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  2. 平成23年 第4回定例会(一般質問)
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防災公園の地下部分を活用せよ
障害者の雇用拡大への取組は

中谷祐二

エネルギー政策

質問1
 日本の近代史家である作家、渡辺京二の著書「逝きし世の面影」は、我が国が西洋化し、近代化することによって失った明治末期以前の文明の姿を追い求めたものであります。そこには、今日の日本が失ってしまった伝統、文明が確かにありました。

 西洋化により、日本の伝統的共同体の解体が進み、失われた共同性を求めた姿は、東日本大震災からの懸命な復興が進む中、日本人の規律の正しさ、協調心が呼び覚まされ、公共心の大切さを再認識したことと重なるところです。

 知事は常々、東京は日本のダイナモだ、東京がとまれば日本もとまる、東京が継続して発展し続けることの重要性を訴えておられます。

 今まで、東京で消費される電力エネルギーの多くは、福島原発からの供給でありましたが、東京、いや日本のエネルギー政策が根幹からの見直しが迫られる中で、知事は、東京の電力不足解消のために、百万キロワット級の天然ガス発電所の新設を提唱し、都内に六十カ所整備を進める防災公園に非常用ガス発電施設を設置、さらに、東京電力から独立した送電網を臨海副都心に敷設する計画も打ち上げました。

 そもそも我が国のエネルギー政策の転換期は、原発の導入が契機であります。核の平和利用が叫ばれたのが、五十八年前の一九五三年十二月八日の国連総会で、アイゼンハワー・アメリカ大統領が演説をした、ピースフル・ユースィズ・オブ・アトム、すなわち原子の平和的利用にあります。

 当時の時代背景は、アメリカとソ連の核兵器開発がエスカレートし、核拡散を阻止したい米ソの利害が一致し、核の軍事利用を抑えるために、核の商業利用、原子力発電へと導いたものであります。

 そして、我が国も極めて政治的に、国策として原子力発電の道を選択しました。やがては枯渇するといわれる化石燃料にかわるエネルギー、発電コストも火力発電よりも安い、使用済み燃料を再処理して再びエネルギーとして利用できるなど、核の万能ぶりが昔は随分と吹聴されたものです。

 しかし、実際には原子力発電というのは、消すことができない火をつけてしまった技術にほかなりません。原発は、核分裂反応によって生じた膨大な核エネルギーを直接電力に変えているわけではありません。

 原子力というと非常に先端的な新しい発電形態のように思われがちですが、実は火力発電と同じように、水蒸気をつくり、タービンを回すことで発電機が回転し、電気エネルギーを得るという極めて古典的な発電形態であります。

 原子力発電所をつくり、そこから電力を得ることができても、そこで生まれた放射性物質や廃棄物の放射能は消すことができません。今回の事故も、原子力から生まれた火を完全に消すことができなかったのであります。

 しかし、我々は、放射能汚染の現実を超えて、我が国が再生していくために、エネルギー政策についても新たな選択をしていかねばなりません。

 その選択肢は大きく三つであります。一、徹底的に脱原発を進め、原発のない社会をつくること。一、五十四基ある国内の商業用原子炉を総点検し、原発依存を縮小しながらも、原発とともに生きていく社会を再構築すること。一、自然エネルギーの風力や太陽光発電、バイオマスエネルギー等の比重を上げながらも、天然ガス、火力発電の環境への適合性を高めつつ、蓄電の技術向上を図り、あらゆるエネルギー源の開発を進め、エネルギーベストミックスの改善を図ること。

 そして、今、東京でできることは、みずからが使う電力の自己調達率を高め、平常時からその備えをしていくことであります。

 都が推進しようとする非常用ガス発電も、実用化には時間を要するものでありますし、発電については、環境局、建設局を初め、関係する部局も相当数に及び、都全体で取り組む施策でもあります。

 都として、非常時にも対応できるエネルギー供給システムのグランドデザインをどのように描き、進めていくのか、知事の所見を伺います。

答弁1
知事
 東京におけるエネルギー供給についてでありますが、独占的に供給している電力会社や遠隔地からの電力に過度に頼り切ってきたこれまでのエネルギー供給システムのもろさは、だれの目から見ても明らかとなっております。

