
東京都のあるべき姿
質問1
東京都議会本会議で、私にとりましては最後の質問をさせていただきますが、日ごろから疑問に感じながらも、今さらこんなこと聞けないよと口に出せなかった問題も含めて質問をしたいと思います。
私が初当選の栄を賜ったのは、昭和六十年の七夕選挙でありました。当時の私は、弱冠二十七歳、独身、体重は今より十五キロ軽い、紅顔の美少年ならぬ美青年でありました。初登庁のときに、史上最年少都議ということもあり、マスコミの皆さんに質問攻めにされたことを、きのうのように思い起こします。
そのときの質問の一つに、東京都の将来あるべき姿とはどんなものを考えるかというものがありました。この質問に対し、私は、東京都の究極の目的はなくなることでしょうと答え、びっくりされたものでありました。この考え方は、二十四年を経た今日でも基本的には変わっておりません。
どういう意味かと申しますと、現在、都区間におきまして、都区のあり方について、なかなか進まない協議が続けられておりますけれども、都として、まだ事実上内部団体扱いの二十三特別区を、独立した自治体として名実ともに本来の姿で自立させ、世界じゅうでも余り例のない、二十三区を横並び平等の中で独自性を競わせるような都区の財調制度等を見直し、もっとシンプルな形を目指して、都内の区市町村の再編を促し、行政の効率を上げることを考えていくべきであろうということを言外に込めたわけであります。
もっと簡単にいえば、都は本来の大都市行政に徹し、区市町村にできることは区市町村に任せ、都は、区市町村の補完に徹した方がよいといったわけであります。
知事は、これからの東京都のあるべき姿、果たすべき役割についてどのように考えておられるか、ご所見を伺いたいと思います。
ちなみに、こんなことをいうと怒られるかもわかりませんが、私は、二十三区は幾つかの政令指定都市へと発展解消し、多摩は四十八番目の県として大きく羽ばたいていただきたい、このように思っております。
答弁1
知事
これからの東京都のあるべき姿や果たすべき役割についてでありますが、我が国の首都である東京は、人々の生活の場であると同時に、三百万人を超える昼間流入人口を抱えまして、これに対応するさまざまなインフラが整備された都市でもありまして、人材や企業が高度に集積する世界に類を見ない大都市であります。
都は、区市町村との役割分担のもと、大都市としての一体性を確保しつつ、交通渋滞などの課題を迅速かつ効果的に解決し、将来にわたり、首都東京の持つ可能性を十分に発揮できるようにしなければならないと思います。
また、東京が直面する広域的な行政課題について、首都圏という大きな枠組みの中で政策を展開していくことも必要でありまして、都はこれまで、ディーゼル車排出ガス規制など、あるいは災害時の県をまたいでの協力体制など、その構築には着実に成果を上げてきたつもりでございます。
今後とも、日本の頭脳部、心臓部としてその持てる力を遺憾なく発揮し、都民のみならず、首都圏住民にとっても真に実効性のある取り組みを進め、その役割を十全に果たしていくべきだと思っております。
都庁舎の改修
質問1
私が丸の内にあった東京都議会本会議場の演壇に初めて立ったのは、昭和六十年十二月の第四回定例会でありました。当時の議事堂は、四隅に茶色く雨漏りの跡が残り、照明も薄暗く、天下の東京都議会としては、まことにつつましいものでありました。自民党控室も同様で、全議員が一堂に会せるのは執務机が置いてある部屋だけで、その狭い机で資料に埋もれながら弁当をつついたのも、今はよい思い出であります。
平成三年に、大議論の末、ここ新宿に移転してはや十八年、雨漏りや空調のふぐあい等、私同様、経年劣化が進み、改修の必要性を感じているところであります。
去る二月十日に財務局より、都庁舎の設備更新等に関する方針が発表されました。十年間にわたるとはいえ、七百八十億円を投じて、第一、第二本庁舎、そして議会棟の大規模改修が初めて行われるというものであります。
