平成二十二年東京都議会会議録第三号

平成二十二年三月三日(水曜日)
 出席議員 百二十六名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番三宅 正彦君
四番吉住 健一君
五番桜井 浩之君
六番野田かずさ君
七番福士 敬子君
八番土屋たかゆき君
九番山内れい子君
十番くりした善行君
十一番中村ひろし君
十二番西沢けいた君
十三番田中  健君
十四番関口 太一君
十五番畔上三和子君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番遠藤  守君
十九番伊藤 興一君
二十番鈴木 章浩君
二十一番きたしろ勝彦君
二十二番田中たけし君
二十三番鈴木 隆道君
二十四番神林  茂君
二十五番星 ひろ子君
二十六番小山くにひこ君
二十七番柳ヶ瀬裕文君
二十八番淺野 克彦君
二十九番新井ともはる君
三十番佐藤 由美君
三十一番たきぐち学君
三十二番田の上いくこ君
三十三番島田 幸成君
三十四番しのづか元君
三十五番大島よしえ君
三十六番大松あきら君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番松葉多美子君
四十番早坂 義弘君
四十一番高木 けい君
四十二番石森たかゆき君
四十三番高橋 信博君
四十四番中屋 文孝君
四十五番村上 英子君
四十七番西崎 光子君
四十八番滝沢 景一君
四十九番中谷 祐二君
五十番笹本ひさし君
五十一番山下ようこ君
五十二番神野 吉弘君
五十三番鈴木 勝博君
五十四番興津 秀憲君
五十五番岡田眞理子君
五十六番伊藤 ゆう君
五十七番古館 和憲君
五十八番かち佳代子君
五十九番中山 信行君
六十番高倉 良生君
六十一番橘  正剛君
六十二番谷村 孝彦君
六十三番野上 純子君
六十四番高橋かずみ君
六十五番山加 朱美君
六十六番山崎 一輝君
六十七番菅  東一君
六十八番宇田川聡史君
六十九番山田 忠昭君
七十番林田  武君
七十一番原田  大君
七十二番佐藤 広典君
七十三番尾崎 大介君
七十四番松下 玲子君
七十五番山口  拓君
七十六番伊藤まさき君
七十七番野上ゆきえ君
七十八番西岡真一郎君
七十九番今村 るか君
八十番吉田康一郎君
八十一番たぞえ民夫君
八十二番清水ひで子君
八十三番小磯 善彦君
八十四番長橋 桂一君
八十五番藤井  一君
八十六番ともとし春久君
八十七番三宅 茂樹君
八十八番遠藤  衛君
八十九番吉原  修君
九十番野島 善司君
九十一番鈴木あきまさ君
九十二番三原まさつぐ君
九十三番田島 和明君
九十四番樺山たかし君
九十五番斉藤あつし君
九十六番泉谷つよし君
九十七番くまき美奈子君
九十八番大西さとる君
九十九番増子 博樹君
百番いのつめまさみ君
百一番門脇ふみよし君
百二番小沢 昌也君
百三番花輪ともふみ君
百四番大津 浩子君
百五番大山とも子君
百六番鈴木貫太郎君
百七番東村 邦浩君
百八番中嶋 義雄君
百九番木内 良明君
百十番古賀 俊昭君
百十一番こいそ 明君
百十二番服部ゆくお君
百十三番川井しげお君
百十四番吉野 利明君
百十五番宮崎  章君
百十六番比留間敏夫君
百十七番相川  博君
百十八番石毛しげる君
百十九番大塚たかあき君
百二十番和田 宗春君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番酒井 大史君
百二十三番大沢  昇君
百二十四番中村 明彦君
百二十五番馬場 裕子君
百二十六番田中  良君
百二十七番吉田 信夫君

 欠席議員 一名
四十六番 矢島 千秋君

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事菅原 秀夫君
副知事佐藤  広君
副知事猪瀬 直樹君
教育長大原 正行君
東京都技監建設局長兼務道家 孝行君
知事本局長吉川 和夫君
総務局長中田 清己君
財務局長村山 寛司君
主税局長熊野 順祥君
警視総監池田 克彦君
生活文化スポーツ局長秋山 俊行君
都市整備局長河島  均君
環境局長有留 武司君
福祉保健局長安藤 立美君
産業労働局長前田 信弘君
港湾局長比留間英人君
会計管理局長新田 洋平君
交通局長金子正一郎君
水道局長尾崎  勝君
消防総監新井 雄治君
下水道局長松田 二郎君
青少年・治安対策本部長倉田  潤君
東京オリンピック・パラリンピック招致本部長荒川  満君
病院経営本部長中井 敬三君
中央卸売市場長岡田  至君
選挙管理委員会事務局長矢口 貴行君
人事委員会事務局長泉本 和秀君
労働委員会事務局長関  敏樹君
監査事務局長三橋  昇君
収用委員会事務局長野口  孝君

三月三日議事日程第三号
第一 第一号議案
平成二十二年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
平成二十二年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
平成二十二年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
平成二十二年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
平成二十二年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
平成二十二年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
平成二十二年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
平成二十二年度東京都農業改良資金助成会計予算
第九 第九号議案
平成二十二年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
平成二十二年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十一 第十一号議案
平成二十二年度東京都と場会計予算
第十二 第十二号議案
平成二十二年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十三 第十三号議案
平成二十二年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十四 第十四号議案
平成二十二年度東京都都市開発資金会計予算
第十五 第十五号議案
平成二十二年度東京都用地会計予算
第十六 第十六号議案
平成二十二年度東京都公債費会計予算
第十七 第十七号議案
平成二十二年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十八 第十八号議案
平成二十二年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第十九 第十九号議案
平成二十二年度東京都病院会計予算
第二十 第二十号議案
平成二十二年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十一 第二十一号議案
平成二十二年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十二 第二十二号議案
平成二十二年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
平成二十二年度東京都港湾事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
平成二十二年度東京都交通事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
平成二十二年度東京都高速電車事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
平成二十二年度東京都電気事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
平成二十二年度東京都水道事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
平成二十二年度東京都工業用水道事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
平成二十二年度東京都下水道事業会計予算
第三十 第三十号議案
東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 第三十一号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第三十二号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第三十六号議案
平成二十一年度分の都と特別区及び特別区相互間の財政調整の特例に関する条例
第三十七 第三十七号議案
東京都知事等の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
東京都公営企業の管理者の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
東京都附属機関の構成員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
職員の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十五号議案
職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十六号議案
非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十七 第四十七号議案
東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第四十八 第四十八号議案
東京都人事委員会委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十九号議案
東京都選挙管理委員の報酬及び費用弁償条例の一部を改正する条例
第五十 第五十号議案
東京都選挙管理委員会関係手数料条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
東京都監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十三号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
東京都固定資産評価審査委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
東京都固定資産評価員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十六号議案
東京都収用委員会委員等の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十七号議案
東京都美術館条例の一部を改正する条例
第五十八 第五十八号議案
東京都写真美術館条例の一部を改正する条例
第五十九 第五十九号議案
学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第六十 第六十号議案
学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
東京都教育委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第六十三 第六十三号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十五号議案
東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十七号議案
東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第六十九 第六十九号議案
東京都高齢者円滑入居賃貸住宅登録手数料条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
東京都原子爆弾被爆者等の援護に関する条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十二号議案
心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
東京都国民健康保険調整交付金条例の一部を改正する条例
第七十四 第七十四号議案
東京都児童福祉施設条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十五号議案
東京都身体障害者更生援護施設条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十六号議案
東京都知的障害者援護施設条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
東京都障害者支援施設等に関する条例
第七十八 第七十八号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例の一部を改正する条例
第八十 第八十号議案
東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
第八十一 第八十一号議案
東京海区漁業調整委員会委員及び東京都内水面漁場管理委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第八十三 第八十三号議案
東京都営空港条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
東京都労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
東京都駐車場条例の一部を改正する条例
第八十六 第八十六号議案
東京都道路占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第八十七 第八十七号議案
東京都霊園条例の一部を改正する条例
第八十八 第八十八号議案
東京都葬儀所条例の一部を改正する条例
第八十九 第八十九号議案
東京都河川流水占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第九十 第九十号議案
東京都公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例
第九十一 第九十一号議案
インターネット端末利用営業の規制に関する条例
第九十二 第九十二号議案
警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第九十三 第九十三号議案
東京都公安委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第九十四 第九十四号議案
警視庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第九十五 第九十五号議案
東京消防庁の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第九十六 第九十六号議案
東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
第九十七 第九十七号議案
東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第九十八 第九十八号議案
火災予防条例の一部を改正する条例
第九十九 第九十九号議案
東京都美術館(二十一)改修工事請負契約
第百 第百号議案
東京都子ども家庭総合センター(仮称)(二十一)新築工事請負契約
第百一 第百一号議案
都立江東地区第二養護学校(仮称)(二十一)改築工事請負契約
第百二 第百二号議案
東京都美術館(二十一)改修電気設備工事請負契約
第百三 第百三号議案
東京都美術館(二十一)改修空調設備工事請負契約
第百四 第百四号議案
環二朝潮運河橋りょう(仮称)下部工事(二十一 一─環二築地)請負契約
第百五 第百五号議案
包括外部監査契約の締結について
第百六 第百六号議案
東京都と神奈川県との境界にわたる町田市と相模原市との境界変更について
第百七 第百七号議案
境界変更に伴う財産処分に関する協議について
第百八 第百八号議案
全国自治宝くじ事務協議会への相模原市の加入及びこれに伴う全国自治宝くじ事務協議会規約の一部の変更について
第百九 第百九号議案
土地の買入れについて
第百十 第百十号議案
平成二十二年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百十一 第百十一号議案
平成二十一年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百十二 第百十二号議案
平成二十一年度東京都一般会計補正予算(第四号)
第百十三 第百十三号議案
平成二十一年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百十四 第百十四号議案
平成二十一年度東京都公債費会計補正予算(第一号)
第百十五 第百十五号議案
東京都緊急雇用創出事業臨時特例基金条例の一部を改正する条例

   午後一時一分開議

○議長(田中良君) これより本日の会議を開きます。

○議長(田中良君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(田中良君) 昨日に引き続き質問を行います。
 百番いのつめまさみさん。
   〔百番いのつめまさみ君登壇〕

○百番(いのつめまさみ君) 国外で大地震被害が発生しています。地震をとめることはできませんが、命を奪われないよう、緊急に日本でも取り組みが必要です。
 知事は所信表明の中で、緊急輸送道路沿道建物について、戸別訪問して耐震化を働きかけるローラー作戦を対象地域を拡大して展開いたしますと、地震から都民を守る強い意思を述べられました。
 耐震化の必要な建物は耐震基準改正前に建築されたものです。対象建物の所有者は、耐震改修促進法第六条の規定により、耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を行うよう努めることとされています。
 都では、平成二十年四月から、間接補助金制度を、耐震診断、補強設計、耐震改修に開始いたしました。台東区と私の地元新宿区では、診断と設計に対し助成をしています。診断、設計、改修すべて助成は、中央、港、墨田、大田、世田谷、渋谷、杉並、荒川、練馬、足立、葛飾、江戸川、江東、武蔵野市です。診断のみは、千代田、文京、品川、中野、豊島です。診断と改修に助成は、目黒、板橋です。この二十二区と一市以外は残念ながら助成制度を実施していないので、国や都の助成の受け皿がありません。新宿区の助成実績は、二十年度はゼロ、二十一年度は診断に一件です。新宿区は、実績が少ない理由を改修への助成制度がないからと判断し、来年度から始めると発表しました。
 一刻も早く市区町村に助成窓口を開いてもらわなければ、ローラー作戦の成果も上がらないと思います。私たち議員も、自治体に働きかけ、汗をかかなくてはなりませんが、助成なくして知事のおっしゃる耐震診断の義務づけも困難です。
 そこで伺います。ローラー作戦と助成制度についての見解をお聞かせください。
 新宿駅東口のビルオーナーから、建てかえしたいが都駐車場条例の駐車場の附置義務がネックになっていると聞きました。新宿区周辺では平置き駐車場設置は不可能です。地下か屋上に駐車場を設置すると、車用エレベーターやスロープが必要になり、営業スペースを脅かしてしまいます。銀座や大・丸・有地域では、地域ルールにより駐車施設整備の特例を受け、建てかえが促進され、新築ビルがふえました。このことからも、駐車場附置義務がネックになっていることがよくわかります。しかし、地域ルールづくりは銀座で五年かかっており、なかなか容易ではありません。
 知事は、駐車場附置義務は渋滞解消のため必要といわれていますが、新たな駐車違反の取り締まり制度により、まちから違法駐車は減少しています。都民の命を守ることを急ぐのであれば、附置義務をいっとき緩和したらどうでしょうか。見解を伺います。
 また、平成二十三年に築三十年を経過するマンションは全国で約百万戸に達しますが、その中には既存不適格物件も多いと聞いています。建てかえ前より広い面積がとれる、還元率一〇〇%を超える物件もわずかと推測され、建てかえ物件の世帯主の平均年齢は七十歳といわれ、早くて二年間の一時転居資金が重い負担になっています。仮住まいの問題を解決しないと、マンションの建てかえは促進できません。マンションの建てかえにより地震に強いマンションにしていくための施策をお聞かせください。
 次の質問に移ります。
 新宿区下落合の目白通りと新目白通りの間、野鳥の森公園、おとめ山公園があり、タヌキや絶滅危惧種の猛禽類のツミの生息が確認される地域に、タヌキの森と呼ばれる屋敷跡地がありました。樹齢二百年のケヤキが茂るこの土地は旗ざお型です。さおの幅は、狭い部分は四メートル、長さ三十七メートル、旗の南側はがけで、都河川部が土砂災害危険箇所としています。この土地にはマンション建設は不可能、そして、都建築安全条例の規定により、千平方メートルを超える建築物はつくれません。
 平成十六年十一月、地上三階三十戸の二千八百メートルの重層長屋を建設する計画が発表されました。住民は、トラスト基金を設立し、土地価格の三分の一に当たる二億五千万円を集め、五億円新宿区の負担で公園整備をという要請を区長に行いました。平成十六年十二月二十二日午後三時のことです。
 ところが、何とこの日の午前九時、都建築安全条例第四条三項の特例を使っての認定処分が区長名で出ていたのです。安全認定の事案決定区分は課長決定でしたから、新宿区長は認定交付を交付前に知らなかった可能性があります。面会直前の認定交付はとても偶然とは思えません。認定がおりた途端、業者は土地の価格を三億円ほどつり上げ、買い取りの交渉は成立しませんでした。緑の保全が難しく、わらをもすがる思いで住民は、平成十七年三月二十五日に、都知事あてに下落合旧遠藤邸の屋敷と森の保存を求める要望書を出しました。可能であれば隣地からご視察をいただきたい、無礼なお願いと存じますが、保存、公園化に対し、何とぞご支援賜りたくお願い申し上げますと切実な思いが込められています。
 その後、新宿区建築審査会は住民が何度訴えても審査請求を却下し、とうとう住民は東京地裁へ提訴しました。それにもかかわらず、平成十八年一月三十日、業者は建築確認の申請を提出、平成十八年二月八日に、建築主事である建築課長は、業者に建築基準法第六条五項の規定による期限内に確認できない旨の通知を出し、法適合性に疑義があるとしています。この建築課長は東京都から人事交流で新宿区に行っており、三月三十一日に東京都に戻ってしまいました。その後、六月三十日、消防同意が求められ、係争中であるのに判決を待たず、七月三十一日に建築確認がおりるのです。もし東京都に戻った建築課長が新宿区にいたら、事態は変わっていたかもしれません。
 平成十八年九月二十日の新宿区議会の議事録を見ますと、災害発生時、新宿区は責任がとれるかの質問に対し、都市計画部長は、消防署の指導により、建物外周辺部に連結送水管を設けており、ご指摘の地域の安全性は十分確保されていると考えておりますと答えています。この都市計画部長も都から行っていた方でした。
 その後、平成二十一年一月十四日に、東京高裁判決は原告である周辺住民の全面勝訴、同十二月十七日、最高裁判所は新宿区の訴えを棄却する判決主文がいい渡され、特例認定後五年目にして住民側の完全勝利で決着したのです。現在、重層長屋の建築工事は七割完成し、とまっています。区民は、自分たちの税金が損害賠償に使われるのではないかとタヌキの森に注目をしています。
 これまで長期間、東京都と自治体で人事交流が行われています。タヌキの森のときも、建築課長と都市計画部長が新宿区へ行っていました。建築主事は責任が重い職で、自治体のプロパーで充てるべきです。期間限定の人事交流には適さないと思います。また、再開発絡みでは、都市計画部長が都に戻ると、再開発の話が二年前の振り出しに戻ってしまうとの声が聞こえます。都の人事交流への見解を伺います。
 この皆さんから出された知事への要望書に対して、視察はおろか返事もなかったとのことです。知事はこの要望書のことを覚えていますか。見解をお聞かせください。
 重層長屋の消防同意がどのような内容だったのか、建物外周辺部に連結送水管を設けるよう指導されたのかどうかも含めて伺います。
 次に、広告つきバス停留所について質問いたします。
 バス停留所に上屋を設置し、広告をつけ、広告収入で維持管理する広告つきバス停留所の整備が平成十九年度より始まりました。快適性、利便性及び景観の向上、夜間も明るく安全で、評価をいたします。岡山市、横浜市など、他の都市はすべて民間委託で事業化しており、私も、都は利用料金の資本投下なしで進めるべきと主張してまいりました。なぜなら、自治体が行うと設置費用が高くなりますし、広告販売に影響を与えるからです。
 今パネルでお見せいたしますが、これ、ごらんになってください。試作した、最初につくった第一庁舎前は何と一千三百万円、小さな住宅が建つ価格です。次は、十九年度の落札価格が一千万円、最近は五百万円と節約の努力が見えます。(「見えないよ」と呼ぶ者あり)見えても余り変わりばえがしないので大丈夫です。しかし、民間の設置費用はもう少し──これも民間です。これも民間ですが、もっと安いといわれています。
 三年間で百基整備の予定でした。現在までに五十一基が完成し、三月中に急いで二十九基が整備され八十基と、二十基足りません。交通局は、歩道幅員の制約が厳しいことが設置のおくれといっています。私の調査では、平成十九年に四十カ所、設置可能か否か、交通管理者に実査を依頼したところ、二十七カ所には了解、十三カ所はノー、平成二十年度は実査ゼロ、二十一年は、二月に七十五カ所実査で、了解が六十四、ノーは十一、九月には二十五カ所実査で、了解が八、ノーが一、了解を得られなかった理由は、交差点が近い、自転車通行区分であったなどですが、バス停が臨時移動中で実査ができなかった箇所があったと聞いています。交通局は、交通管理者に実査を依頼する前に、もっと局内でしっかり調査をする必要があります。この事業の進捗状況の見解を伺います。
 当初、広告販売稼働率を八〇%、設置費用は五年で回収できるとしていたのに、二十年度は六二%、二十一年度は五〇%の見込みとなっています。景気の悪化が原因と思われますが、このままでは回収におくれが生じます。基数増加により、広告販売価格が現在の販売方法だと高くなり、稼働率が下がる懸念があります。交通局は改善策を検討されていますか。見解を伺います。
 十九年度の公営企業委員会で私が、上屋の維持管理はだれが行うかに対し、交通局が民間事業者に委託しましてと答弁されましたが、現在は電通に清掃委託まで含めて管理委託しています。四年目からの広告料収入を一億九千二百万円と仮定し、販売手数料二〇%で三千八百四十万円、このうち八〇%が電通による販売です。そして、管理委託手数料は、清掃委託料と合わせて四千五百九十万円、電通には毎年七千六百六十二万円ずつ入っていく計算になります。オリンピック招致で都と電通の関係を好ましく思っていない都民がいます。一社だけに頼らない広告販売に努力すべきと考えます。今後の広告販売についての見解を伺います。
 最後に、築地市場の移転問題について伺います。
 石原知事はさきの施政方針で、もとより豊洲への市場移転は移転地の土壌汚染の除去が前提だと述べ、世界に誇る日本の最先端技術を活用した汚染対策の実験結果を踏まえ、都民、国民や市場関係者が安心できる十分な対策を着実に講じると述べました。
 技術会議の結果によって、豊洲新市場予定地における土壌汚染対策経費は五百八十六億円と見積もられています。また、参考人質疑では、専門家会議の平田先生が、恐らく液状化対策をやるときに、かなりの部分、有楽町層の中まで入らざるを得ないと答えています。さらに、技術者会議の安田参考人は、粘土層の下にある砂というのは、本当に液状化するかどうかは実際に調査してみないとわからないと答えています。
 そこで、五百八十六億円の土壌汚染対策経費は今後増大するおそれはないのか、その妥当性について見解を伺います。
 また、豊洲新市場の事業費四千三百十六億円のうち、建設費用を九百九十億円としていますが、この建設費についても、今後大きくふえることはないのか懸念されます。そもそも東京都は、豊洲の建設費について、平成十八年十月十七日の経済・港湾委員会での説明の際には九百二十七億円と説明していましたが、それがどうして九百九十億円に膨らんでしまったのでしょうか。
 そこで伺いますが、この九百二十七億円と九百九十億円の違いは何なのか、また、九百二十七億円と九百九十億円との積算時で積算方法に違いがあるのか、違うのであれば、それぞれの積算根拠の算出方法の見解を伺います。
 また、石原知事は、築地市場は老朽化が激しく、わずかな地震の揺れでも屋根の一部が落下することまでも発生していると繰り返し述べています。私は、もとより築地市場の老朽化を否定するつもりはありません。しかし、例えば、平成二十年三月に東京都がまとめた、東京都が所有する防災上重要な公共建築物の耐震性に係るリストによると、築地市場ではIs値が最も低いのは水産物部第一卸売業者売り場の〇・四ですが、これより耐震性が低い施設もあります。私の選挙区の淀橋でも、低い〇・三八であり、現在、リニューアル事業が着実に進んでいます。
 移転の是非に関係なく、現在の築地市場は引き続き市場としての役割を求められています。殊さら危険性を強調するよりも、しっかりと耐震対策を実施していくことが築地市場にとってまず何より必要であると考えますが、見解を伺います。
 答弁によっては再質問を留保させていただき、質問を終わります。(拍手)
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) いのつめまさみ議員の一般質問にお答えします。
 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、耐震化のためのローラー作戦と助成制度についてでございますが、いわゆるローラー作戦は、緊急輸送道路沿道におきまして、戸別訪問等により、建物所有者に耐震化に向けた主体的な行動を促すものでございます。耐震化を促進するためには、ローラー作戦の取り組みとともに、所有者が費用負担の軽減を図る助成制度を活用できるようにすることが重要でございます。
 このため、都は、助成制度を設けていない区市に対して早期の制度化を要請した結果、平成二十年度の十三区市から、今年度は二十三区市に増加しております。今後とも、区市町に対し制度の働きかけを行うとともに、ローラー作戦の取り組みを強化してまいります。
 次に、建物の建てかえと駐車場の附置義務についてでございますが、建てかえが進まない要因といたしましては、資金不足、権利関係の錯綜、借家人への対応などさまざまなものが挙げられます。一方、駐車場の附置義務は、建物から発生する駐車需要に対応することを目的としておりまして、東京の弱点でございます交通渋滞の緩和に必要なものであるため、附置義務を一時的であっても一律に緩和することは適切ではないと考えております。
 なお、新宿区では、新宿駅周辺地区につきまして、駐車場の附置義務に関する地域ルールの策定も視野に入れ、駐車場整備計画の改定に向けた検討を既に始めております。
 次に、地震に強いマンションにしていくための施策についてでございますが、昭和五十六年以前の旧耐震基準のマンションにつきましては、耐震診断を実施し、耐震性が不十分な場合には耐震改修や建てかえを進める必要がございます。都は、耐震診断や耐震改修への助成のほか、建てかえに際して共用部分の工事費等の一部を助成しております。しかし、建てかえには専門的知識が必要であることや、区分所有者の合意形成が困難であることなどの課題がございます。
 そのため、都は、ガイドブックによる管理組合への情報提供や、区市と連携した相談体制の整備、仮移転先としての都営住宅の提供等さまざまな支援を行っております。今後とも、これらの取り組みにより、マンションの耐震性の向上を図ってまいります。
 最後に、平成十七年三月二十五日付の要望書への対応についてでございますが、この要望書は、下落合にある古い民家の屋敷と森の保存のために、当該土地の公園化について都の支援を求めたものでございます。
 内容について調査いたしましたところ、区が公園化を視野に入れ、所有者と土地購入の交渉を進めているとのことでございました。十ヘクタール未満の公園につきましては区が設置管理を行うこととなっておりまして、この土地は〇・一八ヘクタールの規模であることから、新宿区で対処することが適当であると判断したものでございます。今後も、こうした都民からの要望に対しましては適切に対処してまいります。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 都区間の人事交流につきましてお答えさせていただきます。
 都区間の人事交流は、昭和五十年以降、配属職員制度、この制度は、当時の都区制度におきましては、区は都の内部的団体として位置づけられておりましたので、都の職員を、身分は都に属したまま、区長の命を受けて区の業務に従事させるための制度でございましたが、この制度の廃止に伴いまして、都区行政の連携強化のために実施してきたものでございます。特に技術系の管理職につきましては、区の人事状況も踏まえまして、区からの要望に基づきまして――この点を強調したいんですけれども、区からの要望に基づきまして人材を派遣しております。
 お話のケースのように、自治体が建築確認を行うためには、建築主事という特別の資格を持つ職員が必要でありまして、こうした体制が整わない区には都からの人事交流が不可欠でございます。また、部長任用資格を満たす技術系の職員が区にいなければ、部長級の交流も必要となってきます。今後とも、各区における人材の育成状況等を踏まえまして、都区双方の行政運営が円滑に行われるよう、人事交流を適切に進めてまいります。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

○消防総監(新井雄治君) 重層長屋の消防同意についてでありますが、消防同意は、建築主事などが行う建築物の新築、増築の確認などに対しまして、消防機関が、消防法令を初めとする防火に関する規定について、その適合状況を審査する制度であります。
 本件は、防火に関する規定に適合していることから同意することとし、区の建築主事へ通知をしております。その際、連結送水管の設置指導は行っておりませんが、当該建築予定地は消防活動が困難な地域でありますことから、敷地内の消防活動を考慮した対策を建築主に指導していただきたい旨の意見書を付したものでございます。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

○交通局長(金子正一郎君) 広告つきバス停留所に関する三点のご質問にお答えします。
 まず、事業の進捗状況についてですが、交通局では、平成十九年度から三年間で百基を目標に広告つきバス停留所の整備を進めてまいりました。しかしながら、東京の交通事情から、他都市に比べてより広い歩道幅員が求められたこと、設置に支障となる地下埋設物が多かったことなどから、本年度末での設置見込みは合計で八十基となっております。残りの箇所につきましても、現在、関係機関との協議を進めており、早期の目標達成に向け努力をしてまいります。
 なお、設置費用につきましては、当初は、極めて高い品質を追求した試作品のデザインや材質を可能な限り踏襲したため、工事費を含め、一基約一千万円でしたが、平成二十年度に躯体の材質の見直しなど大幅なコストの縮減を行い、一基約五百万円と低廉化を図ったところでございます。
 次に、広告の稼働率の改善策についてですが、稼働率は、平成二十年度の六二%から、平成二十一年度は五〇%となっております。これは、世界的金融危機の影響で景気が低迷し、広告業界全体の売り上げが大きく減少したことが主な原因であると考えております。
 なお、設置費用を削減したことにより、仮に稼働率が平成二十年度と同程度の六〇%であった場合でも、耐用年数の二十年を大幅に下回る八年で費用回収できる見込みでございます。今後、新しい広告媒体である広告つきバス停留所をより一層PRするなど販売努力を重ね、稼働率の向上と収益拡大を図ってまいります。
 最後に、広告販売施策についてですが、広告つきバス停留所は、首都東京の景観やまち並みにふさわしい新しいデザインの停留所と、それにマッチした質の高い広告展開を目指すものでございます。この目的を達成するため、交通局では、平成十八年度に、デザインのクオリティーの高い広告主を確保できること、継続的な媒体価値の維持向上が図れること、収益性が高いことなどを審査基準とし、広告代理店六社の参加を得て企画コンペを行った結果、その中で最もすぐれた提案をした株式会社電通が選定されたものでございます。広告の販売につきましては、選定された代理店が半数の広告枠を優先販売し、残りの広告枠については、交通局の三十三社の指定代理店すべてが販売可能となっております。広告販売実績の約八〇%が株式会社電通となっておりますのは、こうした代理店間の競争の結果であると考えております。
 なお、ご質問の中で、ある種の仮定を置いて計算された金額を述べられましたが、受託者には、あらかじめ契約で定めた適正な手数料と実費など必要経費を支払うこととしております。
 今後も、引き続き多様な販売方法を設定するなど、代理店各社と協力し、広告販売に努めてまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

○中央卸売市場長(岡田至君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、土壌汚染対策経費の妥当性についてです。
 豊洲新市場予定地の土壌汚染対策経費は、技術会議で定めた準備工事、汚染地下水対策、汚染土壌対策、液状化対策、埋め戻し、盛り土及び地下水管理の対策工事ごとに算定をしております。
 算定に当たりましては、都の積算単価などと、詳細調査、土壌ボーリング調査、地質調査、地下水位調査などの結果により、汚染土壌を汚染物質の種類に応じて分類し求めた処理土量を用いております。
 また、液状化対策につきましては、地質調査により、液状化の可能性がある位置を確認した上で、盛り土など液状化しない層の厚さ、不透水層の位置などから工法や対策範囲を定めております。
 新市場予定地の液状化につきましては、先日の参考人招致で、専門家の方から、粘土層の下にある砂というのは、本当に液状化するかどうかというのは実際に調査してみないとわからないが、普通の感覚からいくと余り液状化することはない、万が一液状化したとしても、表層に液状化しない層が厚くあるので、地表に噴出することはないとの意見をいただいており、対策範囲を変更する必要はないと考えております。
 このように、土壌汚染対策経費は、新市場予定地に対する詳細な調査の結果や専門家の科学的知見に基づき積算しており、この積算の考え方に大幅な変更がない限り変動するおそれはなく、妥当なものと考えております。
 次に、豊洲新市場の建設費についてです。
 建設費九百二十七億円は、平成十八年に、PFI事業費を算定するため、基本設計相当の施設計画に基づき東京都が定めた単価及び市場単価などを参考に積算したものです。
 また、建設費九百九十億円は、平成十八年と同様の積算方法で算出したものであり、この建設費の増加は、建築物の断熱性能の向上や自然エネルギーの利用等の環境対策及び雨水貯留や維持管理等を考慮した基礎構造の見直しなどによるものです。
 豊洲新市場の建設費につきましては、極力コストの縮減を図りながら、市場業界との協議による施設計画の変更等を踏まえて、今後の基本設計及び実施設計において確定してまいります。
 最後に、築地市場の耐震対策についてです。
 築地市場は、開場から七十年以上が経過し、老朽化が進み、耐震性のほか、建築躯体や給排水設備の劣化など、安全面で多くの問題を抱えております。
 都では、建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づきまして、これまで、都有施設で千平米以上かつ三階建て以上の建物を対象に耐震診断を行い、耐震対策を実施してまいりました。
 築地市場では、耐震診断の結果、耐震対策が必要な十棟につきまして、市場業務に支障のない方法でできる限り耐震改修工事を行ってまいりました。
 その結果、四棟につきましては耐震基準を満たすことができましたが、六棟につきましては、市場業者の仮施設への移転が必要なこと、あるいは卸売場が壁で分断されてしまうことなど、市場業務に深刻な影響を及ぼすことから、耐震基準を満たす工事は実施できませんでした。
 このように、老朽化、狭隘化の著しい築地市場では、市場業務を続けながらの耐震対策には限界があり、一刻も早く移転整備をすることが必要と考えております。

