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  3. 第1回定例会(一般質問2日目)
  4. 大松成(公明党)

児童養護施設高校生の支援充実
外部人材活用した不登校対策を

大松成

児童の社会的養護

質問1
 児童の社会的養護について伺います。

 政治に求められているのは、未来の希望あふれるビジョンです。どういう社会を目指すのか、その方向を明確に示し、たゆまず地道に取り組んでいかなければなりません。

 その一つが、子どもの幸福を実現できる社会であると訴えるものであります。子どもの幸せは親の最大の願いであり、地域社会の願いです。子どもの明るくにぎやかな声がまち角に響けば、未来への希望があふれてきます。都議会公明党は、こうした都民の心を我が心として、教育力の復権、母と子を守る福祉に力を入れてまいりました。

 一方、だれもが心を痛め、社会に暗い影を落としているのが児童虐待です。最も愛されなければならない親から虐待を受け、死に至る悲惨な例も後を絶ちません。都はこれまでも、虐待の早期発見、早期対応に向けた体制整備を進めてきましたが、さらに取り組みの強化が必要です。知事の決意を伺います。

答弁1
知事
 児童虐待についてでありますが、子どもが親や地域の人々の愛情に包まれて健やかに育つことは万人の願いであります。児童虐待は、子どもの心に深い傷を残すだけではなくて、場合によっては、かけがえのない命を奪うこともありまして、決して許されるものではありません。

 虐待の兆候をいち早く発見し、適切な対応を行うため、児童相談所の体制を強化し、区市町村の専門的機能を充実させ、地域での対応力を高めていきたいと思っております。

 また、児童虐待の根底には、育児不安やストレス、地域での孤立感など、親が抱えるさまざまな問題があるため、保護者に対する支援も充実していきたいと思います。

 いずれにしろ、このごろは、親子三代で住む家庭が少なくなりました。これがやはり、こういった忌まわしい事態をさらに助長していると思います。

 いろいろこうした取り組みを行うことによりまして、虐待の未然防止や早期発見、早期対応を全力を挙げて進めていきたいと思います。

質問2
 子どもを守る最後のとりでが児童養護施設です。さまざまな理由で家族と離れ、さみしい思いをかみしめながら暮らしている子どもがふえていますが、今、その半数以上が虐待を受けた子どもたちです。

 そこで、都議会公明党は、昨年、都内の児童養護施設を視察いたしました。職員の皆様方が限られた人員で懸命に働かれ、また、厳しい財政事情から、ベルマークを集めて遊具をそろえている施設もあり、支援充実の必要性を実感いたしました。いずれの施設でも人と予算が足りず、虐待を受け、情緒的に課題がある子どもに、十分なケアをしてあげたくてもしてあげられないという切実な声を聞きました。虐待を受けた子どもは、外見ではわからなくても、心に大きな傷を負っています。早い段階で専門的なケアが必要なことは、職員の皆様方が日々実感されています。

 視察を受け、都議会公明党は第四回定例会の代表質問で、専門的なケアを行う人員の増員、グループケアの充実を訴え、都から、検討していくとの答弁を得ました。このたびの予算案には、被虐待児のケアを強化する専門機能強化型児童養護施設に対し三億八千万円の予算が盛り込まれ、昨年度の二千五百万円から大幅に増額されました。都の英断を高く評価し、その上で、職員の増員、ケアの充実等について具体的な内容を伺います。

答弁2
福祉保健局長
 専門機能強化型児童養護施設についてでありますが、虐待を受けた子どもは、対人関係の不調やパニック症状など、心理面や行動面に深刻な問題を抱えております。

 このため、都は平成十九年度より、精神科医や心理療法担当職員などを配置しました専門機能強化型児童養護施設を設置し、専門的ケアの充実強化に努めてまいりました。

 来年度は、この施設を四施設から二十九施設へと大幅に拡大することに加え、日常生活におけるきめ細かなケアが行えるよう、小規模で居宅に近いユニットごとに児童指導員等を増配置し、虐待を受けた子どもへの支援を充実してまいります。

質問3
 施設の子どもたちの状況はさまざまで、その多様で複雑なケアニーズに職員は対応しなければなりません。しかし、多くの職員は、大学などでもこうしたスキルを身につける機会に恵まれず、挫折感を持って離職する例も少なくありません。施設側でも、必ずしも人材育成のカリキュラムは確立されておらず、研修体制は十分ではありません。職員が専門的な能力を身につけられるよう、都としても支援していくべきです。

