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  4. 第4回定例会 一般質問
  5. 鈴木隆道(自民党)

教職員人事権の区市町村移譲
目黒本町地区のまちづくり推進

鈴木隆道
鈴木隆道(自民党)

都のあるべき姿

質問1
 まず、都と国のあり方について伺います。
 二十一世紀は、世界人口の半数以上が都市で生活する都市の世紀であります。都市の中でも世界有数の大都市である東京は、世界に向けた日本の顔であり、日本招致を目指す二〇一六年のオリンピック・パラリンピックは、環境と調和した快適な都市環境などの二十一世紀の都市モデルを世界に示す、またとない機会でもあります。
 さまざまな都市問題、例えば業務部門からのCO2排出量増大などの環境問題、慢性的な交通渋滞など、世界の大都市共通の課題であり、都市間の連携による解決が求められています。東京はこうした取り組みの先駆者であり、人材育成や技術支援など、国際社会からの期待も大きくなっています。
 とりわけ、発展目覚ましいアジアとの関係は、アジア大都市ネットワーク21では、東京のリーダーシップのもと、地球温暖化対策、感染症対策、危機管理対策などの課題解決に取り組んでまいりました。都がアジアの諸都市をリードして連携を強め、取り組みをさらに強力に展開していくべきであります。
 また、近年、国際的な都市間競争が激化する中、都市の活力の維持、向上が国家の発展をも左右する時代となっています。東京は日本の首都であり、都には、この東京を発展させ、日本全体のさらなる発展を牽引していくことが求められています。
 このように、都はこれまでも国に先んじた施策を展開し、国際的な都市間連携、我が国の活力向上に貢献してまいりました。都市の果たす役割が増大する中、首都東京が明確な戦略を持ち、大都市の現状に根差した発想力と実行力で、山積する課題を解決していくことが今後ますます重要になると考えます。
 一方、我が国における国と地方の役割分担の枠組みについては、平成十二年の地方分権一括法において一定の整理がなされましたが、国が地方に事細かに関与する実態は残っており、改革としては不十分であります。今も地方分権改革推進法に沿った議論が続けられておりますが、既得権益にとらわれた国の各省は、国と地方の事務配分の見直しについてゼロ回答を繰り返すなど、極めて後ろ向きの対応に終始しています。
 さきの定例会の代表質問で、我が党の高島幹事長は、都は、東京の自治の将来像を含めたグランドデザインを明らかにするべきと指摘してきたところであります。東京の自治のあり方を都が示していくことも必要であります。
 国が画一的な枠組みやさまざまな関与を通して地方を縛る枠組みは、都市の時代に全くそぐわないものであります。首都東京の持つポテンシャルをさらに発揮できるようにするためには、中央集権体制を変革し、都が、大都市特有の課題解決や、国際社会、特にアジアに貢献する先導的な取り組みをより迅速かつ効果的に進められるようにする必要があると考えますが、改めて、都と国のあり方について知事の所見を伺います。

答弁1
知事
 近代国家の規範であります憲法、明治憲法でありますが、発布される前に既に発足しました太政官制度以来、綿々と続いてきた中央集権の国家体制は、戦後の復興期から高度成長期においては、我が国の発展を支える役割を果たしてきましたが、文明の成熟期を迎えた今日、何もかもが全国一律に国が差配をする時代ではもはやないと思います。
 東京はまさに国力の源泉でありまして、人材や企業の集積の優位性を生かした取り組みを進め、諸課題を迅速かつ効果的に解決していかなければ、東京のみならず、我が国の将来すら危ぶまれると私は思っております。
 しかし、国の政治が混迷を続ける中、霞が関はどうも危機感に乏しく、省益墨守に走り、国の財政再建のため、無定見にみずからのツケを地方に回すばかりであります。
 その例が、先般の法人事業税を一方的に変えまして、この東京からとにかく三千億の金を収奪していくという我慢ならない話でありますが、都はこれまでも、未来を見据えた先進的な施策を展開してまいりました。アジアを初めとする諸都市と共同して、地球温暖化対策など、世界の大都市共通の課題解決にも取り組んできた実績もございます。ゆえにも、C40東京会議を開催し、十三の共同行動に合意するという具体的な、要するに目的を定めて、それに合意することができました。
 都市の活力は、まさに文明社会を発展させる原動力であると思います。国は、国と地方の役割分担を明確にしまして、首都東京のかじ取りに必要な権限と財源とを都にゆだねるべきであると思っております。
 今後とも、旧弊な国家官僚の壁を打破すべく、都議会の皆様と力を合わせて地方分権の闘いを進めていくつもりでございます。