議長(田中良君) 九十二番三原まさつぐ君。
   〔九十二番三原まさつぐ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○九十二番(三原まさつぐ君) 久しぶりに登壇の機会をいただきましたので、知事並びに関係局長、よろしくお願いします。
 最初に、公有財産の有効活用の観点からお尋ねをしたいと思います。
 東京は高齢化が急速に進んでおり、都民からも高齢者対策の要望がたくさん寄せられております。よって、高齢者専用の住まいに関する施策が東京都の喫緊の課題となっております。
 こうした中、東京都は昨年プロジェクトチームを発足させ、報告書を出されました。その内容を要約して申し上げれば、安否確認等が確保された高齢者専用の賃貸住宅を約六千戸整備することと、都独自の都型ケアハウスを二百四十カ所整備する、この二つのことを報告しております。そして、この二つのモデルとも、東京都の支援を受けて民間での整備に期待をしているわけでございます。
 その点、東京都は、公有地の既存ストックを有効に活用すると再三述べておりますけれども、果たして都民が期待するように公有財産が活用されるのか、私は少々不安を感じています。
 そこで、私はあえて提案をいたしますが、約二十六万戸ある都営住宅を活用して、その四%、約一万戸を高齢者専用のケア住宅に整備し直してみたらどうか。そうすれば、このプロジェクトチームの目標は達成できるのではないかと思います。
 現在、ケアつき住宅として、東京都はシルバーピアというものを約四千三百戸供給していますけれども、なかなか供給が拡大されません。
 そこで、福祉保健局と都市整備局が強力に連携をして運営を充実すれば、都営住宅一万戸への拡大ができると思いますが、いかがでしょうか。
 また、都営住宅の建てかえ時に高齢者への対応策をしっかり取り込んでいくべきだと思いますが、関係局長の見解を伺います。
 また、公有財産の活用についてさらにお尋ねしますが、平成十二年に清掃事業を各区に移管いたしました。その節、関連の土地建物を無償で各区に譲渡しましたが、その後十年間、各区は清掃事業の合理化やごみの減量に努力をしまして、その結果、移譲された土地や建物については、一部を使わなくても業務が遂行できるようになってきています。
 そこで、この空き地や空き家を各区が有効に活用しようとすると、東京都との契約書で、原則二十年間は清掃事業以外には活用できないということになっております。これでは、東京都がいうところの公有財産の有効活用に逆行しているのではないか、こう私は思うわけです。
 そこで、私は、調査してみましたところ、高齢者施設とか子育て支援の施設に使いたいと希望する区がありますので、東京都は特別区の事情を十分把握され、見直しへの対応をされるべきだと思いますが、見解を伺いたいと思います。
 次に、土地区画整理事業についてお尋ねします。
 区画整理は、良好な市街地の形成のため、都や区市が直接施行するものと、地権者がみずから施行者となって実施しているものがあります。その事業の実施に当たっては国の補助金が不可欠であり、今年度も約七十億円が東京に出されております。
 しかし、政権交代で公共事業費の大幅削減の動きもありまして、二十二年度の国費が非常に不透明な状況だと仄聞しています。もし補助金が削減されますと、東京都や財政規模の小さい区では事業が大変難しいことになります。
 そこで、都議会では超党派で区画整理促進議員連盟をつくっておりますが、特に民主党の議員の皆さんのご協力をお願いしたいと思いますし、国費の確保の状況は、どういうふうに取り組まれているか、局長に伺いたいと思います。
 続いて、昨日も話題になりましたが、駐車規制の緩和についてお尋ねをいたします。
 民間の駐車監視員制度が導入されて以降、交通渋滞の緩和や交通事故防止にはそれなりの成果が見られますけれども、反面、不況にさらされている小零細企業が運送手段として非常に支障を来しているというのも事実でありまして、駐車禁止規制の緩和を求めることを我が党の桜井議員が昨年の第三回定例会でいたしております。
 これを受けて警視庁は作業を進めているとのことでありますが、都民や周辺住民の理解が得られるようにしっかり検討されていると思いますが、その取り組み内容についてお伺いをいたします。
 また、自民党として新たな提案をこの場で申し上げておきたいと思いますが、都民は日常生活において、真にやむを得ない事情で極めて短時間の駐車をしたいなと思っていることがあります。この要望にこたえるべく、適切な場所に短時間利用のパーキングメーターを設置することを提案しますが、警視総監、いかがでしょうか。伺います。
 次に、東京は世界でも有数の環境衛生の確立したまちであるといわれております。これは、関係業界の皆さんの努力と行政との連携からそういう成果が出ていると思います。
 しかし昨今は、規制緩和で、独自の営業を展開する人も多く、例えば、理容、美容ともにカットだけを行うという店があるそうです。そして、この店には洗髪設備がない場合があります。これは衛生管理上極めて問題だと私は思いますので、条例で義務づけられるよう強く要望します。
 また、美容設備を整えた店がフリーの美容師に面貸しと称して時間単位で貸し出しているといいますが、こうした美容所には、働く全員の美容師の登録と管理美容師の配置が義務づけられていますが、実際にどうなっているか、実態の状況を教えていただいて、次の質問に移りたいと思います。
 今、地方自治体が最も関心を持つべきことは、永住外国人への地方参政権の付与の問題であります。
 これは国や地方自治体のあり方を左右する極めて重大な問題であるにもかかわらず、しっかりした内容を国民に示すことなく、国会において法制化をするなどともてあそぶことは地方に対して失礼千万だ、こう私は思っています。
 日本大学の百地教授のお話によれば、地方参政権の付与の学説は部分的許容説というそうで、これを提唱された学者は、誤りであったと撤回の発言をしておられるそうでありますから、結果は憲法違反だ、こういうことでございます。
 さらに、平成七年二月の最高裁判決の本論にかかわりのない傍論部分においても、この提言者は、この傍論を重視するのは俗論であると述べておられるそうでありますから、以上の点からも、今や永住外国人への地方参政権の付与は論理的崩壊を来している、こう申し上げておきます。
 さらに、例えば韓国での永住日本人の、地方選挙権を付与されている人は十人とも五十人ともいわれていますが、日本における永住の韓国・朝鮮の人は、東京で約十万人、全国では約四十七万人と推測をされますが、これはとても相互主義という状況ではありません。
 したがって、この案件は、国会議員の問題ではなく、新聞にも報道されていますけれども、千六百十五の地方自治体の首長と議員が真剣に議論をすべき問題だ、こう思いますが、知事の見解を伺います。
 次に、私は、都議会自民党で八ッ場ダムの建設推進議員連盟の会長をいたしておりまして、あわせて一都五県の会長も仰せつかっておりますが、八ッ場ダム建設推進の立場から伺います。
 前原大臣は就任直後に、マニフェストに書いてあるから中止、こう発言されましたが、その後対応を変えて、ことしの夏ごろに八ッ場ダムを初め個々のダムの検証をする、こういっておられますが、これは全然手順が逆で、マニフェストに書く前に検証しておくのが常識ではないか、こう私は思います。
 さらに、特定多目的ダム法では、廃止するときは、あらかじめ関係行政機関の長に協議するとともに、都県知事の意見を聞かなければならない、こう定めておりますのに、大臣は中止を宣言しておきながら、地元の方々や関係都県等の理解を得るまでは法律上の手続をしない、こう矛盾したことをおっしゃっていますから、事態が大混乱をするわけであります。
 都議会自民党は八ッ場ダムの早期完成を求めていますが、改めて知事の決意のほどを伺います。
 ところで、八ッ場ダムの話になると、建設反対派の人は必ず、東京で使う水は年々少なくなっているのでダムは要らない、こうおっしゃるのでありますが、これは間違いであります。
 この二十年間、浄水場から配水される量は減少の傾向にありますが、これは都が漏水防止に努力をしたからであります。一方、都民が使う生活用水は、長期的には増加の傾向を保っております。今後は漏水率の改善は余り見込めませんので、使用水量の増加に伴って配水量は増加すると考えておりますが、見通しを伺います。
 あわせて、利根川系及び荒川水系の給水範囲、安定水量に果たす八ッ場ダムの役割についてお伺いをいたします。
 最後に、石原知事に伺いますが、都民の生命と財産を守るという強い決意から、防災訓練を大変日常的に努力しておられ、特に自衛隊との連携をしっかりしておられますことは大変適切なことだと思っておりますが、一方、自衛隊の方も、あらゆる事態に、出動に備えて訓練をしています。
 たまたま先般、日米共同訓練の開始式で、自衛隊の連隊長から、同盟関係は、信じてくれというような言葉では維持できるものではないという発言があり、防衛省は慌てて処分はしたようでありますが、しかし、この発言は隊員に対する激励ですから、処分は言葉狩りのような気がいたしますが、知事のご見解はいかがか伺って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 三原まさつぐ議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、永住外国人への地方参政権の付与についてでありますが、私は、外国人への地方参政権付与には絶対に反対であります。
 地方の時代、地方主権の時代といわれる今日、地方の行政が持つ機能が国家の命運を左右する問題が多々あります。例えば基地の問題あるいは原発の設置。例えば、下北半島の六ヶ所村という小さな小さな村に設けられた、日本の原子力行政にとって不可欠のあの再処理の設置。このときも賛否両論ありましたが、いずれにしろ、こういった国家的な課題を外国人が左右することがあっては絶対にならないと思います。全国知事会でも、これは十分論議して反対をすべきであるということを申し込んでおります。
 みずからの意思を政治的に反映させたいというのならば、そうした外国人は、条件がかなうならば速やかに帰化をしてもらいたい。国政は、参政権という国家のありさま、国民主権の地方自治にかかわる事柄の重みをわきまえ、現実感覚、現場感覚を持ってこの問題を扱うべきであります。
 なお、今後の人口減少を踏まえても、次なる我が国の発展をいかに図るかを考えるならば、私は、かねてからいっておりますが、国家の大計に立った、帰化の手続の合理化を含めて新しい移民政策をこそ議論すべきだと思っております。
 次いで、八ッ場ダム事業の推進についてでありますが、国土交通大臣は就任直後に、八ッ場ダム建設を中止するといったものの、関係する一都五県や水没地の住民等からは強く異論、反論が出されたことから、昨年末から有識者会議を設置してこの問題の再検証を進めております。
 それならば、ダム建設の中止方針を最初にマニフェストに掲げるに至った理由、根拠は何だったのか。このことを埼玉県の上田知事が大臣に強く迫りましたが、答えは全くありませんでした。再検証というなら、実はこれまで一度も検証されていなかったことでありますな。
 一方、一都五県の知事は、利根川流域における治水及び利水上の効果、事業の進捗状況等を明らかにして、八ッ場ダムが下流の都県にとって必要不可欠な施設であることを主張してきました。
 大臣も今では、予断を持たずに再検証すると明言しておりますが、これまで蓄積された科学的知識に基づき専門家がきちんとした議論をすれば、関係自治体を初め、だれもが納得できる結論はおのずと得られると考えております。
 国が策定した八ッ場ダムの建設計画は当然現在も存続しています。国はこれを計画どおり推進する責務があります。引き続き、関係県の知事と一致団結し、国に対して一刻も早くダムを完成させるよう強く要請をしてまいります。
 次いで、自衛隊連隊長の発言についてでありますが、我が国の安全保障の根幹である日米同盟を現場で維持し、現実に機能させることは、美辞麗句では到底なし得るものではありません。場合によっては、日米の両軍が、軍人が体を張って、生命を賭してともに戦うケースもあり得るわけであります。
 自衛隊連隊長の発言は、身命を賭して第一線を預かる人間の崇高な使命感、強い責任感の発露ではありませんか。むしろ、最高司令官たる鳩山首相のこれまでの言動からは、この国をいかに守るかということについての見識、気概が一向に感じられません。
 また、言霊という言葉に表象されるように、日本人は言葉を非常に大事に扱ってきましたが、鳩山首相の信じてくれという言葉は、彼の言動から見ると、きょういったことがあすにもすぐ変わる、こういった事態を見ましても、余りにも希薄であると思います。
 鳩山政権には、国家と国民を守るべく、確固たる戦略に立った外交、防衛政策を求めたいと思います。
 他の質問については、警視総監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

○警視総監(池田克彦君) 駐車禁止規制の見直しなど、二件のご質問にお答えいたします。
 初めに、駐車禁止規制の見直しの取り組み内容と見通しについてであります。
 荷さばき車両等に配意した駐車規制の緩和に関しましては、平成十八年六月の新駐車対策法制が施行される以前から、交通実態等を踏まえためり張りのきいた駐車規制となるよう見直しを行い、これまでに、築地市場、日本橋問屋街など十三地区において、貨物自動車等を対象に段階的に規制緩和を実施してきたほか、裏通り等における駐車規制の解除を行ってきたところでございます。
 しかしながら、さらなる規制緩和の要望があることを受け、昨年、都内一円を調査いたしました結果、荷さばき等の需要が多く緩和の必要性が高いと思われる約四十区間が浮上し、現在、規制緩和の可否等についてさらに詳細な調査を行っているところであります。
 今後、都民や周辺住民の皆様のご意見を踏まえながら、規制緩和が妥当と判断された場所において、貨物自動車等を対象に規制時間を緩和する方向で準備を進めてまいりたいと考えております。
 また、関係機関等に対し、道路外の駐車スペース整備の働きかけを継続するとともに、物流業界が進めている共同配送等の取り組みなどとも連携し、交通の安全、円滑を図ってまいる所存であります。
 次に、短時間利用者のためのパーキングメーターの設置についてでございます。
 パーキングメーター等の運用につきましては、議員のご指摘を踏まえ、地域の駐車実態やさまざまな要望を勘案しながら、今後、前向きに検討してまいりたいと考えております。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 二点についてお答えを申し上げます。
 まず、シルバーピア事業についてでありますが、ひとり暮らし高齢者等が安心して生活できるよう、シルバーピアには、安否確認と緊急時対応を業務とする管理人や、これらの業務に加え、生活指導と相談も行う生活援助員を配置しており、都はその経費を区市町村に補助してまいりました。
 また、生活援助員等の資質向上を図るため、相談対応力の向上に向けた研修経費等を包括補助により支援しております。
 今後とも、区市町村と連携し、シルバーピア事業の充実に努めてまいります。
 次に、美容師法に基づく届け出についてでありますが、美容所の一部を美容師に貸し出すいわゆる面貸しを行っている美容所においても、すべての美容師を保健所に届け出ることが必要であります。
 また、こうした美容所では、常時二人以上が従事していることになりますから、管理美容師を置くことが義務づけられております。
 保健所の立ち入り指導の際には、美容師の届け出の有無、管理美容師の配置などを確認しており、今後とも法に定める制度の徹底を図ってまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、高齢者の住まいの整備についてでございますが、少子高齢時代の新たな「すまい」PTでは、さまざまな取り組みの一つとして、都営住宅等を活用した、多世代が共生できる住まいの実現を提案しておりまして、都営住宅の建てかえにおいて、地元区市と連携し、高齢者福祉施設等の整備とともに、創出用地を活用した民間によるケアつき住まいの整備を促進するとしております。
 シルバーピアは、住宅施策と福祉施策が連携し、バリアフリー化された住宅と、安否確認等の日常生活支援サービスの提供をあわせて行うものでございまして、都営住宅では、事業の実施主体である区市との協議に基づき、これまで四千三百六十三戸の供給を行っております。
 今後、都営住宅の建てかえを進める中で、シルバーピアの整備が適切に促進されるよう、高齢者居住安定確保計画に位置づけ、地元区市への働きかけを積極的に行ってまいります。
 次に、土地区画整理事業における国費の確保についてでございますが、土地区画整理事業は、東京の市街地の形成に大きな役割を果たしてまいりました。
 現在、臨海部や周辺区部及び多摩地域を中心に、千七百ヘクタールの区域でさまざまな施行者により事業が実施されており、その多くは国からの補助金を主要な財源として導入しております。
 一方、来年度の政府予算案を見ますと、土地区画整理事業に充当されてきたこれまでの補助金は、他の補助金とあわせて社会資本整備総合交付金に一本化されることとなりましたが、その具体的な運用方法等については、まだ明らかにされておりません。仮に国費が大幅に減額された場合、財政規模の小さい自治体におきましては、国費にかわる財源の確保が困難であるため、事業進捗に極めて深刻な影響を与えると予想されます。
 都といたしましては、これまでも関係区市町とともに、国に対し国費の確保を求めてきたところでございますが、なお一層連携を強め、財源の確保を働きかけてまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 清掃事業用地についてお答えいたします。
 これらの用地は、清掃事業移管の際、将来にわたって特別区の清掃事業のみに使用されると見込まれたことから、都区協議会の決定に基づきまして、二十年の用途指定を付して無償譲渡したものでございます。
 現在まで、特別区からの要望を受け、清掃事務所等から粗大ごみリサイクル施設等への変更はありますが、清掃関連事業以外への変更実績はありません。
 他方、移管後十年を経過して、廃棄物量の減少やリサイクルの拡大など、移管時とは廃棄物を取り巻く状況が変化してきております。このため、特別区の清掃事業が確実に遂行できるのか等の実態を把握するとともに、特別区側からの依頼があれば、公有財産に関する都のこれまでの考え方を踏まえながら、今後の対応について関係局と協議してまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、水道の使用水量及び配水量の見通しについてでございますが、使用水量の約七割を占める生活用水は、年度ごとの増減はありますが、長期的に増加を続けており、過去十年で見ても、日量約十万立方メートル増加しております。
 一方、水道の使用水量と関連が深い経済や人口の動向を見ると、経済につきましては、過去十年間の我が国の経済成長率が年平均で実質約一%であったのに対し、政府が昨年十二月に策定した新成長戦略では、平成三十二年度までの平均で実質二%を上回る成長を目指すとしております。また、人口につきましても、全国的には減少局面を迎えておりますが、都におきましては、社会増を中心に増加が続いております。
 水道の使用水量は、経済成長や人口増加などに伴い増加傾向を示すことや、三・一%まで低減した漏水率を勘案しますと、今後、配水量は、使用水量などに連動して増加すると考えております。
 次に、利根川・荒川水系の給水範囲についてでございますが、八ッ場ダムの建設が予定されている利根川・荒川水系の水源は、都が保有する水源量の約八割を占め、これらの水系から取水した水は、区部はもとより、多摩地区二十五市町のうち十八市にも及ぶ都の広範囲な区域に供給されております。
 また、安定給水に果たす八ッ場ダムの役割についてでございますが、都の保有水源量の日量六百三十万立方メートルの中には、取水の安定性を欠く課題を抱える水源が日量八十二万立方メートル含まれており、保有水源量の全量が常に安定的に取水できる状況ではありません。
 さらに、利根川・荒川水系の水資源開発は、五年に一回発生する規模の渇水に対応する計画とされており、十年に一回を標準とする全国の主要水系よりも渇水に対する安全度が低い上、近年の少雨傾向により、利根川水系のダム等の供給能力は当初計画よりも既に約二割低下しているなど、都の水源は極めて脆弱な状況にあります。
 加えて、気候変動の影響により、自然のダムといわれる利根川上流域の積雪量は、将来、現在の三分の一に減少することなどが予測されております。
 このようなことから、将来にわたって首都東京の安定給水を確保していく上で、八ッ場ダムの果たす役割は極めて重要であり、その建設は必要不可欠であります。

副議長(鈴木貫太郎君) 九十八番大西さとる君。
   〔九十八番大西さとる君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○九十八番(大西さとる君) 民主党、文教委員会所属の議員を中心といたしました、教育関係に重きを置いた海外調査を行いました。調査先は、学習到達度調査において連続世界一となったフィンランド、教育投資額世界トップのデンマーク、そしてイギリスでございます。この三国を訪問して共通して感じたこと、それは、教育機会の平等、公平という理念をとても強く持っていたということです。また、教育は人づくり、国づくりであり、国づくりには教育が一番大切であるとの強い理念を感じました。
 授業がわからない、できない子どもには、学習が定着するまで教えることが当然として行われておりました。特にフィンランドでは、そのような子が前兆を見せると、個別指導室でマン・ツー・マンないし少人数のクラスが編制され、そして、そこで徹底的に指導がされ、もとのクラスに戻しておりました。また、一クラス十五人から、多くても二十五人程度であったこともあり、わからない子どもをなくし、中位以上の子どもをつくるという姿勢がはっきりとあらわれておりました。
 もう一点は、特に教員養成に熱心であると感じました。教員自体が社会的にも人気職種であり、給料は低いものの、社会的地位も高いという状況もあり、大学入学時から教員を目指す学生がほとんどであり、教員養成課程で一年時からたび重なる実習を行うなど、教員を目指す学生をサポートする体制がとても充実していたことには驚かされました。
 東京都では、一部ではありますが、やっと四十人学級から三十九人、三十八人と進んでいく方針が示されております。これ自体は評価するものですが、まだまだ不十分だといわざるを得ません。授業についていけなくなった子どもの特別指導に対しても、教員の数が足らないのが現状でしょう。
 実際、台東区のように、大学生をアシスタントに起用しているところもあり、成果が出ているとの話も聞きますが、教育庁として、今後、教員の数、質をどのような方向に導こうとしておられるのか、所見を伺います。
 フィンランドでは、ヘルシンキのような都市でも、またラップランドのような過疎地でも同様の教育が受けられると胸を張っておられました。これは教育機会の平等、公平という理念が強いことのあらわれでもありますが、ここで、東京の都立高校における教育の不平等、不公平とも思われる一つの事例を提示させていただきます。
 都立高校には、勉強を頑張ろうとする子どもたちを応援する進学指導重点校や進学指導特別推進校を指定しています。以後、便宜上、一くくりに進学校とさせていただきますが、これらの進学校は、勉学を頑張り、難関大学を目指す子どもたちを応援するため、特別に予算を組み、教師を重点配置し、補習などを充実し、難関大学と呼ばれる大学入試合格を目標に日々努力している学校です。
 その結果、例えば日比谷高校では、昨年、東大に十六名、早稲田に百二十六名、慶応にも百二十七名など、大きな成果を出しています。有名大学に行くだけがすべてじゃない、そんな意見もありますが、みずから希望している子どもたちが、このように大きな壁を超えて結果を出す、すばらしいことだと思います。
 この進学校の所在地に、教育の不平等、不公平があると思います。今、残念ながら東京都におきましては、地域間の学力格差がはっきりとあらわれています。皆様もご存じのように、西高東低と呼ばれるこの区部の状況、その状況がこの進学校の所在地にも影響を与えています。
 この地図を見てください。これは、まず小学校における学力調査。これの平均点を超えている区はどこにあるか、それをまず赤い四角で囲みました。そして、中学校の平均点以上のところはどこにあるか、それをこの上に重ねてみますと、このようになります。そして、先ほどの進学校が一体どこに存在するのか、それを合わせますと、このようになります。進学校があるのは、このように東京の真ん中から西部。残念ながら、この右側、要するに、足立区やら東部には一切ないわけです。
 私は、この問題を、昨年の文教委員会で同じ質問をしてみました。なぜ東側に勉強を頑張る学校がないんですか、そのように伺いました。結果は、その学校の過去の実績をもって指定をしているというものでした。これって、おかしくないですか。全くないところに住んでいる子どもたち、この中にも進学を頑張ろうとする子どもはたくさんいるわけです。
 じゃ、この子どもたちは一体どうしているのか。日比谷高校に行っています、戸山高校にも新宿高校にも行っています。例えば日比谷高校の実績で見ますと、足立区からは十六名。ある学年ですね。そして、葛飾からも十名。そして、江戸川区からも三十一名も進学しています。そして、例えば戸山高校ですと十三名。また、青山高校には足立区からは二十三名も行っています。これだけの子どもを一つにまとめれば、十分、向こう側にも新しい進学校をつくるだけの子どもたちはいるわけです。しかし、残念ながら、今、その子どもたちは、長い間電車に揺られ、時間をむだにして日比谷高校に通っているわけです。
 この進学校というものは、子どもにとっては、特に進学を目指す子どもにとっては、本当にすばらしい環境です。カリキュラムが違います。ノウハウがあります。そして、何よりも、同じ目標を持つ仲間が集まります。時に切磋琢磨して、そして励まし合う、そういうすばらしい環境だから、みんなこの真ん中に行ってしまうわけです。
 一たんドロップアウトして、リチャレンジする子ども、これをサポートする体制は必要です。一方で、進学を頑張ろうとする子に対して、それをサポートする、そういう体制も必要じゃないでしょうか。しかし、この地図が示すように、今、東京における進学という観点から見れば、余りにも地域的なバランスがとれていない、これが現状じゃないでしょうか。私は、この東側、東京東部、また、この北側の方に、ぜひとも進学校をつくっていただきたい。
 今回は区部だけをピックアップさせていただきましたが、どんな場所に生まれようが、子どもはひとしく平等に教育を受ける権利があります。それをぜひとも守っていただきたい。そのことをお伺いさせていただいて、東京都の見解を伺います。
 次に、公立中学の課題について伺います。
 中学受験が年々熱を帯びているといわれておりますが、六年生の三分の二以上が受験をしている、そんな小学校もございます。私は自分なりに、どうしてそんなに中学受験をするのか、いろんな区のお母さん、お父さんに聞いてみました。そしたら、子どもが受験する学校の教育理念がすばらしいとか、施設がすばらしいとか、そういう答えが返ってくると思いました。しかし、残念ながら――そういう親御さんもいたんですが、少数。ほとんどの親御さんが、区立には行かせたくないという、そのような答えが返ってまいりました。
 この背景には、公立中学校における不登校やいじめ、対人関係にかかわるトラブルなど生活指導上の課題や、公立中学校では高校入試に必要な学力が身につかないのではないかという学力の課題に対する保護者の不安があるものと考えます。
 東京都はこのような状況をどのように改善しようとしているのか、所見を伺います。
 また、訪問したすべての国で、読書の大切さというものを挙げておりました。先日、石原知事も所信表明の中で、読解力を深めることの大切さ、これを指摘しておりましたが、読解力を養うためには本を読むことが必要であります。そして、そこに図書館の意義は大きいと思います。
 一九七一年、東京都は、他県に先駆けて、都立高校すべてにおいて図書館に司書を置きました。当時、この政策は大きな反響を呼び、東京都はすごいと絶賛されたと伺っております。一九七一年から採用された司書は、三年後には多くは定年を迎えてしまいます。しかしながら、この十年間近く、新たな司書の採用はありません。
 都立高校では、午前中の授業時間中でも図書館利用が多いと聞きます。また、図書館は、司書の方の存在により、大きく価値が変わります。司書がいない図書館は、単なる書庫になってしまいます。また、図書館の多くが、図書が傷んだり、新たな書籍購入ができないという状況に悩んでいます。
 こうした状況を踏まえつつ、高校における読書活動の推進と今後の学校図書館の運営について都はどのように考えているのか、お伺いをいたします。
 私たち海外調査の目的は教育が中心でございましたが、それ以外にも交通政策も学んでまいりました。
 それは、コペンハーゲンとロンドンでございます。両都市とも、中世に建てられた古い家並みが続く美しいまちであります。それは、道路の拡幅が非常に困難であるということを意味し、コペンハーゲンはまだしも、ロンドンに至っては、道路状況は東京よりもひどいという感じがいたしました。双方、市内中心部の自動車による交通渋滞に悩んでおり、思い切った改善策に取り組んでいました。
 コペンハーゲンにおきましては、自動車交通からの脱却を図るべく、自転車に乗りかえる政策を進めております。(パネルを示す)自転車専用道路、専用レーンや駐輪場の整備を進め、同時にメトロなどの公共交通の整備をしております。一方で自動車に対しては、規制地域を設けたり、中心部の駐車場代金を高額にするなど、抑制政策を推し進めております。
 ロンドンでは、市内中心部の特定地域に入るには、一日当たり千三百円もの渋滞税が課金されます。このような簡単なカメラを設置し、車のナンバーをコンピューターに送信するだけ、未払いの車は罰金対象になるという、比較的簡単な投資で運営されるエリア方式を採用し、成功しておりました。ことしの年末までには料金もさらに上がるそうですが、その一方で、バス路線の大幅な整備やタクシーの充実が行われていました。ロンドン郊外にお住まいの方がいっていました。以前は二十分から三十分に一本しかなかったバスが、これが始まってから五分置きにやってくる、そのようにおっしゃっています。それは、渋滞税の収入の四分の三を、このバス整備にかけている成果でもございます。
 これらの事例を参考に東京都の交通事情を見てみますと、思い切った政策がとられているとは思えません。東京都の交通政策、将来像に疑問が残ります。「十年後の東京」では、高速道路を中心とするネットワークの整備や踏切など、部分的な箇所の改善に終始しており、将来のビジョンが描かれておりません。
 我々は、今回の調査内容を十分吟味し、今後さまざまな提案を行いたいと考えております。今回視察した都市では、さまざまな施策を複合的に組み合わせることで大きな効果を上げています。東京においても、渋滞による都市の機能不全を解消するとともに、環境問題という観点からも、交通インフラを整備し、そのインフラを効果的に使用するという、ハード、ソフト両面からの大胆な施策展開が必要だと思いますが、知事の所見を伺います。
 昨年十月、タクシーに関する特別措置法が施行されました。この法律は、小泉改革による行き過ぎた規制緩和によるタクシーの供給過剰状態、事故の増加、サービス低下、労働条件の低下などを是正することが目的であり、東京都は対象地域となっております。
 そこで、東京都として、現状をどのように認識し、どのように対応しようとしているのか、所見を伺います。
 また、昨年十二月、第四回定例議会で、我が党の質問に前の警視総監は、駐車禁止規制の見直しを行っていきたいと答弁しております。その後、三カ月近くたったわけでございますから、具体的な見直し策をお伺いいたします。
 タクシーが客待ちで交差点付近にとめても違反になります。昨年は現金輸送車が、何と四十一件も駐車違反とされています。宅配業者も苦しんでいます。駐車取り締まりに関しても、各党からも質問も出ておりますが、私からも、現状に即した措置が必要だと思いますが、所見をお伺いさせていただきます。
 今後、海外調査に対しての詳細報告は、後日、皆様に小冊子としてお配りいたしますが、教育、交通、その他、消費者行政についても調査しております。また、他の議員からも、さまざまな角度から質問させていただきます。よろしくお願いをいたします。
 これをもちまして質問を終了いたします。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大西さとる議員の一般質問にお答えいたします。
 交通インフラの整備と活用についてでありますが、道路や鉄道等の交通インフラは、都市の機能や利便性を向上させるだけではなく、国際競争力を高めるなど、首都東京の経済活性化の基盤となる極めて重要な社会資本であります。
 東京の鉄道は、世界に類を見ない高密度で正確、安全なネットワークを構築しておりますが、例えば二十三区に限っていいますと、一キロ平方の中で、これだけ地下鉄も含めて鉄道の駅の多い都市というのは世界にありません。いずれにしろ、ターミナル駅の再編成などにより、一層の強化を図っていきたいと思います。
 また、東京の最大の弱点となっている交通渋滞を解消するために、三環状道路を初めとした道路整備を強力に進めていきたいと思います。
 こうした鉄道網や道路網は、低炭素型都市づくりを進めていく上でも不可欠な基盤となります。
 一方、最先端の情報通信技術を活用して、信号制御による緊急車両や空港直行のバスの所要時間の短縮などを行いまして、一層、安全で快適な交通環境を実現していきたいと思います。
 今後とも、交通インフラ面からもさまざまな施策を重層的、複合的に展開して、東京を世界の範となる魅力とにぎわいを備えた環境先進都市へと進化させていきます。
 先ほどパネルで北欧の自転車事情の映像を見せていただきましたが、私もオリンピックの問題でヨーロッパにしげしげ参りました。そこで、ドイツや北欧のスカンジナビアの諸国で非常に自転車が普及しているのをうらやましく思いましたが、これは日本で非常に難しいんです。ということは、日本の交通事情、住宅事情を考える上で、私たちが考えなくちゃいけないのは、世界である意味で最も劣悪な地政学的な日本の条件というものを、私たちは忘れてはならないと思います。
 それは、日本の国土の面積はイギリスよりもかなり大きいですが、イギリスの可住面積、彼らはインハビタブルスペースといいますけれども、これは日本の何と八倍あります。彼らのいう可住面積というのは、傾斜度十二度以下の土地のことでして、ですから、イギリスも日本の八倍以上ある。しかも、ドイツに至っては日本の十五倍、フランスは何と二十数倍です。こういった条件が、日本での自転車の活用を非常に困難にしているわけでして、日本では道交法がどうなっているか、よくわかるようでわかりませんが、もともと自転車は車道を走らなくちゃいけないようですけれども、車道を走ると危ないから歩道を走る。歩道で大きな事故を起こす例が多々ありますが、いずれにしろ、私も自分の健康のために、都庁に通ってくるのは、大田区から自転車で通えたらと思うけれども、とても度胸がない。
 まあそういう事情がありまして、このごろ先進国では自転車が大はやり、発展途上国では自動車が大はやりという皮肉な現象が起こっていますが、いずれにしろ、私たち、自転車の活用ということを考えるにしても、私は地政学的な条件というものをやっぱり考えて、いろいろ策を練る必要があると思います。
 他の質問については、警視総監、教育長及び都市整備局長から答弁いたします。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

