
二〇二〇年東京大会の成功に向けた被災地支援
質問1
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会まで五年を切りました。私は、この大会を成功させていくコンセプトは二つあると考えます。一つは、東日本大震災の被災地を復興させるために、東京が被災地とともに歩むということであり、もう一つは、招致のときに世界中の人々の心にインパクトを残した日本特有のおもてなしの心を具現化していくことであります。
そこでまず、被災地支援について質問いたします。
被災地は、いまだ風評被害に苦しみ、一方で震災の風化が懸念されております。被災地の復興なくして二〇二〇年の東京大会の成功は断じてあり得ません。
昨年の第四回定例会の都議会公明党の代表質問に対して、知事も、震災からの復興は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功の前提であり、開催都市の知事として、みずから被災県に赴くことを念頭に入れ、現地の実情をしっかりと把握すると述べられました。
あれから一年がたちましたが、ぜひとも舛添知事みずからが被災県を訪問し、地元の知事と胸襟を開いて懇談して、東京大会の成功に向け、被災地に対して何ができるのかを把握していただきたいと思います。知事の見解を伺います。
答弁1
知事
東日本大震災の被災地支援についてでございますが、これまで都は、延べ三万人を超える職員の派遣、都内避難者の支援、風評被害に対する取り組みを行い、被災地のニーズを的確に把握しながら、総力を挙げて被災地を支援してまいりました。
震災から約四年九カ月がたち、人々の記憶の風化が懸念される一方、今なお全国で十八万人を超える避難者が厳しい生活を余儀なくされております。
被災地の復興はいまだ道半ばでありまして、復興が停滞することのないよう、職員派遣を継続し、引き続き支援してまいります。年明けには記憶の風化を防ぐためのイベントを開催し、震災当時の状況や現在の復興状況を発信し、私自身が幅広く都民に支援を呼びかけてまいります。
また、これまで千キロメートル縦断リレーや子供たちとの交流など、スポーツを通じまして被災地とのきずなを紡いでまいりました。復興なくして二〇二〇年大会の成功なしということを常に念頭に置き、引き続きスポーツの力で被災地に元気を届けるとともに、復興に歩む姿を世界に発信し、大会成功に向けて全力で邁進してまいります。
そのため、開催都市の知事として、復興をより効果的に後押しすべく、来年の春、いまだ風評に苦しむ福島に行きたいと考えております。
引き続き都は、被災地の声に耳を傾けながら、復興五輪への道筋を確かなものとしてまいります。
産業政策
質問1
次いで、おもてなしの具体的な展開の一つについて質問いたします。
東京には、新たな製品やサービスを創出する高い技術力を有した中小企業が多数存在します。二〇二〇年の東京大会は、こうした都内中小企業の高い技術力を国内外にアピールするチャンスでもあります。
そうした中で、私が特に注目しているのが、人間とコミュニケーションを図りながら案内などのサービスを提供する、いわゆる、おもてなしロボットです。現在、都内中小企業が参加する東京都ロボット研究会では、産業技術研究センターの支援を受け、案内支援ロボットなどが開発されています。大会期間中は、ボランティアなどが国内外から訪れる多数の観光客をもてなすことになりますが、こうした取り組みだけでなく、都内中小企業の生み出した多言語対応の案内支援ロボットがおもてなしをすることで、観光客の利便性を向上させるとともに、日本の技術力の高さを改めて認識してもらうことにもつながります。
都は、こうした案内支援ロボットが二〇二〇年の東京大会において実用化されるよう具体的に支援すべきと考えますが、見解を求めます。
答弁1
産業労働局長
案内支援ロボットの実用化に向けた支援でございますが、二〇二〇年大会までに、観光客をおもてなしするロボットを中小企業が開発するためには、試験研究機関などによるさまざまな技術支援が必要でございます。
このため、産業技術研究センターでは、今年度から新たに中小企業のロボット開発を強力に後押しするロボット産業活性化事業を開始いたしました。
具体的には、案内支援ロボットの重要な構成要素である走行装置や多言語対応の音声対話ソフトなどの開発に取り組むとともに、共同研究の実施や研究成果の公開などにより、中小企業に対し、広く技術移転を図っております。
今後は、実用化に向け、東京ロボット産業支援プラザを整備し、中小企業が試作したロボットの耐久性や安全性を評価するなど、技術支援を拡充してまいります。
質問2
次いで、都が八王子市に設置する産業交流拠点について質問いたします。
