、こうしたときこそ東京の地場産業をしっかりと支えていくことが重要です。
そこで、東京の伝統工芸を含め、地域産業振興に向けた知事の所見を伺います。
また、地場産業の安定した売り上げを確保していくには、自社の技術や製品が持つ強みを生かした付加価値の高い開発の支援に加え、顧客目線に沿ったマーケティング支援が必要です。墨田区内のニット製品を扱う企業が顧客ニーズに沿ったオリジナル製品の製造、販売に取り組み、今や全国から引きも切らない注文を受けるようになった事例もあります。
その成功の要因は、市場リサーチの結果を踏まえた製品開発であり、さらにその製品の価値を効果的かつ継続的に顧客に売り込んだことにあります。しかし、多くの中小零細企業にとって、こうした取り組みは現実的には容易ではありません。
そこで、都は、製品の開発にとどまらず、中小零細企業のニーズに応じたマーケティングや販売などを含めた一体的な支援を行うべきと考えますが、見解を求めます。
次に、水害対策について質問します。
近年は、台風だけでなくゲリラ豪雨被害が各地で発生し、とうとい命が犠牲となっています。水害発生時には速やかな避難が重要であり、そのために住民に対し、避難勧告などを早く正確に伝える工夫が必要です。
この避難勧告は区市町村が行うことになっていますが、昨年度、国が実施した全国調査によると、避難勧告発令にかかわる具体的な判断基準を定めている都内の区市町村は、水害で約四割、土砂災害では約三割にとどまるなど、住民を守るための体制が十分ではありません。
加えて、避難勧告は単に発令すればよいのではなく、その内容を確実に住民まで伝えなければ、逃げおくれて災害に巻き込まれることも考えられます。より早く的確に避難勧告などの情報が都民に伝わるためには、テレビ、ラジオなど、ふだんから利用する媒体によって報道されることが効果的です。
そこで、水害発生時に住民が安全に避難できるよう、避難勧告発令基準の策定や、放送事業者との連携など、区市町村が行う対策を都として支援すべきと考えますが、見解を求めます。
次に、知事は所信表明の中で豪雨対策を取り上げ、浸水被害の危険性の高い地域へ集中的に緊急豪雨対策を講じると述べられました。
一般的に、河川や下水道の整備には多くの費用と時間を要します。しかし、豪雨対策の改善は急がなければなりません。とりわけ、浸水被害の危険性の高い地域においては公共施設などを活用し、一時貯留施設等を積極的に設置していくことが必要ですが、そうした地域内に存在する公共施設は限られております。
そこで、都は、都営住宅の建てかえに合わせて貯留施設の拡充を図るなど、公共施設の積極活用を検討すべきです。見解を求めます。
次に、障害者雇用について質問します。
私は、都議会公明党の視察団の一員として、昨日の我が党の代表質問で取り上げた旭川市の企業を訪問しました。全従業員の約三割を占める障害者が生き生きと働き、今では社にとってもなくてはならない存在となっています。
経営者は、初めから仕事ができたわけではない、褒めて長所を伸ばしてきた、今では後輩に仕事を教えるまでに成長したと話されました。半年ごとの査定で徐々に賃金も上がって経済的に安定し、家庭を構えた例もあるそうです。
親亡き後のことを考えると、初めは厳しくても後で必ず生きてくると語られた経営者に接し、障害者就労の拡大のためには、企業側の意識改革が欠かせないこと、そして、そのためには障害者雇用と採算維持の両立に成功をおさめる企業の実際の姿に触れることが最も効果的であると実感しました。
そこで、都は今後、障害者雇用に関心を抱きながら踏み切れないでいる都内中小企業を対象に、先進的取り組みの企業の協力を得て研修会や企業訪問会などを開催し、充実を図るべきと考えますが、見解を求めます。
同様に、就労拡大のためには、景気低迷が続く中にあっても高い志を維持し、積極的に雇用に取り組む企業を評価し、支援していくことが大切です。そのためには、障害者を雇用する中小企業同士の成功事例の情報交換や意見交換等の交流を進めることが効果的であります。
そこで、都として、さらに区市町村単位で障害者就労支援センターなどを拠点に企業連絡会の整備を図り、活用していくべきだと考えます。見解を求めます。
次に、既存住宅の活性化についてです。
地元墨田区内にも存在する木造住宅密集地域などでは、耐震耐火構造への改修、建てかえが必要です。今後、こうした地域で建物の長寿命化が必要とされる中、一つの懸念として心配されるのが、土地などに比べ、極めて早く資産価値が薄れてしまい、そのために短期間で壊されてしまう日本の家屋資産の問題です。
現状では、既存住宅の質が十分でなく、流通がしにくいことによって空き家住宅が増加する一方で、住宅の住みかえ希望とかみ合わない、いわゆるミスマッチ状態が都内で広がっており、今後ますます既存住宅は売却しにくくなるとの予想もあります。
事実、国内の中古住宅の流通シェアを欧米と比較すると、イギリス八九%、アメリカ七八%、フランス六六%に対し、日本は一三%であり、格段と低い現状となっています。
単身世帯となった高齢者が、掃除の手間や防犯面での不安を考え、戸建て住宅からコンパクトな広さの集合住宅への住みかえを希望する事例や、狭い集合住宅に住んでいる子育て世帯が、音や振動の面で近隣への配慮が軽減される広目の戸建て住宅への住みかえを希望したりする話を耳にします。
そこで、ライフステージの変化に応じた住みかえがスムーズに進むためにも、特に小規模な集合住宅を中心として住宅の質を高めて、既存住宅の流通を活性化させる取り組みが必要です。都の見解を伺います。
既存住宅の質を高める工夫として、とりわけ注目を集めているのが、環境に優しいエコ建築への改善です。建物の環境性能を向上させることは、省エネを通じ、地球温暖化の防止にも役立つことであり、都が積極的に推奨、支援する価値のある取り組みであります。
そこで、今年度から都議会公明党の提案にこたえて都が開始した、省エネ改修支援事業の取り組みと、今後はより積極的に省エネ改修を推奨するべきと考えますが、来年度以降の展望も含め、都の見解を求めます。
最後に、東京の新たな魅力の発信について質問します。
電通総研が先月末に発表した、来年にヒットが予想される商品、サービスの一位に東京スカイツリーが選ばれました。
また、先月発表された、都民生活に関する世論調査では、都市景観の項目で、後世に伝えたい東京を代表する景観では、浅草、向島などの下町情緒を残すまち並みが六○・四%で第一位です。
さらに、かつて水の郷百選に選定された墨田区には、東西南北に川が走り、船から眺める風景に期待が高まっています。実際に、スカイツリーの開業前であるにもかかわらず、民間のバス会社が小型船を利用して隅田川から江東内部河川を通り、スカイツリーを見学するツアーを催し、人気を博しております。
電波塔として世界一の高さとなる新時代のスカイツリーの風景と、周辺に残る下町情緒のまち並み、東京の観光振興に大きく寄与することが十分に予想されます。
こうした魅力ある地域の情報を、都としてもホームページやテレビ、ラジオなどを通じて積極的に発信すべきであります。見解を伺います。
また、都営バス、都営地下鉄などを媒体として、バスや電車の車内広告、あるいはバス停や地下鉄駅構内を利用した、スカイツリーと周辺の魅力告知を行うべきであります。見解を伺います。
さらに、墨田区では、スカイツリーの開業に向けて、タワーの足元を流れる北十間川の水辺空間を再生して、新たな下町のにぎわいを創出する取り組みをしています。
都は今後、地元住民の意見を十分に反映させ、魅力ある水辺空間とするために、散策路の整備や地元区と連携した船着き場の整備など、舟運整備も重要であります。
そこで、貴重な水辺空間の魅力を高めるため、江東内部河川の整備を促進すべきであると考えますが、見解を求めます。
結びに、観光のにぎわいに伴う交通渋滞やごみの散乱など、観光地全体のイメージを損なうことのないよう、都として周辺整備や安全対策に特段の力を入れるべきことを要望して質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えいたします。
地域の産業振興についてでありますが、東京には、高度な技術力を有するものづくり企業がたくさん存在しております。また、江戸時代から受け継がれてきた伝統的な技術を守り続ける企業もあります。
そのうちのあるものは非常にごくごく小さなものでありますが、特にその小さな小さな企業の代表的な職人さんといいましょうか、マイスターは、そのうちの何人かは既に名誉都民としても表彰もされております。こうした地域に根差した中小企業は、東京の産業を支える礎ともいうべき重要な存在であると思います。
都はこれまで、産業交流展などを通じたすぐれた技術力の発信、都立産業技術研究センターにおける技術面での支援に加えて、経営力向上TOKYOプロジェクトによる経営診断の実施などによりまして、地域の中小企業の持つ力の底上げに取り組んできました。
今後とも、技術、経営、人材育成などのさまざまな面から、現場の実態に即した施策を着実に展開し、都内の各地域で懸命に努力をする中小企業を支えていきたいと思っております。
他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
〔東京都技監河島均君登壇〕
○東京都技監(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、公共施設を活用した一時貯留施設等の設置促進についてでございますが、都は、近年の局地的な集中豪雨の増加を踏まえ、浸水の危険性の高い地域を中心に、迅速かつ集中的に実施すべき施策を緊急豪雨対策として取りまとめました。
この中で、河川や下水道への雨水流出を抑制するため、新たに学校、公園、都営住宅などの公共施設の用地を活用して一時貯留施設の設置を行うなど、流域対策を促進することといたしました。
このうち、都営住宅につきましては、現在建てかえを行っている団地のうち、浸水の危険性の高い流域にある二団地におきまして、来年度、一時貯留施設等の設置を予定しており、順次その拡大を図ってまいります。
今後とも、都民生活の安全・安心を確保するため、関係機関と連携し、積極的に流域対策を推進してまいります。
次に、既存住宅流通の活性化についてでございますが、都はこれまでも、既存住宅流通の活性化を図るため、取引に当たり確認すべき事項を取りまとめた、安心して住宅を売買するためのガイドブックを戸建て住宅及び分譲マンションについて作成し、都民が安心して既存住宅を売買できるよう取り組んでまいりました。
地球環境問題がますます深刻化する中で、住宅が量的に充足し、人口の減少を目前に控えた東京におきましては、短期間で住宅をスクラップ・アンド・ビルドするのではなく、社会全体で長期にわたって住み継いでいくことが重要でありまして、良質な既存住宅の流通を促進することは、住宅政策における主要な課題の一つとなっていると考えております。
現在、住宅政策審議会において、既存住宅流通の活性化を含めた今後の住宅政策の展開について議論が行われておりまして、今後、この議論を踏まえ、時代に即した住宅政策を総合的に展開してまいります。
最後に、省エネ改修支援事業についてでございますが、本事業は家庭の冷暖房に起因するCO2排出量を削減することを目的に、既存住宅の断熱性を高めるなどの省エネ改修を促進するものでございます。
具体的には、木造戸建て住宅に住む三十戸の一般家庭に専門家を派遣し、住宅の省エネ性能調査や概算費用を含めた改修計画案を作成するなど、アドバイスを行っております。
この事業の成果をもとに、来年度は、各住宅の状況に応じた省エネ改修の手法を類型化し、省エネ改修を行うに当たっての事前の調査方法や効果的な改修方法等をガイドブックとして取りまとめ、広く情報提供を行うほか、事業者や消費者に対するセミナーや講習会を実施するなど普及啓発を図り、住宅の省エネ改修を促進してまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
中小企業の製品の開発から販売までの一体的な支援についてでありますが、中小企業が市場のニーズを的確に把握し、製品の企画と開発に取り組むとともに、そうした製品を広く販売する体制の充実を図ることが経営の向上を図る上で不可欠となっております。
都はこれまで、中小企業の製品開発に必要な経費の一部を助成する支援などを行ってまいりましたが、これに加え、中小企業のニーズに応じて製品開発の前提となる企業の企画力を高めることや、営業スキルの向上に対する支援に力を入れることも重要と考えております。
このため、都では、新製品の企画や開発から販路の開拓までを含めた、中小企業の一連の事業活動で必要となるさまざまな知識やノウハウを提供する支援を検討しているところでございます。
こうした取り組みにより、中小企業の企画力や販売体制の充実を後押ししてまいります。
次に、中小企業に対する障害者雇用に関する啓発についてであります。
本年七月の改正障害者雇用促進法の施行によりまして、障害者雇用納付金制度の対象が中小企業にも拡大されましたので、早期に都内中小企業に対し障害者雇用の促進を働きかけていく必要がございます。
このため、都は障害特性や雇用に当たって留意するポイント、各種制度等をまとめた障害者雇用促進ハンドブックを二万五千部作成し、中小企業等に対し配布するほか、関係局と連携した企業向け普及啓発セミナーを実施しております。
また、東京しごと財団においては、中小企業を対象に障害者を積極的に雇用する企業の経営者等を講師としたセミナーを実施しておりまして、中小企業の事業主等が障害者雇用に成功している企業の取り組みを実態に即して深く理解することができるよう、今後とも内容の充実に努めてまいります。
これらの取り組みを通じて、都内中小企業に対し、障害者雇用促進に関する啓発を進めてまいります。
〔総務局長比留間英人君登壇〕
○総務局長(比留間英人君) 区市町村の水害対策への支援についてでございます。
区市町村が水害発生時に時期を失することなく避難勧告を行えるよう、都は発令基準の策定について個別に助言を行い、これまでに策定済みを含め八割を超える区市町村が地域に応じた基準策定に取り組んでおります。
また、都民がテレビ、ラジオから避難勧告の情報をいち早く得られるよう、避難勧告を発令した区市町村が放送事業者に直接発令情報を提供し、テレビ、ラジオを通じて速やかに伝達できる仕組みを整備いたしました。
今後とも、全区市町村で避難勧告発令基準が策定されるよう、必要な助言を行うとともに、情報が放送事業者に対し迅速に提供されるよう、区市町村と合同で実践的な訓練を実施するなど、水害対策に係る区市町村の取り組みを支援してまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 障害者を雇用する中小企業の交流についてでございますが、お話のように、中小企業における障害者雇用を促進するためには、企業同士が交流できる場を設けることが効果的でございます。
そのため、都が開催いたします障害者雇用の企業向け普及啓発セミナーにおいては、障害者を雇用する企業の具体的な取り組みの紹介や、企業同士の情報交換の場を設けております。
また、区市町村障害者就労支援センターでは、地域の企業とハローワークなどが定期的に意見交換を行う情報連絡会の設置や、障害者を雇用している企業への職場見学会の実施など、独自の取り組みを行っております。
中小企業同士がその知識と経験を共有することは、障害者の継続的な雇用拡大に大変有効であることから、都は、今後とも区市町村と連携しながら、中小企業同士の交流を促進してまいります。
〔生活文化局長並木一夫君登壇〕
○生活文化局長(並木一夫君) 魅力ある地域の情報発信についてでございますが、地域の情報をさまざまな機会を通じて発信し、東京の魅力を多くの方々に知っていただくことは、広報の役割として極めて重要でございます。
