
八丈島における地熱発電
質問1
初めに、再生可能エネルギーについて伺います。
島しょ地域においては、今後再生可能エネルギーの導入を促進すべきと考えますが、知事が施政方針演説で述べられたとおり、島しょを含めた地域振興という都政の命題の中に、東京が進める電力制度改革をビルトインするという新しい発想が重要です。
「二〇二〇年の東京」へのアクションプログラムでは、自然に恵まれた島しょ地域において、地熱、太陽光、風力などの活用を図ることとされ、その中で、先行的に八丈島における地熱発電の大幅拡大プロジェクトの検討が開始されることとなりました。
このプロジェクトは、現在の地熱発電所が更新時期を迎える機会をとらえ、その規模を三倍に拡大するとともに、出力調整用に揚水発電を導入することで、島の電力の九割近くを賄えるようにするという画期的なものです。
地元からは、島のイメージアップにつながるなど期待の声が上がる一方、地熱発電所から発生する臭気への不安の声も聞こえます。都は、このような地元の声にも真摯に耳を傾け、理解を得るため丁寧に説明していく必要があると考えます。
八丈島以外では、知事は三宅島の太陽光発電に言及されていますが、既に御蔵島で公共施設へ太陽光発電が設置され、また、神津島で波力発電の実証実験が進められるなど、各島独自の取り組みも出始めています。都は、このような動きを踏まえ、各島の特性に応じた再生可能エネルギーの導入を検討すべきと考えます。
八丈島のプロジェクトは、電力エネルギー改革の一環として、また、島しょ部全体における先行的なモデル事業として位置づけられていますが、改めてその意義について知事に所見を伺います。
答弁1
知事
八丈島における地熱発電の大幅拡大の意義についてでありますが、震災後間もない一昨年の七月に、今後のエネルギー政策を考えるために、八丈島の地熱発電所を自分の目で確かめました。そのポテンシャルの大きさを実感したところであります。
今回のプロジェクトは、このポテンシャル豊かな地熱発電を最大限活用し、電源を東京電力のみに頼らず多角化できるという点で、電力エネルギー改革の一環として位置づけられたものであります。
また、この取り組みは、今後の我が国では拡大が期待される再生可能エネルギーである地熱発電によって、島という一つのエリア全体をほぼ賄い、電力の地産地消を図るという先駆的な取り組みであります。既に、八丈町を初め地元関係者や東京電力、専門家をメンバーとした検討委員会を立ち上げています。
具体化に当たっては、最新の地熱発電の方式を用いて、おっしゃられたような臭気対策を確実に行い、住民の不安を解消するとともに、観光資源ともなる、そういうメリットもアピールしながら、地元の理解を得ていくつもりであります。
この取り組みをリーディングプロジェクトとして進め、さらに各島におけるポテンシャルの調査を行い、島しょ地域全体における再生可能エネルギーの導入を促進したいと思っています。
離島振興
質問1
次に、小笠原振興について伺います。
小笠原諸島は、我が国に返還されてことしで四十五周年を迎える節目の年となります。この間、特別措置法のもと、復興、振興開発が進められ、住宅、道路、水道などの生活基盤が重点的に整備されてきました。
しかしながら、交通アクセスの改善や医療、福祉サービスの確保など、残された課題に加え、東日本大震災を教訓とした新たな防災対策や返還後に整備された既存施設の更新といった新たな課題も山積しています。
一方、小笠原諸島は、領域の保全や海洋資源の確保など国益に重要な役割を担っています。
こうした中、島民が安心して住み続けるために必要な生活環境の整備や産業振興の根拠法である小笠原諸島振興開発特別措置法が、平成二十五年度末で期限を迎えることとなりました。ついては、国に対し、その改正、延長を強く働きかけていく必要があります。
この特別措置法の中でも、交通の確保等についての配慮がうたわれており、本土への交通アクセス改善は、小笠原にとって最重要課題です。特に航空路開設は島民の長年の悲願であり、開設に向けた取り組みを着実に進めていく必要があります。
また、航路についても、世界自然遺産登録後、観光客が増加する中、現「おがさわら丸」の狭隘化が指摘され、小笠原村からも船の更新に対する要望書が提出されており、村民生活の安定と産業振興を進める上で、早期に新たな船を建造する必要があります。
そこで、現在の小笠原諸島の交通アクセス改善に向けた都の取り組みについて伺います。
答弁1
総務局長
