
地方分権
質問1
地方分権の推進と地域主権の確立という観点から、東京都が目指すべき姿を石原知事にお伺いいたします。
猪瀬副知事が委員を務めておられる地方分権改革推進委員会において、地方分権改革推進に当たっての基本的な考え方として、地方が主役の国づくりを掲げ、地方自治体を、自治行政権のみならず、自治立法権、自治財政権をも十分に具備した完全自治体にしていくとともに、住民意思に基づく地方政治の舞台としての地方政府に高めていくこと、これを地方分権改革の究極の目標としました。
そして、地方分権改革推進のための基本原則の筆頭に基礎自治体優先の原則をうたい、国と地方自治体と呼びなれてきたものを中央政府と地方政府と呼びかえ、広域自治体である都道府県は広域地方政府、基礎自治体である市町村は基礎地方政府とし、地方自治体を地方政府と呼ぶにふさわしい存在にまで高めていくためには、何よりもまず、住民に最も身近で基礎的な自治体である市町村の自治権を拡充し、これを生活者の視点に立つ地方政府に近づけていくことが求められるとしています。
また、私ども民主党の分権調査会においても、基本理念として基礎的自治体重視の新しい「国のかたち」を掲げ、地方分権国家の母体を住民に一番身近な基礎的自治体とし、生活にかかわる行政サービスを初め、基礎的自治体が対応すべき事務事業がすべて行えるよう、立法権や執行権を初めとする権限と財源を大幅に移譲し、国と基礎的自治体による新たな「国のかたち」を目指すとしています。
さらに、基礎的自治体が担えない事務事業については当面広域自治体が、広域自治体が担えない事務事業については国が担うという補完性の原理を徹底するとしています。つまり、国と地方自治体の役割を明確にし、基礎自治体に大幅に権限移譲した上で、基礎自治体でなし得ない事務事業を広域自治体が担うということであります。
知事はこれまで、国に対し、地方分権の推進をさまざま試みてこられたと思いますが、区市町村への分権については明確に示されておりません。
そこで、地域主権確立に基づく国と自治体のあり方について所見を伺います。
答弁1
知事本局長
国と自治体のあり方についてでございますが、地方分権改革推進法によりますと、地方分権改革の推進に関する基本理念は、国と地方公共団体それぞれが分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性及び自立性を高めることによって、みずからの判断と責任において行政を運営することなどとされております。
役割分担の具体化に当たりましては、まず国の役割を限定した上で、地方が担う役割について都道府県と区市町村とで分担することが大切であると考えます。
その際、都と区市町村との役割分担におきましては、近接性、補完性などの原則だけでなく、大都市特有の行政課題を総合的、一体的に解決するという視点が不可欠でありまして、東京の実態、地域特性を十分に踏まえることが必要でございます。
今後とも、これらの観点から、都として強力に地方分権改革に取り組んでまいります。
質問2
基礎自治体だけではなし得ない事務事業として、私は、医療体制や警察業務、幹線道路の整備などが広域自治体の事務として考えられますが、知事は、広域自治体のあるべき役割についてどのような見解をお持ちでいるか、お伺いいたします。
答弁2
知事
広域自治体としてあるべき役割についてでありますが、東京は、千三百万人の人々が住み、さらに日中には三百万人を超える人々が近隣から流入するとともに、これに対応する公共交通や上下水道などの都市インフラが整備された世界に類を見ない大都市であると思います。
都はこれまでも、大都市特有の課題でありますディーゼル車の排出ガス規制や急がれる震災対策など、広域的な行政課題に取り組み、成果を上げてきました。
また、平成十二年に策定しました第二次東京都地方分権推進計画に基づき、難病患者の医療費助成に関する事務や、騒音や悪臭の規制に関する事務など、住民に身近な事務については区市町村への権限移譲を実施しております。
その一方では、一部触れましたが、災害対策、環境対策などは、東京だけではなしに、神奈川県、埼玉県、千葉県といった四都県で、かつて存在しなかった新しい広域行政を首都圏において行ってきました。
今後とも、広域自治体として、東京にふさわしい自治のあるべき姿の実現に向けて、国等の動向も見据えながら都の役割を十全に果たしていきたいと思っております。
質問3
首都である広域自治体としての東京都のあるべき姿について所見を伺います。
答弁3
知事本局長
首都である広域自治体としての東京都のあるべき姿についてでございますが、東京は都民の生活の場であると同時に、三百万人を超える昼間流入人口を抱え、人材や企業が高度に集積する一方、諸外国の大都市と比較してもはるかに良好な治安を保つなど、首都として世界に類を見ない都市でございます。
都は、区市町村との役割分担のもと、大都市の一体性を確保しつつ、交通渋滞など大都市特有の諸課題を迅速かつ効果的に解決し、将来にわたり、首都東京の持つ潜在能力を十二分に発揮できるようにする必要がございます。
