
高齢者福祉の充実
質問1
日本共産党都議団を代表し、質問を行います。
今定例会は、石原知事が任期途中で都政を投げ出し、知事不在という異常な事態の中で開かれました。それは、新銀行東京や尖閣諸島購入問題などの石原前知事によるトップダウン事業が行き詰まり、福祉、教育の破壊などが都民との矛盾を広げた結果にほかなりません。
石原都政の地方自治体にあるまじき立場は、一九九九年に出した危機突破・戦略プランに明白にあらわれています。そこでは、福祉について、専ら都民に自助努力を押しつけ、東京都の役割は社会的連帯の一つにすぎないという立場が示されています。この方針が防災対策などにも貫かれてしまったのです。
その結果、どうなったでしょうか。
第一に、高齢者福祉です。
石原前知事は、何がぜいたくかといえばまず福祉だといって、福祉を次々に切り捨てました。とりわけ高齢者の分野は、老人医療費助成も寝たきり手当も廃止し、シルバーパスは全面有料化など、根こそぎにしました。
高齢者一人当たりの老人福祉費は、石原都政発足時の一九九九年度に比べ二八%も減らされました。四%減らした鳥取県を除く四十五道府県はすべて増額で、平均三五%もふやしているのです。まさに最悪の切り下げが東京都で行われました。
高齢者の中には大きな財産や収入がある人もいます。しかし、それはごく一部です。東京の高齢者の国民年金受給額は平均月額五万四千円でしかありません。四人に一人は年収百万に満たない収入です。家賃も物価も全国一高い東京で、これでは健康で文化的な生活は営めません。
貯蓄ゼロという方も一割以上います。退職金などの若干の蓄えがあっても、生活費として取り崩され、一たび病気やけがで入院したり、介護の費用がかかれば、あっという間に底をついてしまいます。孤立死や栄養失調で亡くなる方もふえています。
東京都が直視すべきは、こうした厳しい状況に置かれている高齢者の生活実態ではありませんか。都の認識を伺います。
答弁1
福祉保健局長
高齢者の生活実態についてでございますが、高齢者世帯の一人当たりの平均所得について見ると、平成二十三年の国民生活基礎調査では、全世帯の平均が二百万四千円に対して高齢者世帯では百九十四万四千円と、その差は小さい状況にあります。
貯蓄についても、平成二十四年の高齢者白書によると、世帯主が六十五歳以上の世帯の平均貯蓄額は二千二百五十七万円で、全世帯平均である千六百六十四万円の約一・四倍となっております。
平成二十一年の国民生活基礎調査によると、高齢者世帯の約二四%を占める単独世帯では年収二百万円未満の世帯が六割を超えておりますが、一方で、平成二十二年度の東京都福祉保健基礎調査では、高齢者単独世帯の持ち家率も約六割となっております。
このように、高齢者の生活実態はさまざまであり、一人一人の収入や貯蓄は、就労経験の有無、従事していた仕事の種類や内容、職責、本人の努力等に応じて決まるもので、多い人も少ない人もおります。
そのために社会保障制度が構築されており、低所得の高齢者のためには、後期高齢者医療制度などの医療保険制度や介護保険制度の中で、さまざまな軽減措置がとられているところでございます。
さらに、都独自に介護サービスに係る利用者負担の軽減について対象サービスを拡大するほか、区市町村が高齢者の生活実態を踏まえて行う施策に対し、包括補助により支援しているところでございます。
質問2
高齢者福祉の拡充は、現役世代、若い世代にとっても、親の介護やみずからの将来への安心につながる大事な課題です。すべての高齢者が健康で文化的な生活ができるようセーフティーネットを拡充することこそ、地方自治体として行うべきと考えますが、見解を伺います。
高齢者福祉は、平均所得ではなく、国民生活基礎調査による貧困率が男性の単独世帯で三六%、女性の単独世帯で六〇%以上もあること、そして今の制度では救済されていないという現実を踏まえるべきことを強調するものです。
答弁2
福祉保健局長
高齢者施策の充実についてでございますが、都は、高齢者が可能な限り住みなれた地域や自宅で安心して生活し続けることができるよう、高齢者保健福祉計画に基づき、認知症高齢者グループホームなどの設置促進や介護人材の育成など、高齢者を支えるさまざまな施策を実施してきたところでございます。
本年三月には第五期計画を策定し、現在、介護サービス基盤の整備や高齢者のニーズに応じた住まいの確保、医療が必要な人や認知症の人への対応、見守り等の生活支援サービスの充実などに取り組んでいるところでございます。
質問3
石原都政のもとで、老人保健施設の整備率は全国四十七位、認知症グループホームは全国四十六位と、大きく立ちおくれました。特別養護老人ホームの整備費補助も、二〇〇八年度に九九年度の一五%にまで減らされました。促進に不可欠な用地費助成も廃止しました。都民の運動とともに我が党が追及した結果、予算は少し復元されましたが、まだまだ不十分であり、待機者は四万三千人を超えています。