小笠原諸島の交通アクセス改善についてでありますが、小笠原へのアクセス改善は、島民生活の安定と産業の振興を図る上で極めて重要でございます。都は航空路について、平成二十年に小笠原航空路協議会を設置し、検討を行ってまいりましたが、自然環境への影響を初め、費用対効果、運航採算性などさまざまな課題があることから、引き続き慎重に課題整理を進めてまいります。
一方、航路につきましては「おがさわら丸」の経年劣化に加え、世界自然遺産登録に伴う観光客の増加やニーズに対応するため、東京都離島航路地域協議会に新たに部会を設置し、小笠原航路の改善と次代の定期船のあり方について検討を開始いたしました。
来年度は、現在の航路の課題のほか、効率性や採算性の高い運航形態などについて調査委託を行う予定であり、引き続き部会を通じて、小笠原村や運航事業者などと検討を進め、早期の具体化を図ってまいります。
質問2
次に、離島振興について伺います。
知事は施政方針において、島しょ地域の振興に力を尽くすと発言されました。大変心強い言葉であり、島民を代表して大いに期待しています。
昨年、離島振興法が改正され、法期限が平成二十五年度から十年間延長になりました。また、今回の改正では、離島で特に問題となっている人口の大幅な減少に対応するため、定住促進が法の目的として明記されました。
こうした中、都は改正された離島振興法に基づき、東京都離島振興計画の策定を進め、今般、その素案を公表しました。今回、まずは各島が住民意見を反映して島別振興計画案を作成し、これを踏まえて策定したものと聞いており、より島の実情に合った計画として、島民も大きな期待を寄せています。
しかしながら、最も重要なのは計画を策定することではなく、本計画をいかにして具体的な施策に結びつけていくのかにあります。今後、島の抱える多くの課題を解決し、持続的発展を進めていくため、都はどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
答弁2
総務局長
離島振興についてでありますが、都はこれまで、島しょ地域の自立的発展に向け、港湾施設や道路などインフラ整備や、離島の地域資源を生かした産業振興などに取り組んでまいりました。しかし、人口減少や基幹産業の低迷に歯どめがかからず、東日本大震災を教訓とした防災対策などの課題も生じており、その解決のため、今後十年間の振興の方向性を示した新たな離島振興計画を策定することといたしました。
先般公表いたしました素案では、今後の離島振興策として、農漁業の強化や新たな視点の観光振興、津波避難施設の整備、再生可能エネルギーの活用、島づくりのリーダー育成などについて重点的に推進することを掲げております。
計画策定後は、全庁一丸となった体制のもと、事業主体の町村と連携して進行管理やフォローアップを行うことにより、計画の実効性を確保し、島しょ地域の定住促進と持続的発展に向けた振興策を確実に推進してまいります。
質問3
また、基本理念に掲げられた定住促進を進めるには、食料や医薬品など生活必需品の安定的な確保や島の産品の円滑な流通を可能にする交通アクセスの改善が必要不可欠ですが、冬季を初めとしていまだ欠航が多いのが実態です。さらに持続的発展をするためには産業の振興が必要であり、その大きな柱の一つに漁業がありますが、島では漁船を安全に係船できる岸壁がまだまだ不足しています。
島民の暮らしを安定させ、自立を後押しするためには、定期船の安定的な就航の確保や産業振興に不可欠な港湾漁港の施設整備が重要と考えますが、所見を伺います。
答弁3
港湾局長
伊豆諸島における港湾漁港の整備についてでありますが、伊豆諸島は、我が国でも特に厳しい気象海象条件にあり、これまでも港の整備を着実に進めてきましたが、全国の離島に比べて就航率はいまだ低い水準にあります。また、漁港でも、荒天時には港内の波浪が大きく、漁船が他港に避難を余儀なくされているのが現状でございます。
島しょの港は、島の方々の生活を支え、島の自立的発展、活性化に不可欠な役割を担う重要な拠点でございます。そのため、定期船や漁船が安全に利用できるよう、岸壁の整備を推進するとともに、港内の静穏度を向上させるための防波堤の整備を進めてまいります。
今後とも、港湾や漁港施設の整備に全力で取り組み、島の産業の活性化や生活における安全・安心、利便性の向上に寄与してまいります。
インフラ整備
質問1
さらに、島しょ地域は、多摩山間部と同様に急峻な地形のため、道路が限られており、一たび落石や斜面崩壊などが発生すると、島内交通に甚大な影響を来すことになります。都道は、住民の生活や産業経済活動を支える極めて重要な都市基盤であることから、日ごろから備えを確実に行うとともに、状況に応じた対策を計画的に実施すべきです。