○警視総監(池田克彦君) 駐車問題に関する二件のご質問にお答えいたします。
 初めに、駐車禁止規制の見直し策についてでございます。
 荷さばき車両等に配慮した駐車規制の見直しに関しましては、昨年十二月の第四回定例議会においてご説明申し上げましたとおり、新駐車対策法制が施行される以前から見直しを行っておりまして、これまで貨物自動車等を対象に段階的に規制緩和を実施してきたところでございます。
 しかしながら、その後もさらなる規制緩和の要望があることを受け、都内一円で実態調査を行ってまいりました。その結果、規制緩和の必要性が高いと思われる約四十区間を抽出し、現在、規制緩和の可否等について、さらに詳細な調査を行っているところでございます。
 これらの区間は、荷さばき等の需要が多く認められるところから、所要の検討を行っておりますが、同時に、地域住民の皆様のご意見を踏まえる必要もありまして、その調整を行っているところでございます。
 今後、規制緩和が妥当と判断された場所において、貨物自動車等を対象に規制時間を緩和する方向で準備を進めてまいりたいと考えております。
 また、関係機関等に対し、道路外の駐車スペース整備の働きかけを継続して行うとともに、物流業界が進めている共同配送等の取り組みなどとも連携し、交通の安全、円滑を図ってまいります。
 次に、現状に即した駐車取り締まりについてでございます。
 ただいまのご指摘にもありますように、都民生活や経済活動上、車の利用は欠かせないものであるということは十分認識しております。しかしながら、一方で、違法駐車は、交通事故や交通渋滞などの原因となっていることもまた事実でございます。
 このようなところから、違法駐車の取り締まりにつきましては、良好な駐車秩序を確立し、交通の安全と円滑を図るため、今後とも、悪質、危険性、迷惑性の高い違反に重点を指向した適正な取り締まりを推進してまいりたいと考えております。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、今後の教員採用における数、質の確保についてでございます。
 現在、教員の大量退職に伴い、多くの教員を採用する必要性が生じておりますが、その大量退職は今後十年間継続すると見込まれておりまして、教員の質の維持向上のために応募者数を増加させる取り組みを行うことは喫緊の課題となっております。
 一方、全国の状況を見ますと、地方によっては、採用枠が小さいために非常に高い倍率になったり、あるいは優秀な人材が正規教員になりにくい状況もございます。このため、地方からの受験者増を図る観点から、来年度は、東京、仙台に加えまして福岡でも選考を実施する予定でございます。
 また、これまで都に対する応募者数が少ない地方の教員養成大学とも連携を図り、その学生が東京の教育の魅力を十分理解できるよう、説明会などを積極的に実施してまいりたいと考えております。
 さらに、今般、秋田、大分、高知の三県と採用選考の連携に関する協定を締結したところでございますが、来年度から、これら三県の一次試験で一定の成績をおさめた者は都の二次試験に進むことのできるような新たな選考を実施いたします。
 また、質の高い教員を採用するためには、選考内容について工夫、改善することが必要でございます。お話のございました小中学校でアシスタントとして授業補助を行うなど、さまざまな体験活動を通じて培った実践的指導力については、今後とも選考において適切に評価してまいります。
 次に、進学指導重点校についてでございます。
 都教育委員会は、生徒の多様化が一層進む中で、生徒の学習希望にこたえるため、中高一貫教育校の設置など都立高校改革を推進してまいりました。
 こうした施策の一環として指定しました進学指導重点校及び進学指導特別推進校におきましては、進学実績が着実に向上しており、学区制を撤廃したこともありまして、生徒たちはそういった学校の実績あるいは校風というものを慕って、遠路いとわず、これらの高校を目指して通ってくれておるところであります。
 一方、これらの高校におきましては、蓄積をした進学指導のノウハウがさまざまな機会を通じて、ほかの高校でも共有できる状況になってきております。
 今後は、実績のほかに、お話があったように、地域性などにも着目をして、進学指導重点校などの進学指導の取り組みや実践を活用して、進学指導を強化する学校の配置を検討していく時期を迎えていると考えております。このため、全都的な配置バランスや、あるいは地域からのニーズ、それから進学状況などを踏まえまして、進学対策を強化する取り組みを検討し、都立高校全体の進学指導のレベルアップを図ってまいりたいと考えております。
 次に、公立中学校の課題についてでございます。
 平成二十年度の問題行動等の実態調査では、都内の公立中学校における不登校の出現率やいじめの認知件数は減少しているものの、一部の学校ではございますが、暴力行為の件数は増加しております。
 また、都や国の学力調査では、学力の定着状況はおおむね良好でございますが、基礎的、基本的な学習事項が身についていない生徒がいることも明らかになっております。こうした現状を改善することが、公立中学校全体の信頼をより一層高めることにつながると考えております。
 都内公立中学校では、学校と地域関係者で構成する学校サポートチームを全校で設置し、暴力行為等の問題の解決に取り組みますとともに、学力調査結果に基づく授業改善推進プランを作成し学力向上に取り組むなど、信頼される学校づくりに努めております。
 都教育委員会ではこれまで、スクールカウンセラーの全校配置、習熟度別少人数指導のための教員加配、生徒の学習のつまずきを防ぐ指導基準でございます東京ミニマムの作成、配布など、健全育成と学力向上の両面から公立中学校を支援してまいりました。
 今後とも、こうした支援策を区市町村教育委員会と連携しながら推進し、公立中学校の教育の改善充実に努めてまいります。
 最後に、都立高校における読書活動の推進と学校図書館の運営についてでございます。
 現在、各都立高校においては、生徒の読書に親しむ態度を育成するために、司書教諭を中心に全教職員の協力体制のもとで、生徒の主体的な読書活動の充実に取り組んでおります。
 平成二十二年度は、都立高校六校において、学校の実情や生徒の読書状況に応じて読書活動を推進するモデル事業を実施し、平成二十三年度にその達成結果をテキストとして取りまとめ、各学校に情報提供いたします。
 さらに、計画的に読書活動の取り組みを進めようとする学校を読書活動重点支援校として指定し、蔵書の充実や外部講師の招聘など、読書活動推進に向けた取り組みを支援してまいります。
 また、学校図書館の運営に携わっております司書につきましては、今後数年間に多数が定年を迎えることになりますが、これらの経験豊かな職員を再任用職員として活用してまいります。
 学校図書館につきましては、今後とも運営の方法や人的配置について必要な検討を行い、利用の促進を図ってまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) タクシー事業の適正化への対応についてお答えいたします。
 都内では、規制緩和による新規参入などによりましてタクシーが増加する一方、長期的に需要が減少していることから、需給バランスが崩れ、客待ちタクシーに起因する渋滞が発生するなど、交通問題を引き起こしております。
 昨年十月、いわゆるタクシー適正化・活性化法に基づきまして、国や都、タクシー事業者などを構成員とする地域協議会が設立され、十二月には、二十三区と武蔵野市、三鷹市で構成される交通圏におきまして、需給バランスの改善やタクシーサービスの活性化、安全性の維持向上などの目標を定めた地域計画を策定いたしました。
 都は、引き続き、これまで行ってきた渋滞対策などの交通政策を通じて、タクシー事業者などが本計画で定めた目標を実現するための取り組みに協力してまいります。

議長(田中良君) 三十九番松葉多美子さん。
   〔三十九番松葉多美子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十九番(松葉多美子君) 初めに、女性の健康支援策について質問いたします。
 公明党は昨年、女性特有のがん対策強化を求める都内百二十七万人の署名と十万人のアンケート調査結果とともに、私も当時の舛添厚生労働大臣に直接要望いたしました。
 その結果、平成二十一年度の国の第一次補正予算に、乳がん・子宮頸がん検診の無料クーポン券と検診手帳が対象年齢の方に個別郵送される事業が盛り込まれました。子宮がん征圧をめざす専門家会議議長の野田起一郎近畿大学前学長は、無料クーポン券はがん検診にとって起死回生の妙手であり、久しぶりのホームランだと高く評価しておられます。
 子宮頸がんでいえば、日本は、経済協力開発機構、いわゆるOECD三十カ国中、受診率が最低レベルであります。ある婦人科医院では、この無料クーポン券を契機に特に若い方の受診がふえ、子宮頸がんが見つかった事例もあると語っておられました。
 無料クーポン券は、五歳刻みでの配布となっているため、五年が経過しないとすべての人に行き渡らないことから、最低でも五年間の事業継続が不可欠であります。ところが、国の二十二年度予算案では、女性特有のがん検診推進事業の国庫負担を半分に減らし、残りの半分を地方負担分として押しつけ、地方交付税で措置することになり、何と予算額は三分の一になりました。なぜ民主党政権では女性の命を守る予算を削ったのでしょうか。今年度の事業もまだ終わっておりません。予算を削るなら、きちんとした無料クーポン券の事業の検証をしてから削るべきであります。
 そもそも公立小中学校の耐震化についても、これまで子どもの命を守るために国と地方が協力して取り組んできたにもかかわらず、民主党政権では大幅に予算を減額し、耐震化予算は大幅に不足しております。命を守ると標榜しながら、全くその逆の予算を組んでいる政権について、石原知事の所見を伺います。
 さて、きょう三月三日は桃の節句、ひな祭りです。この三月三日を中心に、一日から八日の国際婦人デーまでの八日間が女性の健康週間です。これは、女性の健康に関する知識の向上、健康課題に対する各種啓発を行うことを目的として二年前にスタートしました。私は、この女性の健康週間が初めてスタートする直前の定例会一般質問で、東京都が区市町村を支援するとともに、積極的に取り組むべきと提案をいたしました。
 ことしは三回目を迎えましたが、女性特有のがんについてさらなる普及啓発を進めるべきと考えます。所見を伺います。
 次に、子宮頸がん対策について具体的に伺います。
 子宮頸がんは、予防ワクチン接種と定期的な検診で、ほぼ一〇〇%予防することができます。ところが、予防できるがんであるにもかかわらず、子宮頸がんは二十代、三十代の若い女性の間で増加しております。年間約一万六千人が発症し、二千五百人を超す方々の大切な命が失われております。
 子宮頸がん予防ワクチンの早期承認を、公明党はいち早く国に求めてまいりました。その結果、昨年十月、臨床試験を経て二価HPVワクチンの使用が承認され、十歳以上の女性に予防接種が可能となりました。
 このワクチンは、子宮頸がんの約七割の原因となっている発がん性HPV16型と18型に有効であり、十二歳の女子にワクチン接種した場合の子宮頸がんの発生率は約七三%減ると推計されています。
 現在、世界では約三十カ国で公費助成による接種が行われており、イギリス、イタリア、ドイツ、オーストラリアなどは全額公費負担、特にイギリスでは、子宮頸がん予防のためのパブリックヘルス教育も行っています。世界の動向を見ても、接種を普及させていくには公費負担と正しい知識の普及啓発が重要となっております。
 都は、きのうの都議会公明党の代表質問に対し、包括補助制度の活用を含めた支援をすることを表明しましたが、これを高く評価いたします。
 今後、子宮頸がん予防ワクチン接種について、一日も早く全区市町村で公費助成できるよう、さらに支援すべきであります。所見を伺います。
 加えて、子宮頸がんは、一次予防であるワクチン接種、二次予防である検診のセットで、ほぼ一〇〇%予防可能となることを普及啓発することが、何より一番のかなめであります。専門家による講演会、セミナーなどを都や区市町村が主体となって積極的に展開すべきであります。所見を伺います。
 次に、乳がん検診について具体的に伺います。
 乳がんによって、毎年一万人以上もの方々がとうとい命を落とされております。そして、四十七都道府県の中で一番乳がんによる死亡率が高いのが、残念ながら東京であります。平成二十年三月に策定された東京都がん対策推進計画では、平成二十四年度までにがん検診の受診率を五〇%にするとしております。
 そこで、実際に受診率が五〇%に達した場合、検診体制の整備が間に合うのか、危惧する声もあります。マンモグラフィー機器の整備、読影医師、撮影技師等の実施体制の強化を着実に進めるべきであります。所見を伺います。
 また、都のがん検診の中核施設である多摩がん検診センターでも、乳がん検診の体制強化を進めるべきであります。これまでの受診者数の動向と今後の強化策について伺います。
 さて、欧米諸国と比べ日本では乳がんにかかりやすい年齢が若いという傾向が指摘されております。我が国の乳がんの罹患については、三十代より急増し、四十五歳がピークとなります。乳がん検診は現在、四十歳以上の方のマンモグラフィー検査が基本とされていますが、実は四十歳未満の女性の検診も重要であるとの指摘もあります。
 乳腺が発達している四十歳代以下の女性には、マンモグラフィー検査だけでは限界があり、超音波による検査も有効であるといわれております。現在、厚生労働省がJ─START、乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験を行い、超音波検査の有効性の検証をしております。今後、超音波検査が導入される際には、人材を育成し、適切に配置していくことが重要であります。所見を伺います。
 次に、文化芸術における人材育成について質問いたします。
 私は、平成十七年第四回定例会の一般質問で、新たに開校する都立総合芸術高校にバレエなどの舞踊専門の勉強ができる舞踊科、あるいは舞台芸術科の設置を提案いたしました。諸外国には、国立、公立のバレエ学校で舞踊の総合教育を行っているのに対し、日本には本格的に学ぶ国立、公立の学校がないことから、優秀な人材が海外に流出している実態があるとの訴えがありました。国にできないのであれば、都で世界に通用する専門性の高い文化芸術の教育機関を創設すべきであるとの趣旨から、提案をしたものでした。
 そして、いよいよ都立総合芸術高校が四月に開校となります。現在の芸術高校の音楽科、美術科と同様に、新たに設置される舞台表現科についても高度な専門教育が行われると期待をしております。そのためには、専門性の高い指導者や、学科、専攻によって大きく異なる教育内容に対応する施設整備が重要であります。
 そこで、総合芸術高校の指導体制や施設の整備状況、あわせて今後の目標について伺います。
 世界に誇る文化芸術都市東京の将来を担う人材を育成する都立総合芸術高校に大いに期待をするものです。特に舞台表現科は他に例を見ない学科であり、ことし四月入学の一期生の三年後の進路は大変注目するところであります。現在も、新国立劇場や東京芸術劇場と連携し、教育課程の準備を進めていると聞いておりますが、卒業後においてもさらなる修練の場や活躍の場が必要と考えます。
 都においても、平成二十年度から東京文化発信プロジェクトにおいて、次代の芸術文化を担う人材の育成に取り組み始めております。今後、舞台芸術を担う人材の育成を充実すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、水害対策について伺います。
 善福寺川では、平成十七年九月四日に発生した水害により、杉並区内の二千三百三十七世帯が床上床下浸水するという甚大な被害がありました。その後も、都内で局所的集中豪雨が発生するたびに川の水位が大きく上昇し、周辺住民の方々の安全・安心を脅かしております。現在、河川激甚災害対策特別緊急事業として緊急整備が進んでおりますが、その現状と見通し、整備後の効果について伺います。
 また、激特事業が完了しても、被害の大きかった上流域の整備はまさにこれからであります。上流域における水害の危険性の早期解消に向けた整備についての現在の取り組み状況について伺います。
 最後に、都立和田堀公園整備について伺います。
 私は、これまでも本会議や予算特別委員会で、和田堀公園の済美山運動場について早期に公園化すべきとたびたび主張してきました。今回、この土地をまとめて取得し、整備する都の決断を高く評価するものです。
 非常に貴重なこの大規模な土地を、防災やスポーツの場などに寄与するような形で早期に整備を進めるべきであります。
 所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 松葉多美子議員の一般質問にお答えいたします。
 新政権についてでありますが、政治と行政は、幾ら美辞麗句を並べてみても、実行が伴わないと、国民を裏切ることにしかならないと思います。世間でいう、いうとやるとは大違いでは、これは困るわけでありまして、新政権は、命を守るなり地域主権なりを標榜しておりますが、ならばこそ、医療、福祉の予算に限らず、公立小中学校の耐震化といった課題では、現場を預かる区市町村の不安を招かないような万全な手だてを講じるべきだと思います。
 新政権は、マニフェストで大きなふろしきを広げたものの、財政の現実に直面して、まあ、大分苦労しているようでありますが、政策の優先度、費用対効果を見きわめて、国民と国家の利益を損なうことのないように政策を選択すべきだと思います。
 今回の新政権が、従来、国政を実質牛耳ってきた官僚に勝手なことをさせないというのは、私も大変結構だと思いますが、しかし、それは、役人のいうことを一切聞かないということではないと思います。役人は、彼らが自負しているコンティニュイティー、コンシステンシー、つまり継続性、一貫性ということでの積み上げてきた経験と知識は持っていますから、こういったものをなぜ活用しないのかと思いますけれども、いろいろ東京都も問題を構えている役所と、旧知の者たちが次官にもなっている人が幾つかいますが、話をしてみても、とにかく建言をしようと思っても、大臣に会えないと。せいぜい課長ぐらいしか、政務官に会うだけで、大事な問題についての意思の疎通ができないということをいっておりました。
 例えば、これから先、国のどこかに大きな騒擾事件が起こったり、あるいは外国から巧妙な侵犯が行われたときに、こういったものを預かる警察なり自衛隊、国軍に、そういったものを持っている情報を全然しんしゃくせずに、政治家が物を決められるんでしょうかね。
 私は、そういう点で現政権の今の姿勢を見ていますと、結果としては、過去に官僚が蓄積してきた経験というものが生かされず、非常にむだな遠回りが多いんじゃないかという気がして、これはいつか、とにかく知っている閣僚にも建言しようと思っていますが、まあ、国民も同じような危惧を抱いているんじゃないかという気がいたします。
 他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 総合芸術高校の指導体制と施設の整備状況及び今後の目標についてお答え申し上げます。
 総合芸術高校は、音楽、美術、演劇、舞踊など芸術に関する幅広い教育を行う学校であり、生徒に専攻分野における高度な技術、知識を習得させるために、専門科目の授業は各学科各専攻、さらには生徒が個々に選択する領域別に展開されるため、指導内容は専門性が非常に高く、指導者も高度な技術を要求されます。
 そのため、新たに設置する舞台表現科の指導者につきましても、劇団の演出家や俳優及びバレエ団の講師やダンサーなど、各分野において現役として活躍している専門家を講師として依頼しているところでございます。
 また、施設整備につきましても、多様な専門科目の授業展開が可能な演習室や音楽ホールなどを備えた新校舎を、平成二十三年度の完成に向けまして、新宿区内の旧小石川工業高校跡地において現在、建築中でございます。
 このように充実した教育条件のもと、総合芸術高校は、芸術分野に関する唯一の都立の専門高校として、高度な技術、知識の習得を目指すとともに、豊かな教養と広い視野を持ち東京の文化振興を支える人材の育成に取り組んでまいります。
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、善福寺川における河川激甚災害対策特別緊急事業についてでございます。
 この事業は、杉並区内の環七通りから和田堀第六調節池までの約二キロメートルの区間で、既存調節池の貯留能力の倍増、済美橋など二カ所の橋梁のかけかえ及び護岸三百九十メートルを整備し、大規模な水害を発生させました平成十七年九月の豪雨と同規模の豪雨に備えるものでございます。
 今年度中にすべての工事を完了させ、善福寺川における一時間五〇ミリの降雨に対応する治水安全度は、平成二十一年度末で六五%と、五年間で一二ポイント向上いたします。
 また、地元住民の意見を反映し、公園の敷地を活用した緩やかな傾斜の親水護岸や、既存の石積みを再利用した護岸の整備など、良好な景観の創出にも努めております。
 次に、激特事業区間より上流域の整備についてでありますが、河川の整備に当たりましては、下流から順次拡幅を行うのが原則でございますが、完成までに長期間を要することから、調節池の設置について検討を進めてまいりました。
 その結果、杉並区の都立善福寺川緑地内に、現在の公園機能を確保しつつ、治水効果が発揮できる地下調節池を整備することといたしました。
 貯留量は約三万五千立方メートルを予定しておりまして、平成二十二年度は、基本設計や水理実験を行い、調節池本体の形状や構造などを検討いたします。
 この調節池の完成によりまして、洪水の取水が可能となり、下流の未整備区間の治水安全度が向上するとともに、調節池上流側の護岸の拡幅に着手できることから、整備のスピードアップが図られます。
 今後とも財源確保に努め、水害の軽減を目指し、善福寺川の整備に積極的に取り組んでまいります。
 最後に、和田堀公園の整備についてでございますが、和田堀公園は、善福寺川に沿って豊かな緑を形成し、散策やスポーツの場として親しまれている公園であるとともに、災害時の大規模救出救助活動拠点としての役割を担っております。
 このため、企業所有の運動場については、災害時の活動拠点としての整備効果が早期に発現されるよう、平成二十一年度中に五ヘクタールの用地を一括取得する予定でございます。
 今後、老朽化した既存の施設を撤去し、大型車両が進入可能な入り口や園路を整備するとともに、ヘリコプターが離着陸できるフィールドを有する四百メートルトラックを整備いたします。
 あわせて、桜などの樹林を生かすとともに、遊具広場など新たな整備をいたします。平成二十二年度から工事に着手し、二十三年度末の完成を目指し、整備に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 五点についてお答えを申し上げます。
 まず、女性の健康週間についてであります。
 都は、この週間に合わせて、女性のがん検診受診促進の取り組みを行うこととしております。今年度は、区市町村や都内の大学などに普及啓発ポスターを配布するとともに、交通広告や街頭キャンペーンを実施しております。また、若い女性を主な読者層とする無料情報誌に、子宮頸がんに関する特集記事を掲載し、子宮頸がんの罹患率が高い二十歳代、三十歳代を対象として、重点的に普及啓発を行います。
 引き続き、女性の健康週間を中心に、女性のがんについての普及啓発を実施してまいります。
 次に、子宮頸がん予防ワクチン接種への支援についてでありますが、今後、区市町村を対象とした説明会を速やかに開催し、ワクチン接種の有効性や重要性等について情報提供を行うなど、区市町村の取り組みの推進に努めてまいります。
 次に、都民等への普及啓発についてでありますが、都はこれまで、子宮がん検診の重要性やワクチンの効果について、ホームページやリーフレット等を活用しながら情報提供を行ってまいりました。
 今後、区市町村と連携し、都民や医療従事者を対象とした講演会を開催して、ワクチンの接種と検診をあわせて実施することにより、子宮頸がんの死亡率の減少が期待されることなどにつきまして、積極的に普及啓発を実施してまいります。
 次に、乳がん検診の実施体制についてでありますが、区市町村や職域の乳がん検診を受託する医療機関に対しまして、今年度はマンモグラフィー機器二十五台の整備費補助を実施し、来年度につきましても二十台の補助を予定しております。また、マンモグラフィー検診に従事する医師と放射線技師を対象とする研修を引き続き行います。
 こうした取り組みにより、精度が高い検診が実施されるよう、体制を確保してまいります。
 最後に、超音波による乳がん検診についてでありますが、お話にありましたように、現在、国の研究班が検診の有効性について大規模な調査を実施しております。今後、調査結果に基づき、国において乳がん検診の実施方法等が検討される予定であると聞いております。
 都は、国から示される方針等を踏まえて、適切に対応してまいります。
   〔病院経営本部長中井敬三君登壇〕

○病院経営本部長(中井敬三君) 多摩がん検診センターにおける乳がん検診の動向と今後の取り組みについてお答えいたします。
 多摩がん検診センターにおける乳がん一次検診の受診者数は、平成十八年度の三千八百五十一人に対し、二十年度は五千三十八人と、この三年間で千百八十七人、率にして約三一%増加しております。
 こうした受診者の増加傾向は、平成二十一年度においても引き続き継続していることから、来年度中に新たに乳がん検診車を一台配備するとともに、マンモグラフィー機器も一台更新するなど、設備面の充実を図ってまいります。
 今後も、多摩がん検診センターの中核的役割を踏まえ、がん検診の需要に積極的にこたえてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長秋山俊行君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(秋山俊行君) 舞台芸術における人材育成についてお答えを申し上げます。
 本物の舞台芸術に触れたり、本格的な舞台で成果を発表する機会を設けることは、若手の人材育成策として有効でありますことから、都は、東京文化発信プロジェクトにおきまして、さまざまな取り組みを進めているところでございます。
 具体的に申し上げますと、東京文化会館では、青少年のための舞台芸術体験プログラムといたしまして、青少年にパリ・オペラ座バレエなど、トップレベルの公演のリハーサルを公開しております。
 また、東京芸術劇場を中心といたしまして開催する国際演劇フェスティバルでは、演劇を学ぶ学生による創作作品の公演の場や、学生と若手演劇人との交流の場を設けているところでございます。
 今後、お話の総合芸術高校の開校も踏まえまして、都立文化施設を活用しながら、大学等との連携、交流をさらに深め、舞台芸術における人材の育成策の充実に努めてまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 二十番鈴木章浩君。
   〔二十番鈴木章浩君登壇〕

○二十番(鈴木章浩君) 中小企業支援対策についてお伺いいたします。
 日本のものづくりは、これまで我が国経済を牽引するとともに、新製品や新技術を世に送り出すことで、人々の生活の向上に寄与してまいりました。
 とりわけ、日本有数のまち工場の集積地である大田区のものづくりは、世界に誇れるブランドであり、そのすぐれた技術力により、東京、ひいては日本の経済を支えてまいりました。
 しかし、産業構造の大きな変革の中で、多くの親会社が生産・雇用調整を行い、系列の中小企業はほとんど仕事がない状態であり、現在、大田区を初めとするものづくり中小企業は苦境に立たされております。ものづくり中小企業が現下の厳しい状況を乗り越え、将来にわたり発展していくためには、しっかりとした経営基盤の上に立って、独自の技術に磨きをかけ、新技術開発に向けて取り組んでいくことが不可欠であります。
 東京には、中小企業を支援する多くの機関が存在しております。脆弱な経営の支援を展開する中小企業振興公社、商工会議所、商工会、技術力の向上をサポートする産業技術研究センターなどであります。加えて、都内にある工業系大学の技術や知見を活用することも、中小企業の技術力の向上や製品開発にとって有効な手段であり、近年では中小企業支援に積極的な大学も多くあると聞いております。
 中小企業の発展がなければ、日本経済の成長もありません。企業の自助努力だけでは克服することが困難な厳しい経済環境の中で、今こそこうした機関を総動員し、互いの連携を確保しつつ、ものづくり中小企業を強力に支援することが必要だと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
 一方、日本が持続可能な経済発展を遂げていくためには、中小企業の活性化と経営革新、特に果敢にチャレンジする中小企業の活力を引き出すための具体的な取り組みが重要であります。そのために、中小企業が中長期的な競争力を確保するための独自の新製品、新技術開発に対しての助成金等の支援事業が都として用意されております。
 しかし、中小企業の中には、すばらしい技術を保ちつつも、支援を受けるための申請書などの書類の作成にはふなれだという企業も多く、本当にぎりぎりの少人数で事業を行っている企業にとっては、書類作成等の事務処理にかける人員にも制約があります。
 こうした中小企業もきちんと支援が受けられるよう、都は可能な限り事業者が支援メニューを活用しやすい環境を整えるとともに、書類だけでなく、直接足を運ぶなど、事業者の実情をきちんと把握した上で支援を行うべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 先日、私の地元大田区で、高度技術・技能展としての第十四回おおた工業フェアが開催され、数多くの新製品、新技術が公開されました。大変すぐれた製品や技術が紹介され、海外からも多くの方々が視察に来られ、まだまだ東京のものづくりは負けていないぞという思いを強くいたしましたが、ものづくりの活性化のためには、新製品の開発だけでなく、企業が現在持っているすぐれた技術の活用分野を広げる取り組みも重要であります。
 中小企業の技術は、自動車や電気、機械といった我が国の基幹的産業でも広く活用されておりますが、高い経済波及効果が期待され、技術の最高峰といわれる航空機産業においても活用の可能性は大いにあります。
 航空機産業に参入するに当たっては、国際的な市場のもとで厳しい品質管理が求められるなど高いハードルがあり、中小企業にとって参入は決して容易ではありません。
 しかし、近年、新型旅客機の開発、ビジネスジェット機の普及、さらにはYS11以来四十年ぶりとなる国際旅客機の事業化が決定されるなど、この分野におけるビジネスチャンスは拡大しております。高い技術精度や厳しい品質管理を求められる航空機産業へ進出することは、技術力や企業価値を高めるためにも大変有効であるとともに、数多くの参入事例をつくっていくことで、都内中小企業の高い技術力を世界に知らしめることにもなります。
 航空機産業への参入支援には、地元大田区の企業も参加しておりますが、ぜひ中長期的な観点から取り組みを継続していくべきであります。
 そこで、これまでの成果と今後の具体的な取り組みについてお伺いいたします。
 次に、羽田空港の国際化、再拡張における航空安全の確保についてお伺いいたします。
 本年十月、悲願であった国際化に向けて、新しい滑走路や国際線ターミナルの供用が開始されます。それに伴い、滑走路の運用や飛行経路が現在のものから変更になり、発着回数も大幅に増加することに伴い、今まで以上に航空安全の確保が重要であります。
 そもそも羽田空港は、限られた空域の中で過密化が著しく、また、A滑走路発着時に影響を与えるハンガーウエーブと呼ばれる乱気流が起こりやすく、野鳥によるバードストライクの被害が多発し、慎重を要する空港ともいわれるにもかかわらず、これまで安全を維持できたのは、高い管制能力と関係機関の努力のたまものでありますが、新たに容量が増し、二十四時間空港となる中、一九八二年の逆噴射による事故の記憶が残る地元大田区及び近隣、関係機関との信頼確保のために、いま一度新たな危機管理体制の見直しが求められます。
 羽田空港にかかわる航空機の安全確保や事故災害発生の対応は、基本的には羽田空港を管理する国が取り組むべき事項であります。しかし、かつての事故に際しても、いざ事が起きれば地域の力が大きかったわけであり、空港内だけでなく、空港周辺を想定した防災訓練など、大田区、関係機関、地域ともタイアップし、指示系統や連絡体制を再確認することが必要であります。羽田空港の国際化、再拡張を控え、信頼が確保されるような取り組みを国に働きかけるべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、水道事業について伺います。
 国政の場では、耳ざわりのいいコンクリートから人へをキャッチフレーズに、費用便益や有効性を顧みることなく、政治的パフォーマンスで公共事業の見直しが行われております。しかし、人に優しい社会を構築されるためには、社会資本の整備は不可欠であり、中長期的な視点が必要であります。
 我が国の社会資本について見ると、その多くは高度経済成長期に整備され、現在、更新のピークを迎えつつあります。都の浄水場も七割がこうした状況にあり、水道局では、大規模浄水場の更新に向けて、更新期間中の受け皿となる浄水場の整備に着手するとしています。しかし、水量や水質、環境といった点で課題を抱えており、単にかわりの施設をつくればいいというものではありません。将来あるべき姿を見据え、水道施設の整備を目指すべきと考えますが、見解をお伺いします。
 また、更新には、約一兆円にも上る設備投資が必要と明らかにされております。高度成長期における浄水場の新設では、借金で資金調達をしても、水道料金の自然増収による対応ができましたが、更新の場合、このようなわけにはいきません。長期的な視点による財政運営とコスト縮減などのさまざまな工夫、取り組みが必要であります。
 浄水場は、数十年の長期にわたり使用する社会資本であり、良好な状態で次世代に引き継いでいく必要があります。
 そこで、大規模浄水場の更新に向けた今後の取り組みについてお伺いします。
 次に、安全でおいしい水のPRについて伺います。
 最近、私の身近で、水道の水がおいしくなったという話をよく聞くようになりました。これは、安全でおいしい水の供給に向けて、我が党が水道局とともにつくり上げてきたさまざまな施策が、一つ一つ着実に実を結んだ成果といえるものであります。特に水道局が全力で進めている高度浄水処理は、水道水を安全でおいしくすることはもちろん、飲料水の供給方法としてもすばらしい方法であります。
 この高度浄水処理は、自然の河川と同じ浄化機能を用いながら、水質の悪い利根川の水を最高水準の水道水質に変える仕組みと聞いております。しかし、何となくといったイメージから水道水に不満を感じたり、高度浄水処理等の取り組みを知らないとする都民が多数いることが明らかにされており、非常に残念なことであります。
 そのために、例えば親しみの持てる著名人を水道大使といったイメージキャラクターに任命する等、PRにもっと工夫が必要ではないでしょうか。
 そこで、高度浄水処理の果たすさまざまな役割、安全でおいしい水をより多く都民に知っていただくために、さらなるPRの取り組みについてお伺いします。
 また、東京の安全でおいしい水も、そのまま蛇口まで届くことがなければ、都民にそのすばらしさを理解してもらうことはできません。そのために、貯水槽を介さず、直接水道管から給水できる直結給水方式の普及促進が極めて有効と考えます。この促進のため、水道局では、貯水槽から直結給水方式に切りかえる際の条件の緩和や、切りかえ工事費用の無料見積もりサービスなどを行っております。
 しかし、より一層の普及促進を図るためには、まずは都内に二十六万戸存在する都営住宅において、率先して導入を進めることが効果的であります。
 現在、都営住宅への増圧直結給水方式への切りかえは、屋上高架水槽や受水槽の給水設備が改修時期を迎えたときに行われており、なかなか切りかえが進んでいないのが現状であります。厳しい景気の中で、民間の方々においしい水の普及に向け、直結給水方式への切りかえをお願いするのであれば、隗より始めよ、まず都の施設から積極的に取り組むべきと考えておりますが、見解をお伺いします。
 次に、教員免許制度についてお伺いします。
 教員免許更新制は、学力の低下や教員の質が問題視されたことなどを契機に、平成十九年六月、教育職員免許法の改正により、平成二十一年四月から導入されたところであります。
 その目的は、いわゆる不適格教員の排除を直接の目的とするのではなく、時代の変化に合わせたその時々で、教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識を身につけることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものとしております。
 これまでの教員免許は、一度取得すれば一生涯有効であり、極論すれば、三十年前の知識で教員が授業を実施し続けることも可能となっていたものであります。
 これに対し、免許更新制では、十年ごとに更新講習の受講を義務づけ、最新の知識に触れさせることで、現職教員の知識の刷新を図る制度として導入されたものであります。これまで全国で延べ二十万人が更新講習を受講しておりますが、文科省の集計した講習受講者の事後評価によれば、必修と選択を合わせてその九割が、更新講習について肯定的な評価をしております。
 しかしながら、文科省が昨年、免許制度の抜本的な見直しを打ち出し、常によりよい制度として機能させるために見直しをすることは当然必要なことでありますが、国の迷走による拙速な制度変更によって、学校現場に混乱があってはなりません。教育は人づくりであり、国家百年の計として国の礎をなすものである。先生と呼ばれる教師が定期的に免許更新をしなくてはならないことは、寂しい一面もありますが、今日、子どもたちのために教師の質の向上は重要な問題であり、教育の現場で定着されようとしているところであります。
 このたびの民主党政権における、現場を無視した頭ごなしのそうした改革において、この東京において、今後、都としてどのように取り組むおつもりか見解をお伺いし、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 鈴木章浩議員の一般質問にお答えいたします。
 ものづくり企業への支援についてでありますが、都内には、世界に誇る高度な技術を持つ小零細企業が集積しておりまして、日本の経済を牽引していく、まさに原動力となっております。
 また、東京には、こうした企業を支える中小企業支援機関のみならず、日本有数の大学が立地するという強みもありますが、しかし、長引く不況や国際競争の激化により、ものづくり企業の持続的な発展が、今危機にさらされております。
 このため、都は、東京都中小企業振興公社を初めとする中小企業支援機関や大学と連携し、小零細企業の経営基盤の強化や技術力の向上を図り、新事業の創出に向け、一層強力に支援をしてまいります。
 今後とも、関係機関の総力を結集して、東京が世界に誇るものづくり企業の支援に取り組んでいきたいと思っております。
 とはいいながらですね、なかなかこれがうまくいかない。特に、私の選挙区であり、あなたの選挙区であります大田区は、すばらしい技術を持った小零細企業が密集しておりますが、かつて、二十年ぐらい前になりますかな、有名な、福井の松浦機械の社長の松浦さんが来られて、大田区を視察して、驚嘆して帰られて、こういうものを今の形で放置したらもったいないということで、企業同士の連絡のための会館をつくってもらいましたが、それから大分年月もたちまして、ほかの施設もできましたけれども、それでもなお一番、大田区に限らず、高い技術を持った小零細企業の活力になるべき情報の交換、提供というのが非常に足りないんです。
 これは再三、私も議員時代にも通産省にいってきたんですけれども、どうも国がそういったものに注目せずに、残念ながら、とにかくせっかく高いポテンシャルを持っている、そういう技術を持っている企業は、結合することでもっと大きなプロジェクトが展開されるのに、それが滞っている節がございますが、これからやっぱり都としても、こういったものを積極的に考えるべき問題だと認識しています。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 教員免許更新制の廃止の影響等についてお答え申し上げます。
 国は昨年十月、免許更新制のあり方を含め、教員の免許制度を抜本的に見直し、新たな免許制度に移行するとの方針を示したところでございます。
 昨年四月から導入された免許更新制が仮に廃止された場合には、まず、既に更新講習の受講を終了した全国で延べ約二十万人の教員について、受講した実績を何らかの形で生かす措置が必要になると考えられます。
 また、既に授与された十年間の期限つきの教員免許状については、これは例年の授与件数から推計いたしますと、全国で約二十三万から二十五万件程度に上ると見込まれますけれども、これについては、その有効期間を無期限とする措置が必要になると考えております。
 次に、教員の資質向上につきましては、東京都教育委員会は、任命権者の責務として、実践的指導力や組織貢献力等を高める研修を、教諭から主任教諭、主幹教諭等の職層に応じて実施しております。これらの研修と、学校内で日常的な職務遂行を通じて育成するOJTによりまして、この両方によりまして、教員の資質能力の伸長を着実に図っているところでございます。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 助成金の支援メニューについてでございますが、支援対象事業者を決定する際には、事業者の状況を適切に評価することが重要であり、このため、書面審査に加えまして、事業者への訪問やヒアリング等を実施しております。
 例えば、本年度実施した重点戦略プロジェクト支援事業等では、採択に先立ちまして現場を訪問し、状況を確認しております。
 また、申請書については、事業者の方々が作成しやすいよう、記載マニュアルを配布するとともに、事業説明会や個別相談等の機会に、記載方法のアドバイスを行っております。
 さらに、中小企業振興公社に設置されたワンストップ総合相談窓口においても、各種支援制度への理解を深められるよう、さまざまな相談に応じているところでございます。
 都は、今後とも中小企業が利用しやすいよう十分配慮しながら、新製品、新技術開発等を強力に支援してまいります。
 次に、航空機産業への参入支援についてであります。
 先端技術が集約される航空機産業へ都内の中小企業が参入することは、技術力の向上や品質管理体制の強化につながるなど、大きな意義を持つものと考えております。
 このため、都は、平成十九年度から航空機産業の関係者を迎えた講習会の実施や、企業への専門家派遣など、技術力や品質管理力の向上に向け、航空機産業への参入を戦略的に支援してまいりました。
 こうした支援により、昨年九月、香港で開催されました国際航空展において、初めて出展した都内の中小企業が、海外の有力航空機部品メーカーから受注を獲得するなどの成果を上げるとともに、航空機部品の一貫生産を可能とする、我が国初の中小企業グループが発足したところであります。
 しかし、航空機産業への参入には、今後も中小企業が乗り越えていかなければならないさまざまな技術的課題がございます。
 そこで都は、来年度から、航空機部品の試作品の製作支援や、参加中小企業のネットワークの拡充強化等により、航空機産業への参入をさらに拡大できるよう、強力に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、羽田空港における航空安全の確保についてでございますが、羽田再拡張に伴い、年間発着回数は、昼間で四十万七千回まで増加いたしますが、国は、管制など空港運用の慣熟を踏まえて、航空輸送の安全を確保した上で、段階的に増加させることとしております。
 また、航空安全対策として、東京国際空港緊急計画を昨年改定いたしまして、各関係機関連携のもと、それぞれの活動内容を明確化するとともに、総合的な訓練を毎年実施するなど、安全確保に万全を期すべく対応しております。
 航空安全は人命にかかわることであることから、国に対しまして、再拡張、国際化に備えた輸送の安全確保に加え、空港内はもとより、空港周辺を含む危機管理について、地域とも連携しながら、適切な対応を図るよう働きかけてまいります。
 次に、既存の都営住宅における直結給水方式への切りかえの推進についてでございますが、受水槽などを通さない直結給水方式は、より良質な水の供給や受水槽の点検等の管理に要する経費の削減などの面で大きな利点があると認識しております。
 この方式への切りかえにつきましては、給水設備などの改修時期を迎えた建物を対象として、これまで約百四十棟を実施しております。
 今後とも、既存の都営住宅における高架水槽、受水槽、給水管の劣化状況などを勘案しながら、水道事業者と協議を行い、直結給水方式への切りかえを適切に進めてまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、代替浄水場の整備と大規模浄水場の更新についてでございますが、都の浄水場は、高度経済成長期に急速に整備拡張してきましたので、その多くは間もなく更新の時期を迎えることになります。
 一方、温暖化を初め、地球規模の環境問題が深刻化しており、環境と深いかかわりのある水道事業におきましては、環境負荷の一層の低減を図る必要があります。
 現在、都の主要な浄水場は、取水位置の制約から標高の低い位置に配置されており、送配水過程で多量のエネルギーを消費せざるを得ない状況にあります。このため、これからの水道は、エネルギー効率に配慮した水道システムへ抜本的に転換していくことが極めて重要でございます。
 今後は、更新に先立ち設置します代替浄水場の整備に当たりまして、高低差による位置エネルギーを浄水処理や送配水に積極的に活用するとともに、引き続く大規模浄水場の更新に合わせて、低炭素型の水道システムの構築を目指してまいります。
 次に、大規模浄水場の更新に向けた財政運営とコスト縮減の取り組みについてでございますが、当局の大規模浄水場の多くは、今からおおむね十年後の平成三十年代から集中して更新時期を迎え、更新に要する経費は約一兆円と試算しております。
 このため、将来の資金需要に備え、より一層の経営基盤の強化が求められることから、引き続き不断の経営努力を行い、企業債の発行抑制による有利子負債の圧縮や大規模浄水場更新積立金の積み立てなど、長期的視点に立った財政運営を行ってまいります。
 また、可能な限り更新時期を平準化するとともに、ライフサイクルコストの最小化を図るため、アセットマネジメント手法の導入などを進めてまいります。
 十年後に到来する施設更新を見据え、準備を着実に行い、将来にわたる安定給水を確保してまいります。
 最後に、高度浄水処理の効果及び安全でおいしい水のPRに向けたさらなる取り組みについてでございますが、現在、当局では、利根川水系の全浄水場において、取水量の全量を高度浄水処理できるよう、着実に整備を進めております。
 高度浄水処理は、水道水を安全でおいしくするとともに、飲料水を供給する方法としても、環境面、コスト面においてすぐれております。例えば、市販のペットボトル飲料水と比べると、二酸化炭素の排出量で約千倍、価格で約七百倍の開きがあります。
 平成二十五年度末の整備完了を間近に控え、東京の水道水がより一層安全でおいしくなることを多くのお客様に知っていただくとともに、高度浄水処理がさまざまな面ですぐれた効果を持っていることを総合的にPRすることが重要と考えております。
 当局では、これまでも局事業について、「水道ニュース」やポスター、映像広報等のさまざまな手法によりPRを行ってまいりましたが、今後は、ご指摘の趣旨を踏まえ、より発信力のある方を起用するなど、手法に工夫を凝らしたPRを、積極的、戦略的に展開してまいります。

