平成十八年東京都議会会議録第十七号

平成十八年十二月八日(金曜日)
 出席議員(百二十三名)
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番きたしろ勝彦君
四番田中たけし君
五番鈴木 隆道君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番原田 恭子君
十一番山口  拓君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番神林  茂君
二十一番早坂 義弘君
二十二番崎山 知尚君
二十三番宇田川聡史君
二十四番石森たかゆき君
二十五番高橋 信博君
二十六番鈴木あきまさ君
二十七番秋田 一郎君
二十八番山口 文江君
二十九番佐藤 広典君
三十番尾崎 大介君
三十一番伊藤まさき君
三十二番松下 玲子君
三十三番野上ゆきえ君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番矢島 千秋君
四十一番高橋かずみ君
四十二番串田 克巳君
四十三番吉原  修君
四十四番山田 忠昭君
四十五番臼井  孝君
四十六番林田  武君
四十七番野島 善司君
四十八番服部ゆくお君
四十九番大西由紀子君
五十番西岡真一郎君
五十一番吉田康一郎君
五十二番斉藤あつし君
五十三番泉谷つよし君
五十四番くまき美奈子君
五十五番大西さとる君
五十六番増子 博樹君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番長橋 桂一君
六十番野上 純子君
六十一番東村 邦浩君
六十二番小磯 善彦君
六十三番東野 秀平君
六十四番田代ひろし君
六十五番三宅 茂樹君
六十六番高木 けい君
六十七番山加 朱美君
六十八番村上 英子君
六十九番坂本たけし君
七十番川井しげお君
七十一番鈴木 一光君
七十二番吉野 利明君
七十三番いのつめまさみ君
七十四番門脇ふみよし君
七十五番小沢 昌也君
七十六番石毛しげる君
七十七番岡崎 幸夫君
七十八番柿沢 未途君
七十九番初鹿 明博君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番藤井  一君
八十四番ともとし春久君
八十五番木内 良明君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番倉林 辰雄君
八十八番樺山たかし君
八十九番近藤やよい君
九十番こいそ 明君
九十一番松原 忠義君
九十二番新藤 義彦君
九十三番古賀 俊昭君
九十四番立石 晴康君
九十五番桜井  武君
九十七番酒井 大史君
九十八番花輪ともふみ君
九十九番大沢  昇君
百番大津 浩子君
百一番大塚たかあき君
百二番相川  博君
百三番中村 明彦君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番石川 芳昭君
百七番中嶋 義雄君
百八番石井 義修君
百十番比留間敏夫君
百十一番遠藤  衛君
百十二番高島なおき君
百十三番宮崎  章君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番馬場 裕子君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員(二名)
九十六番 野村 有信君
百十四番 大西 英男君
欠員
百九番 百二十番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事横山 洋吉君
副知事大塚 俊郎君
副知事関谷 保夫君
出納長幸田 昭一君
教育長中村 正彦君
知事本局長山口 一久君
総務局長大原 正行君
財務局長谷川 健次君
警視総監伊藤 哲朗君
主税局長菅原 秀夫君
生活文化局長渡辺日佐夫君
都市整備局長柿堺  至君
環境局長村山 寛司君
福祉保健局長山内 隆夫君
産業労働局長島田 健一君
建設局長依田 俊治君
港湾局長津島 隆一君
交通局長松澤 敏夫君
消防総監関口 和重君
水道局長御園 良彦君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長舟本  馨君
東京オリンピック招致本部長熊野 順祥君
病院経営本部長大塚 孝一君
中央卸売市場長比留間英人君
選挙管理委員会事務局長梶原 康二君
人事委員会事務局長高橋 道晴君
労働委員会事務局長押元  洋君
監査事務局長白石弥生子君
収用委員会事務局長中田 清己君

十二月八日議事日程第三号
第一 第二百七号議案
平成十八年度東京都臨海地域開発事業会計補正予算(第一号)
第二 第二百八号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第二百九号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第四 第二百十号議案
東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五 第二百十一号議案
東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六 第二百十二号議案
東京都公営企業の管理者の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第七 第二百十三号議案
職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第八 第二百十四号議案
職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例
第九 第二百十五号議案
東京都消費生活条例の一部を改正する条例
第十 第二百十六号議案
東京都文化振興条例の一部を改正する条例
第十一 第二百十七号議案
東京都教育相談センター設置条例の一部を改正する条例
第十二 第二百十八号議案
学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第二百十九号議案
東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第十四 第二百二十号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第二百二十一号議案
義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例
第十六 第二百二十二号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十七 第二百二十三号議案
東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第二百二十四号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第十九 第二百二十五号議案
東京都住宅基本条例
第二十 第二百二十六号議案
東京都特定公共賃貸住宅条例の一部を改正する条例
第二十一 第二百二十七号議案
保健所の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第二十二 第二百二十八号議案
東京都大気汚染障害者認定審査会条例の一部を改正する条例
第二十三 第二百二十九号議案
興行場の構造設備及び衛生措置の基準等に関する条例の一部を改正する条例
第二十四 第二百三十号議案
プール等取締条例の一部を改正する条例
第二十五 第二百三十一号議案
東京都小規模貯水槽水道等における安全で衛生的な飲料水の確保に関する条例の一部を改正する条例
第二十六 第二百三十二号議案
食品衛生法施行条例の一部を改正する条例
第二十七 第二百三十三号議案
食品製造業等取締条例の一部を改正する条例
第二十八 第二百三十四号議案
東京都認定こども園の認定基準に関する条例
第二十九 第二百三十五号議案
東京都心身障害者扶養年金条例を廃止する条例
第三十 第二百三十六号議案
東京都心身障害者扶養年金会計条例の一部を改正する条例
第三十一 第二百三十七号議案
東京都心身障害者扶養年金基金条例の一部を改正する条例
第三十二 第二百三十八号議案
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による任意入院者の症状等の報告に関する条例
第三十三 第二百三十九号議案
警視庁の警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第二百四十号議案
性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第二百四十一号議案
都営住宅十八CH―一〇四東(小松川三丁目第二・江戸川区施設)工事請負契約
第三十六 第二百四十二号議案
街路築造工事に伴う道路構造物設置工事(十八北南―府中三・四・七清水が丘)請負契約
第三十七 第二百四十三号議案
平成十八年度新海面処分場Gブロック西側護岸建設工事請負契約
第三十八 第二百四十四号議案
当せん金付証票の発売について
第三十九 第二百四十五号議案
都営住宅の買入れについて
第四十 第二百四十六号議案
再生手続開始申立事件において東京都が有する債権の取扱いについて
第四十一 第二百四十七号議案
再生手続開始申立事件において東京都が有する債権の取扱いについて
第四十二 第二百四十八号議案
再生手続開始申立事件において東京都が有する債権の取扱いについて
第四十三 第二百四十九号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び小金井市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十四 第二百五十号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び日野市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十五 第二百五十一号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び東村山市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十六 第二百五十二号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び狛江市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十七 第二百五十三号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び清瀬市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十八 第二百五十四号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及びあきる野市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十九 第二百五十五号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び西東京市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第五十 第二百五十六号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び日の出町公共下水道使用料徴収事務の受託について
第五十一 第二百五十七号議案
審理、喚問、聴聞等に出頭した者及び公聴会に参加した者の費用弁償に関する条例の一部を改正する条例

   午後一時開議

○議長(川島忠一君) これより本日の会議を開きます。

○議長(川島忠一君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川島忠一君) 昨日に引き続き質問を行います。
 四十五番臼井孝君。
   〔四十五番臼井孝君登壇〕

○四十五番(臼井孝君) 一番目に、自然の回復と環境政策について質問いたします。
 石原知事は、東京オリンピック招致において、世界に誇れる環境都市東京をつくる決意を述べられました。東京都の環境対策の先進的な取り組みは、国を動かし、産業界も巻き込んで進行中であります。そして今、スギ花粉対策として荒廃した森林再生にも手を入れ始めたのであります。
 都市文明は、経済を優先させ、自然を破壊することで発展をしてきました。しかし、自然の生態系を壊した代償は大きく、今日の人々の心の荒廃にもつながっています。東京がその発展過程で失ってきた自然を回復させるために、今わずかに残っている都市の中の自然を保全することの大切さを思うのであります。
 東京の自然には、森林と田園、そして川と海があり、それぞれの自然のネットワークは緑の環境都市東京を演出する効果があります。全庁的にあらゆる行政分野において芳しい環境のあり方を考え工夫して、環境都市東京づくりの事業を推進していただきたいと、心から願っております。
 このような視点から、幾つかの質問をいたします。
 さて、去る十一月十三日、石原都知事出席のもと、青梅市で伐採開始式が開催され、知事の力強いおの入れにより杉林の伐採が始まりました。私も出席しましたが、地域の人も多数参加をいたしまして、大変盛況で式が行われました。多くの都民もこの日を待ち望んでいたように思いました。
 この事業は、花粉の発生源である杉を十年間で百八十万本伐採するという息の長い大きな取り組みであり、副次的効果として森林の再生があります。この事業を着実に推進していくためには、伐採された木材の有効活用も不可欠です。
 そこで、全国に先駆け、花粉症の抜本的な解決に踏み出した知事の決意を伺います。
 ところで、私の地元である檜原村では、小中学校の教室の内装に多摩産材を活用しています。こうした都の建築物でも、もっと多摩産材を活用できるはずであると思います。東京都において利用促進のためのルールづくりが必要と考えますが、取り組みについて伺います。
 また、木材の利用ということでは、広く住宅に使われることが最も有効と考えます。都の都営住宅は、毎年三千戸も建てかえをしていると聞いています。まとまった規模の事業で多摩産材を活用することは、特に効果的です。むろん、都が率先して利用する姿勢を示すことは、他に波及効果があり重要であると思います。そこで、所見を伺います。
 しかし、都営住宅に使用される量だけでは限界があることは明らかです。住宅市場の大部分を占めるのは民間住宅であります。最終的には、民間住宅への多摩産材の普及拡大が必要です。都は既に、民間住宅への多摩産材の利用を促すために、東京の木・いえづくり協議会の設立や、民間金融機関と提携した優遇融資制度の実施など、積極的な取り組みをしてまいりました。
 こうした中、今後、花粉症対策の推進により、多摩産材の供給量がさらに増加をし、民間住宅における利用がより一層求められるのでございます。そこで、多摩産材の民間住宅へのさらなる利用拡大に向けて、今後、より一層都民への普及活動に取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、都が今年度より開始した枝打ち事業と、平成十四年度から実施してきた森林再生事業は、花粉削減に資するだけでなく、荒廃した人工林を健全な森林に再生していくものであります。これらの事業は、生物多様性や水源涵養機能など森林の公益的機能の確保を図るものであり、着実に実施していくことが期待されています。
 多摩の森林を訪れる人々の中には、四季の美しさがある森本来の姿を取り戻すため、杉、ヒノキから広葉樹へ転換してほしいという声が多くあります。この意味からも森林再生事業は極めて有意義な事業と認識しております。
 しかし、長期的な事業なので、森林所有者の中には、先祖が植えてくれたことだからと、先のことまで自分が判断することをためらう人がおります。また、木材価格の動向が不透明なことからこの事業に乗ることをちゅうちょする人など、事業に消極的な人々もいると思うのであります。
 森林再生事業がさらに拡大、発展していくためには、より地元に密着した工夫や地元に受け入れられやすい工夫が必要であり、事業の再検討も望まれるのですがいかがか、お伺いいたします。
 とにかく、多摩の森林の恩恵は、地元や森林所有者だけでなく、広く都民に及ぶものであります。ぜひ、森林再生事業の成果がより大きくなるよう、今後ともご尽力をいただきたいと願っております。
 次に、農地の保全について伺います。
 先日、若い農業者が、ここ都庁広場に二千株のキャベツ畑を出現させました。多くの新聞やテレビに取り上げられました。我が都議会自由民主党・都市農政を考える議員連盟は若手農業者との懇談会を継続的に開催しており、都市農業が頑張っている姿を積極的に宣伝すべきだと常に提言してまいりました。今回のイベントは、改めて東京農業の健在振りをいかんなく都民に示したものであります。
 ところで、一方、相続等による都市農地の減少は深刻で、それに歯どめをかけてほしいという切実な農業者の声があります。あのような新鮮なキャベツを都民に提供するだけでなく、生態系を維持し環境に貢献してきた農地が、あるいは屋敷林が、ことしも一つ、また一つとなくなっていくのはまことに残念であり、寂しいことであります。
 都では都市農業検討委員会を設置し、都市農地保全について検討を進めてまいりましたが、十一月にその報告がありました。今後、この報告を受け、どのように取り組んでいくのか伺います。
 二つ目として、ジュニアスポーツの振興についてでございます。
 平成二十五年に東京国体が開催されます。終戦の翌年の昭和二十一年に始まった国体は、焦土から立ち上がろうとする国民に希望を与えました。以来、国体は、六十年の歴史を積み重ねて今日に引き継いでいる国内最大のスポーツの場であり、特にジュニア選手の活躍する晴れの舞台でもあります。
 今日、多くの困難な問題を抱えているジュニア世代にとって、スポーツを通じて心身の健全な発達を図るために、東京国体、それに続くオリンピックを目標に掲げることの意義は大きいと思います。知事は、旧秋川高校の跡地について構想を語っておられますが、ぜひここを子どもたちの夢が膨らむようなジュニアスポーツのメッカにしてほしいと思います。
 ジュニアスポーツの振興を図ることを期待する観点から、幾つかの質問をいたします。
 オリンピック開催にふさわしい都市として、東京においては、競技スポーツが盛んであることだけでなく、生涯にわたってスポーツを楽しみ、だれもが身近でいつでも実践できる環境をつくっていくことが必要であります。
 しかし、子どものスポーツ実践に関しては、学校の部活動が活発でなく、子どもたちのニーズに合った部活動が思うように行われていない状況があります。また、子どもたちの体力、運動能力の低下も指摘されています。その要因は、幼いころから、運動する場や機会の減少、スポーツ経験の不足が考えられます。
 こうした中で、地域スポーツクラブは、興味や技術に応じて身近な地域の中でスポーツを実践できる地域の住民の自主的な運営によるクラブと聞いています。現在、都内二十二の区市町村で、行政や地域の体育指導員、体育協会等と連携して設立運営されております。地元の学校の部活動と連携して活動しているスポーツクラブもあると聞きます。
 このように、地域スポーツクラブの設立は、子どもたちのスポーツ実践の場の提供として、また、都民のスポーツの機運を高める機会としても有効と考えますが、見解を伺います。
 平成二十五年の東京国体や、その三年後のオリンピックにおいて、東京都の選手が活躍する姿は都民に大きな夢と感動を与え、その効果は極めて大きいと考えます。
 そこで、将来、活躍が期待されるジュニア世代の発掘と競技力向上が必要と考え、我が都議会自由民主党がこれまで積極的に主張をし、十八年度から実施することとなったジュニア育成地域推進事業がございます。そこでジュニア世代の競技力向上を目指して、各地区で体育協会を中心にさまざまな事業が始まっているようでありますが、まだまだ十分にこれが理解され、活動が実施されているとはいいがたい地区もあると聞いています。
 都は、本事業の実施主体である各地区体育協会に対し、事前説明を開催するなどして事業の趣旨の徹底を図り、この地域推進事業をより一層効果的なものにすべきであると考えますが、見解を伺います。
 こうしたジュニア世代の子どもたちは、成長段階においてさまざまな場面でスポーツと接する機会を得ることとなります。とりわけ、学校における部活動もまた、ジュニア世代の選手育成には重要な時期であります。しかしながら、これまで継続していた部活動が指導者の不足や交代でできなくなったり、一貫した指導が受けられなかったりすることが多く、課題となっています。
 そこで、部活動とジュニア世代の育成という観点から、今後どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 我が国のスポーツの振興にとって学校体育が担う役割は大きく、東京オリンピックへの機運を高める上で、運動系の部活動の振興は不可欠であります。また、運動部のみならず、文化部も含め、部活動は児童生徒の個性や能力の伸長、豊かな人間関係づくりなど教育的意義が高く、保護者の期待も大きいのであります。また、学校の活性化や特色ある学校づくりなど、学校経営上も重要な柱であります。
 このため、熱意と指導力のある顧問教諭の確保が不可欠であります。教員採用に当たって、学生時代の部活動の実績を評価し、あるいは熱意と指導力のある教員を確保する方策について伺います。
 平日は暗くなるまで、土曜日、日曜日も部活動に熱心に取り組んでいる教員がいる一方、部活動に消極的な教員がいるのが現実であります。その落差は余りにも大きいといわざるを得ないのであります。今回、特殊勤務手当の見直しにおいて、我が自由民主党がこれまで主張してきた部活動指導業務に対する手当の額を千二百円から千六百円に増額したことは評価いたしますが、土曜、日曜に丸一日指導業務に当たっても千六百円では、十分な金額であるとはいえません。
 そこで、熱心に部活動に従事している教員に対して、士気を高めるためにもめり張りのある適切な処遇が必要であります。今後、どのように評価し、処遇していくのか、所見を伺います。
 終わりに、法人二税について申し上げます。
 申し上げるまでもなく、首都東京には膨大な行政需要があるにもかかわらず、都の税収増を背景に、都の税源を地方に配分すれば国は地方交付税を抑制でき、国の財政再建に資することから、法人二税の地域的な偏在の是正を理由として都の税源をねらう動きは後を絶ちません。最近では、地方共同税の名のもと、法人の事業活動と何の関係もない人口を基準として法人二税の税収を再配分すべきとの主張までされています。
 しかしながら、都の税収増は、都内で事業活動を行う企業の経営努力による収益増などのほかに、滞納を許さない都の徴税努力によるものであります。東京には巨大都市のインフラ整備や、経済社会のすべてにわたって膨大な財政需要があります。何ら根拠のない主張によって都の財源が奪われるようなことがあってはなりません。
 都の法人二税の税収を地方に配分するという動きを断固阻止すべきと考えますが、所見を伺います。
 終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 臼井孝議員の一般質問にお答えいたします。
 花粉症対策についてでございますが、先日、伐採開始式では、私自身も杉の伐採と植樹を行いまして、花粉症対策の第一歩を踏み出しました。まずは都から事業を開始いたしましたが、周辺の県と協力しながら、今後も国を動かし、広域的な取り組みに広げていきたいと思っております。
 今日の日本では、身近な生活の中でコンクリートが余りに多用されまして、古来よりはぐくまれてきた豊かな木の文化が忘れられております。日本在住の日本研究家でありますアレックス・カーさんの「犬と鬼」という奇妙な題の本ですが、この中で指摘されておりますけれども、私は驚きましたが、日本で一年間で使用されるコンクリートの量はアメリカ全体の二倍だそうでありまして、こういったコンクリートの消費量が木の文化の衰退というのも明かしているわけでありますけれども、議会に出ます回廊にも、都庁側に掲げてありますが、一八六〇年代に撮られた江戸の景観の美しさというのは、これはみんな木でできておりまして、すばらしいモノクロームのまちで、後年やってきましたフランク・ロイド・ライトが近代ホテルをつくれということで委嘱を受けましたけれども、あの町並みを眺めて、もう自分のコンセプトを変えまして、コンクリートを廃して日本で材質を探して、大谷石のかつての帝国ホテルをつくりました。
 そういった歴史の事実を考えましても、災害対策ということからすれば木の弱さもございますが、今、東京が東村山でやっておりますあの廉価な実験住宅の建設にも、少なくともインテリアには木を積極的に使うような、室内ですとそう老化もいたしませんから、そういう試みもこれからしまして、今こそ木の文化に思いをいたし、多摩産材の有効活用と森林の再生を図りながら、抜本的な花粉症対策を進めていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長、関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 教育に関します五点の質問にお答え申し上げます。
 まず、地域スポーツクラブの設立についてでありますが、お話のように、地域スポーツクラブは、子どもたちが身近な地域の中でスポーツに親しむとともに、都民のだれもが、年齢や興味に応じまして、いつでもどこでもスポーツを実践できる場として、生涯スポーツ社会の実現のためにも重要であると認識しております。
 都教育委員会は、これまでも地域スポーツクラブの支援のために、クラブ運営の核となりますクラブマネジャーの人材育成等を行ってきたところでございます。今後は、東京都地域スポーツクラブ設立支援協議会の設置や、地域スポーツクラブを段階的に育成していく設立モデル事業を実施していくことによりまして、平成二十五年の東京国体開催までに、全区市町村での地域スポーツクラブの設置を促進してまいります。
 これによりまして、さらに多くの都民がスポーツに親しむことのできる環境を整備し、東京国体やオリンピックに向けて機運の醸成を図ってまいります。
 次に、ジュニア育成地域推進事業についてであります。
 地域におきますジュニアスポーツの普及、振興と選手の発掘、育成を図るために、ジュニア育成地域推進事業を本年度設置したところでございます。各地区におきまして、ジュニア選手が一堂に会した競技会や、ボート競技など子どもが接する機会の少ない競技種目の講習会を開催いたしまして、約二万五千人のジュニア選手が参加するなど、成果を上げつつあります。
 今後は、各地区の体育協会を中心といたしまして、学校、地域スポーツクラブ等によりますネットワークづくりを支援するとともに、都競技団体との連携を図り、地域から発掘されるジュニア選手の育成強化に取り組むなど、本事業の充実と効果的な推進を図ってまいります。
 次に、部活動とジュニア世代の選手育成についてであります。
 お話のとおり、学校におきます部活動は、ジュニア世代の選手育成と競技力向上に重要な役割を果たしていると考えております。都教育委員会は、これまでも部活動の指導者不足などの課題に対応するため、部活動推進指定校の指定や外部指導者の導入など、部活動を活性化するためのさまざまな取り組みを行ってまいりました。
 今後は、これまでの外部指導者に加えまして、都競技団体との連携によりまして指導者派遣の拡充を図るほか、競技別一貫指導プログラムの活用を促すなど、部活動を通じたジュニア世代の選手育成を効果的に進めてまいります。
 次に、部活動に対する熱意と指導力のある教員を確保するための方策についてであります。
 従来から、採用選考の面接におきまして、受験生が持参します面接票に、大学等でのクラブ活動の状況や大会の成績などにつきまして記入する欄を設けまして、その内容を考慮しまして面接を行うなど、採用に当たっての参考としているところであります。
 また、今年度から、小学校の教員採用選考におきまして大学推薦制度を設けまして、学業が優秀で、大学時代のスポーツ、芸術活動におきまして優秀な実績のある者につきましては一次選考を免除するという制度をつくりました。今後、さらに、中学校及び高等学校の教員採用選考におきましても同様の大学推薦制度を導入することを検討してまいります。
 最後に、部活動指導に従事する教員に対しての評価及び処遇についてであります。
 ご指摘のとおり、部活動をさらに充実、活性化するためには、これを支える顧問教諭等の士気高揚が重要でありまして、部活動指導を熱心に取り組んでいる顧問に報い、めり張りのある処遇とする必要がございます。
 このため、部活動指導を教員の校務として明確に位置づけまして、熱心に取り組んでいる教員に対しましては、業績評価におきましてその実績等を積極的に評価し、その結果を適切に処遇に反映してまいります。
 また、今回の手当の改正におきましては四百円の増額としたところでありますが、現在、国におきまして教職員の給与のあり方についての検討が進められておりまして、これらの動向も踏まえ、今後、教員の資質、能力の一層の向上に資する給与制度を構築すべきと考えております。その際、部活動等指導業務などに対する処遇についても検討してまいります。
   〔財務局長谷川健次君登壇〕

○財務局長(谷川健次君) 多摩産材の利用促進のルールづくりについてでございます。
 多摩産材の需要を喚起するためには、都が率先して利用していくことが重要であると考えております。
 都ではこれまで、学校や社会福祉施設の建設において床や壁に多摩産材を用い、その利用促進を図ってまいりました。さらに今後は多摩産材を利用する建物の対象を拡大するとともに、来年一月には工事の仕様書に多摩産材の利用を盛り込むなどのルールをつくり、より一層の利用促進を図ってまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 多摩産材についての二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、多摩産材の都営住宅での利用についてでございますが、多摩産材の円滑な流通を実現するためには、安定的な需要を示し、生産者の供給意欲を高めることが重要でございます。これまでも、都における多摩産材の利用拡大に向けた取り組みの一環として、都営住宅の外構整備工事や集会室の内装の一部に使用してまいりました。
 今年度からは、部材メーカーと連携し、花粉症対策の取り組みとして内装パネルなどに多摩産材を使用していくこととし、平成十八年度は約二百戸の住宅に試行的に導入します。
 今後とも、多摩産材の供給量や品質、価格の推移に留意しつつ、利用促進に努めてまいります。
 次に、多摩産材の民間住宅での利用についてでございますが、民間住宅は、住宅着工戸数の大部分を占めていることから、多摩産材の利用促進に果たす役割は大きいものがございます。
 民間住宅への普及を進めていくためには、都民に多摩産材を使用した住宅に接する機会を提供し、じかに天然材の魅力を知ってもらうことが重要でございます。このため、都民を対象とした家づくりセミナー等の開催に加え、多摩産材の使用により優遇融資を受けた住宅や、東村山市本町地区プロジェクトでの使用事例の見学会を実施するなど、さまざまな普及活動を行っております。
 今後は、こうした取り組みを通じ、都民や家づくりに直接かかわる工務店等に対し活用事例を紹介するなど、多摩産材の利用拡大に積極的に努めてまいります。
   〔環境局長村山寛司君登壇〕

○環境局長(村山寛司君) 多摩におきます森林再生事業についてのご質問にお答えをいたします。
 荒廃した杉、ヒノキの人工林を広葉樹へ転換していくことは、生物多様性の確保など、森林の公益的機能を向上させる上で大きな意義を持つものでございます。都は、こうした観点から、地元市町村との連携によりまして、平成十四年度から森林再生事業を実施し、杉、ヒノキの人工林の間伐を行い、広葉樹の芽生えを促すことで森林の再生を図ってきております。
 森林の再生は息長く取り組むべき課題でありますが、本事業を着実に実施していく上では、森林所有者など地元の理解と協力が欠かせないものでございます。事業開始後五年を経るのを機に、近く、地元住民や学識経験者などを交えた検討会を立ち上げまして、事業実施上の課題などを明らかにし、森林再生事業をより一層効果的に推進していくための方策を検討してまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 都市農地の保全に向けての取り組みについてでございますが、東京の地域特性を踏まえた農地制度などを検討するため設けた都市農業検討委員会からは、相続を契機に農地が年々減少している等の課題を示した上で、現行の生産緑地制度や相続税納税猶予制度の改善が必要であるなどとの報告がありました。
 これを受けまして、制度の改善に向けた提案要求を国に対して行うため、現在、関係四局により具体案を検討しております。
 また、都が取り組むべき農地保全策につきましては、担い手確保等の視点から検討を進めてまいります。
   〔主税局長菅原秀夫君登壇〕

○主税局長(菅原秀夫君) 法人二税の税収を地方に配分しようとする動きについてお答え申し上げます。
 法人事業税は事業活動規模に応じまして、また、法人住民税は事業活動の成果としての所得等に応じまして、法人が所在する都道府県において課する税でございます。
 税源の偏在性を殊さら強調いたしまして、人口を基準として法人二税など税収を配分することは、課税の根拠を完全に無視するものであると同時に、首都であり大都市である東京の膨大な財政需要を賄う財源を都から奪うものでございます。
 都といたしましては、引き続き、都議会並びに東京都選出国会議員の皆様方のご協力をいただきながら、都税制調査会の活用も図りながら、他の大都市とも密接に連携をいたしまして、理念のない国の動きを断固阻止してまいります。