 児童養護施設における人材育成に向けた研修カリキュラム作成への都の支援について見解を伺います。

答弁3
福祉保健局長
 児童養護施設における人材育成についてでありますが、都は来年度、人材育成支援事業として、実習に重点を置き、実践力を身につける就職前研修や、心理療法担当職員など専門職向けの研修について、新たにカリキュラムの開発に着手をいたします。

 また、中堅職員、施設長など職層、経験に応じた研修モデルを作成するなど、施設における質の高い人材の安定的な確保、育成を支援してまいります。

質問4
 施設では、机に向かって勉強する子どもの姿も拝見し、大学受験を目指す子どもがふえているとも伺いました。しかし、児童養護施設では、中学生への学習塾代の支援はありますが、高校生にはありません。一方、都は、生活安定化総合対策事業として、所得の低い世帯の子どもに学習塾や大学受験費用などを支援しています。児童養護施設の子どもたちにも同様の支援を行うべきです。そうでなくても、マイナス経験を多くしてきた子どもたちです。そして、その施設の子どもたちは、いわば東京都が里親です。

 都は、児童養護施設の子どもたちへの学習塾や大学進学への支援を行うべきです。所見を伺います。

答弁4
福祉保健局長
 進学に必要な支援についてでありますが、大学進学に必要な支援については、大学進学等自立生活支度費等が支給されておりますが、今年度から、都は独自に入学金等を対象とした就学支度資金の貸し付けを開始いたしました。

 この制度では、大学等を卒業した場合には償還を免除するなどして、子どもたちの自立に向けた努力を支援してまいります。

 なお、現在、措置費の中で、塾代、参考書代などの学習経費は中学生に支給されておりますが、都では、高校生も支給対象となるよう、国に強く働きかけているところであります。

質問5
 児童養護における大きな課題は、高校を卒業または中退し、施設から巣立った後、成人するまでの自立支援です。社会生活にうまくなじめない子どもが多く、都はこれまでも、国に先駆けて、こうした子どもをサポートする自立援助ホームを制度化してきました。そしてこのたび、児童福祉法が改正され、国は四月から、全都道府県での自立援助ホーム設置を義務化し、事業の拡大を図っていくことになりました。

 ようやく国も動き出しましたが、都は、引き続き自立援助ホームの充実に取り組むべきです。所見を伺います。

答弁5
福祉保健局長
 自立援助ホームについてですが、就労し、自立を目指す子どもたちへの支援の場として、自立援助ホームは重要な役割を果たしております。都では、本事業を国に先駆けて制度化しており、現在、全国の約三分の一を占めます十八カ所のホームが設置をされております。

 都はこれまでも、独自の支援策として、資格取得や就職活動への援助などを行っておりますが、今回の法改正を踏まえ、ホーム運営費補助の増額を図り、子どもの自立に向けた支援を充実してまいります。

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教育

質問1
 教育、不登校対策について伺います。

 間もなく新年度を迎え、子どもたちは新しい学校生活に希望と期待に胸を膨らませています。一方、新しい環境や人間関係になじめず、心が不安定になり、不登校になる子どもたちがふえる時期でもあります。都教委の調査によれば、都内公立小中学校で昨年度三十日以上欠席した不登校の子どもが九千人、小中学校とも二年連続で増加しました。とりわけ中学生では、三十一人に一人が不登校となっています。

 都議会公明党はこれまでも、スクールカウンセラーの設置やITを活用した自宅での学習支援など、不登校対策を提案してまいりました。今後、登校時の家庭訪問や個別の学習支援など、一人一人に寄り添っていくような施策が求められます。

 そのために、退職教員や教員志望の学生などの外部人材も積極的に活用し、子どもたちに多面的にアプローチする仕組みを構築することが必要です。都の見解を求めます。

答弁1
教育長
 不登校対策についてでございます。

 不登校の原因は、心理的不安、無気力、集団生活への不適応など、多様化、複雑化しておりまして、その解消や未然防止のためには、学校の教員だけではなく、家庭、学校、地域が一体となって児童生徒にさまざまな角度からかかわりを持つことが重要でございます。

 このため、都教育委員会は、平成二十一年度から新たに登校支援員活用事業を実施することといたしました。

 この事業は、退職教員、警察OB、民生児童委員や教職を目指す学生などの多様な外部人材を登校支援員として活用し、登校時の家庭訪問、悩みや不安への相談、おくれがちな学習への支援などを行うことによりまして、不登校児童生徒や不登校になるおそれのある児童生徒一人一人の状況に応じた個別の対応を充実させていくものでございます。

