
私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
政権選択を最大の争点とした第四十五回衆議院選の投票が行われてから、既に二週間がたちました。十六日には特別国会が開会され、鳩山首相が選出されることになります。
七月十二日には都議会の選挙が行われ、ここ都議会においても、自民党、公明党による過半数体制が崩れました。
この都議選で、私たちは二百三十万人の都民の支持を得ることができました。これは、戦後の都議選での得票としては史上最高の得票であります。さらに衆院選においては、小選挙区で三百五万人、比例区で二百八十四万人もの都民の期待が民主党に寄せられました。現憲法下で初めて、衆院選で、野党第一党が単独過半数を得て政権交代が実現するという、まさに革命的な転換点を迎えたのであります。
既に、非核三原則に係る密約や高速道路無料化についての国土交通省の試算などが改めて明らかになっていますが、今後も年金制度の実態を初め、これまで秘匿されていた事実が次々と明らかにされることになります。旧来の政治を根本からたたき直し、二十一世紀日本の礎を築くことが、これからの政治の責任であり、民主党に課された責務であります。
国会同様、都議会もまた、若さゆえの経験不足が指摘されますが、この若さとしがらみのなさを生かし、新たな挑戦を続けていきたいと考えています。知事を初めとした理事者各位並びに各会派の議員の皆さん、都議会民主党もまた、都民福祉の向上になお一層汗をかくことをお誓いし、質問に移ります。
新銀行東京
質問1
新銀行東京について伺います。
石原知事は、七月十七日の定例会見で、今回の都議選の結果について、民主党が議席をふやしたことに関して、石原都政への審判という面もあるのではないかと問われ、そうは思っていないと否定されました。
しかしながら、私も、都議会議員選挙の期間中、より多くの有権者の声を聞きましたが、新銀行東京への四百億円の追加出資を提案した石原知事、あるいはその提案に対して十分な審議もしないままに早々に賛成した自民党に対して都民の怒りや疑問をひしひしと感じてまいりました。
石原知事は、新銀行東京への追加出資について、たびたび新銀行と取引をしている一万社を引き合いに出しますが、中小企業が取引しているのは新銀行だけに限りません。
石原知事が、中小企業と取引がある他の金融機関から出資要請があった場合、出資するのかという私たちの質問に対しては、はっきりノーと答えたように、一万社の取引先は単なるいいわけで、みずから発案した石原銀行の延命だけが追加出資の目的であったことを、多くの都民は見抜いているのであります。
もちろん、石原知事のいうように国政の前哨戦とならなければ、自公過半数割れという結果になったかは議論の分かれるところでありますが、しかし、私は、少なくとも都議選における民主党の議席増と自民党の議席減は、新銀行東京への追加出資四百億円に対する都民の怒りや疑問が大きく影響した結果であったと考えるものです。
新銀行東京に対する都民の審判について、石原知事の見解を伺います。
答弁1
知事
今回の都議選についてでありますが、今回の選挙に限らず、都議選とは、知事と議会の二元制のもとで、その時々の都政のさまざまな課題について、総体として都民の判断を仰ぐものと考えております。
しかし、加えて今回は、地方自治体の選挙の枠組みを超えて、国政の動向が強く反映されるという事態になりました。いってみると、国の総選挙の前哨戦にされてしまった嫌いがございます。その結果、敗れた自民党の中央の幹事長が地方自治体の都議会にわびに来るという、まさに未曾有の事態が起こりましたが、結果は結果として厳粛に受けとめますけれども、これによって新銀行初め都政の限られた案件について審判が行われたものとは考えておりません。
新銀行東京は、これまでも多くの小零細企業を支援しておりまして、現在、再建に向けた取り組みは着実に進んでおります。
質問2
私は、新銀行東京の失敗について、その原因を究明すべきであると考えています。
新銀行東京がことし二月十七日に発表した外部調査報告書は、融資の判断について論じたもので、過大なシステムや設備投資をしてしまった責任については触れられたものではありません。
私は、ATMなどを含めて、なぜこのような過大なシステムをつくってしまったのか、あるいはなぜ需要に見合わない店舗展開をしてしまったのか、新銀行東京の失敗について根本的な責任を明らかにする第三者機関を設けるべきだと考えますが、石原知事の見解を伺います。
答弁2
知事
新銀行東京の経営悪化の原因究明についてでありますが、新銀行東京は、外部の弁護士に委託し、経営悪化の原因究明を行ってまいりました。この中で、不良債権の問題のほか、システムの関連を含め、さまざまな調査分析を十分に行っております。その上で、外部調査報告書は、法的責任を問うことができるのは危機的なデフォルトの発生状況に対して抜本的な対策を講じなかった旧経営陣であるとしております。現在、新銀行東京は、旧経営陣に対し訴訟の準備を進めております。
その法的責任については、今後、司法の場において明らかにされることになると思います。したがって、新たに第三者機関を設ける必要は全くないと考えております。
質問3
石原知事は、新銀行東京の失敗を旧経営陣に転嫁していますが、その旧経営陣に対する責任追及については、新銀行東京が提訴するのか否かも含めて、いまだ不透明であります。
ことし二月の外部調査報告書を受け、新銀行東京が提訴するという意思決定をしたとは聞きますが、既にそれから半年以上がたっており、また、代表執行役もかわった中にあっては、この問題がうやむやになるのではないかと懸念するものであります。
石原知事は、二月二十四日の私たちの代表質問に対して、損害賠償請求訴訟の提起は、周到かつ慎重に準備を進める必要があるとしている新銀行東京の判断を尊重すると答えていますが、いつまでも問題を先送りにしようとする姿勢では、都民の理解は得られません。周到かつ慎重に準備を進める必要があるとしながらも、いまだ提訴に踏み切れないのは、裏を返せば、訴えるだけの根拠や資料が不十分だったというのではないでしょうか。
なぜ提訴の時期さえも示せないのか。石原知事は、旧経営陣の責任追及についてどのように考えているのか、見解を伺います。
答弁3
知事
新銀行東京の旧経営陣に対する責任追及についてでありますが、責任の所在については、ただいま述べたとおり、司法の場において明らかにされるべきと考えております。新銀行東京は、既に旧経営陣に対して損害賠償請求訴訟を提起する方針を決定しておりまして、その姿勢は明確であります。
訴訟に勝つために必要かつ十分な準備を行っておりまして、その準備ができ次第、速やかに提訴すると聞いております。
質問4
第一・四半期決算に関して、石原知事は、都議会議員選挙期間中の応援演説の中で、新銀行東京の四半期決算が黒字の見通しであることを盛んに発言したと仄聞をしております。
七月十日の定例会見では、このことを質問され、内々の報告で金融庁との絡みがあるから、期限が来るまで発表できないが、間違いなくこの四半期は黒字になりましたと答えています。しかし、新銀行東京の第一・四半期決算が発表されたのは、これから約一カ月後の八月六日であります。
このような早い段階で新銀行の決算内容を把握できるのであれば、新銀行東京が一千億円を毀損する以前に、東京都としても有効な手だてを講じることができたのではないでしょうか。
これまで新銀行東京から情報を取るべきだという私たちの再三の指摘に対しても、石原知事は、銀行法を盾に情報入手の努力さえしようとしておりませんでした。にもかかわらず、選挙のために情報を入手し、それを発表前にひけらかしたのであれば、言語道断であります。
石原知事は、いつ、だれから、どのような内容の報告を新銀行東京から受けたのか。また、黒字化の見通しであることを、議会にさえ報告することなく、なぜあえて決算発表の一カ月も前に、しかも選挙の応援演説の場で公表したのか。さらには、このことは石原知事が再三述べていた銀行法との関係で問題はないのか。あわせて見解を伺います。
答弁4
知事
私の発言と新銀行東京からの報告についてでありますが、まず、選挙の応援演説での発言についてまで議会で話題にするのはいかがなものかという気がいたします。
都は、新銀行東京の再建に当たって経営監視を強化しておりまして、大株主として業績見通しの把握に努めることは当然であります。また、それに対し新銀行東京が、企業としてしかるべき時期に大株主に対して見通しを示したものであります。ゆえにも発言の中では、近々正式の発表もあろうがというふうに言及しております。
いずれにしろ、選挙の関心事の一つでありましたこの問題について、都民にとっていい情報を入手していたわけですから、それをそのまま速やかに伝えることが私の責任だと思って言及いたしました。このことを、銀行法と絡めて問題にすることは当たらないと私は思います。
質問5
新銀行東京に関連して、東京都と地域の金融機関とが連携して実施する金融支援に関する条例について伺います。
この条例は、ことし三月、都議会本会議において可決成立しましたが、条例の規定では、東京都と連携する金融機関を、銀行、信金、信組のうち知事が定めるものとしていました。このことから、東京都と連携する金融機関として新銀行東京も加わることで、新銀行東京への隠れた追加出資になるのではないかと指摘されていました。
私たちは、当該条例に賛成はいたしましたが、本会議討論の中で、新銀行東京については制度から除外すべきであり、都が今後検討していく制度の内容によっては、条例改正も視野に入れて対応していく旨、述べてきたところであります。
東京都は、この夏にも制度をスタートさせたいと説明していましたが、既に暦の上では初秋を迎えております。東京都の現在の取り組み状況について伺うとともに、新銀行東京への対応について確認したいと思います。
答弁5
産業労働局長
新たな融資制度の取り組み状況についてでございますが、本年第一回定例会において条例案のご議決をいただき、それ以降これまでの間、地域の金融機関を初めとする関係機関との調整を進めるとともに、民間保証機関から融資スキームの企画提案の募集を行ってまいりました。
現在、取扱金融機関と保証機関との間で実務的な協議を進めておりまして、今月中の制度開始を目指してまいります。
なお、第一回定例会における審議の中で明らかにいたしましたように、本制度につきましては、日ごろの取引を通じて企業の顔が見えている地域の金融機関と連携して取り組む考えであり、幅広く金融機関の協力を得たいと考えております。特定の金融機関を念頭に置いたり排除したりするものではございません。
新銀行東京の問題について述べてきましたが、私たち都議会民主党は、今都議会において、新銀行東京問題に関する特別委員会の設置を求めていく考えであります。その中で、私たちは、石原知事が責任を転嫁している旧経営陣を初めとする参考人の招致などを通じて、責任の所在を明確にするとともに、新銀行東京からの早期撤退を実現すべく取り組んでいきたいと考えております。
築地市場問題
質問1
築地市場問題について伺います。
さきの都議会議員選挙において、民主党は、築地市場移転にノーなど、マニフェストに盛り込み、都民の審判を仰いできました。その内容は、多くの都民が望んでいる現在地再整備について改めて検討するとともに、シンポジウムや公開討論会など、都民の声を幅広く聞く場を設けるべきだというものであります。
また、石原知事も、都議選の結果を受けて、七月十七日の定例会見では、必要ならもう一回検討したらいい、専門家を入れてと述べており、私たちも、そのための検討委員会を速やかに設置すべきであると考えています。