展示場として二千五百平米のホールを有する産業交流拠点の整備は、多摩地域の産業の活性化につながるものであり、経済団体や中小企業等からも大きな期待が寄せられています。
私は、平成十七年の予算特別委員会でこのことを取り上げて以来、一貫して産業交流拠点の整備を推進してまいりました。本年度、基本計画が取りまとめられ、年度内には基本設計に着手するなど、平成三十三年度の完成に向けて着実に歩みが進められていることを評価するものであります。
多摩地域には、エレクトロニクスや計測機器を初めとするさまざまな分野の中小企業や、先端技術を牽引する大学、研究機関等が数多く立地し、この集積は、多摩地域のみならず、狭山市や入間市などの埼玉県西南部、相模原市などの神奈川県中央部、さらには山梨県にも広がりを見せています。
広域多摩と呼ばれるこのエリアは、圏央道などの都市基盤の整備が着実に進んでおり、今後さらなる産業の発展が見込まれる高いポテンシャルを有している地域です。このエリアの強みを存分に引き出し、産業の活性化につなげていくためには、この拠点が最大限有効に活用されなければなりません。
私は、八王子市や多摩地域に限らず、広域多摩の産業界、大学、研究機関そして行政などが一堂に会する協議体を設置し、産業交流拠点の効果的な活用について検討していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
答弁2
産業労働局長
産業交流拠点の効果的活用についてでございますが、八王子市に設置予定の産業交流拠点については、基本計画をまとめたところであり、平成三十三年度の竣工に向けて今年度基本設計に着手する予定でございます。この拠点は、多摩地域のみならず、都域を超えた産業交流の中核としての役割を担うことから、広域的視点から具体的運営について検討をすることが必要でございます。
こうした検討を進めるため、神奈川県など隣接する自治体を初め、他県を含む広域エリアの産業支援機関や大学などに参加を呼びかけ、関係者から成る協議体を新たに設置をいたします。年内に第一回の意見交換会を開催し、利用ニーズを聞き取り、企業間交流や産学公連携、拠点を活用したイベントなど、具体的な活用の仕方について検討してまいります。
認知症対策
質問1
次いで、認知症グループホームの利用者負担の軽減について質問します。
先日、私の知人で認知症を患い、家族のもとで暮らしていた方が、家族が目を離したすきに外出しそのまま行方不明となり、後日亡くなられた状態で発見されるという悲しい出来事がありました。認知症を発症しても家族のもとで生活できることは大変にすばらしいことだと思います。反面、家族の負担ははかり知れないものがあり、本人にとってもこうした悲しい結末を迎えることもあります。
こうした中、住みなれた地域で、家庭的な雰囲気の中で暮らすことのできる認知症グループホームは、これから重要な役割を担うことになります。
ただ、認知症グループホームの最大の課題は、特別養護老人ホームに比べて利用料が高いということです。その理由は、特別養護老人ホームの場合はホテルコストが介護保険の対象になるのに対し、認知症グループホームの家賃は介護保険の対象にならないからです。したがって、国民年金で生活をする低所得の方は、認知症グループホームにあきがあっても、経済的な理由で入所を断念せざるを得ないという状況にあります。
こうした状況を踏まえ、都議会公明党は、昨年の第四回定例会の代表質問でこのことを取り上げました。都は、認知症グループホームに対する独自の整備費補助を通じて家賃の軽減を図るとともに、介護保険法の地域支援事業の一つに位置づけられている低所得者に対する家賃等の助成について、今後その活用を区市町村に積極的に働きかけると答弁をいたしました。
しかし、現時点でこれを実施しているのは品川区のみであります。認知症高齢者が増加する中、ほとんどの区市町村で実施されていないという状況を鑑みれば、都としても、認知症グループホームの利用者負担の軽減に向けたさらなる取り組みを強化すべきであります。見解を求めます。
答弁1
福祉保健局長
認知症高齢者グループホームの利用者負担についてでありますが、家庭的な環境の中で介護や日常生活上の世話を行う認知症高齢者グループホームは、認知症高齢者を地域で支える重要なサービスの一つでございます。
そのため、都は、国基金を活用した補助に加え、都独自の整備費補助を行い、利用者の家賃負担の軽減を図ってまいりました。また区市町村に対し、介護保険制度の地域支援事業に位置づけられている低所得者への家賃助成の実施を担当課長会議等を通じて働きかけております。
今後、都独自の整備費補助のさらなる拡充を検討いたしますとともに、地域支援事業による家賃助成の実施を区市町村に強く働きかけてまいります。また、次期制度改正に向けた国への提案要求についても、区市町村の意向を踏まえながら検討してまいります。
医療人材の確保
質問1
