小沢昌也(民主党)
質問1
初めに、中小企業対策について伺います。
石原知事の産業振興策は、イノベーションが期待される産業を重点的に育成し、東京の産業を牽引することに重きをなしていることに特徴があります。もちろん、私の地元墨田区にも、世界に誇り得る中小企業があるのも事実です。しかしながら、この間の原油高を初めとする原材料の高騰に加え、建築確認のおくれによる住宅着工件数の激減、そして、年金問題を初めとする将来への生活不安や、株安を背景とした消費者心理の冷え込みなどから、多くの中小企業が苦しんでいるのが現状です。
そこで、東京の産業を牽引する重点産業の育成だけでなく、中小企業の経営基盤を強化し、産業全体の底上げを図ることについても積極的に取り組んでいくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
答弁1
知事
産業全体の底上げについてでありますが、底上げといっても非常に相対的な問題でありまして、いうにやさしいが、行うに非常に難しい問題だと思います。世界が物理的、時間的に非常に狭小になりました現代で、日本の経済も他国の経済動向に容易に大きく振り回される時代になりました。しかし、何であろうと、中小企業の健全な成長なくして活力ある豊かな東京の実現はございません。
都は、これまでもベンチャー企業の育成や航空機産業への参入支援など、東京の産業を牽引する中小企業を支援する一方、金融支援や事業再生支援など、厳しい環境に置かれている中小企業に対するさまざまな施策を講じてもまいりました。
今後とも、中小企業が持てる力を十分に発揮できるよう、基盤整備の強化に向けた取り組みをさまざまに積極的に展開し、東京の産業の底上げを図っていきたいと思っております。
質問2
知事は、施政方針の中で、中小企業振興公社に仮称下請取引紛争解決センターを設置し、中小企業の受注機会の確保や下請取引の適正化を図っていくと述べられました。これは、都議会民主党が昨年二月の代表質問で述べた施策の具体化を図るものとして評価します。しかし、このセンターが下請取引の適正化を図っていくためには、周知の徹底や体制の充実など、運営面での強化が欠かせません。
私は、中小企業へのPRや相談の積み重ねによる対策の強化、体制の整備など、下請取引の適正化を積極的に進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
産業労働局長
下請取引の適正化についてであります。下請取引の適正化は、中小企業にとりまして、経営の安定を図る上で重要な課題であると考えております。そのため、都は、これまでも東京都中小企業振興公社を通じまして、親企業や下請企業に対し、講習会などによりまして、下請取引適正化の遵守を促しております。
さらに、平成二十年度には、取引における紛争を早期に解決するセンターを設置するとともに、巡回相談体制を充実するなど、下請取引の適正化に努めてまいります。
質問3
また、新規学卒者の大企業志向などから、中小企業は、人材確保の面についても大企業と比べて不利な立場にあり、少子化が進むことで、その傾向がますます強くなるものと思われます。今後、中小企業の人材確保を進めていくためには、例えばインターンシップの充実などにあわせて、中小企業の現場で実際に仕事を体験できる機会を拡大していくことや、多様な人材を受け入れる中小企業の体制整備を支援していくことが必要です。
また、中小企業の魅力をさらに多くの人たちに発信していくために、NPOなどと連携しながら、多様で戦略的な展開を図っていくことが望まれます。
そこで、中小企業の採用支援に向けて、東京都は今後、どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
答弁3
産業労働局長
中小企業の採用支援についてですが、多くの中小企業は、大企業に比べまして、採用に関するノウハウや採用事務を行う体制が十分ではありません。一方、就職をしようとする若者におきましては、中小企業に関する情報を得る機会が少なく、中小企業を就職先に選択肢として考えていないケースも多いと聞いております。今後、都といたしましては、中小企業の魅力を総合的に発信するプロジェクトを民間と連携して推進しますとともに、中小企業向けに、採用ノウハウを提供するセミナーの実施やマニュアルの作成を行いまして、中小企業の人材確保を支援してまいります。
