大西由紀子(ネット)
質問1
初めに、緑の保全について伺います。
東京の環境を考える上で、緑の保全と創出は大変重要な課題であり、これまでもさまざまな規制と誘導の施策を実施してきました。二〇〇七年一月には都庁内に全庁横断型組織である緑の都市づくり推進本部を立ち上げ、六月には緑の東京十年プロジェクト基本方針を発表、あらゆる手法を用いて緑の保全、創出を行うとしています。意欲的な取り組みに期待するものです。
改めて、緑の都市づくりに向けた知事の決意を伺います。
答弁1
知事
緑の都市づくりについてでありますが、緑を眺めて憩わない人はいないと思います。水と緑の回廊に包まれた美しいまち東京なるものを復活させるためには、新たな緑を創出するとともに、今ある緑も保全する強力な取り組みが必要であると思います。
そのため、都は現在、街路樹の倍増や校庭の芝生化などに取り組むとともに、規制や誘導によりまして民間の緑を保全、創出するなど、区市町村とも連携しながら、多角的な取り組みを進めております。
また、企業の協力を得て多摩の森林整備を進めるなど、都民、企業が主人公となる緑のムーブメントを展開し、東京の総力を挙げて、緑あふれる都市の実現を目指していくつもりであります。
質問2
緑の重点施策の一つ、校庭の芝生化は、都内の全公立小中学校の実施で、三百ヘクタールの緑の確保をするとしています。教育庁としては、学校の芝生化に関してどのように評価し、支援していこうとしているのか、見解を伺います。
答弁2
教育長
学校における芝生化についてでございますが、校庭を芝生化することにより、子どもたちは、けがを恐れず思い切り活動できるようになるとともに、自然環境に対する感性をみずからはぐくむようになるなど、情操教育の面でも効果が期待できます。
都教育委員会はこれまでも、区市町村と校庭芝生化に係る意見交換を行いますとともに、研修会を実施し、芝生化を進めていく上での課題や対応策について、先行的に芝生化に取り組んでいる自治体の事例を紹介するなど、情報提供を行ってまいりました。
今後は、これまでの取り組みに加えまして、地域の人材を活用した活動事例の紹介など、学校と地域が協働した校庭芝生化の体制づくりを支援しますとともに、関係局と連携し、芝生化の教育上の効果やメリットなどについて区市町村に対し一層の周知を図り、校庭芝生化を強力に推進してまいります。
質問3
三カ年のアクションプランでは、二百六十校、五十ヘクタールの芝生化の実現目標を掲げており、そのため、環境局は教育庁とも連携し、学校を訪問しながら懸命にPRに努めているとのことですが、これまでの都における公立小中学校の校庭芝生化の進捗状況と、今後の取り組みについて伺います。
答弁3
環境局長
校庭芝生化の取り組みについてでありますが、都は区市町村に対し、整備費等の補助、専門家の派遣などを行うとともに、芝生化を広く都民や学校関係者に周知するため、イベントの開催など、さまざまなPR活動に努めております。
また、学校現場では、地域などと協働した活発な芝生の維持管理活動などが行われており、昨年度末現在、公立小中学校では七十八校で校庭芝生化が実現しております。
今後、芝生化を一層推進するため、こうした学校現場の取り組みを広く普及させていくとともに、芝生化を支える企業等で構成する東京芝生応援団による支援を拡充するなど、強力に取り組みを進めてまいります。
質問4
しかし、地域の学校では厳しい現状があります。市区町村の財政難で学校運営費が削減されてきている中で、東京都の芝の専門的維持管理費の二分の一支援が終了する四年目以降の維持費を捻出していけるか、見通しがつかない状況では、校庭の芝生化はなかなか進みません。自治体からは継続した財政支援が求められています。
「十年後の東京」実行プログラム二〇〇八の改定が行われると聞いていますが、校庭の芝生化を全校に着実に広げるためには、知事本局がどうリードしていくかが問われています。見解を伺います。
答弁4
知事本局長
芝生化に関する知事本局の役割についてでございますが、小中学校の校庭の芝生化は、「十年後の東京」で掲げた緑あふれる都市を実現する上で重要な課題であり、実行プログラム二〇〇八では、新たに専門的維持管理の支援や、先月発足いたしました東京芝生応援団の取り組み、管理しやすい品種の調査研究など、学校現場が芝生化に着手しやすいよう、総合的な支援策を打ち出しました。
校庭芝生化は、子どもたちが体を動かす喜びを味わえるなど、大きな効果があることから、今後三年間で二百六十校の校庭芝生化という目標達成に向け、関係局と連携しながら、総合調整役として取り組んでまいります。
質問5
二〇〇三年のみどり率は、区部約二四%、多摩地区約七二%で、ここ五年間で、区部で一ポイント、多摩部で二ポイント減少しています。東京都は、海の森、街路樹倍増計画、花粉の少ない森づくり、校庭の芝生化など、緑の再生に力が入っていますが、何といっても地域では、今ある雑木林や屋敷林への評価が高く、いかに既存林を残すかがまちづくりには欠かせない視点です。