東京の活力は、単に東京にとどまらず、日本全体を発展させる原動力であります。今後とも、都は先進的な取り組みを行い、首都として日本を牽引していくとともに、国際社会における東京の魅力をより一層高めてまいります。
教育
質問1
東京都の教育についてお伺いいたします。
教育は国家百年の大計です。日本における資源は人です。有為な人材を産み育てることが日本の国力、命運を左右します。首都東京の人づくりは、まさしく日本の未来を切り開くといっても過言ではないでしょう。
しかしながら、公教育の教育現場は崩壊の危機に瀕しております。東京都教育委員会の委員も次のように述べています。
ある学校の校長先生が、学級崩壊の問題解決に疲れ、自律神経失調症で校長職を離れざるを得ないという報告を受けました。ますます多くの問題の解決を期待されるようになっている学校の現状を考えると、まじめな先生ほどこうした問題で傷つけられることは想像にかたくありません。地域社会の協力を得ながら、こうした問題の解決に努めていただくことは当然のことではありますが、校長先生を初めとする先生方の負担を少しでも軽くするために、外部人材の教育活動への積極的な活用を真剣に考えなければいけないと考えます。
文部科学省の調査によれば、教職員総数に占める教員以外の専門スタッフの割合が、アメリカでは四六%であるのに対し、日本では二四%と約半分なのですと提言しています。
現場の小中学校では、子どもの学力向上や豊かな心の育成、安全な学校づくり、地域住民との協力、保護者からの相談など、さまざまな問題に対応しなくてはならない現状があり、教員の多忙感が深まっているとの指摘があります。このような教員の多忙感についての東京都教育委員会の認識と見解、さらに、多忙感を軽減するための取り組みを早急に講ずるべきと考えますが、所見を伺います。
答弁1
教育長
小中学校教員の多忙感についてでございます。
小中学校は、いじめや不登校への対応、地域との連携など、学習指導面のほかにも多種多様な課題への対応が求められており、教員に対する期待も高まっております。また、校内の業務分担が不明確なために、特定の教員に業務が集中したり、学校の小規模化により、一人の教員の担う役割が増加している学校も多い状況でございます。
このようなことを背景に教員の多忙感が深まっていると認識をしており、都教育委員会として改善していく必要があると考えております。
このため、まず、学校全体の事務量を縮減することを目的に、教育委員会等から各学校への調査報告依頼を縮減するためのモデル校実態調査などを行い、改善に取り組んでおります。
また、本年四月から、主幹教諭を補佐する主任教諭制度を導入し、組織的に課題解決を図ることができる体制の整備を行ったところでございます。
さらに、学校を支える仕組みとして、昨年度から退職教員を活用した非常勤教員制度を導入し、学習指導や校務分掌を担わせるなど、学校支援を行っております。
今後もこうした取り組みを進め、教員の職務改善に努めてまいります。
質問2
特に中学校の教員においては、本年四月から、新しい学習指導要領の移行措置に伴い、教科によっては授業時数が増加することにより、教材研究や校務運営に困難な状況が生じ、多忙感が増していると聞いております。このような状況を踏まえ、新しい学習指導要領の全面実施に向けて、持ち時数の軽減をすることが必要と考えますが、所見を伺います。
答弁2
教育長
新学習指導要領の全面実施に向けた中学校教員の授業持ち時数軽減の取り組みについてでございます。
平成二十年三月に中学校学習指導要領が改訂され、総授業時数が増加し、言語活動や理数教育、外国語教育などの充実が図られております。
新学習指導要領の全面実施は平成二十四年度からでございますが、平成二十一年度から一部先行実施しており、この移行措置期間中において、選択教科等の授業時数が減少する一方、数学、理科の授業時数が増加しております。
都教育委員会では、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に基づき、学級数に応じた教員数を配置しているところでございますが、新学習指導要領の先行実施に伴い、教員の週当たりの標準持ち時数を超える教員が生じる場合には、各学校に対して非常勤講師を適切に措置することとしております。
新学習指導要領の全面実施に当たっても、学習活動が円滑に実施できるよう非常勤講師を適切に措置してまいります。
質問3
司書教諭の配置についてです。
子どもの読書活動は、人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことのできないものであり、読書離れ、活字離れが叫ばれている今日、学校での司書教諭の果たす役割は大変大きくなっております。