都はこれまで、東京ならではの都市の魅力である歴史、文化、豊かな自然に恵まれた地域や観光スポットの情報を、テレビやホームページなど広報媒体において取り上げ、発信してきたところでございます。
お話のスカイツリーにつきましては、再来年春の開業に向けまして、地元区などにおけるさまざまな関連イベントやPRの取り組みがますます活発になっていくものと思われます。
今後、こうした地域の取り組みなどを踏まえ、魅力ある東京の情報をさまざまな媒体を通じて発信してまいります。
〔交通局長金子正一郎君登壇〕
○交通局長(金子正一郎君) 都営交通によるスカイツリーとその周辺地域の魅力発信についてお答えをいたします。
東京スカイツリーの開業により、周辺のまち並みを含めた一帯の地域は、国内外から多くの観光客が訪れる東京の新名所となり、バスや地下鉄など付近を運行している都営交通にとっても、乗客増の好機となるものと期待しております。
このため、交通局では、これまでも広報誌などを活用し、スカイツリー周辺のバスルートや沿線施設のPRに努めてまいりました。
今後は、こうした取り組みに加え、関係機関とも連携しながら、地下鉄の駅構内やバス、電車の車内広告などを活用して乗客誘致に努めるとともに、スカイツリーや周辺のまち並みの魅力を積極的にPRしてまいります。
〔建設局長村尾公一君登壇〕
○建設局長(村尾公一君) 江東内部河川の整備についてでございますが、江東内部河川では護岸の耐震化を進めるとともに、特に地盤の低い東側については、水門で閉め切ることにより、天井川となっていた河川の水位を地盤面よりも低く下げることで、安全性を向上させております。
旧中川では、この水位低下により、既に河川内に約二十ヘクタールの広大な緑の岸辺が生み出され、地域の方々が花壇づくりや散策、ボート遊びなどを楽しんでおります。
また、修景整備として、小名木川では、江戸時代に行徳の塩田よりこの川を使い塩を運び込んだことにちなみ、塩の道と銘打って、石積み風の護岸や柳の植栽など江戸情緒を感じていただけるよう工夫に努め、整備をしております。
今後も引き続き、東京スカイツリーの間近を流れる北十間川や横十間川、その他西側の河川も含め、地元と連携しながら緑化護岸や散策路などを整備し、地域の特色を生かし、魅力ある川づくりを進めてまいります。
○副議長(鈴木貫太郎君) 五十五番岡田眞理子さん。
〔五十五番岡田眞理子君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕
○五十五番(岡田眞理子君) 初めに、築地市場に関して質問をいたします。
さきの知事の移転決定のプレス発表のあった翌日、知事署名の入ったチラシが市場内に配られましたが、市場内の反応は冷ややかなものであり、市場業者の心は動かなかったと聞いております。また、先日行われた総代選挙の結果を見ても、四十八対五十二といった現在地再整備派の声の方が大きいことが示されました。地元中央区が都庁に赴き中央区案を提出しましたが、一顧だにされなかったということも耳にしています。
この築地問題は、小さい企業の声と地域の声との象徴的問題であります。そうした観点から三点質問をいたします。
まず水産仲卸についてです。
先ほど、前議員の中小企業に関するご質問の中で、知事は、中小企業を守るとご答弁されておりましたが、大田区のような小さなまち工場では、ものづくりのまちとして、その高い技術と豊かな経験を生かして仕事を守り、新しい製品を生み出すといった努力を積まれています。これらの工場の多くは、実直に仕事をして世界の技術を支えています。
築地市場もほとんどが小さな仲卸業者であり、水産仲卸は現在七百三十四社といった数の中小企業集合体で成り立っています。高級な魚から安価なものまで扱うお店がさまざまあり、すぐれた目ききによって買い出し人の多様なニーズに合わせた商売を営んでいます。
築地には、かごを持って買い出しに来る小さな商売をしている人が少しでもよい品を求めてやってくるといった、ここには、大手スーパーですしネタを買えばよいというような、小売商店を軽んじたものとは正反対な商売の姿があるのです。
小さなまち工場を切り捨てるのではなく、むしろ守ることによって大手企業の繁栄もあるように、築地の小さな仲卸業者を守ることによって、私たち都民の豊かな食が維持されると思われます。所見を伺います。
次に、場外市場についてです。
江東区長が先月十八日の定例記者会見で、築地の市場機能だけが移転するのではなくて、場外市場も一緒になって来てもらわないと困ると述べられています。しかしながら、築地の場外市場では、掲げられた横断幕が示すように、現地に残ると宣言し、移転反対を表明しています。
現実問題、場外市場の店舗も小さな商売をしている人たちばかりで、今の築地のあのような場所、あのような形態であるからこそにぎわいを醸し出しているのであって、多くの場外市場業者は、豊洲では商売にならない、お客は来ないといっています。市場があってこそ、市場業者や買い出し人、観光客などが場外に回り、商売ができているのです。場外市場の人たちは、市場が築地を離れたら商売として成り立っていかないことが怖いといっています。
このような状況下で、本当に江東区長の出している条件がかなうのでしょうか。どれぐらいのお店が移転を希望し、その話し合いや調整はどうなっているのでしょうか。
次に、中央区の要望に関連して伺います。
地元中央区では、区議会が党派を超えて全員一致で築地市場移転に反対表明をし、これまでも何度と都には説明を求め、意見書なども提出をしてきています。もちろん中央区民も、築地市場は絶対に移転をさせないでほしいと、多くの要望を私たち議員に寄せてきています。
築地は、銀座中心部から一キロ弱のところにあり、都心に集積する小売店や飲食店の食材の確実な品ぞろえや品不足への速やかな対応が可能な立地にあります。公共交通網も、JRの新橋駅を初め地下鉄の五駅が利用でき、市場前を通りJR三駅とつなぐ都バスの運行数も多く、交通の利便性は非常によい地域です。また、観光スポットとしての魅力が海外にも多く浸透しており、早朝から外国人観光客で占められています。
フランスの著名なワインづくりの農場主が来日の際、日本で一番行ってみたいところはどこかとの質問に、築地と即答し、五日間の日本滞在のうち二度も築地を訪れたとの話もあります。
こうした世界に冠たる築地は、市場と場外市場とが一体となってつくり上げたもので、中央区の築地というまち全体がこの市場でつくられ繁栄してきたのです。そのまち機能としての大きな役割を果たしてきている市場をなくすことは、このまちを壊すことにつながり、地元としては看過できない大問題です。
今、地方では、あちこちの商店街が壊れかけ、シャッター通りとなり、どこの自治体もまちの衰勢に頭を悩ませている状況がある中で、何とかまちを守っていこうと行政が努めるのは当然なことではないでしょうか。
都は、場外市場と一体となって成熟してきた築地のまちをどのように考え、これから進めようとしていくのか、所見を伺います。
次に、特別支援教育についてお伺いします。
東京都においては、この十二月三日から障害者週間が始まり、広く都民に障害者の自立と社会参加の理解と協力を求めています。また、四日からは、人権週間として人権の尊厳を都民に強く訴えています。
東京都は、平成十六年に第一次計画、十九年に第二次計画の策定を経て、今回の第三次計画は特別支援教育の最終プログラムと位置づけられており、重要な計画となっています。
そこで、障害のある子どもたちにとって温かみのある教育の実現を願って、二点の質問をいたします。
まず、寄宿舎の閉舎についてでございます。
今回の計画によりますと、十一舎あった寄宿舎を五舎に統廃合することになっています。寄宿舎の閉舎が打ち出されたことにより、現在入舎している子どもたちや保護者が生活に不安を募らせている状況があります。
入舎している子どもたちの中には、ひとり親家庭であったり、共働き家庭であったりするために子どもへの対応が十分にできないことや、年老いた祖父母が面倒を見ていたりすることで、体の不自由な子どもを家から学校に送り出す、そのこと自体が非常に困難になっているといった話を聞いています。
寄宿舎の入舎条件が通学困難に限定されたことにより対象から外れ、困難に陥っている保護者と子どもたちがいるといった現状があるのです。こうした状況は、教育委員会だけでの対応では賄えず、福祉の大きな力が必要不可欠となってきます。肢体不自由の子どもたちが学校という学びの場で充実した教育を受けられるよう、行政は教育と福祉の横の連携をしっかり図りながら進めていかなくてはなりません。
福祉と教育のはざまで、弱者である障害者が困難に戸惑わないように、寄宿舎に入舎している子どもたちの家庭が抱える課題をどう把握し、どう対応をしていくのか、所見を伺います。
次に、異障害の併置化について質問いたします。
都は、平成十九年の学校教育法改正の趣旨を踏まえ、これまで、視覚障害と知的障害や、知的障害と肢体不自由の併置校設置を進めてきました。そして、今回の第三次計画では、都立光明特別支援学校と都立武蔵台特別支援学校に病弱教育部門を併置する計画となっています。併置化の理由は、医療の進歩や社会状況の変遷等により、在籍児童生徒の病態や就学、転学の背景が変化してきていることや、適正な学習集団の確保が困難であるなど、さまざまな事情が絡んでいることは理解できます。
しかしながら、併置化された学校現場からは、障害が異なるために、子ども同士の合同活動や、教員が互いの専門性を生かし合う場を見つけにくく、それぞれの授業のために交流し合うことが日常的にないといった、併置に否定的な見方も聞かれています。また、肢体不自由の府中特別支援学校と知的の府中朝日特別支援学校とが今回統合となりますが、もともとは一つであったものが、教育的メリットから分離し、それが今回また統合されることから、都教委の方針に一貫性がないと不信の声も上がっています。
このように、せっかくの併置化も、現場では、管理、事務などを合理化して経費を減らすことが先に立っているのではないかと、併置化の教育が十分に理解されていない状況が見られます。
併置するには、それなりの教育的意義があることを見越して行うのですから、学校現場で働く教職員が、その目標に基づいて、教育内容、方法の充実に努めることができる工夫が肝要であると考えますが、所見を伺います。
次に、教員の資質向上に関連して質問をいたします。
ことし初めの海外視察で、フィンランドの教員養成大学であるユバスキュラ大学を訪れ、PISAにおける好成績に関して尋ねたところ、フィンランドという国は教員のステータスが高く、優秀な学生が教員を志望し大学に来ること、そして修士を終えることが条件であることや、教育実習が大学一年生から課せられていることを聞きました。単にPISAの好成績という結果は一朝一夕にできたものではなく、子どもたちに教えるところのもとである教員の養成から力の入れ方が異なっていることに開眼させられました。
日本の場合は、教育実習は、学校によっても異なりますが、通常一カ月ほどしか行われていません。近年、新任教員の中には、小一プロブレムや保護者対応によって心身をすり減らし、一学期の終了を待たずに教員をやめたいと悩み迷う割合がふえていると聞きます。民間の会社であれば、内定から早いところでは二月中旬、遅くとも三月には研修が始まります。しかし、学校の場合は、四月一日付で採用され、すぐに学級担任として一国のあるじの立場になり、自分より年上の保護者へも対応し、不安を抱えての勤務となります。
文科省の研修についての通知によれば、新任教員の研修については、できる限り赴任前に研修を実施するとあります。そこで、都教育委員会が実施している任用前学校体験をさらに拡充していくことが必要だと思いますが、所見を伺います。
さて、教員になっての一年目は、新任研修が、都教委そして区市町村教委によって一定期間、一定量決められています。実際の現場で新任教員の指導教官となった経験から、時間的にも内容的にも非常にぎりぎりで、無理を強要できない状態だった思い出があります。若い先生たちには、子どもとたくさん遊ぶことを望みたいところですが、実際には休み時間も放課後も会議や雑用に追われ、子どもたちとじっくり向き合える時間がとれないといった現状があります。
自宅への持ち帰りの仕事を抱えながら、疲れ切った寝不足の体で研修に臨んでも、幾ら努力しても身につかないこともあり、せっかくの研修が十分に生かされないといった苦情を多く聞いています。
さきの文科省の通知には、実施方法の改善充実を図ることとあります。そこで、初任者研修は、通常の勤務日ではなく、なるべく長期休業日に研修センター等で実施する校外研修を当て、新任教員が児童生徒と接する時間を確保できるようにしていくべきと考えますが、所見を伺います。
最後に、東京駅前の再開発について伺います。
東京駅は、丸の内側と八重洲側に面していますが、丸の内側は、首都東京の鉄道の表玄関にふさわしく整然とビル群が並び、道路も整備されています。おしゃれなカフェやブティックも並び、丸の内側にリムジンバスで訪れた外国人観光客の多くが、日本の第一印象を、清潔感あふれるまちとイメージすると聞きます。それに引きかえ、残念ではありますが八重洲側に来ると、そこには裏口の寂れたイメージを持つといわれます。
丸の内側同様に八重洲側もオフィス街なのですが、大きな違いは、駅前の再開発がおくれていることにあります。八重洲側の駅前が工事に入ってから長く、歩きにくく汚い、駅前の景観は雑然としているなどと苦情や要望が多く届いています。
現在、八重洲側には、普通運行のバスや中長距離バスの発着所があり、タクシーの降車場所は車の行き交うところでいつも混雑しており、安全とはいえない状態が続いています。通常運行の都営バスの停留所も場所が狭く、交通局によると、ベンチも設置できないといった不便さがあります。
東京駅は、地方や外国から来た人の利用が多いわけですから、だれもが気持ちよくかつ利用しやすいパブリックで機能的な場所であることが大切です。駅前のビルなどは、中央区のまちづくりに関した問題でもあり、区としても、地元地権者との協議会などを通して再開発を進めていますが、許認可に関しては、東京都の権限が大きく働くわけで、そうした立場からも大いなる理解や協力が求められるところであります。
首都東京の表玄関東京駅八重洲口側の再開発に関して、都はどのような展望を持っているか、所見を伺い、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 岡田眞理子議員の一般質問にお答えいたします。
まず、特別支援学校の寄宿舎再編への対応についてでございます。
特別支援学校の寄宿舎は、通学困難な児童生徒の就学を保障するために設置したものでございますが、学校の適正な配置やスクールバスの整備により、通学困難を理由として寄宿舎に入舎する児童生徒が減少したことから、平成十六年度に策定した東京都特別支援教育推進計画において、十一舎あった寄宿舎を五舎にすることとしたものであります。
寄宿舎の閉舎に当たっては、現に入舎している児童生徒や保護者が、通学や学習に不安を感じることのないよう、個別の事情にも配慮しながら再編を進めることが重要であると考えております。
今後とも学校を通じて、個々の児童生徒の家庭状況等の把握に努めるとともに、地元自治体や関係機関との連携も深めながら、通学負担の軽減や福祉的サポートに関する連絡調整に努め、計画の円滑な推進を図ってまいります。
次に、複数の障害教育部門を併置する学校の教育内容、方法の充実についてでございます。
複数の障害教育部門を併置する学校においては、それぞれの障害教育部門の専門性を生かし、児童生徒一人一人の障害の多面的な実態把握が可能になるとともに、指導内容、方法や教材、教具の工夫などにより、障害に即した教育活動を一層充実できると考えております。
