
スマートエネルギー都市の実現
質問1
初めに、スマートエネルギー都市の実現に向けた取り組みについて伺います。
東京には、千三百万を超える人々が暮らし、大小七十万の事業所では、日夜、経済活動が営まれています。また、こうした都市活動は、高度に発達した道路、鉄道網などによって支えられております。
知事は、今回の定例会の冒頭において、二〇三〇年までの意欲的な省エネ目標を新たに設定されました。私は、エネルギーの大消費地である東京において、低炭素、快適性、防災力を兼ね備えたスマートエネルギー都市を実現していくためには、東京で暮らし、活動する都民や事業者、さまざまな団体など全ての方々としっかり連携しながら、省エネの取り組みを進めていくことが重要と考えます。
今後、この目標の達成に向けて、具体的取り組みが期待されますが、まず、新たな省エネ目標に向けた知事の決意をお伺いいたします。
答弁1
知事
新たな省エネ目標についてですが、東京は、エネルギーの大消費地として、エネルギーを効率的に利用していく責務がございます。オリンピック・パラリンピック開催後も見据え、持続的に発展を続ける大都市として、これまでの取り組みを継承しながら、さらなる省エネ化を進めていく必要があります。
そこで、今般、長期的な視野に立ちました新たな省エネ目標を設定するべきだと判断いたしまして、二〇三〇年までに二〇〇〇年対比で三〇%削減、そういう意欲的な目標を定めることにいたしました。
この目標の達成に向けましては、東京で活動する家庭、業務、産業、運輸それぞれの部門で創意工夫を凝らした省エネ対策が必要であります。
今後、都は、建物の断熱性能の向上や取り組みが進みにくい中小規模事業所の省エネ化、燃料電池車など水素エネルギーの活用、再生可能エネルギーやコージェネの導入拡大などを積極的に後押ししてまいります。
こうした施策を通じ、都民、事業者の力を結集して、世界一のスマートエネルギー都市の実現に向けて取り組んでまいります。
質問2
続いて、スマートエネルギー都市の実現に向けた中小規模事業所の省エネ対策について伺います。
中小規模事業所の多くは、省エネに対して資金やノウハウなどが十分でないため、継続した支援は重要です。そこで、私は、中小テナントビルの省エネ改修を促進するため、省エネ性能にすぐれた設備の導入が、入居率の向上などビルのオーナーの利益につながるよう、ビルの省エネ性能を見える化する仕組みを本年第一回定例会で提案いたしましたが、その事業の募集が十一月に始まったと聞いています。
中小規模事業者の省エネを進める上では、こうした建物の設備面だけでなく、事業所内で利用されるIT機器に係るエネルギー削減も大きな課題になっています。
経産省の調査でも、情報技術に関するエネルギー消費は今後も増加するとの予想が出されており、中小規模事業所においても、取り扱うデータの増大により、ITに関連する消費電力は増加することが予想され、省エネを一層推進することが必要でございます。
そこで、こうした状況を踏まえ、中小規模事業所のITに関連する省エネ対策を今後どのように進めていくのか、見解をお伺いいたします。
答弁2
環境局長
中小規模事業所の省エネ対策についてでございます。
一般的なオフィスの電力使用量のうち、約一三%がデータサーバーに関連する消費と推計されており、ご指摘のとおり、ITに係るエネルギーの効率化は重要でございます。IT関連の省エネを進める上では、事業者が個々に設置するデータサーバーを省エネ型データセンターに移すことが有効でございますが、システムの再構築などを伴うため、移行が進んでいない状況にございます。
そこで、中小規模事業所のデータサーバーについて、インターネットを利用したクラウド型データセンターへの移行による省エネ化を促す仕組みについて検討してまいります。
都は、無料省エネ診断や省エネ設備の導入支援など、これまでの取り組みを継続するとともに、このような新たな促進策の構築にも取り組み、中小規模事業所の省エネ対策を推進してまいります。
質問3
また、東京を世界で一番の都市にするためには、省エネルギー対策とともに、首都東京の電力安全保障という観点から、コージェネレーションを初めとする分散型電源の導入を拡大させていくことが重要です。
例えば、最近の田町駅東口の開発においては、低炭素で防災に強いまちづくりに向け、大規模で高効率なコージェネレーションを備えたエネルギーセンターを設置し、先月よりエリア全体に熱や電気の供給が開始されるなど、先進的な事例もふえてきています。
このように、エネルギー効率の向上による環境面への貢献だけではなく、近年、防災面の価値についても注目が高まっているコージェネレーションの普及を一層強力に進めていくべきと考えますが、都の所見をお伺いいたします。
答弁3
環境局長
コージェネレーションの普及促進についてでございます。
