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  4. 第1回定例会(一般質問2日目)
  5. 神林茂(自民党)

助け合う地域づくりを目指して
羽田空港跡地整備に住民要望を

神林茂
神林 茂(自民党)

助け合う地域社会づくりとボランティアの育成・活用

質問1
 まず、助け合う地域社会づくりとボランティアの育成、活用について伺います。
 今日においては、親が子どもを虐待し、子どもが親を殺すなど、常識でははかり知れない事件が日常茶飯事のように報道されています。戦後我々が受けた教育では、個人の権利を主張することの大切さは大いに学ばせていただきましたが、その反面、義務を果たすことの必要性、国を愛する心、年長者を敬う気持ち、助け合いの精神など、本来日本人が持ち合わせていた誇るべき国民性については、残念ながら十分な教えを請うことができませんでした。
 加えて、少子化や情報化の進展、物質的な満足を追い求めていく社会環境の変化などが、自分さえよければよいという人間性の欠如した事件を引き起こしている大きな要因となっていることは、私があえていうまでもないことかもしれません。
 平成十八年十二月に策定された「十年後の東京」は、東京が近未来に向け、都市インフラの整備だけでなく、環境、安全、文化、観光、産業など、さまざまな分野で、より高いレベルに成長を遂げていく姿を描き出したものです。私は、十年後の東京を考える上で最も大切なことは、こうした成熟した都市の中で、そこに暮らす住民がいかに成熟した生活を送っているのかということだと考えます。
 石原知事は、平成十一年に心の東京革命を提唱し、次代を担う子どもたちに対し、親と大人が責任を持って、正義感や倫理観、思いやりの心をはぐくみ、人が生きていく上での当然の心得を伝えていく取り組みを始めました。
 正義感や倫理観、思いやりの心を持った人づくり、地域や自分の身の回りで助け合うことのできる地域社会づくりなど、成熟した人や地域社会の環境づくりを「十年後の東京」が目指す都市像と融合して結実させていくべきであります。
 国がやらないなら東京都からでも進めるという姿勢で、都民から高い評価を受けている石原知事のお考えと、東京都の今後の取り組みについて伺います。

答弁1
知事
 人づくり、地域社会づくりについてでありますが、社会全体の利益につながる活動に、多様な立場の人たちがそれぞれ積極的にかかわる仕組みをつくり上げていくためには、まず、その基礎となる人を育て、また、地域社会のきずなを強めていくことが必要であると思います。
 都はこれまでも、次代を担う子どもたちをはぐくみ、誇りの持てる社会を築く、心の東京革命を展開するとともに、町会、自治会など地域社会の担い手が、防犯、防災などに連携して取り組む、地域力向上の活動を支援してまいりました。
 「十年後の東京」で示した成熟を遂げた都市東京を実現するためにも、都民、企業、地域などを巻き込んだ広範な取り組みを通じ、人と人とが強く連帯し、地域で支え合う社会を形成していきたいと思っております。


質問2
 ボランティアをはぐくむ施策、殊に団塊世代、元気高齢者の力を活用した地域の活性化について伺います。
 昨年十二月に発表された東京都地域ケア体制整備構想では、東京都の総人口は平成三十二年をピークに減少していきますが、六十五歳以上の高齢者人口はその後も増加し続けることが予想されています。
 しかも、高齢者のうち約八割は元気な方々であります。地域社会や介護などのボランティアをはぐくむ施策の中で、高齢者が抱える問題に強い関心を持ち、人生経験豊かで豊富な知識を有するこうした方々の力をかりないのは、社会的にも大きな損失といえます。
 実際に稲城市においては、昨年の九月から介護支援ボランティア制度を開始し、市の予想を大きく上回り、ことしの一月末現在で二百三十一人の登録がされ、積極的に地域における介護を支える力として機能しております。
 また、私の地元の大田区では、地域のお母さん方と元気な高齢者が、ひとり暮らしの高齢者に給食サービスなどを実施して、大変喜ばれています。
 しかし、多くの現場では、ボランティアをしたくとも、仲間づくりや活動の場の確保が難しい、技術や知識を習得する機会が少ないなど、苦労しているという話を聞いております。もちろん、こうした取り組みは、住民に身近な区市町村が、それぞれの地域実情に合わせた取り組みをすることが必要ではありますが、その前提となる仕組みや環境づくりなどは、広域自治体として、東京都の役割が大きいと考えます。
 東京都としては、広域的な情報提供や財政支援はもとより、技術や知識を習得する研修会の開催や講師派遣、資格認定制度の確立、ボランティア活動をサポートする保険制度など、市区町村と協力して、ボランティア活動が地域社会の中で活動しやすい受け皿づくりを行って、地域ケア体制の整備をしていくべきであります。
 そこで、今後とも、地域社会を活性化させるためのボランティア活動の推進、殊に元気な高齢者の力の活用策について、東京都の考え方と具体的な取り組みを伺います。