都教育委員会では、これまでも複数の障害教育部門を生かした教育活動事例集を作成するなどして、教育内容、方法の充実に努めてまいりました。
今後は、これまでの成果を踏まえ、複数の教育部門の教員の連携による教育課程の研究開発をより活性化させるなど、教員が互いの専門性を発揮し合いながら、教育内容等の充実を図ることのできる学校づくりに努めてまいります。
次に、新人教員の採用前の学校体験についてでございます。
新人教員が、採用前に任用予定校において、学校になれ、児童生徒の様子や地域の雰囲気を知ることは、新たに教職につく上で有意義なことでございます。このため、都教育委員会では、区市町村教育委員会の協力を得まして、任用前学校体験を実施しておりまして、本年三月には、小中学校の新規採用予定者のうち約八百名が一週間程度授業参観や卒業式の見学、新年度の準備などの体験をいたしました。
今後とも、新人教員の不安を解消し、四月当初から円滑に教育活動を始められるよう、任用前学校体験を一層充実させてまいります。
次に、教員の初任者研修についてでございます。
採用後間もない初任者に、教師として必要な基礎的知識、技能の確実な定着と資質の向上を図り、実践的な指導力を身につけさせる初任者研修は、極めて重要であると認識しております。
現在、都内公立学校の初任者は、教育公務員特例法に基づき、日常の授業や校内におけるOJTを通して、みずからの資質、能力の向上に取り組むとともに、校外における研修としてセンター研修等に取り組んでおります。
そもそも初任者に対する研修は、日常の授業や校内研究等を通したOJTが効果的でございます。一方、これまでも、ご指摘の校外における研修のうち、宿泊研修や課題別研修などは、長期休業期間中に実施してまいりました。
今後とも、校外における研修として、長期休業期間に実施することが、初任者にとって効果的であると考えられる研修につきましては、区市町村教育委員会と連携を図りながら適切に判断してまいります。
〔東京都技監河島均君登壇〕
○東京都技監(河島均君) 東京駅八重洲側の再開発についてのご質問にお答えいたします。
本地区は、全国の鉄道ネットワークのかなめとなる東京駅に隣接しておりまして、極めて利便性の高い立地特性を有しております。しかし、古くからのまち割りを継承しているため、街区が細分化されておりまして、丸の内側のような街区単位のまとまった市街地の更新を進めにくい状況にございます。
このため、都は、東京の都市づくりビジョンにおきまして、八重洲側については、民間による都市再生プロジェクト等を通じて、計画的に街区再編や機能更新を進めることにより、東京の玄関口にふさわしい風格あるまち並みを形成することとしております。
既に、京橋二丁目三地区におきまして、都市再生特別地区を適用した計画が具体化するとともに、他の地区におきましても、再開発協議会が設置されるなど、まちづくりに向けた積極的な取り組みが見られます。
都は引き続き、こうしたプロジェクトを適切に誘導し、質の高い業務機能等の集積、交通結節機能や歩行者ネットワークの強化を図り、日本を代表する東京駅の駅前にふさわしい市街地の実現に取り組んでまいります。
〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕
○中央卸売市場長(岡田至君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、新市場の施設計画についてです。
現在の築地市場は、施設が老朽化、狭隘化し、新たな顧客ニーズに対応する施設整備が困難であること、駐車場や荷さばき場が不足していることや、場内の通路が混雑していることなど、中小の小売店や飲食店などの小口の買い出し人からは、極めて使い勝手が悪いとの声が上がっております。また、小口買い出し人を主な取引相手とする仲卸業者からは、豊洲移転に際して、買い出し人に配慮した施設とするよう要望がなされております。
このため、豊洲新市場は、仲卸業者からの要望などを踏まえ、すべての市場業者にとって利便性の高い市場となるように計画してございます。
具体的には、建物を温度管理のできる閉鎖型として商品の鮮度を保持し、衛生管理の行き届いた施設とするとともに、加工、パッケージ施設を整備し、新たな顧客ニーズにきめ細やかに対応できることとしております。
また、荷の積み込みスペースや専用駐車場を十分確保して、商品の荷さばきや、仕分けを行いやすくするほか、売り場における通路を広くとり、人と搬送車両を分離することで、場内の混雑を緩和し、荷の流れが効率的となるようにしてございます。
このように、豊洲の新市場計画は、小口買い出し人を主な取引相手とする小規模な仲卸業者の要望にも十分配慮してございまして、競争力の強化や取引の拡大など、事業の活性化に寄与するものと考えてございます。
次に、場外市場についてです。
築地場外市場は、飲食店や小売店などが多数存在し、築地市場と一体となって、地域のにぎわいを創出している一方、築地市場で働く方や買い出し人が利用するなど、市場機能と密接にかかわりを持つ店舗があります。
豊洲新市場におきましては、築地の食文化の継承やにぎわいの創出とともに、市場のサポート機能を備えることを目的といたしまして、千客万来施設を整備していくこととしておりますが、その整備に当たりましては、民間開発事業者のアイデアはもとより、市場業者や場外業者などが持つノウハウを活用していくことが大切であると考えてございます。
また、都は、場外市場団体に対しまして、豊洲新市場の整備に関して、繰り返し説明や意見交換を行ってきましたが、その中で、豊洲新市場への移転や出店を希望する方々がいることを把握してございます。このため、千客万来施設につきましては、移転を希望する場外業者の方々の要望なども聞きながら、引き続き場外市場団体と意見交換を行い、その内容を検討してまいります。
最後に、築地のまちと移転計画についてです。
築地市場は、水産物で世界最大級の取扱量を誇り、首都圏三千三百万人の消費者に、豊富で新鮮な生鮮食料品を安定供給しており、こうした市場が持つ本来の機能と、そこで働く人々の活力から、いわゆる築地ブランドがつくり出されております。これに加えまして、場外市場と一体となったにぎわいなどが独特な魅力となって、多くの人々を引きつけており、地域の活性化にも貢献してございます。
築地市場が豊洲に移転した際には、品質管理の高度化や効率的な物流を実現するなど、市場機能の強化を図ることはもとより、築地の信頼を担ってきました卸、仲卸など、市場業者が移転することで、築地市場がこれまで築いてきた伝統とブランドを引き継いでまいります。あわせて、千客万来施設を整備することで、食文化の継承やにぎわいの創出とともに、市場で働く方や買い出し人の利便性のためのサポート機能を備えてまいります。
一方、築地というまちは、市場が豊洲に移転したとしましても、都心や銀座に隣接し、都市機能が集積しているなど、極めて高いポテンシャルを有してございます。市場移転後の築地につきましては、こうした地域特性も踏まえ、東京全体のまちづくりに貢献するよう、今後とも関係者と十分な意見交換を行い、都全体で検討してまいります。
○議長(和田宗春君) 九十四番古賀俊昭君。
〔九十四番古賀俊昭君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○九十四番(古賀俊昭君) 武道の必修化について伺います。
先月、日本体育大学相撲部の明月院秀政君が、国民体育大会に続いて、学生選手権で個人優勝し、学生横綱となりました。明月院君は、葛飾区の出身でありまして、都立足立新田高校相撲部の卒業生です。既に角界入りを表明しており、東京都出身の学生横綱であることの誇りを胸に、ぜひ大横綱を目指して、けいこに精進してほしいと期待をしています。
平成二十四年度からは、この国技相撲を含め、中学校において武道が必修化されて、すべての生徒が武道を学ぶことになります。私も空手道を学んでいますが、やはり、我が国固有の伝統的教育文化である武道に継承されてきた価値観、しきたり、感性は武士道精神として国際的にもその普遍性は高く評価されており、我々は誇りを持って、後世に正しく伝えていかなければなりません。
また、武道における一本というのは、心技体といわれるように、魂と肉体が混然一体となり、一瞬一撃にして相手を圧倒するという見事なわざだと思います。先人が鍛錬工夫を重ねて築き上げてきた武道の受け、攻めの美しいわざを正確に学ぶことは、日本人としての必要なたしなみだと思います。
本日は、大東亜戦争大詔奉戴六十九周年に当たりますが、戦後、マッカーサーによって、学校教育における武道は禁止され、ようやく昭和三十三年の中学学習指導要領で、柔道、剣道などの武道は、選択科目として採用されたのですが、なぜか名称は、格技とされました。その格技が武道に変更されたのは平成元年、実に三十一年後のことであります。
しかし、平成十八年の教育基本法の改正を転機として、平成十九年の中央教育審議会での、中学校の武道必修化方針の了承、そして平成二十年告示の新学習指導要領で、平成二十四年度から全中学校で武道教育が完全実施されるわけです。
ちなみに、武道を学ぶことをけいこといい、練習とはいいません。「古(いにしえ)を稽(かんが)える」と書いて「稽古」、野球やサッカー、ボクシング等は練習ですが、武道はけいこ、もしくは修練、修行でしょう。石原知事も、学生時代には、柔道のけいこに励んだと聞いていますが、武道について、知事はどのような所見をお持ちか伺います。
また、周りの人、特に若者を見て気になることですが、儀礼的あいさつの口上や、おじぎがうまくできなくなっています。学校の卒業式、入学式等でそれを痛切に感じ、日本の将来が心もとなく不安になります。
現在、中高校生は、基本的に社会規範や礼儀作法が教えられておらず、それらを身につけるためには、武道教育において、礼法指導というものが正しく行われることが大切であり、期待も大きいと思います。
そこで、武道における礼法の指導について、東京都教育委員会の所見を伺います。
次に、子供の体力向上施策について質問いたします。
国はこれまで、全国の小中学校を対象とした全国学力・学習状況調査と全国体力・運動能力、運動習慣等調査を、今年度から抽出調査に縮小後退させました。このことで、子供一人一人の学力や体力の状況を的確に把握することが困難になっています。
しかし、特に東京都の子供の体力は、都道府県別に見ると、平成二十一年度の調査で、中学二年生男子の体力が、四十七都道府県中四十六位となるなど極めて低い水準にあります。こうした体力低下の現状を踏まえ、東京都教育委員会は、昨年五月、子供の体力向上推進本部を設置し、本年七月には、総合的な子供の基礎体力向上方策第一次推進計画を策定しました。この推進計画をもとに、子供の体力向上を進めていくためには、まず第一に、一人一人の子供の実態を正確に把握していくことが必要だと考えますが、所見を伺います。
次に、残り三年を切った平成二十五年開催の東京多摩国体を控え、東京都の競技力向上についても本腰を入れなければならない時期になりました。そうした中、先ごろ、東京都教育委員会は、高校生最大の運動競技の祭典であるインターハイを、平成二十六年に、南関東四都県で行うとの計画を公表しましたが、その概要を伺います。
また、国体、インターハイやそれ以降の全国大会においても、東京都の高校生の活躍が期待されるところです。そこで、運動部活動の強化について、都教育委員会の所見を伺います。
さらに、運動部の活動を充実させるためには、部活動への熱意と情熱を持って指導できる優秀な教員を確保することが何よりも重要です。他県においては、インターハイ、国体の開催などを目前にして、県内の学校の運動部の競技力を向上させるため、教員採用において、運動選手として輝かしい実績を上げた者や、部活動を初め選手育成に卓越した指導力を発揮した者を対象に、一般選考とは異なる基準や資格要件を設けて人材を確保し、現に成果を上げていると聞いています。
そこで、東京多摩国体、加えてインターハイ開催を控え、運動部活動に精魂を込めて指導できる優秀かつ熱心な教員の確保が必要であると考えますが、都教育委員会としていかなる取り組みを行っているのか説明願います。
ここで武道に関し、東京都の組織について意見を述べておきます。
今年七月に発足したスポーツ振興局についてですが、スポーツに武道は包摂されるものではありませんから、武道・スポーツ振興局、あるいはスポーツ・武道振興局とすべきです。また、部にも課にも、武道を所管する部署名がありません。中学校での武道必修化、東京多摩国体、そしてインターハイを機に、武道の名称を掲げた部局を設け、東京都らしさを誇らしく示していただきたい、心から要望いたします。
次に、都立図書館の電子化について伺います。
今、都立中央図書館では、企画展「新しい図書館のカタチ電子書籍を体験しよう」が開催されています。これは都立図書館が電子図書のネット配信を行う時代の到来を予感させるものですが、あらかじめ実施の前提とすべき方針について述べてみます。
江戸時代中期から幕末明治にかけて西洋の進んだ文物に触れた進取の気性に富む人の中には、西洋文字アルファベットは、簡単な字形で二十六文字しかないのに比べ、自分たちの漢字は、数が多くて、複雑難解で進歩や勉学の弊害になっていると考えました。
新井白石や福沢諭吉は、漢字制限を説き、一円切手の肖像で知られる日本近代郵便の父、前島密は、漢字廃止を唱えて、平仮名を用いるべきと主張しました。これらはすべて、外国に追いつくには、わかりやすい書き言葉で教育しなければならないとの思いが強かったのでしょう。
戦後敗戦の衝撃から、読売報知新聞は、社説で、漢字廃止、ローマ字採用を掲げ、志賀直哉はフランス語採用を主張しました。この混乱を仮名文字・ローマ字論者は好機と見て、昭和二十一年の内閣告示、漢字制限現代仮名遣いへと改悪を成功させ、国語破壊の潮流は今日に続いています。
その端的な例として、五十音図のわ行の「ゐ」と「ゑ」を空白にした穴あき五十音図があります。日本の誇る古典や鴎外や漱石を原文で堪能できなくなりました。きわめつきは、国旗・国歌法の国歌君が代の歌詞「いわお」です。君が代の歌詞は、平安朝前期千百年以上前、我が国最初の勅撰和歌集である古今和歌集にある和歌であり、法律上も、現代仮名遣いではなく、正仮名遣い「いはほ」か、漢字「巌」と正漢字で表記すべきなのです。なぜなら、昭和六十一年の内閣告示は、現代仮名遣いは現代文に、国の歴史や文化にかかわりを持つものは歴史的仮名遣いを尊重するとなっているのですから、当然のことです。国旗・国歌法は速やかな改正が必要です。
かかる国語をめぐる現状に危機を抱く人は多く、猪瀬副知事が進める都庁内での言葉の力再生、言語力検定もその現状認識のあらわれだと思います。今申し上げたことを前提に伺います。
まず、都立図書館の電子書籍化の導入について、現状と今後の計画についてお尋ねいたします。
次いで、将来、都立図書館が書籍の電子化を実施する場合、特に戦前の文学作品については、作家独自の語法や作風を尊重する観点から、正仮名遣い、歴史的仮名遣いを底本にして、当時の原文を忠実に守るべきと考えますが、見解はいかがでしょうか。
質問の最後に、拉致問題と都政について意見を申し上げます。
わずか一時間程度の距離にある北朝鮮に、数多くの日本人同胞が拉致監禁されている事実が明白であるにもかかわらず、三十年、四十年と気の遠くなるほどの長い年月が流れても、日本政府は救出してくれません。平成十四年の拉致被害者五人の二十四年ぶりの帰国から何一つ前進していません。
なぜ日本はこんな情けない国になってしまったのか、本気で解決しようとしないのか。アメリカやレバノンは、自国の拉致被害者を、あらゆる手段を講じて北朝鮮から奪還しています。十三歳の少女が、日本国内から、学校帰りに北朝鮮に誘拐されて三十三年になります。事件にかかわった大物北朝鮮工作員の釈放嘆願書に署名した議員が、総理大臣や法務大臣になる、全く恥ずかしい限りです。
