
教育
質問1
武道の必修化について伺います。
先月、日本体育大学相撲部の明月院秀政君が、国民体育大会に続いて、学生選手権で個人優勝し、学生横綱となりました。明月院君は、葛飾区の出身でありまして、都立足立新田高校相撲部の卒業生です。既に角界入りを表明しており、東京都出身の学生横綱であることの誇りを胸に、ぜひ大横綱を目指して、けいこに精進してほしいと期待をしています。
平成二十四年度からは、この国技相撲を含め、中学校において武道が必修化されて、すべての生徒が武道を学ぶことになります。私も空手道を学んでいますが、やはり、我が国固有の伝統的教育文化である武道に継承されてきた価値観、しきたり、感性は武士道精神として国際的にもその普遍性は高く評価されており、我々は誇りを持って、後世に正しく伝えていかなければなりません。
また、武道における一本というのは、心技体といわれるように、魂と肉体が混然一体となり、一瞬一撃にして相手を圧倒するという見事なわざだと思います。先人が鍛錬工夫を重ねて築き上げてきた武道の受け、攻めの美しいわざを正確に学ぶことは、日本人としての必要なたしなみだと思います。
本日は、大東亜戦争大詔奉戴六十九周年に当たりますが、戦後、マッカーサーによって、学校教育における武道は禁止され、ようやく昭和三十三年の中学学習指導要領で、柔道、剣道などの武道は、選択科目として採用されたのですが、なぜか名称は、格技とされました。その格技が武道に変更されたのは平成元年、実に三十一年後のことであります。
しかし、平成十八年の教育基本法の改正を転機として、平成十九年の中央教育審議会での、中学校の武道必修化方針の了承、そして平成二十年告示の新学習指導要領で、平成二十四年度から全中学校で武道教育が完全実施されるわけです。
ちなみに、武道を学ぶことをけいこといい、練習とはいいません。「古(いにしえ)を稽(かんが)える」と書いて「稽古」、野球やサッカー、ボクシング等は練習ですが、武道はけいこ、もしくは修練、修行でしょう。石原知事も、学生時代には、柔道のけいこに励んだと聞いていますが、武道について、知事はどのような所見をお持ちか伺います。
答弁1
知事
武道についてでありますが、武道は、一見地味ではありますけれども、凛然とした、さっそうとした競技であると思います。また一面、ある意味では哲学的でもあると思います。この武道に関する練習をけいこというのは、やはり完成された武道の妙技というものは、見事な一つの様式、形式になっているわけでありまして、そういう点では、華道とか茶道のけいこにもつながるものがあるんじゃないかと思います。
本物の武道というものは、本当に、美しく一本をとるという、このきわみでありまして、先般、東京の体育館で世界柔道大会が行われたときに、私は、あえて苦言を呈したんですが、このごろの柔道は柔道じゃないと。北京のオリンピックで大分反省して少しよくなりましたけれども、やはり妙な時間制限をすることで、非常に醜い、何ていうんでしょうか、襟の取り合い、その他、この他、シャモのけんかみたいで美しくないと。へとへとであっても一本とるまでやれと、東京体育館、明け方までただで貸してやるから、一本とるまでやったらどうだっていったら、日本人の席から拍手がありましたが、外国の幹部たちは嫌な顔をしておりましたな。
いずれにしろ、武道は日本の伝統文化の華でありまして、そこで養われる武士道精神といいましょうか、精神性こそが日本を活性する大きなエネルギーになると思います。ゆえにも、かつて日本にあった謙虚、自己犠牲、勇気といった武士道に象徴されるさまざまな美徳と、芸術としての一本のわざというものを中学生が武道から学ぶということは、大いに結構なことであると思います。
質問2
また、周りの人、特に若者を見て気になることですが、儀礼的あいさつの口上や、おじぎがうまくできなくなっています。学校の卒業式、入学式等でそれを痛切に感じ、日本の将来が心もとなく不安になります。
現在、中高校生は、基本的に社会規範や礼儀作法が教えられておらず、それらを身につけるためには、武道教育において、礼法指導というものが正しく行われることが大切であり、期待も大きいと思います。
そこで、武道における礼法の指導について、東京都教育委員会の所見を伺います。
答弁2
教育長
武道教育における礼法の指導についてでございます。
日本人の礼は、新渡戸稲造の「武士道」によれば、国民固有の美徳の一つであり、社会通念上、相手への敬意という心情を形であらわすために必要不可欠であるとしております。
武道には、こうした我が国固有の伝統的な考え方や行動の仕方というものが脈々と受け継がれております。