そこで、司書教諭が子どもの読書活動を推進するためには、各学校に専任の司書教諭を配置すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁3
教育長
小中学校に専任の司書教諭を配置することについてでございます。
学校において、子どもが読書に親しむ態度を育成し、子どもの主体的な読書活動を充実させることは、子どもが人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことのできないものでございます。
読書活動は、各学校において全教職員の協力体制のもと組織的に取り組んでいるところでございますが、その中で司書教諭は読書活動を推進するための重要な役割を担っております。
現在、司書教諭は、学校図書館法において教諭等をもって充てると規定をされており、都教育委員会では、限られた教員定数の中で専任の司書教諭の配置は困難であると考えておりますが、司書教諭が学校で読書活動を推進することができるよう、週当たり二時間、授業持ち時数を軽減しております。
また、都教育委員会では、本年三月、第二次東京都子供読書活動推進計画を策定したところであり、今後、司書教諭を支援するために、モデルとなる読書指導計画案の開発や読書活動推進事例の積極的な発信、都立図書館による推薦図書の情報提供などに取り組んでまいります。
医療
質問1
東京都の医療についてです。
先ほど滝沢議員より、多摩地域の小児医療についての質問がありましたので、重複する部分があろうと思いますが、多摩地域において大変重要な課題ですので、視点を変えて改めて質問させていただきます。
今から九年前の二〇〇〇年におけるWHO、世界保健機関のレポートによれば、日本の健康寿命は世界第一位、平等性において世界第三位で、健康達成度の総合評価は世界第一位でありました。また、乳幼児死亡率及び平均寿命においても世界一位であることが示されていました。
しかしながら、近年、我が国の医療をめぐる状況として、産科や小児科など特定科目の医師不足や勤務医の激務等が大きな社会問題として取り上げられています。医師不足は、医師の絶対数の不足と医師の偏在が大きな要因となっています。医師の絶対数の不足については、OECD平均で人口千人当たりの医師数が三人に対して、我が国は二人であり、人口規模で計算すると、十二万人から十三万人が不足しているといわれております。
また、今日の医療技術や機器の進歩による医療の高度化、複雑化とあわせて、高齢化社会における合併症を伴う手術など難易度の高い症例の増加は、医師の高い専門性と業務負荷の増大を要求し、結果的にこれらの医療を担う医師が不足する事態を招いています。
業務負荷は、さらに近年の医療で求められるインフォームド・コンセントや、多くの書類の必要性による事務作業の増加などによっても増大しています。
つまり、医師の絶対数に変化が生じなくても、総労働時間に対する医師の必要数が不足するという事態が発生しており、医師への負荷が加速度的に増大している危機的状況に陥っております。
医師、特に勤務医の過重労働をできるだけ減らすことが急務です。都立府中病院のERには、昼夜を問わず、また症状の軽重を問わず患者が訪れており、医師の勤務は厳しいものとなっています。勤務医の労働条件の改善は必須であり、焦眉の急です。
一方、医師の偏在という点では、診療科偏在と地域的な偏在という二つの要素があります。特に、診療科偏在による医師不足が顕著な小児医療や周産期医療、救急医療などは、都民の安心・安全を確保するための基盤となる医療ともいえ、そのような医療に携わる医師をいかに確保していくかが極めて重要です。
また、地域的な偏在については、二〇〇六年における多摩二十六市の医師数の平均は二百八十人、二十三区の医師数の平均は千二百三十二人、病床数については、二〇〇七年の数値で、多摩二十六市の平均は千九百二十四床、二十三区の平均は三千七百十四床となっています。二十三区と多摩二十六市におけるそれぞれの人口を勘案したとしても、医師の偏在は明らかであり、これも長年いわれ続けてきました三多摩格差の一例ともいえます。
とりわけ小児医療については、年少人口に対する小児科医師数が、区部において千対三・〇人であるのに対し、多摩地域は千対一・八人であるという直近のデータが示すとおり、多摩地域の医療資源の偏在が顕著となっています。
次代を担う子どもの命を守り、多摩のあすを展望するためには、多摩地域の小児医療体制の強化を急ぐべきと考えます。また、その強化に当たっては、医師の偏在を克服することと医療の提供体制を確保するという二重の視点で施策を講ぜられるべきと考えますが、所見を伺います。
答弁1
福祉保健局長
多摩地域の小児医療についてでありますが、医師の確保を図るとともに、医療機関相互の連携に努めることで小児医療体制を強化することが重要であります。
このため、今年度、小児科医師数が少ない多摩地域などを対象として、小児の二次救急医療に参画する医療機関や、この医療機関などへ医師を派遣する大学を支援いたします小児医療体制緊急強化事業に取り組むこととしております。