○副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十四分休憩

   午後四時四十六分開議

○議長(田中良君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 十四番関口太一君。
   〔十四番関口太一君登壇〕

○十四番(関口太一君) 昨年の暑い夏のあの都議選。新銀行東京からは早期撤退する必要があると都民の皆様に何度も訴え、多くのご支持をいただきました。都民の皆様は、四百億円もの税金を追加出資してまでこの銀行を存続させたことに大いに憤慨され、さらには、税金が再度失われるのでないか、こう不安を抱かれ、投票行動に移されたと思います。こうした都民の皆様の思いを胸に、新銀行東京についてお伺いいたします。
 先日、新銀行東京の決算が発表され、実質業務純益が十七億円の赤字となり、赤字が続く状況からいまだに抜け切れておりません。
 一方で、昨年の秋、同じく中小企業支援目的で、東京都は新たな保証つき融資制度を開始しました。これは、都と連携した金融機関に対しては、融資の焦げつきが発生した場合、九割を補てんするというものです。市中の金融機関でも借りられず、保証協会の融資制度も受けられなかった中小企業に対する最後のセーフティーネットともいえるこの新たな制度は、中小企業支援には効果的なものと考えます。
 一方で、現在、新銀行東京は、これ以上の損失拡大が許されない中、中小企業に対しては、保証協会を通じた融資をふやしていると耳にします。これでは、普通の銀行と何ら変わらず、新銀行の存在意義はどこにあるのかと、だれしも考えてしまいます。
 また、新銀行東京は、この新たな融資制度の取り扱い銀行として名乗りを上げたものの、財務の健全性などの基準を満たさないとして除外されたと聞いています。その結果、中小企業は、新銀行を通じては新たな制度を利用できないこととなり、どう考えても、新銀行の存在意義が失われているといわざるを得ません。
 融資による中小企業支援はできない新銀行と、融資による中小企業支援を行う新たな保証制度という、いわば同じ目的を持った二つの事業は、国会なら、まさに仕分けの対象となり、むだと判定されるのはどちらかといえば、一目瞭然だと思います。
 融資による新たな中小企業支援の制度が整備され、しかもそこに新銀行が加われない中で、この銀行は一体何のために存在をしているのか、改めて東京都の見解をお尋ねします。
 新銀行東京からの早期撤退という主張は、私個人の公約でもありますが、我が都議会民主党の公約でもあります。一方、都知事は、撤退すれば十万人を超す人間が路頭に迷うといい放たれるばかりで、我々の主張には一切耳を傾けません。
 ここで率直な疑問を申し上げたいんですが、新銀行東京から撤退をして、果たして十万人の人が路頭に迷うことなどあり得るのでしょうか。
 現在、新銀行から融資を受けている企業の中で、約束どおり返済を行っている企業、すなわち返済能力のある企業は、ほかの民間金融機関が引き受けるでしょう。そして、残念ながらほかの金融機関が引き受けない場合は、国が支援を拡大した信用保証協会や、ましてや都の新たな制度というセーフティーネットがあり、これらを通じた支援も可能であります。
 都知事選挙まであと一年となりますが、この銀行をどうするのか全く見えてきません。石原知事が再出馬されるのかどうか、そんなことはどうでもいい話ですが、新銀行東京はそういうわけにはいきません。都民に対して明確な方向性を示してもらう必要があります。仮に石原都知事がいなくなったとしても新銀行は残るんです。知事が、ややこしい問題は次の人に丸投げするといったいいかげんな対応はされないと思うがゆえに、お尋ねします。
 信用保証協会の枠が拡大され、さらには都の新たな保証制度も整備され、まさにセーフティーネットがしっかりと整備されつつある今こそ、勇気を持って株式売却や事業譲渡など、撤退を視野に入れた出口戦略を描く必要があると考えますが、知事の見解を求めます。
 次に、緑行政について伺います。
 東京都の緑に関する政策には、一千ヘクタールの緑創出やCO2二五%削減など聞こえのよい文言が数多く存在しています。それはそれとして評価しますが、さらに進化させるために二つの課題を指摘します。
 第一に、各局から緑や環境に関する多くの指針や方針が出ているものの、それらの政策が機能的に関連し合い、一体として展開されていないように見えます。例えば、「十年後の東京」で掲げられた一千ヘクタールをふやす緑とCO2削減二五%という二つの政策に関して、ふえた緑が吸収するCO2は二五%削減目標に含まれるのかと尋ねると、含まれないとの返答が返ってきます。
 あるいは、このたび出された緑確保の総合的な方針についても、一千ヘクタールや二五%削減との関連性はありません。各政策がばらばらであるよりも、機能的に関連し合っている方が、政策効果をより高められるのはいうまでもありません。
 このように、緑政策が一体化しない原因としては、関係する局が多岐にわたっている点を挙げます。公園は建設局、まちづくりは都市整備、農地は産労、都市計画関連は総務局や主税局、さらには環境局と実に多くの局が関係していることは、局を超えた密接な連携が必要不可欠であることを意味するのです。
 現在、緑政策を議論する場として、緑の都市づくり推進本部があり、ここで関係局の調整が行われていると伺っておりますが、果たして有効に機能しているんでしょうか。例えば、東京の緑政策にとって極めて重要な農地を管轄する産労局の局長が副本部長の名に連なっていないことも疑問であります。東京の緑を守り、緑政策をさらに進化させていくべく、環境局がリーダーシップをとり、環境政策の一体化を進めていくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 第二の課題として、東京には一人当たりどれぐらいの緑が必要なのか、あるいは総面積に占める緑地の割合をどうするのかといった目標が存在しない点を指摘します。
 例えば、新しく緑を一千ヘクタールふやすといっても、当然その間に減る緑も存在します。事実、過去十年、二千四百ヘクタールの農地と樹林が減少しています。つまりは、ふやすのはもちろん必要な政策でありますが、新規増加分しか考えない目標では、東京の緑の全体像と実態を把握することはできません。だからこそ、緑地率や緑被率といった地域に占める緑の割合を目標値にする必要があると考えますが、都の見解をお尋ねします。
 さて、先ほども述べたように、この間、東京の緑は二千四百ヘクタールも減少し、その大半の一千六百ヘクタールは農地なんです。よって、農地をいかに保全していくのかが、今後の東京の緑政策の生命線なんです。二十三区においては、その傾向がより強く、緑地としての農地の存在感は際立っておりますが、この十年でおよそ四百ヘクタールの農地が減少しております。
 一方、緑確保の総合方針においては、確保する二十三区の農地は、わずか〇・六七ヘクタールにとどまっております。東京の緑政策における都市農地の位置づけは極めて弱いと指摘せざるを得ません。二十三区において、緑としての都市農地の必要性を都はどう考えているのか、見解をお尋ねします。
 二十三区の農地が減少している要因の一つは、区による生産緑地の買い取りが財源不足で実現されないことであります。この点を解決する策として、私の地元世田谷区では、都市計画事業の枠組みを活用した新たな制度をつくりました。これは、農地が点在する地域に都市計画公園の網をかぶせることで、将来、区が買い取る際には、都市計画交付金の対象にするというものです。
 また、今回出された緑確保の総合方針の中で示されている農の風景育成地区制度も、世田谷の例を参考に、今後中身を詰めていくと聞いております。
 これらの制度の課題は、合計すれば一ヘクタールを超える点在する農地に対しても、都市計画決定の対象とするのか、そして、交付金の対象とするのかという点であります。特に、交付金の対象となるか否かが明確でない限り、農家の方々は都市計画による土地利用制限のみを受けることになりかねないと恐れ、これらの制度への参加をちゅうちょされることも予想されます。これでは、せっかくの制度が形骸化してしまいます。農地は緑の生命線であると認識し、これら制度を実効性あるものにしていくためには、積極的に都市計画決定及び交付金対象としていくべきであると考えますが、都の見解をお尋ねします。
 次に、都立高校の入試について伺います。
 ことしの都立高校の入学試験では、推薦入試は約三倍、一般入試は一・五三倍と推薦を希望する学生がふえております。都の推薦入試の特色は、公平性を高めるための委員会設置や、面接だけではなく論文審査を設けているほか、校長が責任を持って推薦する校長推薦も実施されております。
 全学科に推薦制度が導入されて十四年。現在、推薦制度のあり方について、都の教育委員会で議論されていると聞いておりますが、それに伴って、推薦制度がどうなるのか、都民は大きな戸惑いを感じております。
 そこで、お尋ねします。推薦制度の導入ねらいは何であるのか、お答えください。
 都の推薦制度は、中学三年間まじめに取り組んだ結果が評価され、その評価に基づき、校長が推薦を決定します。しかも、三倍以上の倍率を勝ち抜かなければならない生徒間の競争も働いています。さらに、学習習慣が身につくことで、推薦で入学した生徒は進学後も学習態度がよく、成績上位に占める割合が高いとのデータもあります。
 以上のことを踏まえて、東京特有の推薦制度は維持していくべきと考えますが、見解をお尋ねします。
 次に、感染症対策についてお伺いします。
 昨年は、ノロウイルスを原因とした感染性胃腸炎が多発し、感染力の極めて強いノロウイルスは、学校など集団生活の場で大流行する可能性が懸念されます。
 私の地元の世田谷区のある小学校では、昨年の三月と十二月の二度、ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎が集団発生しました。集団感染が発覚した際、保健所で食中毒と認定されれば、食品衛生法や学校給食法が適用され、保健所などが原因の除去や予防などを徹底して行いますが、一方で、児童生徒等を介しての集団感染の場合は、学校保健安全法の適用のみとなり、児童生徒の出席停止や臨時休業等についてのみの定めとなっています。この場合、地元教育委員会や学校の感染拡大防止への取り組みが徹底しない傾向があるのではないかと非常に危惧しているところです。
 世田谷では、食中毒と認定はなかったものの、三月には三十一名、十二月は七十名を超える感染者が発生しています。食中毒の場合と同様に、その後の対応を徹底しておれば、同じ学校で二度も発生することはなかったのではないでしょうか。ノロウイルス等を原因とした児童生徒間の一般的な集団感染についても、感染予防策や感染拡大防止に向けた注意喚起等の周知徹底に努めるべきであると考えますが、都の見解をお伺いします。
 あわせて、近隣区の学校への予防周知など、集団発生に係る広域情報を速やかに提供していくべきだと考えますが、都の見解をお尋ねします。
 最後に、外郭団体についてお尋ねします。
 外郭団体とは、監理団体はもちろん、監理団体から外れた報告団体も含まれております。監理団体には、契約内容の公開義務や役員退職金がないなど、都の指導監督下にありますが、報告団体にはそういう規定はなく、限りなく一般企業に近い位置づけです。
 しかしながら、都が仕事を発注する際の取り扱いは、監理団体と報告団体で同じものです。現在、都から監理団体及び報告団体への委託は、都の代行事業であるとの理由で、補助執行事務として完全に別枠の扱いとなり、各局の判断にゆだねられております。その結果、都からこれら団体への委託の大半が随意契約という形となっております。
 監理団体への委託事業は、都の指導監督下にあるため、補助執行事務として扱っているといういい分は、理屈として理解できないわけではありませんが、一般企業に近い位置づけとしている報告団体への委託事業も同じ扱いであるのは腑に落ちません。いわば、報告団体にとっては、都の指導は入らないが、都からの仕事は優先的に受けられるということになり、こんなおいしい話がこのご時世にあるのかと驚くばかりです。
 事実、昨年度における各局からの報告団体への発注総額は約八百七十一億円。そのうち競争契約以外で契約されたのは約八百五十六億円。つまり、発注総額のうち九八%がいわゆる随意契約なんです。
 現在、公共的サービスを担う多くの民間組織が活躍する中で、報告団体への委託事業が本当に報告団体でしかできないものなのか見直す必要があると考えます。補助執行事務の枠を外すなど、具体的な取り組みを求めますが、見解をお尋ねします。
 以上、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 関口太一議員の一般質問にお答えいたします。
 新銀行東京の今後についてでありますが、たとえ主張が異なるにしても、現に営業している金融機関について公の場で論ずるとすれば、多数の取引先や預金者がいることを慎重に考えて行うべきものだと思います。
 新銀行東京は、既存の金融機関では貸すことが困難な小零細企業の窮地を救うために設立したものであります。この設立趣旨に反して、旧経営陣のずさんな経営で経営悪化を招きましたが、新銀行東京は、現在でも二千億を超える預金を有するとともに、他の金融機関では相手にされない、赤字、債務超過を含む八千社を超える取引先を支援しております。
 これまでも再三申し上げてきましたが、新銀行東京を利用している取引先の従業員やその家族を含めると十万人にも及ぶ関係者、さらには預金者のことを考えれば、都が新銀行東京から撤退することは大きな大きな混乱を招くものであります。撤退を一方的に主張するのは簡単ですが、現に黒字で営業している金融機関をなくして困ることはないなどということを責任を持っていえるんでしょうか。金融機関である新銀行東京に風評被害を与えることは、本当に迷惑千万であります。いかに新人とはいえ、政治家として粗雑、軽率な発言は慎んでいただきたい。
 新銀行東京は、新たな経営陣のもとで懸命な努力を重ねた結果、黒字を計上するところまで来ました。今すべきことは、小零細企業を支援するという役割を再び十全に果たせるように再建を進めることであります。
 重病からようやく立ち直った病人を、なぜ見殺しにするのか。私は全く理解に苦しみます。
 その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、入学者選抜に推薦制度を導入した目的についてでございます。
 都立高校における推薦制度は、当該高校を第一志望とする生徒に対し、調査書、面接、小論文、実技検査等の結果から、学力検査では評価しにくい中学校在学中の学習成績や活動、意欲、適性等を多面的に評価して選抜することを目的としており、昭和五十七年度の入学者選抜から工業科などの専門学科に導入し、平成七年度入学者選抜から、普通科を含むすべての学科に拡大し、現在、全校で実施しております。
 次に、推薦制度の維持についてでございます。
 都教育委員会は、平成二十一年三月に、都立高等学校入学者選抜制度検討委員会を設置し、入学者選抜の信頼性及び透明性を高めるために必要な制度改善策や推薦制度を含む入学者選抜制度の成果と課題等の検討を行い、制度改善策については、今年度の入学者選抜に反映させたところでございます。
 東京都における推薦制度については、今後引き続き、第二期の入学者選抜制度検討委員会を設置し、これまでの検討内容を踏まえ、より詳細な実態調査を行い、検討してまいります。
 次に、ノロウイルス等による集団感染の予防についてでございます。
 学校では、抵抗力が弱い児童生徒が集団生活をしており、さまざまな感染症が発生しやすく、また、学校内で感染が拡大しやすい状況にございます。
 現在、新型インフルエンザの発生件数は減少傾向にございますが、ノロウイルス等を原因とした感染性胃腸炎の発生件数は、都内においても、学校においても、昨年同時期に比べ増加しております。
 小中学校における集団感染予防のため、都教育委員会は、感染症の流行の予兆があった場合、速やかに学校感染症情報を発行し、注意喚起を図りますとともに、福祉保健局作成の感染予防のためのチェックリストや、ノロウイルス対応の標準マニュアル等の活用について周知徹底を行っております。
 引き続き、各区市町村の小中学校における感染情報の速やかな把握、提供に努めますとともに、必要に応じて、都内での発生状況等についても情報提供を行い、各教育委員会や学校が早期に予防対策を講じることができるよう支援してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 新銀行東京の存在意義についてのご質問にお答えいたします。
 知事からお答えしましたとおり、新銀行東京は、他の金融機関では支援が難しい多くの赤字、債務超過先を含む八千社を超える中小零細企業と取引を行っております。
 さらに、国の方針を先取りする形でリスケジュールに取り組むなど、取引先である中小零細企業の実情を踏まえ、きめ細かく支援しております。
 昨年十月に取り扱いを開始したばかりの新たな保証つき融資制度の取り扱いをまだ行っていないことなどをもって、その存在意義を疑問だとする主張は適切でないと思います。
 厳しい経済金融情勢のもとで苦しんでいる中小零細企業を支援するためには、多様な支援ツールを用意し、活用することが重要だと考えます。
 あえて述べますと、かつても制度融資は存在しておりましたが、さらに中小零細企業の資金繰りを支援することが必要との認識のもとに新銀行東京は設立されました。その状況は、今も変わっていないと思います。
 都としては、多様なツールを効果的に活用することで、中小零細企業に対する金融支援策の充実を図っているところであり、その中で新銀行東京の役割も欠かすことはできません。
 新銀行東京は、再建に向けた懸命な努力の結果、平成二十一年度第三・四半期決算においても、中間期に引き続き黒字を計上しております。今後とも、その設立目的である中小零細企業への支援を十全に果たせるよう、再建を着実に進めてまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、緑施策の推進についてでありますが、東京の緑を守り、ふやしていくためには、都政が持つ多様な政策手段を複合的に組み合わせ、活用することが不可欠であることから、副知事をトップとする全庁横断的な組織である緑の都市づくり推進本部を設置し、そのもとで緑の東京十年プロジェクトを展開しております。
 推進本部では、各局で行っている緑のボランティアに関する情報の一元化、あるいは教育庁や生活文化スポーツ局などと連携した校庭芝生化の推進など、局の垣根を超えた事業を展開しまして、さまざまな成果を上げております。
 さらに、毎年、緑に関する取り組み等を把握し、その成果や翌年度の施策を公表するとともに、それらの施策を検証の上、より実効性の高い内容へと充実強化を図っておりまして、推進本部は十分有効に機能していると考えております。
 次に、緑施策の目標についてでありますが、東京の緑は、都市の成長の過程で市街地の拡大や大規模な宅地開発などに伴い、年々失われてきました。
 そこで、緑の東京十年プロジェクトでは、失われてきた緑を取り戻し、東京を緑あふれる都市へと変えていくため、十年間で一千ヘクタールの緑を創出する、あるいは街路樹を百万本に倍増させるなどの目標を掲げております。
 これらの目標は、緑の施策の成果が直接反映され、毎年度検証が可能であり、さらに都民が緑の量を実感できることから、みどり率という指標はあるものの、政策目標としてわかりやすい目標を設定したものであります。
 今後とも、目標の達成に向け、推進本部のもと各局が連携しながら、緑の東京十年プロジェクトを進め、世界に誇れる緑豊かな都市の実現を目指してまいります。
 最後に、緑としての農地確保の必要性についてでありますが、都市農地は、緑地が減少している東京において、代替不能で貴重な緑地空間として、快適で安全な都市環境を担う存在となっております。しかしながら、相続などを契機として農地が失われ、その減少に歯どめがかからない状況にあります。
 このため、平成二十年に策定した環境基本計画においても、農業者の意欲的な取り組みを支援する農業振興政策を進めていくとともに、都民と農業者の連携を進めながら、都市農地の持つ多面的機能を重視したまちづくり政策にも取り組み、農政とまちづくりの両面から都市農地の保全を図っていくこととしております。
 今後とも、緑の東京十年プロジェクトの一環として、関係局が連携して農地の保全に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 農の風景育成地区の具体化についてお答えいたします。
 現在、都と区市町村で策定を進めております緑確保の総合的な方針では、都市内農地の保全のための新たな仕組みとして、農の風景育成地区制度の創設につきまして、先導的に取り組むことといたしました。
 本制度は、まとまりのある農地や屋敷林が残る地区におきまして、農業公園などを核としてその周辺の農地や屋敷林を一体的に保全し、将来にわたり地域に根差した農のある風景を引き継いでいくことを目指すものでございます。
 今後は、庁内はもとより、関係自治体と連携しながら、都市計画手法などを活用した制度の具体化に取り組んでまいります。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 都市計画交付金についてお答えいたします。
 特別区都市計画交付金は、区における道路や公園整備等の都市計画事業の円滑な促進を図ることを目的としまして、区が負担する事業費の一定割合を交付するものでございます。
 このうち公園整備事業につきましては、平成十九年度以降は、特別区が都市計画決定し、都から事業認可を受けました面積一ヘクタール以上十ヘクタール未満の事業の用地取得費及び整備費を交付対象としております。
 今後とも、特別区から都市計画手続を経た具体的な交付申請があった場合には、事業内容等を確認した上で、適切に対応してまいります。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 報告団体への事業の委託についてお答えをいたします。
 都の事業の委託契約におきましては、報告団体を含むいわゆる外郭団体設立の目的となっている事業とされる案件に関しましては、各局が政策上の判断に基づき処理することとしております。
 もとより地方自治体が行う契約は、法令により競争入札とすることが原則とされておりまして、随意契約が可能な場合といたしましては、システムの保守委託の業務を例にとりますと、当該システムの内容を熟知しているという理由により、システムの開発を受託した企業と契約を締結するケースというように、ノウハウや技術力などの特別な優位性を有する場合などでございます。
 報告団体との契約におきましても、こうした法令上の取り扱いが適用されますので、随意契約で処理する場合に該当しないときには、原則として競争入札を実施することとなります。
 都の事業の委託に際しまして、報告団体を含む外郭団体への委託を検討するに当たっても、以上のような考え方に基づいて処理されるべきものと考えております。
   〔十四番関口太一君登壇〕

○十四番(関口太一君) 知事は、銀行は黒字、黒字と胸を張っていわれますが、黒字の今だからこそ、売却先や譲渡先を探すチャンスなのではないかと私は申し上げているのです。
 なぜこう申し上げるかといえば、交渉はタイミングが重要だからです。今、保証制度やセーフティーネットが整備されて、また黒字体質に向かいつつある今こそがそのタイミングじゃないのかと申し上げているのです。
 知事は、この銀行をさらに縮小していく計画をお持ちだと思いますが、その再建計画の後は、都がこの銀行を持ち続けるべきと考えているのか、売却等の交渉がこれから必要だと考えているのか、あるいは清算を考えているのか、その先が見えません。(拍手)
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) いろんな検討をするのは今のタイミングというご質問でしたけれども、委員の質問にもありましたけれども、新銀行東京は現在再建を進めておりますが、銀行自身が認めているように、実質業務純益の黒字というものが銀行の取り組むべき現在の課題です。そこがまだ未達成の段階で委員がいうようなことは、現実問題として不利です。
 私どもは、その銀行自身の取り組みと同時に、再建を進め、実質業務純益を達成する、黒字を達成するということに全力を挙げております。