特に、礼に始まり礼に終わるや、勝ってかぶとの緒を締めよの教えのとおり、武道では、高ぶる気持ちを抑えたり、激しい闘いにあっても心理的興奮を律したりする上で、正しい形の礼法を行うことを最重要視しております。
今後、都教育委員会は、武道指導の実践事例集の配布等を通しまして、各学校が、武道における礼法や作法の指導を適切に行い、生徒に我が国の伝統的な考え方や行動の仕方を正しく理解させるとともに、その学習が生徒の日常生活や学校生活におけるあいさつや礼儀にも生かされていくよう、武道教育の充実に努めてまいります。
質問3
次に、子供の体力向上施策について質問いたします。
国はこれまで、全国の小中学校を対象とした全国学力・学習状況調査と全国体力・運動能力、運動習慣等調査を、今年度から抽出調査に縮小後退させました。このことで、子供一人一人の学力や体力の状況を的確に把握することが困難になっています。
しかし、特に東京都の子供の体力は、都道府県別に見ると、平成二十一年度の調査で、中学二年生男子の体力が、四十七都道府県中四十六位となるなど極めて低い水準にあります。こうした体力低下の現状を踏まえ、東京都教育委員会は、昨年五月、子供の体力向上推進本部を設置し、本年七月には、総合的な子供の基礎体力向上方策第一次推進計画を策定しました。この推進計画をもとに、子供の体力向上を進めていくためには、まず第一に、一人一人の子供の実態を正確に把握していくことが必要だと考えますが、所見を伺います。
答弁3
教育長
子どもの体力の正確な実態把握についてでございます。
学校が児童生徒の体力を高めるための取り組みを推進するには、一人一人の児童生徒の体力の現状を明らかにすることが必要でございます。
すべての小学校五年生と中学校二年生を対象とした全国体力・運動能力、運動習慣等調査は、東京都では、平成二十年度に約七万五千人、平成二十一年度、約九万八千人が参加いたしました。しかし、平成二十二年度、文部科学省が抽出調査に縮小した結果、約一万四千人の参加にとどまることとなりました。
こうしたことを踏まえまして、都教育委員会は、今後、小学校五年生と中学校二年生のみならず、すべての小学校から高等学校までの児童生徒を対象として、統一的、継続的に体力の実態把握に努め、その評価分析に基づく授業改善を行うとともに、その結果を児童生徒一人一人に還元してまいります。
また、一校一取り組み運動やムーブメントづくりなど、幅広く体力向上策の推進を図り、総合的な子供の基礎体力向上方策第一次推進計画が掲げております目標の実現に努めてまいります。
質問4
次に、残り三年を切った平成二十五年開催の東京多摩国体を控え、東京都の競技力向上についても本腰を入れなければならない時期になりました。そうした中、先ごろ、東京都教育委員会は、高校生最大の運動競技の祭典であるインターハイを、平成二十六年に、南関東四都県で行うとの計画を公表しましたが、その概要を伺います。
答弁4
教育長
平成二十六年度開催予定のインターハイについてでございます。
昭和三十八年度新潟大会から始まりましたインターハイは、高等学校教育の一環として、高校生の健全育成、競技力の向上等を目的に、全国約百十八万人の高校生競技者の中から勝ち抜いた約二万七千人の都道府県代表により、全国一が競われる意義深い大会でございます。
このインターハイは、平成二十二年度に沖縄県で開催されたインターハイをもって都道府県単独開催を終了し、平成二十三年度からはブロック開催となり、東京都においては、平成二十六年八月に、千葉県、神奈川県、山梨県とともに、南関東四都県で合同開催することを決定いたしました。
四都県の分担といたしましては、東京都は、二十一世紀を担う若人のスポーツの祭典にふさわしい若さと情熱あふれる総合開会式の開催と、体操、バレーボール、相撲、弓道、テニス、なぎなたの六競技を実施し、他の三県で、それぞれ八競技、合計で三十競技の大会を実施する計画でございます。
このため、都教育委員会では、平成二十三年度に準備委員会を、平成二十四年度には実行委員会を設置し、着実に準備を進めてまいります。
質問5
また、国体、インターハイやそれ以降の全国大会においても、東京都の高校生の活躍が期待されるところです。そこで、運動部活動の強化について、都教育委員会の所見を伺います。
答弁5
教育長
高校生の運動部活動の強化についてでございます。
運動部活動は、生徒の人格形成や健全育成において有益な教育活動であり、都教育委員会は、これまで部活動の振興に努めてまいりました。