私からいうまでもなく、この都庁舎は千五百六十九億円で建ったものであります。その半分の費用をかけて今、改修を行うことについて、改修費用は建設費の五〇%以下で、民間ビルの大規模改修と比べても過大投資ではないとコメントがありました。
今日までのメンテナンスに問題はなかったとは思いますが、都民の目からすれば大きな金額であります。加えて、現下の厳しい経済情勢もあります。
また、都有地の売却などで財源を賄い、一般財源は投入しない方向とありますが、都有地も都民の貴重な財産であります。この大規模改修に当たっては、都民の皆様の理解を十分に得られるよう、その必要性をわかりやすく説明をしていただきたいと考えますが、ご所見を伺います。
答弁1
財務局長
お話しのように、平成三年に開庁した都庁舎は、ことしで築後十八年になるわけでございますが、躯体はもちろん何の問題もありませんが、ここ数年、設備系の故障がふえております。空調設備で見ますと、年間七百件前後、一日平均二件程度の故障が発生しております。また、昨年は議会棟での水回りの配管の断裂事故が発生し、議員の皆様方にも大変ご迷惑をおかけいたしました。
一般に、高層の建築物の場合では、おおむね築後二十年前後が空調機等設備の更新期といわれておりますけれども、ビルとしての機能維持という点から、現在は更新に着手すべき時期にあると考えております。
一方、都庁舎の機能は、いわゆるオフィスビルとしての機能だけではなく、災害時に防災拠点としての役割を果たす必要がございます。都政のBCPでは、災害発生後七十二時間以内に通常の五〇%の職員が参集し、災害への対応業務等に当たることとされております。これに必要な電力を停電が長期に及んだ場合でも確保するためには、非常用発電機などの設備の能力を現在よりも六割方強化することが必要となります。
もう一つは、都庁舎から排出されるCO2を削減する課題でございます。都は、二十二年四月から都内大規模事業所へのCO2排出量削減を義務化するということで、今、方針で進めているわけでございますが、都庁舎は、この政策の目標達成に向け、先導的な役割を果たす建築物にしなければならないと考えております。そのため、できるだけ早期に空調機、照明器具などの省エネ機能を大幅にアップいたしまして、これにより、都庁舎から排出されるCO2を年間約八%、二千四百トン削減することを目標といたしております。
都庁舎の設備更新をこの時期から開始する必要があると考えている主な理由は、こうした点でございます。
この設備更新に必要な額につきましては、現時点で、十年間合計で七百八十億円程度と見込んでおります。超高層の建物である都庁舎は、三棟合計の延べ床面積が約三十八万平方メートル、霞が関ビルの約二・五倍でございます。庁舎内の設備について見ますと、空調機が約千台ございまして、照明器具が約六万台、配管類の延長は約五百二十キロメートルに及んでおります。費用がかさむ理由の一つには、こうした建物の規模がございます。
一般に、高層ビルの設備更新には建設費用の半分以上を要するといわれておりまして、都庁舎の場合にはそれを下回ってはいるわけでございますが、絶対額としては、確かにご指摘のように大きいと感じさせる額でございます。しかも、更新のための財源は、都民の貴重な財産である都有財産の利活用による収入で賄うことといたしております。設備更新費用には決してむだがあってはならないと考えてございます。
したがいまして、今後、この所要額につきましては、設計段階等におきまして、さらに一層圧縮に努めてまいります。さらに、毎年度の予算編成の中でも改めて精査をいたしまして、都民の負担を少しでも減らせるよう、努力してまいります。
よろしくご理解を賜りますようお願いをいたします。
禁煙
質問1
喫煙は死を招きます。あなたの喫煙は他人に有害です。これは、オーストラリアのたばこ警告文であります。我が国に比べて随分強烈であります。