 平成二十一年度は、モデル事業として、五地区、小中学校合計百十校程度でこうした取り組みを行い、不登校児童生徒の学校復帰を支援していきますとともに、不登校フォーラムを開催するなどして、その成果をすべての学校に普及し、不登校の解消に努めてまいります。

質問2
 部活動の活性化について伺います。

 部活動には、子どもたちが努力、達成感を実感し、友情や協調性をはぐくむという重要な教育効果があります。しかし、最近の学校小規模化で教職員が少なくなり、中学校では部活動の顧問になる教諭が不足し、特に顧問の人事異動で廃部になることが多々あります。

 このため、区市町村では、独自に外部指導員を導入することで部活動を支援していますが、都は、これをさらに促進するために区市町村を財政的に支援していくべきです。所見を伺います。

答弁2
教育長
 部活動外部指導員の導入に係る財政的支援についてでございます。

 学校において行われます部活動は、生徒の個性や豊かな人間関係をはぐくむ上で極めて重要な教育活動でございます。

 こうしたことから、都教育委員会は、管理運営規則の改正による部活動指導の職務への位置づけや、顧問教諭の処遇の改善などの条件整備に努めてまいりました。

 一方、区市町村教育委員会は、中学校の部活動にかかわる費用を負担するなどして、部活動の振興に取り組んでまいりました。

 しかしながら、毎年新たに創部される部活動がございますものの、その一方で、お話のとおり、中学校の小規模化や顧問教諭の異動等によりまして、毎年約二百の部活動が廃部になっているという現状がございます。こうした中学校においては、所属の教職員だけで生徒や保護者の期待にこたえることには限界がございます。

 このため、都教育委員会は、平成二十一年度から、中学校の廃部問題を防止することを目的に、外部指導員導入に係る経費の二分の一を区市町村に補助いたしまして、部活動の一層の推進を図ってまいります。


 顧問として部活動に意欲的に取り組む教員も多く、こうした顧問の活動を支えるためにも、手当の増額など支援を充実させるよう要望しておきます。

質問3
 特別支援教育について伺います。

 障害の有無にかかわらず、互いに人格と個性を尊重し合う共生社会を目指さなければなりません。その強力な原動力が特別支援教育です。都は、副籍制度や通級指導学級を活用し、特別支援学校だけでなく、すべての学校現場で、一人一人の障害のある子どもに的確な支援を行う体制づくりを進めています。こうした取り組みを内実あるものにするためには、それを担う教職員、学校を支えていただいている住民の皆様方へのサポートが不可欠です。

 そこで、特別支援学校の教員だけでなく、都内公立学校のすべての教員、そして広く都民にも、障害のある子どもの教育について理解を深めていただけるよう、都は取り組むべきです。所見を伺います。

答弁3
教育長
 特別支援教育に関する教員及び都民に対する理解促進についてでございます。

 障害のある子どもたちに対しては、乳幼児期から学校卒業後までを見通した多様な教育を展開し、社会的自立を図ることのできる力や地域の一員として生きていける力を養う必要がございます。

 そのためには、何よりも、すべての教員が発達障害を含む障害や特別支援教育に関する理解を深めることが重要でございます。

 都教育委員会はこれまで、教員に対して、教職経験年数や職層に応じ、特別支援教育に関する研修を計画的、継続的に実施するなど、教員の理解啓発と指導力の向上を図ってまいりました。

 今後は、各障害の特性や子どもへの接し方等を解説したDVDを新たに作成いたしまして、全公立学校に配布して、校内研修や副籍制度による交流活動等で広く活用してまいります。

 また、都民に対しては、作成いたしましたDVDの貸し出しを行いますとともに、今年度から実施しております共生社会の実現をテーマとしたシンポジウムなどを通じまして、障害のある子どもに対する教育の一層の理解促進に努めてまいります。

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福祉施策

質問1
 福祉のまちづくり条例について伺います。

 アメリカでは、障害のある人をチャレンジドと呼んでいます。神から挑戦すべき課題を与えられた人という意味で、この理念のもと、障害がある人もない人も平等に就労、社会参加ができるような配慮を義務づける連邦法ADAが制定されています。ADAにより、社会に支えられる側に回っていたチャレンジドが誇りを持って働き、社会を支える側に回れる人がふえたと、高く評価されています。

 日本においても、ADAの理念を共有し、バリアフリー関連の法整備が進み、都においては、平成七年、バリアフリー化の対象を国よりも広くした福祉のまちづくり条例が制定されました。

