
税金の有効活用
質問1
現状を打破するために動き始めた多くの改革をさらに推し進めるために、本日は、具体的な政策提言を述べさせていただきます。
まず最初に、事業評価です。
知事は、全ての施策、お金の使い方が真に都民の利益にかなうものなのか常に念頭に置くとし、現時点で、少なくとも四百億円以上の五輪費用削減に取り組みました。
また、策定中の二〇二〇年に向けた実行プランでは、具体的なPDCAサイクルがうたわれ、知事が税金の有効活用に取り組んでいることは大変評価するものです。
しかし一方、十三兆円といわれる都の予算、その日々の業務である約二千五百全ての事業はどうでしょうか。包括外部監査において毎年指摘されているように、費用対効果が曖昧で、PDCAサイクルが十分機能しているとはいえません。
例えば、さきの委員会において、都のDV対策を担う部門が現在のDV被害者数を、また、外国人誘致を目標とする部門が現在の来日外国人数を、それぞれ概算においても把握していないとの局答弁があり、各施策の効果についても、その満足度や到達達成度も余り数値化されていないのが実態です。
現状を正しく数値で把握できなければ、目標数値、指標、KPIも設定することができません。そのほか、多くの事業もまた同様です。
また、その公開性においても、事業評価の分量はわずか二、三行のみ、内容も評価ではなく、実施項目が書かれているのみで、数値の記載がありません。
二次評価者である財務局においても、全事業に対する数値目標や指標、KPIの設定率を把握しておらず、各内容も明らかにされませんでした。これでは、都が体系的にどのように事業評価をしているのか不明であり、ブラックボックス化しているといわざるを得ません。
一方、大阪市では、昨年よりPDCAサイクル推進有識者会議が立ち上がり、全ての事業に、現状、目標、指標、KPI数値が設定され、評価も自己評価、全体内部評価、学識経験者による外部評価がなされ、誰もがチェックできる公開制度があります。
また、静岡市では、市民が評価に参加するなど、各自治体において、きめ細かい対応がなされています。
このように、都庁全体の改革が急務であり、現在、都政改革本部では、内部統制の仕組み強化を検討するとしています。
今後は、全ての事業において、適切に数値目標やKPIを設定する事業評価や透明性の確保など、抜本的に改善すべきと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
答弁1
知事
事業評価などの抜本的な改善についてのお尋ねがございました。
都はこれまで、予算編成の一環として事業評価を実施することで、評価結果を翌年度予算に速やかに反映するというマネジメントサイクルを確立し、これまでの十年間で、累積約四千八百億円の財源を確保してまいりました。
二〇二〇年に向けた実行プランにおきましては、これまでの施策計画と大きく異なります。それは、各施策について、より具体的で、数多くの政策目標を定めて、その工程表も明確に作成するということでございます。
また、事業評価につきましても、来年度予算で全ての事業に終期を設定いたしまして、より多角的な検証を行いまして、PDCAサイクルを強化することといたしております。
ご指摘の点も踏まえまして、都政改革本部におきまして、全ての事業に終期を設定する取り組みを初めといたしました今後の事業評価のあり方について、都民ファースト、そして情報公開、ワイズスペンディング、これらの視点に立ってさらに検討し、一層の改善に努めてまいります。
質問2
次に、地下鉄や水道事業など、公営企業について申し上げます。
公営企業は、独立採算制の原則に基づき、安定的な運営のため、赤字事業は改善に取り組むとしております。
一方、都の公営企業全十一事業では、一部赤字が続いております。昨年度は二事業が赤字決算、今年度は五事業が赤字目標、それ以降も三事業が赤字予算のままであります。また、一部では、平成三十三年度以降は資金の蓄えが尽き、対策が急務です。
そのような場合において、民間企業では、たとえ現在は赤字であっても、黒字化に向けた中長期経営計画が立案されます。しかし、都においては、二十九年度以降、五事業で計画が立案されておらず、黒字化に向けためどが立っておりません。
とりわけ、過去八年赤字が続き、今後も赤字目標である交通事業では、決算委員会において、事業環境が目まぐるしく変化することを理由に、黒字化への中長期経営計画の策定はしないとの答弁がなされました。しかし、事業環境を予測し、対策を立てることこそが経営なのではないでしょうか。