日本人男性の喫煙率は、昭和四十三年の八三・七%をピークに、平成十八年には四〇%を切りました。女性の喫煙率は横ばいでありますけれども、一〇%前後でありますが、二十代から三十歳代が高くなっているのが気になるところであります。
昨年三月四日に日本学術会議が、「脱タバコ社会の実現に向けて」という提言を行いました。その中で、喫煙のもたらす直接的健康被害に関しては議論の余地はない、受動喫煙についても、科学的根拠に基づく健康障害を引き起こすことが明白になった、国民皆保険の日本にあっては、たばこによる健康障害に要する費用は国民全体で負担しているため、喫煙は国民全体の医療経済問題であり、単に個人的嗜好の問題とはみなされないといっております。
東京都内においても、路上喫煙禁止に始まり、我が控室を除きましては、さまざまなところで嫌煙、分煙が確立されつつあることは、まことに喜ばしい限りであります。
いまだに、体を張って税金を払っているのに文句があるかという人がたまにいます。確かに、区市町村分を合わせて東京都全体で一千三百五十億円の税収は大きい。だからといって、喫煙を野放しにしてよいというわけにはいきません。
喫煙による死亡者は、日本の年間死亡者数、百万から百十万人のうち、二十万人に上るといわれております。たばこを吸っているご本人が早くあの世へ行くのは勝手ですが、道連れはご免であります。受動喫煙の被害をなくすためにも、禁煙策あるいは分煙策を積極的にとるべきと考えますが、今後の取り組みについて意欲を伺います。
答弁1
福祉保健局長
禁煙及び分煙に関する取り組みについてでありますが、厚生労働省の検討会報告書によれば、たばこは、がん、心筋梗塞、肺気腫等の原因の一つであり、喫煙者はもとより、受動喫煙による周囲の人への健康影響も明らかであるとされております。
都では、平成二十年三月に策定をいたしました東京都健康推進プラン21新後期五か年戦略の中で、禁煙希望者への支援や喫煙及び受動喫煙の健康影響についての普及啓発を行うことを目標として掲げておりまして、この計画に基づき、引き続きたばこ対策を進めてまいります。
質問2
WHOは、平成十五年にいわゆるたばこ規制枠組み条約を採択し、我が国も平成十七年に批准をしていますが、昨年は、たばこ税の値上げが見送られたり、たばこは二十になってからというような、裏を返せば二十になったらたばこを吸おうというように聞こえるキャンペーンのごとく、はっきり禁煙に踏み込めないのはなぜか。
幾ら税金が入るからといっても、たばこは百害あって一利なしを物心がついた時期から教えるべきでありますし、成人に対してももっと広く、詳しくたばこの恐ろしさを知らしむべきと考えますが、具体策についてあわせてご所見を伺います。
答弁2
福祉保健局長
たばこの健康影響に関する周知についてでありますが、都は、喫煙による健康影響が大きい未成年者の喫煙防止リーフレットを作成し、都内の全中学生に配布するとともに、小中高校生を対象にポスターを募集し、優秀作品を表彰するなど、年少時からの喫煙防止に取り組んでおります。また、成人に対しても、喫煙及び受動喫煙の健康影響などについてホームページで周知し、妊産婦の喫煙についても、胎児の発育や乳児の健康に影響を及ぼすことを記載したリーフレットを配布するなど、広く都民に普及啓発を行っております。
質問3
平成十九年にがん対策基本法が制定され、東京都でも昨年三月にがん対策推進計画を策定いたしました。残念なことに、その双方に喫煙率削減の数値目標がありません。二十二の道県では、それぞれのがん計画の中に数値目標を盛り込んでいます。がんの原因の一番最初に喫煙が挙げられており、がん予防においてはたばこ対策を進めることが重要と書かれていながら、三年以内に未成年の喫煙をゼロにするという当たり前のことが書いてあるだけで、成人に対する数値目標がない。
東京都は、都民の健康を守り、医療費の面からも喫煙率削減の数値目標を明確にし、その責務を果たすべきと考えますが、いかがでありましょう。
答弁3
福祉保健局長