地域での緑地保全の制度として、都市緑地法に基づく特別緑地保全地区の指定があります。区市町村が主体となって取り組む区域の中での開発行為が不許可となった場合、土地所有者は区市町村に買い取り請求ができますが、その場合、国から三分の一の補助金が出るものの、残りの三分の二については区市町村の負担であり、この負担が特に特別緑地保全地区の指定をちゅうちょさせている一因です。
二十三区では、都市計画公園として位置づけることで都区財政調整交付金や都市計画交付金でほぼ一〇〇%の資金が調達できますが、財政状況の厳しい多摩地区では、買い取り請求に応じることが困難で、特別緑地保全地区の指定が進んでいません。既存樹林が残っている多摩地区でこそ、この指定を推進すべきと考えます。
そこで、今後、多摩地区での特別緑地保全地区の指定を促進するために、都としてどういった取り組みを進めていくのか、伺います。
答弁5
都市整備局長
特別緑地保全地区の指定についてでございますが、東京に残された貴重な緑を次の世代に引き継いでいくためには、都市計画の規制手法を活用することにより、良好な樹林地を民有地のまま保全していくことが有効でございます。
お話の特別緑地保全地区は、相続税等の優遇措置を備えた制度であることから、現状凍結的な保存ができることを特徴としており、多摩地区でも最近五年間で四十五ヘクタールの指定を行ってまいりました。
さらに指定を促進していくためには、緑の現状を十分に把握した上で、望ましい緑のあり方や取り組みの方向性を明らかにすることが必要でございます。現在、区市町村と共同で緑確保の総合的な方針の策定を進めており、この中で、特別緑地保全地区の活用などについて検討してまいります。
質問1
次に、臨海副都心開発事業について伺います。
臨海副都心開発は、三会計統合、関連第三セクターの破綻とホールディングスの設立など、事業環境が悪化する中で、当初のもくろみとは異なる対応を余儀なくされてきました。この事業は平成二十七年に完成するということですが、現時点における収支はどのような状態であるのか、伺います。
答弁1
港湾局長
臨海副都心に関しますご質問にお答え申し上げます。
初めに、臨海副都心開発の収支についてでございます。臨海副都心は、先行的に広域交通基盤や地域内都市基盤の整備を行い、投資資金をその後の土地処分等の収入で賄う仕組みで開発してございます。開発着手から基盤整備の約九割が完成いたしました平成十九年度末までに、臨海地域開発事業会計が投資してまいりました資金は約一兆一千九百億円でございます。一方、土地処分等の収入は、平成十九年度末までで既に約七千七百億円に達してございます。
平成十八年三月に「臨海地域開発財政基盤強化プランの更なる取組み」を策定いたしまして、まちの概成に向け、土地処分の促進策や収支試算をお示しいたしました。現在、これに沿って開発を着実に進めておりまして、平成二十二年度までの土地処分が決定しているものだけでも約二千六百億円の収入が見込まれることから、収支のバランスは十分図れるものと考えてございます。
質問2
世界同時不況の中で、臨海副都心開発への影響が懸念されています。東京の不動産市況も冷え込んでいるといわれますが、臨海副都心開発にはどのような影響が出ているのか、伺います。
答弁2
港湾局長
臨海副都心開発への不動産市況の影響でございますが、サブプライムローン問題が顕在化した昨年八月以降、有明北地区で応募がなかったケースも一件はございましたが、青海地区北側を中心に、ビジネス拠点や商業・文化施設など、八件の進出事業者を決定しており、着実に土地処分が進んでございます。
これは、臨海副都心の成熟に伴う企業の集積、都心への近接性、羽田空港国際化など、この地域の持つポテンシャルが高く評価されているものと考えております。
不動産市況全般を見れば不透明感が増してございますが、進出を希望する企業等からの引き合いや問い合わせは続いており、今後も、バブル経済崩壊後の厳しい時期を乗り越えて開発を進めてまいりました経験も生かして、社会経済状況の変化に適切に対応し、開発の総仕上げに取り組んでまいります。
質問3
臨海副都心開発は、今後も継続される事業です。都民参加のもとで開発が進むように、情報公開が重要です。平成十七年の包括外部監査においても、会計が複雑でわかりにくいことが指摘されています。また、二十年以上の長期にわたる事業であるため、有効な評価が行われているとはいえず、この事業を検証することも必要です。そのための資料やデータをデジタル化し、インターネットに載せるべきと考えますが、いかがでしょうか。
答弁3
港湾局長