コージェネレーションは、電気と排熱の両方を有効に活用することで、省エネルギーやCO2の排出削減に寄与するものでございます。このため、都は補助制度で負担軽減を図るなどにより、導入を後押ししております。
今後は、都市の環境と防災性のさらなる向上に向け、コージェネレーションで生み出した熱や電気の建物間や街区での融通を促す方策の構築を図り、平時の省エネと非常時のエネルギー供給の確保を地域レベルで実現できるように取り組んでまいります。
業務用コージェネレーション六十万キロワットの導入目標の実現を目指し、エネルギーの面的利用等も促進しながら、スマートエネルギー都市の実現に向けて積極的に取り組み、東京の都市力向上につなげてまいります。
質問4
スマートエネルギーの都市実現に向けて、再生可能エネルギーの拡大も大きなテーマです。
知事は、再生可能エネルギーの消費電力に占める割合を、現状の六%から二〇二四年に二〇%程度まで高めるという目標を示しました。東日本大震災以降、電力需給の安定が大きな課題となる中で、電力の大消費地である東京が、これまで以上に再生可能エネルギーの割合を高めていくことは大きな意義があり、着実に取り組むことが必要です。
今回示した意欲的な目標の実現に向け、都は今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。
答弁4
環境局長
再生可能エネルギー拡大への取り組みについてでございますが、スマートエネルギー都市の実現に向けては、省エネの推進とあわせて、再生可能エネルギーの拡大を図り、需給両面から実効性ある施策を講じることが重要でございます。
このため、専門家による検討会の提言も踏まえ、住宅等への太陽光発電の導入促進、需要家の再生可能エネルギー電力の利用を促す仕組みづくり、太陽熱利用の普及促進など、東京の特性を踏まえた施策の具体化を進めてまいります。
また、庁内連携体制を強化し、都施設への太陽光発電等の率先導入を推進するとともに、スマートエネルギー化に取り組む次期都庁行動計画策定に向けて検討を進めてまいります。
目標の実現に向け、都民、事業者、区市町村等と連携した幅広い取り組みにより、再生可能エネルギーの導入拡大を着実に進めてまいります。
水道事業
質問1
次に、安定給水の確保について伺います。
都市の発展には、水はなくてはならないものです。そもそも東京の都市としての発展を支えたのは多摩川の水です。私の地元調布市、狛江市を流れる多摩川の上流域には、明治時代、御料林などの森林を都が譲り受けた広大な水道水源林があり、百年以上にわたり多摩川の水を育んできました。
世界にはフーバーダムなどの著名なダムがあり、水源の重要性は、諸外国の例を見てもわかります。
東京には、我が国最大規模で水道専用の小河内ダムがあり、都の独自水源として所有をしております。先人は、都民の水、大切な水道水を確保するために大変な努力を重ねてまいりました。
そこで、安定給水を確保するため、多摩川の水を守り続けることは、東京都にとって極めて重要と思いますが、知事の率直な見解をお伺いします。
答弁1
知事
安定給水の確保についてでありますが、水道は都市の発展に欠くことのできない重要なインフラでありまして、歴史、文明がそれを証明しております。
東京におきましても、約四百年前、江戸幕府が玉川上水を開設し、多摩川の水を市中へ飲料として供給することなどにより、当時百万人規模にも及ぶ世界最大の都市といわれた江戸の繁栄を支えました。
こうした時を重ねながら、今日におきましても多摩川の水は、都民の安定給水を支えるための貴重な水源でありまして、世界一の都市として欠くことのできない水道システムの大きな底力であります。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを成功させ、さらに、その先も首都東京が持続的に発展していくためには、安定給水の確保は不可欠であります。
このため、多摩川の水を育む豊かな水源林や安定給水に欠かせない小河内ダムを都民共有の財産としてしっかりと次世代に引き継いでまいります。
質問2
次に、安全でおいしい水について伺います。
タップウオーターは水道水という意味であり、ことし六月からスタートしたタップウオータープロジェクトという名前から、かつて、蛇口から水をごくごく飲んでいた日本の文化を継承したいという水道局の思いを感じ取ることができます。
しかし、中には、いまだ水道水に不安を覚える都民もいます。昨年、我が党が水の見える化を提案し、実現した水道水質モニターは、簡単な水質測定キットを使って自宅の水道水質をセルフチェックできるものであり、結果がすぐに見えてわかりやすいと思います。
私も、キットを国内外において何度か使ってみましたが、水道水に不安を抱える人にとっても、水道水の質のよさをみずからが確かめることができるすぐれたツールです。