 今、必要なことは、地産地消のエネルギーの創出や地域分散型発電の推進など、新しいエネルギー供給モデルへの転換でありますが、国はエネルギー政策の検討会議なるものを乱立させるばかりで、現実の電力改革に一歩も踏み出してはおりません。

 電力の多量消費地である都は、既に猪瀬副知事をリーダーとする天然ガス発電所整備に向けたプロジェクトチームを立ち上げて、東京産のエネルギーの確保に向けた行動を開始しております。

 また、リスクの分散を図るために、六本木ヒルズにおいて示された自立型のエネルギー供給システムをさらに進化させて、臨海都心部においても全面的に展開するなど、電力会社からの電力だけに頼らない地域分散型発電の新たなモデルビルディングに取り組んでおります。

 今後もエネルギーの安定的供給に向けた都独自の取り組みを進めて、既得権益に守られたこの国の電力供給における高コスト構造を解体する突破口としていきたいと思っております。

質問2
 CO2削減に向けて都は、「十年後の東京」実行プログラムにおいて、二〇二〇年までに二〇〇〇年比二五%のCO2排出削減を掲げています。排出量取引制度は、環境に配慮した建築物の普及に取り組む世界グリーンビルディング協会が創設したガバメントリーダーシップ賞を東京都がこのたび受賞しました。先駆者としての取り組みが評価されたことはまことに喜ばしいことであります。

 世界で初めてオフィスビルを対象に、千三百もの事業所をカバーし、排出削減を義務づけたことが評価されたわけでありますが、大規模事業所に対するCO2排出総量削減義務と排出量取引制度において、今回の震災が対象事業者が果たすべき義務の履行にどのような影響を与えたのか伺います。

答弁2
環境局長
 震災後の電力不足によるキャップ・アンド・トレード制度対象者への影響についてございますが、都のキャップ・アンド・トレード制度は、大規模事業者に対しまして、五年間の計画期間内に六%ないし八%のCO2排出削減を求める制度でございます。

 二〇〇九年度のCO2排出実績を見ますと、既に約六割の事業所が削減義務率以上の削減を行っております。制度対象事業所の多くは、電力の使用制限が課せられましたが、これまでの都の制度で蓄積しました省エネのノウハウを生かしまして、比較的無理なく節電に取り組み、来年の夏も多くの事業所で実施するとしております。

 これらの状況を踏まえますと、多くの事業所で、義務履行に向けてさらに取り組みが進むものと考えております。

質問3
 また、都内には、テナントビルが多くありますが、この夏の電力使用制限下においては、建物所有者に義務が課せられていました。一方、電力の使用の大半はビルオーナーではなくテナントであるために、効果を上げるにはテナントの協力が不可欠であるといわれております。

 そうした状況を踏まえ、CO2排出総量削減義務と排出量取引制度においては、どのようにテナントビルにおける節電を進めていくのか伺います。

答弁3
環境局長
 テナントビルにおける節電の推進についてでございますが、テナントビルにおける電力使用の大半は、テナント事業者によるものであり、建物所有者とテナント事業者の協力が不可欠でございます。

 そこで都は、キャップ・アンド・トレード制度において、すべてのテナント事業者に建物所有者の実施する対策に協力する義務を課すとともに、大規模なテナント事業者には、省エネ対策の計画作成と推進を義務づけております。

 都が実施しましたアンケートによりますと、この夏は、建物所有者に対し、省エネ対策の提案をするテナント事業者が昨年に比べて倍増しておりまして、協力して節電を行う取り組みが進みました。

 都としては、テナント省エネセミナーや、現場での省エネアドバイスにより、建物所有者とテナント事業者の協力した節電の取り組みを一層推進してまいります。

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防災対策

質問1
 練馬城址公園を初め、防災公園として位置づけられている公園整備について伺います。

 都は、都市計画公園、緑地の事業進捗や社会情勢の変化とともに、震災も踏まえ、防災機能を高めるために、練馬城址公園、いわゆる豊島園の整備を加速し、避難場所としての機能を維持していくために、新規に事業化を図る方針を打ち出しました。

 二十二ヘクタールという大規模な公園の整備に当たり、防災公園という機能とともに、人が集まる魅力ある公園、観光資材としての活用を図るべきであります。地上部の活用とは別に、防災公園の多機能化のためには、地下部分についての工夫が図られるべきであると考えます。