質問4
中小企業の事業承継支援について、国においては、平成二十年度税制改正大綱で、取引相場のない株式等の課税価格の八〇%相当の相続税を猶予することが盛り込まれましたが、税制以外の課題も残されています。そのため、税務や法務などさまざまな分野で、実務の知識を持った専門家による中小企業のサポート体制の充実も必要と考えます。
昨年二月の我が会派の質問に対し、都は、研究会を設置して事業承継の仕組みづくりを検討していくと答弁しましたが、その後の取り組みについて伺います。
答弁4
産業労働局長
事業承継の取り組みについてでありますが、都は、本年度、有識者による研究会を開催いたしまして、中小企業の事業承継の課題について議論をしてまいりました。研究会では、円滑な事業承継のための早期準備や計画的な後継者育成などの必要性が示されております。
研究会における議論を踏まえまして、都は、平成二十年度より、普及啓発から相談対応、後継者育成までを行う事業承継・再生支援事業を実施してまいります。
質問1
次に、震災対策について伺います。
東京都は、「十年後の東京」で掲げた、住宅の耐震化率九〇%以上とする目標の達成に向け、昨年十二月に民間建築物等の耐震化促進実施計画を策定し、向こう三カ年の年次計画を示しています。この中では、平成二十七年度までに、過去の実績を含め、木造住宅については、耐震診断が計五万件、耐震改修は計二万二千件、また、マンションの耐震改修は計五百件で二万戸の実施が目指されています。
しかし、都議会民主党がこれまで指摘してきたように、平成二十七年度までに住宅の耐震化率を九〇%以上とするためには、自然更新を除いて、約三十四万戸の耐震化が必要であり、目標と計画の乖離が明らかであります。
そこで、民間建築物等の耐震化促進実施計画で示された住宅の耐震化の計画量で、平成二十七年度末に住宅の耐震化率が九〇%以上達成できる根拠について所見を伺います。
答弁1
都市整備局長
住宅の耐震化率の目標達成についてでございます。
都は、「十年後の東京」の実現に向けまして、建物の耐震化を進めるため、昨年末に実施計画を策定し、目標達成への具体的道筋を示しました。この計画に基づきまして、住宅所有者の意識啓発や耐震化に取り組みやすい環境の整備、助成の実施など、施策を総合的に展開し、住宅の耐震化を積極的に促進してまいります。
また、区市町村におきましても耐震改修促進計画の作成が進んでおりまして、都の支援制度の拡充とも相まって、取り組みの一層の進展が図られるものと考えております。
こうした積み重ねによりまして、今後は住宅の耐震化が実施計画に沿って進捗するものと見込んでおります。
質問2
都は、今年度緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化のためのモデル事業を三路線、約三十八キロメートルで実施し、来年度からは緊急輸送道路全路線、約一千九百七十キロメートルに拡大することが予定されています。
しかし、今年度の実績は、耐震診断及び補強設計に対する助成に申請がわずか九件、耐震改修に至っては全く利用されていません。この事実について、実績が上がらなかった要因をどうとらえ、今後の事業拡大に向けてどのように取り組んでいくのか所見を伺います。
答弁2
都市整備局長
緊急輸送道路沿道の建物の耐震化についてでございますが、今年度のモデル事業は、来年度以降の事業を効果的に進めるため、建物所有者の意向を把握し、支援のあり方などにつきまして検討を行うことを目的として実施いたしました。
今回、沿道の対象建物約五百棟の所有者に対しまして意向調査を行った結果、耐震診断や耐震改修をまだ実施していない建物のうち、約七割の所有者が、今後の実施について前向きの意向を持っていることがわかりました。来年度からは助成の対象を全路線に拡大するとともに、区市町村とも連携して、所有者への働きかけや支援を強めることとしております。今後、事業の周知を図ることによりまして、着実に助成の実績は伸びていくものと見込んでおります。