以上のことから、九月七日、私たち都議会民主党は、現在地再整備を改めて検討するために、建築や流通の専門家、技術者、文化人などによる検討機関を速やかに設置することを石原知事に対して申し入れをしたところであります。
そこで、改めて、検討機関の設置について石原知事の見解を伺います。
答弁1
知事
現在地再整備の検討機関の設置についてでありますが、これは歴史的な推移というものを踏まえてひとつお考え願いたい。
鈴木都政の時代から二十年かけてさんざん議論して、いろいろ論争もありましたけれども、現在の結論を得たわけであります。とにかく現在地再整備についても、過去に四百億円を投じて工事を推進しましたが、工事に必要な種地が確保できないことに加え、工事期間が二十年以上に長期化し、市場業者の経営に深刻な影響を及ぼすことなどから、中断いたしました。
その後も、現在地再整備の可能性を検討しましたが、実現は困難との結論に至りました。
既に築地市場は、老朽化、狭隘化が深刻でありまして、災害時における耐震性やアスベストの問題など安全性の面からも早急な対応が必要であります。豊洲地区への移転は、こうした状況を踏まえ、関係者間でさまざまな案を検討し、都議会でも十分審議した上で決定したものであります。
しかるに、その土地にとんでもない事件が起こった。再調査の結果、有害物質が基準値の四万数千倍というものが発見されました。これは私にとってもショックでありまして、ということで、これは何とかならぬかということをいろいろ聞き合わせましたら、日本の産業界というのは海外でも活躍しておりまして、そういった経験を踏まえて必ず新しい技術というものが適用できるはずだということで、この新市場予定地の土壌汚染対策については、首都大学東京の学長でございます、この人は、この業界では、学会では、ある意味では欧米諸国でも活躍されておりますが、彼を座長にしまして、環境、土木などの各分野の最高権威の学者の方々で構成される技術会議で、広く民間から二百を超える提案を受けまして、これを審査し、科学的知見に基づきましてあらゆる角度から詳細に検証していただきました。その結果、信頼性が高く安全性に不安のない対策が提言されました。
都としては、技術会議の提言に基づく日本の最先端技術を活用して、万全の土壌汚染対策を確実に実施し、新市場整備を進めていくことが必要であると考えております。
これにもし疑義がおありならば、あくまでもこの原島座長たちが提案した、この問題解決のための日本の先端技術を駆使しての解決法について、ひとつ討論を行うことは大変結構だと思います。そして、それを踏まえて民主党にもし具体的な代案があるならば、専門性のある代案があるならば、早急にお示し願いたい。
質問2
新銀行への追加出資と同様、築地市場の移転については、多くの都民が反対であるということを、選挙期間中、より多くの有権者の声を聞くことを通じて、改めて実感をしたところであります。
六月八日の東京新聞の世論調査でも、築地市場の豊洲移転については、支持すると答えた人が二六・四%、支持しないと答えた人が六〇%と、移転を支持しない人が大半であります。私たちは、こうした都民の声を真摯に受けとめ、それらが都政に反映されるよう懸命に努力していかなければなりません。
そのためにも、私は、築地市場の移転問題に関して、シンポジウムや公開討論会など、都民の声を幅広く聞く場を設けるべきだと考えていますが、見解を伺います。
答弁2
中央卸売市場長
築地市場の移転整備に関し、都に寄せられた意見では、新市場予定地の土壌汚染に関することや、観光資源としての築地の存続などが反対の主な理由になっております。一方で、賛成する理由としては、築地市場の狭隘化や衛生面の問題などが挙げられております。
こうしたことから、都といたしましては、築地での再整備は現実的に不可能であり、移転が必要なことや、新市場予定地においては、技術会議の提言に基づく日本の最先端技術を活用した信頼性の高い土壌汚染対策を講じることで、安全性に不安がないこと、加えて、築地で培われた食文化の伝統を継承しつつ、新たな観光拠点となる施設を整備することなどをわかりやすく説明し、正確に理解していただくことが必要と考えております。
このため、市場業者に対し、これまで繰り返し説明してきておりますが、この九月、江東区豊洲地区において開催した住民説明会では、映像、写真、イラスト等を用いて、よりわかりやすく説明するとともに、質疑応答を通じて住民の声に幅広くこたえました。
今後とも、広く都民を対象に説明会を実施していく予定であり、都民の一層の理解が得られるよう努めてまいります。
質問3
市場の関係者の話を個別に聞くと、やはり築地で商売を続けたいという人の声も圧倒的であります。もちろん、中には、築地は狭くて再整備ができないと思っている人たちもおりますが、移転推進派の人たちの多くが、大家の東京都がいっているのだからしようがないという消極的な理由で容認しているにすぎないように思われます。
私は、水産や青果の卸や仲卸、あるいは関連事業者など、個々の事業者に対して意向調査を実施するなど、市場事業者の実態を把握すべきであると考えますが、見解を伺います。
答弁3
中央卸売市場長
築地市場の豊洲地区への移転につきましては、業界からの要望を受けて決定したもので、整備内容につきましても、施設計画の各段階において業界団体と協議を重ね、その意向を反映した上で取りまとめてまいりました。
一方、専門小売店の減少や景気の低迷など、市場を取り巻く状況は大きく変化し、多くの市場業者の経営は悪化しております。さらに、経営者の高齢化や後継者問題など、さまざまな課題を抱え、将来の営業に不安を感じております。
こうした状況の中、移転を円滑に進めるためには、市場業者に十分に説明を尽くし、個々の事業者が持つ不安や課題などをきめ細かに把握し、対応を検討していく必要があります。
都は、これまで土壌汚染や新市場の施設計画につきまして、業界別に繰り返し説明するとともに、意見交換の場を設けるなど、情報提供や実態把握に努めてきており、現在、移転経費などの支援策について各業界団体と意見交換を行っております。
今後は、こうした取り組みに加え、個々の市場業者に対しましても面接を実施し、それぞれが抱える事情や移転に対する意向、要望など、きめ細かい実態把握に努めてまいります。
質問4
豊洲地区では、環境確保条例に基づく汚染土壌の調査などが着々と進められていますが、一方で、東京都が調査した土壌のコアサンプルを廃棄しようとしていることに対して、その保全と開示を求める声も聞かれます。
東京都の情報公開のあり方に対しては、例えば公表値の百十五倍のベンゾ(a)ピレンが検出されたり、不透水層が確認できなかったにもかかわらず、これらの事実を指摘されるまで公表しようとしてこなかったことに象徴されるように、都民の多くが不信を抱いております。
このような中で、コアサンプルを廃棄してしまっては、有楽町層が本当に不透水層であるかも含めて、ボーリング柱状図の正確性が検証できなくなる、あるいはPCBやセレンなどの未調査汚染物質について、ボーリングした深度までの検査ができなくなるといった懸念の声が上がるのは当然ではないでしょうか。
私は、土壌のコアサンプルを廃棄することなく、その保全と開示に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁4
中央卸売市場長
専門家会議の助言に基づき、新市場予定地における土壌の深さ方向の汚染状況を調査するため、地表から一メーターごとに土壌を円筒形にボーリングしたコアサンプルを採取してございます。
この土壌コアサンプルは、汚染物質を分析するとともに、土質や地層の状況を確認するために採取しており、計量法に基づく計量証明事業者が行った分析結果、ボーリング柱状図など、汚染状況や土質、地質に関するデータにつきましては、既にホームページ上で公開してございます。
このように採取した土壌コアサンプルにつきましては、目的としたデータはすべて得ており、その分析結果も公表していることから、保管は必要ないと考えておりますが、その取り扱いについて係争中であるため、一定期間保管をいたします。
なお、情報公開につきましては、現在、調査が終了し、報告を正式に受理したものにつきましては、速やかにその内容を公表しております。
医療
質問1
医療について伺います。
まず、現在四十七分となっている救急搬送時間の短縮についてです。救命率は、発症から時間がたつほど下がり、後遺障害などの発生もふえるとされております。
民主党は、救急搬送の迅速化を繰り返し求めてまいりました。特に都内では、救急搬送の受け入れ先が決まるまでに長い時間がかかっていること、中には一時間以上かかるいわゆる困難事例があり、医療を受けられずに亡くなる方も出ていることを重く見ております。都議選でも、ドクターカーの配置、医師の確保推進、搬送先選定の司令塔機能強化や医療機関の連携による受け入れ迅速化、不要不急の出動削減などが必要であり、こうした施策の複合効果によって三十分に短縮することを目標に取り組むことを訴えてまいりました。
どの医療機関も勤務医不足に苦しむ中で、いわゆるたらい回しの発生を防ぎ、医療機関同士の連携による迅速な受け入れを進めるために、都は、私たちの求めに応じて、救急医療情報システムを各病院が閲覧できるようにしてまいりました。今後は、システム登載情報の精度向上など、リアルタイムに地域内の医療の状況を把握できるものとするよう取り組んでいかなければなりません。
こうした情報基盤整備を進めることに加えて、患者受け入れを的確に行っていくためには、地域における医療機関のネットワーク化、協力体制の構築が不可欠であると思いますが、どのように取り組むのか、お伺いをいたします。
答弁1
福祉保健局長
救急患者を迅速に受け入れるためには、救急医療機関が相互に連携協力することが重要であります。
こうした考え方に立ち、救急医療の東京ルールを定め、地域救急医療センターを核とした連携体制を構築してまいります。そのため、救急医療機関、消防機関を初めとする関係機関から成る地域救急会議を二次保健医療圏ごとに設置し、課題解決に向けた話し合いを行います。
こうした取り組みを通じ、医療機関相互のいわゆる顔の見える協力関係を構築し、地域で救急患者を受けとめる体制を確保してまいります。
質問2
民主党が昨年来、早急な実施を求めてきた救急搬送の司令塔機能について、去る八月三十一日より東京消防庁に救急患者受け入れコーディネーターが設置されました。従来、搬送先の選定に長時間を要していたケースで、地域救急医療センターでは地域内で受け入れ可能な医療機関が見つからない場合、広域に調整を行うとのことです。
昨年は年間三万五千件にも上った困難事例の搬送先選定に対して、地域救急医療センターによる受け入れ努力が行われるとはいえ、迅速かつ的確に対処するためには、救急患者受け入れコーディネーターを必要に応じてさらに増強していくことが必要と考えますが、所見をお伺いいたします。
答弁2
福祉保健局長
東京消防庁司令室に配置している救急患者受け入れコーディネーターは、地域救急医療センターによる搬送調整が困難な場合に、都内全域を対象として受け入れ先の調整を行うこととしております。
コーディネーターにつきましては、八月末の事業開始に当たって必要な体制を確保していると考えております。
質問3
都民の側も、不要不急の一一九番をなくすために、みずから病気や医療に関する知識を持つことが必要です。都や医療団体、市民団体による啓発活動なども行われており、都における東京ルールのコマーシャルなど、従来に比べれば格段にわかりやすい情報提供が行われるようになりましたが、シヤープ七一一九やシャープ八〇〇〇の認知度はまだ高くはありません。都民目線、都民参加によって医療体制の構築を進めるとともに、みずからも限りある医療を支えていくために責任ある行動をとれるよう、医療改革都民会議を設置をし、ともに都の医療保健施策を考え、実行することが必要であると考えますが、所見を伺います。