議長(田中良君) 十二番西沢けいた君。
   〔十二番西沢けいた君登壇〕

○十二番(西沢けいた君) 近年、官僚の渡り人事などに象徴されるような公務員の天下りに対しての厳しい声が高まっております。
 こうした中、私はある局に、東京都では再就職のあっせんは行っていないのかと聞きますと、東京都ではあっせんはしていませんとのお答えでした。しかし、あっせんはしていませんが、問い合わせがあれば紹介はしていますともお答えいただいたわけであります。まさにこれこそあっせんというのではないでしょうか。
 職員の方が退職してみずからハローワークに出向き、たまたま再就職した団体が結果として東京都と関係があったということならばまだしも、団体からの問い合わせを受けて職員を紹介するというのは、天下りのあっせんといわずして何というのでしょうか。
 さきの第四回定例会でも、築地市場の豊洲への早期移転を求める要望書を提出された団体へ都庁OBが天下りをしている、このことが移転問題に何らかの影響があるのではないかということが議論になりました。
 この要望書を提出された団体へ天下りが本当にあったのかを局に聞きました結果、監理団体でも報告団体でもないので実態を把握しておらず、一件一件電話で確認して実際に天下りがあったということをようやく確認した、今後同じような調査を続けるのは難しいということでした。
 ここで問題なのは、これほど東京都の事業と密接に関係する団体であるにもかかわらず、再就職情報を東京都が容易に把握できる状況ではないということです。さらに、OB職員を関係団体からの求めに応じて東京都が実際に紹介している、すなわち事実上のあっせんが行われているというのであれば、実態を把握していないという説明では、なおさら都民は納得できないのではないでしょうか。
 東京都での勤務経験、能力を民間でも発揮されるのは大いに結構なことだと思いますけれども、監理団体または報告団体であるかどうかにかかわらず、少なくとも東京都の事業と密接に関係する団体への再就職情報はきっちりと把握しておくべきだと考えますが、見解を伺います。
 これまで、監理団体や報告団体の天下り状況の公開は、少しずつ進んできているところかと思います。また、石原知事就任直後には、監理団体の退職金を全廃する積極的な改革を進めてこられたと認識しております。しかし、改革を進めてこられた中で、監理団体を削減して、報告団体になった団体も数多くあります。監理団体の数は減っているにもかかわらず、報告団体の数は一時期ふえ、平成十七年度以降は横ばいです。
 この中、監理団体の退職金は廃止されるという改革がなされているこの中で、報告団体の退職金はどのようになっているのか。私は、議会局を通じて各局へ報告団体のOB職員への退職金の支払い状況を調査しました。
 その結果、五十二の報告団体のうち十三団体で退職金を支払っているという実態がわかりました。これでは、監理団体という退職金の出ない団体から退職金の出る報告団体へと、改革の名のもとに看板をかけかえたといわれても仕方がないのではないでしょうか。さらに、十一団体は回答を拒否しているという状況で、透明性も確保されておりません。
 幾ら監理団体と報告団体とでは都の関与の度合いに違いがあるといっても、公的な要素を持つ団体に変わりはありません。天下りの批判が高まる中、このままでは都民の理解を得られないと思います。報告団体の退職金、廃止してはいかがでしょうか。見解を伺います。
 オリンピック・パラリンピック招致活動について伺います。
 先日、五百八十ページにも上る招致活動報告書が作成されました。この報告書には、日本がオリンピック・パラリンピック招致に再び挑戦する際の海図として活用されることを目的としたものでありますと書いてあります。再招致にも言及されているわけですから、あいまいな内容など都民が納得できない答弁であれば、今後の招致の是非にも大きく影響するとお考えいただいた上で、明確にご答弁ください。
 今回の招致活動費は、東京都の招致本部とNPO法人である招致委員会で七十五億円ずつ、二つの団体を合わせて合計百五十億円の招致費用が使われる予定でした。招致委員会の予算七十五億円のうち二十五億円は東京都からの補助金であり、都民の皆様の税金であります。五十億円は企業などからの寄附や協賛金で賄う予定だったものの、経済の悪化によって予定していた収入は集まらず、結果として六・九億円が電通から借り入れるとのことです。
 招致委員会は、この六・九億円の赤字について、委員会が今後行う事業収入で補い、都税で補てんすることはないとしています。そうであれば、当然、招致委員会自身がみずからの責任で今後の返済計画、そしてその前提として事業収入の見込みがあるはずかと思いますが、具体的な説明を求めます。また、逆に事業に失敗して返済がさらにおくれるような場合にどのように対応するのか、お答えください。
 この報告書は、既に二〇二〇年のオリンピック招致を目指すことに言及しております。うがった見方をすれば、招致委員会を存続させ、もし二〇二〇年のオリンピック招致を行うことが決まった場合、東京都から改めて招致委員会に補助金が投入され、結果として都税での補てんになりかねません。見解を伺います。
 今回、私ども都議会民主党としても、オリンピック・パラリンピック招致検証ワーキングチームを発足させ、意見交換やヒアリングを繰り返し行ってまいりました。招致活動費の使われ方を検証する際の資料要求にしても、NPO法人である招致委員会は別団体であるとの理由で要求に応じていただけないケースもしばしばございました。
 しかし、二十五億円もの都税が投入された団体のお金の使われ方を都民の代表たる議会がチェックできないというのは納得ができません。招致委員会をNPO法人として設立して招致活動を行ったことをどのように評価しているのか、また、次回招致を目指すことになったとしたら、今回と同様な組織形態で活動すべきとお考えでしょうか、伺います。
 この報告書と同日に発表された監査結果でも、招致本部による特命随意契約の九一%が電通との契約であり、慎重にすべきとありました。招致委員会を合わせた招致経費百五十億円全体の中で見ても、そのうち五十三億円以上がほとんど随意契約で電通と契約している実態があります。
 こうした電通との関係をさまざま指摘される中、私ども都議会民主党は、文書にて電通に幾つかの質問をさせていただきましたところ、招致委員会の職員の中に電通からの出向職員が五名いたことがわかりました。
 招致活動のノウハウや人脈等それなりの理由があったのかもしれませんが、発注する側の団体に受注する側の企業が職員として勤務しているのは、公平公正の点からいかがなものかと考えます。特に、電通が制作した最終プレゼンテーションに活用された十分間の映像が五億円もしたことについては、高額ではないかと関心を集めました。電通からの出向職員を抱えていたことは、公平公正な組織運営上、問題がなかったとお考えになりますでしょうか。見解を伺います。
 昨日の我が会派の代表質問において、二〇一六年の招致における総括と課題についての質疑を行いました。このとき知事は、招致に向けた機運の醸成についても、都民、国民がみずから主体的に招致に賛同して応援していくことが大きな力になりますと発言をされました。
 しかし、二〇一六年招致の現実は、世論の喚起に九十五億円を投入したにもかかわらず、IOCの世論調査では四都市中最下位の支持率の結果が出て、IOC委員の投票行動にネガティブなイメージを与えてしまった。報告書でも書いているわけでございます。
 また、日本人の国民性や成熟国家日本の現状から、圧倒的多数の賛成を得るのは難しいと分析していますが、果たしてこれが総括として妥当なものだったのか。自分は頑張ったが、都民、国民が盛り上がらないのが悪いのである、失敗したのは都民、国民の責任であるというように受け取れます。知事に都民、国民の納得できる敗因を伺います。
 次に、事業を検証するための新たな視点や手法の導入について伺います。
 民主党政権のもと、国においては事業仕分けの実施により徹底したむだの排除を進め、七千億円もの財源を生み出すなど、歳出削減の切り札として一定の効果を上げました。四月には公益法人や独立行政法人が行う事業について第二弾として改めて仕分けを実施するとしており、そのあり方にまで踏み込んだ改革を進めることとされています。
 事業仕分けのポイントの第一は、さまざまな事業の必要性について、外部の第三者によって公開の場で議論されたことです。連日のマスコミ等の報道により、さまざまな事業への国民の関心が高まったのも事実であります。私が聞く多くの声も、初めて税金の使途や事業の効果についての議論を見聞でき関心が高まった、新たな政治手法として新鮮に感じることができたというものでありました。
 ポイントの第二は、さまざまな事業についても、そもそも必要なのか、必要ならば国、都道府県、市町村、そして民間の中でどこがやるべきなのかについて、役割分担の視点にもしっかり踏み込んで検証することであります。確かにそのプロセスでは、教育のあり方や外交など国家の基本戦略にまでかかわる事業にそもそも事業仕分けがなじむのかという見方や、科学技術関係予算を見直しといった判断結果などについて幾つかの課題が指摘されており、私自身も今の仕組みがベストなものだとは考えておりません。
 しかし、事業仕分けにおける議論の中では、縦割り弊害の、事業の効果そのものについての疑問など、第三者の視点も加わることで、これまで行政内部の議論だけでは明らかにされなかった本質的な課題も多く指摘されたのも事実であります。
 この事業仕分けは、既に都道府県で十二団体、市町村で三十四団体の取り組みが見られ、自治体としても新たな取り組みとして定着しつつあります。
 東京都では、これまで二度にわたる財政再建推進プランの取り組みにより、あらゆる施策について点検、見直しを行うことで八千億円以上の財源を確保し、財政再建を達成しました。その後も、事務事業評価の取り組みによって毎年継続的に施策を検証しており、二十二年度予算でも、施設整備や情報システムなど新たな分野にも切り込み、百四十件の見直しを行ったことは高く評価できるものであります。
 ただ一方で、包括外部監査報告で指摘された事業や広報活動、印刷物の製作などについて、まだまだ見直すべき事業もあるのではないでしょうか。さらにもう一歩踏み込んだ事業の見直しを進めるためには、行政内部による見直しによるのではなく、むしろ第三者から新たな視点で厳しく指摘をしてもらうことも十分に考慮すべきではないかと思います。
 この先の景気の動向を見ても、大幅な好転は期待できない状況にあり、都税収入もさらに落ち込むリスクを抱えています。都は、今の事務事業評価の取り組みをもう一歩も二歩も進め、その評価のプロセスに外部からの視点も取り入れることなどによって、新たな切り口から事業を検証することが必要だと思われます。
 もう財政再建を達成しているからやらないのではなく、もう一段の見直しが必要だからこそ、新たな取り組みが必要なのではないでしょうか。自治体のリーダーであり、財政再建を達成した都だからできる、まさに東京版事業仕分けともいうべき、事業を検証するための新たな視点や手法の導入について検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、青少年健全育成条例の改正案について伺います。
 青少年が被害者となる悲惨な児童買春や虐待などの行為を野放しにしていいわけがありません。また、青少年の健全な育成に向け、有害な情報のはんらんも防がなければなりません。
 こうした中で、今回の改正案には、規制の対象となる図書類等について、青少年をみだりに性的対象とする悪質な漫画が追加されており、その定義の中で、非実在青少年という新たな概念が盛り込まれております。年齢または服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示または音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの、これを非実在青少年というようでありますが、青少年を描写した漫画やアニメのことを指すものと思われます。
 過激な表現が描写されているものは当然規制すべきかと思いますが、こうした新たな概念が具体的にどのようなものか明確ではなく、あいまいです。解釈のしようによっては、青少年を描写した漫画やアニメのほとんどが適用されてしまうのではないかという懸念を持つ方もいます。その他含め、出版物が有害かどうかを行政が判断することになることには慎重な意見もあります。国での議論がこれから進められる問題でもありますが、見解を伺います。
 なお、答弁によっては再質問も留保させていただきまして、終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 西沢けいた議員の一般質問にお答えいたします。
 オリンピック・パラリンピック招致の敗因を踏まえたこれからの課題についてでありますが、これは有形無形、複合的なものでありまして、昨日も大沢議員の質問に答えたとおり、この招致運動には、さまざまな見えざる力が働く、国同士の陰陽の非常に熾烈な戦いであります。国やスポーツ界、経済界などの各界が総力を結集し、国としての一体感を持って臨んでこそ初めてかち得るものだと思いました。
 各種スポーツ団体の国際競技連盟における日本人の会長職は今やゼロでありまして、IOCや国際競技連盟の要職に発言力のある強力な人材を送り込み、国際的な影響力を高めていかなければ、招致の獲得は非常に難しいと思います。
 また、招致に向けた機運の醸成についても、都民、国民がみずから主体的に招致に賛同し、応援していただくことが大きな力となるはずであります。オリンピックで多くのメダルを獲得した国と日本とでは、選手強化にかける費用がけた違いであります。国家としての連帯感を養うためにも、スポーツ予算を大幅にふやすことが必要ではないかと思います。日本人選手が活躍すれば、招致に対する機運も盛り上がるでしょう。
 昨年十月に行われた内閣府の調査では、オリンピックなどの国際競技大会を我が国で開催することを望む国民の割合が九割となっております。先日の東京マラソンでも、三十一万人の応募があり、沿道に百六十万人以上の観衆が集まりました。こうした都民、国民のスポーツへの期待にこたえ、今回の招致活動で得た貴重な経験や教訓を生かし、日本でのオリンピック・パラリンピック開催という大きな夢をやがて実現していくことを願っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、都幹部職員の再就職情報についてでございますが、都はこれまで、すべての局長級職員並びに監理団体及び報告団体に再就職した部課長級職員につきまして、その実情を把握し、氏名、役職等を公表してまいりました。
 今後、この件につきましては、既に知事から指示を受けておりますが、相手先の意向等を勘案しつつ、再就職状況をこれまで以上に明らかにし、一層透明性を向上させてまいります。
 次に、報告団体の退職金についてでございますが、監理団体は、都政の現場の一翼を担うなど、行政支援、補完機能を発揮することから、全庁的な指導監督が必要な団体でございます。一方、報告団体は、公益性の観点から都が出資等を行っているものの、都との関連性は監理団体ほどではなく、より自主的な経営を行う団体でございます。
 そのため、報告団体の退職金の支給の可否につきましては、個々の団体がみずからの経営責任のもとで判断すべきものであると考えております。
 なお、お話の中に、改革の名のもとに、退職金支給に関連しまして監理団体から報告団体に衣がえをしたと、こういった内容のお話がありましたけれども、監理団体から報告団体に変更したのは、団体と都政との関連性などの、こういった状況の変化に応じて行ったものであります。
 同じ理由で、逆に報告団体から監理団体の位置づけの変更も行っております。お話は、当たらないと考えております。
   〔東京オリンピック・パラリンピック招致本部長荒川満君登壇〕

○東京オリンピック・パラリンピック招致本部長(荒川満君) まず、招致委員会の借入金についてでありますが、招致委員会では現在、来年度の事業計画について検討を行っております。
 今後は、蓄積した財産を活用して、民間ベースで東京、日本のスポーツ振興のための事業を実施するとともに、この活動の趣旨に賛同する企業、団体からの寄附金収入や事業収入により借入金を返済していく予定でございます。
 最終的な法人の意思は、今後開催される理事会で決定される予定でございます。
 次に、借入金の公費での補てんについてでありますけれども、現在、招致委員会では、二〇二〇年招致の有無にかかわらず、公費での借入金返済を行わないことを前提に、来年度の事業計画について検討を行っており、公費の投入は全く考えておりません。
 次に、招致委員会の組織形態についてでありますが、招致委員会は、民間団体としての創意工夫を前提に、柔軟で機動力のある運営を行うことを期待してNPO法人として設立いたしました。
 今回の招致活動を通じて、招致委員会には、招致のノウハウや海外とのネットワークなど、さまざまな財産が蓄積されました。
 現在、招致委員会では、これらの財産を生かす来年度の事業計画について検討を行っているところでございます。将来、我が国が二〇二〇年招致を行う場合は、民間団体としての利点を生かして、より一層柔軟で効果的な機能を持つべきと考えます。
 なお、お話のあった、招致委員会に投入された都税による補助金につきましては、都議会の議決を受けて執行を行っており、また都監査委員による財政援助団体監査を毎年度受けておりまして、適切であるとの監査結果を受けております。
 最後に、招致委員会への出向職員についてでありますが、招致委員会では、東京都、JOC、地方自治体、民間企業など、さまざまな団体、企業から職員を受け入れ、運営を行ってまいりました。その中で、オリンピックや国際スポーツ大会の招致、運営の実績とノウハウを持つ電通からも、専門スタッフを複数受け入れてまいりました。
 このように、組織の中に電通出身のスタッフが在籍しておりましたが、招致活動における個々の事案は、理事会で議決された事業計画及び予算並びに決定手続を定めた処務規程に基づきまして、事務総長などが適切に決定をしておりますので、当該企業に有利になるような運営は行われたことはございません。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 事業を検証するための新たな視点や手法の導入についてお答えをいたします。
 事業仕分けと事務事業評価、いずれも個別の事業の必要性や効果などを検証して、よりよいものにしていくということを目的としております点では共通しております。
 ただ、違いもあります。昨年、国において実施された事業仕分けは、政権交代を踏まえ、既存施策を全面的に白紙状態から見直そうという取り組みでございまして、その点では、それまでと異なる外部の視点で検証するということが、いわば手法上の前提となっていたというふうに思います。
 これに対しまして都の事務事業評価は、お話にもございましたように、石原知事就任後、二次にわたり集中的に実施された事務事業の見直しの到達点を踏まえまして、この見直しの努力を財政再建達成後も組織として継続して実施していくための制度として立ち上げたものでございまして、いわば改革を都庁組織に内在化させ、行政自身の体質を変革しようとする取り組みでございます。
 したがいまして、都が実施する事業を、他人ではなく、みずから厳しく評価してこそ意味があるのでございまして、このプロセスに外部の人材を活用することは、制度の性格上、なじまないものと考えております。
 もとより、事務事業評価の結果や、それに至る考え方はすべて公表し、すべて都民の目にさらされます。また、評価結果のみならず、各事業自体、都議会の皆様の審議の過程で恒常的に厳しく評価されております。また、民間の公認会計士による包括外部監査のチェックの仕組みもあるなど、事業のあり方を都の行政組織外の視点から見直す仕組みが存在しております。
 都は、将来にわたって継続的、安定的に果たすべき使命を持っておりますので、都といたしましては、今後、評価対象を拡大するとともに、新しい公会計手法を一層活用するなど、評価手法の充実も図りながら、事務事業評価制度が持つ事業を検証する機能をさらに高め、都の行政組織の自己改革力を向上させるべく、継続した努力を続けていく決意でございます。
   〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 青少年に係る漫画等の規制についてでありますが、今回の青少年健全育成条例改正案におきましては、漫画等において明らかに青少年として表現されているものを非実在青少年と定義した上で、その性交または性交類似行為に係る姿態を、正当な理由なく性的対象として肯定的に描写した漫画等について、青少年に対する販売等の自主規制及び不健全図書指定の対象に追加しようとするものであります。
 これは、このような漫画等を青少年が閲覧することにより、青少年の健全な性的判断能力の形成を阻害するおそれがあることによるものであります。したがいまして、単に子どもや、その裸の描写が含まれる漫画やアニメを規制するものではなく、また広く成人に対する流通一般を規制するものでもありません。
 なお、本条例には、昭和三十九年の制定当時から、青少年が閲覧することで、その性的感情を刺激するなど、青少年の健全育成を阻害するおそれがある漫画などの図書類について、青少年の目に触れないようにするための規定が設けられております。
 具体的には、出版関係者による青少年への販売等の自主的な規制を基本としつつ、著しく悪質なものに限り、青少年健全育成審議会に諮問の上、都が不健全図書として個別に指定し、青少年への販売等を制限するものであり、こうした仕組みにより、青少年の健全育成を図ってきたところでございます。
 今回の改正案につきましても、慎重な手続を経て運用されることに何ら変更はございません。
   〔十二番西沢けいた君登壇〕

○十二番(西沢けいた君) 知事に敗因を聞いているわけであります、オリンピックに関しまして。盛り上がらなかったのは、都民、国民が能動的に招致に動かなかったことと認識した上での答弁なのか、それとも都民、国民もオリンピック招致に向けて、十分主体的に頑張ったとお考えの上での答弁なのか、そこを確認したいので、質問させていただいたわけであります。
 以上です。知事、お答えください。(拍手)
   〔東京オリンピック・パラリンピック招致本部長荒川満君登壇〕

○東京オリンピック・パラリンピック招致本部長(荒川満君) 報告書にもかかわる質問でございますので、私の方から答弁させていただきます。
 最初の質問あるいは現在の質問でもございましたけれども、日本人あるいは都民の資質に関するものだと思います。
 結果としまして、東京は招致を獲得できませんでしたけれども、ただいま知事が答弁しましたように、第一に、国やスポーツ界、経済界などの各界が総力を結集し、国としての一体感をもって臨む必要があること、第二に、日本のスポーツ界がIOCや国際競技連盟の要職に、発言力のある強力な人材を送り込み、国際的な影響力を高めていく必要があること、第三に、招致に向けた機運の醸成について、都民、国民がみずから主体的に招致に賛同し、応援していただくことが大きな力となることでございまして、報告書でも基本的に同様の記述をしております。
 世論の支持につきましては、IOCから、他都市と比べて低いとの指摘がございましたけれども、その後、次第に高まりまして、評価委員会来日時には八割、それからIOC総会前後には九割まで達しておりまして、こうした国民、都民の高い期待を維持していくことが大事であると報告書でまとめております。
 今後、これらの課題に対しまして、早い段階から各界の協力を得て、都民、国民の理解、賛同を得ながら、アスリートも参加した地域スポーツの振興やスポーツムーブメントの醸成に取り組んでいくとともに、国際的なスポーツ大会や関係会議の日本への招致などを計画的に進めていく必要があると思います。
 そのためにも、今回の招致活動で蓄積した財産を活用し、東京、日本のスポーツ振興を推進するための機能を存続、強化させていくべきであるというふうに考えております。

議長(田中良君) 八十九番吉原修君。
   〔八十九番吉原修君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○八十九番(吉原修君) まず、教育について伺います。
 教育は国家百年の計といわれるように、国づくりの基本であり、次代を担う人材を育成することは国家的な課題であります。
 国は、これまで子どもの学力向上や豊かな心をはぐくむとともに、教員の資質、能力の向上を図るため、全国学力テストや心のノートの配布、そして教員免許更新制度など、さまざまな教育改革を進めてきました。
 にもかかわらず、民主党の最高幹部が、驚くことに、私は永遠に日教組の組合員であるという自負を持っている、さらには、いよいよ日教組の出番だと思っているとまで公言し、民主党政権にかわった途端、その支持母体である日教組の主義主張に同調して、今日まで多くの国民の信頼と期待のもとに進めてきた教育改革を後退させようとしています。
 これまでにも、国旗の掲揚や国歌の斉唱に反対するばかりではなく、道徳教育について、例えばあいさつなどの礼儀や「仰げば尊し」のような卒業式の式歌でさえも、国家権力による価値観の強制や戦前の教育への回帰、あるいは封建主義などと反対しています。
 このたびの事業仕分けという大義名分のもとに、学力調査を悉皆方式から抽出方式に変更したり、子どもたちの豊かな心をはぐくむために欠くことのできない道徳教材である心のノートの全員配布をやめたりするなど、日教組の政策制度要求と提言で示されている主義主張を取り入れた施策に転換したといわざるを得ません。
 こうした一連の動きは、これまで国が推進してきた教育改革を後退させるばかりか、今後の我が国の教育に重大な影響を及ぼすものと思います。
 そこで、今後の我が国の将来を担う子どもたちの教育のあり方について、どのようにお考えでしょうか。知事の所見を伺います。
 知事は、施政方針で江戸以降の歴史を学ぶことの重要性を力説されました。これまで江戸時代といえば、厳しい身分制度と重税に苦しめられた農民が一揆を起こしたことなど、暗い部分が強調されてきたように思いがちです。
 しかしながら、江戸・東京は、物価は安定し、江戸里神楽一つをとっても、独自の庶民文化がはぐくまれた、豊かな時代でありました。江戸からの歴史を見直すことは、江戸時代の日本が識字率や教育水準の高さなど、日本人が世界に冠たる知識や制度を有していたこと、我が国の近代化の兆しが江戸時代に始まったことを再認識することにもつながります。
 そこで、知事は、現代の日本の若者に対して、どのような歴史教育が必要と考えておられるのか、お伺いをいたします。
 国際社会に生きる日本人として、外国語などの学習はもちろん必要ですが、そのベースとなるのが、我が国の歴史を基本知識として、すべての高校生が学習することは重要であります。しかし、現実には、高校生の段階で自国の歴史をきちんと学習する機会もなく、卒業する者もいると聞いております。こうしたことが我が国の歴史をしっかりと理解していない若者を生んでいるのではないでしょうか。
 そこで、現在の高校の学習指導要領における日本史の位置づけと、都立高校における日本史学習の現状がどうなっているのか、お伺いいたします。
 都教育委員会では、平成二十四年度から都立高校での日本史必修化を表明しました。教育委員会は、日本史の必修化に向けて取り組み、東京都としてその決定をしたことは、高校での日本史教育を推進する上で大変意義あることと考えます。
 この日本史必修化を機に、高校での歴史教育の重要性が見直され、若者たちの日本人としての自覚も高まっていくものと思います。
 また、江戸・東京を切り口として、近現代史を学ばせる東京独自の日本史科目「江戸から東京へ」を取り入れ、都立高校における日本史必修化を進めると聞いております。
 そこで、都立高校において、どのような方法やスケジュールで日本史必修化を進め、また東京都独自の日本史科目とはどのような内容なのか、お伺いをいたします。
 次に、文化の継承と発展について伺います。
 江戸というと、一般的には、西は四谷、大木戸、東は本所、深川という、いわゆる御府内のイメージであり、今でいえばおおむね二十三区に相当するものと思います。その江戸の発展を支えたのは、多摩であることを忘れてはなりません。江戸前の魚とともに、多摩の農産物が江戸の食卓をも飾りました。江戸が世界に類を見ない清潔な都市であったのも、玉川上水が運ぶ清浄な水であり、多摩の農業と組み合わさった、し尿処理、リサイクルのシステムなのであります。
 すばらしい歴史を持った多摩を、次の時代へ、さらに発展した形で引き継いでいかなければなりません。そのためには、多摩の特性や可能性を十分に踏まえた政策を実行していくことがとても重要です。
 先月、多摩テクノプラザが開設されたことは、最先端技術やものづくり産業が集積し、大学、研究機関が多数集まる多摩の特性に応じた施策であり、多摩シリコンバレーの形成に向けた大きな力になると思います。
 また、来年度から隅田川ルネサンスが開始されますが、多摩川では既に「たまリバー五十キロ」が整備され、新しいにぎわいづくりが進んでおります。
 平成二十五年には、多摩・島しょ地域を中心とした東京国体が開催されます。と同時に、多摩が東京に移管されて以来、百二十年の節目の年にも当たります。まさに、多摩地域全体のアイデンティティーを高めていくための絶好の機会であり、この年に多摩の持てる力を十分に引き出し、全国に発信していくことは、東京全体の魅力を高め、発展させていくことにもつながります。
 そこで、この平成二十五年という多摩地域にとって節目の年に、歴史や文化を伝える取り組みを行うなど、多摩の魅力をみずから考え、発信できるような新たな取り組みを早期に検討すべきと思いますが、所見を伺います。
 次に、高齢者施策について伺います。
 我が党は昨年九月、少子・高齢化政策推進本部を立ち上げ、少子高齢化問題に会派を挙げて取り組んできました。
 高齢化政策推進部会では、東京の高齢者が生き生きとして安心できる社会の構築を目指して、就労、住宅、医療、介護、四つのテーマを設定し、さきの十二月定例会には、早期に実現すべき緊急性の高い特別養護老人ホームに対する経営支援と、高齢者就業施策の実現について緊急提言を行ったところであります。
 その特別養護老人ホームへの支援について伺いますが、都は昨年六月、都内の特養における医療的ケアの実態調査を実施し、ほぼすべての施設において、胃瘻、経管栄養などの処置が行われていることがわかりました。
 こうした入所者への対応として、各施設では、国の基準以上の看護師を増配置するなどの努力をしていますが、特養では簡易な医療提供は想定されているものの、看護職員については日常的に夜勤の配置がされていないのが現状であります。
 そこで、こうした医療的ケアが必要な方々を受け入れた特別養護老人ホームに対する今後の支援策について所見を伺います。
 さて、高齢化対策では、介護人材の確保、育成も重要なテーマです。
 我が党は十二月定例会において、将来に向けた介護人材の確保策について主張し、都はそれを受け、離職者などが働きながら介護福祉士等の資格の取得ができる介護雇用プログラム事業を開始しました。
 先日、この事業に参加する介護事業者を公募したところ、多くの事業者から応募があり、すぐれた事業計画を提案した事業者を承認したと聞いています。しかし、今回承認を受けられなかった事業者や、応募する機会を逃した事業者からは、もっと質の高い事業計画にしたいとか、準備する時間がなかったといった声があるのも、また事実であります。
 そこで、こうした要望にこたえて、この介護雇用プログラム事業をさらに拡大するべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、地球温暖化対策について伺います。
 地球温暖化対策は、将来に向け、我々世代が責任を持って果たさなければならない重要な課題であります。昨年末のCOP15では、残念ながら先進国と途上国との溝が埋まらず、十分な成果を上げることはできませんでした。
 鳩山首相は昨秋、主要排出国の参加を得ることを条件に、二〇二〇年までに一九九〇年比二五%削減と、目標だけは高く掲げられました。この削減目標は、都の目標である二〇二〇年までに二〇〇〇年比二五%削減より厳しいものとなっていますが、いまだどこまでを国内の削減で達成するかなどの基本的な考えや具体的な方策について示されそうにありません。
 こうした大言壮語の中身のない政府の対応を待つことなく、これまで積み重ねてきた都の温暖化対策の柱ともいうべき都市型キャップ・アンド・トレードが、この四月、削減義務期間の開始を迎えます。
 都の制度は、世界の都市におけるキャップ・アンド・トレードのモデルとなるものとして、制度構想の公表以来、国や他の自治体のみならず、世界じゅうからも問い合わせが多いと聞いています。
 そこで、都の制度に対する内外の反響について伺います。
 都の制度は、日本では初めてであり、オフィスビルをも制度の対象とする点では、世界で初めての制度であります。これを円滑に実施に移し、削減の実績を上げてこそ、他への模範足り得るものと考えます。まさに我が国の今後の温暖化対策の趨勢を決する重要な試金石といっても過言ではないと思います。
 しかし、この制度をスムーズに進めるためには、何といっても事業者側の理解を求めていくことが不可欠であります。そこで、制度の実施を直前に控え、対象事業所にとってのメリットを確認するとともに、実施に向けた都の取り組み状況について伺います。
 また、これからの温暖化対策を進めていく上で、中小規模事業所において環境価値、いわゆる中小クレジットを認めるという仕組みは極めて重要です。中小規模事業所に経済的なメリットを与えて、その削減を促進させるとともに、それを義務履行に活用できるとしているキャップ・アンド・トレードにとって、その円滑な運用に欠くことのできない要素であります。
 そこで、都制度における中小クレジットの特徴と、クレジット創出に向けた今後の進め方についてお伺いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉原修議員の一般質問にお答えいたします。
 今後の子どもたちの教育のあり方についてでありますが、かつて日本には、謙虚であるとか自己犠牲、勇気といった武士道にも象徴されるさまざまな美徳が項目としてうたわれておりました。
 戦前は、教育のあり方を示した一つの規範として教育勅語というものがありましたし、中でも孝行であるとか友情であるとか謙虚といった普遍的な価値をいわばアイテムとして暗唱することで、子どもたちはこれを覚えてまいりました。これを古いというのは、私は必ずしも当たらないと思います。普遍的な価値は、子どものときから、いわば刷り込みという形で教育すべきものだと思います。
 例えば、非常に数学に関して平均的に高い数字を持っているインド人は、日本などと違って、高級の学校では、何と九十九までの九九──九九というんでしょうか、日本人が教わっている九九は、せいぜい九、九、八十一ですけれども、インドでは、下は、つまり二十三掛ける二十四とか二十三掛ける二十五、二十五掛ける二十五まで、上は九十九掛ける九十九までを、掛け算の教育じゃなくて、お経を暗唱するみたいに、とにかく暗唱して覚えている。
 ですから、インドのまちで買い物しましても、普通の店員がおつりを間違えないという顕著な、要するに表示があるわけでありますが、戦後、立場を超え、世代を超えて持ち続けるべき、いわば垂直な価値の基軸が毀損されまして、履き違えられた自由と権利が日本全体を損なってきたと思います。
 郷土や国家、伝統や文化というものを離れて、我々が日本人として存在することはあり得ず、これを本質的に立て直していく努力をしなくてはならないと思っております。
 日本の自然と文化の中に培われ、古い時代から一貫して続いてきた日本人の特質を、現代から未来にかけて子弟につないでいくことは、私たち大人の責任であると痛感しております。
 次いで、現代の若者に必要な歴史教育についてでありますが、本来、歴史教育とは、その国の風土を慈しみ、先人たちの功罪を学びながら、功の部分を今後どう生かすかを考えさせるものだと思います。
 そのためには、まず正確に歴史として存在した事実を教えることが必要であると思います。それによって子どもたちは、みずからそれについて考える力を身につけていくと思います。その結果、その国と先祖同胞の逸材をこよなく愛するという姿勢もはぐくまれてくると思います。国家的なるものへの愛着、敬意を附帯させない歴史教育というのは、私は意味がないと思います。
 国際社会において、自分のよっている国、日本を誇りとして、日本人としての気概を持って、その心意気を広く発信できる資質を若い人たちは備えていく必要があると思います。だからこそ、日本の若者は自国の歴史をしっかりと学ばなければならぬと思います。
 私、かつて知己を得ました、第二次世界大戦のときの世界のエース、エースというのは、敵味方離れて、その戦いの中で空軍で一番たくさんの敵機を撃ち落とした、第一次大戦ではドイツのリヒトホーフェンでありましたが、第二次世界大戦では日本の坂井三郎さんというパイロットでした。
 この方から話を聞きましたが、彼が、まあ、亡くなりましたけれども、亡くなる二、三年前に、中央線に乗っていたら、目の前で、昼前でしたけれども、三多摩の方の大学に通っていく大学生が話をしていた。黙って、瞑目して、とにかくその話を聞いていましたら、そのうちに話題が移って、片方が片方に、おまえ、知ってるか、六十年前、日本とアメリカは戦争したんだってよといったら、片方が、うそっていうから、本当だよと。片方が驚いて、じゃ、どっち勝ったのと聞いたと。
 これは悲痛な話であります。聞いた人が、あのアメリカも尊敬して、私の知っている、記者クラブにも講演に招いたような坂井三郎さん。だから、いたたまれずに、次の駅でおりて、ホームの端っこで、たばこを二本続けて吸ったそうであります。
 こういう歴史に関するみじめな現況というのは、恐らく世界にはないと思います。日本だけでしょうね。こういったものを立て直さないと、私たちはこの国の将来を大きく失うことになるんじゃないかという気がいたします。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) まず、学習指導要領における日本史の位置づけと都立高校における日本史学習の現状について申し上げます。
 文部科学省が定めた学習指導要領において、中学校社会科の歴史的分野では日本史を中心に学習することとされているために、高校では世界史のみが全生徒の必修となっており、日本史については、地理か日本史のいずれかを選択すべきものとされております。
 しかし、中学校においては、各時代の特色をあらわす基本となる歴史的事項を中心に学習するにとどまっており、都教育委員会は、日本の歴史の価値を十分認識させるためには、高校生に日本史を継続して学ばせることが必要であると考え、全都立高校における日本史の必修化を決定いたしました。
 また、都立高校における日本史学習の現状につきましては、全生徒が日本史必修となっている学校や、一部の生徒が日本史必修となっている学校のほか、日本史を未設置の学校もございます。
 生徒について見ますと、本年度の卒業生約四万人について申し上げますと、約七六%、三万五百人の生徒が日本史を学習して卒業する一方で、約二四%、九千五百人の生徒が日本史を学習しないまま卒業することとなる、こういう状況にございます。
 次に、都立高校における日本史必修化の方法とスケジュール及び東京都独自の日本史科目の内容についてでございます。
 都教育委員会は、平成二十二年度に東京都独自の日本史科目を開発し、平成二十三年度に日本史必修化協力校を設置して試行実施いたします。さらに、各学校に対して、学習指導要領にある日本史科目あるいは東京都独自の日本史科目のいずれかを生徒全員が必ず学習するカリキュラムを作成するよう指導し、平成二十四年度から全都立高校で日本史の必修化を実現してまいります。
 また、東京都独自の日本史科目については、これは江戸開幕から現在に至るまでの日本の近現代史を、江戸・東京の変遷を切り口として学ぶ科目でございまして、現在の東京に残る史跡ですとか文化財等を活用し、地理的視点も踏まえて総合的に学習するものでございます。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 多摩の文化の継承と発展に関する取り組みについてお答えいたします。
 東京国体が開催される平成二十五年は、多摩地域にとって、過去の歴史を踏まえ、未来を展望する上で大きな節目の年と認識しております。
 この年に、多摩の歴史や文化を伝えることにより、多摩地域に住む方々が、その多様な魅力や特色につきまして振り返り、地域発展の原動力としての意識を高めることは、ご指摘のとおり時宜にかなったものであり、意義深いものであると考えております。
 こうした動きを地域全体で盛り上げ、さらなる活力と魅力にあふれる多摩を実現していくため、関係局や市町村とも連携し、多摩の多様な魅力をとらえ東京内外に発信するための取り組みにつきまして検討してまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 二点についてお答え申し上げます。
 まず、特別養護老人ホームへの支援についてでありますが、特別養護老人ホームの中には、胃瘻や経管栄養などの医療的ケアを必要とする高齢者を受け入れるため、職員配置や勤務時間の変更など、さまざまな工夫を行っている施設もあります。
 こうした施設の努力を適切に評価するため、来年度から、特別養護老人ホーム経営支援事業において、一定の看護職員配置などを条件に、医療的ケアが必要な入所者の多い施設を対象とする加算項目を新たに設けることといたしました。
 今後とも、医療的ケアのニーズへの対応など、利用者サービスの向上に努める施設を支援してまいります。
 次に、介護雇用プログラムについてでありますが、この事業は、介護現場での雇用機会を創出するとともに、質の高い人材を確保、育成するため、都が介護事業者に委託をして、離職者等が働きながら介護福祉士などの資格を取得することを支援するものであります。
 本年二月に行いました事業者の公募におきまして、七十七の事業者から応募があり、職員の育成計画や定着のための取り組みなどを重視して審査をし、四十八事業者を委託先として承認をいたしました。これにより、二百八十人の離職者等が雇用されることとなりました。
 なお、今回承認した介護事業者以外にも、本事業の実施を希望する事業者がいることから、今後、追加公募について検討してまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、都のキャップ・アンド・トレード制度に対する内外の反響についてでありますが、まず国内では、昨年都が主催した道府県、政令市向けの政策セミナーに、全団体の約八割の参加を得ましたが、その後も実務担当者からの照会が続いております。
 次に、海外からは、欧州連合地域委員会や英国王立研究所、ケベック州、ソウル市など、数々の政府機関、自治体から強い関心が寄せられております。
 また、建築家や都市開発事業者による国際会議では、都の制度が今後の建築物への省エネ技術の活用を促進する先駆的な政策として紹介されました。
 今後とも、都は、気候変動対策のトップランナーとして、世界の範たる制度となるよう、ICAP、国際炭素行動パートナーシップなどを通じて、国内外との情報の受発信を一層進めてまいります。
 次に、対象事業所のメリット等についてでありますが、対象事業所が省エネ等により排出量を削減した場合には、将来にわたって光熱費を節減できるだけでなく、義務量を超えて削減した分を売却できるという経済的メリットがあります。
 また、実施に向けた都の取り組み状況につきましては、一昨年の条例改正以降、二十数回に及ぶ説明会を開催しまして、延べ一万人を超える事業者の方々にご参加をいただいたほか、ヘルプデスクを設置し、個別の相談にも当たってまいりました。
 今後、優秀な取り組み事例の紹介やテナント向けセミナーの開催などを行うとともに、積極的に削減に取り組む事業者が社会的に評価されるよう、公表制度の活用を図るなど、本制度の成果を確実なものとしてまいります。
 最後に、中小クレジットの特徴とクレジット創出に向けた進め方についてでありますが、都制度においては、中小規模事業所が省エネ設備を導入し、総量の削減を達成した場合には、その削減量を、大規模事業所の義務履行に利用可能な中小クレジットとして認定できることとしております。
 この中小クレジットは、認定の対象となる省エネ対策をあらかじめ都が提示するとともに、認定に必要な検証を簡易にするなど、事業者に取り組みやすい制度となっております。
 今後、今月末を目途に、認定や申請の手続などを定めたガイドラインを策定するとともに、本年六月ごろに事業者向けの説明会を開催しまして、制度の周知を図ることで、クレジットの創出を促進してまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 十八番遠藤守君。
   〔十八番遠藤守君登壇〕