 障害のある人の切実な願いは、就労など社会参加です。環境さえ整えば、障害のない人と対等に、また、それ以上に力を発揮される方がたくさんいらっしゃいます。

 このたび改正条例案が提出されましたが、障害のある人も高齢者も、すべての人が暮らしやすいまちづくりが進むよう、ハード、ソフト両面の取り組みが求められます。条例案の具体的な内容を伺います。

答弁1
福祉保健局長
 福祉のまちづくり条例の改正内容についてでありますが、新たな条例では、基本理念としてユニバーサルデザインの考え方を明確に位置づけ、ハード、ソフト両面から福祉のまちづくりを推進することといたしました。

 具体的には、より一層のバリアフリー化を進めるため、生活に身近な小売店、飲食店のほか、事務所、工場などの施設整備基準について、これまで努力義務だったものを遵守義務といたします。また、障害者や高齢者等にもわかりやすい案内サインの普及など、だれもが必要な情報を入手できるよう、情報の共有化についても新たに規定をいたします。

 この条例改正により、すべての人が安全・安心、快適に暮らし、訪れることができる東京の実現に努めてまいります。

質問2
 福祉のまちづくりには、事業者の理解と協力が必要です。特にサービス業などでは、接客時に、障害のある人や高齢者への配慮が大切です。コンビニなど事業者が利用者の状況を理解し、的確な対応ができるよう、都として支援していくべきです。所見を伺います。

答弁2
福祉保健局長
 事業者側の理解を促進するための都の支援についてでありますが、ユニバーサルデザインに基づく福祉のまちづくりを進めるためには、施設のバリアフリー化に加え、店舗等の従業員が、障害のある方などに対して適切な対応を行うことが必要であります。

 このため、都は来年度、身近な小売店、飲食店などの従業員の方が接客する際に、高齢者や障害者などの多様なニーズを理解し、適時適切な介助などを行っていくための訓練プログラムを作成することといたしました。

 このプログラムは、新たな施設整備基準の施行に合わせ、十月を目途に作成することとしており、事業者団体等を通じ、普及啓発を図ってまいります。

質問3
 障害者福祉と医療の連携について伺います。

 看護師不足は、障害者福祉の現場でも深刻です。特に短期入所施設の多くで、看護師不足のため利用日数が減り、全く利用できなくなったという例もあります。障害者福祉、とりわけ重症心身障害児については、医療と福祉の連携による看護師不足対策が必要です。

 都立看護専門学校における障害者関係のカリキュラムの充実や進路指導を強化するとともに、職場を離れている看護師等の再就職を促進するために、北区や府中市にある都立療育センターなどを実習場所として活用すべきです。見解を伺います。

答弁3
福祉保健局長
 重症心身障害児施設の看護師確保についてでありますが、都立看護専門学校におきましては、重症心身障害児の療育や看護の方法などの実践的な教育を行うとともに、施設の紹介や卒業時におけるきめ細かな進路相談を行っております。

 また、平成二十年度から、身近な地域の医療機関で復職に必要な研修を行う看護職員地域確保支援事業を、都立東大和療育センター等においても開始いたしました。

 この取り組みにより再就業の成果が上がったところであり、来年度さらに、都立北療育医療センターや都立府中療育センターにおいても同様の取り組みを実施する予定であります。

 重症心身障害児施設の看護師の確保は急務でありまして、今後ともさまざまな取り組みを強化してまいります。

質問4
 働く障害者の健康を守るには、理学療法士、作業療法士を活用して、職場環境の改善や労働時の身体的負担を軽減することが大切です。例えば、障害のある人は同じ姿勢を保ちがちになり、それが体に悪い影響を与えることなど、事業者の理解が必要です。

 しかし、障害のある人を雇用する企業や就労支援事業所などでは、理学療法士、作業療法士の活用がなかなか進みません。障害のある人には、健康に働き続けるための特別な配慮を行わなければなりません。都としての取り組みを求めます。

答弁4
福祉保健局長
 障害者の就労支援における理学療法士等の活用についてでありますが、東京都心身障害者福祉センターにおいて、身体が不自由になった方を対象に、理学療法士、作業療法士が、身の回りの動作や屋外歩行、車いすの操作、交通機関の利用などの訓練を実施しております。

 あわせて、こうしたノウハウを活用して、区市町村などの相談支援員の研修指導、就労支援機関からの相談などに幅広く対応しております。

 今後、その一環として、障害者が就労している職場の環境改善や身体的負担の軽減などについても、企業からの相談に応じていくことといたします。

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