何年も前からよく、北朝鮮は経済と政治が混乱し、体制崩壊が近いと解説した人がいましたが、考えてみると体制崩壊しているのは日本の方ではないかと思いたくなります。我々は完全解決に向けてできることをすべてやったのでしょうか。
自民党は、抗議決議を行いましたが、朝鮮学校に対する授業料無償化適用の検討など言語道断の所業です。拉致被害者家族会、救う会全国協議会、そして都議会拉致議連も加盟する全国地方議会全国協議会も、授業料無償化反対とあわせて、朝鮮学校への地方自治体の公金補助中止を全会一致で決定しています。
全国の二十七都道府県で朝鮮学校への補助金は年八億円が交付されており、そのうち東京都は、平成二十一年度に二千万円を超えています。拉致問題が一向に解決に進まないにもかかわらず、平成七年の補助金、補助事業開始以来、漫然と補助金を支出し続けていることが妥当なのか、都議会で真剣な検討が強く求められています。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 古賀俊昭議員の一般質問にお答えいたします。
武道についてでありますが、武道は、一見地味ではありますけれども、凛然とした、さっそうとした競技であると思います。また一面、ある意味では哲学的でもあると思います。この武道に関する練習をけいこというのは、やはり完成された武道の妙技というものは、見事な一つの様式、形式になっているわけでありまして、そういう点では、華道とか茶道のけいこにもつながるものがあるんじゃないかと思います。
本物の武道というものは、本当に、美しく一本をとるという、このきわみでありまして、先般、東京の体育館で世界柔道大会が行われたときに、私は、あえて苦言を呈したんですが、このごろの柔道は柔道じゃないと。北京のオリンピックで大分反省して少しよくなりましたけれども、やはり妙な時間制限をすることで、非常に醜い、何ていうんでしょうか、襟の取り合い、その他、この他、シャモのけんかみたいで美しくないと。へとへとであっても一本とるまでやれと、東京体育館、明け方までただで貸してやるから、一本とるまでやったらどうだっていったら、日本人の席から拍手がありましたが、外国の幹部たちは嫌な顔をしておりましたな。
いずれにしろ、武道は日本の伝統文化の華でありまして、そこで養われる武士道精神といいましょうか、精神性こそが日本を活性する大きなエネルギーになると思います。ゆえにも、かつて日本にあった謙虚、自己犠牲、勇気といった武士道に象徴されるさまざまな美徳と、芸術としての一本のわざというものを中学生が武道から学ぶということは、大いに結構なことであると思います。
他の質問については、教育長から答弁します。
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 七点のご質問にお答えいたします。
まず、武道教育における礼法の指導についてでございます。
日本人の礼は、新渡戸稲造の「武士道」によれば、国民固有の美徳の一つであり、社会通念上、相手への敬意という心情を形であらわすために必要不可欠であるとしております。
武道には、こうした我が国固有の伝統的な考え方や行動の仕方というものが脈々と受け継がれております。
特に、礼に始まり礼に終わるや、勝ってかぶとの緒を締めよの教えのとおり、武道では、高ぶる気持ちを抑えたり、激しい闘いにあっても心理的興奮を律したりする上で、正しい形の礼法を行うことを最重要視しております。
今後、都教育委員会は、武道指導の実践事例集の配布等を通しまして、各学校が、武道における礼法や作法の指導を適切に行い、生徒に我が国の伝統的な考え方や行動の仕方を正しく理解させるとともに、その学習が生徒の日常生活や学校生活におけるあいさつや礼儀にも生かされていくよう、武道教育の充実に努めてまいります。
次に、子どもの体力の正確な実態把握についてでございます。
学校が児童生徒の体力を高めるための取り組みを推進するには、一人一人の児童生徒の体力の現状を明らかにすることが必要でございます。
すべての小学校五年生と中学校二年生を対象とした全国体力・運動能力、運動習慣等調査は、東京都では、平成二十年度に約七万五千人、平成二十一年度、約九万八千人が参加いたしました。しかし、平成二十二年度、文部科学省が抽出調査に縮小した結果、約一万四千人の参加にとどまることとなりました。
こうしたことを踏まえまして、都教育委員会は、今後、小学校五年生と中学校二年生のみならず、すべての小学校から高等学校までの児童生徒を対象として、統一的、継続的に体力の実態把握に努め、その評価分析に基づく授業改善を行うとともに、その結果を児童生徒一人一人に還元してまいります。
また、一校一取り組み運動やムーブメントづくりなど、幅広く体力向上策の推進を図り、総合的な子供の基礎体力向上方策第一次推進計画が掲げております目標の実現に努めてまいります。
次に、平成二十六年度開催予定のインターハイについてでございます。
昭和三十八年度新潟大会から始まりましたインターハイは、高等学校教育の一環として、高校生の健全育成、競技力の向上等を目的に、全国約百十八万人の高校生競技者の中から勝ち抜いた約二万七千人の都道府県代表により、全国一が競われる意義深い大会でございます。
このインターハイは、平成二十二年度に沖縄県で開催されたインターハイをもって都道府県単独開催を終了し、平成二十三年度からはブロック開催となり、東京都においては、平成二十六年八月に、千葉県、神奈川県、山梨県とともに、南関東四都県で合同開催することを決定いたしました。
四都県の分担といたしましては、東京都は、二十一世紀を担う若人のスポーツの祭典にふさわしい若さと情熱あふれる総合開会式の開催と、体操、バレーボール、相撲、弓道、テニス、なぎなたの六競技を実施し、他の三県で、それぞれ八競技、合計で三十競技の大会を実施する計画でございます。
このため、都教育委員会では、平成二十三年度に準備委員会を、平成二十四年度には実行委員会を設置し、着実に準備を進めてまいります。
次に、高校生の運動部活動の強化についてでございます。
運動部活動は、生徒の人格形成や健全育成において有益な教育活動であり、都教育委員会は、これまで部活動の振興に努めてまいりました。
お話のように、今後開催される国体やインターハイを見据えますと、さらなる競技力の向上に積極的に取り組むべきであると認識しております。
都教育委員会は、平成二十五年に東京で開催されます国体で活躍が期待される現在の中学生や高校生を対象とした強化練習会を平成二十年度から実施するとともに、都立高校における国体強化部活動候補事業を開始いたしまして、各競技での優勝を目指して取り組んでまいりました。
スポーツを志す生徒にとって、全国大会に出場することは夢であり、目標であります。現在、全国大会への出場は私立高校が多くを占めておりますが、都立高校においても、各スポーツの名門校といわれるように競技力を高めていくことは、都民や中学生の期待するところであると考えます。
今後、都立高校における運動部活動の一層の振興と各スポーツの名門校づくりの視点から、全国大会に出場できるような競技力の高い運動部活動の育成を推進してまいります。
次に、高校生の運動部活動を指導できる優秀な教員の確保についてでございます。
都立高校において、運動部活動を充実させるために優秀な教員を確保していくことは、極めて重要なことと認識しております。
このため、都教育委員会では、今年度の教員採用選考から、オリンピックや国体などで実施されるスポーツ分野で選手として卓越した競技実績を有する者や、優秀な選手を指導育成した実績を有する者などから選抜をいたします特別選考を導入し、これらの経験、実績を学校教育活動に生かせる優秀な教員を確保することといたしました。
今後は、この特別選考を活用しながら、都立高校における運動部活動の一層の振興とスポーツ名門校づくりや競技力向上に資するような教員の確保に努めてまいります。
次に、都立図書館の電子書籍の導入に関する現状と今後の計画についてでございます。
電子書籍は、読者がいながらにして本の内容を直接閲覧できる媒体であり、紙の書籍と比べて絶版の可能性も少なくなることから、都立図書館が電子書籍を扱う場合、図書館としての役割を新たに検討し、従来とは全く異なる利用の仕組みを構築する必要が生じると思われます。
今年は電子書籍元年ともいわれ、さまざまな読書端末が開発され、市場に出回ってきておりますが、書籍の配信方法については、フォーマットや機器の互換性に関し、各企業が試行錯誤している状況であり、著作権の処理方法もいまだ定まったルールが確立されていないなど、多くの課題がございます。
また、出版されているコンテンツは分野に偏りがあるほか、その市場も紙の書籍と比べますといまだ小規模であり、電子書籍の導入に関しては、こうしたさまざまな課題の推移を慎重に見きわめる必要がございます。
現在、都立図書館協議会において、デジタル時代の都立図書館像をテーマに、来年三月の提言取りまとめに向けて、電子書籍の取り扱いも含めた討議を進めておりまして、都教育委員会は、その提言内容を踏まえまして、都立図書館における電子書籍の収集、提供のあり方について検討してまいります。
最後に、都立図書館が電子書籍化を進める場合の歴史的仮名遣いの扱いについてでございます。
昭和六十一年七月の内閣訓令により、現代仮名遣いが各行政機関における表現のよりどころとされましたが、一方で、同日付の告示の前書きでは、歴史的仮名遣いが我が国の歴史や文化に深いかかわりを持つものとして尊重されるべきことはいうまでもないと書かれております。
都立図書館は、都民の調査研究活動を支援する図書館として、国内外で出版された書籍を広範囲に収集し、都民に公開をしております。
紙媒体、電子媒体を問わず、出版された書籍をそのまま保存し、利用者の閲覧に供することが都立図書館の役割であり、書籍の電子化という名目において仮名遣いを変えるということはございません。
○副議長(鈴木貫太郎君) 八十番吉田康一郎君。
〔八十番吉田康一郎君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕
○八十番(吉田康一郎君) まず初めに、国境離島の保全について伺います。
去る九月の沖縄尖閣諸島をめぐる問題は、多くの日本人に衝撃を与え、厳しい国際社会の現実、特に、我が国の隣に台頭し、成長を続ける共産党一党独裁の中国という国が、どん欲で独善的で暴力的な、今や覇権主義を隠そうともしない異様な国なのだということに目覚めさせてくれたと思います。
中国は、国際社会のルールを無視し、我が国固有の領土である尖閣諸島の領有権を主張し、謝罪と賠償を要求し、レアアースをとめ、民間企業の社員を不当に逮捕、拘留するなど、傍若無人の限りを尽くしました。この一件から、善意や友好姿勢だけでは、到底、日本の国土と国民を守ることができないことを思い知らされました。思えば、とんでもない考え違いのもとに、長年にわたり一党独裁国家に、ODAや投資や技術や人を注ぎ込んできたものです。
都議会民主党は、九月二十九日、政府に対して申し入れを行いました。
尖閣諸島の民有地を買い上げ、国有地として灯台や警戒監視レーダーなど、構造物を設置すること。尖閣諸島及び沖ノ鳥島に居住可能な宿舎、設備を建設し、自衛隊員を常駐させること。レアアースなどの戦略資源の備蓄を進め、輸入先の分散を図ること。食料に関しても、輸入先の分散を図るとともに、国内自給率の向上に努めること。国内水源林が外国人の手に渡らないよう法整備を進めることなど、七項目です。
尖閣諸島については長年、知事が憂い、警告を発し、取り組んでこられました。時代が、あるいは中国が、とうとう知事の危惧に追いついてきたのです。
一九七四年、中国は南シナ海の当時南ベトナムが支配していた西沙諸島の永楽諸島を軍事力で占領しました。八八年には、南沙諸島の赤瓜礁に駐留していたベトナム軍を攻撃、全滅させ、六カ所のサンゴ礁を占領しました。九四年には、同じく南沙諸島のフィリピンが領有権を主張していたミスチーフ礁に、漁民の避難所と称して軍事施設を設置し、九九年までに恒久軍事施設を建設しました。
今では中国は、南シナ海はすべて我が海だと主張しています。東シナ海でも、ガス田の開発を進め、着々と手を打ってきています。尖閣諸島に手をかけつつ、まだ手の届かない沖ノ鳥島を岩だと主張し、我が国の権益を否定しています。
沖ノ鳥島は日本の最南端にあり、海洋国家日本にとって、豊かな漁業資源、鉱物、エネルギー資源が眠る広大な四十二万平方キロメートルの排他的経済水域を有する戦略的要衝です。知事は、その重要性を認識し、周辺での漁業活動を支援するなどしながら国に取り組みを促してきました。本年六月、いわゆる沖ノ鳥島保全法が国会全会一致で可決成立いたしました。今後は、国が沖ノ鳥島に港湾施設などの整備を進めていくことになります。
国際海洋法条約は、満潮時に海上に露出している岩は領土であり、その周辺十二海里の海域は、その国の領海だと規定しています。さらに、その岩に人が居住しているか、恒常的に経済活動を実施している場合には、島であって、排他的経済水域と大陸棚の権利を主張できると規定しています。
中国は、沖ノ鳥島はその二つの条件のどちらも満たしていないから岩だと主張し、我が国に無断で周辺海域の調査活動を進めてきました。中国自身は、南シナ海でサンゴ礁内の小さな岩に、高床式の掘っ立て小屋をつくって兵士を住まわせ、条約の条件を満たしていると主張し拠点化を進めています。
ちなみに、これらの岩の中には、満潮時には海面下に沈んでしまい、陸地と認められないものもあると指摘されています。つまり国際法無視です。
沖ノ鳥島には、まず自衛隊員が常駐し、港湾施設や海洋温度差発電施設などを早急に建設し、居住と経済活動の実態を整えるべきであります。
沖ノ鳥島の環礁は南北約一・七キロ、東西は約四・五キロ、南鳥島よりも一回り大きく、四千メートルの滑走路をおさめられる大きさの環礁です。速やかに滑走路も整え、我が国の海洋開発と安全保障を担う最前線の拠点として発展させていくべきであります。岩は埋め立てても岩ですが、島を埋め立てれば島なのです。戦略的に施策を打っていかなければ、沖ノ鳥島と経済水域に係る我が国の権益も中国に踏みにじられてしまう、このように危惧されます。
尖閣諸島に匹敵する戦略的要衝である沖ノ鳥島の重要性にかんがみて、島を所管する東京都は、さらに国に取り組みを促し、連携し、あらゆる努力をするべきと考えますが、知事の所見を伺います。
次に、朝鮮学校への公金補助問題について伺います。
公安調査庁は、「内外情勢の回顧と展望(平成二十二年一月)」の中で、「朝鮮人学校の思想教育について」と題し、次のように記述しています。
朝鮮総聯は、朝鮮人学校での民族教育を「愛族愛国運動」の生命線と位置付けており、学年に応じた授業や課外活動を通して、北朝鮮・朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に取り組んでいる。
朝鮮人学校では、一律に朝鮮総聯傘下事業体「学友書房」が作成した教科書を用いた朝鮮語での授業を行っている。
例えば、高級部生徒用教科書「現代朝鮮歴史」では、北朝鮮の発展ぶりや金正日総書記の「先軍政治」の実績を称賛しているほか、朝鮮総聯の活動成果などを詳しく紹介している。
朝鮮総聯は、このほか、教職員や初級部四年生以上の生徒をそれぞれ朝鮮総聯の傘下団体である在日本朝鮮人教職員同盟や在日本朝鮮青年同盟に所属させ、折に触れ金総書記の「偉大性」を紹介する課外活動を行うなどの思想教育を行っている。
また、報道によれば、朝鮮学校の教員の人事権は金総書記が握っている、朝鮮学校校長は最重要ポストであり、朝鮮総連内の最重要幹部である中央委員でなければならない、中央委員の人事は、北朝鮮本国の朝鮮労働党の承認のもと、金総書記の決裁が必要とされる、高校の校長は、北朝鮮にとって信じるに足る教育革命家だということです。