一昨年、総務省は、中長期的な経営戦略を公営企業ごとに策定、期間は十年以上とすると通達しておりますが、都においては、十年にわたる経営戦略が存在しておらず、黒字化に向けた中長期経営計画が必要です。
そこで、生活に欠かせない公営企業の安定的な経営のため、特に赤字事業については、黒字化に向けた道筋を明らかにすることは、情報公開を都政への最重要課題とする小池都政において必須と考えます。
都政改革本部では、各局の事業の見直しに向け、自主点検評価が行われておりますが、今後は、全ての公営企業においても、その議論の対象に加えるべきと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
答弁2
知事
公営企業の経営改善についてのご質問でございます。
地方公営企業であります交通局、水道局、下水道局の各事業や、準公営企業と呼ばれます病院事業などでありますが、本来の目的である都民の日常生活を支える役割を果たさなければなりません。そして、常に企業としての経済性の発揮も求められているところでありまして、経営改善の視点も、ご指摘のように重要でございます。
現在、各公営企業の管理者も、各局長とともに都政改革本部の本部員でございます。そして、各公営企業局が効率的な経営や都民サービスの向上に向けて、自律改革に取り組んでいるところでございます。
今後とも、それぞれの公営企業の管理者が、不断の経営改善に取り組んでいくとともに、都政改革本部におきまして、公営企業の事業についても対象といたしまして、しっかりと議論をしてまいります。
質問3
次に、都庁の体質改善についてです。
職員には、すぐれた行政手腕のみならず、民間同等のコスト感覚が求められており、そのための自由闊達な職場環境づくりが欠かせません。
しかし、都には、豊洲問題で判明した隠蔽体質や、風通しの悪い職場風土が一部存在します。
職員に対する人事評価は、部門上長が一手に握り、上司の意向がその全てです。これでは、職員は常に上司の顔色を気にせざるを得ません。
一部の民間では、その弊害を取り除くため、三百六十度評価と称し、上司、部下、同僚など、あらゆる角度から人事評価を行う仕組みがあります。私自身の経験においても、実際に人材育成や組織の活性化につながると実感しておりました。
このように、都も、新たな人事評価制度を取り入れるべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
答弁3
総務局長
いわゆる三百六十度評価の導入についてですが、三百六十度評価は、一般的に管理職等の人材育成の観点から、対象者の職場での姿勢や行動について、周囲からの見え方を本人にフィードバックし、行動改善を促す仕組みであり、一部の民間企業等において導入されております。
その導入事例について見ると、目的や対象者の範囲、フィードバック方法、実施結果の活用等がさまざまな態様であり、都においては、現在、導入に向けて、組織体制や職場実態に合った最良の実施方法について検討を進めており、引き続き検討を進めてまいります。
質問4
さらには、組織風土改善のためには、多様な人材も必要です。
都には、民間のすぐれたノウハウやコスト感覚など、意識改革を目的に、三十年前から民間企業との人事交流があります。しかし、毎年、規模は、本庁職員約一万人に対し二十名程度、派遣先も、銀行、鉄道会社とほぼ同じであり、成果も曖昧で、制度が形骸化しています。人が変われば風土が変わります。
今後は、人数や対象企業、期間を大きく拡充するなど、制度を根本的に見直していくべきと考えますが、見解をお伺いします。
答弁4
総務局長
民間企業等との人事交流についてですが、都と民間企業等との人事交流は、相互の人材育成と組織の活性化等に資することから有意義であると認識しております。
都では、若手の管理職候補者の育成上重要なステップとして、民間企業等への派遣研修を継続して実施しており、例えば、派遣後にPFI事業の推進において中心的な役割を担わせるなど、都政にその効果を還元してまいりました。
また、民間人材の受け入れについては、研修制度では、行政の公正性の観点から配置先や規模拡大に制約があるため、平成六年度から経験者採用も行っており、平成二十八年度には、百七十三人の経験を持つ職員を採用しております。
