
交通問題
質問1
二〇〇九年度版の交通安全白書によると、昨年度、全国の交通事故による負傷者数は四年連続、死者数は八年連続で減少し、十年ぶりに死傷者が百万人を下回りました。しかし、いまだ多くのとうとい命が失われているのが実態であり、依然として憂慮すべき交通情勢であります。とりわけ死者数のうち、六十五歳以上の高齢者が占める割合が四八・五%と最も高くなっていることは、決して看過できない事態であり、高齢者や障害者などいわゆる交通弱者を守っていくことは、都政の大事な使命であります。
こうした中、高齢者からは青信号の時間が短く横断歩道を渡り切れないといった声や、視覚障害者からも盲人用信号機がないため何度も危ない思いをしたなど、安全対策の強化を求める声が数多く寄せられております。
私たちは、横断歩道で、黄色いボックスの赤ボタンを押すと信号が変わる押しボタン式信号機をよく目にします。一方、白いボックスに赤ボタンの交通弱者用信号機を注意深く調べてみると、盲人用、身体障害者用、高齢者用とさまざまあり、ボタンを押すと音が鳴るものや青時間が延長されるもの、また遠隔操作ができるものなど、その機種、機能が数種類にわたっていることがわかります。
急速に進行する高齢社会に対応し、また障害者の積極的な社会参加を促進、支援し、そして、だれもが安心してまちを往来できるよう、時代状況に対応した交通バリアフリー環境を整えていくことが重要であります。そのために、都は、ユニバーサルデザインのわかりやすい交通弱者用信号機を積極的に設置、促進していくべきであります。
また、前述の数種類の交通弱者用信号機の役割を知らない都民が、誤ってボタンを押すことで不要な時間延長となり、交通渋滞の原因になることも考えられます。そこで、交通弱者用信号機の機能をわかりやすく表示するなどして、その効果を発揮できるようにすべきであります。
交通バリアフリーの促進について、警視庁の所見を伺います。
答弁1
警視総監
当庁では、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、いわゆるバリアフリー新法に基づき、まず市区町村が作成した基本構想における重点整備地区を中心に、信号機や道路標識、標示の整備等を推進しているところであります。
とりわけ視覚障害者用信号機及び高齢者等感応式信号機の整備に当たっては、視覚障害者用信号機等であることを示す標示板を設置したり、あるいは操作ボタンにわかりやすいデザインを施すなど、高齢者や障害者等の利便性に配慮した設置促進に努めているところであります。
今後とも、高齢者や障害者等の移動等の円滑化の促進につながる交通のバリアフリー化を推進するとともに、信号機の機能や操作方法等の周知にも鋭意努めてまいりたいと考えております。
駐車違反取り締まりについてですが、民間の駐車監視員の導入による駐車違反の確認、取り締まりが始まって三年になります。この改正法の実施においては、当初、悪質、危険、迷惑な違反に重点を置き、また地域住民の意見、要望等を踏まえて策定、公表されたガイドラインで示された場所、時間帯を重点にめり張りをつけて取り締まりを行うことや、違反の確定まで数分かかると聞いておりました。
しかしながら、本制度導入以来、日を追うごとに、決して悪質、悪意ではなく、車を離れてあっという間に標章を取りつけられてしまい、大変に困惑しているというドライバーの声が相次いでおります。とりわけ運送、配送事業者などは、免許保有者の二名乗務や駐車許可の取得など、苦慮をしながら法令を遵守しておりますが、大変な人件費と時間を要します。
また、昨今、女性乗務員もふえているタクシー事業者などからも、幹線道路から外れた公園やコンビニなど、急を要するトイレに寄っている間でさえ標章を取りつけられてしまい、仕事が継続できないといった切実な声や、自動二輪車利用者からも同様の声が寄せられております。
都内物流、輸送の円滑な事業継続を確保する意味でも、こうした事業者などの困惑に対し何らかの対応を検討すべきことを要望いたします。
また、古来、大名行列でさえ唯一横切ることが許されていたのはお産婆さんであったという史実もあります。少子化が進行する中、社会の宝である子どもの出産にかかわる助産師が、急な往診時にも即座に対応できるよう、駐車禁止等除外標章が交付されている医師と同様に、助産師についても駐車禁止の除外対象に加えるよう要望いたします。
質問2
駐車問題に関連して、障害者用の駐車場利用について質問します。
近年、公共施設や高速道路のパーキングエリアまたショッピングセンター、コンビニなどの一般商業施設などに障害者用駐車スペースの整備が進んでおります。しかし、せっかく設置された障害者用駐車スペースに健常者が駐車しているケースも多く、その場所を本当に必要とする車いす使用者などの歩行困難者が利用できないという実態があります。
その対策の一つとして、最近、パーキングパーミットという制度が広がりつつあります。この制度は、身体障害や難病また高齢で歩行が困難な方や、加えてけが人や妊産婦など一時的に歩行が困難な方に対して、共通するパーキングパーミット、障害者用駐車場利用証を交付することで専用駐車枠を利用できる人を明らかにし、駐車スペースを確保する制度であります。