答弁3
福祉保健局長
都の保健医療の基本的計画であります東京都保健医療計画では、都民本位の保健医療の実現には、都民一人一人が自覚を持って、主体的かつ積極的にかかわることが必要であるとしております。
救急医療におきましても、医療を受ける側と提供する側双方が救急医療対策協議会に参画して議論を深め、その中から医療に対する都民の理解と参画が重要であることを東京ルールの一つとして掲げたところであります。
このように、施策の検討に当たりましては、都民の参加を得て行っており、今後ともこうした考え方に基づき対応してまいります。
質問4
ここまで現有資源の有効活用と搬送調整のむだをなくし、救急搬送の迅速化を図るための取り組みについて伺ってまいりましたが、何といっても高度救急医療を担う医師の不足と、そして自民党政権下で行われてきた社会保障費の削減や救急医療に対する診療報酬の低さによって医療機関が疲弊し、各医療機関ひいては個々の医師に過度な負担を強いてきた、この点を抜本的に改善をしていかなければ、私たちは本格的な医療崩壊を目の当たりにすることになります。
民主党は、国政においても医療の立て直しに全力で取り組む所存ですが、都においても、東京特有の地価、物価、人件費の高さに配慮した医師確保策、救急医療確保策をより一層進めるべきと考えますが、所見を伺います。
答弁4
福祉保健局長
都における医師の確保及び救急医療についてでありますが、都は、救急医療や周産期医療など、都民ニーズが高い分野の医師の定着を図るため、病院勤務医師の勤務環境改善事業を行うとともに、医師の養成という中期的視点から医師奨学金制度を創設するなど、重層的な取り組みを行っております。
また、診療報酬の改善について、国に対して提案要求を行っております。 さらに、救急医療の膨大な需要にこたえるため、先ほど申し上げたように、東京ルールを定め、運用を開始いたしました。
こうした取り組みにより、今後とも適切な救急医療体制を確保してまいります。
質問5
都立病院は、いわゆる行政医療を担う病院として、また、その存在する地域にとって都民に頼られる病院として医療を実施してきました。中でも都立の小児病院は、多摩地域の小児医療の拠点として、小児の高度医療から初期医療までを担う重要な役割を果たしてまいりました。都は、平成二十二年三月に八王子、清瀬、梅ケ丘の都立小児病院を府中に移転統合し、多摩小児総合医療センターを開設するとしており、準備が進められています。
小児医療は不採算性が高いといわれる中で、都が高度医療を総合的に提供する拠点を整備することは評価いたしますが、整備に伴って都民の身近な地域医療に空白を生じさせることは絶対にあってはなりません。特に、もともと病院の数、医師の数が人口数に対して二十三区よりも少ない多摩地域においては、民間医療機関の疲弊が進む中で、都立病院の果たす役割は大きいと考えております。
三小児病院の統廃合に伴う医療機関の充足といった地域医療確保に対する取り組みをお伺いいたします。
答弁5
病院経営本部長
小児病院転出後の地域の小児医療体制を確保することは非常に重要であり、これまでもさまざまな対策を講じてまいりました。
具体的には、この六月に多摩北部医療センターの小児病床数を十三床から三十五床に拡充するとともに、清瀬小児病院から三名の医師をチームで派遣する体制を新たにとっております。
さらに今月からは、平日準夜帯での初期救急医療を週三日から週五日に拡大して実施しております。
また、八王子地域では、都と市の協議に基づき取り組んできた結果、市内の中核病院に小児病床を新たに十二床確保できる見込みとなっており、都はこれに対し、施設や設備の整備に対する補助を行ってまいります。
加えて、小児病院転出後の跡地と建物を活用して、八王子市が小児初期救急医療や重症心身障害児の通所事業を行うこととしております。
さらに、梅ケ丘病院移転後の区部における小児精神医療の外来機能を確保するため、十月に大塚病院に児童精神科外来を開設いたします。
今後とも、地元自治体、医師会等との連携のもと、小児病院転出後の地域の住民の方々が安心できる小児医療体制確保に全力で取り組んでまいります。
質問6
がん対策についてです。
国民の死亡率のトップであるがんによる死亡率を下げ、適切な医療を受けられないがん難民をなくすためには、まずはがん検診受診率を現状の三割程度から少なくとも五割へとアップさせることが必要です。そのためには、忙しい日常の中で先延ばしにしがちな検診を受けやすくするため、職域検診との連携を検討するなど、さまざまな工夫をして受診機会をふやしていかなければなりません。
都として、従来より行ってきたキャンペーンの継続強化、また、区市町村が行うがん検診へのより一層積極的な支援を行い、区市町村間の格差をなくし、東京都全体として受診率を向上させることが必要と考えますが、所見を伺います。
答弁6
福祉保健局長
がん対策でありますが、まずがん検診につきましては、がんの早期発見の機会となる検診の受診率向上に向けて、東京都がん対策推進計画において受診率五〇%を目標として掲げております。
都はこれまで、ピンクリボン運動やがん検診支援サイトを通じて、普及啓発や情報提供を実施しております。
また、区市町村に対しましては、検診案内を個別通知するなどの受診率向上の取り組みを支援するとともに、本年八月、検討会を設置し、受診率向上に向けた効果的な取り組みについて検討を開始するなど、支援を積極的に行っております。
今後とも目標達成に向け、区市町村や関係機関と連携した取り組みを進めてまいります。
質問7
適切な治療が受けられない、治療に納得がいかないがん難民をなくすために、国と都が全力を挙げて取り組まなければならない課題であります。高度な医療機関が集積するこの東京ですら、がん難民が発生しております。なぜ適切な医療が受けられないのか、私たちはがん患者たちの問いかけにこたえていかなければなりません。
中でも、医療についての疑問や不安を解消するためには、主治医とのコミュニケーションが重要ですが、これを助けるためのツールとして、がん手帳の発行、いつでも相談できるがんコールセンター、治療に関する情報が取れるがんサイトなど、医療者と患者との間の情報格差をなくす取り組みが必要です。
また、医療の供給サイドと利用サイド、そして医療施策を実施する行政との相互理解を推進する場をより一層充実するために、タウンミーティングの開催を求める声がありますが、患者とのコミュニケーション推進についてどのように取り組まれるのか、所見を伺います。
答弁7
福祉保健局長
がんに直面した患者や家族には大きな不安や動揺が生じることから、正しい情報を提供するとともに、がんと向き合うための心のケアも含めたアドバイスを行う体制の整備が必要であります。
このため、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院では、相談支援センターを設置し、がんに関する相談や情報提供を行うとともに、がん経験者によるピアカウンセリング事業を実施しております。
十月から、休日・夜間相談のモデル実施を行うなど、相談支援体制の充実に向けた取り組みを進めてまいります。
質問8
都は、地域におけるがん診療体制を確保するため、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院の指定などの施策を進めてまいりました。しかし、患者の願いである、どの病院にかかってもいわゆる標準治療が受けられる、適切な医療を受けられるという段階にまではいまだ至っておりません。
がん医療の均てん化を目指して、都としてどのように取り組むのか、伺います。
答弁8
福祉保健局長
がん医療の均てん化についてでありますが、都は、ただいま申し上げました拠点病院等におきまして、高度ながん医療の提供と地域の医療機関に対する診療支援や医療従事者に対する研修などを実施しております。
また、病状に応じた切れ目のない医療提供を確保するため、拠点病院等から構成される東京都がん診療連携協議会におきまして、全都統一の地域連携クリティカルパスを作成しております。
今後は、このクリティカルパスを用いて、拠点病院等と地域の医療機関との双方向での医療連携を充実し、地域全体の医療水準の向上を図ってまいります。
質問9
都は、医療機関において、がん患者の診断、治療及び転移に関する情報を登録する仕組みである院内がん登録を支援してまいりました。都民のがんの罹患や死亡状況など、がん対策の充実強化に必要な情報を集めるためには、院内がん登録をさらに発展をさせ、地域がん登録の実現に向けた取り組みを進めていくべきと考えますが、所見を伺います。
答弁9
福祉保健局長
がん登録についてでありますが、現在、拠点病院及び認定病院において院内がん登録を行っておりますが、今後、より多くの医療機関に院内がん登録の取り組みを広げ、都全域を対象とした地域がん登録の実施につなげてまいります。
このため、今年度、学識経験者や医療機関等から成る検討組織を設け、具体的な検討を行うこととしております。
質問10
集団感染や重症化し死亡者も出ている新型インフルエンザ対策について伺います。
民主党は、さきの代表質問でも、過去スペイン風邪が流行した際には夏にも流行のピークがあったことを指摘し、対策の強化を求めてまいりました。これから空気が乾燥し気温が低下するに従って、さらに患者がふえることが懸念されます。また、患者がふえるにつれウイルスが変異し、強毒化する危険性が高まるとの専門家の指摘もあります。
発生動向を的確に把握するため、サーベイランス体制を継続強化する必要があると考えますが、所見を伺います。
答弁10
福祉保健局長
都は、新型インフルエンザ発生直後から、患者の発生動向を迅速に把握するため、保健所や関係機関との緊密な連携のもと、都独自の仕組みであります東京感染症アラートを発動し、サーベイランス体制を強化してまいりました。
流行期に入りました現在は、感染拡大や重症化を防止するため、大規模な流行につながる集団発生、重症患者の早期把握に重点を置きましたサーベイランスを実施するとともに、ウイルスの遺伝子分析を強化し、毒性の変化、薬剤耐性等を常時監視しております。
今後ともサーベイランスを的確に実施し、都民や関係機関に対して適切に情報提供を行ってまいります。
質問11
腎臓病などの疾病がある方、免疫が低下し重症化しやすい方が感染し、亡くなるケースが出ています。現場の医師たちから強い求めがあり、厚生労働省は、ようやくこうしたハイリスクケースの臨床情報や治療方法などの情報提供を行うと発表しました。これまで国の対応は後手後手に回り、現場での治療に必要な情報すら十分に提供されていないばかりか、重症者の治療に必要な医療機器や入院ベッドも不足することが懸念されています。
都は、医薬品や防護服など必要な資器材を確保してきましたが、秋冬の大流行に備え、入院医療体制の確保が急務と考えますが、どのように取り組んでいるのか、伺います。
答弁11
福祉保健局長
都は、国に先駆け、計画的に抗インフルエンザウイルス薬等の備蓄を進めているほか、独自の補助制度を創設し、医療機関における入院病床の整備や、人工呼吸器等の医療資器材の整備を支援するなど、重層的な対策を講じております。
秋冬の大流行期には、多くの入院患者が発生することも懸念されるため、都内の全病院に対し、その対応を要請いたしました。さらに現在、ICUの稼働実績や人工呼吸器の保有状況を把握するなど、入院医療体制の確保に努めております。
質問12
既に感染者がふえてきている中で、間近に迫った九月の大型連休中には、医薬品の流通がストップするため、診療所や調剤薬局における抗インフルエンザ薬枯渇が懸念されています。こうした事態を防ぐため、都として何らかの対策を講ずるべきと考えますが、所見を伺います。