○議長(川島忠一君) 九十八番花輪ともふみ君。
   〔九十八番花輪ともふみ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○九十八番(花輪ともふみ君) 交通政策について伺います。
 先日、地方に住むある高齢の方からこんなことをいわれました。東京見物に行ったけど、東京駅で新幹線をおりて観光バスに乗るまで、雨の中を随分歩かされて、ひどい目に遭ったと。私は最初、かわいそうに随分段取りの悪い旅行会社に当たったのかなと思っていました。しかし、よく聞いてみますと、新幹線の改札口に近い東京駅八重洲口周辺には観光バスの乗りおりのスペースがなく、徒歩数百メートル離れた鍛冶橋の駐車場まで歩かなければいけないとのことでした。
 私も早速、現地に行ってみました。新幹線改札口から駐車場の入り口まで、人込みの中を狭い歩道を歩き、私の足で七分ほどでした。確かに、新幹線をおりた年配の旅行者が、雨の中、荷物を持っててくてくと歩くのは大変だなと思いました。修学旅行の生徒たちも、ガイドさんの旗に従い、通行者の多さに戸惑いながら列をなしていました。
 都は、千客万来の世界都市東京を目指すとして、観光行政を政策の柱に位置づけています。また、東京都観光産業振興プランでも、観光客の受け入れ態勢の整備の一つとして、交通の結節点や観光の拠点の周辺に観光バスの発着場の整備をするとしています。
 現在、東京駅八重洲口駅前広場の整備はJRによって進められていますが、路線バスや高速バスの乗り場はあるものの、観光バスや貸切バスなどのバスの乗り場は計画されていないと聞きます。都の観光の玄関口であるこの東京駅八重洲口がこの状態では、寂しい限りです。
 千客万来の都市を目指すのであれば、東京駅八重洲口を初め主要ターミナル駅における観光バスや貸切バスの乗り場の整備を積極的に進めていくべきだと思いますが、都の基本的な考え方と方向性について伺います。
 次に、タクシープールについて伺います。
 ある日のことでした。会合で遅くなった深夜に車で外苑東通りを抜けようとしたところ、六本木交差点付近は大渋滞、客待ちタクシーの待機列により道路の車線はふさがり、渋滞が発生しているようでした。これもタクシーの規制緩和の失敗が原因だよなとひとり言をいいながら、ふと、都がスムーズ東京21拡大作戦でタクシープールを首都高の高架下につくったことを思い出しました。六本木のほかにも渋谷や池袋などで整備をするなど、都も頑張っているなと評価していたところです。
 ところが、六本木交差点を曲がり、タクシープールの状況を気にして見てみると、五十台近く入るはずの大きなタクシープールに車が四台見えるだけでした。道路にはタクシーがあふれているのにです。この六本木のタクシープールは開設後約半年を経過したところですが、どうも十分には活用されていないようです。
 その後、タクシーの運転手さんに聞いてみたところ、とにかく使い勝手が悪い、お客さんもタクシー乗り場で待たずに六本木交差点付近で車を拾うため、結局、まじめにプールで待っていると、流しているタクシーにみんなお客さんをとられてしまうとのことでした。乗るお客さん、乗せる運転手さんのモラルにも問題があるようですが、タクシープールからわざわざUターンをして二車線越えないと乗り場に着かないなど、どうやらこのタクシープールそのものにも問題があるようです。
 渋滞解消のため、せっかくつくったタクシープールです。有効活用に向けて、実際に利用する運転手さんの声などもしっかりと把握しながら、渋滞解消に向けてもう一工夫が必要かと思いますが、所見を伺います。
 次に、臨海三セクの問題です。
 昨日の代表質問でも議論されたように、東京テレポートセンター、東京臨海副都心建設、竹芝地域開発の三社、いわゆる臨海三セクは、この春三千六百億円という莫大な借金を抱えて破綻いたしました。
 私が都議会議員に当選してから五年余り、多摩ニュータウン開発センター、臨海高速鉄道、東京ファッションタウン、タイム二十四など数多くの第三セクターが破綻をし、都民の財産である出資金が紙切れになりました。多額の税金が投入されてきました。
 しかし、どの件についても、知事は、バブルのせい、国のせいと、いつも人のせいにし続けてきました。さらに今回の件に至っても、日本全体がバブルに乗ってすってんてんになったと強弁し、まるで破綻するのが当たり前とでもいっているように聞こえます。果たしてそうでしょうか。臨海三セクと同時期に建てられたビルはあまたあります。破綻をせずに営業を続けているところもたくさんあります。
 臨海三セクが着工したころは既にバブルは崩壊し、多くの民間ビル事業者は将来の収支計画に不安を抱き、計画を見直し、コスト削減に努め、テナント獲得に汗を流していた時期です。では、臨海三セクの開発に当たって、このような、民間のような緊張感はあったのでしょうか。倒産しても責任を問われない天下りによる経営の中、臨海三セクビルは、臨海地域のために必要なインフラ設備があり、まちの成熟に必要なビルだから赤字でも仕方がないという半官半民の甘い気持ちがどこかにあったのではないでしょうか。
 先ごろ、第三セクターの破綻などにより、夕張市は財政再建団体に指定されました。多くの市民が教育や福祉の後退の不安に陥っています。第二、第三の夕張になるのではないかと心配している自治体も数多くあるようです。全国各地で第三セクターの破綻と経営不振が続く中、臨海三セクの破綻をどのようにとらえ、どのように解決をしていくのか、以下の点について質問をさせていただきます。
 都は、平成十年に臨海三セクの経営安定化策を策定し、平成十四年に中間見直しを行っております。私は、この間の各社の経営状況を把握したいと思い、幾度となく、それぞれのビルの収入、支出がわかるような経営情報の提供を求めてきました。しかし、いつも、営業上の理由で出せない、しかし、経営はうまくいってますからとのお答えでした。結局、破綻しました。
 臨海三セクは、都民の財産を莫大に投じているにもかかわらず、株式会社であることを逆手にとって情報の説明責任を果たしてこなかったことが、今回の甘い経営につながり、バブル崩壊後の対応がおくれ、三千六百億円を超える史上最悪の臨海三セクの破綻に至ったといっても、私は過言でないと思います。
 そしてまた、今回の破綻に当たって、都及び第三セクターの経営陣はどのような責任をとったのかも不明確です。三千六百億円という巨額の破綻です。通常の民間企業であれば、経営陣が退陣したり、マスコミに出てきて関係者に対して謝罪をするなどが常識ではないでしょうか。残念ながら、どこからも済みませんの声一つ聞こえてきません。また、天下り経営陣の退陣予定もないと聞きます。もし今回のような事態を不問に付すのであれば、第三セクターのモラルハザードに歯どめがかかりません。
 今回の件で、都は第三セクターに対する指導管理責任、また、天下り経営陣はその経営責任をどのようにとるのか、それぞれお尋ねします。
 次に、持ち株会社東京臨海ホールディングスについて伺います。
 都は、臨海三セクの破綻にあわせ、この持ち株会社構想を発表したわけですが、一体この会社に何をやらせたいのでしょうか、いま一つ見えてきません。
 臨海ホールディングスは、臨海熱供給、臨海三セク、ゆりかもめ、ビッグサイト、民営化後の埠頭公社の計七社を子会社化し、資金の一括運用や、グループ内融資による資金の効率的な運用を図るとしています。だぶついたお金をお互いに融通し合うということなのでしょうが、であれば、なぜ都から無担保無利子貸付で五十億円も貸してあげなければいけないのでしょうか。グループファイナンスはつくったけれども、融通し合うお金がないから、東京都さん、無利子で貸してくださいとでもいうのでしょうか。であれば、それこそ新たなる金融支援ではないですか。子会社となる第三セクターの中で、まだ金融支援が必要なところがあるのでしょうか。あるのであれば、資金の足りない第三セクターと具体的な使途を都民に明らかにしてから貸し付けるべきです。それとも、株や債券などを購入して資金運用でもするのでしょうか。
 いずれにしても、無担保無利子で貸し付けるお金は都民の財産です。やはり第三セクターへのつかみ金のような形で無利子で資金を提供するという計画はいかがなものかと思います。貸し付けの考え方について伺います。
 持ち株会社の体制について伺います。
 子会社化される七社の経営トップはすべて天下りです。これからできる持ち株会社が、今までのように天下りによる責任感が希薄な中での経営では困ります。臨海三セクの失敗を、新たにつくるより大きな第三セクターが繰り返すことになってはたまりません。
 会社機関の簡素化が図られる、スリムで機動性の発揮できる会社機関とするという言葉が散りばめられた説明資料の中に、役員数は原則としてグループ全体でふやさないという一行がありました。びっくりです。裏を返せば、天下りポストは減らさないということではないですか。七社の企業がグループ化すれば、当然事業の再編が行われるはずです。その中で役員数が現状維持では、天下りポストも減らすことさえできない東京都の姿勢そのものが問われると思います。
 持ち株会社をつくるのであれば、多くの第三セクターの失敗を踏まえ、天下りポストを減らし、経営陣には民間からの優秀な人材を登用するなど、厳しい経営ノウハウを導入して事業を進めていく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 情報開示にも心配があります。七社は持ち株会社の子会社となります。都は、持ち株会社臨海ホールディングスの株主になりますが、一方で子会社への直接出資がなくなる場合があります。現在の七社は監理団体とされていますが、子会社化した後も監理団体としての指定を受けるのでしょうか。受けないとしたならば、各社の経営内容の情報開示や議会への報告はどうなるのでしょうか。
 臨海三セク破綻による再生プランとしての持ち株会社構想です。少なくとも子会社も監理団体に位置づける、あるいは情報公開条例の規定の中にしっかりと盛り込んでいくなど、制度的な担保も視野に入れて、今まで以上に透明度を高めるようにしていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 今回の臨海三セクの破綻、臨海ホールディングスによる持ち株会社方式により、監理団体改革も大きな節目を迎えたとの声も聞こえてきます。しかし、まだ臨海高速鉄道や多摩ニュータウン開発などのように、公的資金投入後経営再建中の会社や、多摩都市モノレールのように経営難に悩まされている会社もあります。臨海地域以外でも、水道局の第三セクターによるビル事業なども行われています。
 そもそも民間でもできるビル事業をなぜ都がやり続ける必要があるのかという疑問もあります。行政と民間との役割分担の議論、これももっともっと必要です。天下りに対する都民、国民の批判も高まっています。このようなことや、全国各地の第三セクターの状況なども踏まえ、監理団体を初めとした東京都の外郭団体の改革を一層進めていくべきと考えますが、知事の決意を伺います。
 以上をもちまして私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 花輪ともふみ議員の一般質問にお答えいたします。
 外郭団体改革についてでありますが、私、就任以来、外部監査の実施やアドバイザリーボードの設置、民間の経営者の登用などによりまして、かなり思い切った措置を講じながら、不退転の決意で抜本的な改革に取り組み、それなりの成果を上げてきたと思っております。
 かつて、バブル崩壊の影響を受け、破綻寸前でありました臨海副都心開発についても、総仕上げの十年という重要な段階を迎え、このたび持ち株会社方式で監理団体を経営統合することにより、開発を強力に推進する体制を構築することといたしました。
 今後とも、こうした先駆的な取り組みを東京から発信し、都民サービスの向上と東京の再生という広い視点で、都と団体との関係も厳正に保ちながら、改革に取り組んでいくつもりでございます。
 他の質問については関係局長から答弁します。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 主要ターミナル駅における観光バスの乗り場の整備についてでございますが、駅前広場は、道路交通の円滑化や交通結節点の機能強化の観点から、交通管理者など関係者との調整を図りながら計画しており、限られた空間の中で、路線バスやタクシーなどの乗降場を優先的に配置しております。
 お尋ねの観光バスの乗り場の整備については、季節や時間帯による需要の偏り、観光バスの集中による周辺への影響、錯綜する交通動線の処理など、さまざまな課題がございます。
 今後、主要ターミナル駅周辺のまちづくりの機会などをとらえ、地元自治体や関係事業者とともに適切に対処してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 六本木交差点の渋滞対策についてでございますが、六本木のタクシープールは、客待ちの待機列が交通渋滞の大変大きな原因となっていましたことから、タクシー関係団体や地元区などとの検討会で協議をいたしまして、本年五月、既存道路の一部を利用して設置いたしました。しかしながら、現在も交差点付近での客待ち待機列が解消できない状況にはございます。
 今後、タクシードライバーに対し、タクシープールを利用して客待ちを行うことをさらに周知徹底することはもちろんですけれども、関係団体を通じ現場の声もよく聞きながら、検討会においてタクシープールを有効に機能させるための具体策をさらに検討してまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 臨海三セクについて四点の質問にお答え申し上げます。
 まず、臨海三セクに対する都の指導管理責任及び会社の経営責任についてのお尋ねでございます。
 臨海開発は、バブル崩壊の直撃を受け、厳しい状況にありましたが、今や臨海地域は都心とのアクセスも充実し、首都東京の新たな活力を担うまちに成長してまいりました。
 開発の先導役である臨海三セクも、厳しい経営環境の中で、都の指導のもと、全力で経営改善に努めてまいりました。その結果、平成十一年度以降、七年連続で営業黒字を達成するまでに回復してまいりました。
 今回、民事再生を申し立てたのは、開発を一層強力に推進することの必要性や、金利上昇が懸念される将来の金融情勢などを総合的に勘案し、今とり得る最善の方策として、抜本的な経営再建を選択したものでございます。
 したがって、今回の計画案の特徴でございますけれども、これまでの改善努力の結果、収益力が強化され、建物の担保価値が千三百億円と高く評価されており、新たに資金投入なしで経営再建が可能な内容となっております。
 また、他団体では、大型開発におきまして、民事再生を申し立てたものの、会社の自主性が著しく損なわれた会社更生法による処理や、特別清算に移行し、資産が低廉な価格で売却される例や、自治体による重い損失補償が求められることが多い中で、今回は、再生申し立ての方針が裁判所の審査を通じまして十分尊重された内容となっております。
 こうした計画案を策定することができたのは、都の指導監督のもとで、経営陣がそのときどきの経済情勢に応じ、経営努力を積み重ねてきたことの結果であると考えております。
 今後も臨海開発のさらなる発展を目指しまして、全力で取り組んでまいります。
 次に、持ち株会社におけるグループファイナンスについてのお尋ねでございます。
 持ち株会社グループは、臨海地域において都民や企業を支える都市基盤を提供する各団体を経営統合するものでございます。
 東京港と臨海副都心を抱えるこの地域が、全体としてその機能や魅力の向上を図っていくためには、環境、防災、観光、そして交通ネットワークなどの公益的な諸課題を統一的に解決していく必要がございます。そのため、グループは、都や関係機関などと連携しながら、総合力を生かし、複合的なサービスを行ってまいりますが、その成果は都民に還元されることから、無利子による貸し付けが適当であると判断したものでございます。
 次に、持ち株会社の経営体制についてでございます。
 これまで各団体におきましては、民間の知恵や工夫を十分取り入れて経営を行ってまいりました。持ち株会社の経営に当たりましても、同様に取り組んでいくことは重要であると考えております。
 本グループは、交通やエネルギー、ふ頭運営など極めて幅広く、かつ公共性の高いサービスを提供する団体が参画するものでありまして、都や民間事業者など多くの関係機関と十分な調整を図りながら、事業を進めていくことが必要でございます。
 こうしたグループが担う役割を的確に果たす観点から、最も適した人材を登用すべきものと考えております。
 最後に、持ち株会社グループの経営の透明性についてでございます。
 本グループは、公共的な役割を担うことから、経営の透明性の確保は重要な課題であると認識しております。そのため、持ち株会社に加えて、グループ全体と各子会社の財務諸表についても、毎年度議会に報告することを既に明らかにしておりますが、都民への説明責任を果たしていくためにも、経営の透明性の確保にできる限り努めてまいりたいと考えております。
 なお、子会社の位置づけにつきましては、関係局と検討を進めているところでございます。

○副議長(木内良明君) 六十七番山加朱美さん。
   〔六十七番山加朱美君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○六十七番(山加朱美君) 昨日、我が党の代表質問に答え、十年先の都市像をつくるため、次の四年間、命をかけて東京を守るという知事の力強い決意表明に大変感動を覚えた一人であります。その東京の国際貢献について伺います。
 振り返れば、東京は、関東大震災、そして第二次世界大戦の戦災により大きな被害を受けましたが、奇跡ともいわれる復興をなし遂げ、世界有数の大都市に成長しました。成長の過程では、公害問題を初め、多くの難題を乗り越え、克服し、首都として日本をリードしてきました。そして、課題への挑戦は今も続いています。
 東京の都市機能の集積は、世界的にも他の追随を許さないものであり、集積に伴うさまざまな都市問題も東京に先鋭的にあらわれています。また、少子高齢化は、世界に類を見ない速さで進行しています。これらの課題は、他の大都市にとっても共通の問題であり、あるいは将来的に直面することになる課題です。
 私は、東京が、福祉、環境などの課題解決に向けて、技術力や英知を結集して新たな方向性を示し、二十一世紀型の都市モデルを構築することによって、世界の模範となるべきと考えています。国際貢献というと、金銭的な支援や物資の援助が頭に浮かびがちですが、東京が難問に挑戦し、克服し、成熟を遂げていくそのプロセスを世界に発信していくことこそが、日本の首都であり、世界屈指の大都市である東京の果たすべき、未来に向けた大きな国際貢献であると思います。
 東京でのオリンピック開催を手中におさめるためにも、国際貢献は必要不可欠であります。これからの東京の国際貢献について、知事はどのようにお考えか、所見を伺います。
 次に、私は、二年前の本会議において、動物由来感染症の脅威についていち早く警鐘を鳴らしました。新興感染症の多くは動物由来の感染症であります。
 東京のような国際都市では、海外から新たな病原体が侵入する可能性は大きくなっています。先月、国内では三十六年ぶりに、外国で犬にかまれ、帰国後に狂犬病を発症し、死亡するという事件が連続して起きました。狂犬病ウイルスは、犬だけでなく、人を含むすべての哺乳類の感染源となり、発症すると、治療法がなく、ほぼ一〇〇%死亡するとされています。長らく日本国内での発症はありませんでしたが、全世界では、狂犬病で命を失う人は、世界保健機関の推計によると、年間五万五千人にも上っています。
 狂犬病ウイルスなど発生時、迅速な対応の充実について見解を伺います。
 また、近年のペットブームを背景として、人と動物とのかかわりもより緊密なものとなっています。海外からの侵入だけでなく、国内で日常的に販売され、飼われている動物の中にも、何らかの病原体を保有しているものがあることを看過してはなりません。
 さらに、多数の動物を管理するペットショップや動物触れ合い施設等もふえており、これらの施設等で動物由来の感染症が発生した場合、不特定多数の人への感染拡大が危惧されます。事実、昨年からことしにかけ、神戸市内の鳥の展示施設でのオウム病、秋田県内動物触れ合いイベントでの腸管出血性大腸菌による集団感染もありました。
 ペットの販売や展示などを行う施設での動物由来感染症の予防対策の強化を図ることが重要と考えますが、所見を伺います。
 また、新型インフルエンザの変異が危惧されている高病原性鳥インフルエンザについては、この一年で東アジアから南アジア、欧州、中東、アフリカにまで拡大し、インドネシアを初め、人への感染がふえ続けています。スペイン風邪など、過去の例にも見られるように、新型インフルエンザが一たび発生すれば、社会的な混乱を引き起こし、経済的損失は甚大であります。ウイルスという姿の見えない敵が、いつ、人類への脅威となる毒性の強いウイルスに変異するのかは、科学が発達した現代においても、専門家や技術者が総力を結集して取り組まなければならない重要な課題であります。
 新型インフルエンザの発生の危惧が高まる中、都は、十九年度の重点事業として、健康危機管理センターの整備に取り組むこととしていますが、具体的にどのような機能を担うのか伺います。
 次に、近年、景気回復基調にあるとはいえ、生活保護の受給者数は増加し続けています。平成十七年度平均では、都内で約十四万世帯が生活保護を受給しています。人が人として生きる上で最後のライフライン、生活保護は、地域で真に生活に困窮している人に対しては、適切にその適用がなされなければなりません。この点については、都でも、状況の把握や情報の提供など、これまでも細やかな取り組みがなされてきたと思います。
 しかし、こうした最低限度の生活保障に加え、生活保護制度のもう一つの主要目的が自立の助長であることを忘れてはならないと思います。就労自立や地域生活への移行など、生活保護受給者の自立支援に取り組んでいくことがより重要であります。時代の変化により、昨今の生活保護受給者は、精神疾患を抱えた患者、DVや虐待の被害者、多重債務を負った人など、複雑で多様な問題を抱え、社会的な支援を必要としている場合も少なくありません。自立を妨げている要因を的確に把握した上で、ハローワークとの連携や、民生・児童委員など、地域の社会資源も積極的に活用し、再び自立した生活を送れるよう、本人を取り巻く状況や能力に応じたさまざまな社会的支援をきめ細かく実施していくことが必要と思います。
 このような生活保護受給者の自立支援について、都の考え方と今後の取り組みを伺います。
 次に、障害者が地域で安心して住み続けられるよう、相談体制として、身体障害者相談員及び知的障害者相談員の制度があります。都として、この取り組みに補助金を交付するだけでなく、相談員の役割の重要性を踏まえ、積極的な支援を講ずべきであると、私はこれまで重ねて提言してきました。
 本年十月、障害者自立支援法が全面施行されました。相談員がこの新しい法律の内容や都独自の取り組みについてよく理解し、障害者の情報ニーズにこたえていくことこそ、障害者の地域生活を支援する底力になると確信します。
 都として、障害者相談員の制度を一層活性化させるため、相談員のさらなる資質の向上に向けた取り組みを行うべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、先ごろ都が公表した高齢者の生活実態調査の結果によると、介護が必要となった場合に、自宅での対応を望む割合が六六%に達し、五年前と比べ一四ポイントも増加し、その一方で、施設への入所を希望する高齢者は、五年前の二〇%から一一%と、ほぼ半減しています。
 こうした高齢者の在宅生活を支える重要なサービスの一つにショートステイがありますが、ニーズは大変高く、とりわけ区部では事前の予約で常に満床に近い状態が続いています。ショートステイの必要性は、本人の容態の悪化や介護者の急病、急用など、必ずしも計画的なものばかりではありません。また、虐待などの場合には、高齢者を緊急に一時避難させる必要があります。
 そこで、こうした緊急時にも利用しやすいショートステイの実現が急務と考えますが、都の取り組みについて伺います。
 次に、私は先日、山口県にあるユニークな取り組みで知られるデイサービスセンターを視察する機会を得ました。そこは画一的なサービスとは全く無縁のもので、お年寄りの興味を引くような実にさまざまなプログラムが百種類以上も用意され、通ってきた利用者一人一人が自由にその日のメニューを選択する方式がとられており、皆さん、生き生きと取り組んでいる姿が大変印象的でした。
 また、建物も、スロープや手すりが完備されたバリアフリーとは反対に、そこはあえて一般の生活環境と同じように、段差があったり方々に家具が置かれていたり、長い廊下や階段があったりという、バリアフリーならぬ「バリアありー」の発想で、日常生活上のバリアをうまく活用しながら、自然とリハビリや訓練ができるように工夫されていました。「バリアありー」、これもまた一つの介護予防であり、真の自立支援であると、私は認識を新たにいたしました。
 介護サービスや介護予防サービスを提供する際には、先入観にとらわれず、事業者が高齢者の自立支援という趣旨を十分に理解することが極めて重要です。
 そこで、全国のこのような先駆的な取り組み事例を都内の事業者にも積極的に紹介するなど、東京のデイサービスが真に自立支援に資するサービスを提供できるよう、都としての取り組みを求めるものですが、所見を伺います。
 次に、都はこれまで次世代育成支援行動計画を策定し、子育て支援施策の充実を図ってきたことは評価をいたします。
 私は、これらに加え、男性が子育てや育児に積極的に参加できる社会を築くことが非常に大切だと考えていますが、我が国の実態は必ずしも満足のいくものではありません。真の男女共同参画社会の確立が少子化問題対応の基本と思いますが、男性は仕事、女性は家庭という伝統的考え方が今なお根強く残っていることも事実です。
 このことは諸外国との国際比較でも明確にわかります。内閣府が昨年行った調査によると、父親の一日当たりの育児時間は、イギリス九十分、スウェーデン七十分、ドイツ五十九分に対し、日本はわずか二十五分と、日本の男性の育児参加が大きくおくれていることがうかがえます。
 また、勤労者の平日の帰宅時間に関する調査では、スウェーデンでは男女とも約七割が午後六時ごろまでに帰宅しているのに対し、我が国では男性の六一・四%、女性の五・五%が午後八時以降の帰宅となっています。特に男性では午後十時以降の帰宅が三〇%にも上り、平均の帰宅時間は午後八時四十九分という驚くべき数字となっています。
 もちろん、国家の成り立ちや社会制度、文化など、各国が抱える歴史や背景に違いはありますが、男性の育児、子育てへの参加が我が国で進んでいないことは明らかです。日本人の価値観に根づいているこの課題は、育児休業法などの法整備や企業の子育て支援への考え方の変革などもあわせて必要なことから、容易に解決が得られるものでもありませんが、しかし、一方で、現在の若い世帯では、積極的に子育てにかかわりたいと思っている父親が確実にふえています。子どもがよりよい環境の中で健やかに育つためには、父親も母親もしっかりと子どもに向き合う時間を持てる社会とすることが重要であり、理想でもあります。
 都としても、男性の育児、子育て参加に対し、これまで以上に積極的な取り組みを行うべきと考えます。所見を伺います。
 次に、中小企業金融支援について伺います。
 原油高の影響もあり、都内中小企業の景況回復は一進一退を繰り返しています。こうした中、経営基盤が脆弱な中小企業の資金調達の円滑化を図る上で、都の制度融資は重要な役割を担っています。我が党はこれまでも制度融資の充実を強く求めてきましたが、これにこたえ、小規模企業融資の従業員数要件の緩和や年末年始特別対策の実施など、都として金融支援の強化に取り組んできたことは評価いたします。
 ところで、国は来年十月、これまで融資額の全額を信用保証協会が保証していたものを八割に限定し、残りの二割は金融機関に責任を分担させる部分保証制度を導入する方針です。金融機関に一定の負担を求めることは、貸し手としての責任ある対応を促す上では当然のことと思います。しかしながら、金融機関が新たにリスクを負担することが、経営基盤の脆弱な小規模企業などの資金調達に悪影響を及ぼすようなことがあってはなりません。
 部分保証制度の導入に当たり、都としての適切な対応が必要と考えますが、所見を伺います。
 次に、都は本年六月、外環の地下方式への都市計画変更の手続に着手されました。私の地元練馬区がことし八月に行ったアンケート調査の結果においても、約七割の区民が地下方式による外環の整備に賛成を示し、早期整備を望む声も強くなっています。
 本年十月、練馬区を初め、沿線の六区市長が外環計画に関する共同声明を発表しました。この中で、外環整備に当たっては、コミュニティの分断回避などや周辺整備への支援など、地域住民の生活環境を守り、地域に根差したまちづくりを推進する立場から要望も提出されました。
 改めて、この要望を踏まえ、外環整備の取り組みについて所見を伺い、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山加朱美議員の一般質問にお答えいたします。
 国際貢献についてでありますが、東京ほどさまざまな都市機能が高度に集中集積した都市は、ほかにめったにないと思います。しかし、ここまで成長、発展する過程では、大気汚染やごみ問題、交通渋滞など、さまざまな難問に直面して、その都度厳しい対応を迫られてまいりました。東京は、こうした経験を通じて、都市問題の解決に必要な技術や人材あるいはノウハウが蓄積されていると思います。
 今日では、世界の諸都市と連携して先進的な地球温暖化対策を展開するとともに、アジア大都市ネットワークでは、新興感染症の国際的なネットワークの構築にも取り組んでおります。
 今後、都は、こうした知見を十分に生かしまして、世界の都市と連携して大都市問題の解決に当たることによりまして、おっしゃるような国際的責任を果たしていきたいと思っております。
 ちなみに、大気汚染に悩むロンドンからは、既にかなり大きな効果を上げている東京のディーゼル車排出ガス規制の取り組みをぜひ参考にしたいという要請もございましたし、また、都が有する非常に高い水準の水道技術を普及するために、アジア各国に既に職員を派遣し、現地の技術者を積極的に育成しております。
 他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 健康危機管理などに関する八つの質問にお答えいたします。
 まず、動物由来の感染症発生時の対応についてでございますが、感染症に罹患した動物の国内への侵入を防ぐことは、国の果たすべき責務であり、検疫所で水際対策が講じられているところでございます。
 しかし、今般、海外で感染した狂犬病の患者が三十六年ぶりに国内で発生したことを受けまして、都としても、万が一狂犬病などの重篤な動物由来の感染症が国内で発生した場合に備え、庁内に連絡調整会議を設置したところでございます。
 今後、この会議を通じて関係各局と連携し、罹患動物の迅速な隔離の実施や、感染症の指定医療機関への円滑、確実なワクチンの供給など、初期の封じ込め対策を強力に推進してまいります。
 次に、ペットを取り扱う施設での動物由来の感染症の予防対策についてでございますが、動物由来の感染症の発生を防ぐためには、多数の都民が動物と触れ合うペットショップや展示施設等において、感染予防策を講じることが極めて効果的でございます。このため、都では、これらの施設における感染症の発生を未然に防止するため、平成十三年度から毎年、動物の病原体保有状況調査を実施し、衛生管理等の指導を行ってまいりました。
 今後、これまでの調査結果を踏まえ、飼育動物の健康管理や飼育環境の改善などについて指導をより一層強化し、ペットショップ等における動物由来の感染症の予防対策の充実を図ってまいります。
 次に、健康危機管理センターの整備についてでございますが、新型インフルエンザやSARSなどの新興感染症の脅威、青少年を中心とした脱法ドラッグの乱用など、さまざまな健康危機から都民の生命を守るため、現行の健康安全研究センターの体制を見直しまして、仮称健康危機管理センターを整備いたします。
 このセンターでは、国内外の健康危機情報を迅速に収集、解析する機能のほか、危険度の高い感染症などの検査に二十四時間対応できる体制を確立いたしまして、健康危機管理の拠点としての機能を担ってまいります。
 今後、健康危害の早期発見、原因究明、対応方針の立案を一元的に行う体制を順次整備いたしまして、専門的対応力を強化して、都民の安全・安心の確保に万全を期してまいります。
 次に、生活保護者の自立支援についてでございます。
 ご指摘のとおり、生活保護については、最低限度の生活保障に加え、自立の助長の視点が重要でございます。実施機関である区市による被保護者の状況や能力に応じた支援が必要でございます。そのため、自立を阻む要因ごとに類型化した支援プログラムの策定や、ハローワーク、病院、児童相談所等の専門機関との個別課題に対応可能なネットワークの構築、さらには就職活動に必要な経費の援助など、区市が行う多様な取り組みに対しまして、都として指導、支援に努めてまいります。また、こうした取り組みの結果、昨年度、約二千八百人が就職するなどの成果を上げております。
 今後、すべての区市においてこうした取り組みが積極的に実践されるよう努めてまいります。
 次に、障害者相談員への支援についてでございますが、障害者相談員は、区市町村が、熱意と識見のある障害者本人またはその保護者に、他の障害者の相談に応じ、必要な援助を行う業務を委託する制度でございます。現在、都内で約八百人の相談員が活動しておりまして、障害者が安心して相談でき、円滑に関係機関との連携が図られるなど、地域の障害者の生活を支える重要な役割を果たしております。
 相談員の資質向上のため、区市町村では、障害者施策や障害者自立支援法に係る研修会、グループホームや施設の見学などを行っております。一方、都では、昨年度合同研修会を開催いたしまして、都の福祉施策の動向を情報提供いたしました。
 都は、特色ある活動の事例を紹介するなど、都内のすべての地域での相談員の活動がさらに活性化するよう、今後とも区市町村を支援してまいります。
 次に、ショートステイについてでございますが、高齢者が安心して在宅生活を継続していくためには、介護者が急病で入院した場合や、虐待が疑われるケースでの緊急対応にも利用しやすいショートステイを実現することは、ご指摘のとおり、重要な課題と認識しております。このため、都は、中野区及び豊島区において、相談体制や関係機関との連携など、地域の実情に応じたモデル事業に今年度から取り組んでおります。
 その中で、夜間対応型訪問介護事業所を活用した二十四時間の相談窓口の開設や、虐待を受けた高齢者の早期受け入れのために必要な医療機関や警察署との連携の確保について具体的な検討を進めており、今後、モデル事業の効果を検証の上、その成果の全都的な普及に努めてまいります。
 次に、デイサービスについてでございます。
 高齢者が施設に通い、入浴、食事等の介護を受けたり、機能訓練などを行うデイサービスは、在宅高齢者の自立した日常生活を支える上で重要なサービスでございます。
 また、本年四月からの介護保険制度の改正によりまして、デイサービスにおいても、運動機能の向上や栄養改善などの介護予防プログラムが提供されることとなりました。サービス提供に当たっては、各事業者が自立支援の理念や介護予防の趣旨を十分に理解し、画一的なサービス提供から脱却し、創意工夫を凝らした多様かつ個別性のあるプログラムに取り組むことが重要でございます。このため、今年度に実施予定のデイサービスの全事業所を対象とする講習会の中で、ご提案の先駆的取り組み事例の紹介を行うなど、デイサービスの充実に努めてまいります。
 最後に、男性の育児、子育て参加についてでございます。
 現在の我が国の子育て事情を考えますと、特に男性の子育て参加の推進が重要でございますが、そのためには、社会全体で働き方の見直しに取り組むことが必要であります。都では、男性社員の子育て参加も含め、次世代育成に積極的に取り組む企業の公表等を行うとうきょう次世代育成サポート企業登録制度を新たに創設いたしまして、企業の取り組みを促しているところでございます。
 また、育児の基礎知識などの情報をまとめた「父親ハンドブック」を作成し、母子健康手帳交付時に配布するなどの取り組みを行っております。さらに、今年度は、お話しをいただきました男性の育児、子育て参加をテーマとしたフォーラムを、関係各局等が連携し開催する予定でございます。
 今後ともこうした取り組みを一層推進し、男性が積極的に育児、子育てに参加できる社会環境の実現に努めてまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 中小企業金融における部分保証制度導入への対応についてでございますが、都は、これまでも制度の見直しに当たりましては、小規模企業や創業間もない企業を初め、経営基盤が脆弱な中小企業に対する金融機関の貸し渋りを招かないよう、十分な配慮を国に対し強く求めてまいりました。これを受けまして、小口利用の小規模企業や創業関係など、都の制度融資利用者の四割程度につきましては、これまでどおり信用保証協会による全部保証が維持されることとなりました。
 今後とも中小企業の資金調達が円滑に行われるよう、都として適切に対応してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 外かく環状道路の取り組みについてでございますが、外環は、首都圏の交通混雑の緩和や環境改善のみならず、都市再生にとっても不可欠な道路でございます。このため、都は、国とともに、計画の早い段階から沿線住民や地元自治体などに情報を提供し、幅広く意見を聞きながら、早期整備に向けて取り組んでまいりました。
 外環の事業化に当たっては、沿線区長、市長の共同声明にもあるとおり、地域住民の安全と安心の確保、生活環境の維持、地域活性化や利便性向上などの視点から、周辺のまちづくりと整合を図ることが重要でございます。
 今後とも、国や沿線区市とともに地域の課題解決に向けて積極的に取り組み、沿線住民の理解と協力を得て、外環の早期整備を目指してまいります。