特養ホームに申し込んだら、二年、三年待つのが当たり前といわれ、途方に暮れているとか、高齢者が高齢者を介護せざるを得ない老老介護や、認知症高齢者同士の認認介護なども深刻な問題になっています。都として、特養ホームなど介護施設、グループホームの整備を抜本的に促進する必要があると思いますが、いかがですか。
東京都にとって住民の福祉、暮らしを守るという地方自治体の魂を取り戻すことが何よりも求められていることを指摘するものです。
答弁3
福祉保健局長
介護サービス基盤の整備についてでございますが、都は、保険者である区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、計画的に基盤整備を進めております。
第五期計画においては、平成二十四年度からの三年間で、特別養護老人ホームを約五千人分ふやし、定員四万五千人余りとするとともに、認知症高齢者グループホームについても約三千人分ふやし、定員一万人分のサービス量を確保することとしております。
整備に当たっては、高齢者人口に比べて整備状況が十分でない地域の補助額を最大一・五倍に加算するほか、都有地の減額貸し付けや定期借地権の一時金に対する補助への加算など、都独自の多様な手法を活用し、促進を図っているところでございます。
教育の再建
質問1
第二に、教育の再建です。
都は、教育庁予算を減らし続け、今年度は一九九九年度と比べ六百六十八億円も減りました。都立高校は統廃合され、定時制高校は半減しました。生徒は希望校に入れず、遠くて通い切れないなど、深刻な状況が生まれています。特別支援学校は深刻な教室不足で、更衣室や特別教室まで普通教室に転用しても足りず、一つの教室をカーテンで間仕切りして二つの教室として使うなど、通常考えられない事態が続いています。予算を減らさなければ多くの都立高校は存続できたし、特別支援学校を増設し、教室不足を解消できたのです。
都は、特別支援学校のカーテン教室を二〇二〇年までに解消する計画ですが、保護者からは、そんなに待っていられませんと怒りの声が上がっています。緊急に解消すべきですが、答弁を求めます。
答弁1
教育長
特別支援学校の再編整備計画についてでありますが、都教育委員会は、平成二十二年十一月に策定した東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画に基づき、知的障害特別支援学校の教室数を確保するため、新設二校、増改築十三校などの再編整備を進めております。これまでの計画を含め、学校数は、平成十六年度の三十校一分校から、平成三十二年度には四十四校となります。
今後とも、再編整備を着実に推進していくとともに、カーテン等で間仕切りをした教室については、計画期間中、児童生徒の教育活動に支障がないよう十分配慮してまいります。
質問2
都は、小中学校の少人数学級も拒み続けてきましたが、都民の声に押されてようやく踏み出し、教育効果を認めるに至りました。そうであるならば、都独自に少人数学級の拡充を行うべきではありませんか。見解を伺います。
答弁2
教育長
都独自の少人数学級の拡充についてでございます。
都教育委員会は、平成二十二年度から、小一問題及び中一ギャップを予防、解決するために、小学校第一学年、中学校第一学年等を対象として教員を加配し、学級規模の縮小や少人数指導、チームティーチングの導入など、画一的な少人数学級ではなく、各学校の実情に即した最適な方策を選択できる弾力的な制度を実施してまいりました。この柔軟な学級編制の仕組みは、国の平成二十三年度の、いわゆる義務標準法の改正に反映されたところです。
都教育委員会は、今後とも、こうした方針を維持してまいります。
質問3
石原前知事は、日の丸・君が代の強制を初め、職員会議の形骸化や上意下達の組織づくりなどを強行しました。このため、教職員が自由に話し合い、学び合うことが妨げられ、子どもたちに向き合う余裕を奪われて、学校の教育力が著しく阻害されました。さらに、破壊的教育改革を宣言して、教育内容への介入を強め、過度の競争教育や日本の侵略戦争美化の歴史観に基づく教育、特異な価値観の子どもへのすり込みを求める意思を表明してきました。
石原前知事は、円卓会議で、小学校のころから競争させて、だめなやつはどんどん落第してね、それで小学校にも来られない人間はそれでも構わないなどと公言して、はばからなかったのです。この発言は、すべての子どもたちに教育を受ける権利を保障する日本国憲法や国連子どもの権利条約に反するものですが、いかがですか。
破壊的教育改革をやめ、管理、統制ではなく、学校現場の創意工夫を応援する教育行政を進めること、そして、すべての子どもに行き届いた教育を保障することこそ、今後都が目指すべき方向であることを厳しく指摘しておくものです。
答弁3
知事本局長
平成二十四年四月に行われました、教育再生・東京円卓会議における石原前知事の発言についてのご質問にお答えいたします。
円卓会議は、知事と各界を代表する方々が、今後の教育のあり方について多角的かつ自由に議論することを目的に設置されたものでございます。
ご指摘の前知事の発言は、こうした一連の議論の中で、家庭の責任を述べるとともに、教育における形式的な平等を否定し、落第、原級留置も認めたらどうかという問題意識を表明したものと受けとめております。
