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  3. 第1回定例会(一般質問2日目)
  4. 大西さとる(民主党)

公共交通利用への転換が必要
足立区での東西交通の整備を

大西さとる

交通政策

質問1
 交通政策についてお伺いいたします。

 渋滞が頻発する首都高速、その原因の主な理由の一つが道路設計そのものにあるように思えます。実際に首都高を走ってみますと、二車線の道路と二車線の道路の合流部分が三車線や二車線になっているところが至るところに存在いたします。

 今さらのことでありますが、首都高の合流部分をこのように設計した人の先見性のなさの罪をここで責めたい気持ちでいっぱいであります。

 私の地元足立区では、常磐道から来る三郷線と、東北道から来る川口線が小菅で合流いたします。双方とも二車線であり、合流地点では四車線となっていますが、クロス状に合流するため、平日は大変な渋滞となり、小菅から三郷まで延々と渋滞が続いています。反対側の北行きは、二車線の六号線と二車線の中央環状線が合流する堀切は三車線となっており、やはり渋滞の発生元となっています。ドライバーの苦痛もさることながら、一番たまらないのは排ガスの影響を受ける周辺住民であります。

 今、小菅の例を挙げさせていただきましたが、一番大きな問題点は、このような同じ失敗が繰り返されていることであります。一昨年十二月に開通いたしました中央環状新宿線が合流する板橋・熊野ジャンクション付近です。ここも双方二車線にもかかわらず、合流地点は三車線となっており、新たな渋滞をつくっています。

 そこでまず、これら堀切・小菅ジャンクション付近及び板橋・熊野ジャンクション付近の渋滞対策について、都の取り組みを伺います。

答弁1
都市整備局長
 首都高速道路の渋滞対策についてでございますが、都は、昨年三月、中央環状線のボトルネック箇所の交通の円滑化を図るため、お話しの堀切・小菅と板橋・熊野町のジャンクション付近につきまして、三車線から四車線に拡幅する都市計画変更を行いました。

 現在、首都高速道路株式会社におきまして、事業化に向けた準備を進めておりまして、都は引き続き、首都高速道路ネットワークの機能強化に取り組んでまいります。

質問2
 なぜこのような同じ失敗が繰り返されるのか。その一つに、交通政策を総合的に企画し、その結果を検証する責任部署が東京に存在しないからであります。

 現在、都では、交通政策の大部分を都市整備局が所管していますが、事項によっては、交通局や建設局、港湾局などに分かれております。東京の将来像を見据えた交通政策に責任を持って、総合的、一元的に取り扱う部署の設置が必要だと考えますが、所見を伺います。

答弁2
総務局長
 交通政策を総合的、一元的に取り扱う部署の設置についてでございますが、地方公共団体におきます必要な内部組織の設置につきましては、地方自治法におきまして長の権限とされており、都では、その時々の行政課題に応じて適宜適切な見直しを行い、常に効果的、効率的な執行体制の確保に努めているところでございます。

 交通政策につきましても同様と考えております。

質問3
 交通インフラ整備はほとんどが国、具体例では、空港、鉄道整備は旧運輸省が、高速道路を含む道路整備は旧建設省の主導で計画されてきました。

 本来なら、こうした交通施設の整備計画は、国はあくまで調整役に徹し、首都圏の自治体が連携し、主導権を持って行われるべきであるし、それにより初めて、有機的でかつ地域の特性を生かした交通網の整備が可能となるのではないかと考えます。

 現在の東京の交通網が縦割り行政の弊害を受けているのは、都の内部組織の問題もさることながら、国と地方の役割分担という観点から見て、問題の多い決定方式がとられてきたのが一因であるように思われます。

 交通施設整備の計画に関する役割分担が今後どうあるべきか、都の見解を伺います。

答弁3
都市整備局長
 交通施設整備計画に関する役割分担についてでございますが、高速道路や鉄道など都県にまたがるような広域的な交通施設につきましては、国が、都や県の意見を聞きながら、整備に関する基本計画を策定してきました。