答弁2
福祉保健局長
 元気な高齢者の力の活用についてでありますけれども、高齢化が進展する中、社会の活力を維持していくためには、元気で意欲的な高齢者が地域社会の担い手となり、豊かな知識や経験を十分に生かしながら、自主的、自発的に活動できる環境を整えることが必要でございます。
 このため、来年度に新たな検討会を設置し、ボランティア活動の核となる人材の育成、ボランティアに参加する側と必要とする側とのマッチングなど、団塊の世代や元気な高齢者の力を地域社会の中で積極的に活用するための仕組みづくりなどについて検討をしてまいります。


質問3
 また最近、介護施設では、募集をかけても応募者が少なく、介護人材の不足が深刻化しているというニュースをよく耳にいたしますが、こうした介護施設などでも、高齢者を初めとしたボランティアの活用も積極的に考えてみてはいかがでしょうか。
 介護施設では、必ずしも介護の資格を持たずに活躍できる場がたくさんあると思います。例えば食堂内の配ぜん、下ぜん、散歩、外出や施設内の移動の補助、話し相手などが挙げられます。介護人材については、国の試算から推測すると、都内では、今後十年間で、四万から六万人もの新たな確保が必要となります。
 介護人材の定着、確保の一助となるよう、介護施設などにおける元気な高齢者を初めとしたボランティアの活用について、東京都のご所見を伺います。

答弁3
福祉保健局長
 介護施設におけるボランティアの活用についてでありますが、ボランティア活動をさらに推進するためには、幅広い年代の地域住民が積極的に活動に参加できる仕組みづくりが必要でございます。
 そこで、都では、平成二十年度から、五つの区市町村におきまして、施設介護サポーターモデル事業を実施いたします。
 この事業は、ボランティア活動を希望する地域の住民の方々が、事前に区市町村の主催する研修を受けた後に、施設職員と緊密に協力しながら、散歩のつき合いや見守りなど、利用者に対しさまざまな支援を提供するものでございます。
 このモデル事業の成果と課題を検証した上で、今後、展開方法などについて検討をしてまいります。

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羽田空港をめぐる諸課題

質問1
 次に、羽田空港をめぐる諸課題について、空港周辺住民の思いを込めて質問をいたします。
 昨年三月、国土交通省、東京都、品川区、大田区で構成するいわゆる三者協で、羽田空港跡地の範囲と面積について合意され、昨年十月、その利活用の方向について素案が提示され、その後パブリックコメントが実施されました。今後、この羽田空港跡地利用基本計画については、今年度末までに取りまとめる予定と聞いております。
 そこでまず、この跡地の整備内容については、これから具体的な検討に入るものと考えますが、東京都として羽田空港跡地整備を今後どのように進めていくのか、基本的な考え方について伺います。

答弁1
都市整備局長
 羽田空港跡地整備の今後の進め方についてでございますが、都が、国や地元大田区等と構成するいわゆる三者協におきまして検討を進めておりまして、今年度中に跡地整備に係る土地利用の方向性を示す跡地利用基本計画を策定する方針でございます。
 この計画に基づきまして、跡地の整備を進めるためには、道路や護岸などのインフラ整備や跡地の処分、事業手法等の課題を解決し、計画の早期具体化を図ることが重要でございます。
 都といたしましては、今後、これらの課題解決を図るため、跡地利用基本計画で示した方向性に沿った積極的な取り組みを、土地所有者である国に対して強く求めてまいります。


質問2
 次に、忘れてはならないことですので再度申し上げますが、戦前、現在の羽田空港には、鈴木町、穴守町、江戸見町約二千八百九十四人といわれる方々が暮らしており、戦後のアメリカ軍による四十八時間以内での強制退去命令によってふるさとを失い、周辺地域に移り住んだ歴史があります。また、その後も、空港周辺住民は、長期間にわたってジェット機騒音に悩まされ、今なお市街地上空を飛行する左旋回飛行やヘリコプターの騒音に苦しんでおります。
 そして、今回の羽田空港跡地利用基本計画の中にも、主な留意事項として、羽田空港跡地に関する過去の経緯(強制退去の歴史など)を踏まえるとはっきり明記されております。
 私は、こうした空港周辺住民の思いや要望を、空港が整備され、よくなっていくのと一緒に、空港と共生させて、個人にではなく、まち全体を整備し、よくしていくことによって、結実させていくべきだと考えております。そして、空港跡地利用計画を検討する今がまさにその千載一遇のチャンスなのであります。
 そこで、東京都としても、こうした空港周辺住民の思いや要望をしっかりと受けとめ、実際の計画の中に反映させていくべきと考えますが、所見を伺います。