また、来年三月、小児総合医療センターが開設となりますが、当センターを中核として地域の医療機関がそれぞれの機能を発揮し、重層的に連携を図ってまいります。こうした取り組みを行うことにより、安心・安全な小児医療を確保してまいります。
質問2
本来、医療は安心・安全な暮らしを守るセーフティーネットであり、社会インフラとして整備することが大変重要です。このインフラがあってこそ、活発な経済活動や社会活動を営むことができるのであります。
それでは、今、地域において何ができるのか。まず、病院勤務医の負担を軽減し、病院機能を守ることが差し迫った課題です。そのためには、特定の病院などに患者が集中しないように、地域全体での医療連携を進めることが必要です。
これからの医療再生には、地域全体の人口動態、疾病構造から医療需要をつかみ、それを満たすため、今ある医療資源を最大限に生かすような、連携に基づく効果的な医療供給体制をつくり上げることが不可欠であります。
医療連携によって、軽症患者や慢性期のフォローアップなどを地域の開業医が担い、手術や高度な医療を病院が担うことで、勤務医が専門性に特化した業務に集中できる環境を整える必要があります。それが結果として、勤務医の労働環境を改善して医師の流出に歯どめをかけることにつながります。
さらに、医師を疲弊させる原因として患者のモラル低下があります。安易に医療機関にかかるいわゆるコンビニ受診や医師への過大要求など、このような患者の行動をいかに減らすかも、地域医療を再生する上で取り組むべき課題となっています。自治体や病院、開業医、医師会が一体となって、住民に対し、病院のかかり方や、シャープ七一一九など救急車の適正利用等を周知していくことが重要です。
また、住民側も、自分たちで自分たちの医療を守らないと自分たちが困るということに気づき、受診の仕方を改善しようとする気持ちを持つことが医療再生の第一歩となります。この意識の醸成は、産科、小児科などの医師不足の顕著な診療科における医師確保という観点からも非常に大切なことです。
兵庫県立柏原病院の小児科は、多忙をきわめる医師の現状を知ったお母さんたちがみずから医療を学び、不要不急の受診を控えようと立ち上がったことで、一時は一名にまで減った小児科医が、その後五名にまでふえたと聞いています。
このように安心の医療を確保するには、医療提供側における医療連携などの取り組みはもちろんのこと、それに加え、医療を受ける側の変容が不可欠であり、住民に対する普及啓発の重要性がますます高まっていると考えます。
そこで、都として住民に対する普及啓発にどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
答弁2
福祉保健局長
住民に対する普及啓発についてでありますが、都はこれまでも、医療機関の利用方法などをわかりやすく説明した暮らしの中の医療情報ナビを作成するなど、都民の適切な受療行動を促してまいりました。
また、八月末に開始いたしました救急医療の東京ルールにおいて、医療に対する都民の理解と参画が重要であることを掲げ、救急医療週間に合わせて、シャープ七一一九の活用や、より重症な患者を優先診療するトリアージなどの広報活動を集中的に実施いたしました。
今後とも、機会あるごとに都民に対し医療の適切な利用を促してまいります。
多摩シリコンバレー
質問1
多摩シリコンバレーについて伺います。
都は「十年後の東京」において、多摩シリコンバレーの形成を目標とし、多摩地域の一部を研究開発型企業集積ゾーンと位置づけ、産業振興と産学連携を促進する施策の展開を図られています。
多摩地域における新事業創出活動をより促進するためには、産学公連携に金融の機能を加えることが必須であると考えます。知事からも本定例会の所信表明で、産学公に金融機関も加えたネットワークを構築し、半導体や計測機器の分野での新事業創出を支援していくとの発言がありました。
ぜひとも積極的な施策展開を求めるとともに、金融機関も加えたネットワーク構築について、多摩地域に根差した金融機関を主とした連携が図られるべきと考えますが、所見を伺います。
答弁1
産業労働局長
産学公と金融の連携についてのご質問にお答えいたします。
都はこれまでも、多摩地域における産学公連携に取り組み、共同研究や共同開発などを促進してまいりましたが、さらに、これに地域の金融機関を加えることで、中小企業にとって円滑な製品開発資金の調達や当該金融機関の持つ広範な情報を活用した販路開拓等、大きなメリットが期待できます。
このため、今年度より都市機能活用型産業振興プロジェクト推進事業を創設し、企業、大学、公的機関及び金融機関によるいわゆる産学公金のネットワークの形成を支援しております。
このネットワークによりまして、今後重点的に育成すべき産業である半導体・電子デバイス、計測・分析器、ロボットの三分野について、新事業の創出に向けた共同研究開発や共同販路開拓等の活動を促進してまいります。