
伝統文化の継承
質問1
昨日、我が党の代表質問で、川井幹事長から新しい学習指導要領の完全実施が間近に迫っていることについての質問がありました。新しい学習指導要領は、約六十年ぶりに改正された教育基本法の精神を受け、伝統と文化を尊重し、それをはぐくんできた我が国と郷土を愛し、公共の精神をとうとび、他国を尊重し、国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献する主体性ある日本人を育成することが明記されていると伺っています。
それを踏まえて、私は、伝統と文化の継承について質問をさせていただきます。
最近の人を見ていると、個人が果たすべき役割や責任を軽視する自己中心的な行動が目につきます。他人を尊重する、目上の人を敬うといった日本人の精神が受け継がれず、道徳や日本の伝統、文化などの内容が軽んじられてきた結果、基本的人権の尊重と個人主義が履き違えられ、利己主義の傾向が強まっていると感じております。
本来、我々日本人は、勤勉、おおらか、親切で、何より礼儀正しく節度をわきまえた世界に誇る道徳観の持ち主だったはずであります。国家主義の反省として戦後教育から抹殺された日本古来の伝統的なもの、精神的なものを見詰め直すべきであると思います。
そのような中で、知事が提唱して推進してきた心の東京革命を、私は高く評価をしております。私は、精神的な価値を軽んじてきた戦後教育に警鐘を鳴らし、日本人のあるべき姿を取り戻すこと、日本人のアイデンティティーやモラルを大切にする心を見詰めなおすこと、それが心の東京革命の原点なのだと思っております。
都が取り組む教育行政、青少年対策あるいは心の東京革命を推進するに当たっても、日本人の心を大切にするという原点を忘れずに取り組んでほしいと考えております。そして、どんなに社会や時代が変わろうと、継承して取り組むべき大切なものだと思っております。
そこで、日本の伝統と文化を継承することについて、知事のお考えをお伺いいたします。
答弁1
知事
日本の伝統と文化の継承についてでありますが、おっしゃるとおり、かつての日本には、謙虚、自己犠牲、真の勇気といった、武士道に表象されるさまざまな美徳がありました。これについては、十九世紀の終わりごろ日本にやってきた、アジアをあちこち旅行してやってきた、例のトロイの発掘で有名なシュリーマンの旅行記がありますが、非常に自分たちから見て同じような顔に見えるアジア人の中で、何で日本人だけがこれほど高貴な気質を備えて、すばらしい美徳を備えた民族なんだろうかと感心した記述がございます。また、有名なルース・ベネディクトの「菊と刀」にも、菊の花に象徴される日本人の高貴な気質について描かれておりますが、それが残念ながら色あせて失われてきているという現実は、否定するわけにいかないと思います。
戦後、立場を超えて、世代を超えて持ち続けるべき垂直な価値の機軸なるものが毀損されまして、履き違えられた自由と権利が日本全体を損なってきたということは否めないと思います。
日本人の美徳を子どもたちにどう評価し教えていくかは、学校の教師の職分でもありますが、同時に、日々家庭にあって、親たちがそれぞれの経験、体験、挿話を通じて教えることこそが確かな伝承につながっていくと思います。日本の伝統や文化を子どもに自信を持って語り伝えるためには、これはあくまで、先生よりも親自身がよく学び、みずからの子どもを厳しく強くしつけていく、それを行うことが肝要であると思います。
東京港国際競争力強化
質問1
東京港への客船誘致についてお伺いをいたします。
東京港はコンテナ貨物の取扱量が平成十年から十一年連続して日本一となるなど、首都圏の経済と産業を支える物流拠点として重要な役割を果たしてまいりました。また、昨年来、東京、川崎、横浜の京浜三港連携により、国際競争力の強化を目指した取り組みが進められているところであります。
一方、東京港や臨海部は、都民や国内外からの来訪者にとっても魅力的な観光拠点であることも忘れてはなりません。特に「クイーンエリザベスⅡ世号」クラスの客船は、観光資源として目を引きます。客船が晴海ふ頭に着岸している優美な姿は、心を打つものだと思います。
この地域には台場や豊洲など景観にすぐれたまち並みが広がり、浜離宮やレインボーブリッジなどの観光名所が点在しております。これらの観光資源を船や水辺の散歩道から楽しむことができる国内有数の観光スポットの一つでもあります。多くの方々に東京港を見て歩き、楽しんでいただくことで、東京港の役割や魅力を効果的にPRし、にぎわいのある千客万来の港にしていくことが大切だと思います。
外航客船が寄港すれば、多くの人が客船を見るために港を訪れるだけでなく、海外から東京に訪れる観光客の増加にもつながります。また、マスコミにも広く取り上げられ、高いPR効果が期待できると思います。
一方、東京港への客船の寄港数は、十年前と比べ大幅に減少しております。昨年は外国籍の客船の寄港が四隻というふうに聞いております。客船誘致は東京全体の観光振興にも効果があることを踏まえ、物流機能の強化に向けた取り組みと同様、客船誘致にさらに力を入れるべきだと考えております。