なお、我が国の教育制度では、小学校に来られなくても構わないという制度にはなっていないものと理解しております。
防災対策の強化
質問1
第三に、防災対策です。
石原都政のもとで、都の防災対策は福祉と同様に、都民の自己責任を第一とし、被害軽減のための都の予防対策は後景に追いやられてきました。新しい地域防災計画も、この基本が貫かれています。
自助、共助を強調して、都の責任を棚上げすることは許されません。堤防などが決壊したら都民は財産を失います。逃げおくれた多くの都民が命を失います。退避場所を確保することももちろん重要ですが、何よりも東部低地帯対策では、地震、津波から地域を守る防潮堤や海岸保全施設の耐震強化が決定的に重要です。これは都がその気になればできることです。こうした予防対策で都が本来の責任を果たすことこそ強く求めるものです。いかがですか。
答弁1
東京都技監
耐震強化において都が果たすべき責任についてでございますが、都はこれまで、みずからの責務として、沿岸部や低地帯に暮らす約三百万人の生命と財産を守るため、堤防や水門などの耐震補強を進めてまいりました。
これらに加え、想定される最大級の地震時にも浸水を防止する観点から、堤防や水門が有する耐震性の検証を進め、八月に地震、津波に対する都の基本方針を公表し、現在、それらを踏まえた具体の整備計画の策定作業を行っております。
このように、都は、着実かつ的確に対策を進めてきております。
質問2
石原都政が震災対策事業費を半減させたため、堤防を初め都市施設の耐震化が大きく立ちおくれています。我が党の追及で、都は、東部低地帯では、いまだに六十四キロの堤防が耐震化されていないことを認め、耐震済みとされている施設も、堤防では調査箇所の四割で破損の可能性があることを認めました。
都は、近く堤防などの整備計画を策定し、耐震化を進めるとしていますが、防潮堤や損傷し閉じない危険性があるとした十六カ所の水門などを含め、いつまでに整備をするのですか。完成年度を極力短期間にした計画で取り組むことが求められていますが、見解を伺います。
答弁2
東京都技監
防潮堤や水門などの耐震化の計画についてでございますが、都は既に、損傷すれば被害の大きい隅田川の大島川水門など四水門について、民間からの技術提案を含むプロポーザル方式による設計の契約手続を進めております。
現在、十六カ所の水門も含め、具体の整備計画の策定作業を進めており、安全性を確保するため、耐震対策を早期に進めてまいります。
質問3
阪神・淡路大震災では、建物の倒壊による死者が八割を占めました。都はこの問題についてどう認識し、対策を進めるのですか。
答弁3
総務局長
建物の倒壊による被害についてでございますが、都が本年四月に公表いたしました新たな被害想定においても、強い揺れによる建築物の倒壊等により、最大で約六千九百人の死者が発生することを明らかにしたところでございます。
こうした被害想定を踏まえ、既に、今回修正した地域防災計画において具体的な到達目標を定め、住宅の耐震化や家具類の転倒、落下、移動防止対策など、さまざまな対策を促進することといたしております。
質問4
木造住宅密集地域については、延焼による火災の拡大を防ぐことが極めて重要です。しかし、今のように道路建設と再開発に偏った対策では、都民の命と財産は守れません。木密地域については、助成の抜本拡充で住宅の耐震化、難燃化を急ぐことが求められていますが、いかがですか。
答弁4
都市整備局長
木密地域における助成についてでございますが、都は木密地域不燃化十年プロジェクトを立ち上げているところであり、この取り組みにより、木密地域の防災性の向上を図ってまいります。
また、防災都市づくり推進計画に定める整備地域を対象として、公共性の観点から、区と連携し、耐震化や不燃化の助成を行っており、引き続き助成を実施してまいります。
最後に、お金の使い方です。
全国的には軒並み大型開発を縮小しているのに、石原都政は高速道路や巨大ビル建設など、大型開発優先の行政に終始してきました。その特徴は、都の長期計画である「二〇二〇年の東京」の三カ年計画に端的にあらわれています。総事業費の三四%を高速道路などの大型開発に充てる一方で、高齢者対策は四・二%、少子化対策には三・一%にすぎません。
都の予算は、韓国の国家予算に匹敵するほど大きなものです。財政運営のゆがみを改め、都民の命と暮らし、子どもたちの教育を守るために使えば、都民生活が向上し、ひいては内需拡大による経済再建に大きく貢献できるのです。
今都民は、財界、大企業のいい分ばかりに耳を傾ける都政ではなく、都民の痛みに寄り添い、都民の声に耳を傾ける人に優しい都政を切実に求めています。今度の都知事選挙は、原発ゼロを進めるかどうかとともに、憲法を否定する都政から憲法を生かす都政、福祉、暮らしを破壊する都政から都民の福祉、暮らしを立て直す都政へ転換するかどうかが問われる選挙です。我が党は、新しい都政を切り開くために全力を挙げることを表明し、私の質問を終わります。