東京都福祉のまちづくり条例を改正して整備を推進する都が、このような制度を参考に適正利用に向けた取り組みを行えば、障害者支援についてこれまで以上に広く都民の理解を得られ、マナーの向上につながり、すべての人が安心して出かけられる大都市として全国をリードすることができると考えます。見解を求めます。
答弁2
福祉保健局長
都は、福祉のまちづくり条例により障害者用駐車施設の整備促進を図っており、ご指摘の適正利用に向けた一層の取り組みも必要と考えております。その方策の一つとしてパーキングパーミット制度もございますが、大都市東京で導入するには、対象者の多さなどのさまざまな課題があります。
このため、都としては、多様な広報媒体の活用による利用者の理解促進とマナーの向上や、事業者団体の連絡会等を活用した意識喚起など、障害者用駐車施設の適正利用に向けた普及啓発を広く行ってまいります。さらに、都独自の取り組みとして、包括補助事業を活用し、区市町村が地域の実情に応じて実施する先駆的な取り組みを積極的に支援をしてまいります。
防災対策
質問1
社会全体で障害者を支援する取り組みについて質問します。
私たちは、急な災害に見舞われれば、必要な情報を迅速的確に把握して、災害から自身を守るために安全な場所へ避難するなど、最低限度必要な行動をとることができます。しかし、高齢者や障害者、難病患者、妊婦、乳幼児、外国人などの災害時要援護者は、一人では災害に対処することが困難であり、きめ細かな防災支援体制の強化を図る必要があります。
特に大都市東京においては、帰宅困難者対策と同様に、広域的な立場から調整を図らなければ支援の手が差し伸べられないことがあります。例えば特別支援学校高等部に通う生徒は自立に向けて一人通学が推進されており、区市町村をまたぎ、広い地域から電車、バスを利用して通学しております。また、障害者の就労が促進される中、一人で交通機関を利用し、頑張って通勤している人も数多くおります。
しかし、通学、通勤の途中で、ゲリラ豪雨などの自然災害時や、先日の二十九万人が影響を受けた東京メトロ東西線事故のときのように、交通ダイヤの混乱時など、ふだんとは違う状況に遭遇すると、駅やまち中で立ち往生してしまったり、パニックや迷子になってしまうという事例も少なくありません。こうしたことがもし大災害時であったならば、本人も家族も周囲の人も、大変な事態となってしまうことが想定されます。
そこで、障害者の自立、社会参加を促進する都として、災害や不測の事態に遭遇した障害者自身が助けを求めたいときに、周囲の人が気づき、支援しやすい環境を整えるべきであります。 そのためには、例えば障害者が本当に困ったときに、意思表示をすれば、都内どこでも、だれでも一目でわかるような共通のヘルプカードを普及したり、交通事業者など支援をする人がどのように対応すればいいのかを示したガイドラインを作成して普及啓発するなど、広域的、実効的な対策を早急に講じるべきであります。見解を求めます。
答弁1
福祉保健局長
災害時等における障害者支援についてでありますが、地域での要援護者支援は区市町村の役割であることから、都はこれまで、災害時の支援を示した指針の中で周囲に助けを求めるための防災手帳などを例示し、区市町村における取り組みを働きかけてまいりました。既に幾つかの区市や民間団体、施設などでも独自に手帳やカードを作成しております。
こうした取り組みが有効に機能するためには、日ごろから支援する側である交通事業者や都民に広く認識されていることが重要であります。今後、お話のヘルプカードやガイドラインも参考として、関係局や交通事業者など関係者の意見を聞きながら広域にわたる効果的な普及啓発について検討してまいります。
質問2
特別支援学校においては、社会自立へ向けて、家族や地域の協力を得ながら生徒自身が安全に通学できる力を身につけるための安全教育が重要と考えます。見解を求めます。
答弁2
教育長
これまで都教育委員会は、安全教育プログラムを作成し、危険を予測し回避する能力や態度の育成を図る安全教育を推進してまいりました。
特別支援学校におきましては、安全教育プログラムに基づき、電車やバス等の公共交通機関の安全な利用の仕方などの指導を行っております。さらに高等部においては、障害の程度に応じて、本当に困ったときに自分の意思を適切に伝えるなどして、一人で通学できるよう、家庭の協力を得ながら年間を通じて段階的な指導を行っております。また、お話のように、登下校時の安全を確保するには地域の協力が不可欠であることから、特別支援学校は、安全に関する行事などを通しまして、障害のある生徒に対する地域の人々の理解を深めております。
都教育委員会は、今後とも家庭、地域と連携し、社会自立へ向けて、災害時や不測の事態に遭遇したときにも、安全に通学できる力を生徒が一層身につけられるよう、特別支援学校を指導してまいります。
質問3