喫煙率削減の目標についてでありますが、都は、昨年三月に策定した東京都がん対策推進計画におきまして、平成二十四年度までの目標として、未成年者の喫煙率ゼロ%を目指すことや成人の喫煙率を下げることを掲げてございます。
今後とも、区市町村や関係機関等と連携し、その達成に向けて努力をしてまいります。 コメント 喫煙に対する日本の取り組みのおくれは各国に比べて歴然としているとの指摘もある中、地方自治体の雄である東京都の禁煙に対する取り組みの一層の強化を期待するものであります。
しかしながら、ただ禁煙を推し進めればよいというものではありません。今日まで国策に従ってたばこ関連の仕事をされてきた方々のことも十二分に配慮をし、かつ、これまでも、やめたくてもやめられない、やめるといらいらするという極めて依存性の高いものを高額の税金を取って売りつけ続けてきた行政の責任をしっかりととるべきものと考えます。
道路整備
質問1
去る平成十八年の第一回定例会で首都高品川線の質問をいたしました。あれから三年、私たち品川区選出の四名の都議会議員は、党派を超えてこの問題に取り組んでまいりました。現在、品川線は、大井立て坑が竣工し、先月にはシールドマシンが発進したと聞きました。いよいよ五反田換気所も着工が近くなりました。この工事を含めて予定どおりの開通をするためには、住民の皆様の理解を得ることは不可欠であります。
今後の五反田地区の大気や景観など、沿道環境保全に対しての対応を伺います。
答弁1
建設局長
中央環状品川線五反田地区の大気や景観など、沿道環境の保全についてのご質問にお答えいたします。
中央環状線は、渋滞緩和や環境改善を図る上で極めて効果が高い路線であり、その機能を十全に発揮させるために、品川線の早期完成が求められております。
整備に当たりましては、沿道環境への影響が最も小さい地下構造を採用しているため、換気所の設置が不可欠であります。
お話のございました三年前のご質問は、今でも記憶に残っております。これまで、品川線沿道の大気状況を継続して把握してまいりましたが、経年の変化を踏まえると、改善されつつあるものの、依然として二酸化窒素の環境基準が達成できない大気観測所があるなど、厳しい状況が続いていると考えております。
また、平成十九年十二月に供用した新宿線に低濃度脱硝装置が設置され、一年間の計測の結果、九〇%以上の高い脱硝効果があることが確認できました。これらを踏まえ、低濃度脱硝装置の設置が必要と考えております。
また、道路トンネルの換気基準改定に伴い、換気塔の太さを約四分の一にスリム化することで、景観への影響が大幅に緩和されます。これらのことを、地元町会等で構成される連絡会へ先般説明いたしました。
今後とも、住民の理解と協力を得ながら、五反田換気所建設工事を着実に進め、品川線の平成二十五年度開通に向け、事業を推進してまいります。
交通問題
質問1
交通違反の取り締まり等交通問題について、基本的な考え方について質問をしたいと存じます。
まず伺いますが、交通違反の取り締まりは、交通事故を未然に防ぐために行っていると理解してよろしいでしょうか。
だとすれば、飲酒運転などはもってのほかでありますが、うっかりミスによる一時停止違反等は、取り締まる以前に、まさに制服による抑止力を使ってドライバーの注意を促し、違反に至らないようにして事故を未然に防ぐ方向にすべきと考えますが、ご所見を伺います。
答弁1
警視総監
交通違反の取り締まりについてでありますが、何のために交通違反の取り締まりをやるのか、この点については、まさしく議員ご指摘のとおり、要は、都民一人一人が交通ルールを守り、交通事故を起こさないようにするということであります。
したがいまして、交通事故の発生実態等を踏まえて、悪質、危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた取り締まりを行う一方で、できるだけ多くの制服警察官を街頭に配置し、見せる警戒活動等を行うことによって、交通違反そのものの抑止や、あるいは交通事故の抑止に努める必要があろうかというふうに考えております。