質問2
 一方、区市町村については、全国的に市町村合併が進展し、道州制の議論が行われている中、現行区域にとらわれない、より広い視野から、基礎的自治体としてのサービス提供のあり方を論じることが今まさに必要となっております。合併の真摯な議論を通して、これからの区市町村の展望を切り開いていくべきであると考えます。
 都区のあり方検討において、特別区は合併の議論には消極的なようでありますが、東京の自治のあるべき将来像を踏まえ、特別区の再編を実現することが必要であると考えます。ただ、現実には、差し迫った財政事情等も、また、沸き上がる都民、区民の声もまだそう多くはなく、しかも、厳然として公選の二十三人の区長と区議会があることを勘案しますと、その実現にはなお相当の期間が必要であると考えます。
 しかし、特別区は人口や企業が高度に集積し、連担した地域であるため、区域をまたがる広域的な行政需要、例えば区境の商店街振興などがあり、早急な対応が必要です。この点では、多摩の市も全く同様であります。
 このような基礎自治体の区域を超える行政需要に対応する手法として広域連合制度がありますが、この制度は、都議会の行財政改革基本問題特別委員会の報告書にもあるとおり、処理する事務が構成団体のそれぞれの意思に拘束されるなど、使い勝手が悪いとの指摘もあり、十分な研究が必要な状況でもあります。
 そこで、基礎自治体の区域を超える行政需要に対しては、まず、特別区間及び市間の連携を強化していくことが重要であり、それこそが特別区及び市の再編につながるものと考えますが、このような基礎自治体間の連携強化について、都の所見を伺います。

答弁2
総務局長
 基礎自治体間の連携強化についてお答えいたします。
 東京のように市街地が連担し、生活圏や経済圏が広がっている中にあっては、ご指摘のような区境の商店街振興など、区域を超える課題に対応するために、区市町村間の連携は重要であり、これにより行政サービスがより一層充実向上するものと考えております。
 こうした視点は、区市町村の区域の再編の検討に当たっても考慮すべきものでございまして、都としても基礎自治体間の連携強化について適切に対応してまいります。

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教職員の人事権の区市町村への移譲

質問1
 次に、都から基礎自治体への権限移譲に関連して、教育行政のあり方について伺います。
 現在、区市町村立小中学校の教職員の人事権と給与負担は、より財政力が安定し、広域的な人事配置が可能な都道府県が受け持つ仕組みとなっています。確かに、こうした仕組みが義務教育の質の確保を図り、国民の教育水準を向上させることで、戦後の高度経済成長と豊かな国民生活の実現に寄与したことは事実であります。
 しかし、現在、教育には、子どもたち一人一人の個性を伸ばすことが求められています。公立学校においても、例えばスポーツに力を入れる学校、農業や自然体験を重視する学校など、地域の特性を生かした特色ある学校づくりをより一層行っていくべきと考えます。
 私は、昨年の第四回定例会で、都道府県が教職員の人事権を有する現在の仕組みが、教職員の区市町村への帰属意識を失わせている原因となっていると指摘をいたしました。区市町村側も、優秀な人材の確保や育成について、都道府県任せになっているのではないでしょうか。
 こうした中、さきの都区のあり方検討委員会幹事会では、法改正が前提であるなど幾つかの条件はつきながら、小中学校教職員の人事権を都から区へ移管する方向で検討していくことで、都区は基本的に合意をいたしました。区市町村が地域に根差した特色ある学校教育を展開する上で、大きな前進であります。
 一方、国ではことし五月、一度は先送りとなった感のある教職員の人事権の移譲について、地方分権改革推進委員会が、都道府県から中核市以上の自治体に市町村立小中学校の教職員の人事権を移譲すると勧告をいたしました。
 この勧告を受けて、現在、国の検討が行われていますが、人事権の範囲や給与負担のための財源などで課題が多いように思われます。例えば、今の政令市のように、教職員の人事権のみ移譲され、給与負担の移譲とその財源確保がなされなければ、区市町村の教育施策の自由度は乏しいままではないでしょうか。特色ある学校教育を展開するためには、人事権の移譲に当たって、財源確保を伴った給与負担の移譲まで実施すべきではないでしょうか。
 そこで、教職員の人事権の区市町村への移譲について、改めて都教育委員会の見解を伺います。

答弁1
教育長
 教職員の人事権の区市町村への移譲についてお答えを申し上げます。
 義務教育につきましては、本来、その実施主体として区市町村が責任を負うべきであり、教職員の人事権の行使と給与の負担につきましても、区市町村が行うべきであると思います。
 このため、都教育委員会としては、教職員の人事権については、必要な法改正がなされた上で、すべての区市町村に対して、給与負担とあわせて移譲すべきであると考えております。その際、採用や異動、昇任等について、区市町村間の不均衡を生じさせないための広域的な調整の仕組みを整備するとともに、区市町村が給与負担をするための適切な財源確保が不可欠であるというふうに考えております。