○議長(川島忠一君) 三十六番橘正剛君。
   〔三十六番橘正剛君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十六番(橘正剛君) 初めに、東京オリンピック招致に向けたスポーツ振興について質問します。
 今定例会の所信表明の中で、知事は、スポーツ振興のうねりを東京から日本全国、さらにはアジア全体に広げ、平和の祭典・東京五輪につなげていきたいと、スポーツ施策強化への強い決意を示されました。その一環として、トップアスリート養成のための中高一貫校の創設などは大きな目玉となります。同時に、地域における身近なスポーツの活発化もオリンピック招致へのうねりを起こす大きなインセンティブになることから、子どもからお年寄りまで地域で気軽に楽しめるスポーツ振興策を打ち出すべきと考えます。
 オリンピック招致に向けて、今後の取り組みに対する知事の所見を伺います。
 次に、東京大マラソン祭りについて質問します。
 都は、東京マラソン二〇〇七を成功に導き、二〇一六年のオリンピック招致への機運を高めるとしております。そのためにプレイベントを開催するとともに、マラソン当日は、ゴール地点となる有明会場を初め日比谷公園など、コース沿道各所で観戦する人たちも楽しめるさまざまなイベントが予定されております。
 この東京マラソンを市民参加の世界的な大会に育てていくには、アフターイベントも実施すべきであります。その一つとして、マラソン当日の模様をカメラにおさめた作品を都民から募集するフォトコンテストを企画し、写真を通してより多くの人たちに紹介していくことは非常に有意義であると考えます。所見を伺います。
 さらに、大勢の観客が訪れると予想される沿道各所で、事故なく気持ちよく応援していただくための配慮は欠かせません。特に、二月という最も寒い時期に大勢の人が観戦するわけですから、トイレの不足が懸念されますし、イベント会場を含め、障害者や高齢者が安心して参加できる会場整備も不可欠です。
 東京マラソンの成功は五輪招致実現へ大きなアピールになるとの日本陸連関係者の指摘もあります。したがって、懸念される課題には全庁を挙げて万全な対策を講じて臨むべきです。具体的な対応について見解を伺います。
 次に、中小企業支援策について伺います。
 中小企業のすぐれた技術や製品を展示し、ビジネスチャンスを提供する産業交流展が十月に東京ビッグサイトで開催され、私も見学してきました。展示ブースを回って話を聞いてみると、製品開発までは技術支援などを受けながらこぎつけることができるが、その先の販路にめどが立たないといった声が聞かれました。新製品を開発しても、中小企業にとっては販路開拓が大きな課題となっている実態が、そうした言葉にあらわれておりました。
 販路開拓の支援策として、東京都中小企業振興公社は、企業OBなど経験豊富なビジネスナビゲーターが新製品の取引先の紹介等を支援するニューマーケット開拓支援事業を展開し、成果を上げていると聞いております。
 その一方、中小企業者からは、ナビゲーターの増員や事業の周知を求める声も聞かれます。同事業は中小企業の販路開拓というニーズにこたえる有効な事業であり、こうした中小企業の要望に的確にこたえられるよう、一層きめ細かに対応していくことが大事であります。
 そこで、この事業の具体的な成果を積極的にPRするなど、中小企業者への浸透に努めるとともに、新製品を意欲的に発掘し、取り扱う製品の対象を拡大していくべきであると考えます。見解を伺います。
 さらに、中小企業が激しい競争を勝ち抜いていくために必要な販売戦略やマネジメント能力といった総合的な経営感覚を身につけるための支援も不可欠であります。しかし、日々忙しく働く中小企業者にとって、必要な知識を体系的に習得するための情報収集や各種研修機会への参加は極めて困難な状況にあります。
 そこで、中小企業の経営者や後継者などが仕事をしながら技術、経営の両面で自己の能力を向上させるリカレント教育の充実は極めて大事です。その支援策として、産業技術大学院大学の活用など、都立の教育機関や研究機関との連携を強化すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、中小企業の建築、機械、設備関連業種を中心に切実な問題となっている技能者育成、確保について質問します。
 建築、設備関係の小規模企業の経営者の人たちと懇談した折、こんな話を聞きました。ある程度の技術や技能を身につけると、中堅、大手の企業に移ったり引き抜かれたりして、中小零細企業は常に技能者不足の状態となっており、仕事のできぐあいにも影響を及ぼしかねないといったものでした。しかし、中小企業では従業員を十分に教育する余裕がないために、技能を有する人材の育成、確保が難しいという実情があります。
 技能者育成については、都立技術専門校での新たな技能者育成のほか、従業員を対象としたオーダーメード型訓練、建築関係業種の団体や事業主が運営する認定職業訓練校などがありますが、中小企業の実態を見れば、取り組みが十分とはいえません。都市インフラ整備などの現場を担うとともに、厳しい競争に勝ち残るための技術向上が求められる中小企業にとって、技能者の育成、確保は死活問題であります。
 中小企業における技能者の育成促進のため、企業の業態や勤務実態に即した数人単位の訓練支援など、一段ときめ細かな支援策の強化は不可欠であります。今後の対応について見解を伺います。
 バリアフリーのまちづくりについて質問します。
 だれもが安全で快適に暮らせるまちづくりを目指し、公明党が一貫して推進してきた交通バリアフリー法とハートビル法を統合、拡充したバリアフリー新法が今月施行となります。これによって、これまで駅やビルなど、いわば点としての整備に加え、今後は面としてのバリアフリー化に重点を置いて取り組むことになり、高齢者や障害者が移動しやすいまちの整備が一体的に進められます。
 具体的な整備は、同法を受けて区市町村が作成する基本構想に基づいて行われることになります。その際、平成十二年に施行された交通バリアフリー法に基づく基本構想策定での教訓を生かすべきです。このときは、自治体が作成のノウハウを十分持っていなかったことや、協議すべき関係機関等が多いために調整に時間がかかったことなどが指摘され、結果的に着手がおくれたという状況がありました。
 新法では面としての整備を求めていることから、調整は前回以上に時間を要することが想定されます。基本構想の策定に当たっては、住民が生活圏を共有していても、複数の自治体にまたがる地域の一体的な整備を行うケースも多くあると想定されます。
 このため、都の有するノウハウなどを盛り込んだガイドラインを策定するとともに、区市町村間や関係機関、団体との調整に都が主体的に対応するなど、基本構想策定から実施に至るまで迅速に進むよう、強力に後押しすべきと考えます。所見を伺います。
 また、バリアフリー新法は、都市公園も整備対象としているのが特徴です。この点については、現在都が推進している都市計画公園・緑地の整備方針を踏まえ、都立公園を整備する際には、バリアフリー化やより多くの都民に親しまれる魅力づくりを連動させ、全国の自治体のモデルケースとなるような整備を行うべきです。
 多くの都立公園は、広大な敷地に樹木が生い茂り、都民が身近に楽しむ格好の場となっており、そうした場所で健康増進のために多目的に利用したいとの高齢者や障害者の要望も多くなっております。このようなニーズにこたえるためにも、公園内の施設、園路等のバリアフリー化や豊富な樹木を生かした健康の維持、増進という視点からの取り組みも重要です。所見を伺います。
 次に、都の公立病院における救急医療スタッフの充実について質問します。
 ことし八月、奈良県内の町立病院で分娩中に意識不明になった患者が、十八もの病院から受け入れを断られ、ようやく搬送された病院で一週間後に死亡するという痛ましい出来事がありました。
 都は既に、初期、二次、三次の救急医療体制を整備し、奈良県のような事例の発生を防ぐ体制を整えておりますが、救急医療体制をさらに充実させるには、医師、看護師など救急医療を担う医療スタッフの安定的な確保、育成が重要です。
 この点について、都は来年度、都立病院において、高度、専門化した医療の提供や小児科、産婦人科の医師不足に対応するため、都立病院医師アカデミーを創設するとのことであり、都民にとっては大きな朗報です。
 そこで、このアカデミーにおいては、救急医療についても専門的スタッフの育成を図るべきであります。あわせて、幅広く高度な救急医療の現場を経験できる東京ERでの研修を都立病院、公社病院のより多くの若手研修医に経験させるべきと考えます。所見を伺います。
 水道事業の充実について伺います。
 公明党は、第二回定例会において、水道料金など幅広い公金の支払いにクレジットカード決済を実施するよう提案いたしました。クレジット決済は、電気、ガスなどの公共料金にも導入が進んでおり、家計管理に便利であるとの声がふえていると聞いております。
 こうした状況を踏まえ、水道料金の支払いにクレジットカード決済を導入することは都民サービスの向上につながると考えますが、見解を伺います。
 次に、水道施設の開放促進について伺います。
 水道局は、水道水源林や浄水場など多くの施設を保有し、これらの施設については、水源林にふれあいの道を整備したり、浄水場の見学会や一部開放などの取り組みを行っていると聞いております。水道施設の開放は、水の大切さを実感してもらい、節水につなげるためにも有意義な事業であると思います。
 私の地元である板橋区の三園浄水場では、現在、高度浄水施設の建設中であり、先日、見学してまいりました。安全でおいしい水づくりに向けた設備と工夫が随所に施され、これを地元住民だけでなく、多くの都民が気軽に見学することができれば、水道事業への理解は一段と深まると思います。
 そこで、三園浄水場高度浄水施設の完成に合わせて見学施設を充実させ、都民により身近な存在になるようにすべきと考えます。
 見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 橘正剛議員の一般質問にお答えいたします。
 スポーツ振興についてでありますが、スポーツは、都民、国民の健康増進や地域コミュニティの活性化など、さまざまな役割を担っております。都にとってスポーツ振興は政策の重要な柱の一つであり、来春にはスポーツを専管する組織を立ち上げる予定であります。
 今後、身近な場所で、だれもが何らかのスポーツを楽しめるよう、地域スポーツクラブの設立を支援するとともに、旧秋川高校を活用しまして、世界で戦える選手を養成するための中高一貫の教育施設を設立するなど、幅広い層で総合的にスポーツ振興に取り組んでいくつもりでございます。
 十年後のオリンピック開催をも視野に入れながら、スポーツを文化として根づかせ、東京をさらに魅力のあるまちにしていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、東京大マラソン祭りについてでございますが、東京マラソンを世界的な大会に育てていくためには、大会終了後も次回の大会に向けて機運を継続させていく必要がございます。そうした観点から、お話のフォトコンテストの実施につきましては、貴重なご提案であると考えてございます。
 フォトコンテストの実施に向けましては、事業主体、スポンサーを含めた予算の確保、さらには事業スキームの確定等検討すべき課題も多いことから、今後これらの諸課題を速やかに検討してまいりたいと思います。
 次に、東京マラソンに係る施設整備等についてでございますが、観戦する方々が、沿道各所で安全に、また気持ちよく応援をいただくためには、施設の対応が必要であることはご指摘のとおりでございます。
 このため、お話のトイレにつきましては、東京マラソン組織委員会におきまして、沿道施設へのトイレ利用の協力依頼や仮設臨時トイレの要所要所への設置を実施してまいります。
 また、障害者や高齢者が安心して参加できるための会場整備につきましても、関係局や区と調整しながら、大勢の方々が応援する楽しみを感じていただけるよう万全を期してまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 中小企業支援に関します三点のご質問にお答えをいたします。
 ニューマーケット開拓支援事業についてでございますが、本事業は、ベンチャー技術大賞等により高い技術力の評価を得た中小企業の製品や審査会において選定した製品を対象として、その販路開拓を支援するものであります。十九年度からは、環境、健康などの成長産業の核となります技術開発を集中的に支援する重点戦略プロジェクトなど、新規事業による開発製品も新たな支援対象といたします。
 また、各種展示会や広報媒体を活用した事業内容や成功事例の積極的PRのほか、区市町村など関係機関との連携強化により、すぐれた製品の一層の発掘に努めていきます。
 さらに、より多くの企業が本事業を活用できるよう募集方法を改善するなど、事業の充実に鋭意取り組んでまいります。
 次に、人材育成に向けました関係機関との連携強化についてであります。
 近年、中小企業におきまして、技術と経営両面に精通した人材教育の重要性が強く認識されております。そこで、都は、平成十九年度から、産業技術大学院大学と提携し、主に中小企業の経営者、後継者を対象とした技術経営人材育成のための公開講座を開設いたします。本講座では、学位等にとらわれず、比較的短期間で中小企業の実情に応じた経営戦略や製品開発マネジメントなど、実践的な教育訓練を行うものであります。こうした新たな取り組みにより、技術、経営両面で中小企業を支える人材を輩出してまいります。
 最後に、中小企業の技能者育成についてであります。
 企業の人材育成機能が低下傾向にある中で、特に中小企業におきましては、技能者の育成が重要な課題となっております。そのため、都は、技術専門校で広く受講生を募集して行う能力向上訓練、特定の企業、事業主団体の要望に基づいて行うオーダーメード型訓練などを、中小企業の技能者を対象として実施してまいりました。
 今後は、企業訪問の拡大等により一層企業ニーズの把握に努め、中小企業の実情にきめ細かく対応した訓練を実施するなど、技能者育成の充実を図ってまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) バリアフリー基本構想の策定についてでございますが、基本構想は、高齢者や障害者等が円滑に施設間の移動や施設の利用ができるよう、バリアフリー化の重点的かつ一体的な推進を図るため、区市町村が策定するものでございます。
 都ではこれまで、基本構想策定の手引を作成し、区市町村の取り組みを支援するとともに、区市が設置する基本構想策定の協議会に鉄道事業者などとともに参画してまいりました。
 今般の新法の趣旨を踏まえ、より使いやすい手引への改正を早期に行うなど、多くの自治体が基本構想を速やかに策定できるよう積極的に取り組んでまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 都立公園のバリアフリー化と健康の維持増進の取り組みについてでございますが、公園は、都民に安らぎやレクリエーションの場を提供する重要な都市施設でございます。このため、だれもが安心して快適に利用できるよう、バリアフリー化を進めることが必要であります。
 都はこれまで、新たに公園を整備する際はもとより、既に開園している公園においても、入り口の段差解消や車いす使用者などが使いやすいトイレや水飲み場の改良などを計画的に実施してまいりました。
 また、都民の健康増進の視点から、林の中を散策できるような園路の整備や体力の維持を図る運動遊具などを設置しております。
 今後とも、園内のバリアフリー化や健康増進の施設整備を進め、都民から親しまれる公園づくりに努めてまいります。
   〔病院経営本部長大塚孝一君登壇〕

○病院経営本部長(大塚孝一君) 都立病院における救急医療スタッフの確保、育成についてお答えいたします。
 これまで都立病院では、初期臨床研修医や救急分野の専門臨床研修医を積極的に受け入れ、救急医療に携わる若手医師の確保、育成に努めてまいりました。
 都立病院医師アカデミーにおきましても、経験豊富な指導医のもとで多様な症例を数多く経験できる東京ERのメリットを最大限に生かしまして、救急分野の専門医を目指す若手医師の計画的かつ安定的な確保、育成を図ってまいります。
 また、お話の東京ERでの研修対象医師を拡大することにつきましては、救急診療の一層の向上を図るために重要と考えておりまして、今後、具体的な研修カリキュラムを充実していく中で検討してまいります。
   〔水道局長御園良彦君登壇〕

○水道局長(御園良彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、クレジットカード決済についてでございますが、水道局では、サービス施策の一環といたしまして、これまでコンビニエンスストアでの料金収入の導入など、さまざまな施策を実施してまいりました。
 さらに、都民サービスの充実に向けまして、本年五月に、五千人の都民を対象とした満足度調査を実施しました結果、約一割の方が水道料金のクレジットカード支払いを希望しておりました。
 このため、ご指摘のとおり、クレジットカード決済を導入することは都民サービスの向上が図れると考えられますことから、その早期導入に向けまして、費用対効果を含め、具体的な検討を進めてまいります。
 次に、見学施設の充実についてでございますが、水道局ではこれまでも、施設見学や、桜の開花時期に合わせまして水道施設の一部開放を実施してまいりました。
 現在、三園浄水場では、平成十九年度の完成に向けまして高度浄水施設の建設を進めておりますが、ご提案の趣旨を踏まえまして、この建設に合わせて見学者コースを整備してまいります。
 今後とも、水道事業への理解を一層深めていただくとともに、都民に信頼され、親しまれる水道の実現に向けまして、見学施設の充実などの取り組みを積極的に推進してまいります。

○副議長(木内良明君) 七十八番柿沢未途君。
   〔七十八番柿沢未途君登壇〕

○七十八番(柿沢未途君) まず、都区のあり方について質問します。
 特別区の再編については、平成十四年の第一回定例会で、私もパネルを出して質問させていただきました。
 その後、主要五課題をめぐる都区協議の結果として、都と区が合同で都区のあり方を検討する都区のあり方に関する検討会が設置されることになり、先月十四日には議論の取りまとめが公表されています。その中では、再編を含む区域のあり方について議論が必要であるということが明記されており、いよいよ特別区の再編が公式の議題として都区の間で議論されることとなりました。
 さらに、都が昨年十月に設置した東京自治制度懇談会の「議論のまとめ」でも、大都市経営の制度論の一環として、都区制度の見直し、特別区の規模、区域の見直しがうたわれたところであります。
 そのような状況の中、特別区の再編について、日本経済新聞が連載記事で特集を組むなど、にわかに大きな注目が集まるようになってきました。その連載の中では、私が掲げた構想が取り上げられたり、また、横山副知事へのインタビューの中では、都が特別区再編の試案を示すこともあり得ると、踏み込んだ発言も紹介をされております。
 石原知事もかねてから、二十三区の現在の区割りが合理的なものだとは思わないという発言をこれまで繰り返し行ってまいりました。半ばお蔵入りにはなっていますけれども、かつては予算特別委員会の答弁で、都が二十三区の一番合理的な統廃合の素案のようなものを示して、それをたたき台とするという考えを示したこともありました。
 そこで、都区検討会の議論、東京自治制度懇談会のまとめを踏まえて、区割りや権限、財源の配分を含めて、特別区の今後のあり方をどのように考えているか、石原知事の基本認識を伺います。
 次に、都区財政調整制度について伺います。
 都区のあり方に関する検討会の取りまとめ結果では、大都市の一体性確保のために都が行う必要のある事務を除いて、特別区への事務移管をさらに進めるべきと記されています。私たち民主党も、東京政策二〇〇五の中で、特別区を再編成し、市として自立する自治制度改革を進めていきますと、特別区の自立を進める方向性を明記しております。
 しかし、現在の区割りのまま例えば市になろうとすれば、財政的に立ち行かなくなる区が出てくることは必定です。
 都区はその財政的不均衡を是正するために都区財調を行っているわけですが、そもそも国に対して地方交付税制度の見直しを求めている都が、その内側に地方交付税制度に似た水平的な財政調整の制度を抱えているのは、自己矛盾ともいえるのではないかと思います。特別区が基礎的自治体として真に自立をして行政運営を行っていくためには、特別区財政調整交付金への依存度を低め、調整三税の税源移譲も含めて、区の財政的自立を進めていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、私学への指導について質問します。
 きのうの代表質問でも取り上げられておりましたが、私立学校の現場では、さまざまな創意工夫による教育活動が行われています。私自身も私立の麻布という中学、高校の出身であって、いいか悪いかはわかりませんが、私のこの性格は麻布の教育を受けなければ生まれなかったと人にはよくいわれます。
 ほとんどの生徒が高校に進学する時代になってきている今、高校へはさまざまな学力や価値観を持った生徒が入学してきます。画一的な基準で、個々の生徒の能力に配慮しない一律的な教育では、生徒に豊かな知識と経験を身につけさせることはできません。
 例えば、中には、数学でいえば分数や小数もわからない生徒も入学してくる場合もあります。その生徒に対して、しゃくし定規に高校段階の数学を教えることが本当にその生徒のためといえるでしょうか。帰国したばかりの帰国子女を受け入れる場合もあります。小さいころから海外生活を送り、半ば英語を母国語として育ったその生徒に、あえて初歩の英語の授業を受けさせて、そして進んだ国語の授業を受けさせることが、果たしてその生徒の能力を伸ばす教育といえるでしょうか。
 このような生徒の個々の事情に合わせて柔軟性を持った対応を行うことによって、他の生徒についていけない、学校に適応できない、こういった悩みを持つことも少なくなり、結果的に不登校の生徒なども少なくなるはずです。
 このように、私学では、昔から生徒の学力や生活態度を見ながら、創意工夫を凝らし、独自性のある、きめ細やかな教育を行ってきています。これは、私学の自主性、独自性が尊重されることがあって初めて可能となることです。私立学校が全高校の半数以上を占めている東京においては、そうした個性ある私学の教育が東京の豊かな教育を支えているといっても過言ではありません。
 文部科学省は、学習指導要領は、公立学校同様、私学にもすべて適用されるとしています。しかし、国は、先ほど私が述べたような実態を踏まえた上で、学校現場や生徒に何が一番大切なのかということを考慮して、私学の自主性、独自性と学習指導要領のあり方について議論すべきなのではないかと考えます。
 都においても、この私学の教育の独自性、自主性を尊重しなければならないと考えますが、知事の見解を伺って、次の質問に移ります。
 精神科や心療内科で処方される薬で、リタリンという向精神薬があります。難治性のうつ病、ナルコレプシーが適応症とされており、服用すると、覚せい、気分高揚、意欲増進のほかに多幸感、万能感、爽快感などが得られ、薬理効果としてはほとんど覚せい剤に近いものといわれています。
 しかし、リタリンは、同じ量では次第に効果が得られなくなるので、服用量がふえ、乱用につながりやすいという副作用があります。また、覚せい剤と同じように、長期間の服用によって不眠や不安、幻覚症状があらわれます。
 このリタリンの安易な処方によって、服用者がリタリンに依存し、多くのリタリン乱用者が生まれています。今やリタリンは、合法的に処方される覚せい剤として、頭文字のRをとってビタミンRなどとも呼ばれ、リタラーと呼ばれる乱用者を次々と生み出しているのです。
 インターネットの掲示板では、こうしたリタラーたちの驚くべき書き込みでいっぱいです。スニッフといって、薬を粉々に砕いて、ストローを使って鼻から吸引する方法がありますけれども、初スニってみました、かなりいい感じですてきですとか、一時期は二十錠を超える日々を送ってきましたが、今は六錠に抑えています、よくクラブに行くんだけど、そういう日はいっぱい持っていきますね、だけど、一回死にかけたことがあるので、皆さんも気をつけましょうとか、このような見ていて恐ろしくなるような書き込みが平気で書かれています。
 そして、そうしたリタラーの中には、リタリン依存の果てに深刻な禁断症状を起こしたり、果ては自殺する人まで出ています。医療機関から処方される薬で薬物依存を引き起し、あげく、このような悲劇が起きてしまうというのは、あってはならないことではないでしょうか。
 ところが、リタリンによって依存症、乱用者に陥った人の家族でつくる、リタリン問題を考える会の人たちによると、インターネットの掲示板では、このクリニックに行けば、何もいわずにリタリンを大量処方してくれるという医療機関の情報がはんらんをし、中でも、都内のある心療内科のクリニックが有名な存在として知れ渡っています。このクリニックは、リタリン販売所とすら呼ばれ、ろくな診察もなく、副作用の説明も何もなく、患者にいわれるがままに大量のリタリンを処方しているというのです。
 さらに、患者の中にも、医療機関のかけ持ちや、あるいはコピーした処方せんを薬局に出すなどの方法で不正に大量入手したリタリンを売りさばく者が、インターネットの掲示板でリタリン売りますと堂々と書き込んで、リタリンの売買が行われております。
 このような行為に関しては、都が早急な実態調査と適切な措置を講ずることが必要だと考えますが、見解を伺います。
 最後に、東京国際映画祭について伺います。
 新聞報道などによりますと、経済産業省では、来年から国際コンテンツカーニバルとして、アニメやゲームなどの映像メディアを幅広く取り込んだ国際イベントを秋に立ち上げ、第二十回となる東京国際映画祭も、その中の一つの柱として位置づけられるということです。
 ところが、この東京国際映画祭、私が映画関係者に聞きましても、世界十二大映画祭の一つといいながら、カンヌやベルリンなどと比べれば、国際的な存在感はいま一つというのが実情であります。
 さらに、以前から映画産業を戦略的に育てているお隣の韓国では、釜山国際映画祭が最近目覚ましい成功を上げており、片や東京国際映画祭は、今や九月の釜山に集まった世界の映画関係者が、東京にもついでに立ち寄るか、それとも真っすぐ帰るかといったような扱いになってしまっているといわれております。
 こうした東京国際映画祭の評価は、どのような作品を対象として、どのような審査基準のもと出品作を選び、賞を出しているかという、映画祭としてのカラーがはっきり見えないことがその原因となっているといわれています。
 これは全くの私見でありますけれども、世界の映画祭サーキットの一番後ろにある東京国際映画祭は、例えば世界各地の十二大映画祭でグランプリを受賞した作品を一堂に集めて、その年のベスト・オブ・ザ・ベストを選ぶ、そんな映画祭にするのがいいのではないかと思います。
 東京国際映画祭のあり方について見解を伺って、私の一般質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 柿沢未途議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、特別区の今後のあり方についてでありますが、特別区は、基礎的な自治体としてこれまで以上に地域の事務を担い、みずからの責任で行政のサービスを行う必要があると思います。
 特別区がこうした役割を果たすには、都からの事務移管をさらに進め、これに見合った権限や財源を持つべきでありますが、各区の行財政規模にかなりの格差があるなど、現状の区割りのままでは、その役割を十分に果たすことはまことに困難であります。
 このため、この六十年間変わっていない特別区の区割りを抜本的に見直す必要があると思います。
 既に都区間で、区域を初め都区のあり方の議論が始まっておりまして、今後、根本的かつ発展的に議論を行っていきたいと思っております。しかし、これは論ずるにはやすいのですが、いざ実際に区分をし直すことになると極めて難しい問題でありまして、ゆえにも、さらに多角的な検討というものが必要だと思います。
 次いで、私立学校の自主性、独自性についてでありますが、私立学校は、生徒の個性や能力に応じて創意工夫に基づいた教育を実践しておりまして、それが私立学校のすぐれた点であると思います。それぞれの学校では、独自の校風と長い歴史の中で培われてきた伝統がありまして、生徒、保護者もそれを望んで入学しているわけであります。
 今後とも、私立学校における教育の自主性、独自性は、あくまで強く尊重されるべきと考えております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 都区財政調整制度についてお答えを申し上げます。
 特別区間には税源の大きな偏在がありますことから、今後とも財政調整は必要と考えております。同時に、住民に対し第一義的な責任を負う特別区は、財調交付金に過度に依存することなく、行政サービスを主体的に提供していくべきであります。
 なお、都区のあり方に関する検討会におきまして取りまとめられておりますように、都区財政調整制度を含む税財政制度は、事務配分や区域の議論を踏まえて最終的に整理すべきものであると考えておりまして、今後、都区間で議論を積極的に進める中で、都区財政調整制度のあり方につきましても十分に検討を行ってまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 向精神薬リタリンの乱用についてでございますが、都は本年四月、医師の処方せんを偽造し、リタリンを不正に入手した事件を摘発するなど、指導取り締まりを強化しております。
 処方せん偽造の実態については、既に薬局の協力を得て調査中でございまして、啓発ポスターやステッカーを作成して都民の注意喚起も図っております。
 また、不適切な対応を行っている医療機関について通報があれば、直ちに関係機関と連携して立入調査を実施します。
 今後とも、東京都医師会や東京都薬剤師会などと連携し、不正入手など違法行為には厳格に対処して、向精神薬の乱用防止に強力に取り組んでまいります。
   〔生活文化局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化局長(渡辺日佐夫君) 東京国際映画祭についてでございますが、この映画祭は日本の映画産業関係者が中心となって開催しており、平成十六年度以降、アジアを中心とした新たな企画に取り組むとともに、世界じゅうからコンテンツ産業の関係者が集まるマーケット部門を設置、強化するなど、映画祭の活性化にも取り組んでおります。
 しかし、近年、釜山や香港、上海などの国際映画祭が台頭し、映画祭間の競争が大変厳しくなっている状況でございます。
 今後、東京国際映画祭の主催者に対して、海外での評価を調査し、より映画祭の知名度を上げていくなど、魅力向上に一層取り組むよう働きかけてまいります。
 なお、ご提案の趣旨につきましては、一つのアイデアとして主催者に伝えたいと思います。

○副議長(木内良明君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時一分休憩
   午後三時二十分開議

○議長(川島忠一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十七番秋田一郎君。
   〔二十七番秋田一郎君登壇〕