 都民生活に密着した産業である東京の農業の新たな展開には、都市農業、農地制度の改善を求めていかねばなりません。

 我が党の代表質問にもありましたが、耕作放棄地の再生を図るのはもちろん、東京農業の現状は、認定農業者は十年間で二・五倍、エコファーマーは六年間で七倍になるなど、意欲ある農業者がふえる一方、農地は十年間で一千三百三十ヘクタールも喪失しています。次世代へ継続可能な産業として引き継ぐために、労働生産性を上げる、つまりは売上単価の増加、大規模経営、面積当たりの収穫数をふやすことが必須であります。

 防災公園の地下部分の有効利用と都市農業の今後のあり方を考えると、地下部分に今日の技術レベルをもってすると、十五毛作も可能な水耕栽培による無農薬野菜工場としての活用もぜひご検討いただきたいと提案を申し上げます。

 そこで、六十カ所を予定する防災公園整備においては、地上部分とあわせて地下部分について何か具体的な検討がなされているのかお伺いをいたします。

答弁1
東京都技監
 防災公園の整備についてでございますが、建設局で所管する都立公園八十公園のうち、防災活動拠点や避難場所に位置づけられている六十公園において、防災公園の整備を進めており、既に十九公園の整備を完了したところでございます。

 整備の内容といたしましては、防災トイレやソーラー式公園灯の設置、主要園路の拡幅等でございます。

 防災公園の地下については、現在、応急給水槽や防火水槽などに利用されておりますが、野菜工場など、食料需給への活用は現段階では考えておりません。現行の東京都地域防災計画によれば、都は、都内二十一カ所の倉庫に食料などの物資を備蓄し、被災者に迅速かつ円滑に供給することとしております。

 また、今後は、東京都技術会議の提言も受け、地域分散型、非常用発電装置の設置も進めてまいります。

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都有財産の利活用

質問1
 次に、都有財産の利活用について伺います。

 震災を契機に都が所有する財産利活用も今までとは違った視点での管理運用が求められています。防災対策やエネルギー対策を進めるという点において、都政の重要な資源の一つである公有財産がむだなく、戦略的に使われているかが改めて問われています。

 公有財産の活用とは、いかに税外収入を確保していくか、いかに行政目的のために機能的に活用していくかという二点に集約されると私は考えております。

 そこで、税外収入の確保の観点から伺います。

 平成十八年の地方自治法の改正により、行政財産について、貸し付けできる範囲が拡大されました。この間、私は財政委員会の場で、新たな制度の活用を強く求めてまいりましたが、本年十二月より、第二本庁舎一階のコンビニエンスストアについて、これまでの使用許可から賃貸借契約による貸し付けに移行することになりました。

 本件については、人材支援事業団ではなく、民間企業へ直接使用許可をしておりましたが、今までの使用許可の使用料は年間六百二十万、今回の契約形態の変更により貸し付けにすることによって年間六千八百万円の貸付料となりました。驚くべきことに十倍以上もの税外収入となります。

 都有財産の中には、まだまだ眠っている資産があるのではないでしょうか。議会棟地下にある専門レストランや総合売店など、面積にして約四百坪のスペースも都職員の福利厚生事業の一環として人材支援事業団に財産の使用許可を認め、管理運営をさせています。

 公共減免のため、二分の一減額措置が図られ、年間使用料は二千四百万であります。そのうち、専門レストランに限って申し上げると、一千二百万円の負担をし、経営者などからは、売上管理手数料名目で年間三千九百万円と二千七百万円もの差異が生じているわけです。しかし、建物維持管理や、その他経費がかさみ、最終的には、平成二十二年度決算で五百万円の赤字を計上しています。

 実際の利用者はといえば、職員よりも一般都民の利用者の方がはるかに多い現状をかんがみ、専門レストランを初め総合売店など、利用形態についてそもそものあり方の見直しを検討する必要がありませんか。見解を伺います。

答弁1
総務局長
 議会棟地下一階にあります専門食堂などについてでございますが、現在、都庁舎には約一万人の職員が勤務をしておりまして、公務運営に支障を来さずに限られた時間内で昼食や日用必需品の購入等に対応できるよう、職員向けの施設として庁舎敷地内に食堂や売店などを設置し、一体的に運用しております。