したがいまして、今後とも、今申し上げた交通事故の発生を未然に防止するため、重点を指向した取り締まりとともに、見せる警戒活動を継続してまいりたいというふうに思います。
質問2
一昨年の六月に駐車違反の摘発が民間にもできるようになって一年八カ月が過ぎました。実施以来、渋滞が目に見えて減ったということは大変大きな成果であります。最近は大きなトラブルも聞かなくなりましたが、どうしても腑に落ちないことがあります。それは、どんなに邪魔なところにとまっている車両でも、人が乗っていれば摘発をせずに、知らぬ顔で通り過ぎてしまうことであります。民間業者にその権限は与えられていないとのことでありますが、都民感情としてはなかなか理解ができません。法改正等が必要だとは思いますが、せめて移動を促すことができる権限を付与する必要があると考えますが、いかがでしょう。見解を伺います。
答弁2
警視総監
駐車監視員の権限あるいは活動に関するご質問についてでありますが、公安委員会の登録を受けた受託法人の駐車監視員には、法律上、放置車両の確認及び標章の取りつけができるというふうにされておりますが、議員ご指摘のとおり、違法駐車車両のドライバーに対して移動を命ずる権限、これは付与されておりません。
しかしながら、悪質、危険性あるいは迷惑性が高い違法駐車車両等に対しましては、放置車両の確認行為の中で移動を促すとともに、極めて危険性が高い場合などにつきましては、直ちに警察署長、いわゆる警察署に通報するなどの必要な措置を要請するよう指導をしているところであります。こうした対応を適正に行わせることによって、道路交通上の安全と円滑を一層確保してまいりたいというふうに考えております。
質問3
違法駐車を一掃することは、東京の自動車交通の円滑化に大きく寄与するものと考えますが、これだけ車に依存する社会ができ上がってしまっている以上、ただやみくもに駐車を取り締まるだけでは、必ずどこかにひずみが出ます。
マドリードの旧市街のように、午前十一時までは一時的な荷さばき等の駐車は認めたりするような社会の実情に合わせたフレキシブルな対応や、必要量の安価な駐車場をきちんと行政の責任で整備することが必要と考えますが、ご所見を伺います。
答弁3
警視総監
駐車規制に関するご質問についてでありますが、荷さばきに配意した駐車対策として、築地市場、日本橋問屋街につきましては平成十八年五月から、大田市場については平成十九年五月から、それぞれ時間と場所を限定して、集配中の貨物自動車を駐車禁止規制の対象から除外するなどの措置を講じているところであります。また、平成二十年九月からは、浅草地区の外九地区においても、同様の規制緩和を試験的に実施しているところであります。
今後とも、地域住民の意見等に配意をしながら、荷さばき等による駐車の必要性というものに配意しつつ、あわせて交通の円滑化との調和を図りながら、地域の実情に応じたきめ細やかな、いわばフレキシブルな駐車規制を実施してまいります。
なお、駐車場の整備拡充につきましては、引き続き関係機関等に働きかけてまいりたいと考えております。
知的障害者の累犯問題
質問1
去る一月十九日、長崎に全国初の地域生活定着支援センターが開設をされました。刑務所を出た知的障害者の社会復帰を支援する施設であります。
ある刑務所の技官経験者の方の言葉を引用します。障害者の脱施設化が進む一方で、社会に居場所がない人が刑務所に来ている。福祉の光に浴することができない人々の最後のとりでが刑務所になってしまっている現状を端的に示している言葉ではないでしょうか。
法務省によれば、毎年、新規受刑者の二割は知的障害者であり、服役中の知的障害者の七割が再犯であるといわれています。すなわち、刑務所を出た後の社会復帰は就労することが前提となっている我が国では、出所後の知的障害者にとっては大変厳しい実情の社会が立ちはだかっているため、生活苦から犯罪を繰り返すことが多いのであります。その人たちの支援を、少しの支援があれば、長い間不幸だった人も幸せに生活を送ることができる、こういう信念のもとにオープンしたのが冒頭の長崎の施設であります。