○二十七番(秋田一郎君) まず、オリンピック招致について伺います。
 オリンピック招致に最も重要なことは、世界が共有できる普遍的な価値観を確立し、訴えていくことだと考えます。招致の大きなライバルとなるアメリカは、自由と民主主義、テロからの解放などの価値観を提示することが予想されますし、南米やアフリカは、貧困の解消を掲げるのではないでしょうか。
 こうした普遍的な価値観の確立は、日本の最も苦手とするところですが、東京が世界と共有できる価値観として、環境が挙げられると考えます。例えば、東京都が率先し、八都県市が連携して取り組んだディーゼル車の排出ガス規制やCO2削減計画の義務づけ、ミネラルウオーターと同じくらい安全でおいしい水の供給、また、区部のほとんどすべての家庭をカバーしているすぐれた下水道設備など、環境に対する取り組みは、世界的にも東京が一番だと思います。
 私たち日本人が当たり前に思っていることが、世界のほとんどの国では当たり前ではありません。こうしたノウハウを世界に還元することを訴えれば、東京の大きな強みになります。IOCも、環境に配慮したオリンピックの開催を求めていると聞きます。もちろん東京には、環境だけでなく、世界に誇れるものが数多くあります。
 オリンピックの招致を成功させるために、こうした東京に内包する世界と共有できる価値観を積極的にアピールしていくべきと考えます。知事の考えをお伺いします。
 翻って、オリンピックの意義は何か、いうまでもなく、スポーツを通じた平和の希求です。クーベルタン男爵がオリンピックマークに五大陸の平和を託したことは、周知のとおりです。
 一方、日本が唯一の被爆国であり、それを基点に戦後六十年間ずっと平和を貫いてきたことは、日本が世界に示し得る重要な価値観の一つです。
 オリンピックの競技の中で、唯一サッカーのみは、国内の複数の都市で実施することが可能な競技です。ならば、ぜひとも被爆都市である広島や長崎で行うべきです。世界で最も競技人口が多く、かつ熱狂的なファンが多いサッカーを広島や長崎で行い、全世界にテレビ中継することは、戦争の悲惨さと平和の尊さを再考する、まさにオリンピックの意義に合致する、全世界の歴史にとっても意義深いことだと考えますが、見解を伺います。
 次に、こうしたコンセプトのアピール方法ですが、日本のプラスイメージは積極的にアピールするとしても、マイナス面はできるだけ答えない、聞かれたら答えることが常套手段と考えます。
 例えば、現在の開催意義には、東京で二度目のオリンピックを開催ということが前面に打ち出されていますが、オリンピックを開催したことのない国がほとんどである現状からすれば、そのことを連呼することはいかがなものでしょうか。
 また、アジアでの中国の影響力を考慮すると、中国をいたずらに刺激すべきではないと考えます。東アジアの国々の支配層は、大多数が中国系です。オリンピック招致を成功させるには、まずはアジアの支持を固めるため、近隣諸国と仲よくすべきです。そのためにも、ぜひとも知事には中国を電撃訪問していただくことを切に切にお願いします。
 以上、海外向けの提言と意見を述べましたが、最後に、国内向けの要望をさせていただきます。
 大阪が立候補をして負けた一因は、IOCの調査の結果、府民の支持が低かったからとも聞きます。現在の都民の関心の低さから考えると、東京もその二の舞になりかねません。
 東京最大の広告塔は、石原知事ご自身であります。例えば、知事が各区市町村の町会連合会を行脚して、オリンピックに協力してくれと一言訴えれば、知事にあこがれ、知事と一緒に青春期を過ごした町場の人たちは、間違いなく意気に感じて協力してくれます。あの石原慎太郎がここまで本気なんだ、男にしてやろうと、一生懸命になってくれるはずです。これは、安倍総理も小泉さんもできない、知事以外だれにもできないことです。
 頼るべきは、あら探しばかりして視聴率や部数に一喜一憂するマスコミではありません。我々の思いを意気に感じてくれる町場の人たちです。どうかお願いします。
 また、緑を三倍にするような、そんな夢を与えていただければ、青少年だけではなく、これから生まれてくる人たちのためにもなるのではないのでしょうか。
 オリンピック招致の成功に向けて私なりの考えを述べましたが、それもこれも、どうしてもオリンピックを東京でやりたい、その一心からであります。
 最近は、青少年の本当に悲惨な事件が日々報道されております。なぜ日本は、東京はこんなふうになってしまったのでしょう。さまざまな原因があるとは思いますが、その一つは、間違いなく、衣食住足りて若者に夢がなくなってしまったからではないでしょうか。
 WBCでのイチロー選手の活躍は、日本人であることの誇りを持たせてくれました。冬のオリンピックの荒川選手の活躍は、スケートリンクに再び子どもたちを戻しました。私は、スポーツの力を改めて感じております。だからこそ、オリンピックを東京で開催して、青少年に感動や夢を与えたいのです。
 多くの方が、一回やったのだからいいよといいます。けれど、それは大人たちの余りに勝手な理屈です。四十歳の私も、多くの若者も、前回の東京オリンピックのときにはまだ生まれておりません。今度の二〇一六年が初めてです。我々の世代は、前回のオリンピックを見ていないのです。もしかすると、今回が最初で最後のチャンスかもしれません。
 過日のある調査によれば、オリンピックに賛成する世代は、若者と高齢者が多いという結果もあります。だから、どうしても自分たちの手で、この東京で初めてのオリンピックを開催したいのです。どうか知事には、この思いを受けとめていただくことを最後にお願い申し上げます。
 次に、新宿駅の地下歩行者ネットワークの整備について伺います。
 まず、東西自由通路についてですが、新宿駅では、日本一の乗降客を抱えるターミナル駅にもかかわらず、約五百メートルの区間にわたり、鉄道により地域が東西に分断され、長年、歩行者の通行に不便が生じています。自由通路は、地元区民以上に、新宿を訪れる人たちにとって大変利便性の高い施設であり、新宿駅周辺の再生、活性化にも寄与するものと考えます。
 また、新宿区では、この自由通路の計画の具体化に向けて検討していると聞いていますが、早期に整備効果を発揮させるためには、既存の空間を有効活用し、事業化することが重要だと考えます。
 都は、積年の課題である自由通路の早期整備に向け、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、サブナードの延伸について伺います。
 現在、新宿三丁目周辺では、地下鉄十三号線の建設工事が進んでいます。これにあわせ、花園神社から高島屋までの明治通りに地下通路が設けられる予定です。
 一方、駅周辺は歩行者があふれ、安全な通行が容易ではありません。地元からは、歩行者の利便性、快適性を向上し、回遊性を創出するため、サブナードの地下歩道を延伸し、明治通りの地下通路に接続することが望まれています。
 十三号線の開業が目前に迫っている中、地下歩道延伸の実現に向け、早急に調査検討を進めるべきと考えます。所見を伺います。
 次に、都の管理職、とりわけ若手の中間管理職について伺います。
 先日の新聞報道で、管理職の仕事に魅力を感じない、自信がないなどを理由に、都の管理職試験の受験率が二割以下に低迷し、受験者数が過去最低を更新しているという記事を目にしました。
 都においても、先般、管理職選考を改正し、職場で実績を上げている職員がチャレンジしやすい制度へと見直したと聞いています。しかし、私は、管理職になりたがらないという問題の根源的な原因は別にあると考えます。
 都において昨年行った職員アンケートでは、課長以上に昇任したいという回答は二割にとどまっています。こうした職員の背景には、課長になって責任が重くなるにもかかわらず、その後数年間は、昇任する前の収入を下回る場合もあるといった実態が影響していると考えます。すなわち、管理職の選び方も大切ですが、選抜後の処遇に希望が持てない限り、管理職を目指そうとする職員はふえないのではないのでしょうか。
 引き続き人件費を抑制していくことは、もちろん重要です。しかし、私は、組織を担い、責任を負いながら、深夜まで都民サービス向上の実現に努めている管理職がいることも知っています。このように努力し、職責を果たし、業績を上げた管理職に対しては、しかるべき処遇を行っていくべきです。
 志を持った優秀な管理職を確保していくことは、都としての都民に対する責務であり、管理職の処遇改善は、必ずや都民の理解を得られるものと考えています。
 そこで、管理職の処遇改善に向けた取り組みについて見解を伺います。
 一方、個別的な事例は申し上げませんが、社会常識に欠けているのではないかと強い懸念を抱くような管理職も散見されます。潜在的には、都庁にも相当に根深い病巣があるのではないかと危惧しております。こうした状況が氷山の一角であるうちに、大きな問題が発生する前に、モラルダウンの病を断ち切らねばなりません。
 管理職は、都民からも職員からも常に見られています。頑張った管理職を処遇するに当たっては、都の管理職が常に礼節をわきまえた行動をとるとともに、持てる能力をいかんなく発揮し、都民や職員から評価される組織のリーダーとなる必要があります。このことを強く要望し、最後の質問に移ります。
 昨年、川崎で、マンション十五階から子どもが投げ落とされて死亡するという痛ましい事件が起こりました。この事件は、マンションの駐車場の横を走り抜ける犯人の映像を防犯カメラがとらえていることがわかり、犯人逮捕の決め手となりました。
 最近、侵入窃盗など、マンションを舞台にした犯罪の事例が多いと聞きます。また、マンションの玄関や駐車場、駐輪場での不審者の目撃など、不安の声も多く耳にします。
 そこで、マンションなど住宅の犯罪の状況はどうか伺います。
 住宅を取り巻く犯罪の状況は、都民の不安を厳しく裏づけるものと考えます。川崎の事件や多くの侵入事例などを踏まえて、マンションへの防犯カメラの設置の呼びかけや、住宅の窓や扉などに対する防犯対策の取り組みが重要と考えます。
 そこで、都は、防犯対策として住宅の防犯指針の改正に取り組んでいると聞きますが、どのようなものを考えているのか伺います。
 都民の不安解消のため、住宅の防犯指針をぜひ普及、定着していただきたいと思います。
 そこで、住宅の防犯指針を安全・安心まちづくりに確実につなげるために、都は、今後どのような具体策を講じていくのかを伺い、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 秋田一郎議員の一般質問にお答えいたします。
 オリンピック招致に関してでありますが、招致を成功させるためには、東京の魅力や優位性を強く世界にアピールしていくことが必要でありますと同時に、国内にも、やはりそれをもっと十全に行う必要があると思っております。
 大阪の場合には、非常に府民の方々の多くが冷淡だったと聞きましたが、私は、六年前のワールドカップ、日本でのサッカーの祭典の盛り上がりを見ました限り、私たちのキャンペーンによって、都民だけじゃなくて、国民全体の声として大きな盛り上がりがあり得ると期待しております。
 ゆえにも、環境政策がアピールの一つの大きな柱でありまして、ディーゼル車規制を初めとする東京の先進的な環境への取り組みは、広く世界の理解と共感を得られると確信しておりますが、これはもう既に行ってきたことでありまして、新規の試みとして、例えば江戸川区がやった防犯カメラのためのワンコインの拠金、あるいは多摩の杉を整理するための、新しい植林をするためのスリーコイン運動のように、大してお金はかからぬと思いますから、苗木のために新しい拠金をしまして、東京の街路は、やはり樹木の数が少のうございますから、今ある木の間に、木種が違っても、今から、例えば家族の一つの記念として、思い出として、十年後に育つ木を期待して拠金をし、一本ずつ木を植えていただくような、そういう運動の展開も考えております。
 今後はさらに東京が誇るITなどの先端技術や他人を思いやる伝統なども積極的にアピールしまして、非常に激しい国際都市間の競争を何とか勝ち抜き、東京でオリンピックを開催し、国民全体でもう一回大きな夢を見る、その夢の実現をしたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) サッカーの競技会場についてでございますが、サッカーは、開催都市との距離を問わず、全国の会場で実施することが可能な競技でございます。
 現在、IOCのファイルに向けまして、計画のブラッシュアップに取り組んでございますけれども、サッカー会場の選定に当たりましては、国際競技連盟の基準を踏まえることはもちろんのことでございますが、財団法人日本サッカー協会と協議しながら、ご指摘の世界へのアピールという点も含めまして、さまざまな観点から検討してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 新宿駅周辺整備についての二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、新宿駅の東西自由通路についてでございますが、自由通路は、駅周辺の回遊性を向上させ、にぎわいと活力あふれるまちの形成に必要な施設と認識しております。
 都は、これまで地元区が設置した新宿駅周辺整備計画検討委員会に、国やJRなどとともに参画してまいりました。
 さきの検討委員会では、JR新宿駅の西口改札と東口改札を結ぶ駅構内の通路を活用して、幅員二十五メートルの自由通路の都市計画決定を目指していくことが確認されました。
 都としては、今後とも早期実現に向けて、国やJRとの協議、調整や、技術的支援を行うなど、区の取り組みに対し積極的に協力してまいります。
 次に、サブナードの延伸についてでございますが、靖国通り地下歩行者道を延伸し、現在建設中の地下鉄十三号線の新駅と接続することは、歩行者の利便性や快適性、回遊性の向上に資するものと考えております。
 その実現には、周辺のまちづくりとの整合を図った上で、技術的な課題や事業スキームの検討などが不可欠でございます。
 都といたしましては、区が取り組むまちづくりへの支援を行うとともに、区と共同で検討会を設置し、課題解決に向けた調査検討を進めるなど、必要な協力を行ってまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 志を持った優秀な管理職の確保と処遇改善についてでございますが、行政ニーズの多様化などにより、管理職が従来以上に重責を担うようになっておりますことから、それに見合った制度が必要であると認識をしております。
 これまでも、都は全国に先駆けて業績評価制度を導入するなど、職責、能力、業績に基づく人事制度の改革に取り組んでまいりました。
 本年からは、努力し、成果を上げた管理職が適切に処遇されますよう、新たな昇給制度を導入し、能力、業績主義の徹底を図ったところでございます。
 今後、処遇のあり方の検討に加えまして、人材育成の充実や適性を生かした配置管理などによりまして、都政を支える高い気概と使命感を持った優秀な管理職を確保、育成してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 住宅における防犯対策に関する三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、マンションなど住宅の犯罪の状況についてでありますけれども、平成十七年の都内の侵入窃盗の認知件数は一万九千二百七十八件でありまして、そのうち約四五%が共同・集合住宅、約二六%が一戸建ての住宅で発生をしております。
 また、十三歳未満の子どもに対する強制わいせつ事案の認知件数は百十七件でありましたが、そのうち約四五%が共同・集合住宅で発生しているという状況にございます。
 次に、住宅の防犯指針の改正についてでありますが、住宅の防犯対策を強化するため、安全・安心まちづくり条例で定めますところの防犯のガイドラインであります住宅の防犯指針の改正作業を現在進めております。
 その主な改正内容は、共同住宅の出入り口や駐車場などへの防犯カメラ設置の推進、より実効性のある自主防犯活動の推進、さらに住宅の窓や扉などからの侵入を防止する性能の高い建物部品の普及を図ることなどでございます。
 次に、住宅の防犯指針改正に伴うその後の具体策についてでございますが、住宅の防犯性を高めるため、指針を実際に活用することが極めて重要であると考えています。
 そこで、指針改正後、住宅業者などへの説明会やリーフレットの作成などの普及活動を速やかに開始してまいります。
 また、地域との連携が希薄化しているマンションなどで連携を強めるため、自主防犯活動の立ち上げの誘導を図るとともに、防犯カメラや防犯性能の高い建物部品の普及を促進するなどの、地域の防犯力を高めるモデル事業も展開したいと考えております。

○議長(川島忠一君) 八十番清水ひで子さん。
   〔八十番清水ひで子君登壇〕

○八十番(清水ひで子君) 我が党は、昨日の代表質問で、石原知事のファミリーが深くかかわったワンダーサイトの問題を取り上げ、都政の私物化を厳しくただしました。
 同様に、都民の怒りの声が殺到しているのが、石原知事が就任以来十九回も行ってきた超豪華海外出張です。都民には、それこそわずかな額の補助やサービスを切り捨て、痛みを押しつけながら、自分自身は一回二千万円、三千万円もかけて、観光目的としか思えないような海外出張を繰り返していることは、認められるものではありません。
 ところが知事は、記者会見などで、自分でどうこうしろといったことはない、事務方が決めたことだといって、みずからの責任を棚上げして、責任を職員に押しつけようとする発言を繰り返しています。海外出張のほとんどが知事のトップダウンで行われてきたことから見ても、無責任きわまりない態度です。
 きょうは、この間新たに判明した事実も踏まえて、質問を行います。
 まず、知事自身の豪遊問題です。
 知事が海外出張するときは必ず、飛行機の料金は、多くの都民が使うエコノミークラスの三倍もするファーストクラス、ホテルは最高ランクのホテルの高額な部屋を押さえ、現地の移動も、動く応接室といわれる超豪華リムジンを乗り回すなどと破格です。
 知事、都民はたび重なる増税と社会保障の連続的改悪で、毎日の生活を切り詰め、旅行をあきらめたりしているのです。一晩で最高二十六万円という、一カ月分の給料にも匹敵するホテル代に税金を使っていることに痛痒を感じないのですか。答弁を求めます。
 知事、近県でも大阪でも、知事の旅費規程では航空機はファーストクラスに乗れるのに、ビジネスクラスを利用しています。せめて他の知事と同じようにビジネスクラスにしようと一度でも考えたことがあるのですか、答弁を求めます。
 また、知事は、副知事の依命通達などで、財政が厳しいから経費を節減しなさい、旅費を節約しなさいと、それこそ毎年のように指示しています。であれば、自分の旅費も、少しでも安く済ませようとするのが当たり前ではありませんか。それとも、知事は、ご自分のお金でホテルに泊まるときも人任せで、料金のことは考えないのでしょうか。知事の答弁を伺います。
 次に、ワンダーサイトでも、公費で四男を海外出張させていた事実が浮かび上がりましたが、知事の海外出張でも、夫人や側近の特別秘書を特権扱いしていることです。
 石原知事は、国際儀礼を理由に四回も夫人を同行しています。その費用は、航空運賃はファーストクラス、ホテルも知事と同様の高額なもので、出張費用は、一回当たり二百万円前後もかかっています。
 では、ファーストクラスの旅費や高いホテル代を支給する根拠は何なのでしょうか。調べましたら、支出について記載されているのは、ワシントンDC出張の際の文書に、知事夫人及び特別秘書については、出張の性格及び業務上の必要により、搭乗座席クラスを知事と同じものとすると書いてあるだけでした。
 知事、夫人の旅費を公費で支出した条例上の根拠は何なのかを明らかにしてください。国際儀礼という名目さえあれば、規定がないのをいいことに、高額な税金の支出を行ってよいとご自身でも考えているのですか。知事夫人にかかわる問題ですから、知事自身の考えをお聞かせください。
 夫人が海外出張した根拠は、国立公園の園長の昼食会とか商工会議所の夕食会、サンフランシスコ総領事の晩さん会に知事夫妻が出席することです。しかし、神奈川、大阪、福岡県の知事は、配偶者を同伴していません。昼食会や夕食会に招待されたからといって、一回二百万円ものお金を公費で払うというのでは、毎日十円でも倹約しようと生活している都民が批判するのは当然だと思いませんか。
 マスコミからも、そもそも首相のように外交が必要ないのに、都知事がこんなに頻繁に夫人同伴で海外へ行く必要があるのかという批判が出されています。埼玉県知事の場合は、一回だけメキシコ州知事への訪問団に夫人が同行していますが、すべて私費で負担しているのです。知事、どう考えますか、答弁を求めます。
 四男の延啓氏と海外出張の現地で合流しているケースが、わかっているだけで二回ありました。
 一つは、昨日取り上げたスイス・ダボスの東京ナイトで、これは延啓氏の旅費をイベントの委託費に盛り込ませていることが明らかになっています。
 もう一つは、二〇〇四年十月の知事の台湾出張です。同じ時期に四男もワンダーサイトの事業で台湾に出張していることが、開示された文書で判明しました。
 開示された今村参与のメールには、十月二十四日夜、台湾の要人と石原知事との夕食会に出席したことや、台風の影響で石原知事が乗る飛行機が飛ばないことを前提に、二十五日の昼を、延啓氏と要人との食事を予定していることなどが書き込まれています。
 私が問題だと思うのは、今村参与が、延啓氏の出張について、ワンダーサイトからの調査委託でできませんかといって、ワンダーサイトの調査委託という扱いで出張費を出させようとしていることです。
 このメールでのやりとりには、何とか延啓氏を公費を使って海外出張させようとする今村氏の思いが明白にあらわれています。延啓氏はどういう資格、理由でワンダーサイトの台湾出張に同行したのですか、明らかにしていただきたい。
 知事、昨日も指摘したように、知事の家族をワンダーサイトの事業に携わらせ、口を出させることは、事業をゆがめるもとになります。直ちに正すべきだと思いますが、お答えください。
 知事の腹心といわれる、特別秘書の待遇も問題です。
 特別秘書は、条例上、航空運賃はビジネス料金なのに、知事と打ち合わせることが必要だとして、ビジネスクラスの倍近い料金の豪華なファーストクラスに変更するケースがほとんどです。ホテル代も、同じ理由で条例規定の二から七倍もの上乗せをしています。打ち合わせなら、航空機内で行わなくても、同じクラスの部屋に宿泊しなくても、知事の部屋で済ませればできることではないですか。
 知事は、都民の税金をどう考えているのですか。特別秘書の航空運賃を条例どおりのビジネスクラスにするだけで、ロンドン、マン島出張では七十三万円も節約できたのです。それだけあれば、視覚障害者を支える盲導犬のえさ代補助六十四万円が確保できるではないですか。知事、お答えください。
 マスコミからも、打ち合わせのときだけ、知事のいるファーストクラスの場所に移動すればよいではないかと指摘されていますが、知事、こういう疑問に対してどう答えるのですか、伺います。
 一回二百万円といわれる通訳の費用も、余りにも高過ぎます。それは、石原知事の場合、通訳は特定の会社にこだわり、わざわざ日本から随行するため、現地採用では必要のない交通費や宿泊代、拘束料などが必要となるからです。
 なぜ特定の通訳にこだわるのかについて、開示された特命理由書では、知事自身が発言を無意識に省略、割愛した場合に、必要に応じて、都政の現状や知事の従前の発言を踏まえて適宜補足するという高度な技術が不可欠だとされています。しかし、自分がいえなかったことまで通訳に補足させなければならないとは、何とも情けないことです。こんなことがもし事実とすれば、東京都を代表して外国に出かける資格が問われるのではありませんか。知事、お答えください。
 仮に、通訳を現地で雇うようにすれば、それだけで百万円近く節約できることになります。これは、あなたが打ち切った、視力と聴覚の二重の障害がある盲ろう者の通訳介助者を養成する事業費の額に当たります。海外出張の通訳の費用を少しでも節約しようと思わないのですか、お答えください。
 視察の内容も、高額の税金をかけて行く必要があったのか、本当に疑問です。
 まず、千四百万円もかけたガラパゴスですが、この目的は、環境保護、観光産業のための視察でした。しかし、調べてみると、知事が出かける少し前に、環境局が十五日間の日程で、五百万円もかけて綿密な調査検討を行っていました。これに加えて、わざわざ知事が莫大な費用をかけて行く必要があったとは到底思えません。
 だから、マスコミからも、ガラパゴスでは三十八万円かけて小型クルーザーを一日借り切ってクルージングを楽しみ、二百六万円かけてホテル並みの施設を備えた大型クルーザーで四日間のクルージングと諸島見物をしたと書きたてられたのです。観光旅行の域を出ていないといわれているのです。知事自身、都議選の応援が面倒くさいからガラパゴスに行っていたと告白していたではありませんか。
 二千百万円かけたレッドウッド国立公園の視察は、自然保護のレンジャーの視察が目的でしたが、実は、知事が出張するときには、環境局でレンジャーの制度はほぼ完成しており、知事がわざわざ出かける必要はなかったものではありませんか。
 知事は、これまでに八回、海外出張に合わせて美術館などの文化施設を訪問しています。このうち、出張の目的に明記されていたのは二〇〇四年のフランス訪問だけで、それ以外は目的にも何も書かれていないものです。しかし、中には、文化施設だけに一日を割いているものもあります。こんな日程も税金で賄っていいのかという都民の批判は当然だと思いませんか。知事の答弁を求めます。
 結局、知事の海外出張に支出された税金は、警護のSPなどの費用を除いても、総額二億四千四百万円以上、一回平均千六百万円に及ぶものとなっています。二〇〇四年には、一年間に五回も行っているのです。
 しかし、知事は、都民に向かってはどういってきたでしょうか。都民には自立自助、つまり、自分のことは自分のお金でやりなさいといって、冷たく福祉の手当や補助金を削り、職員には、それこそ鉛筆一本も節約しなさいといっておきながら、自分は超豪華旅行に頻繁に出かけ、都の条例の宿泊規定が低過ぎるといってはばからない、これが仮にも上に立つ人の発言とは到底思えません。
 豪華な海外出張はやめ、都民のためにこそ税金を使うべきことを指摘し、再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 清水ひで子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、海外出張についてでありますが、これに関する事務処理については、事務局が従来のルールに従って適切に行っておりまして、私の方から条件や注文をつけたことは一度もございません。
 私は、これまで、現場主義のもとに、国内外にみずから足を運び、この目で確かめることで新しいアイデアを得、自分で動くことで政策の実現につなげてまいりました。
 例えばガラパゴスあるいはアメリカのレッドウッド国立公園などの視察も、結局、小笠原の南島の保護や多摩の貴重な自然を守るレンジャー制度に結実したのでありまして、ロンドンでのトップ会談を通じて、温暖化を阻止するニューヨークやパリなど世界の諸都市の輪に、むしろ先方から請われて加わることにもなりました。
 ついでに申しますと、通訳の問題ですけれども、一度、現地の通訳を使ったことはあります。アメリカ人と結婚した女性でしたけれども、この人、日本語は忘れていて、とても役に立ちませんでした。
 私がいつも依頼している通訳は非常にベテランでありまして、実はある著書のせいで、「『NO』と言える日本」のときでしたけれども、向こうから招待を受けまして、随分幾つものテレビ局に出て、私は私なりに日本の主張をしましたが、そのときに、返ってくる質問がみんな同じなものですから、面倒くさくなって、マイナーなテレビにはしょりましたら、彼女が日本のためだというので、私がもうはしょっちゃった分まで補足してくれまして、そういう愛国的な、非常にベテランの通訳であり、私は頼りにしております。
 まあ、共産党は、個々の数字だけをとらえて批判することに終始しておられますが、もっと海外出張なるものを大きな長い意味合い、成果について目を向けて、建設的な議論をしていただきたいと思います。
 それから、トーキョーワンダーサイトの事業運営についてでありますけれども、昨日の代表質問でも答弁したとおり、都政を預かる者として、都庁内部だけではなく、外部の専門家や有識者、さらには必要とあれば身内をも使って知恵を集結し、さまざまな課題に取り組んでいくべきであると思います。
 現に、ワンダーサイトの今日の充実には、あえて申しますけれども、身内の息子の建言も随分役に立ってきました。それは当事者たちが認めるところでありまして、いずれにしろ、私の発案で始めました若手芸術家支援のトーキョーワンダーサイトも、限られた世界だけに、数少ない有能な芸術家や美術関係者にも手伝ってもらいながら、事業を進めてまいりました。
 ワンダーシードを初めとして、美大の有望な学生たちが多く応募してきてくれるようになりました。また、ワンダーウォールから育ったアーチストがほかの美術館でも活躍しておりますし、外国のオークションにも出るようになりました。
 十一月に開催したワンダーサイト青山アートビレッジでは、既に海外のアーチストが滞在し、作品制作に取り組んでおります。これらを通じて、トーキョーワンダーサイトは、内外においても高い評価を得るようになっております。
 次いで、文化施設への視察についてでありますが、出張の機会をとらえて、さまざまな施設の現地視察を行うことは、もちろんあります。文化施設への視察については、例えば若手芸術家の育成支援を目的としたパリのポンピドーセンターや、台湾の台湾国際芸術村の視察、さらにはロンドンのテートモダンの視察、これはもう一日がかりで、館長と長い間、話し合いをしました。トーキョーワンダーサイトの開設や事業の充実につながるなど、具体的な政策に反映してまいりました。
 現場に直接出向くことにより、斬新なアイデアも新しい政策も生まれてくると思います。
 これからも、国内外を問わず、さまざまな現場にどんどん出向いて、現場主義を貫いていくつもりであります。共産党も、もうちょっと外側の世界に目を向けられたらどうでしょうか。
 なお、詳細な事実にかかわりますので、他の質問については、正確を期して関係局長から答弁いたします。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 知事の海外出張に関するご質問にお答えいたします。
 まず、知事の海外出張の際の航空運賃についてでございますが、知事の海外出張の際の航空運賃につきましては、東京都知事等の給料等に関する条例の規定に基づき、適正に支出しております。
 次に、知事の海外出張の際の宿泊費についてでございますが、海外出張の際の宿泊費につきましては、知事のセキュリティーが十分に確保され、ホテル自体が高い安全性を有していること、要人との会見の際にも礼を失しない程度の格式と設備を有していること、非常事態発生時でも、都庁と緊密な連絡をとることのできる設備が整備されていること等の条件を満たすもののうちから、最も価格の低いものを選定し、適正に支出しております。
 なお、平成十三年のワシントンDCの出張の際の宿泊費が一泊約二十六万円になったことにつきましては、現地が繁忙期で全体の宿泊料が上昇したことに加えまして、飛行機の到着時間の関係から、午前中にホテルに入ったため、ホテルの規定によりまして、前日の宿泊費も負担せざるを得なくなり、二日分の宿泊料となったものでございます。
 また、このことにつきましては、共産党に開示した公文書の中にも記載させております。
 次に、知事夫人の経費の支出に係る三点のご質問についてでございますが、知事夫人の同行につきましては、これが東京都の事務の一環であると位置づけられ、また、先方から招待があり、これを拒否することは国際的な儀礼を失するおそれがある場合に限り行っております。
 また、夫人の同行に要する経費につきましては、地方自治法二百三十二条一項の、当該普通地方公共団体の事務を処理するために必要な経費とし、適正に支出しており、本年六月の東京地裁判決においても認められております。
 また、埼玉県の例につきましては、詳細を承知しておりませんが、夫人の同行に係る旅費の負担については、個々の状況に応じて判断しているものと思われます。
 次に、特別秘書の航空運賃に係る二点のお尋ねについてでございますが、特別秘書の航空運賃も含め、海外出張に係る経費につきましては、個々の案件ごとに必要かつ合理的と認められる額を算出し、適正な手続を経た上で支出しております。
 知事と特別秘書は、行政目的を円滑に達成するため、綿密な打ち合わせを行う必要があるので、知事と至近の座席を確保しております。
 なお、知事と同行しない場合には、特別秘書はビジネスクラスを利用しております。
 個々の数字のみをとらえ、単に性質の異なる分野の事業と比べ額の多寡を論じても、全く意味がないと考えております。
 最後に、通訳者に対する二つの質問でございますが、知事の海外出張は、例えば東京オリンピックの招致など、都政の抱える喫緊の課題につきまして、関係者と会談を行うことを想定しております。このため、通訳者には、相手方の発言や知事の考え、意見を正確に通訳する技術が必要であるほか、事前の準備、打ち合わせ等も不可欠でございます。
 先ほど知事も答弁しましたが、現地の通訳の質にはかなりのばらつきがございまして、都が期待するレベルの通訳を雇い上げる保証はないため、東京からの同行をお願いしております。
 なお、知事のいえなかったことまで通訳に補足させているというご指摘は、全く当たらないと考えております。
   〔発言する者多し〕
   〔生活文化局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化局長(渡辺日佐夫君) 石原延啓氏の台湾出張についてのお尋ねでございますが、石原延啓氏は、都やトーキョーワンダーサイトコミッティから派遣されておらず、当然、出張旅費についても、お話のワンダーサイトコミッティからの支出も含め、公費から支出しておりません。
   〔八十番清水ひで子君登壇〕

○八十番(清水ひで子君) 法に反していなければ何をやってもいい、都民や職員には痛みを押しつけていながら、自分は超豪華な海外出張について、これからもどんどん行くと平然と発言する、そういう行政のトップを持っている都民や都の職員は本当に不幸だと思います。
 二点質問します。知事自身の政治家としてのモラルを問うているのですから、知事自身お答えください。
 ほかの知事は、海外出張する場合でも、自分の判断で航空機運賃を下げたり、条例で規定している範囲内のホテルへの宿泊を選んでいるんです。夫人同伴は極力避ける、同伴する場合でも、夫人は私費負担にしているんです。
 知事、税金を使って海外出張するのだったら、本当に都民が納得できるものに厳選する、そして航空運賃やホテル代、特別秘書の旅費などについて節約に努める、どうしてこれぐらいのことを約束できないのですか。逃げずに知事自身の答弁を求めます。
 二点目、知事の四男の延啓氏を都の事業にかかわらせたために、何人もの人が知事におもねって、四男の方に公費を出させようと画策している、そんなことは許されないとなぜいえないのですか。
 政治家としてのモラルからいっても、直ちに四男の方をワンダーサイト事業にかかわらせることをやめて、是正を図るべきですが、知事の見解を伺います。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) ただいまの二つの質問については、担当の局長が詳細な事実にのっとって答えたとおりであります。

○議長(川島忠一君) 七十一番鈴木一光君。
   〔「おかしいよ」「議長、今のは答弁ではないんじゃないの」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕

○議長(川島忠一君) 自席へお戻りください。自席へお戻りください。
   〔発言する者多し〕
   〔七十一番鈴木一光君登壇〕

○七十一番(鈴木一光君) 相変わらずルールを無視した共産党のああいう暴力的な行為は、我々都議会自民党、そして東京都民は、絶対許すことのできないことであるということを、皆様にあえて申し上げたいと考えます。(発言する者多し)静かに聞きなさいよ。(発言する者多し)静かに聞きなさいっていうの。

○議長(川島忠一君) 静粛に願います。
   〔発言する者多し〕

○議長(川島忠一君) 質問を続行してください。

○七十一番(鈴木一光君) 昨日、知事は、三選に出馬することを表明されました。我々自由民主党としては、大いに期待するところであります。
 その中で、民主党は、独自候補を擁立することを表明されています。前回の選挙もそうでありました。独自候補を擁立されました。しかし、党内がばらばらになって、分裂選挙を行いました。(発言するもの多し)選挙が終わったら、与党的な立場で行動されてまいりました。そしてまた今度は独自候補を擁立する。我々、民主党を拝見していますと、いつも党内がばらばらで、いつも迷走している。オリンピック招致問題にしてもそうであります。まことに恥ずかしい限りであります。しかし、そこでまた来年の都知事選挙でどのような行動をとるのか、我々は物すごく楽しみにしております。頑張ってください。共産党も頑張ってください。
 そこで、質問に入ります。
 まず、食育について伺います。
 私の住む葛飾区では、区内の農家が早くから地産地消に取り組んでおり……(発言する者多し)