今後とも、人事交流や経験者採用等さまざまな手法を活用することで、多様な人材の確保、育成に努めてまいります。
少子化対策
質問1
次に、少子化対策です。
子供は国の宝です。しかし、都内の子供の出生率は一・一五で全国最低。そのため、都では、待機児童対策を初め、育児支援などに注力してきました。
一方、少子化対策として、子供の誕生についてはどうでしょうか。さまざまな理由、背景、事情などにより、晩婚、晩産化も進み、子供を持つ機会に悩んだり、不妊治療で苦労されている方が多くいます。
実際、平成二十五年の民間調査では、不妊の可能性があるのではないかと思ったことがあると答えた既婚女性の方が約半数に及んでおります。
同時に、都の不妊治療助成も年々ふえ、現在、年間二万件、三十七億円に及んでおります。
一つの取り組みとして、高校生や大学生など、人生の早い段階から男女双方に、妊娠、出産に関する正確な情報を伝えることも大切です。これにより、ライフプランを考える上で、キャリアだけでなく、結婚や家族をつくるといったことも前もって、より具体的に考えることができます。
昨年度より、文科省は、高校の補助教材に、不妊に関する内容を多く盛り込みましたが、一方、都においては、教科書にわずか数行記載があるのみで、十分とはいえません。
今後は、このような補助教材等を積極的に活用し、都においても、妊娠、出産、不妊に関する正しい情報発信に努めるべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
答弁1
教育長
妊娠、出産等に関する教育についてでございますが、現在、都立高校では、保健の授業において、妊娠、出産等と、それに伴う健康課題について理解を深めるとともに、家庭科の授業では、少子化の進展に対応して、子供を産み育てることの意義等について考える学習活動などを展開しております。
また、学年行事等において、外部講師として招いた保健師等から不妊問題や家族計画等についての講話を生徒が聞く機会を設けている学校もございます。
今後とも、都教育委員会は、各学校に配布している文部科学省の補助資料等を活用して、生徒たちが、妊娠、出産、不妊問題等に関する医学的、科学的に正しい知識を身につけることができるよう指導してまいります。
質問2
最後に、学費負担軽減についてです。
都立学校では、毎年、期待にあふれ入学する新入生がいます。一方で、家計が苦しく、子供の制服代などに悩まれる保護者も多く、中には、サラ金から費用を捻出し、自殺された母親もおり、事態は深刻です。
例えば、制服は学校や都が購入するものではなく、あくまで保護者負担です。にもかかわらず、販売店は一者のみであり、保護者に選択の余地はありません。であればこそ、製造販売業者の選定に対する透明性や公平性の確保は必須であります。
しかし、さきの委員会では、一部で、業者選定の際に、学校が公表するコンペ仕様書の中において、特定業者一者を限定する特許事項の記載があることが明るみになりました。その後是正されましたが、依然、業者の選定は一者に限られる場合がほとんどであり、提示される価格も全て都立学校において、それぞれ一者のみです。
新聞調査によると、制服に対する不満の第一位は、購入先の選択肢が少なく価格が高いこととされ、こうした問題に対し、神奈川、埼玉などの県立高校では、業者は複数者、複数価格となっており、保護者が選べる仕組みです。
都内の保護者に選択の自由はなく、他県に比べ、制服代の相対的な割高感は拭えません。全ては適正な競争原理が働いていないことが原因であります。
このように、今後は、保護者負担である学校関連用品の販売、製造に関しては全て複数者、複数価格とし、保護者の費用負担軽減に努めるべきと考えますが、所見をお伺いし、質問を終わります。
答弁2
教育長
都立学校の教育費負担の軽減についてでございますが、制服など学校指定品の取扱業者の選定は、各都立学校が行っており、これまで制度の見直しも行ってきております。
現在の制度では、選定に当たっては複数の業者が応募できるよう、特許事項等により製造業者や販売業者が限定されない仕様とした上で業者を公募し、その中から最も低廉な価格を提示した業者を指定しております。
特に制服については、安定的な供給を目的に、他の業者が指定業者と同等の条件で提供を申し出た場合には、その業者も指定することで、複数業者による供給を可能としております。
引き続き、保護者の理解を得ながら、学校指定品の適切な供給に努めてまいります。