臨海副都心開発に関する資料等の提供方法でございますが、臨海副都心開発の事業費や予算、決算状況等につきましては、都議会でご審議いただくとともに、都民情報ルームや都立図書館等におきまして、だれもが閲覧できるようにしてございます。
さらに、開発の基本となります臨海副都心まちづくり推進計画などの諸計画や土地の公募状況、処分状況、また来訪者のデータなど、インターネットでの提供がふさわしい最新の情報につきましては、臨海副都心のホームページで広く都民にお知らせしてございます。
今後とも、臨海副都心の開発状況をわかりやすくお示しできるよう、適時適切な情報の発信に努めてまいります。
質問1
次に、児童虐待について伺います。
近年、子どもの虐待相談対応件数が急増しており、都内の児童相談所における平成十九年度の虐待相談件数は、三千三百七件と、虐待相談統計を開始した平成二年度と比較すると二十五倍になっています。子どもの虐待の早期発見、早期対応が進む中、親元から離れて施設等に入所する子どもの数もふえ続けています。
また、虐待を受けた児童の中には、発達障害や不登校など、心にかかわる問題を抱えている例も多く見られます。しかし、子どもの心の治療を行う専門の医師や医療機関が少なく、緊急時に対応できる精神科病棟の確保が困難なことにより、適切な対応がおくれる場合が見られます。児童虐待の対応を迅速かつ円滑に行うことができるように、児童相談所等と児童精神医療機関の連携を強化すべきと考えますが、見解を伺います。
答弁1
福祉保健局長
児童相談所等と児童精神医療機関との連携についてでありますが、都は今年度から、子どもの心診療支援拠点病院事業を開始し、拠点病院であります都立梅ケ丘病院と児童相談所など地域の関係機関との連携強化を図っているところであります。この一環として、先月、児童相談所と都立梅ケ丘病院との連絡会を立ち上げました。
今後、子どもの心に配慮したかかわり方や、困難ケースの対応方法、関係機関の適切な連携のあり方などについて検討してまいります。
質問2
このような中、児童養護施設には、虐待等により、情緒、行動の問題、さらには発達障害等を重層的に抱えて入所してくる児童が増加しています。ことし八月の東京都児童福祉審議会の提言にあるように、激しい暴力や暴言を振るう子どもや、集団生活に不適応を起こしている子どもなど、特に状態が重篤化している子どもたちに対して、新たな施設整備を行い、支援していくことが必要です。
虐待を受け、児童養護施設等で育った子どもは、施設等を退所し自立するに当たっても、保護者の支援を受けられず、人間関係や社会生活で悩んだときにも、適切な助言や支援を得られず就労が続かないなど、さまざまな困難に突き当たることが多いと聞いています。
こうした児童を支援するため、平成十年から児童自立生活援助事業、いわゆる自立援助ホームが法制化されましたが、今回の児童福祉法の改正によって、対象年齢が十八歳未満から二十歳未満へ引き上げられ、全都道府県での実施の義務化、さらに運営費については、補助金から義務的支出である負担金化するなど、支援が強化されました。これらの改正の趣旨を踏まえ、都としての今後の対応について伺います。
答弁2
福祉保健局長
自立援助ホームについてでありますが、児童養護施設等を退所し、就労自立を目指す子どもに対し、日常生活上の援助、生活指導を行う場として、自立援助ホームは重要な役割を果たしております。
都は、国に先駆けて昭和五十九年から自立援助ホームを制度化するとともに、独自の支援策を講じており、現在、都内に、全国の約三分の一を占める十八カ所のホームが設置をされております。
今回の法改正は、社会的養護における重要な課題である年長児の自立支援に資するものであり、これまでの都の取り組みを踏まえ、事業の一層の充実を図ってまいります。
質問1
次に、周産期医療についてです。
大病院が数ある都内でも妊婦の救急搬送が難航する事態が続いたことを受け、国でも懇談会を発足させて、周産期医療と救急医療の連携についての検討が始まりました。
都は、十一月五日に周産期医療協議会を緊急開催するとともに、今議会に上程された補正予算に周産期医療緊急対策を盛り込みましたが、一人の命が失われなければ対策が打ち出せなかったことについては、大変残念な思いでいっぱいです。
都は、本年三月、周産期医療連携ガイドラインを策定し、都内各地域でネットワークグループを立ち上げ、総合周産期母子医療センターを中心にして、地域の病院や診療所、助産所などの医療機関が役割分担をしながら、顔の見える連携を築き、地域における周産期医療の確保を図っていくということです。
渋谷区にある日赤医療センターにおいては、妊産婦の日常の健康管理や産後のケア等は地域助産所が対応し、節目の健診での医学的チェックや分娩は日赤医療センターが対応するなどの連携を進めていると聞きます。助産師のきめ細かな対応を生かしつつ、医学的管理もしっかり行われたすぐれた取り組みだと思います。