○十八番(遠藤守君) 初めに、ホームレス対策とソーシャルビジネスについて質問いたします。
 本日の質問を前に、先月二十六日、私はホームレス支援施設である自立支援センター品川寮を同僚とともに視察してまいりました。
 同センターは、原則二カ月の間、食事の提供を初め、職業、住宅等に関する相談を行っており、職員の献身的な仕事ぶりもあり、一定の評価を上げていました。
 しかし、残念ながら、直近のデータでは、入所者の約四七%が就労自立に至らず、その最大の理由が入所期間の短さにあることを痛感いたしました。実際、施設運営者からも、入所者には、幼いころに受けた心の傷や、人生途中で背負った深い挫折感を持った人が多く、短期間で十分な心理ケアを行うのは困難といった話や、でき得ることであれば、再就職に最低限必要な漢字やパソコン技能の習得など教育支援も行いたい、このような意見がございました。
 ところで、先日私は、ホームレス支援団体として世界的に有名な米国コモン・グラウンド・コミュニティ代表のロザンヌ・ハガティ女史の講演を聞きました。コモン・グラウンド・コミュニティは、ニューヨーク市内のホテルを改修し、ホームレスや低所得者を対象に、住居の提供のみならず、就労訓練や医療全般、そして心理カウンセリングなど、総合的なサービスを提供しております。
 当日の講演や関連資料を精査してみると、ここでのホームレス支援が成功した秘密が幾つか見えてまいりました。私なりに要約すれば、第一は、一概にホームレスといっても、そこに至った原因、経過はさまざまであり、それらについて詳細にデータ分析した上で、通常一年程度かけて、個々の状況に即した訓練を行っている。第二は、長年にわたる活動の積み重ねにより、すぐれた専門スタッフがたくさんいることが挙げられます。
 アメリカと日本の文化や制度の違いはあるにせよ、これらの取り組みは民間主体だからできた側面もあり、都として学ぶべき点も少なくありません。こうした事例も参考に、従来の発想を超えた、より効果的な仕組みを構築すべきであります。福祉保健局長の見解を求めます。
 ところで、このコモン・グラウンド・コミュニティは、近年我が国でも注目され始めてきたソーシャルビジネスの一つであります。ソーシャルビジネスは、福祉、貧困、環境などの社会的課題に立ち向かう新たな取り組みのことであり、欧米を中心に広く普及しておりますが、日本はまだ黎明期にあります。将来的に都の施策推進のパートナーとなり得る、このソーシャルビジネスのすそ野拡大に向け、都は、資金調達、経営ノウハウの提供、関係者の交流機会の設定などに積極的に寄与すべきであると考えます。見解を求めます。
 次に、教育管理職の負担軽減について質問いたします。
 小中学校では、学習指導面のほかにも多様な課題への対応が求められ、多くの教員は多忙をきわめております。特に管理職は、学校経営の責任者として、こうした課題への陣頭指揮をとることが求められ、その中には、学校がとるべき責任を超えた事案さえあります。これは、学校に責任の多くを押しつけようとする風潮によるところも大きいと思います。そこでまず、こうした社会的風潮に対する石原知事の率直なお考えを伺います。
 ところで、平成十九年度に実施した副校長、主幹の職務等に関するアンケート調査では、多くの副校長が、学校経営への参加や教職員の育成にやりがいと魅力を感じて管理職となったものの、実際には本来の業務以外のさまざまな対応に追われ、それが多忙感に結びついているとの結果が出ております。
 一方で、管理職選考の受験対象者である中堅教員も、管理職に求められる複雑、多様な課題に対応するための責任の重さ、業務の多忙さに不安を感じております。それが受験倍率が低い要因の一つになっているともいわれております。
 こうした影響を踏まえ、都議会公明党は、教育管理職の負担解消を目指し、知事に対する来年度予算に関する要望で、小中学校の副校長の業務実態の把握を求めました。都教育委員会は来年度、早速この公明党の提案を受け、公立小中学校における業務処理調査研究事業を行うと聞いておりますが、その具体的内容について説明を求めます。
 本調査は、外部委託の形式をとり、学校現場に新たな負担を課すものではないとのことから、一定の評価はいたしますが、管理職の多忙感はより多次元から調査すべきであります。
 そこで、副校長の事務や雑務を補助する、仮称スクールアシスタントを配置し、その具体的効果を同時に検証すべきと提案いたします。教育長の見解を求めます。
 次に、障害者の保養について質問いたします。
 都は現在、全国四十カ所で障害者休養ホーム事業を行っております。この事業は、障害者に配慮した一定の設備があり、積極的に受け入れる宿泊施設を都が指定し、障害者手帳を持っている都民がこれを利用した場合、大人一泊当たり六千四百九十円の助成を行うものであります。障害者の保養に加え、多くの場合、障害者は健常者と連れ立って旅行するため、観光振興の面からもすぐれた制度であるといえます。
 同時に、本制度には、バリアフリーの宿という目印効果もあります。それというのも、従来、宿のバリアフリー表示には明確な定義はなく、ある宿がバリアフリー対応と表示していても、実際に行ってみると、バリアフリーなのは玄関スロープのみで、現地でトラブルになるケースもあるようであります。
 こうした中で、障害者が宿選びの目印にしているのが都の休養ホーム指定宿であり、ここであれば、障害者は、現地に詳細な問い合わせをしなくても安心して旅行ができるわけであります。
 さきに述べたとおり、この指定宿は、北海道から沖縄まで全国各地にありますが、利用実績を調べてみると、都内の障害者が比較的旅行しやすい関東近県が多くなっております。そこで、全国四十カ所の指定宿を再編し、障害者がより訪れやすい環境を整えるべきであります。
 また、利用者についても、同じグループが繰り返し利用しているケースも見られ、広く障害者や家族が利用できるよう、周知に努めるべきであります。あわせて見解を求めます。
 次いで、島しょ住民の医療について、二点質問いたします。
 先月、私は伊豆大島を訪問し、島民の皆さんと種々懇談してまいりました。急速な高齢化により、医療、介護に関する不安や要望が相次ぎました。具体的には、本土の医療機関で治療を余儀なくされる慢性疾患患者等の交通費負担に関する切実な声が上がりました。
 例えば、島民割引のある東海汽船のジェット船を利用した場合、最も近い大島からでも、患者本人だけで往復で約一万円、場合によっては、これに付添者の船賃や宿泊費、さらに都内の移動にかかる交通費や食事代など細々とした支出が加わると、かなりの家計負担になります。
 こうした海による隔絶というハンディを軽減するには、ITを使った遠隔医療システムが有効な手段の一つであります。本土の専門医から島の医師に、患者の治療に関する指導助言を受けられるシステムを充実させれば、本土の病院に通う回数が減少し、結果的に経済的負担の軽減が図られるはずです。専門的医療の確保が困難な地域にこそ、都は積極的に対策を講じるべきです。見解を求めます。
 なお、島民の交通費負担の軽減を図る都の財政支援についても強く要望いたしておきます。
 第二に、三月一日オープンした多摩総合医療センター、小児総合医療センターは、離島便が発着する調布空港からもほど近く、島しょ住民の期待も膨らんでおります。一方で、周辺の地理に不案内なためか、島民との懇談では、付添者の宿泊先を懸念する訴えが聞かれました。
 現在、島しょ住民が広く利用する都立広尾病院には、我が党の提案により、緊急搬送された患者の付添者が安価で泊まれる施設が併設をされております。多摩、小児、両センター利用者のためにも同様の仕組みを検討すべきです。見解を求めます。
 最後に、羽田空港を発着する航空機の騒音対策について質問いたします。
 羽田空港における一時間当たりの出発容量は現在三十二便でありますが、これとは別枠で、五便が朝七時台に大田区臨海部を低空で離陸していきます。これについて、空港周辺の大森東、大森西、入新井、糀谷、そして羽田、五地区の住民でつくる協議会が、国土交通省に対して数次にわたり即時廃止を求めてきました。
 ところが、国は、この運用は出発ピーク時の輸送力を高めるものであり、かつ航空機騒音に関するいわゆるうるささ指数も環境基準を超えていないなどを理由に、地元住民の声に真摯にこたえてきておりません。
 秋に迫った再拡張により、一時間当たりの出発容量は段階的に四十便まで拡大されます。そこで、この新たに生じる枠に騒音原因となっている五便を割り当てることで、騒音軽減を図るべきであります。見解を求めます。
 区内の航空機騒音をめぐっては、これ以外にも、平成二十年九月二十五日から始まった新たな運用により、毎日約百便が、これまで飛行ルートではなかった大田区内陸部を飛び、地元大田区に多くの苦情が届いております。これについても、都は大田区と連携し、国に改善要求すべきです。
 それぞれ答弁を求め、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 遠藤守議員の一般質問にお答えいたします。
 学校にすべての責任を押しつけようとする風潮についてでありますが、すべての物事が他力本願になっている当節では、子どもへの教育の全責任を負うのは学校であり、専門家としての先生、教師であるというような考え方が敷衍している感じが否めません。これは全くの間違いというものだと思います。
 アメリカでは、子どもが成長して小学校に一年生として入ったときに、必ず三つのことを先生がいうそうです。一つは、みんなで決めたことは、自分一人が嫌でも、みんなのいうとおりにしよう。もう一つは、まちでお巡りさんが困っていたら、子どもでも助けよう。もう一つが大事でありまして、もし先生のいったことと、お父さん、お母さんがいったことが違っていたら、親にいわれたとおりのことをしなさいと。必ずそれを子どもたちにいい渡すそうであります。
 子どもの教育、しつけの主体者はあくまでも親であり、絶対に教師や先生ではありません。しかるに、自分の責務を放棄し、すべてを学校に押しつける親の存在が、学校を今日、疲弊させ、親子の関係も損ない、子どもの将来をも損なっているといって過言ではないと思います。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、公立小中学校における業務処理調査研究事業についてでございます。
 小中学校では、学習指導面のほかにも多種多様な課題への対応が求められており、業務が集中する副校長や主幹教諭等に多忙感が深まっております。
 平成十九年度に実施いたしました副校長等に対するアンケート調査では、さまざまな業務が副校長等に集中し、雑務に追われている現状が明らかになりました。
 このため、都教育委員会では、業務実態を詳細に把握し、職務改善を図る具体策の検討に資することを目的といたしまして、平成二十二年度に公立小中学校における業務処理調査研究事業を行うことといたしました。
 この事業では、副校長だけでなく、副校長を直接補佐する主幹教諭のほか、主任教諭、教諭及び事務職員のそれぞれの職務内容や業務運営上の課題を明らかにし、より効果的、効率的な学校運営組織や業務の進め方、適切な校務分担のあり方など、改善策を検討してまいります。
 次に、副校長の事務を補佐する職員の配置についてでございます。
 都教育委員会は、副校長や主幹教諭に業務が集中する状態を解消するため、教育委員会等から各学校への調査報告依頼を縮減するためのモデル校実態調査、退職教員を活用した非常勤教員制度や、主幹教諭を補佐する主任教諭制度の導入、さらに本年一月には、小中学校に勤務する事務職員がより積極的に学校運営に関与できるよう、その標準的職務を示す等、さまざまな取り組みを行ってまいりました。
 副校長の事務を補佐する、ご提案のスクールアシスタントにつきましては、来年度に実施いたします公立小中学校における業務処理調査研究事業の結果を踏まえ、コストや組織体制への影響をも考慮しつつ、その必要性について検討してまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 三点についてお答えを申し上げます。
 まず、都のホームレス対策についてでありますが、ホームレスの自立を支援するため社会全体として取り組むことは重要な課題であると認識をしております。
 都はこれまでも、地域の実情を把握しているNPO等と協働して事業を実施しており、昨年十月に公表したホームレスの自立支援等に関する第二次実施計画におきましても、民間団体との連携協力を図り支援活動を展開していくことを盛り込んでおります。
 今後とも、ご提案の事例も参考に、NPO等の経験やノウハウを活用しつつ、ホームレスの就労自立に向けて適切に支援を実施してまいります。
 次に、障害者休養ホームについてでありますが、本事業は、障害者が家族や仲間とくつろげる保養施設を指定し、この施設を利用した人の宿泊料の一部を助成するもので、利用者がさまざまな地域の施設を選択できるよう配慮しており、四十カ所を上限として指定をしております。
 これまでも指定施設の変更を行ってまいりましたが、ご提案の趣旨を踏まえ、利用者からの要望や利用状況も考慮し、必要な見直しを行ってまいります。
 また、区市町村や関係機関に休養ホームのパンフレットの配布や広報をお願いしてまいりましたが、今後とも、区市町村等の協力を得ながら、きめ細かな周知に努めてまいります。
 最後に、島しょ医療についてでありますが、都は、島しょ地域の町村に対して、医師等の確保や医療体制の整備などについて支援を行ってまいりました。中でも、現地の医師に対し、都立広尾病院と島しょの医療機関を結ぶ画像伝送システムを整備し、専門医がエックス線画像を通じた診療支援等を行ってきたところであります。
 本年十月、このシステムを更新し、画質や伝送速度の向上を図るとともに、双方向での症例検討などが可能なウエブ会議機能を設ける予定であります。これにより、現地の医師が画像や検査データ等を見ながら、リアルタイムで専門医の指導助言を受け、診断や治療を行うことが可能となります。
 今後とも、こうしたきめ細かい支援を通じて、島しょ医療の確保を図ってまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) ソーシャルビジネスについてのご質問にお答えいたします。
 ソーシャルビジネスの育成は、新事業の創出という観点からも重要であると認識しております。
 このため、都では、平成十九年度より、ソーシャルビジネスを起業しようとする方に資金調達や経営のノウハウ等を伝える社会的企業家育成セミナーを実施してまいりました。
 また、平成二十一年十月より、社会的事業の専用相談窓口であるソーシャルベンチャーセンターを開設し、ソーシャルビジネスの起業に関心を持つ潜在層を対象として、セミナーや個別のアドバイス等を行っております。また、社会貢献活動を実施しようとする法人に向けましても、セミナーを行っております。
 さらに、今後、ソーシャルビジネスの事業者とその潜在層を交流させ、お互いのビジョンの共有やアイデアの探求、パートナーシップの構築等を促進してまいります。
 こうした取り組みによりまして、ソーシャルビジネスのすそ野を拡大してまいります。
   〔病院経営本部長中井敬三君登壇〕

○病院経営本部長(中井敬三君) 都立多摩総合医療センター及び小児総合医療センターの利用者向けの宿泊施設についてお答えいたします。
 このたび開設した両センターは、多摩地域の拠点であると同時に、島しょ地域を含む東京都全体の医療水準の向上にも資するものであります。
 小児総合医療センターでは、専門性の高い医療を提供していくことから、長期にわたる入院を余儀なくされるケースも想定されるため、患者さんのご家族が安価に宿泊できる施設を整備いたしました。
 運営は、難病児及びその家族に対する支援事業を行っている公益財団法人が担っており、島しょ地域の方々にも大いにお役に立つものと考えております。
 また、多摩総合医療センターについては、都立広尾病院が引き続き、島しょ地域の基幹病院としての役割を果たす中で、島しょ住民の利用実績が今後どう推移するかなどを見ながら、対応を検討してまいりたいと考えております。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、羽田空港の朝の騒音対策についてでございますが、羽田空港では、現在、離陸回数をふやすために、最も出発便が集中する朝の七時台の五便に限りまして、大田区の市街地上空を飛行させる運用を行っております。
 国は、騒音を軽減するため、機材の低騒音化なども含め、再拡張後の運用につきまして、地元大田区と協議を行っております。
 都としては、航空機騒音を低減することは、地域の人々にとって重要な課題であることから、国に対しまして、十分な対策を講じるよう引き続き働きかけてまいります。
 次に、大田区内陸部における騒音対策についてでございますが、一昨年九月、横田空域の一部返還がなされ、飛行時間の短縮や燃料削減などにつながる効率的な飛行ルートの設定が可能となり、羽田から西方面に向かう便が、都内上空を含む三つのルートで運航されることになりました。国によると、これらのルートでの運航に当たっては、市街地上空に入る前に、東京湾上で高度を稼ぐなど、騒音に配慮しているとのことでございます。
 都としては、引き続き実態を把握するとともに、国に対し、環境に十分配慮した運航が行われるよう求めてまいります。

○副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事に都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後六時三十六分休憩

   午後六時五十六分開議

○議長(田中良君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十二番神野吉弘君。
   〔五十二番神野吉弘君登壇〕

○五十二番(神野吉弘君) まずは、これまでも品川区選出の先輩議員の皆さんがたびたび質問し、その問題点を指摘してきました首都高品川線についてであります。
 平成十六年以来、五反田地区の三十町会が合同連絡会を結成し、五反田換気塔建設反対を訴えてまいりました。あれから六年、当初の計画から比べれば換気塔には除じん、脱硝装置が装備され、有害物質の約八割が除去されるようになりました。
 換気塔のサイズもスリムになり、当初から比べれば威圧感も少なくなった。これまでの都の努力は十分評価をするわけでありますが、この連絡会の主張は、あくまで換気塔の廃止。地域エゴによって道路の建設反対を訴えているわけではなく、私たちは、子や孫に大気汚染を残したくない、このスローガンどおり、無公害道路の実現を求めているわけであります。
 先般発表された東京都の「十年後の東京」への実行プログラムによりますと、美しいまち東京の復活、世界で最も環境負荷の少ない都市の実現といった美辞麗句が並んでいるわけなんですが、これまででも三十九本、首都高品川線や外環道などで、これから十八本もの異様な煙突が東京のまち中に林立をするわけであります。これで果たして美しいまちの復活になるのでしょうか。
 そもそも有害物質を空中高く吹き上げるという考え方そのものが時代に逆行するものであります。健康被害が予測をされるが放置をするでは、不作為の作為であるといわざるを得ません。これで果たして世界で最も環境負荷の少ない都市の実現になるのでしょうか。
 過去の水俣、四日市等の教訓からも、有害物質は大気拡散ではなく、その発生源で除去する総量規制が公害防止の基本であります。有毒排気ガスをばらまく地上道路に比べて、トンネル道路はガスの制御が可能なんです。
 都は、住民の健康第一、環境第一、環境立国日本の先頭に立つの気概を持って、換気塔建設を再考すべきであると考えますが、都のご見解を伺います。
 東京都は、換気塔をつくる理由の一つとして、万一のトンネル火災発生時、高熱の火災まじりの煙を高さ四十五メートルの煙突から排出をすることができるので、周辺の安全を守ることができるということを挙げています。
 しかし、トンネル内での火災発生に際して、そんな危険な煙が発生するならば、五反田にできる高速入り口近辺で火災が発生した場合には、その入り口から煙が噴出をし、周辺住宅に大きな危険が生じることになります。
 東京都は、その対策も含め住民に何も告知をしていません。トンネル内での火災発生時の消火対策はそんなに脆弱なんでしょうか。また、高速入り口周辺に対する危険対策をどのようにお考えなのか、見解を伺います。
 また、換気塔は一本ではありません。首都高新宿線を含めると、約二十キロの間に二十本の煙突群が南北に連なるわけであります。都の説明によると、五反田換気塔単体での空中拡散による沿道の大気質の影響のみを論じるわけなんですが、例えば、強い北風のときは、有毒排気ガスが品川区に集中降下をするおそれがあるわけです。
 都は、換気塔建設のもう一つの理由として、今後エコカーがどんなに普及をしたとしても、大型車両の対策がおくれるため、トンネル道路の排気ガスに含まれる有害物質はなくならない、だから大気拡散が必要だと主張するわけです。
 しかし、換気塔から拡散させても、有害物質を吸わせるのが、沿道住民から周辺住民に変わるだけで、結局都民に有害物質を吸わせることには変わりがないわけであります。
 解決策は、今後のエコカー普及を加速度的に早める対策を都が講じればよいだけの話。ディーゼル規制のときのように、財政措置を伴った大型車の対策強化を行えば、有害物質を一〇〇%抑えることができるわけです。その可能性を見越せば、換気塔を建設しないで済むわけであります。換気塔中止についてのご見解を伺います。
 地元合同連絡会では、平成十八年に換気塔をなくす技術アイデアの一般公募を行いました。換気塔建設にただ反対するのではなく、予算の乏しい中、優秀賞には五十万円の賞金をつけて全国からアイデアを募るという、この種の活動では極めて斬新な手法を使ってでも、換気塔をなくしたいという熱意のあらわれであるわけであります。
 優秀賞には、例えば土を通して有害物質を除去する土壌脱硝、霧状の水をトンネル内に常に散布をして、有害物質を文字どおり水に流してしまうといったアイデアなど、ユニークな意見が見受けられたのでありますが、中でも地元の期待を集めたのが、石油や天然ガス輸送に使うパイプラインのような高強度の鋼管を使って、有毒排気ガスを遠方まで送って一括処理をするというアイデアでした。
 しかし、都の回答は、実績がない、今からでは間に合わない、有毒ガスの無害化は、現在の技術では不可能。環境都市を目指すとした東京都の気概が一切感じられない結論であったわけであります。
 実績がないからできないでは、何の前進もあり得ません。都は、この地元から挙がった技術提案に前向きな姿勢で臨んだんでしょうか、どんな検討を行ったのでしょうか、お伺いをいたします。
 次に、既に着手している五反田換気所の工事について、地元が抱いている懸念に関する質問をさせていただきます。
 今回の換気所設置のための掘削工事は、山手通り沿道建物から直近で五メートル、かつ建物の地下くいの長さの二倍以上の深さに達するものであって、周辺住民の最大の懸念は、不同沈下によって建物が傾いてしまうことであります。この不同沈下の有無を継続的にチェックをし、その情報を地元住民に公開する方策を伺いたい。
 さらに、この不同沈下に対する防止策を講じることは都として当然のこととして、工事に絶対安全はないと考え、二次工法、つまり万一の沈下復旧対策を当然研究してあるはずと考えるが、その工法を伺いたい。
 さらに、本工事の地盤は軟弱で、大量の湧水が出ることを地元はわかっているわけでありますが、工事における大量湧水対策をお伺いいたしたいと思います。
 続きまして、東京都の税制度についてお伺いをします。
 平成二十二年度予算案における都税収入、四兆一千五百億。前年度に比べて六千億の大幅な減収を受けて、都の財政は大変厳しい状況に陥っております。
 しかし、それ以上に大変な状況にあるのが、納税者たる東京都民。長引く不況の中でも粛々と納税をされていらっしゃるその姿には頭が下がる思いであります。
 この光景が生み出されるのは、納税を果たさなければ罰せられるといった法律の力があるからでしょうか。決してそうではありません。政治不信が声高に叫ばれる中にも、都政に対する確固たる信頼感あったればこそであります。
 百の法律をつくり、千の立法をなすとも、都民のこの信頼感を醸成することはできないのであります。ならば、東京都も、みずからの財政事情を嘆く前に、納税者たる都民の立場を考えるべきであります。納税者の苦境を推しはかるべきであります。
 法律の力によらない部分での都民の信頼にこたえるためには、東京都も法律の規定を盾にして逃げるのではなく、おのれの仕事の増加をいとわず、真に納税者の立場を考えた都税の制度をつくるべきであります。
 その観点から、東京都の税制度について何点かの質問をさせていただきます。
 初めに、固定資産税についてであります。
 共有の固定資産に対する固定資産税の納税通知書は、現行制度では、だれそれ外何名として告知をされている。例えば、親からの相続、その他の理由で共同購入によって取得をした不動産では、登記簿上の筆頭所有者に対してその物件全体の納税通知書が送付され、共有者への徴税はその筆頭者にゆだねられてしまっているわけです。
 一つの不動産を共有している当事者同士であっても、その人間関係また地理的な状況は千差万別、納税通知書が送付された当事者が立てかえ払いをして固定資産税を納付しても、その立てかえ分を徴収する際に、多大な負担が生じているのが現実であります。
 当局は、共有の不動産に係る固定資産税は、地方税法によって連帯納税義務が課されている、法が改正されない限り、その取り扱いを変えることができないというご意見でありますが、これは都の徴税面の容易さを担保するための説明としか思えない。
 本来、徴税者である都が行うべき業務を納税者に肩がわりをさせてしまっているわけなんです。納税者の利便性を考えるなら、共有の固定資産については、その共有者ごとに課税標準及び税額を計算して、それぞれに納税通知書を送付すべきであります。
 納付されなかった税額について、連帯納税義務を主張するならいざ知らず、連帯納税義務を理由として共有者に徴税業務を負わせるのは、極めて一方的なやり方ではないかと思われますが、ご見解を伺います。
 続いて、固定資産税の審査申し出についてであります。
 固定資産税は、申告課税とは異なって賦課課税であります。つまり、東京都が評価を行い、税額を算定して課税をする。であるからには、課税客体である土地、家屋の評価を行うに当たり、十分に個別の要素が勘案され、きめ細かな配慮が行われる必要があるわけであります。しかるに、土地にあっては、地価公示価格の七割を基礎として算定した評価額に負担調整率を掛けて課税標準額が算定をされている。一筆一筆の個別要因が十分その評価に反映されているわけではないのです。
 家屋にあっても、その再建築価格に経年減価補正率を掛けて課税標準が決定をされているわけなんでありますが、この経年減価補正率は、家屋の減価償却に比べて減価の割合が遅い。残存価格が残り二割で据え置かれ、たとえ耐用年数を過ぎても減額されないという不満の声をよく聞くわけであります。
 納税者は、その評価額に不満がある場合には、三年に一度の評価がえの年度において評価審査委員会に審査の申し出を行うことができるのでありますが、いただいた資料によると、その件数、平成二十一年度で、土地にあっては三百三十二件、家屋にあっても百八十五件、約二百六十万件の課税件数に比べて非常に少ない。ちまたの不満に比べて余りにも少ないのであります。
 その理由として考えられるのが、審査申し出を行うことに対するハードルの高さではないでしょうか。当局は、評価に対する問い合わせに対して、窓口で対応しているといわれるのでありますが、審査申し出をしてもむだですよとの指導では、納税者の申し出の気持ちに水を差すことになってしまう。納税者サービスの意味からも、審査申し出がもっと気軽に行えるよう指導すべきだと考えますが、ご見解を伺います。
 また、現行の三年に一度の審査申し出ではなく、納税者が不審に思ったら、いつでも申し出が行えるよう制度改正すべきと思いますが、あわせて伺います。
 次に、これまでにも何度か質問がなされているわけなんですが、現在の中小企業の現状を見るにつけ、事業税の繰り戻し還付について、私も改めてお伺いをしたいのであります。
 既に法人税では、欠損金の繰り戻し還付の制度が復活をしております。これまでの質疑でも明らかなように、事業税における同制度の導入にはハードルが高いことも十分承知をしています。
 しかし、今はまさしく緊急事態です。中小企業支援は、その資金繰りを支援することが大切だ、この見解は、新銀行の質疑でも都は再三繰り返しているじゃないですか。事業税の繰り戻し還付の導入について、改めてご見解を伺いたいと思います。
 最後に、都税事務所の納税者管理についてお伺いをいたします。
 国税をつかさどる税務署では、税理士、公認会計士が納税者の税務代理を行っている場合には、税務代理権限証書を提出させ、調査や問い合わせについて、納税者本人に通知を行う前に、その内容に詳しい関与税理士、会計士に必ず事前通知を行うことになっている。しかし、都税事務所ではその対応が徹底しておらず、関与税理士、会計士に連絡する前に納税者本人に連絡をとってしまい、無用の混乱を生じさせるケースが多々あるわけなんです。
 当局は、税務代理権限証書の提出があれば事前通知を行っているとのことですが、都税事務所によっては、税理士、会計士に対する積極的なその証書の提出をお願いしていないのが現状なんです。
 都は、混乱を防ぐためにも、各都税事務所に対してこの権限証書提出の周知徹底を図るべきだが、ご見解をお伺いして質問を終わります。(拍手)
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 神野吉弘議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、中央環状品川線五反田換気所の換気塔についてでございます。
 中央環状品川線は、首都圏三環状道路の一つとして、高速道路全体のネットワークを効率よく機能させ、人と物の円滑な流れを実現するとともに、一般道路の渋滞緩和や環境改善にも大きく寄与する路線でございます。
 本路線の整備によるCO2の削減効果は、日比谷公園の面積の約五百倍に相当する森林が吸収する年間約九万トンにも及びます。
 品川線の整備に当たっては、沿道環境への影響が最も小さい地下構造を採用しており、排気ガスの換気や火災発生時における排煙のため、換気塔の設置が不可欠でございます。
 なお、環境影響評価の結果からも、換気塔の供用に係る二酸化窒素及び浮遊粒子状物質の影響は極めて小さく、いずれも環境基準を満足しております。
 次に、トンネル内の火災対策についてでありますが、品川線は、新宿線と合わせて延長約十八キロメートルに及ぶトンネル構造となることから、トンネル内の防災対策は極めて重要でございます。
 このため、品川線は、既に開通をしている新宿線と同様に、道路トンネルの非常用施設としては最も厳しい基準に基づき、火災検知器、水噴霧、避難通路などの設備を設置するとともに、独自の取り組みとして、災害時に迅速な対応が可能なバイク隊の導入など、万全の防災対策を講じる計画としております。
 また、トンネル入り口付近で火災が発生した場合、ジェットファンなどにより、煙をトンネル方向に吸気する仕組みとなっております。
 次に、低公害車の普及や大型車対策の強化による換気塔の建設中止についてでございますが、今後、低公害車の普及や大型車対策が進んだとしても、トンネル内の火災発生時における排煙のため、換気塔の設置が不可欠でございます。
 なお、品川線の環境影響評価では、地域の気象条件を踏まえて、年間の風向、風速の状況を強風時も加味をし、評価した結果、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質は環境基準を下回っていることから、環境への影響は極めて小さいと考えております。
 次に、地元合同連絡会からの技術提案に対する検討についてでございます。
 都は、首都高速道路株式会社とともに、提案された換気方法のアイデアについて、実現の可能性や実施による効果などを検証してまいりました。例えば、土壌脱硝やパイプラインを利用するアイデアにつきましては、新たな施設を建設するための広大な用地の取得が必要となること、また、水を利用して有害物質を除去するアイデアにつきましては、二酸化窒素の除去率が二〇%程度と低いことなどの理由から、いずれも採用できないものと判断をいたしました。
 なお、地元合同連絡会には、平成十九年、二度にわたり、意見交換会において根拠をお示しして丁寧に説明をしております。
 最後に、工事における不同沈下及び湧水対策についてでございます。
 五反田換気所の施工に当たりましては、変形しにくく、止水性にすぐれ、周辺地盤への影響が少ない柱列式連続壁工法の採用や、地盤改良などにより、不同沈下及び湧水対策を講じることとし、これを前提に環境影響評価法に基づく調査予測を行い、地盤沈下及び地下水位への影響は極めて小さいと評価をしております。
 さらに、地盤高や地下水位を継続的に観測し、万一、地下水位に異常な低下が認められた場合には、周辺地盤へ水を注入し、水位を復元するなどの措置を講じることとしております。
 引き続き、観測結果など工事の状況につきましては、地元への説明に努めてまいります。今後とも住民の方々の理解と協力を得ながら、中央環状品川線の平成二十五年度開通に向け、整備を着実に進めてまいります。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) 五点の質問にお答えいたします。
 まず、共有の固定資産に係る納税通知書についてでありますが、地方税法では、共有物については、共有者が連帯して納付する義務、いわゆる連帯納税義務を負うこととされており、筆頭者に対して納税通知書を送付しております。
 これは、権利を共有する者は義務をも共有するということでありまして、租税の確保を図る観点から、必要な制度であると考えております。
 ただし、都におきましては、特に納税者からの申し出があった場合には、共有者全員の合意に基づき、それぞれに全税額を記載した納税通知書を送付した上で、持ち分に応じた納付ができる取り扱いを設けております。
 次に、固定資産税の審査申し出についてでありますが、納税者から評価の問い合わせを受けた場合には、評価の制度や内容等について十分丁寧にご説明をし、それでもご納得いただけない場合には、審査申し出の手続等について十分周知を図っているところでございます。今後とも、適切に対応してまいります。
 次に、審査申し出ができる期間についてでありますが、地方税法により、納税通知書を受け取った日から六十日まで、ただし、評価替えの後、第二、第三年度において価格が据え置かれた場合は、審査申し出の対象とはならないものとされております。これは行政処分の効力を早期に安定させるためのもので、制度改正すべきであるとは考えておりません。
 次に、中小企業に係る欠損金の繰り戻し還付制度を法人事業税にも適用することについてでありますが、都といたしましては、各地方団体の財政規模が法人税を扱う国と比べて小さいことから、多額の還付金等の発生により、地方団体の財政運営に支障を来すなどの問題が生じるおそれがあると認識しております。
 最後に、税務代理権限証書についてでありますが、税理士は、税務代理をする場合においては、税務代理権限証書を税務官公署に提出しなければならないと税理士法で規定されております。このことにつきましては、周知徹底を図るまでもなく、当然ご承知いただいているものと理解しております。
 なお、税務代理権限証書について各都税事務所に問い合わせがあった場合には、引き続き適切に対応してまいります。