答弁12
福祉保健局長
都は、既に東京都医師会、東京都薬剤師会、東京医薬品卸業協会との調整によりまして、連休前に診療所や薬局に十分な在庫を確保するとともに、万一不足が生じた場合におきましても、速やかに抗インフルエンザウイルス薬を供給する体制を整えているところであります。
薬物乱用の防止対策
質問1
薬物乱用について伺います。
昨今、芸能人やスポーツ選手などの著名人、さらには若者に至るまで、覚せい剤、大麻、MDMAなどの違法薬物全般にわたる乱用のニュースが飛び交い、大きな社会問題となっています。違法薬物の乱用は、乱用者の命までをも奪いかねず、さらにはその家族や周囲の方々の人生をも壊しかねません。
都は、脱法ドラッグ条例をいち早く策定し、国に先駆けた取り組みを行うとともに、最近では東京都薬物乱用対策推進本部において、薬物乱用のない社会づくりを目指し、新たな東京都薬物乱用対策推進計画を策定しました。しかし、薬物の乱用は低年齢化し、社会に幅広く浸透しつつ、問題が複雑化、深刻化しているのが現状であります。薬物汚染という深刻な状況を真摯に受けとめ、これまでの計画をより強力に実施するとともに、新しい発想での対応も求められています。
薬物の乱用防止は、薬物依存という病理的なとらえ方、命を大切にするという教育的とらえ方、また、生活環境によって薬物に手を染めてしまうという心理的なとらえ方などの問題意識を持って取り組まないと、根本的な解決には至らない課題でもあります。
一方で、法規制の強化も必要と考えます。既に大麻に関しては、都から法規制の強化を求めるなど、国への提案要求も行われてまいりましたが、違法薬物に関する認識をより一層高めていくためには、さらなる対象の拡大と罰則強化が求められています。
都には、違法薬物の一掃に向けて、社会全体で取り組む強固な体制を構築するためのさらなる対策と全庁的、全都的な取り組みを求めるものです。法規制の強化に向けた国への提案要求も含め、違法薬物の一掃と薬物乱用のない社会の実現に向けた知事の見解を伺います。
答弁1
知事
薬物乱用防止対策についてでありますが、薬物の乱用は心身をむしばみ、人の人生を、一生を台なしにするばかりか、学校、職場、社会の秩序を乱すものでありまして、その害悪ははかり知れません。昨今の芸能人、スポーツ選手や大学生に広がるさまざまな薬物乱用の実態は、極めて憂慮すべきものであります。
都は、これまで薬物乱用の一掃に向けて、脱法ドラッグ条例を制定するなど全庁を挙げて取り組んできましたが、こうした状況を踏まえ、青少年を対象とする徹底した啓発活動、インターネット取引といった乱用実態に対応した指導、取り締まりなど、対策を一層強化していくつもりでございます。
さらに、規制の網から漏れている薬物を把握し、国に対して実効性のある法規制を求めてまいります。
今後とも、行政、警察、地域が一体となり、薬物の恐ろしさをあらゆる機会をとらえて繰り返し訴えるなど、薬物乱用の根絶に全力を尽くしていきたいと思っております。
質問2
薬物乱用の防止には、小学校、中学校、高校での段階的な薬物に対する適切な学習と自分の身を守るすべを習得していくことが重要であると考えます。これまでも、都では、小学校段階から薬物乱用防止教室に取り組んでいますが、平成二十年の文部科学省の調査では、都内公立学校での実施率は、小学校で六二%、中学校で七三%、高校で八一%となっていますが、まだ一〇〇%には至っておりません。
また、子どもたちへの教育には、その内容も重要です。特に現場の先生たちが薬物について正しい知識を習得し、違法薬物を取り巻く社会の現実を理解することが重要であります。薬物に関する専門知識を有する外部講師の活用も有効的手段であります。昨今の薬物乱用状況と若者への浸透を考えれば、都教育委員会としても、すべての公立学校において、今まで以上に薬物乱用防止教育が実施されるよう取り組んでいかなければなりません。
今後の薬物乱用防止教育の充実と推進について、教育長の見解を求めます。
答弁2
教育長
大麻や覚せい剤などの薬物乱用につきましては、個人の健康や人格形成を損なうだけでなく、家庭内暴力や犯罪の増加など社会全体にも甚大な影響を与えるものであり、法律で厳しく禁止されています。
しかし、昨今、インターネットや携帯電話の普及により、違法薬物の入手が容易になるなど、青少年が薬物の誘惑に巻き込まれやすい状況が生まれてきております。
現在、児童生徒は、小学校、中学校、高等学校と、いずれも保健の授業において、発達段階に応じ、薬物乱用による健康被害について繰り返し学習することにより、その有害性を認識し、適切に健康を管理改善していく力をはぐくんでおります。
また、こうした授業の内容をより深化させるため、学校では、警察職員、麻薬取締官OB、学校薬剤師などを講師に招いた薬物乱用防止教室を実施しております。
さらに、都教育委員会は、教師向け指導資料を作成、配布いたしますとともに、大学等の専門機関と連携した教員研修を実施し、薬物乱用防止に関する指導力向上に努めてまいりました。
今後とも、こうした教員研修を継続して実施するとともに、薬物乱用防止教室や薬物乱用を取り上げたセーフティー教室の一層の充実を働きかけ、すべての公立小学校、中学校、高等学校が必ず年一回実施するよう指導してまいります。
質問3
違法薬物を水際で食いとめる取り組み、密売組織の撲滅と乱用者への取り締まりが極めて重要だと考えます。警視庁では、芸能界の薬物問題を深刻に受けとめ、関係者の緊急会議を開催し、これまで以上により積極的な対応を行っています。
昨今の深刻な薬物乱用問題を根絶するため、警視庁の取り組みをより一層強化をし、違法な薬物を社会から一掃することが必要不可欠であります。警視庁における覚せい剤などの薬物事犯の取り締まりの現状と、今後の取り締まりにどのように取り組み、どのような対策を講じていくのか、警視総監の決意を伺うものであります。
答弁3
警視総監
警視庁における薬物事犯の取り締まりの状況と今後の対策等についてお答えいたします。
都内における薬物事犯の検挙人員は、減少傾向にはあります。全国においても同様の傾向であります。ただ、反面、薬物の押収量は増加傾向にあるということであります。
議員ご指摘のとおり、芸能人あるいはスポーツ選手等の著名人、または大学生等の若者による薬物乱用が昨今社会的な問題となるなど、現下の薬物情勢は憂慮すべき実態にあろうかと思います。
こうした情勢を踏まえ、警視庁では、巧妙化、多様化する密輸、密売事犯に対して、関係機関との連携による対策を強化するなどして、国際郵便の悪用による隠匿事案や薬物の運び屋による携帯密輸事犯等を水際で検挙しております。
また、昨今、イラン人密売グループ等は、取引場所を繁華街から住宅街に移すなど密売行為を一層巧妙化させていることから、取り締まりの体制を強化するとともに、麻薬特例法等の法令を駆使して、密売組織の一斉検挙と末端乱用者の徹底検挙に努めているところであります。
ちなみに、ことし八月末現在、千七百六十六人を検挙し、覚せい剤、大麻等約八十三キログラム、MDMA等約一万一千錠を押収しているところであります。
このうち覚せい剤──我が国の薬物事犯で最大の問題は覚せい剤ではなかろうかと思います。覚せい剤につきましては、この一月から八月で六十キログラムを押収しておりますが、一言で六十キログラムといいますと、通常覚せい剤を注射器で使用した場合の一回分の使用量というのは、約〇・〇三グラムです。ということは、六十キロということは約二百万回分に相当する量であります。昨年一年間で我が国で四百キロの覚せい剤を押収したかと思いますが、それを〇・〇三で割りますと約一千三百万回分の使用量に相当するということであります。
ちなみに覚せい剤というのは、明治の末期に我が国で世界で初めて合成に成功した合成麻薬であります。以来、日本は世界最大の覚せい剤の市場となっております。しかも我が国の場合は、極めて純度の高い高品質のものでなければなかなか通用しないということでありまして、その分、非常に高値で取引をされていると。現在、末端価格は一グラム当たり六万円ないし九万円ということでありますし、少し以前は一グラム当たり十二万円くらいで取引もされていたということであります。
したがいまして、この日本の市場に対する密売グループの外国からの仕出し圧力というのは、ある意味では極めて大きいということかと思います。ほとんどすべての覚せい剤は、外国で密造されております。国際的な犯罪組織の手によって国内に密輸をされておりますが、こうした密造地が世界のあちこちに拡散拡大しているということ、あるいは密輸方法の多様化、さらには国内における末端の密売方法の多様化等によって、先ほど申し上げました押収量あるいは検挙人員を超えて、我が国における、とりわけ覚せい剤の薬物情勢というのは、極めて深刻なものではなかろうかというふうに考えております。
警視庁といたしましては、まず、この薬物の依存性、危険性というものを社会に広くアピールをするということで、薬物乱用防止に向けたキャンペーンを繰り返し展開をするということであります。加えて、薬物乱用防止教室の開催等、広く繰り返し啓発活動を展開しているところであります。
先般九月九日には、芸能界の関係団体の方に当庁に来ていただきまして、薬物乱用根絶のための意見交換会を開催したところでありますが、趣旨は、今申し上げたものでございます。
いずれにしても、違法薬物の水際阻止、密輸、密売グループの徹底検挙、壊滅ということが最も大事な課題ではなかろうかと、こう考えております。
加えて、末端乱用者の徹底検挙を図るなど等々薬物乱用根絶対策を引き続き強力に推進してまいりたいというふうに考えております。
雇用・中小企業対策
質問1
雇用対策について伺います。
八月二十八日、総務省が発表した七月の完全失業率は、前月比で〇・三ポイント上昇し、五・七%と、一九五三年に統計を開始して以来、過去最悪を記録いたしました。また、八月二十五日に東京都が発表した、四月から六月期の都内の完全失業率は四・八%となり、前年同期と比べて〇・九ポイントも上昇し、完全失業者数も前年同期より六万三千人も多い三十四万五千人になっております。
東京都は、昨年十月、緊急対策Ⅱを発表し、公的雇用五十万人創出を打ち出し、その後、国の最終補正を受ける形で二つの基金事業を打ち出しをいたしました。しかし、その規模が不十分であることは、前回の六月議会でも申し上げてきたとおりであります。
このように日々雇用情勢が厳しくなる中で、何ら追加的対策を打ち出そうとしていないのであれば、それこそ行政の不作為ではないでしょうか。
私は、東京都として、現在の厳しい雇用情勢にかんがみ、緊急雇用対策の実効性が上がるよう施策の検証をしながら、緊急雇用対策のさらなる積み増し、充実を図っていくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁1
産業労働局長
緊急の雇用対策についてでありますが、世界同時不況に伴う雇用情勢の急速な悪化を受け、都は、昨年度から雇用創出につながる公共事業を実施するとともに、本年度は、都独自の緊急雇用創出区市町村補助事業や、国の交付金による緊急雇用創出事業及びふるさと雇用再生特別基金事業の二つの基金事業により、切れ目のない雇用の創出に取り組んでおります。
これらの雇用創出事業が十分効果的に行われるよう区市町村とも連携を密にして取り組んでおり、既に約六百の事業を実施しております。今後とも、厳しい雇用情勢に的確に対応し、雇用の創出に積極的に取り組んでまいります。
質問2
職業訓練の拡大、拡充について伺います。
雇用情勢の悪化を受け、東京都では、昨年度、職業訓練の規模を大幅に拡大しています。しかし、本年四月からの応募状況を見ますと、多いときには定員に対して五倍強の応募があり、離職して再就職を目指す方々の職業訓練ニーズはますます強くなるものと思われます。