○議長(川島忠一君) 静粛に願います。

○七十一番(鈴木一光君) つくった野菜を、とれたてイキイキ葛飾元気野菜のブランドで売り出しています。収穫したてのしゅんの野菜が並ぶ葛飾元気野菜直売所は、開店前から行列ができるほどの人気です。ここでは、店内に生産者のプロフィールを表示したパネルもあり、特産のコマツナや伝統野菜である亀戸大根などの野菜が並んでいます。
 さらに、最近では、農業者と商店街が連携し、直売所だけでなく、地元商店街でも、区内の新鮮な野菜を購入できるようなシステムを構築する取り組みも行われています。また、農業の後継者も着実に育っており、彼らが中心となって、子どもたちの農業体験や給食への地場産野菜への提供などにも取り組み、食の大切さを伝えています。
 このように、地場産食材の利用や、生産体験、生産者との交流などを通じ、食への理解を促進していくことは、食育を進めていく上で大変効果的なことであります。
 最近、朝食をとらない欠食や一人で食事をする個食の増加など、子どもたちの食の乱れが問題視されています。また、家族が一家団らんで食卓を囲む機会も減っており、こうしたことが、はしを正しく持てない子どもの増加など、食事のマナーにも大きな影響を与えています。子どものときに基本的な食習慣を身につけられないと、生活習慣病など健康面のリスクが高まるばかりでなく、反省しています。体力や知力の発達にも影響するのではないでしょうか。
 日本では、知育、徳育、体育が教育の柱といわれていますが、食育はその基礎となる重要なものであります。世界じゅうから集まるさまざまな食品を簡単に手に入れることができ、食の大切さが実感しにくい東京では、都民の健全な食生活を実現するため、身近にある貴重な生産現場も活用しながら、食育を推進する必要があります。
 都では、さきに食育推進計画を策定し、東京にふさわしい食育に取り組む姿勢を明らかにしました。また、先月、国も初めての食育白書をまとめるなど、今まさに食育がクローズアップされてきています。そこで、食育を進めていく上での知事の決意を伺います。
 次に、技術革新による産業振興について伺います。
 東京には、世界に誇る技術力を有する中小企業や、優秀な研究開発を行う大学研究機関が数多く存在します。こうした東京のポテンシャルを最大限に生かし、東京発の技術革新、イノベーションを起こすことが、これからの産業振興には不可欠であります。
 一方、技術革新を、大気汚染や土壌汚染などの環境問題を初めとする、大都市東京が抱えるさまざまな課題の解決につなげていくことも重要と考えます。
 先日、都は、国の独立行政法人である科学技術振興機構が募集する地域結集型研究開発プログラムの採択を受け、都市の安全・安心を支える環境浄化技術開発をテーマに、大型の研究開発に着手すると伺っております。
 この研究開発事業は、我が党がかねてより解決を求めてきた土壌汚染などの環境浄化にもつながるものと大いに期待されるところであります。そこで、まず本プログラムの目的と研究開発内容について伺います。
 また、研究開発は、成果を実用化して初めて意味を持つといえます。しかしながら、往々にして、その実現には大きな困難が伴うのも事実であります。開発成果をビジネスとして軌道に乗せていくためには、事業化に向けたしっかりとした取り組みが必要と考えますが、ご見解を伺います。
 次に、鉄道に関連して伺います。
 東京圏の鉄道は、通勤通学輸送の基幹的な公共交通であるとともに、豊かで快適な都市生活を営む上で、また首都圏及び国際的な中枢都市としての機能を支える装置として、さらには、環境負荷が小さく、安全な交通体系の形成という観点からも、一層の充実が望まれています。
 これからの鉄道サービスは、高齢社会の急速な進展や、近年における国民の価値観、生活様式の大きな変化等を背景に、その量的な充実に加え、利用しやすさといった質的な向上が重要な視点となっています。特に、国際中枢都市である東京においては、グローバル化が進展する中で、国際的に見ても魅力ある都市環境の整備が求められており、ラッシュ時の混雑緩和や空港などへのアクセス改善などが重要な課題となっています。
 東京の東北部に目を向けてみると、常磐線の利便性向上や成田新高速鉄道問題と、まさしくこの視点での取り組みが住民を中心として進められており、都としても全面的に支援すべき時期に来ていると考えます。そこで、この二点を中心に何点か質問します。
 JR金町駅の周辺では、住民が中心となり、JR常磐緩行線の混雑緩和や、金町、亀有駅の利便性向上に向けた検討が進められており、先日、一万八千人を超える署名とともに、都や区などへ要請書が提出されたところであります。
 常磐線については、混雑緩和に向けた取り組みとして、つくばエクスプレスが昨年度開通しました。その結果、快速線の混雑率については、平成十六年の一八五%から平成十七年には一六九%に、緩行線については、一九七%から一八二%となるなど、双方とも一五%程度の改善が図られました。まだまだ十分な水準には達していませんが、一定の成果が上がったといえます。
 しかし、緩行線の日中のダイヤを見てみると、十二分間隔での運転となっており、都心部における交通環境とはいえない状況にあります。早急に改善が図られるべきであると考えます。
 さらに、JR常磐線と東京メトロ千代田線の相互直通運転により生じた問題があります。
 つまり、現在の常磐緩行線では、北千住での乗りかえをしない限り、上野に直通で行くことができなくなってしまい、北千住の乗りかえについても、上下移動が多く、バリアフリーの観点から考えても、課題が多くあります。また、西日暮里での乗りかえを考えても、JR運賃に加え、メトロ運賃が加算され、割高の運賃を支払っています。
 JRの金町、亀有駅であるにもかかわらず、JRを利用することで不都合が多い状況となっており、それ以遠にある松戸駅の方が、乗りかえ面、運賃面において利便性が高いという事態となっています。
 例えば、乗りかえ一回で秋葉原に行く場合、金町駅からだと三百七十円かかりますが、千葉県の松戸からは二百九十円となり、遠い松戸からの方が安くなるといった逆転現象が起きているのであります。
 これは、千葉県や茨城県など松戸より先の方々の利便性を優先したことにより、葛飾区民、東京都民が長年にわたり甚大な被害をこうむってきたわけであります。知事、我々と一緒に怒っていただきたいというふうに私は思います。いかがでありましょうか。
 そこで、お伺いいたしますが、JR常磐緩行線の運行ダイヤや、相互直通運転により必要となった乗りかえや、運賃加算などの輸送サービスの問題については、早急に改善すべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、成田新高速鉄道の関係についてでありますが、日本の表玄関である成田空港と都心を三十分台で結ぶ路線で、空港アクセスの大幅な改善にとどまらず、千葉県北西部等の交通利便性の向上と成田市と千葉ニュータウン機能連携の強化にも大きく寄与することが期待されており、千葉県側とあわせ、東京側でも、平成二十二年度開業に向けて精力的に準備が進められています。
 しかしながら、当該路線の沿線となる京成高砂駅周辺においては、いまだ鉄道が高架化されておらず、昨年、悲惨な人身事故となった東武線竹ノ塚駅付近の踏切と同様の手動踏切から自動踏切への改良が、ようやく九月に完了したところであります。
 現在、高砂駅に近い高砂一号踏切は、ピーク時五十二分と遮断時間が極端に長く、成田新高速鉄道の開業により、さらなる悪化があるのではないかと住民も懸念しています。
 都では、二〇一六年のオリンピックを再び東京で開催するため、招致活動に全力で取り組んでいるところでありますが、成田空港への鉄道アクセスを改善する成田新高速鉄道の事業は、IOCへの格好のアピールにもなると考えます。
 しかしながら、一方で、本事業は、我々地元の葛飾区民にとっては、現在のスカイライナーもそうでありますが、単なる通過するだけの電車であり、我々は騒音と振動の被害をこうむりながら、泣き寝入りをしている状況であります。こうした中、新高速鉄道の開業により、踏切遮断時間がさらに増加するようなことがあっては、地元としては到底容認することができません。
 そこで、成田新高速鉄道開業への対応として、京成高砂駅付近の踏切対策をどのように考えているのか、伺います。
 都内では千二百カ所の踏切がある中で、都では、京成高砂駅付近の踏切について、重点的に対策を実施する踏切に位置づけており、一日も早い踏切解消が望まれるところであります。とりわけ、本区間は、国策である成田空港アクセスを実現する重要な路線であり、ぜひとも最優先に取り組んでいただきたい。
 そこで、お伺いいたします。京成高砂駅付近の踏切問題を抜本的に解決するため、鉄道立体化により踏切を解消すべきと考えますが、今後の取り組みについて伺います。
 知事は、首都東京のかじ取りを引き続き命がけで行いたいと述べましたが、こういった周辺区において発生しているこのような問題についても、ぜひとも命がけで取り組んでいただきたいことを切に要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 鈴木一光議員の一般質問にお答えいたします。
 食育についてでありますが、健全な食生活は、人間が生きる上で基本となるものでありまして、健康的な心身や豊かな人間性をはぐくむ重要な役割を果たしていると思います。
 しかし、今日の家庭では、子どもに基本的な食習慣やしつけを身につけさせる力が衰えてしまいまして、食生活の乱れが深刻化しております。
 ある学校で先生が、小学校でしょうか、あすはお母さんのつくったお弁当を持っていらっしゃいというオーダーを出したら、ある子どもが持ってきた弁当を見たら、これは決して悪いことかどうかわかりませんが、そこらで売っているカロリーメイトという、チョコレートみたいなバーだったそうでありまして、そういう風潮というのはどんどん強くなっていると思います。
 統計でも、子どもの欠食が、小学校で五%、中学でも一〇%ということで、朝食と学力の関係というのは、これは都内の公立の小学校五年を対象にして調べてみますと、朝食を必ずとるという児童の平均正答率、答えを正確にするというのが、どのカリキュラムでも非常に高くなっているようでありまして、家族と一緒の食事がほとんどない割合が、東京都では子どもの一一%ということで、これは非常に痛ましい、恐ろしいデータだと思います。
 このため、都は、食育推進計画を策定しまして、農業体験や生産者との交流を通じて子どもたちの食や自然に感謝する心を醸成するなど、幅広い取り組みを進めていきたいと思っております。
 今後、こうした取り組みを通じて、家庭だけではなく、学校や地域など社会全体を巻き込み、大切な食の文化を東京が率先して日本全体でよみがえらせていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 地域結集型研究開発プログラムに関します二点のご質問にお答えいたします。
 まず、プログラムの目的と内容でございます。
 今回、国から採択を受けましたプログラムは、光化学スモッグや土壌汚染の原因となります揮発性有機化合物、いわゆるVOCの浄化技術を開発し、その成果を環境浄化と産業振興につなげることを目的としております。
 既存のVOC処理装置は、費用負担が大きいことなどから、中小の印刷業者や塗装業者では導入が困難な状況にあります。そこで、本事業では、VOCの新たな吸着材等を開発し、中小事業者でも安価に導入できる処理装置の製品化技術を確立してまいります。
 あわせまして、使用後の吸着材の処理システム、土壌内のVOC処理工法の構築にも取り組んでまいります。
 次に、研究成果の事業化への取り組みであります。
 本プログラムは、単に研究室レベルでの技術開発にとどまらず、その成果を事業化し、VOCの排出削減や環境ビジネスの創出につなげることを主眼としております。そのため、都内中小企業との太いパイプを持ちます産業技術研究センターが中核機関となり、事業化を重視した産学公の連携体制を組織いたします。また、事業全体を牽引するプログラム実行責任者を置き、事業化を強力に推進いたします。
 都としても、販路開拓支援や資金調達支援など、あらゆる支援策を駆使して、事業の成長、拡大を後押ししてまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、JR常磐緩行線における輸送サービスの問題についてでございますが、本路線は、昭和四十六年の相互直通運転以降、例えば金町駅から上野駅に行く際には乗りかえが必要になったものの、一方で、霞ケ関や赤坂などへは直通となり、交通アクセスは大きく向上しております。
 ご指摘の運賃や運行ダイヤは、基本的には各鉄道事業者が利用状況などに応じて設定するものでございますが、これらの問題について、現在、地元の住民や区などで検討を行っていると聞いております。
 都といたしましても、このような取り組みに対し、地元区とともに鉄道事業者に要望を伝えるなど、必要に応じた協力を行ってまいります。
 次に、京成高砂駅付近の踏切対策についてでございますが、同駅付近には、ピーク時一時間当たりの遮断時間が四十分以上のあかずの踏切が二カ所あり、成田新高速鉄道開業による遮断時間の増加を防止することは重要であると認識しております。
 このため、都は、京成電鉄、葛飾区と対応を検討してまいりましたが、その結果、京成電鉄が、当面の対策として京成金町線の高架化工事を実施することになりました。
 また、この高架化工事にあわせ、歩行者の利便性向上に資する対策として、駅に直結する通路やエレベーターの設置を進めることとしており、都としても必要な支援を行ってまいります。
 最後に、抜本的な対策についてでございますが、京成高砂駅付近は、踏切対策基本方針の中で、鉄道立体化の可能性を検討すべき区間の一つに位置づけられております。都は、地元区が設置した勉強会に参画し検討しておりますが、立体化に当たっては、駅直近にある高砂車庫の取り扱いなどの課題がございます。
 現在、鉄道事業者が車庫の縮小化に向けた検討を行っており、今後、こうした検討の状況や沿線まちづくりの熟度、関連する道路整備計画、さらには現在実施中の連続立体交差事業の進捗状況などを踏まえながら、引き続き関係機関と検討を深めてまいります。

○議長(川島忠一君) 七十四番門脇ふみよし君。
   〔七十四番門脇ふみよし君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○七十四番(門脇ふみよし君) 先ほど、自民党鈴木議員から、我が党の知事選や政策課題に関してのご指摘がございました。都議会民主党としては、都知事選に向けて、一丸となって着々と準備を進めているところでございます。
 障害者、とりわけ知的障害者行政についてお伺いをいたします。
 先週の水曜日のことですが、私も委員を務めている青少年・治安対策本部所管の東京都青少年健全育成審議会での試写会がありました。ほぼ月に一回行われているもので、東京都知事推奨映画諮問作品を鑑賞して、後日開催される審議会でそれにふさわしいかどうか決定するものであります。
 今回のタイトルは「筆子その愛―天使のピアノ―」という二時間の映画でした。障害児教育の母と呼ばれた石井筆子さんの生涯を映画化したもので、監督である山田火砂子さんは、四十三歳になる重度知的障害の娘を持つ母でもあります。とても感動的な作品でしたが、当日配布されたチラシには次のように紹介されています。
 幕末、長崎県大村藩士の娘として生まれた筆子は、その美貌と知性で鹿鳴館の華といわれ、津田梅子とともに女性の教育と地位向上に力を注ぐ一方、三人の娘の長女は知的障害者、次女は生まれてすぐ亡くなり、三女は結核性脳膜炎になり、最初の夫も若くして亡くすなど、苦渋の道を歩みました。その後、日本で最初の知的障害児施設滝乃川学園創始者石井亮一との出会い、再婚を通じて、残された生涯を滝乃川学園にささげ、我が娘と大勢の園児とともに愛と忍耐の日々を送った人間ドラマです。以上であります。
 滝乃川学園は、現在、国立市に移転していますが、明治時代、障害者福祉どころか、社会福祉という言葉すらない時代、このような日本人がいたことは、我が国の誇りではないでしょうか。暗くてよく見えませんでしたけれども、小さな試写室では多くの皆さんが涙を流されているようでありました。
 この会場を出て、阿佐ヶ谷駅までの中央線の中で、車窓から夜のとばりがおりた東京のまちを見ながら、ちょうど会派内で一般質問を行うことが決まった時期でもあったので、議員の一人として、障害児を持つ父親として、改めて知事に、障害者に対する思い、障害者施策の取り組みについて聞いてみたいと思いました。
 知事にお伺いいたします。
 今から一年少し前、東部療育センター開所式で式辞を述べられています。詳細は省略いたしますけれども、ここまで物事の完備した施設は世界にないと思います、日本人の感性というもの、独特の生命に対する価値観をつくり、象徴的な存在としてこの施設が誕生したと思います、やはり人類の将来にとっても誇るべきモニュメントになり得ると思います、などといわれております。
 会派でも視察に行きましたけれども、私は、この重症心身障害児施設である療育センターの内部はいわば神の世界と強く感じたことを忘れることができません。
 平成十一年に知事が同様の施設である府中療育センターを視察した際、発言の一部が曲解され、報道されたことは極めて残念なことでもありました。
 そこで、先ほど申しましたように、首都東京のトップリーダーとしての障害者に対する思い、そして施策についてお伺いをいたします。
 次の質問です。
 どのような分野での企画、協議、実施でも同様と思いますが、障害者施策、とりわけ雇用・就業にかかわる庁内の連携は重要ですし、このことは以前からいわれていることであります。これについて、産業労働局では障害者の職業能力の開発、向上を通じた就業促進、福祉保健局では福祉施設利用者の一般就労の促進、教育庁では盲・ろう・養護学校卒業生の就業促進の観点から、後ほど個別には申し上げますが、施策を進めてきました。
 私は、この業務の部分での統一的セクションをつくるべきという考えではありませんし、よい意味でのセクショナリズムという概念も決して否定するものではありません。これからはいわば相互乗り入れ的効果が期待できる施策も少なくないでしょう。
 しかし、同時に、今後、障害者自立支援法の趣旨にのっとって、障害者の一般就労に向けた取り組みを効果的に進め、東京における障害者の雇用・就業を伸ばしていくためには、行政の各セクションが連携を図り、全庁的、効率的な取り組みを進めることが必要ではないかと思います。その点についてのご見解をお示しください。
 次に、障害者雇用に関する認証制度の創設についての質問です。
 どうしたら、どのようにしたら、障害者の就労を進めていくか、雇用率を上げるかということは決して簡単なことではありません。特に東京は全体の労働人口が非常に多く、同時に中小企業がとても多い都市ですから、なおさら大変です。このような厳しい状況の中で、企業、会社の積極的な取り組みを促すような仕組みづくりが重要だと考えます。もちろん、ペナルティーを科すなどネガティブな施策のことではありません。
 例えば現在、行政機関も含めた多くの企業、団体が、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO一四〇〇一の認証取得に取り組んでいます。最近は、受付などにその表示をする企業もふえましたし、認証マークを印刷した名刺をいただくことも多くなりました。これらは確かに、入札など、ISO取得が営業上の取引条件となる場合が一般的となりつつあることが主な理由ですが、環境対策への積極的な取り組みをアピールし、企業ステータスを高めて、社会的イメージ向上にも役立っていることも間違いありません。とてもよいことでしょう。
 そこで、障害者雇用に関しても、企業のすぐれた取り組みを公的に認証することにより、インセンティブを高めるような制度を都独自に創設すべきと思います。お考えをお聞かせください。
 次の質問は、ことし十月から本格実施がスタートいたしました自立支援法のことです。
 このことについては、私たち民主党も国会で改正案を提出していますが、ここ数日、国レベルでも、利用者負担軽減に向けて具体的な動きがあります。これらの状況、また利用者やその家族の負担の重さ、苦しさなどは、連日のようにテレビ、新聞で報道、放映されていますので、詳しくは申し上げませんが、都として通所施設等の利用者負担の軽減策を実施すべきと考えますが、いかがでしょうか。簡潔にお尋ねいたします。
 また、このことと表裏一体になるのですが、授産施設、作業所を利用する障害者の地域生活を支えるためには、工賃の水準アップが必要であることもいうまでもありません。現在の都内の工賃は、月平均一万五千円程度でしょう。その水準を引き上げるために支援策に取り組むことが必要ですが、そのお考えを伺います。
 もちろん、障害者を支える家族などの意識改革も大切でしょう。いつまでも政治が悪い、社会が悪いといっているだけでは、真の障害者自立は確立できません。厳しい環境の中でも明るく物事をとらえていく努力も必要でしょう。
 医学的なことはわかりませんが、考えてみれば、知的障害で申し上げれば、何億もある脳の回線の一つが、一つだけが異なっていたり、染色体が少しだけ違っているだけのことではないでしょうか。また、法律や制度にかかわらず、周辺の温かいまなざしも大切です。
 多くの議員の皆さんも地元団体の旅行会などでご経験がおありになると思いますが、特にここ数年、旅館などで障害者団体の皆さんと出会うことが多くなりました。おふろに入っていると、介助者やボランティアの方が、屋内ぶろから露天ぶろに重度の心身障害者を抱え、移す姿を見ていると、行政の役割以上に重要なことがあるということを感じます。
 なお、これは問題の提起として申し上げますが、将来への取り組みとして、一つには、障害者やその家族がみずから個人経営で、パン屋さん、お菓子屋さんなどの小規模経営を始める際の何らかの制度融資の創出です。このような制度は現行ではありませんが、授産施設での作業、企業の一般就労とは異なる、第三の支援策になると思います。
 もう一つは、これは東京において簡単にできることではありませんけれども、農業への取り組みです。もちろんトライバージョンではなく、授産施設を経営する団体が、農家から土地を借り上げ、通所者の皆さんが、無農薬野菜など付加価値の高い農作物を生産、販売することにより、結果的に工賃アップにつなげると同時に、作業意欲を高めることになるのではないでしょうか。数多くの作業所を訪問する中で、雑誌付録の袋詰めや贈答品箱の組み立てだけでは限界があると思います。
 最後の質問として、教育関係の施策についてお伺いいたします。
 知的障害が軽い生徒を対象とした養護学校として、来年四月に永福学園養護学校が杉並区に開校いたします。この学校は、平成十六年十一月に都教委が策定した東京都特別支援教育推進計画第一次実施計画で三校計画している、職業的自立を目指した養護学校高等部の設置第一号となる学校です。
 永福学園養護学校では、職業訓練や就業支援を充実し、生徒全員が企業就労を目指していくなどの特色を持たせており、父母や関係者の高い関心を集めています。応募状況もそれを裏づけているようです。
 今後は、こうした職業的自立を目指した養護学校高等部だけではなく、広く知的障害養護学校高等部においても、将来の職業的自立を目指した教育を推進し、知的障害のある生徒の自己実現と社会参画等を促進し、社会に貢献できる人材を育成していくことが求められていると思います。民間企業との連携についてお伺いをいたします。
 一方、生徒の中には、こうした将来の職業的自立を目指す生徒とともに、重度重複した障害のある生徒も多く在籍をいたしております。養護学校高等部のスクールバス乗車については、義務教育ではないということもあり、現在は一人通学が基本とされていますが、障害の程度によっては公共交通機関を利用することが困難であり、このような場合、保護者の負担も増大しています。
 こうした状況を考えれば、都教委は、スクールバスを真に必要としている高等部の生徒のために、スクールバスの弾力的な運用をすべきと思いますが、お考えをお伺いいたします。
 以上で質問を終わりますが、今、具体的根拠のない東京ひとり勝ち論が風評されております。もちろん財務局を中心として理のある反論をしておりますけれども、百歩譲って、東京ひとり勝ちということであれば、それは財政状況や税収入ではなく、障害者施策、とりわけ雇用・就労での東京ひとり勝ちという状況を実現していきたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 門脇ふみよし議員の一般質問にお答えいたします。
 障害者施策への取り組みについてでありますが、質問の中で、数年前の私の府中療育センター視察について触れられましたが、あの経験は非常に私にとっても、行政者として重要な、それ以上に人間として非常に強いショックを受けました。
 ただ、出かけます前に、あの病院のお医者さんが実は私の同じスポーツの仲間でして、後輩ですけれども、相当覚悟していらっしゃい、かなりショックですよといわれたんですが、幸い、私、環境庁のときに閣僚として初めて水俣に参りまして、胎児性患者の実態を眺めました。ただ、あれはやはり汚染の固定発生源という、チッソの工場というはっきりした原因がございましたが、あの府中のセンターにおられる方々は、まさに今おっしゃったように、わずかな染色体の違い、光学の違い、そういったことによって非常に過酷な運命を強いられた、私たちの同胞であると思います。
 そういう点で、問題の質はもっと重いのじゃないかという気さえしますが、いずれにしろ、どんなに障害が重くても、障害者がみずからの生活や人生のあり方を選択し、決定し、人間としての尊厳を持って生活できるようにすることが、障害者施策の目指すところであります。
 こうした理念のもとに、都はこれまで、グループホームの整備促進など、国に先駆けてさまざまな独自の施策を実施するとともに、重症心身障害児のための東部療育センターを開設するなど、利用者本位の障害者施策の充実に取り組んできました。
 今後とも、都の先導的な取り組みをさらに前進させ、区市町村とともに連携しながら、障害者が地域の中で自立し、安心して暮らせる社会を実現していきたいものだと思っております。
 しかし、何よりも何よりも大事なことは心の問題だと思います。障害者の周りの人間たちが、肝心なこととして、周りの人たちが障害者を温かく見守る。そして折節に、たとえそれは言葉が言葉として通じない相手でも、とにかく励ます。あの府中のセンターで、私、お医者さんにいわれて、なるほどと思ったことは、どうやってコミュニケートするんですかといったら、体を軽くたたくことではっきり意思が通じる、向こうもこたえてくれる、それが本当にうれしいんだということをいっておられましたが、それが問題の一番本質をとらえた、こういった問題に関する基本的な一つの要素じゃないかと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、養護学校における就労支援の民間企業との連携についてでございます。
 昨年度から、障害者雇用の理解を深めるため、企業向けセミナーを開催いたしまして、多くの企業の参画を得て、生徒の実習先の確保など成果を得ているところでございます。
 また、本年度から、障害者雇用に携わった経験のある民間企業の関係者を養護学校等就労サポーターとして委嘱いたしまして、生徒の企業における実習先や就労先の開拓などを行っております。
 さらに、平成十九年四月に開校いたします永福学園養護学校の職業実習に必要な施設設備につきましても、企業等から意見を伺いながら整備を進めております。
 今後も、民間企業と十分連携し、職業教育のさらなる充実を図り、養護学校の生徒の企業就労に向けた取り組みを推進してまいります。
 次に、高等部の生徒のためのスクールバスの弾力的な運用についてであります。
 スクールバスは、知的障害養護学校の場合、一人通学の困難な小学部、中学部の児童生徒を対象としております。高等部の生徒につきましては、卒業後の自立と社会参加の観点から一人通学を原則としておりますが、重度重複学級に在籍する生徒等で一人通学が困難な場合につきましては、個別の事例ごとに、障害の状態や学校のスクールバスの配車状況等を踏まえて対応しているところでありまして、今後とも個々の事例に即して対応してまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 二点のご質問についてお答えをいたします。
 障害者の就業施策における庁内連携についてでございます。
 障害者の一般就労を促進するためには、雇用、福祉、教育の各分野の取り組みを充実するとともに、効果的な連携を図ることが重要であると認識しております。
 そのため、都においては、関係機関による就業促進のための意見交換会の実施や、意識啓発のためのシンポジウムの共同開催などの連携を行ってまいりました。
 今後は、障害者自立支援法の趣旨を踏まえ、さらに多面的に都庁内の関係部局などとの連携を強化してまいります。
 次に、企業における障害者雇用促進のためのインセンティブについてであります。
 障害者雇用を促進するためには、企業の取り組みに向けた意欲を喚起することが重要であります。このため、国では、模範となります事業所に対して助成金等の支給や厚生労働大臣による表彰を行うなど、企業の積極的な取り組みを促しております。
 都におきましても、本年度から障害者職域開拓支援事業を開始し、障害者の職域拡大につながるすぐれた取り組みを選定し、助成を行うとともに、優良事例として広く周知してまいります。
 今後とも、本事業の充実に努めるなど、障害者雇用の促進に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、通所施設利用者の負担軽減策についてでございますが、障害者自立支援法における定率負担は、障害者自身も、サービスを利用する対価として一定の費用を負担し、みんなで安定的、継続的な制度運営を支えていく趣旨で導入したものでございます。低所得者に対しては、所得に応じた負担上限額の設定や個別減免など、さまざまな負担軽減措置が講じられております。
 しかしながら、先般、都が調査した結果、通所施設を利用する方の負担は、非常に低かった旧制度の利用料と比較して、新たに負担することとなった食費等の実費相当分も含めて、平均で約九倍となることが明らかとなりました。
 このような通所施設利用者への急激な負担増を緩和する経過措置を実施するよう、都は国に対して緊急要望を行ったところであり、国においても具体的な対応を検討していると聞いているところでございます。
 次に、障害者施設における工賃についてでございます。
 障害者自立支援法では、授産施設の利用者の平均工賃が施設の目標水準を超えた場合に、その施設に支払われる報酬が加算されるなど、工賃の引き上げを目指す施設への支援が強化されたところでございます。
 また、都内の授産施設の中には、複数の施設が協力し、付加価値の高い自主製品の開発や企業からの大量受注などにより高い実績を上げている例がございます。
 このような取り組みを全区市町村に広げるため、都は、東京都障害者施策推進協議会の最終提言を踏まえまして、今後、区市町村が取り組む複数施設によるネットワークの構築を支援するとともに、福祉施設の経営努力や環境整備を促す施策を具体的に検討してまいります。

