(願 意)
都議会において、檜原村における産業廃棄物焼却場の建設計画について、環境の悪化
や自然災害の危険性などを考慮し、慎重に審議していただきたい。
(理 由)
本年3月1日、比留間運送株式会社が、西多摩郡檜原村人里(へんぼり)地区に産業
廃棄物焼却場を建設する計画を都に申請した。東京都の水源である奥多摩の山々のうち、
多摩川最大の支流である秋川の上流部を占める檜原村に産業廃棄物焼却場を建設するこ
とは、水源地の環境面から考慮しても不適切と言わざるを得ない。建設予定地の人里地
区は、南秋川の源流部に貴重なブナ林を残している東京都檜原都民の森にも近く、その
下流側一帯の環境を悪化させる可能性がある。また、産業廃棄物焼却場からの煙が南秋
川の谷に沿って流れ、下流側の環境に影響を及ぼすことも心配される。
さらに、建設予定地は、深層崩壊、地すべり、土石流などの土砂災害に見舞われる可
能性がある場所でもあり、立地としては極めて不適当な場所であると考えられる。これ
らの土砂災害は連動して発生することが多く、奥多摩一帯でも、関東大震災の揺れに伴
って深層崩壊や土石流が多く発生している。
国立研究開発法人防災科学技術研究所が公表している、研究資料第248号「5万分の1
地すべり地形分布図第19集『関東周辺部』図集」によると、建設予定地の南秋川支流
である森沢の流域には地すべり地形(地すべりの跡地)が複数分布しており、やや上流
側の対岸には大規模な地すべり地形がある。また、私の調査では、建設予定地の背後は
深層崩壊跡地と判断され、極めて不安定な斜面の直下に当たる。さらに、森沢は谷底が
狭く、上流側には土石流が堆積した跡地も認められ、もしも静岡県熱海市で起こったよ
うな、豪雨による土石流が発生した場合、汚染物質が流出する可能性も危惧される。
以上のように、この建設予定地は防災上の問題が多い。未来に禍根を残さないために
も、産業廃棄物焼却場の建設計画については、慎重に審議する必要がある。
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