こうした観点から、道路の安全・安心の確保に寄与する道路災害防除事業を積極的に推進すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁1
東京都技監
道路災害防除事業についてでございますが、島しょ地域や多摩山間部の都道は、地域の生活や産業経済を支えるとともに、災害時には避難、救援活動の生命線ともなる極めて重要な社会基盤でございます。
このため、都では、斜面の崩落や落石などによる通行への影響を未然に防止するため、日常的な巡回点検に加え、専門技術者により、斜面の安定度を評価する五年に一度の定期点検、大雨などの際に行う異常時点検などにより、斜面の状況を的確に把握いたしまして、緊急度の高い箇所から計画的に対策を実施しております。
本年一月には、この道路災害防除事業をアクションプログラム二〇一三に位置づけ、経年劣化が進んだモルタル吹きつけ斜面の対策に加え、擁壁や落石防護さくの設置など多様な対策を、現道の拡幅や代替ルート整備とあわせて効果的に推進し、総合的に道路の防災性を高めていくことといたしました。
平成二十五年度には、島しょ地域において、大島の下地波浮港線など八路線、十七カ所で、多摩山間部におきましては、国道四一一号など十路線、三十二カ所で対策工事を実施いたします。
引き続き、道路災害防除事業を全力で推進し、地域の生命線である都道の安全・安心を確保してまいります。
質問2
また、島しょ地域は、火山噴火や地震、台風、集中豪雨に襲われるなど、厳しい自然条件のもとにあり、特に火山の噴火はいつどこで起きるか予測が困難です。私の地元、大島の三原山では、これまで定期的に噴火を繰り返していることから、不安を常に抱えています。
このような中、今年度末には、溶岩流から野増地区の住民を守る都の大宮沢溶岩導流堤が完成するとのことであり、安全・安心の向上に寄与できるものと思います。
一方で、津波対策については、昨年、内閣府や東京都から発表された巨大地震による新たな津波想定によると、伊豆・小笠原諸島には今までの予想をはるかに超える巨大津波の発生が想定されており、港の周辺に集落が広がっているところでは、巨大津波が襲った場合の被害は甚大なものとなります。住民が安心して働き、暮らせるようになることが大切であり、このことが離島の定住促進にもつながると考えます。
そこで、伊豆・小笠原諸島の港湾や漁港における津波対策について伺います。
答弁2
港湾局長
伊豆・小笠原諸島の港湾漁港における津波対策についてでありますが、比較的発生頻度が高いレベル一津波と、最大クラスのレベル二津波を想定し、対策を進めることといたしております。
レベル一津波に対しては、港背後の集落等への浸水を防護するため、海岸保全施設等を整備するとともに、津波の襲来を受けても損傷しない強度を備えた港湾や漁港施設の整備を進めてまいります。
また、レベル二津波に対しては、避難を前提に、津波到達までの時間が短い港に避難施設を設置いたします。あわせて、津波軽減効果が期待できる防波堤を粘り強い構造に改良し、施設の被害の最小化に努めてまいります。
こうした考え方に立って整備計画を策定し、今後とも、津波に備える港湾や漁港施設の建設、改良を進め、安心して働き、活動できる港づくりに取り組んでまいります。
産業振興
質問1
次に、観光振興について伺います。
観光は、人々の心を豊かにするだけではなく、新たに消費活動を創出し、地域の経済を活性化させます。東京の島々は数多くの観光資源が存在し、観光によって地域を活性化させる可能性を秘めています。
こうした中、近年、各島の取り組みとして民間事業者と連携した女性限定の体験型島ガールツアーや、お台場で若い人たちに新島のくさやの味を堪能してもらうイベントなど、それぞれの島がその独自性を発揮した取り組みを行っていますが、このような各島の特色を生かした取り組みへの都の支援の状況について伺います。
答弁1
産業労働局長
島しょ地域の観光振興についてでございますが、都は、各島が特徴ある資源を生かし、主体的に取り組む観光振興事業への支援を行っております。
今年度の代表的な取り組みとして、新島では、独特の景観を持つ抗火石の採石場跡地を新たに散策ルートに加え、ほかの島々を一望できる展望台を整備しています。また、三宅島では、溶岩が一面に広がるエリアを散策するための遊歩道の設置を行っております。さらに神津島では、アドバイザー派遣事業を活用し、海の魅力に手軽に触れられるよう、水中の地形や観察できる生物等を紹介する新たなマップの作成を進めております。