今後、東京オリンピック・パラリンピックなどを見据えて、東京の水道のよさをアピールしていくべきですが、これには都民の理解なくしては成り立たないと思います。
行政が一方的に伝えるだけでなく、都民みずからが水道水の質のよさを実感してこそ、水道水に対する理解向上につながり、また、体験した方からの口コミなどでの広がりも期待できます。
そこで、水道水質モニター制度の実施結果を伺います。また、タップウオータープロジェクトを今後どのように展開していくのかについても伺います。
答弁2
水道局長
水道水質モニター制度の実施結果などについてでありますが、水道水が高品質で、環境や家計に優しく、生活に欠かせないことを都民にご理解いただくため、本年六月に東京タップウオータープロジェクトを開始いたしました。
その重点施策の一つである水道水質モニター制度では、千三百人を超える方に自宅の水道水質をセルフチェックしていただきました。結果は全件適正であり、モニターからは、水道水が安全だと思った、これを家族や知人に伝えたいなどの意見も多く寄せられ、信頼感の醸成につながりました。
このように都民が体験し、誰もが共有できることが重要であり、今後、こうした視点から、このプロジェクトの実績や成果を検証し、さらに効果的に推進していくことにより、東京の水道水が都民の誇りとなる姿を目指すとともに、これを東京の強みとして、国内外に広くアピールしてまいります。
医療政策
質問1
次に、三多摩・島しょ地域における死因究明制度についてお伺いいたします。
解剖や検案による死因の究明は、人が受ける最後の医療ともいわれています。これは、犯罪の見逃しだけでなく、安心・安全に暮らしができる社会をつくる上でも重要なためです。
一例を挙げると、今では広く知られているエコノミー症候群や高齢者の熱中症は、死因究明制度があったからこそ広く取り上げられ、予防にもつながったのです。
このように、死因究明制度の重要性から、国は、死因究明等推進会議を設置し、検討を行うとともに、本年六月には死因究明等推進計画が閣議決定されました。この中で、国は、地方独自の取り組みを促すだけでなく、死因究明等に係る地域間の格差解消を進めるとしています。
東京都には、死因究明の専門機関である監察医務院がありますが、法の規定により、対象地域は二十三区のみとされています。多摩・島しょ地域では、大学、医師会が協力してこの業務を行っていますが、検案の多くは東京都医師会等に委託して行われており、最近は、検案を行う医師の高齢化や人材確保が難しくなっているといわれております。
実際、平成二十五年の取扱実績は、区で、検案一万三千五百九十三件、解剖二千三百三十八件であるのに対し、多摩・島しょ地域では、検案六千三件、解剖七百七十八件でありますが、解剖率で見ると、二十三区が一七・二%であるのに対し、多摩・島しょ地域では一三・〇%と違いがあります。これは、ご遺族の承諾が必要であることなど、死因究明制度に違いが生じていることが原因と考えられます。
今後は、高齢者の増加に加え、在宅医療が進められることから自宅で亡くなられる方がふえ、検案や解剖の潜在的な需要が増加することも予想されています。このことからも、地域によって差のない死因究明体制の整備は重要な課題と考えます。
監察医制度の適用がない多摩地域においても、これまで以上に精度の高い検案、解剖が行えるよう、死因究明体制の強化に努める必要があると思いますが、今後どのように対応していくのか、知事の見解をお伺いいたします。
答弁1
知事
多摩・島しょ地域の死因究明体制についてですが、死因究明を適切に行うことは、死者の尊厳や権利を守り、公衆衛生の向上や医学の進歩にも貢献するものであります。
死因が不明な死体を検案、解剖する監察医を置くべき地域は、政令によりまして、東京二十三区、大阪市、横浜市、名古屋市、神戸市の五つの地域と定められております。そのための組織として、都は、監察医務院を設置しております。
政令で定められていない多摩・島しょ地域では、東京都医師会や大学等の協力も得ながら体制を確保し、遺体の検案を行っております。さらに、任意で、遺族のご承諾をいただいた上で解剖も実施しております。あわせて、検案医の確保を図るため、大学の法医学教室とも連携し、その育成に努めております。
死因究明の体制は、本来、国が必要な法整備を行い、地域を限定せずに整えることが必要であります。都は、監察医制度が都内全域に適用できるよう、繰り返し国に求めてきており、今後も強く働きかけてまいります。
また、都は、医師会や学識経験者等から成る検討会を設置し、都の死因究明体制に関する今後のあり方について、現在、議論を進めております。その議論も踏まえながら、多摩・島しょ地域における死因究明体制の一層の強化に努めてまいります。
防災対策
質問1
最後に、都民の安心・安全を守る防災対策の強化についてお伺いいたします。