質問1
次に、土壌汚染対策について伺います。
都議会民主党では、豊洲地区の土壌汚染対策に積極的に取り組んでいるところでありますが、私は、視点を変えて、土壌汚染があるために土地の取引や土地利用が進まない、いわゆるブラウンフィールドといわれる問題について、幾つか質問したいと思います。
私の地元墨田区にも、メッキ屋さんやまたクリーニング屋さんといった、シアンや有機溶剤などを使って仕事をしている人たちが多くいます。しかし、例えばこれらの人たちが、廃業したい、あるいは別の事業を展開したいと思っても、土壌汚染の対策費用が高くつくために、建てかえもできない、転売もできないという状況に陥っているのです。
平成十八年五月、東京都は、土壌汚染に係る総合支援対策検討委員会を設置し、土壌汚染対策を促進するための仕組みづくりを検討してきましたが、いまだ報告書を取りまとめるに至っておりません。国においては、昨年六月に、土壌環境施策に関するあり方懇談会が設置され、この間、積極的な議論がなされていると聞いていますが、東京には東京の地域性、例えば敷地が狭量なこと、土地利用の経済性が高いことなどを踏まえて、施策を積極的に展開していく必要があります。東京都の検討委員会の取りまとめの時期と施策の方向性について、見解を伺います。
答弁1
環境局長
土壌汚染に係る総合支援対策検討委員会についてでございますが、本検討委員会は、土壌汚染対策を促進するため、環境保全を初め、まちづくり、不動産鑑定、金融等の学識経験者により構成しており、環境保全はもとより、都市の健全な発展や地域の活性化等の幅広い視点で、平成十八年五月から検討を行っております。
その後、環境省、経済産業省及び国土交通省におきましても、それぞれの立場から、土壌汚染対策の促進のための検討が進められております。
本検討委員会では、現在、これら国の検討状況を参考としつつ、本年度末の取りまとめに向け検討を重ねております。
質問2
また、法律ができる前から操業していた中小零細事業者の人たちに、土壌汚染対策法ができたからといって、一方的に汚染者負担の原則を押しつけるだけでは、なかなか問題は解決しません。私は、問題解決の第一歩として、まずは都内にどのくらい汚染地区があり、これまでどの程度処理されてきたかなど、その土地の情報を都民と行政が共有していく必要があると考えています。
現在、東京都には指定地区の台帳があるものの、データベース化されていないことから、十分に活用できる仕組みになっていません。一度対策を講じた土地であっても、新たな土地購入者がそれを知らずに再調査してしまうという不合理な話も聞いています。私は、土壌汚染に関する調査結果や対策措置に関する情報については、その情報を集積、保存して、都民に対しても情報提供できる仕組みづくりに取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
環境局長
情報提供できる仕組みづくりについてでございますが、現在、土壌汚染対策法に基づく指定区域に関しましては、汚染状況を記載した台帳の閲覧が可能であり、また、都の環境確保条例による土壌汚染に関する届け出内容につきましては、情報公開条例に基づき、調査結果や対策内容の情報を開示しております。
検討委員会では、将来にわたって適切かつ効果的な土壌汚染対策を講じるためには、過去の調査や対策などに係る情報のデータベース化を進め、より積極的な情報の提供をするべきとの意見が出されております。今後、検討委員会からの最終的な報告を踏まえ、対応してまいります。
質問3
また、都内では、東京都環境確保条例で定める対象外の、三千平方メートル以下の土地の売買や再開発などの際において、実際に民間ベースで土壌汚染調査やその処理が行われています。しかしながら、これらの調査結果や汚染土壌が適正に処理されているのかなどの実態は、法や条例の対象外であるために把握されていないのが現実です。
そこで私は、こうした法や条例の対象外である汚染土壌の実態や、搬出された土壌が適正に処理されているかなどを調査し、その実態把握に取り組んでいくべきだと考えますが、見解を伺います。
答弁3
環境局長