 また、例えば都内における都市計画道路などにつきましては、都が、区市町村と協力するなどして事業化計画を策定してきました。

 今後とも、適切な役割分担のもと、関係機関との連携を図り、都市基盤の充実に取り組んでまいります。

質問4
 これから将来の東京の交通政策を考えるために、ここで海外の事例を検証してみます。

 モータリゼーションの進展による慢性的な交通渋滞、排気ガス、騒音、交通事故といった諸問題を大胆な施策で解決した事例を数例紹介いたします。

 まず、ブラジルのクリチバ市。地下鉄を整備するのが最善策と考えられていたようですが、建設にかかる費用、技術などの問題であきらめざるを得なかったとのこと。そこで考えたのが、バスシステムの大整備。当時唯一の公共交通機関であったバスは、いつ来るかわからないために、非常に評判が悪く敬遠されていたとのこと。そこで、定時性を守るために、徹底的にバス路線をつくることを考えました。

 まず、六車線の大通り、そして四車線の道路は、中央の二車線を上り下りのバス専用道路とし、残りの車線を上り下りの一般車用としました。さらに、二車線の道路においても、その片側一車線を一方通行のバス専用道路とし、残りの一車線をバスと同じ方向への一方通行の一般車用としております。

 要するに、バスが通る道路の半分をバス専用道路として整備し、ここまで徹底したバス専用道路の整備により、バスが渋滞に巻き込まれることはなくなったわけでございます。

 しかし、通常、バスの乗りおりには時間がかかります。これを解消するために、電車のように扉を三つつけたバスを開発、さらに輸送力を増すために、三両編成のバスもつくりました。(資料を示す)そして、料金徴収のために、普通のバス停ではなく、プラットホームをつくり、自動改札を設置しました。これが今の写真でございますが、これにより、乗りおりは今の日本の電車のようにスムーズになり、さらに改札から出なければ一枚のチケットで乗り継ぎが自由になり、利便性が格段に向上したとのことです。

 改善直後は大変な交通渋滞になった一般車道路も、バスを使う方がはるかに便利だとの認識が広がるにつれ、一般車の数はめっきり減ったとのことです。

 このバスシステムをさらに環境のことを考えて電化したのが、ヨーロッパを中心に整備が相次いでいるLRTであります。

 フランスのストラスブールという都市では、LRTを整備するとともに、中心部の自動車の通行に制限を加え、公共交通に優先権を与える交通ゾーンシステムという通行可能区分帯を設定しております。

 この方式は、中心部を幾つかのゾーンに分け、各ゾーンを結ぶ道路では、自動車の通行を認めず、他のゾーンに行くには、一たん外周道路へ出て、そこから目的地のゾーンへアクセスさせる仕組みであります。A地区からB地区に行くには、LRTならすんなり行けるわけですが、自家用車だと一たんA地区から外に出て、外環を通って、そしてB地区の外に行き、そこから中に入るというもの。さらに、市内の一般車用の駐車場をほとんどなくしています。

 公共交通を整備する一方で、自家用車の利便性をなくす施策を同時に進めているのであります。

 このように、複合的な施策を実施して成功している例はたくさん存在しております。例えば、アムステルダムにおきましては、LRTの整備と同時に、びっくりするような安い料金で使えるパーク・アンド・ライドに力を入れております。レースで有名なルマン市でも同じような制度が見られました。

 そして、最後に、だれもが知っているパリの交通政策。市内の道路には、バス、そして自転車の専用車線がつくられています。これが、今ちょっと見にくいわけでございますが、右側のこの線がバスと自転車、そして、ほかが一方通行の車になっているわけでございます。

 そして、市内の至るところにはだれでも使える公共の時間貸し自転車が置いてあります。最初の三十分間は無料で、それ以上は使った時間だけカード支払いとなります。三十分で目的地まで行って、そこで乗り捨てれば料金はかかりません。まだまだ問題も多くあるとのことですが、バスやLRT、電車にも自転車を乗せることができるようになっております。世界有数の大都市パリにおいて自転車が中心になりつつあるというのは、大変興味深いことでもあります。