私は、東京都として、さらに職業訓練の拡大、充実に向けて取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
産業労働局長
都は、雇用情勢の悪化に対応して、本年度、離職者向け職業訓練を大幅に拡大し、前年度の七倍、約七千人の規模で実施することとしております。また、訓練の開始時期を例年よりも早めまして、四月から毎月実施しており、訓練科目についても、より求人ニーズの高いITや介護分野を中心に設定するなど、その充実に努めております。
一方、国が行う職業訓練についても、実施規模の急速な拡大が図られております。
都としては、総体として、都民のニーズにこたえられるように職業訓練を実施し、離職者の再就職を支援してまいります。
質問3
中小企業対策について伺います。
中小企業の厳しい資金繰りに対応するため、昨年十月に緊急保証制度がスタートをいたしました。スタート当時は五百四十五業種でしかなかった対象は、その後、四度の追加指定を経て、現在では七百八十一業種まで拡大しています。しかし、なお中小企業関連の業種は約九百業種あり、まだまだ不十分であると思います。
一方、緊急融資の実績も含めて、ことし四月から六月までにおける東京都信用保証協会の第一・四半期事業概要が先日発表されました。保証承諾件数は、昨年同期に比べ一五〇・一%の四万四千五百件、金額では二一〇・七%の六千七百八十七億円になっています。この実績のうち約六割は緊急保証によるものですが、今後、年末に向けて中小企業の資金需要に適切に対応できるよう、東京都としても万全を期していくことが必要です。
私は、預託金をさらに積み増すことで融資目標額を拡大するなど、今後の都内中小企業の資金需要に適切に対応していくべきだと考えますが、見解を伺います。
答弁3
産業労働局長
都内中小企業の資金需要への対応についてでありますが、都は、制度融資の融資目標額の設定に当たり、利用実績はもとより、各種の景況調査や信用保証協会及び金融機関などとの意見交換を踏まえまして、都内中小企業の生産、売り上げや資金繰り等の動向をとらえ、その資金需要の的確な把握に努めているところでございます。
本年六月の補正予算におきましては、国の緊急保証制度に対応した融資メニューであります経営緊急を含む経営支援融資の目標額を、二千五百億円から七千億円に拡大し、預託金を四百七十億円積み増すなど、必要な経費を確保いたしました。
今後の都内中小企業の資金需要については、設備投資の動向など不透明な部分が多くありますが、都としては、都内中小企業の資金需要を的確に見きわめつつ対応してまいります。
質問4
都議会民主党では、九月一日から九月九日までの間、さまざまな団体から来年度予算編成に関する要望を聴取してまいりました。中小企業団体からは、制度融資の融資利率引き下げ、あるいは経営支援融資の信用保証料の全額補助といった声も多く聞かれました。
民主党も、東京マニフェスト二〇〇九の中で、一%の利子軽減制度の創設や保証料補助の拡充など、中小企業の負担を減らしますと主張してきたところであり、厳しい経済状況をかんがみれば、中小企業の負担軽減は緊急の課題であるものと考えます。
東京都として、緊急避難的に中小企業の負担を軽減していくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁4
産業労働局長
中小企業の資金調達に係る負担の軽減についてでありますが、都は、昨年度から、経営支援融資や小口資金融資において、小規模企業者に対して過去最高水準となる保証料の二分の一を補助する独自の対応を行っております。
また、制度融資の最優遇金利は、金融機関が最も信用力のある企業に適用する貸出金利であります短期プライムレートとほぼ同水準でありまして、本年四月には、この間の金利動向に合わせて最優遇金利をさらに〇・四%引き下げたところでございます。
このように、都は他の道府県と比べましても格段に手厚い措置を既に講じているところでありまして、現下の厳しい経済情勢のもと、引き続き都内中小企業の負担の軽減を図ってまいります。
住まいと防災
質問1
住まいと防災について伺います。
国ではこの十月から、失業者救済のための住宅手当制度として住宅手当緊急特別措置事業を創設する予定となっています。この制度は、職と住居、ここでいう住居は賃貸住宅ですが、これらをともに失った方々が対象となっています。
また、都は、国の既存制度である離職者支援資金をもとに独自に利子補給を行い、再就職支援貸付事業として、再就職を目指す離職者向けの無利子貸付を開始しています。就職活動中の生活費について、一年間二百四十万円を限度に返済可能な額を貸し付けるもので、家賃などの住宅費については、その範囲内で算定するものとしております。
しかし、民主党は、東京マニフェスト二〇〇九にも示したように、景気の悪化に伴う企業の倒産などにより失業したり、家を所有していない方々の救済はもちろんのことでありますが、給料や賞与がカットされてしまったことによって住宅ローンの返済が困難になってしまった都民が、せっかく取得したマイホームを失うことのないよう、無利子貸付などで支援することも必要と考えております。
不動産競売流通協会が最高裁判所事務総局の競売物件数データを分析した結果では、金融機関による個人向け住宅ローンの融資額が急増した二〇〇五年ごろより約八カ月から二十四カ月を経過した二〇〇六年から二〇〇八年における住宅ローン破綻による競売物件数が急増をしており、今後さらに増加する可能性が極めて高いと予想されています。東京都内の個人所有の競売物件数は、直近の二〇〇九年七月で五百二件で、前年同月の二百八十七件に対して一・九倍、この一年間を見ると、前年同月比の二倍前後で推移をしております。
このような状況の中で、景気の回復が軌道に乗り、雇用情勢が安定化するまでの一定期間、住宅ローンが破綻する一歩手前の都民を救済する制度を速やかに構築する必要があると考えますが、所見を伺います。
答弁1
福祉保健局長
給与や賞与の減収により、住宅ローン返済が困難になった都民に対する無利子貸付についてでありますが、こうした事例につきましては、個人資産の形成に対する支援の是非など、さまざまな課題があると認識しておりまして、公費の投入を行う考えはございません。
質問2
民主党は、東京マニフェスト二〇〇九で、学校、病院一〇〇%耐震を掲げてまいりました。都は、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇九で、大地震から子どもたちや高齢者などを守るとともに、震災時の避難所機能を確保するため、学校などの耐震化の早期完了に向けた取り組みを強化することを示しております。
そこで、まず、公立の小中学校、幼稚園の耐震化に向けた今後の取り組みについてお伺いをいたします。
また、私立の小中学校、幼稚園などの耐震化に向けた今後の取り組みについても、あわせて伺います。
答弁2
教育長
学校施設は、幼児、児童、生徒の学習、生活の場であるとともに、災害発生時には避難場所となるなど、重要な役割を担っており、耐震化を早急に完了する必要がございます。
都は、「十年後の東京」の策定により、平成二十七年度までに小中学校等の一〇〇%耐震化を図ることを目標とし、取り組んできたところでございまして、平成二十一年四月現在の耐震化率は八二・六%まで上昇しております。
さらに、学校施設の耐震化の重要性、緊急性にかんがみまして、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇九において、Is値〇・三未満の建物については平成二十二年度までに、Is値〇・六未満の建物については平成二十四年度までに耐震化を完了することを目標とし、「十年後の東京」に掲げた目標を三年前倒しいたしました。この目標を実現するため、都教育委員会は、昨年度から区市町村に対する財政支援及び人的支援を行うとともに、学校ごとの耐震化における個別具体的な課題の把握やその解決に向けた助言に努めるなど、耐震化を加速するための取り組みを進めております。
今後も、区市町村との連携をさらに深めまして、これまでの取り組みを強化することにより、早期に学校施設の耐震化完了を図ってまいります。
生活文化スポーツ局長
私立学校の耐震化に向けた今後の取り組みについてでございますが、私立学校に学ぶ児童生徒の安心・安全のため、都では、平成十五年度から耐震診断、耐震補強工事等の経費の一部につきまして補助を実施しており、これまで補助対象の拡大や補助率の改善など、その充実に努めてまいりました。その結果、昨年四月現在ではございますが、私立小中学校の耐震化率は八一・八%となっております。
「十年後の東京」計画におきましては、平成二十七年度に私立小中学校を一〇〇%耐震化することを目標としておりましたが、耐震化の緊急性にかんがみまして、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇九では、達成年度を二年前倒しして平成二十五年度といたしまして、この目標を実現するため、今年度は、倒壊の危険性が高いと判断された校舎等の耐震化に係る補助率を、従来の三分の二から五分の四へ大幅に引き上げるとともに、私立学校に対する説明会や建築相談を通じて、補助制度の積極的な活用を働きかけているところでございます。
今後ともこのような取り組みを行うことによりまして、目標達成に向け、耐震化の一層の促進を図ってまいります。
質問3
救急医療機関の耐震化の早期完了に向けた今後の取り組みについてお伺いをいたします。
答弁3
福祉保健局長
救急医療機関の耐震化についてでありますが、平成二十年五月現在、患者が利用する建物のすべてが新耐震基準を満たしていない病院は百五十病院であり、都内全病院の二三・二%に当たります。都は、「十年後の東京」計画などにおいて、病院の一〇〇%耐震化を目標に定め、耐震補強等の支援を行っております。
とりわけ、救急医療や災害医療の拠点となる医療機関の耐震化は急務でありまして、補助率を引き上げるなど、支援内容の充実を図っております。また、今年度は、国の補正予算にあわせ、建てかえ等も対象とした耐震化緊急整備事業を実施する予定であります。
質問4
都内における木造住宅密集地域は、二十三区と多摩地域の七市にかけての約二万三千ヘクタールですが、都の防災都市づくり推進計画では、この三割弱、六千五百ヘクタールを震災時の甚大な被害が想定される整備地域として指定しております。この選定基準は、平成十四年に公表された第五回地域危険度測定調査に基づく建物倒壊危険度が五及び火災危険度が五に相当するなどとなっています。
しかし、建物倒壊危険度が五に該当する八十三地域のうち整備地域に含まれるのは六割にとどまり、さらに、建物倒壊危険度が五で火災危険度も五となっている二十四地域についても、その四分の一は整備地域に含まれておりません。
都は現在、整備地域内における木造住宅の耐震化に対して助成を行っていますが、私たちはこれまで、都内全域で制度を適用するよう、範囲の拡大を求めてまいりました。例えば、木造住宅密集地域はあるものの整備地域の指定のない三鷹市や狛江市などからは、耐震化促進制度の創設の要望があります。
都では、平成二十年度に公表された第六回の地域危険度測定調査に基づき、防災都市づくり推進計画の見直し作業を進めています。国における法改正が必要な部分については政権与党として必要な働きかけを行っていきますが、現段階で耐震化促進制度の都内全域での適用が困難であるならば、この計画の見直しの機会をとらえ、まずは第一歩として、建物倒壊危険度五の地域はすべて、あるいは建物倒壊危険度と火災危険度がともに五であるような地域も制度の適用対象地域として取り扱うよう、対象地域を拡大すべきではないかと考えます。