また、朝鮮労働党の対南工作部署である統一戦線部に所属していた元幹部の張真晟氏は、朝鮮学校で使用されている教科書は、日本の朝鮮大学校で作成された草案が北朝鮮に送られ、修正された上で、金総書記が目を通してサインして決裁すると明言しています。
先般の公安調査庁が提出した答弁書が閣議決定されましたが、その答弁書によると、朝鮮総連と朝鮮学校の関係について、密接な関係にあり、学校の教育内容や財政、人事に影響を及ぼしていると認識しているとされており、もとより朝鮮総連は北朝鮮政府がみずからの出先機関として取り扱っています。
そこで、こうした閣議決定などを踏まえ、治安責任を有する警視庁の北朝鮮、朝鮮総連、朝鮮人学校に対する認識を伺います。
朝鮮学校で行われている教育は、金日成、金正日を極端に神格化し、朝鮮戦争や北朝鮮のテロなどをすべて韓国や米国の責任とするなど、著しい虚偽の偏向教育であり、特に、北朝鮮による拉致問題については、現代史の教科書で、二〇〇二年九月、朝日平壌宣言発表以後、日本当局は拉致問題を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることで、日本社会には極端な民族排他主義的雰囲気が醸成されていったとだけ記し、金正日が拉致を認めて謝罪したことや、朝鮮総連が拉致はでっち上げだと強弁してきたことに謝罪したことを全く取り上げず、家族らの被害者救出への努力を反朝鮮人騒動、民族排他主義だと非難しています。
このような朝鮮学校の教育が、教育基本法第二条の教育の目標、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと、北朝鮮人権法第二条、国は、北朝鮮当局による国家的犯罪行為である日本国民の拉致の問題を解決するため、最大限の努力をするものとする、に明白に違反しており、公的補助には適さないという議論が与党民主党内を含め多数出ているのは当然です。
また、朝鮮学校が、実質的に日本の公の支配ではなく、北朝鮮の支配に属していることは明白です。朝鮮学校に対する知事の認識を伺います。
東京都は、昨年度、二千三百五十七万円の補助金を都内の朝鮮学校に支出しています。九月七日、知事は、拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表が朝鮮学校に教育内容を問わないまま補助金が支出されている問題の見直しを要請したことに対し、家族の心中を察するに余りあることだ、反日教育をやっているのに補助金を出すなんて信じられない、反日教育を今でもやっている学校に日本人の学校並みに手当を出すなど外国じゃ考えられない、都は考え直すと明言されました。
他方、政府は、高校無償化事業について、北朝鮮に制裁を行っていることなどを理由に、朝鮮学校への適用を先延ばしにしてきましたが、十一月五日、教育内容を問わずに適用を決めるという理解しがたい基準を文部科学大臣名で公表する一方、公金補助の決定前に、拉致問題に関する部分など明らかにおかしい教科書記述の改善を求めるとしました。
ところが、その手続が始まる直前の十一月二十三日、北朝鮮が韓国への無差別砲撃を行ったことを受け、手続を停止いたしました。この砲撃についても、関係者によれば、朝鮮学校では、砲撃は南から始めた、韓国の民間人に死者が出ているというのはでっち上げだとの教育を行うよう、総連から指示が出ているとのことです。
このような現状を踏まえ、都の来年度予算の中で朝鮮学校への補助を全額削除すべきだと考えますが、知事の見解を伺います。
次に、青少年健全育成条例の改正案について伺います。
本条例について、知事は記者会見などで、表現の自由の規制ではなく販売規制であると発言をされていますが、正確を期すならば、同種の条例に関する最高裁判例においては、条例の規制は表現の自由にかかわるものであり、表現の自由の制限を伴うものであるとした上で、必要限度の範囲内において販売規制が認められると判示されているのではないか、このように考えますが、都の見解を伺います。
そして、都は、一定改正案に対する閉会中の総務委員会の継続審査において、漫画、アニメ等における青少年の性的描写が、それを見た青少年の健全な性的判断能力の形成を阻害するという学問的知見の有無に関し、現在諸説ある中で確立した学問的見地は承知していないと答弁しています。
今回の改正案についても、青少年が強姦等の性犯罪を描いた漫画を読むと、強姦等の性犯罪を犯すおそれがあるという科学的根拠が存在し、それに基づいて改正をするわけでないと考えてよいのか、その場合、科学的根拠がないにもかかわらず改正案を規定する理由と根拠を伺います。
今回の改正案において、七条の二項で新設される基準は、現行の七条に示されている三つの基準、すなわち、性的感情を刺激、残虐性を助長、自殺または犯罪を誘発、に包含されているのではないか、このように考えますが、両者の関係について明確な説明を求めます。
次に、条文中の不当な誇張とは何を指すのか、また、どのような運用を考えているのか伺います。
次に、この改正案は、刑罰法規に触れる性交等を表現すること自体を否定するものであるとの指摘がありますが、これについて都の見解を伺います。
また、八条中、著しく社会規範に反すると、この文言の指すところは何か。この文言は、七条の刑罰法規に触れる性交等及び婚姻を禁止されている近親者間における性交等以外の第三の対象領域として、倫理や道徳に踏み込み、新たな規制の拡大を企図したものであると懸念する指摘もありますが、都の見解を伺います。
次に、刑罰法規に触れる性交等との規定がありますが、法規の中には、十三歳未満、十八歳未満とした年齢が適用の要件となっているものがあります。この場合、現実の人間でない作品内の登場人物について、十三歳未満あるいは十八歳未満であることをどのようにして判断するのか。図書の指定に当たり、年齢の判断に行政の恣意性が入り、歯どめなく対象が拡大するとの懸念が指摘されていますが、都の見解を伺います。
そして、過去の日本や諸外国においては、現在の日本の法令と異なる範囲での性交や婚姻等が認められていますが、今回の改正が、このような制度、慣習や文化、宗教など、特定の価値観を否定するものであってはならないと考えます。
また、SFなど架空の世界の設定の表現などについて、設定自体が反社会的であるとして規制の対象とすることなど、創作者の想像力や創造性を否定するものであってもならないと考えます。これらの点について、都の見解を伺います。
最後に、条例の八条に基づき、個別の図書類を指定図書として指定するに当たっては、青少年健全育成審議会において諮問が行われますが、その図書類の描写や表現の内容を適正に審議するためには、一定の時間をかけ、その内容を吟味する必要があると考えます。
現在の審議会の運用は、審議会の当日に諮問図書が配布され、その場で審査するものでありますが、今回、新たな基準を追加するに当たり、審議会の開催前に諮問図書を配布し、内容の検討の時間を確保するなど、審議会の運用も適切に変更する必要があると考えます。
この点について都の見解を伺いまして、私の一般質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 吉田康一郎議員の一般質問にお答えいたします。
まず、沖ノ鳥島についてでありますが、尖閣諸島にまつわる中国政府の振る舞いは言語道断であります。全く国際的なルールを逸脱していると思いますが、一方で、我が国政府の対処も、世界から眺めれば非常に奇異なものでありまして、第三者として、このいきさつを眺めている、さっきご指摘のスプラトリーや西沙諸島で被害を受けているフィリピン、ベトナムといった国々から眺めれば、日本に対する信頼を著しく失いかねないものであったと思います。
尖閣と同じように、中国は島ではなく岩だといい張っている沖ノ鳥島についても、これを本当に守るか守らないかは、やはり政治の決意と覚悟にかかっていると思います。
実は私は、この問題について、友人でありました、今、国連大使になったんですか、前の国務次官補のボルトンと話したことがありますが、彼は、私が沖ノ鳥島に行った映像をどっかで見たらしくて、何であんなちっちゃな岩に固執するんだというから、ばかをいえと、世界地図を見てみろと、太平洋の地図を見せました。
これはアメリカの大事な戦略基地でありますグアムと沖縄を結ぶちょうど真ん中にあるラグーン、礁湖であります。その周りに中国の調査船が出没しているわけですけれども、これは海底資源というよりも、あそこは非常に深い海ですから、そんなものは難しいんですが、何をとにかく隠そう、彼らの西太平洋における覇権、つまり海の覇権のための調査であって、これから展開されるでしょう彼らの潜水艦の戦略のための調査でありますが、それを、地図を見せて指摘しましたら、ボルトンが初めて気がつきまして、日本のこれに対する関心が、やっぱり当然だと思うし、それを評価したいということでした。まあ評価するもしないも、やっているのは東京都だけでありまして、これは私もかねがね関心があったんですが、とにかく何とか、あそこへ出没する、漁業というものを名目にしてやってくる艦船の排除をしなくちゃいかぬということで、小笠原の漁業組合長をしておりましたが、今は東京都全体の組合長をしております菊池組合長、これは非常にしっかりした人物でありますが、彼に依頼しまして、そのための船を東京都はつくりました。彼もそれを指揮して、あそこに海中の魚礁を幾つかつくりまして、そのおかげで漁獲が上がるようになりましたので、日本の漁船が頻繁に行くようになりました。
それが一つの抑止力になって、外国の、漁船と称しているうろんな船の出没の回数が減りましたが、いずれにしろ、これは、これからの世界情勢の中で非常に大事な戦略的な拠点になると思います。
ご指摘のように、あそこは非常に浅いラグーンでして、あそこを埋め立てて飛行場をつくるのはとても至難のことでありますが、幸い日本は非常に優秀な、ジェーン軍事年鑑に唯一載っている対潜哨戒の飛行艇があります。こういったものの発信基地にすればよろしいので、既に金丸時代にあそこにつくった、全然用途不明の建物がありますが、ああいったものを再活用しまして、あそこにやっぱり燃料基地をつくり人員を配備することで、私は対潜哨戒の非常に大事な基地になり得るものと思いますし、ぜひそれを、私からも建言いたしますが、吉田さんからも、民主党政府に建言していただきたいと思います。
次いで、朝鮮学校に対する認識でありますけれども、北朝鮮は、いまだに解決の道筋が見えない拉致問題を初め、先日の韓国の延坪島への砲撃など、その行動は常軌を逸しているというか、言語道断であります。それを正当化するような教育も朝鮮学校で行なわれているとすれば、これは本当に看過できない問題でありまして、やはり彼らが過去の歴史のトラウマを抱えているのはわかりますけれども、しかし、この時代になお日本に在住しながら、その子弟に、自分が在住している国に敵意を持つような、そういう教育をもし続けているならば、これは決して好ましい存在とはいえないと思います。
ですから、この朝鮮学校への補助金についても、平成二十三年度予算については、現在まさに編成段階にありまして、補助金の扱いに関してはしかるべき時期に判断いたしますが、何よりも朝鮮学校への補助金は、都議会の要望を受けてかつて創設された経験がありまして、まず、議会の方でしっかり議論していただきたい。そうした議論を踏まえながら、これからも都として判断をしていきたいと思います。
警視総監並びに青少年・治安対策本部長から、他の問題については回答いたします。
〔警視総監池田克彦君登壇〕
○警視総監(池田克彦君) 北朝鮮、朝鮮総連及び朝鮮学校に関する警視庁の認識についてお答えいたします。
初めに、北朝鮮についてでありますが、北朝鮮は過去に、ビルマ・ラングーン事件や大韓航空機爆破事件等の重大な国際テロ事件、あるいは拉致容疑事件を引き起し、さらには依然として「よど号」ハイジャック事件の犯人グループがとどまっていることなどから、十分な警戒が必要であるものと認識しております。
次に、朝鮮総連についてでありますが、朝鮮総連は、北朝鮮を支持する在日朝鮮人等で構成された団体であり、その綱領等から見て、北朝鮮と密接な関係を有する団体であると考えております。
最後に、朝鮮学校についてでありますが、朝鮮総連と密接な関係があり、教育内容、人事及び財政について、朝鮮総連から影響を受けているものと認識しております。
警視庁といたしましては、公共の安全と秩序の維持という観点から、こうした北朝鮮及び朝鮮総連の動向について重大な関心を払っており、具体的な刑罰法令に違反する行為があれば、これに対して厳正に対処してまいります。
〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕
○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 八点のご質問にお答えいたします。
まず、改正案と表現の自由の関係についてであります。
条例の図書類に関する規定は、漫画等の創作や出版、十八歳以上の方の閲覧や購入を一切規制するものではなく、青少年への販売が制限されるにとどまるもので、描き手の創作活動を規制するものではありません。
これと同様の仕組みである岐阜県青少年保護育成条例に関する平成元年の最高裁判決においては、このような販売制限は憲法二十一条一項に違反するものではないと、明確に判示しています。その趣旨として、判決の補足意見においては、条例の規定は憲法の保障する表現の自由にかかわるものと述べた上で、本件条例を違憲とするのは相当ではないと述べています。
これは、条例による青少年への販売等の規制は、表現の自由の派生原理として導かれる、読み手である青少年の知る自由を制限するものであることを指摘した上で、それに対する一定の制約は是認される旨を述べているものであり、条例の規制が、描き手の創作の自由や出版の自由の制限に当たるとは述べていないものであります。
都においても、条例による青少年への販売等の規制は、青少年の知る自由を制限するものでありますが、青少年の健全育成の目的に照らし、そのような販売制限は憲法二十一条一項に違反するものではなく、また、描き手の創作活動を規制するものではないと考えます。
次に、改正案を規定する理由とその科学的根拠についてであります。
今回の条例改正案は、刑罰法規に触れる性交等や、婚姻を禁止されている近親者間の性交を不当に賛美、誇張するような漫画等が一般書棚で販売されている実態があり、これらを閲覧した青少年が、これらの性交等が社会的に許されるものと誤解するなど、これらの性交等に対する抵抗感を弱め、性に関する健全な判断能力の形成を妨げるおそれがあることから、このような漫画等を区分陳列の対象としようとするものであります。
したがって、この改正案は、性犯罪の描写を閲覧した青少年が、当該犯罪を犯すことを防止することを直接の目的とするものではないことから、図書類を閲覧した青少年が当該犯罪を犯すという因果関係の科学的証明の必要性は生じないものと考えます。
なお、さきに述べた最高裁判決の補足意見においても、有害図書の販売規制に当たり、有害図書が青少年の非行を誘発したり、その他の害悪を生ずることの厳密な科学的証明を必要としない旨、述べています。
次に、今回の改正の基準と現行の三つの基準との関係についてであります。
改正案による基準は、刑罰法規に触れる性交等を不当に賛美、誇張するように描いたものでありますが、これは、社会的に許容されていない性交等の描写が、これらの性交等に対する青少年の抵抗感を弱め、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げるおそれがある程度に至っているものが該当します。