卒業後も安心して積極的に社会参加ができるよう、来年度策定予定の特別支援教育推進計画第三次実施計画の中に、学校で学んだ災害や不測の事態への対処方法を社会生活につなぐ取り組みとして加えるべきと考えます。あわせて見解を求めます。
答弁3
教育長
都教育委員会は、特別支援教育推進計画におきまして、生徒が在学中に身につけた力や、必要とする支援等の情報を企業等の進路先や生徒の居住地域につなぐ、個別移行支援計画を開発し、生徒の卒業後の生活を支援しております。
ご指摘のように、災害や不測の事態への対処方法につきましては、家庭や地域はもとより、広域的な支援を受けやすい環境をつくっていくことが重要でありますことから、来年度策定予定の第三次実施計画において、生徒が卒業後も安心して社会生活を送れるよう、安全教育の充実や災害等への対処方法のあり方について検討をして、個別移行支援計画に反映をさせてまいります。
少子・高齢対策
質問1
少子高齢社会への対策について質問いたします。
私は先日、地元の品川区が先駆的に進めた高齢者向け優良賃貸住宅と介護予防拠点、保育園が一体となった複合施設、ヘルスケアタウンにしおおいを視察しました。
この施設は、区の小中一貫校の推進によりあいた小学校の校舎を耐震改修して活用し、ことし三月に開設されたものです。二階、三階部分は介護施設と一体になった高齢者向け住宅で、四十二世帯全室個室となっており、家庭に近い環境を整備しています。また、一階には待機児童解消へ向けて定員百名の認可保育園ができ、さらに建物の中心には触れ合い広場があり、地域の子どもや近隣の高齢者も自由に交流できるようになっています。
高齢者の住宅や施設と小さな子どもたちの施設が同じ建物の中にあることに心配はないかとお聞きしたところ、施設長からは逆に、ほかの施設で寝たきりであった百三歳の老婦人がこの施設に入居して、子どもたちの元気な声や姿に勇気づけられ、次第に歩けるようになったというエピソードを伺いました。
この複合施設は、地域住民の意向も尊重しつつ既存の建物を活用したことで、コスト削減とともに短時間で事業実施が図られ、さらには、区が事業者に公有地を無償貸与したことも反映して、地価の高い東京において比較的に利用しやすい家賃設定になっております。そして、何よりも現下の喫緊の課題である少子高齢社会の問題に同時に対応しているのが最大の特徴であります。
こうした有効な事業例も視野に、都は今後、モデル事業を推進し、都内各地に積極的に誘導しながら、直面する課題である少子高齢社会の課題解決へ向けて対策を加速させるべきと考えます。見解を求めます。
答弁1
都市整備局長
都はこれまでも、事業の主体となる区市と連携しながら高齢者向け優良賃貸住宅の供給促進を図ってまいりました。お話の品川区の事例は、高齢者向け優良賃貸住宅に保育所等を併設したものでございまして、既存ストックの活用により入居者負担の軽減を図ったものでございます。
都では現在、プロジェクトチームを設置し、少子高齢時代にふさわしい新たな住まいの検討を進めておりますが、こうした先駆的でモデル的な取り組みにつきまして、区市等に積極的に情報提供を行うとともに、良質なケアの提供や子育て支援施設の併設、既存ストックの活用などの視点を十分に踏まえながら、事業コストや入居者負担の軽減のための環境整備を図り、高齢者向け優良賃貸住宅の一層の供給促進に努めてまいります。
質問2
今後、ますます進展する高齢社会において、介護福祉施設の整備はもとより、在宅高齢者の住まいとケアの問題と、少子化対策、子育て支援の拡充への取り組みは、同時に解決を図らなければ時代の変化の速度に対応できません。この二つの大きな課題をどう解決していくのか、知事のビジョンと決意を伺い、質問を終わります。
答弁2
知事
少子高齢化対策についてでありますが、我が国では、世界でも例を見ない速度で高齢化が進む一方、少子化の流れはいまだに反転する兆しが見えません。ちなみにこの日本の高齢化の速さというのは、人口に占める高齢者のパーセンテージが七%から一四%に達するまでに要した年数は、日本は二十四年、フランスは百十五年、イギリスは四十七年、ドイツは四十年という、こういう数値であります。
少子化は国家経済のパイを縮小させ、年金や医療、インフラの維持を困難にする、また、高齢化によるひとり暮らしや夫婦のみの高齢者が増加しておりまして、介護が必要な場合の住まいやサポート体制が大きな課題となっております。
こうした少子化や高齢化の課題に対応するため、猪瀬副知事と佐藤副知事をそれぞれヘッドとする、それをさらに横ぐしに結ぶ検討組織を設置しまして、対策の立案を指示いたしました。
今後、これまで力を注いできた福祉、保健、医療サービスの拡充はもとより、あらゆる分野の政策を総動員して、国の縦割りの壁を破る重層的、複合的な施策を構築していきたいと思っております。
これから結婚し、子どもを産む若者や子育て中の家庭が真に安心して子どもを産み育てられる社会、また、高齢者が安全で安心に満たされて明るい第二の人生を送れる社会をあわせて実現し、確かな安心を次の世代に引き継いでいきたいと思っております。