このような木造住宅の耐震診断、耐震改修助成制度の対象地域の拡大について所見を伺います。
答弁4
都市整備局長
木造住宅耐震化助成制度についてでございますが、この制度は、防災都市づくり推進計画におきまして、老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなどにより、震災時に特に大きな被害が想定される地域として指定されました整備地域を対象としております。
このような地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難、応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、公的助成を行っております。
整備地域の指定につきましては、市街地の不燃化の状況等に基づいて、現在見直しを進めておりますが、都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、重点的に取り組む必要のある整備地域に的を絞って木造住宅の耐震化助成を行ってまいります。
質問5
現在の木造住宅に対する耐震化助成制度は制度の創設から四年目を迎えていますが、過去三年間の利用実績は、耐震診断が初年度五百五十一件、二年目は四百八十六件、三年目の昨年度は二百九十六件と減少傾向にあります。また、耐震改修は、初年度二十二件、二年目は四十七件、三年目の昨年度は五十五件と、制度の利用は伸び悩んでおります。
都は、こうした状況に対して、木造住宅の耐震化助成の利用促進のため、都民の意識啓発などを中心とした取り組みを強化しつつありますが、制度の利用が進まない最大のネックは、耐震化のための自己費用負担にあるのではないかと考えざるを得ません。
民主党は、都議選マニフェストで、耐震診断、耐震改修に係る費用について都独自に補助を上乗せし、自己負担を軽減することを提案してまいりました。具体的には、耐震診断の自己負担額を、現状の補助対象額の三分の一、五万円をゼロ、無料実施に、耐震改修の自己負担額を、現状の補助対象額の二分の一、七十五万円を三分の一、五十万円に引き下げるというものであります。
耐震診断、耐震改修費用に対する都独自の上乗せ補助の実施について所見を伺います。
答弁5
都市整備局長
耐震診断、耐震改修費用の補助についてでございますが、住宅の耐震化は、自助、共助、公助の原則に基づき、建物所有者みずからがその必要性を理解し、主体的に取り組むことが重要であり、この考え方は整備地域においても同様でございます。
都としては、補助の上乗せではなく、まず耐震化に向けた所有者の積極的な行動を促すことが必要と考えております。
そこで、安価で信頼できる改修工法や事例の紹介、区市町村が行う個別訪問等への支援などを実施してまいりました。さらに、本年五月には、耐震化のあらゆる相談に個別に応じ、助言を行う総合相談窓口を設置し、開設後四カ月で六百件を超える相談に対応しております。
今後とも、都民への普及啓発を初め、各種の施策を積極的に実施し、木造住宅の耐震化を促進してまいります。
質問6
豪雨対策について伺います。
豪雨対策に対して最も有効なのは河川整備と下水道整備ですが、このうち河川整備については、平成二十年度末時点で、時間五〇ミリ降雨対策の護岸整備率は都内全域で約六三%、護岸整備率に調節池などの整備の効果を加えた治水安全度達成率は約七五%であり、ともに年間〇・五%程度の進捗状況となっています。
河川整備は息の長い事業であり、大きな投資と長い時間が必要であることは十分に承知しておりますが、一日も早い計画の一〇〇%達成が望まれます。事業の性格上、単純に予算や人員をふやすだけで大幅なスピードアップができるものではありませんが、現在の限られた予算と事業の執行体制の中、河川整備の進捗率向上に向けた今後の取り組みについて所見を伺います。
答弁6
東京都技監
水害から都民の命と暮らしを守るためには、中小河川の整備を着実に進めることが重要であります。このため、都は、河川の拡幅を基本に、道路や公園の地下を利用した調節池や分水路を設置するなど、さまざまな工夫のもと、五〇ミリ降雨対策を進めております。
引き続き、近年水害が発生した神田川や石神井川など整備を促進すべき河川の拡幅を進めるとともに、拡幅の困難な古川においては、河川の地下空間を活用した調節池を整備するなど、治水安全度を向上させてまいります。
今後とも、必要な財源確保などに努め、中小河川の水害の早期軽減に取り組んでまいります。
質問7
下水道整備については、時間五〇ミリ降雨に対応する下水道整備が完了した面積の割合を示す浸水対策整備率が、平成二十年度末時点では区部で約五九%であり、年間約一%程度の進捗状況です。
下水道整備事業も、河川整備事業と同様に息の長い事業でありますが、下水道整備の進捗率向上に向けた今後の取り組みについて所見を伺います。
答弁7
下水道局長
浸水から都民の生命と財産を守るためには、下水道整備を着実に進めることが重要でございます。このため、一時間当たり五〇ミリメートルの降雨に対応できる下水道の幹線やポンプ所などの整備を計画的に進めてきております。
特に、浸水の危険性が高い二十地区については対策促進地区として重点化を図り、平成二十九年度の完了を目途に、施設の整備を鋭意推進しているところでございます。
今後とも、必要な財源の確保に努めるとともに、地盤の高低差など地域特性をきめ細かに考慮する設計手法を活用した効果的な施設整備などを行い、浸水被害の早期軽減に取り組んでまいります。
質問8
豪雨対策には、このほか雨水の流出を抑制する対策も有効です。雨水流出抑制策の一つとして、雨水浸透施設の設置が各地域で進められています。各区市は民間住宅の雨水浸透ます設置に対して助成を行っており、都は、その区市が行う助成に対して補助を行っています。都は、「十年後の東京」実行プログラム二〇〇九で、平成二十一年度から二十三年度までの助成の目標を示していますが、私たちは、さらに大胆に進めていく必要があると考えます。
また、都道においては雨水浸透ますの設置や道路の透水性舗装が進んでいるようですが、区市が管理する道路についても雨水浸透施設の整備が進むよう、区市に対する助成制度を都として独自に創設することも有効と考えます。
雨水浸透施設のより一層の普及に向け、区市に対して都として今後どのように支援していくのか、所見を伺います。
答弁8
都市整備局長
雨水浸透施設の普及促進についてでございますが、河川や下水道の整備に加え、雨水の流出を抑制する浸透施設の設置は、豪雨対策として有効でございます。
都は、平成十九年度に東京都豪雨対策基本方針を策定し、浸水被害が頻発している神田川などの七流域を対象に、浸透施設の設置を推進することといたしました。
現在、特に対策を急ぐ四流域の区市に対して、個人住宅への浸透ます設置費用の補助を行っております。平成二十年度までの二年間で約八百件実施しており、引き続き普及拡大を図ってまいります。
また、区市町村において、道路事業に合わせて設置する場合は浸透施設も補助対象とすることにより、その整備促進に努めております。
このほか、区市町村と連携して、公園などの公共施設整備に合わせた設置や民間開発の際の事業者からの協力による整備を推進することにより、雨水の流出抑制を総合的に進め、浸水被害の軽減を図ってまいります。
学びと子育て
質問1
学びと子育てについて伺います。
私たちは、子どもを安心して産み育てられる状況、子育て負担の軽減を図ることを重点課題の一つと考えています。中でも、出産、子育て、教育の費用負担を減らし、格差固定社会の是正が重要であります。そのため、比較的収入の低い若年世帯の経済的負担を軽減することが、まず必要と考えております。国において、恒常的な施策として子ども手当の支給、出産育児一時金の引き上げを行っていく。その上で、さらに都として、大都市東京に必要な上乗せ、横出し補助を実施するという二段構えで負担感を軽くし、生活の向上を実感していただき、結果として少子化傾向に歯どめをかけることができるものと考えております。
まずは、子どもが誕生するときにかかる大きな出費、出産費用です。東京では医療機関への支払いだけで平均五十一万五千円と、各種健康保険から支給される出産育児一時金は三十八万円、十月からは四十二万円でありますが、それでも到底賄い切れない額になっております。子どもが生まれるときには、ほかにもさまざまな出費がかさみ、親、さらには祖父母世代の収入も伸び悩む中では重い負担と考えます。出産育児一時金についても、都内の若年世帯の収入、出産に伴うコストを勘案し、必要な額を算出し、都独自の上乗せを行うことを検討すべきと考えますが、都の所見をお伺いいたします。
答弁1
福祉保健局長
出産に係る経済的な負担の軽減は、基本的には国が社会保障制度全体の中で対応すべき問題であり、本年十月には出産育児一時金が三十八万円から四十二万円へ引き上げられます。
さらに、出産や育児に関する費用の負担軽減につきましては、一層充実する方向で国としての考え方が示されると認識しております。
また、平成二十年十一月に国が開催いたしました出産育児一時金に関する意見交換会におきましては、地域ごとに異なる額を設定することに対し、多くの関係者が反対している状況にあります。
こうしたことから、出産育児一時金につきましては、今後の国の動向等を見守ってまいります。
質問2
保育サービスの供給について伺います。
都は、去る六月の東京都議会定例会において、都保育所整備の前倒し実施を表明し、緊急整備に取り組むとしました。少しでも多くの保育所を早急に整備し、幼い子どもを抱えて困っている親を支援することは歓迎いたします。しかし、これが単に既存計画の前倒しに終わることなく、今後も継続して保育所整備を進め、保育所を利用する必要に迫られている多くの都民ニーズにこたえるため、保育所整備を拡充すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁2
福祉保健局長
保育所整備についてでありますが、都は、待機児童の解消に向けて保育サービス拡充緊急三カ年事業に取り組んでおりますが、就学前児童人口の増加や経済情勢の悪化等により、待機児童が増加いたしました。
こうした状況を踏まえ、本年六月の補正予算で、事業者と区市町村の負担を大幅に軽減する独自の支援策を講じ、今年度の整備目標を当初計画の一・五倍の八千人に引き上げることといたしました。
平成二十二年度以降の整備につきましては、都が今年度策定する次世代育成支援後期行動計画の中で数値目標を設定し、これに基づき整備を進めてまいります。
質問3
待機児童の解消に向けた取り組みについて伺います。
民主党は、保育所の整備に加えて、認証保育所の保護者負担軽減や保育ママなどの家庭的保育など、さまざまな施策の実施を求めてきました。
東京では、五年前よりも定員で一万七千人分の保育所がふえています。当時の待機児童五千人を上回って整備をしても、待機児童は、平成二十年四月には五千四百七十九人で二百五十六人、十月には五百七十三人の増加、ことし四月には、経済状況の急激な悪化を受けて急増し、七千九百三十九人、前年同期比二千四百六十人の増加となっています。
保育所の利用ニーズは、待機児童数がすべてではなく、保育所利用申し込みをしたが利用できない人数だという当たり前のことを、まずは認識していかなければなりません。すると、待機児童数だけでなく、潜在的待機児童の問題となってきます。
内閣府の検討会で平成十五年に試算した結果、東京の潜在的待機児童数は約七万人で、これをいま一度精緻に把握し、真剣に考えていかなければなりません。保育所整備方針を考えるとき、潜在的待機児童は視野に入っておりません。把握の努力もしておりません。保育所整備だけでは待機児童の解消はできないことは明白であります。