しかし、こうした漫画等は、必ずしも読み手の性的感情を刺激する度合いが高いとは限りません。同様に、読み手の残虐性を具体的に助長する程度が高いとは限らず、また、読み手が具体的に犯罪を実行し得るまで犯罪を誘発する程度が高いとは限りません。したがって、現行の三つの基準とは別に、新たな基準が必要であります。
次に、不当に誇張の意味などについてであります。
不当に誇張するようには、漫画等において当然に伴う誇張的な描写、いわゆるデフォルメの程度を指すものではなく、刑罰法規に触れる性交等及び婚姻を禁止されている近親者間の性交等について、これらの性交等が特別なものでなく、通常あり得るものとして受けとめられるほど、必要以上に詳細に描写したり、執拗に反復して描写するなどにより、読み手である青少年から見て、こうした性交等に対する抵抗感を弱めるように描写していることを指します。
具体的には、例えば強姦など刑罰法規に触れる性交等について、不当に賛美するように描写してはいなくても、当該性交等の場面が、全編の大部分にわたり必要以上に延々と微に入り細に入り、または執拗に反復して描写されているもので、その結果、読み手である青少年が、そのような性交等が特別なものではなく、通常あり得るものとして受けとめ、青少年のこれらの性交等に対する抵抗感を弱めるものは、不当に誇張するように描写したものとして区分陳列を検討する対象となり得るものと考えます。
次に、刑罰法規に触れる性交等などについてでありますが、条例改正案の対象は、あくまで刑罰法規に触れる性交等または婚姻を禁止されている近親者間における性交等を不当に賛美し、または誇張するように描写等したもののみであり、刑罰法規に触れる性交等を表現しただけでは、直ちに対象となるものではありません。
したがって、性的虐待を非難し、被害防止を啓発するような漫画等が対象にならないことは、いうまでもありません。
また、不健全図書指定に係る第八条第一項第二号は、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等著しく社会規範に反する性交または性交類似行為を、不当に賛美しまたは誇張するように描写または表現したものと規定しています。
つまり、著しく社会規範に反する性交等とは、第七条第二号に規定する刑罰法規に触れる性交等または婚姻を禁止されている近親者間の性交等に該当することを前提とした上で、そのような性交等の中でも著しく社会規範に反する性交等であるという趣旨であります。
具体的には、被害者の意思を抑圧するものとして極めて悪質な類型である強姦や、性交類似行為を伴う強制わいせつ等、また、子どもを対象とする性犯罪の類型として、児童買春、児童ポルノ禁止法における児童買春、児童福祉法における児童に淫行させる行為、東京都青少年健全育成条例における、いわゆる淫行禁止規定違反行為及び民法により婚姻を禁止されている近親者間の性交及び性交類似行為をいい、これらは東京都規則で明示するものであります。
これに該当しないものについては、一切、不健全図書指定の対象に該当することはないことから、不当な規制の拡大を企図しているとのご懸念は当たらないものと考えます。
次に、年齢の判断についてでありますが、今回の改正案におきましては、刑罰法規に触れる性交等を不当に賛美または誇張するように描写等することにより、読み手である青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げるおそれがあるものを区分陳列の対象とすることとし、これに該当する限り、性交等に係る登場人物の年齢設定を問わないこととしました。
ただし、性交等に係る刑罰法規の中には、性交等の対象者が十三歳未満または十八歳未満であることが当該法規の適用の要件となっているものがあります。その場合には、当該刑罰法規に触れる性交等の描写等であるか否かの判断に当たり、登場人物の年齢設定の判断が必要になります。その際には、年齢を初めとする服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を客観的に推定させる事項の描写から判断することとなると考えています。
なお、当該性交等を不当に賛美、誇張するように描いた漫画等の一部において、服装、所持品、背景その他の人の年齢を客観的に推定させる事項の描写等からは、読み手である青少年が、明らかに十三歳未満である、または明らかに十八歳未満であると受けとめてしまう描き方をされているにもかかわらず、作品の設定上は、一言だけ、これは成人であると断り書きをつけているようなものがあります。このようなものは、読み手である青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げるおそれがあるものとして、区分陳列を検討する対象になり得るものであります。
不健全図書の指定に当たりましては、自主規制関係団体の意見を聴取した上で、青少年健全育成審議会に諮問をし、その結果を踏まえて、都が不健全指定するという慎重な手続を経ることとしており、行政の恣意的な判断の入る余地があるとのご懸念は当たらないものと考えます。
次に、過去の制度、慣習や諸外国の文化などとの関係についてでありますが、今回の条例改正案は、今の日本で生活する青少年が、今の日本の刑罰法規に触れる性交等や、婚姻を禁止されている近親者間の性交等を社会的に許されるものと受けとめ、これらの性交等に対する抵抗感を弱め、性に関する健全な判断能力の形成を妨げられることにならないようにするための改正であり、過去の我が国の制度、慣習や諸外国の文化等を否定しようとするものではないことはいうまでもありません。
過去の制度、慣習や諸外国の文化等として性交等の場面を描いた作品が、直ちに今回の基準の対象となるわけではないことはもちろんであります。また、SFやファンタジー作品等における架空の設定や、そこにおける性交等の描写自体を否定しようとするものではありません。
他方、過去の制度、慣習や諸外国の文化等、架空の設定にかこつけて、テーマに照らし必要以上に、今の日本では刑罰法規に触れる性交等について、特別なものではなく通常あり得ることとして青少年が受けとめてしまう程度まで、こうした性交等の場面を殊さらに描いたものは、区分陳列を検討する対象になり得ます。
これは、例えば古典文学の漫画化の体裁や、幼児との性交が合法的に許されている架空の世界の出来事であるとの体裁をとりながら、これにかこつけて、全編の大部分が、幼い子どもとの性交等の執拗な描写に費やされているようなものであります。
しかし、このことは、過去の制度、慣習や諸外国の文化等、創作者の想像力や創造性を否定することとは全く異なることであると考えます。
最後に、青少年健全育成審議会の運用についてでありますが、青少年健全育成審議会の運用につきましては、これまでも委員の方々が適切に審議できるよう努めてきたところであります。改正条例の運用に当たりましては、委員の方々が、改正の趣旨を踏まえた判断ができるようにすることが重要であります。
委員の方々のご意見も伺いながら、諮問図書の事前配布の検討も含め、審議に必要な時間を十分に確保するようにしてまいります。
○議長(和田宗春君) 九番山内れい子さん。
〔九番山内れい子君登壇〕
○九番(山内れい子君) まず初めに、温暖化対策について伺います。
地球規模でのCO2削減は、二〇一二年の京都議定書の目標年が迫る中で、悲観的な見通しが明らかになってきました。都は、大規模事業所にCO2削減義務を課し、排出量取引制度をつくり、中小規模の事業所の省エネ対策を促進する制度を実施するなど、国をも先導する多様な温暖化対策の取り組みを進めてきており、評価するものです。このような先進的な取り組みを定着させ、CO2削減を着実に実現させるためには、強い決意を持って取り組んでいく必要があると思いますが、知事の決意を伺います。
家庭部門からのCO2排出量は、都全体の約四分の一を占めており、増加傾向にあります。削減対策として、住宅の省エネ改修や太陽エネルギー機器の利用促進への支援が行われており、エコポイント制度なども相まって、省エネ型家電製品への買いかえも進んでいると聞いています。盛んな消費行動も、誘導策が終了すると、一過性のものになってしまうことが懸念されます。こうした家庭でのCO2削減の動きを継続させていくためには、地球温暖化対策への一層の理解を深める普及啓発が重要であると思います。
そこで、地球温暖化対策に関する普及啓発の取り組みについて伺います。
次に、障害者福祉について。
高次脳機能障害は、脳卒中や交通事故などで脳の一部が傷を受け、記憶障害や注意障害などが起こり、日常生活に大きな支障を来します。
都は、今年度、症状に合った専門的なリハビリの普及のためのモデル事業を、区西南部と西多摩の二つの二次保健医療圏で開始しました。
先日、モデル地域になっている世田谷区で、高次脳機能障害のリハビリに長年取り組んでいる長谷川幹先生にお話を伺ったところ、脳の症状は人によってさまざまだが、患者が主体的にリハビリを長期的に続けることで回復する場合もあり、最後まであきらめないことが大切と話されました。そのためには、症状や生活のニーズに合った適切なリハビリを、身近な地域で受けられることが必要です。
モデル事業では、高次脳機能障害に対し、医療と福祉の連携により効果的なリハビリが提供されるための地域の支援体制の充実をどのように進めていくのか、伺います。
高次脳機能障害は、他の障害に比べると身体の障害が見られず、外見上障害が目立たないために、周囲に理解されにくいケースが多く、家族の苦労や不安も大きく、そのような家族の相談に的確に対応できる窓口が身近な地域に必要です。
新宿区は、都の補助事業を活用し、NPOと協働し相談事業を行っています。高次脳機能障害支援の充実は、家族の訴えを聞き、新しい生活に向けて何が必要か、できることから取り組み、サービスを構築していくことが求められています。
そこで、都としても、より多くの区市町村が相談体制の整備を進めるよう、積極的に支援すべきと考えますが、都の見解を伺います。
都議会生活者ネットワーク・みらいでは、先日、日野市にある東電ハミングワーク株式会社を視察しました。平成二十二年六月一日現在の都内の民間企業の障害者雇用率は一・六三%となり、大企業が牽引役となって八年連続して上昇していますが、中小企業では依然として厳しく、全国でも低い状況です。
一方、地域では、障害者も健常者も一緒になって働ける職場を確保するため、従来の補助金に頼るのではなく、市民との協働による社会的事業所などの新たな働き方も始まっています。障害者が働き続けるためには、住みなれた地域に職場があり、障害者も健常者も一緒に働くことができる多様な職場づくりが必要であり、その担い手として、NPO等の多様な主体の存在が欠かせません。近年、地域において、雇用に限定されない多様な働き方を目指す人もふえていることから、こうした方々の主体的な取り組みを都としても積極的に支援していくべきです。
そこで、多様な働き方を広めるための都の取り組みについて伺います。
次に、家庭的保育事業について。
保育待機児について、自治体では考えられる限りのさまざまな手法で、必死に解消に努めています。
待機児童数が都内一多い世田谷区では、改正児童福祉法に家庭的保育事業が位置づけられたことに伴い、認可保育園を運営する社会福祉法人が、家庭的保育のモデル事業にことしの六月から取り組み、マンション一階の四室、別のマンション二室を借り、保育ママ六人を雇用して、三十人の保育を始めました。
従来の保育ママの課題であった密室性や保育の質の確保、保育者の休暇の保障、定員が埋まらないことによる収入の不安定さなどを改善し、預ける側も、預けられる側も、安心して保育できるようになったと聞きます。
一方、この間、同一建物で複数の保育ママが事業を行うことへのオーナーや近隣住人の理解、都市部の実情に合わせた家賃補助、専任支援員の確保など、新たな課題も明らかになっており、こうした問題を解決しながら、さらに事業を推進していく必要があります。
家庭的保育事業は、待機児童の大半を占める三歳未満の子どもを対象としており、今後、待機児童の解消を図る上では、こうした小規模で家庭的な保育を拡充していくことも有効です。
都は、家庭的保育事業について、どのように取り組み、区市町村を支援しているのか、伺います。
最後に、都立高校における日本史必修化について。
知事は今議会の所信表明で、今の若者は先人の足跡を知らず、豊穣さや便利さにおぼれて、しんが虚弱であり、他者との摩擦、相克への耐性不足で議論ができないと現代若者観を示し、若者たちを目覚めさせるためにも、日本の近代史を必須化していくことを表明されました。
日本史必修化に向けて、東京都教育委員会は、教科書に準拠した「江戸から東京へ」という教本を作成していると聞きました。江戸の経済、まちづくり、文化、教育を客観的な事実として学ぶことは否定しませんが、歴史に刻まれている戦争や人権問題などについては、その方面の多くの識者だけでなく、それぞれの当事者の生きてきたあかしによって事実のとらえ方はさまざまです。
生活者ネットワーク・みらいは、国と国の友好関係を築き、将来の平和を構築するために歴史を学ぶということは価値があり、開かれた議論を行うことが重要と考えます。開発を進めている独自教科書について、進捗状況や策定委員や監修者等が全く明らかにされていないことは問題であり、開かれた進め方をしていくべきです。
作成に当たってのスケジュール、完成するまでにどのような形でさまざまな意見を聴取していくのか、ご所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 山内れい子議員の一般質問にお答えいたします。
地球温暖化対策についてでありますが、世界のあちこちで、これほど歴然とした温暖化現象が起こっていますけれども、人間は、何となくもうそれになれてしまって、だんだんこの問題に対する危機感が薄れていっている現況だと思います。
現政府も、先代の鳩山首相は、CO2の二五%削減という非常に雄々しい宣言をしましたが、具体的な施策は一向に打たれておりませんし、政府の取り組みは、地球の未来に対する危機感がいささか欠落しているような気がしてなりません。
地球温暖化は、一刻の猶予も許されない状況にありまして、目に見えにくいことですけれども、やはりじりじりじりじり、事は悪い形で進行していると思います。ともかく、いろんな権限を持っている国の政府が、はっきりとした危機意識を持ってこれに対処し、地方の政府もそれに従うというのが理想の形でありますが、どうもやっぱり主客転倒した形で、非常に歯がゆい思いをしております。
都が本年四月から開始した世界初の都市型のキャップ・アンド・トレード制度は、国内のみならず、海外の多くの国家政府、地方政府からも、他に例のない先駆的で大胆な施策として注目も集め、いろいろ問い合わせもございます。
こうした都の施策に呼応して、大幅なCO2削減の取り組みを開始している東京の企業との協働によりまして、低炭素型都市への転換をいち早く実現していくことで、歩みの遅い国の取り組みを先導していきたいものだと思っております。
他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 都立高校における日本史必修化についてのご質問にお答え申し上げます。
東京都独自科目「江戸から東京へ」の教科書の作成に当たりましては、本年三月に日本史必修化検討委員会を立ち上げまして、これまで四回の検討委員会、六回の作業部会を開き、検討を重ねてまいりました。
教科書「江戸から東京へ」につきましては、高等学校学習指導要領地理歴史科の目標を踏まえまして、事実の正確な理解に導くために、相異なる価値観や対立する立場の一方に偏らないよう、客観的かつ公正な記述に留意する必要がございます。このため、高い専門性を持ち、豊富な授業経験を有する都立高校の日本史等の教員七名が執筆したものに、日本史と歴史教育に造詣が深い有識者である三名の検討委員等の意見を加えながら、本年度末の発行を目途に作成中でございます。