○副議長(木内良明君) 十七番大松成君。
   〔十七番大松成君登壇〕

○十七番(大松成君) まず、教員の二〇〇七年問題について伺います。
 東京都の公立学校では、団塊の世代の教員が定年退職を迎え、平成十九年度から毎年約二千人が退職していきます。一方、児童生徒は一時的にふえ、早期退職の補充も含めると、都は平成二十年度から毎年約三千人の教員を採用しなければなりません。必要な教員をどう確保するのか、その資質をどう向上させていくのか、都は教員を採用する立場であり、その責任は重大です。
 仮に、約三千人すべてを新卒採用していけば、団塊の世代同様、偏った若い年齢層が生まれ、全体の教育力の低下も心配されます。このため、都は、教員の受験資格年齢を引き上げたり、東京教師養成塾などで教員の資質向上にも努めていますが、さらなる取り組みが必要です。
 そこで注目されるのが、教員の他県との交流です。東京都とは逆に、宮城県では退職時期を迎える教員が少ないため、新卒者を採用できないでいます。そこで、都は今年度、宮城県の中堅教員を一定期間採用し、宮城県は、その人数分の教員を新卒採用しました。宮城県から都内に赴任した教員の方にお会いしましたが、最優秀かつ大変情熱的で、赴任後わずかの間に、授業やクラブ活動で目覚ましい成果を上げておられました。
 そこで伺います。都は、宮城以外の県とも連携し、教員の他県交流を拡充するべきです。年齢層を平準化するだけでなく、教育の活性化に大きな効果が期待できます。所見を伺います。
 次に、教員の資質をどう向上させるのか。
 優秀な教員を確保するには、採用選考の受験者数をふやし、倍率を上げることが必要です。都の教員採用情報を全国に発信するとともに、大学生を対象にした説明会も、より効果が上がるよう工夫していくべきです。所見を伺います。
 一方、採用前に東京教師養成塾などで十分な実習を受ける機会のあった教員は限られています。新卒教員の大半は、数週間の教育実習だけで各学校に赴任してきます。しかし、小学校の場合、新卒教員も一年目から担任になります。その経験不足は否めません。新卒教員が円滑に教育活動をスタートできるよう、任用前の段階からサポートする体制を整えるべきです。所見を伺います。
 次に、情報リテラシー教育について伺います。
 ITやメディアの発達で、世界のどこでも、だれでも、さまざまな情報にアクセスできるようになりました。このため、情報そのものに価値を求めるのではなく、情報を活用する知恵が求められる時代になってきました。
 そこで忘れてならないことは、情報には事実とうそがあることです。悪質なデマもあります。情報を峻別し、正しく活用する力、いわゆる情報リテラシーが必要です。
 まず、情報がはんらんする社会における現代人の生き方について、石原知事の所見を伺います。
 都は既に、インターネットに関する情報リテラシー教育に取り組んでいます。ネット上には、虚偽や犯罪、人権侵害の情報が多数含まれ、そうした情報から子どもを守る都の取り組みを高く評価します。
 その上で指摘しなければならないのは、インターネットだけでなく、活字や放送メディアによる情報もはんらんし、その中にも誤った情報、人権にかかわる情報があることです。中には虚偽報道で名誉を毀損し、たびたび裁判に訴えられる雑誌があります。最近では、新聞広告や車内つり広告の見出しが名誉毀損に当たるとして、損害賠償を命じる判決も出ました。
 こうした名誉毀損が頻発する理由の一つは、名誉毀損が認められても、賠償額が百万円前後など少額にとどまることが多いためです。
 日本新聞協会は、人権尊重を宣言する倫理綱領を制定し、放送業界は、放送と人権等権利に関する委員会機構を設置するなど、自主的に取り組んでいますが、それ以外のメディアによる人権侵害は後を絶ちません。
 最近は、芸能人やスポーツ選手も、メディアによる名誉毀損には逐次裁判に訴えるようになり、賠償額も引き上げられてきました。欧米にある懲罰的損害賠償制度やプレスオンブズマンについての議論も行われるようになりました。
 しかし、大事なことは、子ども自身に、情報を峻別し、的確に活用する力を身につけさせることです。活字、放送メディアについても情報リテラシー教育が必要です。所見を伺います。
 そうした中、気になる調査がありました。平成十五年、OECDが実施した学習到達度調査です。日本の子どもは、数学、科学的リテラシーや問題解決能力は世界トップレベルでしたが、読解力は平均点程度でした。文章を読み解く力が弱い、活字に対してうのみの傾向があるのではないかと心配です。本や文に読まれるのではなく、読み切っていく力を育てるため、都は、子どもの読解力を向上させる新たな取り組みを国に先駆けて行っていくべきです。所見を伺います。
 OECDの調査で読解力にすぐれていたフィンランドでは、文章や資料を、信頼性、客観性、論理性などを評価しながら読むクリティカルリーディングが発達しています。こうした海外の事例を研究することも、あわせて要望しておきます。
 また、情報リテラシー教育で効果が期待されるのが、一つのテーマで賛成、反対に分かれて討論し、客観的、論理的思考力を養うディベート教育です。読売新聞社などが主催するディベート甲子園も年々盛り上がりを見せています。
 学習指導要領は、高校の外国語分野にディベートを位置づけていますが、既に授業で行っている小中学校もあります。ディベート教育の普及を進める都の取り組みを求めます。
 次に、介護サービスについて伺います。
 東京都の高齢化率は二〇三〇年に二六%になり、高齢者の十人に一人が認知症になると予測されています。こうした中で求められるのが、住みなれた地域での暮らしをサポートする在宅介護サービスです。
 そして、その切り札として期待されているのが、小規模多機能型居宅介護拠点です。通いを中心に、必要に応じて訪問や泊まりのサービスがワンパックで提供され、料金は定額制、利用者には大変強い勝手がよい。先日、板橋区内にある小規模多機能型居宅介護拠点を視察しました。泊まりを多用する百歳を超えた女性が、通い中心の高齢者らと昼のひとときを笑顔で過ごされていました。
 高齢者が高齢者を介護する老老介護の家庭では、在宅介護だけでは家族がもちません。デイサービスに連れ出すのも大変です。こうした家庭には小規模多機能拠点は大変有意で、都は整備を促進するべきです。所見を伺います。
 都内の小規模多機能拠点はまだ十二カ所程度です。事業者の間には、東京は土地の取得が難しい、経営上の採算が見込めないという声が強くあります。板橋区内の小規模多機能拠点では、グループホームに併設することで、資産や人材を有効に活用し、効率的な経営に努めていました。こうした併設を促進すれば、小規模多機能拠点の整備は進みます。グループホームと併設する場合に、都として助成を行うべきです。
 また、板橋区内の小規模多機能拠点では、泊まり用八部屋のうち、三部屋があいていました。これをショートステイに活用できれば、経営を効率化できますが、国の規制でできません。突然の泊まりに備えるためですが、その分を確保した上でも空き部屋の活用は可能です。
 そこで伺います。小規模多機能拠点の空き部屋の一部をショートステイに活用できるよう、国に規制緩和を働きかけるべきです。また、二十五人の登録定員も三十人程度まで柔軟に運用できるよう規制緩和を求めていくべきです。所見を伺います。
 次に、災害要援護者対策について伺います。
 災害は、高齢者、障害者だけでなく、妊産婦、乳幼児にとっても過酷です。都の災害要援護者防災行動マニュアルへの指針に、妊産婦や乳幼児を災害弱者として明確に位置づけ、万全の対策が必要です。
 幼い子どもの心には、災害時の恐怖がトラウマとして残ることがあります。食事についても、離乳食やアレルギーへの配慮が必要です。避難所生活における妊産婦、乳幼児、その保護者のためのメンタルケアや乳幼児に配慮した食糧の確保など、きめ細かな対策が区市町村に広がるよう、都が支援するべきです。所見を伺います。
 災害対策で大切なことは、自分の身は自分で守ることです。阪神大震災の死亡者の九割以上が、地震発生後十五分以内に亡くなったという調査があります。建物の耐震化を進めるとともに、とっさの行動をとれない妊産婦や乳幼児の保護者は、ふだんから災害に備える必要があります。妊産婦、乳幼児を持つ保護者に災害対策への意識を深めていただくよう、あらゆる機会を通して普及啓発していくべきです。所見を伺います。
 最後に、浸水対策について伺います。
 都内でも集中豪雨による浸水被害がふえ、特に隅田川沿岸部から東の東部低地部では、その危険性が高く、対策の強化が必要です。
 対策のポイントはポンプ所です。平成十二年の東海豪雨ではポンプ所が冠水し、機能が停止しました。ポンプ所の機能確保に取り組むべきです。所見を伺います。
 また、一昨年九月、局地的に時間八三・五ミリという記録的な豪雨に見舞われ、甚大な浸水被害を受けたのが、北区の志茂、神谷地域です。この地域には、神谷ポンプ所が新設されましたが、六基のポンプを設置する計画に対し、まだ三基しか設置されていません。残り三基を早急に設置し、赤羽地域を含む周辺の下水管の雨水排除能力をアップさせるべきです。
 今後の計画と効果を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大松成議員の一般質問にお答えいたします。
 情報がはんらんする社会についてでありますが、このご指摘は非常に大事でありまして、今日本の社会に起こっている、さまざまな、かつてなかった出来事の根底に、私はこういう現象があると思います。今の日本にはありとあらゆる情報があふれておりまして、非常に便利になったと錯覚されておりますが、実はその多くの人たちが、情報を操っているつもりが、逆に操られているにすぎなくて、自分の判断や評価を、他の手だてというか、情報の判断、分析、評価そのものを他の情報に頼るという、非常におかしな現象が起こっていると思います。
 これをある哲学者は、人間の本質的な貧困化ともいっておりますし、また、首都大学東京の宮台君という若い学者です、社会学者ですが、彼も非常に鋭い指摘をしておりまして、やっぱり人間の感性というものが摩滅していく。ということは、非常に情報が多過ぎるものですから、勘違いがなくなった。勘違いというのは非常に大事なことで、人間の創造力を刺激するので、それがなくなったことで、実は人間は本質的にやせてきたということをいっていますが、まことにそのような気がいたします。
 とりわけ、日本の子どもたちが大方持っている携帯電話には、非常に有害な情報が規制のないままにはんらんしておりまして、風俗の紊乱にとどまらず、若い世代の人間としての本質を狂わしてしまいかねない傾向にあると思います。
 先日、東京の教育委員の一人の方がおっしゃっていましたが、久しぶりにヨーロッパに用事があって二カ月滞在したが、気がついてみたら、向こうの小学校、中学生で、携帯電話を持っている人は一人もいなかった。親になる人たち、あるいはおじいさんになる人に聞きましたら、当たり前じゃないか、子どもの、要するに、お小遣いで買えるものでないし、また子どもの小遣いで通話料を払えるものでもない、そんなものを子どもに与える必要もないし、また与えるつもりもないということでしたが、これはまた私、非常に強い印象を受けたエピソードでありました。
 大切なのは、バーチャルな世界におぼれることなく、自分の足で現場に立ちまして、自分の目で現実の世界を見定めることだと思います。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 教育に関する五点の質問にお答え申し上げます。
 まず、現職教員の他県との交流の仕組みの拡大についてであります。
 ご指摘のとおり、教員の年齢構成のピークが異なります他県と連携いたしまして、中堅教員を採用する仕組みは、教員の年齢構成の平準化、教育の活性化のためにも大変意義あることと考えております。
 都教育委員会は、平成十八年度におきまして、初めて宮城県教育委員会と協定を締結いたしまして、小学校教諭二名、高等学校教諭三名と少ない人数ではございますけれども、採用したところでございます。これに加えまして、平成十九年度におきましてもさらなる採用を予定しております。今後、このような仕組みの活用を他県にも働きかけまして、現職教員の交流の拡充を図ってまいります。
 次に、受験者数拡大のための方策についてであります。
 ご指摘のとおり、採用情報の発信や説明会の拡大は、受験者確保のための重要な取り組みであると考えております。このため、従来から、大学四年生を対象といたしまして、採用説明会や地方説明会、パンフレットやホームページを活用したPRを実施しております。
 また、この秋から新たに、大学三年次以下の学生を対象といたしました各大学へ出向いての説明会の実施や携帯電話版メールマガジンの配信によります教員採用情報の提供を始めたところであります。
 今後、これらの説明会で、若手教員がみずからの体験談を通しまして教職のやりがいや心構えを伝える場を設けるなど、一層の創意工夫を図りまして、受験者数拡大に努めてまいります。
 次に、小学校の新規採用教員のサポートについてであります。
 小学校の新規採用教員の多くは、四月当初から学級担任として学級経営や保護者対応を行うことから、より円滑に教育活動のスタートを切れるよう、任用前の段階からサポートすることは重要であるというふうに考えております。
 任用前の取り組みの一環といたしまして、本年十二月に、授業づくりや学級経営など実践的なテーマで、来年度新規採用候補者を対象といたしました東京教師養成塾公開ゼミナールを実施したところでございます。
 さらに来年三月には、小学校の新規採用候補者が四月から実際に勤務いたします予定の学校に出向いて、新年度に向けた児童の受け入れ準備や教材作成といった学級担任として役立つような実践的な活動を体験する任用前学校体験を、区市町村教育委員会の連携協力のもとに実施してまいります。
 次に、活字や放送のメディアに関する情報リテラシー教育についてであります。
 ご指摘のとおり、インターネットだけでなく、活字や放送のメディアにつきましても、正しい情報を主体的に選択し、活用できる能力を育成することが必要でございます。
 各学校では、発達段階に応じまして、国語や社会、総合的な学習の時間等で、放送番組や新聞など、さまざまなメディアを活用した学習を行っておりますが、活字や放送のメディアに関する情報リテラシー教育は必ずしも十分に行われているとはいえません。
 今後、都教育委員会は、情報教育推進協議会などにおきまして、活字や放送のメディアに関する情報リテラシーを育成するための指導内容、方法について研究を行ってまいります。
 最後に、読解力向上のための取り組みについてであります。
 児童生徒の読解力を向上させるためには、読書活動等を通しまして自分の考えを広げたり深めたりするとともに、目的や課題に応じて、さまざまな情報を収集し活用して、進んで表現する、そういう学習活動を充実していくことが重要でございます。
 今後、各学校がすべての教育活動を通しまして、児童生徒の読解力向上を図るため、各教科等の指導事例を示したガイドブックを作成いたしまして、区市町村教育委員会とも連携し、その活用を図ってまいります。
 また、幼児期に保護者などから話を聞くことや絵本を読んでもらうことは、読書の楽しさを知る上で極めて大切なことから、家庭や地域に対しまして、子どもが読書に親しむ機会を持つよう働きかけてまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 介護施策などに関する四点の質問にお答えいたします。
 まず、小規模多機能型居宅介護拠点の整備についてでございますが、本年四月の介護保険制度改正によりまして創設された小規模多機能型居宅介護は、通所を中心に訪問や宿泊の各サービスを、同じスタッフが一体的、継続的に提供することによりまして、高齢者の安心感を確保しながら、住みなれた地域での生活を支える有効なサービスであり、積極的に普及させていくべきものと考えております。
 このため、都は、今年度から地域密着型サービス等、重点整備事業を創設し、区市町村による計画的な基盤整備を強力に支援しております。現時点では、平成二十年度までに、都内に七十七カ所の小規模多機能型居宅介護拠点の整備が計画されており、今後とも区市町村と緊密に連携し、地域に密着したサービス基盤の整備促進に努めてまいります。
 次に、小規模多機能型居宅介護の規制緩和についてでございますが、現行制度では、このサービスを利用できるのは、あらかじめ登録した者に限られておりまして、宿泊室に空室があった場合でも、登録外の者には利用させることができない仕組みとなっております。
 こうした空室をショートステイとして、登録外の者にも利用させるべきとのご提案については、事業運営の効率化のみならず、サービス量の拡大にも寄与するものと考えられることから、今後、区市町村と事業者の意見も踏まえ、国への要望について検討してまいります。
 また、登録定員の上限についても、地域の実情に応じた柔軟な設定が必要と考えられることから、都は国に対し、登録定員等の規制緩和について提案要求しており、引き続き、その実現に向けて働きかけてまいります。
 次に、避難所生活における妊産婦や乳幼児への支援についてでございます。
 お話のとおり、生活環境の変化が心身に及ぼす影響の大きい妊産婦や乳幼児は、災害時の避難所生活において、特にきめ細かい支援が求められるわけでございます。
 このため、都では、現在、保健医療関係者や学識経験者等で構成する子どもを守る災害対策検討会を設置し、メンタルケアや離乳食、アレルギーを持つ子供への配慮など、避難所生活で必要となるさまざまな支援について、幅広く検討を行っております。
 今後、この検討結果を生かしたガイドラインを作成しまして、災害要援護者防災行動マニュアルへの指針の改訂に反映させるなど、避難所の管理運営主体となる区市町村の取り組みを支援してまいります。
 最後に、災害対策への意識を深めるための普及啓発についてでございます。
 妊産婦や乳幼児の保護者は、災害時に迅速な動きがとれないなど行動上の制約が多いため、家族との連絡方法の話し合い、避難所への経路の確認、さらには家具の配置の見直しなど、災害への備えを日ごろから十分に行うことが重要でございます。
 また、都では、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震などの災害体験談を、地元自治体の協力も得て、本年九月に募集し、三百五十件を超える声が寄せられております。
 今後、これらの体験談も活用しながら、災害への備えに際して、妊産婦などに役立つパンフレットを作成し、区市町村の子育てひろばや母親学級など、さまざまな機会を通じて、積極的に普及啓発に努めてまいります。
   〔下水道局長前田正博君登壇〕

○下水道局長(前田正博君) 浸水対策についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、豪雨時におけるポンプ所の機能確保の取り組みについてでございます。
 下水道局では、東海豪雨を想定して策定しました浸水予想区域図に基づきまして、ポンプ所の周辺が浸水しても機能が停止しないよう、止水壁や防水扉を設置するなどの対策を進めております。
 また、集中豪雨により急激に雨水が流入しても、速やかにポンプの能力を発揮できる先行待機形ポンプの導入を設備の再構築などに合わせて進め、機能の確保に努めております。
 次に、神谷ポンプ所の今後の整備計画と効果についてでございます。
 神谷ポンプ所は、志茂、神谷地区などの雨水流出量の増加に対応するとともに、赤羽地区などを新たにポンプ排水区に編入するために、平成四年に計画し、昨年四月に稼働させたポンプ所でございます。
 引き続き、ポンプ所に雨水を取り込む工事を進めるとともに、この進捗にあわせ、ポンプを増設していく予定であり、今年度中には一台を増設し、合計四台が稼働することとなります。これらの整備により、この地域の浸水被害の軽減に大きな効果が発揮されるものと考えております。
 今後とも、浸水対策事業に全力を挙げて取り組んでまいります。

○副議長(木内良明君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩します。
   午後五時二十一分休憩
   午後五時三十九分開議

○議長(川島忠一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十番神林茂君。
   〔二十番神林茂君登壇〕

○二十番(神林茂君) 東京都は、我が党の要請にこたえ、石原知事のもと、国や他の自治体に先駆け、職員定数の削減や監理団体改革などの行財政改革に積極的に取り組んでまいりました。この結果として、財政再建団体転落かという極めて厳しい危機を乗り越えることができ、このことについては高く評価するものであります。
 今年になって財政再建に一つの区切りがついたとの見解のもとで、「今後の財政運営の指針」が策定されました。そこで、肝心なことは、行財政改革を推進する真の目的が、財政再建団体転落を乗り越えることだけではなく、時代の変化に即応させて、常に少しでも多くの成果を都民に還元していくことであるという点であります。
 私は、むしろ現在のような、景気の変動に一喜一憂することのない、財政に余裕のある今こそ、気を緩めることなく、最少の経費で最大の効果という基本に徹して、根本的な部分から洗い出し、さらなる行財政改革の推進に努めていくべきと考えております。
 そこで、まず初めに、知事の行財政改革に対する基本的な考え方を伺います。
 東京都は、十六万人もの職員を抱え、また四十二にも上る公益法人や株式会社などの監理団体と報告団体などを傘下に抱え、他の自治体と比較にならないほど膨大な組織となっております。このことが都民にとってわかりにくく、見えにくい組織になっており、ここに改革を行うべき原点があります。
 この膨大な組織を都民に見えるよう、効果的、効率的に運営していくためには、まず東京都は、将来を見据えて、既成の枠組みにとらわれず、都が本来なすべき事務事業を厳選し、その他の事務事業は極力、今後とも、民間でできることは民間に委託し、住民に身近な事務事業は区や市に移譲するなどして、組織や事務事業のスリム化を図ることであります。
 次に、専門的なポストに民間人を登用することや、外部の第三者による監査体制を強化することで、組織の風通しをよくすることが挙げられます。そしてさらに、都民に対して東京都の財政や事務事業の内容、行財政改革の取り組みなどをきちんと理解されるよう、わかりやすく、よく見える広報活動を行うことが必要と考えます。
 今後の行財政改革の推進に当たっては、このような根本的なところから洗い出し、都民から見えにくい膨大な組織を、将来展望を見据えて、しっかりと見直しを図っていくべきと考えます。ご所見を伺います。
 次に、内部努力の取り組みについて伺います。
 都がこれまで進めてきた行財政改革は、職員定数の削減や監理団体改革など、経費削減の観点からの見直しで、こうした内部努力の取り組みは、今後一歩たりとも後退してはなりません。
 例えば、東京都の職員定数は職員定数条例で定められ、事務量に基づいて人員が配置されています。民間では一般的に年間を通して暇な時期に合わせて職員配置を行い、忙しいときにはアルバイトやパートを活用して対応しています。今後、民間の内部努力の姿勢を考慮すれば、まだまだ職員定数の見直しが検討できるはずであります。
 また、都庁舎や事業所における光熱水費の削減や資料の作成の際の両面コピーの徹底など、日々の地道な経費削減などを着実に実行することが必要です。職員一人一人が一枚のコピーを節約すれば、都庁内で単純に十六万枚もの節約につながります。
 今後においても、職員定数の見直しや日々の経費削減など、内部努力の取り組みをさらに踏み込んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
 都のこれまでの行政改革は、経費節減などのいわば量の行政改革ともいえる取り組みでしたが、今後は、質の面からの転換も図っていく時期に来ていると考えております。
 例えば組織運営について、都のような巨大組織は、往々にして組織としての一体感の醸成が難しく、縦割りの形態になりがちであります。
 最近の行政課題は、多様化、複雑化しており、一つのセクションだけで解決できるほど単純ではありません。これからの組織運営に当たっては、局の垣根を越えて重要課題の解決に取り組めるよう、局間連携を強化していくべきと考えます。
 また、都庁の仕事自体の進め方、いわゆる業務プロセスを見直していくことも重要です。都民サービスの質の向上を図り、業務の効率的執行を進めていくためには、現在実施している業務について、本当にこの方法が最も適切なのかということを常に検証して、見直していくことが必要であります。
 これらはあくまでも一例ですが、こうした行財政運営の質の転換を図る取り組みを一つ一つ確実に行っていくことが必要な時期に来ているのではないでしょうか。
 都の行財政運営を質の面からも転換する、いわば質の行革ということに対し、都としても積極的に取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
 監理団体イコール都の天下り団体だというような無責任な批判があります。私は、都の職員が退職後、監理団体などに職員として再就職することは、決して悪いこととは思っていません。むしろ、これまで行政分野で経験を重ねたOBが、退職後、引き続き都民生活の向上に奉仕の精神でご尽力いただくことは、蓄積された能力を発揮できるという観点から望ましいことだと考えます。
 問題なのは、監理団体の運営については、都民から見えにくいところがあることから、天下りといった不信感がなかなか払拭できないことです。
 このため、先ほど申し上げましたように、外部の人材も積極的に登用したり、外部監査体制を強化するとともに、人事給与制度の不断の見直しを行うなどの改革を行って、監理団体に対する都民の理解を深めていくことが重要だと考えます。
 そこで、監理団体の運営に関して、一層の透明性と信頼性を高めるよう、都としても積極的に働きかけるべきと考えますが、所見を伺います。
 いじめを原因とする自殺予告文書が文部科学大臣や東京都知事に送られたことが報道されるなど、いじめの問題が再び社会的な関心を集めております。子どもたちを取り巻く生活環境が変化する中で、遊びの中で社会性を養ったり、年齢の異なる人たちと人間関係をつくったりする機会が減っています。
 こうした中、都立高校では、平成十九年度から奉仕体験活動が必修化されます。いうまでもなく、教育活動は、子どもたちがこれからの社会で力を発揮していくことを期待して行っていくものであります。生徒たちが「奉仕」の授業を通して、奉仕の精神を学び、思いやりの心を身につけ、自分たちを取り巻くさまざまな人々とのかかわり合いの重要性を理解し、学習を終えてからも、みずからの意思で社会の一員として社会貢献に取り組んでいくことにつながれば、すばらしいことと思います。
 そこで、都立高校において平成十九年度から実施する「奉仕」の授業の取り組みをどのように地域社会に広げ、今後、子どもたちの奉仕活動をどのように継続させていくのか、都教育委員会の考えを伺います。
 社会貢献ということでは、都立高校の中では、地域の町会と協力して清掃活動を行ったり、校内で協力して光熱水費の節減に取り組んだり、さまざまな活動が行われております。生徒たちの中に、卒業後、将来も活動しようという機運を高めるためには、表彰制度を設けたり、節減した光熱水費の一部を学校に還元したりするなど、目に見える形で生徒の社会貢献活動を励まし、支援していくことが大切であります。
 そこで、学校の取り組みをより一層サポートし、生徒の社会貢献活動を積極的に励まし、支援していくことが大切であると考えますが、所見を伺います。
 最後に、特別区消防団について伺います。
 消防団員は、平素の仕事を持ちながら、自分たちのまちは自分たちで守るという崇高な精神のもと、いざ災害が発生すれば、一人でも多くの生命、身体、財産を守るため、仕事を投げ出し、昼夜を問わず出場していきます。
 また、平常時においても、地域住民から地域防災コーディネーターとしての大きな役割を期待されており、防災訓練時の初期消火や応急手当ての指導、各種防火防災の啓発などを通して、災害に強いまちづくりに積極的に取り組んでおります。
 このように、消防団の役割が拡大し、地域住民の期待が高まる状況にあるにもかかわらず、この東京における消防団員数は減少を続けております。少子高齢化社会が進み、今後ますますこのような現象が続くことが予想され、消防団員の確保対策はまさに喫緊の課題といえます。
 そこで、確保対策として、消防団員の処遇改善はもちろんのこと、女性や学生、事業所に勤務する方々など、募集対象を広げていくことが必要であります。また、消防署員や消防団員が地域の防災リーダーとして、町会や各種地域ボランティア団体などにさらに積極的な指導を行い、防災に対する人材育成や地域防災力の向上を図っていくことも大切な課題と考えます。
 そこで、まず、消防団員の減少が危惧される中、消防団員を確保するため、どのような取り組みをされていくのか伺います。
 続いて、特別区消防団の施設について伺います。
 消防庁では、消防団のポンプ搬送車や救助資機材などが収納でき、分団の会議や警戒の待機場所として活用できる分団本部施設を整備しています。この施設整備については、平成十七年度予算において我が党が強く要望したことにより、それまで遅々として進まなかった施設整備が大幅に整備できるようになりました。
 しかし、この分団本部施設の整備において最大の課題は、過密都市東京においての用地確保ではないでしょうか。そこで、今後さらに施設用地を求めていく際には、当然のことながら、都が所有している土地を借用するなど、都各局の連携を一層深めていくことはもとより、区の施設や学校などの一角を借用して用地を確保していくことが重要な課題となってまいります。
 分団本部施設整備をさらに促進するためには、消防団、市民消火隊、町会の防災組織などが合同で活用できるような地域の防災拠点づくりという視点でとらえて、消防庁と区などが連携して用地の取得、施設建設などを推進していくべきと考えますが、所見を伺います。
 以上で終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 神林茂議員の一般質問にお答えいたします。
 行財政改革についてでありますが、都はこれまで、国の改革が余り進まない中で、都民サービスの充実と東京の再生という都民からの負託にこたえるため、事業のあり方にまで踏み込みまして、徹底した行財政改革を進めてまいりました。
 そのための内部の意識改革として、従来希薄でした金利感覚とか、あるいは時間のコスト感覚の体得を徹底いたしまして、その結果、財源不足を解消するなど、都財政の再建に区切りをつけるとともに、認証保育所の設置やディーゼル車の排ガス規制などの取り組みを通じ、都民が実感できる成果を得てきたと思います。
 これからも手を緩めることなく、都民福祉の向上と東京のさらなる発展のために、現実性のある改革に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、奉仕の取り組みを広げ、継続させることについてでございます。
 お話のように、「奉仕」の授業のねらいは、生徒に思いやりの心や社会の一員としての自覚を身につけさせることなどにあります。必修化に当たりまして、教育支援コーディネーターの活用を図りまして、体験先の開拓や授業のプログラムづくりなど、各学校に対して支援を行いまして、奉仕の活動を社会全体に広げていく予定でございます。
 また、在学中にその理念や意義を学ぶとともに、実体験を通しまして成就感や達成感を味わうことなどによりまして、生徒が「奉仕」の学習を終えた高校卒業後も、生涯にわたって社会に貢献することができる資質を高めるようにしてまいります。
 次に、生徒の社会貢献活動への支援についてでありますが、現在、多くの都立高校では、学校の特色を生かしました多様な社会貢献の活動に生徒が取り組んでおります。
 都教育委員会では、これまでも、人命救助などの行為や、部活動や社会貢献などにおきましてすぐれた成果を上げた児童生徒に対しまして、表彰を行ってまいりました。今後は、必修化した「奉仕」の授業の成果を生かした高校生の自主的な社会貢献の活動につきましても、新たに広く都民に対して発表し、表彰してまいります。
 また、奉仕の取り組みを含め、さまざまな形で特色ある教育活動を積極的に行っている学校に対しましては、例えば重点支援校の指定などを通しまして、支援の充実を図ってまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 行財政改革に係ります四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、今後の行財政改革の推進についてでございますが、社会構造が大きく変化している中、活力ある東京を創造していくためには、不断の行財政改革を推進し、都政の対応力を高めていくことが必要でございます。
 都は、これまでも、組織の簡素化や官民の役割分担の見直し、住民に身近な事務の区市町村への移譲などについて積極的に取り組んでまいりました。その結果、警察、消防、教職員を含めた都の職員定数は、ピーク時の二十二万人台から十六万人台にまで大幅に減少してきておりまして、特にこの間、知事部局の職員については、五万七千人から二万六千人に半減以上減少しております。
 今後も、スリムで仕事ができる効率的な都庁の実現を目指しまして、行財政改革を推進してまいります。
 次に、さらなる内部努力についてでございます。
 不断の行財政改革を行っていく上では、みずからの内部努力が必要不可欠であります。これまで都は、職員定数の削減や監理団体改革など、国や他団体に先駆けた大胆な改革を積極的に実行し、着実に成果を上げてまいりました。
 今後も、行財政改革実行プログラムに基づきまして、四千人の職員定数の削減や人事制度改革を行いますとともに、ご指摘の日常業務における経費削減などを含めて、さらなる内部努力に取り組んでまいります。
 次に、質の行革についてでございます。
 行財政改革の推進に当たりましては、職員定数の削減やコスト削減といった量的な改革とともに、行財政運営の体質改善という質的な改革が必要でございます。
 都では、こうした観点から、国に先駆けまして、複式簿記・発生主義会計の新しい公会計制度を導入しますとともに、経営の戦略性を高めていくために、民間のノウハウを積極的に活用するなど、質の面からもさまざまな改革を行ってきております。
 今後、ご指摘のあった業務プロセスの見直しなども含めまして、行財政運営の質の向上にスピード感を持って取り組んでまいります。
 最後に、監理団体の運営についてでございます。
 都は、これまで監理団体について、団体数や都の財政支出の削減、役員退職金の廃止、役員報酬の大幅な見直し、都議会への経営実績等の報告など、行財政改革の大きな柱の一つとしてさまざまな改革を積極的に進めてまいりました。
 一方、公を担う主体が多様化する中で、監理団体が引き続きその一翼を担っていくためには、事業運営のあり方等について、都民の理解を一層高めていくことが重要であると認識をしております。
 このために、経営情報の開示手法のさらなる充実、官民を問わず有能な人材の積極的な登用、外部の監査機能の拡充などにつきまして、今後とも、各団体を積極的に指導してまいります。
   〔消防総監関口和重君登壇〕

○消防総監(関口和重君) 特別区消防団に関する二点の質問にお答えいたします。
 まず、消防団員確保に向けた取り組みについてのお尋ねですが、ご指摘のとおり、消防団活動体制の充実強化を図る上で、消防団員の確保は最も重要であります。
 団員を確保するには、団員の士気を高めるとともに、消防団活動に対する都民の理解を深める必要があります。
 このため、地域の防災拠点となる分団本部施設や可搬ポンプ積載車の整備を初め、夏服や防火服などの改善を進め、イメージアップを図るとともに、震災等大規模災害時において、重機操作や大型自動車運転などの資格が活用できる特殊技能団員制度を運用するなど、団員の士気高揚を図っております。また、インターネットなどを活用して、消防団の活動を広く都民に広報しております。
 以上のような取り組みを通じて、今後とも、事業所従業員、大学生、女性など、幅広い層からの入団促進に努めてまいります。
 次に、分団本部施設の整備促進における区等との連携についてのお尋ねですが、分団本部施設の整備につきましては、現在、東京都各局が所管している土地の活用や、区が保有している土地を提供していただくなど、用地の確保を進めております。
 今後とも、各区等との連携を一層強め、分団本部施設の整備促進に努めてまいります。