議長(田中良君) 四十三番高橋信博君。
   〔四十三番高橋信博君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○四十三番(高橋信博君) 初めに、アジアを視野に入れた産業振興について伺います。
 世界金融危機を契機とした景気後退と円高の継続など厳しい経済状況の中で、日本を訪れる外国人旅行者数は六百七十九万人、二割減と前年を大きく下回ることとなりました。しかし、中長期的な視野に立って観光を俯瞰すれば、世界規模でのアジアの交流人口の伸びと、それによる経済波及効果の増加は、依然としてますます期待されます。
 先月十四日、中国の旧正月である春節の際には、東京のあちこちでショッピングや観光を楽しむ大勢の外国人旅行者の姿をたびたび目にしました。中国、香港、台湾などの中華圏の方やシンガポールなどの方々が、春節前後の長期の休暇期間を利用して、日本への旅行を企画されたのだろうと思います。
 新聞やテレビでも、二月の閑散期に大勢のお客様を迎えた銀座や秋葉原などの、買い物客でにぎわう様子が報道されました。お土産に家電製品や化粧品をまとめ買いし、高額なブランド品や嗜好品を購入、また、グルメや温泉なども満喫して帰っていきました。
 この旅行者の姿は、アジア諸国の急速な経済成長に伴う富裕層や中間所得者層が急増していることを、目に見える形で実感させられるものでした。
 春節休暇前の報道によれば、今回の春節の期間中に、中国からの世界各地を訪れる海外旅行者数は過去最大規模の延べ千二百万人に達する見通しとのことであり、また、休暇後には、中国の銀行カードである銀聯カードの海外での決済額も、この連休中に前年同期比八割増だったとのことで、このカードを国外で利用するケースが急増しているようです。
 海外で存在感が高まる中国人観光客の消費の動向に、世界じゅうから熱い視線が注がれております。
 このように、アジア諸国の中でも、昨年七月には個人ビザ解禁の追い風もあり、国別の訪日旅行者数に関する一月の発表の中で唯一前年を上回った中国は、外国人旅行者誘致に当たり、特に取り組みを進めるべき市場であると思います。富裕層や若者層などさまざまな層で、東京の多様な魅力に引かれて、今後もますます旅行者がふえていくと確信しております。
 また、中国は既に羽田空港への定期チャーター便を有しておりますが、十月の国際化、再拡張の機には、便数の増加なども期待できるところであるから、この機会を活用して、今後の観光振興に取り組むことが肝要であると考えます。
 そこで、今後も旅行者の増加が期待できる中国を初めとしたアジア市場について、知事の認識を伺います。
 今、私が紹介した、中国からの旅行者の日本国内での旺盛な消費活動などは一例でありますが、最終消費市場としてアジア諸国が注目を集めています。
 例えば、財務省のホームページに掲載されている、貿易相手国上位十カ国の推移、二〇〇八年輸出入総額年ベースを見ると、日本の貿易相手国の一位は中国、三位が韓国、四位台湾、八位タイ、九位インドネシアと、東アジアやASEAN諸国が半数を占めております。
 一方、冒頭でも申し上げましたが、我が国経済は、一部に景気持ち直しの報道も見られるものの、一昨年の世界的な金融危機に端を発した不況から抜け出し切らず、いまだ先行きは不透明であり、私の地元の中小企業経営者からも、不況の影響で受注が減り、工場の稼働率が回復していないといった声が多数寄せられています。都民や中小企業経営者から見れば、景気回復の実感はないという意見が大多数ではないでしょうか。
 我が国経済の回復力の弱さは、まさに今、日本経済が陥っている状況を変えるような有効な産業政策、経済政策を、国が十分に打ち出せていないことの証左でもあります。
 その中で都は、厳しい財政状況にもかかわらず前年比二〇%以上の増予算を組むなど、積極的に中小企業支援に取り組んでおり、大いに評価いたします。今、都政に求められているのは、都民の生活を根底から支える中小企業が現在の危機を乗り越え、将来に向けて展望を開くことができるような施策ではないでしょうか。
 とりわけ経済のグローバル化が進む中、アジア市場に活路を見出したいという企業もありますが、海外との取引経験がある中小企業はまだ少なく、実際にはなかなか踏み出せないのが実情と聞いています。
 東京に集積する、高度で多様な技術を次世代につなげていくため、これまでも都は、数次にわたる補正予算を組み、さまざまな施策を打ち出してきました。さらに、すぐれた技術や製品を持つ都内中小企業が積極的にアジア市場での販路開拓に挑戦できるよう、都として一層の支援を進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、都市農業の振興について伺います。
 我が東京都議会自由民主党都市農政を考える議員連盟は、先月、農業者の方々との意見交換会を開催いたしました。その中で農業者の方の喫緊の課題は、やはり農地制度と税制度でありました。
 都から国へは、毎年、農地制度と相続税制度の改善を要望しており、自由民主党政権時代には、国において都市農地の検討が進められておりました。しかし、現在、この検討も中断され、市街化区域内農地の制度改善は五里霧中の状況です。このままでは都市農地は相続のたびに減少し、近い将来、東京から農地がなくなってしまうでしょう。
 農地制度、相続税制度は国の所管であり、都として、引き続き国に要望、改善を行ってほしいと思います。
 一方、都としてもやることがあります。その一つは、農家の経営という面から都市農業、都市農地を支えることです。
 都が、農業生産や流通に対して長年にわたり農家を支援しており、こうした取り組みもあって、東京の農業は、国の農業施策の対象から外れてきた市街化区域内においても農業経営が続けられてきたことは評価いたします。しかし、農地の減少が進む中、さらに一層、都内農業者が経営力を向上させ、認定農業者等の農業の担い手が将来に希望が持てる農業を確立すべきであります。
 そこで、認定農業者等の農業の中核的な担い手に対して、都はどのように支援していくのか伺います。
 現在の東京の農家は、都市化の波を乗り越え、消費者ニーズにこたえた農業生産ばかりでなく、東京ウドやナシの「稲城」など、全国に誇れる特産農産物の生産や、江戸東京野菜の亀戸大根、ノラボウナ、馬込半白キュウリ等の希少価値を持つ農産物の生産を行いながら農業を続けております。この江戸東京野菜は、地域色豊かな農産物として、食育や地域おこしのシンボルとして注目されており、品川区では品川カブを食材に取り入れる料亭やレストランもあり、また、墨田区では寺島ナスが小中学校で食育の一環として栽培されております。
 このような取り組みには農業者が積極的にかかわっており、生産ばかりでなく、新たな工夫を加えた農業経営も行われるようになっております。
 さらに、ブルーベリーやニンジンからつくったジャムや、生乳からつくったアイスクリームやヨーグルトなどの販売、また、ブドウやナシ、花などのもぎ取り、摘み取り農園の経営など、新たな取り組みにより農業の二次、三次産業化に取り組んでいる方も多くいらっしゃいます。しかし、生産ばかりでなく、加工、流通、販売へと多角化させるほど、農業経営は複雑になり、それに伴う農家の負担も増します。
 そこで、施設整備に対する支援だけではなく、農業経営の多角化に伴う農家の負担を軽減するため、都はどのような支援を行っていくのか伺います。
 次に、玉川上水の整備保全について伺います。
 玉川上水は、豊かな自然が大きな魅力であり、多くの文人、芸術家が周辺に居を構えたり、作品に写しとったりしてきました。
 最盛時には一日に六万人もの花見客が訪れたという名勝小金井桜、雑木林の新緑、紅葉など、四季折々に色を変えて、散策する者の目を楽しませてくれます。また、江戸時代、武蔵野台地の発展、開発に果たした役割ははかり知れず、玉川上水は武蔵野のルーツといっても過言ではありません。
 そうした極めて価値の高い玉川上水を適切に保全し、次世代に確実に継承していくため、昨年八月、史跡玉川上水整備活用計画が策定され、いよいよ平成二十二年度から具体的な取り組みがスタートいたします。
 この計画に沿って各施策を円滑に進めていくためには、都民、わけても日ごろから玉川上水に親しんでいる地元住民の理解、協力が不可欠であり、地域を挙げて整備保全への機運が高まることが非常に大事であります。
 そこで、この整備活用計画を、都民や地元住民に対してどのように周知していくのか伺います。
 この計画は、私がかねてからさまざまな機会をとらえて主張してまいりましたように、玉川上水がより人々に親しまれ、そのかけがえのない価値を後世に引き継いでいくための非常に意義深い取り組みであり、計画に沿って着実に実施されることを強く期待しております。
 特に、上水堤を彩る美しい景観が昔から親しまれてきた名勝小金井桜については、保存のための取り組みが、平成二十二年度から早速動き出すと聞いております。
 そこで、この名勝小金井桜の保存を初め、整備活用計画の実現に向けてどのように取り組んでいくのか所見を伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 高橋信博議員の一般質問にお答えいたします。
 アジアからの旅行者誘致についてでありますが、観光は、関連する産業のすそ野が広く、経済波及効果や雇用創出効果が大きいために、かねてからその振興に力を入れてまいりました。
 現在、欧米では、すしが大変なブームになっておりますが、すしがここまで世界的に広がったのは、これは決して日本人が売り込んだものではなくて、繊細な魅力を持つすしのよさを欧米が発見し、広めたためであります。
 このことは、他国にない日本固有の文化がすぐれた観光資源になることの証左でありますが、どうも日本人は今まで、自分の持てる文化の異質性、相対的な高さというものに自負を持って、それを踏まえた観光振興を図るといった視点がいささか欠けていたような気がいたします。
 今後は、こうした視点に立って、観光振興を展開することが必要であると思います。
 一方、アジアについては欧米とは異なり、文化の類似性も存在しますが、文化に着目するという発想や視点を大切にして外国人旅行者の誘致に生かすことが、同じく重要であると思います。
 近年、アジアからの旅行者は、その経済成長を背景に拡大の傾向にあります。中でも中国からの旅行者は、昨年七月に個人観光ビザの発給が開始されたことなどから、その伸びが極めて大きくなってきております。
 ことし十月に、宿願であった羽田空港が再拡張、国際化されることに伴い、さらなる訪日旅行者の増加が見込まれることから、これを契機に、中国を初めとするアジアからの旅行者誘致に積極的に、多角的に取り組んでいこうと思っております。
 今般任命されました観光庁の長官ですか、東京に知恵と協力を求めて来られるそうでありますけれども、喜んでお目にかかって、こちらからも東京の売り込みをしますし、政府と力を合わせて──何といっても、日本の首都東京であり、これだけ集中、集積の進んだ東京でありますから、その魅力というものを国もやはりしっかり認識して、協力してもらいたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の海外販路開拓への支援についてであります。
 経済のグローバル化が進む中、成長著しいアジア市場での販路開拓を目指す中小企業を応援することは、極めて重要であると認識しております。
 都はこれまでも、ベトナムを中心に、都内中小企業の海外事業展開を支援してまいりました。来年度からは、機械、金属などの分野別に配置した専門家が、商材の目ききや貿易に関する相談に対応するとともに、商社のネットワークを活用した現地の市場動向の情報収集、提供などを行うことといたしました。
 これらにより、すぐれた技術や商品を持つ都内中小企業の、アジアにおける販路開拓を強力に後押ししてまいります。
 次に、農業の中核的な担い手に対する支援についてでありますが、これまで都は、魅力ある都市農業育成対策事業を実施いたしまして、生産や流通の施設整備等への支援を行ってまいりました。しかし、農業の中核的な担い手が将来に希望を持って農業を行うためには、施設整備に加えまして、経営力の向上を図ることが重要であります。
 このため、来年度から都市農業経営パワーアップ事業を開始いたします。本事業では、支援の対象を、認定農業者等、農業経営の改善目標を設定した農業者といたしまして、都が施設整備と農地整備を総合的に支援するとともに、専門家の派遣などのソフト支援もあわせて行えるよう、支援体制の強化を図ってまいります。
 こうした取り組みにより、都市農業の中核的な担い手であります認定農業者等の経営を支援してまいります。
 最後に、農業経営の多角化に伴う農家の負担の軽減に対する支援についてであります。
 都市農業において、農業者が加工や販売等の施設等を整備して、二次、三次産業化に取り組むなど農業経営を多角化することは、経営を安定させる上で有効であります。しかし、農業経営が多角化するのに伴いまして、商品の開発、加工、販売などに専門的な知識を要する事例や、収支見込みの甘さによる経営問題の発生などが増加しております。
 このため、来年度から開始いたします都市農業経営パワーアップ事業においては、農業改良普及センターが中心となりまして、区、市、町、農協等で構成する地域支援チームを設置し、地域の実情に応じた指導、支援を行ってまいります。
 さらに、専門家による商品開発への支援や加工品のレベルアップ、販路拡大への支援、経営コンサルタントや税理士の派遣による的確な診断に基づく経営改善指導によりまして、農業者を支援していくこととしております。
 今後とも、この事業を着実に推進するなどして、農業者の負担軽減を図り、農業経営力のさらなる向上に努めてまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、史跡玉川上水整備活用計画の周知についてでございますが、史跡玉川上水を良好な状態に保全していくためには、適時適切な情報発信を行い、都民や地元の皆さんの理解を得ていくことが重要であると認識しております。
 このため、水道局ホームページを通じて、玉川上水に関するさまざまな情報にアクセスできるように工夫するとともに、今後作成するパンフレットには、利用者の視点に立った散策に役立つ地図などを織り込み、その配布に当たっては、近隣文化施設や地元自治体等との連携を図ってまいります。
 特に、玉川上水を身近で守り続けている地元の皆様に対しては、整備予定など、より詳細な情報を地元自治体の協力を得ながら提供してまいります。また、小川水衛所跡地など周知効果が高い場所に、計画の目的や効果を記載した案内板を掲示してまいります。
 これらを実施することにより、地元の皆様はもとより散策に訪れる方々にも、より一層の理解と協力を得てまいります。
 次に、整備活用計画の実現に向けた取り組みについてでございますが、名勝小金井桜の保存につきましては、地元自治体、地元団体等との協働により、山桜並木を形成していくため、モデル区間を設定し、先行して整備を進めることとしております。
 平成二十二年度は、小金井公園正門前の東側約百五十メートルの区間におきまして、桜を被圧する樹木の伐採や、補植場所の地元への提供を行います。
 また、貴重な土木施設、遺構である玉川上水を適切に保存するための護岸工事や、水衛所跡地を利用した散策路の改善につきましては、二十三年度からの施工に備え工事手法の検討を進めてまいります。あわせて、視界を遮る水路内の中低木を伐採し、橋や緑道からの眺望を確保していくほか、フェンスデザインの統一に向けた関係機関との調整を行ってまいります。
 このような取り組みを着実に実施することにより、玉川上水の史跡としての価値を高め、都民に親しまれる水と緑の空間として、次世代へと確実に継承してまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 五十三番鈴木勝博君。
   〔五十三番鈴木勝博君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○五十三番(鈴木勝博君) 私からは、東京の最重要課題であります雇用政策、そして産業政策について質問をいたします。
 正社員四七・五%、パートタイマー四八・二%、派遣社員六〇・九%、この数字は雇用不安を持っている人の比率です。つまり、現在日本では、正社員であろうと非正社員であろうと、二人に一人が雇用不安を抱えているということです。
 私は、民間企業で二十年間、雇用にかかわる仕事をしてきましたが、これほど雇用に不安を感じる人が多い時代を初めて経験しています。終身雇用体制の崩壊、リーマンショックによる不況、そして規制緩和による非正規社員の増大、企業の成果主義の導入など、さまざまな要因があると思います。
 この雇用不安を取り除かない限り、個人消費もふえず景気回復はおくれ、また、子どもを安心して産み育てることができず、少子化対策も有効に機能しないということになります。雇用保険や労働派遣法の改正など、国の制度改革を待つ必要がありますけれども、東京で働く者の雇用は東京が守り、都民一人一人の雇用不安を取り除く、都独自の緊急雇用対策が強く求められています。
 都は、平成二十二年度の予算編成において、都民の雇用や生活への不安に対応する取り組みが最重要であるといっておきながら、国の緊急雇用対策予算を新たに増額しただけで、東京都独自の緊急雇用対策のために、予算を増額計上していません。職業能力の開発、向上に四十五億円の増額予算となっていますが、そのうちの二十五億円は多摩の職業能力開発センターの改築費用として計上されているもので、緊急雇用対策ではありません。
 都は、若年者やミドルの就業支援や生活安定に向けた貸付事業や相談窓口の設置など、さまざまな施策を実施してきましたが、今回の予算編成を見る限り、都独自の緊急雇用対策としては余りにも力不足と思うのですが、都の所見をお伺いします。
 また、予算化した、ふるさと雇用再生特別基金事業と緊急雇用創出事業の百七十三億円は、どのような雇用創出事業として利用され、どれくらいの雇用創出効果を見込まれているのか、都の見解をお伺いします。
 東京しごとセンターは、都の雇用対策を担う大変重要な拠点となっています。特に再就職をしたい若者やミドルの相談窓口となっており、年間二万人を超える新規利用者が訪れ、再就職やキャリアアップなどのさまざまな雇用相談に対応しています。国のハローワークではできない、キャリアカウンセリング中心のきめ細かなサービスは、東京都独自の雇用対策として大変価値のある施策です。
 しかし、三十七万人の失業者を抱える東京では、この程度の規模では明らかに不十分です。緊急雇用対策として都内主要ターミナル駅にしごとセンターを配置し、年間十万人規模の雇用を確保するキャリアカウンセリング体制を整える必要があると考えますが、東京しごとセンターに対する所見をお伺いします。
 職業訓練は失業対策のかなめとなる政策です。有効求人倍率が〇・五一と大変厳しい雇用環境の中、企業の求める人材は多様化、専門化し、即戦力となる人材の獲得という企業側のニーズと、求職者の能力に大きなスキルギャップがあることが問題となっています。このギャップを埋めるには、教育訓練以外に方法はありません。職業能力開発センターの重要性はますます高くなっています。
 現在の職業能力開発センターでは、一年制の普通科と六カ月の短期科が用意され、機械、電気、印刷、建築関係、介護、事務、被服など、多分野にわたり学ぶことができるようになっています。しかし、卒業後の就職を考えたとき、果たしてこの教育訓練内容と定員数で東京の雇用を守ることができるでしょうか。
 建築業界は、公共事業も減り、当然採用を手控えている就職困難業界です。印刷業界も、インターネット社会になり大変厳しい環境に置かれています。こういった社会の変化に合わせて訓練内容も毎年検討していく必要があります。訓練生を就職まで導くことが真の職業訓練であるという意味で、職業能力開発センターの訓練内容の見直しは急務であると考えますが、都の見解を伺います。
 また、中央職業能力開発センターの校舎は九階建ての立派なビルですが、訓練生の受け入れ人数は、一年制、短期科合わせて年間約四百八十名です。一般に私立の専門学校の場合、同じ条件の規模と立地であれば、一年制の普通科であれば八百名から千名の生徒を受け入れることが損益分岐点であると聞いています。
 私立の専門学校と比較すれば、これだけのスペースをもっと有効活用することは十分可能です。事実、受講したくてもできない生徒があふれているわけですから、都はできるだけ有効にこのセンターを活用する責任があります。活用できないのであれば、民間に委託することも視野に入れて検討すべきであると思いますが、都の職業能力開発センターの事業に対する見解をお伺いします。
 東京には大学、専門学校を初めさまざまな民間スクールがあります。その数は約二万を超えるともいわれています。これだけの教育機関が集積している大都市は、世界でも東京だけではないでしょうか。東京はあらゆることを学べる大都市でもあるのです。職業訓練に民間委託訓練という制度がありますが、さまざまなジャンルの教育機関と連携をして、多様化するあらゆる仕事に対応できる、都独自の職業訓練システムが求められていると思いますが、都の所見をお伺いします。
 ことしの大学新卒者の就職率は、昨年十二月時点で内定率七三%と、過去最悪の就職氷河期となっています。十万人以上の大卒者が、卒業しても就職できないという実態です。日本の大学のあり方そのものについて再検討する必要がありますが、都内でも多くの大卒者が失業者となって社会にあふれ出すことになります。新卒無就業者をニートやフリーターにしないための対策は急務です。
 そのためには四月以降も新卒者を受け入れる企業とのマッチングの場の提供を継続する必要があります。
 大学の就職課と連携し、就職できなかった学生をしっかりと把握し、職業紹介企業と連動しながら合同企業説明会をぜひとも継続していただきたい。一九九〇年代、バブル崩壊で就職できなかった大卒者が、大量に社会的経済的弱者に追い込まれた過去の過ちを繰り返さないためにも、都は独自の雇用対策を行うべきであると考えますが、見解をお伺いします。
 自動車業界の不況のあおりを受けた広島県では、今年度から、就職の決まらなかった四百名の未内定高卒者を対象に、受け入れ企業を探し、インターンシップを導入して、就職できるまで粘り強くフォローすることにしています。都においても、大卒者同様、高卒の未内定者に対して独自の雇用対策をとるべきであると思いますが、所見をお伺いします。
 次に、産業政策についてお伺いします。
 私は、二つの視点で産業政策を検討すべきであると考えます。
 一つは、都内の雇用創出に大きく貢献する内需型の産業成長戦略です。具体的には、医療、介護、飲食関係などの産業があります。医療分野では、医師、看護師、薬剤師、後発医薬品のMR、一般大衆薬の販売登録者など、さまざまな職種の人材が不足しています。介護の分野でも、介護福祉士、介護ヘルパーなどの人材が不足しています。
 今や日本の食文化は世界一です。東京の飲食産業は東京の雇用を支える最大のサービス産業にまで成長しました。これらの成長産業をしっかりと支援しながら、人材を確保するための雇用環境、教育システムを整備し、内需を拡大する総合的な施策が都に強く求められています。
 産業政策で欠かせないもう一つの視点は、外需型の産業成長戦略です。
 鳩山首相が掲げた東アジア共同体構想は、まず経済の分野で実現される必要があります。世界経済は中国を中心にアジアの新興国が牽引しています。日本が景気回復するキーワードは、アジアへの経済外交です。知事がオリンピック招致で実践した東京の外交戦略を、次は東京の景気回復のためにアジアに向けて展開されてはどうでしょうか。
 知事が「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇でおっしゃるとおり、東京は、都市として機能性、清潔さ、衣食住、どれをとっても世界を代表する大都市です。都市を支える公共インフラの整備事業においても、水道事業、下水道事業、交通事業、都市開発事業など、東京の公共事業の技術は世界一でもあります。八兆ドル、日本円で七百二十兆円、今後十年間のアジアの公共事業費です。
 このマーケットに知事みずから経済外交を展開することで、外需産業を成長させるエンジンとするのはいかがでしょうか。今年度から都が予定している水道事業のアジアでのセールスなどはその足がかりとなるでしょう。
 二〇一〇年はアジア大都市ネットワーク21の総会が東京で予定されています。アジアの都市が抱えるさまざまな課題に東京がどう支援できるか、インフラビジネスを含めたプロモーションの場として、アジアへの経済外交をされてはいかがでしょうか、知事の見解をお伺いします。
 外需を稼ぐもう一つの戦略は、ただいま高橋議員からありましたように、観光ビジネスです。
 平成二十一年の日本への訪日外国人は六百七十九万人、日本の持つ魅力はまだまだ世界に認知されていません。ことし早々の経済特需は確かに中国からの旅行者でした。日本政府観光局の調べでは、中国人の物品購入費は平均七万八千円と、欧米人の約三倍といいます。
 観光庁の調べでは、中国では年間四千五百万人の海外旅行者がいますが、日本への旅行者は百万人と、全体のわずか二%にとどまっています。東京のシティーセールスをアジア、特に中国を中心に展開されるべきであると思いますが、今後のアジアにおける観光戦略について、都の見解をお聞かせください。
 次に、中小零細企業への産業支援策についてお伺いします。
 政府の月例経済報告によると、景気は持ち直してきているが、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にあるとされています。しかし、中小企業景況調査によれば、業況判断DIはマイナス三六・四ポイントと、中小企業においてはとても景気の持ち直しを実感できる状況ではありません。
 私の知り合いのほとんどの中小零細企業の経営者は、資金繰りはもちろんだけれども、とにかく仕事が全くないということです。今こそ中小企業を守るため、仕事そのものを生み出すための産業施策が必要です。具体的には、企業に対し国内外の販路の拡大を図ることが有効です。
 東京のすぐれた製品、サービスを広く知らしめ、企業同士をマッチングさせる場の提供が必要です。
 都は、毎年、産業交流展を開催し、多くの来場者を集め、効果を上げていると伺っています。都内各地で展示、商談会を開催するなど、マッチングの場を提供し、ビジネスチャンスを広げることが重要な施策であると思いますが、所見をお伺いします。
 また、外需をうまく取り込んで、この厳しい経済状況下でも順調に業績を伸ばしている中小企業があります。こうした企業にあっては、成長著しいアジアの国々の需要を獲得しているケースが多く見られます。都は、こうした発展著しいアジア地域などを中心に、中小零細企業が海外にも販路を開拓できるように、強力に支援していくべきであると考えますが、見解をお伺いします。
 イタリアンレストランを経営する私の知人は、六年前に上海に渡り、今や七店舗までレストランをふやし、五月開催予定の上海万博では二千七百席のレストランを任されたそうです。ベンチャースピリッツで海外へも事業を広げ、成功している中小零細企業は数多くあると思います。都は、成功事例を紹介し、ノウハウを共有する場を提供し、日本の閉塞感を打ち破る企業が東京から世界を目指して進出できるよう、総合的な海外施策を実現することを要望しまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 鈴木勝博議員の一般質問にお答えいたします。
 経済を重視したアジアへの都市外交についてでありますが、アジアは米国、EUに並ぶ第三の極として、今後の世界の発展を牽引することは間違いないと思います。
 そこで、都内の中小企業のアジア市場への挑戦を後押しするため、これまでも海外の展示会への出展を支援するなど、アジア地域に対して東京の産業や技術を発信してもまいりました。
 加えて、先般、私の古い親しい友人であります、マレーシアのマハティール元首相に、彼が首相時代に創設したサイバージャヤのような、ややちょっとマレーシアには重荷の感じがしないでもない先端技術のセンターよりも、日本で非常に苦吟している中小企業、優秀な技術を持っている中小企業を思い切って誘致して、特恵区のようなものをつくり、そこで技術の開発と同時に製品の生産というものを考えたらどうだ、かつて隣のタイ国では、アユタヤ王朝に山田長政がつくった日本人町がありましたが、そういったものを考えたらどうだといいましたら、非常におもしろいことなので積極的に考えようということでありました。
 一方で、アジアの今後の発展にとって、水不足、交通渋滞、大気汚染などが大きな足かせとなっております。
 こうした諸課題は、首都東京が既に経験したものでありまして、上下水道などのインフラ整備、自動車公害対策などで協力ができると思います。課題を打破したアジアが安定して発展すれば、日本経済にも大きなメリットとなると思います。
 今後も、本年東京で開催するアジア大都市ネットワーク21総会など、さまざまな機会をとらえて、東京の産業をPRするとともに、アジア諸都市の発展に役立つ都政の持つノウハウ、人材、情報の提供も行いたいと思っております。日本とアジア諸国がともに利益を得られる、いわばウィン・ウィンの関係を築いていきたいものだと思っています。
 他の質問については、産業労働局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 雇用、産業政策に係る十一点のご質問にお答えいたします。
 まず、今回の予算におきます緊急的な雇用対策についてであります。
 これまで都は、国に先駆けて生活給付金つき職業訓練や雇用創出に取り組むなど、雇用情勢を踏まえた対策を適切に実施してまいりました。来年度は、さらに中高年の方々や女性を対象とした再就職支援事業を拡充するなど、都独自の取り組みを強化していくとともに、緊急雇用創出事業についても規模を大きく拡大して実施することとしております。
 こうした取り組みを進めるため、平成二十二年度の雇用対策関連予算は、対前年度比七八・三%増の三百六十八億円を計上いたしまして、現下の厳しい雇用情勢に積極的に対応しております。力不足とは考えておりません。
 次に、雇用創出事業についてでありますが、緊急雇用創出事業は離職者に対する臨時的なつなぎの雇用を確保するものであり、学校図書のデータベース化や放置自転車対策を初め、多岐にわたる事業を実施いたします。
 また、ふるさと雇用再生特別基金事業は、正社員など安定的な雇用へつなげることを目的とするものであり、地産地消の促進や森林整備などの事業を実施いたします。平成二十二年度はこの二つの事業を合わせまして、本年度の約一万人を大幅に上回る約一万七千人の規模で雇用創出を図ります。
 次に、しごとセンターのキャリアカウンセリングの体制等についてでありますが、求人、求職のミスマッチを解消し、求職者を適切な就職に結びつけていくためには、キャリアカウンセリングを行うとともに、これを踏まえた職業紹介を実施することが必要であります。
 このため、都では、区部と多摩のしごとセンターにおきまして、カウンセリングから職業紹介までを一貫して実施することにより、厳しい求人動向の中でも、利用者の希望や適性に合った就職を支援しております。
 次に、職業能力開発センターにおけます訓練内容の見直しについてであります。
 都におきます公共職業訓練は、就業が困難な求職者のセーフティーネットとしての機能を果たすとともに、産業の基盤を支える人材の育成を図ることも目的として実施しております。個々の訓練科目につきましては、求人動向などを踏まえて不断の見直しを行っております。
 次に、職業能力開発センターの施設の活用についてでありますが、職業能力開発センターでは従来から、民間が実施していない分野や、民間がやるとしても施設設備に多額の負担が生じる、こういった分野等の職業訓練を実施することといたしまして、その施設等は国の基準に基づきまして整備をしております。
 一方で、一度に大量の離職者が発生した場合や、民間を活用した方が技能の早期習得、早期再就職に効果的である場合には、民間教育訓練機関を活用しております。
 このように、民間との適切な役割分担のもとで職業能力開発センターの施設を有効活用して訓練を実施しておりまして、この点を度外視して民間との単純な比較をすることは適切ではないと思います。
 次に、民間教育訓練機関と連携した職業訓練についてでありますが、ご指摘をいただくまでもなく、都は従来から、大学を初め専門学校や企業等の教育訓練資源を最大限に活用し、委託訓練を実施しております。平成二十二年度においては、民間教育訓練を活用した離職者向け委託訓練を約七千人の規模で実施することとしております。
 次に、未内定大卒者の就職支援についてでありますが、新卒者の就職問題の本質的な解決のためには、国が明確な成長戦略のもとに実効性ある経済対策を進めて、雇用を創出することが必要と考えます。
 しかしながら、現下の新卒者の厳しい就職環境を看過することはできません。このため、都では、十一月と二月に新規大卒者等を対象とする合同就職面接会を開催し、内定を得られず就職活動を継続している学生さんの支援を実施してまいりました。
 さらに、三月中には区部と多摩のしごとセンターに新卒緊急応援窓口を設置することといたしまして、卒業後も就職活動を継続する新卒者に対しまして支援を実施してまいります。
 次に、未内定高卒者の就職支援についてでありますが、現下の厳しい雇用情勢のもとで、卒業までに就職が決まらなかった高校生についても、しごとセンターの新卒緊急応援窓口におきまして、一人一人の状況に応じたきめ細かい支援を実施することとしておりまして、未内定高卒者が早期に就職できるよう適切に支援してまいります。
 次に、アジアにおける観光戦略についてでありますが、近年、アジアからの外国人旅行者は増加しておりまして、都はこれまでも、中国、韓国、台湾などの東アジアで、旅行事業者、それから一般市民の方々に東京の最新情報を提供するため、旅行博の機会を活用したPRなどを行ってまいりました。
 今後とも、旅行商品の造成につながる現地旅行事業者の招聘、また現地の旅行雑誌への東京観光情報の掲載など、中国を初めとしたアジア地域における旅行者誘致に積極的に取り組んでまいります。
 次に、中小企業のビジネスチャンスの拡大についてであります。
 中小企業が商談会等を通じて取引先を開拓していくことは重要、そのように認識しております。都は毎年、産業交流展を開催いたしまして、すぐれた技術、製品を広く紹介するとともに、中小企業の交流の場を提供することで取引の創出につなげてまいりました。
 また、平成二十年度からは、より広域的な受発注取引を目的とした八都県市合同商談会を開催しております。さらに、今年度は、都内中小企業支援機関などと連携した商談会を開催し、中小企業の受注開拓を支援しております。
 最後に、中小企業の海外販路開拓への支援についてでありますが、都はこれまでも、ベトナムを中心として中小企業の海外事業展開を支援してまいりました。来年度からは、成長著しいアジア市場を目指す中小企業を後押しするため、商材の目ききや各種助言を行う専門家を配置することといたしました。商社のネットワークなども活用しながら、中小企業のアジアにおける販路開拓をきめ細かく支援してまいります。