作成した教科書につきましては、平成二十三年四月から日本史必修化協力校等におきまして、実際に一年間の授業で活用してもらい、教員、生徒、保護者の意見を聞くとともに、都教育委員会のホームページに掲載するなどして、広く都民からも意見を聴取してまいります。
都教育委員会は、こうした意見を参考にするとともに、学習指導要領にのっとり、必要があれば改訂するなど、平成二十四年度からの本格実施に対応してまいります。
〔環境局長大野輝之君登壇〕
○環境局長(大野輝之君) 地球温暖化対策の普及啓発についてでございますが、家庭部門のCO2削減を効果的に進めるためには、都民一人一人の意識の醸成が重要でございまして、都民に身近な区市町村の取り組みの強化が不可欠でございます。
このため、都では、区市町村が主体となって実施をいたします、先駆性があり波及効果が期待できる地球温暖化対策事業に対しまして、補助制度を設け支援をしてきております。この補助制度を活用することによりまして、住民や事業者が省エネ対策の実践を宣言し、さらに地域全体の行動として広げていく取り組みなど、特色ある事業が開始されております。
今後とも、こうした取り組みを通じまして、地球温暖化対策の普及啓発を推進してまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問についてお答え申し上げます。
まず、高次脳機能障害者支援のモデル事業についてでありますが、都は今年度から、二つの二次保健医療圏で高次脳機能障害に対応したリハビリテーションの普及モデル事業を実施しております。
この事業では、高次脳機能障害者のリハビリテーションを担う中核病院が、専門スタッフを配置し、地域の福祉サービス事業所等に対する技術的助言などを実施するほか、医療と福祉の連携強化のための連絡会や症例検討会を行っております。
こうした取り組みにより、リハビリテーション技術の普及や人材育成を進めるとともに、関係機関の連携を促進し、地域における高次脳機能障害者に対する支援体制の充実を目指してまいります。
次に、高次脳機能障害者の相談支援についてでありますが、高次脳機能障害者やその家族を支援していくためには、身近な地域で相談できる体制を整備することが重要であります。
このため、都は、平成十九年度から区市町村高次脳機能障害者支援促進事業を開始し、相談支援等を行う区市町村への財政支援を実施してまいりました。
また、心身障害者福祉センターにおいて、従来から行っている専門相談に加え、平成二十一年度から、当事者及び家族が相談員となるピアカウンセリング事業を実施しており、同様の取り組みを行う区市町村についても、包括補助事業により支援を行っております。
今後とも、こうした取り組みを強化し、区市町村における相談体制の整備を促進してまいります。
最後に、家庭的保育事業についてでございますが、本事業は、家庭的な雰囲気のもと、少人数の乳幼児に対し、同一の保育者によるきめ細かな個別保育を提供するものでありまして、本年九月現在、約千九百人の乳幼児が利用いたしております。
この事業のさらなる推進に当たっては、基本的に自宅などで一人で保育を行うという事業の性格を踏まえまして、より安定した保育を確保し、安心して利用できる環境の整備を支援する必要がございます。
このため、今年度から、保育者の休暇取得時に代替の保育の場を確保することへの支援や、複数の保育者が共同して保育を行うモデル事業を開始いたしました。
都は、今後とも、こうした取り組みにより、区市町村が家庭的保育事業を推進できるよう支援を行ってまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 多様な働き方の支援についてのご質問にお答えいたします。
NPO、ボランティア、起業、創業など、都民の働き方は多様化してきております。
このため、都はこれまでも、東京しごとセンターにおいて、多様な働き方セミナーやNPO等での就業体験の場の提供等を行うとともに、雇用以外のさまざまな働き方についての専門相談窓口を設置し、アドバイザーが相談や情報提供に応じております。
引き続き、これらの事業を通じ、多様な働き方を目指す人の主体的な取り組みを支援してまいります。
○議長(和田宗春君) 七番福士敬子さん。
〔七番福士敬子君登壇〕
○七番(福士敬子君) 継続審議を経て、第二回定例会で廃案となり、またもや出された青少年健全育成条例の改定案は、手続も拙速、かつ市民の意見も聞いていません。
当初の改定案は、審議会での議論、そしてパブリックコメントを経て提出されました。その上でなお、三月十七日に条例文の解釈について、急遽、都の見解を作成するなどのどたばた劇で、知事自身、記者会見で、精読していないので詳細に考えていないとの発言までされた条例です。
今回は、非実在青少年という言葉は削除されましたが、逆に、刑罰規定に触れるという形で、規制対象は十八歳以上にまで広がっています。さらに、社会規範に反する行為という、法と道徳を混同した言葉で、漫画やアニメをねらい撃ちにしています。
そもそも、審議会の答申、パブコメの流れから見れば、全く別の改定案を提示しているにもかかわらず、条文が出たのは告示日当日です。
このように全国の関心が高い条例は、再度市民からの意見集約を行うべきと考えますが、パブリックコメントを行うことなく、今定例会に提出する理由を伺います。
自主規制団体など、規制への考え方に食い違いがある場合は、規制と犯罪発生率の相関関係など、科学的な結果をもとに出版業界と話し合うべきだと考えます。条例改定に当たって、これまで出版業界とどのような話し合いをしてきたのか、伺います。
また、条文中、著しく社会規範に反するという文言は、対象があいまいで、ますますわかりにくいものとなっています。この言葉で何が規制され、この改定でどのような社会を目指しているのか、伺います。
私は、子どもを無菌状態で育てることがいいとは思いません。日々、社会は変わっていきます。どんな社会状況となっても、善悪を見定め、自分で判断する子どもを育てる、それが親を初めとする大人たちの仕事ではないでしょうか。これは大丈夫と、減菌した大人の価値観だけを与え、いいなりの子どもを育てていたら、グローバルな社会には対応できません。私は、今回の改定案は、大人の逃げだと感じています。
大人は、見せたくない暴力やセックスの漫画などを見たら、自分で子どもに伝えればいい。条例を推進する方々は、自分たちが子どもたちと向き合わず、行政に何が悪いかを決めてもらおうという他力依存の気持ちがないか、点検していただきたいと思います。
被害者が発生する児童ポルノと違い、想像を形にしただけの漫画などを取り締まるのは、表現や思想を取り締まることになります。
私は、若者を、自立心をしっかり持ち、自分で判断できる人間に育てることが、教育、子育ての最大の目的と考えています。その意味で、昨今の青少年健全育成条例自体に疑問を持ち、改定が加わるごとに迷走し続けていると感じています。
知事も、表現者の一人として、反モラル的小説を含め、さまざまな想像を形にされてきました。知事は、ご自身の作品を含め、何を子どもに見せ、何を見せないかの取捨選択を行政任せにすることに違和感はないでしょうか。
社会は、行政がつくるわけではありません。今回の条例は、子育てを行政に依存することにつながると考えますが、ご見解を伺います。
殺人は罪に問われます。それでも殺人事件は起きています。法律や条例で人を縛れないということだと申し上げておきます。
次に、配偶者への暴力は、根が深く、最近までどこの国でも、夫が妻に対して暴力を振るうことは特に問題にされていませんでした。古くは、アメリカでも、夫は妻を殴るとき、自分の親指より太くないむちを使うことという、親指ルールがありました。今や、さすがにこのような状態を認める社会はないにもかかわらず、暴力は、若年層にも広がりや芽生えがあります。
デートDVという表現があるように、つき合い始めた時点からの抑圧的な言動や監視などが問題となっています。男女が尊厳を持って生きる社会のためには、配偶者等の暴力は決して許してはなりません。
しかし、女子差別撤廃条約の実施に対しての勧告では、暴力への苦情申し立てや保護請求の際に障害があるとされ、貧困や在住外国人など社会的弱者は、不安定な状況のため、通報を断念してしまう可能性を指摘しています。
都も、男女平等参画行動計画の改定が来年度行われる予定で、その中にも、男女平等参画を阻害する暴力への取り組みの項目があります。また、配偶者暴力対策基本計画も来年度が改定の時期です。
東京都配偶者暴力対策基本計画の策定に向け、被害者の視点に立った支援をどのように行っていくかを、被害者や支援者に聞くことが必要かと考えますが、いかがでしょうか。
条約の勧告にもある、あらゆる暴力は容認されないという意識啓発の取り組みを強化するといわれても、チラシ配布だけでは実効性は上がりません。就学前の子どもも含め、年齢に見合った教育や啓発をすべきです。
北欧には、すばらしい絵本や、けんかから戦争までを題材とした小学校一年生からの学年ごとの教科書がありますが、けんかもいけないではなく、全編、考えましょうで終わっています。自己判断と他人の人権も考える教材です。
このように、低学年から年齢に応じた教育こそ重要であり、低学年教育も計画策定に向けて考慮されるよう、強く要望しておきます。
その上で、配偶者暴力対策においては、若年層へのデートDV防止のための教育や啓発を強化することが重要と考えますが、いかがでしょうか。
また、現在のDV対策は、隔離策が中心です。しかし、加害者への対策がない限り、次の被害が起きない保障はありません。配偶者暴力対策では、加害者に対しても精神的なサポートが必要と考えます。現在の取り組み状況について伺います。
次に、子どもたちがあらゆる暴力から保護され、子どもの権利を生かすことは、私たち大人の願いであり、責務であると思います。子ども虐待の事件のたびに、もっと何かできなかったのかと、事なかれ主義の行政責任を問う声は大きくなります。
その声を受け、さきの三定では、児童福祉司の増員や専門課長の設置など、対策に力を入れてきたと答弁されました。しかしながら、単に人数をふやすだけでは、本当の意味の対策になりません。
子どものために何が最善かを考え、少しずつでも状況を前進させていくこと、そのための行政支援が問われます。
虐待に対し、何もしなかったと行政が責められるケースは多いのですが、今回、私は、行政が一時保護という強制手段を使い、それが行政側のミスとなることを恐れた隔離のまま、悪影響を受け続けている事例を紹介いたします。
数年前、ある少女が、突然、母親の同意なしに、虐待の疑いで児童相談所職員により保護されました。その保護の際に、都の職員は、屋外インターホンの上に名刺に走り書きしたものを置いただけでした。その後、家庭裁判所ほか、さまざまな司法の場場での母親の訴えにもかかわらず、身体的虐待ではなく二十八条一項一号を盾に、隔離したままです。母親は態度を硬化させ、行政との対話に不信感を持ち、関係改善プログラムにも着手できていません。
このケースに現場で寄り添いながら、私は二つの疑問を感じました。
一つは、保護手段と説明責任についてです。
都みずから、センター職員に一部不用意な行動があったと認めています。不服手続なども記載した文書で通知すべきを、インターホンに名刺を置くなど信じられません。当時の担当者は、次々退職しました。この間、都は、誤りを認め、母親の不信感をぬぐう努力をすべきでした。また、保護の是非など、説明責任もきちんと果たすべきです。保護の必要性に対する判断及び説明責任については、どのように考えておられますか。
二つ目は、職員の目的は何かです。
司法に自分たちの正当性を主張する都の姿勢に、私は疑問を感じ続けています。先ほどの名刺の件のほか、検察庁の改ざん事件同様に、行政は疑惑のある資料を司法に提出するなど、明らかな間違いを覆い隠すことにきゅうきゅうとし、最終的な解決より、自己保身を優先していると思いました。証拠の出し方、子どもの証言の引き出し方も裁判で争点になりましたが、都側は、問題がなかったと強弁しています。
そうした不毛な争いの結果、保護後四年を過ぎ、家庭崩壊が心配されます。安易に前任の職員から受け継いだ事例を処理するだけで、行政が家庭を崩壊させるとすれば、本末転倒です。虐待を見て見ぬふりをするのも、自己保身を優先するのも、同じ事なかれ主義ではないでしょうか。
虐待相談への対応は、組織的にするべきだと考えますが、児童相談所はどのようにされていますか。本当の意味で、子どもが保護者とともに健やかに暮らせるという大きな目標達成に向けて行政は努力しているのか。人員補充だけでなく、家族再統合に向けた支援体制はどうなっているのでしょうか。
ちなみに、虐待とされる八割以上は、隔離施策でなく、親子のコミュニケーション対策が必要というデータがあります。特に体制づくりでポイントとなる児童心理司の専門性向上のための取り組みを伺います。
最後に、東京港から年間百回前後陸揚げされる核燃料は(パネルを示す)このように渋谷など繁華街を通過することもあり、事故が起きれば、多くの都民の生命を巻き込む危険性を常に抱えています。ここに三つ葉マークがありますが、周囲の車は気にすることなく割り込みます。首都高も一般道も多くの車が走っています。
二〇〇九年十一月、東北自動車道での追突事故時には、規定された当該県への連絡もできず、輸送物の説明は、警察、消防が理解できないなどで、三時間も放置される事態が起きました。
事故後、国は、新たにガイドラインをつくらせましたが、事故の際に適切な対応ができるか気になります。
原子力とともに歩んできた東海村JCO事故の際にも、国の対応が遅く、地元自治体が独自に対応する事態になりました。東北自動車道の事故対応のおくれを見ると、核物質輸送事故対策が一歩も進んでいないのではと思わざるを得ません。
核燃料の中には、六弗化ウラン等、空気中水分との反応で、一時間以内に人々が中毒、死亡するものもあります。都内で追突事故があったとき、国の連絡待ちで市民が被害を受けるかもしれません。
都は、地域防災計画にプルトニウムなどの核物質輸送はどう位置づけているか。そして、事故発生時の消防署と警察の連絡体制をより確かなものにするため、都内を走る核物質の内容と経路を知らせてもらうよう、国に改善要求すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
再質問を保留します。
〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕
○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 福士敬子議員の一般質問にお答えいたします。
まず、青少年健全育成条例について、四点のご質問にお答えいたします。
パブリックコメントでありますが、今回の改正案は、青少年問題協議会での議論や、その答申素案について実施したいわゆるパブリックコメント、第一回定例会に提案した改正案に対する議会での議論や閉会中の総務委員会における継続審査、第二回定例会における議論及び各方面からの意見など、これまでのさまざまな議論や意見の積み重ねを踏まえ、立案したものであります。したがって、改めてパブリックコメントを行う必要はないと考えたものであります。
次に、出版業界との意見交換についてであります。
出版業界とは、個別の意見交換等を随時行っており、その際、条例改正をめぐるさまざまな論点についてご意見などをお聞きしてきたところであります。