そこで、お伺いいたします。東京港は昭和十六年に国際貿易港として開港し、再来年の平成二十三年には開港七十周年を迎えるわけであります。その節目の年に向けて外航客船を誘致する取り組みを強化することが必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
答弁1
港湾局長
外航客船の誘致についてでございますが、客船は港の花ともいわれ、東京港のイメージアップに加え、国内外からの観光客の増加につながることから、東京の観光振興にも大きな効果があると認識をしております。
都では、クルーズ各社にセールス活動を行っており、ことしはイタリアの豪華客船「コスタ・クラシカ」が初入港をいたしました。また、ことし六月には、都民が客船の寄港を歓迎する東京港・客船歓迎サポーターを試行するなど、客船誘致を進めております。
今後は、こうした取り組みに加え、シャトルバスの臨時運行による都心へのアクセス確保や、クルーズ会社に東京の観光名所を紹介する活動を強化し、再来年に開港七十年を迎える東京港が国際港としてさらに発展するよう、客船誘致の取り組みを一層充実してまいります。
水と緑の都実現
質問1
東京港における水質改善についてお伺いをいたします。
東京港の魅力をさらに高めていくには、人々が水辺に親しみやすい港とすることが重要であり、そのためには、海の水質を改善していくことが不可欠であります。しかし、東京港の水質改善を進めるには、海だけを考えるのではなく、そこに流入する河川や下水道、ひいては私たちのライフスタイルまでさかのぼって考えなくてはならない問題であります。
このような視点に立つとき、本年七月三十一日に、菅原副知事を座長とする全庁的な東京湾水質改善プロジェクトチームを結成し、陸域、水域双方の対策を同時に進めるとともに、都民とも協働して水質の改善を図ろうとする都の取り組みは大いに評価できるところであります。特に、東京港の運河域は市街地に近く、都民の身近な水辺であるとともに、運河ルネッサンスにより観光資源としても積極的に利用が進められているが、夏場にはにおいが発生することもあるなど、地元からはさらなる水質改善に向けて強い要望が寄せられております。
そこで、まず、東京港における運河の水質改善に向けて、その取り組みについてお伺いをいたします。
答弁1
港湾局長
運河の水質改善についてでございますが、都ではこれまで、悪臭の原因となる汚泥を除去するため、しゅんせつを継続的に実施いたしますとともに、生物の持つ浄化能力に着目し、カニ護岸や磯場を整備してまいりました。現在では、クロダイやスズキなどの魚も回帰するなど水質の改善が進んできており、例えば、港区の新芝南運河での測定結果によれば、この三十年間で透明度が約三倍に向上してございます。
しかし、その一方で、夏場になりますと臭気が発生している箇所があり、その改善が急務となっております。このため、今後、汚泥しゅんせつの一層の推進や、新たな浄化技術を検討するとともに、お話の東京湾水質改善プロジェクトチームにおきまして、関係局との連携のもと、運河のさらなる水質改善を積極的に推進してまいります。
質問2
下水道局では、品川駅に隣接する芝浦水再生センターにおいて、その立地条件を生かし、老朽化した施設の再構築に合わせ、水再生センターの上部空間を有効利用して、合築の手法により業務・商業ビルの建設、運営を行う事業に着手したと聞いております。建設されるビルは、最高水準の環境性能を有する環境モデルビルを目指し、品川駅周辺のまちづくりに貢献する取り組みであると大いに期待しているところであります。
芝浦水再生センターの位置する芝浦・港南地区では、近年の相次ぐ大規模マンションの建設等により人口が急増しており、特に、幼児の人口が五年前と比べ約二倍以上に増加し、今後も高い水準で推移すると見込まれております。このため、保育所等への入所が困難な待機児童が急増し、地元区ではその解消は喫緊の課題になっているわけであります。待機児童対策として、水再生センターに建設予定のビルに保育施設を設置してはいかがかと思うわけであります。
こうした東京都がかかわるビル建設については、各局ともに地元区市と連携し、そして相談をして、ビル事業にかかわる地域貢献の一つとして保育施設の設置が行われるよう、事業者との調整を進めていただくことを要望しておきます。
下水道局では、下水道本来の役割である、下水をきれいにして川や海に返すことに積極的に取り組んでいただいていると認識しております。
そこで、芝浦水再生センターの再構築に合わせ、センターの放流先である高浜運河の水質改善に向けての具体的な取り組み内容についてお伺いをいたします。
答弁2
下水道局長
高浜運河の水質改善に向けた具体的な取り組み内容についてでございますが、芝浦水再生センターでは、老朽化した施設の再構築に合わせ、降雨初期の汚れた下水を貯留し処理するための雨天時貯留池の増設や、窒素、燐を除去する高度処理の導入などを行うこととしております。
そのうち、貯留池については既に一万九千立方メートルが稼働しておりますが、今回建設するビルの地下にさらに七万六千立方メートルを平成二十六年度までに整備いたします。これにより、雨天時に放流される汚濁物質の大幅な削減が可能となります。