二十一年度中には、長崎の施設と同種の地域生活定着支援センターを、初めは国が設置をするといったにもかかわらず、いつの間にか都道府県に丸投げをして設置することになりました。これがどのような施設になるのか、都はどのような体制で臨むのか、伺います。
答弁1
福祉保健局長
地域生活定着支援センター(仮称)についてでありますが、本センターは、刑務所出所者等のうち知的障害のある方などが、出所後直ちに障害者手帳の発給や社会福祉施設への入所などの福祉サービスを利用できるよう、刑務所入所中からニーズの把握や受け入れ先の調整等を行うものであります。
当初は、国が直接社会福祉法人等に委託する予定でありましたが、昨年十二月、都道府県を実施主体とするとの方針が示されました。本事業の詳細につきましては、現在、国において検討中であります。都といたしましては、その内容が明らかになった段階で適切に対応してまいります。
質問2
知的障害があるために自立できず、しかも生活支援がなされず、療育手帳も持たずに犯罪を繰り返さざるを得ない人たちにどう対処していくべきなのか、東京都の基本的な考え方を伺います。
答弁2
福祉保健局長
法に触れる行為を行った知的障害者への対応についてでありますが、知的障害者につきましては、生活を支援する主体である区市町村におきまして、療育手帳、年金の申請や障害者サービス、生活保護などを行い、自立した生活ができるよう支援していくことが基本でございます。法に触れる行為を行った知的障害者についても同様と考えております。
こうした方のうち、帰る場所がないため支援を受けられない方につきましては、まず、居住地を確保できるよう国の矯正機関などが適切に支援し、その上で区市町村の福祉サービスにつなげていくべきものと考えております。
質問3
先進国では、知的障害者は人口の二%前後といわれています。単純計算をすれば、我が国では約二百五十万人ということになりますが、実際に療育手帳を持っている知的障害者の方は約五十万人といわれています。東京都の現状はどのようになっているでしょうか。また、この現状をどう受けとめておられるのか、伺います。
答弁3
福祉保健局長
療育手帳の交付状況についてでありますが、療育手帳に相当するものとして、都では愛の手帳制度があり、平成十九年度末現在の交付数は約六万二千件であります。福祉サービスを受ける上で手帳は重要なものであるため、都はこれまで、さまざまな広報手段により手帳制度について周知を図ってまいりました。今後も、必要な方が手帳を所持できるよう、引き続き周知に努めてまいります。
質問4
療育手帳取得の少なさの原因の一つに、そのハードルの高さがあるといえます。年齢が高くなってからの申請は、十八歳までに知的障害が発症したことが必要なため、子ども時代を知る人の証言を求められる場合があると聞きます。何年も前のことを証言してもらうことは、大変に気の重いことであります。療育手帳がなく、福祉サービスが受けられないことで犯罪を繰り返さざるを得ない知的障害者をこれ以上ふやさないために、また、一人でもこういった不幸な状況に陥らざるを得なかった人々を減らしていけるように、都としての格段のご尽力をお願いしたいと存じます。知事のご決意のほどをお伺いいたしまして、質問を終わります。
答弁5
知事
法に触れる行為を繰り返す知的障害者についてでありますが、成育の途上で障害が適切に把握されずに、本来必要な支援がなされなかったことなどによりまして、法に触れる行為を行い、家庭や地域での生活に適応することが難しい知的障害者が大勢おられます。
しかし、こうした障害者についても、ハンディキャップ、成育環境などを的確に把握し、必要な支援につなげていくことが大切であると思います。
都は、区市町村や障害者を支える人々と力を合わせながら、知的障害者がさまざまな支援のもとに地域の中で安心して暮らしていける社会を実現していきたいと思っております。