 お話の専門食堂や総合売店につきましては、都民広場や街路に隣接した開放スペースに設置していることから、職員のみならず、多くの都庁来訪者の方々にも気楽にご利用いただけるよう、これまで、テナントの入れかえや施設の改修など、施設の利便性向上に努めてきたところでございます。

 都といたしましては、こうした専門食堂などにつきましては、その設置目的や運営実態に照らし、現行の行政財産の目的外使用許可による設置が妥当であると考えており、今後とも、利用者ニーズや費用対効果などを踏まえながら、そのあり方について不断に検証を行ってまいります。

質問2
 また、事業団と専門レストラン、総合売店などが現在締結している業務委託契約も満了時期をとらえて、本件については、使用許可から貸し付けへと契約形態を変更していくことも可能であると考えますが、見解を伺います。

答弁2
財務局長
 ただいまの専門食堂等の財産上の取り扱いについてでございますが、行政財産は私権の設定が制限されておりまして、庁舎の貸し付けは、余剰スペースを有効に活用する場合に限り、例外的に認められるところでございまして、ご質問の中にありました第二庁舎一階のコンビニエンスストアもこの余剰スペースの一つとして活用いたしたものございます。

 したがいまして、お話の専門食堂等については、ただいま答弁ございましたが、職員の食堂施設として、また、来庁者等の利便性を図るための施設として、あらかじめ庁舎内に必要なスペースを確保するものと位置づけられておりますので、行政財産の目的外使用許可により設置いたしたものでございます。

 したがいまして、これら専門食堂等につきましては、現時点におきましては、貸し付けへの切りかえは考えておりません。

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障害者就労支援

質問1
 最後に、障害者の就労移行支援について伺います。

 障害者自立支援法が二〇〇六年度に施行され、さらに、国が翌年二月に取りまとめた成長力底上げ戦略において、障害者の地域における福祉的就労から一般就労への移行を促進し、可能な限り就労による自立、生活の向上を図ることを目指しております。

 さて、先月末に発表された障害者雇用情勢を見ると、都内の民間企業の雇用障害者数は十三万五千人で、毎年増加傾向にあるものの、実雇用率は一・六一%と、依然として法定雇用率の一・八%を下回っております。特に小規模な企業については、社員が百人から三百人未満の企業で一・〇%、五十六人から百人未満の企業では〇・六五%と、依然として雇用率は低い水準にあります。

 都は「十年後の東京」の中で、平成十九年から十年間で障害者の一般就労三万人以上増加の目標を掲げています。全国の中小企業の一五・五%、大企業の三四%が集積している東京の強みを生かして、国、東京都、企業、経済団体などの連携のもと、障害者の一般就労に一層力を入れていく必要があります。

 昨年七月に、改正障害者雇用促進法が施行され、障害者雇用納付金制度の対象事業主が拡大されたことに伴い、今後は障害者雇用を検討する中小企業がふえていくことが予想されます。

 中小企業は、企業理念として、障害者の方を戦力としてしっかりと雇用していくという姿勢を示していくことが求められ、また、都は、これまで以上に中小企業支援の充実を図り、大都市の優位性を発揮し、障害者の特性に応じた雇用機会の拡大が望まれます。

 都は、今年度からオーダーメード型障害者雇用サポート事業により、企業のニーズを踏まえた支援を行っていますが、中小企業における雇用のさらなる拡大に向けての取り組みについて伺います。

 誠意あるご答弁を求めて、私の質問を終わります。

答弁1
産業労働局長
 中小企業における障害者雇用の拡大についてのご質問にお答えいたします。

 昨年七月の改正障害者雇用促進法の施行によりまして、障害者雇用納付金制度の対象事業主が拡大されましたことを踏まえれば、中小企業を中心に、障害者雇用の重要性について理解を促していくことが必要でございます。

 都は、これまでも中小企業に対して、ハンドブックの配布やセミナーの開催などを通じて、障害者雇用のポイントについて普及啓発を進めてまいりました。さらに、東京しごと財団において企業合同説明会を開催するなど、障害者とのマッチングに向けた支援を行っております。

 これらに加え、今年度から、中小企業における障害者雇用拡大の機運を醸成するため、意欲のある中小企業を対象に、個々の企業の実情に合わせて、採用前の準備から採用後の定着まで一貫して支援するモデル事業を開始しております。

 今後とも、こうしたさまざまな施策を通じて、中小企業における障害者雇用の拡大に向けた支援を着実に実施してまいります。

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