次いで、ナースバンクの活用について質問いたします。
都は、二〇二五年に向け、病床の機能分化と連携を進めるために、医療機能ごとの医療需要と病床の必要量を推計し定めていく、地域医療構想の骨子を年度内に策定する作業を進めています。この推計によると、東京都は全体で、医療需要に対して八千三百八十五床の病床が足りないという結果が出ています。
病床をふやすということは、一般的に歓迎されますが、最大の課題は、現在でも慢性的に不足をしている看護師の確保であります。
都は、看護師の確保策として、看護協会に運営を委託し、東京都ナースプラザ内に看護師等の無料紹介所であるナースバンクを設置しています。他方、看護師の紹介事業は、全国で二百五十億円市場であるとマスコミで報道されているとおり、民間の人材紹介会社等がビジネスチャンスと捉えて参入しています。
病院側にとって、民間の人材紹介会社に支払う仲介手数料は、最低でも、採用した看護師の年間の給与総額の二〇%とかなりの高額であり、このことが病院経営を圧迫している要因にもなっています。
東京都のナースバンクは、平成二十六年度の実績で新規登録者が四千九百四十五人に対し、就業者数は二千五十六人と、きめ細かく相談に乗ることにより、多くの方を再び就業に結びつけています。しかし、その存在や内容を知らずに、ナースバンクを活用することなく自分でインターネットを使って就業先を探したが、結果として希望に合った条件での就業ができなかったり、誰にも相談できないために復職に結びつかないといった現状があります。
子育て等で離職をした看護師が復職に関する悩みなどを気軽に相談できる窓口を、東京都ナースプラザだけでなく、例えば、今や年間二十一万五千人が来場し、若者が多く集まる東京しごとセンターなど、既存の就業相談窓口と連携していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
答弁1
福祉保健局長
看護師の再就業支援についてでありますが、都内二カ所にある東京都ナースプラザでは、離職中の看護師と一緒にベテランの相談員が再就業へのプランを立て、継続的な支援を行っております。また、求職者が求人施設の担当者と直接会い、自分に合った就業先を見つけることができるよう、再就職相談会ふれあいナースバンクを年七回開催しております。
さらに今年度は、都医師会や看護協会等と連携して、都内各地で地域に密着した就職相談会を開催するとともに、都内五カ所のハローワークに相談員が毎月出張して、看護職向けの専門相談を行っております。
今後、こうした取り組みに加えまして、東京しごとセンター等との連携についても検討し、看護師の再就業支援の充実を図ってまいります。
都営交通
質問1
最後に、都営交通の博物館構想について質問いたします。
今から四年前、都は、交通局百周年記念事業として、江戸東京博物館で東京の交通百年博を開催いたしました。私もこの特別展に二度足を運び観覧いたしましたが、単なる交通の展覧会ではなく、公共交通の変遷を通じて、東京のまちや人々の生活の変化を知ることができる貴重な展覧会であると実感いたしました。
期間中は十四万人もの方が来場したということですが、まさに都営交通の歴史は、明治四十四年に東京市電気局として開局して以来、関東大震災や戦災を乗り越え、都民の足としての役割を果たしてきた東京の近代史の一部といっても過言ではありません。一緒に観覧をした有識者も、歴史的価値の高い展示物が多く、これらを適切に保管し機会を捉えて公開することは意義があると述べられておりました。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に多くの国内外の観光客が東京を訪れますが、こういった方々に、公共交通を通じて東京の近代史を知っていただく絶好の機会でもあります。
都としても、今こそ、都営交通の博物館の設置を含め、歴史的資料の保全や展示について検討すべきと考えますが、見解を求めます。
以上で私の質問を終わります。
答弁1
交通局長
都営交通の歴史的資料の保全、展示についてでございますが、交通局は、明治四十四年の開業以来、輸送の主力が路面電車からバス、地下鉄へと移り変わる中、都民の暮らしと東京の発展を支え続けてまいりました。
局百周年記念事業として実施いたしました江戸東京博物館の特別展、東京の交通百年博では、交通局所蔵品を中心としたさまざまな資料により、明治から平成に至る東京の交通百年の歩みを振り返ることができ、お話のように、十四万人を超える来場がありました。その際の展示物には、東京の近現代史を象徴するような貴重な資料も多く存在いたしました。 まずは、これらの歴史的資料の適切な保全を引き続き図りますとともに、ご提案の趣旨を踏まえ、広く公開する仕組みづくりにつきまして、関係者の協力を得ながら検討を進めてまいります。