今後も、島しょ地域の観光振興に向け、それぞれの島がその特徴を最大限発揮できるよう、ハードとソフトの両面からきめ細かな支援を効果的に行ってまいります。
質問2
また、これらの魅力ある取り組みは、旅行者誘致に欠くことのできない存在ですが、それでも各島単独での取り組みには限界があります。昨年の予算特別委員会において、私は島同士の連携による認知度の向上を提起しました。各島独自の取り組みに加え、東京の島全体として、より強力に連携しアピールすることで、さらなる集客やリピーターの確保につなげていくことができると考えます。
そこで、島しょ地域の観光連携に対する都の今後の取り組みについて伺います。
答弁2
産業労働局長
島しょ地域の観光連携についてでございます。
島しょ地域のさらなる観光振興のためには、各島独自の取り組みに加え、自然観察やマリンスポーツ、食などをテーマに、島同士が連携し、東京の島を一体としてその魅力を広く発信することが効果的です。そのため、都は新年度から、それぞれの島が参加する新たな協議会の設立を支援し、連携した観光振興の取り組みについて検討を開始いたします。また、各島が共同して行う研修など、観光振興を支える人材を育成する体制を強化してまいります。
さらに、多くの観光客が島の情報を容易に収集できるよう、島の魅力を総合的に紹介するポータルサイトの整備を支援いたします。このサイトでは、宿泊予約サイトと連携するなどの工夫を行い、効果的な情報発信を図ってまいります。
こうした取り組みにより、島しょ地域の観光振興を着実に展開してまいります。
質問3
さきの代表質問において、我が党の野島幹事長から農業振興について質問を行い、都からも、多摩・島しょ地域の農地の利活用について積極的な答弁をいただきましたが、改めて島しょの農業振興の観点から、二点ほど質問いたします。
まず、担い手の育成について伺います。
島の農業が元気になるためには、担い手の育成が重要であり、それぞれの島でも町村などが主体となって、農地のあっせんや栽培施設の確保など、農業を始める際の支援に努めています。しかし、区部や多摩に比べて農業者の高齢化が進んでいる島では、新たな担い手の育成が喫緊の課題であり、農業を始める方々を大切に育てていくための支援が不可欠です。
例えば八丈町では、平成二十年度に農業研修センターを開設しており、地元の農業者の皆さんを初め、都の協力も得て、研修生に栽培技術を身につけてもらうよう努めています。
私は、このような取り組みをもっとほかにも広げていくことが重要だと考えていますが、今後、都は担い手の育成にどのように取り組むのか、伺います。
答弁3
産業労働局長
島しょ地域の農業の担い手育成についてでございます。
都はこれまで、島の環境に合った栽培技術の習得を目的に、町村が研修を行う際、ハード、ソフトの両面から支援を行ってまいりました。八丈町による研修施設の整備に対して補助を行うとともに、講習会において都の普及指導員が実践的な技術指導などの支援を行い、新たに二名の方が営農を開始いたしました。また、神津島村においても、新年度から研修を開始することから、今年度、都は研修施設の整備に助成するとともに、研修カリキュラム策定への助言を行っています。
今後とも、こうした支援により、島しょ地域における担い手育成を着実に進めてまいります。
質問4
また、農地を借りて経営規模を拡大したいという意欲ある農業者もおられます。一方、最近では、農作物が植えつけられていない遊休農地があり、こうした農地を島の農業の活性化のためにも何とか活用できないものかと思っています。
都では、農地を再生する取り組みへの支援を進めていますが、規模を拡大したい農業者の声もまだまだあると聞いております。
そこで、今後、都は島の遊休農地の解消に向けてどのように取り組むのか伺いまして、質問を終わります。
答弁4
産業労働局長
島しょ地域の遊休農地の解消についてでございます。
都は、これまでも農業への新規参入者や耕作面積の拡大を図る農業者のために、遊休農地の再生を支援してまいりました。その結果、四年間で約十三ヘクタールの遊休農地を解消し、島の特産品であるアシタバやフェニックスロベレニーなどの生産に寄与しています。
しかし、いまだ遊休化した農地が多数残っている一方で、耕作面積の拡大を望む農業者も多いことから、都は新年度、支援の規模を拡大し、遊休農地の再生のスピードをさらに高めて、その利活用を促進することといたしました。
今後とも、遊休農地の解消に一層取り組み、島しょ地域の農業の活性化に努めてまいります。