お話のように、今後開催される国体やインターハイを見据えますと、さらなる競技力の向上に積極的に取り組むべきであると認識しております。
都教育委員会は、平成二十五年に東京で開催されます国体で活躍が期待される現在の中学生や高校生を対象とした強化練習会を平成二十年度から実施するとともに、都立高校における国体強化部活動候補事業を開始いたしまして、各競技での優勝を目指して取り組んでまいりました。
スポーツを志す生徒にとって、全国大会に出場することは夢であり、目標であります。現在、全国大会への出場は私立高校が多くを占めておりますが、都立高校においても、各スポーツの名門校といわれるように競技力を高めていくことは、都民や中学生の期待するところであると考えます。
今後、都立高校における運動部活動の一層の振興と各スポーツの名門校づくりの視点から、全国大会に出場できるような競技力の高い運動部活動の育成を推進してまいります。
質問6
さらに、運動部の活動を充実させるためには、部活動への熱意と情熱を持って指導できる優秀な教員を確保することが何よりも重要です。他県においては、インターハイ、国体の開催などを目前にして、県内の学校の運動部の競技力を向上させるため、教員採用において、運動選手として輝かしい実績を上げた者や、部活動を初め選手育成に卓越した指導力を発揮した者を対象に、一般選考とは異なる基準や資格要件を設けて人材を確保し、現に成果を上げていると聞いています。
そこで、東京多摩国体、加えてインターハイ開催を控え、運動部活動に精魂を込めて指導できる優秀かつ熱心な教員の確保が必要であると考えますが、都教育委員会としていかなる取り組みを行っているのか説明願います。
答弁6
教育長
高校生の運動部活動を指導できる優秀な教員の確保についてでございます。
都立高校において、運動部活動を充実させるために優秀な教員を確保していくことは、極めて重要なことと認識しております。
このため、都教育委員会では、今年度の教員採用選考から、オリンピックや国体などで実施されるスポーツ分野で選手として卓越した競技実績を有する者や、優秀な選手を指導育成した実績を有する者などから選抜をいたします特別選考を導入し、これらの経験、実績を学校教育活動に生かせる優秀な教員を確保することといたしました。
今後は、この特別選考を活用しながら、都立高校における運動部活動の一層の振興とスポーツ名門校づくりや競技力向上に資するような教員の確保に努めてまいります。
ここで武道に関し、東京都の組織について意見を述べておきます。
今年七月に発足したスポーツ振興局についてですが、スポーツに武道は包摂されるものではありませんから、武道・スポーツ振興局、あるいはスポーツ・武道振興局とすべきです。また、部にも課にも、武道を所管する部署名がありません。中学校での武道必修化、東京多摩国体、そしてインターハイを機に、武道の名称を掲げた部局を設け、東京都らしさを誇らしく示していただきたい、心から要望いたします。
都立図書館の電子書籍化
質問1
次に、都立図書館の電子化について伺います。
今、都立中央図書館では、企画展「新しい図書館のカタチ電子書籍を体験しよう」が開催されています。これは都立図書館が電子図書のネット配信を行う時代の到来を予感させるものですが、あらかじめ実施の前提とすべき方針について述べてみます。
江戸時代中期から幕末明治にかけて西洋の進んだ文物に触れた進取の気性に富む人の中には、西洋文字アルファベットは、簡単な字形で二十六文字しかないのに比べ、自分たちの漢字は、数が多くて、複雑難解で進歩や勉学の弊害になっていると考えました。
新井白石や福沢諭吉は、漢字制限を説き、一円切手の肖像で知られる日本近代郵便の父、前島密は、漢字廃止を唱えて、平仮名を用いるべきと主張しました。これらはすべて、外国に追いつくには、わかりやすい書き言葉で教育しなければならないとの思いが強かったのでしょう。
戦後敗戦の衝撃から、読売報知新聞は、社説で、漢字廃止、ローマ字採用を掲げ、志賀直哉はフランス語採用を主張しました。この混乱を仮名文字・ローマ字論者は好機と見て、昭和二十一年の内閣告示、漢字制限現代仮名遣いへと改悪を成功させ、国語破壊の潮流は今日に続いています。
その端的な例として、五十音図のわ行の「ゐ」と「ゑ」を空白にした穴あき五十音図があります。日本の誇る古典や鴎外や漱石を原文で堪能できなくなりました。きわめつきは、国旗・国歌法の国歌君が代の歌詞「いわお」です。君が代の歌詞は、平安朝前期千百年以上前、我が国最初の勅撰和歌集である古今和歌集にある和歌であり、法律上も、現代仮名遣いではなく、正仮名遣い「いはほ」か、漢字「巌」と正漢字で表記すべきなのです。なぜなら、昭和六十一年の内閣告示は、現代仮名遣いは現代文に、国の歴史や文化にかかわりを持つものは歴史的仮名遣いを尊重するとなっているのですから、当然のことです。国旗・国歌法は速やかな改正が必要です。