汚染土壌の実態把握についてでございますが、環境省の調査によりますと、全国の土壌汚染対策件数のうち、約二割が土壌汚染対策法や条例に基づく対策であり、その対策により生じた搬出土壌の量や処理方法などは正確に把握されております。一方、対策件数の残り八割は自主的な対策であり、搬出土壌の量などについての国における推計値はあるものの、詳細な情報は把握されているとはいえない状況にございます。このため、今後、自主的な対策に係る汚染土壌搬出実態調査の実施を検討してまいります。
質問4
土壌汚染対策法では、土地所有者の負担能力が低い場合に限って、土壌汚染対策基金による助成を行うことができますが、その適用要件が余りに厳しいため、有効に活用されていないといわれています。また、この土地所有者だけでなく、汚染原因者の負担能力が低い場合には、この制度の対象とすべきであると考えます。
私は、原因者負担も当然必要ではありますが、それを追求する余り、東京の土地取引や土地利用が停滞し、結果として東京の活力にマイナスとなるようなことは避けなければならないと考えています。場合によっては、東京都が東京の活力向上のための独自の基金を設置することも考えられるのではないでしょうか。
そこで、負担能力の低い汚染原因者に対する施策を講じることで、土地取引の促進、土地の有効利用を進め、東京の活力向上に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁4
環境局長
最後に、負担能力の低い汚染原因者に対する施策についてでございますが、国が平成十四年に設置した土壌汚染対策基金は、汚染者負担の原則に立ち、助成を行う対象を、汚染原因者ではない土地所有者で、かつ負担能力が低い場合に限定していることなどから、ほとんど活用されていない状況にあります。このため、都では、基金が有効に活用されるよう負担能力の低い汚染原因者に対しましても対象とするよう、これまでも国へ提案要求を行っております。
質問1
最後にお伺いいたします。
都立横網町公園は旧陸軍省被服廠の跡地で、現在の両国国技館の北東約五百メートルに位置しております。大正十二年九月一日の関東大震災の際は、当時公園として造成中であった被服廠跡に避難した約三万八千人の方々がこの地で亡くなられました。また、昭和十七年四月十八日から終戦まで続いた東京空襲において、東京は焼け野原と化し、中でも昭和二十年三月十日未明に、現在の墨田、江東、台東の各区を中心とした下町地区を襲った爆撃は、八万人を超える多くのとうとい命を奪いました。震災遭難者を供養するため、昭和五年、公園内に震災記念堂が建てられ、現在は東京都慰霊堂として、関東大震災の遭難死者約五万八千人及び空襲犠牲者など十万五千人、延べ十六万三千余柱の遺骨が納められています。今日では財団法人東京都慰霊協会により、毎年三月十日と九月一日に慰霊法要が行われ、皇室を初め各界からの代表者や一般の方々が参拝されているところです。
私は、関東大震災、東京大空襲の二度の大きい災いを受けた東京都こそ、率先して、その悲惨な史実を風化させることなく、二度と戦争という悲劇を繰り返さないよう、平和の大切さを伝えるとともに、地震を初めとする自然災害に対する備えの重要性を広く後世に発信していくべきと考えます。
また、公園内には、震災復興事業を記念するため、昭和六年に竣工した復興記念館がありますが、周知不足のためか、来館者は年間三万人程度にすぎません。そこで、復興記念館について、両国エリアを訪れる観光客を含め、より多くの方々が訪れやすいよう、展示や案内方法に工夫を加え、広報を充実すべきと考えますが、所見をお伺いし、私の質問を終わります。
答弁1
建設局長
横網町公園の復興記念館についてでありますが、復興記念館では、関東大震災や東京大空襲などの惨事を後世に伝えるため、写真や絵画、遺品などの資料を展示しております。都では、これまで、保管資料を活用した定期的な展示品の入れかえ、解説板の設置、照明の改良など、展示方法の改善に努めてまいりました。
今後は、来館者の理解がより深まるよう、解説内容の充実に取り組むとともに、ボランティアによるガイドを新たに実施してまいります。
また、多くの方々に復興記念館を訪れていただけるよう、周辺の文化施設などと連携し、PRに努めてまいります。