答弁2
都市整備局長
 跡地利用基本計画への地元住民要望についてでございます。
 都は、これまでも、国及び地元区と調整を行いながら、三者協の事務局として、共同調査の実施など跡地利用の検討作業を推進してまいりました。
 また、昨年十月には跡地利用基本計画素案を公表し、その後、空港周辺住民を含め、広く都民の意見を聞くため、パブリックコメントの募集を行い、寄せられた主な意見とその見解を公表いたしました。
 こうした都民の意見を参考に検討を進め、羽田空港跡地利用基本計画を取りまとめてまいります。


質問3
 三点目は、空港周辺住民の思いや要望の最も根底にある騒音解消と危機管理についてであります。
 そもそも三期にわたる羽田空港沖合展開事業の歴史を通して、一貫した最重点の目的は、騒音の解消であります。再度申し上げますが、四本目の滑走路が供用開始となって、朝七時から九時までの二時間で八十便の出発枠が確保されれば、従前に比べて十六便の増加となり、それ以外に五便の市街地上空を飛行する左旋回飛行を取りやめても、将来の航空需要に十分対処できるはずであります。
 そこで、私は、一日も早い左旋回飛行の廃止を切望するものですが、せめて羽田空港の四本目の滑走路が供用開始後、直ちに左旋回飛行を取りやめるべきと考えますが、東京都の所見を伺います。
 一方、国際化が促進され、人や物が流入することは、危険な事象が起きる確率もふえることになります。航空機事故対策の強化に加え、テロや犯罪にかかわる者の入国抑止、伝染病や小動物などの紛れ込みなど、危機回避の方策を、東京都としても国に対して申し入れてほしいと思います。

答弁3
都市整備局長
 羽田空港の航空機による騒音対策についてでございますが、羽田空港を離陸した航空機が大田区の市街地上空を通る左旋回飛行は、現在、朝の混雑時に限定的に行われております。この左旋回飛行につきまして、国は、再拡張後におきましては、運用に当たっては需要動向を考慮し、機材の低騒音化について検討することとしております。
 都といたしましては、航空機騒音を低減することは地域の人々にとって重要な課題であることから、国に対しまして、このような対策を着実に進めるよう、引き続き強く働きかけてまいります。


質問4
 四点目は、魅力あふれる水と緑のネットワークの構築について伺います。
 「十年後の東京」では、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させることがうたわれています。羽田空港は、東京の空の表玄関として、今後さらに多くの国内外のお客様がその第一歩をしるす場所であります。当然この羽田空港から東京全域に向けて、魅力あふれる緑と水辺空間を発信していく必要があります。
 現在の羽田空港跡地及びその周辺地域を流れる多摩川や海老取川護岸は、殺風景なコンクリート護岸に不法係留船の課題を抱えています。空港跡地内の護岸だけでなく、その対岸や周辺地域を含めた一体的な緑あふれる潤いと安らぎの水辺空間を整備していただくことを、ここに強く要望しておきます。
 また、空港跡地内には、東京都震災対策条例で指定された羽田や東糀谷などの地区の方々の広域避難場所が現存しております。跡地整備後は、市街地からの避難誘導路の確保を考慮して、市街地に近接した場所に緑のオープンスペースと併用して位置づけられることが望まれます。
 この緑のオープンスペースへの取り組みは、市街地や多摩川、臨海地域とネットワークすることによって大きな効果を発揮いたします。例えば武蔵野の路へ緑をつなげることも有効であると思います。羽田空港跡地に創出される緑と連携した緑のネットワークの構築について、考えをお聞きいたします。

答弁4
都市整備局長
 緑のネットワークの構築についてでございますが、跡地利用基本計画素案では、検討の基本的な視点の一つとして、市街地に隣接した水と緑のオープンスペースや、環境との共生を目指した潤いと安らぎのある空間の形成を図ることを掲げております。
 こうした土地利用の考え方は、お話のような多摩川や臨海地域における緑のネットワークの構築にとって有意義なものであると考えております。
 今後、跡地やその周辺地域の動向を見定めつつ、緑のネットワークの形成に向けて、国を初め、関係機関との連携を図ってまいります。