かかる国語をめぐる現状に危機を抱く人は多く、猪瀬副知事が進める都庁内での言葉の力再生、言語力検定もその現状認識のあらわれだと思います。今申し上げたことを前提に伺います。
まず、都立図書館の電子書籍化の導入について、現状と今後の計画についてお尋ねいたします。
答弁1
教育長
都立図書館の電子書籍の導入に関する現状と今後の計画についてでございます。
電子書籍は、読者がいながらにして本の内容を直接閲覧できる媒体であり、紙の書籍と比べて絶版の可能性も少なくなることから、都立図書館が電子書籍を扱う場合、図書館としての役割を新たに検討し、従来とは全く異なる利用の仕組みを構築する必要が生じると思われます。
今年は電子書籍元年ともいわれ、さまざまな読書端末が開発され、市場に出回ってきておりますが、書籍の配信方法については、フォーマットや機器の互換性に関し、各企業が試行錯誤している状況であり、著作権の処理方法もいまだ定まったルールが確立されていないなど、多くの課題がございます。
また、出版されているコンテンツは分野に偏りがあるほか、その市場も紙の書籍と比べますといまだ小規模であり、電子書籍の導入に関しては、こうしたさまざまな課題の推移を慎重に見きわめる必要がございます。
現在、都立図書館協議会において、デジタル時代の都立図書館像をテーマに、来年三月の提言取りまとめに向けて、電子書籍の取り扱いも含めた討議を進めておりまして、都教育委員会は、その提言内容を踏まえまして、都立図書館における電子書籍の収集、提供のあり方について検討してまいります。
質問2
次いで、将来、都立図書館が書籍の電子化を実施する場合、特に戦前の文学作品については、作家独自の語法や作風を尊重する観点から、正仮名遣い、歴史的仮名遣いを底本にして、当時の原文を忠実に守るべきと考えますが、見解はいかがでしょうか。
答弁2
教育長
都立図書館が電子書籍化を進める場合の歴史的仮名遣いの扱いについてでございます。
昭和六十一年七月の内閣訓令により、現代仮名遣いが各行政機関における表現のよりどころとされましたが、一方で、同日付の告示の前書きでは、歴史的仮名遣いが我が国の歴史や文化に深いかかわりを持つものとして尊重されるべきことはいうまでもないと書かれております。
都立図書館は、都民の調査研究活動を支援する図書館として、国内外で出版された書籍を広範囲に収集し、都民に公開をしております。
紙媒体、電子媒体を問わず、出版された書籍をそのまま保存し、利用者の閲覧に供することが都立図書館の役割であり、書籍の電子化という名目において仮名遣いを変えるということはございません。
質問の最後に、拉致問題と都政について意見を申し上げます。
わずか一時間程度の距離にある北朝鮮に、数多くの日本人同胞が拉致監禁されている事実が明白であるにもかかわらず、三十年、四十年と気の遠くなるほどの長い年月が流れても、日本政府は救出してくれません。平成十四年の拉致被害者五人の二十四年ぶりの帰国から何一つ前進していません。
なぜ日本はこんな情けない国になってしまったのか、本気で解決しようとしないのか。アメリカやレバノンは、自国の拉致被害者を、あらゆる手段を講じて北朝鮮から奪還しています。十三歳の少女が、日本国内から、学校帰りに北朝鮮に誘拐されて三十三年になります。事件にかかわった大物北朝鮮工作員の釈放嘆願書に署名した議員が、総理大臣や法務大臣になる、全く恥ずかしい限りです。
何年も前からよく、北朝鮮は経済と政治が混乱し、体制崩壊が近いと解説した人がいましたが、考えてみると体制崩壊しているのは日本の方ではないかと思いたくなります。我々は完全解決に向けてできることをすべてやったのでしょうか。
自民党は、抗議決議を行いましたが、朝鮮学校に対する授業料無償化適用の検討など言語道断の所業です。拉致被害者家族会、救う会全国協議会、そして都議会拉致議連も加盟する全国地方議会全国協議会も、授業料無償化反対とあわせて、朝鮮学校への地方自治体の公金補助中止を全会一致で決定しています。
全国の二十七都道府県で朝鮮学校への補助金は年八億円が交付されており、そのうち東京都は、平成二十一年度に二千万円を超えています。拉致問題が一向に解決に進まないにもかかわらず、平成七年の補助金、補助事業開始以来、漫然と補助金を支出し続けていることが妥当なのか、都議会で真剣な検討が強く求められています。