そこで、私たちのマニフェストでは、この数を視野に入れ、さらにどう解決するかの方向性も含めて、保育所をもっとつくれというだけなら大変楽ですが、あえて将来的に保育クーポンという書き方をさせていただきました。保育所は法に定める制度で自治体には努力義務がありますが、予算面では一事業の域を出ません。事業規模については、事業主体である区市町村の意向や予算の著しい制約を受けています。国政と連動しての対策が必要ですが、ここを打破する仕組みへと改革をしていくべきだと考えます。
新たな次世代育成支援行動計画の策定も控え、真の待機児童解消に向けた調査検討を行うべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
答弁3
福祉保健局長
待機児童解消に向けた調査検討についてでありますが、次世代育成支援後期行動計画におきましては、顕在化しているニーズだけでなく、潜在的なニーズも把握し、サービス供給の実現可能性を踏まえた上で整備目標を設定することとされております。
現在、区市町村においてニーズ量と整備目標を精査しているところであり、これらを踏まえ、外部委員による次世代育成支援検討委員会にも諮りながら、都全体の整備計画を策定してまいります。
質問4
教育の格差解消について伺います。
民主党は、石原知事の公約として低所得者減税が打ち出された当初から、低所得者への支援は、税の減免ではなく自立支援策の給付によって行うべきと申し上げてまいりました。いわゆる公約の進化が起きてからは、生活保護水準の一・一倍という適用基準は厳格過ぎ、真に格差の分水嶺となっているラインからはかけ離れていると指摘し、都事業の要件緩和を求めてまいりました。
中でも教育格差の解消については、義務教育における基礎的、基本的学力の確実な定着に向けた指導に加えて、学校外での学習も必要と考えます。学習塾などの利用を支援する取り組みは、所得要件を緩和し、より多くの経済的困難を抱える家庭が利用できるようにすべきと、繰り返し申し上げてまいりました。経済の低迷が長引く中で、子どもたちも学校外での学習機会を確保し、すべての子どもが基礎的、基本的学力をつけて社会に巣立てるよう、所得要件を緩和すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁4
福祉保健局長
都は、将来の自立に向け、意欲的に取り組む一定所得以下の世帯の子どもに、塾に通う機会などを提供しますチャレンジ支援貸付事業を実施しております。
この事業における所得の算定に当たりましては、賃貸住宅へ入居している方については、一定額を限度に家賃を収入から減額するなど、利用者の生活実態により即した運用を行っております。
また、子育てに関する新たな支援策については、一層充実する方向で国としての考え方が示されると認識しておりまして、本事業の所得要件のさらなる緩和については、慎重に対応すべきと考えております。
質問5
高等学校教育について伺います。
民主党は、高等学校の実質無料化を掲げ、公立学校は無料化、私立高等学校の通学者にも授業料補助を行うとしております。私たちは、今後関係者ともよく相談し、よりむだのない形で、より多くを都民に還元できる実施を目指して取り組んでいく所存であります。
都内の都立高校の授業料の平均は四十一万六千円であり、国において、公立高校と同等の約十二万円相当から低所得者に対して二十四万円の補助が実施されたとしても、全国平均の約三十五万円と比べ、なお高い負担になります。都として、少なくとも五万円の学費負担軽減補助を実施する必要があると考えます。こうした負担軽減の実施について、しっかりと検討していくよう求めるものですが、所見を伺います。
答弁5
生活文化スポーツ局長
私立高校の学費負担軽減補助についてでございますが、都では、公私格差の是正を図る観点から、私立高校への基幹的補助である経常費補助を通して授業料の抑制を図るとともに、保護者の負担を軽減するため、財団法人東京都私学財団を通じて、平均的な所得以下の保護者を対象に所得状況に応じて授業料の一部を助成しております。
また、経済的理由により修学が困難な高校生に対して育英資金を貸与しておりまして、本年四月からは貸与額を私立高校の平均授業料に相当する額まで増額し、生徒の修学上の負担軽減を図るなど、その充実に努めてきたところでございます。
都における私立高校の学費負担軽減のあり方につきましては、国の制度変更の内容が明らかになっておらず、また、現行制度との整合性を初め、さまざまな課題もございますことから、今後、国の動向を注視しながら適切に対応してまいります。
環境政策
質問1
環境施策について伺います。
民主党は、東京マニフェスト二〇〇九において、東京グリーンニューディールで、新エネルギーと緑の創出を約束しますとして、一つに、杉の木三百万本分の太陽エネルギーの利用拡大で温暖化対策を進めることを打ち出しました。
既に東京都においては、平成十八年三月に再生可能エネルギー戦略を策定し、二〇二〇年までに東京のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を二〇%程度に高めるという目標を打ち出しているところです。昨年九月の補正予算では、今年度当初から太陽エネルギーの補助事業が円滑に実施されるよう、九十億円の債務負担行為を可決したところであります。
しかし、一方、ことし四月一日から八月三十一日までの五カ月間の実績は二千二百一件という状況であるとともに、太陽光発電に比べ、太陽熱を利用したソーラーシステムや温水器の設置はわずか五十九件とおくれており、まだまだ工夫の余地があるように思われます。
今後さらなる工夫を進めながら、太陽エネルギーの利用拡大に向けて積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁1
環境局長
太陽エネルギーの利用拡大についてでございますが、都は国に先駆け、補助事業の創設を決定し、連携企業とともに見本市の開催など、普及に取り組んできております。
太陽光発電の申請件数は月を追っておおむね順調に増加し、秋以降は、標準搭載化が進む新築住宅の竣工期を迎え、申請件数がさらに増加するものと見込んでおります。今後は、国の新たな電力買い取り制度の開始に合わせ、都としても一層の利用拡大を図ってまいります。
一方、太陽熱機器は、都が中心となり、認定制度やグリーン熱証書など普及の基盤整備を進めてきましたが、太陽光発電と比べ認知度が低いなど、本格的な利用拡大に至っておりません。
都は、エネルギー事業者や住宅メーカーなどへ高効率給湯器と一体化した高性能な新製品の宣伝普及、ブランドイメージの向上、販売ルートの多様化を働きかけるなど、積極的に普及拡大を図ってまいります。
質問2
カーボンマイナス十年プロジェクトと並んで都が重点的に取り組んでいる事業として、緑の東京十年プロジェクトがあります。同プロジェクトで打ち出されている海の森の整備や街路樹倍増百万本、あるいは校庭の芝生化など、施策は着実に取り組んでもらいたいと思いますが、中でも屋上緑化については、さらに踏み込んだ取り組みが必要ではないでしょうか。
屋上緑化は、新たに建てられる建築物については条例に基づき着実に緑化されますが、既存建築物については、それを進める仕組みがなければ、せっかくの空間が緑化されないまま放置されることになります。現在、東京都では、既存建築物の屋上緑化に向けて、モデル事業の実施や緑地評価制度の検討に取り組んでいるところです。
私は、緑の東京十年プロジェクトを着実に進めるためにも、既存建築物などへの屋上緑化も進むよう積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
環境局長
既存建築物の屋上緑化についてでございますが、屋上緑化は、新たな緑の創出やヒートアイランド対策として有効な取り組みであります。都は平成十三年度から、独自の取り組みとして、一定規模以上の新築、増改築について屋上緑化を義務づけております。また、議会棟を初め既存の都有施設において、みずから率先して屋上緑化に取り組んでおります。
こうした中、さらにより多くの既存建築物に屋上緑化を広げていくためには、積載加重や防水への対策、立ち入る人の安全対策などの課題の解決策や導入のメリットなどを明らかにする必要があります。
このため、都は昨年度、既存建築物屋上緑化モデル事業を実施し、現在、施設整備の留意点や導入効果などについて検証を行っております。
今後、こうした検証結果や都有施設での先行事例の経験を示すことなどにより、事業者等の理解を得まして、既存建築物の屋上緑化の拡大に向けて取り組んでまいります。
質問3
東京には、島しょ地域も含めて約七万九千ヘクタールの森林があり、東京の面積の約四割を占め、CO2削減効果は、約十二万世帯の家庭が一年間に排出する量に匹敵するそうです。しかしながら、木材価格の長期低迷などにより林業が低迷し、森林再生の取り組みが急務となっています。
東京都においても、平成十六年に森づくり推進プランを策定するとともに、ことしの三月にはプラン改定を行うなど、前向きに取り組んできたところです。
しかし、一方で、京都議定書議決以降、ここ十数年を見ても、東京の製材用の木材生産量はおおむね漸減傾向にあり、直近の平成十九年度の生産量を見ても、約一万三千立米と、十年前の半分以下に落ち込んでいます。
森林再生は、地球温暖化対策を進める上で、CO2の吸収源としての役割も期待されています。多摩産材については、CO2固定量の見える化を図ることで利用拡大に寄与することが期待されます。
私は、これら取り組みも含めて、都内全域で東京木づかい運動を展開し、多摩産材の活用拡大に積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
答弁3
産業労働局長
多摩産材の利用拡大は、東京の林業を振興し、伐採、利用、植栽、保育という森林の循環を再生する重要な取り組みであります。また、地球温暖化防止にも貢献するものであります。
このため、多摩産材利用推進方針を策定し、都みずから公共施設などで利用拡大を図っております。さらに、多摩産材を広く普及するための提案公募型事業を実施するなど、民間での利用拡大にも努めております。
加えて、本年三月に森づくり推進プランを改定し、重点的取り組みとして、多摩産材の品質向上など供給体制の整備と需要の開拓、多摩産材の二酸化炭素固定量の数値化とその表示方法等の検討を行うこととしております。今後とも、森づくり推進プランを着実に実施し、多摩産材の利用拡大に取り組んでまいります。
行財政改革
質問1
行財政改革について伺います。
中央集権体制から地域主権に向けた動きが着実に進み、先日は、我が党と地方六団体による国と地域の協議の場の設置が合意されるなど、省庁みずからも分権改革を積極的に行っていく必要に迫られています。
一方、地方自治体も、新たな制度の導入により、自治体が担う公共性が問われるとともに、財政健全化法などの改革も行われ、分権時代の地方政府の基盤を固めていかなければなりません。
今回、民主党は、マニフェストにおいて、情報公開の徹底により公正な都政を実現していくと訴えました。そこで、都は、都政への都民参加を促進し、住民自治を確立していくためにも、都民に対する情報公開をより高めていく必要があります。
そこで、情報公開制度による公文書の開示は、主権者である都民に説明責任を果たす事務だと認識し、制度の阻害要因ともいわれる閲覧手数料を廃止すべきです。他県では静岡県が、県民により利用しやすい制度とするため閲覧手数料を廃止をし、現在、東京都など二都県のみが徴収し続けています。