我が党は、さきの第三回定例会において、外に出ていくばかりが外交ではありません、東京には、百五十三の各国大使館を初め、諸外国、地域の代表事務所が集積をしており、例えば、誰もが関心のある防災を切り口に、これらの大使館などと連携を強化していくことも、都市外交の手段として有効だと考える旨、提案をいたしました。
これに対し、知事からは、大使館等の所在地の区や国とも連携しながら、実務レベルでの連絡体制を一層強化するとともに、連携強化に向けた意見交換の機会を設けるなど、災害時に機能する協力体制づくりを行うとの答弁がありました。
また、先月発表された都市外交基本戦略素案においても、今後の具体的な取り組みとして、在京大使館等との関連強化という項目が明記されており、都としても、実務レベルで新たな都市外交の展開を図っていくものと受けとめております。
そこで、防災面における大使館等との連携について、具体的な取り組みも含め、今後の展開についてお伺いいたします。
答弁1
政策企画局長
防災面での大使館等との連携についてですが、さきの定例会でのご指摘を踏まえ、連携強化は重要との認識のもと、可能なことから着手しており、早速先月には、在京米国大使館首席公使による防災関連施設の視察、都の防災施策の説明及び意見交換会を行いました。
米国大使館側からは、連絡体制の強化について提案があり、非常時のホットラインの開設など、具体的に検討していくこととなりました。また、防災訓練を相互に視察するなど、関係を深めたいとの意向が示されました。
先日発表した都市外交基本戦略素案でも、大使館等との関係強化を盛り込んでおります。大使館等とは、東京の魅力の発信や情報収集などで緊密な連携を進めており、今後とも、防災面での取り組みを初めとして、さらに強固な関係を構築してまいります。
質問2
次に、防災ブックの作成に向けた取り組みについて伺います。
東京では、昨年十月、伊豆大島で大規模な土砂災害が発生し、多くの方が犠牲となってしまいましたが、ことしも、全国でさまざまな災害が発生しています。八月には、広島県で七十四名の方が犠牲となる大変な土砂災害が発生いたしました。また、九月には、御嶽山が噴火し、六十名を超える死者、行方不明者が発生してしまいました。
このような災害の状況を見ると、行政による事前の防災対策の重要性を改めて痛感する一方で、我々一人一人がこうした災害に直面した際、いかに適切な行動がとれるかが生死を分けるということも感じます。
都は、都民一人一人が災害に直面した際、適切な行動がとれるよう、その普及啓発を目的に、今年度、防災ブックを作成するとしております。大変重要な取り組みであり、専門家の知見や関係機関の知識、ノウハウを総動員して、しっかりとした内容にしていくべきと考えます。今後、どのように取り組んでいくのか伺います。
答弁2
総務局長
防災ブックについてでございますが、災害から都民の生命と財産を守るためには、行政の取り組みだけでなく、都民一人一人の防災の取り組みが重要でございます。防災ブックは一家に一冊常備され、各家庭における防災指針ともなる冊子を目指しており、その作成に当たっては、行政はもとより、防災機関や専門家等の知見を活用していくことが必要となります。
また、子供から高齢者まで広く都民に読んでいただけるよう工夫することも重要であり、構成や体裁等について検討することも求められます。
このため、まずは年度内に防災ブックの試作版を作成し、関係機関に加え、専門家や都民も交え、検証いたします。この検証を通じて内容を精査し、来年度の完成版の作成、配布に向けて取り組んでまいります。
質問3
都民の命を守る災害対応体制の構築も欠かせません。発災後、重要なことは、いかにして人命救助のための活動を迅速に行っていくかです。
都は、本年四月、発災から七十二時間を中心に、国や市町村に加え、自衛隊、消防等関係機関との連携内容や手順を示した首都直下地震等対処要領を作成しました。こうした取り組みは高く評価したいと思いますが、今後は、実際の災害時において、これがしっかり機能するよう体制を整えていく必要があると思います。
応急体制をハード、ソフトの両面から強化していくことが重要と考えますが、都の見解を伺い、私の質問を終わります。
答弁3
総務局長
発災時の災害対応体制の強化についてでございます。
大規模災害発生時には、自衛隊、警察、消防等が円滑に連携し、迅速に救出救助活動を行うことが重要でございます。
このため、本年四月、首都直下地震等対処要領を作成し、現在、訓練等を通じた検証や協議を進めております。対処要領では、広域応援部隊等の集結拠点であり、ヘリの離着陸スペースともなる大規模救出救助活動拠点の候補地として、都立公園など三十二カ所を位置づけております。
この拠点を円滑に機能させることが、災害対応上大変重要なことから、現地で管理運営等を行う職員の実践的な訓練や研修を実施するとともに、通信設備等の整備充実を図ってまいります。
今後とも、対処要領で示した応急対策活動の実効性を高める取り組みを積極的に推進してまいります。