質問5
 五点目は、空港への交通アクセスについて伺います。
 羽田空港の持つ機能を最大限に生かすためには、当面対応可能な交通アクセスの整備だけではなく、将来を見据えて、空港機能がフル稼働した時点や追加需要にもこたえられる必要かつ十分な交通アクセスを整える必要があります。
 国道三五七号は、都市計画決定がなされているものの、東京都と神奈川県にまたがる多摩川トンネル部は未着手であり、その完成までには相当の時間を要すると思われます。このため、空港から川崎、横浜方面へ向かう大型車が大田区の市街地に流れ込み、交通混雑などの影響を及ぼしています。
 これらの大型車を削減するため、例えば並行して走る首都高速道路湾岸線において、多摩川渡河部のみ利用する車両については無料とし、交通を高速道路へ誘導するなどの方策も考えられます。
 東京都は、羽田空港周辺のアクセス道路の改善に向けて、どのように取り組んでいるのか伺います。

答弁5
都市整備局長
 羽田空港周辺のアクセス道路についてでございます。
 羽田空港の高いポテンシャルを十二分に生かすとともに、周辺市街地の道路交通の円滑化を図る上でも、アクセス道路の整備、改善が極めて重要でございます。
 このため、現在、空港に通じます環状八号線の国道一五号との交差点の立体交差化や、京浜急行線の連続立体交差化による踏切の解消などが進められております。
 さらに、都は、これまでも、お話がありました国道三五七号、湾岸道路の未開通部分につきまして、さまざまな機会をとらえて、整備促進を国に要請しております。
 今後も、引き続き、関係機関との連携を図りながら、空港周辺のアクセス道路の改善に向けまして、着実に取り組んでまいります。


質問6
 また、新空港線については、国土交通省、大田区、鉄道事業者が推進の意向を示す中で、東京都としても、地元区が設置した勉強会に参画されているとのことですが、一方で、本路線には空港アクセスとしての機能性や多額な事業費のほか、事業の採算性、線路幅の違いなどの課題があるとされており、これら課題の解決に向けた取り組みを早急に進めていくことが重要と考えます。
 そこで、本路線における現在の検討状況について伺います。
 また、生まれ変わる空港の機能や快適性をグレードアップさせるため、新たな交通アクセスとして業務貨物専用道路の新設を提案しておきます。

答弁6
都市整備局長
 ご質問の新空港線、いわゆる東急線の蒲田駅と京急蒲田駅を結びます蒲蒲線といわれる線でございますが、地元大田区では、今後の鉄道整備の動向等を踏まえ、本路線の需要や事業性につきまして検討するため、今年度から勉強会を設置しておりまして、国や鉄道事業者とともに、都もこれに参画をしております。
 勉強会はこれまで四回開催されておりまして、現在、需要予測の実施に必要な前提条件等につきまして、検討を行っております。


質問7
 最後に、人、物、仕事の機能的な受け皿となるまちづくりと地元産業界との共生について伺います。
 新たに生まれ変わる空港におり立つ人、物、仕事をいかに効率よく機能的にさばいていくかは、空港跡地及び周辺地域における重要な課題であります。
 一例を挙げれば、深夜早朝便によって貨物が持ち込まれれば、荷さばきの場所が必要となり、加工して出荷していく需要が発生します。これを自然発生的に任せていれば、処理する場所やルートが分散し、機能が低下いたします。
 したがって、今後の空港跡地及び周辺地域、臨海部の開発については、まちづくりの計画段階から、空港機能の拡充によって生じる人、物、仕事の流れを考慮して、機能的なまちづくりを進めることが重要です。また、その際、蓄積した最先端のものづくり技術や近接性を生かせる地元産業との共生についても、視野に入れていただきたいと存じます。
 以上、人、物などの受け皿となる空港跡地とその周辺地域のまちづくりについてご所見を伺って、私の質問を終わります。

答弁7
都市整備局長
 跡地と周辺のまちづくりについてでございます。
 跡地利用基本計画素案では、市街地に隣接したゾーンの土地利用の方向性につきまして、地元区に広がる高度な技術を持つ企業の集積を踏まえた産業支援や、海外と周辺市街地との文化交流を促進していくゾーンとして位置づけられております。
 こうした視点を生かしつつ、羽田空港が担う、人、物、情報の交流機能を十分に発揮させるよう、周辺地域のまちづくりを進めていくことが重要であると考えております。
 都といたしましては、このような認識を踏まえながら、区で策定中の基本構想に基づく地域のまちづくりに対しまして、必要な支援を実施してまいります。

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