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連続立体交差事業の推進

質問1
 次に、東京都における連続立体交差事業の推進について伺います。
 東京都における鉄道は、明治維新以降の近代化に伴い、ほぼこの百年で、世界にも類を見ない極めて高密度なネットワークが形成され、その多くが道路と平面交差する形で整備が進められてまいりました。
 その一方、昭和三十年代後半から始まった高度成長期以来、本格的なモータリゼーションが到来しており、このような都市の発展過程から、今日における踏切問題が顕在化してきたものであります。
 さて、現在の東京を見ますと、今や世界に名立たる国際都市として、その地位を確立はしておりますが、パリやロンドンの踏切数が二十カ所以下であるのに対し、都内にはいまだ千百六十カ所もの踏切が存在しております。しかも、このうちの四分の一が、ピーク一時間当たりの遮断時間が四十分以上のあかずの踏切でもあります。
 数多くの踏切は、東京の最大の弱点である交通渋滞や、市街地の分断による都市活力の低下などの要因となっており、踏切問題はまさに二十世紀の負の遺産でもあります。首都東京を快適で利便性の高い都市にしていくためには、その抜本的な解決が不可欠であります。
 一昨年、私の地元である東急目黒線の目黒駅から洗足駅間では立体交差事業が進められ、十八カ所の踏切が除去されました。その結果、補助二六号線の慢性的な交通渋滞も解消し、西小山駅での駅前広場の整備が進むなど、地域が活性化をしてきております。
 私は、このように、連続立体交差事業が地域に対して非常に効果の高い事業であると認識をしております。現在、道路整備の財源をめぐり、さまざまな議論がされておりますが、連続立体交差事業を遅延させることなく、一層強力に推進していくべきものと考えます。
 そこで、都が進めている連続立体交差事業の取り組みについて改めて伺います。

答弁1
建設局長
 連続立体交差事業の取り組みについてお答えいたします。
 この事業は、数多くの踏切を同時に除却することにより、交通渋滞や地域分断を解消し、地域の活性化にも資する極めて効果の高い事業であり、都が事業主体となり、道路整備の一環として道路特定財源により実施されております。
 これまで東急目黒線など三十三カ所で事業を実施し、二百九十八カ所の踏切を除却してまいりました。現在、JR中央線など八路線九カ所で事業を進めており、平成二十七年度までにさらに百八カ所の踏切を除却する予定でございます。
 また、新規箇所については、踏切対策基本方針の鉄道立体化の検討対象である二十区間のうち七区間を事業候補区間に選定し、このうち、新規着工準備採択された西武新宿線中井駅から野方駅間と、京王線代田橋駅から八幡山駅間の二区間の事業化に向けて国と協議を進めるとともに、JR埼京線十条駅付近など残る五区間につきまして、着工準備採択に向けて取り組んでいるところでございます。
 引き続き、都議会のご支援をいただいて、東京の道路整備に不可欠な財源を従前以上に確保し、区市や鉄道事業者と連携し、連続立体交差事業を一層推進してまいります。

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目黒本町地区の補助四十六号線

質問1
 次に、目黒本町地区の補助四六号線の整備について伺います。
 木造住宅密集地域である目黒本町地区において、防災性の早期向上は喫緊の課題であります。当地区周辺では、東急目黒線の地下化を契機に、西小山駅や武蔵小山駅周辺での基盤整備が進む中、地元まちづくりの機運も高まっております。
 一方、両駅の中間に位置する目黒本町地区では、狭小宅地や複雑な権利関係など、木密地域特有の課題を抱え、また、当地区の屋台骨となる都市計画道路補助四六号線については、計画決定後六十年以上もの間、事業化されていないなど、まちづくりは停滞をしている状況にあります。
 周辺のまちづくりが進む中、当地区のまちづくりについても、機を逃すことなく推進していくことが必要でありますが、そのためには補助四六号線の早期整備が不可欠でもあります。このため、昨年、地元まちづくり協議会と関係町会は、東京都に対し補助四六号線の早期整備の要望書を提出いたしました。
 そこで、目黒本町地区の補助四六号線の整備について、都の認識及び今後の取り組みについて伺います。

答弁1
都市整備局長
 目黒本町地区の補助第四六号線についてでございますが、本路線は、木造住宅密集地域の重点整備地域に位置しておりまして、災害時には延焼遮断帯ともなる重要な道路でございます。現在、東急目黒線の地下化に伴いまして、西小山駅周辺などで駅前広場などの整備が進み、本路線沿道においてもまちづくりの機運が高まっていると承知しております。
 昨年、当地区が「十年後の東京」への実行プログラムに沿道一体整備事業の新規地区として位置づけられたのを受けまして、地元説明会や個別相談会を開催してまいりました。
 本路線の整備により、防災性や駅へのアクセスが向上するほか、周辺道路とのネットワークが形成され、まちづくりとの相乗効果も期待できます。
 今後とも、地元要望等を踏まえ、地元区と連携して、早期の事業化に向け積極的に取り組んでまいります。

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