こうした実例も踏まえ、地域における周産期の連携体制づくりにどのように取り組んでいくのか、伺います。
周産期の救急医療体制と同時に、妊婦自身が妊娠や出産に対する理解を深め、自分の健康管理を適切に行うことが、ミドルリスクやハイリスクの分娩に早期に対応する上で重要です。そのためのサポートとして、これまでも母親学級や出産後の訪問事業などがありますが、生活者ネットワークでは、世田谷の産後ケアセンターを視察したり、地域で助産所を開業している助産師さんにもお話を伺い、将来子どもを産む立場にある若い女性、できれば中学生くらいから、女性の生涯を通じての健康づくりを、助産師さんの力を生かして進めていくべきではないかと感じます。
助産師の実態把握と活用について、都として真剣に検討するよう、要望します。
答弁1
福祉保健局長
周産期の連携体制づくりについてでありますが、周産期母子医療センターと地域の助産所や診療所等がそれぞれの機能や特性を生かして連携を進めることは、安全・安心な出産の確保や医療機関の負担軽減の上からも有効であります。
都では、本年三月に策定いたしました連携ガイドラインを基本に、各地域でのすぐれた取り組みの事例も参考として、地域の医療機関等による周産期医療ネットワークグループの立ち上げを進めております。こうした取り組みを通じて、地域の周産期医療を支える体制の構築を図ってまいります。
質問1
最後に、有害化学物質対策について伺います。
人がつくり出した化学物質は八千四百五十万種を超え、商品化されているだけでも十万種といわれ、化学物質が人に与える影響が懸念されています。
化学物質の多くは、生物の体内で分解されずに脂肪に蓄積する性質を持ち、食物連鎖の結果、人、特に子どもに蓄積するといわれています。実際にアトピーやアレルギーの人がふえ、早産、低出生体重児の増加などのほか、自閉的で社会性が育たない、突発的に怒る、学習障害など、化学物質の関与が疑われています。子どもや胎児への影響は重大であり、私たちは、未来ある世代への責任を果たさなくてはならないことを認識すべきです。
二〇〇一年六月の議会で生活者ネットワークが、化学物質の子どもへの影響を未然に防止すべき立場から、都独自の対策を求めました。これに対し石原知事は、国の対策は生ぬるい、都独自の基準を策定すると答弁。それにより、都は国に先駆け化学物質の子どもガイドラインを策定し、取り組んできました。これは大いに評価します。
しかし、先駆的な取り組みであるがために、持続的な普及啓発が必要であると考えますが、どのように徹底を図っていくのか、伺います。
答弁1
環境局長
子どもガイドラインの周知徹底についてであります。
化学物質の人や環境への影響を減らすためには、適正な使用が行われるよう、関係者に対し継続的に働きかけていく必要があります。
都はこれまで、樹木への殺虫剤の使用や室内空気中の化学物質などの子どもガイドラインを策定し、公園、保育園など、子どもが多く利用する施設の管理者等へ周知してまいりました。
また、関係者や都民に対しパンフレット等を配布するとともに、都のホームページに掲載し、広く普及に努めてまいりました。
今後とも、区市町村と連携しまして、あらゆる機会をとらえて子どもガイドラインの周知徹底を図ってまいります。
質問2
化学物質子どもガイドラインは、特定の分野や場面での化学物質の具体的な適正使用には有効であり、今後も継続的な取り組みが必要です。
さらに、生活全体から化学物質をとらえていくために、例えば、食育と同じように化学物質についても子どものころから知識を与え、みずから判断し、選択し、適正な使用をすることにより、化学物質を低減させていく取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。
今や化学物質なしの生活は不可能です。しかし、これを削減し、未来世代の健康を守ることは可能です。特に、生殖世代にある若い世代を化学物質から守るためには、環境中の化学物質を低減するための対策を充実していく必要があります。
そこで、ここまで進めてきた化学物質の子どもガイドラインの実績を踏まえ、さらに実効性あるものとするために、条例化を検討すべきであることを申し上げて、質問を終わります。
答弁2
環境局長
化学物質に対する取り組みについてであります。
化学物質は、生活のさまざまな面で使われ、現代生活には不可欠でありますが、不適正な使用により、人や環境への影響を及ぼす可能性もあります。化学物質による影響は、一般に、発達期にある子どもの方が大人よりも大きいとされているため、都は、子どもガイドラインの作成を通じ、化学物質の適正な利用の促進を図ってまいりました。
今後とも、子どもを化学物質の影響から守る視点で、広く都民に対し正確な情報を提供することにより、化学物質に対する正しい知識の普及と適正な使用を促してまいります。