議長(田中良君) 二番加藤雅之君。
   〔二番加藤雅之君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○二番(加藤雅之君) 初めに、資源リサイクルと産業振興について質問します。
 資源に乏しい我が国は、資源価格の変動が経済や都民生活に大きな影響を与えるため、資源そのものをリサイクルして有効に利用することがより一層求められています。
 公明党青年局が、携帯電話の回収やリサイクルに対する取り組みの強化を求める署名運動を全国で展開し推進した、国の携帯電話回収促進実証事業「たんすケータイあつめタイ」では、二月二十一日時点で約四十七万五千台の使用済み携帯電話が回収されました。
 都においても、都議会公明党の提唱を受け、都庁、区役所、地下鉄、大学などで携帯電話の回収を進めてきました。今後、より一層のレアメタル回収拡大を図るために、さらなる回収拠点の拡大、個人情報漏えい対策の強化、回収促進を促す方策を充実させることが必要です。これまでの成果について明らかにしていただきたいと思います。
 現状では、レアメタルリサイクルの回収コストの低減が大きな課題であるため、効率的な収集、技術開発資金援助など、先駆的なリサイクルシステムの構築に向け、都は積極的に取り組むべきと考えますが、見解を求めます。
 都市で大量に廃棄されるパソコンや携帯電話など電子機器の中に、希少価値の高い資源が鉱山のように眠っており、このような都市鉱山を持つ東京は、実は世界有数の資源大国であるという発想から、資源リサイクル産業も東京における有望な産業分野の一つといえます。
 こうした東京が抱える都市課題や東京が持つ強みの中に、東京の将来を支える成長産業の芽があると考えます。今後成長が期待される産業の育成に向け、積極的に支援策を打ち出していくことが重要であると考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、臓器移植について伺います。
 昨年夏、臓器移植法が改正され、日本移植学会では、本年七月の施行によって、現行の十倍近い、年間七十例ほどの脳死移植ができるようになると見ております。
 現在は、国の通知に基づき臓器移植コーディネーターが各県に配置され、関係機関と連携しながら臓器提供の意思がある脳死者のご家族に対して、心のケアや諸手続のサポートなど、きめ細かな対応をしております。
 しかし、主治医等の協力があるといっても、一人のコーディネーターが都内全域をカバーしており、また、近年、海外渡航による臓器移植を制限する国際的な動きも相まって、現行の一人体制では十分なケアは望めません。今後、都としてもコーディネーターの増員を図るべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、がん検診について伺います。
 胃がんや大腸がんなどは検診により早期に発見され、適切な治療を受ければ完治することも多く、がん検診を定期的に受診することが重要です。
 都民ががん検診を受ける機会としては職場の検診を挙げる人が多いことから、職域における受診率向上を図ることは非常に重要であります。
 我が党の提案により、平成二十二年度予算案には、職域におけるがん検診推進をサポートしていく事業が盛り込まれました。この事業の取り組みについて見解を求めます。
 さらに、がん対策を推進するためには、検診受診率の向上と高度医療の提供などとあわせ、がんの実態把握が不可欠であり、こうしたデータを収集するのががん登録であります。
 がん登録には、病院が行う院内がん登録と、都道府県が行う地域がん登録の二つがありますが、現在、都では、がん拠点病院と認定病院において院内がん登録を行っていますが、地域がん登録は実施していません。
 また、都内には、拠点病院、認定病院以外にもがん診療を行っている医療機関が多数あり、これらの医療機関に院内がん登録をどう普及し、地域がん登録へとつなげていくかが大きな課題となっています。
 都は、平成二十二年度予算で、拠点病院等におけるがん登録データの収集分析を行うがん登録センターを設置するとしております。このセンターについては、都議会公明党が主張してきた地域がん登録実施の足がかりとなるものであります。
 そこで、同センターの役割、機能について伺うとともに、センター設置を契機に、がん登録の普及啓発、院内がん登録を実施する医療機関の拡大に一層努め、地域がん登録につなげるべきと考えます。それぞれ答弁を求めます。
 次に、MTBI、軽度外傷性脳損傷についてです。
 これは、脳の情報伝達を担う軸索といわれる神経線維が、交通事故や転倒などで頭部に衝撃を受けて損傷し起きる疾患です。これに詳しい茨城県湖南病院石橋徹院長らが、WHOの基準に照らして国内で初めて調べたところ、二十都道府県で百六十二人の患者がいることがわかりました。WHOによれば、世界で毎年一千万人が外傷性脳損傷にかかり、十万人当たりの発生頻度は百五十人から三百人。その九割が軽度外傷性脳損傷です。静かなる流行病ともいわれています。
 問題は、てんかん発作や排尿・排便障害、においや味がわからないなどといった症状が事故後すぐに出ず、数カ月たってから出ることがあり、しかも、CTやMRIに異常が映らないため、障害と事故との因果関係が認められず、補償が受けられない点です。
 先日、患者の会の方々とお会いしたとき、WHOの勧告や欧米での対策が進んでいることなどを国に説明しましたが、理解を得られず、苦しい胸のうちを吐露されておりました。
 日本においては、軽度外傷性脳損傷という疾患概念が確立していないため、対策が進まず、苦しんでいる方がたくさんいます。この病気についての研究が推進されるよう、都からも国に対して強く働きかけていただくことを要望します。
 最後に、観光振興について伺います。
 東京都は、「十年後の東京」で、年間一千万人の外国人旅行者が訪れる観光都市を目指しています。統計によると、平成二十年には五百三十四万人と目標の半分程度であり、達成に向かって新たな観光スポットが期待されるところです。
 そうした中、我が墨田区に建設中の東京スカイツリーが、平成二十四年の開業に向けて建設が進んでおります。世界一を目指し、武蔵国にかけて六百三十四メートルの電波塔となります。現在、三百四メートルを突破し、晴れた日には高尾山からも望めるようです。
 約百二十年の歴史を持つパリのエッフェル塔は一八八九年に完成。フランス革命百周年の意義が込められ、パリ万国博覧会の目玉となりました。
 地元では、都がこのほど、官民一体となって、水の都江戸のにぎわいを取り戻そうとする取り組みを含め、さまざまな振興策を検討しているところです。
 その一つに、知事の陣頭指揮でゴールドラベルを取得するまでに成長した東京マラソンをスカイツリー周辺に招致しようと、市民運動団体、招致する会が各町会と協力して署名運動を行い、一万六千余名の署名を墨田区長とともに都に提出しました。東京マラソンに関する基本合意には、都内観光名所をめぐり、かつ、記録をねらえる魅力あるコースを設定するとあり、大いに期待しているところであります。
 こうしたスカイツリーを東京の新たな観光スポットとして活用し、地元と連携した観光振興を図るべきと考えますが、見解を求めます。
 外国人観光客にとっての日本の魅力、見どころの一つとして挙げられるのが、江戸文化に象徴される伝統工芸です。墨田区を初め周辺区には、伝統工芸品を見学、体験できる工房が数多く点在し、人気があります。
 そこで、今まで都が実証実験を行ってきたユビキタス技術を活用し、移動案内や情報提供をこうした施設に利用すれば、言葉の障壁を超えて一層理解され、東京のすばらしさを一段と世界に発信することになります。こうした観光に早期に活用できるよう取り組むべきと考えます。見解を求めます。
 スカイツリーの建設地である押上・業平橋地区は、都営浅草線など鉄道四線が交わる交通結節点であり、特に押上駅は、成田や羽田からもアクセス便利な立地です。このため、多くの観光客が訪れ、地元の活性化や振興に寄与するものと考えています。
 そこで、都も他の鉄道会社と連携して、完成を記念した企画乗車券を発行するなどにより、乗客誘致を積極的に進め、あわせて、都営地下鉄の乗車率アップを図るべきと考えますが、見解を求めます。
 一方、車のアクセスも観光にとっては重要です。特に、都道放射第三二号線の押上駅付近から明治通りまでの区間は、墨田区北部とタワー建設地を結ぶ重要な幹線道路です。また、都道四ツ目通りと直結し、ターミナル駅の錦糸町駅にもつながっている路線です。
 ところが、朝夕の交通渋滞は慢性化しており、また、歩道は狭く、電柱が林立し、安全で快適な歩行空間を確保するためにも早期整備が必要です。放射第三二号線の事業化に向けた取り組みを最後に伺って、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えいたします。
 成長産業の育成に向けた支援策についてでありますが、東京の産業力を一層強化していくためには、将来を見据えた成長産業の育成を図っていく必要があります。
 東京には、高度な技術力、多様な産業の集積、洗練された巨大なマーケットなどの潜在能力がありまして、こうした中から、環境、健康、ロボットなど、今後成長が期待される産業が生まれてきております。これらの育成に向け、新事業の創出を促進していくことが必要であると思います。
 このため、これまでも、製品開発への支援や産学公に金融機関を加えたネットワークの構築に取り組んでまいりました。
 加えて、また、日本の独自の有力産業でもありますアニメの奨励のために、新規にフェアをビッグサイトで数年前から始めました。
 また、従来行われていた、その年に新規に成功した企業の表彰ではなくて、新しい製品、さらには新しい産業につながり得るだろう新しい技術を開発した、その技術の開発当事者を専門家に選別していただきまして、年間十を表彰することにしました。
 さらには、今後、区部と多摩の産業支援拠点における企業の製品開発力の向上に向け支援を強化するとともに、環境分野などにおける実用可能性の高い技術開発プロジェクトへの支援を新たに行うなど、成長産業の育成に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 放射第三二号線の事業化に向けた取り組みについてお答えをいたします。
 本路線は、江東区塩浜から墨田区京島に至る延長六・三キロメートルの都市計画道路で、このうち四・九キロメートルが完成または概成、江東区内の〇・五キロメートルが事業中でございます。
 未整備区間であります押上駅付近から明治通りまでの八百六十メーターにつきましては、現道の幅員が十一メートルと狭く、交通の円滑化や防災性の向上を図るため、区部における第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけております。
 また、安全で快適な歩行空間の確保や良好な都市景観を形成する上でも、早期整備が必要でございます。
 このため、現在、道路の幅員構成などについて検討を進めており、引き続き、早期の事業化に向けて取り組んでまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、レアメタルリサイクルのこれまでの取り組みの成果についてでありますが、天然資源に依存せず、国内でレアメタルをリサイクルすることは、循環型社会に向けた重要な取り組みであります。
 そのため、都は、昨年度、大都市の自治体としては全国で初めて携帯電話の回収実験を行いまして、広く都民のレアメタルリサイクルへの参加を呼びかけました。
 また、昨年十一月から、江東区と八王子市とともに、携帯電話以外にも対象を広げまして、使用済み小型家電の回収モデル事業を実施しております。
 このモデル事業では、区市の特色を生かしながら、公共施設や駅、大学などの、都民が多く集まる場所約百二十カ所に回収ボックスを設置しまして、三カ月で約九千五百台を回収するなど、成果を上げております。
 次に、今後の取り組みについてでありますが、レアメタルリサイクルの実現に当たりましては、お話のように、効率的な収集システムや、回収の促進策及びリサイクル技術の確立など、幾つかの課題があります。
 一方、レアメタルを含む小型家電が都内には多く集積し、国内最大のいわゆる都市鉱山を形成しております。
 また、スーパーエコタウン内に先進的な電子機器リサイクルビジネスが展開されるなど、レアメタルリサイクルに有利な環境も整ってきております。
 都は、江東区、八王子市でのモデル事業や国の実証事業の結果などを踏まえまして、事業者や国及び区市町村と連携し、東京における効果的なリサイクルシステムの実現に向け、今後とも積極的に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 三点についてお答えを申し上げます。
 まず、臓器移植についてでありますが、都では、移植を推進するため、コーディネーターを医療機関に配置し、都民等への普及啓発を行うほか、臓器提供者が発生した場合に、意思確認や家族に対する詳細な説明を行っております。
 本年七月の改正臓器移植法施行後は、臓器提供者が増加することや、小児からも提供が可能となることなどに伴い、コーディネーターの業務が増大することが見込まれております。
 今後、貴重な臓器提供の機会を着実に移植につなげることができるよう、コーディネーターの増員を図ってまいります。
 次に、職域におけるがん検診についてでありますが、企業と連携して受診促進の取り組みを進めるため、都は来年度、東京都がん検診推進サポーター事業を創設することといたしました。
 この事業では、がん検診に積極的な企業を公募し、都とともに受診率向上に取り組むサポーター企業として認定をいたします。都とサポーター企業が協働して、従業員に対する検診受診率向上策や普及啓発活動を行うことなどにより、都民の受診率五〇%の目標達成を目指してまいります。
 最後に、がん登録センターについてでありますが、同センターは、都におけるがん登録の拠点として、各病院の院内がん登録データを一元的に収集し、がんの治療実績等について分析、評価を行うとともに、登録データの精度向上を図るための研修を実施いたします。
 また、診療機能の向上につながるなどの、がん登録の有効性を紹介し、院内がん登録を実施する医療機関の拡大に努めてまいります。
 こうした取り組みにより、院内がん登録の充実を図り、将来の地域がん登録の実現につなげてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) スカイツリーの開業を踏まえた観光振興に係るご質問にお答えいたします。
 スカイツリーは、新たな観光資源として、東京全体の観光振興に寄与するものと認識しております。
 都は既に、海外における観光プロモーションを初めとするさまざまな機会に、スカイツリーを新たな観光スポットとして紹介してまいりました。また、地元墨田区では、多言語標記による観光案内標識の増設に加え、伝統文化や隅田川などの資源を生かして回遊性を生み出そうとする取り組みが考えられております。
 こうした地元区や周辺地域の取り組みと連携いたしまして、スカイツリーの開業に合わせた観光振興を推進してまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) ユビキタス技術の観光への活用についてお答えいたします。
 お話のように、ユビキタス技術は観光振興に大いに役立つものと考えております。
 既に都では、都庁展望室や浜離宮恩賜庭園等の個別の施設におきまして、日本語、英語、中国語などで、音声や映像を用いた観光案内を実施しております。
 一方、まち中での活用につきましては、利用者の目的が多岐にわたるため、地域の歴史や観光情報、店舗の紹介等、さまざまなニーズにこたえるサービスの提供が求められることとなります。
 このため、都は、現在銀座等で実施中の実証実験を通しまして、機器の操作性の向上や提供情報の充実等を図るとともに、地元の商店街や民間企業等が主体的にシステムを運営するための仕組みにつきましても、国や関係者と連携して検討を進めております。
 こうした取り組みにより、ユビキタス技術の観光への活用につきまして新たな可能性を広げてまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

○交通局長(金子正一郎君) 東京スカイツリー完成時の対応についてお答えをいたします。
 現在建設中の東京スカイツリーが完成しますと、東京の新名所として多くの方が訪れることになると思います。
 東京スカイツリーの最寄り駅である押上駅は、成田と羽田の両空港に直接アクセスできるため、国内にとどまらず海外からの観光客も呼び寄せることが可能であり、都営地下鉄にとっても乗客増の好機となります。
 この機会を逃すことなく、他の鉄道会社と連携し、ご指摘の企画乗車券の発売を含めPRを積極的に展開し、押上への集客を図るとともに、あわせて、都内の回遊ルートを検討し、都営地下鉄全体の乗客誘致にもつなげてまいります。

副議長(鈴木貫太郎君) 六十六番山崎一輝君。
   〔六十六番山崎一輝君登壇〕

○六十六番(山崎一輝君) 初めに、八ッ場ダム事業の必要性についてお伺いをいたします。
 中国では、国力を総動員して、膨大な資金を投入して三峡ダムとそのほかの社会資本整備を実施しております。そのために百二十万人もの移転が行われたそうであります。中国は一党独裁の国であります。ですから、反政府運動や住民の反対運動の報道は日本人には伝えられておりませんが、百二十万人が、電気が足りない、洪水の防御が必要だという、公、つまりおおやけの要請に対して、それに従ったのであります。
 ここで私は、日本の国土の特徴について少し述べます。
 その第一は、日本の国土の主要な部分が四つの島に分かれているという点であります。国民すべての人がひとしく国家の恩恵をあずかるという考えに立てば、四つの島を結ぶために、四国連絡橋のように橋や、青函トンネルのようにトンネルをつくらなければなりません。すべての国民のために公共事業が必要となるのであります。
 しかも、アメリカを超える海岸線を持つということは、実に複雑な国土を管理していかなければならない宿命を背負っているのであります。
 第二は、脊梁山脈の存在であります。北海道から九州に至るまで、二千メートル級の山脈が連なり、いわばエベレスト山脈の頂上が海に突き出しているといってもよいでしょう。
 第三は、平野が小さいということであります。東京に住む我々は、関東平野が広いと思いがちですが、日本でいう大都市、大阪や名古屋、福岡、仙台など、まちに出ればすぐに山並みが目に入ってくるほど、実は日本の平野は小さいということであります。国土地理院のデータでは、日本の低地が一二・七%、台地が一一・九%であり、ドイツやフランス、イギリスと比べ圧倒的に平野部が小さいということであり、日本の国土がいかに急峻であるかがわかると思います。
 第四は、この平野が極めて軟弱な地盤であるということであります。この軟弱な地盤は、この平野が六千年ほど前から、海面が下がることによって河川の土砂が押し流されてつくり出された平野で、地質学的時間でいえば、まだよく締め固まっていない状態といわれております。
 第五は地震。これは、いうまでもありません。世界の地震の二割が日本で起こっております。
 第六は、豪雨の存在であります。地球の降雨量の総平均が八〇〇ミリであるのに対し、日本は一六〇〇ミリから一八〇〇ミリであり、河川は脊梁山脈を両側の斜面のどちらかに流れるかであり、河川は極めて短いのであります。つまり、降った雨はすぐに海に流れてしまう。このため、洪水が起こるときは、一気に大量の水が流れて洪水となるのであります。
 明治時代に、河川改修のため指導に来た外国人技術者は、高い山からすぐに海に流れ込む河川を見て、これは川ではない、滝であるといったそうであります。
 以上、日本の国土の特徴を考えると、日本人は、今日まで国民の生命を守り、産業を興すために、世界に類のない手だてを国土に対して行ってきたのであります。
 我々の先祖は、この国土にあらゆる働きかけをし、安全に安心して暮らせるための努力を積み重ねてきました。
 江戸時代前は、関東平野も大洪水に何度も見舞われてきましたが、徳川家康により、利根川の東遷といわれる大事業を六十年もかけて行いました。それにより、当時の世界的大都市江戸は、大洪水に見舞われることなく栄えたのであります。
 また、甲府を洪水から守った武田信玄の信玄堤があります。伊達政宗は、追波湾において太平洋に流れていた北上川を石巻湾に曲げました。加藤清正は、白川を改修し、城下を水害から守ったといわれております。
 江戸時代に改修された河川は、広島県福山市の芦田川、北九州の遠賀川も、黒田長政が洪水を防ぎ、かんがいのため改修をしております。筑紫次郎で知られる筑後川、大阪の大和川、岡山の旭川、そのほか最上川、阿武隈川、鬼怒川、渡良瀬川、江戸川、多摩川など、約五十以上の我が国を代表する河川が、江戸時代の各大名により、民を守り、国を守るために膨大な資金を投入して大土木事業をなし遂げてきたのであります。
 日本は、豊かになったがゆえに、今日の政治家は近視眼的になり、五十年、百年先の日本国家、そして民族のための政治家としての使命を忘れ、未来、将来の人々に対して余りにも怠慢になっているのではないかと私は考えます。
 このように、当時の日本人が、勇敢に、より安全な国土、より使いやすい国土をつくり出すために挑戦を続けてきたのであります。その治水や新たな開発の成果の上に今日の私たちは暮らして生きているということは忘れてはなりません。
 国家百年の計を見据え、住民の生命や財産を災害から守っていくことは、政治の重要な責務であります。この視点に立ち、利根川の治水対策の面から、八ッ場ダムの必要性について知事のお考えを聞かせてください。
 次に、地下鉄八号線の延伸について伺います。
 東京の目指す都市の姿を示した「十年後の東京」計画では、快適で環境に負荷のかけない都市生活の実現を目指すこととしています。
 鉄道は、環境負荷の少ない交通手段の一つであり、東京における地下鉄などの鉄道整備は、平成十二年の運輸政策審議会答申第十八号に基づき着実に進められていますが、平成二十七年までに整備着手することが適当とされた路線については、残念ながら都内の九路線ですべてが未着手となっております。
 この一つに、私の地元江東区を南北に縦断する地下鉄八号線、東京メトロ有楽町線の豊洲駅から住吉駅間の延伸があります。この路線の整備は、区部東部地域の南北交通の利便向上だけでなく、埼玉、千葉方面からの臨海部へのアクセス改善など、その実現に対する沿線自治体の期待は非常に大きいものです。
 このため、江東区を初めとする沿線三区一市で構成する地下鉄八・十一号線促進連絡協議会では、地下鉄八号線の建設に向けた調査研究などを行い、第一段階として豊洲駅から住吉駅間を事業化するなど、今後の取り組みの方向性を沿線区市で確認したところであります。
 江東区は、協議会における合意を踏まえ、江東区地下鉄八号線建設基金を設置し、平成二十二年度予算案に五億円を積立金として計上いたしました。
 こうした地元区における熱心な取り組みを踏まえ、都も本路線の早期実現に努めていく必要があると考えますが、そこで、都は、この地下鉄八号線豊洲駅から住吉駅間の整備に向けて今後どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、水道事業について伺います。
 東京における震災の発生確率が、三十年以内に七〇%という高い数値が公表されています。しかし、断層の位置や予測に必要な詳細情報が十分でないなど、いまだよくわからないというのが実情ではないでしょうか。
 自然現象に対する人間の英知には限界があり、一〇〇%被害を防止することは物理的に不可能です。それでもなお予防対策に最大限の努力を払うことが重要です。
 発災時の水道被害について、都の平均で約三割、私の地元東部地区では特に厳しく、約八割の断水が想定され、都民生活は非常に大きな制約を受けます。
 我が党は、さきの第四回定例会における服部政調会長の代表質問において、耐震継ぎ手管への取りかえを一層推進すべきと提案をし、水道局が本年一月に公表した経営プランの中で新たな施策として明らかにされております。
 耐震継ぎ手化の推進によって都民への影響はどのくらい軽減をされるのか、お伺いをいたします。
 次に、東京の水道管の長さは地球半周以上もあり、耐震継ぎ手管への取りかえは一朝一夕にはいきません。万一の発災時に備えた応急体制を強化することも不可欠です。
 忘れもしないあの阪神・淡路大震災では、全国各地から応急給水の応援が駆けつけました。発災時の速やかな対応は、被災者を大変勇気づけるものと思います。迅速で円滑な応急給水を実施するには、地元の区市町や地域住民との合同訓練を重ね、ほかの自治体と連帯を深めるといった事業の取り組みが必要ではないでしょうか。
 応急給水体制をより一層充実させる取り組みについて、見解を伺います。
 次に、浸水対策について伺います。
 都内では、毎年のように浸水が発生し、繰り返し被害が発生しているところもあることから、下水道局では、できるところからできるだけの対策を行い、浸水被害を軽減させる方針の雨水整備クイックプランによって浸水対策を進めてきました。
 そこで、改めてクイックプランによる取り組みと成果についてお伺いいたします。
 これまで効果的な対策を進めてきた下水道局の努力は評価をしております。しかし、クイックプランによる対策は、限られた財源の中でとられた暫定的な対策にあり、大規模な災害の備えとしては限界があるのではないでしょうか。
 下水道幹線やポンプ所など基幹施設の整備をするなど、抜本策を講じなければならないと考えます。特に私の地元は低地帯であり、一たび浸水が発生すれば大規模な災害にもなりかねないという心配をしており、以前から計画している江東幹線、江東ポンプ所の整備を心待ちにしております。
 先月発表された経営計画二〇一〇では、浸水対策は事業の大きな柱の一つに位置づけられていますが、下水道局は今後の浸水対策にどのように取り組むのか、江東区内の対策を含めお伺いし、一期生は一期生らしく謙虚な気持ちを持って質問をいたしました。
 終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山崎一輝議員の一般質問にお答えいたします。
 治水面からの八ッ場ダムの必要性についてでありますが、文明の発生以来、水はまさに政の根幹でありまして、これを治めていくことは、国や自治体の重要な責務であります。
 おっしゃるとおり、我が国は急峻な山々が連なり、平野部が非常に限られております。国土の一割は洪水時の河川水位よりも低い沖積平野でありまして、こうした狭い地域に人口の五割、資産の四分の三が集中しています。
 とりわけ利根川の下流域には、人口が密集する市街地が広がっていまして、政治経済等の中枢機能が集積した首都東京が控えています。
 徳川幕府の開闢以来、利根川では、連綿と治水対策がとられてきた歴史があります。為政者がなすべきことは、長期的な視点に立った将来を見据えた取り組みであると思います。
 利根川の治水計画は、二百年に一回という確率の規模の大洪水が発生しても、下流域ではんらんさせず、安全に河口まで流すことを目標としています。八ッ場ダムは、この治水計画の一翼を担う極めて重要な施設でありまして、利根川上流のダム群の中でも最大の洪水調整能力が期待されております。
 堤防を超えるような大洪水でなくても、河川の水位が高くなりますと、埼玉県がしばしば経験しておりますように、水は堤防の下の砂質層を通って外側に浸水してきまして、堤防の崩壊を引き起こしかねない、大惨事になりかねない危惧を持っています。このような漏水は、平成十年以降、二十八カ所も発生しています。八ッ場ダムが完成すれば、利根川の全域にわたって水位を下げる効果が発揮されます。
 小沢ダムとかいわれている岩手県の胆沢ダムはどうかわかりませんが、ダム建設には当然、水没する現地での強い反対があります。現に、今や東京の不可欠な水がめとなりました小河内ダムも、計画されているときは大反対をこうむりました。しかし、一たん完成した後も、人々は非常に皮肉にうまいことをいいましたが、小河内を読むと、しょうがないと読めますから、しょうがないダムだと呼んでおりましたが、その翌年に干ばつが起きまして、その水がめで東京は救われたわけであります。
 引き続き、関係県の知事とも一致団結して、国に対して一刻も早くダムを完成させるよう強く要請してまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 地下鉄八号線の豊洲駅から住吉駅間の整備についてお答えいたします。
 お話のとおり、沿線区市で構成する協議会では、昨年七月、これまでの調査検討の結果を踏まえまして、今後の取り組みの方向性について確認しております。また、地元江東区では、平成二十二年度予算案に建設基金の創設を盛り込むなど、意欲的に取り組んでいると承知しております。
 一方、本路線の実現には、多額の事業費の確保や事業主体の確立、事業スキームの検討などの課題がございますので、都といたしましては、引き続きこれらの課題につきまして関係者とともに検討してまいりたいと考えております。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、耐震継ぎ手管への取り組みの推進による震災時の影響の軽減についてでございますが、今回策定した東京水道経営プラン二〇一〇では、震災対策の重要性が増していることを踏まえ、水道管路の耐震継ぎ手化緊急十カ年事業として、管路の取りかえを大幅に前倒しして実施することといたしました。
 首都直下型地震による被害想定や管路の布設年次等を総合的に勘案し、計画的に管路の取りかえを進めていくことにより、平成二十年度末現在二四%の耐震継ぎ手率が、平成三十一年度末には四八%に向上し、平常給水への復旧日数が三十日以内から二十日以内へと大幅に短縮できます。
 また、水道管路の被害箇所の減少により、他のライフラインの復旧活動や、道路陥没、建物への浸水などの二次被害抑制にも効果が期待できます。
 こうしたことから、都市活動への影響や都民生活への負担を大幅に軽減できるものと考えております。
 次に、応急給水体制の一層の充実についてでございますが、水道局では、発災時に区市町と協力し、定められた役割分担に基づき、給水拠点や避難場所などにおきまして迅速かつ円滑な応急給水を実施できるよう、平常時から繰り返し訓練を行っております。
 しかし、大震災ともなれば、想定を超えた事態も起こり得ることから、応急給水を行うに当たっては地域の方々などの協力が不可欠であります。このため、区市町に働きかけて、自治会や町会などと連携した応急給水訓練を行うほか、水道局OB職員などボランティアの充実を図ってまいります。
 また、政令指定都市間では、震災などの被災時に備え相互応援協定を締結しておりますが、その実効性をより高めるため、東京が被災した場合の応援幹事都市となる横浜市、仙台市との共同訓練を新たに東京で実施することに向け、両都市と検討を行ってまいります。
 今後とも、都民の安心を高めるため、震災対策の強化に全力で取り組んでまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

○下水道局長(松田二郎君) 浸水対策についての二つのご質問にお答えをいたします。
 まず、雨水整備クイックプランによる取り組みと成果についてでございますが、これまで浸水被害の状況に応じて、既存施設の改良や施設の部分的な先行整備などの工夫により、被害の早期軽減を図ってまいりました。
 具体的には、既存施設の改良として、区部の百四十八カ所において、下水道管の枝線を相互につないで、それぞれの地域の下水の流れを円滑にしたり、雨水ますを増設して雨水を取り込みやすくするなどの対策を平成十九年度までにすべての箇所で完了させております。
 また、東陽地区や古石場地区など江東区内の四地区を含む四十二地区を選定しまして、下水道幹線の一部を先行的に整備して、雨水を暫定的に貯留するなどの対策を実施し、今年度末までに三十九地区で完了いたします。
 対策が完了した地区では、被害の大幅な軽減が図られております。
 次に、浸水対策の今後の取り組みについてでございますが、このたび策定をした経営計画二〇一〇では、抜本的な対策を実施するため、浸水の危険性が高い地区として選定した二十の対策促進地区において、下水道幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を推進していくこととしております。
 江東区内では、大島地区と木場・東雲地区を対策促進地区に選定をしております。
 大島地区につきましては、約五百五十ヘクタールの雨水排除能力を増強する、深さ約五十メートルに及ぶ小松川第二ポンプ所の工事を鋭意進めております。
 木場・東雲地区では、口径最大約六メートル、延長約五キロメートルに及ぶ江東幹線と地下四十メートルを超える深さの江東ポンプ所を整備し、この地区の約五百ヘクタールの雨水の排除能力を大幅に増強することとしております。
 現在設計を行っておりまして、江東幹線は平成二十二年度中に、江東ポンプ所は平成二十三年度中には着手する予定でございます。
 いずれも地下深く大規模な施設で、整備には長期間を要しますが、一刻も早い完成を目指して、全力を挙げて取り組んでまいります。

○七十四番(松下玲子君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

○副議長(鈴木貫太郎君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○副議長(鈴木貫太郎君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 なお、明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後八時五十三分散会

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