 これらの事例を参考にして東京の交通を考えますと、まず都心に自家用車の乗り入れを少なくする施策が必要ではないかと考えます。ロードプライシングなどの課金による抑制よりは、車で行かない方がかえって便利だという考えを広めることが必要だと思います。

 そこで、例えば自家用車については、都内をストラスブールのように区分化し、相互の行き来を制限する、都内をスムーズに走ることができる車両は緑ナンバーのような営業車だけにする、さらには、白ナンバー用の駐車場を大胆に削減するなど、東京においても自家用車使用からの脱却を進め、公共交通へのダイナミックな転換を図るような、社会基盤の中心的な存在である交通インフラ整備のあり方を大きく変えていくことが必要だと考えますが、知事の見解を伺います。

答弁4
知事
 交通インフラの整備のあり方についてでありますが、鉄道や道路は、東京における日々の都市活動を支える重要な交通インフラでありまして、それぞれの特徴に応じて複合的、重層的に整備していくことが肝要であると思います。

 東京の鉄道は世界に類を見ない高密度で正確、安全ネットワークを形成しておりますが、一方、車の交通渋滞による都市の機能不全は、今や東京の最大の弱点でありまして、これを解消することが喫緊の課題であると思っております。

 都は、今までも幾つか案を講じて試みようとしてきましたが、何分、東京というほとんど計画なしに増長した都市の非常に複雑な構想のために、なかなか妙案に至りませんでした。

 都は引き続き、三環状を初め、おくれている道路整備を強力に推進するとともに、あわせてすぐれた鉄道ネットワークを有効に活用し、東京を快適で利便性の高い都市としていきたいと思っております。

質問5
 私は、東京でも、LRTの整備は有効だと考えます。LRT建設コストは、地下鉄建設の二十分の一といわれております。地下鉄一本建設する費用で二十本のLRTがつくれるわけですから、都心をたくさんのLRTで結ぶことができます。

 都電が縦横無尽に走っていたひと昔のように、例えば銀座通りから日比谷、丸の内を一周するプランや外堀通りを一周するプランなど、LRTを通すことも利便性を高める案だと考えます。

 池袋駅周辺などでLRTを導入する構想が検討されているようですが、東京の公共交通におけるLRTの導入について所見をお伺いいたします。

答弁5
都市整備局長
LRTの導入についてでございますが、LRTは、基本的には短距離の地域交通を担う手段でございまして、地元自治体が主体となって取り組むべきものでございます。その導入に当たりましては、道路空間の確保あるいは事業主体、事業採算性などの課題がございます。 都といたしましては、今後とも、地元自治体が導入に取り組むような際には適切に対応してまいります。

質問6
 個別事案になりますが、私の地元足立区では、つくばエクスプレスや日暮里・舎人ライナーの開通で南北交通はスムーズになったものの、東西交通はいまだに整備されておりません。

 足立区の東西交通として、区部環状公共交通、いわゆるメトロセブンという構想があり、今のLRTの導入も含め、この整備が必要だと考えますが、見解を伺います。

答弁6
都市整備局長
 区部周辺部環状公共交通についてでございますが、本路線は、平成十二年の運輸政策審議会答申第十八号で、今後整備について検討すべき路線に位置づけられております。

 現在、都と沿線区は、都区連絡会を設置し、検討を行っておりますが、実現に当たりましては、多大な建設費や事業採算性、需要の確保などさまざまな課題がございます。

 今後も、都区連絡会の場などを活用し、議論していくことが必要と考えております。

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医療・福祉施策

質問1
 子育て支援関係についてお伺いいたします。

 足立区におきましては、放課後子ども教室推進事業として、「あだちキッズぱれっと」を推進しております。 これは、文部科学省と厚生労働省が共同して全国の小学校で実施を目指している放課後子どもプランを念頭に足立区独自で取り組んでいる事業であり、小学校の余裕教室を利用し、児童の放課後安心・安全な居場所づくりを推進するものであります。

 この制度の評判はとてもよく、もっと広めるべきだと考えておりますが、都からの補助金は、足立区の支出に比べて極めて少ないものとなっております。このようなすべての子どもたちに恩恵が与えられる施策に対しては、もう少し補助金の上乗せを望むものですが、見解をお伺いいたします。