都は、情報公開制度における閲覧手数料を廃止し、住民自治を向上させる取り組みを行っていくべきです。都の見解を伺います。
答弁1
生活文化スポーツ局長
情報公開制度における閲覧手数料についてでございますが、都の公文書の開示に当たりましては、開示請求者に公平な負担を求める等の観点から、必要となる事務費、人件費などの実費の範囲内で手数料を東京都情報公開条例により徴収しておりますが、閲覧手数料につきましては、開示請求者に過分な負担をかけないよう、公文書一件につき百円を限度としており、平成二十年度の閲覧手数料の総額はおおむね百万円となっております。
一方、公文書開示の現状でございますが、入札直後の公共工事の積算資料や、一定期間に食品営業許可を受けた事業者名や連絡先等が記載された台帳など、主として営利目的と思われる請求が過半数を超えているところでございます。
また、一度に開示される公文書が数千枚にも及び、多大な行政コストがかかるケースが散見されるほか、大量の公文書開示を求めながら、実際には閲覧しないという権利の乱用が疑われるケースがあらわれるなど、制度発足時には想定されなかった新たな問題も生じている状況にございます。
今後、情報公開制度本来の趣旨をさらに高めながら、こうした開示の現状も踏まえまして、情報公開制度全体の健全な運用に向けて適切に対処してまいります。
質問2
都は、行政運営の支援、補完を行う監理団体の改革を続けておりますが、近年も指定管理者制度の本格導入や公益法人改革、三セクなど監視強化の動きなど、公を取り巻く環境はさらに変化しております。今定例会においても、役割を終える東京都道路公社の解散議案が提出されるなど、監理団体は、今後も都民の利用者としての視点に加えて、公益性を改めて考えるとともに、都民の主権者としての視点の改革を行っていくべきだと考えます。
そこで、自立に向けた経営を高めていくため、主要事業に精通する、所管局を歩むなどして就任してきた都幹部OBの役員数を見直し、生え抜きや外部経験者などの役員をふやしていく。プロパー職員の育成を推進するため、監理団体所要人員計画で決められた都職員の派遣数を減らしていく。そして、財政支出に関しても検証していくことが必要です。
各監理団体が自立的運営をより促進し、都も人的関与や財政支出を適正化し、それぞれが二十一世紀の公共分野の一翼を担う立場を高めていくべきだと考えます。都の見解を伺います。
答弁2
総務局長
監理団体の運営についてでございますが、都はこれまで、団体の存在意義にまでさかのぼりまして、監理団体改革を積極的に進め、自律的運営を促進してまいりました。その結果、これは石原知事就任以降でございますが、団体数は、平成十一年四月の六十四団体から三十三団体にほぼ半減し、都財政支出につきましても、平成十一年度対比で三百五十五億円削減いたしました。
またこの間、監理団体所要人員計画におきまして、都派遣職員を四千五百九十人から三千二百三十八人に減らす一方で、民間からのトップの登用や都への長期派遣研修などを通じた団体の固有職員の育成支援を行ってまいりました。
今後とも、都民の信頼を確保し、行政責任を果たしていく観点から、監理団体改革を推進するとともに、都の行政支援、補完機能を担う監理団体に対して、適切な指導監督を行ってまいります。
質問3
人事院の、公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会が、年金支給開始年齢の引き上げに伴い、公務員の定年を段階的に六十五歳に引き上げる提言をまとめました。これは昭和六十年の定年制導入以来の人事管理の見直しに向けた大きな動きです。都における昨年の幹部職員の退職状況は、二百七十六人中、再就職者が百六十一名に上ります。そのうち、都が情報提供、あっせんしたのは百三十一名です。
全国では二十四府県が、再就職の公正性や透明性を確保するため、部課長級以上の幹部職員の天下り、再就職情報を公表しています。
一方、都は、都議会民主党の質疑により、局長級の幹部の氏名などを公表することとなりましたが、その範囲はまだまだ限定されたものになっています。
そこで、都は、都職員の再就職に関して、民間企業や報告団体などに再就職した部課長級の氏名を公表するとともに、あっせんや再任用制度の活用、自己開拓などの区分を行う、監理団体への再就職の理由を公表するなど、幹部職員の天下り情報をさらに公表していくべきです。都職員の再就職の公正性や透明性をより高めるとともに、都民の誤解を招かないよう、より開かれた都政を目指していかなければなりません。都の見解を伺います。
答弁3
総務局長
都幹部職員の再就職状況の公表についてでございますが、公表に当たりましては、都民に対して透明性を高める一方で、相手先企業の経営、人材確保等への影響にも十分配慮する必要がございます。
こうした考えから、これまで都は、職責の重い局長級職員につきましては、団体の種類を問わず、氏名、役職等の情報を公表してまいりました。一方、部課長級職員につきましては、監理団体への再就職に当たりましては、局長級職員と同様の情報を明らかにしてまいりましたが、監理団体以外の団体に関しましては、再就職者数のみを公表してまいりました。
今後は、部課長級職員の再就職につきましても、相手先の意向、相手先での役職等も勘案しながら、透明性を一層向上させるべく適切に取り組んでまいります。
質問4
中小企業両立支援推進事業の目標時期を大胆に前倒しすることに対してお伺いいたします。
制度の充実強化を図るなど、ワークライフバランスに考慮した労働環境の整備を進めるべきと思いますが、見解を伺います。
答弁4
産業労働局長
ワークライフバランスに配慮した労働環境の整備についてでありますが、平成二十三年四月以降、一般事業主行動計画の策定、届け出義務企業が拡大されますが、都内企業の大宗を占める従業員百人以下の企業については、依然として努力義務でございまして、積極的な支援が必要であります。
仕事と家庭の両立支援を推進していくためには、中小企業両立支援推進助成事業において、責任者設置から社内の意識啓発やルールづくりへと進めていく必要がございます。
現状では、責任者設置は、予定数の五百社を超える企業から申請をいただいているものの、ルールづくり等については、その半数程度にとどまっております。このため、企業の相談に応じながら取り組みを働きかけるとともに、申請期間の延長などの改善も図っているところでございます。
今後ともこの制度を活用し、中小企業におけるワークライフバランスを推進してまいります。
質問5
参与について伺います。
石原知事は、八月末、相沢英之氏を東京都参与に選任いたしました。委嘱の分野は経済財政であり、これで、参与は相沢氏を含めて六名となりました。参与は、規則において、知事の策定する重要な施策について知事に進言し、または助言するとされていますが、数多くの経済財政の専門家がいる中で、知事が相沢氏を選任した基準はどこにあるのでしょうか。
また、経済財政分野と聞けば、都政関係者は新銀行東京に関しての助言ではと思慮するのですが、この状況で元金融再生委員会委員長を選任したということに特別の意味があるのでしょうか。今後の都政で何を目指し新参与を選んだのか、わかりやすい説明を知事からいただきたいと考えます。知事の見解を伺います。
答弁5
知事本局長
参与の選任理由についてでありますが、都は、昨年秋に始まった世界経済の混乱と変化が続く中にあっても、東京の将来を見据えた的確な財政運営を行っていく必要があり、九月一日に就任された相沢参与は、大蔵事務次官を退官後、衆議院議員を九期務め、国務大臣として経済企画庁長官を歴任されるなど、経済財政に関する希有な情報収集力、分析力、調整力を有されており、広く都の経済財政分野全般にわたる助言をいただくため、知事が東京都参与として委嘱したものでございます。
再質問
質問1
新銀行東京への四百億円の追加出資に関して、石原知事は、今回の都議会選挙の結果が、新銀行東京を初め、都政一つ一つの課題について審判が行われたものとは考えていないと答弁をされました。
また、石原知事は三月二十六日、新銀行東京への追加出資が可決した予算特別委員会終了後、世論調査を気にしていたら政治はできないとも発言をされていましたが、世論をしんしゃくし、いかにそれを実現していくかもまた政治なのではないでしょうか。
私たちの質問は、今回の都議選の結果が、新銀行東京への追加出資四百億円に対する都民の怒りや疑問が大きく影響したのか、しなかったのか、石原知事の認識を問うものでありますので、改めて答弁を求めるものであります。
また、民主主義制度において、都民が政治を選択する唯一の機会が選挙であります。その選挙において、トップリーダーが発した言葉は大変重い意味を持つと思います。そのことも申し述べておきます。
また、参与の選任について私が知事に聞いたにもかかわらず、知事本局長が答弁されたので、改めて伺います。
相沢参与は以前、金融機関の検査、監督業務など、金融行政の全般に責任を持つ国務大臣に就任をし、事業譲渡にも詳しく、金融機関の債務超過への公的資金の追加注入は大変な問題だとも発言をしていた経緯があります。その新参与から、知事は既に新銀行東京に関する助言を受けてきたのか、それとも今後助言を受ける予定なのか、知事に明確な見解を求めます。
答弁1
知事
相沢参与の就任についてでありますが、基本的には知事本局長が申し上げたとおりでございます。
そして、これから殊さらに新銀行東京の救済運営のために、折節にそれは助言を受けることは、相沢さんに限らず周囲、見識のある方に全部いたしますが、そのために彼を委嘱したわけではございません。
ちなみに申しますと、皆さんに評価いただいているか、記憶しているかわかりませんが、私は就任してから、選挙のときも孤立無援の戦いを最初しましたけれども、そのときに、すべての候補者は反対でありましたが、いわゆるハイリスク・ハイリターンのジャンクボンドといわれているマーケットがアメリカにあります。これはアメリカの無名に近い、しかし、有力な会社を救済する一つの方法でありまして、これを東京都で採用して、実現いたしました。そのときにも実はちょっと相談をいたしまして、それについて非常に評価をいただいたのも相沢さんでありましたし、他の専門家でもありました。
ちなみに皆さんご記憶かどうかわかりません。これは一兆円のマーケットになりまして、このおかげでローン担保証券、社債担保証券、この二つで既に七十社を超す企業が救われて、上場にこぎつけております。
そういった兼ね合いがありまして、相沢さんに私は非常に期待をしておりますが、同時に、この選挙の結果で、私は都民がこの銀行の問題について決定的な判断を下したと思いません。それは皆さんの説明も非常にずさんですし、足りないところもありまして、しからば、あえてきょうは申し上げませんでしたが、しきりに前回には、撤退、撤退って、撤退をどうやってやるんですか。
一万人の人、一万社が働いて、家族を入れたら十万を超す人たちが路頭に迷うんですよ。そういったものをどうやって損害なしに……(発言する者多し)黙って聞きなさいよ。黙って聞きなさいよ。四百億の追資は認めると。だから、お願いしたんじゃないですか。その状況の中でこの銀行を撤退する、どうやって撤退するんですか。具体的にどうやって損害を少なくするんですか。
だから、私は追資以外にないというから、皆さんにお願いして、実現した。そして、経営者もかえて、やっと四半期の黒字を出すようになった。これで単年度黒字が出れば、前に申し上げたように、セカンドステージで協力者も外国から出てくるでしょう。そういったものを期待して、私は新しい経営陣に期待しているわけでして、これは皆さんにご理解いただきたい。撤退、撤退というのは簡単ですけれども、そのときにこうむる損害はどうやって補償するんですか。