○議長(川島忠一君) 五十六番増子博樹君。
   〔五十六番増子博樹君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十六番(増子博樹君) 昨日、自民党の要請にこたえて、石原知事が三選出馬を表明されました。先ほど何やら鈴木議員から発言がありましたが、民主党は、立派な候補者を擁立し、小沢一郎代表を先頭に一致団結して正々堂々と東京都知事選挙を戦っていきますことを、改めて申し上げておきます。
 それでは、質問に入ります。
 初めに、図書館について伺います。
 ちょっと大げさにいえば、図書館は人類の英知が結集されているところであります。公共サービスの中でも派手に目立つようなものではありませんが、私たちの先人が残してくれたさまざまな知恵や知識が集積され、それらに対し自由にアクセスすることができる図書館は、社会の宝ともいえる大変重要な施設です。
 一九六〇年代以来、我が国の図書館サービスは、貸し出しを中心に行われてきました。その結果、図書館の数や規模、所蔵資料の蓄積、職員の増加、図書館利用者の増加がもたらされました。現在でも、都民の間には、図書館は本を借りるところであって、図書館職員は本を貸し出す人と考えている人が少なくないのではないかと思います。
 図書館の世界で最も有名なのがニューヨーク公共図書館です。ニューヨーク公共図書館は、四つの専門図書館と八十五の分館から成る複合体で、NPOが運営しています。年間予算は三百億円を超え、三千七百人のスタッフを要する世界最大の図書館です。
 ここは、ニューヨーク経済のエンジンと呼ばれ、多くの起業家が情報を収集し、ビジネスに生かしてきたといわれています。ゼロックスの創始者、チェスター・カールソンは、毎晩この図書館に通い、物理学者の論文の中から複写の原理を発見し、静止写真画像の特許を取得して、世界で初めて電子複写機を誕生させました。
 また、舞台芸術図書館で学んだ多くの人たちが芸術家として活躍をしています。映画界の巨匠、エリア・カザンやオリバー・ストーンも常連です。若き日のアーサー・シュレジンガー、サマーセット・モーム、トニ・モリソンらも、ニューヨーク公共図書館の利用者でした。
 市民生活の支えとしても重要な役割を果たしており、ニューヨークでは、引っ越したらまず図書館に行けといわれるほど、医療や法律、防災やテロに関する情報など、およそ市民に必要な情報はとにかく図書館に行けば入手することができると、ニューヨークの多くの市民が感じているようです。
 ニューヨーク公共図書館は、日本の図書館とは規模も内容も異なり、単純な比較はできませんが、目指すべき最高峰として、常に参考にしたい図書館であることは間違いがありません。
 先日、ソウルの国立中央図書館に行ってまいりました。通常資料以外にも、国内外の修士、博士論文や学位論文の原文が収蔵されており、その充実ぶりには目をみはるものがありました。
 韓国は、電子媒体と紙媒体を有機的に結びつけた図書館のハイブリッド化に取り組んでおり、国立中央図書館を中心に国会、科学技術院など八つの機関が参加し、統合検索ができるよう国家電子図書館が構築されています。学術書などがデータベース化され、公共図書館の端末から閲覧、印刷が可能となっています。
 中央図書館と出版団体との交渉により、出版後五年が経過したものについては無料で電子化することができますし、五年以内の出版物でも、著作権管理団体を通じて有料で入手することができます。また、教育学術情報院では、学位論文のウエブ上での全文公開が行われています。二〇〇八年には、三万八千平米の国家デジタル情報総合センターとなる国立デジタル図書館が完成の予定です。
 一方、我が国においては、国立国会図書館が納本制度を持つ中央図書館ですが、世界の中央図書館に比較して、デジタル化のおくれや、学士論文、都市、地方自治に関する資料の収集不足、不徹底な納本制度など、多くの課題を抱えており、残念ながら世界の最先端とはいえないようです。
 都立図書館は、百年の歴史を持つ我が国屈指の図書館です。国立国会図書館は立法府図書館ですから、都立図書館は行政府図書館のトップリーダーであるともいえます。
 都立図書館は、二百三十万の所蔵資料を有しているだけでなく、国会図書館に比較しても、サービスや利用について便利であることなどから、高い評価を受けているものと認識しています。
 情報化への対応や都民活動の支援、産業情報、都市に関する情報や法律、医療情報の提供など、知のインフラとして、図書館は多くの役割を期待されていると思いますが、都教育委員会は、望まれる図書館像と都立図書館に期待される役割について、どのように考えているのか伺います。
 資料、蔵書の収集は、図書館の最大の使命だと思います。平成十六年度に行われた調査で、中央図書館利用者が今後期待するサービスの圧倒的第一位が蔵書の充実です。
 都立図書館の資料費は、平成九年度の約四億六千万円をピークに、平成十六年度には一億七千万円まで六〇%以上もの激減をしています。この間、区市町村もまた厳しい財政状況でしたが、平成九年度の五億三千万円に対して、平成十六年度の四億一千万円と、約二〇%程度の減にとどまっています。
 図書の発行部数は年々増加しているにもかかわらず、厳しい財政状況によって資料費が削減され続け、収集方針、選定基準に見合うにもかかわらず、新刊書の六割程度しか収集できていないのが都立図書館の現実なのではないかと、図書館を愛する多くの人が心配をしています。
 都立図書館を日本の中核図書館として、世界に名立たるサービスが供与できるように、税収が回復しつつある今こそ、積極的に資料、蔵書の充実に努めるべきだと思いますが、ご所見を伺います。
 学校図書館は、昭和二十八年に制定された学校図書館法により、全国の小中高校に設置が推進されてきましたが、内容的には、予算面、人材面を含めて極めて貧弱としかいえない内容だと思います。
 学校図書館法の第五条には司書教諭を置くべき規定がありますが、現実に難しい面もあって、附則として置かなくてよいという一項がついており、配置がおくれました。
 学校図書館担当者は、校務分掌の係の一つとして位置づけられていますが、図書館についての専門知識を持つ人が担当になるとは限らず、しかも、学級担任や教科担任をしながらの担当となりますので、学校図書館経営は、片手間にならざるを得ないのが現状ではないでしょうか。さらには、校務分掌自体が毎年編成されることから、担当がしょっちゅうかわるということになります。
 このような状況ですから、学校図書館を整備するとともに、学校図書館への支援が重要になってくると思われます。
 国の平成十九年度概算要求の中に、学校図書館支援センター推進事業があります。これは、学校図書館機能の強化充実を図るために、教育センターなどに支援センターを置き、学校図書館に対する支援のあり方について調査研究を行う目的で行われる事業ですが、将来的には、公共図書館と学校図書館の緊密な連携も課題になってくるのではないかと思っています。
 都立図書館と都立学校、あるいは区市町村立図書館と学校図書館の連携に対する支援など、都教育委員会として、学校図書館に対し、どのような支援を行っていくことができるのか、ご所見を伺います。
 テレビやビデオ、インターネットなどの普及によって、子どもの読書離れが心配されています。読書は、心豊かな人生を送る上で大切な生涯学習です。そのためにも、子どものころから言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かにし、人生を深く生きる力をつけることができるように読書の習慣をつけることが重要です。
 都は、子ども読書活動推進計画を策定し、平成十五年度以来、子どもの読書習慣づけに取り組んできました。この間、確かな成果を上げつつあると評価をしていますが、平成十九年度でこの計画が完了します。今後、この事業の評価を行うとともに、新たな読書推進計画を策定する必要があると思っています。
 読書とともに、総合的な学習などで取り上げられた調べ学習についても、さらなる推進が必要だと思います。
 図書館には生きる上で必要な情報がたくさんあります。先ほど紹介したニューヨーク公共図書館ではよくあることですが、日本でも、弁護士を雇う資金のない人が、図書館を利用して法律を調べ、消費者金融や信販会社を相手取って過払い金返還請求を求めた本人訴訟で勝訴した例や、暴力団抗争に巻き込まれて死亡した娘さんのかたきを討つために、図書館を利用して法律を調べ上げ、図書館の仲間たちとともに、十一年間もの間、法廷で闘い続けた事例などが報道されています。図書館が知のセーフティーネットでもあることの証明であります。
 アメリカでは、小中学校段階で、図書館を利用しないと宿題ができないような仕組みもあると聞きます。日本においても、図書館を使った調べ学習を子どもたちに身につけさせる必要があると考えます。
 子どもの読書活動推進計画への対策と、図書館を使った調べ学習を身につけるための都教育委員会の具体的な取り組みを伺います。
 図書館が無料貸し本屋から、より住民の役に立つレベルの高い図書館に生まれ変わるため、重要な柱の一つがレファレンスです。レファレンスは、利用者が求めている資料を的確に探し出し、あるいは短時間で調査の回答を得るためのサービスです。これからの図書館は、住民の読書を支援するのみならず、地域の課題解決に向けた取り組みに必要な資料や情報を提供する課題解決支援機能の充実が求められます。そのためにも、住民の要望に的確にこたえられる有能な司書職員の育成は大きな課題です。
 教育委員会が先ほど報告した都立図書館改革の具体的方策にも、これまでの不十分な司書職員研修を反省し、司書の能力向上に取り組んでいくことの必要性がうたわれていますが、これからの図書館で求められる司書の資質は大変高いものがあると思います。
 アメリカでは、例えば法律分野においては、修士以上の資格を持つ図書館職員の養成を行うなど、司書により高い専門性を求めています。我が国において、現在ある司書の資格に、上級司書のようなレベルの高い司書制度を設ける必要があると思いますが、そのような制度になっていない現在は、専門的な知識を持つ人などの協力によりスキルアップを図ることが求められます。
 レファレンスサービスが重要性を増していく中で、司書の確保とスキルアップが大変重要な課題であると思います。都教育委員会は、司書の育成と一層のレベルアップにどのように取り組むのかを伺います。
 次に、動物行政について伺います。
 二〇〇三年、ついに飼い猫、飼い犬の数が千九百二十二万頭となり、十五歳以下の子どもの数を上回ったというニュースは大きな驚きでした。ペット動物は、私たちの生活の中に大きな位置を占めつつあります。
 しかし、捨てられたり処分されたりする動物が後を絶たないのもまた事実です。このような動物を減らすため、平成十五年度に策定された東京都動物愛護推進総合計画では、十年後の数値目標を、致死処分数五〇%減、致死処分の裏返しである返還、譲渡の割合を、犬については十四年度の七三・二%を八〇%に、猫については一・六%を三%に増加させるとしています。これに対して十七年度の実績値は、致死処分数は四一・七%の減、犬の返還、譲渡率が七八%、同じく猫が四・二%と、当局の努力を評価できる状況ではありますが、欧米の動物愛護先進国と比較すると、まだまだといわざるを得ません。
 行政に引き取られ、処分される動物が多いということは、これは第一義的には飼い主の責任であります。しかしながら、実際には、飼い主が病気になったり転居したりと、手放さざるを得ないというような理由で都に引き取りを依頼する飼い主が多いという話も聞きます。
 こうした状況を踏まえ、一層の飼い主責任を促すため、都は今後どのような取り組みを行っていくのか伺います。
 最近、広島市のドッグパークが倒産し、放置された約五百頭もの犬に対し、多数のボランティアが救いの手を差し伸べたというマスコミ報道がありました。手厚い保護を受け、新たな飼い主に引き取られたということで、この報道に接した多くの人が、ボランティアの活発な活動にほっとすると同時に、心強いものを感じたのではないでしょうか。
 命ある動物を少しでも多く救うため、返還、譲渡率のさらなるアップと目標達成に向けた一段の努力が必要なのではないでしょうか。そのためには、行政では手が回り切らない部分に十分対応できるように、民間のボランティアの力をかりるなど、譲渡事業を充実させ、譲渡率の増加を図っていくことが必要だと思いますが、その見解を伺います。
 以上で私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 増子博樹議員の一般質問にお答え申し上げます。
 まず、望まれる図書館像と都立図書館の期待される役割についてであります。
 お話のとおり、図書館は、ニューヨークなど世界の大都市においても、知識や情報のよりどころとして市民生活に重要な役割を果たしております。都立図書館につきましても、課題解決のために効果的な情報サービスを提供していく図書館であることが求められているというように考えております。
 このため、都市に関する情報やビジネス、法律、健康、医療に関する情報など、都民ニーズの高い分野に重点を置いたサービスを高度なレファレンスサービスとともに提供し、都民や都政に役立つ図書館として存在意義を発揮していく必要があるというふうに考えております。
 次に、都立図書館の資料、蔵書の充実についてであります。
 これまでも都立図書館では、都の広域的、総合的情報拠点として、幅広い専門的資料の収集によりまして蔵書の充実に努めてまいりました。
 今後は、都民ニーズの特に高い分野に関する資料の重点的な収集などによりまして、さらに蔵書の充実を図るとともに、オンラインデータベースなど、速報性や検索機能にすぐれた電子資料を積極的に導入し、来館者がみずから利用できる環境を整備することによりまして、都民の課題解決に役立つサービスの提供を充実させてまいります。
 次に、学校図書館に対する支援であります。
 都立図書館はこれまでも、司書教諭、学校司書の研修への講師派遣や、都立学校図書館に対して図書館再活用資料の提供などを行ってまいりましたが、今後は、蔵書目録のデータベース化のガイドラインを作成し、利便性の高い学校図書館運営の促進を図るなど、さらに支援を充実させてまいります。
 また、区市町村立図書館におきましても、学校図書館との蔵書ネットワーク構築によります図書の効率的利用の推進や、学校で活動する読み聞かせボランティアの養成など、学校と連携したさまざまな先進的取り組みを行っております。
 今後は、このような取り組みを紹介するなど、普及推進を図ってまいります。
 次に、子どもの読書活動推進計画への対応と調べ学習についてであります。
 お話のとおり、東京都子ども読書活動推進計画が平成十九年度で終了しますことから、各事業の成果を踏まえながら、新たな推進方策につきまして検討を進めてまいります。
 また、お話しの図書館を活用して行います調べ学習は、児童生徒がみずから学び、考え、よりよく問題を解決するなど、生きる力を身につけさせるために極めて有効であると考えております。
 今後、図書館の活用方法などを示しましたガイドブックを作成し、学校や区市町村立図書館に配布するなど、学び方や物の考え方を身につける調べ学習の活動を推進してまいります。
 最後に、司書の育成と一層のレベルアップについてであります。
 都立図書館におきます司書業務は、都民の課題解決支援のために不可欠な高度なレファレンスサービスを初め、図書館サービスの企画立案、資料収集計画の策定など、高度な専門性を要する基幹的業務に特化し、さらに専門性を高めていくべきであると考えております。
 このため、職責や役割に応じた能力開発の目標を明らかにしまして、新たに研修体系を整備するなど、司書の育成と資質向上に努めてまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、動物の飼い主責任についてでございます。
 東京都動物の愛護及び管理に関する条例では、飼い主は、動物の生涯にわたって適正に飼育するよう努めなければならないとされております。そのため、都は、区市町村や関係団体と連携して、パンフレットの配布や講習会の開催など普及啓発に努めるとともに、動物愛護相談センターにおける飼い主からの引き取りに当たっても、安易な飼育放棄を行わないように指導しております。
 これらの対策とともに、動物の販売時に飼育に伴う義務や心構えを確実に周知するよう事業者への指導を強化するなど、今後とも飼い主責任の徹底を図ってまいります。
 次に、動物の譲渡事業の充実についてでございます。
 動物愛護相談センターで引き取った犬や猫の譲渡を推進するためには、動物愛護活動を行っている民間のボランティア団体と協働していくことが有効であると考えております。このため、動物愛護相談センターでは、個人への直接譲渡のほか、飼育経験が豊富で、会員のネットワークを活用した譲渡活動にも実績のある団体に動物を譲り渡し、協力して幅広く新たな飼い主探しを行っております。
 このような取り組みによりまして、お話しのとおり、現行の十カ年計画で定めた犬の返還、譲渡の目標達成率が三年目で七〇%を超えるなど、高い成果を上げております。
 今後とも、より多くの民間ボランティア団体と連携を深め、犬や猫の譲渡率の一層の向上に努めてまいります。

○副議長(木内良明君) 六十六番高木けい君。
   〔六十六番高木けい君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○六十六番(高木けい君) 初めに、いわゆる駅ナカ課税など、税制上の諸問題についてお伺いいたします。
 戦後最長であったイザナギ景気を超えたといわれる現在でも、好調な大企業に比べ、東京の活力の源である中小企業を取り巻く環境はいまだ大変厳しいものであることに変わりありません。
 まず、いわゆる駅ナカ課税についてお伺いいたします。
 去る十一月十六日、都議会財政委員会ではJR品川駅を視察いたしました。近年、品川駅周辺は大きく変化していますが、改札口の内側、いわゆる駅ナカも、鉄道駅構内とは思えないほど変貌を遂げています。かつては小さな売店くらいしかなかった駅の中に、今では、規模も品ぞろえも、駅前商店街やデパートを凌駕する施設ができており、改札を出ずに買い物ができるため、視察当日も大変なにぎわいを見せておりました。
 私は、駅前が一等地なら、やはり駅ナカは特等地という印象を強く受けました。駅が便利になることは好ましいことですが、近隣商店街からは、駅でお客さんが囲い込まれてしまうという悲鳴が聞こえてきます。駅周辺の事業者と鉄道事業者が共存共栄し、地域全体が発展していけるような条件整備が必要であると考えます。
 そうした意味で、主税局が、鉄道用地については駅周辺よりも税負担が低く抑えられていたことに着目し、課税の見直しに取り組んでいることは高く評価してよいと思います。
 この見直しによって得られる税収を駅周辺の環境整備、特に、本来鉄道事業者が行うべき駅前放置自転車対策あるいは周辺商店街の活性化対策に役立てるなど、今後、都には、有効な使い道を考えた上で早急にこの施策を進めていただくことを要望しておきます。
 また、駅ナカ課税は、単に東京都だけの問題ではなく、直ちに全国各地に波及していくものと思われます。この間の都の動きは、この問題を広く社会に知らしめ、固定資産税評価の基準を定めている国をも動かし、石原知事が常々いわれている、東京から日本を変える新たなテーマにいたしました。社会的に大きな意味のあるこの駅ナカ課税を、私は、一部の反対や障害を乗り越えてぜひ実現していただきたいと考えます。
 そこで、いわゆる駅ナカ課税に対する現在までの取り組みの成果と、今後に向けての決意をお伺いいたします。
 次に、駅ナカビジネスからも影響を受けている中小企業支援について、特に税制面での支援策についてお伺いいたします。
 昨日の我が党の代表質問では、いまだ厳しい中小企業を支援するために、都独自の固定資産税等の軽減措置を来年度も継続すべきとただしました。知事の積極的に検討するという前向きな答弁を私は高く評価し、その継続を強く望むものであります。
 さらに、中小企業を支援するために忘れてはならないのが、事業承継の円滑化を目指した相続税の見直しであります。特に地価の高い東京では、固定資産税等の負担もさることながら、相続の発生により事業の円滑な承継が困難になる事例が後を絶ちません。事業資産に対する相続税課税の特例措置を拡充するなど、相続税の抜本的見直しについても、都から国に対し積極的な働きかけを行うべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 続いて、災害に強いまちづくりについて質問いたします。
 まず、木造住宅密集地域整備事業、いわゆる木密事業についてであります。
 今定例会に、平成四年に策定された東京都住宅基本条例の改正案が提出されました。改正案には幾つかの柱がありますが、木密事業については、本来、防災都市づくりという観点から取り組むべきであるものを、都があえて住宅政策という切り口でもアプローチしようとする姿勢に、極めて積極的な、不退転の決意を感じます。
 実は、現基本条例にも、木密事業はその推進をうたわれておりました。しかし、平成四年の条例制定以来この十数年間、この事業は、残念ながら大きな成果を上げてはおりません。いつ来るとも知れない首都直下地震に対して、阪神大震災の教訓を踏まえて考え出されたのが木密事業であったにもかかわらず、遅々として進まなかったのには、それなりのわけがあるはずです。その理由を都はどのように考えているのでしょうか、お答え願います。
 つまり、今回の住宅基本条例の改正を受けて、近々住宅マスタープランが策定されることになると思われますので、私は、木密事業が明らかに進んでこなかった原因を究明し、その教訓の上に立って実効性のある施策を構築していただきたいと願っているものです。
 折しも国土交通省では、密集市街地の整備を来年度の重点施策に位置づける動きがありますし、東京都も、十条地区を初めとして、来年度、沿道一体整備を重点事業とし、木密事業にも力を入れていくことが昨日の代表質問で明らかにされました。
 十年後、東京のあるべき都市像の一つとして、防災性の向上、景観の整備、快適な居住空間の創造などを目指して、木密事業はさまざまなアイデアを持って進めていくべき課題だと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、防災都市づくりを推進すべき地域には、再開発や沿道一体整備、木密あるいは区画整理事業など、さまざまな都市基盤整備の手法が重層的にかけられている地域が少なくありません。都市基盤整備を進める上で、今回改めてご提案申し上げたいことは、さきの第三定例会の方針を受けて、電線類の地中化をこれらの事業とセットにしていただき、一体的な整備に取り組んでいただきたいということです。
 例えば、木密地域の都市計画道路については、道路事業や沿道一体整備事業が計画されているところはもちろん、既存の都道についても優先的に電線類を地中化し、都が防災性の高いまちづくりを進めていることが地域住民の目に見える必要があります。
 また、このような地域にある区道等についても、電線類の地中化に当たって、財調補助率を上げるなどの施策が必要ではないでしょうか。
 要は、木密地域における電線類地中化事業を進めるために、都市整備局、建設局の垣根を越えて、政策の実現をあらゆる方向から考えていただきたいということです。都のお考えを伺います。
 一例を挙げます。防災都市づくり推進計画重点地域に指定されている北区の十条地区には、JR十条駅前から環状七号線までおよそ八百メートル、全線が木密地域を貫通している都道補助八五号線があります。この道路は、その先、都が指定する広域避難場所に通じる緊急輸送道路でもありますが、このような道路の電線類こそ、まず地域住民の目に見える形で地中化を推進し、そのことをもって木密事業などを進めるてことすべきです。
 さらにつけ加えるならば、補助八五号線は、JR十条駅から、知事がオリンピック国内候補地のプレゼンテーションでも取り上げていただいた、我が国スポーツ科学の最先端施設、国立スポーツ科学センターへの主要なアクセス道路です。さきの定例会で、オリンピック関連施設の周辺も含めて電線類の地中化に取り組むことは都の既定路線になったわけですから、このような都道は早急に地中化に取り組むべきです。
 具体的な事業計画については現在検討中ということですので、今回は強く要望するにとどめておきます。
 さて、災害に強いまちづくりには、災害を未然に防ぐ防災機能と、災害が起こった後に被害を拡大させない、あるいはできるだけ早い復旧体制を確立しておく事後の防災機能があります。木密事業が前者であるとするならば、これからご質問申し上げる地籍調査の推進は、事後の防災機能の強化につながるものと考えます。
 地籍調査は、国民の財産権の確定や土地取引、公共事業の実施、公共財産の管理、固定資産税の確定等、国民生活において社会資本整備の基盤となるものであります。しかしながら、我が国は、一九五一年の国土調査法の制定によって地籍調査事業が開始されて以来、既に五十五年を経ているにもかかわらず、その実績は全国で四六%、都市部で一八%、東京二十三区においては二・八%でしかありません。この進捗率でこのまま進むと、日本全体の地籍調査には二千四百年かかるといわれています。
 ご案内のように、土地は常時微妙に動いており、仮に首都直下地震が起こったとするならば、公共、民間の区別なく、地籍は大幅にずれることが予想されます。そうなると、災害の復旧には甚だしくおくれが生じてきます。
 そこで、土地の水平、垂直方向のずれを時々刻々と観測することができる方法として、電子基準点の設置が挙げられます。電子基準点とは、カーナビゲーションの原理を利用して、リアルタイムに正確な位置情報を得ることのできる仕組みの電子的中心点のことであります。
 平成十四年に出された社団法人東京都測量設計業協会の災害に強い首都東京を目指してという提言では、現在、都内の電子基準点は、島部を除いて七点あるとされています。電子基準点は、迅速な災害復旧のための測量に有効であるといえますが、その前提として、地籍調査が行われ、土地境界が確定されていることによって初めて効果を発揮するものといえます。しかしながら、先ほども述べたように、東京二十三区の地籍調査は二・八%の実績でしかありません。
 そこでお伺いいたしますが、特に災害後の迅速な復旧に寄与する地籍調査について、今後、都としてどのように取り組む用意があるのか、お答え願います。
 最後に、首都の防災を考える上では、震災だけでなく、風水害にも目を向けなければなりません。昨年九月四日の集中豪雨による水害は、都内各地で猛威を振るい、私の地元北区を流れる都の管理河川、石神井川もその例外ではありませんでした。北区滝野川五丁目地域では、約二十世帯の床上床下浸水、堀船地域では約四百世帯が同じように浸水被害に見舞われました。
 堀船地域の浸水は、首都高速道路株式会社が都の指導を無視し、通常考えられないずさんな工事で設置した仮設護岸の崩落によって引き起こされた人為的な事故ですが、こうしたことが起こらなくても、当日の集中豪雨は時間当たり一〇〇ミリを超えていたわけですから、五〇ミリ対応で整備されている石神井川の許容量は明らかにオーバーしていたわけです。
 東京都の河川、下水道が五〇ミリ対応を掲げて以来四十年が経過していますが、いまだその進捗率は六〇%程度であると聞いています。昨年来、一〇〇ミリ対応にという都民からの要望は切実であり、五〇ミリ対応が一〇〇%できてから一〇〇ミリ対応を考えるというのでは、これからも確実に水害は発生し、多くの都民がその被害に遭うと考えられます。
 そこでお伺いしますが、このような水害実例のある河川は、重点的にその防止策を考えてみる必要があるのではないでしょうか。例えば石神井川は、河川全体を一〇〇ミリ対応につくりかえるのではなく、当面、全体の流量を適切に管理していくという考え方で、調節池を適切に配置していくなどの方策があるのではないでしょうか。
 石神井川は、小平市の小金井ゴルフ場付近に源を発し、北区堀船で隅田川に合流する全長約二十五・二キロメートルの河川ですが、水量調節のための調節池は上流部に四カ所あるのみで、最も下流の富士見池調節池でも、水源から約五キロメートルと高い位置にあります。したがって、それ以降隅田川に合流するまでの約二十キロメートル、つまりこの河川の五分の四には、調節池などの水量調節の機能がありません。このような課題を抱えた河川の水害対策にもぜひ知恵を絞っていただきたいと思います。都の見解を伺います。
 以上で私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 高木けい議員の一般質問にお答えいたします。
 相続税の見直しについてでありますが、我が国の産業の基幹を支える中小企業の存続は、地域経済の活性化のためにも極めて重要であります。これは、業種は異なりますけれども、国家的に考えると、農業も同じような問題にさらされていると思います。
 しかしながら、地価の高い東京において、相続税の負担が、高い技術力を持った中小企業の円滑な事業承継や地域のまちづくりの妨げとなっている側面もありまして、こうした問題は一刻も早く解決しなければならないと思います。
 私もかつて何度か視察いたしました、東京の、非常に優秀な技術を持って発明もしている中小企業が、相続の問題でどうにも先行き見通しがつかないので、自分の代で廃業するという告白を聞きましてショックを受けましたが、そもそも私、国会議員時代、大蔵省の高官と話しましたときに、相続税の問題について彼らの意見を聞きましたら、日本は自由経済社会だから個人財産の形成は認めるが、これがだんだん雪だるまみたいになって、要するに代を経て肥大していくのは許せない、理想的には、三代たったら相続で初代のつくった資産がゼロになるのが望ましいというのを聞いて、私はたまげました。こんなばかな発想は共産主義の国でもしないと思います。
 それで、非常に強い問題意識を持ちましたが、特に優良な技術を持っている、先端的な開発もしている中小企業がこの問題にさらされているということは、本当に国家の安危にかかわる問題だと思っております。
 どういうふうに相続税を改正していくか、これは国会の問題でしょうが、やっぱり都からも、中小企業というものが多い都からも、事情を踏まえて建言、注文しまして、私案というか、思いつきではありますけれども、相続税の対象の識別というものも、やっぱり当然すべきではないかという気がいたしております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔主税局長菅原秀夫君登壇〕

○主税局長(菅原秀夫君) 鉄軌道用地に係る固定資産評価の見直しについてお答えを申し上げます。
 商業施設のある駅と近隣の宅地との間では、固定資産評価に著しい不均衡が生じておりまして、都といたしましては、その是正策を打ち出したところでございます。
 こうした都の動きを受けまして、国も現行の評価基準の見直しに着手いたしまして、今年度中にも、都の主張を踏まえた形で評価基準の改正を行う見込みとなっております。
 都といたしましては、税負担の公平の確保はもとより、近隣商店街を初め地域全体の均衡ある発展を期することにもなることから、早期に見直しを行ってまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 災害に強いまちづくりについての四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、木造住宅密集地域整備事業の進捗についてでございますが、木密地域は、狭小な敷地や道路に十分接していない建物が多いことに加え、土地や建物に関する権利関係がふくそうしていることなどから、建てかえが進みにくい状況にございます。
 また、この地域で実施している木密事業は、まちを全面的に改造するのではなく、部分的な改善を積み重ねていく事業でございます。これまで、広範な地域を対象に、住民の建てかえ意向に合わせて、建物の不燃化や道路の拡幅などを進めてきたことから、全体としては事業効果の発現に時間を要しているものでございます。
 次に、木密地域における整備の促進についてでございますが、地域の防災性を早期に向上させるため、防災都市づくり推進計画で整備すべき地域を重点化し、延焼を防止する幹線道路や、避難、消防活動を円滑にする主要生活道路などの基盤整備を進めております。
 また、十条地区で取り組む予定の沿道一体整備事業など、整備効果の高い事業を活用して、事業のスピードアップを図ってまいります。
 それに加えまして、新たな防火規制や地区計画など、建ぺい率や容積率、斜線制限の緩和が可能な仕組みについても活用し、不燃建築物への建てかえを促進しております。
 今後とも、効果的に事業手法を組み合わせ、住民の協力を得ながら、地元区と連携し、木密地域の安全性の向上に積極的に取り組んでまいります。
 次に、木密地域における電線類地中化についてでございますが、災害時の避難や救急・消防活動を円滑に行う上で、電線類の地中化は有効な手段であると考えております。街路事業や、既に東池袋で着手している沿道一体整備事業など、都市計画道路を新たに整備する際には、同時に電線類の地中化を実施することとしております。
 一方、既存の都道においては、緊急輸送路など優先的に整備する路線を指定し、段階的な整備を進めております。
 また、木密事業においても、北区西ヶ原地区の防災公園周辺などで地中化を実施しているところでございます。
 今後とも、関係局及び地元区と連携し、木密地域における電線類の地中化の促進に努め、防災性の高いまちづくりを推進してまいります。
 最後に、地籍調査の今後の取り組みについてでございますが、本調査は、土地の境界や権利関係を明確にし、道路整備など公共事業の円滑な推進や災害復旧を迅速に進めるために重要なものであり、区市町村が主体となって実施しております。
 都内では、現在、三十三団体が調査を行っており、来年度は新たに四団体が着手する予定でございます。
 また、国においても、地籍調査を推進するため、二百メートル間隔の測量基準点の増設を進めております。
 都としては、このような機会をとらえ、区市町村への働きかけを強化するなど、調査のスピードアップに努めてまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 石神井川の水害対策についてでございますが、石神井川では、昭和三十年代後半から護岸整備を段階的に進めるとともに、飛鳥山にトンネルを築造して新たに分水路を整備するなど、水害対策に積極的に取り組んでまいりました。
 これまでに、北区の隅田川合流点から練馬区の山下橋までの区間につきましては、一時間五〇ミリの降雨に対応する整備が完了しております。現在、山下橋上流部において護岸の整備を推進するとともに、既に整備済みの調節池を活用するなど、水害の軽減に努めております。
 また、近年の局所的集中豪雨に対応するため、流域や地域特性に応じた東京都豪雨対策基本方針を、関係局と連携し、今年度中に策定する予定でございます。
 今後は、石神井川についても、調節池などさまざまな具体的方策の検討を進めるとともに、引き続き護岸の整備を推進するなど、水害対策に万全を期してまいります。

○議長(川島忠一君) 二十八番山口文江さん。
   〔二十八番山口文江君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○二十八番(山口文江君) 初めに、都政運営について伺います。
 知事は、オリンピックをてこに、今後明らかにする二〇一六年の東京の都市像を都市戦略と位置づけ、平成十九年度重点事業は、この長期的な都市戦略のキックオフとしています。
 生活者ネットワークは、これまでも、目指す都市像が示されないまま、政策の総合的、体系的な展開が弱いと指摘してきましたが、オリンピック招致に当たってようやく長期構想の必要性を認識されたのではないかと思います。オリンピックに向けて喫緊に取り組むべきとしている環境対策や都市基盤整備だけでなく、東京の未来を担う子どもたちが希望を持って生きられるよう、子育て、教育などについても、オリンピックと同様の強い意欲を持って、全局を挙げて取り組んでいただきたいと思います。
 重点事業に掲げられたそれぞれの事業を見ると、一つの局だけで対応できるものはほとんどありません。環境問題や子育て支援など、今求められている都政の課題は、一つの局、一つの分野、さらにいえば行政だけで解決できないことは明らかです。都民の視点に立って、行政の縦割りを乗り越えた政策展開が必要と思いますが、知事の見解を伺います。
 また、重点事業は、市民と行政のパートナーシップで取り組む必要があります。行政の施策が一方的なものになるのではなく、都民が都政への関心を高めるように、これまでやってきた成果をきちんと都民に示して施策を推進すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、認定こども園について伺います。
 就学前の子どもについては、幼稚園と保育園の二つの施策体系があり、幼保一元化、幼保一体化については、長く議論が行われる中で、二〇〇三年、地域のニーズに応じ、就学前の教育、保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の設置を検討するという方向が示されました。この構想を具体化し、法制化されたものが認定こども園です。
 少子化問題、就労形態の多様化、待機児童への対策、子育て不安といった社会現象への対策として、都は既に認証保育所を独自の補助制度で実施し、待機児を減らすことには一定の効果を上げていますが、保育の質、保育料の適正化等については、まだ十分な理解を得られているとはいえません。保育に欠けるかどうかで子どもを区分するのではなく、今こそ子どもの最善の利益を優先し、子ども自身が育つ力を引き出すための教育、保育のあり方について根本的な議論が必要です。
 そこで、都は、就学前の保育、教育を提供する認定こども園についてどのように考えて取り組もうとしているのか伺います。
 いじめが原因と思われる子どもの自殺が相次ぎ、大きな社会問題となりました。東京都教育委員会では、今回の自殺予告に対して、緊急措置として二十四時間受け付けの専用電話を設置しましたが、多数の相談や情報が寄せられ、幸いに自殺に至る事例は生じませんでした。
 その後、教育相談センターでの電話相談に移行していますが、残念ながら時間も短く、フリーダイヤルではありません。民間では、平成十年ごろからチャイルドラインなどの電話相談が始まり、全国に広がっています。悩みを持つ子どもにとって多様な相談窓口が必要であり、子どもみずからが相談するには、当然無料にすべきです。
 一方、福祉保健局においては、平成十年から子どもの権利擁護専門相談事業を実施しています。小中学生を初めとして、年間の相談件数もかなりの数に上り、実績を上げていると聞いております。このような機関を常設してきた都の姿勢は高く評価されるものです。 そこで、子どもの権利擁護相談事業について、その成果を伺うとともに、今後、電話回線や電話相談員をふやすなど、機能をさらに強化し、総合的に子どもの権利を守るオンブズマンとして、その活動をもっとPRすべきではないかと考えますが、見解を伺います。 今回のいじめによる自殺への対応として、政府の教育再生会議が発表した緊急提言では、いじめを放置した教員は懲戒処分、加害者側には登校停止や社会奉仕などが挙げられていますが、本当にこのような対応でいいのでしょうか。子ども自身が解決する力をつけない限り、いじめによる自殺などを防ぐことは困難です。
 イギリスなどでは、中高生がピアカウンセリングを行い、いじめ防止に効果を上げているといわれています。同年代の若者が相談に乗る立場に立つことで、他人の気持ちを理解し、共感する力がついていくと考えられます。
 生活者ネットワークは、子ども自身が身を守る方法を身につけたり、嫌だという意思表示をするトレーニングのシステムを取り入れるよう提案してきましたが、大阪府教育委員会は、来年度から、いじめ防止対策として、暴力から身を守る力を引き出す教育プログラム、子どもエンパワーメント支援指導の導入を決めたということです。いじめによる自殺などの痛ましい犠牲者をなくすためには、対症療法だけではなく、根本的ないじめ未然防止対策が必要であると考えます。都としてどのように取り組んでいくのか伺います。
 最後に、エイズ対策についてですが、世界的に見ると、先進国といわれている国々ではHIV感染者が減少しているにもかかわらず、日本における感染者は年々増加しています。特に十代後半から二十代前半の若者の感染が拡大しています。昨年報告された感染者及び患者の報告数千百九十九件の約三五%に当たる四百十七件が東京の件数となっています。こうした状況に対して早急な対応が求められる東京都の役割は重要です。しかし、エイズ対策に係る都の予算は、ここ数年減少しています。
 都はこれまでも、ポスター、パンフレットなどの配布やインターネットによる情報提供などを行ってきていますが、特に十代など若い世代を対象として、正しい知識や感染予防の取り組みを進めることが求められています。そのためには、NPOなど民間団体との協働で、繁華街でのイベントや街角相談、マスコミを利用したPRなどのキャンペーンが必要と考えますが、見解を伺います。
 東京では、二十三区の全保健所、南新宿検査・相談室、多摩地域では三保健所でHIV感染の検査と相談に対応しており、検査件数、相談数も年々ふえています。病院で検査するのとは違い、無料の上、匿名で検査が受けられるため、多く利用されています。しかし、匿名ゆえに、判定が陽性となった人へのフォローは個人の意思に任されてしまい、感染ルートの判明や感染防止ができない状況です。
 そこで、感染が明らかになった人への対応として、告知の際に、二次感染を防ぐための対応、生活や健康管理の支援が必要ですが、見解を伺います。
 都議会において、行き過ぎた性教育の名のもとに政治が教育現場に介入し、必要最低限の性教育も萎縮させてしまいました。若者のHIV感染の増加は、正しい性の知識がないまま成長している子どもの現状を浮き彫りにしています。中学、高校での性教育が最も必要であり、エイズ対策の現場である福祉保健局との連携を深め、効果的なエイズ対策を進めるべきです。
 教育庁では、性感染症・エイズ予防の一環として、都立高校での新たな取り組みを実施していると聞いています。この実施状況と、今後の福祉保健局との連携も含めた対策について伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山口文江議員の一般質問にお答えいたします。
 行政の縦割りについての問題でありますが、かつて哲学者のヤスパースが、いかなる歴史もすべて重層的なものだということを申しました。重層的というのは、いろいろ解釈があるでしょうけれども、物事が単純じゃなしに複合的である以上に、その複合が複合に重なった重層性ということだと思いますけれども、私たち政治が扱っている現実も、あすになればきのうの歴史でありまして、つまり、私たちの扱っている現実も重層的なものであります。
 しかるに、我が国の役所では、長年にわたって官僚主義が縦割りの行政で続けられてまいりました。こうした縦割りの弊害を打ち破り、機動的・戦略的な行政運営のできる執行体制を構築するため、都では知事本局を設置いたしました。
 世界に先駆けてCO2半減都市モデルの実現を目指す環境対策や、仕事と子育ての両立を初めとする子育て支援など、重点事業は、まさに組織の壁を超え、縦割りを超えた、複合的、重層的に政策展開を図るためのものであります。
 今後とも、都は、現場を持つ強みを生かしまして、局をまたいで、あらゆる分野で重層的に効果的な政策を展開していきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 二つの質問にお答え申し上げます。
 いじめ未然防止に向けての今後の取り組みについてでございますが、いじめは決して許されないことであります。どの学校でも起こり得ると、こういう前提に立ちまして、学校教育に携わるすべての関係者が改めてこの問題の重大性を認識し、日ごろからいじめの兆候をいち早く把握し、迅速に対応していくことが重要でございます。
 十一月の八日から十二日まで実施しましたいじめ等問題対策室の緊急電話相談では、子どもや保護者からの相談のほかに、教職員の不適切な対応、家庭の教育力の向上の必要性など、さまざまな意見が寄せられました。
 今後、これまで東京都教育委員会が蓄積してきましたいじめ問題の解決の方策に加えまして、緊急相談の新たな相談内容等を整理、分析しまして、資料にまとめ、いじめの未然防止に向けて、教員研修だけでなく、保護者会等でも活用するよう働きかけてまいります。
 次に、都立高校の性感染症・エイズ予防についての取り組みですが、学校におきます性教育は、学習指導要領に基づき、発達段階に即して性に関する基礎的な学習内容を正しく理解させ、適切な意思決定や行動選択ができるよう充実していくことが重要であります。
 都教育委員会は、若年層のHIV感染者が増加している現状を踏まえまして、福祉保健局の協力を得まして、性教育の手引やエイズ理解・予防に関するパンフレットを作成、配布しまして、性教育、エイズ教育の充実を図ってまいりました。
 また、平成十七年度から、東京都医師会や東京産婦人科医会の協力のもと、希望する都立高校に産婦人科医を派遣しているところでありますが、今後も引き続きこの事業を推進するとともに、今年度新たに、保健所と都立高校との連絡会を地区別に開催するなど、地域保健機関との連携を強化した取り組みを進めてまいります。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 重点事業の進め方についてのご質問でございますが、重点事業につきましては、昨年、いわゆるPDCAサイクルを強化するため、三カ年の展開をアクションプランとして示し、毎年度検証を経て改定することといたしました。
 そこで、今回の平成十九年度の重点事業は、十八年度重点事業のうち可能なものについて検証を行い、実績と評価を明らかにしたところでございます。
 都といたしましては、引き続き全庁的な視点に立って進行管理を行っていくとともに、こうした仕組みをさらに充実し、重点事業を着実に推進してまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 子ども対策など四点の質問にお答えいたします。
 まず、認定こども園に対する取り組みでございますが、認定こども園は、就学前の子どもに対する教育及び保育の一体的な提供や、地域の子育て支援の機能を担うものであり、地域の多様な保育、教育ニーズに柔軟に対応することが期待されております。
 こうしたことから、都は、認定こども園が都民ニーズにより的確に対応したものとなるよう独自の認定基準を定めるとともに、その機能を十分に発揮できるよう必要な財政支援を行っていく予定でございます。
 次に、子どもの権利擁護専門相談事業についてでございますが、この事業では、子どもや親からの悩みや訴えを、相談員がいわゆるフリーダイヤルで直接受けるとともに、いじめや体罰などの深刻な相談に対しては、専門員が個別の支援を行っております。
 相談件数は、平成十年度の事業開始以来、約一万二千件に上っており、その約八割は子ども本人からの相談であります。すべての相談のうち、専門員が実際に家庭や学校への訪問等を行い、問題解決に当たった困難ケースは約三百件となっております。
 都では、毎年、都内の小学校高学年から中学生、高校生を対象に、事業を紹介したPRカードを配布するとともに、学校や関係機関へリーフレットを送付するなど、積極的な周知に努めておるところでございます。
 次に、エイズに関する普及啓発についてでございます。
 HIVの感染拡大を防止するには、特に感染者の報告数が増加している若い世代を対象とした普及啓発が重要でございます。
 このため、都ではこれまでも、十代、二十代の若者がエイズに対する理解を深め合うピアエデュケーションや、エイズ予防月間を中心としたキャンペーンなどを実施してまいりました。加えて、本年の六月から八月まで、池袋に、地元区やNPOなどの協力を得て、若者がエイズについて主体的に考え、学び、交流する普及啓発の拠点を設置したところでございます。
 今後、こうした拠点の充実を図るとともに、予防に関する情報発信を繁華街で実施するなど、若者を対象としたより一層効果的な普及啓発の実施に努めてまいります。
 最後に、HIV検査についてでございますが、保健所などにおける検査では、結果の告知の際、医師や保健婦がカウンセリングを実施しております。特に、感染が明らかになった方に対しては、不安を和らげるよう留意しながら、エイズに対する正しい知識や治療方法、二次感染の防止を含めた生活上の注意などについて十分に理解できるよう、きめ細かく対応しております。また、医療機関で確実に受診できるよう必要な支援を行うとともに、悩みや差別などについて相談できる機関や団体の情報も提供しております。
 今後とも、検査を受けた方々の状況に応じて、助言、指導を適切に行い、特別区とも連携し、HIVの感染拡大防止と感染者の健康管理を支援してまいります。