答弁1
教育長
 「あだちキッズぱれっと」への補助金についてお答えを申し上げます。

 「あだちキッズぱれっと」は、足立区が国の補助事業である放課後子ども教室推進事業を活用した事業でございます。

 放課後子ども教室推進事業は、国と都が、実施要綱に基づきまして、区市町村に対し、運営費やスタッフの謝金などの補助対象経費について、それぞれ三分の一ずつ補助することによりまして、放課後などに子どもたちの安全で安心な活動拠点を設け、多様な体験や交流活動を行い、子どもたちが心豊かで健やかにはぐくまれる環境づくりを進める事業でございます。

 本年度は、補助対象経費の拡大など、各都道府県からの要望を受け、国が安全管理員や学習アドバイザー等スタッフの謝金単価を引き上げたことに伴いまして、都としても適切に対応したところでございます。

 今後とも、放課後子ども教室の推進が図られるよう、引き続き、国に対して補助対象経費の拡大などを働きかけますとともに、区市町村を支援してまいります。

質問2
 来年度は、平成二十二年度から二十六年度までを計画期間とする次世代育成都道府県行動計画、いわゆる後期計画の策定時期です。前期計画は平成十七年に策定されましたが、なお多い待機児童の解消や子育て負担軽減策、児童虐待対策、ワークライフバランスなど諸課題の解決にはまだまだ道のりは遠いというのが、子育て世代の正直な実感です。

 不況の影響で多くのお母さんが仕事を始めるといった社会情勢の急激な変化で、都民のニーズも大きく変わりつつあります。

 前期計画の評価と課題、施策の進捗状況を踏まえ、都民ニーズを的確にとらえ、実効性のある計画を策定することを求めるものですが、都の今後の取り組み方針について見解を伺います。

答弁2
福祉保健局長
 次世代育成支援東京都行動計画についてでありますが、都は、今後国から示されます策定指針を踏まえ、平成二十二年度から五年間にわたる、いわゆる後期計画を平成二十一年度中に策定いたします。

 計画策定に当たりましては、前期計画の進捗状況や、女性の就業率の高まりに応じて必要となる保育ニーズ等を考慮するものとし、庁内における検討はもとより、都民、学識経験者、事業主等の意見を幅広く聞きながら策定してまいります。

質問3
 現在、周産期医療改革について、産科医をふやす方向で対策がとられておりますが、そもそも産科医自体が不足しており、その理由は、出産時の医療事故に対する訴訟、補償問題の多さゆえに、医学生が産科医を敬遠するからでもございます。

 現在の日本では、医療事故が発生した場合、医師、病院に過失を認めさせない限り、患者は全く補償が受けられない仕組みとなっており、これがために医療訴訟が増加しているわけでもございます。

 過失がなくとも、患者や遺族に補償することができるのが無過失補償制度であります。医療事故の被害者を裁判なしに補償する、この制度はヨーロッパなど社会制度の進んだ国では早くから導入されています。

 国は、出産事故で重度の脳性麻痺を負った場合などの産科医療補償制度を、発足させましたが、それよりも一歩進んだ、かつ、すべての医療関係にも波及する無過失補償制度を東京都として国に先行して制度化することが望ましいと考えますが、見解を伺います。

 子どもを産みやすい、育てやすい、子育て先進の都市東京の制度整備を強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

答弁3
福祉保健局長
 医療補償制度についてでありますが、産科医療補償制度は、分娩に係る医療事故により脳性麻痺となった子及びその家族の経済的負担を補償し、事故原因の分析と事故防止に資する情報の提供を行うものであります。

 医療は、事故などのリスクを内包するものであり、こうした医療に関する無過失補償制度は、医療制度の根幹にかかわる課題として国が制度設計すべきものであると考えております。

 都としては、緊急性が高く、専門領域以外の患者への対応が求められる救急医療などにおいて、患者、医療従事者の双方が救済される制度の創設や産科医療補償制度の充実について、国に提案要求しているところであります。

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