また、個別の意見交換のほか、青少年の健全育成の観点に立った適切な図書類の販売等のあり方について、創作、出版関係者及び青少年健全育成関係者が、漫画等の出版及び自主規制等の現状を踏まえつつ、忌憚のない意見交換を行う場においても、出版業界の取り組みやご意見について伺ってきたところであります。
出版業界は、自主規制による取り組みで十分というご意見でありましたが、子どもに見せるべきでない漫画等が一般書棚で売られている現状にあること、指定された不健全図書類の半分が自主規制団体に属さない、いわゆるアウトサイダーの出版社によるものであることを考えると、都としては、条例改正が必要であると判断したものであります。
次に、著しく社会規範に反するという文言についてであります。
そもそも、著しく社会規範に反する性交または性交類似行為とは、条文からも明らかなように、第七条第二号に該当する性交等、すなわち刑罰法規に触れる性交等または婚姻を禁止されている近親者間の性交等の中で著しく社会規範に反する性交等という意味であります。
具体的には、被害者の意思を抑圧するものとして極めて悪質な類型である強姦や、性交類似行為を伴う強制わいせつ等、また、子どもを対象とする性犯罪である児童買春、児童ポルノ禁止法における児童買春、児童福祉法における児童に淫行させる行為、青少年健全育成条例における、いわゆる淫行禁止規定違反行為及び婚姻を禁止されている近親者間の性交または性交類似行為をいい、これは東京都規則で明示するものであります。
改正案は、こうした行為を著しく不当に賛美し、または誇張するように描写した漫画等の区分陳列を義務づけ、青少年に販売等をしないこととするものであり、こうした取り組みにより、青少年の健全な育成を図ることを目的としています。
最後に、今回の条例改正と子育てのあり方についてであります。
子どもを守り、健全に育成するためには、まずもって親が果たすべき役割が大きいことは、論をまちません。
しかし、子どもを取り巻く環境のすべてに親の目が行き届くわけではなく、書店の一般書棚で売られている漫画の内容を多くの親は知りません。
今回の条例改正は、子どもが容易に一般書棚から、強姦等を不当に賛美し、誇張するような漫画を親の知らないうちに買うことができる現状を改善しようというものであり、子育てを行政に依存することにつながるという指摘は当たらないと考えます。
〔生活文化局長並木一夫君登壇〕
○生活文化局長(並木一夫君) 配偶者暴力対策に関する三点のご質問にお答えします。
初めに、東京都配偶者暴力対策基本計画の改定に向けた被害者等の意見の聴取についてでございますが、配偶者暴力対策におきましては、被害者の意見を踏まえ、その視点に立った支援を行うことが重要であることから、平成二十年度に、被害者本人や被害者支援を行っている機関を対象とした調査を実施し、その意見を前回の計画改定に反映したところでございます。
また、前回の計画は、警察などの公的機関や被害者支援を行う民間シェルター等が参加する東京都配偶者暴力対策ネットワーク会議の意見を十分聴取した上で改定を行いました。
次回の計画改定に当たりましても、前回改定時同様に、被害者や支援者の意見の把握に努めてまいります。
次に、若年層への啓発についてでございます。
若年層における交際相手からの暴力につきましては、被害者が生命の危険にさらされるなど深刻な事例も見られることから、防止に向け啓発を行っていくことが重要であり、配偶者暴力の未然防止にもつながるものと考えております。
そのため、交際相手からの暴力についてわかりやすく解説した若年層向けカードを作成し、都内の大学や区市町村のイベントなどで配布をしております。
また、若年層からの相談を受ける立場にある中学、高校の教職員などを対象に、交際相手からの暴力についての対応方法などに関する研修を行っており、こうした啓発事業を引き続き実施してまいります。
最後に、加害者対策についてございますが、配偶者暴力の加害者の多くは男性であり、男性加害者への対応が重要であることから、東京ウィメンズプラザでは、外部の専門家による男性専用の電話相談を実施する中で、加害者の対応を行っております。
相談においては、加害者本人の行為が配偶者への暴力であるという自覚を促すとともに、専門のカウンセリング機関を紹介するなど、加害者の更生に向け、適切な支援を行っております。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 児童虐待対策に関する四点のご質問についてお答え申し上げます。
まず、保護の必要性に対する判断についてでありますが、児童福祉法第三十三条では、児童相談所長が必要と認める場合には、児童を一時保護することができると規定されており、児童相談所長は、保護者の虐待や放任など、児童の安全を確保する必要がある場合に、一時保護を実施しております。
一時保護は、基本的に児童や保護者に説明を行い、同意を得た上で行っておりますが、緊急を要する場合や、児童をそのまま放置することにより児童の福祉を害すると認められる場合は、保護を優先いたします。その場合でも、すべてのケースについて、保護した後に十分な説明を行っております。
次に、虐待相談への対応についてでありますが、児童相談所では、初期対応の段階から、虐待対策班、地域担当児童福祉司及び児童心理司がチームをつくり、複数で協議をしながら対応をいたしております。
個々のケースの援助方針につきましては、児童相談所長ほか職員が参加する会議を開催し、虐待をした保護者の状況、虐待の程度、児童の年齢や心理的な影響などを総合的に判断し、決定をいたしております。
その結果、児童養護施設等への入所が必要と判断した場合には、原則として保護者の同意を得て、入所措置を行っております。
しかし、保護者が虐待を認めないなどにより入所を拒否した場合には、裁判所に保護者の同意にかわる審判を申し立て、判断を仰ぎ、その決定に基づき適切に対応いたしております。
なお、この審判につきましては、入所措置の更新について、二年ごとに裁判所が判断することとなっております。
次に、虐待を受けた児童の家族再統合についてでありますが、本来、子どもは親とともに暮らすことが望ましいことから、一たんは親子分離して施設入所となった場合でも、親子関係を修復し、家庭復帰に向けた支援をしていくことが必要であります。
このため、児童が施設に入所している段階から、家庭復帰に向けて、保護者の状況や児童の心理的状況などを確認しつつ、児童養護施設と連携しながら、保護者との面会、自宅への短期帰宅、長期帰宅と、段階を追った保護者との交流に取り組んでおります。
また、児童が家庭に戻った後も、地域の子ども家庭支援センターなど関係機関と連携して、定期的に家庭訪問を行うなど、児童と家庭に対する支援を行っております。
最後に、児童心理司の専門性の向上についてでありますが、都は、毎年度研修計画を策定し、児童心理司を含む児童相談所職員に対して、職層や経験年数に応じて専門知識を付与する研修を行っております。
また、児童心理司につきましては、児童の心理状態を的確に判断するアセスメント技法や虐待をした保護者に対して行う児童への接し方の指導等について、専門分野の講師を招いた研修を実施するなど、専門性の向上を図っております。
先ほど、ご質問の中に児童相談所の職員の対応につきましてお話がございました。個別ケースにつきましては申し上げられませんが、児童相談所の扱うケースは、児童の出生前から、場合によっては成人に至るまで最長二十年に及ぶことがあるなど、さまざまであります。また、最近、児童虐待や非行など、保護者や児童に対する対応が困難なケースが急増いたしております。
これに対しまして、児童相談所は、子ども家庭支援センター、警察、学校、医療機関等と連携をしまして、所長以下、全職員が正面からケースに真摯に向き合い、児童の福祉を最優先に組織として対応いたしております。
私も、こうした職員の懸命な姿を目の当たりにしております。児童相談所の職員が、自己保身を優先しているなどという指摘は、全く当たらないと考えております。
〔総務局長比留間英人君登壇〕
○総務局長(比留間英人君) 核燃料物質等の輸送についてでございます。
国は、安全確保のため、輸送する核燃料物質等の内容に応じ、容器や輸送方法を厳格に定め、都道府県公安委員会への運搬計画の届け出を義務づけるなど、厳重な対策をとっております。
一方、都では、輸送中の事故に備え、地域防災計画の大規模事故編で対策を定めております。
万が一、事故が発生した場合には、国の事故対策会議のもと、国、都、区市町村が協力して住民の避難、誘導等の措置を講じるとともに、事故現場では、警察と消防が連携し、交通規制や警戒区域の設定などを実施いたします。
また、安全確保の観点から、国が公開すべきでないとしている輸送経路等の情報は、慎重に取り扱うべきと考えております。
〔七番福士敬子君登壇〕
○七番(福士敬子君) 児童虐待では、一般現場の努力は認めます。しかし、行政が過ちを犯したとき、真偽が疑わしい裸の写真を裁判所に提出、下着もつけない写真こそ、都側の虐待感覚ではないのか、そう思いました。なぜこのような場合にだれも問題にしないのか、責任体制に不備はないのか、伺います。他にも例もあります。
それから、青少年条例は、知事答弁を避けられました。都小P協の要請時、知事が、テレビに同性愛者が平気で出ると発言されたとの報道がありました。条例案を勘違いされていませんか、伺います。発言の趣旨はどんな思いでおっしゃったのか、お答えをいただきたいというふうに思います。
以上です。
〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕
○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 本条例案の性交等につきまして、同性か異性であるかということについて何ら変わりはございません。
○議長(和田宗春君) 以上をもって質問は終わりました。
○議長(和田宗春君) これより日程に入ります。
日程第一から第七十九まで、第百五十六号議案、東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例外議案七十八件を一括議題といたします。
本案に対し、提案理由の説明を求めます。
副知事佐藤広君。
〔副知事佐藤広君登壇〕
○副知事(佐藤広君) ただいま上程になりました七十九議案についてご説明申し上げます。
初めに、第百五十六号議案から第百七十八号議案までの十四議案は条例案でございまして、すべて一部を改正する条例でございます。
第百五十六号議案、東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例は、インターネット利用環境の整備に関する規定及び図書類等の青少年への販売等に関する規定を整備するとともに、児童ポルノの根絶等に関する規定を設けるものでございます。
第百六十七号議案、保健所の設置等に関する条例の一部を改正する条例から第百七十一号議案、東京都感染症の診査に関する協議会条例の一部を改正する条例までの五議案は、町田市の保健所政令市への移行に伴い規定を整備するものなどでございます。
同様の改正を行うものが、このほかに一件ございます。
第百七十二号議案、東京都営空港条例の一部を改正する条例は、離島航空路線の維持存続を図るため、ジェット機の着陸料の軽減措置を拡大するものでございます。
第百七十四号議案、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の一部を改正する条例は、新たに出会い系喫茶営業が法規制の対象となることに伴い、商業地域以外での営業を禁止するものでございます。
第百七十七号議案、警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例は、短時間駐車需要への対応と二輪車の放置駐車対策を促進するため、パーキングチケット発給手数料等について、二十分百円の区分を加えるとともに、新たに二輪車用の区分も新設するものでございます。
このほか、法令の改正等に伴い規定を整備するものなどが四件ございます。
次に、第百七十九号議案から第百九十号議案までの十二議案は契約案でございます。
第百七十九号議案、警視庁鮫洲運転免許試験場庁舎棟(二十二)改築工事請負契約など、契約金額の総額は約二百十三億五千万円でございます。
次に、第百九十一号議案から第二百四十三号議案までの五十三議案は事件案でございます。
第百九十一号議案、東京都人権プラザの指定管理者の指定についてを初めといたしまして、五十件が指定管理者の指定に関するものでございます。
第百九十二号議案は、当せん金付証票、いわゆる宝くじの平成二十三年度発売限度額を定めるものでございます。
第二百四十二号議案及び第二百四十三号議案は、三鷹市及び稲城市に対する東京都水道事業の事務の委託を廃止するとともに、公共下水道使用料徴収事務を受託するものでございます。
以上で説明を終わります。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
(議案の部参照)
○議長(和田宗春君) 以上をもって提案理由の説明は終わりました。
なお、本案中、地方公務員法第五条第二項の規定に該当する議案については、あらかじめ人事委員会の意見を徴しておきました。
議事部長をして報告いたさせます。
○議事部長(鈴木省五君) 人事委員会の回答は、第百五十九号議案、第百七十六号議案及び第百七十八号議案について、いずれも異議はないとの意見であります。
二二人委任第七四号
平成二十二年十一月二十五日
東京都人事委員会委員長 関谷 保夫
東京都議会議長 和田 宗春殿
「職員に関する条例」に対する人事委員会の意見聴取について(回答)
平成二十二年十一月二十二日付二二議事第三五九号をもって照会があった議案に係る人事委員会の意見は、左記のとおりです。
記
提出議案
一 第百五十九号議案
外国の地方公共団体の機関等に派遣される職員の処遇等に関する条例の一部を改正する条例
二 第百七十六号議案
警視庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
三 第百七十八号議案
東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
意見
異議ありません。
○議長(和田宗春君) お諮りいたします。
ただいま議題となっております日程第一から第七十九までは、お手元に配布の議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(和田宗春君) ご異議なしと認めます。よって、日程第一から第七十九までは、議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定いたしました。
(別冊参照)
○議長(和田宗春君) 請願及び陳情の付託について申し上げます。
受理いたしました請願十九件及び陳情三百五十一件は、お手元に配布の請願・陳情付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたします。
(別冊参照)
○議長(和田宗春君) お諮りいたします。
明九日から十四日まで六日間、委員会審査のため休会いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(和田宗春君) ご異議なしと認めます。よって、明九日から十四日まで六日間、委員会審査のため休会することに決定いたしました。
なお、次回の会議は十二月十五日午後一時に開きます。
以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後八時二十四分散会
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