○副議長(木内良明君) 六番後藤雄一君。
   〔六番後藤雄一君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○六番(後藤雄一君) 社会のモラルが崩壊していく中、うそをつかないこと、正しいことを行うことと育てられた団塊の世代の私にとり、本当に公僕としての公務員の資質に期待をするところは大変大きいのです。このことは、心ある都民ならば共通して感じることだと思います。
 新聞でも、ストーカーをされている娘さんが悩んだ末に警察に助けを求めたが、警察は何ら対応してくれなかったという報道や、子どもの死亡に不可解な事実があっても、それを見逃して第二の子どもの犠牲が出たなどとの報道がなされています。この報道は、私はむしろ警察に期待している国民の嘆きであると感じています。
 そこで、私の体験している事実について、知事の見解をお尋ねします。
 この第一が警視庁で体験をしたものです。
 去る十一月二十四日、目黒区議会で、政務調査費に関する違法、不当な支出があったとして、目黒区長に対し、政務調査費に外部監査の実施と刑事訴訟法に基づき告発を行うべきとの質疑がなされました。この一般質問の中で、自民党の区議会議長と公明党区議団の政務調査費についての指摘があったのですが、公明党の区議団六名は、政務調査費約七百七十三万円を区に返還をし、辞職をしました。また、目黒区議会の議長も、政務調査費から一部を削除して、議長職をやめました。
 このような背景の中、私はオンブズマンの方と告発をすべく、警視庁に告発文と証拠の書類を持って、前もってアポイントをとって出向きました。私が持参をした領収書は情報公開で正式に入手したものであり、その領収書の中には日帰り旅行のバス代から昼食代、さらには日帰りの温泉代などが含まれており、それらが政務調査費で支払われていたのです。また、その中には、抱き枕などの領収書や、東京では走っていない沖縄のタクシーの領収書が出てきたのです。
 そして、平成十七年五月、六月、七月、八月の仮設電話の領収書、さらに、北新宿にある配達弁当屋さんから、平成十七年六月二十四、二十五、二十六、二十七、二十八日にお弁当が配達されていることが判明したのです。
 目黒区議会の一般質問の中で質問に立った区議会議員は、平成十七年六月二十四日から始まった都議会議員選挙に関係があるのではないかと、質問を展開していました。
 私は、これらの領収書を自分の足で確認しました。その上で警視庁に持参をしたのですが、結果としていただいた回答は、忙しい、時間がないので当分できないという内容でした。
 石原知事は、いろいろなアイデアで都民にみずからの姿勢を示されています。現在は、都バスを初め、宅配便のトラックなどに、知事の発案の、犯罪を見逃さないという歌舞伎顔のステッカーが張られています。また、テレビでは、高齢の方が数百円の万引きをして、警察に突き出されている場面が報道されています。このような場面を見ながら、何か腑に落ちない感覚に襲われました。
 それは、私が今体験をしている、政治家の金絡みの疑惑に対する警察への不信感からであることに気がつきました。私は、目黒区の区議会議員が、自家用車の車検代や自分以外の電話の使用料を政務調査費で支払っている事実、領収書を変造しているなどを警察に証拠をつけて告発しているのに、忙しい、時間がない、当分できない、また、その時点で調べるかどうかもわからないとの返事を受けているからと気がつきました。
 私は、オンブズマンとして約二十年間、税金のむだ遣いを減らすために闘っています。その中で最大の問題は、一都民には限界があるということです。警察のかわりはできません。最終的には警察が関与していただくしかないのです。
 目黒区で起きていることは、区議会議員への不信から始まり、政治家への不信になっています。さらに、警察への不満と不信感が出てきています。政治家の金絡みの事件は、捜査は難しいとは思いますが、警視庁に頑張ってもらわなければなりません。警視総監のお考えをお聞かせください。
 平成十七年七月の都議会議員選挙には、政務調査費の領収書の添付を行うかとのマスコミの質問に対し、多くの都議会議員は行うと答えていますが、いまだに実現していません。都議会議員の政務調査費は、日本で一番高い一カ月六十万円、年間七百二十万円です。
 マスコミでも連日、品川、目黒の政務調査費について取り上げています。こういう状況にある中で、知事は、政治家と政務調査費の関係についてどのようなお考えをお持ちですか、お尋ねします。
 知事の後押しで、何とか来年からは領収書の添付の義務づけへの道を切り開きたいのですが、力をおかしいただけないでしょうか。どうぞお願いをいたします。
 次に、都立高校の備品の購入についてお尋ねをします。
 平成十八年十月末、マスコミより教育庁に談合情報が寄せられ、開札を中止し、調査後に入札をした事件がありました。行革一一〇番にも同じ告発があり、仕様書を取り寄せ、調べました。
 一件は、更衣箱のほか四点の買い入れ、つまりロッカーとげた箱の入札です。それぞれの仕様書には一者だけの設計図面がつけられ、規格、仕様の欄には、その他の明細は別紙図面のとおりとすると書かれています。ロッカーとげた箱がなぜ規格品ではいけないのか、お伺いをします。
 また、ロッカーの上に三角形の屋根です。三角形の屋根を設置するという特殊な仕様まであります。掃除がしやすくなるという理由ですが、ほかに理由があったらば、お伺いをします。
 ほかに、教師用実験台の仕様書にも、一者だけの設計図面が添付されています。しかし、平成十七年十一月、本件同様の談合情報が寄せられた事件がありました。その際、総務部長名で、談合防止のため、仕様書の図面はみずから作成したもの、または複数の図面を添付すると通知が出されています。改善するために通知を出しているはずですが、なぜ現場は守らないのか、お伺いをします。
 おまけがありました。この調査の過程で、業者から葛飾地区総合学科高校(仮称)開設準備室にあてた一通の文書が届きました。この文書は平成十八年二月二十二日付の見積書です。図書室の机、いす、本棚などの九点が記載されているものですが、関係者が下見積もり、下みつと呼んでいる代物です。
 談合防止のために、入札物件の情報は事前に業者に教えることはしないはずです。しかし、下見積もりが存在しているということは、担当者が業者に物品の、この下見積もりには、数量、単価、納期までが記入されています。
 また、行革一一〇番に送られてきた下見積もりには、業者の社印と代表印が押してある、学校で保管してある下見積もりには印鑑が押していないというのです。担当者は、メモなので情報公開の対象にはならないといいます。説明責任の観点から公開すべきではないかと考えますが、お伺いします。
 そして、学校の机、いす、ロッカーなどは、特殊なものを除き、規格品で十分です。下見積もりを原則禁止すべきだと思いますが、お伺いをします。
 この契約ですが、百万円を超える随意契約でした。見積もりをした業者名、見積金額がわかる見積経過書があるはずです。しかし、見積経過調書は作成されていないことが判明をしました。本来なら、契約した二月の時点で作成しなければならない文書です。こちらも、平成十二年、契約管財課長名で見積経過書の作成を義務づける通知が存在しているのです。
 また、平成十八年七月、ある下町の高校で下見積もりが行われました。落札をしたのは別の業者です。しかし、調べると、下見積もりを作成した業者の担当者と契約した業者の営業マンが同一人物、一人二役を推測させる文書があります。
 また、業者の名刺を調べると、同一人物が二社の名刺を持ち、また会社が同一の住所、そして、二つの業者が同じ入札に参加しているケースもあるんです。
 行革一一〇番が持っている証拠は事前にお渡ししてあります。業者間でこのような不適切なことが行われていることを放置するわけにはいかない。業者間のつながりなどを審査するように、業者基本情報の登録のあり方を変えるなどの方策を講ずるべきと考えます。見解を伺います。
 行革一一〇番に寄せられる告発は、そこいらじゅうを駆け回って、最後に来るものが多いのです。その意味で、今回の質問も、当事者である教育委員会の担当部署は十分承知していると思われます。その意味で、行政が聞く耳を持てば、私のところに告発は来なかったでしょう。
 石原知事は、犯罪を見逃さないという、犯罪に対する姿勢をはっきり示されています。これが契約現場の現状です。犯罪となる前に予防措置をとるべきではないでしょうか。知事に見解をお伺いします。
 都営住宅の共益費の徴収方法についてお伺いをします。
 都営住宅にお住まいの方から、自治会の共益費について相談が寄せられました。都営住宅に入居する際に配られる「住まいのしおり」の共益費の項目には、都が家賃と一緒に徴収をするエレベーターの保守管理費と、自治会が徴収をするエレベーターの電気代、ごみ処理代などがあります。
 東京都住宅供給公社に実情を聞くと、共益費を支払わない居住者がいて困っている自治会がふえているというのです。エレベーターの保守管理費も電気代も共益費です。保守管理費を都が徴収しているのですから、電気代も徴収することは可能なはずと考えますが、いかがでしょうか。
 また、自治会費の繰越金が一千万円を超えている自治会があり、会計に関心を持った居住者が会計帳簿の閲覧を求めても応じない。そこで、最高裁判例に従い、自治会費のうち共益費部分だけを払うと申し出たが、受け取ることを拒否する自治会長がいるというのです。共益費は、徴収する自治会、支払う入居者の双方で問題を抱えているのが現状です。
 自治会役員の負担を減らし、居住者とのトラブルを防ぐためにも、共益費のうち、エレベーターなどの電気代だけでも家賃と一緒に徴収をするべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 以上です。ありがとうございました。
   〔警視総監伊藤哲朗君登壇〕

○警視総監(伊藤哲朗君) 後藤雄一議員の一般質問にお答えします。
 政治と金をめぐる不正についての告訴、告発については、特に複雑な事案に関しましては、受理要件に合致しているか十分に吟味する必要がありますが、この種事犯は、政治の公平性、公正性を著しく損なうものであるところから、警視庁といたしましても、厳正に対処してまいる所存であります。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、都立高校の備品の購入についてでありますが、都立高校におきましては、学校の特色、生徒の状況、学校経営上の観点等を踏まえまして、契約の透明性や経済性を確保しつつ、学校長判断で、規格品のほか特注品など必要な什器を購入しております。
 三角形の屋根の乗ったロッカーにつきましても、掃除がしやすくなるという理由だけではなくて、生徒指導上や安全確保の観点等から、学校長判断により購入したものでございます。
 次に、通知の遵守についてでございますが、ご指摘のとおり、一部の学校で通知の趣旨が遵守されなかったことは大変遺憾であります。このようなことが生じないよう、改めて学校経営支援センターや都立学校等に対しまして、仕様書等の作成に係る取り扱いについての通知や、随意契約の見積経過の公表についての通知について周知を図り、遵守の徹底を図ってまいります。
 次に、見積書の情報公開等についてでありますが、参考見積書を徴取している場合、開示請求があれば開示していくことは当然のことであります。学校におきましては、教室の形状など施設の状況に応じた備品類や特別規格の什器の購入が必要となります。このような特注品等の発注に際しましては、契約手続の適正化を図る観点から、メーカー等から参考見積書を徴収することが必要でございます。
 平成十八年九月に、参考見積書を徴収する場合には、原則として複数の業者から徴収するよう通知し、公平、公正な執行に努めるよう周知徹底を図ったところでございます。
   〔財務局長谷川健次君登壇〕

○財務局長(谷川健次君) 政務調査費など四点のご質問にお答え申します。
 まず、政務調査費の考え方についてでございます。
 政務調査費は、議員の調査研究に資するため、必要な経費の一部として交付するものであり、地方自治法に基づき制度化されているものでございます。
 都議会においても、東京都政務調査費の交付に関する条例施行規程により各会派に交付されており、議員が調査研究を行うために機能しているものと考えております。
 次に、領収書の添付についてでございます。
 政務調査費は、平成十三年の改正地方自治法に基づき制度化され、東京都政務調査費の交付に関する条例及び同施行規則等に基づいて執行されております。
 領収書等の添付につきましては、政務調査費が各会派の議員の調査研究に関するものであることから、都議会全体の判断を踏まえ、対応していくものと考えております。
 次に、業者基本情報の登録のあり方についてでございます。
 東京都の電子調達システムの登録業者数は二万を超えており、多数に上る営業担当者全員を常時把握し続けることは、現実的には困難であります。ただし、違法、不正な行為があれば、発見の都度厳しい対応を行っております。
 今後とも、入札、契約における公正性、競争性の確保に努めてまいります。
 最後に、不正行為の予防措置についてでございます。
 東京都は、指名停止の強化や電子入札の全庁展開など、談合等の不正行為の予防措置を積極的に取り入れているところであり、違法、不正な行為が発生した場合は、断固とした厳しい対応で臨んでおります。
 また、現行契約制度の的確な運用についても、引き続き契約事務協議会などを通じて、全庁に周知徹底を図ってまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 都営住宅の共益費についての二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、都営住宅の電気料金の徴収についてでございますが、お話のエレベーターの保守管理は、安全性の確保などの観点から都が建物と一体的に実施しており、このうち日常的な運行に要する経費を共益費として居住者から徴収しております。
 一方、団地の共用部分の維持管理費用である電気料金の徴収については、都が行う場合は別途事務経費が必要になることから、自治会等がみずから行うこととしており、このことを入居時に配布する「住まいのしおり」に記載し、周知しているところでございます。
 次に、都営住宅のエレベーターの電気料金のみの徴収についてでございますが、仮に都が自治会等にかわって行う場合には、新たに徴収や支払いの事務経費が必要となるほか、エレベーター以外の電気料金に関する徴収、支払い事務は依然として残ることから、自治会等の事務的負担の軽減にはつながらないものと考えております。

○議長(川島忠一君) 九番そなえ邦彦君。
   〔九番そなえ邦彦君登壇〕

○九番(そなえ邦彦君) なぜか、どういうわけか、いつも大トリを務めさせていただいております。都議会民主党のごく一部の方々のかたくなな入会拒否のために、やむなく一人会派を余儀なくされております民主フォーラムのそなえでございます。
 時間がもったいないので、本題に入りたいと思います。
 低迷を続ける日本経済の復興には、首都東京の経済の活性化が不可欠であります。とりわけ、中小企業の安定的成長や地域の振興は、その基礎となるものであります。
 都でも、これまで中小企業に対しさまざまな経営支援、技術的支援等を行ってきております。しかしながら、経済産業省の商業統計を見ましても、小売業の事業所数を見ると、昭和五十七年には百七十二万一千件あったのが、一貫して減少し、平成十六年には百二十三万八千件と、ピーク時の約七割にまで落ち込んでいるということであります。
 また、東京商工リサーチの調べでも、東京の中小企業の倒産件数は、過去十年間、年二千から三千件台の割で続いております。私の地元の商店街も、都の新・元気を出せ商店街事業で整備をしたり、イベントをしたりして努力をしておりますが、なかなか元気が出ずに、後継者の問題もあると思いますが、残念ながらシャッターを閉める店がふえております。それを見ましても、今こそ早急に金融支援を含めきめ細かな対策が必要であると考えております。
 そこで、何点かお伺いしたいと思います。
 都は、本年四月、産業支援体制の再整備に関する基本構想を打ち出すとともに、去る十一月三十日には、平成十九年度重点事業として、多摩と区部の産業支援拠点の整備を着実に推進するとの方針を示しました。
 多摩地区には、エレクトロニクス分野など高度先端技術を有する中小企業や、それを支える基盤技術を有する企業も数多く存在しております。こうした中小企業の技術力をさらに高めて、多摩地域の産業を活性化させる方向で整備を促進させるべきだと考えますが、まず、多摩地区の産業支援拠点の再整備の具体的な内容と期待される効果についてお伺いいたします。
 また、それと同時に、いかにその活用を図っていくかが重要となってきております。
 多摩地域には、中小企業の技術開発に活用可能な研究を行っている大学や、民間の試験研究機関が数多く立地しております。私のすぐそばにも東京農工大学があり、公学の連携を行っております。
 今後も、多摩産業支援拠点とこれらの機関がより連携強化することにより、新たな技術がこれまで以上に創出されることが大いに期待されます。また、その新技術を中小企業に移転することで、多摩地域の中小企業の技術革新は一層促進されると思われます。そこで、多摩産業支援拠点における今後の産学公連携の取り組みについてお伺いします。
 産業の活性化には、当然のことながら、地域の産業を支えている小規模事業者の存在が重要であります。都内には約七十二万の事業所がありますが、そのうち小規模事業所が約四十八万といわれております。大手の企業だけでなく、これらの小規模企業がやる気や意欲を持って企業活動を展開して初めて、東京の経済は全体として活性化していくのであります。
 そして、各地域の小規模事業の経営改善に大きな役割を担っているのが商工会議所や商工会の存在であります。商工会議所などのきめ細かな相談や経営指導が、地域の小規模事業者の経営の安定化や経営改善に大きく貢献しており、都はこれまで、そのために商工会議所などに対する支援を行ってきております。
 しかしながら、いわゆる三位一体改革により、本年度から商工会議所等への経営改善普及事業の国庫補助が廃止され、都が単独で支援することとなったようであります。そのような状況下で、私の地元の商工会議所の方からも、十九年度に都の予算が確保されるのかどうかとの不安の声も聞かれております。
 そこで、小規模事業者への支援に係る商工会議所等が果たす役割の重要性を考え、今後も変わらぬ都としての財政支援を維持していくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、中小企業への金融支援についてであります。
 最近、景気が回復してきたとよくいわれております。しかしながら、多くの中小企業経営者からは、景気拡大の実感はなく、むしろ業種間の景況感の格差や、企業間の二極化がより鮮明になっているのではといった声が聞かれております。
 資金繰りについては、依然として苦しい状況が続いております。日銀が本年三月に量的緩和政策を五年ぶりに解除したことにより金利上昇が懸念される中、取引金融機関の借り入れや返済に対する姿勢が厳しくなっており、資金繰りに対する中小企業の不安は非常に高まっております。今こそ、中小企業が適切に資金を調達できるような環境づくりが必要であります。
 これまで、都でも制度融資や新銀行東京の活用などにより、中小企業の資金需要にこたえてきておりますが、まだまだであります。今後も一層金融支援を充実していく必要があると考えますが、所見をお伺いします。
 東京が、今後とも活力ある、魅力ある都市として維持発展していくためには、財政の安定化が必要であり、そのためには都税収入の増加を図らなければなりません。鶏と卵ではないですが、そのためには、中小企業に対する支援を行い、中小企業の経済発展が不可欠であります。
 中小企業対策に対する都の予算を見てみますと、ここ十年間を見ても年々減額となっております。都全体の厳しい財政状況の中では、ある面やむを得ないかもしれませんが、中小企業は、これから国際競争の激化や経済のグローバル化の進展など、大きな経営環境の変化にさらされ、また、新たな技術や新製品の開発等をしなければならず、そのためにも経営改善や創意工夫を重ねて、社会経済状況や市場の変化にも適応していかなければなりません。
 都としても、こうした厳しい状況下にある中小企業への財政的支援を今こそ強化すべきと考えますが、その辺の所見をお伺いして、若干早いですけれども、私の質問を終わります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) そなえ邦彦議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、多摩産業支援拠点についてでございますが、同拠点は、昭島市の都立短大跡地を活用整備し、平成二十一年度に開設する予定であります。この整備によりまして、エレクトロニクス分野など、多摩地域の産業特性に対応した施設の格段の充実が図られるとともに、技術、経営相談のワンストップサービスなどの支援機能を強化してまいります。
 次に、多摩産業支援拠点における産学公連携についてであります。
 同拠点には産学公交流センターを設置し、多摩地域に集積する大学、研究機関と高い技術力を有する企業との連携を強化することにより、共同研究や技術移転を促進してまいります。また、大学や企業による各種交流の機会を積極的に活用し、産学公だけでなく、産産連携などさまざまな連携を進めてまいります。
 次に、商工会議所、商工会に対する財政支援についてであります。
 全国的には、国の補助金の廃止により、大きな影響が出ている地域があると聞いております。しかし、都におきましては、平成十八年度の小規模企業対策予算は、前年度並みを確保しております。今後とも、商工会議所等による地域の小規模企業育成支援に必要な予算の確保に努めてまいります。
 次に、中小企業への金融支援についてであります。
 都はこれまで、制度融資においては使いやすい制度となるよう見直しに努め、平成十七年度には約一兆八千四百億円の資金を中小企業に供給することができました。
 また、CLO、CBOにつきましては、これまで約一万二千社に対し、五千七百億円余りの資金を供給してまいりました。今後も引き続き多様な方策を用い、中小企業の資金供給の円滑化に努めてまいります。
 最後に、中小企業への支援強化についてであります。
 東京の経済を活性化させていくためには、社会経済状況を踏まえた中小企業施策の着実な実施に加え、新たな時代に対応した産業力の強化を推進していくことが不可欠であります。
 今後とも、アジア諸国の台頭による国際競争の激化への対応など、中小企業の実態と課題を踏まえた施策を積極的に打ち出し、中小企業への支援策を強化してまいります。

○議長(川島忠一君) 以上をもって質問は終わりました。

○議長(川島忠一君) これより日程に入ります。
 日程第一から第五十一まで、第二百七号議案、平成十八年度東京都臨海地域開発事業会計補正予算(第一号)外議案五十件を一括議題といたします。
 本案に関し、提案理由の説明を求めます。
 副知事横山洋吉君。
   〔副知事横山洋吉君登壇〕

○副知事(横山洋吉君) ただいま上程になりました五十一議案についてご説明申し上げます。
 初めに、平成十八年度補正予算案一件についてご説明申し上げます。
 第二百七号議案は、臨海地域開発事業会計補正予算(第一号)で、株式会社東京テレポートセンター、東京臨海副都心建設株式会社及び竹芝地域開発株式会社が実施する民事再生手続に伴い、補正を行うものでございます。
 補正の内容は、再生債権の一部弁済により、収入について約八億三千万円増額しますとともに、債権放棄等による特別損失の計上により、支出について約百二十八億七千万円増額するほか、資産の取得及び処分を行うものでございます。
 次に、第二百八号議案から第二百四十号議案まで及び第二百五十七号議案が条例案でございまして、新設する条例が二件、全部を改正する条例が一件、一部を改正する条例が三十件、廃止する条例が一件でございます。
 まず、新設する条例についてご説明申し上げます。
 第二百三十四号議案の東京都認定こども園の認定基準に関する条例は、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の施行に伴い、認定こども園の認定基準を定めるものでございます。
 第二百三十八号議案の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による任意入院者の症状等の報告に関する条例は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の改正に伴い、必要な行政手続等を定めるものでございます。
 次に、全部を改正する条例についてご説明申し上げます。
 第二百二十五号議案の東京都住宅基本条例は、現行の条例が制定されてから約十五年が経過し、社会経済情勢が大きく変化していることから、東京都住宅政策審議会答申を受け、条例の全部を改正するものでございます。
 次に、一部を改正する条例についてご説明申し上げます。
 第二百八号議案の市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例及び第二百二十七号議案から第二百三十三号議案までの七議案は、八王子市が保健所政令市に移行することなどに伴い、規定の整備を行うものでございます。
 第二百九号議案の職員の給与に関する条例の一部を改正する条例から第二百十四号議案までの六議案及び第二百十八号議案から第二百二十三号議案までの六議案は、東京都人事委員会勧告に従い、給料の減額を行うなど、職員の給与等に関して所要の改正を行うものでございます。
 第二百十五号議案の東京都消費生活条例の一部を改正する条例は、悪質事業者による消費者被害を防止するため、被害の実態等を踏まえた事業者規制強化を図るなど、所要の改正を行うものでございます。
 第二百十六号議案の東京都文化振興条例の一部を改正する条例は、文化振興のための施策について専門的な見地から調査審議するため、知事の附属機関として東京芸術文化評議会を設置するものでございます。
 このほか、法令の改正等に伴い規定の整備を行うものなどが八件ございます。
 次に、廃止する条例についてご説明申し上げます。
 第二百三十五号議案の東京都心身障害者扶養年金条例を廃止する条例は、東京都心身障害者扶養年金審議会の最終答申を踏まえ、東京都心身障害者扶養年金条例を廃止しますとともに、必要な経過措置を設けるものでございます。
 続きまして、第二百四十一号議案から第二百四十三号議案までが契約案でございます。
 都営住宅十八CH ─ 一〇四東(小松川三丁目第二・江戸川区施設)工事など三件を予定しております。契約金額は、総額約二十五億一千万円でございます。
 次に、第二百四十四号議案から第二百五十六号議案までが事件案でございます。
 このうち、第二百四十六号議案から第二百四十八号議案までの三議案は、株式会社東京テレポートセンターなど三社の再生手続開始申し立て事件において東京都が有する債権の取り扱いについて議決をお願いいたすものでございます。
 第二百四十九号議案から第二百五十六号議案までの八議案は、多摩地区八市町における東京都水道事業の事務の委託の廃止及び公共下水道使用料徴収事務の受託を行うものでございます。
 以上で説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
(議案の部参照)

○議長(川島忠一君) 以上をもって提案理由の説明は終わりました。
 なお、本案中、地方公務員法第五条第二項の規定に該当する議案については、あらかじめ人事委員会の意見を徴しておきました。
 議事部長をして報告いたさせます。

○議事部長(松原恒美君) 人事委員会の回答は、第二百九号議案から第二百十一号議案、第二百十三号議案、第二百十四号議案及び第二百十八号議案から第二百二十三号議案について、いずれも異議はないとの意見であります。

一八人委任第八六号
平成十八年十一月二十八日
東京都人事委員会委員長 内田 公三
 東京都議会議長 川島 忠一殿
   「職員に関する条例」に対する人事委員会の意見聴取について(回答)
 平成十八年十一月二十四日付一八議事第三一二号をもって照会があった議案に係る人事委員会の意見は、左記のとおりです。

提出議案

一 第二百九号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
二 第二百十号議案
東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
三 第二百十一号議案
東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
四 第二百十三号議案
職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
五 第二百十四号議案
職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例
六 第二百十八号議案
学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
七 第二百十九号議案
東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
八 第二百二十号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
九 第二百二十一号議案
義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例
十 第二百二十二号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
十一 第二百二十三号議案
東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例

意見

  異議ありません。

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 ただいま議題となっております日程第一から第五十一までは、お手元に配布の議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、日程第一から第五十一までは議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定いたしました。
(別冊参照)

○議長(川島忠一君) 請願及び陳情の付託について申し上げます。
 受理いたしました請願二十一件及び陳情十六件は、お手元に配布の請願・陳情付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたします。
(別冊参照)

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 明九日から十四日まで六日間、委員会審査のため休会いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、明九日から十四日まで六日間、委員会審査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、十二月十五日午後一時に開きます。
 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後七時四十四分散会

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