今後とも、水再生センターの再構築に合わせまして、貯留池のさらなる増設などを行うことで、高浜運河などの水質改善に努めてまいります。
質問3
水質改善ということでいえば、ことしの第一回定例会で我が党の古賀議員が、知事に対し、皇居内堀の状況について、その認識や改善への決意を伺ったところです。内堀の水質改善について、下水道の取り組み状況は現在どのようになっているのか、お伺いをいたします。
答弁3
下水道局長
現在、内堀には、降雨時に汚水まじりの雨水が流入する四つのはけ口があり、このうち、千鳥ヶ淵、桜田濠にある三つのはけ口については、第二溜池幹線を延伸することで放流先を隅田川へ変更し、内堀への放流をなくすとともに、幹線を活用して降雨初期の汚れた下水を貯留することで、隅田川への汚濁物質の流入も削減させます。第二溜池幹線の延伸工事は、既に昨年度一部着手し、本年七月にはトンネル本体工事の契約を行ったところでありまして、平成二十七年度までに対策を完了させる予定であります。
また、清水濠にある一つのはけ口については、汚水と雨水を分ける分流化を行うことで、内堀への放流を雨水のみといたします。公共下水道の分流化工事については、来年秋の完成を目指して、現在、設計作業を行っております。また、公共下水道の利用者みずからが実施する、それぞれの敷地内の排水設備の分流化については、おおむね了解が得られております。このことから、公共下水道の分流化工事の完成後、利用者の排水設備工事が済み次第、清水濠への汚水まじりの雨水の流入はなくなります。
今後とも、これらの対策の完了に向け、全力で取り組んでまいります。
超高層住宅の震災対策
質問1
超高層住宅の震災対策についてお伺いします。
東京では、近年、都心部や臨海部を中心に超高層住宅が増加しております。超高層住宅では、大地震が発生した場合、建物自体は無事でも、エレベーターが停止すれば、高層階の住民は地上との行き来が困難になるなどの特有の問題があります。その対策が急務であると考えます。
超高層住宅において、震災による停電時には非常用エレベーターを活用することになると思いますが、これを稼働させるには、非常用発電機を使い、電力を供給する必要があります。しかし、燃料の備蓄にも限界があり、今数時間しかもたないと聞いております。安定的な燃料の供給が必要になってまいります。
この燃料の供給については、私自身もいろいろと手だてを考えているところですが、例えば、内陸部の超高層住宅についてはガソリンスタンドを活用する、また臨海部の超高層住宅は、万が一、橋が通行できない場合、船舶燃料を利用していくことなどがあります。このように、非常用発電機の燃料の供給は、超高層住宅の震災対策の中でも非常に重要な課題と考えますが、都の災害時における燃料供給の考え方について見解をお伺いいたします。
答弁1
総務局長
大規模災害時におきまして、応急対策活動や都民生活に必要な燃料を安定的に供給することは極めて重要でございます。このため都は、昨年十一月、全国に先駆けて、元売を含んだ業界団体と大規模災害時における石油燃料の安定供給に関する協定を締結し、災害時におきまして都民に燃料を販売するガソリンスタンド等に対する供給体制を整備いたしました。こうした取り組みを都民の方々に周知していくとともに、ご指摘のエレベーターの利用が不可欠な超高層住宅には、災害時においても必要に応じて燃料供給が行われるよう、業界団体へ要請してまいります。
質問2
超高層住宅では、ライフラインやエレベーターが復旧するまでの間、自宅内にとどまって生活することが考えられ、一般の住宅よりも水や飲料、簡易トイレなどを多目に備蓄する必要があります。このため、超高層住宅の震災対策に先駆的に取り組んでいる区では、超高層住宅を新築する場合、一定階ごとに防災備蓄倉庫の設置を義務づけようとする動きが見られます。有効な対策であると思いますが、分譲価格の上昇など、消費者の負担増加を招くことも考えられます。
そこで、超高層住宅への防災備蓄倉庫の設置を進めるためには、建築に際して防災備蓄倉庫の床面積を容積率に算入しないなどの方法が考えられますが、所見をお伺いいたします。
答弁2
都市整備局長
超高層住宅の防災備蓄倉庫に関する容積率の取り扱いについてでございますが、都はこれまでも、総合設計制度などを適用して建設される高層住宅等におきまして、地元自治体の要請がある場合には、公的な防災備蓄倉庫を容積率制限の緩和の対象としてまいりました。
近年、一部の区では、高層住宅を建設する場合、居住者用の防災備蓄倉庫の設置を条例で義務づけるなどの対策を始めております。都といたしましては、こうした地域の防災対策が円滑に進むよう、今後、自治体の条例等に基づき、居住者用の防災備蓄倉庫が設置、管理される場合なども容積率緩和の対象とすることを検討してまいります。
十月二日、オリンピック・パラリンピックが決定されるようになります。知事を初め、議長以下、オリンピック、デンマークに行かれる方、最後の努力をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。